説明

TNモード液晶表示装置、ならびにそれに用いられる光学補償シート及び偏光板

【課題】視野角補償能および視野角色味変化が改善された新規で安価なTNモード用光学補償シート、該光学補償シートを用いた偏光板及び液晶表示装置を提供すること。
【解決手段】少なくとも1層以上の透明フィルムからなり、下記式(1)、(2)を満たすTNモード液晶表示装置用光学補償シート。
(1)40≦Re(550)≦130
(2)100≦Rth(550)≦200
(ただし、上記式中、Re(λ)は、波長λnmの光に対する面内レターデーション値であり、Rth(λ)は、波長λnmの光に対する厚さ方向のレターデーション値である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はTNモード液晶表示装置用の光学補償シート及び偏光板に関する。また、本発明は該光学補償シート又は偏光板を有するTNモードの液晶表示装置にも関する。
【背景技術】
【0002】
従来、TNモード液晶表示装置用の光学補償シートとして、透明支持体上に、液晶組成物から形成された光学異方性層を有する光学補償シートが種々提案されている。
例えば、特許文献1には、透明支持体及びその上に設けられた光学異方層からなる光学補償シートであって、該光学異方層が、ディスコティック構造単位を有する化合物からなる負の複屈折を有する層であり、そして該ディスコティック構造単位の円盤面が、透明支持体面に対して傾いており、且つ該ディスコティック構造単位の円盤面と透明支持体面とのなす角度が、光学異方層の深さ方向において変化していることを特徴とする光学補償シートが提案されている。
透明支持体上に、光学異方性層を有する光学補償シートを使用したTNモード液晶表示装置は高コントラスト、広コントラスト視野角を実現できるが、製造上、透明支持体上に光学異方層を塗設する工程を含むため、コストがかかり液晶パネルの単価を引き上げる原因となる。そこで上記液晶層などの高価な層を形成せず、透明支持体に光学特性を持たせた光学補償層を用いたTNモード液晶表示装置が提案されている(特許文献2)。
【0003】
しかしながら、光学特性を持つ透明支持体からなる光学補償層を用いたTNモード液晶表示装置は透明支持体上に、光学異方性層を有する光学補償シートを使用したTNモード液晶表示装置と比較して表示性能が著しく低下する。特にTNモード特有のパネル下方向における階調反転や黒表示、中間調表示の際の斜め方向での色味づきは大きな課題である。階調反転を改良する手段として、表面拡散フィルムを液晶パネルの視認側に用いる提案はなされている(特許文献3)が、色味変化を改良する手段の検討はなされていなかった。
【特許文献1】特開平8−50206号公報
【特許文献2】特開2002−22942号公報
【特許文献3】特開2003−279736号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、視野角補償能および視野角色味変化が改善された新規で安価なTNモード用光学補償シート、該光学補償シートを用いた偏光板及び液晶表示装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
1. 少なくとも1層以上の透明フィルムからなり、下記式(1)、(2)を満たすTNモード液晶表示装置用光学補償シート。
(1)40≦Re(550)≦130
(2)100≦Rth(550)≦200
(ただし、上記式中、Re(λ)は、波長λnmの光に対する面内レターデーション値であり、Rth(λ)は、波長λnmの光に対する厚さ方向のレターデーション値である。)
2. 下記式(3)、(4)を満たす上記1に記載の光学補償シート。
(3)70≦Re(550)≦110
(4)100≦Rth(550)≦150
3. 下記式(5)、(6)を満たす上記1または2に記載の光学補償シート。
(5)Re(630)−Re(450)>0
(6)Rth(630)−Rth(450)>0
4. 下記式(7)、(8)を満たす上記1または2に記載の光学補償シート。
(7)Re(630)−Re(450)≦0
(8)Rth(630)−Rth(450)≦0
5. 下記式(9)〜(11)の置換度の条件式を満足したセルロースアシレートを含む上記1〜4のいずれかに記載の光学補償シート。
(9)2.0≦X+Y≦3.0
(10)0≦X≦2.0
(11)0≦Y≦1.5
(式(9)〜(11)中、Xはアセチル基の置換度を示し、Yは、プロピオニル基、ブチリル基、ペンタノイル基、およびヘキサノイル基の置換度の総和を示す。)
6. 少なくとも1種のレターデーション上昇剤を含む上記1〜5のいずれかに記載のセルロースアシレートを含む光学補償シート。
7. シクロオレフィンポリマーを含む上記1〜4のいずれかに記載の光学補償シート。
8. 前記透明フィルムが非液晶性ポリマー製複屈折層を含む複屈折性フィルムである上記1〜4に記載の光学補償シート。
9. 偏光膜と、前記偏光膜を挟持する一対の保護膜を有する偏光板であって、前記保護膜の少なくとも一つが上記1〜8のいずれかに記載の光学補償シートからなる偏光板。
10. 上記9に記載の偏光板を含むTNモード液晶表示装置。
11. 偏光膜と、前記偏光膜を挟持する一対の保護膜を有する偏光板であって、前記保護膜の少なくとも一方が下記式(1)、(2)を満たす光学補償シートからなり、前記光学補償シートと偏光膜を挟んで相反する側に下記式(12)を満たす散乱フィルムを有するTNモード液晶表示装置用偏光板。
(1)40≦Re(550)≦130
(2)100≦Rth(550)≦200
(12)ヘイズ値≧30%
(ここでヘイズ値は、散乱フィルムの法線方向に対して30%傾斜した方向での散乱フィルムのヘイズ値を示す。Re(λ)は、波長λnmの光に対する面内レターデーション値であり、Rth(λ)は、波長λnmの光に対する厚さ方向のレターデーション値である。)
12. 前記光学補償シートが下記式(3)、(4)を満たす上記11に記載の偏光板。
(3)70≦Re(550)≦110
(4)100≦Rth(550)≦150
13. 前記光学補償シートが下記式(5)、(6)を満たす上記11に記載の偏光板。
(5)Re(630)−Re(450)>0
(6)Rth(630)−Rth(450)>0
14. 前記光学補償シートが下記式(7)、(8)を満たす上記11〜13のいずれかに記載の偏光板。
(7)Re(630)−Re(450)≦0
(8)Rth(630)−Rth(450)≦0
15. 前記光学補償シートが下記式(9)〜(11)の置換度の条件式を満足した上記11〜14のいずれかに記載のセルロースアシレートを含む偏光板。
(9)2.0≦X+Y≦3.0
(10)0≦X≦2.0
(11)0≦Y≦1.5
(式(9)〜(11)中、Xはアセチル基の置換度を示し、Yは、プロピオニル基、ブチリル基、ペンタノイル基、およびヘキサノイル基の置換度の総和を示す。)
16. 前記光学補償シートが少なくとも1種のレターデーション上昇剤を含む上記11〜15のいずれかに記載の偏光板。
17. 前記光学補償シートがシクロオレフィンポリマーを含む上記11〜14のいずれかに記載の偏光板。
18. 前記光学補償シートが非液晶性ポリマー製複屈折層を含む複屈折性フィルムである上記11〜14のいずれかに記載の偏光板。
19. 上記11〜18のいずれかに記載の偏光板を有するTNモード液晶表示装置。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、視野角補償能および視野角色味変化が改善されたTNモード用光学補償シートを安価に提供することができる。
更に透明フィルム上に散乱フィルムを適用することにより、更なる視野角補償能および視野角色味変化の改善を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
【0008】
本明細書において、Re(λ)、Rth(λ)は各々、波長λにおける面内のレターデーションおよび厚さ方向のレターデーションを表す。Re(λ)はKOBRA 21ADHまたはWR(王子計測機器(株)製)において波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。測定波長λnmの選択にあたっては、波長選択フィルターをマニュアルで交換するか、または測定値をプログラム等で変換して測定するができる。
【0009】
測定されるフィルムが1軸又は2軸の屈折率楕円体で表されるものである場合には、以下の方法によりRth(λ)は算出される。
Rth(λ)は、前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)フィルム法線方向に対して法線方向から片側50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて全部で6点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRにおいて算出される。
【0010】
上記において、法線方向から面内の遅相軸を回転軸として、ある傾斜角度にレターデーションの値がゼロとなる方向をもつフィルムの場合には、その傾斜角度より大きい傾斜角度でのレターデーション値はその符号を負に変更した後、KOBRA 21ADH又はWRにおいて算出される。
尚、遅相軸を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)、任意の傾斜した2方向からレターデーション値を測定し、その値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基に、以下の数式(1)及び数式(2)によりRthを算出することもできる。
【0011】
【数1】

【0012】
【数2】

【0013】
式中、Re(θ)は法線方向から角度θ傾斜した方向におけるレターデーション値を表す。nxは面内における遅相軸方向の屈折率を表し、nyは面内においてnxに直交する方向の屈折率を表し、nzはnx及びnyに直交する方向の屈折率を表す。dはフィルムの膜厚を表す。
【0014】
測定されるフィルムが1軸や2軸の屈折率楕円体で表現できないもの、いわゆる光学軸(optic axis)がないフィルムの場合には、以下の方法によりRth(λ)が算出される。
Rth(λ)は、前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して−50度から+50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて11点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRにより算出される。
【0015】
上記の測定において、平均屈折率の仮定値は、ポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、各種光学フィルムのカタログの値を使用することができる。平均屈折率の値が既知でないものについてはアッベ屈折計で測定することができる。主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する:
セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。
これら平均屈折率の仮定値と膜厚を入力することで、KOBRA 21ADH又はWRにおいてnx、ny、nzが算出される。
【0016】
また、本明細書において、測定波長を特に付記しない場合は、波長550nmにおけるRe及びRthであるとする。
【0017】
<光学補償シート>
本発明の光学補償シートは、TNモード液晶表示装置用の光学補償シートであり、下記式(1)、(2)を満たし、下記式(3)、(4)を満たすことがさらに好ましい。
(1)40≦Re(550)≦130
(2)100≦Rth(550)≦200
(3)70≦Re(550)≦110
(4)100≦Rth(550)≦150
また、本発明の光学補償シートは、黒表示の際の斜め方向での色味を改善する観点から下記式を満たすことが好ましい。
(5)Re(630)−Re(450)>0
(6)Rth(630)−Rth(450)>0
一方で、中間調表示の際の斜め方向での色味は下記式を満たすことが好ましく、表示性能の設計により光学補償シートの特性を使い分ける必要がある。
(7)Re(630)−Re(450)≦0
(8)Rth(630)−Rth(450)≦0
【0018】
<透明フィルム>
本発明の光学補償シートとしては、セルロースアシレートを含む光学補償シートを用いることができる。その場合、上記式(1)〜(6)を満たすために、セルロースアシレートの置換度を調整したり、レターデーション上昇剤を用いて光学特性を満足することができる。
【0019】
(セルロースアシレートの置換度)
透明フィルムとしては、例えば下記式(9)〜(11)の置換度の条件式を満足したセルロースアシレートを含むセルロースアシレートフィルムが挙げられる。
(9)2.0≦X+Y≦3.0
(10)0≦X≦2.0
(11)0≦Y≦1.5
(式(9)〜(11)中、Xはアセチル基の置換度を示し、Yは、プロピオニル基、ブチリル基、ペンタノイル基、およびヘキサノイル基の置換度の総和を示す。)
【0020】
(レターデーション上昇剤)
上記式(1)〜(6)を満たすために、下記一般式(I)で表されるレターデーション上昇剤を含んでもよい。下記のレターデーション上昇剤を高分子材料中添加し、これに延伸処理を施した場合、該レターデーション上昇剤の分子長軸は延伸方向に配向する。該レターデーション上昇剤においては分子長軸方向と略直交方向の遷移電気双極子モーメントに由来する分子吸収波長が、該分子長軸方向と略平行方向の遷移電気双極子モーメントに由来する分子吸収波長より長波長である。
【0021】
【化1】

