説明

VEGFのためのELISA

【課題】患者の血流または他の生物学的サンプルにおける血管内皮増殖因子(VEGF)活性は、癌、糖尿病、心臓の異常およびその他の病変における診断および予後の指標となる。
【解決手段】動物モデルおよび患者由来の生物学的サンプルにおけるVEGF型のレベルを検出可能とし、診断/予後の指標として利用可能である、VEGFを抗原とする抗体サンドイッチELISA法およびキットを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2006年10月4日に出願された米国仮出願第60/828203号の優先権とその利益を享受するものであり、その明細書の全てをここに含める。
【背景技術】
【0002】
本発明は、癌、心血管、その他の病変を有する患者の診断および予後の方法として使用可能な、VEGFの一部の集団を検出するためのイムノアッセイに関する。
【0003】
血管形成が種々の疾患の発病機序に関与していることは、もはや確立されている。これらは、固形腫瘍、増殖網膜症または加齢黄斑変性症(AMD)のような眼球内新生血管症候群、関節リウマチ、および乾癬を含む(Folkman et al. J. Biol. Chem. 267:10931-10934 (1992); Klagsbrun et al. Annu. Rev. Physiol. 53:217-239 (1991); およびGarner A, Vascular diseases. In: Pathobiology of ocular disease. A dynamic approach. Garner A, Klintworth GK, Eds. 2nd Edition (Marcel Dekker, NY, 1994), pp 1625-1710)。固形腫瘍の場合、新血管形成により、通常細胞と比べて、腫瘍細胞に生育優位性および増殖自律性を獲得させる。かくして、腫瘍部位における微小血管の密度と、乳癌および他の一部の腫瘍における患者生存率との間には関連性が認められる(Weidner et al. N Engl J Med 324:1-6 (1991); Horak et al. Lancet 340: 1120-1124 (1992); およびMacchiarini et al. Lancet 340: 145-146 (1992))。
【0004】
血管形成の正の調節因子に関する調査は、例えばaFGF、bFGF、TGF-α、TGF-β、HGF、TNF-α、アンギオジェニン、IL-8等を含む多くの候補をもたらした(Folkman et al., supra, and Klagsbrun et al., 上掲)。これまでに同定されている負の調節因子の一部は、トロンボスポンジン(Good et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 87:6624-6628 (1990))、プロラクチンの16キロダルトンN末端フラグメント(Clapp et al. Endocrinology, 133: 1292-1299 (1993))、アンギオスタチン(O'Reilly et al. CeU 79:315-328 (1994))およびエンドスタチン(O'Reilly et al. Cell 88:277-285 (1996))を含む。
【0005】
ここ数年にわたる研究により、正常および異常な血管形成の調節における血管内皮増殖因子(VEGF)の重要な役割が確立されてきた(Ferrara et al. Endocr. Rev. 18:4-25 (1997))。単一のVEGF対立遺伝子の欠損が胚性致死性を生じるとの知見は、血管系の発達および分化において、このファクターが欠くことのできない役割を演じることを示唆するものである(Ferrara et al., 上掲)。
【0006】
さらに、VEGFは、腫瘍および眼内疾患に関与する新血管形成の重要なメディエーターであることが示された(Ferrara et al., 上掲)。VEGFのmRNAは、調べた多くのヒト腫瘍で過剰発現されている(Berkman et al. J Clin Invest 91 :153-159 (1993); Brown et al. Human Pathol. 26:86-91 (1995); Brown et al. Cancer Res. 53:4727-4735 (1993); Mattern et al. Brit. J. Cancer. 73:931-934 (1996); および Dvorak et al. Am J. Pathol. 146:1029-1039 (1995))。また、眼球液体中のVEGF濃度は、糖尿病患者および他の虚血性網膜症患者における血管の活発な増殖の存在とも密接に関連している(Aiello et al. N. Engl. J. Med. 331 : 1480-1487 (1994))。さらに、急性黄斑変性(AMD)を患っている患者の脈絡膜新生血管膜におけるVEGFの局在が示されている(Lopez et al. Invest. Qphtalmo. Vis. Sci. 37:855-868 (1996))。
【0007】
VEGFは組織毎に製造され、循環系に進入してその生物学的効果を及ぼす必要はないが、むしろパラクリン調節因子として局所的に作用する。Yang et al. J. Pharm. Exp. Ther. 284: 103 (1998)による最近の研究では、循環系からのrhVEGF165のクリアランスが非常に早いことが見出されており、循環系の内因性VEGFはVEGFの連続的合成の結果であることが示唆されている。さらに、循環VEGFレベルと全身腫瘍組織量との関連を示す試みがなされ、VEGFレベルが可能性のある予後マーカーであることを示唆している(Ferrari and Scagliotti Eur. J. Cancer 32A:2368 (1996); Gasparini et al. J1 Natl. Cancer Inst. 89: 139 (1997); Kohn Cancer 80:2219 (1997); Baccala et al. Urology 51 :327 (1998); Fujisaki et al. Am. J. Gastroenterol. 93:249 (1998))。正確にVEGFを測定する能力は、血管開通、月経周期、虚血、糖尿病、癌、眼内疾患等の多くの生物学的プロセスにおけるその潜在的役割を理解する上で重要である。
【0008】
検出不可なレベルから高レベルまで、正常者および患者における内因性VEGFの濃度は広範囲にわたって相違することが報告されている。内因性VEGFレベルを測定する能力は、敏感で特異的なアッセイの能力に依存する。VEGFのための比色分析、化学発光、および蛍光分析をベースとする酵素免疫測定法(ELISA)が報告されている(Houck et al., 上掲, (1992); Yeo et al. Clin. Chem. 38:71 (1992); Kondo et al. Biochim. Biophys. Acta 1221 :211 (1994); Baker et al. Obstet. Gynecol. 86:815 (1995); Hanatani et al. Biosci. Biotechnol. Biochem. 59:1958 (1995); Leith and Michelson Cell Prolif. 28:415 (1995); Shifren et al. J. Clin. Endocrinol. Metab. 81:3112 (1996); Takano et al. Cancer Res. 56:2185 (1996); Toi et al. Cancer 77:1101 (1996); Brekken et al. Cancer Res. 58:1952 (1998); Obermair et al. Br. J. Cancer 77: 1870-1874 (1998); Webb et al. Clin. Sci. 94:395-404 (1998))。
【0009】
例えば、Houckら(1992、上掲)は、内因性VEGFレベルを検出するには十分な感度ではないかもしれないng/mlの感度を有する比色ELISAについて記述している。Yeoら(1992、上掲)は、2サイト時間分解蛍光免疫測定法について記述しているが、VEGFは正常血清中には検出されていない(Yeo et al. Cancer Res. 53:2912(1993))。Bakerら(1995、上掲)は、この蛍光免疫測定法の修正版を用いて、妊婦の血漿中における検出可能なVEGFのレベルについて報告しており、子癇前症の女性でより高レベルであることを報告している。妊婦における同様のデータが、ラジオイムノアッセイを使用したAnthony et al. Ann. Clin. Biochem. 34:276 (1997)によって報告されている。Hanataniら(1995、上掲)は、循環するVEGFを測定することが可能な化学発光ELISAを開発し、30人の正常な個人(男女)の血清において、8−36pg/mlのVEGFレベルを報告している。Brekkenら(1998、上掲)は、VEGF単独またはVEGF:Flk-1複合体に結合親和性を有する抗体を用いたELISAアッセイについて記載している。
【0010】
VEGF検出のためのELISAキットは、R&D Systems(Minneapolis, MN)から商業的に入手可能である。R&D VEGF ELISAキットはサンドイッチアッセイに使用されており、モノクローナル抗体が標的VEGF抗原を捕獲するために使用され、ポリクローナル抗体がVEGFを検出するために使用される。Webb et al. 上掲 (1998). See, also, e.g., Obermair et ah, 上掲 (1998)。
【0011】
Keyt et al. J. Biol. Chem. 271 :7788-7795 (1996); Keyt et al. J. Biol. Chem. 271 :5638 (1996); およびShifren et al., 上掲 (1996)も、二重モノクローナル抗体対に基づく比色ELISAを開発した。このELISAは癌患者において高いVEGFレベルを検出することができたが、正常な個体におけるVEGFの内因性レベルを測定するのに必要な感度には欠けている。Rodriguez et al. J. Immunol. Methods 219:45 (1998) は、純粋な血漿または血清において10pg/mlのVEGF感度をもたらす2サイト蛍光分析VEGF ELISAについて記述している。しかしながら、この蛍光分析アッセイは、VEGFの十分に完全な165/165種および165/110種を検出する(VEGF165/165はタンパク質分解によって3つの別の形態、すなわち165/110ヘテロダイマー、110/110ホモダイマー、および55アミノ酸C末端フラグメントに切断され得ることが報告されている(Keyt et al. J. Biol. Chem. 271 :7788-7795 (1996); Keck et al. Arch. Biochem. Biophvs. 344: 103-113 (1997)))。
【0012】
かくして、現存するELISAよりも動物モデルまたは患者の生物学的サンプルにおけるVEGFのより高度な測定可能レベルを検出し、かつ/またはVEGFの種々のアイソフォームを測定可能な診断および予後アッセイを開発する必要がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Ferrara et al. Endocr. Rev. 18:4-25 (1997)
【発明の概要】
【0014】
生物学的サンプルにおけるVEGF型を検出するための、VEGFを抗原とする抗体−サンドイッチELISA法を開発した。ここに提供するVEGF ELISAは、VEGFアイソフォームおよび110より大きいVEGFのフラグメント(“VEGF110+”)を検出することが可能である。また、そのためのキットも提供する。
例えば、生物学的サンプルにおける、110アミノ酸より大きい選択的血管内皮増殖因子(VEGF)型(“VEGF110+”)を検出する方法は、以下の工程:
(a)生物学的サンプルを固形支持体に固定された捕獲試薬と接触させてインキュベートする工程であって、ここで前記捕獲試薬がヒトVEGFに対する抗体5C3と同じエピトープを認識し、前記モノクローナル抗体がヒトVEGFの110より大きい残基に特異的に結合する、工程;
(b)固定された捕獲試薬から生物学的サンプルを分離する工程;
(c)固定された捕獲試薬−標的分子複合体を、VEGFのKDRおよび/またはFLT1レセプター結合ドメインに結合する検出可能抗体と接触させる工程;および
