説明

VEGFxxxbの新規な使用

本発明は、生体内又は試験管内において、微小血管透過性亢進疾患を治療又は予防するか、VEGFxxxアイソフォームの血管新生透過性亢進性を調節するか、血管透過性の増加に依存することなく上皮細胞生存を維持するか、上皮濾過膜の開窓性(例えば、数密度及び/又は大きさ)を減少させるために使用される、VEGFxxxb、被投与者の細胞又は試験管内においてVEGFxxxに優先してVEGFxxxbの発現を選択的に促進する薬剤又はVEGFxxxbを宿主生物内において発現させる発現ベクター系を提供する。また、上皮細胞生存を維持するために使用されるVEGFxxxb、被投与者の細胞内又は試験管内においてVEGFxxxに優先してVEGFxxxbの発現を選択的に促進する物質、宿主生物内においてVEGFxxxbを発現させる発現ベクター系を提供する。VEGFxxxbは、好ましくはVEGF165bである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微小血管透過性亢進疾患、VEGFxxxアイソフォームの血管新生促進・透過性促進性調節疾患、透過性増加に依存しない上皮細胞生存疾患及び上皮濾過膜の開窓性(例えば、数密度及び/又は大きさ)疾患に対するVEGFxxxbの使用に関する。
【0002】
また、本発明は、VEGF−A遺伝子の選択的スプライシングによって、微小血管透過性亢進疾患、VEGFxxxアイソフォームの血管新生促進・透過性促進性調節疾患、上皮細胞生存及び透過性疾患及び上皮濾過膜の開窓性(例えば、数密度及び/又は大きさ)疾患に罹患しているか、罹患するリスクのある患者によるVEGFxxxbの内因性発現を促進する薬剤の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
以下に言及する先行技術文献は、本願及び本願に対応する特許に適用される法律によって規定される範囲において本願明細書に援用する。
【0004】
血管内皮細胞増殖因子A(vascular endothelial growth factor(VEGF)−A)は、内皮細胞の遊走、増殖、分化及び再生を引き起こす強力な血管新生因子である[1]。胎芽から成人の腎臓では、VEGF−Aは推定及び成熟糸球体上皮細胞(足細胞)及び尿細管上皮細胞に発現する[2〜7]。
【0005】
通常、糸球体形成には、上皮分化、内皮細胞浸潤並びに尿細管及び血管組織の増殖の協調誘導が必要となる。VEGFタンパク質にヒトよりも1つ少ないアミノ酸を有するマウスでは、足細胞におけるVEGF−A遺伝子の特定の過剰発現又は欠失によって糸球体機能不全が生じる[8,9]。1つの遺伝子コピーの足細胞特異的creレコンビナーゼノックアウトであっても、ネフローゼ症候群、尿毒症及び分娩後9週間における死亡が発生し、完全なノックアウトの場合には分娩後数時間で死亡した[8]。マウスでは、最も広く研究されているVEGF−AのアイソフォームであるVEGF164の糸球体過剰発現により、腎出血と共に分娩後数日間での死亡が発生する[8]。VEGF阻害研究では、生後0日目にVEGF遮断抗体で治療したマウスは糸球体の著しい異常を示し、糸球体の多くは毛細血管網を欠いていた[4]。同様に、生後1日目及び8日目にマウスの子にmFlt(1−3)IgG(可溶性VEGF受容体−1キメラタンパク質)を投与すると、内皮細胞の喪失、メサンギウム基質の蓄積及び低細胞性を含む著しい糸球体の欠陥が生じる[10]。これらの結果は、正常な糸球体の発達及び健康にはVEGF−A発現の厳格な管理が必要であることを示唆している。
【0006】
(足細胞による)VEGF−Aの発現と(糸球体内皮細胞上の)VEGF−A受容体の時間的及び空間的に密接な関連は、VEGF−Aはパラクリンループの存在によって糸球体の完全性を維持するために極めて重要な役割を果たすことを示唆しており[11]、糸球体のVEGF−A発現の調節不全はヒトの様々な腎疾患に関連があることが示されている[11]。また、VEGF−A165は、オートクリン成長因子として増殖及び分化する糸球体上皮細胞(足細胞)に作用し[9]、細胞内カルシウム濃度の変化に関連して長期生存及びアポプトーシス耐性が得られる[12]。
【0007】
VEGF−Aのアイソフォーム(アミノ酸数に応じて命名)は、単一のVEGF−A遺伝子からの完全長mRNA前駆体の8つのエクソンのディファレンシャルスプライシング(differential splicing)によって生成する[国際公開第WO03/012105号]。エクソン6及び7のディファレンシャルスプライシングによってヘパリン結合親和性が異なるアイソフォームが生成し[13]、エクソン8(末端エクソン)のディファレンシャルスプライシングによってC末端の6個のアミノ酸のみが異なる血管新生促進及び抗血管新生アイソフォームのファミリーが生成する[14]。血管新生促進VEGF−Aアイソフォーム(VEGF121、VEGF165、VEGF189(VEGFxxxと総称、xxxはコードされたアミノ酸の数を示す))は、6個のアミノ酸のオープンリーディングフレームが翻訳されるエクソン8の近位スプライス部位(エクソン8a)の選択によって形成される。抗血管新生VEGF−Aアイソフォームはエクソン8の遠位スプライス部位(エクソン8b)を使用して生成され、異なるアミノ酸配列をコードする近位(又は血管新生促進)スプライス変異体と同じ数のヌクレオチドのオープンリーディングフレームが得られる。そのため、得られるタンパク質は通常のアイソフォームと同じアミノ酸長を有し、VEGFxxxbと総称される[15]。
【0008】
ヒトの腎皮質から特定された最初の抗血管新生アイソフォームはVEGF165bである[14]。VEGF165bは、ラット、ウサギ及びマウスの生理的・病理学的血管新生モデルにおいて生体内でVEGF165及び低酸素による血管新生を阻害する[16,17]。VEGF165bは、試験管内において微小血管内皮細胞におけるMAPKを介したシグナリングを減衰及び遅延させ[18]、完全な微小血管がVEGF165bに暴露されると生体内において流体の急速かつ一過性の溢出を引き起こすが、微小血管の透水性の持続的な変化は引き起こさない[19]。そのため、VEGF165bは促進性の生理学的役割を有するように思われる。タンパク質レベルでは、VEGFxxxbは、眼球組織、結腸及び膵島等の多くの成体組織において優位なアイソフォームであるように思われる[15]。そのため、VEGFxxxbは正常な成熟糸球体の生理学的表現型(血管新生がない場合の高い透水性及び低いタンパク質透過性)を決定する役割を有する可能性がある。
【0009】
糸球体濾過障壁(GFB(glomerular filtration barrier))はユニークな多層構造体であり(41)、大きさ、形状及び電荷が異なる分子の溢出を制限する。GFBは、大きな脂質不溶性又はアニオン性分子に対して低い透過性を示し、水及び小さな水溶性物質に対して高い透過性を示す。糸球体疾患では、GFBによる分離機能が損なわれるか、失われる。そのような現象は、尿中のアルブミンによって発現する場合が最も多い。タンパク尿の糸球体疾患との関連性(重症のタンパク尿は重症の糸球体病変に関連する傾向がある)並びに一般集団においてもタンパク尿は血管疾患の主要な危険因子として現在分類されているため(8)、タンパク尿のメカニズムについては広く研究が行われている(19,34)。しかしながら、糸球体の透過選択性及び疾患におけるその喪失を決定する因子については現在も十分に理解されていない。正常な糸球体の表現型の制御メカニズムはおそらくは非常に複雑だが、a)物理的構造(例えば、足突起、スリット隔膜、関連タンパク質、窓、GBM、糖衣、足細胞下空間)及びb)物理的変化(例えば、足細胞の移動、収縮、消失)又は成長因子(例えば、VEGF−A、アンジオポイエチン−1、VEGF−C)の発現/分泌を介して障壁に寄与する細胞型の機能(すなわち、他の微小血管床における透過性に影響を及ぼす足細胞由来物質及び糸球体内皮細胞(15)及び足細胞(16)に存在する受容体)という2つの要因に依存する可能性が高い。
【0010】
足細胞由来VEGFの特異的な役割は明らかになっていないが、足細胞由来VEGFの血管新生/透過能は注目を集めている(ただし、VEGF糸球体に関する文献では、矛盾や説明不可能な観察が見られる)。例えば、
i)マウスにおける足細胞特異的VEGF164の過剰発現により、タンパク尿、崩壊腎症、尿毒症及び出生後5日間での死亡が発生するが(14)、足細胞VEGF−A糸球体の減少(ヘテロ接合体の不活性化)によっても、ネフローゼ症候群、尿毒症、2〜5週間での死亡が発生する(糸球体内皮症の場合)(14)。
ii)成熟糸球体では、足細胞特異的VEGF164の過剰発現を誘導すると、遺伝子刺激から数時間以内にタンパク尿が生じるが[Quagginの私信]、ヒトにおけるアバスチンによるVEGFの全身性阻害によってタンパク尿(49)及び腎不全(13)が生じる。
