説明

TOLL様受容体3の選択的アゴニスト

Toll様受容体3(TLR3)のアゴニストであるミスマッチ二本鎖リボ核酸を、抗微生物剤、抗増殖剤、および/または免疫刺激剤として、in vitroまたはin vivoで用いる。どちらの二本鎖RNAも構造的に類似であるが、ポリ(I:C11−14U)は、ポリ(I:C)に比較した際、TLR3のより選択的なアゴニストである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に対するクロスリファレンス
本出願は、2008年2月15日出願の出願第61/029,307号、および2008年5月8日出願の出願第61/051,606号の優先権を請求する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、抗感染剤(例えば、少なくとも1以上の細菌、原生動物、またはウイルスによって引き起こされる感染を治療するかまたは防止するため)、抗増殖剤(例えば、少なくとも、ウイルス誘導性癌を含む癌を治療するため)、および/または免疫刺激剤(例えばワクチン接種を伴いまたは伴わずに、免疫を刺激することによって、少なくとも感染性疾患または癌を治療するため)として使用するための、Toll様受容体3(TLR3)のアゴニストを提供することに関する。医学的治療法および薬剤を製造するためのプロセスを提供する。
【0003】
ポリ(I:C)のような二本鎖RNAがTLR3アゴニストとして用いられてきている。しかし、薬剤としての有用性は毒性があるために限定されている。したがって、TLRファミリーに属する他の受容体ではなく、TLR3を特異的にターゲティングすることによって、抗感染剤、抗増殖剤、および/または免疫刺激剤として使用可能な改善された薬剤が探索されている。例えば、望ましい薬剤は、TLR3によって仲介されるような過剰な炎症促進反応を誘導することなく、初発性のまたは確立された感染を治療し、前癌状態または癌状態を治療するため、増加した治療指数(例えばLD50をED50で割るような、毒性効果を生じる用量を療法効果を生じる用量で割った比)を有するであろう。
【0004】
二本鎖リボ核酸(dsRNA)は、2’,5’−オリゴアデニル酸シンテターゼ/RNアーゼLおよびp68プロテインキナーゼ経路を含む、dsRNA依存性細胞内抗ウイルス防御機構を通じて、自然免疫(例えば宿主防御の産生)を誘発する。しかし、ポリ(I:C)はまた、TLR3を活性化し、そしてそれによって炎症促進性ケモカインおよびサイトカインの分泌を誘導する。WO2006/060513、3〜4ページを参照されたい。これは、TLR3を選択的に活性化して、有益な免疫の発展を仲介するのではなく、有害な炎症プロセスを開始するかまたは増進する可能性もある。ポリ(I:C)は、炎症に関連する壊死、全身性炎症反応症候群、感染関連急性サイトカインストーム、ならびに関節リウマチおよび炎症性腸疾患などの慢性自己免疫疾患を引き起こすと考えられる。WO2006/060513は、多様な徴候に対する薬剤としてTLR3アンタゴニストを使用すると有益であろうと解説する。したがって、本発明において、TLR3の選択的アゴニストが薬剤としての使用を見出すことは驚くべきことであった。
【0005】
HEMISPHERx(登録商標)BiopharmaのAMPLIGEN(登録商標)ポリ(I:C12U)は、抗ウイルスおよび免疫刺激特性を持つが、減少した毒性を示す、特異的に形成されたdsRNAである。AMPLIGEN(登録商標)ポリ(I:C12U)は、多面的活性を通じてウイルスおよび癌細胞増殖を阻害する:該分子は、他のdsRNA分子と同様、2’,5’−オリゴアデニル酸シンテターゼ/RNアーゼLおよびp68プロテインキナーゼ経路を制御する。本発明者らは、ここで、本発明者らが特異的に形成したdsRNAが、TLR3の特異的アゴニストとして作用することによって、体内でその効果を仲介することを発見した。驚くべきことに、特定の微生物に対してのみ有効である他の化学療法剤(例えば抗細菌剤ペニシリン、抗ヘルペス剤イドクスウリジン、および抗マラリア剤クロロキン)と異なり、ポリ(I:C11−14U)は、免疫系に直接作用することによって、細菌、ウイルス、および原生動物の治療に有効な抗微生物化学療法剤として、広い適用を有することを本発明者らは解説する。ポリ(I:C11−14U)の投与は、有害な炎症プロセスの開始または増進など、ポリ(I:C)で観察される副作用を回避する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】WO2006/060513
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、抗感染剤、抗増殖剤、および/または免疫刺激剤が必要な患者のための治療を提供することである。2つの二本鎖RNAが構造的に類似であるにもかかわらず、本発明者らが特異的に形成したdsRNAは、ポリ(I:C)に比較した際、TLR3のより選択的なアゴニストである。それによって、選択的TLR3アゴニストに対する長年感じられてきた必要性に取り組んでいる。特に感染性疾患、細胞増殖、および/またはワクチン接種に関与する、被験体を治療するための方法および薬剤を作製するためのプロセスを提供する。さらなる目的および利点を以下に記載する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、初発性のまたは確立された微生物感染、異常な細胞増殖によって特徴づけられる病的状態(例えば新生物または腫瘍)を持つ被験体(例えばヒトまたは動物)を治療するため、あるいは少なくとも感染、異常な細胞増殖、または自己免疫もしくは神経変性による細胞損傷によって引き起こされる疾患または状態に関して被験体を治療する免疫刺激剤として、使用可能である。用いるミスマッチ二本鎖リボ核酸(dsRNA)の量が、被験体の免疫細胞上のToll様受容体3(TLR3)に結合するのに十分であることが好ましい。それによって、自然免疫または適応免疫を誘発することも可能である。特に、TLR4のような他のToll様受容体、またはRIG−1もしくはmda−5のようなRNAヘリカーゼを活性化することなく、あるいは非選択的TLR3アゴニストであるポリ(I:C)で見られるように過剰な炎症促進性反応を誘導することなく、特異的に形成したdsRNAを用いて、TLR3を活性化することも可能である。
【0009】
被験体は、少なくとも1以上の細菌、原生動物またはウイルスに感染していてもよい。TLR3に結合するのに十分な量の特異的に形成したdsRNAを含む薬学的組成物を、被験体に投与する。特異的に形成したdsRNAで治療しない被験体に比較した際の、回復時間の減少、免疫増加(例えば、抗体力価、リンパ球増殖、感染細胞の殺傷、またはナチュラルキラー(NK)細胞活性の増加)、微生物の分裂または増殖の減少、あるいはこれらの任意の組み合わせによってアッセイされるように、被験体の感染は、該投与によって減少するかまたは排除される。治療によって誘導される免疫は、好ましくは該微生物に特異的である。
【0010】
被験体は、異常な細胞増殖(例えば新生物または腫瘍、他の形質転換細胞)に苦しめられていてもよい。TLR3に結合するのに十分な量の特異的に形成したdsRNAを含む薬学的組成物を、被験体に投与する。特異的に形成したdsRNAで治療しない被験体の状態に比較した際の、罹患率または死亡率の改善、免疫増加(例えば抗体力価、リンパ球増殖、増殖細胞もしくは形質転換細胞の殺傷、またはNK細胞活性の増加)、増殖細胞または形質転換細胞の分裂または増殖の減少、あるいはこれらの任意の組み合わせによってアッセイされるように、被験体の疾患は、該投与によって減少するかまたは排除される。
【0011】
被験体において、樹状細胞成熟を誘導してもよい。抗原取り込み可能な未成熟樹状細胞を誘導して、抗原を提示しそして適応免疫反応(例えば抗原特異的T細胞)をプライミングすることが可能な、より成熟した樹状細胞に分化させてもよい。未成熟な樹状細胞から成熟樹状細胞に変換される間、樹状細胞は、少なくとも、主要組織適合複合体(MHC)分子、同時刺激分子、接着分子、またはケモカイン受容体の細胞表面発現を変化させるか;抗原取り込みを減少させるか;ケモカイン、サイトカイン、またはプロテアーゼ分泌を増加させるか;樹状突起を成長させるか;細胞骨格を再編成するか;あるいはこれらの組み合わせを行いうる。樹状細胞は、血液またはリンパを通じて、炎症部位またはリンパ組織に遊走するよう誘導され、微生物、新生物または腫瘍細胞、あるいは他の形質転換細胞に近接することも可能である。
【0012】
少なくとも感染または癌に対して、被験体にワクチン接種してもよい。ときに、例えばウイルス誘導性癌では、感染および癌の両方を治療してもよい。ワクチン接種の直前、接種中または接種直後(例えばワクチン接種10日以内)、TLR3に結合するのに十分な量の特異的に形成したdsRNAを含む薬学的組成物を、被験体に投与する。それによって、ワクチンまたは樹状細胞調製物に対する免疫反応を刺激する。ワクチンまたは樹状細胞調製物は、殺した、固定した、または弱毒化した全微生物または細胞(例えば、増殖中のまたは形質転換されたもの);微生物または細胞(例えば、増殖中のまたは形質転換されたもの)の溶解物または精製分画:1以上の単離微生物抗原(例えば、天然の、化学的に合成された、または組換え産生されたもの);または1以上の単離腫瘍抗原(例えば、天然の、化学的に合成された、または組換え産生されたもの)で構成されてもよい。ある部位でまたはその部位への循環中で、抗原(例えば天然感染または細胞増殖、または脱落(shed)抗原中で産生される)を被験体が産生し、そしてそれに対するアジュバントとして作用する特異的に形成したdsRNAを投与することによって、in situワクチン接種を達成してもよい。
【0013】
抗原提示細胞(例えばBリンパ球、樹状細胞、マクロファージ)および粘膜組織(例えば胃または呼吸上皮)は、体内における、特異的に形成したdsRNAの好ましいターゲットである。微生物または腫瘍抗原(単数または複数)を提示してもよく、そして抗原(単数または複数)は、TLR3アゴニストとしてのみ作用する特異的に形成したdsRNAのみの作用に感受性であるべきである。微生物、癌細胞、または他の形質転換細胞は、TLR3アゴニストとしてのみ作用する特異的に形成したdsRNAによって活性化される特異的サイトカイン反応パターンに感受性であってもよい。特異的に形成したdsRNAは、好ましくは、静脈内注入;皮内、皮下、または筋内注射;鼻内または気管内吸入;あるいは中咽頭または舌下適用によって投与される。
【0014】
薬剤の使用および作製のためのプロセスもまた提供する。しかし、製品に向けられるクレームは、プロセスの特定の工程が製品クレームにおいて唱えられるのでない限り、必ずしもこれらのプロセスに限定されないことに注目しなければならない。