(d)検出可能抗体のための検出手段を用いて捕獲試薬に結合したVEGF110+のレベルを測定する工程
を含む。ある実施態様では、検出可能抗体が、VEGF1−110中のエピトープに結合する。ある実施態様では、異なるタイプのVEGFを検出するために、対比ELISAを実施することができる。ある実施態様では、生物学的サンプル(例えば、腫瘍サンプルまたは腫瘍溶解物、血漿、血清、または尿など)が被験者から単離される。
【0015】
ある実施態様において、捕獲試薬は5C3モノクローナル抗体である。ある実施態様において、固定された捕獲試薬がマイクロタイタープレート上にコートされる。ある実施態様において、検出可能抗体がモノクローナル抗体である。ある実施態様において、検出可能抗体がマウスモノクローナル抗体である。ある実施態様において、固定化されたモノクローナル抗体がMAb 5C3であり、かつ、検出可能抗体がMAb A4.6.1である。ある実施態様では、検出可能抗体が直接的に検出可能である。ある実施態様においては、検出可能抗体が比色試薬によって増幅される。ある実施態様では、検出可能抗体がビオチン化され、検出手段がアビジンまたはストレプトアビジン−ペルオキシダーゼおよび3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジンである。
【0016】
本発明のある実施態様においては、被験者が血管の、糖尿病の、または癌の患者であり、測定工程(d)が正常な個体と比べたVEGFレベルを調べるために標準曲線と比較することをさらに含む。
【0017】
キットも提供される。例えば、生物学的サンプル中の110アミノ酸より大きい血管内皮増殖因子(VEGF)型(VEGF110+)を検出するためのイムノアッセイキットは、
(a)捕獲試薬として、ヒトVEGFに対する抗体、ここで前記モノクローナル抗体がヒトVEGFの110より大きい残基に特異的に結合する;および
(b)検出試薬として、VEGFのKDRおよび/またはFLT1レセプター結合ドメインに結合する検出可能抗体
を含むことができる。ある実施態様においては、検出可能抗体はVEGF1−110中のエピトープに結合する。ある実施態様では、キットが捕獲試薬用の固形支持体をさらに含む。例えば、捕獲試薬は固形支持体(例えばマイクロタイタープレート)上に固定され得る。ある実施態様では、検出可能抗体の検出手段(例えば比色手段、蛍光手段など)をさらに含む。ある実施態様では、キットは抗原標準として精製されたVEGFをさらに含む。本発明のある実施態様においては、一以上の追加的なVEGF ELISAを、VEGF110+ELISAとの対比研究のために行うことができる。ある実施態様においては、キットは、マウスモノクローナル抗体MAb 5C3である捕獲試薬モノクローナル抗体、およびMAb A4.6.1である検出可能抗体を含む。
【0018】
さらに別の実施態様においては、本発明は抗VEGF抗体5C3を提供する(ATCC番号PTA−7737の下に寄託されているハイブリドーマから入手可能または産生される)。また本発明は、VEGF1−110に結合せず、ハイブリドーマ細胞株PTA−7737によって産生されるモノクローナル抗体と同一のVEGF110+エピトープに結合する抗体を提供する。ある実施態様においては、本発明の抗体は検出可能な標識に接合されている。ある実施態様では、ATCC寄託番号PTA−7737の下に寄託されているハイブリドーマ5C3.1.1が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1のパネルA、BおよびCは、組み換えVEGF165、VEGF121(1)(製造元であるR&Dシステムによるとカルボキシ末端から約9アミノ酸を欠失している切断物)、VEGF121(2)(Pepro Techから入手)、VEGF110(VEGFのプラスミン消化により生成されたN末端フラグメント)、およびVEGF8−109(VEGF165のアミノ酸8−109を有する人工VEGF)分子の、種々のVEGF ELISAによる検出を示す。(A)コート用に3.5F8を用い、検出用にビオチニル化A4.6.1を用いたELISA A。(B)コート用にA4.6.1を用い、検出用にビオチニル化2E3を用いたELISA B。(C)コート用に5C3を用い、検出用にビオチニル化A4.6.1を用いたELISA C。
【0020】
【図2】図2は、プロービングに3.5F8(左)またはA4.6.1(右)を用いた、A673細胞により産生されたVEGFのタンパク質ブロッティングを示す。サンプルは、A4.6.1アフィニティーカラムを用いてA673細胞のならし培地から精製したVEGF(レーン1)、およびE.coliにより産生された組み換えVEGFタンパク質VEGF165、VEGF121(製造元であるR&Dシステムによるとカルボキシ末端から約9アミノ酸を欠失)およびVEGF8−109(それぞれレーン2、3および4)である。
【0021】
【図3】図3は、3つのVEGF ELISAで使用した抗体の推定される結合部位を示すVEGF165、VEGF121およびVEGF110(VEGFのプラスミン消化によって生成するN末端フラグメント)の略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明を詳細に説明する前に、本発明が特定の組成物または生物学的システムに限定されず、当然に変更可能であることを理解すべきである。また、ここで用いる用語が、特定の実施態様のみを記述するためのものであり、限定を意図していないことも理解すべきである。本明細書および請求の範囲で用いるように、単数形“a”、“an”および“the”は、その内容が明示しない限り、複数の指示対象を含む。かくして、例えば、“a molecule”は、任意に二以上の分子の組合せ等を含む。
【0023】
ここで使用する用語“VEGF”は、Leung et al. Science 246:1306 (1989), Houck et al. MoL Endocrin. 5: 1806 (1991), およびNeufeld et al., 上掲に記載されているように165-アミノ酸血管内皮細胞増殖因子、および関連する121-、145-、189-および206-アミノ酸血管内皮細胞増殖因子、並びに、これらの増殖因子の天然に発生するアレルおよび被処理形態を指す。また、例えば、米国特許第6057428号の図1AおよびBも参照のこと。活性VEGFフラグメントは、最初の110アミノ酸を生じるプラスミン切断によりECM結合VEGFから放出され得る(例えば、Keyt BA, et al.,: The carboxyl-terminal domain (111-165) of vascular endothelial growth factor is critical for its mitogenic potency. J Biol Chem. 271 : 7788-7795 (1996)を参照)。ここで使用する“VEGF110+”は、(N末端から)110アミノ酸より大きいVEGFフラグメントを指すが、最初の110アミノ酸またはより小さいフラグメントを含まない(例えばVEGF8−109)。
【0024】
用語“検出”は、標的分子の定性的測定および定量的測定の両方を含む最も広い意味で使用される。ある態様において、ここに記載する検出方法は、生物学的サンプルにおけるVEGF110+またはVEGFの僅かな存在を同定するために使用される。別の態様では、この方法は、サンプルにおけるVEGF110+またはVEGFが検出可能なレベルであるかどうか調べるために用いられる。さらに別の態様では、この方法は、サンプルにおけるVEGF110+またはVEGFを定量するため、さらには、異なるサンプルのVEGF110+またはVEGFレベルを比較するために使用され得る。
【0025】
“生物学的サンプル”という用語は、あらゆる動物、しかし好ましくは哺乳動物、さらに好ましくはヒトの身体のサンプルを指す。ある実施態様では、かかる生物学的サンプルは、血管の、糖尿病の、または癌の患者に由来する。かかるサンプルは、血清、血漿、硝子体液、リンパ液、滑液、卵胞液、精液、羊水、乳汁、全血、尿、脳脊髄液、唾液、痰、涙、汗、粘液、腫瘍溶解物および組織培養液のような生物学的体液、並びに、ホモジナイズした組織、腫瘍組織のような組織抽出物および細胞抽出物を含む。ある実施態様では、サンプルは、あらゆる動物に由来する身体サンプルであり、ある実施態様では、哺乳動物に由来し、ある実施態様では、ヒトに由来する。ある実施態様において、かかる生物学的サンプルは、臨床患者に由来する。
【0026】
用語“検出可能抗体”は、検出手段により増幅された標識を介して直接的に、あるいは、例えば標識された別の抗体を介して間接的に、検出され得る抗体を指す。直接標識のために、典型的には、抗体は、ある手段によって検出可能な分子に接合されている。
【0027】
用語“検出手段”は、ここではELISAにおいて検出可能抗体の存在を検出するために使用される分子または技術を指し、マイクロタイタープレートに捕獲された標識のような固定化された標識を増幅する検出剤を含む。ある実施態様では、検出手段はアビジンまたはストレプトアビジン-HRPのような比色検出剤である。
【0028】
用語“捕獲試薬”は、サンプル中の標的分子に結合して捕獲することができる試薬を指し、かくして適切な条件下において捕獲試薬−標的分子複合体がサンプルから分離され得る。典型的には、捕獲試薬は固定化されているか、または固定化され得る。サンドイッチイムノアッセイでは、捕獲試薬が、好ましくは標的抗原に対する一種の抗体または種々の抗体の混合物である。
【0029】
ここで使用する用語“抗体”は最も広い意味において用いられ、特に、完全なモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、少なくとも二つの完全な抗体から形成された多重特異的抗体(例えば、二重特異的抗体)、ならびに所望の生物学的活性を示す限り抗体フラグメントにわたる。
【0030】
“抗体フラグメント”は、完全な抗体の一部、好ましくは、その抗原結合領域または可変領域を含有する一部を含む。抗体フラグメントの例としては、Fab、Fab’、F(ab’)、およびFvフラグメント;ジアボディー(diabody);線状抗体;単鎖抗体分子;ならびに抗体フラグメントから形成される複数特異性抗体が挙げられる。
【0031】
ここでの目的では、“完全な抗体”とは、重鎖-および軽鎖可変ドメインおよびFc領域を含む抗体である。
【0032】
“ネイティブな抗体”は、通常約150,000ダルトンのヘテロ4量体糖タンパク質であり、2つの同一な軽(L)鎖および2つの同一な重(H)鎖から構成される。各軽鎖は、1つの共有結合のジスルフィド結合によって重鎖に連結され、一方、ジスルフィド連結の数は、異なる免疫グロブリンアイソタイプの重鎖の間で変化する。各重鎖および軽鎖もまた、一様に間隔をあけた鎖内ジスルフィド架橋を有する。各重鎖は、後に、多数の定常ドメインが続く可変ドメイン(V)を一端に有する。各軽鎖は、一方の端に可変ドメイン(V)を、そして他方の端に定常ドメインを有し;この軽鎖の定常ドメインは、重鎖の第1の定常ドメインと整列され、そして軽鎖の可変ドメインは、重鎖の可変ドメインと整列される。特定のアミノ酸残基が軽鎖可変ドメインと重鎖可変ドメインとの間の界面を形成すると考えられている。
【0033】
ここで用いる用語“モノクローナル抗体”とは、実質的に均質な抗体の集団から得られる抗体を指し、すなわちこの集団を含む個々の抗体が、少量で存在し得る天然に存在する可能性のある変異を除いて同一である。モノクローナル抗体は、単一の抗原性部位に対して指向し、高度に特異的である。さらに、典型的に、異なる決定基(エピトープ)に対して指向される異なる抗体を含む、慣用的な(ポリクローナル)抗体調製物と対照的に、それぞれのモノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対して指向される。その特異性に加えて、モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ培養により合成され、他の免疫グロブリンによって汚染されていない点で有利である。この修飾語句“モノクローナル”は、実質的に均質な抗体の集団から得られるような抗体の特徴を示し、そして任意の特定の方法による抗体の産生を必要とするように解釈されない。例えば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、Kohlerら、Nature 256:495(1975)により最初に記載されたハイブリドーマ法によって作製され得るか、または組換えDNA法によって作製され得る(例えば、米国特許第4,816,567号を参照のこと)。“モノクローナル抗体”はまた、例えば、Clacksonら、Nature 352:624−628(1991)およびMarksら、J.Mol.Biol.222:581−597(1991)に記載される技術を使用するファージ抗体ライブラリーから単離され得る。