【0022】
(一般式(I)中、LおよびLは、それぞれ、単結合または二価の連結基を表す。AおよびAは−O―、―NR―(Rは水素原子または置換基)、―S―、―CO−からそれぞれ独立に選ばれる基である。R、R、R、RおよびRは置換基を表す。nは0から2までの整数を表す。)
【0023】
は置換基であり、複数存在する場合は同じでも異なっていてもよい。Rの表す置換基の例としては下記のものが適用できる。
【0024】
ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、アルキル基(好ましくは炭素数1〜30のアルキル基、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基)、シクロアルキル基(好ましくは、炭素数3〜30の置換または無置換のシクロアルキル基、例えば、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、4−n−ドデシルシクロヘキシル基)、ビシクロアルキル基(好ましくは、炭素数5〜30の置換または無置換のビシクロアルキル基、つまり、炭素数5〜30のビシクロアルカンから水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、ビシクロ[1,2,2]ヘプタン−2−イル基、ビシクロ[2,2,2]オクタン−3−イル基)、
【0025】
アルケニル基(好ましくは炭素数2〜30の置換または無置換のアルケニル基、例えば、ビニル基、アリル基)、シクロアルケニル基(好ましくは、炭素数3〜30の置換または無置換のシクロアルケニル基、つまり、炭素数3〜30のシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、2−シクロペンテン−1−イル、2−シクロヘキセン−1−イル基)、ビシクロアルケニル基(置換または無置換のビシクロアルケニル基、好ましくは、炭素数5〜30の置換または無置換のビシクロアルケニル基、つまり二重結合を一個持つビシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−1−イル基、ビシクロ[2,2,2]オクト−2−エン−4−イル基)、アルキニル基(好ましくは、炭素数2〜30の置換または無置換のアルキニル基、例えば、エチニル基、プロパルギル基)、
【0026】
アリール基(好ましくは炭素数6〜30の置換または無置換のアリール基、例えばフェニル基、p−トリル基、ナフチル基)、ヘテロ環基(好ましくは5または6員の置換または無置換の、芳香族または非芳香族のヘテロ環化合物から一個の水素原子を取り除いた一価の基であり、さらに好ましくは、炭素数3〜30の5または6員の芳香族のヘテロ環基である。例えば、2−フリル基、2−チエニル基、2−ピリミジニル基、2−ベンゾチアゾリル基)、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基(好ましくは、炭素数1〜30の置換または無置換のアルコキシ基、例えば、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、tert−ブトキシ基、n−オクチルオキシ基、2−メトキシエトキシ基)、アリールオキシ基(好ましくは、炭素数6〜30の置換または無置換のアリールオキシ基、例えば、フェノキシ基、2−メチルフェノキシ基、4−tert−ブチルフェノキシ基、3−ニトロフェノキシ基、2−テトラデカノイルアミノフェノキシ基)、
【0027】
シリルオキシ基(好ましくは、炭素数3〜20のシリルオキシ基、例えば、トリメチルシリルオキシ基、tert−ブチルジメチルシリルオキシ基)、ヘテロ環オキシ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換または無置換のヘテロ環オキシ基、1−フェニルテトラゾール−5−オキシ基、2−テトラヒドロピラニルオキシ基)、アシルオキシ基(好ましくはホルミルオキシ基、炭素数2〜30の置換または無置換のアルキルカルボニルオキシ基、炭素数6〜30の置換または無置換のアリールカルボニルオキシ基、例えば、ホルミルオキシ基、アセチルオキシ基、ピバロイルオキシ基、ステアロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、p−メトキシフェニルカルボニルオキシ基)、カルバモイルオキシ基(好ましくは、炭素数1〜30の置換または無置換のカルバモイルオキシ基、例えば、N,N−ジメチルカルバモイルオキシ基、N,N−ジエチルカルバモイルオキシ基、モルホリノカルボニルオキシ基、N,N−ジ−n−オクチルアミノカルボニルオキシ基、N−n−オクチルカルバモイルオキシ基)、アルコキシカルボニルオキシ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換または無置換アルコキシカルボニルオキシ基、例えばメトキシカルボニルオキシ基
、エトキシカルボニルオキシ基、tert−ブトキシカルボニルオキシ基、n−オクチルカルボニルオキシ基)、アリールオキシカルボニルオキシ基(好ましくは、炭素数7〜30の置換または無置換のアリールオキシカルボニルオキシ基、例えば、フェノキシカルボニルオキシ基、p−メトキシフェノキシカルボニルオキシ基、p−n−ヘキサデシルオキシフェノキシカルボニルオキシ基)、
【0028】
アミノ基(好ましくは、アミノ基、炭素数1〜30の置換または無置換のアルキルアミノ基、炭素数6〜30の置換または無置換のアニリノ基、例えば、アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、アニリノ基、N−メチル−アニリノ基、ジフェニルアミノ基)、アシルアミノ基(好ましくは、ホルミルアミノ基、炭素数1〜30の置換または無置換のアルキルカルボニルアミノ基、炭素数6〜30の置換または無置換のアリールカルボニルアミノ基、例えば、ホルミルアミノ基、アセチルアミノ基、ピバロイルアミノ基、ラウロイルアミノ基、ベンゾイルアミノ基)、アミノカルボニルアミノ基(好ましくは、炭素数1〜30の置換または無置換のアミノカルボニルアミノ基、例えば、カルバモイルアミノ基、N,N−ジメチルアミノカルボニルアミノ基、N,N−ジエチルアミノカルボニルアミノ基、モルホリノカルボニルアミノ基)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜30の置換または無置換アルコキシカルボニルアミノ基、例えば、メトキシカルボニルアミノ基、エトキシカルボニルアミノ基、tert−ブトキシカルボニルアミノ基、n−オクタデシルオキシカルボニルアミノ基、N−メチルーメトキシカルボニルアミノ基)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは、炭素数7〜30の置換または無置換のアリールオキシカルボニルアミノ基、例えば、フェノキシカルボニルアミノ基、p−クロロフェノキシカルボニルアミノ基、m−n−オクチルオキシフェノキシカルボニルアミノ基)、
【0029】
スルファモイルアミノ基(好ましくは、炭素数0〜30の置換または無置換のスルファモイルアミノ基、例えば、スルファモイルアミノ基、N,N−ジメチルアミノスルホニルアミノ基、N−n−オクチルアミノスルホニルアミノ基)、アルキルおよびアリールスルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜30の置換または無置換のアルキルスルホニルアミノ基、炭素数6〜30の置換または無置換のアリールスルホニルアミノ基、例えば、メチルスルホニルアミノ基、ブチルスルホニルアミノ基、フェニルスルホニルアミノ基、2,3,5−トリクロロフェニルスルホニルアミノ基、p−メチルフェニルスルホニルアミノ基)、メルカプト基、アルキルチオ基(好ましくは、炭素数1〜30の置換または無置換のアルキルチオ基、例えばメチルチオ基、エチルチオ基、n−ヘキサデシルチオ基)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜30の置換または無置換のアリールチオ基、例えば、フェニルチオ基、p−クロロフェニルチオ基、m−メトキシフェニルチオ基)、ヘテロ環チオ基(好ましくは炭素数2〜30の置換または無置換のヘテロ環チオ基、例えば、2−ベンゾチアゾリルチオ基、1−フェニルテトラゾール−5−イルチオ基)、
【0030】
スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜30の置換または無置換のスルファモイル基、例えば、N−エチルスルファモイル基、N−(3−ドデシルオキシプロピル)スルファモイル基、N,N−ジメチルスルファモイル基、N−アセチルスルファモイル基、N−ベンゾイルスルファモイル基、N−(N’−フェニルカルバモイル)スルファモイル基)、スルホ基、アルキルおよびアリールスルフィニル基(好ましくは、炭素数1〜30の置換または無置換のアルキルスルフィニル基、炭素数6〜30の置換または無置換のアリールスルフィニル基、例えば、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、フェニルスルフィニル基、p−メチルフェニルスルフィニル基)、アルキルおよびアリールスルホニル基(好ましくは、炭素数1〜30の置換または無置換のアルキルスルホニル基、炭素数6〜30の置換または無置換のアリールスルホニル基、例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、フェニルスルホニル基、p−メチルフェニルスルホニル基)、
【0031】
アシル基(好ましくはホルミル基、炭素数2〜30の置換または無置換のアルキルカルボニル基、炭素数7〜30の置換または無置換のアリールカルボニル基、例えば、アセチル基、ピバロイルベンゾイル基)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは、炭素数7〜30の置換または無置換のアリールオキシカルボニル基、例えば、フェノキシカルボニル基、o−クロロフェノキシカルボニル基、m−ニトロフェノキシカルボニル基、p−tert−ブチルフェノキシカルボニル基)、アルコキシカルボニル基(好ましくは、炭素数2〜30の置換または無置換アルコキシカルボニル基、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基、n−オクタデシルオキシカルボニル基)、カルバモイル基(好ましくは、炭素数1〜30の置換または無置換のカルバモイル基、例えば、カルバモイル基、N−メチルカルバモイル基、N,N−ジメチルカルバモイル基、N,N−ジ−n−オクチルカルバモイル基、N−(メチルスルホニル)カルバモイル基)、
【0032】
アリールおよびヘテロ環アゾ基(好ましくは炭素数6〜30の置換または無置換のアリールアゾ基、炭素数3〜30の置換または無置換のヘテロ環アゾ基、例えば、フェニルアゾ基、p−クロロフェニルアゾ基、5−エチルチオ−1,3,4−チアジアゾール−2−イルアゾ基)、イミド基(好ましくは、N−スクシンイミド基、N−フタルイミド基)、ホスフィノ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換または無置換のホスフィノ基、例えば、ジメチルホスフィノ基、ジフェニルホスフィノ基、メチルフェノキシホスフィノ基)、ホスフィニル基(好ましくは、炭素数2〜30の置換または無置換のホスフィニル基、例えば、ホスフィニル基、ジオクチルオキシホスフィニル基、ジエトキシホスフィニル基)、ホスフィニルオキシ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換または無置換のホスフィニルオキシ基、例えば、ジフェノキシホスフィニルオキシ基、ジオクチルオキシホスフィニルオキシ基)、ホスフィニルアミノ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換または無置換のホスフィニルアミノ基、例えば、ジメトキシホスフィニルアミノ基、ジメチルアミノホスフィニルアミノ基)、シリル基(好ましくは、炭素数3〜30の置換または無置換のシリル基、例えば、トリメチルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基、フェニルジメチルシリル基)を表わす。
【0033】
上記の置換基の中で、水素原子を有するものは、これを取り去りさらに上記の基で置換されていてもよい。そのような官能基の例としては、アルキルカルボニルアミノスルホニル基、アリールカルボニルアミノスルホニル基、アルキルスルホニルアミノカルボニル基、アリールスルホニルアミノカルボニル基が挙げられる。その例としては、メチルスルホニルアミノカルボニル基、p−メチルフェニルスルホニルアミノカルボニル基、アセチルアミノスルホニル基、ベンゾイルアミノスルホニル基が挙げられる。
【0034】
は好ましくは、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、シアノ基、アミノ基であり、さらに好ましくは、ハロゲン原子、アルキル基、シアノ基、アルコキシ基である。
【0035】
2、R3は各々独立に置換基を表す。例としては上記Rの例があげられる。本発明の
効果を得る上で、光学フィルムとした際の本発明に係る低分子が、より高い配向秩序度により配向することが好ましい。R2およびR3が配向秩序に、より大きな影響を及ぼす。配向秩序度を高くするためには、一般式(I)で表される化合物は液晶性を示すことが好ましい。更に、配向秩序度を高くするという観点から、R2およびR3は、好ましくはそれぞれ独立に置換もしくは無置換のベンゼン環、置換もしくは無置換のシクロヘキサン環である。より好ましくは置換基を有するベンゼン環、置換基を有するシクロヘキサン環であり、さらに好ましくは4位に置換基を有するベンゼン環、4位に置換基を有するシクロヘキサン環である。さらに好ましくは置換もしくは無置換のベンゾイルオキシ基を4位に有するベンゼン環、置換もしくは無置換のシクロヘキシル基を4位に有するベンゼン環、置換もしくは無置換のベンゼン環を4位に有するシクロヘキサン環、または、置換もしくは無置換のシクロヘキシル基を4位に有するシクロへキサン環であり、中でも、置換もしくは無置換のシクロヘキシル基を4位に有するシクロへキサン環を好適に挙げることができる。また、さらに好ましくは4位に置換基を有するベンゾイルオキシ基を4位に有するベンゼン環、4位に置換基を有するシクロヘキシル基を4位に有するベンゼン環、4位に置換基を有するベンゼン環を4位に有するシクロヘキサン環、4位に置換基を有するシクロヘキシル基を4位に有するシクロへキサン環である。最も好ましくは、4位に置換基を有するシクロヘキシル基を4位に有するシクロへキサン環であり、4位に置換基を有するシクロへシル基の置換基としては、特に制限されるものではないが、アルキル基を好適に挙げることができる。
【0036】
また、4位に置換基を有するシクロヘキサン環にはシス体およびトランス体の立体異性体が存在するが、本発明においては限定されず、両者の混合物でも良い。好ましくはトランス-シクロヘキサン環である。
【0037】
4、R5は各々独立に置換基を表す。例としては上記R1の例があげられる。好ましくは、ハメットの置換基定数σp値が0より大きい電子吸引性の置換基であることが好ましく、σp値が0〜1.5の電子吸引性の置換基を有していることがさらに好ましい。このような置換基としてはトリフルオロメチル基、シアノ基、カルボニル基、ニトロ基等が挙げられる。また、R4とR5とが結合して環を形成してもよい。
なお、ハメットの置換基定数のσp、σmに関しては、例えば、稲本直樹著「ハメット則−構造と反応性−」(丸善)、日本化学会編「新実験化学講座14 有機化合物の合成と反応V」2605頁(丸善)、仲谷忠雄著「理論有機化学解説」217頁(東京化学同人)、ケミカル レビュー,91巻,165〜195頁(1991年)等の成書に詳しく解説されている。
【0038】
およびLは好ましくは下記の例が挙げられる。
【0039】
【化2】