iii)抗VEGF抗体を投与すると、糖尿病性ネフロパシーの動物モデルにおいてタンパク尿が減少するが(9)、正常な動物ではタンパク尿を引き起こし(45)、非糖尿病性動物モデルにVEGFを投与すると、糸球体障害が軽減する(32)。
【0011】
VEGFを単に内皮細胞のみに作用する血管新生促進・透過性促進血管拡張因子と考える場合には、これらの研究の多くは矛盾する。
【0012】
しかし、VEGFの理解における2つの主要な変化により、VEGF生物学を根本的に再評価することになった。
【0013】
第1の変化は、2002年にペプチドの抗血管新生VEGFxxxbファミリーが特定されたことである(1)。VEGF−Aは、第6染色体上のエクソン8遺伝子からの選択的mRNAスプライシングによって得られる2つのペプチドファミリーである。ファミリーのメンバー(アミノ酸数によって命名)は大きく異なる特性を有する(22)。これらのファミリーは、6個のアミノ酸をコードする最終エクソンによってコードされた18個のヌクレオチドからなるオープンリーディングフレームを有する。エクソン8aが含まれる場合には、ペプチドの血管新生促進・透過促進ファミリー(VEGFxxx)となるエクソン8bによってエクソン8aを置換する(VEGFxxxbファミリー)ことにより、生体内における生成物の特性が影響を受け、腫瘍の増殖を阻害する抗血管新生ぺプチドが得られる(1,35,37,46,48)。エクソン6及び7の選択的スプライシングにより、ヘパリン結合特性が異なる各ファミリーの複数のアイソフォームが得られる。各ファミリーにおいて主要なメンバーは165個のアミノ酸を含む(図8を参照)。
【0014】
VEGF生物学における第2の変化は、VEGFは内皮細胞特異的ではなく、非内皮細胞の生存を高めることが判明したことである。例えば、VEGF165は神経保護作用を有し(26)、VEGF165及びVEGF165bはヒト足細胞保護性を有する(16,17)。本願明細書に記載する試験データは、VEGFxxxbファミリー(例えば、VEGF165b)がヒト足細胞保護性を有することを示している。
【0015】
発達中又は成熟した糸球体におけるVEGF−Aに関する研究のほとんどは、VEGF165又は他の血管新生促進スプライス変異体の役割について調査又は推測している。VEGF−AアイソフォームのVEGFxxx及びVEGFxxxbファミリーを識別する抗体又はプローブはなかったため、過去の研究ではVEGFxxx及びVEGFxxxbファミリーを検出する抗体(pan−VEGF抗体)を使用している。
【0016】
Schumacher et al.[20]は、健康なヒト成人の腎臓の糸球体においてVEGF165bがVEGF165よりも高い濃度で発現するが、致命的な新生児期症状であるDenys−Drash症候群において新生児期のヒト腎臓の糸球体にはVEGF165bが存在しないことを実証している。しかしながら、Denys−Drash症候群は、WT1遺伝子の突然変異によって生じる先天的な腎異常であることが知られている。そのため、微小血管透過性亢進疾患の治療におけるVEGFxxxbの有用性又は正常な腎臓の発達及び機能におけるVEGFxxxbアイソフォーム発現の役割についてはSchumacherの知見から推定することはできない。
【0017】
本発明は、微小血管透過性亢進疾患、VEGFxxxアイソフォームの血管新生促進・透過性促進性調節疾患、上皮細胞生存及び透過性疾患、特に、GFB関連腎透過性亢進疾患、特に、これらの種類のVEGF依存性疾患に対してVEGFxxxbが活性を示すという予期せぬ知見に基づいてなされたものである。
【0018】
特に、本願明細書に記載する試験管内データは、VEGF165bは生体内において抗血管新生作用を有すると共にVEGF165−誘導ヒト内皮単層透過性を減少させることを示している。ネフリンプロモーターを対照とした足細胞においてVEGF165bを過剰発現したヘテロ接合及びホモ接合形質転換マウスの生体内データは、エクソン8b含有VEGFペプチドの持続的な発現により、エクソン8a含有ペプチドを過剰発現した形質転換マウスから異なるマウス個体及び内臓表現型が得られることを示している。ホモ接合形質転換マウスは低い尿タンパク質:クレアチニン比を有し、内皮開窓密度の現象を伴う有意に低い糸球体正規化限外濾過係数(LpA/vi)を有していた。また、VEGF165bの過剰発現により、マウスにおける全VEGFの内因性発現が有意に減少した。マウスの足細胞の濾過膜の開窓数及び/又は大きさはVEGFxxxbによって有意に減少し、これは微小血管透過性の減少のメカニズムの一部であり、同様な現象は他の上皮濾過膜でも予想されることを示唆している。従って、これらのマウスモデルに関するデータは、VEGFxxxb(例えば、VEGF165b)が、生体内において、微小血管透過性亢進疾患に対する活性、VEGFxxxアイソフォームの血管新生透過性亢進性を調節するための活性、透過性の増加に依存することなく上皮細胞生存を維持するための活性又は上皮濾過膜の開窓性(例えば、数密度及び/又は大きさ)を減少させるための活性を有することを示唆するものである。
【0019】
ただし、VEGFの作用は腎臓の上皮細胞に対する作用に限定されるものではない。網膜上皮及び内皮細胞消失は、眼の病変の多くの進行時における重要な事象(イベント)である。例えば、糖尿病性網膜症(DR)は、血管閉鎖、再発性虚血及びそれに続く低酸素誘発増殖性血管新生に関連する。進行した網膜血管新生(RNV)では、硝子体出血、線維症及び網膜剥離が生じる場合がある。重症の糖尿病性網膜症は、従来の治療法にもかかわらず、先進国における労働人口の失明の最も一般的な原因である。また、加齢黄斑変性症における網膜色素上皮細胞消失により、地図状萎縮や、新生血管AMDにおいて見られる浸潤性脈絡叢血管新生が生じる場合がある。
【0020】
血管新生を阻害することにより、ヒトの眼における血管新生を予防し、低酸素による血管由来の血管内皮成長因子(VEGF)の発現及びRPE細胞に対する代謝性発作(過剰な酸化コレステロール取り込みが関与する場合がある)による脈絡膜血管新生(CNV)を介して生じるモデルにおける増殖性RNVの進行を予防することができる。VEGF阻害剤は、血管新生を阻害し、血管透過性を減少させることによって、加齢黄斑変性症における脈絡膜血管新生を治療するために有効であることが示されている。また、VEGF阻害剤は、内皮細胞死及び血管退行を引き起こすことが示されている。後者の特性は低酸素性糖尿病性眼症には望ましくないため、糖尿病性増殖性網膜症に対する治療としての利用は制限される。
【0021】
VEGF−Aの阻害スプライス変異体(VEGFxxxb)は、試験管内において血管内膜増殖、遊走、血管拡張及び管形成を刺激するVEGFの能力を妨げる。また、VEGF−A165b及びVEGF121bは、ウサギ角膜、マウス乳腺及び皮膚、ラット腸間膜、ニワトリ絨毛尿膜及び5つの異なる腫瘍モデルにおいて血管新生を阻害することが示されている。ヒト及び齧歯動物の網膜、硝子体及び虹彩における血管新生及び抗血管新生アイソフォームの存在が実証されている。また、阻害的VEGFxxxbアイソフォームは正常な硝子体で最も多く存在するが、糖尿病の硝子体で比較的ダウンレギュレートされ、血管由来の表現型に切り替わる。さらに、血管新生促進アイソフォームであるVEGF−A165は、網膜虚血において神経保護剤として機能することが示されている。従って、内因的には、眼は、正常な生理機能におけるVEGF−A165の作用に対する拮抗阻害剤であるVEGF−A165bの高濃度で含むが、十分に血管が発達し、健康な神経細胞を有するという矛盾があるように思われる。そのため、眼におけるVEGF−A165b媒介血管新生阻害は、血管退行、内皮細胞死又はニューロン損傷を引き起こさないと考えることができる。VEGF−A165bは、再血管新生(網膜の血管形成領域への既存の血管の再構成)ではなく、VEGF−A165媒介新血管形成(網膜における新たな血管の形成)を標的とする可能性がある。VEGF−A165bがヒト糸球体上皮細胞を保護するとすれば、VEGF−A165bは同様に網膜上皮及び内皮細胞を保護する可能性がある。内皮及び網膜上皮生存、新血管形成、血管再生に対するVEGF−A165bの作用の研究結果を本願明細書に記載する。
【発明の概要】
【0022】
本発明の第1の態様は、微小血管透過性亢進疾患を治療又は予防するために使用されるか、VEGFxxxアイソフォームの血管新生透過性亢進性を調節するために使用されるか、血管透過性の増加に依存することなく上皮細胞生存を維持するために使用されるか、上皮濾過膜の開窓性(例えば、数密度及び/又は大きさ)を減少させるために使用されるVEGFxxxb活性薬剤を提供する。
【0023】
本発明の第2の態様は、微小血管透過性亢進疾患を治療又は予防するか、VEGFxxxアイソフォームの血管新生透過性亢進性を調節するか、血管透過性の増加に依存することなく上皮細胞生存を維持するか、上皮濾過膜の開窓性(例えば、数密度及び/又は大きさ)を減少させるための方法であって、そのような疾患に罹患しているか、罹患しやすい被投与者に有効量のVEGFxxxb活性薬剤を投与することを含む方法を提供する。