【0034】
本明細書中におけるモノクローナル抗体は、特に、“キメラ”抗体(免疫グロブリン)を含む。キメラの抗体において、重鎖および/または軽鎖の一部が、特定の種に由来するか、または特定の抗体のクラスもしくはサブクラスに属する抗体における対応する配列と同一であるか、あるいは相同であるが、残りの鎖は、別の種に由来するか、または別の抗体のクラスもしくはサブクラスに属する抗体、ならびにこれらが所望される生物学的活性を示す限りは、このような抗体のフラグメントにおける対応する配列と同一であるか、あるいは相同である(米国特許第4,816,567号;Morrisonら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:6851−6855(1984))。本明細書中において関心の向けられるキメラ抗体は、非ヒト霊長類(例えば、ヒヒ、アカゲザルまたはカニクイザルのような旧世界ザル)由来の可変ドメイン抗原結合配列およびヒト定常領域配列(米国特許第5693780号)を含む“霊長類化”抗体を含む。
【0035】
非ヒト(例えば、マウス)抗体の“ヒト化”形態は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小の配列を含むキメラ抗体である。ほとんどの部分について、ヒト化抗体は、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)であり、ヒト免疫グロブリンにおいて、レシピエントの超可変領域残基は、所望の特異性、親和性、および能力を有する非ヒト種(ドナー抗体)(例えば、マウス、ラット、ウサギ、または非ヒト霊長類)由来の超可変領域残基により置換される。いくつかの例において、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域(FR)残基は、対応する非ヒトの残基によって置換される。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体またはドナー抗体において見出されない残基を含有し得る。これらの修飾は、抗体の性能をさらに洗練するためになされる。一般的には、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、そして典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含み、可変ドメインにおいて、全てまたは実質的に全ての超可変領域は、非ヒト免疫グロブリンの超可変領域に対応し、そして全てまたは実質的に全てのFRは、ヒト免疫グロブリン配列のFRである。ヒト化抗体はまた、必要に応じて、少なくとも一部の免疫グロブリンの定常領域(Fc)、典型的には、ヒト免疫グロブリンの定常領域を含む。さらに詳細については、Jones et al., Nature 321:522-525(1986); Reichmann et al., Nature 332:323-329(1988); およびPresta、Curr.Op.Struct.Biol.2:593-596(1992)を参照のこと。ある実施態様において、ヒト化5C3抗体が、ここに記載された方法で提供および使用される。
【0036】
用語“可変”とは、可変ドメインの特定の部分が、抗体間の配列において広範囲にわたって異なる事実をいい、その特定の抗原に対する各特定の抗体の結合および特異性において使用される。しかし、可変性は、抗体の可変ドメイン全体にわたって均一に分布するわけではない。これは、軽鎖可変ドメインおよび重鎖可変ドメインの両方において、超可変領域と呼ばれる3つのセグメントに集中している。可変ドメインのより高度に保存された部分は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる。ネイティブの重鎖および軽鎖の可変ドメインは、各々、4つのFRを含み、βシート形態を概ね帯び、3つの超可変領域によって連結され、βシート構造と連結するループを形成し、ある場合には、βシート構造の一部を形成する。各鎖における超可変領域は、他の鎖由来の超可変領域と共に、FRに非常に近接して一緒に保持され、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する(Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service. National Institutes of Health, Bethesda, Md. (1991)参照)。定常ドメインは、抗体の抗原への結合に直接関与するわけではないが、種々のエフェクター機能(例えば、抗体依存性細胞傷害(ADCC)における抗体の関与)を示す。
【0037】
抗体のパパイン消化は、各々が、単一の抗原結合部位を有する“Fab”フラグメントと称される2つの同一の抗原結合フラグメント、および残りの“Fc”フラグメントを生成し、この名前“Fc”は、容易に結晶化するその能力を反映している。ペプチン処理によって、2つの抗原結合部位を有し、そしてなおも抗原と架橋結合し得るF(ab’)フラグメントを生じる。
【0038】
“Fv”は、完全な抗原認識部位および抗原結合部位を含む最小の抗体フラグメントである。この領域は、密接な非共有結合的な会合による、1つの重鎖および1つの軽鎖可変ドメインのダイマーからなる。これは、各可変ドメインの3つの超可変領域が、V−Vダイマーの表面上の抗原結合部位を規定するように相互作用するような配置にある。ひとまとめにすると、6つの超可変領域が、抗体に対する抗原結合特異性を与える。しかし、1つの可変ドメイン(または抗原に特異的な3つの超可変領域のみを含むFvの半分)であっても抗原を認識しそして結合する能力を有するが、これは結合部位全体よりも低い親和性である。
【0039】
Fabフラグメントもまた、軽鎖の定常ドメインおよび重鎖の第1定常ドメイン(CH1)を含む。Fab’フラグメントは、抗体ヒンジ領域由来の1つ以上のシステインを含む重鎖CH1ドメインのカルボキシル末端に数個の残基を付加している点で、Fabフラグメントと異なる。Fab’−SHは、本明細書中において、定常ドメインのシステイン残基が少なくとも一つのフリーのチオール基を保有するFab’を示す。F(ab’)抗体フラグメントは、本来、ヒンジシステインをその間に有するFab’フラグメントの対として生成された。抗体フラグメントの他の化学カップリングもまた、公知である。
【0040】
任意の脊椎動物種由来の抗体(免疫グロブリン)の“軽鎖”が、それらの定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ(κ)およびラムダ(λ)と呼ばれる2つの明らかに異なる型の内の一方に割り当てられ得る。
【0041】
重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、抗体は異なるクラスに割り当てられ得る。完全な抗体の5つの主要なクラス:IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgMが存在し、そしてこれらのうちのいくつかは、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgAおよびIgA2のサブクラス(アイソタイプ)にさらに分けられ得る。抗体の異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれ、α、δ、ε、γおよびμと呼ばれる。免疫グロブリンの異なるクラスのサブユニット構造および3次元配置が、周知である。
【0042】
“単鎖Fv”または“scFv”抗体フラグメントは、抗体のVドメインおよびVドメインを含有し、ここで、これらのドメインは、単一のポリペプチド鎖中に存在する。好ましくは、Fvポリペプチドは、scFvが抗原結合のために所望の構造を形成することを可能にするVドメインおよびVドメインとの間のポリペプチドリンカーをさらに含有する。scFvの総説については、Pluckthun、The Pharmacology of Monoclonal Antibodies、113巻、RosenburgおよびMoore編、Springer−Verlag、New York、269−315頁(1994)を参照のこと。
【0043】
用語“超可変領域”は、本明細書中に使用される場合、抗原結合を担う抗体のアミノ酸残基をいう。超可変領域は、“相補性決定領域”または“CDR”由来のアミノ酸残基(例えば、軽鎖可変ドメインにおいて残基24〜34(L1)、50〜56(L2)、および89〜97(L3)、ならびに重鎖可変ドメインにおいて31〜35(H1)、50〜65(H2)、および95〜102(H3);Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest,第5版、Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD.(1991))を含むか、そして/または“超可変ループ”由来の残基(例えば、軽鎖可変ドメインにおいて残基26〜32(L1)、50〜52(L2)、および91〜96(L3)、ならびに重鎖可変ドメインにおいて26〜32(H1)、53〜55(H2)、および96〜101(H3);ChothiaおよびLesk、J.Mol.Biol.196:901−917(1987))を含む。“フレームワーク”または“FR”の残基は、本明細書中に規定されるような超可変領域の残基以外の可変ドメイン残基である。
【0044】
処置の目的のために“哺乳動物”は、哺乳動物として分類される任意の動物をいい、ヒト、家畜(domestic animal)および家畜(farm animal)、ならびに動物園の動物、娯楽動物または愛玩動物(例えば、イヌ、ウマ、ヒツジ、ネコ、ブタ、乳牛など)を含む。好ましくは、哺乳動物は、ヒトである。
【0045】
用語“癌”、“癌性”および“悪性”は、典型的には無秩序な細胞成長を特徴とする、哺乳動物における生理学的状態をいうか、または示す。癌の例としては、限定されないが、腺癌を含む癌腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫および白血病が挙げられる。かかる癌のより具体的な例としては、扁平上皮癌、肺癌(肺の小細胞癌、非小細胞肺癌、肺の腺癌、および肺の扁平上皮癌を含む)、腹膜の癌、肝細胞の癌、胃(gastricまたはstomach)癌(胃腸癌を含む)、消化管間質癌、膵臓癌、グリア芽細胞腫、子宮頚癌、卵巣癌、肝臓癌(例えば肝癌およびヘパトーマ)、膀胱癌、ヘパトーマ、乳癌、結腸癌,結腸直腸癌、直腸癌、子宮内膜または子宮の癌腫、唾液腺癌腫、腎臓(kidneyまたはrenal)癌、肝臓癌、前立腺癌、外陰部の癌、甲状腺癌、基底細胞癌、精巣癌、食道癌、肝細胞(hepatic)癌腫、軟部組織の肉腫、カポジ肉腫、カルチノイド癌腫、中皮腫、多発性骨髄腫、ならびに種々の型の頭部および頚部の癌、ならびにB細胞リンパ腫(例えば、低悪性度/濾胞性非ホジキンリンパ腫(NHL);小リンパ球性(SL)NHL;中等悪性度/濾胞性NHL;中等悪性度びまん性NHL;高悪性度免疫芽球性NHL;高悪性度リンパ芽球性NHL;高悪性度非分割小細胞NHL;大きな腫瘍の(bulky disease)NHL;マントル細胞リンパ腫;AIDS関連リンパ腫;およびヴァルデンストレームマクログロブリン血症);ホジキンリンパ腫、慢性リンパ性白血病(CLL);急性リンパ芽球性白血病(ALL);ヘアリーセル白血病;慢性骨髄芽球性白血病;および移植後リンパ球増殖症障害(PTLD)、ならびに母斑症、浮腫と関連する異常な脈管増殖(脳腫瘍と関連するものなど)、ならびにメグス症候群が挙げられる。
【0046】
“血管の”及び“心血管の”という語法は、相互交換可能に使用され、血管形成及び/又は心血管新生を刺激する徴候、及び血管形成及び/又は心血管新生を阻害する徴候を持つ患者を記述する。このような疾患には、例えば、アテローム性動脈硬化、高血圧、炎症性脈管炎、レーノー病及びレーノー現象、動脈瘤、及び動脈再狭窄などの動脈の病気;血栓静脈炎、リンパ管炎、及びリンパ浮腫などの静脈及びリンパ管の疾患;及び他の血管疾患、例えば、末梢血管病、AMD、血管腫瘍のような癌、例えば血管腫(毛細管及び海綿状)、グロムス腫瘍、毛細管拡張症、細菌性血管腫症、血管内皮腫、血管肉腫、血管外皮細胞腫、カポジ肉腫、リンパ管腫及びリンパ管肉腫、腫瘍血管形成などの癌、創傷、火傷、及び他に損傷を被った組織などの外傷、移植固定、瘢痕化、虚血再潅流傷害、慢性関節リュウマチ、脳血管の病気、急性腎不全などの腎臓病、及び骨粗鬆症が含まれる。また、狭心症、急性心筋梗塞などの心筋梗塞、心肥大、及びうっ血性心不全(CHF)などの心不全も含まれる。