【0040】
上記式(1)〜(4)、(7)、(8)を満たすために、上記レターデーション上昇剤は下記一般式(II)、(III)、(IV)で表される化合物から選ばれてもよい。下記のレターデーション上昇剤を高分子材料中添加し、これに延伸処理を施した場合、該レターデーション上昇剤の分子長軸は延伸方向に配向する。該レターデーション上昇剤においては分子長軸方向と略平行方向の遷移電気双極子モーメントに由来する分子吸収波長が、該分子長軸方向と略直交方向の遷移電気双極子モーメントに由来する分子吸収波長より長波長である。
【0041】
【化3】

【0042】
上記一般式(II)中:
12は、各々独立に、オルト位、メタ位およびパラ位の少なくともいずれかに置換基を有する芳香族環または複素環を表す。
11は、各々独立に、単結合または−NR13−を表す。ここで、R13は、各々独立に、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、アルケニル基、アリール基または複素環基を表す。
【0043】
以下に一般式(III)で表される化合物について説明する。
一般式(III):Q71−Q72−OH
(式中、Q71は含窒素芳香族ヘテロ環、Q72は芳香族環を表す。)
一般式(III)において、Q71は含窒素芳香族へテロ環を表し、好ましくは5〜7員の含窒素芳香族ヘテロ環であり、より好ましくは5〜6員の含窒素芳香族ヘテロ環である。
【0044】
以下に一般式(IV)で表される化合物について説明する。
【0045】
【化4】

【0046】
{一般式(IV)中、Q81及びQ82はそれぞれ独立に芳香族環を表す。X81はNR81(R81は水素原子又は置換基を表す)、酸素原子又は硫黄原子を表す。}
81及びQ82で表される芳香族炭化水素環として、好ましくは炭素数6〜30の単環又は二環の芳香族炭化水素環(例えばベンゼン環、ナフタレン環など)であり、より好ましくは炭素数6〜20の芳香族炭化水素環、更に好ましくは炭素数6〜12の芳香族炭化水素環であり、特に好ましくはベンゼン環である。
【0047】
(シクロオレフィンポリマー)
本発明の光学補償シートとしては、シクロオレフィンポリマーを含む光学補償シートを用いることができる。
シクロオレフィンポリマーは、そのポリマーの構造上、前記セルロースアシレートと異なり、厚み方向の位相差を強調したい場合に有効な材質である。
以下に本発明で好ましく用いられるシクロオレフィンポリマーフィルムについて説明する。
【0048】
[シクロオレフィンポリマーおよびシクロオレフィンポリマーフィルムの製造]
(シクロオレフィンポリマー)
本明細書において、(共)重合体とは共重合体および/または重合体を表す。
シクロオレフィン構造を有する(共)重合体樹脂の例には、(1)ノルボルネン系重合体、(2)単環のシクロオレフィンの重合体、(3)環状共役ジエンの重合体、(4)ビニル脂環式炭化水素重合体、及び(1)〜(4)の水素化物などがある。
本発明に使用される好ましい重合体は、下記一般式(1)からなる群より選ばれる少なくとも1種の極性基を持つシクロオレフィン系モノマーの(共)重合体を含有するシクロオレフィンポリマーであり、特に好ましくは下記一般式(1)からなる群より選ばれる少なくとも1種の極性基を持つシクロオレフィン系モノマーの付加(共)重合体を含有するシクロオレフィンポリマーである。
【0049】
【化5】

【0050】
一般式(1)において、mは0〜4の整数を表し、R、R、R及びRのうち少なくとも1つは極性基を表し、残りは非極性基であり、前記非極性基は、水素原子;ハロゲン原子;炭素数1〜20の直鎖状または分岐状アルキル、ハロアルキル、アルケニルまたはハロアルケニル;炭素数3〜12の直鎖状または分岐状アルキニルまたはハロアルキニル;アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロゲン原子、ハロアルキル、ハロアルケニルまたはハロアルキニルで置換または非置換の炭素数3〜12のシクロアルキル;アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロゲン原子、ハロアルキル、ハロアルケニルまたはハロアルキニルで置換または非置換の炭素数6〜40のアリル;またはアルキル、アルケニル、アルキニル、ハロゲン原子、ハロアルキル、ハロアルケニルまたはハロアルキニルで置換または非置換の炭素数7〜15のアラルキルであり、前記極性基は、少なくとも1つ以上の酸素原子、窒素原子、リン原子、硫黄原子、ケイ素原子またはホウ素原子を含む非炭化水素極性基であって、−ROR、−OR、−OC(O)OR、−ROC(O)OR、−C(O)R、−RC(O)OR、−C(O)OR、−RC(O)R、−OC(O)R、−ROC(O)R、−(RO)−OR、−(OR−OR、−C(O)−O−C(O)R、−RC(O)−O−C(O)R、−SR、−RSR、−SSR、−RSSR、−S(=O)R、−RS(=O)R、−RC(=S)R、−RC(=S)SR、−RSO、−SO、−RN=C=S、−NCO、R−NCO、−CN、−RCN、−NNC(=S)R、−RNNC(=S)R、−NO、−RNO、
【0051】
【化6】

