UVレーザ発生装置
【課題】レーザ出射部が小型且つポータブルで、フレキシブルに取り扱うことが出来、自由な位置又は方向へのUV光の照射が可能で信頼性の高いUVレーザ発生装置を提供する。
【解決手段】基本波発生用レーザ装置1,集光レンズ14,SHG変換結晶10,1/2波長板11及びTHG変換結晶12より構成されるUVレーザ発生装置であって、前記SHG変換結晶10,1/2波長板11及びTHG変換結晶12を一体化してモノリシック波長変換素子9を構成すると共に、このモノリシック波長変換素子9と前記集光レンズ14を筐体8a内に収納して第3高調波発生装置8を構成し、この第3高調波発生装置8と前記基本波発生用レーザ装置1とをシングルモード光ファイバ17を介して連繋する。
【解決手段】基本波発生用レーザ装置1,集光レンズ14,SHG変換結晶10,1/2波長板11及びTHG変換結晶12より構成されるUVレーザ発生装置であって、前記SHG変換結晶10,1/2波長板11及びTHG変換結晶12を一体化してモノリシック波長変換素子9を構成すると共に、このモノリシック波長変換素子9と前記集光レンズ14を筐体8a内に収納して第3高調波発生装置8を構成し、この第3高調波発生装置8と前記基本波発生用レーザ装置1とをシングルモード光ファイバ17を介して連繋する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小型で取り扱い易く、しかも自由な位置及び任意の方向へのUVレーザの照射が可能なモノリシック波長変換素子を用いたUVレーザ発生装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、図1に示すような、近赤外レーザ発生装置(基本波発生用レーザ装置)1、集光レンズ2、第2高調波変換結晶(以下、SHG変換結晶という)3、1/2波長板4、色消しレンズ5、第3高調波変換結晶(以下、THG変換結晶という)6を重く大型の光学定盤7に離れて配置したUVレーザ光発光装置が製品化されている。
【0003】
この従来のUVレーザ発生装置は、近赤外レーザ発生装置1から出射された基本波ω(例えば、Nd:YAG,Nd:YVO4レーザでは波長1.06μm,Nd:YLFレーザでは波長1.05μm,Yb:YAGレーザでは波長1.03−1.05μm)を、集光レンズ2を介してSHG変換結晶3に入射させ、その一部を第2高調波2ω(例えば、Nd:YAG,Nd:YVO4レーザでは波長0.532μm,Nd:YLFレーザでは波長0.52μmまたは0.527μm,Yb:YAGレーザでは波長0.515−0.525μm)に波長変換して出射させ、1/2波長板4によってSHG変換結晶3から出射した基本波ωと第2高調波2ωの偏光方向を調整し、THG変換結晶6がType1の場合は偏光方向を平行に、Type2の場合は直交するように位相整合される。
【0004】
そして、偏光方向を1/2波長板4によって調整された基本波ωと第2高調波2ωは、2波長に対して焦点距離が等しい色消しレンズ5により色補正されて、THG変換結晶6に入射して、第3高調波3ω(例えば、Nd:YAG,Nd:YVO4レーザでは波長0.355μm,Nd:YLFレーザでは波長0.0349μmまたは0.351μm,Yb:YAGレーザでは波長0.343−0.350μm)に波長変換されて出射する。
【0005】
一般に波長変換結晶は高精度の光学調整と最適な動作温度に保つ結晶加熱ヒータを必要とするため、大きな筐体の中に各素子を別個に配置し、振動防止のため重く大型の光学定盤7に設置する構成となっていた。そのため、大型で取扱いが面倒になり、顕微鏡や蛍光分析などの理化学機器に組込む事や医療現場での応用が大きく制限されていた。
【0006】
また、UV光は光ファイバを損傷させるため、UVレーザ発生装置の出射側に光ファイバを用いてUV光を任意の位置、又は方向へ自由に照射するという、UVレーザ発生装置の実現は困難視されていた。
【非特許文献1】日本科学エンジニアリング、「GdYCOB結晶の劣化改善及び防止方法」、紫外光発生用非線型光学結晶技術実用化検討会 平成12年度成果報告書、(財)大阪科学技術センター、平成13年3月、p25 図3
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明は、レーザ出射部が小型且つポータブルで、フレキシブルに取扱うことができ、自由な位置又は方向へのUV光の照射が可能で信頼性の高いUVレーザ発生装置を提供すると共に、更には、UV光を目標位置に適確に照射可能とするUVレーザ発生装置を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するために、種々研究の結果、図2に示すように、第3高調波発生装置8の小型化を図り、この第3高調波発生装置8を基本波発生用レーザ装置1とシングルモード光ファイバ17で連繋する構成としたものである。
【0009】
即ち、第1の発明は、基本波発生用レーザ装置,集光レンズ,SHG変換結晶,1/2波長板及びTHG変換結晶より構成されるUVレーザ発生装置であって、前記SHG変換結晶,1/2波長板及びTHG変換結晶を一体化してモノリシック波長変換素子を構成すると共に、このモノリシック波長変換素子と前記集光レンズを筐体内に収納して第3高調波発生装置を構成し、この第3高調波発生装置と前記基本波発生用レーザ装置とをシングルモード光ファイバを介して連繋したことを特徴とするUVレーザ発生装置である。
【0010】
第2の発明は、第1の発明において、第2高調波変換結晶、1/2波長板及び第3高調波変換結晶とが、オプティカルコンタクト、融着、接着剤、および一つのモールドに固定する方法のいずれか1によって一体化されてなるUVレーザ発生装置である。
【0011】
第3の発明は、基本波発生用レーザ装置,集光レンズ,SHG変換結晶及びTHG変換結晶より構成されるUVレーザ発生装置であって、前記SHG変換結晶とTHG変換結晶を一体化してモノリシック波長変換素子を構成すると共に、このモノリシック波長変換素子と前記集光レンズを筐体内に収納して第3高調波発生装置を構成し、この第3高調波発生装置と前記基本波発生用レーザ装置とをシングルモード光ファイバを介して連繋し、且つ前記筐体の集光レンズ前に1/4波長板を配置したことを特徴とするUVレーザ発生装置である。