【0047】
“糖尿病”という用語は、インスリンの不適当な生産又は利用を含む糖質代謝の進行性疾患を示し、高血糖及び糖尿により特徴付けられる。この用語は、例えば、I型及びII型及びインスリン耐性糖尿病、例えば、メンデンホール症候群、ウェルナー症候群、妖精症(leprechaunism)糖尿病、脂肪萎縮性糖尿病、及び他の脂肪萎縮など全ての形態の糖尿病を含む。
【0048】
“アフィニティー精製された”という用語は、アフィニティークロマトグラフィーカラムを通して溶出することにより物質を精製することを示す。
【0049】
ELISA
血管内皮増殖因子(VEGF)は、ホモ二量体糖タンパク質であり、成長段階および腫瘍に関連する病的血管新生における血管形成の重要な血管新生因子である。VEGFの発現は、低酸素状態に反応して、並びに、可能性として、成長因子、ホルモンおよび癌遺伝子のような他の因子に反応して、促進される(例えばFerrara N: Vascular endothelial growth factor: Basic science and clinical progress . Endocrine Reviews 25: 581-611 (2004)を参照)。ヒトVEGF遺伝子はイントロンによって分断された8つのエキソンを有する。選択的RNAスプライシングにより、単量体当たり121、165、189及び206個のアミノ酸を有する少なくとも4つの主なアイソフォームが生成される(例えば、Houck KA, et al.,: The vascular endothelial growth factor family: identification of a fourth molecular species and characterization of alternative splicing of RNA. MoI Endocrinol 5: 1806-1814 (1991); 並びにTischer E, et al.,: The human gene for vascular endothelial growth factor. Multiple protein forms are encoded through alternative exon splicing. J Biol Chem 266: 11947-11954 (1991))。単量体当たり145個のアミノ酸(例えばPoltorak Z., et al.,: VEGF145, a secreted vascular endothelial growth factor isoform that binds to extracellular matrix. J Biol Chem 272: 7151-7158 (1997))および183個のアミノ酸(例えばJingjing L, et al.,: Human Muller cells express VEGF 183, a novel spliced variant of vascular endothelial growth factor. Invest Ophthalmol Vis Sci 40:752-759 (1999)を参照)を有するアイソフォームを含む頻度の低いアイソフォームも報告されている。全てのVEGFアイソフォームが、二つのレセプターチロシンキナーゼ、VEGFR−1(例えばDe Vries C, et al.,: The fins-like tyrosine kinase, a receptor for vascular endothelial growth factor. Science 255:989-991 (1992)を参照)およびVEGFR−2(例えばTerman BI, et al.,: Identification of a new endothelial cell growth factor receptor tyrosine kinase. Oncogene 6: 1677-1683 (1991)を参照)に結合する。VEGF165は、ニューロピリンとも相互作用する(例えばSoker S. et al.,: Neuropilin-1 is expressed by endothelial and tumor cells as an isoform-specific receptor for vascular endothelial growth factor. Cell 92: 735-745 (1998)を参照)。VEGF189およびVEGF206は高い親和性でヘパリンに結合し、ほとんど細胞外マトリックス(ECM)に隔離される。VEGF165は中度の親和性でヘパリンに結合し、一部は可溶性であり、一部は細胞表面およびECMに結合する。VEGF121はヘパリンに結合せず、制限されることなく可溶性である。VEGF121およびVEGF165は、逆転写PCR解析により乳房および卵巣の癌腫瘍試料および細胞株において最も優勢に発現されるバリアントであることが見出されたが、VEGF206の発現は検出されなかった。VEGF183およびVEG189発現はその細胞株において検出不可能または低レベルであることが見出され、一部の腫瘍試料において検出された(例えば、Stimpfl M, et al.,: Vascular Endothelial growth factor splice variants and their prognostic value in breast and ovarian cancer. Clinical Cancer Research 8: 2253-2259 (2002)を参照)。
【0050】
活性VEGFフラグメントは、最初の110アミノ酸を生じるプラスミン切断によりECM結合VEGFから放出され得る(例えばKeyt BA, et al., The carboxyl-terminal domain (111-165) of vascular endothelial growth factor is critical for its mitogenic potency . J Biol Chem. 271 : 7788-7795 (1996)を参照)。これは、血管形成の生理的および病的なプロセスにおけるVEGFのバイオアベイラビリティを局所的に制御するメカニズムかもしれない。例えば、Houck KA, et al. Dual regulation of vascular endothelial growth factor bioavailability by genetic and proteolytic mechanisms. J Biol Chem 1992;267:26031-26037 (1992); Keyt BA, et al. The carboxy -terminal domain (111-165) of vascular endothelial growth factor is critical for its mitogenic potency. J Biol Chem. 271 :7788-7795 (1996); およびRoth D, et al. Plasmin modulates vascular endothelial growth factor- A-mediated angiogenesis during wound repair. Am Pathology 168: 670-684. (10-12) (2006)を参照。しかしながら、生物学的サンプルにおけるVEGF110濃度については未だ報告されたことがない。活性VEGFフラグメントは、マトリクス・メタロプロテイナーゼ(MMP)切断によってもECM結合VEGFから放出されるかもしれない。これは、卵巣癌患者由来の腹水における1−110にさらに付加のアミノ酸を有する分解されたVEGFフラグメントの発見によって支持されている。プラスミンとMMP3の両方が腹水中に検出されている。例えば、Lee S, Shahla MJ, et al. Processing of VEGF-A by matrix metalloproteinases regulates bioavailability and vascular patterning in tumors. J Cell Biology 169:681-691 (2005)を参照。
【0051】
種々の抗原に対する酵素免疫測定法(ELISA)は、比色分析、化学発光および蛍光定量法に基づくものを含む。ELISAは、血漿および尿のサンプルにける微量の薬剤および他の抗原性成分の測定に成功裏に利用されており、抽出工程を含まず、簡便に実施できる。ここに記述するアッセイは、VEGFおよびVEGF110+のための捕獲試薬としての抗体および検出可能抗体を利用するELISAである。一部の実施態様においては、ELISAは細胞ベースである。アッセイの第一工程において、VEGFを含有もしくはVEGF110+を含有することが疑われる生物学的サンプルを捕獲(またはコート)抗体と接触させかつインキュベートして、捕獲抗体がVEGFまたはVEGF110+を捕獲または結合して、検出工程において検出可能な状態にする。検出工程は検出可能抗体の使用を含み、この検出可能抗体は、結合したVEGFまたはVEGF110+の何れかと接触した際に、存在するならば、指向されたタンパク質と結合し、検出手段が抗体上の標識、かくしてVEGFまたはVEGF110+の存在または存在量を検出するために使用される。このELISAは、全VEGF(例えば、米国特許第6855508号;ここに記載されている事項および当該技術分野で公知の事項)またはVEGFのアイソフォームを認識して存在するVEGFのタイプを調べるELISAに匹敵する。
【0052】
例えば、ある実施態様では、アッセイは以下のステップを利用する。
【0053】
第一のステップ
【0054】
ここでのアッセイの第一ステップにおいて、生物学的サンプルは、固定化された捕獲(又はコート)試薬と接触され、共にインキュベートされるが、捕獲試薬は抗−VEGFモノクローナル抗体である。この抗体は何らかの動物種に由来するが、好ましくは、モノクローナル抗体はマウス又はラットモノクローナル抗体で、さらに好ましくはマウスで、最も好ましくはここに記載するハイブリドーマから誘導されるMAb 5C3である。従って、特定の好ましい実施態様において、固定化されたモノクローナル抗体はマウスモノクローナル抗体で、最も好ましくはMAb 5C3である。通常、固定化は、アッセイ手順前に、水に不溶なマトリクスもしくは表面への吸着(米国特許第3,720,760号)又は非共有結合性もしくは共有結合性の共役により(例えば、米国特許第3,645,852号又はRotmans等, J. Immuno. Methods 57:87-98 (1983)中に記述されるように、硝酸及び還元剤などの試薬による担体の事前の活性化を伴う又は伴わない、グルタルアルデヒド又はカルボジイミドのクロスリンクを用いて)、或いはアッセイの後、例えば、免疫沈降法などの方法により、捕獲試薬を不溶化することにより達成される。
【0055】
固定化に使用される固相は、実質的に水に不溶性でイムノメトリック(immunometric)アッセイにおいて有用な不活性な担体又はキャリアの何れかで、例えば、表面、粒子、多孔性マトリクスなどの形態の担体を含む。通常使用される担体の例には、小さなシート、セファデックス、塩化ビニル、プラスチックビーズ、及びポリエチレン製、ポリプロピレン製、ポリスチレン製のアッセイプレート又は試験管、及び96−ウェルマイクロプレートを含む同等なもの、並びにろ紙、アガロース、クロスリンクデキストラン、及び他の多糖類などの粒子性物質が含まれる。あるいは、臭化シアンにより活性化された糖質などの反応性を有する水に不溶なマトリクス、及び米国特許第3,969,287号;3,691,016号;4,195,128号;4,247,642号;4,229,537号;及び4,330,440号中に記述される反応性基質は、捕獲試薬の固定化に適切に用いられる。好ましい実施態様において、固定化される捕獲試薬はマイクロタイタープレート上にコートされ、特に、使用されるのに好ましい固相は、一度に幾つものサンプルを分析するために使用し得るマルチウェルマイクロタイタープレートである。例えば、Nune MaxisorbまたはImmulonとして市販されているようなマイクロテスト96ウェルELISAプレートである。一部の実施態様では、このプレートは、NUNC MAXISORBTMまたはIMMULONTMとして市販されているようなMICROTESTTMまたはMAXISORPTM96ウェルELISAプレートである。
【0056】
固相は、上述したように捕獲試薬でコートされ、非共有結合又は共有結合的相互作用又は所望の物理的な結合により連結される。吸着のための技術には、米国特許第4,376,110号及びこの中の引用文献中に記述されるものが含まれる。共有結合の場合、プレート又はその他の固相は、室温で1時間など当該技術分野において周知の条件下で捕獲試薬と共にクロスリンク剤とインキュベートされる。