【0015】
本発明のさらなる側面は、特定の態様の以下の説明および請求項、ならびにこれらに対する一般化から、当業者には明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1A】図1は、5μg α−DEC−gagおよび50μgポリ(I:C)でのプライム−ブースト免疫が、ワクシニアgagウイルスでの気道曝露に対して防御免疫を提供することを示す。6回の実験:BALB/cおよびC57BL/6マウス各々3回(対照Ig−p24を除く; BALB/cでn=2)由来の、曝露後の平均±SDとしての(A)平均体重損失および(B)肺におけるワクシニア・プラーク形成力価。示すワクチンで、マウスを6週間間隔でプライミングし、そしてブーストした。ブースト時にのみ、別の群をα−DEC−p24およびポリ(I:C)で免疫した。ブーストの6〜8週間後、マウスを5x10PFUワクシニア−gagに鼻内曝露した。2つの類似の実験の一方由来の、曝露後の平均±SDとしての(C)平均体重損失および(D)肺におけるワクシニア・プラーク形成力価: C57BL/6、DEC−205−/−、およびTLR3−/−マウス各5匹を、α−DEC−p41で免疫した。ブーストの6〜8週間後、マウスを5x10PFUワクシニア−gagに鼻内曝露した。
【図1B】図1は、5μg α−DEC−gagおよび50μgポリ(I:C)でのプライム−ブースト免疫が、ワクシニアgagウイルスでの気道曝露に対して防御免疫を提供することを示す。6回の実験:BALB/cおよびC57BL/6マウス各々3回(対照Ig−p24を除く; BALB/cでn=2)由来の、曝露後の平均±SDとしての(A)平均体重損失および(B)肺におけるワクシニア・プラーク形成力価。示すワクチンで、マウスを6週間間隔でプライミングし、そしてブーストした。ブースト時にのみ、別の群をα−DEC−p24およびポリ(I:C)で免疫した。ブーストの6〜8週間後、マウスを5x10PFUワクシニア−gagに鼻内曝露した。2つの類似の実験の一方由来の、曝露後の平均±SDとしての(C)平均体重損失および(D)肺におけるワクシニア・プラーク形成力価: C57BL/6、DEC−205−/−、およびTLR3−/−マウス各5匹を、α−DEC−p41で免疫した。ブーストの6〜8週間後、マウスを5x10PFUワクシニア−gagに鼻内曝露した。
【図1C】図1は、5μg α−DEC−gagおよび50μgポリ(I:C)でのプライム−ブースト免疫が、ワクシニアgagウイルスでの気道曝露に対して防御免疫を提供することを示す。6回の実験:BALB/cおよびC57BL/6マウス各々3回(対照Ig−p24を除く; BALB/cでn=2)由来の、曝露後の平均±SDとしての(A)平均体重損失および(B)肺におけるワクシニア・プラーク形成力価。示すワクチンで、マウスを6週間間隔でプライミングし、そしてブーストした。ブースト時にのみ、別の群をα−DEC−p24およびポリ(I:C)で免疫した。ブーストの6〜8週間後、マウスを5x10PFUワクシニア−gagに鼻内曝露した。2つの類似の実験の一方由来の、曝露後の平均±SDとしての(C)平均体重損失および(D)肺におけるワクシニア・プラーク形成力価: C57BL/6、DEC−205−/−、およびTLR3−/−マウス各5匹を、α−DEC−p41で免疫した。ブーストの6〜8週間後、マウスを5x10PFUワクシニア−gagに鼻内曝露した。
【図1D】図1は、5μg α−DEC−gagおよび50μgポリ(I:C)でのプライム−ブースト免疫が、ワクシニアgagウイルスでの気道曝露に対して防御免疫を提供することを示す。6回の実験:BALB/cおよびC57BL/6マウス各々3回(対照Ig−p24を除く; BALB/cでn=2)由来の、曝露後の平均±SDとしての(A)平均体重損失および(B)肺におけるワクシニア・プラーク形成力価。示すワクチンで、マウスを6週間間隔でプライミングし、そしてブーストした。ブースト時にのみ、別の群をα−DEC−p24およびポリ(I:C)で免疫した。ブーストの6〜8週間後、マウスを5x10PFUワクシニア−gagに鼻内曝露した。2つの類似の実験の一方由来の、曝露後の平均±SDとしての(C)平均体重損失および(D)肺におけるワクシニア・プラーク形成力価: C57BL/6、DEC−205−/−、およびTLR3−/−マウス各5匹を、α−DEC−p41で免疫した。ブーストの6〜8週間後、マウスを5x10PFUワクシニア−gagに鼻内曝露した。
【図2】図2は、ポリ(I:C12U)が、TLR3依存方式で、5μg α−DEC−p24ワクチンに対するCD4+ T細胞免疫のアジュバントとして作用することを示す。(A)CxB6 F1マウスに、α−DEC−p24に加えて、段階的な用量のポリ(I:C)またはポリ(I:C12U)またはPBSのいずれかを腹腔内注射し、次いで、6週間後、同じ条件でブーストした。ブースト1週間後に、HIV gag p17またはp24混合物に反応して、IFN−γを産生し、そして増殖しているCD3+CD4+ T細胞の割合を、平均±SD(n=4マウス)として示す。(B)2回投与のα−DEC−p24に加えて、50μgポリ(I:C)または250μgポリ(I:C12U)のいずれかで免疫した、野生型、TLR3−/−、およびMDA5−/−マウス中のCD4+脾臓細胞による、HIV gag p24ペプチドに反応したIFN−γ分泌。
【図3】図3は、α−DEC p24およびポリ(I:C12U)でのプライム−ブースト免疫後のHIV gag特異的CD4+T細胞反応が性質決定されたことを示す。C57BL/6マウスに、5μgのα−DEC−p24および2、10、または50μgポリ(I:C12U)あるいはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)いずれかを皮下注射し、次いで、6週間後、同じ条件でブーストした。ブースト時にのみ、さらなる群を5μgのα−DEC−p24および50μgのポリICで免疫した。2週間後、HIV gag p24ペプチド混合物に反応した、ゲート処理CD3+脾臓T細胞における、IFN−γ+、TNF−α+、IL−2+、CD4+ T細胞の頻度を分析した。(A)各ワクチン群に関する、IFN−γ、TNF−α、またはIL−2を産生しているCD4+ T細胞の総頻度。(B)総サイトカイン反応由来の、3種のサイトカインすべて(赤)、任意の2種のサイトカイン(青)、または任意の1種のサイトカイン(緑)を発現しているCD4+ T細胞の割合。各ワクチン群は円グラフによって絵で示される。サイトカイン産生CD4+ T細胞の総頻度を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
微生物による感染を治療可能である。微生物は、ヒトまたは動物被験体に感染しうる。感染は、初発性であってもまたは確立されていてもよい。微生物は、細菌、原生動物、またはウイルス:特に疾患を引き起こすもの(すなわち病原性微生物)であってもよい。本明細書において、用語「微生物」(「microbe」および「microorganism」)は交換可能に用いられる。
【0018】
細菌は、バチルス属(Bacillus)(例えば、炭疽菌(B. anthracis)、セレウス菌(B. cereus))、バルトネラ属(Bartonella)(ヘンセラ菌(B. henselae))、ボルテテラ属(Bordetella)(例えば、百日咳菌(B. pertussis))、ボレリア属(Borrelia)(例えば、ライム病ボレリア(B. burgdorferi))、ブルセラ属(Brucella)(例えば、ウシ流産菌(B. abortus))、カンピロバクター属(Campylobacter)(例えば、ジェジュニ菌(C. jejuni))、クラミジア属(Chlamydia)(例えば、肺炎クラミジア(C. pneumoniae))、クロストリジウム属(Clostridium)(例えば、ボツリヌス菌(C. botulinum)、C.ディフィシレ(C. difficile)、ウェルシュ菌(C. perfringens)、破傷風菌(C. tetani))、コリネバクテリウム属(Corynbacterium)(例えば、C.アミコラツム(C. amycolatum)、ジフテリア菌(C. diphtheriae))、エシェリキア属(Escherichia)(例えば、大腸菌(E. coli)O175:H7)、ヘモフィルス属(Haemophilus)(例えば、インフルエンザ菌(H. influenzae))、ヘリコバクター属(Heliobacter)(例えば、ピロリ菌(H. pylori))、クレブシエラ属(Klebsiella)(肺炎桿菌(K pneumoniae))、レジオネラ属(Legionella)(例えば、L.ニューモフィラ(L. pneumophila))、リステリア属(Listeria)(例えば、リステリア菌(L. monocytogenes))、マイコバクテリウム属(Mycobacterium)(例えば、M.アビウム(M. avium)、M.ボビス(M. bovis)、M.ブランデリ(M. branderi)、らい菌(M. leprae)、結核菌(M. tuberculosis))、マイコプラズマ属(Mycoplasma)(例えば、M.ゲニタリウム(M. genitalium)、肺炎マイコプラズマ(M. pneumoniae))、ナイセリア属(Neisseria)(例えば、淋菌(N. gonorrheae)、髄膜炎菌(N. meningitidis))、ニューモシスチス属(Pneumocystis)(例えば、P.カリニ(P. carinii))、シュードモナス属(Pseudomonas)(緑膿菌(P. aeruginosa))、リケッチア属(Rickettsia)(例えば、R.リケッチア(R. rickettsia)、発疹熱リケッチア(R. typhi))、サルモネラ属(Salmonella)(例えば、サルモネラ菌(S. enterica))、赤痢菌属(Shigella)(例えば、志賀赤痢菌(S. dysenteriae))、ブドウ球菌属(Staphylococcus)(例えば、黄色ブドウ球菌(S. aureus)、表皮ブドウ球菌(S. epidermidis))、連鎖球菌属(Streptococcus)(例えば、肺炎球菌(S. pneumoniae)、化膿性連鎖球菌(S. pyogenes))、トレポネーマ属(Treponema)(例えば、梅毒トレポネーマ(T. pallidum))、ビブリオ属(Vibrio)(例えば、コレラ菌(V. cholerae)、V.ブルニフィクス(V. vulnificus))、またはエルシニア属(Yersinia)(例えば、ペスト菌(V. pestis)の種であってもよい。これらには、グラム陰性またはグラム陽性細菌、クラミジア、スピロヘータ、マイコバクテリア、およびマイコプラズマが含まれる。