【0024】
本発明の第3の態様は、VEGFxxxb活性薬剤の、微小血管透過性亢進疾患を治療又は予防するか、VEGFxxxアイソフォームの血管新生透過性亢進性を調節するか、血管透過性の増加に依存することなく上皮細胞生存を維持するか、上皮濾過膜の開窓性(例えば、数密度及び/又は大きさ)を減少させるための組成物(例えば、医薬組成物)の製造における使用を提供する。
【0025】
本発明の第4の態様は、生体内又は試験管内(生体外を含む)において微小血管膜の透過性を減少させるか、VEGFxxxアイソフォームの血管新生透過性亢進性を調節するか、血管透過性の増加に依存することなく上皮細胞生存を維持するか、生体内において上皮濾過膜の開窓性(例えば、数密度及び/又は大きさ)を減少させるための方法であって、前記膜に有効量のVEGFxxxb活性薬剤を接触させることを含む方法を提供する。
【0026】
本発明の第5の態様は、上皮細胞変性の増加又は上皮残存の減少によって生じる疾患を治療又は予防するために使用されるVEGFxxxb活性薬剤を提供する。前記薬剤を使用することにより、上皮細胞生存が維持されるか、上皮細胞死が防止される。
【0027】
本発明の第6の態様は、上皮細胞変性の増加又は上皮残存の減少によって生じる疾患を予防又は治療するための方法であって、そのような疾患に罹患しているか、罹患しやすい被投与者に有効量のVEGFxxxb活性薬剤を投与することを含む方法を提供する。
【0028】
本発明の第7の態様は、VEGFxxxb活性薬剤の、上皮細胞変性の増加又は上皮残存の減少によって生じる疾患を治療又は予防するための組成物(例えば、医薬組成物)の製造における使用を提供する。
【0029】
本発明の第8の態様は、上皮細胞変性の増加又は上皮残存の減少によって生じる疾患を予防又は治療するための方法であって、膜に有効量のVEGFxxxb活性薬剤を接触させることを含む方法を提供する。
【0030】
本発明の第5〜第8の態様並びに対応する同様な態様では、前記薬剤を使用することにより、上皮細胞生存が維持されるか、上皮細胞死が防止される。上皮細胞生存の維持は、上皮膜の血管透過性の増加を伴うものであってもよく、上皮膜の血管透過性の増加を伴わないものであってもよい。
【0031】
また、本発明は、VEGFxxxbの代わりに使用する、又はVEGFxxxbと共に使用する、国際公開第WO2008/110777号に開示された薬剤等の、健常者又は治療を受けていない患者に対して相対的に、又は被投与者の細胞内又は試験管内においてVEGFxxxに優先してVEGFxxxbの存在又は発現を選択的に促進する薬剤の対応する使用を含む。そのような薬剤の使用は、本発明の別の態様を構成するものである。特に、VEGF−A遺伝子のC末端エクソン8から転写されたVEGF mRNA前駆体のプロセッシング時に遠位スプライシング部位(DSS)スプライシングに有利に作用する物質が挙げられる。そのような薬剤は、必要に応じて、VEGF−A遺伝子のC末端エクソン8から転写されたVEGF mRNA前駆体のプロセッシング時に近位スプライシング部位(PSS)スプライシングを抑制又は阻害する1種以上の制御剤と共に使用することができる(国際公開第WO2008/110777号を参照)。被投与者の細胞内又は試験管内においてVEGFxxxと相対的にVEGFxxxbの発現(存在)を選択的に促進する薬剤としては、特異的抗VEGFxxx抗体等のVEGFxxxの機能を選択的に阻害する薬剤も挙げられる。
【0032】
VEGFxxxbは、完全長VEGFxxxbタンパク質又はその抗血管新生フラグメントあるいは完全長VEGFxxxbタンパク質と機能的に同等なVEGFxxxb由来又は関連タンパク質であってもよい。「VEGFxxxb」という用語は上述した意味で使用する。
【0033】
本願明細書において使用する「活性薬剤」及び「VEGFxxxb活性薬剤」という用語は、生体内又は試験管内において、健常者又は治療を受けていない患者に対して相対的に又はVEGFxxxに優先して(VEGFxxxに対して相対的に)VEGFxxxbの存在又は内因性発現を促進するVEGFxxxbタンパク質及び薬剤を含む。
【0034】
本発明の別の態様は、微小血管透過性亢進疾患、VEGFxxxアイソフォームの血管新生促進・透過性促進性調節疾患、上皮細胞生存及び透過性疾患及び/又は上皮濾過膜の開窓性(例えば、数密度及び/又は大きさ)疾患に対するリスク又は感受性について患者を検査する方法であって、前記患者から生体試料を採取し、正常な絶対VEGFxxxb濃度又は正常なVEGFxxxb:VEGFxxx比に対する前記試料中のVEGFxxxb濃度について分析することを含む方法を提供する。分析結果に応じて、本発明の第2の態様に係る方法を患者に対して適用することができる。
【0035】
本発明の別の態様は、微小血管透過性亢進疾患、VEGFxxxアイソフォームの血管新生促進・透過性促進性調節疾患、上皮細胞生存及び透過性疾患及び/又は上皮濾過膜の開窓性(例えば、数密度及び/又は大きさ)疾患に対するリスク又は感受性について患者を検査する方法であって、前記患者の遺伝子型を決定して正常な絶対VEGFxxxb濃度又は正常なVEGFxxxb:VEGFxxx比に対するVEGFxxxbの過小発現のリスクを判定することを含む方法を提供する。分析結果に応じて、本発明の第2の態様に係る方法を患者に対して適用することができる。
【0036】
本発明の別の態様は、上皮細胞生存疾患に対するリスク又は感受性について患者を検査する方法であって、前記患者から生体試料を採取し、正常な絶対VEGFxxxb濃度又は正常なVEGFxxxb:VEGFxxx比に対する前記試料中のVEGFxxxb濃度について分析することを含む方法を提供する。分析結果に応じて、本発明の第2の態様に係る方法を患者に対して適用することができる。
【0037】
本発明の別の態様は、上皮細胞生存疾患に対するリスク又は感受性について患者を検査する方法であって、前記患者の遺伝子型を決定して正常な絶対VEGFxxxb濃度又は正常なVEGFxxxb:VEGFxxx比に対するVEGFxxxbの過小発現のリスクを判定することを含む方法を提供する。分析結果に応じて、本発明の第2の態様に係る方法を患者に対して適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】正常なヒト腎皮質におけるVEGF及びVEGFアイソフォームの2つのファミリーの発現を示す。VEGFxxxbアイソフォームは成人の腎皮質組織において全VEGFの45%を超える。
【図2】成人の腎臓におけるVEGFxxxb及びpan−VEGFの免疫組織化学染色を示す。糸球体足細胞(A、矢印)、腎皮質の近位及び遠位細管(B)、腎髄質のヘンレ係蹄(C)におけるVEGFxxxbの染色が明確に観察できる。pan−VEGF抗体で処理した切片(D及びF)も同様な染色パターンを示した。マウスIgG対照は陰性だった(G〜I)。スケール=30μm、A=10μm。(PT=近位尿細管、DT=遠位尿細管、TLH=薄いヘンレ係蹄、TkLH=厚いヘンレ係蹄、CD=集合管、VR=直細血管)。
【図3】後腎のVEGFxxxb及びpan−VEGFの免疫組織化学染色の概観を示す。VEGFxxxb(A及びB)及びpan−VEGF(C及びD)染色は10週目(A及びC)及び12週目(B及びD)の胎児の後腎の特定の発育領域で観察された。マウスIgG対照は陰性だった(E及びF)。スケール=600μm。
【図4】ネフロン形成の初期におけるVEGFxxxb及びpan−VEGFの免疫組織化学染色を示す。糸球体発達時に細胞内のVEGFxxxb(A〜D)及びpan−VEGF(E〜H)染色が観察された。ネフロン形成の様々な段階においてVEGFxxxb(A)及びpan−VEGF(E)染色が特定の染色パターンで観察された。例えば、凝集小胞(B、F)において、間葉細胞が上皮特性を獲得すると染色はさらに分極した。C体(C、G)及びS体(D、H)において、VEGFxxxb(C、D)及びpan−VEGF(G、H)染色は原始上皮細胞(特に先端)及び糸球体裂溝に局在化した。スケール=30μm。(GC=糸球体裂溝、CV=凝集小胞、CSB=C体、SSB=S体、G=糸球体、矢印=糸球体裂溝のびまん性染色)。
【図5】糸球体の成熟時のVEGFxxxb免疫組織化学染色を示す。先端及び基底外側のVEGFxxxb(A、C、E)及びpan−VEGF(B、D、F)染色。推定足細胞及び糸球体裂溝は毛細血管係蹄段階(A、B)にびまん性染色を示す。糸球体が発達し、推定足細胞が成熟すると、VEGFxxxb染色強度は減少するが(C)、pan−VEGF染色は強いままであり(D)、VEGFxxxbは成熟足細胞の亜集団により特異的になる(E)。この段階では、pan−VEGF染色は足細胞においてより広範囲となる(F)。スケール=50μm。(GC=糸球体裂溝、MD=緻密斑、矢印=上皮細胞(parietal epithelial cells))。
