説明

VEGF発現をモジュレートすることができる化合物をスクリーニングするための方法および薬剤

【課題】 スクリーニングアッセイの分野ならびにタンパク質発現およびタンパク質レベルを変化させるための化合物および方法を提供する。
【解決手段】 本発明は、VEGFの発現をモジュレートすることができる薬剤をスクリーニングするためのアッセイおよびVEGF発現をモジュレートすることができる薬剤に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、VEGF発現をモジュレートすることができる化合物をスクリーニングするための方法および薬剤に関する。
【背景技術】
【0002】
異常な血管新生は、悪性腫瘍、虚血、炎症および免疫障害などの多くの疾患の病因における役割を果たす(Matter, Drug Discovery Today, 6:1005-1024 (2001); Yancopoulosら、Nature, 407: 242-248 (2000); Carmeliet, Nat. Med., 9(6): 653-660 (2003); Ferrara, Semin. Oncol., 29 (6 Suppl 16): 10-14 (2002)に総説されている)。血管新生調節因子である血管内皮増殖因子(VEGF)は、血管新生において中心的な役割を果たす。特に、VEGFは癌、糖尿病性網膜症(DR)、および滲出性筋肉変性の病因における重要な因子である(Tandleら、Clin. Adv. in Hemat. and Oncol., 1(1):41-48 (2003); Ferraraら、Nat. Med., 5(12): 1359-1364 (1999); Matter,上掲;Carmeliet,上掲;Kerbelら、Nat. Rev. Cancer, 2(10): 727-739 (2002); Witmerら、Prog. Retin. Eye Res., 22(1):1-29 (2003); Clarkら、Nat. Rev. Drug Discovery, 2:448-459 (2003); Ferrara (2002),上掲;Thomas, J. Biol. Chem., 271:603-606 (1996); Gerberら、Development, 126: 1149-1159 (1999)に総説されている;参照により本明細書に組み入れられるものとする)。これらの最後の2つは米国における失明の主要な原因である。
【0003】
VEGFの発現は、サイトカイン、増殖因子、ステロイドホルモンおよび化合物などのいくつかの因子および薬剤、ならびにrasまたは腫瘍抑制遺伝子VHLなどの癌遺伝子の活性をモジュレートする突然変異により調節される(Maxwellら、Nature, 399:271-275 (1999); Rakら、Cancer Res., 60:490-498 (2000))。部分的には、VEGF発現は、そのmRNAの5'および3'非翻訳領域(UTR)の両方の配列による転写後に調節される(Ikedaら、J. Biol. Chem., 270: 19761-19766 (1995); Steinら、Mol. Cell. Biol., 18: 3112-3119 (1998); Levyら、J. Biol. Chem., 271: 2746-2753 (1996); Huezら、Mol. Cell. Biol., 18: 6178-6190 (1998); Akiriら、Oncogene, 17: 227-236 (1998))。VEGFの5'UTRは異常に長く、GCに富み、ユニークな、キャップ非依存的な様式の翻訳開始を媒介すると報告されている内部リボソーム進入部位(IRES)を含む。VEGFの3'UTRはVEGFのmRNAの転換速度に関連することが示された複数のAUに富む安定性決定因子を担持する。
【0004】
VEGF mRNAの翻訳の開始は、VEGFの5'UTR内の内部リボソーム進入部位(IRES)により媒介される低酸素条件下でユニークであると報告されている(Steinら、上掲;Levyら、上掲;Huezら、上掲;Akiriら、上掲)。低酸素条件下で、キャップ依存的翻訳は劇的に減少し、VEGF mRNAの翻訳はそのキャップ非依存的IRESを通して起こる。多くの真核mRNAの翻訳の開始はキャップ依存的である。IRESを介する翻訳開始は、翻訳開始複合体の成分が、例えば、低酸素症の間に速度制限的になる場合に主流となる(Mitchellら、Mol. Cell., 11(3): 757-771 (2003))。
【0005】
いくらかの調査者らが、VEGFの調節を研究するために、しばしば欠失突然変異体と組合わせて、in vitroおよび2シストロン的戦略を用いてきた。Pratsおよびその同僚は、IRESに基づくヒトVEGFのキャップ非依存的翻訳の発生を報告した。これらの研究から、彼らは2つのIRESの存在を主張し、第1のIRES(IRES A)は開始コドンの300ヌクレオチド以内に位置し、第2のIRES(IRES B)は5'-UTRの上流半分に位置する(Huezら、上掲)。Steinら、上掲においては、2シストロン性および1シストロン性構築物中の欠失突然変異体を用いて、最大のIRES活性にとって必要なVEGFの5'UTRの配列を同定した。Keshetおよびその同僚は、完全長VEGFの5'UTRと比較して、おそらくRT-PCR増幅に由来する人工産物である、VEGFの5'UTRに由来する163ヌクレオチドの配列からのIRES活性の増加を報告した(Steinら、上掲)。Goodallおよびその同僚は、マウスVEGFの5'UTRの3'末端に向かうIRES残基の欠失分析を報告し、また最適なIRES活性のためには、VEGFの5'UTRの上流半分が必要であると推測した(Millerら、上掲)。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、初めて、VEGFの5'UTRに位置する転写後調節の負の調節因子(negative regulator of post-transcriptional regulation; NeRP)を提供する。VEGFの5'UTRに由来するNeRPの除去は、本発明のPTCREの存在に依存する、機能し得る形で連結された遺伝子の翻訳の増加をもたらす。
【0007】
発明の概要
本発明は、レポーターポリペプチドをコードする核酸配列を含む核酸構築物であって、レポーターポリペプチドをコードする核酸配列はNeRPに機能し得る形で連結され、該NeRPはPTCREに機能し得る形で連結され、該PTCREは配列番号3ではなく、該レポーターポリペプチドの発現を、NeRPの非存在下の場合と比較してモジュレートすることができる、前記核酸構築物を含む。
【0008】
本発明はまた、配列番号4の非存在下でレポーターポリペプチドをコードする核酸配列およびVEGFの5'UTR核酸配列を含む核酸分子も含む。
【0009】
本発明はまた、配列番号4の非存在下でVEGFの5'UTRに機能し得る形で連結されたレポーターポリペプチドをコードする核酸配列を含む核酸分子も含む。
【0010】
本発明はまた、レポーターポリペプチドをコードする核酸配列を含む核酸分子であって、該レポーターポリペプチドをコードする核酸配列はNeRPを含むUTRの下流に機能し得る形で連結され、UTRは配列番号3の上流で機能し得る形ではない、前記核酸分子も含む。
【0011】
本発明はまた、核酸分子の異種性集団であって、該異種性集団はレポーター核酸配列を含み、レポーターポリペプチドをコードする核酸配列はNeRP1(配列番号4)の非存在下でVEGFの5'UTRに機能し得る形で連結された、前記異種性集団も含む。
【0012】
本発明はまた、配列番号3の核酸分子、その断片、またはいずれかの相補体と95〜99%の配列同一性を有する実質的に精製された核酸分子も含む。
【0013】
本発明はまた、配列番号3、その断片、またはいずれかの相補体からなる実質的に精製された核酸分子も含む。
【0014】
本発明はまた、ポリペプチドをコードする異種性核酸配列に連結された第1の核酸配列からなる実質的に精製された核酸分子であって、第1の核酸配列は配列番号3、その断片、およびいずれかの相補体からなる群より選択される、前記核酸分子も含む。
【0015】
本発明はまた、配列番号4の核酸分子、その断片、またはいずれかの相補体と95〜99%の配列同一性を有する実質的に精製された核酸分子も含む。
【0016】
本発明はまた、配列番号4、その断片およびいずれかの相補体からなる群より選択される核酸配列の実質的に精製された核酸分子も含む。
【0017】
本発明はまた、ポリペプチドをコードする異種性核酸配列に連結された第1の核酸配列からなる実質的に精製された核酸分子であって、第1の核酸配列は配列番号4、その断片、およびいずれかの相補体からなる群より選択される、前記核酸分子も含む。
【0018】
本発明はまた、a)核酸構築物中のプロモーターの下流に主要なORFを提供すること;b)主要なORFの下流に、配列番号4の非存在下でVEGFの5'UTRを機能し得る形で連結すること;およびc)主要なORFの下流にVEGFの3'UTRを機能し得る形で連結することを含む、化合物のスクリーニングのための核酸構築物の作製方法も含む。
【0019】
本発明はまた、a)配列番号4の非存在下でVEGFの5'UTRから上流にプロモーターを含み、配列番号4の非存在下でのVEGFの5'UTRはレポーターポリペプチドをコードする核酸配列から上流にあり、レポーターポリペプチドをコードする核酸配列はVEGFの3'UTRから上流にある、核酸分子を有する細胞を提供すること;b)該細胞を化合物と接触させること;c)レポーターポリペプチドをコードする核酸配列を含み、配列番号4を含まない核酸分子を産生すること;およびd)該レポーターポリペプチドを検出することを含む、UTR依存的発現をモジュレートする化合物をin vivoでスクリーニングする方法も含む。
【0020】
本発明はまた、a)in vitro翻訳系を提供すること;b)該in vitro翻訳系を、化合物および配列番号4の非存在下でVEGFの5'UTRを含む核酸分子であって、配列番号4の非存在下でのVEGFの5'UTRはレポーターポリペプチドをコードする核酸配列から上流にあり、レポーターポリペプチドをコードする核酸配列はVEGFの3'UTRから上流にある、前記核酸分子と接触させること;ならびにc)in vitroで該レポーターポリペプチドを検出することを含む、UTRにより影響される発現をモジュレートする化合物をin vitroでスクリーニングする方法も含む。
【0021】
本発明はまた、a)配列番号4の非存在下でVEGFのUTRに隣接するレポーターポリペプチドをコードする核酸配列を含む核酸分子を細胞に提供すること;およびb)該レポーターポリペプチドを検出することを含む、細胞中で核酸分子を発現させる方法も含む。
【0022】
本発明はまた、a)配列番号4の非存在下でVEGFの5'UTRに機能し得る形で連結されたレポーター遺伝子を有する安定な細胞系を増殖させること;b)化合物の存在下での該安定な細胞系を、該化合物の非存在下での該安定な細胞系と比較すること;およびc)主要なORFに非依存的な、UTRに影響される機構を介するタンパク質発現をモジュレートする該化合物を選択することを含む、主要なORFに非依存的な、UTRに影響される機構を介するタンパク質発現をモジュレートする化合物をスクリーニングする方法も含む。
【0023】
本発明はまた、a)配列番号4の非存在下でVEGFの5'UTRに機能し得る形で連結された主要なORFを有する安定な細胞系を増殖させること;b)化合物の存在下での該安定な細胞系を、該化合物の非存在下での該安定な細胞系と比較すること;およびc)主要なORFに非依存的な、UTRに影響される機構を介するタンパク質発現をモジュレートする該化合物を選択することを含む、主要なORFに非依存的な、UTRに影響される機構を介するタンパク質発現をモジュレートする化合物をスクリーニングする方法も含む。
【0024】
本発明はまた、a)in vivoでVEGF遺伝子をレポーター遺伝子と置換すること、ここで配列番号3からなるUTRが該レポーター遺伝子に機能し得る形で連結され、該置換は分化した細胞中で起こり;b)該分化した細胞を増殖させること;およびc)主要なORFに非依存的な、UTRに影響される機構を介する該レポーター遺伝子のタンパク質発現をモジュレートする該化合物を選択することを含む、VEGFに非依存的な、UTRに影響される機構を介するタンパク質発現をモジュレートする化合物をスクリーニングする方法も含む。
【0025】
本発明はまた、a)in vivoで主要なORFをレポーター遺伝子と置換すること、ここで5'UTRは該レポーター遺伝子に機能し得る形で連結され、配列番号3からなり、該置換は分化した細胞中で起こり;b)該分化した細胞を増殖させること;およびc)主要なORFに非依存的な、UTRに影響される機構を介するレポーター遺伝子のタンパク質発現をモジュレートする該化合物を選択することを含む、主要なORFに非依存的な、UTRに影響される機構を介するタンパク質発現をモジュレートする化合物をスクリーニングする方法も含む。
【0026】
本発明はまた、a)配列番号4の非存在下でVEGFの5'UTRに機能し得る形で連結されたレポーター遺伝子を有する安定な細胞系であって、化合物の存在下でin vivoで認められるVEGF遺伝子の転写後調節を模倣する前記細胞系を提供すること;b)該安定な細胞系を維持すること;およびc)UTRに影響される機構を介する該レポーター遺伝子のタンパク質発現をモジュレートする該化合物を選択することを含む、UTRに影響される機構を介するタンパク質発現をモジュレートする化合物をスクリーニングする方法も含む。
【0027】
本発明はまた、a)配列番号4の非存在下でVEGFの5'UTRに機能し得る形で連結されたレポーターポリペプチドをコードする主要なORFを有する安定な細胞系であって、化合物の存在下、in vivoで認められるVEGF遺伝子の転写後調節を模倣する前記細胞系を提供すること;b)該安定な細胞系を維持すること;およびc)UTRに影響される機構を介する主要なORFのタンパク質発現をモジュレートする該化合物を選択することを含む、UTRに影響される機構を介するタンパク質発現をモジュレートする化合物をスクリーニングする方法も含む。
【0028】
本発明はまた、a)NeRP1(配列番号4)の非存在下で5'VEGF UTRに機能し得る形で連結されたレポーター遺伝子を有する安定な細胞系を増殖させること;b)NeRP1(配列番号4)の非存在下での5'VEGF UTRをレポーター遺伝子に機能し得る形で連結する場合、UTR依存的発現をモジュレートしない化合物の存在下での安定な細胞系を、該化合物の非存在下での場合と比較すること;およびc)NeRPの効果を媒介するUTRに影響される機構を介するレポーター遺伝子のタンパク質発現をモジュレートする化合物を選択することを含む、NeRPの効果を媒介するUTRに影響される機構を介するタンパク質発現をモジュレートする化合物をスクリーニングする方法も含む。
【0029】
本発明はまた、a)NeRP1(配列番号4)の非存在下で5'VEGF UTRに機能し得る形で連結されたレポーターポリペプチドをコードする主要なORFを有する安定な細胞系を増殖させること;b)NeRP1(配列番号4)の非存在下で5'VEGF UTRを主要なORFに機能し得る形で連結する場合、UTR依存的発現をモジュレートしない化合物の存在下での安定な細胞系を、該化合物の非存在下での場合と比較すること;およびc)NeRPの効果を媒介するUTRに影響される機構を介する主要なORFのタンパク質発現をモジュレートする化合物を選択することを含む、NeRPの効果を媒介するUTRに影響される機構を介するタンパク質発現をモジュレートする化合物をスクリーニングする方法も含む。
【0030】
本発明はまた、a)NeRP1(配列番号4)を有するUTRに機能し得る形で連結されたレポーター遺伝子を有する安定な細胞系を増殖させること;b)NeRP1(配列番号4)をレポーター遺伝子に機能し得る形で連結する場合、UTR依存的発現をモジュレートする化合物の存在下での安定な細胞系を、該化合物の非存在下での場合と比較すること;およびc)NeRPの効果を媒介するUTRに影響される機構を介するレポーター遺伝子のタンパク質発現をモジュレートする化合物を選択することを含む、NeRPの効果を媒介するUTRに影響される機構を介するタンパク質発現をモジュレートする化合物をスクリーニングする方法も含む。
【0031】
本発明はまた、a)NeRP1(配列番号4)を有するUTRに機能し得る形で連結されたレポーターポリペプチドをコードする主要なORFを有する安定な細胞系を増殖させること;b)NeRP1(配列番号4)をレポーターポリペプチドをコードする主要なORFに機能し得る形で連結する場合、UTR依存的発現をモジュレートする化合物の存在下での安定な細胞系を、該化合物の非存在下での場合と比較すること;およびc)NeRPの効果を媒介するUTRに影響される機構を介するレポーターポリペプチドをコードする主要なORFのタンパク質発現をモジュレートする化合物を選択することを含む、NeRPの効果を媒介するUTRに影響される機構を介するタンパク質発現をモジュレートする化合物をスクリーニングする方法も含む。
【0032】
核酸配列の説明
配列番号1は完全長VEGFの5'UTRを示す。
【0033】
配列番号2はVEGFをコードするオープンリーディングフレームを示す。
【0034】
配列番号3はPTCRE1、VEGFの5'UTRの702ヌクレオチドの領域を示す。
【0035】
配列番号4はNeRP1、VEGFの5'UTRの336ヌクレオチドの領域を示す。
【0036】
配列番号5はPTCRE2、VEGFの5'UTRの485ヌクレオチドの領域を示す。
【0037】
配列番号6はPTCRE3、VEGFの5'UTRの556ヌクレオチドの領域を示す。
【0038】
配列番号7はPTCRE4、VEGFの5'UTRの294ヌクレオチドの領域を示す。
【0039】
配列番号8はPTCRE5、VEGFの5'UTRの194ヌクレオチドの領域を示す。
【0040】
配列番号9はNeRP2、VEGFの5'UTRの476ヌクレオチドの領域を示す。
【0041】
配列番号10はNeRP3、VEGFの5'UTRの554ヌクレオチドの領域を示す。
【0042】
配列番号11はNeRP4、VEGFの5'UTRの51ヌクレオチドの領域を示す。
【0043】
配列番号12はNeRP5、VEGFの5'UTRの91ヌクレオチドの領域を示す。
【0044】
配列番号13はNeRP6、VEGFの5'UTRの335ヌクレオチドの領域を示す。
【0045】
配列番号14はNeRP7、VEGFの5'UTRの332ヌクレオチドの領域を示す。
【0046】
配列番号15はNeRP8、VEGFの5'UTRの331ヌクレオチドの領域を示す。
【0047】
配列番号16はNeRP9、VEGFの5'UTRの330ヌクレオチドの領域を示す。
【0048】
配列番号17はNeRP10、VEGFの5'UTRの329ヌクレオチドの領域を示す。
【0049】
配列番号18はNeRP11、VEGFの5'UTRの328ヌクレオチドの領域を示す。
【0050】
配列番号19はNeRP12、VEGFの5'UTRの327ヌクレオチドの領域を示す。
【0051】
配列番号20はNeRP13、VEGFの5'UTRの326ヌクレオチドの領域を示す。
【0052】
配列番号21はNeRP14、VEGFの5'UTRの316ヌクレオチドの領域を示す。
【0053】
配列番号22はNeRP15、VEGFの5'UTRの306ヌクレオチドの領域を示す。
【0054】
配列番号23はNeRP16、VEGFの5'UTRの296ヌクレオチドの領域を示す。
【0055】
配列番号24はNeRP17、VEGFの5'UTRの286ヌクレオチドの領域を示す。
【0056】
配列番号25はNeRP18、VEGFの5'UTRの276ヌクレオチドの領域を示す。
【0057】
配列番号26はNeRP19、VEGFの5'UTRの266ヌクレオチドの領域を示す。
【0058】
定義
本明細書で用いる用語「構築物」は人工的に操作された核酸分子を指す。
【0059】
本明細書で用いる用語「異種性」は類似していないか、または異なる起源の成分または構成要素を指す。
【0060】
本明細書で用いる用語「哺乳動物癌細胞」または「哺乳動物腫瘍細胞」は不適切に増殖する哺乳動物由来の細胞を指す。
【0061】
本明細書で用いる用語「主要なORF非依存的機構」は、少なくとも1工程が遺伝子発現に関し、主要なオープンリーディングフレームの核酸配列に依存しない細胞経路またはプロセスを指す。
【0062】
本明細書で用いる用語「レポーター遺伝子」は、その発現を測定することができる任意の遺伝子を指す。
【0063】
本明細書で用いる用語「RNAにより誘導される遺伝子サイレンシング」または「RNA干渉(RNAi)」は特定の遺伝子配列のタンパク質発現を減少させるための系に導入された二本鎖RNA (dsRNA)の機構を指す。
【0064】
