説明

UZM−16:結晶性アルミノシリケートゼオライト質材料

【課題】オフレタイトと幾らかの類似点はあるが、特異な構造が与えられて充分な相違点を有するUZM−16で示されるゼオライト及びUZM−16を脱アルミ化したUZM−16HSゼオライトの提供。
【解決手段】アルカリ金属及びアルカリ土類金属からなる群から選択される交換可能なカチオンMと、ベンジルトリメチルアンモニウム(BzTMA)カチオン、又はBzTMAと少なくとも1つの他の特定の有機アンモニウムカチオンとの組合せからなるカチオンRと、ガリウム、鉄、ホウ素、クロム、インジウム及びこれらの混合物からなる群から選択される骨格中に存在する成分Eを含み、下記式(1)で表わされ、m、r、x、y、zが特定の比を有するゼオライト。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、UZM−16として示されるアルミノシリケートゼオライト質材料に関する。該材料は、異なる酸性度、細孔性及びイオン交換特性を示すUZM−16HSを形成するように脱アルミニウム化することができる。UZM−16及びUZM−16HSは炭化水素の変換工程において有用である。
【背景技術】
【0002】
ゼオライトは細孔性を有する結晶性のアルミノシリケート組成物であって、AlO2及びSiO2が頂点を共有する四面体により形成される。天然及び合成の多数のゼオライトが、種々の生産工程において使用される。合成ゼオライトは適切なAl、Si原料、ならびにアルカリ金属、アルカリ土類金属、アミン又は有機アンモニウムカチオンのような構造支配物質を使用して水熱合成を経て製造される。構造支配物質はゼオライトの孔中に存在して最終的に形成される特殊構造に寄与する。これらの種は、アルミニウムと相俟って骨格電荷を平衡させ、また空間フィルターとしての役割を果たす。ゼオライトは、均一な寸法の開孔を有し、また顕著なイオン交換性能を有し、また恒久的なゼオライト結晶構成原子と有意に置換することなしに、結晶の内部空隙全体に亘って分散する吸着相を可逆的に脱着する性能を有するという特徴がある。ゼオライトは炭化水素の変換用触媒として用いられ、該触媒はその外表面又は孔の内部表面で実施できる。
【0003】
ゼオライトTで表される合成ゼオライトはNa、K系で調製され、これについては米国特許第2,950,952号明細書中でBRECK及びAcaraによって開示されている。引き続きなされた電子回折を用いた結晶学的研究(J. M. Bennett and J. A. Gard, Nature, 214, 1005(1967))では、特異性が示され、オフレタイトとエリオナイト骨格の特殊性が確認され、2つの構造の内部成長物としてゼオライトTに分類した。エリオナイトの内部成長物のないオフレタイトを有する合成ゼオライトが、Na、K、TMA系及びK、TMA系中で調製された(R. Aiello and R. Barrer, J. Chem. Soc. (A), 1470, (1970))。
Rubin及びRosinskyはベンジルトリメチルアンモニウム(BzTMA)、Na、K系中でエリオナイトに係る材料を調製することができた(米国特許第3,699,139号)。同様の系での研究において、エリオナイトのX線回折線がないオフレタイトが調製された(M. L. Occelli, R. A. Innes, S. S. Pollack, and J. V. Sanders, Zeolites, 7, 265 (1987))。BzTMAを含む6種の有機鋳型系を含む合成結果によるオフレタイト、エリオナイト及びオフレタイト−エリオナイト系電子回折研究で、この系に発生する幾つかの欠陥が特徴付けられた(J. V. Sanders, M. L. Occelli, R. A. Innes, and S. S. Pollack, Studies in Surface and Catalysis(表面科学と触媒の研究), Y. Murakami, A. Iijima, and J. W. Ward, Elsevier, New York, 28,429 (1986))。
【発明の概要】
【0004】
本発明者等は、オフレタイトと幾らかの類似点はあるが、特異な構造が与えられて充分な相違点を有するUZM−16で示されるゼオライトを調製した。UZM−16は、少量のカリウムを付加したベンジルトリメチルアミン(BzTMA)中で調製された。X線回折パターンはオフレタイトと同様であったが、エリオナイトに関する線はなく、該パターン中には、d=18Å〜27Åの範囲に延長する未確認のピークを含むd=21.5を中心とするパターンにおける幅広い線が含まれている。この様相は、結晶の電子回折パターン中で高い分解能を持つ格子映像における光縞として観察された。加えて、UZM−16の電子回折においては、a−b平面においてオフレタイト及びエリオナイトでは知られていない特異な周期性が観察された。UZM−16は、オフレタイトに比べてより中間程度の細孔特性を有する。また、UZM−16ゼオライトは脱アルミ化させて、異なった酸性度、多孔性、及びイオン交換性を有するUZM−16HSゼオライトを形成する。UZM−16とUZM−16HSの両方とも種々の炭化水素転換プロセスで用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
本発明者等は、UZM−16で示されるゼオライトの新しい系統群を合成した。合成したままの形態において、UZM−16は、下式によって代表される無水物基準での組成を有する。
【0006】