【0052】
から選ばれるものであり、ここでR及びR11は、炭素数1〜20の直鎖状または分岐状アルキレン、ハロアルキレン、アルケニレン、ハロアルケニレン;炭素数3〜20の直鎖状または分岐状アルキニレン、ハロアルキニレン;アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロゲン原子、ハロアルキル、ハロアルケニルまたはハロアルキニルで置換または非置換の炭素数3〜12のシクロアルキレン;アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ハロゲン原子、ハロアルキル基、ハロアルケニル基またはハロアルキニル基で置換または非置換の炭素数6〜40のアリーレン;またはアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ハロゲン原子、ハロアルキル基、ハロアルケニル基またはハロアルキニル基で置換または非置換の炭素数7〜15のアラルキレンであり、R、R12、R13及びR14は、それぞれ独立に、水素原子;ハロゲン原子;炭素数1〜20の直鎖状または分岐状アルキル、ハロアルキル、アルケニルまたはハロアルケニル;炭素数3〜20の直鎖状または分岐状アルキニルまたはハロアルキニル;アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロゲン原子、ハロアルキル、ハロアルケニルまたはハロアルキニルで置換または非置換の炭素数3〜12のシクロアルキル;アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロゲン原子、ハロアルキル、ハロアルケニルまたはハロアルキニルで置換または非置換の炭素数6〜40のアリル;アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロゲン原子、ハロアルキル、ハロアルケニルまたはハロアルキニルで置換または非置換の炭素数7〜15のアラルキル;またはアルコキシ、ハロアルコキシ、カルボニルオキシ、ハロカルボニルオキシであり、kは、1〜10の整数を表す。
【0053】
本発明のシクロオレフィンポリマーに使用される好ましい重合体はノルボルネン系(共)重合体である。
【0054】
ノルボルネン系(共)重合体としては、具体的にはノルボルネン系モノマーの開環重合体、ノルボルネン系モノマーと開環共重合可能なその他のモノマーとの開環共重合体、及びそれらの水素添加物、ノルボルネン系モノマーの付加重合体、ノルボルネン系モノマーと共重合可能なその他のモノマーとの付加型共重合体などが挙げられる。これらの中でも、透明性や透湿性の観点から、ノルボルネン系モノマーの付加(共)重合体及び開環(共)重合体水素添加物が最も好ましい。
【0055】
ノルボルネン系付加(共)重合体は、特開平10−7732号公報、特表2002−504184号公報、米国特許出願公開第2004/229157号明細書あるいは国際公開第2004/070463号パンフレット等に開示されている。ノルボルネン系多シクロ不飽和化合物同士を付加重合する事によって得られる。また、必要に応じ、ノルボルネン系多シクロ不飽和化合物と、エチレン、プロピレン、ブテン;ブタジエン、イソプレンのような共役ジエン;エチリデンノルボルネンのような非共役ジエン;アクリロニトリル、アクリル酸、メタアクリル酸、無水マレイン酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、マレイミド、酢酸ビニル、塩化ビニルなどの線状ジエン化合物とを付加重合することもできる。このノルボルネン系付加(共)重合体は、三井化学(株)よりアペルの商品名で発売されており、ガラス転移温度(Tg)の異なる例えばAPL8008T(Tg70℃)、APL6013T(Tg125℃)あるいはAPL6015T(Tg135℃)などのグレードがある。ポリプラスチックス(株)よりTOPAS8007(Tg80℃)、同6013(Tg140℃)、同6015(Tg160℃)などのペレットが発売されている。更に、Ferrania社よりAppear3000(Tg330℃)が発売されている。
【0056】
ノルボルネン系開環重合体水素化物は、特開平1−240517号、特開平7−196736号、特開昭60−26024号、特開昭62−19801号、特開2003−1159767号あるいは特開2004−309979号等の各公報に開示されているように、多シクロ不飽和化合物を付加重合あるいはメタセシス開環重合したのち水素添加することにより作られる。これらのノルボルネン系樹脂は、JSR(株)からアートン(Arton)GあるいはアートンFという商品名で発売されており、また日本ゼオン(株)からゼオノア(Zeonor)750R、1020R、1600、ゼオネックス(Zeonex)250あるいは280という商品名で市販されており、これらを使用することができる。
【0057】
本発明の透明フィルムは、特に単層のフィルムに限定されず、例えば、ポリマー材料を塗工などにより積層して製造してもよい。本発明の透明フィルムに使用するポリマー材料としては、前述の本発明の特性を満足するものであれば、特に制限されないが、例えば、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリエーテルケトン、ポリアミドイミドおよびポリエステルイミド等のポリマーを使用することによって、前記式(1)〜(4)、(7)、(8)を満たすフィルムが得られる。これらのポリマーは、単独でもよいし、2種類以上を使用してもよく、また、2種類以上のポリマーを使用する場合、混合したり共重合させてもよく、その割合は制限されない。前記ポリマー材料の中でも、主鎖の剛直性、線状性および対称性に優れ、大きな厚み方向の複屈折率が実現できるため、ポリイミドが好ましい。前記ポリイミドとしては、面内配向性が高く、有機溶剤に可溶なポリイミド、例えば、US5071997、US5480964、特表平8‐511812、特表平10‐508048、特表2000−511296号公報等に記載されたポリイミド等があげられる。
【0058】
偏光板は、偏光膜と、該偏光膜を挟持する一対の保護膜からなるが、該保護膜のいずれかに本発明の光学補償シートを用いることができる。
また、偏光板は、保護膜の少なくとも一方が下記式(1)、(2)を満たす光学補償シートからなり、該光学補償シートと偏光膜を挟んで相反する側に下記式(12)を満たす散乱フィルムを有することが好ましい。
(1)40≦Re(550)≦130
(2)100≦Rth(550)≦200
(12)ヘイズ値≧30%
(ここでヘイズ値は、散乱フィルムの法線方向に対して30%傾斜した方向での散乱フィルムのヘイズ値を示す。Re(λ)は、波長λnmの光に対する面内レターデーション値であり、Rth(λ)は、波長λnmの光に対する厚さ方向のレターデーション値である。)
<偏光膜>
偏光膜には、ヨウ素系偏光膜、二色性染料を用いる染料系偏光膜やポリエン系偏光膜があり、本発明にはいずれを使用してもよい。ヨウ素系偏光膜及び染料系偏光膜は、一般にポリビニルアルコール系フィルムを用いて製造する。
【0059】
<保護フィルム>
他方の表面に貼合される保護フィルムは、光透過性、具体的には可視光に対する光透過率が80%以上の、ポリマーフィルムが用いることが好ましい。保護フィルムとしては、セルロースアシレートフィルム、及びポリオレフィンを含むポリオレフィンフィルムが好ましい。セルロースアシレートフィルムの中でも、セルローストリアセテートフィルムが好ましい。また、ポリオレフィンフィルムの中でも、シクロポリオレフィンを含むポリノルボルネンフィルムが好ましい。
保護フィルムの厚さは、20〜500μmであることが好ましく、50〜200μmであることがさらに好ましい。
【0060】
<散乱フィルム>
本発明では、散乱フィルムを積層することにより、積層しない場合に比較して、特に黒と白の中間での視野角色味変化が改善される。具体的には、TNモードの液晶表示装置において中間に黄色味がかかった色味特性が発生することがあるが、散乱フィルムを偏光板の保護膜上に積層することにより、この黄色味が解消される。
[光散乱層]
光散乱層は、透光性樹脂と、透光性樹脂の屈折率とは異なる屈折率を有する透光性微粒子を含む層である。透光性粒子と透光性樹脂の屈折率差、透光性粒子の粒子径、透光性粒子の含有量により散乱光プロファイル及びヘイズ値を調整する。本発明では、透光性粒子は1種類以上使用すればよいが、2種類以上の粒径および/または材質の異なる透光性微粒子を用いることが、散乱光プロファイル及びヘイズ値を調整できる点で好ましい。
【0061】
透光性微粒子の屈折率と、光散乱層全体を構成する透光性樹脂の屈折率(後述する、層の屈折率調整のために無機微粒子等を透光性樹脂に添加した場合は、その光学的な平均屈折率)との差が0.03〜0.30であることが好ましい。屈折率差が0.03未満の場合は、両者の屈折率の差が小さすぎて、光散乱効果を得にくく、屈折率差が0.30よりも大きい場合は、光散乱性が大きすぎて、フィルム全体が白化する。屈折率差は、0.06〜0.25がより好ましく、0.09〜0.20が最も好ましい。
【0062】
本発明においては、視角特性改善ために適度な散乱性を得るために、透光性微粒子(第1の透光性微粒子)の粒子径は、0.5〜3.5μmが好ましく、0.5〜2.0μmであることがより好ましく、最も好ましくは0.6〜1.8μmである。散乱効果が大きければ大きい程、視角特性は向上する。しかし、表示品位という点で正面の明るさを維持するためには、出来る限り透過率を高めることも必要である。前記粒子径を0.5μm未満とした場合、散乱の効果が大きく、視角特性は向上するが、後方散乱が大きくなり明るさの減少が大きい。一方、3.5μmを超える場合は、散乱効果が小さくなり、視角特性の向上は小さくなっていく。
【0063】
また、散乱効果付与を主目的としない透光性微粒子(第2の透光性微粒子)をさらに添加することも好ましい。散乱フィルムの表面に凹凸を設け、映り込み防止機能を設ける等に用いられる。第2の透光性微粒子の粒子径は第1の透光性粒子の粒子径より大きいこと
が好ましく、2.5μm乃至10.0μmであることが更に好ましい。これにより、好適な表面散乱を付与することができる。良好な表示品位を達成するには、外光の写り込みを防止する事も必要である。表面のヘイズ値が低いほど外光による白ちゃけ感が小さくなり、明瞭なディスプレイ表示を得ることができるが、表面ヘイズ値が低すぎると、映り込みが大きくなるため、最外層に光散乱層の屈折率よりも低い屈折率の低屈折率層を設け、低反射率化することも好ましい。表面ヘイズ値を制御するには、第2の透光性微粒子により樹脂層表面に適度な凹凸を設けることが好ましいが、この限りではない。粒子径を2.5μm以下にした場合、所望の表面凹凸を設ける場合に、層の厚みを薄くせざるを得ず、膜硬度の点で好ましくなく、一方、10μm以上にした場合、粒子1個1個の重量が大きく
なるため、塗布液中の粒子沈降安定性の点で必ずしも好ましくない。従って、第2の透光性微粒子の粒子径は、2.7〜9.0μmが好ましく、3.0〜8.0μmが最も好ましい。
【0064】
第2の透光性粒子の屈折率は光散乱層全体を構成する透光性樹脂の屈折率との差が第1
の透光性粒子より小さいことが好ましい。
【0065】
表面凸凹は、表面粗さRaが0.5μm以下であることが好ましく、0.3μm以下であることが更に好ましく、最も好ましくは、0.2μm以下である。表面粗さRa(中心線平均粗さ)の測定は、JIS−B0601に準じて行うことができる。
【0066】
光散乱層のヘイズ値、特に透過光の散乱に寄与が大きい内部散乱へイズ(内部ヘイズ)は、視角特性改良効果と強い相関関係がある。バックライトから出射された光が視認側の偏光板表面に設置された光散乱層で散乱されることにより、視角特性が改善される。しかし、散乱されすぎると正面輝度が減少するため、光散乱層の内部ヘイズは、40%以上90%以下が好ましく、45%以上80%以下がより好ましく、45%以上70%以下が特に好ましい。内部散乱へイズを上昇させる方法として、散乱性付与を目的とする透光性微粒子の塗布量を上げる、同一塗布量の場合は粒子径を下げる、さらには、粒子と樹脂の屈折率差を大きくするなどの方法がある。
【0067】
本発明における、表示品位を上げる(視角特性改善)ためには、ゴニオフォトメータの散乱光プロファイルの出射角0°の光強度に対する30°の散乱光強度を特定の範囲内にするのが特に好ましい。ゴニオフォトメータの散乱光プロファイルの出射角0°の光強度に対する30°の散乱光強度は、0.05〜0.3%であることが好ましく、0.05〜0.2%であることがより好ましく、0.05〜0.15%であることが特に好ましい。この範囲にすることで、正面輝度の低下が少なく必要な視角特性改善効果を得ることができる。この散乱光プロファイルは上記の内部ヘイズの好ましい範囲と同時に満たすことが更に好ましい。
【0068】
本発明の光散乱フィルムの表面散乱起因のヘイズ(表面ヘイズ)は、映り込み低減と白茶け感低減の両立の観点から、0.1〜30%が好ましく、10%以下が好ましく、5%以下が特に好ましい。外光による白茶け感低減を重視するのであれば、4%以下が好ましく、2%以下が更に好ましい。表面ヘイズを低減すると映り込みが大きくなるため、低屈折率層を設け、5度入射における積分反射率の450nmから650nmまでの波長領域での平均値を3.0%以下にすることが好ましく、2.0%以下がより好ましく、最も好ましくは1.0%以下である。本発明における、表示品位を上げる(視角特性改善)ことに関しては、前述の内部散乱性の調整が必要であるが、同時に表面ヘイズおよび/または反射率を好適な範囲にすることで、明室下でのコントラストが改善され、最も好ましい効果を発現できる。
【0069】
前記透光性微粒子は、単分散の有機微粒子であっても、無機微粒子であってもよい。粒径にばらつきがないほど、散乱特性にばらつきが少なくなり、ヘイズの設計が容易となる。前記透光性微粒子としては、プラスチックビーズが好適であり、特に透明度が高く、透光性樹脂との屈折率差が前述のような数値になるものが好ましい。有機微粒子としては、ポリメチルメタクリレートビーズ(屈折率1.49)、アクリル−スチレン共重合体ビーズ(屈折率1.52〜1.57)、メラミンビーズ(屈折率1.57〜1.65)、ポリカーボネートビーズ(屈折率1.57)、スチレンビーズ(屈折率1.60)、架橋ポリスチレンビーズ(屈折率1.61)、ポリ塩化ビニルビーズ(屈折率1.60)、ベンゾグアナミン−メラミンホルムアルデヒドビーズ(屈折率1.68)等が用いられる。無機微粒子としては、シリカビーズ(屈折率1.44〜1.46)、アルミナビーズ(屈折率1.63)等が用いられる。透光性微粒子は、透光性樹脂100質量部に対して5〜30質量部含有させるとよい。
【0070】
上記のような透光性微粒子の場合には、樹脂組成物(透光性樹脂)中で透光性微粒子が沈降し易いので、沈降防止のためにシリカ等の無機フィラーを添加してもよい。なお、無機フィラーは添加量が増す程、透光性微粒子の沈降防止に有効であるが、塗膜の透明性に悪影響を与える。従って、好ましくは、粒径0.5μm以下の無機フィラーを、透光性樹脂に対して塗膜の透明性を損なわない程度に、0.1質量%未満程度含有させるとよい。
【0071】
透光性樹脂としては、主として紫外線・電子線によって硬化する樹脂、即ち、電離放射線硬化型樹脂、電離放射線硬化型樹脂に熱可塑性樹脂と溶剤を混合したもの、熱硬化型樹脂の3種類が使用される。ハードコート性を付与するためには、電離放射線硬化型樹脂が主成分であることが好ましい。光散乱層の厚さは通常1.5〜30μm、好ましくは3〜20μmとすると良い。光散乱層がハードコート層としての機能を兼ねる場合が一般的であるが、光散乱層の厚さが1.5μmよりも薄くなると、ハードコート性が十分でなくなる方向であり、一方、30μmよりも厚くなると、カールや脆性の点で好ましくない方向である。透光性樹脂の屈折率は、低屈折率層を設ける場合は、好ましくは1.46〜2.00であり、より好ましくは1.48〜1.90であり、更に好ましくは1.50〜1.80である。なお、透光性樹脂の屈折率は、透光性微粒子を含まずに測定した光散乱層平均の値である。光散乱層の屈折率が小さすぎると反射防止性が低下する。大きすぎると、反射光の色味が強くなり、好ましくない方向である。この点から上記範囲が好ましい。光散乱層の屈折率の設定は、反射防止性と反射光色味の点から所望の値に設定することができる。
【0072】