【0057】
一般に、捕獲試薬を固相基質へ吸着させるために用いられるクロスリンク剤は、例えば、1,1−ビス(ジアゾアセチル)−2−フェニルエタン、グルタルアルデヒド、N−ヒドロキシスクシニミドエステル、例えば、4−アジドサリチル酸とのエステル、3,3’−ジチオビス(スクシニミジルプロピオン酸)などのジスクシニミジルエステルを含むホモ二官能性イミドエステル、及びビス−N−マレイミド−1.8−オクタンなどの二官能性マレイミドを含む。メチル−3−[(p-アジドフェニル)ジチオ]プロピオイミド酸塩などの誘導体薬剤は、光の存在下においてクロスリンクを形成することができる光活性化可能中間体を産生する。
【0058】
96−ウェルプレートが利用される場合、それらは典型的には捕獲試薬でコートされる(典型的には、0.05M 炭酸ナトリウムなどのバッファー中で、少なくとも約10時間、より好ましくは少なくとも一晩、約4-20℃で、より好ましくは約4-8℃、及び約8-12のpH、より好ましくは約9-10及び最も好ましくは約9.6におけるインキュベーションにより希釈される)。さらに短いコート時間が望ましい場合、例えば96−ウェルプレートを室温で2時間かけてコートすることができる。プレートは、アッセイ自体に先んじて長期間積み重ねて保存し、コートされていてもよく、その後、アッセイは手動、半自動、又はロボットを使用することによる自動的な形式で幾つかのサンプルに対し同時に実施され得る。
【0059】
次に、典型的には、コートされたプレートは、フリーなリガンドのプレートウェル上の過剰な部位に対する不要な結合を防ぐために、結合部位に非特異的に結合させ、飽和させるブロッキング剤で処理される。この目的に対し適当なブロッキング剤の例には、例えば、ゼラチン、ウシ血清アルブミン、卵アルブミン、カゼイン、及び脱脂ミルクなどが含まれる。典型的には、ブロッキング処理は外界温度の条件下で1-4時間、好ましくは約1から3時間、あるいは0−4℃で一晩行われる。
【0060】
コート及びブロッキングの後、適切に希釈されたVEGF標準物質(精製VEGF)又は分析される生物学的サンプルは固定化相へ添加される。好ましい希釈率は、体積にして約1-15%で、好ましくは約10%である。この目的に対する希釈のために使用されてもよいバッファーは、(a)0.5 % BSA, 0.05 % TWEEN20TM界面活性剤(P20), 0.05 % PROCLINTM300抗生物質, 5 mM EDTA, 0.25 % Chaps界面活性剤, 0.2 % β-ガンマグロブリン, 及び0.35 M NaClを含むPBS;(b)0.5 % ウシ血清アルブミン, 0.05 % ポリソルバート20, 5 mM EDTA, 0.25 % Chaps, 0.2 % ウシβ-ガンマグロブリン, 及び0.35 M NaClを含むPBSでpH7.4;(c)0.5 % BSA, 0.05 % P20, 及び0.05 % PROCLINTM300 を含むPBSでpH7;(d)0.5 % BSA, 0.05 % P20, 0.05 % PROCLINTM300, 5 mM EDTA, 及び0.35 M NaClを含むPBSでpH6.35;(e)0.5 % BSA, 0.05 % P20, 0.05 % PROCLINTM300, 5 mM EDTA, 0.2 % β-ガンマグロブリン, 及び0.35 M NaClを含むPBS;及び(f)0.5 % BSA, 0.05 % P20, 0.05 % PROCLINTM300, 5 mM EDTA, 0.25 % Chaps, 及び0.35 M NaClを含むPBS, pH7.4、を含む。PROCLINTM300は保存剤として作用し、TWEEN20TMは非特異的な結合を除去するために界面活性剤として作用する。
【0061】
一般に、捕獲試薬の濃度は、生物学的サンプルの必要な希釈を考慮にいれたVEGFの対象の濃度範囲により決定され、捕獲試薬の最終濃度は、一般に対象の範囲においてアッセイ感度を最大にするために経験的に決定されるであろう。
【0062】
サンプル及び固定化された捕獲試薬のインキュベーション条件は、アッセイの感度を最大にし、解離を最小にするように選択される。好ましくは、インキュベーションは、約0℃から約40℃の範囲内であり、好ましくは、約20から25℃で、完全に一定の温度で達成される。インキュベーションの時間は、第一に温度に依存し、感度の悪いアッセイを避けるために一般に約10時間を超えない。好ましくは、インキュベーション時間は、約0.5から3時間であり、より好ましくは遊離VEGF110+またはVEGFの捕獲試薬に対する結合を最大にするために室温で1.5-3時間である。生物学的体液中でタンパク質分解酵素がVEGFを分解することを妨げるために、タンパク質分解酵素阻害剤が添加される場合、インキュベーションの持続時間はさらに長くてもよい。
【0063】
この段階で、インキュベーション混合物のpHは、通常、約4-9.5の範囲内であり、好ましくは約6-9の範囲内、より好ましくは7-8の範囲内、最も好ましくはアッセイ(ELISA)希釈液のpHが7.4である。インキュベーションバッファーのpHは、捕獲されるべきVEGF110+またはVEGFに対する捕獲試薬の特異的な結合の有意なレベルを維持するために選択される。このステップ間、種々のバッファーが所望のpHを達成及び維持するために使用されるが、それらにはホウ酸塩、リン酸塩、炭酸塩、トリス塩酸塩又はトリスリン酸塩、酢酸塩、バルビタール、及び類似のものが含まれる。使用される特定のバッファーが、本発明にとって重要というわけではないが、個々のアッセイにおいて使用されるバッファーがその他のバッファーより好ましいほうがよい。
【0064】
第二のステップ
【0065】
ここでのアッセイ方法の任意の第二のステップにおいて、生物学的サンプルは、捕獲されなかった分子を除去するために、固定化された捕獲試薬から分離(好ましくは洗浄により)される。一般に、洗浄のために用いられる溶液は、考慮すべき事項により決定されるpHを持つバッファー(洗浄バッファー)であり、約6-9の好ましいpHの範囲を持つインキュベーションのステップのための上述のバッファーである。洗浄は3回又はそれ以上行われる。一般に、洗浄温度は、冷蔵庫の温度レベルから中程度の温度範囲であり、アッセイの期間中維持される一定温度であって、典型的には約0-40℃、より好ましくは約4-30℃である。例えば、洗浄バッファーは洗浄前に貯蔵庫内4℃の氷中に置かれ、プレート洗浄機がこのステップで利用され得る。また、捕獲されたVEGF110+またはVEGFが後のステップにおいてある程度解離することに懸念がある場合は、結合したばかりのVEGF110+またはVEGFが捕獲試薬に共有結合的に接着されることを可能にするために、クロスリンク剤又は他に適する薬剤がこの段階で添加されてもよい。
【0066】
第三のステップ
【0067】
次のステップでは、正確な温度及び使用される検出手段に主として依存する二物質を接触させるための時間を用いて、固定化された捕獲試薬を検出可能抗体に接触させるが、好ましくは約20-40℃の温度、より好ましくは約20-25℃で行う。例えば、ストレプトアビジン−ペルオキシダーゼと3,3',5,5'-テトラメチルベンジジンが検出手段として使用される場合、ある実施態様では、シグナルを最大に増幅させるために、接触が行われる(例えば、約1時間又はそれ以上)。好ましくは、予想される遊離VEGF110+またはVEGFの最大濃度(上述)に対して過剰モル濃度の抗体が、洗浄後、プレートへ添加される。この抗体は直接的又は間接的に検出可能である。検出可能抗体がポリクローナル又はモノクローナル抗体の場合、ある実施態様では、検出抗体はモノクローナル抗体であり、ある実施態様ではマウス、ある実施態様ではMAb A4.6.1である。また、検出可能抗体は直接検出可能であり、ある実施態様では比色標識を有し、別の実施態様では蛍光標識を有する。より好ましくは検出可能抗体はビオチン化され、検出手段はアビジン又はストレプトアビジン-ペルオキシダーゼと3,3',5,5'-テトラメチルベンジジンである。検出手段の読み出しは蛍光または比色法によるものとすることができる。抗体の親和性は、少量の遊離VEGF110+またはVEGFが検出されるべく十分に高くなくてはならないが、VEGF110+またはVEGFが捕獲試薬から引き離されるほど高くはない。
【0068】
第四のステップ
【0069】
アッセイ方法の最終ステップにおいて、この時点で捕獲試薬に結合されている遊離VEGFのレベルは検出可能抗体に対する検出手段を用いて測定される。生物学的サンプルが血管の、糖尿病の、又は癌の患者由来である場合、好ましくは、測定のステップは、上述の3つステップの結果生じる反応を、正常個体と比較してVEGF110+またはVEGFのレベルを決定するための標準曲線と比較することを含むか、あるいは、好ましくは、上述の3つステップの結果生じる反応を、種々のアイソフォームまたは全VEGFを認識する別のVEGF ELISAと比較して、ELISA同士を比較し、任意に正常個体と比較した場合の、VEGFタイプのレベルを調べることを含む。
【0070】
抗体産生
【0071】
一般に、VEGFに対するポリクローナル抗体は、VEGFとアジュバントを複数回皮下(sc)又は腹腔内(ip)注射することにより、動物に産生される。免疫化されている種において免疫原性であるタンパク質、例えばスカシガイヘモシアニン、血清アルブミン、ウシチログロブリン、又は大豆トリプシンインヒビターに、二重官能性又は誘導体形成剤、例えばマレイミドベンゾイルスルホスクシンイミドエステル(システイン残基を介する結合)、N-ヒドロキシスクシンイミド(リジン残基を介する結合)、グルタルアルデヒド、無水コハク酸、SOCl2 、又はR1N=C=NR、を使用して、VEGF又は標的となるアミノ酸配列を含むフラグメントを結合させることが有用である。ここでRとR1は異なったアルキル基である。
【0072】
コート抗体又は検出可能抗体として使用される抗体は、マウス、霊長類、ウサギ目の動物、ヤギ、ウサギ、ラット、チキン、ウシ、ヒツジ、ウマ、イヌ、ネコ又はブタなど何れか都合の良い脊椎動物から得られる。また、例えば、米国特許第4,816,567号;Morrison等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:6851 (1984);Neuberger等, Nature 312:604 (1984);Takeda等, Nature 314:452 (1985);1998年10月15日発行の国際公開第98/45331号、並びに上述中に示される更なる文献中に記述されているように、キメラ又はヒト化抗体も使用され得る。
【0073】
動物を、例えば、1mg又は1μgのコンジュゲート(それぞれウサギ又はマウスの場合)を完全フロイントアジュバント3容量と併せ、この溶液を複数部位に皮内注射することによって、免疫原性コンジュゲート又はその誘導体に対して免疫する。1ヶ月後、該動物を、不完全フロイントアジュバントに入れた初回量の1/5ないし1/10のコンジュゲートを用いて複数部位に皮下注射することにより、追加免疫する。7ないし14日後に動物を採血し、血清が抗−VEGF力価についてアッセイされる。動物は、力価がプラトーに達するまで追加免疫する。好ましくは、動物は、VEGFのコンジュゲートであるが、異なったタンパク質にコンジュゲートさせた、及び/又は異なったクロスリンク剤を介してコンジュゲートさせたコンジュゲートで追加免疫する。また、コンジュゲートはタンパク融合体として組換え細胞培養中で調製することができる。また、ミョウバンのような凝集化剤が、免疫反応の増強のために好適に使用される。ポリクローナル抗体の生産方法は、Davis等によるMicrobiology, 3rd Edition, (Harper & Row, New York, New York,1980)などの多くの免疫学のテキスト本に記述されている。
【0074】
モノクローナル抗体は、免疫化された動物から脾臓を回収し、定法により細胞を不死化し、例えば、ミエローマ細胞との融合又はエプステインバーウィルスの形質転換より調製され、所望の抗体を発現するクローンをスクリーニングする。Kofler及びMilstein, Eur. J. Immunol. 6:511 (1976)を参照のこと。モノクローナル抗体、又はFab又は(Fab)2フラグメントなどのモノクローナル抗体の抗原結合領域は、二者択一的に組換え法により生産される。
【0075】
好適な抗体の例には、目的のタンパク質に対して既知のRIAsにおいて既に利用されているもの、例えば本明細書の冒頭に記載した参考文献に記載されているようなVEGFに対する抗体が含まれる。
【0076】