【0007】
式中、Mは交換可能なカチオンであってアルカリ金属及びアルカリ土類金属からなる群から選択される。Mカチオンの特定例では、これに限定されるものではないが、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、ストロンチウム、カルシウム、マグネシウム、バリウム及びこれらの混合物が含まれるが、このうちカリウム及びナトリウムが好ましい。“m”の値は、M対(Al+E)のモル比であって0〜0.75の間で変化する。Rはベンジルトリメチルアンモニウム(BzTMA)カチオン、又はBzTMAと、第4級アンモニウム、プロトン化アミン、プロトン化ジアミン、プロトン化アルカノールアミン、ジ第4級アンモニウムカチオン、4級化アルカノールアンモニウムカチオン及びこれらの混合物からなる群から選択された有機アンモニウムカチオンの少なくとも1種との組み合わせである。“r”の値は、R対(Al+E)のモル比であって0.25〜5.0までの間で変化する。“n”の値は、Mの加重平均原子価であって+1〜+2の間で変化する。“p”の値は、有機カチオンの加重平均原子価であって+1〜+2までの間の値を持つ。Eは骨格中に存在する成分であり、ガリウム、鉄、ホウ素、クロム、インジウム及びこれらの混合物からなる群から選択される。“x”の値は、Eのモル分率であって0〜1.0までの間で変化する。ケイ素対(Al+E)の比は“y”で表わされ、3より大〜25までの間で変化し、一方O対(Al+E)のモル比は“z”で表わされ、その値は下記等式により与えられる。
【0008】

【0009】
Mがただ1種の金属である場合には、加重平均原子化はその1種の金属の原子価、すなわち+1又は+2である。しかし、1種より多いM金属が存在する場合、下記等式で示す合計量であり、
【0010】

【0011】
その加重平均原子価“n”は、下記等式によって与えられる。

【0012】
同様に、ただ1種のR有機カチオンが存在する場合には、加重平均原子価は、単一のRカチオンの原子価であり、すなわち+1又は+2である。1種より多いRカチオンが存在する場合にはRの合計量は下記等式により与えられ、
【0013】

【0014】
その加重平均原子価“p”は下記等式によって与えられる。

【0015】
これらのアルミノシリケートゼオライトは、Rの反応原料と、アルミニウム、随意的成分のE及び/又はM、及びケイ素を液体溶媒中で反応させて得られた反応混合物の水熱結晶化により調製される。そして、アルミニウムの原料には、限定されるものではないが、アルミニウムアルコキシド、沈降アルミナ、水酸化アルミニウム、アルミニウム塩及びアルミニウム金属が含まれる。アルミニウムアルコキシドの特定例としては、限定されるものではないが、アルミニウムオルトsec−ブトキシド及びアルミニウムオルトイソプロポキシドが含まれる。シリカの原料には、限定されるものではないが、テトラエチルオルトシリケート、ヒュームドシリカ、沈降シリカ及びコロイダルシリカが含まれる。好ましいシリカの原料は、Ultrasil VN SP(89%SiO2)である。M金属の原料には、限定されるものではないが、アルカリ金属又はアルカリ土類金属それぞれのハロゲン化塩、硝酸塩、酢酸塩、及び水酸化物が含まれる。特に、M金属はある種の有機アンモニウム原料ならびにある種のシリカ原料中に不純物として生ずる。例えば、Ludox AS−40 コロイダルシリカは0.05%程度のNaを含み、一方Aldrich Chemical社製の水酸化ベンジルトリメチルアンモニウムは0.5%程度のKで汚染されている。E成分の原料には、限定されるものではないが、ほう酸アルカリ、ほう酸、沈降ガリウムオキシ水酸化物、硫酸ガリウム、塩化鉄、塩化クロム、硝酸クロム、塩化インジウム及び硝酸インジウムが含まれる。既に述べたベンジルトリメチルアンモニウムがRの原料である場合には、限定されるものではないが、水酸化物、塩化物、臭化物、沃化物及びフッ化物化合物として含まれる。またRは、ベンジルトリメチルアンモニウム及び少なくとも1種の他の有機アンモ二ムの配合物として含まれる。Rが第4級アンモニウムカチオン又は4級化アルカノールアンモニウムである場合には、該原料は水酸化物、塩化物、臭化物、沃化物化合物である。特定例には、限定されるものではないが、水酸化ジエチルジメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、臭化ヘキサメトニウム、塩化テトラエチルアンモニウム、水酸化メチルトリエチルアンモニウムが含まれる。また、Rの原料として、中性アミン、ジアミン及びアルカノールアミンである場合もある。特定例としては、トリエタノールアミン、トリエチルアミン、及びN,N,N’,N’−テトラメチル−1,6−へキサンジアミンが挙げられる。特別な場合では、試薬はアルミノシリケート貯蔵溶液の形態で使用される。これらの溶液は、1種以上の水酸化有機アンモニウムからなり、ケイ素及びアルミニウムの原料は清澄な均一溶液の形態で作られて貯蔵され、試薬として使用される。該試薬はアルミノシリケート種を含むが、典型的に、ケイ素及びアルミニウムの個々の原料に起因するゼオライト反応混合物は見られない。該試薬は一般的にアルカリを含まないか、ケイ素、アルミニウム及び水酸化有機アルミニウム原料からの不純物程度のアルカリを含むのみである。ゼオライトの合成には、これらの溶液の1種以上が用いられる。また、AlがEで置き換えられた場合には、対応するメタロシリケート溶液が合成に使用される。
【0016】
希望する成分の反応原料を含む反応混合物は、下記に酸化物のモル比表示で記述することができる。
【0017】