【0012】
第4の発明は、第3の発明において、第2高調波変換結晶と第3高調波変換結晶とがオプティカルコンタクト、融着、接着剤、および一つのモールドに固定する方法のいずれか1によって一体化したことを特徴とするUVレーザ発生装置である。
【0013】
第5の発明は、前記第1ないし第4の発明にかかるUVレーザ発生装置を用いて、UV光を照射する場合、例えば医療用の場合などのように目標位置に適確にUV光を照射させるため工夫したものであって、前記シングルモード光ファイバの中間に、光方向性結合器を設け、この光方向性結合器にガイド光用レーザ発生装置からシングルモード光ファイバを介して、ガイド光用レーザを入力させ、第3高調波発生装置からガイド光用レーザを出射させるように構成したものである。
【0014】
なお、第1ないし第5の発明において、仕様に応じて第3高調波波発生装置のUVレーザ出射側にUVレーザを目標位置に集光させる単焦点レンズやズームレンズ(焦点距離可変レンズ)等の集光手段を設けることがある。
【発明の効果】
【0015】
以上、第1の発明によれば、SHG変換結晶、1/2波長板及びTHG変換結晶を一体化することで、各変換結晶間の距離が従来250mm程度必要だったものが20〜30mm程度に短くすることができ、それに伴い、第3高調波発生装置を小型・軽量化することができると共に、基本波発生用レーザ装置と第3高調波発生装置とをシングルモード光ファイバで連繋することにより、第3高調波発生装置をポータブル化及び自由な位置又は任意の方向へのUV光照射が可能となり、用途が著しく拡大されることになった。
【0016】
本発明で用いるシングルモード光ファイバとしては、一般に用いられているコア直径が4〜8μmのコアとクラッドからなる(実用上保護ジャケットを付したものを用いる)光ファイバや、クラッドに相当する部分に空孔を設けたシングルモード・フォトニック結晶光ファイバを用いることができる。
【0017】
基本波発生用レーザ装置と第3高調波発生装置の連繋に使用する光ファイバには、シングルモード光ファイバを用いる。伝送するレーザが基本波であるため、UV光よりも光ファイバの損傷閾値が大きく、大出力の伝送が可能である。なお、マルチモード光ファイバでは、ビーム品質に劣化が生じるため使用できない。
【0018】
第2の発明は、第1の発明におけるモノシリック波長変換素子を構成する方法を特定するものである。
【0019】
第3の発明は、第1の発明に比べてモノリシック波長変換素子に1/2波長板を含まないため、オプティカルコンタクトによる製造工程が簡素化されると共に、波長変換結晶の厳密な寸法管理が不要となり実用化が向上した。また1/4波長板によってシングルモード光ファイバにより楕円偏光となった基本波ωの偏光方向が補正されるので、第1の発明のような1/2波長板が不要になると共に、伝送するものは基本波ωであるから、通常のシングルモード光ファイバを使用しても劣化し、支障をきすことがなく、また1/4波長板を回転させることで基本波ωの偏光方向を調整することができるので、環境に応じて波
長変換の効率を一定に保つことができる。
【0020】
第4の発明は、第3の発明におけるモノシリック波長変換素子を構成する方法を特定するものである。
【0021】
第5の発明によれば、ガイド光用レーザ発生装置からガイド光用レーザをシングルモード光ファイバ、光方向性結合器、シングルモード光ファイバ及び第3高調波発生装置を介して、ガイド光レーザを目標位置に出射させることにより、第3高調波発生装置から出射させるUV光の出射方向の位置決めを適確に行うことが出来、例えば医療用のUVレーザ発生装置の場合、ピンポイント照射が適確となり、目標位置以外の組織の損傷を少なくするUVレーザ発生装置を提供することが出来る。
【0022】
以上の第1ないし第4の発明によれば、レーザ出射部である第3高調波発生装置が小型且つポータブルで光ファイバで基本波発生用レーザ装置と連繋されているため、レーザ出射部がフレキシブルに取り扱うことができるUVレーザ光源が実現できるので、従来、装置が大掛かりであるために応用が大きく制限されていた、生体・高分子材料用レーザ加工・マーキング装置、蛍光分析装置、医療機器等への紫外レーザ導入が急速に進むため、これらの産業分野、基礎科学、医療の発展に大きな貢献を果たす。
【0023】
しかも、本発明における第3高調波発生装置は、小型であるばかりでなく、光学系が筐体内に固定されているため、振動、衝撃等の外乱に対して安定であり、従って使い勝手が頗る良いという特長がある。
【0024】
更に第5の発明によれば、同一の第3高調波発生装置より、ガイド光用レーザが出射するように構成されているため、適確に目標位置にUV光を照射させることができるUVレーザ発生装置を提供することが出来る。
【0025】
なお、段落〔0014〕で述べたように第3高調波発生装置のUVレーザ出射側に仕様に応じて集光手段を選択して設けることにより、適切なワーキングディスタンスを採ることができる。
【実施例1】
【0026】
図3は、第1の発明の具体的実施例の要部構成を示す縦断側面図、図4は、図3の実施例1における第3高調波発生装置(波長変換部)8の光学系を示し、図5は、モノリシック波長変換素子の各変換結晶を通過した場合の偏光方向を説明する説明図で、8aは第3高調波発生装置8の筐体、9はSHG変換結晶10と1/2波長板11及びTHG変換結晶12をオプティカルコンタクト法を用いて一体化したモノリシック波長変換素子、13は前記モノリシック波長変換素子9の温度制御用のペルチェ素子を備えた入射角度の調整が可能なマウンタ、14は集光レンズ、15は入射側のコリメータレンズ、16は出射側
のコリメータレンズ、17はコネクタ8bを介して第3高調波発生装置8の筐体8aに接続され、近赤外レーザ発生装置1から出射される基本波ωを導光するシングルモード光ファイバである。
【0027】
一体化する方法としては、前記のオプティカルコンタクトする方法の外、研磨して密着させた加熱圧着する方法、光学ボンドを用いる方法、またはエアギャップを設けて素子の一つのモールドにマウントする方法等がある。
【0028】