本明細書で用いる用語「特異的に結合する」とは、化合物が例えば、親和性、アビディティーなどの点で、類似する型の化合物とは異なる様式で別の化合物に結合することを意味する。非限定的な例においては、より多くの結合がカゼインなどの競合試薬の存在下で起こる。別の非限定的な例においては、標的タンパク質に特異的に結合する抗体は、ウェスタンブロットまたは他の免疫化学アッセイにおいて用いられる場合、他の分子により提供される検出シグナルと比較して少なくとも2、5、10、または20倍高い検出シグナルを提供すべきである。代替的な非限定的な例においては、核酸はその相補的な核酸分子に特異的に結合することができる。別の非限定的な例においては、転写因子は特定の核酸配列に特異的に結合することができる。
【0065】
本明細書で用いる用語「二次構造」は、αへリックス、βシート、ランダムコイル、βターン構造ならびにタンパク質、ポリペプチド、核酸、改変された核酸を含む化合物、改変されたアミノ酸を含む化合物、および少なくとも化合物の組成の結果としての他の型の化合物中で起こるらせん状核酸構築物を意味する。
【0066】
本明細書で用いる用語「非ペプチド性治療剤」および類似する用語としては、限定されるものではないが、有機または無機化合物(すなわち、異種有機および有機金属化合物を含むが、タンパク質、ポリペプチドおよび核酸を含まない)が挙げられる。
【0067】
本明細書で用いる用語「UTR」は、mRNAの非翻訳領域を指す。
【0068】
本明細書で用いる用語「非翻訳領域依存的発現」または「UTR依存的発現」は、mRNA発現のレベルでの、すなわち、遺伝子の転写が開始した後、該遺伝子によりコードされるタンパク質またはRNA産物が分解するか、または排出されるまでの、UTRを介する遺伝子発現の調節を指す。
【0069】
本明細書で用いる用語「ベクター」は細胞または生物中に核酸配列を導入するのに用いられる核酸分子を指す。配列表を含む、2004年1月21日に出願された国際特許出願第PCT/US04/01643号が参照により本明細書に組み入れられるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】図1は、マウス、ラット、およびヒトのVEGF5'UTRの配列アラインメントを示す。
【図2】図2は、濃度範囲に渡ってVEGF発現を阻害する化合物の例を示す。
【図3】図3は、VEGF発現が1個以上のVEGF UTRに依存する場合の、VEGF発現のUTRに依存的な阻害の例を示す。
【図4A】図4Aは、腫瘍組織におけるVEGF産生の効率的な阻害の例を示す。
【図4B】図4Bは、化合物によるin vivoでのヒトVEGF産生の阻害を示す。
【図5】図5は、5'VEGF UTRおよびその中の制限部位の模式図を示す。VEGF 5'UTRを、2つの別々のPCR反応により、ヒトゲノムDNAから増幅する。5'UTR1と5'UTR2の重複領域において、ユニークな酵素部位BamHIを用いて、その後のクローニングにおいて完全長5'UTRを集合させる。
【図6】図6は、トランスフェクション実験に用いることができるジシストロン性プラスミドの模式図を示す。P2luc/5UTR-ΔNeRP1はVEGF5'UTR1を含むジシストロン性のプラスミドであり、VEGF cDNAのヌクレオチド337〜1083をホタルルシフェラーゼをコードする配列と融合させる;P2luc/5UTR-FLを、VEGF5'UTR2をプラスミドp2luc/vegf5utr1中のSalIおよびBamHI部位間にサブクローニングすることにより作製する;プラスミドp2luc/5UTR-Δ51-476を、NheI断片(nt 51〜746)を除去することにより、p2luc/5UTR-FLから誘導する;プラスミドp2luc/5UTR-Δ476-1038を、5'UTRのBamHI部位から3'末端までの配列を除去することにより、p2luc/vegf5utr-flから誘導する;プラスミドp2luc/5UTR-Δ1-476を、5'UTRのBamHI部位から5'末端までの配列を除去することにより、p2luc/5UTR-FLから誘導する。この試験においては、P2luc-eを陰性対照として用いることができる。
【図7】図7は、VEGF mRNA 5'UTR中でのVEGF IRESドメイン(PTCRE)およびNeRPの存在を同定する結果を示す。レポーター遺伝子発現を、ルシフェラーゼ活性をモニターすることにより分析する。
【発明を実施するための形態】
【0071】
発明の詳細な説明
本発明は、非翻訳領域(UTR)が遺伝子の発現をモジュレートすることができ、そのような発現のモジュレーションが化合物の添加により変化またはモジュレートされ得るという事実を含み、利用するものである。好ましい実施形態においては、UTRはタンパク質に翻訳されないRNAの領域である。より好ましい実施形態においては、UTRは標的化されたタンパク質に翻訳されないRNA転写物の隣接する領域であり、短い、推定オープンリーディングフレームを有する5'UTRを含んでもよい。最も好ましい実施形態においては、UTRは5'UTR、すなわち、コード領域の上流、または3'UTR、すなわち、コード領域の下流である。
【0072】
さらに、本発明は、遺伝子発現をモジュレートすることができる化合物およびまたハイブリッド分子をスクリーニングするのに有用な薬剤および方法を含み、これを提供する。
【0073】
核酸薬剤および構築物
当業者であれば、本明細書で考察される公知の技術または等価な技術の詳細な説明のための一般的な参考書に言及することができる。これらの参考書としては、Ausubelら、Current Protocols in Molecular Biology, John WileyおよびSons, Inc. (1995); Sambrookら、Molecular Cloning, A Laboratory Manual (第2版), Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, New York (1989); Birrenら、Genome Analysis: A Laboratory Manual, 第1〜4巻, Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, New York (1997-1999)が挙げられる。もちろん、これらの参考書は、本発明の態様を成し、又は用いる場合に参照することもできる。
【0074】
UTR
本発明は、配列番号3などの転写後調節エレメント(post-transcriptional regulatory element; PTCRE)、配列番号4などのPTCREの負の調節因子(negative regulator of a PTCRE; NeRP)、ならびにその断片および全ての相補体を含むか、またはそれらからなるUTRを有する核酸分子を含む。
【0075】
本発明のPTCREは、機能を変化させない様式で核酸配列が欠失、置換、または付加された点で配列番号3中の任意の残基とは異なっていてもよい。本発明の別の態様においては、本発明のPTCREは配列番号5、ならびにその断片および全ての相補体からなるか、またはこれらを含む。本発明の別の態様においては、本発明のPTCREは配列番号6〜8、ならびにその断片および全ての相補体からなるか、またはこれらを含む。
【0076】
本発明のPTCREは、機能を変化させない様式で核酸配列が欠失、置換、または付加された点で配列番号3および配列番号5〜8からなるか、またはこれらを含む核酸配列からなる群より選択される非翻訳領域中の任意の残基とは異なっていてもよい。
【0077】
本発明のNeRPは、機能を変化させない様式で核酸配列が欠失、置換、または付加された点で配列番号4中の任意の残基とは異なっていてもよい。
【0078】
本発明の別の態様においては、本発明のNeRPは配列番号9、ならびにその断片および全ての相補体からなるか、またはこれらを含む。本発明の別の態様においては、本発明のNeRPは、配列番号10〜12、ならびにその断片および全ての相補体からなるか、またはこれらを含む。
【0079】
本発明のNeRPは、機能を変化させない様式で核酸配列が欠失、置換、または付加された点で配列番号4および配列番号9〜12からなるか、またはこれらを含む核酸配列からなる群より選択されるUTR中の任意の残基とは異なっていてもよい。一態様においては、NeRPは標的UTRの完全長配列ではない。好ましい態様においては、NeRPは完全長VEGFの5'UTRではない。
【0080】
一実施形態においては、NeRPは配列番号4の任意の位置で単一の塩基欠失を有する核酸配列であってよい。従って、本発明のNeRPは335塩基であってよい。別の実施形態においては、NeRPは配列番号4の任意の位置から2個以上の塩基が欠失された核酸配列を含む。別の実施形態においては、NeRPは配列番号4の任意の位置で3、4、5、6、7、8、9または10個の残基の欠失を含む。別の実施形態においては、NeRPは配列番号4の任意の位置から20、30、40、50、60、または70残基の欠失から得られる残余の核酸配列を含む。本明細書に照らして、本発明のNeRPを、NeRPの機能を変化させない様式で、配列番号4の連続的欠失、非連続的欠失、または連続的欠失および非連続的欠失の組合せにより作製することができる。
【0081】
好ましい実施形態においては、NeRPおよびPTCREを含む核酸分子が、PTCREの負の調節を除去する様式で欠失、置換、または付加されている場合、残りの核酸分子の二次構造を、配列番号4を欠失させる場合の完全長VEGFの5'UTRの二次構造中の変化に匹敵する様式で変化させる。より好ましい実施形態においては、本発明のNeRPは配列番号4の二次構造に匹敵する二次構造を有する。
【0082】
本発明の実施形態においては、NeRPの存在を、より大きい核酸分子に由来する1個以上のシュードノットの欠失、挿入または変更により検出することができる。別の実施形態においては、本発明のより大きい核酸分子に由来するステムループ構造の欠失、挿入または変更は本発明のNeRPをもたらす。mfold (bioweb.pasteur.fr/seqanal/interfaces/mfold-simple.htmlのワールドワイドウェブを参照)、genebee (genebee.msu.su/のワールドワイドウェブを参照)などのプログラムを用いて、配列番号4および本発明の他の核酸分子の二次構造を確認することができる。当業者には公知の他のプログラムまたは方法を用いることもできる。
【0083】
本発明はまた、配列番号4により形成される三次構造に匹敵する三次構造を有するNeRPも含む。三次構造を、例えば、結晶学的および系統学的共変動により決定することができる(Martin Iら、Biochim Biophys Acta. 2003 Jul 11;1614(1):97-103; Heinemann U.ら、Biol Chem. 1996 Jul-Aug;377(7-8):447-54に概説されている)。
【0084】
本発明は、上記の核酸分子にハイブリダイズする核酸分子を提供する。好ましい態様においては、前記核酸分子は、配列番号3〜12からなるか、またはこれらを含む核酸配列、およびその相補体からなる群より選択される核酸分子にハイブリダイズする。核酸ハイブリダイゼーションはDNA操作の当業者には公知の技術である。核酸分子のハイブリダイゼーション特性は、それらの類似性または同一性の指標である。前記核酸分子は、中程度または高いストリンジェンシー条件下で、配列番号5およびその相補体から選択される核酸配列とハイブリダイズするのが好ましい。これらの配列の断片も包含される。
【0085】
別の態様においては、前記核酸分子は、中程度または高いストリンジェンシー条件下で、配列番号5およびその相補体からなる群より選択される核酸配列とハイブリダイズするのが好ましい。
【0086】
ハイブリダイゼーション条件は、典型的には、約0.1X〜約10X SSC(蒸留水中、3M塩化ナトリウムおよび0.3Mクエン酸ナトリウム、pH 7.0を含む20X SSC保存溶液から希釈)、約2.5X〜約5X Denhardt溶液(蒸留水中、1%(w/v)ウシ血清アルブミン、1%(w/v) Ficoll(登録商標)(Amersham Biosciences Inc., Piscataway, NJ)、および1%(w/v)ポリビニルピロリドンを含む50X保存溶液から希釈)、約10 mg/ml〜約100 mg/mlのサケ精子DNA、および約0.02%(w/v)〜約0.1%(w/v) SDS中、約20℃〜約70℃で、数時間〜一晩のインキュベーションを用いる核酸ハイブリダイゼーションを含む。
【0087】
好ましい態様においては、中程度のストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件は、55℃で数時間のインキュベーションを用いて、6X SSC、5X Denhardt溶液、100 mg/mlサケ精子DNA、および0.1%(w/v) SDSにより提供される。中程度のストリンジェンシーの洗浄条件は約0.02%(w/v) SDS中、約55℃で一晩のインキュベーションである。より好ましい態様においては、高いストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件は、約2X SSC、約3X Denhardt溶液、および約10 mg/mlサケ精子DNAである。高いストリンジェンシーの洗浄条件は、約0.05%(w/v) SDS中、約65℃で一晩のインキュベーションである。
【0088】
一実施形態においては、前記核酸分子は、配列番号3〜12、その相補体、およびこれらの配列のいずれかの断片からなる群より選択される核酸配列と、85%を超えて同一であり、より好ましくは86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99%を超えて同一である核酸配列を含む。
【0089】
同一性%は、Sequence Analysis Software Package(商標)(バージョン10;Genetics Computer Group, Inc., University of Wisconsin Biotechnology Center, Madison, WI)の「Best Fit」または「Gap」プログラムを用いて決定するのが好ましい。「Gap」は、NeedlemanおよびWunschのアルゴリズムを用いて、一致数を最大化し、ギャップ数を最小化する2個の配列のアラインメントを発見する。「Bestfit」は、2個の配列間の類似性の最良の区分ならびにSmithおよびWatermanの局所相同性アルゴリズムを用いて一致数を最大化する挿入ギャップの最適なアラインメントを実施する。同一性%の算出を、LASERGENEバイオインフォマティックスコンピューティングスイートのMegalignプログラム(デフォルトパラメーター、DNASTAR Inc., Madison, Wisconsin)を用いて実施することもできる。最も好ましくは、同一性%を、デフォルトパラメーターを用いる「Best Fit」プログラムを用いて決定する。
【0090】
核酸分子断片は、配列番号3の有意な部分、または実際にはその大部分を含んでもよい。一実施形態においては、前記断片は本発明の核酸分子の約160〜250個の連続する残基、約260〜約350個の連続する残基、約360〜約400個の連続する残基、または約460〜500個の連続する残基の長さである。別の実施形態においては、前記断片は、配列番号3の少なくとも170、300、500、または600個の連続する残基を含む。特に好ましい実施形態においては、核酸分子断片は配列番号3に選択的にハイブリダイズすることができる。
【0091】
一実施形態においては、PTCREは配列番号3を含むか、またはこれからなる。別の実施形態においては、PTCREは配列番号3の断片を含むか、またはこれからなる。好ましい実施形態においては、PTCREは、限定されるものではないが、ヒト、マウス、およびラットなどの特定の哺乳動物間で同一性を共有することができる。別の好ましい実施形態においては、PTCREはヒトVEGFの5'UTR PTCREに対してユニークであり、その非限定例は配列番号3である。
【0092】
核酸分子断片は配列番号4の有意な部分を含んでもよい。本発明の別の実施形態においては、核酸分子は配列番号4の有意な部分を含むか、またはこれからなる。一実施形態においては、前記断片は、本発明の核酸分子の約40〜約90個の連続する残基、約100〜約150個の連続する残基、約160〜約250個の連続する残基、または約260〜325個の連続する残基の長さである。別の実施形態においては、前記断片は配列番号4の少なくとも90、150、250、または325個の連続する残基を含む。好ましい実施形態においては、核酸分子断片は配列番号4に選択的にハイブリダイズすることができる。
【0093】
一実施形態においては、NeRPは配列番号4を含むか、またはこれからなる。別の実施形態においては、NeRPは配列番号4の断片を含むか、またはこれからなる。好ましい実施形態においては、NeRPは、限定されるものではないが、ヒト、マウス、およびラットなどの特定の哺乳動物間で同一性を共有することができる。別の好ましい実施形態においては、NeRPはヒトVEGFの5'UTR NeRPに対してユニークであり、その非限定例は配列番号4である。
【0094】
様々な方法のいずれかを用いて、1個以上の本発明の上記核酸分子を取得することができる。自動化核酸合成装置をこの目的のために用いることができる。そのような合成の代わりに、開示された核酸分子を用いて、任意の所望の核酸分子または断片を増幅し、取得するためのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)と共に用いることができるプライマー対を定義することができる。
【0095】
相補的核酸配列に特異的にハイブリダイズする能力を有する短い核酸配列を作製し、例えば、所与のサンプル中での相補的核酸配列の存在を同定するためのプローブとして、本発明において用いることができる。あるいは、短い核酸配列をオリゴヌクレオチドプライマーとして用いて、PCR技術を用いて相補的核酸配列を増幅または突然変異させることができる。これらのプライマーは関連する相補的核酸配列(例えば、他の種に由来する関連する配列)の増幅を容易にすることができる。
【0096】
これらのプローブまたはプライマーの使用は、本発明で開示される構造核酸配列を含むトランスジェニック細胞または生物の同定を大きく容易にすることができる。そのようなプローブまたはプライマーを、例えば、本発明で開示されるプロモーターおよび構造核酸配列と関連するか、または相同性を共有するさらなる核酸配列のためのcDNA、mRNA、またはゲノムライブラリーをスクリーニングするのに用いることもできる。このプローブは、ポリメラーゼ活性を開始させることができるが、別の核酸と共に二本鎖構造中にある核酸分子である、PCRプローブであってもよい。
【0097】
プライマーまたはプローブは一般的には、同定、増幅、または突然変異させようとする核酸配列の一部と相補的であり、その相補体と共に安定で配列特異的な二本鎖分子を形成するのに十分な長さのものである。このプライマーまたはプローブは、約10〜約200残基長であるのが好ましく、より好ましくは約10〜約100残基長、さらにより好ましくは約10〜約50残基長、および最も好ましくは約14〜約30残基長である。
【0098】
プライマーまたはプローブを、例えば、限定されるものではないが、直接的化学合成、PCR(米国特許第4,683,195号および同第4,683,202号)、またはより大きい核酸分子から核酸特異的断片を切り出すことにより調製することができる。PCRプローブの配列を決定するための様々な方法およびPCR技術が当業界に存在する。例えば、プライマー3 (www-genome.wi.mit.edu/cgi-bin/primer/primer3.cgi)、STSPipeline (www-genome.wi.mit.edu/cgi-bin/www-STS_Pipeline)、またはGeneUp (Pesoleら、BioTechniques 25:112-123, 1998)などのプログラムを用いるコンピューターによる検索を用いて、潜在的なPCRプライマーを同定することができる。
【0099】
さらに、配列比較を行って、二次構造相同性に基づいて本発明の核酸分子を見出すことができる。核酸分子の二次構造を予測し、比較するためのいくつかの方法およびプログラムが利用可能であり、例えば、GeneBee (genebee.msu.su/services/rna2_reduced.htmlのワールドワイドウェブ上で利用可能);Vienna RNA Package (tbi.univie.ac.at/〜ivo/RNA/のワールドワイドウェブ上で利用可能);SstructView (projects/helix/sstructview/home.htmlの元で、Stanford Medical Informaticsのウェブサイトでのワールドワイドウェブ上で利用可能であり、「生物情報資源に対する再利用可能なインターフェイスとしてのRNA二次構造(RNA Secondary Structure as a Reusable Interface to Biological Information Resources.)」 1997. Gene vol. 190GC59-70に記載されている)が挙げられる。例えば、二次構造の比較が、Leら、「細胞内mRNAの翻訳の内部開始に関与する共通RNA構造モチーフ(A common RNA structural motif involved in the internal initiation of translation of cellular mRNAs.)」 1997. Nuc. Acid. Res. vol. 25(2):362-369中で行われている。
