説明

TPUからなる防水靴

【課題】優れた防水効果を有するTPUからなる防水靴を提供する。
【解決手段】後部底面から下方へ延出するヒールを備える、プレート状を呈する靴底部と、上部に形成される開口と、該靴底部の前側を被覆するように前側周囲に熱融着される前半シート体と、該靴底部の両側及び後側周囲を取り囲むように、下縁部が該靴底部の両側及び後側周囲に熱融着されると共に、前端縁が該前半シート体の後端縁に熱融着される2つの側部シート体とを備える、熱融着手段によって、該靴底部に結合されるTPU材料からなる足形部と、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に熱融着手段を用いて、継ぎ目のない結合縁部を有する密接な構成とすることにより、TPU(Thermoplastic Polyurethane)材料の熱融着性と防水性を備えたTPUからなる防水靴に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図5を示すように、従来のレインブーツは、プラスチックを射出成形技術によって一体成形してなり、防水性を具備するものである。また、従来のレインブーツは、靴底部51と、該靴底部51の上面から周囲方向に延出する足形部52と、該足形部52から上方へ延出すると共に、該足形部52の内部と連通し、上縁に足を挿入する開口が形成される筒状部53とを有するものである。
【0003】
また、図6及び図7を示すように、現在のレインブーツは、PVCやゴムなどの材料からなり、靴底部61と、足形部62と、筒状部63とを有し、該靴底部61は、プレート状を呈し、底面後部に下方へ延出するヒール部を備え、該足形部62は、複数の足部被覆用シート体と、縫合糸64とを備え、該足部被覆用シート体は、PVC或いはゴムを裁断してなるものであり、該縫合糸64は、該足部被覆用シート体を互いに縫い合わせるものである。更に、前記筒状部63は、PVC或いはゴムを裁断してなる2つの脛部被覆用シート体を備え、該2つの脛部被覆用シート体は、下縁部及び側縁部に接着剤65が塗布され、下縁部が前記足部被覆用シート体の上縁部に重着され、側縁部は互いに対応する部分が接着される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のレインブーツは、射出成形技術によって構成されるものであるため、色や外見、形状の変化に乏しく、表面の模様や図柄などの変化もあまりないので、美観に劣るという欠点があった。また、プラスチックからなる従来のレインブーツの内部には、柔軟な裏地が設けられていないことから、着用感が非常が悪く、さらに、現在のレインブーツは、従来のレインブーツに比べると、外見の変化はやや多いが、足形部62と筒状部63との間に縫合の継ぎ目があるので、水が靴の中に進入する問題があった。その上、この縫合糸64により縫合される構成は、複雑な工程や人的作業が必要となるので、製造コストを増大させてしまうといった問題もあった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、後部底面から下方へ延出するヒールを備える、プレート状を呈する靴底部と、
上部に形成される開口と、該靴底部の前側を被覆するように前側周囲に熱融着される前半シート体と、該靴底部の両側及び後側周囲を取り囲むように、下縁部が該靴底部の両側及び後側周囲に熱融着されると共に、前端縁が該前半シート体の後端縁に熱融着される2つの側部シート体とを備える、熱融着手段によって、該靴底部に結合されるTPU材料からなる足形部と、を有することを特徴とするTPUからなる防水靴、を提供する。
【0006】
前記足形部の開口の周囲に熱融着される筒状部を有することことが好ましい。
【0007】
さらに、前記筒状部は、前記足形部の内部と連通するものであり、2つの筒状シート体を有し、該2つの筒状シート体の下縁部はそれぞれ前記足形部の開口の周囲に熱融着されると共に、該2つの筒状シート体の側縁部は、足を挿入する開口を形成するように互いに対応するように融着されることが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るTPUからなる防水靴は上記の課題を解決するものであるので、外見に多彩な変化を有すると共に、防水性に優れるものである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係るTPUからなる防水靴の斜視図である。
【図2】本発明に係るTPUからなる防水靴における足形部と筒状部とが互いに熱融着する状態を示す拡大部分断面図である。
【図3】本発明に係るTPUからなる防水靴の製造過程の流れ図である。
【図4】本発明に係るTPUからなる防水靴の使用状態を示す斜視図である。
【図5】従来のレインブーツの斜視図である。
【図6】現在のレインブーツの斜視図である。
【図7】現在のレインブーツにおける足部被覆片体が縫合糸により縫合された状態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して本発明の好適な実施の形態を詳細に説明する。
【0011】
図1及び図4に示すように、本発明に係るTPUからなる防水靴は、例えば美観なブーツ、ハイヒール、ミディアムヒール、ローヒールを含み、靴底部10と、足形部20と、筒状部30と、パッド40とを有する。
【0012】
前記靴底部10は、足裏の形状のプレート状を呈し、後部にはその底面から下方へ延出する略四角状或いはテーパー状のヒール11を備え、前記足形部20は、足の形状に裁断されたシート状を呈し、熱融着性と靭性と防水性を兼ね備える環境に優しいTPU材料からなるものであり、TPU材料を加熱し溶融させる熱融着手段或いは高周波技術によって、前記靴底部10の上面周囲に結合されると共に、上部に開口21が形成される。