該透光性樹脂に用いるバインダーは、飽和炭化水素またはポリエーテルを主鎖として有するポリマーであることが好ましく、飽和炭化水素を主鎖として有するポリマーであることがさらに好ましい。また、バインダーは架橋していることが好ましい。飽和炭化水素を主鎖として有するポリマーは、エチレン性不飽和モノマーの重合反応により得ることが好ましい。架橋しているバインダーを得るためには、分子内に二個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーを用いることが好ましい。
【0073】
二個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーの例には、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル(例、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ジクロヘキサンジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート)、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,3,5−シクロヘキサントリオールトリメタクリレート、ポリウレタンポリアクリレート、ポリエステルポリアクリレート)、ビニルベンゼンの誘導体(例、1,4−ジビニルベンゼン、4−ビニル安息香酸−2−アクリロイルエチルエステル、1,4−ジビニルシクロヘキサノン)、ビニルスルホン(例、ジビニルスルホン)、アクリルアミド(例、メチレンビスアクリルアミド)およびメタクリルアミドが含まれる。これらのなかでも、少なくとも3つの官能基を有するアクリレートもしくはメタアクリレートモノマー、さらには少なくとも5つの官能基を有するアクリレートモノマーが、膜硬度、即ち耐傷性の観点で好ましい。ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物が市販されており、特に好ましく用いられる。
【0074】
これらのエチレン性不飽和基を有するモノマーは、各種の重合開始剤その他添加剤と共に溶剤に溶解、塗布、乾燥後、電離放射線または熱による重合反応により硬化することができる。
【0075】
二個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーの代わりまたはそれに加えて、架橋性基の反応により、架橋構造をバインダーに導入してもよい。架橋性官能基の例には、イソシアナート基、エポキシ基、アジリジン基、オキサゾリン基、アルデヒド基、カルボニル基、ヒドラジン基、カルボキシル基、メチロール基および活性メチレン基が含まれる。ビニルスルホン酸、酸無水物、シアノアクリレート誘導体、メラミン、エーテル化メチロール、エステルおよびウレタン、テトラメトキシシランのような金属アルコキシドも、架橋構造を導入するためのモノマーとして利用できる。ブロックイソシアナート基のように、分解反応の結果として架橋性を示す官能基を用いてもよい。すなわち、本発明において架橋性官能基は、すぐには反応を示すものではなくとも、分解した結果反応性を示すものであってもよい。これら架橋性官能基を有するバインダーは塗布後、加熱することによって架橋構造を形成することができる。
【0076】
透光性樹脂は、上記バインダポリマーに加えて、これに高屈折率を有するモノマーおよび/または高屈折率を有する金属酸化物超微粒子等から形成されることが好ましい。高屈折率モノマーの例には、ビス(4−メタクリロイルチオフェニル)スルフィド、ビニルナフタレン、ビニルフェニルスルフィド、4−メタクリロキシフェニル−4‘−メトキシフェニルチオエーテル等が含まれる。高屈折率を有する金属酸化物超微粒子の例には、ジルコニウム、チタン、アルミニウム、インジウム、亜鉛、錫、アンチモンのうちより選ばれる少なくとも一つの酸化物からなる粒径100nm以下、好ましくは50nm以下の微粒子を含有することが好ましい。高屈折率を有する金属酸化物超微粒子としてはAl、Zr、Zn、Ti、InおよびSnから選ばれる少なくとも1種の金属の酸化物超微粒子が好ましく、具体例としては、ZrO2、TiO2、Al23、In23、ZnO、SnO2、Sb23、ITO等が挙げられる。これらの中でも、特にZrO2が好ましく用いられる。高屈折率のモノマーや金属酸化物超微粒子の添加量は、透光性樹脂の全質量の10〜90質量%であることが好ましく、20〜80質量%であると更に好ましい。
【0077】
上記のような電離放射線硬化型樹脂組成物の硬化方法としては、前記電離放射線硬化型樹脂組成物の通常の硬化方法、即ち、電子線又は紫外線の照射によって硬化することができる。
【0078】
[光開始剤]
光ラジカル重合開始剤としては、アセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類、アゾ化合物、過酸化物類(特開2001−139663号等)、2,3−ジアルキルジオン化合物類、ジスルフィド化合物類、フルオロアミン化合物類、芳香族スルホニウム類、ロフィンダイマー類、オニウム塩類、ボレート塩類、活性エステル類、活性ハロゲン類、無機錯体、クマリン類などが挙げられる。
【0079】
これらの開始剤は単独でも混合して用いても良い。
「最新UV硬化技術」,(株)技術情報協会,1991年,p.159、及び、「紫外線硬化システム」 加藤清視著、平成元年、総合技術センター発行、p.65〜148にも種々の例が記載されており本発明に有用である。
【0080】
市販の光ラジカル重合開始剤としては、日本化薬(株)製のKAYACURE(DETX−S,BP−100,BDMK,CTX,BMS,2−EAQ,ABQ,CPTX,EPD,ITX,QTX,BTC,MCAなど)、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製のイルガキュア(127,184,500,651, 819,907,369,1173,1870,2959,4265,4263など)、サートマー社製のEsacure(KIP100F,KB1,EB3,BP,X33,KT046,KT37,KIP150,TZT)等およびそれらの組み合わせが好ましい例として挙げられる。
【0081】
光重合開始剤は、多官能モノマー100質量部に対して、0.1〜15質量部の範囲で使用することが好ましく、より好ましくは1〜10質量部の範囲である。
【0082】
[低屈折率層]
本発明では、前記に記載した範囲の光散乱層を少なくとも1層設けることで、本発明の目的を達成することができるが、さらに最外層にこれに隣接する層の屈折率よりも低い屈折率の層を適切な膜厚で塗設することにより、反射防止性能が得られ、外光の映り込みが抑えられ、明室環境下でのコントラストを上げることができるため、画像表示装置としてはより好ましいものとなる。
【0083】
低屈折率層を形成する素材について以下に説明する。
本発明の低屈折率層は、含フッ素化合物を主成分としてなる硬化性組成物、又は分子内に複数個の結合性基を有するモノマーと低屈折率の粒子を含有する硬化組成物を塗布硬化して、屈折率が1.20〜1.50の範囲に調節したものである。1.25〜1.45が好ましく。1.30〜1.40が更に好ましい。
好ましい硬化物組成の態様としては、(1)架橋性若しくは重合性の官能基を有する含フッ素ポリマーを含有する組成物、(2)含フッ素のオルガノシラン材料の加水分解縮合物を主成分とする組成物、(3)2個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーと中空構造を有する無機微粒子を含有する組成物、などが挙げられる。
【0084】
[透明基材]
本発明の光散乱層は透明基材上に塗設されることが好ましい。透明基材の素材としては、透明樹脂フィルム、透明樹脂板、透明樹脂シートや透明ガラスがある。透明樹脂フィルムとしては、セルロースエステル(例、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、代表的には富士フイルム社製TAC−TD80U,TD80UFなど)、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエステル(例、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート)、ポリスチレン、ポリオレフィン、ノルボルネン系樹脂(アートン:商品名、JSR社製)、非晶質ポリオレフィン(ゼオネックス:商品名、日本ゼオン社製)、などが挙げられる。このうちトリアセチルセルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、が好ましく、特にトリアセチルセルロースが好ましい。支持体の厚みは、薄手化ニーズへの対応と、ハンドリング(搬送適性)より、20〜200μmが好適であり、好ましくは30〜100μmであり、さらに好ましくは35〜90μm、最も好ましくは40〜80μmである。
【0085】
<散乱フィルム(異方性散乱フィルム)>
散乱フィルムの一態様を以下に説明する。散乱フィルムは異方性散乱フィルムであってもよい。
光学補償偏光板の形成に用いる散乱異方性フィルムは、方位角により散乱角が相違するものであり、これを用いることで斜視での黒浮きを抑制できてコントラストを向上させることができ、下方向等の補償不足を生じやすい方向での階調反転を生じない角度を拡大することができる。また複屈折層に基づく色付きも低減することができる。散乱異方性フィルムは、例えばルミスティ(商品名、住友化学社製)やスペックルを記録したフィルムからなるスペックルグラムとして得ることができ、また複屈折特性が相違する微小領域を分散含有する透光性樹脂からなるフィルムとして得ることができる。
【0086】
以下代表的な異方性散乱フィルムの態様について説明する。特に好ましくは第1の態様である。
【0087】
[好ましい第1の態様]
異方性光散乱フィルムとしては、フィルム内部に屈折率の異なる部分が不規則な形状・厚さで分布することにより、屈折率の高低からなる濃淡模様が形成されており、かつその屈折率の異なる部分が、フィルムの厚さ方向に対して傾斜して層状に分布している構造を有しているものが好適に用いられる。上記異方性光散乱フィルムは、上記傾斜方向に沿った角度で入射する光に対しては、光散乱が生じ、上記傾斜方向とは垂直な角度で入射する光に対しては、単なる透明フィルムとして機能するような、光散乱性に入射角度選択性を持つ。前記屈折率の異なる部分が、層状に傾斜している方向は、屈折率の分布が一様であることが好ましい。また屈折率の異なる部分が、層状に傾斜している方向はは、屈折率の分布が不規則であることが好ましい。また屈折率の異なる部分が、それぞれ大きさは不規則であり、それぞれの形状が、縦長(あるいは、横長)となっており、それぞれの部分による光散乱特性が、横長(あるいは、縦長)となることで、光散乱特性に異方性を持つことが好ましい。かかる異方性光散乱フィルムは、特開2000−171619号公報に開示されている。
【0088】
前述の通り、異方性光散乱フィルムに入射した光は、入射角度によって散乱光として透過する。図1は、異方性光散乱フィルム(2)への入射光(r1)が、散乱光として透過した概念図である。透過光(r2)は、散乱光の最大散乱方向(a)を示す。θは、最大散乱方向を示す透過光(r2)と異方性光散乱フィルム(2)の法線方向(Z軸)のなす最大散乱角度である。最大散乱角度は20°〜50°の範囲にあることが好ましい。
【0089】
異方性光散乱フィルムに用いる材料は、上記条件に当てはまるように、屈折率差が0.001から0.2の範囲で適宜選択し、同様にフィルム厚みも前記屈折率差に応じて1000μmから1μmの範囲で適宜選択することができる。屈折率の異なる部分の大きさは、光散乱を生じさせるためにランダムで規則性はないが、必要な散乱性を持たせるために、その平均の大きさは直径で0.1μmから300μmの範囲内で適宜選択される。
【0090】
異方性光散乱フィルムは、たとえば、ランダムマスクパターンを利用して作製することができる。すなわち、UV光源ら出た紫外光をコリメート光学系により平行光とし、マスク原版を照射する。マスク原版は、ガラス基板とランダムパターンであるクロムパターンとからなる。マスク原版のUV照射側とは反対の面には感光材料を密着して配置し、マスク原版のパターンを感光材料に露光照射する。この際、UV平行光とマスク原版は所定角度αだけ傾いて配置されているため、パターン露光は感光材料中で、所定角度傾いてなされることになる。この角度が、光散乱フィルム中の屈折率の異なる部分の傾斜角度(すなわち、入射角度依存性の最大散乱角度θ)に相当することになる。使用する感光材料は、UV光の露光部と未露光部との屈折率の変化の形態で記録できる感光材料であり、記録しようとする濃淡模様より高い解像力を持ち、その厚みの方向にもパターンを記録できるような材料である。このような記録材料としては、体積型ホログラム用感光材料が利用でき、アグファ社製ホログラム用銀塩感光材料8E56乾板,デュポン社製ホログラム用感光材料HRFフィルムまたは重クロム酸ゼラチン,ポラロイド社製DMP−128記録材料などがあげられる。またランダムパターンを持つマスク原版は、計算機を用いた乱数計算から作製した白黒パターンデータを、所謂フォトリソグラフィーの手法によりガラス基板上の金属クロムパターンとしてエッチングしたものを用いることができる。もちろんマスク原版の作成方法としては、上記方式に限定されるものではなく、リス乾板を使った写真手法などにより作製しても同様なマスクを作製できる。
【0091】
また異方性光散乱フィルムは、スペックルパターンを利用して作製することができる。すなわち、レーザー光源から出たレーザー光ですりガラスを照射する。すりガラスのレーザー照射側とは反対の面には、所定距離をおいて感光材料を配置し、すりガラスで透過散乱したレーザー光が作り出す複雑な干渉パターンであるスペックルパターンが感光材料に露光照射される。この際、すりガラスと感光材料は所定角度αだけ傾いて配置されているため、スペックルパターンは感光材料中で、所定角度傾いて露光されることになる。この角度が、光散乱フィルム中の屈折率の異なる部分の傾き(すなわち、入射角度依存性の最大散乱角度θ)に相当することになる。記録に使用するレーザ光源は、アルゴンイオンレーザーの514.5nm,488nmまたは457.9nmの波長のうち、感光材料の感度に応じて適宜選択して使用することができる。また、アルゴンイオンレーザー以外でもコヒーレント性の良いレーザー光源であれば使用可能であり、例えばヘリウムネオンレーザーやクリプトンイオンレーザーなどが使用できる。
【0092】
[好ましい第2の態様]
本発明において、散乱異方性フィルムの形成は例えば透光性樹脂の1種又は2種以上と、微小領域を形成するための前記透光性樹脂とは複屈折特性が相違する例えばポリマー類や液晶類等の透明性に優れる適宜な材料の1種又は2種以上を混合して、透光性樹脂中に当該材料を微小領域の状態で分散含有するフィルムを形成した後、必要に応じ延伸処理等による適宜な配向処理で複屈折性が相違する領域を形成することもできる。
【0093】
前記の透光性樹脂としては、適宜な透明性のものを用いることができ、特に限定はない。ちなみにその例としてはポリエステル系樹脂、ポリスチレンやアクリロニトリル・スチレン共重合体(ASポリマー類)の如きスチレン系樹脂、ポリエチレンやポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体やシクロ系ないしノルボルネン構造を有するポリオレフィンの如きオレフィン系樹脂やカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂や塩化ビニル系樹脂、セルロース系樹脂やアミド系樹脂、イミド系樹脂やスルホン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂やポリエーテルエーテルケトン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂やビニルアルコール系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂やビニルブチラール系樹脂、アリレート系樹脂やポリオキシメチレン系樹脂、シリコーン系樹脂やウレタン系樹脂、それらのブレンド物、あるいはフェノール系やメラミン系、アクリル系やウレタン系、ウレタンアクリル系やエポキシ系やシリコーン系等の熱硬化型ないし紫外線硬化型のポリマーなどがあげられる。
【0094】
従って透光性樹脂は、成形歪み等による配向複屈折を生じにくいものであってもよいし(等方性ポリマー)、生じやすいもであってもよい(異方性ポリマー)。可視光域での透明性に優れる樹脂が好ましく用いうる。
【実施例】
【0095】
(実施例1)
<透明フィルム(サンプル1)の作製>
下記表の成分を密閉容器に投入し、撹拌しながら溶解してドープ液を作製した。
【0096】
【表1】