【0100】
本発明の構築物
本発明は、核酸構築物を含み、これを提供する。本発明の任意の構築物および他の核酸薬剤はDNAまたはRNAであってよいことが理解される。好ましい実施形態においては、構築物はUTR、コード配列、または両方を有する核酸分子であってよい。別の実施形態においては、構築物は少なくとも1種の本発明のUTR、レポーターポリペプチドをコードする配列、およびベクターから構成される。さらに、本発明の核酸分子のいずれかを、本発明の方法と組合わせて用いることができる。
【0101】
ベクター
外因性遺伝物質を、そのような目的のために設計されたベクターまたは構築物を用いることにより宿主細胞中に導入することができる。本発明の核酸配列のいずれかを、本発明のベクターまたは構築物中に組込むことができる。本発明のベクターまたは構築物としては、限定されるものではないが、線状または閉環状プラスミドが挙げられる。ベクター系は、1個のベクターもしくはプラスミド、または宿主のゲノム中に導入しようとする全DNAを一緒に含む2種以上のベクターもしくはプラスミドであってよい。好ましい実施形態においては、ベクターは哺乳動物細胞もしくは細菌またはその両方において機能的なプロモーターを含む。ベクターまたは構築物を調製する手段は当業界で公知である。
【0102】
哺乳動物細胞中での複製にとって好適なベクターは、ウイルスのレプリコン、または宿主ゲノム中にHCVエピトープをコードする好適な配列の組込みを確実にする配列を含んでもよい。例えば、外来DNAを発現させるのに用いられる別のベクターはワクシニアウイルスである。一般的には、そのような異種DNAを、該ウイルスにとって必須ではない遺伝子、例えば、選択マーカーも提供するチミジンキナーゼ遺伝子(tk)中に挿入する。次いで、HCVポリペプチドの発現を、生の組換えワクシニアウイルスに感染した細胞または動物中で起こさせる。
【0103】
一般的には、宿主細胞と適合可能な種に由来するレプリコンおよび制御配列を含むプラスミドベクターを、細菌宿主と組合わせて用いる。このベクターは通常、複製部位、ならびに形質転換された細胞中での表現型選択を提供することができるマーキング配列を担持する。例えば、典型的には、大腸菌を、アンピシリンおよびテトラサイクリン耐性のための遺伝子を含み、かくして、形質転換細胞を同定するための容易な手段を提供する、pBR322などのベクターから誘導された骨格を有する構築物を用いて形質転換する。pBR322プラスミド、または他の微生物プラスミドもしくはファージも、一般的には、選択可能なマーカー遺伝子の発現のために微生物により用いることができるプロモーターを含むか、または含むように改変される。
【0104】
本発明の好ましい実施形態においては、発現ベクターは、ゲノム中に無作為に組込むように設計された高レベル哺乳動物発現ベクター、例えば、pCMR1であってよい。本発明の別の好ましい実施形態においては、発現ベクターは、細胞のゲノム中に部位特異的に組込むように設計された高レベル哺乳動物発現ベクターであってよい。例えば、pMCP1は、Flpリコンビナーゼを介してFRT部位特異的組換え部位を含むように遺伝子工学的に操作された細胞のゲノム中に部位特異的に組込むことができる(例えば、Craig, 1988, Ann. Rev. Genet. 22: 77-105;およびSauer, 1994, Curr. Opin. Biotechnol. 5: 521-527を参照)。
【0105】
プロモーター
構築物はプロモーターを含んでもよく、例えば、組換えベクターは、典型的には5'から3'の向きに、目的の核酸分子の転写を指令するプロモーターを含む。
【0106】
本発明の好ましい態様においては、構築物は哺乳動物プロモーターを含んでもよく、これを用いて選択した核酸分子を発現させることができる。本明細書で用いる「哺乳動物プロモーター」とは、哺乳動物細胞または両方から誘導された哺乳動物細胞中で機能的なプロモーターを指す。哺乳動物細胞中で活性であるいくつかのプロモーターが文献中に記載されている。プロモーターを、ベクターを挿入する細胞型に基づいて選択することができる。
【0107】
本発明の好ましいプロモーターはVEGFプロモーターである。以前に記載されたVEGFプロモーターに加えて、他のプロモーター配列を構築物または他の核酸分子中で用いることができる。好適なプロモーターとしては、限定されるものではないが、本明細書に記載のものが挙げられる。
【0108】
哺乳動物細胞にとって好適なプロモーターは当業界で公知であり、Simian Virus 40 (SV40)、ラウス肉腫ウイルス(RSV)、アデノウイルス(ADV)、サイトメガロウイルス(CMV)、およびウシパピローマウイルス(BPV)に由来するものなどのウイルスプロモーター、およびパルボウイルスB19p6プロモーターならびに哺乳動物細胞由来プロモーターが挙げられる。いくつかのウイルスに基づく発現系を用いて、哺乳動物宿主細胞中でレポーター遺伝子を発現させることができる。例えば、アデノウイルスを発現ベクターとして用いる場合、レポーター遺伝子をコードする配列を、後期プロモーターおよび三者間リーダー配列を含むアデノウイルス転写/翻訳複合体中に連結することができる。
【0109】
好ましいプロモーターの他の例としては、組織特異的プロモーターおよび誘導性プロモーターが挙げられる。他の好ましいプロモーターとしては、造血幹細胞特異的な、例えば、CD34、グルコース-6-ホスファターゼ、インターロイキン-1α、CD11cインテグリン遺伝子、GM-CSF、インターロイキン-5Rα、インターロイキン-2、c-fos、h-rasおよびDMD遺伝子プロモーターが挙げられる。他のプロモーターとしては、ヘルペスチミジンキナーゼプロモーター、およびメタロチオネイン遺伝子の調節配列が挙げられる。
【0110】
細菌宿主と共に用いるのに好適な誘導性プロモーターとしては、β-ラクタマーゼおよびラクトースプロモーター系、アラビノースプロモーター系、アルカリホスファターゼ、トリプトファン(trp)プロモーター系およびtacプロモーターなどのハイブリッドプロモーターが挙げられる。しかしながら、他の公知の細菌の誘導性プロモーターも好適である。細菌系における使用のためのプロモーターは、一般的には、目的のポリペプチドをコードするDNAに機能し得る形で連結されたShine-Dalgarno配列をも含む。
【0111】
プロモーターを、その調節特性、例えば、転写活性の増強、誘導性、組織特異性、および発生段階特異性に基づいて選択することもできる。プロモーターはin vitroで動作し得るものであってよく、例えば、T7プロモーターが挙げられる。特に好ましいプロモーターを用いて、非ヒト哺乳動物中で本発明の核酸分子を発現させることもできる。用いることができるさらなるプロモーターは、例えば、BernoistおよびChambon, Nature 290:304-310 (1981); Yamamotoら、Cell 22:787-797 (1980); Wagnerら、PNAS 78:1441-1445 (1981); Brinsterら、Nature 296:39-42 (1982)に記載されている。
【0112】
レポーター遺伝子
本明細書で用いる、「レポーター遺伝子」はその発現を測定することができる任意の遺伝子である。好ましい実施形態においては、レポーター遺伝子はいかなるUTRも有さない。より好ましい実施形態においては、レポーター遺伝子は連続的なオープンリーディングフレームである。別の好ましい実施形態においては、レポーター遺伝子は検出可能な発現の以前に決定された参照範囲を有することができる。
【0113】
本発明の構築物は1個以上のUTRに融合された1個以上のレポーター遺伝子を含んでもよい。例えば、標的遺伝子のUTR依存的な発現をモジュレートすることが知られているか、または疑われる特異的RNA配列、RNA構造モチーフ、および/またはRNA構造エレメントを、前記レポーター遺伝子に融合させることができる。タンパク質、その断片、またはポリペプチドをコードする本発明のレポーター遺伝子を、プロペプチドをコードする領域に連結することもできる。プロペプチドはプロタンパク質またはプロ酵素のアミノ末端に認められるアミノ酸配列である。プロタンパク質からのプロペプチドの切断により、成熟した生化学的に活性なタンパク質が得られる。得られるポリペプチドはプロポリペプチドまたはプロ酵素(いくつかの事例においてはチモーゲン)として知られる。プロポリペプチドは一般的には不活性であり、プロポリペプチドまたはプロ酵素からのプロペプチドの触媒的もしくは自己触媒的切断により、成熟した活性ポリペプチドに転換することができる。
【0114】
レポーター遺伝子は選択可能な、またはスクリーニング可能なマーカーを発現することができる。選択可能なマーカーを用いて、外因性遺伝物質を含む生物または細胞を選択することもできる。そのようなものの例としては、限定されるものではないが、カナマイシン耐性をコードし、カナマイシンを用いてこれを選択することができるneo遺伝子、GUS、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼII(nptII)、または抗生物質耐性をコードする配列が挙げられる。スクリーニング可能なマーカーを用いて発現をモニターすることができる。スクリーニング可能なマーカーの例としては、緑色蛍光タンパク質(GFP)、ルシフェラーゼ(LUX)、β-ガラクトシダーゼまたは様々な色原体基質が公知である酵素をコードするuidA遺伝子(GUS)、β-ラクタマーゼ遺伝子、様々な色原体基質が公知である酵素(例えば、PADAC、クロモゲンセファロスポリン)をコードする遺伝子、ルシフェラーゼ遺伝子、チロシンをDOPAおよびドパキノンに酸化し、次いでメラニンに縮合することができる酵素をコードするチロシナーゼ遺伝子、および色原体α-ガラクトース基質を変換することができるα-ガラクトシダーゼが挙げられる。
【0115】
用語「選択可能な、またはスクリーニング可能なマーカー遺伝子」には、形質転換された細胞を同定するか、または選択する手段として分泌を検出することができる分泌可能なマーカーをコードする遺伝子も含まれる。その例としては、抗体相互作用により同定することができる分泌可能な抗原をコードするマーカー、またはその固有の特性を用いて検出することができる分泌可能な酵素が挙げられる。分泌可能なタンパク質はいくつかのクラスに分けられ、例えば、検出可能である(例えば、ELISAにより)小さい、拡散性のタンパク質、または細胞外溶液中で検出可能である小さい活性酵素(例えば、α-アミラーゼ、β-ラクタマーゼ、ホスフィノトリシントランスフェラーゼ)が挙げられる。他の可能な選択可能な、もしくはスクリーニング可能なマーカー遺伝子、またはその両方は当業者には明らかである。
【0116】
レポーター遺伝子は融合タンパク質を発現することができる。そのようなものとして、前記融合タンパク質は別の遺伝子、またはその断片に機能し得る形で連結された任意のレポーター遺伝子の融合物であってよい。例えば、発現される融合タンパク質は、GST、GFP、FLAG、またはポリHISなどの、融合タンパク質の検出を容易にする「タグ付けされた」エピトープを提供することができる。そのような融合物は1〜50個のアミノ酸をコードするのが好ましく、より好ましくは5〜30個の追加のアミノ酸、およびさらにより好ましくは5〜20個のアミノ酸をコードする。一実施形態においては、融合タンパク質は、VEGFタンパク質配列の全部または一部を含む融合タンパク質であってよい。
【0117】
あるいは、融合物は調節機能、酵素機能、細胞シグナリング機能、または細胞間輸送機能を提供することができる。例えば、シグナルペプチドをコードする配列を、真核細胞内の特定の細胞器官に融合タンパク質を向けさせるように付加することができる。そのような融合パートナーは、好ましくは1〜1000個の追加のアミノ酸、より好ましくは5〜500個の追加のアミノ酸、およびさらにより好ましくは10〜250個のアミノ酸をコードする。
【0118】
本発明はまた、1個以上の非翻訳領域(例えば、標的遺伝子の5'UTR、3'UTR、または5'UTRおよび3'UTRの両方)に隣接するレポーター遺伝子も提供する。さらに、本発明は、標的遺伝子の1個以上のUTRに隣接し、該UTRが1個以上の突然変異(例えば、1個以上の置換、欠失および/または付加)を含むレポーター遺伝子を提供する。好ましい実施形態においては、レポーター遺伝子は、5'および3'UTRの間の相互作用に干渉する化合物を同定することができるように、5'および3'UTRの両方に隣接する。
【0119】
別の好ましい実施形態においては、安定なヘアピン二次構造を、UTR、好ましくは標的遺伝子の5'UTR中に挿入する。例えば、5'UTRがIRES活性を有する場合、5'UTR中の安定なヘアピン二次構造の付加を用いて、キャップ非依存的翻訳からキャップ依存を分離することができる(例えば、Muhlradら、1995, Mol. Cell. Biol. 15(4):2145-56(この開示は参照によりその全体が本明細書に組み入れられるものとする)を参照)。別の実施形態においては、イントロンを、UTR(好ましくは、5'UTR)中に、または標的遺伝子のORFの5'末端に挿入する。例えば、限定されるものではないが、RNAが不安定なエレメントを有する場合、イントロン、例えば、ヒト伸長因子1α(EF-1α)の第1イントロンを、UTR(好ましくは、5'UTR)中に、またはORFの5'末端にクローニングして、発現を増加させることができる(例えば、Kimら、2002, J Biotechnol 93(2):183-7(この開示は参照によりその全体が本明細書に組み入れられるものとする)を参照)。好ましい実施形態においては、安定なヘアピン二次構造およびイントロンの両方を、レポーター遺伝子構築物に付加する。より好ましい実施形態においては、安定なヘアピン二次構造を、5'UTR中にクローニングし、イントロンを前記レポーター遺伝子の主要なORFの5'末端に付加する。
【0120】
レポーター遺伝子を、レポーター遺伝子の翻訳が、限定されるものではないが、キャップ依存的翻訳またはキャップ非依存的翻訳(すなわち、内部リボソーム進入部位を介する翻訳)などの、翻訳開始の様式に依存するように配置することができる。あるいは、UTRが上流のオープンリーディングフレームを含む場合、レポーター遺伝子が正式には翻訳されないオープンリーディングフレームが翻訳されるように、UTRの読み枠をシフトさせる化合物の存在下でのみ翻訳されるように、該レポーター遺伝子を配置することができる。
【0121】
レポーター遺伝子構築物はモノシストロン性またはマルチシストロン性であってよい。マルチシストロン性レポーター遺伝子構築物は、2、3、4、5、6、7、8、9、10個以上、または2〜5、5〜10もしくは10〜20個の範囲のレポーター遺伝子をコードしてもよい。例えば、2シストロン性レポーター遺伝子構築物は、下流に向かって以下の順番で、プロモーター、第1のレポーター遺伝子、標的遺伝子の5'UTR、第2のレポーター遺伝子および必要に応じて、標的遺伝子の3'UTRを含む。そのようなレポーター構築物においては、両レポーター遺伝子の転写を、前記プロモーターにより駆動することができる。本例の構築物においては、本発明はキャップ依存的な走査機構による第1のレポーター遺伝子からのmRNAの翻訳およびキャップ非依存的機構(例えば、IRESによる)による第2のレポーター遺伝子からのmRNAの翻訳を含む。そのような場合、第2のレポーター遺伝子のmRNAのIRES依存的翻訳を、キャップ依存的翻訳に対して正規化することができる。
【0122】
レポーター遺伝子を、in vitroまたはin vivoで発現させることができる。in vivoでの発現は好適な細菌または真核宿主中であってよい。発現のための好適な方法は、Sambrookら、Molecular Cloning: A Laboratory Manual,第2版, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y. (1989); Haymesら、Nucleic Acid Hybridization, A Practical Approach, IRL Press, Washington, DC (1985)、または同様の教科書により記載されている。本発明の融合タンパク質またはペプチド分子を、組換え手段を介して作製するのが好ましい。これらのタンパク質およびペプチド分子を、炭水化物または他の部分(キーホールリンペットヘモシアニンなど)を含むように誘導体化することができる。
【0123】
連結
本明細書で用いる、連結されることとは、物理的に連結されること、機能し得る形で連結されること、隣接すること、またはこれらのいずれかの組合せを意味する。
【0124】
本明細書で用いる、物理的に連結されることとは、物理的に連結された核酸配列が同じ核酸分子上に位置することを意味し、例えば、プロモーターを構築物の一部としてレポーター遺伝子に物理的に連結することができる。物理的連結は近位のものであってよく、直接的または間接的なものであってよい。好ましい実施形態においては、前記プロモーターを、本発明の核酸配列に機能し得る形で連結し、物理的に連結する。
【0125】
本発明の好ましい実施形態はまた、標的遺伝子の1個以上のUTRに隣接するレポーター遺伝子を含む特異的核酸分子も提供する。この好ましい実施形態においては、標的遺伝子の1個以上のUTRを、前記レポーター遺伝子に、物理的に連結し、機能し得る形で連結するか、または機能し得る形で、かつ物理的に連結することができる。本発明はまた、標的遺伝子の1個以上のUTRに隣接し、この1個以上のUTRが1個以上の突然変異(例えば、1個以上のそれぞれの置換、欠失、付加、またはそれぞれのいずれかの組合せ)を含むレポーター遺伝子も提供する。本発明のより好ましい実施形態においては、レポーター遺伝子は1個以上の欠失を含むVEGF遺伝子の5'UTRに隣接する。最も好ましい実施形態においては、レポーター遺伝子はNeRPの非存在下で5'VEGF UTRに隣接し、かつこれに機能し得る形で連結する。
【0126】
好ましい実施形態においては、レポーター遺伝子は、5'および3'UTRの間の相互作用に干渉する化合物を同定することができるように、1個以上の標的遺伝子の5'および3'UTRの両方に隣接する。より好ましい実施形態においては、レポーター遺伝子は1個の標的遺伝子の5'および3'UTRに隣接し、該レポーター遺伝子を1個の標的遺伝子のUTRに物理的に、機能し得る形で、または物理的かつ機能し得る形で連結する。最も好ましい実施形態においては、レポーター遺伝子を、標的遺伝子の1個以上のUTRの近位に、直接的または間接的に連結する。レポーター遺伝子を標的遺伝子のUTRに直接的に連結する場合、該レポーター遺伝子の最後の核酸残基を、標的遺伝子のUTRの最初の核酸残基に化学的に結合させる。前記レポーター遺伝子を標的遺伝子のUTRの近位に間接的に連結する場合、該レポーター遺伝子の最後の核酸残基を、標的遺伝子のUTRの最初の核酸残基に化学的に結合させ、レポーター遺伝子の最後の核酸残基は約3個又は6個以上で、20個未満であってよい。レポーター遺伝子を、レポーター遺伝子のプロセッシング中の任意の時間に、例えば、スプライシング事象後などに、標的遺伝子のUTRに直接的に連結する場合、該レポーター遺伝子をUTRに直接的に連結する。
【0127】
UTR
本発明の薬剤および構築物は、非翻訳領域(UTR)を有する核酸分子を含む。好ましい態様においては、UTRはmRNAのUTR、すなわち、タンパク質に翻訳されないmRNAの領域を指す。好ましい実施形態においては、UTRは遺伝子発現のUTR依存的調節をモジュレートする1個以上の調節エレメントを含む。特に好ましい実施形態においては、UTRは5'UTR、すなわち、コード領域の上流であるか、または3'UTR、すなわち、コード領域の下流である。別の特に好ましい実施形態においては、5'UTRはVEGFプロモーターを含む。より好ましい実施形態においては、5'UTRはVEGFプロモーターおよびPTCREを含む。
【0128】
本明細書で用いる、「主要なORF」は、翻訳することができるオープンリーディングフレームを有する、デオキシリボ核酸およびリボ核酸分子中に含まれる配列などの核酸配列である。主要なORFの例としては、レポーター遺伝子、標的遺伝子、および制御遺伝子が挙げられる。本明細書で用いる、「標的遺伝子」は任意の遺伝子であってよい。好ましい実施形態においては、標的遺伝子は上流のオープンリーディングフレーム(「uORF」)を含むVEGFの5'UTRの下流に機能し得る形で連結された遺伝子である。別の実施形態においては、標的遺伝子はVEGFの主要なORFであってよい。好ましい実施形態においては、標的遺伝子はuORFを含む遺伝子である。特に好ましい実施形態においては、標的遺伝子はVEGF遺伝子に関して50%を超える同一性および200個を超える残基を有する遺伝子である。本明細書で用いる、「制御遺伝子」は任意の遺伝子であってよい。好ましい実施形態においては、制御遺伝子はNeRPを含まないVEGFの5'UTRの下流に機能し得る形で連結された遺伝子である。