【0018】
式中、“a”はMの酸化物のモル比であって0〜5までの値を有し、“b”はRの酸化物のモル比であって1〜120までの値を有し、“d”はシリカのモル比であって5〜100までの値を有し、“c”はEの酸化物のモル比であって0〜1.0までの値を有し、“e”は水のモル比であって50〜15000までの値を有する。反応混合物を80℃〜160℃、好ましくは95℃〜125℃までの温度で、2日間〜30日間、好ましくは5日間〜15日間の反応条件で、自生圧力下の密封反応容器において反応させる。結晶化が完了すると、濾過又は遠心分離などの方法により、不均一混合物から固体反応物を分離し、イオン水で洗浄し、100℃以下の外部温度で空気乾燥する。
【0019】
結晶性ゼオライトは、少なくともSiO2及びAlO2の四面体単位の三次元骨格構造で特徴付けられる。これらのゼオライトの特徴はそのX線回折パターンによりさらに示される。そのX線回折パターンは、少なくとも下記A表に示すd−スペースと相対強度を持つ回折ラインを有する。
【0020】

【0021】
合成したままのゼオライトには、その孔中に幾らかの交換可能又はチャージ均衡のカチオンが含まれる。交換可能なカチオンは、他のカチオンと交換することができ、有機カチオンの場合には、これらは制御された条件下で加熱することで除去することができる。イオン交換は、交換条件下でゼオライトを希望のカチオンを(過剰モルで)含む溶液と接触させて行われる。交換条件は、15℃〜100℃の温度、20分間〜50時間の時間である。焼成条件は、300℃〜600℃の温度、2〜24時間の時間である。
【0022】
アンモニウム形態のゼオライトを提供する有機カチオンを除去するための特別な処理は、アンモニア焼成である。アンモニア中での焼成では、有機カチオンが陽子形態に分解されて、それがアンモニアにより中和されアンモニアカチオンを形成するものと推定される。得られたアンモニウム形態のゼオライトは、さらに他の希望するカチオンにイオン交換することができる。アンモニア焼成条件は、250℃〜600℃の間、好ましくは250℃〜450℃の間、10分間〜5時間アンモニア雰囲気中で処理することが含まれる。随意的であるが、処理はこの温度範囲で、アンモニア雰囲気中での合計時間が5時間以内とし、多段で行うことができる。500℃以上では、処理は30分間以内、好ましくは5〜10分間程度の短時間で行わなければならない。500℃以上の長時間の焼成では、希望するアンモニウムのイオン交換において意図しない脱アルミニウム化を生じ、大部分の有機アンモニウムがより低温で分解して不必要に粗雑になる。
【0023】
UZM−16のイオン交換した形態は、下記の実験式で示される。

【0024】
式中、R、x、y、及びEは、前記のとおりであり、m’は0〜5.75までの値を有し、M’はアルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属。水素イオン、アンモニウムイオン、及びこれらの混合物からなる群から選択されたカチオンである。n’はM’の加重平均原子価であって1〜3まで変化し、r’は0〜5.75までの値を有し、r’+m’>0であり、pはRの加重平均原子価であって+1〜+2まで変化する。z’の値は、下記等式で与えられる。
【0025】