実施例ではSHG変換結晶10の材料として、Type2のKTPを、またTHG変換結晶12の材料として、Type1のGdYCOBを使用したが、この材料のみに限定されるものではなく、例えば、SHG変換結晶10としてはType2のKTP,LBO,KDP,YCOB等が使用でき、THG変換結晶12としては、Type1のGdYCOB,LBO,BBO,YCOBとType2のLBO,CBO,CLBO等が使用できる。
【0029】
しかし乍ら、KTPは位相整合温度許容幅が広い特長を有し、GdYCOBは非臨界位相整合するため角度許容幅が極めて広いという特徴があり、2つの結晶が互いを補う形で広い許容幅を示すため、モノシリック波長変換素子に用いる最適な結晶の組合せの一つである。従って簡単な温度制御と光軸調節で高い波長変換効率を得ることができる。テストの結果、SHG変換結晶10として、Type2のKTPを、またTHG変換結晶12の材料として、Type1のGdYCOBを用いる組合せが最適であった。
【0030】
この実施例では、シングルモード光ファイバ17によって導光された基本波ωのレーザ光は集光レンズ14によりモノリシック波長変換素子9に集光され、SHG変換結晶10により基本波ωの一部は第2高調波2ωへ波長変換される。そしてSHG変換結晶10を通過した基本波ωは1/2波長板11により偏光方向を第2高調波2ωと平行になるように回転され、THG変換結晶12により第3高調波3ωに波長変換される。そして前記第3高調波3ωはコリメータレンズ16により平行光として第3高調波発生装置8から出射される。
【0031】
図6は、実施例における基本波レーザのパワーと第3高調波の出力パワーの関係を示すもので、UVレーザ発生装置として優れた性能を持つものであることを示している。
【0032】
以上説明した実施例では、基本波発生用レーザ装置(近赤外線レーザ発生装置)1として、YVO4レーザを用いたが、YVO4レーザのみに限定されるものではなく、最近進歩が著しいファイバレーザを用いることにより小型で高出力のUVレーザ発生装置を提供することができる。
【0033】
なお、図3において、第3高調波発生装置8のUVレーザの出射側に設けた想像線で図示した部分は、単焦点レンズやズームレンズなどの集光手段81で、この集光手段81を設ける場合には、そのレンズ系にコリメータレンズ16を組み込むことがあるのは勿論である。
【実施例2】
【0034】
図7は、実施例1に示した構成のUVレーザ発生装置に、第5の発明を適用した場合の実施例の構成を示す概略図で、1は基本波発生用レーザ装置(近赤外線レーザ発生装置)、17,17’17”はシングルモード光ファイバ、8は第3高調波発生装置である。
【0035】
図2に示した実施例1との相違点は、シングルモード光ファイバ17と17’の間に光方向性結合器29を設け、この光方向性結合器29の入力側にHeNeレーザ、半導体レーザ等を用いたガイド光用レーザ発生装置30をシングルモード光ファイバ17”を介して接続したことである。
【0036】
この構成によると、ガイド光用レーザ発生装置30から出射されるガイド光用レーザは、シングルモード光ファイバ17”、光方向性結合器29、シングルモード光ファイバ17’及び第3高調波発生装置8を介して第3高調波発生装置8から出射するUVレーザと同じ方向に出射される。
【0037】
そして、この場合ガイド光用レーザは赤色であるため、どの位置にUVレーザが照射されるかをオペレータに肉視させるため、目標位置にUVレーザが出射させるように第3高調波発生装置8の位置決めをすることが出来る。
【0038】
従って、例えば医療用としてこのUVレーザ発生装置を用いる場合、基本波発生用レーザ装置(近赤外線レーザ発生装置)1を起動させる前に、ガイド光用レーザ発生装置30を起動させて、第3高調波発生装置8の出射方向の位置決めを行い、次いで、ガイド光用レーザ発生装置30を起動させたまま、あるいは停止させてから基本波発生用レーザ装置(近赤外線レーザ発生装置)1を起動させることにより、適確に目標位置にUV光を照射させることが出来る。
【実施例3】
【0039】
図8は、第4の発明の実施例の要部構成を示す縦断側面図、図9は、図8の実施例3における第3高調波発生装置18の光学的構成を示し、図10は、1/4波長板23とモノリシック波長変換素子19の各波長変換結晶を通過した場合の偏光方向を説明する説明図である。
【0040】
図中18aは第3高調波発生装置18の筐体、19はSHG変換結晶20とTHG変換結晶21をオプティカルコンタクト法を用いて、一体化したモノリシック波長変換素子、22は前記モノリシック波長変換素子19の温度制御用のペルチェ素子を備えた入射角度の調整が可能なマウンタ、23は筐体18に回動自在に設けられた1/4波長板である。24は1/4波長板23を回転させるための回転ノブ、25は集光レンズ、26,27はコリメータレンズ、28はコネクタ18bを介して筐体18に接続され、近赤外レーザ発生装置1から出射される基本波ωを導光するシングルモード光ファイバである。
【0041】
この実施例3でも前記実施例1と同様に、SHG変換結晶20の材料として、Type2のKTPを、またTHG変換結晶の材料として、Type1のGdYCOBを使用した。そして一体化する方法としては、前記のオプティカルコンタクトする方法の外、研磨して密着させた加熱圧着する方法、光学ボンドを用いる方法、またはエアギャップを設けて素子の一つのモールドにマウントする方法等がある。
【0042】
この実施例ではシングルモード光ファイバ28から導光された基本波ωはコリメータレンズ26と1/4波長板23を通り集光レンズ25によりモノリシック波長変換素子19に集光され、SHG変換結晶20により基本波ωの一部は第2高調波2ωへ変換される。そしてSHG変換結晶20を通過した基本波ωは、図11(b)に示すように1/4波長板23とSHG変換結晶20より偏光方向を第2高調波2ωと略平行になるように調節され、THG変換結晶21により第3高調波3ωに波長変換される。そして前記第3高調波3ωはコリメータレンズ27により平行光として第3高調波発生装置19から出射される。
【0043】
この実施例3の場合も、図6に示すように実施例1の場合と同様に、優れた性能が得られている。
【0044】
