説明

TMEDAを用いた5−シクロプロピル−5,11−ジヒドロ[1]ベンゾオキセピノ[3,4−b]−ピリジン−5−オールの製造方法

TMEDA又はN,N,N’,N’−テトラメチル−エタン−1,2−ジアミンを使用することにより高収率が得られる、有用な生物活性を有する化合物の改良された化学的合成法が開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有用な生物活性を有する化学物質を製造するための合成過程の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は5−シクロペンチル−5−11−ジヒドロ−10−オキサ−1−アザ−ジベンゾ[a,d]シクロヘプテン−5−オールの合成製法における改良であり、それは、特許文献1で開示された生物活性化合物の合成のために使用される中間体である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第6329385号
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0004】
TMEDAすなわちN,N,N’,N’−テトラメチル−エタン−1,2−ジアミンを使用することにより高収率が得られる、有用な生物活性を有する化合物の改良された化学的合成法が開示される。品質も収率も、TMEDAをシクロプロピルマグネシウムブロミドに添加することにより著しく向上する。第三級アルコールを得るための、Grignard試薬と三環系ケトンとの間の化学反応(1,2−付加)は、転換率を低下させるケトンのエノール化及び主な副反応である1,4−付加により限定される。シクロプロピルマグネシウムブロミド及びTMEDAは反応して可溶性の錯体を形成する。その2つの窒素原子の塩基性により、TMEDAはマグネシウムとキレートを形成し、三環性ピリジンの窒素原子とのキレート化は避けられ、その結果、1,2−付加の選択性が明らかに向上し、ケトンの転換率も同様に向上する。
【発明を実施するための形態】
【0005】
スキーム1において、上記で引用した特許で用いられる反応順序が示されている。
【化1】