【図6】発育中の腎皮質及び髄質の細管におけるVEGFxxxb及びpan−VEGFの免疫組織化学染色を示す。曲尿細管の近位及び遠位領域においてVEGFxxxbの染色が観察された(A及びC)。近位尿細管及び導管において強いperiluminal染色が観察された。pan−VEGF染色でも同様な免疫組織化学染色が観察された(B及びD)。スケール=30μm。(GC=糸球体裂溝、MD=緻密斑、PT=近位尿細管、DT=遠位尿細管、CD=集合管、VR=直細血管)。
【図7】VEGF165bは糸球体上皮細胞に対する細胞保護作用を有し、内皮細胞のVEGF165媒介遊走及び透過性増加を阻害することを示す。(A)VEGF165bは、用量依存的にVEGF165による内皮細胞の遊走を阻害する(p<0.001、ANOVA)。(B)VEGF165bは、用量依存的に初代培養足細胞における細胞死を防止する(p<0.001、ANOVA)。(C)VEGF165bは、血清飢餓によるアポプトーシスを阻害する。(Ci)48時間の血清飢餓(SS)又は(C2)1nM VEGF165b及びSSで処理したアネキシンV及びヨウ化プロピジウム染色ヒト条件的不死化足細胞(hCIP)のフローサイトメトリー。V=viable population、N=necrotic、A=apoptotic、LA=Late apoptotic。(D)VEGF165bは糸球体単層の透過性を減少させる。VEGF165bは培養単層における糸球体の経内皮電気抵抗(TEER)を増加させ、VEGF165はTEERを減少させ(透過性を増加させ)、VEGF165bはVEGF165による減少を阻害する。(***p<0.001、**p<0.01(対照と比較)、++=p<0.01(VEGF165b及びVEGF165と比較))。片側ANOVA及びBonferroni post hoc分析。
【図8】VEGF−Aサブファミリーを示す。命名法は最終的なペプチドのアミノ酸数に基づく。2つのmRNAイソフォームファミリーは異なるヘパリン結合領域で発生する(エクソン6及び7)。血管新生促進アイソフォーム(VEGFxxx、左)はエクソン8(8a)の近位スプライス部位(PSS)選択によって発生し、抗血管新生(VEGFxxxb)ファミリーはエクソン8の遠位スプライス部位選択(エクソン8b)(DSS)によって発生する。そのため、エクソン8のPSS選択によって形成されたVEGF165は遠位スプライス部位(DSS)アイソフォームとしてVEGF165bを有する。DSS選択mRNAはVEGF165と同じ長さのタンパク質をコードする。エクソン6a’はエクソン6aの保存された選択的スプライシング供与部位の結果としてVEGF183に生じ、完全長のエクソン6aよりも18bp短い。VEGF206bはまだ特定されていない。UTR=非翻訳領域。
【図9】pNeph−VEGF165bヘテロ接合形質転換マウスの継代を示す。ネフリンプロモーターの対照下でVEGF165bを発現ベクターにクローニングした(形質転換構成体、図9Ai)。ヒト足細胞にトランスフェクトすると、対照ベクター又はトランスフェクトしていない細胞と比較してVEGF165bの発現は有意に多かった(図9Aii)。図9Bは胎芽から生まれた子のPCRスクリーンを示す。図9Cはサザンブロットを示し、ゲノムDNAへの単一の挿入部位を示す。gDNAはEcoR1で消化させ、形質転換体を作成するためのcDNAからプローブを作成した。挿入部位の5’末端に1つのEcoR1部位があり、複数の挿入によってトランス遺伝子において複数の異なる大きさのバンドが生成する。ライン1には1つのバンドのみがあり、1つの挿入点を示す(複数の部位への挿入によって複数のバンドが生成する)。ライン1はヘテロ接合体及びホモ接合体コロニーの作成に使用した。図9Dは創始系統からの限外濾過係数は互いに異なっていなかったことを示す。
【図10】腎臓の糸球体上皮細胞(足細胞)においてpNeph−VEGF165bヘテロ接合及びホモ接合形質転換マウスがVEGF165bを過剰発現していることを示す。腎臓糸球体におけるVEGF165bの発現を調べた(図10Ai及び図10Aii)。トランス遺伝子のための腎皮質のエクソン8b特異的RT PCR(<0.05、カイ二乗傾向性検定、1群あたりN=3)。図10Bは、抗ヒトVEGF(A20 SANTA CRUZ)x1000を使用した免疫組織化学分析を示し、足細胞におけるVEGFの発現を示している。図10Cは、VEGFxxxb特異的ELISA(R&D Systems)を使用した形質転換及び野生型マウスの腎皮質から遺伝子変異から抽出したタンパク質のELISAを示す(p<0.01、ANOVA)。
【図11】足細胞特異的VEGF165bの過剰発現によって糸球体の透水性が減少したことを示す。ヘテロ接合及びホモ接合VEGF−A165b過剰発現のマウスにおいて正規化糸球体限外濾過係数は有意に減少した。VEGF165b過剰発現ヘテロ接合体マウスにおける糸球体の透水性の減少はVEGF165との培養によって減少した。処理前後に同じ糸球体に対してペア測定を行った。バーは平均値±S.E.M.LpA/vi測定値を表す。括弧内の数字は糸球体の数を示す。(=p<0.05(野生型同腹子と比較)、††=p<0.001(野生型と比較)、##p<0.001(ヘテロ接合体と比較)、片側ANOVA及びBonferroni補正、‡=p<0.05(同じNephVEGF165b形質転換マウスの未処理糸球体と比較)、ペアt検定)。
【図12】糸球体のVEGF−A165b過剰発現は腎機能に大きな影響を与えないことを示す。(A)血漿[クレアチニン](μmol/L)、(B)血漿[尿素](mmol/L)、(C)代謝ケージを使用して採取した尿のタンパク質:クレアチニン比(mg/mmol)を測定することによって形質転換マウス及び野生型同腹子における腎臓機能及びタンパク尿を調べた。
【図13】対照野生型糸球体へのVEGF165bの外因性投与によって正規化糸球体限外濾過係数が減少したことを示す。図13Aは、対照溶液、40pM組替え型ヒトVEGF165b又は1nM VEGF165bに60分間暴露した正常な野生型糸球体の集団を示す。バーは平均値±S.E.M.LpA/vi測定値を表す。括弧内の数字は糸球体の数を示す。p<0.05(対照と比較)、Kruskal−Wallis片側ANOVA及びDunnett補正)。図13Bは、単離マウス糸球体の正規化LpA/viに対するrhVEGF165bの対照的な特性(図13Bi)及びラット糸球体に対する同様な濃度のrhVEGF165の公表データ(参考文献39)(図13Bii)を示す。
【図14】足細胞におけるヒトVEGF165b(ヘテロ接合及びホモ接合)の過剰発現は内因性VEGF発現の減少を引き起こすことを示す。タンパク質は、野生型、ヘテロ接合体及びホモ接合体の腎臓からシグマプロテアーゼ阻害剤カクテルを添加したRIPA緩衝液を使用して抽出した。組織ホモジネート内の内因性マウスVEGFをELISA(R&D MOUSE VEGF)を使用して測定した。ELISAによってマウスVEGF120及びVEGF164が検出され、ヒトVEGFと低い交差反応性(0.2%)が見られた(p<0.05、Kruskil Walis Dunns post hoc検定)。
【図15】超微形態学的表現型を示す。図15Aは全ての動物におけるヘマトキシリン及びエオシン光学顕微鏡分析を示す。図15Bは電子顕微鏡分析を示し、足細胞下空間(SPS)によって囲まれたGFBの面積の有意差は見られなかった(野生型同腹子[WT]対照:55ア5%、ホモ接合体:41ア10%、p=NS)。しかし、開窓の数及び大きさの有意な減少がホモ接合体マウスで観察された(図15C)。上記EM研究では70nmの切片を使用した。図15Dは、通常の隔壁開窓(図15E、矢印)よりも電子高密度物質を含む閉鎖型開窓はホモ接合体マウスにおいて顕著であったことを示す(矢印)。
【図16】ホモ接合体マウスの糸球体基底膜の血管側の超微形態学的表現型を示す(開窓パラメータは40nmの切片を使用して調べた)。図16Aはホモ接合形質転換マウスの糸球体における閉鎖型開窓の例(9/11)を示す。図16BはGFBの機能的領域において開窓密度が有意に減少したことを示す。図16Cは総開窓の割合としての閉鎖型開窓の割合を示す。図16Dは開窓幅を示す。図16Dは閉じた開窓幅を示す。WT=野生型同腹子対照、Hom=トランス遺伝子のホモ接合体。SPS covered GFB=濾液がボーマン空間に達するように制限的な足細胞下空間から出るGFBの領域。Non−SPS covered GFB=濾液がボーマン空間に直接入るGFBの領域。
【図17】足細胞特異的VEGF165b過剰発現ヘテロ接合形質転換マウスは、STZ誘導性糖尿病に関連する糸球体病変に対して耐性を有することを示す。野生型同腹子対照と同一齢の12週目のヘテロ接合体VEGF165bマウスの群(n=5、各群)には100μg/g(体重)/日の用量で3日間投与した(200μLの注入量)。対照には同量のクエン酸塩緩衝液を投与した。空腹時(1時間)血糖値、尿タンパク質/クレアチニン比及び体重を2週間毎に測定した。誘導後6週間目に、マウスを代謝ケージに入れ、尿を12時間にわたって採取し、ELISAによって尿中アルブミン量を測定した(p<0.05(糖尿病野生型と比較、ANOVA、Bonferroni)。STZ群の血中グルコース濃度は同様だった(STZ WT:22.97±1.47mmol/L、STZ HET:26.42±1.45mmol/L(p=NS))。