1/4波長板23がない場合は、図11(a)に示すように基本波ωは楕円偏光となり第2高調波2ωと偏光方向が平行にならない場合があり、モノリシック波長変換素子19は高い変換効率で第3高調波3ωを発生することができない。
【0045】
前記実施例3によれば、1/4波長板23とモノリシック波長変換素子19を使用することで実施例1に比べてモノシリック波長変換素子の製作が容易になる。即ち、一体化が容易になるばかりでなく、実施例1の場合、SHG変換結晶の長さの精度を少なくとも1μmを必要としたが、SHG結晶を通過した基本波ωの偏光を1/4波長板23を回転ノブ24により回転させることにより、基本波ωの偏光方向を調節することができるため、そのような厳しい製作条件は必要としなくなる。またマウンタ22により第3高調波3ω発生が最大となるように、モノリシック波長変換素子19の位置、入射角度等の集光条
件、及び変換結晶の温度を調整することができる。
【0046】
なお、実施例1及び実施例3で、SHG変換結晶の材料として、Type2のKTPを、また、THG変換結晶の材料としてType1のGdYCOBを使用したが、第3高調波に変換できる波長変換結晶の組合せであれば、これらの材料に限定されるものではないことは勿論である。
【0047】
また、この実施例2の場合も実施例1の場合と同様に第3高調波発生装置18のUVレーザ出射側に仕様に応じて単焦点レンズやズームレンズなどの集光手段181を設けることもできる。
【実施例4】
【0048】
図12は、実施例3に示した構成のUVレーザ発生装置に第5の発明を適用した場合の実施例4の構成を示す概略図で、1は基本波発生用レーザ装置(近赤外線レーザ発生装置)、17、17’、17”はシングルモード光ファイバ、19は第3高調波発生装置、29はシングルモード光ファイバ17と17’の間に設けた光方向結合器、30は前記光方向性結合器29の入力側にシングルモード光ファイバ17”を介して接続したHeNeレーザ、半導体レーザ等を用いたガイド光用レーザ発生装置である。
【0049】
この実施例4は、実施例2と第3高調波発生装置が異なるだけであり、実施例2の場合と同様に、適確に目標位置にUV光を照射させることが出来、UVレーザ発生装置として優れたものである。
【0050】
以上の説明から明らかなように、本発明にかかるUVレーザ発生装置は、レーザ出射部、即ち第3高調波発生装置が小型でフレキシブルに取り扱えるものを実現したものであり、大型で取扱いが面倒なため応用が大きく制限されていた、生体・高分子材料用レーザ加工・マーキング装置、蛍光分析装置、医用機器などへのUVレーザ導入が急速に進むため、これらの産業分野、基礎科学、医療の発展に大きく貢献するものである。
【0051】
また、第5の発明によれば、UV光を目標位置に適確に照射させることが容易となり、実用上使い勝手の良いUVレーザ発生装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】従来のUVレーザ発生装置の構成を示す概略説明図。
【図2】第1の発明の基本構成を示す概略図。
【図3】第1の発明の実施例の要部構成を示す縦断側面図。
【図4】図3の実施例における第3高調波発生装置の光学系の構成を示す 説明図。
【図5】実施例1に示すモノリシック波長変換素子の各変換結晶を通過した場合の偏光方向を説明する説明図。
【図6】実施例1及び実施例3の基本波レーザのパワーと第3高調波の出力パワーの関係を示す図。
【図7】第5の発明を実施例1のUVレーザ発生装置に適用した場合の構成を示す概略図。
【図8】第3の発明の実施例の要部構成を示す縦断側面図。
【図9】図8の実施例における第3高調波発生装置の光学系の構成を示す説明図。
【図10】図8に示すモノリシック波長変換素子の各変換結晶を通過した場合の偏光方向を説明する説明図。
【図11】実施例3における基本波ωと第2高調波2ωの偏光方向を示す図で、(a)は1/4波長板がない場合、(b)は1/4波長板がある場合。
【図12】実施例4の構成を示す概略図。
【符号の説明】
【0053】
1 近赤外レーザ発生装置
8 第3高調波発生装置
8a 筐体
9 モノリシック波長変換素子
10 SHG変換結晶
11 1/2波長板
12 THG変換結晶
13 マウンタ
14 集光レンズ
15,16 コリメータレンズ
17 シングルモード光ファイバ
【技術分野】
【0001】
本発明は、小型で取り扱い易く、しかも自由な位置及び任意の方向へのUVレーザの照射が可能なモノリシック波長変換素子を用いたUVレーザ発生装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、図1に示すような、近赤外レーザ発生装置(基本波発生用レーザ装置)1、集光レンズ2、第2高調波変換結晶(以下、SHG変換結晶という)3、1/2波長板4、色消しレンズ5、第3高調波変換結晶(以下、THG変換結晶という)6を重く大型の光学定盤7に離れて配置したUVレーザ光発光装置が製品化されている。
【0003】
この従来のUVレーザ発生装置は、近赤外レーザ発生装置1から出射された基本波ω(例えば、Nd:YAG,Nd:YVO4レーザでは波長1.06μm,Nd:YLFレーザでは波長1.05μm,Yb:YAGレーザでは波長1.03−1.05μm)を、集光レンズ2を介してSHG変換結晶3に入射させ、その一部を第2高調波2ω(例えば、Nd:YAG,Nd:YVO4レーザでは波長0.532μm,Nd:YLFレーザでは波長0.52μmまたは0.527μm,Yb:YAGレーザでは波長0.515−0.525μm)に波長変換して出射させ、1/2波長板4によってSHG変換結晶3から出射した基本波ωと第2高調波2ωの偏光方向を調整し、THG変換結晶6がType1の場合は偏光方向を平行に、Type2の場合は直交するように位相整合される。
【0004】
そして、偏光方向を1/2波長板4によって調整された基本波ωと第2高調波2ωは、2波長に対して焦点距離が等しい色消しレンズ5により色補正されて、THG変換結晶6に入射して、第3高調波3ω(例えば、Nd:YAG,Nd:YVO4レーザでは波長0.355μm,Nd:YLFレーザでは波長0.0349μmまたは0.351μm,Yb:YAGレーザでは波長0.343−0.350μm)に波長変換されて出射する。