【0019】
原生動物は、クリプトスポリジウム属(Cryptosporidium)(例えば、C.ホミニス(C. hominis)、C.パルブム(C. parvum))、エントアメーバ属(Entamoeba)(例えば、赤痢アメーバ(E. histolytica))、ジアルジア属(Giardia)(例えば、腸鞭毛虫(G. intestinalis)、ランブル鞭毛虫(G. lamblia))、リーシュマニア属(Leishmania)(例えば、アマゾンリーシュマニア(L. amazonensis)、ブラジルリーシュマニア(L. braziliensi)、ドノバンリーシュマニア(L. donovani)、メキシコリーシュマニア(L. mexicana)、熱帯リーシュマニア(L. tropica))、プラスモジウム属(Plasmodium)(例えば、熱帯熱マラリア原虫(P. falciparum)、三日熱マラリア原虫(P. vivax))、トキソプラズマ属(Toxoplasma)(例えば、トキソプラズマ原虫(T. gondii))、またはトリパノソーマ属(Trypanosoma)(例えば、ブルセイトリパノソーマ(T. bruci)、クルーズトリパノソーマ(T. cruzi))の種であってもよい。
【0020】
ウイルスは、ヒトおよび動物に感染するDNAまたはRNAウイルスであってもよい。DNAウイルスには、アデノウイルス科、イリドウイルス科、パピローマウイルス科、ポリオウイルス科、およびポックスウイルス科(I群二本鎖DNAウイルス);パルボウイルス科(II群一本鎖DNAウイルス)に属するものが含まれる。RNAウイルスには、ビルナウイルス科およびレオウイルス科(III群二本鎖RNAウイルス);アルテリウイルス科、アストロウイルス科、カリシウイルス科、ヘペウイルス科、およびロニウイルス科(IV群プラス鎖一本鎖RNAウイルス);ならびにアレナウイルス科、ボルナウイルス科、ブンヤウイルス科、フィロウイルス科、パラミクソウイルス科、およびラブドウイルス科(V群マイナス鎖一本鎖RNAウイルス)に属するものが含まれる。特異的に形成した二本鎖リボ核酸(dsRNA)はまた、ヘルペスウイルス科由来のDNAウイルス、ならびにフラビウイルス科、ヘパドナウイルス科、オルトミクソウイルス科、ピコルナウイルス科、レトロウイルス科、およびトガウイルス科由来のRNAウイルスによる感染を治療することが知られ;これらの科のウイルスは、本発明の範囲内に含まれる可能性もまた含まれない可能性もある。
【0021】
異常な増殖を経ている被験体細胞は、新生物または腫瘍(例えば、癌腫、肉腫、白血病、リンパ腫)、特に腫瘍ウイルス(例えば、形質転換遺伝子または癌原遺伝子を所持するDNAまたはRNAウイルス)によって形質転換されたか、またはそうでなければ癌と関連するウイルスに感染した細胞であってもよい。例えば、エプスタイン−バーウイルス(EBV)は、鼻咽頭癌、ホジキンリンパ腫、バーキットリンパ腫、および他のB細胞リンパ腫に関連し;ヒトB型およびC型肝炎ウイルス(HBVおよびHCV)は肝癌に関連し;ヒトヘルペスウイルス8(HHV8)はカポジ肉腫に関連し;ヒトパピローマウイルス(例えば、HPV6、HPV11、HPV16、HPV18、またはその組み合わせ)は、子宮頸癌、肛門癌、および性器疣贅に関連し;そしてヒトTリンパ球向性ウイルス(HTLV)は、T細胞白血病またはリンパ腫に関連する。癌には、胃腸系(例えば、食道、結腸、腸、回腸、直腸、肛門、肝臓、膵臓、胃)、尿生殖器系(例えば、膀胱、腎臓、前立腺)、筋骨格系、神経系、肺系(例えば肺)、また生殖器系(例えば、子宮頸部、卵巣、精巣)から生じるものが含まれる。
【0022】
ポリ(リボイノシン酸)は、部分的に、ポリ(リボシトシン酸12ウラシル酸)にハイブリダイズし、そしてrI・r(C12U)として示されうる。他の使用可能な特異的に形成したdsRNAは、nが4〜29の整数であるポリ(CU)およびポリ(CG)から選択されるコポリヌクレオチドに基づくか、またはポリリボシチジン酸(rC)鎖に沿って非対形成塩基(ウラシルまたはグアニン)を取り込むようにrI・rCを修飾することによって形成される、ポリリボイノシン酸およびポリリボシチジン酸の複合体のミスマッチ類似体である。あるいは、ミスマッチdsRNAは、ポリリボイノシン酸(rI)のリボシル主鎖を修飾することによって、例えば2’−O−メチルリボシル残基を含めることによって、r(I)・r(C)dsRNAに由来してもよい。ミスマッチdsRNAを、リジンセルロースなどのRNA安定化ポリマーと複合体化してもよい。rI・rCのこれらのミスマッチ類似体のうち、好ましいものは、一般式rI・r(C11−14U)のものであり、そして本明細書に援用される米国特許4,024,222および4,130,641に記載される。該文献に記載されるdsRNAは、一般的に、本発明にしたがって使用するのに適している。米国特許5,258,369もまた参照されたい。
【0023】
経腸(例えば、経口、栄養管、浣腸)、局所(例えば、皮膚上で作用するパッチ、直腸または膣中で作用する座薬)、および非経口(例えば、経皮パッチ;皮下、静脈内、筋内、皮内、または腹腔内注射;頬側、舌下、または経粘膜;鼻内または気管内吸入または滴下)を含む、任意の適切な局所または全身性経路によって、特異的に形成したdsRNAを投与してもよい。核酸を、吸入のため微粒子化しても、注射または滴下のため、ビヒクル中に溶解しても(例えば滅菌緩衝生理食塩水または水)、あるいはターゲティング化送達のため、リポソームまたは他のキャリアー中に被包してもよい。好ましいのは、抗原提示細胞および上皮上のTLR3受容体に核酸をターゲティングするキャリアーである。例えば、未成熟樹状細胞を、皮膚、粘膜、またはリンパ組織中で接触させてもよい。好ましい経路は、被験体の状態および年齢、感染性または新生物疾患の性質、ならびに選択した活性成分に応じて多様であってもよいことが認識されるであろう。
【0024】
核酸の推奨される投薬量は、ウイルス感染または腫瘍負荷を治療する際の、被験体の臨床状態および医師または獣医師の経験に応じるであろう。用量および/または頻度は、医師または獣医師によって被験体の状態に応じて多様でありうるが、70kgの被験体に、週2回のスケジュールで静脈内注入によって、特異的に形成したdsRNAを約200mg〜約400mgで投与してもよい。TLR3を発現する細胞または組織、特に抗原提示細胞(例えば樹状細胞およびマクロファージ)および内皮(例えば呼吸器系および胃系)が、核酸送達に好ましい部位である。特異的に形成したdsRNAの効果は、TLR3遺伝子の突然変異(例えば欠失)、その発現の下方制御(例えばsiRNA)、TLR3のリガンド結合部位への競合剤(例えば中和抗体)の結合または受容体アンタゴニスト、あるいはTLR3シグナル伝達経路の下流構成要素(例えばMyD88またはTRIF)での干渉によって阻害または遮断可能である。
【0025】
AMPLIGEN(登録商標)ポリ(I:C12U)は、以前は利用可能でなかった免疫系に対するTLR3活性化の影響を解体する、選択的剤を提供する。TLRアダプターMyD88およびTRIFのような他の剤は、それぞれ、すべてのTLRまたはTLR3/TLR4によるシグナル伝達を仲介する。したがって、MyD88またはTRIFを通じたシグナル伝達の活性化または阻害は、その生物学的影響を、TLR3によって仲介されるものに限定しない。TLR3およびそのシグナル伝達の存在は、AMPLIGEN(登録商標)ポリ(I:C12U)が受容体アゴニストとして作用するための必要条件であるため、アゴニストの投与前に、被験体の細胞または組織における、TLR3突然変異の非存在、TLR3タンパク質の存在、損なわれていないTLR3仲介性シグナル伝達、あるいはそれらの任意の組み合わせに関してアッセイしてもよい。TLR3活性のこうした確認を、アゴニストの投与前、投与中、または投与後に行ってもよい。アゴニストを用いて、他のToll様受容体またはRNAヘリカーゼを活性化することなく、免疫反応を、TLR3の活性化に限定することも可能である。例えば、異常なサイトカイン(例えば、IFN−α、IFN−β、IFN−γ、TNF−α、IL−6、IL−10、IL−12)産生または同時刺激分子(例えば、CD80、CD83、CD86)シグナル伝達が、少なくとも、微生物による感染、異常な細胞増殖、自己免疫損傷、または神経変性から生じている可能性もある。TLR3の特異的アゴニストとしてポリ(I:C12U)を用いることによって、この異常性を再調節してもよい。抗原(またはそのペプチド類似体)を、1以上の抗原提示細胞の細胞表面に特異的に結合するリガンド(または受容体)(特にエンドソーム−ファゴソーム内在化経路の構成要素)にコンジュゲート化することによって、抗原提示が改善されうる。特異的結合分子は、細胞表面分子に対する抗体、またはその誘導体(例えばFab、scFv)であってもよい。
【実施例】
【0026】
実施例1
ヒト被験体
ヒト患者をインフォームドコンセントとともに登録し、そして血清サイトカインレベルおよび樹状細胞成熟マーカー発現のさらなる分析のための潜在的な志願者として、研究責任者が選択した。患者は新たに登録されても、またはポリ(I:C12U)で治療再開してもよかった。
【0027】
免疫パネルの実行
本発明者らの免疫パネルは、サイトカイン血清レベル(インターフェロン、TNF−α、IL−6、IL−10、IL−12)および血液細胞上の免疫マーカー(CD80、CD83、CD86)の測定からなる。こうした測定を承諾した患者に関して、最初の200mg、およびそれに続く400mgのポリ(I:C12U)注入前、ならびに注入の4±1/2、24±2、および72±2時間後に、新規登録被験体およびp(I:C12U)注入で治療再開した被験体から、血液試料を収集した。明記する収集時間は、ポリ(I:C12U)注入間の期間中の時点を含むように選択された。これらの試料に対して免疫パネルを実行した。サイトカイン分析のため、血液試料由来の血清を−70℃で凍結し、そして研究場所からHemispherx Biopharma, Inc.(ニュージャージー州ニューブルンスウィック)に、凍結して輸送した。また、Celldex Therapeutics, Inc.(ニュージャージー州フィリップスバーグ)によるCD80、CD83、およびCD86のフローサイトメトリー分析のため、ヘパリン処理全血試料を研究部位から周囲温度で一晩かけて輸送した。
【0028】
製造者の指示にしたがって、酵素連結免疫吸着アッセイ(ELISA)キットを用いて、インターフェロン(IFN−α、IFN−β、IFN−γ)および炎症性サイトカイン(TNF−α、IL−6、IL−10、IL−12p70)レベルを測定した。
【0029】
ELISAキット
【0030】
【表1】