【図18】VEGF−A165bは酸素誘発網膜障害モデルにおいて新血管形成を阻害するが、血管再生を妨げないことを示す。
【図19】VEGF−A165bはヒト網膜内皮細胞の遊走を阻害することを示す。
【図20】VEGF−A165bはヒト内皮細胞の生存因子であることを示す。
【図21】VEGF−A165bはRPE細胞の細胞保護剤であることを示す。
【図22】VEGF−A165bは内因性生存因子であることを示す。
【発明を実施するための形態】
【0039】
図面及び実施例を参照して本発明についてさらに説明する。
【0040】
VEGFxxxb活性薬剤
「VEGFxxxb活性薬剤」という用語は、生体内又は試験管内において、健常者又は治療を受けていない患者に対して相対的に又はVEGFxxxに優先して(VEGFxxxに対して相対的に)VEGFxxxbの存在又は内因性発現を促進するVEGFxxxbタンパク質(例えば、完全長タンパク質及びその抗血管新生フラグメント)及び薬剤を含む。
【0041】
本発明において使用するVEGFxxxb活性薬剤は、任意の適当な手段によって調製することができる。
【0042】
細胞内においてVEGFxxxに優先して(VEGFxxxに対して相対的に)VEGFxxxbの内因性発現を促進するように細胞に作用する薬剤の使用は、本発明において使用するVEGFxxxbを調製する手段の1つである。そのような薬剤の詳細については国際公開第WO2008/110777号を参照されたい。
【0043】
従って、「VEGFxxxb活性薬剤」という用語の範囲には、宿主生物内においてVEGFxxxbを発現させる発現ベクター系が含まれる。宿主生物は、治療対象の患者又は治療対象の患者に適した他の生物であってもよい。そのような発現ベクター系は、好適には、VEGFxxxbをコードするヌクレオチド配列に関連するプロモーターヌクレオチド配列を含み、適当なトランスフェクション及び培養条件下において宿主生物内においてVEGFxxxbを発現させることができる。さらなる詳細については、「遺伝子療法」と題する節を参照されたい。
【0044】
従って、「VEGFxxxb活性薬剤」という用語の範囲には、宿主生物(好適には治療対象の患者)内におけるVEGFxxx阻害系が含まれ、VEGFxxx阻害系により、宿主生物又は宿主生物の特定の組織内におけるVEGFxxxに対する活性VEGFxxxbの比率は増加する。VEGFxxx阻害系は、例えば、モノクローナル又はポリクローナル特異的抗VEGFxxx抗体等の特異的抗VEGFxxx抗体を含むことができる[15,16,25]。あるいは、VEGFxxx阻害系は、宿主生物内においてVEGFxxx阻害系を発現させる発現ベクター系を含むことができる。そのような発現ベクター系は、好適には、特異的抗VEGFxxx抗体等のVEGFxxxタンパク質阻害系をコードするヌクレオチド配列に関連するプロモーターヌクレオチド配列を含み、適当なトランスフェクション及び培養条件下において宿主生物内においてVEGFxxxタンパク質阻害系を発現させることができる。
【0045】
必要に応じて、2種以上のVEGFxxxb活性薬剤及び/又は特定のVEGFxxxb活性薬剤の2以上の実施形態を同時又は連続的に使用することができる。
【0046】
例えば、VEGFxxxbは、VEGF165b、VEGF189b、VEGF145b、VEGF183b及びVEGF121bの1以上を含むことができる。VEGFxxxbは、好適には、組換え型VEGFxxxb、好ましくは組替え型ヒトVEGFxxxb(rhVEGFxxxb)を含む。
【0047】
VEGFxxxbは、好ましくは、VEGF165b、例えば組換え型VEGF165b(組替え型ヒトVEGF165b(rhVEGF165b)等)を含む。
【0048】
例えば、VEGFxxxbは、VEGF165b、例えば組換え型VEGF165b(組替え型ヒトVEGF165b(rhVEGF165b)等)から実質的になることができる。例えば、VEGFxxxbは、VEGF165b、例えば組換え型VEGF165b(組替え型ヒトVEGF165b(rhVEGF165b)等)からなることができる。
【0049】
被投与者の細胞内又は試験管内においてVEGFxxxに優先して(VEGFxxxに対して相対的に)VEGFxxxbの発現を選択的に促進するVEGFxxxb活性薬剤
そのような薬剤は、国際公開第WO2008/110777号の6頁22行〜8頁9行に開示されており、国際公開第WO2008/110777号の残りの部分では、PSSスプライシングと比較してDSSスプライシングに有利に作用する点が詳述されている。以下の説明においては、国際公開第WO2008/110777号の該当部分も参照されたい。
【0050】
特に、形質転換成長因子(TGF)−β1、TGF−βR1、SRPK1特異的阻害剤(例えば、SRPIN340)、T細胞細胞内抗原−1(TIA−1)、MKK3/MKK6−活性化MAPキナーゼ(例えば、p38 MAPK)、Cdc20様(Clk)ファミリーキナーゼClk1/sty、Clk2、Clk3、Clk4、SRスプライシング因子SRp55、それらの生体内活性剤、アップレギュレータ、増強剤、一次活性又はその作用の制御に有用な二次機能を有する上記物質の修飾体、上記物質を生体内において発現させるための発現ベクター、mRNA前駆体のエクソン8aのPSS及び/又はスプライシング調節タンパク質が結合するmRNA前駆体の領域に結合して近位スプライシングを阻害する転写/翻訳遮断剤(例えば、モルフォリノ又はその他の合成遮断剤、共役ペプチド、RNA結合タンパク質、RNA干渉(RNAi)ポリ及びオリゴヌクレオチド遮断剤(例えば、dsRNA、microRNA(miRNA)、siRNA))、ペプチド核酸(PNA)、SRタンパク質キナーゼ(SRPK)阻害剤(例えば、SRPIN340)、その他の機構的に類似するSRPK阻害剤、特にSRPK触媒領域で結合する阻害剤)又はそれらの組み合わせが挙げられる。
【0051】
そのような発現ベクター系は、好適には、VEGFxxxに優先してVEGFxxxbの発現を促進する物質をコードするヌクレオチド配列に関連するプロモーターヌクレオチド配列を含み、適当なトランスフェクション及び培養条件下において宿主生物(好適には治療対象の被投与者)内においてVEGFxxxに優先してVEGFxxxbの発現を促進する物質を発現させることができる。さらなる詳細については、「遺伝子療法」と題する節を参照されたい。
【0052】
治療対象の症状及び疾患
微小血管過透過性、VEGFxxxアイソフォームの血管新生促進・透過性促進性調節疾患、上皮細胞生存及び透過性疾患及び/又は上皮濾過膜の開窓性(例えば、数密度及び/又は大きさ)疾患は、多くの重度の病状の根底にある。
【0053】
そのような病状の例としては、タンパク尿、尿毒症、微量アルブミン尿、低タンパク血症、腎臓の過剰濾過、ネフローゼ症候群、腎不全、肺動脈高血圧、毛細血管過透過性、毛細血管瘤、浮腫、糖尿病の血管合併症が挙げられる。
【0054】
糖尿病の血管合併症の例としては、糖尿病性網膜症(増殖性及び非増殖性)及び糖尿病性腎症が挙げられる。糖尿病の血管合併症は、I型又はII型糖尿病に伴って生じ得る。
【0055】
血液からタンパク質が失われると、血栓症(特に脳血栓症)感染症感受性等のさらなる合併症が生じ得る。血液から天然タンパク質が失われると、癌療法の有効性が大きく損なわれる。
【0056】
微小血管透過性亢進疾患は、特に、GFBの透過性疾患(例えば、足細胞の透過性疾患)等の腎障害であってもよい。
【0057】
上皮細胞生存を維持する治療が有効な疾患の例としては、急性肺線維症、成人呼吸促窮迫症候群、進行癌、アレルギー性呼吸器疾患、肺胞傷害、血管新生、関節炎、腹水、喘息、火傷後の喘息又は水腫、アテローム性動脈硬化、自己免疫疾患、骨吸収、水疱性類天疱瘡等の表皮下水疱形成に関連する水疱性障害、心臓血管症状、糸球体又はメサンギウム細胞の増殖に関連する腎臓病、慢性及びアレルギー性炎症、慢性肺疾患、慢性閉塞性肺疾患、肝硬変、角膜血管新生、角膜疾患、冠状動脈及び脳側副血管新生(coronary and cerebral collateral vascularization)、冠状動脈再狭窄、心臓病後の損傷、疱疹状皮膚炎、糖尿病、糖尿病性腎症、糖尿病性網膜症、内毒素性ショック、多型紅斑、線維症、糸球体腎炎、腎炎、移植片拒絶、グラム陰性菌敗血、血管腫、肝硬変、肝不全、帯状疱疹、宿主対移植片反応(腎臓、肝臓、心臓及び皮膚の虚血再潅流損傷及び同種移植拒絶反応)、感染症における創傷治癒不全、単純ヘルペスによる感染症、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症、炎症、癌、炎症性腸疾患(クローン病及び潰瘍性大腸炎)、炎症性疾患、ステント再狭窄、ステント狭窄、虚血、虚血性網膜静脈閉塞症、静脈うっ血性網膜症、カポージ肉腫、ケロイド、急性炎症時の肝臓疾患、肺同種移植拒絶反応(閉塞性気管支炎)、リンパ性悪性疾患、黄斑退化未熟網膜症、骨髄形成異常症候群、心筋血管新生、新生血管緑内障、非インスリン依存型糖尿病(NIDDM)、閉塞性細気管支炎、眼症状又は疾患、網膜血管増殖に関連する眼疾患、オースラー・ウェーバー・ランデュ病、変形性関節症、卵巣過刺激症候群、ページェット病、すい臓炎、類天疱瘡、多嚢胞性腎臓病、ポリープ、閉経後の骨粗鬆症、子癇前症、乾癬、肺浮腫、肺線維症、肺型サルコイドーシス、再狭窄、糖尿病性網膜症等の網膜障害、未熟網膜症、加齢黄斑ジストロフィー症、関節リウマチ、関節リウマチ、皮膚潮紅、サルコイドーシス、敗血症、脳卒中、滑膜炎、全身性紅斑性狼瘡、甲状腺炎、血栓性微小血管症候群、移植拒絶反応、損傷、腫瘍関連血管新生、人工血管再狭窄、フォン・ヒッペル・リンドウ病、創傷治癒が挙げられる。