【0005】
一般に波長変換結晶は高精度の光学調整と最適な動作温度に保つ結晶加熱ヒータを必要とするため、大きな筐体の中に各素子を別個に配置し、振動防止のため重く大型の光学定盤7に設置する構成となっていた。そのため、大型で取扱いが面倒になり、顕微鏡や蛍光分析などの理化学機器に組込む事や医療現場での応用が大きく制限されていた。
【0006】
また、UV光は光ファイバを損傷させるため、UVレーザ発生装置の出射側に光ファイバを用いてUV光を任意の位置、又は方向へ自由に照射するという、UVレーザ発生装置の実現は困難視されていた。
【非特許文献1】日本科学エンジニアリング、「GdYCOB結晶の劣化改善及び防止方法」、紫外光発生用非線型光学結晶技術実用化検討会 平成12年度成果報告書、(財)大阪科学技術センター、平成13年3月、p25 図3
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明は、レーザ出射部が小型且つポータブルで、フレキシブルに取扱うことができ、自由な位置又は方向へのUV光の照射が可能で信頼性の高いUVレーザ発生装置を提供すると共に、更には、UV光を目標位置に適確に照射可能とするUVレーザ発生装置を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するために、種々研究の結果、図2に示すように、第3高調波発生装置8の小型化を図り、この第3高調波発生装置8を基本波発生用レーザ装置1とシングルモード光ファイバ17で連繋する構成としたものである。
【0009】
即ち、第1の発明は、基本波発生用レーザ装置,集光レンズ,SHG変換結晶,1/2波長板及びTHG変換結晶より構成されるUVレーザ発生装置であって、前記SHG変換結晶,1/2波長板及びTHG変換結晶を一体化してモノリシック波長変換素子を構成すると共に、このモノリシック波長変換素子と前記集光レンズを筐体内に収納して第3高調波発生装置を構成し、この第3高調波発生装置と前記基本波発生用レーザ装置とをシングルモード光ファイバを介して連繋したことを特徴とするUVレーザ発生装置である。
【0010】
第2の発明は、第1の発明において、第2高調波変換結晶、1/2波長板及び第3高調波変換結晶とが、オプティカルコンタクト、融着、接着剤、および一つのモールドに固定する方法のいずれか1によって一体化されてなるUVレーザ発生装置である。
【0011】
第3の発明は、基本波発生用レーザ装置,集光レンズ,SHG変換結晶及びTHG変換結晶より構成されるUVレーザ発生装置であって、前記SHG変換結晶とTHG変換結晶を一体化してモノリシック波長変換素子を構成すると共に、このモノリシック波長変換素子と前記集光レンズを筐体内に収納して第3高調波発生装置を構成し、この第3高調波発生装置と前記基本波発生用レーザ装置とをシングルモード光ファイバを介して連繋し、且つ前記筐体の集光レンズ前に1/4波長板を配置したことを特徴とするUVレーザ発生装置である。
【0012】
第4の発明は、第3の発明において、第2高調波変換結晶と第3高調波変換結晶とがオプティカルコンタクト、融着、接着剤、および一つのモールドに固定する方法のいずれか1によって一体化したことを特徴とするUVレーザ発生装置である。
【0013】
第5の発明は、前記第1ないし第4の発明にかかるUVレーザ発生装置を用いて、UV光を照射する場合、例えば医療用の場合などのように目標位置に適確にUV光を照射させるため工夫したものであって、前記シングルモード光ファイバの中間に、光方向性結合器を設け、この光方向性結合器にガイド光用レーザ発生装置からシングルモード光ファイバを介して、ガイド光用レーザを入力させ、第3高調波発生装置からガイド光用レーザを出射させるように構成したものである。
【0014】
なお、第1ないし第5の発明において、仕様に応じて第3高調波波発生装置のUVレーザ出射側にUVレーザを目標位置に集光させる単焦点レンズやズームレンズ(焦点距離可変レンズ)等の集光手段を設けることがある。
【発明の効果】
【0015】
以上、第1の発明によれば、SHG変換結晶、1/2波長板及びTHG変換結晶を一体化することで、各変換結晶間の距離が従来250mm程度必要だったものが20〜30mm程度に短くすることができ、それに伴い、第3高調波発生装置を小型・軽量化することができると共に、基本波発生用レーザ装置と第3高調波発生装置とをシングルモード光ファイバで連繋することにより、第3高調波発生装置をポータブル化及び自由な位置又は任意の方向へのUV光照射が可能となり、用途が著しく拡大されることになった。
【0016】
本発明で用いるシングルモード光ファイバとしては、一般に用いられているコア直径が4〜8μmのコアとクラッドからなる(実用上保護ジャケットを付したものを用いる)光ファイバや、クラッドに相当する部分に空孔を設けたシングルモード・フォトニック結晶光ファイバを用いることができる。
【0017】
基本波発生用レーザ装置と第3高調波発生装置の連繋に使用する光ファイバには、シングルモード光ファイバを用いる。伝送するレーザが基本波であるため、UV光よりも光ファイバの損傷閾値が大きく、大出力の伝送が可能である。なお、マルチモード光ファイバでは、ビーム品質に劣化が生じるため使用できない。
【0018】
第2の発明は、第1の発明におけるモノシリック波長変換素子を構成する方法を特定するものである。
【0019】
第3の発明は、第1の発明に比べてモノリシック波長変換素子に1/2波長板を含まないため、オプティカルコンタクトによる製造工程が簡素化されると共に、波長変換結晶の厳密な寸法管理が不要となり実用化が向上した。また1/4波長板によってシングルモード光ファイバにより楕円偏光となった基本波ωの偏光方向が補正されるので、第1の発明のような1/2波長板が不要になると共に、伝送するものは基本波ωであるから、通常のシングルモード光ファイバを使用しても劣化し、支障をきすことがなく、また1/4波長板を回転させることで基本波ωの偏光方向を調整することができるので、環境に応じて波
長変換の効率を一定に保つことができる。
【0020】
第4の発明は、第3の発明におけるモノシリック波長変換素子を構成する方法を特定するものである。