ある実施態様では、ATCC番号PTA−7737の下に寄託されたハイブリドーマによって産生または入手可能な抗VEGF抗体5C3が、任意に他の抗VEGF抗体A4.6.1と共に、使用される。本発明は、VEGF1−110に結合せず、ハイブリドーマ細胞株PTA−7737によって産生されるモノクローナル抗体と同じVEGF110+エピトープに結合する抗体も提供する。ATCC寄託番号PTA−7737の下に寄託されたハイブリドーマ5C3.1.1が提供される。
【0077】
検出
【0078】
固定化された捕獲試薬に添加される抗体は、直接標識されるか、又は過剰の一次抗体を洗い流した後、一次抗体の動物種のIgGに対して作製された標識化二次抗体の過剰なモル濃度を添加することにより間接的に検出されるであろう。後者の間接的アッセイの場合、一次抗体に対する標識化抗血清が、標識化された抗体をインサイツで生じるようにサンプルに添加される。
【0079】
一次又は二次抗体の何れかに使用される標識は遊離のVEGF110+またはVEGFの抗体への結合を干渉しない任意の検出可能な機能性を有する。適切な標識の例には、イムノアッセイにおける使用に関し既知の多くの標識であって、蛍光色素、化学発光、及び放射活性標識などの直接検出される成分、並びに、酵素など、検出されるべく反応し又は誘導体化された成分などが含まれる。このような標識の例は、放射性同位体である32P, 14C, 125I, 3H及び131I、希土類キレートなどのフルオロフォアー、又はフルオレセイン及びその誘導体、ローダミン及びその誘導体、ダンシル、アンベリフェロン(umbelliferone)、例えばホタルルシフェラーゼ及びバクテリアルシフェラーゼ(米国特許第4,737,456号)などのルシフェラーゼ、ルシフェリン、2.3-ジヒドロフタラジンジオン、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリフォスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、リゾチーム、グルコースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ及びグルコース-6-ホスフェートデヒドロゲナーゼなどのサッカライドオキシダーゼ、HRPなどの色素前駆体を酸化するためにハイドロジェンペルオキシドを使用する酵素とカップルされるウリカーゼ及びキサンチンオキシダーゼなどのヘテロサイクリックオキシダーゼ、ラクトペルオキシダーゼ、又はミクロペルオキシダーゼ、ビオチン/アビジン、ビオチン/ストレプトアビジン、MUGと共に用いるビオチン/ストレプトアビジン-β-ガラクトシダーゼ、スピン標識、バクテリオファージ標識、安定フリーラジカル、及び類似物質などである。上で述べたように、蛍光定量的検出が一例である。
【0080】
これらの標識を共有結合的にタンパク質又はポリペプチドと結合させるためには、従来の方法が利用できる。例えば、ジアルデヒド、カルボジイミド、ジマレイミド、ビス-イミデート、ビス-ジアゾ化ベンジジン、及びその類似物質などのカップリング剤が、上述の蛍光性、化学発光性、及び酵素的な標識で抗体をタグ化するのに用いられる。例えば、米国特許3,940,475号(蛍光定量法)及び3,645,090号(酵素法);Hunter等, Nature 144:945 (1962);David等, Biochemistry 13:1014-1021 (1974);Pain等, J. Immunol. Methods 40:219-230 (1981);及びNygren J. Histochem. and Cytochem. 30:407-412 (1982)を参照のこと。一部の実施態様では、ここでの標識は、8pg/ml濃度に対する増幅性及び感度を増大させる蛍光性を有し、さらに好ましくはシグナルを増幅するためのビオチン並びにストレプトアビジン-β-ガラクトシダーゼ及びMUGである。ある実施態様では、比色標識が使用され、例えば、検出可能抗体がビオチニル化され、検出手段がアビジンまたはストレプトアビジン−ペルオキシダーゼと3,3',5,5'-テトラメチルベンジジンである。
【0081】
酵素を含むこのような標識の抗体への結合は、イムノアッセイ技術分野における当業者にとって、標準的な操作可能な方法である。例えば、O'Sullivan等, "Methods for the Preparation of Enzyme-antibody Conjugates for Use in Enzyme Immunoassay", in Methods in Enzymology, ed. J.J.Langone 及びH. Van Vunakis, Vol.73 (Academic Press, New York, New York, 1981), pp147-166を参照のこと。
【0082】
最終的な標識化抗体を添加した後、結合した抗体の量は、結合していない過剰な標識化抗体を洗浄により除去した後、標識に適した検出方法を用いて付着した標識の量を測定し、測定量を生物学的サンプル中の遊離VEGF110+またはVEGFの量を関係づけることにより決定される。例えば、酵素法の場合、発色及び測定された呈色の量は、VEGF110+またはVEGFの存在量の直接的な測定値となる。特に、HRPが標識である場合、呈色は、450nmの吸収における基質3,3',5,5'-テトラメチルベンジジンを利用して検出される。
【0083】
一例では、非標識一次抗体に対して作製された酵素標識二次抗体が固定化相から洗浄された後、呈色又は化学発光は酵素の基質と共に固定化された捕獲試薬とインキュベートすることにより発色され測定される。その後、遊離VEGF110+またはVEGF濃度の量は、平行して行われる標準物質VEGFによる呈色又は化学発光と比較することにより計算される。
【0084】
キット
【0085】
都合上、本発明のアッセイ方法はキットの形式で提供され得る。このようなキットは以下の基本的な成分を含んだ組合せで包装される:
(a)ヒトVEGF分子に対するモノクローナル抗体で構成され、モノクローナル抗体がVEGF110+を認識する捕獲試薬;及び
(b)VEGFのKDR及びFLT1レセプター結合ドメインと結合する検出可能抗体(標識化又は非標識化)で構成される検出試薬。これらの基本成分は上述部分にて定義されている。ある実施態様では、検出試薬はVEGF1−110のエピトープに結合する検出可能抗体を含む。
【0086】
好ましくは、キットはさらに捕獲試薬のための固体担体を含み、分離された成分として提供されるか又は既に捕獲試薬が固定化されている。それ故、キット中の捕獲抗体は固体担体上に固定化され、又はキットに含まれるか若しくはキットとは別に提供されるような担体上に固定化される。
【0087】
好ましくは、捕獲試薬はマイクロタイタープレート上にコートされる。検出可能試薬は、直接検出される標識化抗体、又は異なる動物種で産生された非標識抗体に対する標識抗体により検出される非標識抗体である。標識が酵素である場合、通常、キットは基質と酵素に必要とされるコファクター含み、標識は検出可能な発色団を提供する色素前駆体のフルオロフォアーである。検出試薬が非標識の場合、キットはさらに、非標識抗体に対して作製された標識化抗体などの検出可能抗体に対する検出手段を含み、好ましくは蛍光定量的検出形式である。標識が酵素の場合には、通常、キットはその酵素に必要な基質および補因子を含み、標識がフルオロフォアーである場合には、検出可能な発色団を提供する色素前駆体を含み、標識がビオチンである場合には、アビジン、ストレプトアビジンまたはHRPに結合したストレプトアビジンのようなアビジンまたはMUGと共に用いるβガラクトシダーゼを含む。
【0088】
特定の実施態様において、捕獲試薬はモノクローナル抗体であり、好ましくは齧歯類、より好ましくはマウスまたはラット、さらに好ましくはマウスのものであり、最も好ましくはMAb 5C3である。一部の実施態様では、検出可能抗体はビオチニル化モノクローナル抗体であり、モノクローナル抗体が齧歯類、より好ましくはマウスまたはラット、さらに好ましくはマウスのものであり、最も好ましくはMAb A4.6.1である。一部の実施態様では、捕獲試薬はキットに固定化されている。
【0089】
一部の実施態様では、キットは、VEGFおよびVEGF110+の種々の形態を検出するための、ここに記載する比較研究用多重ELISAを含むことができる。
【0090】
また、キットは典型的にはアッセイを実施するための説明書を含み、及び/又は抗原標準物質としてのVEGF(例えば、精製VEGF、好ましくは組換体として生産されたVEGF、およびVEGF110)、並びに安定化剤などの他の添加剤、洗浄及びインキュベーションバッファー、及びこれらと同種のものを含む。
【0091】
VEGFに対する標準物質の例は、Genentech, Inc., South San Francisco. Californiaおよびここに記載する会社および方法から入手可能な哺乳類細胞中で生産された組換体ヒトVEGFである。
【0092】
キットの構成成分は、アッセイの感度を実質的に最大化する試薬溶液濃度を提供するために適当に変動させた種々の試薬の相対量により、予め決定された量比で提供されるであろう。特に、試薬は、通常は凍結乾燥され、賦形剤を含み、溶解後、テストサンプルと混合するために適切な濃度を有する試薬溶液を提供する乾燥粉末として提供される。
材料の寄託
【0093】
以下の材料を、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション, 10801 ユニバーシティ・ブルバード、マナッサス、バージニア20110−2209米国(ATCC)に寄託した:
5C3.1.1は、2006年7月19日にATCC番号PTA−7737の下に寄託した。
【表A】

【0094】
これらの寄託は、特許手続き上の微生物の寄託の国際的承認に関するブダペスト条約及びその規則(ブダペスト条約)の規定に従って行われた。これは、寄託の日付から30年間、寄託の生存培養物が維持されることを保証するものである。寄託物はブダペスト条約の条項に従い、またジェネンテク社とATCCとの間の合意に従い、ATCCから入手することができ、これは、何れが最初に来ようとも、関連した米国特許の発行時又は任意の米国又は外国特許出願の公開時に、寄託培養物の後代を永久かつ非制限的に入手可能とすることを保証し、米国特許法第122条及びそれに従う特許庁長官規則(特に参照番号886OG638の37CFR第1.14条を含む)に従って権利を有すると米国特許庁長官が決定した者に子孫を入手可能とすることを保証するものである。
【0095】
本出願の譲受人は、寄託した材料の培養物が、適切な条件下で培養されていた場合に死亡もしくは損失又は破壊されたならば、材料は通知時に同一の他のものと速やかに取り替えることに同意する。寄託物質の入手可能性は、特許法に従いあらゆる政府の権限下で認められた権利に違反して、本発明を実施するライセンスであるとみなされるものではない。
【0096】
上記の文書による明細書は、当業者に本発明を実施できるようにするために十分であると考えられる。寄託した態様は、本発明のある側面の一つの説明として意図されており、機能的に等価なあらゆる作成物がこの発明の範囲内にあるため、寄託された作成物により、本発明の範囲が限定されるものではない。ここでの材料の寄託は、ここに含まれる文書による説明が、そのベストモードを含む、本発明の任意の側面の実施を可能にするために不十分であることを認めるものではないし、それが表す特定の例証に対して請求の範囲を制限するものと解釈されるものでもない。実際、ここに示し記載したものに加えて、本発明を様々に変形することは、前記の記載から当業者にとっては明らかなものであり、添付の請求の範囲内に入るものである。
【0097】
以下に記載する実施例および実施態様は例示目的でのみ提供されるものであり、それらを踏まえた種々の変更または修正が当業者に示唆され、本出願の精神および範囲ならびに添付の請求の範囲に含まれるものと解される。ここに引用される全ての刊行物、特許および特許出願を、全ての目的のためにその全体を参考として本明細書に援用する。
【実施例】
【0098】
実施例1
選択的RNAスプライシングにより種々のアイソフォームとして発現される血管内皮増殖因子(VEGF)は、腫瘍血管形成に重要な役割を演じることが知られている。VEGF165および全VEGFの濃度を測定し、VEGFのプラスミン消化によって生じた活性フラグメントであるVEGF110の相対量を評価した。ELISA A(VEGF165−206 ELISA)は、VEGF165およびより長いアイソフォームであるがVEGF121ではないものを検出する。ELISA B(VEGF110−206 ELISA)は、VEGF165およびアイソフォームVEGF121およびVEGF110を検出する。ELISA C(VEGF121−206 ELISA)は、VEGF165およびより長いアイソフォーム、VEGF121並びにVEGF110より長い分子量を有するがVEGF110ではないVEGFフラグメント(ここでは“VEGF110+”と称する)を検出する。