【0026】
式(2)で表されるUZM−16ゼオライトは、アルミニウムを除去し必要に応じてケイ素を挿入するために更に処理される。これによってSi/Al比率が上昇しゼオライトの酸性度とイオン交換性能が改善される。これらの処理は、a)フルオロシリケート溶液又はスラリーに接触させる、b)焼成又は蒸気処理した後酸抽出又はイオン交換する、c)酸抽出する、又はd)これらの処理を任意の順序で任意に組み合わせて行う、ことができる。
【0027】
フルオロシリケート処理は公知であり、この処理は、ゼオライトをフルオロシリケート塩で処理する方法が記載されている米国特許第4,711,770号明細書を引用した米国特許第6,200,463号明細書に記載されている。この処理のための一般的な条件は、ゼオライトをアンモニウムフルオロシリケート(AFS)のようなフルオロシリケート塩を含む溶液と20℃〜90℃の温度で接触させることである。
【0028】
酸抽出を実施するために使用することができる酸には、鉱酸、カルボン酸及びこれらの混合物が挙げられるがこれらに限定されることはない。これらの酸の例として、硫酸、硝酸、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)、クエン酸、蓚酸などが挙げられる。使用し得る酸濃度は、限界はないが便宜上1重量%〜80重量%、好ましくは5重量%〜40重量の間である。酸抽出のための処理条件は温度が10℃〜100℃の温度で、時間が10分間〜24時間である。酸処理をした後、処理されたUZM−16ゼオライトを濾過などの手段で分離し、脱イオン水で洗浄して、100℃までの外界温度で乾燥する。アルミニウムが除去され必要に応じてケイ素が組織中に挿入された1つ以上の処理を受けたUZM−16ゼオライトは、以下、UZM−16HSと称する。
【0029】
脱アルミニウムの程度は、出発UZM−16のカチオン形態に基づく酸抽出ならびに酸濃度及び抽出が行われたときの時間と温度から得られる。例えば、出発UZM−16中に有機カチオンが存在するときは、有機カチオンが除去されたUZM−16に比べて脱アルミニウムの程度が少ない。これは、UZM−16のすぐ表面での脱アルミニウムを望む場合には好ましい。上述したように、有機カチオン除去の便宜的な方法には、焼成、アンモニア焼成、蒸気処理及びイオン交換がある。焼成、アンモニア焼成及びイオン交換は前述したとおりである。蒸気処理条件は、1%〜100%の蒸気濃度で、400℃〜850℃の温度で10分〜48時間であり、好ましい処理条件は、500℃〜600℃の処理温度、5〜50%の蒸気濃度、1〜2時間の処理時間である。
【0030】
焼成と蒸気処理の両者は、有機カチオンの除去のみならず、脱アルミニウムもできることを留意すべきである。従って脱アルミニウムのための他の実施態様では、焼成後に酸抽出するか、蒸気処理後に酸抽出する。さらに他の脱アルミニウムのための実施態様では、出発UZM−16ゼオライトの焼成又は蒸気処理後にイオン交換処理を行う。もちろん、酸抽出は、イオン交換の前後共に実施することができる。
【0031】
イオン交換の条件は、先に設定したものと同様、即ち15℃〜100℃で、20分〜50時間処理を行う。イオン交換は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、水素イオン、アンモニウムイオン及びこれらの混合物から選択されたカチオン(M1’)を含む溶液で実施することができる。イオン交換の実施によって、前記M1カチオンは、第2のカチオン又は異なるM1’カチオンに交換される。好ましい実施態様では、蒸気処理又は焼成処理したUZM−16HS組成物を、アンモニウム塩を含むイオン交換溶液と接触させる。アンモニウム塩の例としては、限定されるものではないが、硝酸アンモニウム、塩化アンモニウム、臭化アンモニウム、酢酸アンモニウムが挙げられる。アンモニウムイオン含有溶液には、限定されるものでないが、硝酸、塩酸、硫酸及びこれらの混合物のような鉱酸が任意で含まれる。鉱酸の濃度は、0〜1のH+対NH4+比を与えるのに必要な量である。このアンモニウムイオン交換の寄与により、蒸気処理及び/又は焼成処理後に孔中に残存する残留物のいずれも除去される。
【0032】
前述したことから明らかなように、効果的な処理条件に関して、脱アルミニウム処理の間ゼオライトの結晶構造の完全性が実質的に維持され、ゼオライトは最初の結晶化度の50%、好ましくは70%、さらに好ましくは90%が維持されることが望ましい。出発材料の結晶化度に関連した生成物の結晶化度の評価のために都合よい技術は、それぞれのX線粉末回折パターンのd−スペースの相対強度の比較である。出発材料のピーク強度の値が、バックグラウンド上の任意の単位において標準として用いられ、生成物の対応するピーク強度と比較される。例えば、分子篩生成物のピーク高さの合計数値が出発ゼオライトのピーク強度の値の85%であるときには、結晶化度の85%が維持される。実際においては、この目的のために通常は僅かのピークが利用されるのみである。他の結晶化度維持のための指標は、表面積と吸収容量である。これらの試験は、置換金属がかなり変化するとき、即ち、試料によるX線の吸収が増加するとき、又は例えば脱アルミニウム処理のようにピーク内容がかなり変化するときには好適である。
【0033】
上記のように脱アルミニウム処理を遂行した後、UZM−16HSは通常乾燥され、以下に論議するように様々なプロセスに使用できる。本発明者等はUZM−16HSの特性が1つ以上の付加的な処理によってさらに改質することができることを発見した。これらの処理には蒸気処理、焼成、及びイオン交換が含まれ、これらは個々に又は組み合わせて実施される。これらの組み合わせの幾つかをこれらに限定されるものではないが、以下に示す。
蒸気処理 → 焼成処理 → イオン交換;
焼成処理 → 蒸気処理 → イオン交換;
イオン交換 → 焼成処理 → 蒸気処理;
イオン交換 → 蒸気処理 → 焼成処理;
蒸気処理 → 焼成処理;
【0034】
上記の脱アルミニウム処理は本発明のゼオライトを生成するためには、必ずしも同じ結果が得られるわけではないが、いかなる順序でも組み合わせて行うことができることを指摘したい。例えばAFS、酸抽出、蒸気、焼成処理などの特定の処理順序を所望の特性を得るために必要な回数だけ繰り返すことができる。もちろん他の処理を繰り返さず1つの処理だけを繰り返すこと、例えば蒸気処理や焼成処理などを行う前にAFSを2回以上繰り返すことができる。最終的には、処理の順序及び/又は繰り返しによってUZM−16HS組成の最終的な特性が決定される。
【0035】
上記のようにして調製されたUZM−16HSは、無水物基準での実験式により表される。
【0036】