【0129】
本発明のUTRを、レポーター遺伝子に機能し得る形で、物理的に、または機能し得る形で、かつ物理的に連結することができる。本発明の好ましい実施形態においては、本発明のUTRを、レポーター遺伝子に物理的に連結する。物理的、機能し得る形の、または物理的かつ機能し得る形の連結は、前記レポーター遺伝子に対して上流、下流、または内部であってよい。本明細書で用いる、機能し得る形での連結は、機能し得る形で連結された核酸配列がその相応の機能を示すことを意味する。例えば、プロモーターをレポーター遺伝子に機能し得る形で連結することができる。
【0130】
本発明の好ましい態様においては、本発明のUTRはレポーター遺伝子の上流に物理的に連結されたVEGFの5'UTRである。特に好ましい実施形態においては、VEGFの5'UTRは配列番号3を含むか、またはこれからなり、レポーター遺伝子の下流に物理的に連結される。別の実施形態においては、VEGFの5'UTRは、NeRPを含まないか、またこれからならず、レポーター遺伝子の上流に物理的、かつ機能しうる形で連結される。より特に好ましい実施形態においては、VEGFの5'UTRはNeRPを含まないか、またはこれからならず、PTCREを含むか、またはこれからなり、レポーター遺伝子の上流に物理的かつ機能し得る形で連結される。
【0131】
本発明の好ましい実施形態においては、本発明のUTRをレポーター遺伝子の上流に物理的に連結し、かつ別のUTRを、該レポーター遺伝子の下流に物理的に連結する。特に好ましい実施形態においては、本発明のUTRは配列番号3を含むか、またはこれからなり、このUTRをレポーター遺伝子の上流に物理的かつ機能し得る形で連結し、VEGFの3'UTRをレポーター遺伝子の下流に物理的かつ機能し得る形で連結する。
【0132】
本発明の好ましい実施形態においては、本発明のUTRを、イントロンを含むレポーター遺伝子に物理的に連結する。本発明のより好ましい実施形態においては、配列番号3を含む本発明のUTRを、イントロンを含むレポーター遺伝子に物理的に連結する。本発明の好ましい実施形態においては、本発明のUTRを、レポーター遺伝子の上流に物理的に連結し、また本発明のUTRは該UTRに対して内部的なイントロンを含む。
【0133】
本発明の好ましい実施形態においては、本発明のUTRをレポーター遺伝子の上流に物理的に連結し、UTRを該レポーター遺伝子の下流に物理的に連結する。本発明のより好ましい実施形態においては、配列番号3を含む本発明のVEGFの5'UTRを、レポーター遺伝子の上流に物理的に連結し、VEGFの3'UTRを該レポーター遺伝子の下流に物理的に連結する。
【0134】
PTCREおよびNeRP
本明細書で言及する場合、PTCREは標的遺伝子の発現をモジュレートする転写後調節エレメントである。一態様においては、PTCREは標的UTRの完全長配列ではない。好ましい態様においては、PTCREは完全長VEGFの5'UTRではない。一実施形態においては、1個の標的遺伝子中のPTCREは、異なる標的遺伝子中のPTCREに対する一次核酸配列類似性を有してもよい。あるいは、類似する機能のPTCRE中に任意の一次核酸配列類似性が存在しなくてもよい。好ましい実施形態においては、1個の標的遺伝子中のPTCREは、異なる標的遺伝子中のPTCREと類似する二次、三次、または二次および三次構造を有してもよい。PTCREの例としては、限定されるものではないが、IRESエレメント、上流ORF、およびAREが挙げられる。
【0135】
一実施形態においては、PTCREはUTR依存的発現をモジュレートする、UTR中の核酸配列である。PTCREは、鉄応答エレメント(「IRE」)、内部リボソーム進入部位(「IRES」)、上流オープンリーディングフレーム(「uORF」)、雄特異的致死エレメント(「MSL-2」)、Gカルテットエレメント、および5'-末端オリゴピリミジン領域(「TOP」)、AUリッチエレメント(「ARE」)、セレノシステイン挿入配列(「SECIS」)、ヒストンステムループ、細胞質ポリアデニル化エレメント(「CPE」)、ナノ翻訳制御エレメント、アミロイド前駆体タンパク質エレメント(「APP」)、翻訳調節エレメント(「TGE」)/直接反復エレメント(「DRE」)、Brunoエレメント(「BRE」)、または15-リポキシゲナーゼ分化制御エレメント(「15-LOX-DICE」)からなる群より選択される核酸配列であってよい。代替的な実施形態においては、PTCREはVEGFに由来するIRESではない。別の実施形態においては、PTCREはIRESではない。好ましい実施形態においては、PTCREは配列番号3である。最も好ましい実施形態においては、PTCREはNeRPではなく、PTCREはNeRPを含まないか、またはこれからならない。
【0136】
NeRPは、NeRP依存的な機構でPTCRE依存的発現をモジュレートする、UTR中の核酸配列である。本発明の一実施形態においては、NeRPはIRESを調節する。好ましい実施形態においては、NeRPは遺伝子のIRES依存的発現を抑制する。最も好ましい実施形態においては、NeRPは配列番号4である。あるいは、NeRPはPTCRE依存的発現をモジュレートすることができ、ここでPTCREは、NeRPがNeRP依存的な機構により遺伝子発現を増加させることができるように、遺伝子発現を抑制する。本発明の代替的な実施形態においては、NeRPはIRESを模倣する。
【0137】
本発明のNeRPは、機能を変化させない様式で核酸配列を欠失、置換、または付加された点で配列番号4中の任意の残基と異なっていてもよい。本発明の別の態様においては、本発明のNeRPは配列番号9、ならびにその断片および全ての相補体からなるか、またはこれらを含む。本発明の別の態様においては、本発明のNeRPは配列番号10〜12、ならびにその断片および全ての相補体からなるか、またはこれらを含む。
【0138】
本発明は、部分的にはVEGFの5'UTRに向けられているが、本発明のPTCREを構築物内の任意の位置、限定されるものではないが、構築物の5'UTR領域に配置することができる。本発明のPTCREを、UTRに機能し得る形で、物理的に、または機能し得る形で、かつ物理的に連結することができる。本発明の代替的な実施形態においては、本発明のPTCREは本発明のUTRである。
【0139】
本発明は、部分的には、VEGFの5'UTR中のNeRPに向けられているが、本発明のNeRPを、構築物内の任意の位置、限定されるものではないが、構築物のVEGFの5'UTR領域に配置することができる。本発明のNeRPを、UTRに機能し得る形で、物理的に、または機能し得る形で、かつ物理的に連結することができる。本発明の代替的な実施形態においては、本発明のNeRPは本発明のPTCREの上流にある。
【0140】
好ましい実施形態においては、本発明のPTCREはmRNA中のオープンリーディングフレームの開始コドンから約1〜約100残基上流、開始コドンから約150〜約250残基上流、または開始コドンから約300〜約500残基上流に位置する。最も好ましい実施形態においては、非翻訳領域は開始コドンから約1残基上流にある。
【0141】
好ましい実施形態においては、本発明のNeRPは、PTCREから約1000〜約500残基上流、PTCREから約500〜約100残基上流、またはPTCREから約100〜約60残基上流にある。別の実施形態においては、PTCREは、主要なORFの5'末端から約1000残基上流以内、主要なORFの5'末端から約500残基上流以内、または主要なORFの5'末端から約200残基上流以内、または主要なORFの5'末端から約100残基上流以内にある。別の実施形態においては、PTCREは、主要なORF内にあり、主要なORFの3'末端から約1000〜約500残基上流、主要なORFの3'末端から約500〜約100残基上流、または主要なORFの3'末端から約100〜約60残基上流にある。最も好ましい実施形態においては、PTCREは主要なORFの5'末端から上流の30残基以内にある。
【0142】
本発明の構築物は上記のものよりも多いか、または少ない構成要素を有することができる。例えば、本発明の構築物は、限定されるものではないが、必要に応じて、3'転写ターミネーター、3'ポリアデニル化シグナル、他の非翻訳核酸配列、輸送もしくは標的化配列、選択可能もしくはスクリーニング可能なマーカー、プロモーター、エンハンサー、およびオペレーターなどの遺伝子エレメントを含んでもよい。本発明の構築物はまた、宿主細胞の染色体への挿入に際して内因性プロモーターを利用することができるプロモーターを含まない遺伝子を含んでもよい。
【0143】
あるいは、本発明の核酸分子をコードする配列を、mRNAプローブの産生のためのベクター中にクローニングすることができる。そのようなベクターは当業界で公知であり、商業的に入手可能であり、これを用いて、標識されたヌクレオチドおよびT7、T3、またはSP6などの好適なRNAポリメラーゼの添加により、in vitroでRNAプローブを合成することができる。これらの手順を、様々な市販のキット(例えば、Amersham Biosciences Inc., Piscataway, NJ;およびPromega Co, Madison, WI)を用いて行うことができる。
【0144】
本発明の核酸分子による遺伝子発現のモジュレーション
遺伝子発現のモジュレーションは、より多いか、またはより少ない遺伝子発現をもたらすものであってよい。本発明の核酸分子を用いて遺伝子発現をモジュレートするための多くの手法は当業者には公知である。例えば、遺伝子産物の過剰発現は、哺乳動物細胞中への本発明の構築物のトランスフェクションの結果であってよい。同様に、下方調節は、哺乳動物細胞中への本発明の構築物のトランスフェクションの結果であってもよい。他の非限定的な例としては、RNA干渉(RNAi)などのアンチセンス技術、トランスジェニック動物、ハイブリッド、およびリボザイムが挙げられる。以下の例は例示を用いて提供されるものであり、本発明を限定することを意図するものではない。
【0145】
細胞機構
本明細書で用いる用語「UTR依存的発現」とは、mRNA発現のレベルでの、すなわち、遺伝子の転写が開始した後、該遺伝子によりコードされるタンパク質またはRNA産物が分解されるまでの、UTRを介する遺伝子発現の調節を指す。好ましい実施形態においては、用語「UTR依存的発現」は、mRNAの安定性または翻訳の調節を指す。より好ましい実施形態においては、用語「UTR依存的発現」とは、UTR中に存在する調節エレメントを介する遺伝子発現の調節を指す。標的遺伝子のUTR内のPTCREの配列を変化させることにより、その標的遺伝子について観察されるUTR依存的発現の量を変化させることができる。
【0146】
本明細書で用いる「UTRに影響される機構」は、それらの核酸配列に基づいて、または二次、三次、もしくは四次構造または他の関連する因子などのそれらの配列の機能である特性に基づいてUTRを識別する細胞機構である。標的遺伝子のUTR依存的発現のモジュレーションは、UTRに影響される機構が該標的遺伝子に対してどのように作用するかにおける変化に起因してよい。例えば、標的遺伝子中のUTRは、UTRに影響される機構を介して標的遺伝子の発現に影響する、IRESを含んでもよい。
【0147】
好ましい実施形態においては、UTRに影響される機構は、主要なORFに非依存的な機構であってよい。本明細書で用いる「主要なORF非依存的機構」とは、少なくとも1工程が遺伝子発現に関連し、主要なオープンリーディングフレームの核酸配列に依存しない、細胞経路またはプロセスを指す。好ましい実施形態においては、UTRに影響される機構は主要なORFに非依存的で、UTRに影響される機構である。
【0148】
特定の化合物が単にUTRに非依存的様式で標的遺伝子の発現をモジュレートすることにより機能している可能性を排除するために、1個以上の突然変異を、レポーター遺伝子に機能し得る形で連結されたUTR中に導入し、本明細書に記載のレポーター遺伝子に基づくアッセイにおいて、該レポーター遺伝子の発現に対する効果を測定することができる。例えば、標的遺伝子の5'UTRを含むレポーター遺伝子構築物を、該標的遺伝子の5'UTRの断片を欠失させるか、または該遺伝子の5'UTRの断片を別の遺伝子の5'UTRの断片と置換し、本発明のスクリーニングアッセイもしくは当業者には公知のアッセイにおいて同定された化合物の存在下および非存在下でレポーター遺伝子の発現を測定することにより突然変異させることができる。標的遺伝子の5'UTRの断片の欠失または該標的遺伝子の5'UTRの断片の別の遺伝子の5'UTRの断片との置換が、該レポーター遺伝子の発現をモジュレートする化合物の能力に影響する場合、欠失または置換された5'UTRの断片は、レポーター遺伝子の発現の調節および少なくとも部分的には、UTR依存的様式での調節に役割を果たす。
【0149】
あるいは、または上記の試験と組合わせて、特定の化合物が、単にUTRに非依存的様式で標的遺伝子の発現をモジュレートすることにより機能している可能性を、レポーター構築物として用いられるベクターを変化させることにより決定することができる。レポーター遺伝子発現に対する効果を化合物への曝露後に検出した第1のレポーター構築物に由来するレポーター遺伝子に隣接するUTRを、例えば、異なる転写調節エレメント(例えば、異なるプロモーター)および異なる選択可能なマーカーを有する新しいレポーター構築物中に挿入することができる。前記化合物の存在下でのレポーター遺伝子発現のレベルを、該化合物の非存在下、または対照(例えば、PBS)の存在下でのレポーター遺伝子発現のレベルと比較することができる。前記化合物の非存在下、または対照の存在下と比較して該化合物の存在下での前記レポーター遺伝子の発現のレベルに変化がない場合、該化合物はおそらくUTRに非依存的様式で機能している。
【0150】
本発明のアッセイで同定された、標的遺伝子のUTR依存的発現をモジュレートすることができる化合物(便宜上、本明細書では「リード」化合物と呼ぶ)を、標的RNA(少なくとも1種のUTR、および好ましくは少なくとも1種のUTRのエレメント、例えば、PTCREを含む)に対するUTR依存的結合についてさらに試験することができる。さらに、標的遺伝子発現に対する化合物の効果を評価することにより、シスに働くエレメント、すなわち、UTR依存的発現に関与する特異的ヌクレオチド配列を同定することができる。RNA結合アッセイ、サブトラクションアッセイ、および発現されるタンパク質濃度および活性のアッセイが、遺伝子のUTR依存的発現を決定する方法の例である。
【0151】
ハイブリッド
本発明の一態様においては、化合物と本発明のPTCREまたはNeRPのハイブリッドは、2つの非同一分子間で形成されるハイブリッドである。好ましい態様においては、ハイブリッドを2個の核酸分子間で形成させることができる。例えば、ハイブリッドを、2個のリボ核酸分子間、リボ核酸とデオキシリボ核酸の間、またはいずれかの誘導体の間で形成させることができる。代替的な実施形態においては、ハイブリッドを、本発明の核酸と非核酸分子の間で形成させることができる。好ましい実施形態においては、ハイブリッドを、核酸分子と非核酸分子、例えば、ポリペプチドまたは非ペプチド性治療剤との間で形成させることができる。
【0152】
リボザイム
本発明の一態様においては、遺伝子の活性または発現を、本発明の核酸分子、例えば、配列番号3および配列番号5〜8に対して特異的に指向するトランス切断触媒RNA(リボザイム)を設計することにより調節する。代替的な態様においては、遺伝子の活性または発現を、本発明の核酸分子、例えば、配列番号4および配列番号9〜12に対して特異的に指向するトランス切断触媒RNA(リボザイム)を設計することにより調節する。
【0153】
リボザイムはエンドリボヌクレアーゼ活性を有するRNA分子である。リボザイムは特定の標的のために特異的に設計され、この標的メッセージは特異的ヌクレオチド配列を含む。これらを、細胞内RNAの背景中で任意のRNA種を部位特異的に切断するように操作する。この切断事象により、mRNAは不安定になり、タンパク質発現を阻害する。重要なことに、リボザイムを用いて、未知の機能の遺伝子の発現を阻害して、表現型効果を検出することにより、in vitroまたはin vivoでその機能を決定することができる。
【0154】
1つの一般的に用いられるリボザイムモチーフは、基質配列の要件が最少であるハンマーヘッド型である。ハンマーヘッド型リボザイムの設計、およびリボザイムの治療的使用はUsmanら、Current Opin. Strict. Biol. 6:527-533 (1996)中に開示されている。また、リボザイムを、Longら、FASEB J. 7:25 (1993); Symons, Ann. Rev. Biochem. 61:641 (1992); Perrottaら、Biochem. 31:16-17 (1992); Ojwangら、PNAS 89:10802-10806 (1992);および米国特許第5,254,678号に記載のように調製し、使用することもできる。
【0155】
HIV-I RNAのリボザイム切断、リボザイムを用いるRNAの切断方法、リボザイムの特異性を増加させる方法、ならびにハンマーヘッド構造におけるリボザイム断片の調製および使用は米国特許第5,144,019号;同第5,116,742号;および同第5,225,337号ならびにKoizumiら、Nucleic Acid Res. 17:7059-7071 (1989)に記載されている。ヘアピン構造におけるリボザイム断片の調製および使用はChowriraおよびBurke、Nucleic Acids Res. 20: 2835 (1992)により記載されている。リボザイムを、DaubendiekおよびKool, Nat. Biotechnol. 15(3):273-277 (1997)に記載のようなローリング転写により作製することもできる。
【0156】
リボザイムのハイブリダイズする領域を改変するか、またはHornおよびUrdea, Nucleic Acids Res. 17:6959-67 (1989)に記載ように分枝状構造として調製することができる。リボザイムの基本的構造を、当業者には公知の方法で化学的に変化させ、化学的に合成されたリボザイムをモノマー単位により改変された合成オリゴヌクレオチド誘導体として投与することができる。治療剤の内容においては、リボザイムのリポソームを介する送達は、Birikhら、Eur. J. Biochem. 245:1-16 (1997)に記載のように、細胞内取込みを改善する。
【0157】
本発明のリボザイムとしては、テトラヒメナ・サーモフィラ(Tetrahymena thermophila)中で天然に生じ、Thomas Cechおよびその共同研究者ら(Zaugら、Science 224:574-578 (1984); ZaugおよびCech, Science 231:470-475 (1986); Zaugら、Nature, 324:429-433 (1986); W0 88/04300; BeenおよびCech, Cell 47:207-216 (1986))により広く記載されたものなどのRNAエンドリボヌクレアーゼ(本明細書では以後「Cech型リボザイム」と呼ぶ)も挙げられる(IVS、またはL-19 IVS RNAとしても知られる)。Cech型リボザイムは標的RNAの切断が起こった後、標的RNA配列にハイブリダイズする8塩基対の活性部位を有する。本発明は、標的遺伝子中に存在する8塩基対の活性部位配列を標的化するCech型リボザイムを包含する。
【0158】
リボザイムを、改変されたオリゴヌクレオチドから構成させてもよく(例えば、安定性、標的化などの改善のために)、in vivoで標的遺伝子を発現する細胞に送達させるべきである。送達の好ましい方法は、トランスフェクトされた細胞が十分な量のリボザイムを産生して内因性メッセージを破壊し、翻訳を阻害するように、強力な構成的pol IIIまたはpol IIプロモーターの制御下でリボザイムを「コードする」DNA構築物を用いることを含む。アンチセンス分子と違って、リボザイムは触媒的であるため、効率にとって必要な細胞内濃度はより低い。
【0159】
本発明の核酸配列および当業界で公知の方法を用いて、対応するmRNA種に特異的に結合し、切断するようにリボザイムを設計する。かくして、リボザイムは本明細書に開示される核酸またはその完全長遺伝子によりコードされる任意のタンパク質の発現を阻害する手段を提供する。この完全長遺伝子は特異的な阻害用リボザイムを設計および使用するために公知である必要はない。未知の機能の核酸またはcDNAの場合、そのヌクレオチド配列に対応するリボザイムを、標的転写物を切断する効率についてin vitroで試験することができる。in vitroで切断を行うこれらのリボザイムをin vivoでさらに試験する。また、このリボザイムを用いて、Birikhら、Eur. J. Biochem. 245: 1-16 (1997)に記載のように、疾患の動物モデルを作製することもできる。有効なリボザイムを用いて、目的の遺伝子の転写を阻害し、細胞における変化を検出することにより、該遺伝子の機能を決定する。この遺伝子が疾患における媒介因子であると認められる場合、有効なリボザイムを設計し、該遺伝子の転写および発現を阻害するための遺伝子治療において送達する。