【0031】
キットはPBL Biomedical Laboratories、ニュージャージー州ピスカタウェイおよびBioSource International、カリフォルニア州カマリロのものであった。
【0032】
Celldex Therapeutics, Inc.(ニュージャージー州フィリップスバーグ)と、CD80、CD83、およびCD86発現のフローサイトメトリー分析に関して契約した。一晩の輸送後、受け取り1時間以内に血液試料を染色した。細胞マーカー分析および赤血球溶解には、標準的フローサイトメトリー法を使用した。高いHLA−DR発現を伴う、単球、リンパ球、およびNK細胞マーカーの低レベル発現に基づいて、樹状細胞を同定した。また、CD11cおよびCD123発現にしたがって、樹状細胞を性質決定した。側方散乱分析および単球系譜マーカーの発現によって単球を同定した。細胞タイプ同定後、CD80、CD83、およびCD86発現の分析を行った。健康な志願者由来の測定は対照として働き、そしてCD80、CD83、およびCD86などの成熟DCに関するマーカー発現の正常な分布およびレベルを示した。
【0033】
結果
サイトカインレベル:各患者に関するサイトカイン分析の結果を、表1および2に提示する。ブランク標準に比較して、負の吸光度値を有する結果、または製造者によって報告されるようなキットの検出限界(DL)以下である結果に対する値として、ゼロを用いた。製造者がDLを明記しないか、またはDLが所定の値未満であると示した場合、すべての結果を用いた。製造者が、予期される正常サイトカイン範囲を提供する場合、参考のためにこれらを含めた。
【0034】
表1. ポリ(I:C12U)注入後のインターフェロンレベルの動力学
【0035】
【表2−1】