【0097】
次いで、ベルト流延装置を用い、ドープ液を33℃、1500mm幅のステンレスバンド支持体上に均一に流延した。ステンレスバンドの温度は25℃に制御した。ステンレスバンド支持体上で、流延(キャスト)したフィルム中の残留溶媒量が25%になるまで溶媒を蒸発させ、次いで剥離張力127N/mで、ステンレスバンド支持体から剥離した。剥離したセルローストリアセテートフィルムは、乾燥ゾーンを多数のロールで搬送させながら乾燥させ、同時に搬送方向に対して30%延伸することで膜厚40μmのセルローストリアセテートフィルムのサンプル1を得た。
【0098】
<透明フィルム(サンプル2)の作製>
ゼオノア1430R(ノルボルネン系開環重合体水素化物、日本ゼオン社製、Tg138℃)のペレットを単軸押出機(三菱重工社製:シリンダー内径が90mm、スクリューのL/Dが25)で温度240℃で溶融し、厚さ100μmの透明樹脂を得た。次いでゾーン加熱の縦一軸延伸装置とテンター延伸(横一軸延伸)装置に順次送り込んで逐次二軸延伸を行い、厚さ80μmのサンプル2を得た。延伸温度は縦延伸、横延伸のいずれも150℃、延伸倍率は縦延伸が1.15倍、横延伸は1.40倍とした。
【0099】
<透明フィルム(サンプル3)の作製>
下記表の成分を密閉容器に投入し、撹拌しながら溶解してドープ液を作製した。
【0100】
【表2】