【0058】
本発明は、黄斑ジストロフィーの治療に使用することができる。黄斑ジストロフィーの例としては、シュタルガルト病/黄色斑眼底、シュタルガルト病様黄斑ジストロフィー、常染色体優性「標的」黄斑ジストロフィー、ベスト黄斑ジストロフィー、成人型卵黄様ジストロフィー、パターン性ジストロフィー、Doyne蜂巣状網膜ジストロフィー、ノースカロライナ黄斑ジストロフィー、MCDR1に類似した常染色体優性黄斑ジストロフィー、聴覚障害に関連するノースカロライナ様黄斑ジストロフィー、進行性二重焦点網脈絡膜萎縮、ソースビー黄斑変性症、中心性輪紋状脈絡膜萎縮症、優位性嚢腫様黄斑ジストロフィー、若年性網膜分離、オカルト黄斑ジストロフィー、非家族性オカルト黄斑ジストロフィーが挙げられる。
【0059】
疾患は、特に、地図状萎縮及び加齢黄斑変性症等の網膜上皮疾患であってもよい。
【0060】
VEGFxxxb活性薬剤は、必要に応じて、1種以上の他の活性薬剤、例えば、抗血管新生化合物(血管形成を阻害することができる化合物)から選択される1種以上の他の薬剤と共に共投与することができる。好適な化合物の例としては、1種以上のACE(アンジオテンシン変換酵素)阻害剤、1種以上のアンジオテンシンII受容体拮抗薬、1種以上のコルチコステロイド及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0061】
疾患の検査
本発明によれば、患者から採取した生体試料に対して、微小血管透過性亢進疾患、VEGFxxxアイソフォームの血管新生促進・透過性促進性調節疾患、上皮細胞生存及び透過性疾患及び/又は上皮濾過膜の開窓性(例えば、数密度及び/又は大きさ)疾患に対するリスク又は感受性に関する検査を行うことができる。本発明の方法は、試料中のVEGFxxxb濃度又はVEGFxxxbとVEGFxxxの相対レベルを分析するか、患者の遺伝子型を決定して正常な絶対VEGFxxxb濃度又は正常なVEGFxxxb:VEGFxxx比に対するVEGFxxxbの過小発現のリスクを判定することを含む。
【0062】
試料は、尿、血液、血漿、唾液、血清等の体液試料であることが好ましい。
【0063】
通常、正常レベルよりも低い試料中のVEGFxxxb濃度又はVEGFxxxbとVEGFxxxの相対レベルは、1以上の疾患、例えば、本発明によって治療することができる1以上の特定の疾患又は障害に対する高いリスク又は感受性と相関関係がある。
【0064】
試料中のVEGFxxxb濃度又はVEGFxxxbとVEGFxxxの相対レベルは、引用文献及び以下に記載する実施例に記載された周知の方法によって分析することができる。そのため、詳細な説明は省略する。リスク又は感受性は、健常者群及び疾患に罹患した患者群から得られた(VEGFxxxb濃度又はVEGFxxxbとVEGFxxxの相対レベルをリスク又は感受性に相関付ける)比較データに基づいて判断することができる。
【0065】
上述した事項は、患者から採取した生体試料に対して上皮細胞生存疾患に対するリスク又は感受性に関する検査を行う場合にも当てはまる。
【0066】
組成物及び投与
活性薬剤は、活性薬剤と適当なその他の成分を含む組成物として投与することができる。組成物は、例えば、医薬組成物(薬剤)であってもよい。
【0067】
本発明の別の態様は、微小血管透過性亢進疾患を治療又は予防するために使用されるか、VEGFxxxアイソフォームの血管新生透過性亢進性を調節するために使用されるか、血管透過性の増加に依存することなく上皮細胞生存を維持するために使用されるか、生体内又は試験管内(生体外を含む)において上皮濾過膜の開窓性(例えば、数密度及び/又は大きさ)を減少させるために使用される、有効量のVEGFxxxb活性薬剤を含む組成物を提供する。
【0068】
本発明の別の態様は、上皮細胞生存を維持するために使用される、有効量のVEGFxxxb活性薬剤を含む組成物を提供する。
【0069】
本発明に係る活性薬剤は、活性薬剤と適当なその他の成分を含む組成物として投与することができる。組成物は、例えば、非経口投与(例えば、注射、埋込又は注入)に適した医薬組成物(薬剤)であってもよい。
【0070】
本発明において使用する「医薬組成物」又は「薬剤」という用語は、活性薬剤と、1種以上の薬学的に許容し得る担体と、を含む組成物を意味する。組成物は、投与形態に応じて、希釈剤、助剤、賦形剤、保存剤、充填剤、分解剤、保湿剤、乳化剤、懸濁剤、甘味料、調味料、香料、抗菌剤、抗黴剤、潤滑剤、調合剤から選択される成分をさらに含むことができる。組成物は、例えば、錠剤、糖剤、粉末、エリキシル剤、シロップ、懸濁液、噴霧剤、吸入剤、錠剤、トローチ、エマルション、溶液、カシェ剤、顆粒、カプセル、坐剤を含む液状製剤、リポソーム製剤を含む注射用液状製剤であってもよい。製薬方法及び処方は、Remington,The Science and Practice of Pharmacy,Mack Publishing Co.,Easton,PA,最新版に記載されている。
【0071】
液体製剤の例としては、溶液、懸濁液、エマルションが挙げられる。例えば、水又は非経口注入用の水−プロピレングリコール溶液が挙げられる。また、液状製剤はポリエチレングリコール水溶液に溶解した溶液であってもよい。
【0072】
また、使用直前に経口投与又は非経口投与のために液体製剤とする固体製剤も挙げられる。そのような液体製剤の例としては、溶液、懸濁液、エマルションが挙げられる。これらの固体製剤は単位用量で用意し、一回の液体単位用量となるように使用される。あるいは、液体化した後に、注射器、ティースプーン又はその他の容器又は装置を使用して所定量の液体製剤を測定することによって複数回分の液体単位用量を得るように十分な量の固体製剤とすることもできる。液体化する固体製剤は、活性物質に加えて、香味剤、着色剤、安定化剤、緩衝剤、人工又は天然甘味剤、分散剤、増粘剤、溶解剤等を含むことができる。液体製剤を調製するために使用する液体は、水、等張水、無水エタノール、グリセリン、プロピレングリコール等又はそれらの混合物であってもよい。使用する液体は、投与経路を考慮して選択する(例えば、大量のエタノールを含有する液状製剤は非経口投与には適していない)。
【0073】
用量は、患者の状態、治療する症状の重症度、使用する化合物に応じて変更することができる。当業者は、特定の状況のために適切な用量を判断することができる。通常、化合物の最適な量よりも少ない用量で治療を開始する。次に、最適な効果が得られるまで用量を少しずつ増加させる。必要に応じて、1日の用量を分割して投与することができる。
【0074】
遺伝子療法
本発明は、遺伝子療法を使用して実施することもできる。遺伝子療法は当技術分野において知られており、本発明はそのような公知の方法で好適に実施することができる。以下に概要を説明する。
【0075】
遺伝子療法は、生体内療法及び生体外療法に大きく分類される。生体内遺伝子療法は、治療遺伝子を体内に直接導入することを含み、生体外遺伝子療法は、生体外で標的細胞を培養し、遺伝子を細胞に導入し、遺伝子組み換え細胞を体内に導入することを含む。
【0076】
遺伝子導入技術は、ウイルスを担体として使用するウイルスベクター導入法、合成リン脂質又は合成カチオン性ポリマーを使用する非ウイルス導入法、エレクトロポレーション又は一時的な電気刺激を細胞膜に与えることによって遺伝子を導入する物理的な方法に大別される。
【0077】
これらの遺伝子導入技術のうち、ウイルスベクター導入法が遺伝子療法に好ましいと考えられる。これは、複製能の一部又は全てを失った治療遺伝子を置換した遺伝子を有するベクターを使用して遺伝因子を効率的に導入することができるためである。ウイルス担体又はベクターとして使用されるウイルスの例としては、RNAウイルスベクター(レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター等)及びDNAウイルスベクター(アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター等)が挙げられる。また、単純ヘルペスウイルスベクター、アルファウイルスベクター等も例として挙げられる。これらのうち、レトロウイルス及びアデノウイルスベクターが特に積極的に研究されている。