【0021】
第5の発明によれば、ガイド光用レーザ発生装置からガイド光用レーザをシングルモード光ファイバ、光方向性結合器、シングルモード光ファイバ及び第3高調波発生装置を介して、ガイド光レーザを目標位置に出射させることにより、第3高調波発生装置から出射させるUV光の出射方向の位置決めを適確に行うことが出来、例えば医療用のUVレーザ発生装置の場合、ピンポイント照射が適確となり、目標位置以外の組織の損傷を少なくするUVレーザ発生装置を提供することが出来る。
【0022】
以上の第1ないし第4の発明によれば、レーザ出射部である第3高調波発生装置が小型且つポータブルで光ファイバで基本波発生用レーザ装置と連繋されているため、レーザ出射部がフレキシブルに取り扱うことができるUVレーザ光源が実現できるので、従来、装置が大掛かりであるために応用が大きく制限されていた、生体・高分子材料用レーザ加工・マーキング装置、蛍光分析装置、医療機器等への紫外レーザ導入が急速に進むため、これらの産業分野、基礎科学、医療の発展に大きな貢献を果たす。
【0023】
しかも、本発明における第3高調波発生装置は、小型であるばかりでなく、光学系が筐体内に固定されているため、振動、衝撃等の外乱に対して安定であり、従って使い勝手が頗る良いという特長がある。
【0024】
更に第5の発明によれば、同一の第3高調波発生装置より、ガイド光用レーザが出射するように構成されているため、適確に目標位置にUV光を照射させることができるUVレーザ発生装置を提供することが出来る。
【0025】
なお、段落〔0014〕で述べたように第3高調波発生装置のUVレーザ出射側に仕様に応じて集光手段を選択して設けることにより、適切なワーキングディスタンスを採ることができる。
【実施例1】
【0026】
図3は、第1の発明の具体的実施例の要部構成を示す縦断側面図、図4は、図3の実施例1における第3高調波発生装置(波長変換部)8の光学系を示し、図5は、モノリシック波長変換素子の各変換結晶を通過した場合の偏光方向を説明する説明図で、8aは第3高調波発生装置8の筐体、9はSHG変換結晶10と1/2波長板11及びTHG変換結晶12をオプティカルコンタクト法を用いて一体化したモノリシック波長変換素子、13は前記モノリシック波長変換素子9の温度制御用のペルチェ素子を備えた入射角度の調整が可能なマウンタ、14は集光レンズ、15は入射側のコリメータレンズ、16は出射側
のコリメータレンズ、17はコネクタ8bを介して第3高調波発生装置8の筐体8aに接続され、近赤外レーザ発生装置1から出射される基本波ωを導光するシングルモード光ファイバである。
【0027】
一体化する方法としては、前記のオプティカルコンタクトする方法の外、研磨して密着させた加熱圧着する方法、光学ボンドを用いる方法、またはエアギャップを設けて素子の一つのモールドにマウントする方法等がある。
【0028】
実施例ではSHG変換結晶10の材料として、Type2のKTPを、またTHG変換結晶12の材料として、Type1のGdYCOBを使用したが、この材料のみに限定されるものではなく、例えば、SHG変換結晶10としてはType2のKTP,LBO,KDP,YCOB等が使用でき、THG変換結晶12としては、Type1のGdYCOB,LBO,BBO,YCOBとType2のLBO,CBO,CLBO等が使用できる。
【0029】
しかし乍ら、KTPは位相整合温度許容幅が広い特長を有し、GdYCOBは非臨界位相整合するため角度許容幅が極めて広いという特徴があり、2つの結晶が互いを補う形で広い許容幅を示すため、モノシリック波長変換素子に用いる最適な結晶の組合せの一つである。従って簡単な温度制御と光軸調節で高い波長変換効率を得ることができる。テストの結果、SHG変換結晶10として、Type2のKTPを、またTHG変換結晶12の材料として、Type1のGdYCOBを用いる組合せが最適であった。
【0030】
この実施例では、シングルモード光ファイバ17によって導光された基本波ωのレーザ光は集光レンズ14によりモノリシック波長変換素子9に集光され、SHG変換結晶10により基本波ωの一部は第2高調波2ωへ波長変換される。そしてSHG変換結晶10を通過した基本波ωは1/2波長板11により偏光方向を第2高調波2ωと平行になるように回転され、THG変換結晶12により第3高調波3ωに波長変換される。そして前記第3高調波3ωはコリメータレンズ16により平行光として第3高調波発生装置8から出射される。
【0031】
図6は、実施例における基本波レーザのパワーと第3高調波の出力パワーの関係を示すもので、UVレーザ発生装置として優れた性能を持つものであることを示している。
【0032】
以上説明した実施例では、基本波発生用レーザ装置(近赤外線レーザ発生装置)1として、YVO4レーザを用いたが、YVO4レーザのみに限定されるものではなく、最近進歩が著しいファイバレーザを用いることにより小型で高出力のUVレーザ発生装置を提供することができる。
【0033】
なお、図3において、第3高調波発生装置8のUVレーザの出射側に設けた想像線で図示した部分は、単焦点レンズやズームレンズなどの集光手段81で、この集光手段81を設ける場合には、そのレンズ系にコリメータレンズ16を組み込むことがあるのは勿論である。
【実施例2】
【0034】
図7は、実施例1に示した構成のUVレーザ発生装置に、第5の発明を適用した場合の実施例の構成を示す概略図で、1は基本波発生用レーザ装置(近赤外線レーザ発生装置)、17,17’17”はシングルモード光ファイバ、8は第3高調波発生装置である。
【0035】
図2に示した実施例1との相違点は、シングルモード光ファイバ17と17’の間に光方向性結合器29を設け、この光方向性結合器29の入力側にHeNeレーザ、半導体レーザ等を用いたガイド光用レーザ発生装置30をシングルモード光ファイバ17”を介して接続したことである。
【0036】
この構成によると、ガイド光用レーザ発生装置30から出射されるガイド光用レーザは、シングルモード光ファイバ17”、光方向性結合器29、シングルモード光ファイバ17’及び第3高調波発生装置8を介して第3高調波発生装置8から出射するUVレーザと同じ方向に出射される。