【0160】
リボザイムの治療的および機能的ゲノム用途は、阻害しようとする遺伝子のコード配列の一部の知識と共に始まる。かくして、多くの遺伝子について、部分的核酸配列は有効なリボザイムを構築するのに十分な配列を提供する。標的切断部位を標的配列中で選択し、該切断部位に隣接する5'および3'ヌクレオチド配列に基づいてリボザイムを構築する。レトロウイルスベクターを操作して、標的コード配列のmRNAを標的化するモノマー性およびマルチマー性ハンマーヘッド型リボザイムを発現させる。これらのモノマー性およびマルチマー性リボザイムを、標的mRNAを切断する能力についてin vitroで試験する。細胞系を、リボザイムを発現するレトロウイルスベクターを用いて安定に形質導入し、この形質導入をノーザンブロット分析および逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)により確認する。この細胞を、疾患マーカーの発現の低下または標的mRNAの遺伝子産物の減少などの指示因子により、標的mRNAの不活性化についてスクリーニングする。
【0161】
細胞および生物
細胞の形質転換またはトランスフェクションに用いることができる核酸分子は、本発明の任意の核酸分子であってよい。本発明の核酸分子を細胞または生物中に導入することができる。好ましい態様においては、この細胞を、VEGFを発現しない細胞、VEGFを発現する細胞、またはVEGFを条件的に発現する細胞からなる群より選択する。より好ましい態様においては、この細胞は癌細胞であり、より好ましくは、形質転換されていない細胞と比較してVEGFが過剰発現される癌細胞である。
【0162】
宿主細胞株を、所望の様式で、または内因性もしくは異種性VEGF遺伝子の発現レベルに基づいて、挿入された配列の発現をモジュレートし、発現されたレポーター遺伝子を加工するその能力について選択することができる。発現のための宿主として入手可能な哺乳動物細胞系は当業界で公知であり、HeLa細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞およびいくつかの他の細胞系などの、American Type Culture Collection (ATCC, Manassas, VA)から入手可能な多くの不死化細胞系が挙げられる。好適な哺乳動物宿主細胞系の非限定例としては、以下の表1に示されるものが挙げられる。
【表1】

【0163】
好ましい態様においては、本発明の細胞は生物の細胞であってよい。より好ましい態様においては、生物は哺乳動物である。最も好ましい態様においては、哺乳動物はヒトである。別のより好ましい態様においては、生物は非ヒト哺乳動物、好ましくはマウス、ラット、またはチンパンジーである。本発明の一態様においては、細胞は多能性のものであるか、または分化したものであってよい。
【0164】
本発明の核酸は細胞中で天然のものであってもよいし、または当業界で記載のものなどの技術を用いて導入することができる。形質転換するDNA断片を細胞中に導入するための多くの方法が存在するが、その全てが真核細胞にDNAを送達するのに好適であるわけではない。好適な方法としては、DNAの直接送達、枯渇/阻害を介するDNAの取込み、エレクトロポレーション、シリコンカーバイド繊維を用いる攪拌、DNAで被覆された粒子の加速、化学的トランスフェクション、リポフェクションまたはリポソームを介するトランスフェクション、塩化カルシウムを介するDNAの取込みなどにより、DNAを細胞中に導入する任意の方法が挙げられる。例えば、限定されるものではないが、Lipofectamine(登録商標)(Invitrogen Co., Carlsbad, CA)およびFugene(登録商標)(Hoffmann-La Roche Inc., Nutley, NJ)を、いくつかの哺乳動物細胞中への、構築物およびsiRNAなどの核酸分子のトランスフェクションのために用いることができる。あるいは、特定の実施形態においては、加速法が好ましく、例えば、マイクロプロジェクタブルボンバードメントなどが挙げられる。本発明の範囲内で、トランスフェクトされた本発明の核酸を一過的または安定的に発現させることができる。そのようなトランスフェクトされた細胞は2もしくは3次元の細胞培養系または生物中にあってもよい。
【0165】
例えば、限定されるものではないが、前記構築物は、自発的に複製する構築物、すなわち、染色体外の存在として存在する構築物であってよく、その複製は染色体の複製から独立しており、例えば、プラスミド、染色体外エレメント、ミニ染色体、または人工染色体であってよい。前記構築物は自己複製を担うための任意の手段を含んでもよい。自己複製のために、前記構築物は、該構築物が目的の宿主細胞中で自発的に複製することを可能にする複製起点をさらに含んでもよい。あるいは、前記構築物は、細胞中に導入された場合、ゲノム中に組込まれ、それが組込まれた染色体と一緒に複製するものであってよい。この組込みは相同的または非相同的組換えの結果であってもよい。
【0166】
相同的組換えによるゲノム中への構築物または核酸の組込みは、考慮される宿主に拘らず、該構築物の核酸配列に依存する。典型的には、この構築物は宿主のゲノム中への相同的組換えによる組込みを指令するための核酸配列を含む。これらの核酸配列により、前記構築物を1個以上の染色体中の正確な位置で宿主細胞ゲノム中に組込むことが可能になる。正確な位置での組込みの可能性を増加させるために、対応する宿主細胞の標的配列と高い相同性を有する、十分な数の核酸、好ましくは400〜1500残基、より好ましくは800〜1000残基をそれぞれ含む、好ましくは2個の核酸配列が存在するべきである。これは相同的組換えの可能性を増強する。これらの核酸配列は、宿主細胞の標的配列と相同的である任意の配列であってよく、さらに、タンパク質をコードしてもしなくてもよい。
【0167】
安定な発現が、組換えタンパク質の長期間で高収率な産生にとって好ましい。例えば、レポーター遺伝子を安定に発現する細胞系を、同一か、または別の構築物上にウイルスの複製起点および/または内因性発現エレメントおよび選択マーカーを含んでもよい発現構築物を用いて形質転換することができる。構築物の導入後、富化された培地中で1〜2日間、細胞を増殖させた後、これらを選択培地に変更することができる。選択マーカーの目的は、選択に対する耐性を付与することであり、その存在により、導入された構築物を成功裏に発現する細胞の増殖および回収が可能になる。安定に形質転換された細胞の耐性クローンを、細胞型にとって好適な組織培養技術を用いて増殖させることができる。例えば、Animal Cell Culture, R.I. Freshney(編), 1986を参照されたい。
【0168】
任意の数の選択系を用いて、形質転換された細胞系を回収することができる。これらのものとしては、限定されるものではないが、それぞれ、tk-またはaprt-細胞中で用いることができる、単純ヘルペスウイルスのチミジンキナーゼ(Wiglerら、1977, Cell vol.11: 223-32)およびアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Lowyら、1980 Cell vol.22: 817-23)遺伝子が挙げられる。また、代謝拮抗剤、抗生物質、または除草剤耐性を、選択の基礎として用いることもできる。例えば、dhfrはメトトレキサートに対する耐性を付与し(Wiglerら、1980 Proc. Natl. Acad. Sci. vol.77: 3567-70)、nptはアミノグリコシド、ネオマイシンおよびG-418に対する耐性を付与し(Colbere-Garapinら、1981. J. Mol. Biol. vol.150: 1-14)、alsおよびpatはそれぞれ、クロルスルフロンおよびホスフィノトリシンアセチルトランスフェラーゼに対する耐性を付与する。さらなる選択可能な遺伝子が記載されている。例えば、trpBにより、細胞はトリプトファンの代わりにインドールを用いることが可能になり、およびhisDにより、細胞はヒスチジンの代わりにヒスチノールを用いることが可能になる(Hartman & Mulligan, 1988. Proc. Natl. Acad. Sci. vol.85: 8047-51)。アントシアニン、β-グルクロニダーゼおよびその基質であるGUS、ならびにルシフェラーゼおよびその基質であるルシフェリンなどの可視性マーカーを用いて、形質転換体を同定し、特定の構築物系に起因する一過的または安定なタンパク質発現の量を定量することができる(Rhodesら、1995. Methods Mol. Biol. vol.55: 121-131)。
【0169】
マーカー遺伝子発現の存在はレポーター遺伝子も存在することを示唆するが、その存在および発現を確認する必要がある。例えば、レポーター遺伝子をコードする配列をマーカー遺伝子配列内に挿入する場合、レポーター遺伝子をコードする配列を含む形質転換細胞を、マーカー遺伝子機能が存在しないことにより同定することができる。あるいは、マーカー遺伝子を、1個のプロモーターの制御下で、レポーター遺伝子をコードする配列と並べて配置することができる。誘導または選択に対する応答におけるマーカー遺伝子の発現は通常、レポーター遺伝子の発現を示す。
【0170】
あるいは、レポーター遺伝子を含み、レポーター遺伝子を発現する宿主細胞を、当業者には公知の様々な手順により同定することができる。これらの手順としては、限定されるものではないが、核酸もしくはタンパク質の検出および/または定量のための、膜、溶液、もしくはチップに基づく技術を含む、DNA-DNAもしくはDNA-RNAハイブリダイゼーションおよびタンパク質バイオアッセイもしくは免疫アッセイ技術が挙げられる。例えば、レポーター遺伝子の存在を、プローブもしくは断片またはレポーター遺伝子をコードするポリヌクレオチドの断片を用いるDNA-DNAもしくはDNA-RNAハイブリダイゼーションまたは増幅により検出することができる。核酸増幅に基づくアッセイは、レポーター遺伝子を含む形質転換体を検出するためのレポーター遺伝子をコードする配列から選択されたオリゴヌクレオチドの使用を含む。
【0171】
本発明のスクリーニング方法
化合物
本発明は、遺伝子発現をモジュレートすることができる化合物をスクリーニングする方法を含む。任意の化合物を、本発明のアッセイにおいてスクリーニングすることができる。
【0172】
一実施形態においては、化合物は、核酸またはポリペプチドもしくは非ペプチド性治療剤などの非核酸を含む。好ましい実施形態においては、核酸はポリヌクレオチド、ポリヌクレオチド類似体、ヌクレオチド、またはヌクレオチド類似体であってよい。より好ましい実施形態においては、化合物は、本発明の特異的DNAまたはRNA配列に対して相補的なヌクレオチド配列である、アンチセンスオリゴヌクレオチドであってよい。好ましくは、アンチセンスオリゴヌクレオチドは少なくとも11ヌクレオチドの長さであるが、少なくとも12、15、20、25、30、35、40、45、または50以上のヌクレオチドの長さであってもよい。より長い配列を用いることもできる。アンチセンスオリゴヌクレオチドはデオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、または両方の組合せであってよい。
【0173】
アンチセンスオリゴヌクレオチド分子などの核酸分子を、DNA構築物中で提供し、細胞中に導入することができる。核酸分子はアンチセンスまたはセンスおよび二本鎖または一本鎖であってよい。好ましい実施形態においては、核酸分子は干渉性RNA(RNAi)またはマイクロRNA(miRNA)であってよい。好ましい実施形態においては、dsRNAは、小干渉性RNA(siRNA)と呼ばれる長さ20〜25残基である。
【0174】
オリゴヌクレオチドを、アルキルホスホナート、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、アルキルホスホノチオエート、アルキルホスホナート、ホスホルアミダート、リン酸エステル、カルバメート、アセトアミダート、カルボキシメチルエステル、カルボナート、およびリン酸トリエステルなどの非ホスホジエステルヌクレオチド間結合を用いて、1個のヌクレオチドの5'末端を、別のヌクレオチドの3'末端に共有結合させることにより、手動で、または自動化合成装置により合成することができる。Brown, 1994 Meth. Mol. Biol. vol. 20:1-8; Sonveaux, 1994. Meth. Mol. Biol. Vol. 26:1-72;およびUhlmannら、1990. Chem. Rev. vol. 90:543-583を参照されたい。そのような化合物の塩、エステル、および他の製薬上許容し得る形態も包含される。
【0175】
好ましい実施形態においては、化合物はペプチド、ポリペプチド、ポリペプチド類似体、アミノ酸、またはアミノ酸類似体であってよい。そのような化合物を手動で、または自動化合成装置により合成することができる。
【0176】
化合物は化合物のライブラリーのメンバーであってもよい。特定の実施形態においては、前記化合物を、ペプトイド;ランダムバイオオリゴマー;ヒダントイン、ベンゾジアゼピンおよびジペプチドなどのダイバーソマー;ビニル性(vinylogous)ポリペプチド;非ペプチド性ペプチド模倣物質;オリゴカルバメート;ペプチジルホスホナート;ペプチド核酸ライブラリー;抗体ライブラリー;炭水化物ライブラリー;および小有機分子ライブラリーを含む化合物のコンビナトリアルライブラリーから選択する。好ましい実施形態においては、小有機分子ライブラリーは、ベンゾジアゼピン、イソプレノイド、チアゾリジノン、メタチアザノン、ピロリジン、モルホリノ化合物、またはジアゼピンジオンのライブラリーである。
【0177】
別の実施形態においては、化合物は、約10,000グラム/モル未満、約5,000グラム/モル未満、約1,000グラム/モル未満、約500グラム/モル未満、約100グラム/モル未満の分子量を有し、そのような化合物の塩、エステル、および他の製薬上許容し得る形態であってもよい。
【0178】
化合物を、細胞毒性について包括的に評価することができる。該化合物の細胞毒性作用を、例えば、293(腎臓)、HuH7(肝臓)、およびHela細胞などの細胞系を、約4、10、16、24、36または72時間に渡って使用して試験することができる。さらに、正常な線維芽細胞および末梢血単核細胞(PBMC)などのいくつかの一次細胞を、様々な濃度で、約4日間、化合物の存在下で増殖させることができる。新鮮な化合物を1日おきに添加して、時間と共に一定レベルの曝露を維持することができる。細胞増殖に対する各化合物の効果を、CellTiter 96(登録商標)AQueous One Solution Cell Proliferation Assay (Promega Co, Madison, WI)および[3H]-チミジン取込みにより決定することができる。いくつかの化合物を用いるいくつかの細胞の処理は細胞分裂抑制作用を有してもよい。各化合物のための選択指数(ELISAもしくはFACSまたはレポーター遺伝子アッセイにおけるEC50に対する細胞毒性アッセイにおけるCC50の比)を、全てのUTR-レポーターおよびタンパク質阻害アッセイについて算出することができる。実質的な選択指数を示す化合物は目的のものであってよく、機能的アッセイにおいてさらに分析することができる。
【0179】
化合物の構造を、本発明の方法の一部として、質量スペクトル法、NMR、振動スペクトル法、またはX線結晶分析などの任意の公知の方法により決定することができる。
【0180】
化合物は当業界で既に公知の医薬品であってもよく、または任意の薬理活性を有することが以前には知られていなかった化合物であってもよい。この化合物は天然のものであるか、または研究室で設計されたものであってもよい。これらを、微生物、動物、もしくは植物から単離するか、または組換え的に産生するか、または当業界で公知の化学的方法により合成することができる。必要に応じて、化合物を、限定されるものではないが、生物ライブラリー、空間的にアドレス可能な平行固相もしくは液相ライブラリー、解析を要する合成ライブラリー法、「1ビーズ1化合物」ライブラリー法、およびアフィニティークロマトグラフィー選択を用いる合成ライブラリー法などの、当業界で公知のいくつかのコンビナトリアルライブラリー法のいずれかを用いて取得することができる。分子ライブラリーの合成のための方法は当業界で公知である(例えば、DeWittら、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 90, 6909, 1993; Erbら、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 91, 11422, 1994; Zuckermannら、J. Med. Chem. 37, 2678, 1994; Choら、Science 261, 1303, 1993; Carellら、Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 33, 2059, 1994; Carellら、Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 33, 2061; Gallopら、J. Med. Chem. 37, 1233, 1994を参照)。化合物のライブラリーを、溶液中で(例えば、Houghten, BioTechniques 13, 412-421, 1992を参照)、またはビーズ(Lam, Nature 354, 82-84, 1991)、チップ(Fodor, Nature 364, 555-556, 1993)、細菌もしくは胞子(Ladner、米国特許第5,223,409号)、プラスミド(Cullら、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 89, 1865-1869, 1992)、またはファージ(Scott & Smith, Science 249, 386-390, 1990; Devlin, Science 249, 404-406, 1990; Cwirlaら、Proc. Natl. Acad. Sci. 97, 6378-6382, 1990; Felici, J. Mol. Biol. 222, 301-310, 1991;およびLadner,米国特許第5,223,409号)上で提供することができる。
【0181】
化合物をスクリーニングするための本発明の方法は、標的遺伝子から転写されるリボ核酸分子に直接結合することができる、遺伝子発現をモジュレートすることができる化合物を選択することができる。好ましい実施形態においては、本発明の方法に従って同定された化合物は、標的遺伝子のUTR依存的発現をモジュレートする1種以上のトランスに働く因子(例えば、限定されるものではないが、タンパク質)に結合することができる。別の好ましい実施形態においては、本発明の方法に従って同定された化合物は、5'UTRと3'UTRの間の相互作用を破壊することができる。
【0182】
化合物を、当業者には公知のin vitroアッセイ(例えば、無細胞アッセイ)もしくはin vivoアッセイ(例えば、細胞に基づくアッセイ)を用いるか、または本発明で提供されるように試験することができる。標的遺伝子の発現をモジュレートする化合物を、本発明で提供される方法から決定することができる。本発明のUTRは、化合物の存在下、非存在下、または存在および非存在下で、遺伝子発現をモジュレートすることができるUTRを含む。好ましい実施形態においては、1個以上の遺伝子の発現に対する化合物の効果を、当業者には公知のアッセイを用いて決定するか、または本発明により提供して、標的遺伝子のUTR依存的発現に対する特定の化合物の効果の特異性を評価することができる。より好ましい実施形態においては、化合物は複数の遺伝子に対する特異性を有する。別のより好ましい実施形態においては、本発明の方法を用いて同定された化合物は、1種類のみの遺伝子、あるいは、同じシグナリング経路内の遺伝子群の発現に特異的に作用することができる。本発明のアッセイにおいて同定された化合物を、機能的な読み出し系に結合された、UTR依存的な遺伝子発現に関与する標的RNAエレメントを含むか、または含むように操作された宿主細胞を用いて生物活性について試験することができる。
【0183】
スクリーニングアッセイ
本発明は、遺伝子発現をモジュレートすることができる化合物をスクリーニングすることができるアッセイを含み、これを提供する。本発明の好ましい態様においては、アッセイはin vitroアッセイである。本発明の別の態様においては、アッセイはin vivoアッセイである。本発明の別の好ましい態様においては、アッセイは翻訳を測定するものである。本発明の好ましい態様においては、アッセイは本発明の核酸分子または本発明の構築物を含む。本発明の核酸分子または構築物としては、限定されるものではないが、配列番号3〜12、または機能を変化させない様式で、核酸配列が欠失、置換、もしくは付加された点で配列番号3〜12中の任意の残基と異なる配列が挙げられる。本発明はまた、本発明の全ての核酸分子の断片および相補体も提供する。