【0036】
【表2−2】

【0037】
NR、正常範囲; NP、キット製造者によって提供されない
表2. ポリ(I:C12U)注入後のサイトカインレベルの動力学
【0038】
【表3−1】

【0039】
【表3−2】

【0040】
NR、正常範囲; NP、キット製造者によって提供されない
平均値および標準偏差(SD)を計算した。しかし、患者が少数であり、そしてデータにばらつきがあるため、平均値の解釈は限定されている。ベースライン・サイトカインレベルは、患者間で広く多様であった。免疫系活性化の指標の不一致は、慢性疲労症候群(CFS)と診断された患者に特徴的であるため、これは驚くべきことではなく、そしてこのため、診断試験を開発することが困難となっている。データ解釈を容易にするため、サイトカインデータを患者ごとに提示する。データの記述的考察を提示する。統計分析は行わなかった。
【0041】
4人の患者のうち3人では、IFN−αおよびIFN−γの注入前レベルが上昇しており、そして4人のうち2人では、IFN−βの注入前レベルが高かった。IFN−αレベルの変化を考慮すると、1人の患者(LDM−010)は、すべての続く時点で、注入前より低いレベルを有し、1人の患者(JOG−020)は、すべての時点で、検出不能なレベルを有し、そして2人の患者は、少なくとも1つの注入後時点で、増加したレベルを有した。IFN−αの最大増加は、注入前レベルの2%〜15%上であった。すべての時点でIFN−αが検出不能レベルであった同じ患者(JOG−020)ではまた、IFN−βレベルも検出不能であった。すべての他の患者は、少なくとも1つの時点で、増加したIFN−βレベルを有したが、1人の患者(DMM−111)の増加は、他の患者に関して測定されたレベルより、実質的に低かった(約0.1%)。他の2人の患者のIFN−βの最大増加は、注入前レベルより4.3%〜12%高い範囲であった。1人を除き、すべての患者が、少なくとも1つの注入後時点で、IFN−γの増加を示した;第四の患者(LDM−010)は、すべての時点で、検出不能なレベルを有した。患者のうち2人に関しては、IFN−γの最大増加は、注入前レベルより3.7%および21%高い範囲であった。1人の患者(DMM−111)は、注入4時間後、注入前レベルを超える397%の増加を示したが、続く測定値は、注入前ベースライン未満であった。すべての患者が、注入72時間後までに、注入前レベル以下のINF−α、IFN−β、およびIFN−γレベルを有した。
【0042】
すべての患者は、0〜20pg/mLの健康な個体に関して予期される範囲に基づいて、TNF−αの正常な注入前レベルを有した。注入前レベルに比較して、すべての患者は、各注入後時点に、TNF−αの小さな増加を示したものの、1人の患者(DMM−111)のレベルは、4時間および24時間の時点と比較して、72時間の時点で減少したが、すべての患者が正常範囲内に留まった。最大TNF−α増加は、注入前レベルより32%〜241%上の範囲であった。TNF−αと同様、各時点でのIL−10に関する平均結果は、予期される正常濃度より低かった。2人の患者(LDM−101、JOG−020)は、予期される範囲内の上昇を示し、そして2人(JLC−109、DMM−111)は、予期される濃度を超える増加を有した。1人の患者のみ(DMM−111)が、72時間後に、予期される濃度より高いIL−10レベルを有し;72時間後のこの患者のIL−10レベルは、注入前レベルより、3倍高かった。すべての患者で、IL−12p70の注入前レベルが上昇しており(予期される範囲は、0.79pg/mLまで)、そして1人を除き、すべての患者が、すべての時点で、注入前レベルより高い増加を維持していた。持続したIL−12p70増加を示さない1人の患者(DM−111)では、72時間の時点で、注入前レベルより2.2%減少した。最大IL−12p70増加は、注入前レベルより32%〜158%高い範囲であった。
【0043】
4人の患者のうち3人では、IL−6の注入前レベルが上昇していた。1人の患者(JOG−020)では、注入前に比較して、すべての続く時点で、IL−6レベルが減少していた。検出不能なIL−6注入前レベルを持つ1人の患者(DMM−111)に関しては、レベルは注入4時間後に高レベルに増加し、次いで、ベースラインに戻った。同じ患者は、注入4時間後に、IFN−γおよびTNF−αのピークを示した。1人の患者のみ(LDM−010)、72時間後、注入前レベルより高いIL−6レベルを有した。1人の患者のみ(DMM−111)、注入前に検出可能なIL−10レベルを有し、そして該レベルは、1pg/mL未満の予期される濃度を大きく超えては上昇していなかった。
【0044】
サイトカイン分析結果によって、IL−12p70の上昇した注入前レベル、およびポリ(I:C12U)注入72時間後の穏やかな増加が示される。しかし、監視した注入後期間に渡って、IFN−α、IFN−β、およびIFN−γレベルには明らかな相違はなく、平均TNF−αおよびIL−10レベルは、各時点で予期される正常範囲内であり、そしてIL−6反応は、4人の患者のうち3人に関して、注入72時間後までに、注入前レベルまで減少した。結論として、炎症促進性サイトカイン、TNF−α、IL−6およびIL−12を含むサイトカインレベルの調節の実質的なパターンは示されなかった。
【0045】
樹状細胞成熟マーカー
陽性染色細胞の割合として、そして発現レベル(平均蛍光強度、MFI)によって、DC成熟マーカー分析の結果を報告し、そして別に示さない限り、平均(SD)として示す。ポリ(I:C12U)で治療していない健康な志願者に関するデータを比較のために報告する。CD80、CD83、およびCD86データが大きくばらついているため、個体に基づく結果を詳述する表を含める。統計分析は行わなかった。
【0046】
CD123+ DC、CD11+ DC、および単球の平均(SD)の割合を表3に提示する。健康な志願者の値を正常値として含めた(表4を参照されたい)。統計分析は行わなかった。健康な志願者には、ポリ(I:C12U)を注入しなかった。ポリ(I:C12U)注入に比較した明記する時点でのCFS患者の値を報告する。各時点で、すべての患者に関するすべての測定値に渡って、平均値を計算した。
【0047】
表3. 細胞集団に対するポリ(I:C12U)の影響
【0048】
【表4】

【0049】
健康な志願者には、ポリ(I:C12U)を注入しなかった
表4. 健康な志願者における樹状細胞タイプの割合に関する個々の結果
【0050】
【表5−1】

【0051】
【表5−2】

【0052】
【表5−3】

【0053】
CFS患者の注入前の値は、健康な志願者のレベルに匹敵し; CD11+細胞の割合は、平均およびSDによって定義されるような、健康な志願者の範囲の下限であった。平均値は、注入4時間後のCD123+細胞に関して、そして注入24時間後のCD11+細胞および単球に関して測定されたものより低かった。試料が少数であるため、1人の患者が経験した変化が、結果に著しく影響する可能性もあった。例えば、患者DMM−111では、注入前から注入4時間後までに、CD123+細胞の割合が10倍低下した(表5を参照されたい)。1つの一貫した変化は、注入24時間後にCFS患者によって示される単球の割合の減少であった。単球数は、注入72時間後までに回復した(表5を参照されたい)。総合して、CD123+細胞、CD11+細胞、および単球の割合は、わずかに低かったが、健康な志願者の値の範囲から外れなかった。
【0054】
一般的に、ポリ(I:C12U)での治療は、成熟DCマーカー、CD80、CD83、およびCD86を発現する細胞の割合を減少させ、そしてこれらの発現レベルを増加させた。CFS患者は、開始時に、ポリ(I:C12U)を投与されない健康な志願者より低い発現レベルを有する、より多くの陽性細胞を伴う傾向があった。したがって、ポリ(I:C12U)が陽性細胞数を減少させ、そしてDC成熟マーカー発現レベルを増加させる能力があることから、CFS患者のプロフィールは、健康な志願者のものにより緊密に似るように、正常化された。
【0055】
表5. CFS患者における樹状細胞タイプの割合に関する個々の結果
【0056】
【表6−1】