【0037】
そして、この場合ガイド光用レーザは赤色であるため、どの位置にUVレーザが照射されるかをオペレータに肉視させるため、目標位置にUVレーザが出射させるように第3高調波発生装置8の位置決めをすることが出来る。
【0038】
従って、例えば医療用としてこのUVレーザ発生装置を用いる場合、基本波発生用レーザ装置(近赤外線レーザ発生装置)1を起動させる前に、ガイド光用レーザ発生装置30を起動させて、第3高調波発生装置8の出射方向の位置決めを行い、次いで、ガイド光用レーザ発生装置30を起動させたまま、あるいは停止させてから基本波発生用レーザ装置(近赤外線レーザ発生装置)1を起動させることにより、適確に目標位置にUV光を照射させることが出来る。
【実施例3】
【0039】
図8は、第4の発明の実施例の要部構成を示す縦断側面図、図9は、図8の実施例3における第3高調波発生装置18の光学的構成を示し、図10は、1/4波長板23とモノリシック波長変換素子19の各波長変換結晶を通過した場合の偏光方向を説明する説明図である。
【0040】
図中18aは第3高調波発生装置18の筐体、19はSHG変換結晶20とTHG変換結晶21をオプティカルコンタクト法を用いて、一体化したモノリシック波長変換素子、22は前記モノリシック波長変換素子19の温度制御用のペルチェ素子を備えた入射角度の調整が可能なマウンタ、23は筐体18に回動自在に設けられた1/4波長板である。24は1/4波長板23を回転させるための回転ノブ、25は集光レンズ、26,27はコリメータレンズ、28はコネクタ18bを介して筐体18に接続され、近赤外レーザ発生装置1から出射される基本波ωを導光するシングルモード光ファイバである。
【0041】
この実施例3でも前記実施例1と同様に、SHG変換結晶20の材料として、Type2のKTPを、またTHG変換結晶の材料として、Type1のGdYCOBを使用した。そして一体化する方法としては、前記のオプティカルコンタクトする方法の外、研磨して密着させた加熱圧着する方法、光学ボンドを用いる方法、またはエアギャップを設けて素子の一つのモールドにマウントする方法等がある。
【0042】
この実施例ではシングルモード光ファイバ28から導光された基本波ωはコリメータレンズ26と1/4波長板23を通り集光レンズ25によりモノリシック波長変換素子19に集光され、SHG変換結晶20により基本波ωの一部は第2高調波2ωへ変換される。そしてSHG変換結晶20を通過した基本波ωは、図11(b)に示すように1/4波長板23とSHG変換結晶20より偏光方向を第2高調波2ωと略平行になるように調節され、THG変換結晶21により第3高調波3ωに波長変換される。そして前記第3高調波3ωはコリメータレンズ27により平行光として第3高調波発生装置19から出射される。
【0043】
この実施例3の場合も、図6に示すように実施例1の場合と同様に、優れた性能が得られている。
【0044】
1/4波長板23がない場合は、図11(a)に示すように基本波ωは楕円偏光となり第2高調波2ωと偏光方向が平行にならない場合があり、モノリシック波長変換素子19は高い変換効率で第3高調波3ωを発生することができない。
【0045】
前記実施例3によれば、1/4波長板23とモノリシック波長変換素子19を使用することで実施例1に比べてモノシリック波長変換素子の製作が容易になる。即ち、一体化が容易になるばかりでなく、実施例1の場合、SHG変換結晶の長さの精度を少なくとも1μmを必要としたが、SHG結晶を通過した基本波ωの偏光を1/4波長板23を回転ノブ24により回転させることにより、基本波ωの偏光方向を調節することができるため、そのような厳しい製作条件は必要としなくなる。またマウンタ22により第3高調波3ω発生が最大となるように、モノリシック波長変換素子19の位置、入射角度等の集光条
件、及び変換結晶の温度を調整することができる。
【0046】
なお、実施例1及び実施例3で、SHG変換結晶の材料として、Type2のKTPを、また、THG変換結晶の材料としてType1のGdYCOBを使用したが、第3高調波に変換できる波長変換結晶の組合せであれば、これらの材料に限定されるものではないことは勿論である。
【0047】
また、この実施例2の場合も実施例1の場合と同様に第3高調波発生装置18のUVレーザ出射側に仕様に応じて単焦点レンズやズームレンズなどの集光手段181を設けることもできる。
【実施例4】
【0048】
図12は、実施例3に示した構成のUVレーザ発生装置に第5の発明を適用した場合の実施例4の構成を示す概略図で、1は基本波発生用レーザ装置(近赤外線レーザ発生装置)、17、17’、17”はシングルモード光ファイバ、19は第3高調波発生装置、29はシングルモード光ファイバ17と17’の間に設けた光方向結合器、30は前記光方向性結合器29の入力側にシングルモード光ファイバ17”を介して接続したHeNeレーザ、半導体レーザ等を用いたガイド光用レーザ発生装置である。
【0049】
この実施例4は、実施例2と第3高調波発生装置が異なるだけであり、実施例2の場合と同様に、適確に目標位置にUV光を照射させることが出来、UVレーザ発生装置として優れたものである。
【0050】
以上の説明から明らかなように、本発明にかかるUVレーザ発生装置は、レーザ出射部、即ち第3高調波発生装置が小型でフレキシブルに取り扱えるものを実現したものであり、大型で取扱いが面倒なため応用が大きく制限されていた、生体・高分子材料用レーザ加工・マーキング装置、蛍光分析装置、医用機器などへのUVレーザ導入が急速に進むため、これらの産業分野、基礎科学、医療の発展に大きく貢献するものである。
【0051】
また、第5の発明によれば、UV光を目標位置に適確に照射させることが容易となり、実用上使い勝手の良いUVレーザ発生装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】従来のUVレーザ発生装置の構成を示す概略説明図。
【図2】第1の発明の基本構成を示す概略図。
【図3】第1の発明の実施例の要部構成を示す縦断側面図。
【図4】図3の実施例における第3高調波発生装置の光学系の構成を示す 説明図。