【0184】
本発明の一実施形態においては、レポーター遺伝子の活性または発現をモジュレートする。モジュレートされるとは、翻訳の前、後、もしくは間の任意の時点の間での増加または減少を意味する。好ましい実施形態においては、レポーター遺伝子の活性または発現を、翻訳の間にモジュレートする。例えば、該レポーター遺伝子の翻訳の阻害は発現をモジュレートするであろう。別の例においては、翻訳を介した場合でも減少した、安定状態レベルの発現されたタンパク質が阻害されなかった場合、レポーター遺伝子の発現レベルをモジュレートする。例えば、mRNAの半減期の変化は発現をモジュレートすることができる。
【0185】
代替的な実施形態においては、レポーター遺伝子の活性または発現のモジュレーションは、翻訳の前または間の任意の時点の間での増加または減少を意味する。
【0186】
より好ましい態様においては、レポーター遺伝子または標的遺伝子の活性または発現を、化合物の存在下で30%、40%、50%、60%、70%、80%または90%を超えてモジュレートする。高度に好ましい態様においては、より多くの効果を、VEGF依存的な癌細胞中で観察する。
【0187】
最も好ましい態様においては、レポーター遺伝子の活性または発現を、一般的な、無差別の翻訳活性のための対照遺伝子の活性を変化させることなくモジュレートする。本明細書で用いる、無差別の翻訳活性とは、無作為であるか、もしくは非体系的である翻訳レベルまたは活性におけるモジュレーションを指す。一般的な、無差別の翻訳活性におけるモジュレーションのための1つのアッセイは、一般的な翻訳阻害剤、例えば、リボソームからの発生期のペプチドおよびmRNAの放出を引き起こす阻害剤である、ピューロマイシンを用いる。
【0188】
レポーター遺伝子の発現を、例えば、当業界で公知の技術を用いて検出することができる。レポーター遺伝子の翻訳または転写をin vitroまたはin vivoで検出することができる。検出アッセイにおいては、前記化合物またはレポーター遺伝子は、蛍光、放射性同位体、化学発光などの検出可能な標識、またはセイヨウワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、もしくはルシフェラーゼなどの酵素標識を含んでもよい。
【0189】
本発明の核酸分子を化合物のライブラリーに曝露し、例えば、限定されるものではないが、上記のものなどの、当業界で公知のアッセイを用いて遺伝子発現を検出することにより、高効率スクリーニングを行うことができる。本発明の一実施形態においては、本発明の核酸分子を発現する、HeLa細胞などの癌細胞を、化合物のライブラリーで処理する。レポーター遺伝子活性の阻害%を、全てのライブラリー化合物を用いて取得し、例えば、限定されるものではないが、SpotFire(登録商標)(SpotFire, Inc., Somerville,MA)により作製された散布図を用いて分析することができる。高効率スクリーニングを行った後、選択性スクリーニングを行うことができる。好ましい実施形態においては、その後の選択性スクリーニングは、例えば、本発明のPTCREもしくはNeRPまたはその両方を含む、PTCREに連結されるか、または同じ遺伝子の5'および3'UTRに隣接するレポーター遺伝子を発現する細胞中でのレポーター遺伝子発現の検出を含んでもよい。代替的な好ましい実施形態においては、その後の選択性スクリーニングは、様々な濃度の化合物の存在下での細胞中のレポーター遺伝子発現の検出を含んでもよい。
【0190】
化合物を同定して標的遺伝子のUTR依存的発現をモジュレートし、および好ましくは、該化合物の構造を本発明で記載され、当業界で公知の方法により同定したら、該化合物を、さらなるアッセイおよび/または動物モデルにおいて生物活性について試験する。さらに、リード化合物を用いて、コンジナーまたは類似体を設計することができる。
【0191】
様々な標識およびコンジュゲーション技術が当業者には公知であり、種々の核酸およびアミノ酸アッセイにおいて用いることができる。本発明のPTCREまたはNeRPに関連する配列を検出するための標識されたハイブリダイゼーションまたはPCRプローブを作製する手段としては、オリゴ標識化、ニック翻訳、末端標識化、または標識されたヌクレオチドを用いるPCR増幅が挙げられる。検出を容易にするために用いることができる好適なレポーター分子または標識としては、放射性核種、酵素、および蛍光、化学発光、または色素体薬剤、ならびに基質、コファクター、阻害剤、磁気粒子などが挙げられる。
【0192】
in vitro
本発明は、遺伝子発現をモジュレートすることができる化合物をスクリーニングすることができるアッセイを含み、これを提供する。本発明の好ましい態様においては、アッセイはin vitroアッセイである。本発明の好ましい態様においては、in vitroアッセイは翻訳を測定するものである。本発明の好ましい態様においては、in vitroアッセイは本発明の核酸分子または本発明の構築物を含む。
【0193】
一実施形態においては、本発明のレポーター遺伝子は、融合タンパク質または発現されるレポーター遺伝子を固相支持体に結合させることができるドメインを含む融合タンパク質をコードすることができる。例えば、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ融合タンパク質を、グルタチオンセファロースビーズ(Sigma Chemical, St. Louis, MO)またはグルタチオン誘導体化マイクロタイタープレート上に吸着させた後、前記化合物または前記化合物および吸着されなかった発現されたレポーター遺伝子と混合することができる;次いで、この混合物を、複合体形成を誘導する条件下で(例えば、塩およびpHのための生理的条件で)インキュベートする。インキュベーション後、ビーズまたはマイクロタイタープレートのウェルを洗浄して、未結合の成分を除去する。相互作用物質の結合を、上記のように、直接的または間接的に決定することができる。あるいは、前記複合体を固相支持体から解離させた後、結合を決定することができる。
【0194】
固相支持体上に発現されたレポーター遺伝子または化合物を固定するための他の技術を、本発明のスクリーニングアッセイにおいて用いることもできる。例えば、発現されたレポーター遺伝子または化合物を、ビオチンおよびストレプトアビジンのコンジュゲーションを用いて固定することができる。ビオチン化された発現されたレポーター遺伝子または化合物を、当業界で公知の技術(例えば、ビオチン化キット、Pierce Chemicals, Rockford, IL)を用いてビオチン-NHS(N-ヒドロキシスクシンイミド)から調製し、ストレプトアビジンでコーティングした96穴プレートのウェル中で固定することができる。あるいは、発現されたレポーター遺伝子または化合物に特異的に結合するが、所望の結合または触媒部位を妨害しない抗体を、前記プレートのウェルに送達することができる。未結合の標的またはタンパク質を、抗体コンジュゲーションによりウェル中にトラップすることができる。
【0195】
GST-固定化複合体に関する上記のものに加えて、そのような複合体を検出するための方法としては、発現されたレポーター遺伝子もしくは化合物に特異的に結合する抗体を用いる複合体の免疫検出、発現されたレポーター遺伝子の活性を検出することに依存する酵素結合アッセイ、電気泳動移動度シフトアッセイ(electrophoretic mobility shift assay;EMSA)、および還元的もしくは非還元的条件下でのSDSゲル電気泳動が挙げられる。
【0196】
一実施形態においては、in vitroでのレポーター遺伝子の翻訳を、例えば、網状赤血球溶解物翻訳系、TNT(登録商標) Coupled Reticulocyte Lysate System(Promega Co., Madison, WI)の使用に従って検出することができる。この態様においては、例えば、限定されるものではないが、RNA(100 ng)を、70%網状赤血球溶解物、20μMアミノ酸およびRNase阻害剤(0.8ユニット/μl)を含む反応混合物中、30℃にて翻訳することができる。インキュベーションの45分後、20μlのLucliteを添加し、発光をView-Lux上で読み取ることができる。異なる濃度の化合物を、2%の最終DMSO濃度で反応物に添加し、EC50値を算出することができる。ピューロマイシンを一般的な無差別の翻訳阻害のための対照として用いることができる。GAPDH、XIAP、TNF-αおよびHIF-1αなどの、標的遺伝子に由来する特定のUTRに連結されたレポーター遺伝子をコードするin vitro転写物を用いることもできる。
【0197】
細胞型に特異的な因子の影響を研究するために、キャップ付きRNAを、例えば、限定されるものではないが、HT1080細胞(ヒト線維肉腫細胞系)などの、特殊化細胞または癌細胞系から調製された翻訳抽出物中で翻訳することができる。簡単に述べると、細胞をPBSで洗浄し、低張性バッファー(10 mM Hepes, pH 7.4, 15 mM KCl, 1.5 mM Mg(OAc)2, 2 mM DTTおよび0.5 mM Pefabloc (Pentapharm Ltd. Co., Switzerland)中、氷上で5分間膨張させることができる。細胞をDounceホモジナイザー(100ストローク)を用いて溶解し、抽出物を10,000 x gで10分間遠心分離することができる。次いで、これらの浄化された抽出物を液体窒素中で瞬間冷凍し、-70℃でアリコート中で保存することができる。翻訳反応物は、全て1X翻訳バッファー(15 mM Hepes, pH 7.4, 85 mM KOAc, 1.5 mM Mg(OAc)2, 0.5 mM ATP, 0.075 mM GTP, 18 mMクレアチンジホスフェートおよび1.5 mM DTT)中の、60%の浄化翻訳抽出物、15μM総アミノ酸、0.2 mg/mlクレアチンホスホキナーゼを含む反応混合物中のキャップ付きRNA(50 ng)であってよい。翻訳反応物を37℃で90分間インキュベートした後、前記レポーター遺伝子によりコードされるタンパク質の活性を検出することができる。レポーター遺伝子として働くルシフェラーゼ遺伝子によりコードされる、ルシフェラーゼの活性について、20μlのLucLite(登録商標)(Packard Instrument Co., Inc., Meriden, CT)の添加を用いることができる。
【0198】
キャップ付き、およびキャップなしRNAを、T7ポリメラーゼ転写キット(Ambion Inc., Austin, TX)を用いてin vitroで合成することができる。限定されるものではないが、本発明のPTCREに連結されたVEGFを含む構築物、ベクターにのみ連結されたレポーター遺伝子を含む構築物、PTCREに連結されたGAPDHを含む構築物、PTCREに連結されたHIF-1αを含む構築物、およびPTCREに連結されていないHIF-1αを含む構築物などの、本発明の様々な核酸分子に由来するキャップ付きRNAを、同様のin vitro系で用いて、翻訳に対する細胞型に特異的な因子の影響を研究することができる。
【0199】
in vivo
本発明は、遺伝子発現をモジュレートすることができる化合物をスクリーニングすることができるアッセイを含み、これを提供する。本発明の好ましい態様においては、アッセイはin vivoアッセイである。本発明の好ましい態様は翻訳を測定するアッセイである。本発明の好ましい実施形態においては、in vivoアッセイは本発明の核酸分子または本発明の構築物を含み、細胞または生物内の細胞もしくは組織の使用を含んでもよい。より好ましい実施形態においては、in vivoアッセイは、細胞または生物内の細胞もしくは組織中に存在する本発明の核酸分子を含む。
【0200】
別の実施形態においては、レポーター遺伝子のin vivoでの翻訳を検出することができる。好ましい実施形態においては、レポーター遺伝子を、例えば、HeLa、MCF-7、およびCOS-7、BT474などの、American Type Culture Collection (ATCC), Manassas, VAで入手可能な細胞系から得られる癌細胞中にトランスフェクトする。より好ましい実施形態においては、癌細胞は、同様に誘導された正常な一次細胞と比較して変化したゲノムを有し、哺乳動物の癌細胞は、そのような一次細胞は増殖しない条件下で増殖する。
【0201】
レポーター遺伝子発現をモジュレートする化合物のスクリーニングを、無傷の細胞中で行うことができる。レポーター遺伝子を含む任意の細胞を、細胞に基づくアッセイ系において用いることができる。レポーター遺伝子は前記細胞中で天然のものであってよく、または上記のものなどの技術(細胞および生物を参照)を用いて導入することができる。一実施形態においては、細胞系を、天然のVEGFのその発現レベルに基づいて選択する。化合物によるレポーター遺伝子発現のモジュレーションを、上記のようにin vitroで、または下記のようにin vivoで決定することができる。
【0202】
内因性タンパク質の発現を検出するための、レポーター遺伝子の発現を検出および測定するための様々なプロトコルが当業界で公知である。例えば、酵素結合免疫吸着アッセイ(Enzyme-Linked Immunosorbent Assay;ELISA)、発現されるレポーター遺伝子に特異的なポリクローナルもしくはモノクローナル抗体を用いるウェスタンブロット、蛍光標示式細胞分取(Fluorescence-Activated Cell Sorter;FACS)、電気泳動移動度シフトアッセイ(electrophoretic mobility shift assay;EMSA)、またはラジオイムノアッセイ(RIA)を行って、前記化合物で処理した細胞から誘導された溶解物または培地中の特定のタンパク質のレベルを定量することができる。好ましい実施形態においては、表現型的または生理学的読み出しを用いて、リード化合物の存在下および非存在下での標的RNAのUTR依存的活性を評価することができる。
【0203】
種々の標識およびコンジュゲーション技術が当業者に公知であり、様々な核酸およびアミノ酸アッセイにおいて用いることができる。本発明のPTCREもしくはNeRPを有するポリヌクレオチドに関連する配列を検出するための標識されたハイブリダイゼーションもしくはPCRプローブを作製するための手段としては、オリゴ標識化、ニック翻訳、末端標識化、または標識されたヌクレオチドを用いるPCR増幅が挙げられる。あるいは、本発明のPTCREまたはNeRPを有する配列を、mRNAプローブの産生のためのベクター中にクローニングすることができる。そのようなベクターは当業界で公知であり、商業的に入手可能であり、これを用いて、標識されたヌクレオチドおよびT7、T3、もしくはSP6などの好適なRNAポリメラーゼの添加により、in vitroでRNAプローブを合成することができる。これらの手順を、様々な市販のキット(Amersham Biosciences Inc., Piscataway, NJ;およびPromega Co, Madison, WI)を用いて行うことができる。検出を容易にするために用いることができる好適なレポーター分子または標識としては、放射性ヌクレオチド、酵素、および蛍光、化学発光、または色素体薬剤、ならびに基質、コファクター、阻害剤、磁気粒子などが挙げられる。
【0204】
治療的使用
本発明はまた、標的遺伝子の異常な発現に関連する疾患または障害の1種以上の症状を治療、予防または軽減するための方法であって、本明細書に記載の方法に従って同定された、治療上または予防上有効量の化合物、もしくは製薬上許容し得るその塩を、それを必要とする被験体に投与することを含む、前記方法も提供する。本発明の一実施形態においては、標的遺伝子を異常に発現させる。標的遺伝子を異常に過剰発現させるか、または異常に低レベルで発現させることができる。特に、本発明は、疾患もしくは障害を治療もしくは予防するか、またはその症状を軽減する方法であって、本明細書に記載の方法に従って同定された、該疾患もしくは障害の治療もしくは予防において有益な標的遺伝子の発現を増加させるのに有効な量の化合物、もしくは製薬上許容し得るその塩を、それを必要とする被験体に投与することを含む、前記方法を提供する。本発明はまた、疾患もしくは障害を治療もしくは予防するか、またはその症状を軽減する方法であって、本明細書に記載の方法に従って同定された、その発現が該疾患もしくは障害の開始、発達、進行もしくは重篤度と関連するか、またはそれらと関連した標的遺伝子の発現を減少させるのに有効な量の化合物、もしくは製薬上許容し得るその塩を、それを必要とする被験体に投与することを含む、前記方法も提供する。特定の実施形態においては、前記疾患または障害は、増殖性障害、炎症性障害、感染症、遺伝子障害、自己免疫障害、心血管疾患、または中枢神経系障害である。前記疾患または障害が感染症である実施形態においては、該感染症は菌類感染、細菌感染、ウイルス感染、または別の型の病原体により引き起こされる感染により引き起こされるものであってよい。
【0205】
さらに、本発明は、治療効果を達成するために患者に投与することができる医薬組成物を提供する。本発明の医薬組成物は、例えば、リボザイムもしくはアンチセンスオリゴヌクレオチド、本発明のPTCREもしくはNeRPに特異的に結合する抗体、または模倣物質、活性化因子、PTCREもしくはNeRP活性の阻害剤、または本発明の核酸分子を含んでもよい。前記組成物を、単独で、または少なくとも1種の他の薬剤、例えば、限定されるものではないが、生理食塩水、緩衝生理食塩水、デキストロース、および水などの任意の滅菌された生体適合性の医薬担体中で投与することができる安定化化合物と組合わせて投与することができる。前記組成物を、単独で、または他の薬剤、薬物もしくはホルモンと組合わせて患者に投与することができる。
【0206】
活性成分に加えて、これらの医薬組成物は、製薬的に用いることができる調製物中への活性化合物の加工を容易にする賦形剤および補助剤を含む好適な製薬上許容し得る担体を含んでもよい。本発明の医薬組成物を、限定されるものではないが、経口、静脈内、筋肉内、動脈内、脊髄内、クモ膜下腔、心室内、経皮、皮下、腹腔内、鼻内、非経口、局所、舌下、または直腸手段などの任意数の経路により投与することができる。経口投与のための医薬組成物を、経口投与にとって好適な剤形中で当業界で公知の製薬上許容し得る単体を用いて製剤化することができる。そのような担体により、前記医薬組成物を、患者による摂取のための、錠剤、ピル、糖衣錠、カプセル、液体、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液などとして製剤化することができる。
【0207】
経口使用のための医薬調製物を、活性化合物を固体賦形剤と混合し、必要に応じて、得られる混合物を粉砕し、必要に応じて、好適な補助剤を添加した後、顆粒の混合物を加工して、錠剤または糖衣錠のコアを取得することにより得ることができる。好適な賦形剤は、炭水化物またはタンパク質充填剤、例えば、ラクトース、スクロース、マンニトール、もしくはソルビトールなどの糖類;とうもろこし、小麦、米、ジャガイモ、もしくは他の植物由来のデンプン;メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、もしくはナトリウムカルボキシメチルセルロースなどのセルロース;アラビアゴムおよびトラガカントゴムなどのゴム;ならびにゼラチンおよびコラーゲンなどのタンパク質である。必要に応じて、架橋されたポリビニルピロリドン、寒天、アルギン酸、アルギン酸ナトリウムなどのその塩などの、崩壊剤または可溶化剤を添加してもよい。
【0208】
経口的に使用することができる医薬調製物としては、ゼラチン製の押込嵌めカプセル、ならびにゼラチンおよびコーティング、例えば、グリセロールまたはソルビトールから作製された柔性密閉カプセルが挙げられる。押込嵌めカプセルは、ラクトースもしくはデンプンなどの充填剤もしくは結合剤、タルクもしくはステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤、および必要に応じて、安定剤と混合された活性成分を含んでもよい。ソフトカプセルにおいては、前記活性化合物を、脂肪油、液体もしくは液体ポリエチレングリコールなどの好適な液体中に、安定剤を用いて、または用いずに溶解または懸濁することができる。
【0209】
非経口投与にとって好適な医薬製剤を、水性溶液、好ましくは、ハンクス溶液、リンゲル溶液、または緩衝生理食塩水などの生理学的に適合可能な緩衝液中で製剤化することができる。水性注入用懸濁液は、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ソルビトール、またはデキストランなどの、懸濁液の粘性を増加させる物質を含んでもよい。さらに、活性化合物の懸濁液を、好適な油性注入用懸濁液として調製することができる。好適な親油性溶媒またはビヒクルとしては、ゴマ油などの脂肪油、またはオレイン酸エチルもしくはトリグリセリドなどの合成脂肪酸エステル、またはリポソームが挙げられる。非脂質多価陽イオン性アミノポリマーを送達のために用いることもできる。必要に応じて、懸濁液は、安定剤または高度に濃縮された溶液の調製を可能にするために化合物の溶解性を増加させる好適な薬剤を含んでもよい。局所または経鼻投与のためには、浸透させようとする特定の障壁にとって好適な浸透剤を前記製剤中で用いる。そのような浸透剤は当業界で一般的である。