【0037】
ここでMlはアルカリ、アルカリ土類金属、希土類金属、アンモニウムイオン、水素イオン及びそれらの混合物からなる群から選ばれた少なくとも1つの交換可能なカチオンであり、aはM1対(Al+E)のモル比で0.01〜50の値を有し、nはM1の加重平均原子価で+1〜+3の値を有し、Eはガリウム、鉄、ホウ素、クロム、インジウム及びそれらの混合物からなる群から選ばれた元素であり、xはEのモル分率で0〜1.0の値を有し、y’はSi対(Al+E)のモル比で3より大きく実質的には(純粋シリカ)までの値を有し、z"はO対(Al+E)のモル比であり、下の等式により決定される値を有する。
【0038】

【0039】
ゼオライトは少なくとも表Bに示すd−スペースと相対的な強度を持つX線回折パターンを有することを特徴とする。
【0040】

【0041】
純粋シリカとは実質的に全てのアルミニウム及び/又はE金属が骨格から取り除かれていることを意味する。全てのアルミニウム及び/又はE金属を取り除くことは実質的に不可能であることは既知である。数値の上では、y’が少なくとも3,000の値、好ましくは10,000、もっとも好ましくは20,000の値を取る場合には、ゼオライトは実質的に純粋シリカである。従って、y’の範囲は、3〜3,000、好ましくは10より大から3,000まで、3〜10,000、好ましくは10より大から10,000まで、及び3〜20,000、好ましくは10より大から20,000までである。
【0042】
ゼオライト出発材料の比率あるいはゼオライト生成物の吸着特性などを特定する場合、特に明記しない限りゼオライトの「無水物状態」を意図している。ここで使われる「無水物状態」という用語は、ゼオライトが実質的に物理的に吸着された水及び化学的に吸着された水を欠いていることを言う。
【0043】
本発明のゼオライト(UZM−16及びUZM−16HS)は、分子サイズ(運動直径)、又は分子種の極性度に基づいて、分子種の混合物を分離することができる。分子種の分離が分子サイズによる場合、分離はより大きな分子種を排除してより小さい分子種が結晶内の空間に入り込むことにより行われる。酸素、窒素、炭素、二酸化物、一酸化炭素などの様々な分子の運動直径は、D. W. Greck著、Zeolite Molecular Sieves (ゼオライト分子篩)、John Wiley and Sons 社(1974) p.636に掲載されている。
【0044】
本発明の結晶性細孔組成物(UMZ−16とUZM−16HSの両方)は、合成のままでも、焼成した後あるいは上記したいずれかの処理を施した後でも、炭化水素変換プロセスにおいて触媒としてあるいは触媒支持体として使用される。炭化水素変換プロセスは、この技術分野においては良く知られており、開環、分解、水素分解、芳香族化合物とイソパラフィンの両方のアルキル化、異性化、重合、改質、脱ろう、水素化、脱水素化、アルキル交換反応、脱アルキル化、水和、脱水、水素化処理、水素脱窒素化、水素脱硫化、メタン化及び合成ガスシフト処理を含む。これらの処理方法で使用される特定の反応条件及び供給物の種類は、米国特許第4,310,440号及び米国特許4,440,871号明細書に述べられている。好ましい炭化水素変換プロセスは開環であり、それにより環状炭化水素は例えば線状炭化水素あるいは分枝状炭化水素などの非環状炭化水素に変換される。
【0045】