【0101】
次いで、得られたドープを、ガラス板上に流延し、室温で1分間乾燥後、70℃で6分間乾燥させた。乾燥後の溶剤残留量は20質量%であった。得られたセルロースアセテートフィルムをガラス板から剥離し、100℃で10分間、140℃で20分間乾燥した。乾燥したフィルムを、流延方向とは直交する方向に155℃の温度条件下で30%延伸し、膜厚50μmのセルローストリアセテートフィルムのサンプル3を得た。
【0102】
(レターデーション上昇剤A)
【化7】

【0103】
<透明フィルム(サンプル4)の作製>
サンプル1と同様の条件でドープ液を作製しベルト流延装置を用いて流延した。流延したフィルムを支持体から剥離し、乾燥ゾーンを多数のロールで搬送させながら乾燥させ、同時に搬送方向に対して65%延伸することで膜厚40μmのセルローストリアセテートフィルムのサンプル4を得た。
【0104】
<透明フィルム(サンプル5)の作製>
下記表の成分を密閉容器に投入し、撹拌しながら溶解してドープ液を作製した。
【0105】
【表3】

【0106】
次いで、得られたドープを、ガラス板上に流延し、室温で1分間乾燥後、70℃で6分間乾燥させた。乾燥後の溶剤残留量は20質量%であった。得られたセルロースアセテートフィルムをガラス板から剥離し、100℃で10分間、140℃で20分間乾燥した。乾燥したフィルムを、流延方向とは直交する方向に155℃の温度条件下で20%延伸し、膜厚80μmのセルローストリアセテートフィルムのサンプル5を得た。
【0107】
(レターデーション上昇剤B)
【化8】

【0108】
<透明フィルム(サンプル6)の作製>
特開2006−188671号公報の実施例に記載の樹脂P1を塩化メチレンキャスト法により厚さ150μm、残留溶剤量0.2%以下の無色透明なキャストフィルムを得た。このフィルムを195℃に加熱し、延伸速度220%/分で125%横延伸した後、冷却して取り出し厚さ120μmのサンプル6を作製した。
【0109】
<透明フィルム(サンプル7)の作製>
サンプル3と同様の条件で作製し、ガラス板から剥離したフィルムを185℃で45%延伸し、膜厚45μmのセルローストリアセテートフィルムのサンプル7を得た。
【0110】
<透明フィルム(サンプル8)の作製>
サンプル2と同様の条件で作製した厚さ110μmの透明樹脂を延伸温度150℃にて縦方向に1.28倍、横延伸は1.40倍延伸し厚さ80μmのサンプル8を得た。
【0111】
<透明フィルム(サンプル9)の作製>
下記構造のポリイミド(重量平均分子量(Mw)120,000)をメチルエチルケトンに溶解して15%のポリイミド溶液を作製した。作製したポリイミド溶液を、セルロースアシレートフィルム(TAC−TD80U 富士フイルム(株)製)上に塗工し、50℃で4分乾燥させた。次に、得られた積層フィルムを180℃で30%横延伸し、厚さ85μmのサンプル9を得た。
【0112】
(ポリイミド)
【0113】
【化9】

【0114】
<透明フィルム(サンプル10)の作製>
セルロースアシレートフィルム(TAC−TD80U 富士フイルム(株)製)をサンプル10とした。
【0115】
<透明フィルム(サンプル11)の作製>
サンプル2と同様の条件で作製した厚さ110μmの透明樹脂を延伸温度150℃にて横延伸は1.40倍延伸し厚さ85μmのサンプル11を得た。
【0116】
作製した透明フィルムの光学特性を以下表に示す。
【0117】
【表4】

【0118】
<偏光板の作製>
まず、延伸したポリビニルアルコールフィルムにヨウ素を吸着させて偏光膜を作製した。
その後、上記サンプル1〜11を、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、前記偏光膜の一方の面に貼り付け、前記偏光膜の他方の面には、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、鹸化処理を行った市販のセルローストリアセテートフィルム(フジタックTD80UF、富士フイルム(株)製)を貼り付けた。
【0119】
<TNモード液晶表示装置の作製>
TN型液晶セルを使用した液晶表示装置(RDT197S MITSUBISHI社製)に設けられている一対の偏光板(上側偏光板、及び下側偏光板)を剥がし、代わりに作製した上記偏光板1〜11の各々を、透明フィルムが液晶セル側となるように粘着剤を介して、バックライト側に貼り付け、バックライト側と同じ偏光板1〜11の各々を透明フィルムが液晶セル側となるように観察者側に一枚ずつ貼り付けた。このとき、バックライト側の偏光板(上側偏光板)の透過軸と、観察者側の偏光板(下側偏光板)の透過軸とが直交するように各偏光板を配置した。
【0120】
<表示性能評価>
次に、25℃60%RHに制御された部屋で1週間放置した前記液晶表示装置を測定器(EZ−Contrast160D、ELDIM社製)を用いて、黒表示(L0)から白表示(L7)までの8段階で色味、輝度、コントラストを評価した。
なお、下表においてΔCu’v’は、正面から60°視角を傾けたときのu’v’空間上での距離を示す。(u’v’:CIELAB空間における色座標)
ΔCu’v’=((u’(正面)-u’(60°))+(v’(正面)-v’(60°)
0.5
コントラストはコントラスト比(白表示時の透過率/黒表示時の透過率)から算出した値である。なお、透過率は上記測定器(EZ−Contrast160D、ELDIM社製)で測定した。
【0121】
<評価基準>
[ΔCu’v’の評価基準]
◎ ΔCu’v’が、0.02未満
〇 ΔCu’v’が、0.02〜0.04未満
△ ΔCu’v’が、0.04〜0.06未満
× ΔCu’v’が、0.06以上
【0122】
[コントラスト視野角(コントラスト比が10以上で黒側の階調反転のない極角範囲)の評価基準]
◎ 上下左右で極角80°以上
〇 上下左右の内、3方向で極角80°以上
△ 上下左右の内、2方向で極角80°以上
× 上下左右の内、3方向で極角80°未満
【0123】
[正面コントラストの評価基準]
◎ 800以上
〇 700以上
△ 600以上
× 599以下
【0124】
【表5】

【0125】
本発明の光学特性を示す透明フィルムを貼り合わせた偏光板を用いることでコントラスト(正面、視野角)と色味変化を両立した液晶表示装置を得ることができた。
【0126】
(実施例2)
<散乱フィルム1の作製>
(光散乱層用塗布液の調製)
下記塗布液1を孔径30μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して散乱層用塗布液1〜2を調製した。
【0127】
【表6】