【0210】
本発明の医薬組成物を、例えば、従来の混合、溶解、顆粒化、糖衣錠製造、均質混合物化、乳化、カプセル化、混入、または凍結乾燥加工により、当業界で公知である様式で製造することができる。前記医薬組成物を塩として提供し、限定されるものではないが、塩酸、硫酸、酢酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸などの多くの酸を用いて形成させることができる。塩は、対応する遊離塩基の形態よりも水性または他の水素イオン溶媒中でより溶解性が高くなる傾向がある。他の場合、好ましい調製物は、以下のもの:1〜50 mMヒスチジン、0.1〜2%スクロース、および2〜7%マンニトールのいずれかまたは全てを4.5〜5.5のpH範囲で含んでもよい凍結乾燥粉末であってよく、使用前にバッファーと混合する。製剤および投与に関する技術のさらなる詳細はRemington's Pharmaceutical Sciences (Maack Publishing Co., Easton, Pa)の最新版に見出すことができる。医薬組成物を調製した後、これらを好適な容器中に入れ、目的の症状の治療のために標識することができる。そのような標識は、投与の量、頻度、および方法を含んでもよい。
【0211】
治療上有効量の決定
治療上有効量とは、該治療上有効量の非存在下で生じるレポーター遺伝子活性と比較して、レポーター遺伝子の活性を増加させるか、または減少させる活性成分の量を指す。任意の化合物について、治療上有効量を、細胞培養アッセイまたは動物モデル、通常はマウス、ウサギ、イヌ、もしくはブタにおいて最初に評価することができる。動物モデルを用いて、好適な濃度範囲および投与経路を決定することもできる。次いで、そのような情報を用いて、ヒトにおいて有用な用量および投与経路を決定することができる。
【0212】
治療的効力および毒性、例えば、ED50(集団の50%において治療上有効な用量)およびLD50(集団の50%に対して致死的な用量)を、細胞培養または実験動物における標準的な製薬手順により決定することができる。治療効果に対する毒性効果の用量比が治療指数であり、それをLD50/ED50比として表すことができる。
【0213】
大きい治療指数を示す医薬組成物が好ましい。細胞培養アッセイおよび動物試験から得られたデータを、ヒトへの使用のための様々な剤形を製剤化するのに用いる。そのような組成物中に含まれる用量は、毒性がほとんどないか、または全くないED50を含む循環濃度の範囲内にあるのが好ましい。この用量は、用いる剤形、患者の重篤度、および投与経路に依存して、この範囲内で変化する。
【0214】
正確な用量を、治療を必要とする被験体に関連する因子に照らして、医師により決定することができる。用量および投与を、十分なレベルの活性成分を提供するか、または所望の効果を維持するように調整する。考慮すべき因子としては、疾患状態の重篤度、被験体の通常の健康、被験体の年齢、体重、および性別、食事、投与の時間および頻度、薬剤の組合せ、反応感受性、ならびに治療に対する寛容/応答が挙げられる。長時間作用する医薬組成物を、特定の製剤の半減期および消失速度に依存して、3〜4日毎、毎週、または2週間に1回投与することができる。
【0215】
通常の用量は、投与経路に依存して、最大で総量約1 gで、0.1〜100,000マイクログラムの間で変化してもよい。特定の用量および送達方法に関する案内は文献中に提供されており、当業者にとっては一般的に利用可能である。当業者であれば、タンパク質またはその阻害剤よりもヌクレオチドに関する異なる製剤を用いるであろう。同様に、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの送達は特定の細胞、症状、位置などに対して特異的であろう。
【0216】
試薬が一本鎖抗体である場合、該抗体をコードするポリヌクレオチドを構築し、限定されるものではないが、トランスフェリン-ポリカチオンを介するDNA導入、裸の、もしくはカプセル封入された核酸を用いるトランスフェクション、リポソームを介する細胞融合、DNAでコーティングされたラテックスビーズの細胞内輸送、プロトプラスト融合、ウイルス感染、エレクトロポレーション、「遺伝子銃」およびDEAEもしくはリン酸カルシウムを介するトランスフェクションなどの十分に確立された技術を用いて、ex vivoまたはin vivoで細胞中に導入することができる。
【0217】
抗体の有効なin vivo用量は、患者の体重の約5μg〜約50μg/kg、約50μg〜約5 mg/kg、約100μg〜約500μg/kg、および約200〜約250μg/kgの範囲である。一本鎖抗体をコードするポリヌクレオチドの投与のために、有効なin vivo用量は、約100 ng〜約200 ng、500 ng〜約50 mg、約1μg〜約2 mg、約5μg〜約500μg、および約20μg〜約100μgのDNAの範囲である。
【0218】
発現生成物がmRNAである場合、前記試薬はアンチセンスオリゴヌクレオチドまたはリボザイムであるのが好ましい。アンチセンスオリゴヌクレオチドまたはリボザイムを発現するポリヌクレオチドを、上記のような様々な方法により細胞中に導入することができる。
【0219】
好ましくは、試薬は、該試薬の非存在下と比較して、少なくとも約10、好ましくは約50、より好ましくは約75、90、または100%、レポーター遺伝子の発現またはレポーター遺伝子の活性を減少させる。レポーター遺伝子の発現またはレポーター遺伝子の活性のレベルを低下させるために選択された機構の有効性を、レポーター遺伝子に特異的なmRNAへのヌクレオチドプローブのハイブリダイゼーション、定量的RT-PCR、発現されたレポーター遺伝子の免疫学的検出、または発現されたレポーター遺伝子からの活性の測定などの、当業界で公知の方法を用いて評価することができる。
【0220】
上記の実施形態のいずれかにおいては、本発明の医薬組成物のいずれかを他の好適な治療剤と組合わせて投与することができる。組合せ治療における使用のための好適な薬剤の選択を、従来の製薬原理に従って、当業者により行うことができる。治療剤の組合せは相乗的に作用して、上記の種々の障害の治療または予防を行うことができる。この手法を用いれば、より低い用量のそれぞれの薬剤を用いて治療効力を達成し、かくして有害な副作用の可能性を低減させることができる。
【0221】
上記の治療方法のいずれかを、例えば、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ウサギ、サル、および最も好ましくは、ヒトなどの哺乳動物を含む、そのような治療を必要とする任意の被験体に適用することができる。
【0222】
治療上有効量の投与
翻訳に影響を及ぼす試薬を、in vitroまたはin vivoでヒト細胞に投与して、特定の遺伝子の翻訳活性を特異的に低下させることができる。好ましい実施形態においては、この試薬は遺伝子の5'UTRに結合するのが好ましい。本発明の代替的な実施形態においては、この試薬は本発明のPTCREまたはNeRPに結合するのが好ましい。好ましい実施形態においては、試薬は化合物である。ex vivoでのヒト細胞の治療のために、抗体を、体内から取り出した幹細胞の調製物に添加することができる。次いで、この細胞を、当業界で公知のように、クローン的増殖を用いて、または用いずに、同じか、または別のヒト体内に入れることができる。
【0223】
一実施形態においては、前記試薬をリポソームを用いて送達する。好ましくは、リポソームは、少なくとも約30分間、より好ましくは少なくとも約1時間、およびさらにより好ましくは少なくとも約24時間投与した動物内で安定である。リポソームは、ヒトなどの動物中の特定の部位に対して、試薬、特にポリヌクレオチドを標的化することができる脂質組成物を含む。好ましくは、リポソームの脂質組成物は、肺、肝臓、脾臓、心臓、脳、リンパ節、および皮膚などの動物の特定の器官を標的化することができる。
【0224】
本発明において有用なリポソームは、標的化された細胞の原形質膜と融合して、その内容物を細胞に送達することができる脂質組成物を含む。好ましくは、リポソームのトランスフェクション効率は、約106個の細胞に送達されるリポソーム16 nmoleあたり約0.5μgのDNA、より好ましくは、約106個の細胞に送達されるリポソーム16 nmoleあたり約1.0μgのDNA、およびさらにより好ましくは約106個の細胞に送達されるリポソーム16 nmoleあたり約2.0μgのDNAである。好ましくは、リポソームは、直径約100〜500 nm、より好ましくは約150〜450 nm、およびさらにより好ましくは約200〜400 nmである。
【0225】
本発明における使用のための好適なリポソームとしては、例えば、当業者には公知の遺伝子送達方法において標準的に用いられるリポソームが挙げられる。より好ましいリポソームとしては、ポリカチオン性脂質組成物を有するリポソームおよび/またはポリエチレングリコールにコンジュゲートされたコレステロール骨格を有するリポソームが挙げられる。必要に応じて、リポソームは、該リポソームの外側表面上に露出した細胞特異的リガンドなどの、特定の細胞型に対して該リポソームを標的化することができる化合物を含む。
【0226】
リポソームと、アンチセンスオリゴヌクレオチドまたはリボザイムなどの試薬との複合体化を、当業界で標準的である方法を用いて達成することができる(例えば、米国特許第5,705,151号を参照)。好ましくは、約0.1〜約10μgのポリヌクレオチドを、約8 nmolのリポソームと混合し、より好ましくは約0.5〜約5μgのポリヌクレオチドを約8 nmolのリポソームと混合し、およびさらにより好ましくは約1.0μgのポリヌクレオチドを約8 nmolのリポソームと混合する。
【0227】
別の実施形態においては、抗体を、受容体を介する標的化された送達を用いて、in vivoで特定の組織に送達することができる。受容体を介するDNA送達技術は、例えば、Findeisら、Trends in Biotechnol. 11, 202-05 (1993); Chiouら、Gene Therapeutics: Methods And Applications Of Direct Gene Transfer (J. A. Wolff(編)) (1994); Wu & Wu, J. Biol. Chem. 263, 621-24 (1988); Wuら、J. Biol. Chem. 269, 542-46 (1994); Zenkeら、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 87, 3655-59 (1990); Wuら、J. Biol. Chem. 266, 338-42 (1991)中に教示されている。
【0228】
診断方法
本発明の薬剤を、本発明のPTCREもしくはNeRPをコードする核酸配列中の突然変異の存在に関連する疾患および異常または疾患および異常に対する罹りやすさを検出するための診断アッセイにおいて用いることもできる。例えば、疾患に罹患した個体および正常な個体における、PTCREもしくはNeRPをコードするcDNAまたはゲノム配列の間の差異を決定することができる。突然変異が、正常な個体ではなく、罹患した個体のいくらか、または全てにおいて観察される場合、この突然変異は疾患の原因となる薬剤である可能性がある。
【0229】
例えば、直接的DNA配列決定法は、参照遺伝子と突然変異を有する遺伝子の間の配列の差異を示すことができる。さらに、クローン化されたDNA断片をプローブとして用いて、特定のDNA断片を検出することができる。この方法の感度は、PCRと組合わせた場合に大きく増強される。例えば、配列決定用プライマーを、改変されたPCRにより作製された二本鎖PCR産物または一本鎖鋳型分子と共に用いることができる。配列決定を、放射標識されたヌクレオチドを用いる従来の手順によるか、または蛍光タグを用いる自動化配列決定手順により行う。
【0230】
さらに、例えば、DNA配列の差異に基づく遺伝子試験を、変性剤を用いて、または用いずに、ゲル中のDNA断片の電気泳動移動度における変化の検出により行うことができる。小さい配列の欠失および挿入を、例えば、高解像度ゲル電気泳動により可視化することができる。異なる配列のDNA断片を、異なるDNA断片の移動がその特異的な融点または部分的融点温度に従って異なる位置でゲル中で遅延する変性ホルムアミド勾配ゲル上で識別することができる(例えば、Myersら、Science 230, 1242, 1985を参照)。特定の位置での配列の変化を、RNaseおよびS1保護などのヌクレアーゼ保護アッセイまたは化学的切断方法(例えば、Cottonら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85, 4397-4401, 1985)により明らかにすることもできる。かくして、特異的DNA配列の検出を、ハイブリダイゼーション、RNase保護、化学的切断、直接的DNA配列決定または制限酵素の使用およびゲノムDNAのサザンブロッティングなどの方法により実施することができる。ゲル電気泳動およびDNA配列決定などの直接的方法に加えて、in situ分析により突然変異を検出することもできる。
【0231】
本発明のPTCREまたはNeRPのレベルの変化を様々な組織において検出することもできる。例えば、PTCREまたはNeRPを有する1個以上の遺伝子を、サザンハイブリダイゼーション、ノーザンハイブリダイゼーション、およびPCRなどの特定の核酸配列のレベルを検出するのに用いられるアッセイにより検出することができる。あるいは、PTCREもしくはNeRPにより調節されるレポーターポリペプチドまたはPTCREもしくはNeRPを有する遺伝子によりコードされるポリペプチドのレベルを検出するためのアッセイを用いることができる。そのようなアッセイは当業者には公知であり、例えば、ラジオイムノアッセイ、競合的結合アッセイ、ウェスタンブロット分析、およびELISAアッセイが挙げられる。宿主から誘導された血液または組織生検などの、被験体から得たサンプルは、これらのアッセイを行う材料であってよい。
【0232】
本発明を一般的に説明してきたが、例示を用いて提供され、特に指摘しない限り、本発明を限定することを意図するものではない以下の実施例を参照すれば、同じことをより容易に理解することができる。
【0233】
本明細書で引用される各定期刊行物、特許、および他の論文または参考文献はその全体が参照により本明細書に組み入れられるものとする。
【実施例】
【0234】
実施例1. 転写後的にVEGF発現を特異的に阻害する化合物の同定
モノシストロン性受容体構築物(pLuc/vegf5'+3'UTR)はCMVプロモーターの転写制御下にあり、ルシフェラーゼレポーターを駆動するVEGF IRESを含み、その核酸配列は両方ともVEGFの3'-UTRの上流にある。pLuc/vegf5'+3'UTRを用いて293細胞をトランスフェクトすることにより、安定な細胞系を作製する。安定な細胞系を、ハイグロマイシンB選択下で培養して、当業界で公知のプロトコルと一致するクローン細胞系を作製する。選択の2週間後、クローン細胞系をルシフェラーゼ活性についてスクリーニングする。いくつかのクローン細胞系(以後「クローン」と呼ぶ)のルシフェラーゼ活性を比較し、総タンパク質含量に対して正規化する。クローンを、ルシフェラーゼ活性を周期的にモニターしながら、3ヶ月以上ハイグロマイシンB選択下で維持する。クローンは安定であり、高レベルのルシフェラーゼ発現を維持する。多くのクローン、例えば、約20個のクローンを、ルシフェラーゼ活性に関して互いに比較することができる。クローンB9、D3およびH6と比較して、クローンB9は高レベルのルシフェラーゼ活性を示す。さらに、半定量的PCR分析を行えば、その結果は細胞1個あたり複数コピーのレポーターが組込まれることを示す。転写後の高効率スクリーニング(PTHTS)における使用のための選択の前に、クローンに関する特定のパラメーターを試験する。PTHTSに関する関連パラメーターとしては、限定されるものではないが、細胞数、インキュベーション時間、DMSO濃度、および基質容量が挙げられる。
【0235】
過剰の150,000個の化合物の化合物ライブラリーを、モノシストロン性レポーター構築物、pLuc/vegf5'+3'UTRを含むクローンを用いるPTHTSによりスクリーニングする。スクリーニングを、7.5μMの単一の濃度の各分子について2回行う。Bright-Glow(Promega Co., Madison, WI)を基質として用いて、ホタルルシフェラーゼ活性を測定する。活性化合物を、2回のスクリーニングの平均阻害%を報告した後、満足のいく再生産性を提供しなかった化合物を拒絶することにより同定する。満足のいく再生産性を提供する化合物の平均阻害%は、2回のスクリーニングにおいて約10%、約25%または約35%の範囲内である。データを、図式ならびに歪度および尖度の統計的分析から明らかである正規分布として分析する。次いで、ヒットを、通常、平均、または約50%に等しい観察された阻害のヒットの低い方の限界からの3標準偏差の選択を表す、約99%の信頼レベルで報告する。これらの選択基準は約1%のヒット率をもたらす。
【0236】
クローンB9を用いるスクリーニングによるPTHTS-スクリーニング段階を介して同定される特定の化合物は低酸素誘導性内因性VEGF発現をモジュレートする。内因性VEGFタンパク質レベルを、ELISAアッセイ(R&D Systems, Minneapolis, MN)によりモニターする。HeLa細胞を用いて、低酸素誘導性発現を評価する。HeLa細胞は酸素正常状態と比較して約3〜5倍の低酸素誘導性ウィンドウを示す(酸素正常状態下での約200〜約400 pg/mlと比較して、低酸素下での約1000〜約1500 pg/ml)。細胞を、化合物の存在下または非存在下で、低酸素状態下(約1% O2、約5% CO2、および窒素で平衡化)で一晩培養する。馴らし培地をELISAによりアッセイする。VEGFの濃度を、各アッセイの標準ELISA曲線から算出する。アッセイを、約7μMの化合物濃度で2回行う。化合物の約50%阻害の閾値を、さらなる調査のための基準として選択する。約100〜約150個の化合物のさらなる評価を、約700〜約800の最初のPTHTSヒットから行う。同定された化合物の活性を、上記の実験を反復することにより確認する。次いで、同定された化合物を乾燥粉末として獲得し、さらに分析する。同定された化合物の純度および分子量をLC-MSにより確認する。
【0237】
用量応答分析を、ELISAアッセイを用いて、および本質的には上記のような条件を用いて行う。一連の7つの異なる濃度を分析する。平行して、用量応答細胞毒性アッセイをELISAと同じ条件下で行って、VEGF発現の阻害がCellTiter-Glo(登録商標)(Promega, Inc., Madison, WI)により測定される細胞毒性に起因するものではないことを確実にする。用量応答曲線を、阻害率対化合物濃度を用いてプロットする。
【0238】
各化合物について、最大となる阻害を100%と設定し、最小となる阻害を0%と設定して、EC50およびCC50値を作成する。PTHTSに由来する化合物は、y軸上のVEGF発現の阻害%に対してプロットした場合、約10-1nM〜約104nMの化合物濃度範囲に対するS字型曲線を示す(図2を参照)。PTHTSに由来する同じ化合物は、細胞毒性%に対してプロットされた同じ化合物濃度範囲に対する凸型曲線を示す。この特定の化合物のELISA EC50(VEGF発現の50%阻害)は約7 nMであるが、そのCC50(50%細胞毒性)は約2000 nMを超える。同様の効力/細胞毒性ウィンドウを示す化合物のサブセットも同定する。
【0239】
B9細胞系は、CMVプロモーターにより駆動され、VEGF転写物の5'および3'-UTRに隣接するホタルルシフェラーゼレポーターを担持する。PTHTSと共にB9細胞系を使用することにより、発現をモジュレートするVEGF UTRの機能を特異的に標的化する化合物が同定される。細胞系B12は、機能し得る形で連結されたVEGF UTRの非存在下でルシフェラーゼレポーターを担持する。B9およびB12細胞系の両方においてルシフェラーゼ活性を阻害する化合物は、一般的な転写阻害剤もしくは一般的な翻訳阻害剤またはルシフェラーゼ酵素阻害剤である。いくつかのUTR特異的化合物を、上記のようにPTHTSにより同定された化合物を用いる実験において同定する。同定された化合物の用量応答曲線は、それぞれのルシフェラーゼ阻害%を、x軸上で約10-1nM〜約104nMの化合物濃度範囲上でプロットする場合、B9細胞においては凹型曲線およびB12細胞においてはS字型曲線を示す(図3を参照)。2つの細胞系(B9およびB12)の間の差異は、この化合物によるVEGF産生の阻害は、VEGF UTRを介する、すなわち、転写後制御機構によることを示す。制御実験を、一般的な翻訳阻害剤、ピューロマイシンを用いて行う。ピューロマイシン処理は、これらの2つの細胞系中でのルシフェラーゼ発現における阻害の差異を変化させない。