他の反応としては、これら結晶性の細孔組成物により触媒作用が行われるが、それらはアルキル芳香族化合物の塩基触媒側鎖アルキル化、アルドール縮合、オレフィン二重結合異性化及びアセチレンの異性化、アルコール脱水素化とオレフィン二量化、オリゴメリゼーションとアルコールのオレフィンへの転換を含む。適切なこれらの材料のイオン交換形態では、自動車及び産業排気流においてNOxからN2への還元の触媒作用をする。これらの処理方法で使用される幾つかの反応条件及び供給物の種類は、米国特許第5,015,796号明細書とH. Pines著、THE CHEMISTRY OF CATALYTIC HYDROCARBON CONVERSION(触媒炭化水素転換の化学)、Academic Press社 (1981) pp.123-154、及びそこに含まれる参考文献に述べられている。
【0046】
下記の実施例(及び上記の表)に記載されるX線パターンは、標準X線粉末回折技術を使って得られた。放射線源は45kV及び35maで操作された高強度X線チューブである。銅K−アルファ放射線からの回折パターンは適切なコンピュータ利用技術により得られた。平坦に圧縮された粉末試料は、1分間につき2°(2θ)で2°〜70°(2θ)で引き続きスキャンした。オングストローム単位で格子面間隔(d)は、デジタル化されたデータから見られるようにθがブラッグ角である場合に2θとして表される回折ピークの位置から得られた。強度はバックグラウンドを差し引いた後、回折ピークの集中場所から測定されるが、強度において“I0”は最強の線あるいはピークで、“I”は他の各ピークである。
【0047】
当業者により理解されるように、パラメータ2θ測定法は人為的及び機械的誤差を生じやすく、これらの誤差が組み合わさって2θのそれぞれの報告値に±0.4の不確定性を課すことができる。この不確定性は言うまでもなくθ値から算出されるd−スペースの報告値にも認められている。この不正確性はこの技術分野全体では一般的なことであり、本発明の結晶性材料がそれぞれ差異があることや、先行技術の組成とは差異があることを除外するのには不十分である。報告された幾つかのX線パターンでは、d−スペースの相対強度は、vs、s、m、wと表記し、それぞれ強度が非常に強い、強い、中程度、弱いことを示している。100×I/I0に関して、上記の記号表示は、w=0〜15、m=15〜60、s=60〜80、vs=80〜100と定義される。ある例では合成生成物の純度はX線粉末回折パターンに関して評価されるであろう。従って、例えば試料が純粋であると述べられている場合、試料のX線パターンに線がないのは結晶性不純物に起因するということだけを意図していて、非晶性物質が存在していないというわけではない。
【0048】
本発明を更に完全に例証するために、以下に実施例を示す。これらの実施例は単なる例示であって、添付の請求の範囲に示される本発明の広義の範囲に過度の制限を加えるものではない。
【実施例1】
【0049】
アルミノケイ酸塩反応混合液を、2.33gのAl(Osec−Bu)3(95+%)を63.35gのBzTMAOH(40%)に添加して激しく攪拌し、次いで28gのコロイダルシリカ(LUDOXTM AS−40、40%SiO2)を添加して調製した。次に6gの水を前記アルミノケイ酸塩反応混合液にゆっくり添加して更に混合した。この混合液は、高速で攪拌して更に30分間均質化し、125℃のオーブン中に置かれた3個のテフロン(登録商標)被覆オートクレーブに分配し、自生圧力下で混合液を3、6、10日間消化した(digested)。固体生成物を濾過により分離し、脱イオン水で洗浄して95℃で乾燥した。
【0050】
3つ全ての反応から得られた生成物は、X線回折パターンがUZM−16と認定されるゼオライトであることを示した。3日間試料の示す回折線を下記の表1に示す。N2吸着で測定された焼成材料のBET表面積は523m2/gであり、細孔容積は0.26cc/gであった。
【0051】