【0013】
前記足形部20は、足の約前側半分を被覆するものであると共に、前半シート体22と、2つの側部シート体23とを備える。前半シート体22は、前記靴底部10の前側を被覆するように前側周囲に熱融着される。該2つの側部シート体23は、該靴底部10の両側及び後側を取り囲むように、その下縁部が前記靴底部10の両側及び後部に熱融着される。該2つの側部シート体23の前端縁は、該前半シート体22の後側縁に熱融着される。該2つの側部シート体23の後端縁は重なるように熱融着される。尚、前記開口21は、該前半シート体22と側部シート体23との組み合わせにより構成される。
【0014】
図2に示すように、足形部20の前半シート体22と側部シート体23を結合する場合は、該側部シート体23の前端縁と該前半シート体22の後側縁とを重ね合わせ、熱融着手段或いは高周波によって、重ねたところを互いに融着させ、継ぎ目のない結合縁部を形成させる。この手段によれば、前記前半シート体22と側部シート体23とを、継ぎ目がないように密接させることができるのみならず、防水性も向上させるができる。
【0015】
前記筒状部30は、脛の形状に対応し裁断されたシート状のTPU材料からなるものであり、該筒状部30の下縁部が、上縁部に足を挿入する開口が形成されるように前記足形部20の開口21の周囲に熱融着される。さらに、前記筒状部30は、前記足形部20の内部と連通させるために、熱融着により筒状とする2つの筒状シート体31を備える。該2つの筒状シート体31の下縁部はそれぞれ、該足形部20の開口21の周囲に熱融着される。尚、該2つの筒状シート体31の側縁部は互いに対応して、上縁部に足を挿入する開口を形成させるように、熱融着手段或いは高周波によって融着される。
また、前記パッド40は、心地よい着用感を提供するために、前記足形部20及び筒状部30の内面に縫合される柔軟性を有する。
【0016】
前記足形部20及び筒状部30は、熱融着性、靱性、弾力性及び防水性に優れたTPU材料からなるものであり、また、該足形部20及び筒状部30は、縫合糸を使用せず、熱融着手段或いは高周波を用いることにより、継ぎ目をなくし、防水性を向上させている。さらに、本発明に係るTPUからなる防水靴は、TPU材料の特性によって、例えば、針や、ペンなどの鋭いものに刺されてもその開口部を自動的に封止することができる。また、TPU材料は環境に優しい材料であるので、TPUからなる防水靴を廃棄する場合、直接土に埋めても自然分解させることができる。
【0017】
図3に示すように、本発明に係るTPUからなる防水靴は、先ず靴底部10を形成すると共に、適当な形状に裁断してTPU材料の足形部20及び筒状部30を形成する。そして、熱融着手段により足形部20の下縁部を靴底部10の周囲に熱融着させると共に、筒状部30の下縁部を足形部20の開口21の周囲に熱融着させ、パッド40を足形部20及び筒状部30の内面に縫合する。最後に、該足形部20の内部に靴の中敷を設置すれば、TPUからなる防水靴の完成となる。
【0018】
本発明に係るTPUからなる防水靴は、靴底部10と足形部20と筒状部30とを熱融着構造することによって、継ぎ目のない結合縁部を備えることから、完全防水機能を提供することができる。さらに、本発明は、縫合手段を使わないことから、人的作業も最小限に抑えることができるので、製造コストを大幅に下げることができる。また、前記足形部20の内部に中敷きを設置すると共に、該足形部20と筒状部30の内面にもパッド40を備えるので、快適な着用感を提供することができる。
【0019】
本発明は上記の構成を有するので、熱融着構造により、TPU材料からなる靴底部と足形部と筒状部による継ぎ目のない構成を用いることで、優れた履き心地と、完全防水機能を提供することができる。
【符号の説明】
【0020】
10・・・・・・靴底部
11・・・・・・ヒール
20・・・・・・足形部
21・・・・・・開口
22・・・・・・前半シート体
23・・・・・・側部シート体
30・・・・・・筒状部
31・・・・・・筒状シート体
40・・・・・・パッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
後部底面から下方へ延出するヒールを備える、プレート状を呈する靴底部と、
上部に形成される開口と、該靴底部の前側を被覆するように前側周囲に熱融着される前半シート体と、該靴底部の両側及び後側周囲を取り囲むように、下縁部が該靴底部の両側及び後側周囲に熱融着されると共に、前端縁が該前半シート体の後端縁に熱融着される2つの側部シート体とを備える、熱融着手段によって、該靴底部に結合されるTPU材料からなる足形部と、を有することを特徴とするTPUからなる防水靴。
【請求項2】
前記足形部の開口の周囲に熱融着される筒状部を有することを特徴とする請求項1に記載のTPUからなる防水靴。
【請求項3】
前記筒状部は、前記足形部の内部と連通するものであり、2つの筒状シート体を有し、該2つの筒状シート体の下縁部はそれぞれ前記足形部の開口の周囲に熱融着されると共に、該2つの筒状シート体の側縁部は、足を挿入する開口を形成するように互いに対応するように融着されることを特徴とする請求項2に記載のTPUからなる防水靴。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−104355(P2011−104355A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−221347(P2010−221347)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(503006501)
【Fターム(参考)】