【0240】
実施例2. UTR特異的VEGF阻害剤の特性
同定された化合物を全て再合成し、LC/MSおよび燃焼分析により95%を超える純度であることを示す。続いて、再合成された化合物を、UTR特異性を最初に評価するのに用いられる用量応答VEGF ELISAおよびルシフェラーゼアッセイにおいて試験する。同定された化合物は全てUTR特異性を保持し、真正にVEGF発現の阻害剤である。
【0241】
B9細胞を用いるPTHTSにより、目の新血管疾患の治療のために低酸素誘導性VEGF発現を特異的に阻害する化合物を同定した。癌の治療のために複数の血管新生因子(VEGFなど)を標的化する化合物も同定可能である。TNF-α、FGF-2、G-CSF、IGF-1、PDGF、およびHIF-1αなどのいくつかの標的を、これらの目的のために用いる。
【0242】
ELISAアッセイは、R&D Systems (Minneapolis, MN)からの市販のキットを用いて、これらの因子の発現レベルを分析するものである。UTRに特異的なPTHTSにより同定された化合物を、G-CSF、TNFα、FGF-2、およびIGF-1などの、これらのタンパク質のサブセットの発現を阻害するその能力について試験する。HeLa細胞においてアッセイされたようにVEGF産生の非常に強力な阻害剤である同定された化合物は、低いnMから高いnMの範囲のEC50値を有する。一般的な翻訳阻害剤(ピューロマイシン)を用いる治療は、約0.2〜約2μMの範囲のEC50値で、これらのサイトカイン全てについて類似する阻害をもたらす。
【0243】
リード化合物をさらに特性評価し、最適化する。類似体を合成し、同定された化合物はVEGF ELISAアッセイにおいて優れた効力を示す(0.5 nM〜50 nMの範囲のEC50値)。別の実施形態においては、類似体は低いnMの効力を示す。さらなる実施形態においては、いくつかの類似体を合成し、同定された化合物のサブセットはVEGF ELISAアッセイにおいて非常に活性である(1〜50 nMの範囲のEC50値)。非常に強力な類似体の活性は、その親と比較して約500倍改善される(1 nM対500 nMのEC50)。多くの活性化合物の選択性および薬剤特性(ADMET)に関するさらなる特性評価および最適化により、臨床試験のための薬剤候補を開発することができる。
【0244】
実施例3. 同定された化合物は網膜色素上皮細胞およびマクロファージ細胞における低酸素誘導性VEGF産生の阻害剤として活性である
PTHTSにより同定された化合物は、目の新血管障害の治療のためのVEGF特異的阻害剤である。網膜色素上皮細胞およびマクロファージ細胞に対する同定された化合物の効果を、2つの細胞系:ヒト網膜色素上皮細胞系ARPE-19、およびマウスマクロファージ細胞系RAW264中で試験する。両細胞系は低酸素条件下で高レベルのVEGFを産生する。同定された化合物のサブセットは、これらの2つの細胞系において活性である。化合物1は、マクロファージ(その非限定例はRAW264.7である)および網膜色素上皮細胞(その非限定例はARPE-19である)の両方におけるVEGF産生を阻害する。選択性試験においては、表2に示されるように、化合物1は他の因子(FGF-2、IGF-1、GCSF、TNFα)の発現と比較して、VEGF発現を特異的に阻害する。
【表2】

【0245】
実施例4. 同定された化合物はin vivoでのVEGF発現および腫瘍増殖の阻害において活性である
薬力学的モデルは、腫瘍内VEGFレベルを評価し、in vivoでの効力について化合物を選択するものである。予備データは、本発明者らの化合物のいくつかが腫瘍組織におけるVEGF産生を効率的に阻害することを示している(図4Aを参照)。簡単に述べると、HT1080細胞(ヒト線維肉腫細胞系)をヌードマウスに皮下移植する。7日後、マウスに2週間、20 mg/kg/日で経口的に化合物を投与する。次いで、腫瘍をマウスから切り出し、プロテイナーゼ阻害剤を含むTris-HClバッファー中でホモジナイズする(Moulder, S.L.ら、Cancer Res. 61(24): 8887-95, 2001)。続いて、ヒトVEGF ELISAキット(R&D System, Minneapolis, MN)を用いて腫瘍内VEGFレベルを測定する。ホモジネートのタンパク質濃度を、Bio-Rad (商標)タンパク質アッセイキットを用いて測定し、腫瘍内VEGFレベルをタンパク質濃度に対して正規化する。同定された化合物を用いる治療は、ビヒクル対照と比較して腫瘍内VEGFタンパク質レベルを有意に低下させる。さらに、2週間の同定された化合物を用いる治療は、ビヒクルにより治療された対照群と比較して腫瘍増殖を阻害する(図4B)。
【0246】
実施例5. 5'VEGF UTR中の機能的ドメインのマッピング
VEGF-5UTR1および5UTR2をヒトゲノムDNAから増幅する。完全長5'UTRを、2つの断片の連結により作製する(図5を参照)。P2luc/VEGF5UTR-FLを、完全長5'UTRをジシストロン性プラスミド(p2luc)中のSalIおよびSmalI部位間に挿入することにより作製する。他のベクターを、関連する配列を欠失させることによりp2luc/VEGF5UTR-FLから誘導する。これらのプラスミドの全てを、一過性トランスフェクションにより293細胞中で試験する。図6は、VEGF5'UTR断片の各々に関する、相対的なホタルルシフェラーゼ活性(ウミシイタケルシフェラーゼに対して正規化)を示す。同様の結果が、そのような実験を反復することから得られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レポーターポリペプチドをコードする核酸配列を含む核酸構築物であって、レポーターポリペプチドをコードする該核酸配列はNeRPに機能し得る形で連結され、該NeRPはPTCREに機能し得る形で連結され、該PTCREは配列番号3ではなく、および該レポーターポリペプチドの発現を、該NeRPの非存在下の場合と比較してモジュレートすることができる、前記核酸構築物。
【請求項2】
NeRP1(配列番号4)がレポーターポリペプチドをコードする前記核酸配列内に位置する、請求項1に記載の核酸構築物。
【請求項3】
NeRP1(配列番号4)がレポーターポリペプチドをコードする前記核酸配列の下流に位置する、請求項1に記載の核酸構築物。
【請求項4】
NeRP1(配列番号4)がイントロン内に位置し、該イントロンがレポーターポリペプチドをコードする前記核酸配列内に位置する、請求項1に記載の核酸構築物。
【請求項5】
配列番号4の非存在下でレポーターポリペプチドをコードする核酸配列およびVEGFの5'UTR核酸配列を含む核酸分子。
【請求項6】
配列番号4の非存在下での前記VEGFの5'UTRが内部リボソーム進入部位(「IRES」)を含む、請求項5に記載の核酸分子。
【請求項7】
ゲノム中に無作為に組込むことができる高レベルの哺乳動物発現ベクターをさらに含む、請求項5に記載の核酸分子。
【請求項8】
ゲノム中に部位選択的に組込むことができる高レベルの哺乳動物発現ベクターをさらに含む、請求項5に記載の核酸分子。
【請求項9】
エピゾーム哺乳動物発現ベクターをさらに含む、請求項5に記載の核酸分子。
【請求項10】
レポーターポリペプチドをコードする前記核酸配列がイントロンを含む、請求項5に記載の核酸分子。
【請求項11】
配列番号4の非存在下での前記VEGFの5'UTRがイントロンを含む、請求項5に記載の核酸分子。
【請求項12】
配列番号4の非存在下でVEGFの5'UTRに機能し得る形で連結されたレポーターポリペプチドをコードする核酸配列を含む核酸分子。
【請求項13】
レポーターポリペプチドをコードする前記核酸配列がイントロンを含む、請求項12に記載の核酸分子。
【請求項14】
レポーターポリペプチドをコードする核酸配列を含む核酸分子であって、レポーターポリペプチドをコードする前記核酸配列がNeRPを含むUTRの下流に機能し得る形で連結され、該UTRが機能し得る形で配列番号3の上流にない、前記核酸分子。
【請求項15】
核酸分子の異種性集団であって、該異種性集団がレポーター核酸配列を含み、レポーターポリペプチドをコードする該核酸配列がNeRP1(配列番号4)の非存在下でVEGFの5'UTRに機能し得る形で連結される、前記異種性集団。
【請求項16】
前記異種性集団が安定な細胞系から単離される、請求項15に記載の核酸分子の異種性集団。
【請求項17】
前記集団をin vitroで産生させる、請求項15に記載の核酸分子の異種性集団。
【請求項18】
前記集団を用いてポリペプチドを産生させる、請求項15に記載の核酸分子の異種性集団。
【請求項19】
前記異種性集団を、5'キャップを有する分子を除外するように選択する、請求項15に記載の核酸分子の異種性集団。
【請求項20】
前記異種性集団がポリアデニル化されている、請求項15に記載の核酸分子の異種性集団。
【請求項21】
前記異種性集団がポリアデニル化されていない、請求項15に記載の核酸分子の異種性集団。
【請求項22】
配列番号3の核酸分子、その断片、またはいずれかの相補体と95〜99%の配列同一性を有する実質的に精製された核酸分子。
【請求項23】
配列番号3、その断片、またはいずれかの相補体からなる実質的に精製された核酸分子。
【請求項24】
ポリペプチドをコードする異種性核酸配列に連結された第1の核酸配列からなる実質的に精製された核酸分子であって、該第1の核酸配列が配列番号3、その断片、およびいずれかの相補体からなる群より選択される、前記核酸分子。
【請求項25】
配列番号4の核酸分子、その断片、またはいずれかの相補体と95〜99%の配列同一性を有する実質的に精製された核酸分子。
【請求項26】
配列番号4、その断片、およびいずれかの相補体からなる群より選択される核酸配列の実質的に精製された核酸分子。
【請求項27】
ポリペプチドをコードする異種性核酸配列に連結された第1の核酸配列からなる実質的に精製された核酸分子であって、該第1の核酸配列が配列番号4、その断片、およびいずれかの相補体からなる群より選択される、前期核酸分子。
【請求項28】
化合物をスクリーニングするための核酸構築物の作製方法であって、
a) 該核酸構築物中のプロモーターの下流に主要なORFを提供すること;
b) 該主要なORFの上流に配列番号4の非存在下でのVEGFの5'UTRを機能し得る形で連結すること;および
c) 該主要なORFの下流にVEGFの3'UTRを機能し得る形で連結すること、
を含む、前記方法。
【請求項29】
前記主要なORFはレポーターポリペプチドをコードする、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
UTR依存的発現をモジュレートする化合物をin vivoでスクリーニングする方法であって、
a) 配列番号4の非存在下でのVEGFの5'UTRから上流にプロモーターを含み、配列番号4の非存在下での該VEGFの5'UTRがレポーターポリペプチドをコードする核酸配列から上流にあり、レポーターポリペプチドをコードする該核酸配列がVEGFの3'UTRから上流にある、核酸分子を有する細胞を提供すること;
b) 該細胞を化合物と接触させること;
c) レポーターポリペプチドをコードする核酸配列を含み、配列番号4を含まない核酸分子を産生させること;および
d) 該レポーターポリペプチドを検出すること、
を含む、前記方法。
【請求項31】
レポーターポリペプチドをコードする前記核酸配列がVEGFである、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
UTRに影響される発現をモジュレートする化合物をin vitroでスクリーニングする方法であって、
a) in vitro翻訳系を提供すること;
b) 該in vitro翻訳系を、化合物および配列番号4の非存在下でのVEGFの5'UTRを含む核酸分子と接触させ、ここで配列番号4の非存在下での該VEGFの5'UTRがレポーターポリペプチドをコードする核酸配列から上流にあり、レポーターポリペプチドをコードする該核酸配列がVEGFの3'UTRから上流にあり;ならびに
c) in vitroで該レポーターポリペプチドを検出すること、
を含む、前記方法。
【請求項33】
細胞中で核酸分子を発現させる方法であって、
a) 配列番号4の非存在下でのVEGFのUTRに隣接するレポーターポリペプチドをコードする核酸配列を含む核酸分子を細胞に提供すること;および
b) 該レポーターポリペプチドを検出すること、
を含む、前記方法。
【請求項34】
前記核酸分子をin vitro転写により産生させる、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記核酸分子が合成的に産生されたRNA分子である、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
主要なORFに非依存的な、UTRに影響される機構を介してタンパク質発現をモジュレートする化合物をスクリーニングする方法であって、
a) 配列番号4の非存在下でのVEGFの5'UTRに機能し得る形で連結されたレポーター遺伝子を有する安定な細胞系を増殖させること;
b) 化合物の存在下での該安定な細胞系を、該化合物の非存在下での該安定な細胞系と比較すること;および
c) 主要なORFに非依存的な、UTRに影響される機構を介してタンパク質発現をモジュレートする該化合物を選択すること、
を含む、前記方法。
【請求項37】
主要なORFに非依存的な、UTRに影響される機構を介してタンパク質発現をモジュレートする化合物をスクリーニングする方法であって、
a) 配列番号4の非存在下でのVEGFの5'UTRに機能し得る形で連結された主要なORFを有する安定な細胞系を増殖させること;
b) 化合物の存在下での該安定な細胞系を、該化合物の非存在下での該安定な細胞系と比較すること;および
c) 主要なORFに非依存的な、UTRに影響される機構を介してタンパク質発現をモジュレートする該化合物を選択すること、
を含む、前記方法。
【請求項38】
VEGFに非依存的な、UTRに影響される機構を介してタンパク質発現をモジュレートする化合物をスクリーニングする方法であって、
a) in vivoでVEGF遺伝子をレポーター遺伝子と置換し、ここで配列番号3からなるUTRが該レポーター遺伝子に機能し得る形で連結され、該置換が分化した細胞中で起こり;
b) 該分化した細胞を増殖させること;および
c) 主要なORFに非依存的な、UTRに影響される機構を介して該レポーター遺伝子のタンパク質発現をモジュレートする該化合物を選択すること、
を含む、前記方法。
【請求項39】
主要なORFに非依存的な、UTRに影響される機構を介してタンパク質発現をモジュレートする化合物をスクリーニングする方法であって、
a) in vivoで主要なORFをレポーター遺伝子と置換し、ここで配列番号3からなる5'UTRは該レポーター遺伝子に機能し得る形で連結され、および該置換が分化した細胞中で起こり;
b) 該分化した細胞を増殖させること;ならびに
c) 主要なORFに非依存的な、UTRに影響される機構を介して該レポーター遺伝子のタンパク質発現をモジュレートする該化合物を選択すること、
を含む、前記方法。
【請求項40】
UTRに影響される機構を介してタンパク質発現をモジュレートする化合物をスクリーニングする方法であって、
a) 配列番号4の非存在下でのVEGFの5'UTRに機能し得る形で連結されたレポーター遺伝子を有する安定な細胞系を提供し、ここで該安定な細胞系は該化合物の存在下でin vivoで認められるVEGF遺伝子の転写後調節を模倣し;
b) 該安定な細胞系を維持すること;および
c) UTRに影響される機構を介して該レポーター遺伝子のタンパク質発現をモジュレートする該化合物を選択すること、
を含む、前記方法。
【請求項41】
前記安定な細胞系が形質転換された細胞である、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
UTRに影響される機構を介してタンパク質発現をモジュレートする化合物をスクリーニングする方法であって、
a) 配列番号4の非存在下でのVEGFの5'UTRに機能し得る形で連結されたレポーターポリペプチドをコードする主要なORFを有する安定な細胞系を提供し、ここで、該安定な細胞系は化合物の存在下でin vivoで認められるVEGF遺伝子の転写後調節を模倣し;
b) 該安定な細胞系を維持すること;および
c) UTRに影響される機構を介して該主要なORFのタンパク質発現をモジュレートする該化合物を選択すること、
を含む、前記方法。
【請求項43】
NeRPの効果を媒介するUTRに影響される機構を介してタンパク質発現をモジュレートする化合物をスクリーニングする方法であって、
a) NeRP1(配列番号4)の非存在下での5'VEGF UTRに機能し得る形で連結されたレポーター遺伝子を有する安定な細胞系を増殖させること;
b) 化合物の存在下での該安定な細胞系を、該化合物の非存在下での場合と比較し、ここで、該化合物はNeRP1(配列番号4)の非存在下での該5'VEGF UTRがレポーター遺伝子に機能し得る形で連結される場合、UTR依存的発現をモジュレートせず;および
c) NeRPの効果を媒介するUTRに影響される機構を介して該レポーター遺伝子のタンパク質発現をモジュレートする該化合物を選択すること、
を含む、前記方法。
【請求項44】
前記化合物を選択する前記c)が、化合物の存在下での前記安定な細胞系を、該化合物の非存在下での場合と比較することを含み、ここで、該化合物は、前記レポーター遺伝子が前記5'VEGF UTRに機能し得る形で連結される場合、UTR依存的発現をモジュレートする、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
NeRPの効果を媒介するUTRに影響される機構を介してタンパク質発現をモジュレートする化合物をスクリーニングする方法であって、
a) NeRP1(配列番号4)の非存在下での5'VEGF UTRに機能し得る形で連結されたレポーターポリペプチドをコードする主要なORFを有する安定な細胞系を増殖させること;
b) 化合物の存在下での該安定な細胞系を、該化合物の非存在下での場合と比較し、該化合物は、NeRP1(配列番号4)の非存在下での該5'VEGF UTRが主要なORFに機能し得る形で連結される場合、UTR依存的発現をモジュレートせず;および
c) NeRPの効果を媒介するUTRに影響される機構を介して該主要なORFのタンパク質発現をモジュレートする該化合物を選択すること、
を含む、前記方法。
【請求項46】
NeRPの効果を媒介するUTRに影響される機構を介してタンパク質発現をモジュレートする化合物をスクリーニングする方法であって、
a) NeRP1(配列番号4)を有するUTRに機能し得る形で連結されたレポーター遺伝子を有する安定な細胞系を増殖させること;
b) 化合物の存在下での該安定な細胞系を、該化合物の非存在下での場合と比較し、ここで、該化合物は、NeRP1(配列番号4)がレポーター遺伝子に機能し得る形で連結される場合、UTR依存的発現をモジュレートし;および
c) NeRPの効果を媒介するUTRに影響される機構を介して該レポーター遺伝子のタンパク質発現をモジュレートする該化合物を選択すること、
を含む、前記方法。
【請求項47】
NeRPの効果を媒介するUTRに影響される機構を介してタンパク質発現をモジュレートする化合物をスクリーニングする方法であって、
a) NeRP1(配列番号4)を有するUTRに機能し得る形で連結されたレポーターポリペプチドをコードする主要なORFを有する安定な細胞系を増殖させること;
b) 化合物の存在下での該安定な細胞系を、該化合物の非存在下での場合と比較し、ここで、該化合物は、NeRP1(配列番号4)がレポーターポリペプチドをコードする主要なORFに機能し得る形で連結される場合、UTR依存的発現をモジュレートし;および
c) 該NeRPの効果を媒介するUTRに影響される機構を介してレポーターポリペプチドをコードする該主要なORFのタンパク質発現をモジュレートする該化合物を選択すること、
を含む、前記方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4A】
image rotate

【図4B】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2011−41579(P2011−41579A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−257929(P2010−257929)
【出願日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【分割の表示】特願2007−515026(P2007−515026)の分割
【原出願日】平成16年6月28日(2004.6.28)
【出願人】(503369705)ピーティーシー セラピューティクス,インコーポレーテッド (31)
【Fターム(参考)】