【0057】
【表6−2】

【0058】
個々の患者の結果は、表6〜8に示す平均変化を反映する傾向があり、注入24時間後および72時間後の時点で、陽性細胞の比率の減少および発現レベルの増加を伴った。このパターンにはいくつかの例外があった。例えば、CD80およびCD86発現細胞の割合は、CD11+細胞中では、CD123+細胞中と同程度に顕著には減少しなかった。さらに、CFS患者由来の単球は、CD86を発現する細胞の割合およびCD86発現レベルに関して、健康な志願者由来のものと類似であった。
【0059】
表6. ポリ(I:C12U)注入後、CD123+樹状細胞中での成熟マーカー発現の動力学
【0060】
【表7】

【0061】
健康な志願者にはポリ(I:C12U)を投与しなかった;MFI、平均蛍光強度
表7. ポリ(I:C12U)注入後、CD11+樹状細胞中での成熟マーカー発現の動力学
【0062】
【表8】

【0063】
健康な志願者にはポリ(I:C12U)を投与しなかった;MFI、平均蛍光強度
表8. ポリ(I:C12U)注入後、単球中での成熟マーカー発現の動力学
【0064】
【表9】

【0065】
健康な志願者にはポリ(I:C12U)を投与しなかった;MFI、平均蛍光強度
要約すると、ポリ(I:C12U)注入は、CD123+ DC、CD11+ DC、または単球の数に劇的には影響を及ぼさなかった。ポリ(I:C12U)治療に続いて、CFS患者では、成熟マーカーを発現しているDCの割合およびCD成熟マーカー発現レベルが正常化された。これらの傾向、特にCD成熟マーカーの増加は、4人の患者すべてで一貫して観察され、サイトカインレベル調節では認識されない独特のパターンを明らかにした。
【0066】
実施例2: dsRNAは耐久性および防御性の適応免疫を誘導する
CD4+ Th1型免疫は、包括的な感染性疾患に対する抵抗性に関連づけられる。HIVワクチンによって誘導されるT細胞免疫の有効性を改善するため、損なわれていないリンパ組織中の樹状細胞(DC)の機能を直接利用する、タンパク質に基づくアプローチを発展させた。抗原提示の受容体であるDEC−205をターゲティングする抗体によって、抗原性タンパク質を樹状細胞に選択的に送達する。dsRNAは、独立に、アジュバントとして働き、DCをターゲティングするタンパク質が、粘膜表面(すなわち気道)で、防御性CD4+ T細胞反応を誘導するのを可能にする。dsRNAとともに、DECをターゲティングするHIV gag p24を2回投薬した後、免疫CD4+ T細胞は、防御性機能と相関する定性的特徴を有する。T細胞は、IFN−γ、TNF−α、およびIL−2を、同時に、多量に、そして延長された期間、産生する。T細胞はまた、HIV gag p24に反応して増殖し、そしてIFN−γを分泌し続ける。ポリ(I:C)のアジュバントの役割は、TLR3およびMDA5受容体を必要とするが、類似のポリ(I:C12U)は、TLR3のみを必要とする(以下の結果を参照されたい)。ポリ(I:C)およびポリ(I:C12U)はどちらも、DCをターゲティングするワクチンとともに用いた場合、安全なアジュバントであり、多重機能性および増殖能のような特徴を持つCD4+ Th1細胞を豊富に誘導する。
【0067】
T細胞が仲介する免疫は、HIV、マラリア、および結核のような包括的な感染性疾患に対する抵抗性に関連づけられる。非常に重要な構成要素は、CD4+ Th1ヘルパー細胞であり、該細胞は、多量のIFN−γおよびTNF−αを産生し、MHCクラスII+ターゲットに対して細胞溶解活性を発揮し、そして機能するCD8+ Tメモリー細胞を維持する。
【0068】
樹状細胞は、T細胞に基づく強い反応を誘導する、抗原提示細胞である。例えば、エンドサイトーシス受容体DEC−205(「DEC」)を発現する樹状細胞サブセットにex vivoで抗原を装填し、そしてマウスに再注入した際、樹状細胞は、主にIFN−γを産生する抗原特異的ヘルパーT細胞を拡大する。in vivoで、DEC+樹状細胞は、MHCクラスIおよびII産物両方に対して抗原提示を仲介し、それぞれ、キラーおよびTヘルパー細胞のクローン性拡大を導く。ワクチン設計においてDC生物学をよりよく利用するため、本発明者らは、抗原をエンドサイトーシス受容体DEC−205に直接ターゲティングするアプローチを開発した。
【0069】
外来(foreign)抗原に対して免疫するためには、樹状細胞は、抗原の取り込みとともに、分化するかまたは成熟しなければならない。この成熟は、Toll様受容体(TLR)などのパターン認識受容体に対する化学的に定義されたリガンドを含む、アジュバントを用いて達成可能である。TLRリガンドのタイプは、免疫反応の結果に影響する。マウスおよびサルにおける、抗原特異的CD4+およびCD8+免疫に関しては、HIV gag p41に対するTLR7/8リガンドのコンジュゲートを含むTLRリガンドが、活性アジュバントとして働く。
【0070】
パターン認識受容体のリガンドは、DCをターゲティングするHIVワクチンを用いた、T細胞に基づく防御免疫のための、潜在的に安全なアジュバントとしては評価されてきていない。dsRNAをアジュバントとして単独で導入して、dsRNAが、DCをターゲティングするワクチンを補助して(adjuvant)、現在の基準で質的におよび量的に頑強(robust)であり、そしてまた肺感染モデルにおいて防御性である、CD4+ T細胞免疫を誘導することを示した。
【0071】
外来タンパク質に対する免疫の発展には、アジュバントの同時投与が必要である。dsRNAは、α−DEC−HIV gag p24に対して強いCD4+ T細胞反応を誘導する優れたアジュバントであることが示されており:すなわち、IFN−γを分泌するT細胞の頻度は、総CD3+ CD4+ T細胞の0.2〜6%に相当した。しかし、ワクチンのプライミングおよびブースター用量両方の間にポリ(I:C)が必要であった。
【0072】
当該技術分野に長く感じられてきた必要性は、自然感染またはワクチン接種中の高品質な防御性T細胞のための基準を定義することである。アジュバントとしてdsRNAを用いることによって誘導されたCD4+ T細胞の性質を評価するため、α−DEC−p24および段階的な用量のポリ(I:C)を6週間に渡って投与した。1つの群にはα−DEC−p24およびポリ(I:C)をブースト時にのみ投与した。ブースト2週間後、IFN−γ、TNF−α、またはIL−2を産生しているgag特異的CD4+ T細胞の頻度は、2回投与のα−DEC−p24 mAbおよび50μgポリ(I:C)で最大であった。
【0073】
個々のgag特異的T細胞が多数のサイトカインを分泌する能力を調べた。こうした多機能T細胞は、HIVを含む感染性病原体を選択する防御免疫により効果的に寄与する。α−DEC−p24および50μgポリ(I:C)でのプライム−ブースト免疫の2週間後、およそ50%のgag特異的CD4+ T細胞は、3つのサイトカイン:IFN−γ、TNF−αおよびIL−2すべてを産生する。サイトカイン産生細胞の総頻度は、2回投与のα−DEC−p24および10μgのポリ(I:C)、または単回投与のα−DEC−p24および50μgのポリ(I:C)でより少なかった。gag反応性細胞によって作製される各サイトカインの量(中央値蛍光強度またはMFI)を評価したが、これはこのパラメーターが、森林型熱帯リーシュマニア(L. major)モデルにおける防御CD4+免疫に関する重要な関連要因であるためである。3つのサイトカイン(すなわち、IFN−γ、TNF−α、およびIL−2)を産生する細胞のMFIは、2つまたは1つのみのサイトカインを産生する細胞のMFIよりも高かった。したがって、α−DEC−p24およびdsRNAで誘導したエフェクターCD4+ T細胞は、多重機能性および高サイトカイン産生などの優れたTh1免疫と一般に関連する特徴を有する。
【0074】