【0078】
宿主細胞のゲノムに組み込まれるレトロウイルスは人体に対して無害だが、組み込み後に正常細胞の機能を阻害することができる。また、レトロウイルスは様々な細胞を感染させ、迅速に増殖し、外来遺伝子の約1〜7kbを受容することができ、複製欠乏性ウイルスを製造することができる。しかし、レトロウイルスは、有糸核分裂後に細胞を感染させにくく、生体内で遺伝子を導入することが難しく、体細胞組織を常に生体内で増殖させることが必要であるという欠点を有する。また、レトロウイルスはプロトオンコジーンに組み込むことができるため、突然変異のリスクを有し、細胞壊死を引き起こす場合がある。
【0079】
一方、アデノウイルスはクローニングベクターとして使用するための様々な利点がある。すなわち、アデノウイルスは適度な大きさを有し、細胞核内で複製でき、臨床的に無毒である。また、アデノウイルスは外来遺伝子が導入されても安定であり、遺伝子の再編成又は損失を引き起こさず、真核生物を形質転換させることができ、宿主細胞の染色体に組み込まれた場合でも非常に安定して発現する。アデノウイルスに適した宿主細胞は、ヒトの血液生成、リンパ腫、骨髄腫を引き起こす細胞である。しかし、これらの細胞は直鎖DNAであるため、増殖は困難である。また、感染したウイルスを回収することは容易ではないと共にこれらの細胞は低いウイルス感染率を有する。また、導入された遺伝子の発現は1〜2週間後に最も高くなり、いくつかの細胞では発現は約3〜4週間しか維持されない。さらに、免疫抗原性が高いという問題がある。
【0080】
アデノ随伴ウイルス(AAV)は上述した問題を克服することができると共に遺伝子治療薬として使用する場合に多くの利点を有し、最近は好ましいと考えられている。AAV(一本鎖プロウイルス)は複製のためにアシスタントウイルスを必要とし、AAVゲノムは4680bpのサイズを有し、被感染細胞の第19染色体のあらゆる部位に挿入することができる。形質転換遺伝子は、2つの逆方向末端反復配列(ITR)及びシグナル配列のそれぞれの145bpに連結されたプラスミドDNAに挿入される。この遺伝子は、AAV rep及びcap遺伝子を発現させる別のプラスミドDNAによって感染させ、アデノウイルスをアシスタントウイルスとして添加する。AAVは、遺伝子を導入する宿主細胞の範囲は広く、繰り返し投与による免疫副作用がほとんどなく、遺伝子発現時間が長いという利点を有する。また、AAVは、AAVゲノムが宿主細胞の染色体に組み込まれても安定であり、宿主細胞における遺伝子発現の変化又は再編成を引き起こさない。CFTR遺伝子を含むAAVベクターは、1994年に嚢胞性繊維症の治療のためにNIHによって承認されて以来、様々な病気の臨床治療に使用されている。血液凝固因子であるIX因子の遺伝子を含むAAVベクターは血友病Bの治療に使用されており、AAVベクターを有する血友病治療薬の開発が現在行われている。また、様々な抗ガン性遺伝子を含むAAVベクターは腫瘍ワクチンとして認可されている。
【0081】
遺伝子の導入と発現によって病気を治療する方法である遺伝子療法は、薬物療法とは異なり、ある遺伝子を調節するために使用される。遺伝子療法の目的は、生きた遺伝子を組み換えることによって有用な治療効果を得ることである。遺伝子療法は、病気部位への遺伝因子の正確な導入、生体内での遺伝因子の完全な分解、毒性と免疫抗原性がない、遺伝因子の長期間にわたって安定な発現という利点を有しているため、本発明に関連して潜在的に好適な治療経路として注目した。
【0082】
遺伝子療法が標的とする宿主細胞は足細胞であることが好ましい。
【0083】
本願明細書において、特定の化合物群の1つ、例えば、VEGFxxxbの存在という場合には、そのような化合物の2種以上の混合物の存在をその範囲に含む。
【0084】
治療又は予防
本願明細書において使用する「治療又は予防」という表現並びに類似する用語は、医学的診療において利用可能な試験のいずれかに従って判断される予防、治癒及び緩和治療を含む、障害を除去又は回避あるいは症状を軽減することを意図するあらゆる形態の健康管理を意味する。合理的な期待の下に特定の結果を得ることを目的とするが、必ずしも特定の結果が得られるわけではない治療介入も、「治療又は予防」という表現の範囲に含まれる。障害の進行を成功裏に遅らせるか、停止させる治療介入は、「治療又は予防」という表現の範囲に含まれる。
【0085】
感受性
本願明細書において使用する「感受性を有する」という表現並びに類似する用語は、特に、個体又は障害の公知のリスク因子を使用して評価した場合に、医学的障害あるいは人格変化を発症するリスクが通常よりも高い個体を意味する。例えば、そのような個体は、薬物の処方及び/又は特別な食事、ライフスタイル等の推奨がなされる範囲において、1以上の特定の障害を発症する高いリスクを有していると分類される。
【0086】
患者(被投与者)
患者(被投与者)は、好ましくはヒト又は非ヒト哺乳動物である。
【0087】
本発明はヒトの治療に有用だが、本発明は様々な哺乳動物にも有用である。そのような哺乳動物の例としては、(動物園等の)非ヒト霊長動物(類人猿、サル、キツネザル等)、ネコやイヌ等のコンパニオン・アニマル、イヌ、ウマ、ポニー等の使役・狩猟用動物、ブタ、ヒツジ、ヤギ、シカ、去勢牛、畜牛等の家畜動物、齧歯動物(ウサギ、ラット、ネズミ、ハムスター、アレチネズミ、モルモット等)等の実験動物が挙げられる。
【0088】
治療対象の障害又は機能がヒトに特有のものである場合には、治療対象の哺乳動物はヒトである。治療対象の障害又は機能がある哺乳動物種に特有のものである場合には、治療対象の哺乳動物は当該哺乳動物種である。
【0089】
文脈によっては、患者(被投与者)は胎内の胎児であってもよい。例えば、微小血管透過性亢進疾患、VEGFxxxアイソフォームの血管新生促進・透過性促進性調節疾患、上皮細胞生存及び透過性疾患及び/又は上皮濾過膜の開窓性(例えば、数密度及び/又は大きさ)疾患に対するリスク又は感受性に関する検査を患者(被験者)に対して行うための分析・遺伝子型決定方法では、患者(被験者)は胎内の胎児であってもよく、胎児、胎盤又は羊水から採取した生体試料に対して方法を実施することができる。例えば、上皮細胞生存疾患に対するリスク又は感受性に関する検査を患者(被験者)に対して行うための分析・遺伝子型決定方法では、患者(被験者)は胎内の胎児であってもよく、胎児、胎盤又は羊水の生体試料に対して方法を実施することができる。
【0090】
「ヒト又は非ヒト哺乳動物」という表現は、あらゆる発育(成長)段階及び年齢(胚、胎児、新生児、子供、青年者、若年成人、老人、高齢者)のヒト及び非ヒト哺乳動物を意味する。
【実施例】
【0091】
実施例1
材料及び方法
組織材料
地域倫理委員会(ブリストル)の承認を得た上で、ヒト成人腎皮質を腎癌摘出標本から採取した。地域倫理委員会(ライデン)の承認を得た上で、妊娠後10週間及び12週間目の3人のヒト胎児(女性)を入手した。
【0092】
免疫組織化学分析及びELISA
0.01mMクエン酸・飽和クエン酸ナトリウム緩衝液(pH6.0)内において、95℃で12分間(VEGFxxxb)又は800Wで7分間及び120Wで9分間(pan−VEGF染色)、切片をマイクロ波加熱した。切片をPBSで2回洗浄し、3%過酸化水素水溶液と共に20分間培養し、再び洗浄し、0.05%Tween−PBS(TBS)に溶解した10%BSA(Sigma、A4378)でブロックした後、TBSに溶解した1.5%正常ウマ血清(NHS Vector lab、S−2000)でブロックした(1時間)。次に、1%BSAを溶解したTBS(pH7.4)に溶解した8μg/mL一次抗体(MAB3045、R&D Systems、Sigma、I8765又はSanta Cruz 7269)と共に切片を培養し、TBSで2回洗浄し、ブロックした後、二次抗体(Vector Lab、BA2000)と共に培養し、TBSに溶解したNHSで1時間希釈(1:200)し、2回洗浄し、Vectastain ABC溶液(Vector Lab、PK4000)と共に45分間培養した。
【0093】
細胞毒性、ELISA、フローサイトメトリー及びマイグレーションアッセイ
VEGF ELISA[21]、細胞毒性[12]、アポプトーシス[22]及びマイグレーション[23]は参考文献に記載された方法で測定した。
【0094】
糸球体内皮細胞(GEnC)の培養
正常ヒト腎臓から単離した糸球体に由来するGEnC(供給者のデータシートによる)をApplied Cell Biology Research Institute(ACBRI、カークランド(米国))から入手した。EBM2(内皮細胞基本培地2、Cambrex)、牛胎児血清(FCS、5%)、抗菌剤及び成長因子からなるEGM2−MV(内皮細胞増殖培地2、微小血管、Cambrex、ウォーキンガム(英国))内で細胞を培養した。実験のために調製(使用)した細胞は、VEGFを含まないEGM2−MV内で培養した。