【0099】
材料と方法
【0100】
試薬と細胞:
組み換えVEGF165(Genentech)、VEGF121(Pepro Tech, Rocky Hill, New Jersey)、VEGF8−109(VEGF165のアミノ酸8−109からなる)および切断VEGF121(R&D Systems, Minneapolis, MN)をE.coliで産生した。切断VEGF121は質量分析で完全なN末端を有するが、26kDaの質量を有し、製造者によるところのカルボキシ末端から約9アミノ酸の切断と一致する。これは、還元条件下でのSDS−PAGEで分析した場合に、VEGF110とVEGF121との間に移動する。VEGF110は、VEGF165のプラスミン消化によって調製された(Keyt BA, et al.,: The carboxyl-terminal domain (111-165) of vascular endothelial growth factor is critical for its mitogenic potency. J Biol Chem. 271 : 7788-7795 (1996))。質量分析で測定した分子量は25390であり、理論質量25389と一致した。濃度はビシンコニン酸法を用いて測定した(Pierce, Rockford, IL)。VEGF8−109、VEGF121およびVEGF165の濃度計算に使用した分子量は、それぞれ23.8、28.9および38.2KDaであった。モノクローナル抗VEGF抗体A4.6.1、3.5F8、2E3および5C3は、マウスをCHO細胞で産生したVEGF165で免疫することによって生成した(Kim KJ, et al.,: The vascular endothelial growth factor proteins: Identification of biologically relevant regions by neutralizing monoclonal antibodies. Growth Factors 7: 53-64 (1992))。乳房細胞株SK−BR−3、BT−474、T−47DおよびMCF−7並びに卵巣細胞株ES−2、OVCAR−3およびSK−OV−3(American Type Culture Collection, Rockville, MD)は、37℃にて、加湿された5%COインキュベーターにおいてRPMI、2mMのLグルタミンおよび10%FBS(ただしOVCAR−3については20%)で生育した。
【0101】
A673細胞の馴化培地におけるVEGFの精製:
A673細胞(American Type Culture Collection)を50:50 F12/DMEM、2mM Lグルタミンおよび5%FBSにおいて60%の密集度まで生育し、次いで、無血清培地(Genentech)において密集度まで生育した。VEGFを、CNBr活性化セファロース(Amersham Biosciences, Piscataway, NJ)を用いて調製したA4.6.1−セファロースカラムを用いて上清から精製した。カラム溶出液と組み換えVEGFコントロール(1レーンあたり0.2μg)を還元条件下で18%トリス−グリシンゲル(Invitrogen, Carlsbad, CA)で泳動させ、ニトロセルロースにブロットした。このブロットを、3%ウシ血清アルブミンを含む0.5Mトリス−HCl、pH7.5、1.5M NaCl、50mM EDTA、0.5% Trition100でブロックし、200ng/mlの3.5F8またはA4.6.1でプローブし、次いで、2ng/mlのヤギ抗マウスFc−HRP(Jackson ImmunoResearch)を適用した。シグナルをSuperSignal West Dura(Pierce)を用いて発現させ、X線フィルムに記録した。
【0102】
VEGF濃度を測定するためのVEGF ELISA
【0103】
ELISA A(VEGF165−206ELISA)。
他に言及しない限り、蛍光ELISA Aをサンプル中のVEGFを測定するために用いた。蛍光ELISA Aは、コート用に3.5F8を用い、検出用にビオチニル化A4.6.1およびその後にストレプトアビジン−βガラクトシダーゼを用い、基質として4−メチル−ウンベリフェリル−β−D−ガラクトシドを用いた(Rodriguez CR, et al.,: A sensitive fluorometric enzyme-linked immunosorbent assay that measures vascular endothelial growth factorl65 in human plasma. J Immunol Methods 219: 45-55 (1998))。VEGF165スタンダードは1−128pg/mLまたは0.026−3.35pMであった。比色ELISA Aは、以下のELISA Cに使用したプロトコールに従って、コート用に3.5F8を用い、検出用にビオチニル化A4.6.1を用いた。VEGF165スタンダードは1.6−200pg/mLであった。
【0104】
ELISA B(VEGF110−206ELISA)(以前にはVEGF121−206ELISAと称されていた。Konecny GE, et al.,: Association between HER-2/neu and Vascular Endothelial Growth Factor Expression Predicts Clinical Outcome in Primary Breast Cancer Patients. Clinical Cancer Research, 10: 1706-1716 (2004)):MaxiSorp96ウェルマイクロウェルプレートを、50mMの炭酸塩バッファーpH9.6中の0.5μg/mlの抗体A4.6.1を用いて、4℃で一晩、100μl/ウェルでコートした。このステップの後と、その後の0.05%のポリソルバート20を含有するpH7.4のPBSを用いた室温インキュベーションステップの間において、プレートを洗浄した。プレートを、PBS(150μl/ウェル)中の0.5%ウシ血清アルブミン、10ppmのProclinTM300(Supelco, Belleconte, PA)を用いて1時間かけてブロックした。0.5%のウシ血清アルブミン、0.05%のポリソルバート20、5mMのEDTA、0.25%のCHAPS、0.2%のウシγグロブリン(Sigma, St. Louis, MO)および0.35MのNaClを含有するPBS(pH7.4)(サンプルバッファー)中の二重または三重の連続希釈法におけるVEGFスタンダード(二重の連続希釈法において1.56−200pg/mlのVEGF165または0.0409−5.24pMのVEGF)および連続希釈サンプル(最小1:10希釈)をプレートに加え(100μl/ウェル)、2時間インキュベートした。結合したVEGFをプレート上で1時間にわたってビオチニル化2E3(またはVEGFのレセプター結合ドメインに結合する別の抗体)、その後ストレプトアビジン−HRP(Amersham, Copenhagen, Denmark)で30分間、ビオチニル−チラミド(tyramide)(ELAST ELISA amplification SYstem, Perkin Elmer Life Sciences Inc., MA)で15分間、およびストレプトアビジン−HRPで30分間インキュベートすることにより検出した。基質TMB(3,3',5,5'-テトラメチルベンジジン)(Kirkegaard & Perry Laboratories)を添加し、1Mのリン酸を加えることにより反応を停止させた。吸収をTitertekスタッカーリーダー(ICN, Costa Mesa, CA)で450nmで読み取った。滴定曲線を、4パラメーター回帰曲線フィッティングプログラム(KaleidaGraph, Synergy software, Reading, PA)を用いて適合させた。標準曲線の範囲に入るデータ点を、そのサンプルにおける推定VEGF濃度を算出するために用いた。10%ヒトEDTA血漿(Golden West Biologicals Inc., Temecula, CA)中の1.56−200pg/mlのVEGF165の回収は、この研究に用いた10%血漿における推定2.1pg/mlの内因性VEGFを差し引きした後で92−120%であった。
【0105】
ELISA C(VEGF121−206ELISA):
マイクロウェルプレートを、1μg/mlの抗VEGF 5C3抗体を用いてコートし、上述の通りブロックした。VEGFスタンダード(二重の連続希釈法において4.00−512pg/mlのVEGF165または0.105−13.4pMのVEGF)およびサンプルバッファー中の連続希釈サンプルをプレートに加えた。これらのプレートを2時間インキュベートした。結合したVEGFを、ビオチニル化A4.6.1を加え、次いでストレプトアビジン−HRPおよび基質としてのTMBを加えて検出した。上記の通り、プレートを読み取り、データを解析した。10%血漿中の4.00−512pg/mlのVEGF165の回収は、この研究に用いた10%血漿における推定1.6pg/mlの内因性VEGFを差し引きした後で77−101%であった。
【0106】
結果と考察
【0107】
VEGF ELISA:
上記のELISA Aはコート用に3.5F8を用い、検出用にビオチニル化A4.6.1を用いている(Rodriguez CR, et al.,: A sensitive fluorometric enzyme-linked immunosorbent assay that measures vascular endothelial growth factor 165 in human plasma. J Immunol Methods 219: 45-55, 1998)。これは、VEGF165(VEGF165)を検出するが、R&D Systemsから入手できカルボキシ末端から約9アミノ酸を欠いているVEGF121(1)(VEGF121(1))およびPeproTechから入手できるVEGF121(2)(VEGF121(2))を検出しない(図1A)。3.5F8はVEGF165に結合するが、BIAcoreのVEGF121には結合しない。A4.6.1は、全てのアイソフォームおよびVEGF110に存在するレセプター結合ドメイン(Kim KJ, et al.,: The vascular endothelial growth factor proteins: Identification of biologically relevant regions by neutralizing monoclonal antibodies . Growth Factors 7: 53-64, 1992)に結合する。3.5F8は、恐らく、VEGF121に存在しないアミノ酸116および118の近傍に結合する。5C3は、恐らく、VEGF110に存在しないアミノ酸111−113の近傍に結合する(図3)。ELISA Aは、恐らくVEGF183、VEGF189およびVEGF206を含むVEGF165配列を含むVEGFアイソフォームを検出することができる(Stimpfl M, et al.,: Vascular Endothelial growth factor splice variants and their prognostic value in breast and ovarian cancer. Clinical Cancer Research 8: 2253-2259, 2002を参照)。ELISA B(以前にはVEGF121−206ELISAと称されていた。Konecny GE, et al.,: Association between HER-2/neu and Vascular Endothelial Growth Factor Expression Predicts Clinical Outcome in Primary Breast Cancer Patients. Clinical Cancer Research, 10: 1706-1716 (2004))はコート用にA4.6.1を用い、検出用にビオチニル化2E3を用いる。A4.6.1および2E3は、3つ全ての分子に存在するレセプター結合ドメインに結合する。例えば、Kim KJ, et al. The vascular endothelial growth factor proteins: Identification of biologically relevant regions by neutralizing monoclonal antibodies. Growth Factors 7:53-64 (1992); およびMuller YA, et al. Vascular endothelial growth factor: Crystal structure and functional mapping of the kinase domain receptor binding site. Proc Natl Acad Sci USA 94:7192-7197 (1997)を参照。これらの領域に結合する他の抗体も使用することができる。このELISAは、VEGF165、VEGF121、切断されたVEGF121(カルボキシ末端から約9アミノ酸を欠失)、VEGF110およびVEGF8−109を同等に十分に検出する(図1B)。このELISAは、マトリクス・メタロプロテイナーゼ消化により生じたVEGF110よりも大きいフラグメントを含む全VEGFを検出することができる。ここに記述するELISA Cは、コート用に5C3を用い、検出用にビオチニル化A4.6.1を用い、VEGF165、VEGF121、および切断されたVEGF121を同等に十分に検出するが、VEGF110またはVEGF8−109を検出しない(図1C)。5C3はVEGF121に結合するが、BIAcoreによるVEGF8−109には結合しない。このELISAは、VEGF110およびより小さいフラグメントを除いて、VEGF110−206によって検出された全てのVEGF分子を検出することができる。