α−DEC−p24に加えてポリ(I:C)でプライム−ブースト免疫した後の、HIV gagに特異的な、サイトカイン産生(「エフェクター」)CD4+ T細胞の持続を評価するため、ブースト2週間後および7週間後に分析を行った。BALB/cおよびC57BL/6マウス各々における3回の実験に関してデータを要約すると、適応エフェクターCD4+ T細胞は、少なくとも7週間持続することが示された。興味深いことに、3つのサイトカイン(すなわち、IFN−γ、TNF−α、およびIL−2)すべてを産生する細胞の割合は、ブースト2週間後から7週間後まで、安定なままであった。したがって、dsRNAで補助したプライム−ブースト免疫後、CD4+エフェクターT細胞は、数週間持続した。
【0075】
最近の知見によって、CD4+ Th1細胞が増殖し、そしてHIV−1に対してIFN−γを産生する能力は、低いHIV−1 RNAおよびプロウイルスDNA装填に強く関連することが示されている。したがって、これらのT細胞の特徴が、DCをターゲティングするワクチンによって誘導可能であるかどうかを評価した。ブースト2週間後、CD4+ T細胞は、増殖し、そしてIFN−γを産生することによって、gag p24に特異的に反応した。陰性対照(すなわちgag p17ペプチド混合物)に対しては反応がなかった。2回投与のα−DEC−p24に加えて10μgまたは2μgのポリ(I:C)、あるいは1回投与のα−DEC−p24に加えて50μgのポリ(I:C)を用いると、反応するCD4+ T細胞はより少なくしか見られなかった。したがって、α−DEC−p24およびdsRNAでのプライム−ブースト免疫は、増殖するCD4+ T細胞を誘導する。
【0076】
次いで、α−DEC−p24およびポリ(I:C)でのプライム−ブースト免疫後の増殖性HIV gag特異的CD4+ T細胞の持続を評価した。BALB/cおよびC57BL/6マウス各々における3回の実験由来の結果から、こうしたCD4+ T細胞が脾臓において少なくとも7週間持続することが示された。したがって、α−DEC−p24および50μgのポリ(I:C)でのプライム・ブーストは、長寿命の増殖性IFN−γ分泌性CD4+ T細胞を誘導する。
【0077】
さらに、ポリ(I:C)はまた、α−DEC−nefに対するCD4+ T細胞反応のアジュバントとしても働く。免疫によって、増殖性IFN−γ分泌性CD4+ T細胞を誘発した。これらは、dsRNAをアジュバントとして用いると、優れた量および質のCD4+ T細胞が、nefおよびgag両方のHIV抗原に反応することを示す。
【0078】
dsRNAが、粘膜表面で、長く持続する防御免疫を生成可能であるかどうかを決定するため、BALB/cおよびC57BL/6マウスにワクチン接種し、そして次いで、該マウスを、α−DEC−gagおよびポリ(I:C)でのプライム−ブースト免疫の6〜8週間後、組換えワクシニア−gagウイルスに鼻内曝露した。最初の防御実験では、単回投与の50μgポリ(I:C)は、最適防御および肺におけるウイルス力価減少を生じた。ポリ(I:C)のこの用量を用いて、より詳細な研究を行った。BALB/cおよびC57BL/6マウス各々における3回の実験由来の結果によって、陰性対照(すなわちPBS)を注射したマウスでは体重が減少し、そして6〜7日に渡って、肺においてウイルスの高い力価(>10PFU/ml)が発展することが示された。体重損失およびウイルス増殖のどちらの基準によっても、2回投与のα−DEC−p24および50μgのポリ(I:C)は、2回投与の対照Ig−p24または1回投与のα−DEC−p24に加えたポリ(I:C)に比較して、優れた防御を提供した。したがって、α−DEC−gagおよびdsRNAでのプライム−ブースト免疫は、粘膜表面で防御を誘発する。
【0079】
ワクシニア−gagに曝露する前に、ワクチン接種したマウスからCD4+細胞を枯渇させると、ワクシニア曝露によって、CD4+ T細胞が防御に寄与することが検証された。また、DEC−/−ヌルマウスでも曝露実験を行った。防御の欠如が観察され、DECが、DCをターゲティングする防御免疫を発展させるのに必須であることが示された。しかし、TLR3−/−ヌルマウスは、2回投与のα−DEC−p41およびポリ(I:C)でのワクチン接種後、ワクシニア−gag曝露に対して完全に防御された。したがって、TLR3はポリ(I:C)をアジュバントとして用いる際には、防御に必要ではないが、TLRはポリ(I:C12U)の作用に必須である。
【0080】
ポリ(I:C)の類似体であるポリ(I:C12U)は、高用量であっても最小限の毒性を示すが、ポリ(I:C)といくつかの免疫調節特性を共有するため、ポリ(I:C12U)もまた、アジュバント活性に関して評価した。CxB6 F1マウスに2回投与のα−DEC−p24に加えて、増加する用量のポリ(I:C)またはポリ(I:C12U)を注射した。HIV gag p24ペプチドに反応したCD3+CD4+ T細胞の増殖を、ブースト1週間後に測定した。dsRNAのどちらの型もCD4+ T細胞反応を誘導し、これは用量依存性であり、そして抗原特異的であった。
【0081】
ポリ(I:C)およびポリ(I:C12U)を用いて、アジュバント活性に必要なパターン認識受容体を決定するため、野生型、TLR3−/−ヌル、またはMDA5−/−ヌル遺伝子バックグラウンドのマウスを比較した。ポリ(I:C)は、TLR3−/−ヌルマウスにおいてある程度のアジュバント活性を示したが、ポリ(I:C12U)は、驚くべきことに、同じ遺伝子バックグラウンドにおいて、CD4+ IFN−γ分泌性T細胞を誘発不能であった。どちらのアジュバントも、MDA5−/−ヌルマウスにおいて、反応を誘発した。総合すると、データによって、TLR3は、ポリ(I:C12U)のアジュバントの役割に必須であるが、ポリ(I:C)は、細胞表面受容体TLR3および細胞質ゾルセンサーMDA5の両方を利用可能でありうることが示される。
【0082】
樹状細胞は、T細胞が仲介する免疫の強力な誘導因子である。したがって、これらは、ワクチン効能の改善を模索する際の魅力的なターゲットである。例えば、抗原性タンパク質をAPC特異的表面分子にターゲティングする抗体とのコンジュゲートによって、抗原性タンパク質を選択的に送達する際、抗原提示および免疫反応は、ターゲティングされていない抗原に比較して、はるかに高い有効性で発展する。本明細書で用いる1つの受容体は、エンドサイトーシス受容体DEC−205またはCD205であり、T細胞領域中の樹状細胞上で発現される。dsRNAを単独でDC成熟刺激として用い、そして記憶を含む、CD4+ T細胞免疫の性質のいくつかの特徴を研究した。本発明者らのデータによって、dsRNAがプライム−ブースト・タンパク質ワクチンのアジュバントとして働き、優れた質および量の、長寿命でそして防御性のTh1 CD4+ T細胞を誘導する潜在能力が明らかになる。
【0083】
dsRNAをアジュバントとしたCD4+ T細胞反応の性質は、まず、その多重機能性によって示され、すなわち該T細胞はIFN−γ、TNF−α、およびIL−2などの多数のそして多量のサイトカインを産生した。DECをターゲティングするワクチンが、IFN−γを産生し、そして増殖しているCD4+ T細胞を高い頻度で誘導することもまた見出され、これは他のワクチンアプローチによる先行技術では示されていない、T細胞免疫の特徴であった。増殖性でそして多重機能性のCD4+ T細胞の頻度増加は、一般に、Th1免疫の価値ある特徴と見なされ、そしてHIVの優れた制御および森林型熱帯リーシュマニアモデルにおけるより優れた防御と関連する。
【0084】
DCをターゲティングするHIV gag p24を用いた別の興味深い結果は、DEC依存性方式での、ワクシニア−gagに対して長期に持続する防御性CD4+ T細胞免疫の誘導であった。ワクシニアに対する防御へのCD4+ T細胞の寄与を検出した。感染に対する抵抗性におけるIFN−γの非常に重要な役割を考慮すると、高レベルのIFN−γ、ならびにCD+ Th1ヘルパー細胞がターゲットとする感染MHCクラスII+によるによる溶解は、どちらも、dsRNAとともにDECにターゲティングされたタンパク質によって誘導される抵抗性に寄与しうる。
【0085】
ポリ(I:C)は、TLR3エンドソームおよびMDA5細胞質ゾル受容体の両方によって認識されうる。TLR3およびMDA5は、どちらも、ポリ(I:C)でのアジュバント作用および防御免疫に寄与することが見出された。対照的に、TLR3は、ポリ(I:C12U)のアジュバントの役割に独占的に必要である。さらに、dsRNAは、I型インターフェロンを誘導し、これが樹状細胞による交差提示およびCD8+ T細胞の生存を促進する。