【図5】実施例1に示すモノリシック波長変換素子の各変換結晶を通過した場合の偏光方向を説明する説明図。
【図6】実施例1及び実施例3の基本波レーザのパワーと第3高調波の出力パワーの関係を示す図。
【図7】第5の発明を実施例1のUVレーザ発生装置に適用した場合の構成を示す概略図。
【図8】第3の発明の実施例の要部構成を示す縦断側面図。
【図9】図8の実施例における第3高調波発生装置の光学系の構成を示す説明図。
【図10】図8に示すモノリシック波長変換素子の各変換結晶を通過した場合の偏光方向を説明する説明図。
【図11】実施例3における基本波ωと第2高調波2ωの偏光方向を示す図で、(a)は1/4波長板がない場合、(b)は1/4波長板がある場合。
【図12】実施例4の構成を示す概略図。
【符号の説明】
【0053】
1 近赤外レーザ発生装置
8 第3高調波発生装置
8a 筐体
9 モノリシック波長変換素子
10 SHG変換結晶
11 1/2波長板
12 THG変換結晶
13 マウンタ
14 集光レンズ
15,16 コリメータレンズ
17 シングルモード光ファイバ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基本波発生用レーザ装置,集光レンズ,SHG変換結晶,1/2波長板及びTHG変換結晶より構成されるUVレーザ発生装置であって、前記第2高調波変換結晶,1/2波長板及び第3高調波変換結晶一体化してモノリシック波長変換素子を構成すると共に、このモノリシック波長変換素子と前記集光レンズを筐体内に収納して第3高調波発生装置を構成し、この第3高調波発生装置と前記基本波発生用レーザ装置とをシングルモード光ファイバを介して連繋したことを特徴とするUVレーザ発生装置。
【請求項2】
第2高調波変換結晶、1/2波長板及び第3高調波変換結晶とが、オプティカルコンタクト、融着、接着剤、および一つのモールドに固定する方法のいずれか1によって一体化されてなる請求項1記載のUVレーザ発生装置。
【請求項3】
基本波発生用レーザ装置,集光レンズ,前記第2高調波変換結晶及び第3高調波変換結晶より構成されるUVレーザ発生装置であって、前記第2高調波変換結晶及び第3高調波変換結晶を一体化してモノリシック波長変換素子を構成すると共に、このモノリシック波長変換素子と前記集光レンズを筐体内に収納して第3高調波発生装置を構成し、この第3高調波発生装置と前記基本波発生用レーザ装置とをシングルモード光ファイバを介して連繋し、且つ前記筐体の集光レンズ前に1/4波長板を配置したことを特徴とするUVレーザ発生装置。
【請求項4】
第2高調波変換結晶と第3高調波変換結晶とが、オプティカルコンタクト、融着、接着剤、および一つのモールドに固定する方法のいずれか1によって一体化されてなる請求項3記載のUVレーザ発生装置。
【請求項5】
シングルモード光ファイバの中間に光方向性結合器を設け、この光方向性結合器の入力側にシングルモード光ファイバを介して、ガイド光用レーザ発生装置を接続したことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のUVレーザ発生装置。
【請求項1】
基本波発生用レーザ装置,集光レンズ,SHG変換結晶,1/2波長板及びTHG変換結晶より構成されるUVレーザ発生装置であって、前記第2高調波変換結晶,1/2波長板及び第3高調波変換結晶一体化してモノリシック波長変換素子を構成すると共に、このモノリシック波長変換素子と前記集光レンズを筐体内に収納して第3高調波発生装置を構成し、この第3高調波発生装置と前記基本波発生用レーザ装置とをシングルモード光ファイバを介して連繋したことを特徴とするUVレーザ発生装置。
【請求項2】
第2高調波変換結晶、1/2波長板及び第3高調波変換結晶とが、オプティカルコンタクト、融着、接着剤、および一つのモールドに固定する方法のいずれか1によって一体化されてなる請求項1記載のUVレーザ発生装置。
【請求項3】
基本波発生用レーザ装置,集光レンズ,前記第2高調波変換結晶及び第3高調波変換結晶より構成されるUVレーザ発生装置であって、前記第2高調波変換結晶及び第3高調波変換結晶を一体化してモノリシック波長変換素子を構成すると共に、このモノリシック波長変換素子と前記集光レンズを筐体内に収納して第3高調波発生装置を構成し、この第3高調波発生装置と前記基本波発生用レーザ装置とをシングルモード光ファイバを介して連繋し、且つ前記筐体の集光レンズ前に1/4波長板を配置したことを特徴とするUVレーザ発生装置。
【請求項4】
第2高調波変換結晶と第3高調波変換結晶とが、オプティカルコンタクト、融着、接着剤、および一つのモールドに固定する方法のいずれか1によって一体化されてなる請求項3記載のUVレーザ発生装置。
【請求項5】
シングルモード光ファイバの中間に光方向性結合器を設け、この光方向性結合器の入力側にシングルモード光ファイバを介して、ガイド光用レーザ発生装置を接続したことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のUVレーザ発生装置。
【図1】
【図2】
【図4】
【図5】
【図9】
【図10】
【図11】
【図3】
【図6】
【図7】
【図8】
【図12】
【図2】
【図4】
【図5】
【図9】
【図10】
【図11】
【図3】
【図6】
【図7】
【図8】
【図12】
【公開番号】特開2007−128017(P2007−128017A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−24110(P2006−24110)
【出願日】平成18年2月1日(2006.2.1)
【出願人】(504176911)国立大学法人大阪大学 (1,536)
【出願人】(595132359)ネオアーク株式会社 (5)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年2月1日(2006.2.1)
【出願人】(504176911)国立大学法人大阪大学 (1,536)
【出願人】(595132359)ネオアーク株式会社 (5)
【Fターム(参考)】
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