【0052】
オフレタイト構造とUZM−16の差異は、さらに電子回折により識別された。図示されているように、平面において(001)及び(110)方向で示されるUZM−16(図1B)とオフレタイト(図1A)の[001]に沿った電子回折パターンの比較を図1に示す。UZM−16での(110)方向における周期性は、オフレタイトの周期性とは異なるし、また係数3だけ間隔が大きいことが明らかである。ここに示すオフレタイトの電子回折パターンは、同一の配向性を持つ文献中に示されたものと一致している(J. V. Sanders, M. L. Occeli, R. A. Innes, and S. S. Pollack, Studies in Surface Science and Catalysis (表面化学と触媒に関する研究), Ed. Y. Murakamai, A. Iijima, and J. W. Ward, Elsever, New York, 28,429,(1989))。
【0053】
より大きい間隔はUZM−16の格子像に容易に観察される。図2は、[110]に沿ったUZM−16の格子像を示す。像の垂直に伸びる格子フリンジは図1bの1/3(110)での反射で示される19.3Å種に対応する。この間隔はオフレタイトで予想される(110)の間隔の3倍であり、6.65Åであろう。
【実施例2】
【0054】
本実施例ではUZM−16の調製、UZM−16HSを生成するための焼成、イオン交換、蒸気処理による変形例を示し、次に更に別の異なるUZM−16HSを生成するための酸抽出による変形例を示す。アルミノケイ酸塩反応混合液を、35.21gのAl(Osec−Bu)3(95%+)に927.47gのBzTMAOH(40%)を添加して激しく攪拌することにより調製した。アルミニウム試薬が溶解した後、416.45gのコロイダルシリカ(LUDOXTM AS−40、40%SiO2)を添加して、得られた混合液を高速で攪拌して30分間均質化した。この混合液を自生圧力下で2LのPARRTM攪拌反応器中で6日間125℃で結晶化した。固体生成物を、濾過により分離し、脱イオン水で洗浄して95℃で乾燥させた。粉末X線回折では生成物がUZM−16であることが確認された。パターンの特徴を示す回折線を下記の表2に示す。元素分析では、この親UZM−16材料は5.83のSi/Al比率を示した。62.5g分のUZM−16を、最初に流動窒素雰囲気中で1分間に1℃温度を上げながら250℃まで上げ、2時間250℃で保持し、更に1分間に1℃温度を上げながら500℃まで上げ、3時間500℃で保持し、大気を気流に変えて、更に500度で3時間保持した。焼成材料のBET表面積は、676m2/gで、細孔の容積は0.33cc/gであった。焼成材料の51g分は500gの脱イオン水に溶解した52gのNH4NO3を含む溶液中で懸濁させることによりアンモニウム交換された。スラリーを85℃まで7時間加熱し、次に濾過により分離し、脱イオン水で完全に洗浄した。この交換処理を85℃、2時間半で更に2回繰り返した。
【0055】
アンモニウム交換焼成UZM−16の40g分を水平蒸気処理器を使って50%の蒸気で600℃で2時間蒸気処理した。粉末X線回折を行い、生成物がUZM−16HSであることを確認した。この生成物の回折線の特徴を表2に示す。窒素吸着計測では、蒸気処理アンモニウム−交換焼成UZM−16HS材料はBET表面積424m2/gとミクロ細孔体積0.20cc/gを示した。
【0056】
蒸気処理により得られたUXM−16HSの20g分を更に酸性処理を行った。酸性溶液は、19.7gのHNO3(69%)を350gの脱イオン水に希釈して調製した。蒸気処理したUZM−16を添加する前にこの溶液を90℃まで加熱した。得られたスラリーを1時間90℃で攪拌する。生成物は濾過により分離し、脱イオン水で洗浄し98℃で乾燥した。変形生成物はX線粉末回折分析によりUZM−16HSと特定された。この生成物の回折線の特徴を表2に示す。蒸気/酸洗浄による元素分析では生成物が14.76のSi/Al比率を持つことを示した。
【0057】