【0128】
それぞれ使用した化合物を以下に示す。
・DPHA:ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物[日本化薬(株)製]
・PETA:ペンタエリスリトールトリアクリレート[日本化薬(株)製]
・イルガキュア127:重合開始剤[チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製]
・イルガキュア184:重合開始剤[チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製]
・スチレン粒子(SX−500):5μm架橋PSt粒子(綜研化学(株)製)
・ベンゾグアナミン粒子(エポスターMS):1.5μmベンゾグアナミン・ホルムアルデヒド縮合物(日本触媒)
【0129】
(低屈折率用塗布液の調整)
(ゾル液の調製)
攪拌機、還流冷却器を備えた反応器、メチルエチルケトン120質量部、アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(KBM−5103、信越化学工業(株)製)100質量部、ジイソプロポキシアルミニウムエチルアセトアセテート3質量部を加え混合したのち、イオン交換水30質量部を加え、60℃で4時間反応させたのち、室温まで冷却し、ゾル液を得た。質量平均分子量は1600であり、オリゴマー成分以上の成分のうち、分子量が1000〜20000の成分は100%であった。また、ガスクロマトグラフィー分析から、原料のアクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランは全く残存していなかった。
【0130】
(分散液Aの調製)
中空シリカ微粒子ゾル(イソプロピルアルコールシリカゾル、平均粒子径60nm、シェル厚み10nm、シリカ濃度20質量%、シリカ粒子の屈折率1.31、特開2002−79616号公報の調製例4に準じサイズを変更して作成)500gに、アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製)30g、およびジイソプロポキシアルミニウムエチルアセテートを1.5g加え混合した後に、イオン交換水を9gを加えた。60℃で8時間反応させた後に室温まで冷却し、アセチルアセトン1.8gを添加した。この分散液500gにほぼシリカの含量一定となるようにシクロヘキサノンを添加しながら、減圧蒸留による溶媒置換を行った。分散液に異物の発生はなく、固形分濃度をシクロヘキサノンで調整し20質量%にしたときの粘度は25℃で5mPa・sであった。得られた分散液Aのイソプロピルアルコールの残存量をガスクロマトグラフィーで分析したところ、1.5%であった。
【0131】
(低屈折率層用塗布液の調製)
エチレン性不飽和基含有含フッ素ポリマー(特開2005−89536号公報の製造例3に記載のフッ素ポリマー(A−1))固形分として41.0gをメチルイソブチルケトン500gに溶解し、更に、分散液Aを260質量部(シリカ+表面処理剤固形分として52.0質量部)、DPHA 5.0質量部、イルガキュア127(光重合開始剤、チバスペシャルティーケミカルス製)2.0質量部を添加した。塗布液全体の固形分濃度が6質量%になるようにメチルエチルケトンで希釈して低屈折率用塗布液を調製した。この塗布液により形成される層の屈折率は、1.36であった。
【0132】
(光散乱層の塗設)
トリアセチルセルロースフィルム(TAC−TD80U、富士フイルム(株)製)をロール形態で巻き出して、スロットルダイを有するコーターを用いて、光散乱層用塗布液1を直接押し出して塗布した。搬送速度30m/分の条件で塗布し、30℃で15秒間、90℃で20秒間乾燥の後、さらに窒素パージ下酸素濃度0.2%で160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照射量90mJ/cm2の紫外線を照射して塗布層を硬化させ、厚さ8.0μmの光散乱層を形成し、巻き取り光散乱層を作製した。
【0133】
(反射防止フィルムの塗設))
上記の様にして得られた光散乱層の上に、スロットルダイを有するコーターを用いて、低屈折率層用塗布液をバックアップロール上のハードコート層を塗布してある面上に直接押し出して塗布し、厚さ100nmの低屈折率層を形成し巻き取り反射防止膜を作製した。乾燥・硬化条件を以下に示す。
乾燥:90℃で60秒で乾燥した。
硬化:窒素パージにより酸素濃度0.1%の雰囲気下で空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照射量400mJ/cm2の紫外線を照射した。
【0134】
<散乱フィルム1付き偏光板の作製>
まず、延伸したポリビニルアルコールフィルムにヨウ素を吸着させて偏光膜を作製した。その後、前記散乱フィルム1に鹸化処理を行い、ビニルアルコール系接着剤を用いてセルローストリアセテートフィルムが偏光膜側となるように偏光膜の片側に貼り付けた。さらに前記偏光膜の他方の面には実施例1作製したサンプル1〜11を、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、前記偏光膜に貼り付け、散乱フィルム1付き偏光板サンプル1−1〜1−11を作製した。
【0135】
<散乱フィルム2>
凸版印刷株式会社製の異方性光散乱フィルム(厚み25μm、商品名SDFフィルム(ディフューザー))を用いた。
【0136】
<散乱フィルム2付き偏光板の作製>
実施例1で作製した偏光板サンプル1〜11の片側のセルローストリアセテートフィルム上に散乱フィルム2をアクリル系粘着剤層を介して積層し散乱フィルム付き偏光板サンプル2−1〜2−11を作製した。散乱フィルム2はその散乱強度が最大となる方位角が液晶セルの下方向にくるように偏光板に貼り合わせた。
【0137】
<散乱フィルム3>
異方性散乱素子であるルミスティフィルム(住友化学製)を用いた。
【0138】
<散乱フィルム3付き偏光板の作製>
散乱フィルム2と同様の手法で偏光板サンプル1〜11に散乱フィルム3を貼りあわせ散乱フィルム付き偏光板サンプル3−1〜3−11を作製した。
【0139】
(散乱フィルムの評価)
得られた反射防止フィルムについて、ヘイズの評価を行った。
【0140】
散乱フィルム1〜3をJIS−K−7105に準じヘイズメーター(MODEL 1001DP、日本電色工業(株)製)を用いて、フィルム法線方向に対して30°傾斜した方向のヘイズを測定した。その結果、散乱フィルム1〜3はすべて30%以上の値を示した。
【0141】
<TNモード液晶表示装置の作製>
実施例1と同様の方法で作製した。
【0142】
<表示性能評価>
実施例1と同様の評価を行った。階調反転角度は下方向におけるL1/L2の輝度が逆
転する角度とした。
【0143】
<評価基準>
実施例1と同様の基準とした。階調反転の評価基準は以下の通りとした。
[階調反転の評価基準]
◎ 40°以上
〇 30°以上40°未満
△ 20°以上30°未満
× 10°以上20°未満
【0144】
【表7】

【0145】
表7に示したように、表面フィルムを貼り合わせた液晶表示装置の表示性能は、表面フィルムを有しないものと比較して色味変化、コントラスト視野角、階調反転のいずれかにおいて改良効果が見られる。
【図面の簡単な説明】
【0146】
【図1】異方性光散乱フィルム(2)への入射光(r1)が、散乱光として透過した概念図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1層以上の透明フィルムからなり、下記式(1)、(2)を満たすTNモード液晶表示装置用光学補償シート。
(1)40≦Re(550)≦130
(2)100≦Rth(550)≦200
(ただし、上記式中、Re(λ)は、波長λnmの光に対する面内レターデーション値であり、Rth(λ)は、波長λnmの光に対する厚さ方向のレターデーション値である。)
【請求項2】
下記式(3)、(4)を満たす請求項1に記載の光学補償シート。
(3)70≦Re(550)≦110
(4)100≦Rth(550)≦150
【請求項3】
下記式(5)、(6)を満たす請求項1または2に記載の光学補償シート。
(5)Re(630)−Re(450)>0
(6)Rth(630)−Rth(450)>0
【請求項4】
下記式(7)、(8)を満たす請求項1または2に記載の光学補償シート。
(7)Re(630)−Re(450)≦0
(8)Rth(630)−Rth(450)≦0
【請求項5】
下記式(9)〜(11)の置換度の条件式を満足したセルロースアシレートを含む請求項1〜4のいずれかに記載の光学補償シート。
(9)2.0≦X+Y≦3.0
(10)0≦X≦2.0
(11)0≦Y≦1.5
(式(9)〜(11)中、Xはアセチル基の置換度を示し、Yは、プロピオニル基、ブチリル基、ペンタノイル基、およびヘキサノイル基の置換度の総和を示す。)
【請求項6】
少なくとも1種のレターデーション上昇剤を含む請求項1〜5のいずれかに記載のセルロースアシレートを含む光学補償シート。
【請求項7】
シクロオレフィンポリマーを含む請求項1〜4のいずれかに記載の光学補償シート。
【請求項8】
前記透明フィルムが非液晶性ポリマー製複屈折層を含む複屈折性フィルムである請求項1〜4に記載の光学補償シート。
【請求項9】
偏光膜と、前記偏光膜を挟持する一対の保護膜を有する偏光板であって、前記保護膜の少なくとも一つが請求項1〜8のいずれかに記載の光学補償シートからなる偏光板。
【請求項10】
請求項9に記載の偏光板を含むTNモード液晶表示装置。
【請求項11】
偏光膜と、前記偏光膜を挟持する一対の保護膜を有する偏光板であって、前記保護膜の少なくとも一方が下記式(1)、(2)を満たす光学補償シートからなり、前記光学補償シートと偏光膜を挟んで相反する側に下記式(12)を満たす散乱フィルムを有するTNモード液晶表示装置用偏光板。
(1)40≦Re(550)≦130
(2)100≦Rth(550)≦200
(12)ヘイズ値≧30%
(ここでヘイズ値は、散乱フィルムの法線方向に対して30%傾斜した方向での散乱フィルムのヘイズ値を示す。Re(λ)は、波長λnmの光に対する面内レターデーション値であり、Rth(λ)は、波長λnmの光に対する厚さ方向のレターデーション値である。)
【請求項12】
前記光学補償シートが下記式(3)、(4)を満たす請求項11に記載の偏光板。
(3)70≦Re(550)≦110
(4)100≦Rth(550)≦150
【請求項13】
前記光学補償シートが下記式(5)、(6)を満たす請求項11に記載の偏光板。
(5)Re(630)−Re(450)>0
(6)Rth(630)−Rth(450)>0
【請求項14】
前記光学補償シートが下記式(7)、(8)を満たす請求項11〜13のいずれかに記載の偏光板。
(7)Re(630)−Re(450)≦0
(8)Rth(630)−Rth(450)≦0
【請求項15】
前記光学補償シートが下記式(9)〜(11)の置換度の条件式を満足した請求項11〜14のいずれかに記載のセルロースアシレートを含む偏光板。
(9)2.0≦X+Y≦3.0
(10)0≦X≦2.0
(11)0≦Y≦1.5
(式(9)〜(11)中、Xはアセチル基の置換度を示し、Yは、プロピオニル基、ブチリル基、ペンタノイル基、およびヘキサノイル基の置換度の総和を示す。)
【請求項16】
前記光学補償シートが少なくとも1種のレターデーション上昇剤を含む請求項11〜15のいずれかに記載の偏光板。
【請求項17】
前記光学補償シートがシクロオレフィンポリマーを含む請求項11〜14のいずれかに記載の偏光板。
【請求項18】
前記光学補償シートが非液晶性ポリマー製複屈折層を含む複屈折性フィルムである請求項11〜14のいずれかに記載の偏光板。
【請求項19】
請求項11〜18のいずれかに記載の偏光板を有するTNモード液晶表示装置。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2009−37231(P2009−37231A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−177127(P2008−177127)
【出願日】平成20年7月7日(2008.7.7)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】