【0006】
【表1】

【0007】
【化2】

【0008】
スキーム2において、反応は本明細書で開示されたTMEDA使用により改良されることが見られる。
【実施例】
【0009】
〔実施例1〕
5−シクロプロピル−5,11−ジヒドロ−10−オキサ−1−アザジベンゾ[a,d]シクロヘプテン−5−オールの合成(スキーム1:化合物II)
オーバーヘッドスターラー(overhead stirrer)、温度計及び凝縮器(condenser)を備えた8Lジャケット付きの乾燥したガラス反応器を、窒素でパージした。シクロプロピルマグネシウムブロミド(2123g、2.23mol、15.3%のTHF/トルエン溶液)及びTHF(1.78L、無水)の溶液を加え、そして撹拌した。得られた溶液を冷却し(−3℃±5℃)、そして、シクロプロピルマグネシウムブロミドを部分的に沈殿させた。N,N,N’,N’−テトラメチル−エタン−1,2−ジアミン(TMEDA)(212g、1.80mol)を、1時間かけて投入し、反応混合物を0℃以下に維持し、透明な溶液を得た。−3℃±5℃で、THF(750mL、無水)中の11H−10−オキサ−1−アザジベンゾ[a,d]シクロヘプテン−5−オン(250g、1.18mol)の溶液を、滴下漏斗を用いて1時間かけて、反応混合物に滴下しながら加えた。反応混合物を−3℃±5℃で2時間撹拌した。その後、反応の進行をHPLCでモニターした。反応をクエンチするために、NH4Cl(250mL、飽和水溶液)の溶液を反応混合
物に投入し、そして30分間撹拌した。温度を〜20℃に上昇させながら、酢酸(348g、水1.875Lで希釈)を投入し、そして反応混合物を50℃まで温めた。混合物をclarcel(登録商標)(175g)を通して濾過し、フィルターケーキをTHF(2×500mL)で洗浄した。母液及び洗浄物を混合し、分離させ、そして水層を捨てた。有機層を撹拌し、加熱して、THF(3.36L)を大気圧下での蒸留で除去した。最終の反応器温度は106℃であった。得られた懸濁液を冷却(15℃/20℃)し、そして灰色がかった白色沈殿物を濾過した。ケーキをトルエン(2×500mL)、水(2×500mL)で洗浄し、そして減圧下(40mmHg/50℃)で乾燥し、最終的に所望の5−シクロプロピル−5,11−ジヒドロ−10−オキサ−1−アザジベンゾ[a,d]シクロヘプテン−5−オール(228.1g、76.3%:収率)を得た。HPLC面積=98%;
HPLC条件:カラム:INERTSIL(登録商標)OD3:3μm、150×4.6mm;カラム温度:室温;移動相:H2O(600mL):アセトニトリル(400mL):トリフルオロ酢酸(0.2mL);流速:1mL/分;圧力:120バール;検出(UV):220nm;注入量:20μl;分析時間:35分.;RT:(11H−10−オキサ−1−アザジベンゾ[a,d]シクロヘプテン−5−オン)=11.2分.;RT(5−シクロプロピル−5,11−ジヒドロ−10−オキサ−1−アザジベンゾ[a,d]シクロヘプテン−5−オール)=3.4分.;RT(4−シクロプロピル−4,11−ジヒドロ−1H−10−オキサ−1−アザジベンゾ[a,d]シクロヘプテン−5−オン)=18.9分.;RT(トルエン)=28.0分。
【0010】
〔実施例1a〕
5−シクロプロピル−5,11−ジヒドロ−10−オキサ−1−アザジベンゾ[a,d]シクロヘプテン−5−オールの合成(スキーム1、化合物II)
標題化合物を11H−10−オキサ−1−アザジベンゾ[a,d]シクロヘプテン−5−オン(7kg)から、基本的に上記の実施例1で記載したように製造した。単離収率:67%。
HPLC条件:カラム:INERTSIL OD3:3μm、150×4.6mm;カラム温度:室温;移動相:H2O(600mL):アセトニトリル(0.2mL):トリフルオロ酢酸(0.2mL);流速:1mL/分;圧力:120バール;検出(UV):220nm;注入量:20μl;分析時間:35分.;RT(11H−10−オキサ−1−アザジベンゾ[a,d]シクロヘプテン−5−オン)=11.2分.;RT(5−シクロプロピル−5,11−ジヒドロ−10−オキサ−1−アザジベンゾ[a,d]シクロヘプテン−5−オール)=3.4分.;RT=(4−シクロプロピル−4,11−ジヒドロ−1H−10−オキサ−1−アザジベンゾ[a,d]シクロヘプテン−5−オン)=18.9分.;及びRT(トルエン)=28.0分。
【0011】
〔実施例2〕
5−シクロプロピル−5,11−ジヒドロ−10−オキサ−1−アザジベンゾ[a,d]シクロヘプテン−5−オールの合成(スキーム1、化合物II)
オーバーヘッドスターラー、温度計及び凝縮器を備えた、2Lの三口フラスコを窒素でパージした。シクロプロピルマグネシウムブロミド(TMEDAとの1:1錯体として、そしてChemetall GmbhからTHF中の18.3%重量比溶液として購入)から製造されたシクロプロピルマグネシウムブロミド/TMEDAのTHF溶液(355g、15.3%重量比の447mmol)及びTHF(360mL、無水)を加え、そして撹拌した。得られた溶液を冷却(−5℃±5℃)した。THF(150mL、無水)中の11H−10−オキサ−1−アザジベンゾ[a,d]シクロヘプテン−5−オン(50g、236.7mmol)の溶液を、滴下漏斗を用いて1時間かけて、反応混合物に滴下しながら加えた。反応混合物を、−5℃±5℃で1時間撹拌した。その後、反応の進行をHPLCでモニターした。反応をクエンチするために、NH4Cl(50mL、飽和水溶液)の溶液を反応混合物に投入し、そして、20℃で30分間撹拌した。反応混合物を45℃まで温めた。酢酸(70g、水(375mL)で希釈)を10分間で投入した。反応混合物を、20℃で更に25分間撹拌し、clarcel(登録商標)(35g)を通して濾過した。フィルターケーキをTHF(2×50mL)で洗浄した。母液及び洗浄物を2L漏斗に注ぎ、水層を捨てた。オーバーヘッドスターラー、温度計及び凝縮器を備えた2Lの三口フラスコに、有機層及びトルエン(250mL)を注ぎ入れた。THF(1050mL)を大気圧下での蒸留で除去した。最終反応器温度を100℃にし、懸濁液を得、それを20℃に冷却した。白色沈殿物を、20℃で1時間撹拌し、濾過し、トルエン(2×100mL)と水(2×100mL)で洗浄し、減圧下(40mmHg/50℃)で乾燥し、所望の5−シクロプロピル−5,11−ジヒドロ−10−オキサ−1−アザジベンゾ[a,d]シクロヘプテン−5−オール(51g、85%:収率)を得た。mp:210−212℃;HPLC面積=99.5%;HPLC条件:カラム:INERTSIL(登録商標)OD3、3μm、150×4.6mm;カラム温度:室温;移動相:H2O(600mL):アセトニトリル(400mL):トリフルオロ酢酸(0.2mL);流速:1mL/分;圧力:120バール;検出(UV):220nm;注入量:20μl;分析時間:35分;RT(11H−10−オキサ−1−アザジベンゾ[a,d]シクロヘプテン−5−オン)=11.2分.;RT(5−シクロプロピル−5,11−ジヒドロ−10−オキサ−1−アザジベンゾ[a,d]シクロヘプテン−5−オール)=3.4分.;RT=(4−シクロプロピル−4,11−ジヒドロ−1H−10−オキサ−1−アザジベンゾ[a,d]シクロヘプテン−5−オン)=18.9分。;及びRT(トルエン)=28.0分。
MSm/z(EI):253(M+),225(M−CO+),212(M−C35+),184(212−CO+)。
IR(KBr):3393,3084,3066,3007,2960,2882,1582,1487,1449,1441,1425,1282,1216,1052,1042,881,806,770,744,728及び650cm-1
1NMR(300MHz,(CD32SO−d6,δinppm):0.24(m,2H),0.49(m,1H),0.59(m,1H),1.99(m,1H),5.00(d,J=16Hz,1H),5.47(d,J=16Hz,1H),5.75(s,1H),from7.10to7.25(m,2H),7.25〜7.40(m,2H),7.63(dd,J=7.5及び1.5Hz,1H),8.16(d,J=8及び1Hz,1H),8.42(dd,J=4.5及び1Hz,1H)。
【0012】
本発明はその精神又は本質的な属性から離れることなく,他の特定の形態においても具体化し得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応:
【化1】

をTMEDAを加えて実施することを含む5−シクロペンチル−5,11−ジヒドロ−10−オキサ−1−アザ−ジベンゾ[a,d]シクロヘプテン−5−オールの改良された合成。

【公表番号】特表2011−505364(P2011−505364A)
【公表日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−536111(P2010−536111)
【出願日】平成20年11月25日(2008.11.25)
【国際出願番号】PCT/US2008/084610
【国際公開番号】WO2009/073462
【国際公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【出願人】(500287639)ミレニアム・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド (98)
【氏名又は名称原語表記】MILLENNIUM PHARMACEUTICALS, INC.
【Fターム(参考)】