【実施例3】
【0058】
アルミノケイ酸塩反応混合液を、35.21gのAl(Osec−Bu)3(95+%)を927.47gのBzTMAOH(40%)に添加してから激しく攪拌して調製した。アルミニウム試薬が溶解してから、416.45gのコロイダルシリカ(LUDOXTM AS−40、40%SiO2)を添加して、得られた混合液を高速で攪拌して更に30分間均質化した。この混合液を自生圧力で2LのPARRTM攪拌反応器中で12日間105℃で結晶化した。固体生成物は濾過により分離し、脱イオン水で洗浄して95℃で乾燥した。粉末X線回折により生成物がUZM−16であることを確認した。パターンの特徴を示す回折線を下記の表3に示す。元素分析では、この親UZM−16組成が5.7のSi/Al元素モル比率を示した。62.5g分のUZM−16を、最初に流動窒素雰囲気中で1分間に1℃温度を上げながら350℃まで上げ、1時間350℃で保持し、1分間に1℃温度を上げながら500℃まで上げ、6時間500℃で保持し、大気を気流に変えて、更に500℃で6時間保持した。焼成材料のBET表面積は、574m2/gで細孔の容積は0.24cc/gである。焼成生成物の98g分は1000mlの脱イオン水に溶解した100gのNH4NO3を含む溶液中で懸濁により交換されたアンモニウムである。
スラリーを80℃まで5時間加熱し、次に濾過により分離し、脱イオン水で完全に洗浄する。この交換を85℃で更に3回繰り返した。
【0059】
アンモニウム交換焼成UZM−16の18g分を水平蒸気処理器を使って50%の蒸気で600℃で2時間蒸気処理した。この蒸気処理をした材料の12g分を更に酸性抽出した。酸性溶液は、10gのHNO3(69%)を300gの脱イオン水に希釈して調製した。蒸気処理したUZM−16を添加する前にこの溶液を90℃まで加熱した。得られたスラリーを1時間90℃で攪拌した。生成物は濾過により分離し、脱イオン水で洗浄し98℃で乾燥した。変形生成物はX線粉末回折によりUZM−16HSであることが確認された。この生成物の回折線の特徴を表3に示す。元素分析では最終脱アルミニウム生成物が11.56のSi/Al比率を持つことを示した。窒素吸着測定では、BET表面積が466m2/gで、ミクロ細孔の体積が0.19cc/gであることを示した。
【0060】

【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】図1の1A及び1Bは、それぞれ実施例1に記載のオフレタイト及びUZM−16の[110]方向に沿って得られた電子回折パターンを示す図である。
【図2】図2は、実施例1に記載のUZM−16の高解像電子顕微鏡により得られた格子映像を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無水物基準で成分のモル表示が下記実験式の組成を有することを特徴とする細孔性の結晶性ゼオライトであって、

式中、M1はアルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、アンモニウムイオン、水素イオン、及びこれらの混合物からなる群から選択された少なくとも1種の交換可能なカチオンであり、aはM1対(Al+E)のモル比であって0.01〜50まで変化し、Eはガリウム、鉄、ホウ素、クロム、インジウム及びこれらの混合物からなる群から選択された成分であり、xはEのモル分率であって0〜1.0まで変化し、nはM1の加重平均原子価であって+1〜+3まで変化し、y’はSi対(Al+E)のモル比であって3より大であり、そしてz”はO対(Al+E)のモル比であって、下記等式により与えられる値を有するものであり、

前記ゼオライトは、下記B表に示す少なくともd−スペースと強度を有するX線回折パターンを持つことを特徴とする細孔性の結晶性ゼオライト。

【請求項2】
y’が3〜20,000までの値を有することを特徴とする請求項1に記載のゼオライト。
【請求項3】
炭化水素の変換方法であって、該方法は、炭化水素を変換生成物が得られるような炭化水素変換条件で触媒複合体と接触させる工程を含み、前記触媒複合体が請求項1に記載の細孔性の結晶性ゼオライト又はこれらの混合物を含むものであることを特徴とする方法。
【請求項4】
上記炭化水素変換方法が、芳香族化合物のアルキル化、キシレンの異性化、ナフサ分解、開環、アルキル交換、イソパラフィンのアルキル化及びエチルベンゼンの異性化からなる群から選択されるものであることを特徴とする請求項3に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−140438(P2011−140438A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−37786(P2011−37786)
【出願日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【分割の表示】特願2007−509433(P2007−509433)の分割
【原出願日】平成16年4月20日(2004.4.20)
【出願人】(598055242)ユーオーピー エルエルシー (182)
【Fターム(参考)】