【0086】
dsRNAは、マウスにおいてワクチンタンパク質に対する免疫原性を増進するアジュバントとして用いられてきているが、やはり防御性であるCD4+ T細胞反応を誘導する能力は、以前立証されていなかった。樹状細胞およびそのエンドサイトーシス受容体DEC−205への、dsRNAをアジュバントとするワクチンタンパク質のターゲティングは、いくつかの広範囲感染性疾患に対する抵抗性に関連づけられる、Th1 CD4+ T細胞免疫の特定の種類の発展を支持するはずである。
【0087】
本明細書に引用する特許、特許出願、書籍、および他の刊行物は、その全体が本明細書に援用される。
【0088】
数値範囲に言及する際、範囲内のすべての値もまた記載されることを理解しなければならない(例えば、1〜10にはまた、1および10の間のすべての整数値、ならびに2〜10、1〜5、および3〜8などのすべての中間範囲も含まれる)。用語「約」は、数値量の測定値またはばらつきと関連する統計的不確実性を指すことも可能であり、これは、本発明の操作または特許性に影響を及ぼさないことを当業者は理解するであろう。
【0089】
請求項およびその法的同等物の範囲の意味内に属するすべての修飾および置換は、請求項の範囲内に含まれるものとする。「含む(comprising)」を唱える請求項は、他の要素が請求項の範囲内に含まれることを可能にする;本発明はまた、「含む」用語の代わりに、移行句「から本質的になる(consisting essentially of)」(すなわち、これらが本発明の操作に実質的に影響を及ぼさないのであれば、他の要素を請求項の範囲内に含めることを可能にする)または「からなる(consisting of)」(すなわち、本発明に通常関連する不純物または重要ではない活性以外、請求項に列挙される要素のみを許す)を唱える請求項によっても記載される。これらの3つの移行句いずれかを用いて、本発明が請求可能である。
【0090】
請求項に明確に唱えられない限り、本明細書に記載する要素が、請求する発明の限定と見なされてはならないことを理解しなければならない。したがって、請求項内に読み込まれる明細書から限定されるのではなく、許諾される請求項が、法的保護の範囲を決定するための基礎である。対照的に、先行技術は、請求する発明を予期するかまたは新規性を破壊する特定の態様の度合いまで、本発明から明確に排除される。
【0091】
さらに、関連が請求項中に明確に唱えられない限り、請求項の限定間または限定中には、特定の関連はまったく意図されない(例えば、製品クレーム中の構成要素の配置、または方法クレーム中の工程の順序は、そのように明確に述べられていない限り、請求項の限定ではない)。本明細書に開示する個々の要素のあらゆるありうる組み合わせおよび順列が、本発明の側面とみなされる。同様に、本発明の説明の一般化は、本発明の一部と見なされる。
【0092】
前述から、当業者には、本発明の精神または本質的な特性から逸脱することなく、本発明が他の特定の型で具現化されうることが明らかであろう。本発明に提供される法的保護の範囲は、本明細書によってではなく、付随する請求項によって示されるため、記載する態様は、制限ではなく、例示としてのみ見なされなければならない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Toll様受容体3(TLR3)によってのみ仲介される自然免疫を開始する方法であって、他のToll様受容体またはRNAヘリカーゼを活性化することなく、あるいは1以上の炎症促進性サイトカインを過剰な量で誘導することなく、TLR3を活性化するのに十分な量の少なくともポリ(I:C11−14U)を、被験体に投与する工程を含む、前記方法。
【請求項2】
被験体において、自己免疫損傷または神経変性によって開始されている、少なくともサイトカイン産生または同時刺激分子シグナル伝達を、ポリ(I:C11−14U)によって再調節する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
微生物に感染した被験体を治療する方法であって、Toll様受容体3(TLR3)に結合し、そして微生物による被験体の感染を減少させるかまたは排除するのに十分な量のポリ(I:C11−14U)を含む薬学的組成物を投与する工程を含む、前記方法。
【請求項4】
被験体が、細菌、原生動物、およびウイルスからなる群より選択される微生物に感染している、請求項3記載の方法。
【請求項5】
腫瘍または他の形質転換細胞を所持する被験体を治療する方法であって、Toll様受容体3(TLR3)に結合し、そして被験体における腫瘍または他の形質転換細胞の増殖を減少させるかまたは排除するのに十分な量のポリ(I:11−14U)を含む薬学的組成物を投与する工程を含む、前記方法。
【請求項6】
被験体が、癌を引き起こすウイルスに感染している、請求項5記載の方法。
【請求項7】
少なくとも、微生物に感染しているか、あるいは腫瘍または他の形質転換細胞を所持する被験体を治療する方法であって、樹状細胞成熟を誘導するのに十分な量のポリ(I:C11−14U)を含む薬学的組成物を投与する工程を含む、前記方法。
【請求項8】
微生物または腫瘍に対して被験体にワクチン接種する方法であって、(i)微生物または腫瘍に対する免疫反応を誘導するワクチンまたは樹状細胞調製物、および(ii)Toll様受容体3(TLR3)に結合し、そして被験体において、ワクチンまたは樹状細胞調製物の微生物抗原または腫瘍抗原に対する免疫反応を刺激するのに十分な量のポリ(I:C11−14U)を含む薬学的組成物を投与する工程を含む、前記方法。
【請求項9】
微生物または癌または他の形質転換細胞が、TLR3アゴニストとしてのみ作用するポリ(I:C11−14U)の作用のみに感受性である、請求項3〜8のいずれか一項記載の方法。
【請求項10】
微生物または癌または他の形質転換細胞が、TLR3アゴニストとしてのみ作用するポリ(I:C11−14U)によって活性化される特異的サイトカイン反応パターンに感受性である、請求項3〜8のいずれか一項記載の方法。
【請求項11】
微生物または癌または他の形質転換細胞が、抗原に対する免疫反応を開始するin situターゲットとして、ポリ(I:C11−14U)に自然に選択される抗原を発現する、請求項3〜10のいずれか一項記載の方法。
【請求項12】
被験体において、微生物または癌または他の形質転換細胞によって開始されている、少なくともサイトカイン産生または同時刺激分子シグナル伝達を、ポリ(I:C11−14U)によって再調節する、請求項3〜11のいずれか一項記載の方法。
【請求項13】
被験体がヒトである、請求項1〜11のいずれか一項記載の方法。
【請求項14】
ポリ(I:C12−14U)を静脈内注入する、請求項1〜13のいずれか一項記載の方法。
【請求項15】
ポリ(I:C11−14U)を、皮内、皮下、または筋内注射するか:鼻内または気管内吸入させるか;あるいは中咽頭または舌下適用する、請求項1〜14のいずれか一項記載の方法。
【請求項16】
微生物に感染したか、癌または他の形質転換細胞を所持するか、あるいは微生物、癌細胞、または他の形質転換細胞に対してワクチン接種された被験体の免疫細胞上のToll様受容体3(TLR3)に結合する薬剤を製造するための、ミスマッチ二本鎖リボ核酸(dsRNA)の使用。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2011−525169(P2011−525169A)
【公表日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−546793(P2010−546793)
【出願日】平成21年2月17日(2009.2.17)
【国際出願番号】PCT/US2009/000959
【国際公開番号】WO2009/102496
【国際公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【出願人】(508170438)へミスフェリックス・バイオファーマ,インコーポレーテッド (5)
【Fターム(参考)】