【0108】
ELISA A、ELISA B、およびELISA Cの感度は、最小で1:10希釈を用いて、サンプル中のVEGFについてそれぞれ10、16および40pg/mlのVEGF165(または種々のVEGFアイソフォームおよびフラグメントについて0.26、0.41および1.05pM)であった。ELISA BおよびELISA Cは再現性があった(表1および2)。ELISA BおよびELISA Cは、VEGF(VEGF−A)に特異的であった。50ng/mlまでの濃度のVEGF−B、VEGF−CおよびVEGF−Dはバックグラウンドシグナルを与えるだけであった。インスリン様成長因子I、成長ホルモン、組み換え神経成長因子、腫瘍壊死因子(Genentech)、血小板由来増殖因子AB、胎盤成長因子、形質転換成長因子β1(R&D Systems)(200ng/mlまで)はバックグラウンドシグナルを与えるだけであった。ヘパリン(Leo Laboratories, Bucks, UK and Dublin, Ireland)(100U/mlまで)はこのアッセイにおいて意味のある効果を有していなかった。
【0109】
表1。ELISA B(VEGF110−206 ELISA):標準のレンジはバッファー中に1.56−200pg/mlのVEGF165(0.0409−5.24pMのVEGF)であった。ブランクと比較した1.56pg/mlのスタンダードのOD比は1.37±0.11であった。CVは変動係数である。
【表1】

中および高コントロールは、ヒトEDTA血漿に組み換えVEGF165を添加することにより調製した。血漿が内因性VEGFを含んでいたことから、低コントロールは、70%血漿中にVEGF165を添加することにより調製した。コントロールを1:10で希釈し、34の独立したアッセイにおいて二重に分析した。
【0110】
表2。ELISA C(VEGF121−206 ELISA)。標準のレンジは4.00−512pg/mlのVEGF165(0.105−13.4pMのVEGF)であった。ブランクと比較した4pg/mlのスタンダードのOD比は2.72±0.37であった。CVは変動係数である。
【表2】

コントロールは、ヒトEDTA血漿に組み換えVEGF165を添加することにより調製した。これらを1:10で希釈し、15の独立したアッセイにおいて二重に分析した。
【0111】
細胞株の馴化培地中のVEGF:
VEGF165 cDNA(Mengら,2000)でトランスフェクトした6つの安定なCHOクローンの馴化培地を、標準としてE.coliで産生された非グリコシル化VEGFを使用する3種のELISAで測定した。6つの安定なCHOクローンの馴化培地中のグリコシル化組み換えVEGF165は、3つのELISAで非常に類似した濃度を示した。ELISA Bで測定した濃度は、それぞれ、28、63、64、43、3.8および3.2nMであった。ELISA Bで測定されたVEGF濃度と比較したELISA AおよびELISA Cで測定されたVEGF濃度の比率は、それぞれ0.90±0.08および1.08±0.10であった。それゆえ、3つのELISAはグリコシル化VEGFを同じように良好に定量し、培養条件下でVEGF165のタンパク質分解は殆ど無かった。
【0112】
ELISA A、ELISA BおよびELISA Cで測定したA673細胞馴化培地中のVEGF濃度は、それぞれ0.15、0.29および0.24nMであった。ELISA Aで測定した濃度はより低く、VEGF121が存在することを示唆していた。VEGFをA4.6.1アフィニティーカラムを用いて馴化培地から精製し、蛋白ブロッティングで分析すると、グリコシル化および非グリコシル化VEGF165と思われる二つのバンドが3.5F8によって検出された。下方のバンドはE.coliで産生されたVEGF165と同じ移動度であった(図2左)。N−グリカナーゼ処理により上方のバンドは下方のバンドに転換された。グリコシル化(推定される非グリコシル化VEGF165バンドと部分的に重複する)および非グリコシル化VEGF121と思われる二つのさらなる低分子量バンドがA4.6.1によって検出された(図2右)。下方のバンドはE.coliで産生された精製VEGF121と同じ移動度であり、N−グリカナーゼ処理により上方のバンドは下方のバンドに転換された。
【0113】
ELISA Bで測定した乳房細胞株SK−BR−3、BT−474、T−47DおよびMCF−7由来の馴化培地におけるVEGF濃度は、それぞれ3.6、16、13および13pMであった。ELISA Bで測定したVEGF濃度に対するELISA Aで測定したVEGF濃度の比率はそれぞれ0.49、0.42、0.43および0.38(すなわち、49%、42%、43%または38%)であり、これらの各細胞株におけるVEGF165の発現である43、35、40および41%(Stimpfl M, et al.,: Vascular Endothelial growth factor splice variants and their prognostic value in breast and ovarian cancer. Clinical Cancer Research 8: 2253-2259, 2002)と一致していた。ELISA Bで測定したVEGF濃度に対するELISA Cで測定したVEGF濃度の比率はこれらの細胞株で1.1−1.2であり、VEGF110が殆ど存在しないことを示している。ELISA Bで測定した卵巣細胞株ES−2、OVCAR−3およびSK−OV−3由来の馴化培地におけるVEGF濃度は、それぞれ32、11および20pMであった。ELISA Bで測定したVEGF濃度に対するELISA Aで測定したVEGF濃度の比率は、それぞれ0.24、0.20および0.32(すなわち、24%、20%および32%)であり、これらの各細胞株におけるVEGF165の発現が38、42および24%(Stimpfl et al.,上掲)であることと対比される。ELISA Bで測定したVEGF濃度に対するELISA Cで測定したVEGF濃度の比率はこれらの細胞株で0.64−0.79であり、VEGF110(またはそれよりも小さいフラグメント)が存在するかもしれないことを示している。
【図1A】

【図1B】

【図1C】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程:
(a)生物学的サンプルを固形支持体に固定された捕獲試薬と接触させてインキュベートする工程であって、ここで前記捕獲試薬がヒト血管内皮増殖因子(VEGF)に対する抗体5C3と同じエピトープを認識する抗体であり、前記モノクローナル抗体がヒトVEGFの110より大きい残基に特異的に結合する、工程;
(b)固定された捕獲試薬から生物学的サンプルを分離する工程;
(c)固定された捕獲試薬−標的分子複合体を、VEGFのKDRおよび/またはFLT1レセプター結合ドメインに結合する、もしくはVEGF1−110におけるエピトープに結合する検出可能抗体と接触させる工程;および
(d)検出可能抗体のための検出手段を用いて捕獲試薬に結合したVEGF110+のレベルを測定する工程;
を含む、生物学的サンプルにおける選択的血管内皮増殖因子(VEGF)型(VEGF110+)を検出する方法。
【請求項2】
生物学的サンプルが被験者から単離される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
被験者が血管の、糖尿病の、または癌の患者であり、測定工程(d)が標準曲線と比較して正常な個体と比べたVEGFレベルを調べることをさらに含む、請求項2記載の方法。
【請求項4】
生物学的サンプルが、腫瘍溶解物、血漿、血清、または尿である、請求項1記載の方法。
【請求項5】
捕獲試薬が5C3モノクローナル抗体である、請求項1記載の方法。
【請求項6】
固定された捕獲試薬がマイクロタイタープレート上にコートされる、請求項1記載の方法。
【請求項7】
検出可能抗体が直接的に検出可能である、請求項1記載の方法。
【請求項8】
検出可能抗体が蛍光試薬によって増幅される、請求項7記載の方法。
【請求項9】
検出可能抗体がビオチン化され、検出手段がアビジンまたはストレプトアビジン−ペルオキシダーゼおよび3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジンである、請求項8記載の方法。
【請求項10】
検出可能抗体がモノクローナル抗体である、請求項1記載の方法。
【請求項11】
検出可能抗体がマウスモノクローナル抗体である、請求項10記載の方法。
【請求項12】
固定化されたモノクローナル抗体がMAb 5C3であり、かつ、検出可能抗体がMAb A4.6.1である、請求項11記載の方法。
【請求項13】
(a)捕獲試薬として、ヒトVEGFに対する抗体、ここで前記モノクローナル抗体がヒトVEGFの110より大きい残基に特異的に結合する;および
(b)検出試薬として、VEGFのKDRおよび/またはFLT1レセプター結合ドメインに結合する、もしくはVEGF1−110におけるエピトープに結合する検出可能抗体;
を含む、生物学的サンプル中のVEGF110+を検出するためのイムノアッセイキット。
【請求項14】
捕獲試薬用の固形支持体をさらに含む、請求項13記載のキット。
【請求項15】
捕獲試薬が固形支持体上に固定される、請求項14記載のキット。
【請求項16】
捕獲試薬がマイクロタイタープレート上にコートされる、請求項15記載のキット。
【請求項17】
検出可能抗体の検出手段をさらに含む、請求項16記載のキット。
【請求項18】
検出手段が比色的である、請求項17記載のキット。
【請求項19】
抗原標準として精製されたVEGFをさらに含む、請求項13記載のキット。
【請求項20】
捕獲試薬抗体がマウスモノクローナル抗体MAb 5C3であり、検出可能抗体がMAb A4.6.1である、請求項13記載のキット。
【請求項21】
寄託番号PTA−7737の下に寄託されているハイブリドーマ5C3.1.1から入手可能(または産生される)抗体5C3。
【請求項22】
検出可能な標識に接合した請求項21記載の抗体。
【請求項23】
ATCC寄託番号PTA−7737の下に寄託されているハイブリドーマ5C3.1.1。
【請求項24】
VEGF110に結合せず、ハイブリドーマ細胞株PTA−7737によって産生されるモノクローナル抗体と同一のエピトープに結合する抗体。
【請求項25】
検出可能な標識に接合した請求項24記載のモノクローナル抗体。

【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−506171(P2010−506171A)
【公表日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−531581(P2009−531581)
【出願日】平成19年10月3日(2007.10.3)
【国際出願番号】PCT/US2007/080310
【国際公開番号】WO2008/060777
【国際公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【出願人】(509012625)ジェネンテック インコーポレイテッド (357)
【Fターム(参考)】