【0095】
経内皮電気抵抗(TEER)の測定
TEERはイオンフラックスの尺度であり、細胞単層における水及び小分子への経路の面積に反比例する。ポリカーボネート担体(細孔径:0.4μm、Nalge Nunc International、ロチェスター)を含む組織培養インサートにGEnCを播種した(100,000cells/cm)。GEnC単層のTEERは、文献[24]に記載された方法で、Endohm 12電極チャンバ及びEVOMx電圧計(World Precision Instruments、サラソータ(米国))を使用して測定した。培地を無血清培地(EBM2)と交換した。1時間にベースラインTEERを測定し、培地をSFM(対照)のみ又は1nM VEGF165(R&D Systems)又は1nM VEGF165bを含む培地と交換した。15分、30分及び60分が経過した時点でTEERを再び測定した。過去の研究では、この検定法において30〜60分の間でVEGFに対するピーク応答を示している。
【0096】
結果
成人腎皮質におけるVEGFxxxbの発現
正常な成人の腎臓におけるVEGFの全発現に対するVEGFxxxbアイソフォームの寄与を定量的に測定するために、冷凍腎皮質から抽出したタンパク質におけるVEGFxxxb濃度及び総VEGF濃度を測定した。総タンパク質濃度は市販のELISAを使用して測定し、VEGFxxxb濃度は、VEGFxxxbのC末端に特異的なビオチン化検出抗体を使用した同様なELISAによって測定した。正常な腎皮質における総VEGF濃度は、平均で54.2±14ng/mgタンパク質だった。VEGFxxxb濃度は平均で25.8±9.6ng/mg(n=3、図1)(総VEGF濃度の45±5%)だった。この結果は、ヒト腎摘出標本から採取した正常な糸球体から抽出したタンパク質において測定されたVEGF165bである総VEGF濃度の相対的比率(46.6±18%、n=3)と同様だった。
【0097】
成人腎臓におけるVEGFxxxb染色
免疫組織化学分析に使用したVEGFxxxbに対する抗体は、R&D Systemから市販されているアフィニティー精製マウスモノクローナルIgG1抗体(Cat MAB3045)であり、特性分析されている[15,16,25]。Cat MAB3045は組換えVEGF165bに結合し、VEGF165b、VEGF189b、VEGF121b VEGF183b、VEGF145b(VEGFxxxb)の発現を示すが、VEGF165の発現は示さない。ウェスタンブロッティング法により、この抗体によって認識された全てのタンパク質がVEGF−Aに対する市販の抗体によって認識されることが示されている。この抗体はVEGFxxxアイソフォームを認識しないが、組換え型VEGF165b及びVEGF121bは認識し、VEGFxxxbに特異的である[16]VEGFxxxb染色は足細胞のかなりの割合に限定されたが(図2A、矢印を参照)、腎皮質の上皮細胞、緻密斑及び近位・遠位尿細管に存在した(図2B)。また、VEGFxxxb染色は直細血管、集合管及びヘンレ係蹄上行脚で観察された。ヘンレ係蹄上行脚の上皮細胞では強い細胞内染色が観察されたが、集合管の上皮細胞では、染色は先端面の先端(青い矢印)及び基底外側の細胞質(黒い矢印、図2C)に局在していた。pan−VEGF染色でも同様な傾向が観察された(図2D及び図2F)。同一条件下においてアイソタイプマッチ(isotype matched)IgG抗体を対照(図2G〜図2I)として使用した場合には染色は観察されなかった。
【0098】
発育糸球体におけるVEGFxxxb染色
発育糸球体(developing glomerulus)におけるVEGF165bの発現を調べるために、ヒト胎児腎組織の切片に対して免疫組織化学分析を行った。10及び12週目の胎児のVEGFxxxbのための免疫組織化学染色は、周囲の間葉よりも顕著な発育ネフロンにおける明確な発現を示した(図3A:10週目、図3B:12週目)。染色は、凝集小胞段階から後のネフロン形成の全ての段階において非常に強かった(図4A〜図4D)。VEGFの全てのアイソフォームに対する抗体による染色により、VEGFは発育中の腎臓全体に位置することが確認された(図3C:10週目、図3D:12週目)。興味深いことに、VEGFxxxbについて染色されたが、pan−VEGFについて染色されなかった領域はなかった。一方、VEGFxxxb抗体は発現を検出しなかったが、pan−VEGF抗体は発現を検出した領域(間葉を含む)は多かった(図4A及び図4E)。アイソタイプマッチアフィニティー精製マウスIgGを使用した場合には染色は観察されなかった(図3E:10週目、図3F:12週目)。
【0099】
凝集小胞では(図4B、cv)、VEGFxxxb染色は周囲の間葉よりも強かった(図4A及び図4B、m)。上皮形成時に最も強度の高い染色が観察され、原始上皮細胞の先端及び基底外側の部分において染色は最も強く、核領域において最も弱く、細胞質細胞内局所化を示した。また、pan−VEGF染色も凝集小胞におけるこれらの領域で明らかだった(図4E及び図4F)。C(図4C、G)及びS体(図4D、H)に発育が進むと、VEGFxxxb染色(図4C及び図4D)は、pan−VEGF染色(図4G及び図4H)と同様に、発育中のネフロンの原始円柱上皮細胞の先端及び基底外側の部分にさらに限定された。内皮細胞が浸潤する糸球体裂溝においてVEGFxxxb染色はより拡散していた(図4D、H、矢印)。
【0100】
原始上皮細胞及び糸球体裂溝で観察された上記染色パターンは、糸球体形成の毛細血管係蹄段階においてより拡散しているように見えた(図5A)。一方、pan−VEGFではより強く見えた(図4Eと図4Fの比較及び図5Aと図5Bの比較)。糸球体が形成されると(図5C)、VEGFxxxb染色は発育中の糸球体上皮(足細胞)及び内皮細胞で減少するように見えるが(図5E)、ボーマン嚢に沿った体腔壁上皮細胞及び密集斑細胞では著しい染色が観察された(図5E)。pan−VEGF発現は糸球体成熟化にわたって維持されるように思われ、VEGFxxxbよりも多くの糸球体上皮細胞が染色された(図5D及び図5F)。一方、成熟した糸球体では、VEGFxxxb染色は足細胞の亜集団に限定された(図2A)。これはpan−VEGF染色にも当てはまるように思われたが、pan−VEGF抗体によってVEGFxxxb抗体よりも多くの足細胞が特定された(図2D)。
【0101】
原始腎皮質の発育細管におけるVEGFxxxbの発現
調査を行った発育段階全体にわたって、曲細管の近位及び遠位部分で明確なVEGFxxxb染色が観察された(図6A)。より具体的には、原始上皮細胞の先端及び基底外側部分で染色が観察された。また、腎皮質の細管発育の全ての領域で染色が観察された。発育中の腎皮質の細管において同等なpan−VEGF染色が観察された(図6B)。
【0102】
原始腎髄質におけるVEGFxxxb染色
VEGFxxxb染色は発育中のネフロンの原始上皮細胞に局在しているように見えたが(図6C)、pan−VEGF染色は腎髄質全体に高い強度で広がり(図6D)、VEGFxxxb染色は先端及び基底外側で観察されたが、髄質に延びる遠位尿細管及び集合管の上皮細胞の中央核周囲領域ほど強くはなかった(図6C)。また、曲細管の遠位部分が特別な輸送セグメントに分化している部分(ヘンレ係蹄)では、VEGFxxxb染色強度は低くなっていた(図6C)。また、弱いVEGFxxxb染色は直細血管の内皮細胞でも観察された(図6C)。
【0103】
試験管内におけるヒト糸球体及び内皮細胞に対するVEGF165bの作用
発現の変化は、胚、成人及び疾患における機能の変化を反映する場合がある。発育中のヒト腎臓におけるVEGFxxxbの役割は未知である。VEGF165bは、VEGF165に応答して内皮細胞の遊走を阻害することが示されているが、VEGFアイソフォームの発現レベルを制御することによって阻害を均衡させることができるか否かについては判明していない。試験管内においてVEGF165bが用量依存的に内皮細胞に作用するか否かを調べるために、ヒト内皮細胞の遊走に対するVEGF165bの作用を推定した。図7aは、VEGF165bがVEGF165に応答してHUVECの遊走を阻害したことを示している(IC50=0.29±0.03倍(すなわち、40ng/mL VEGF165が11.4±1.4ng/mL VEGF165bによって50%阻害、n=3)。これは、糸球体の発育の内皮浸潤段階におけるVEGF165bのダウンレギュレーションと一致している。VEGF165bが糸球体の発育時に有利な作用を有するか否かを調べるために、足細胞の細胞毒性に対するVEGF165bの作用を測定した。VEGF165bは、107±1.2pMのEC50で用量依存的に初代培養足細胞の細胞毒性を減少させ(図7b)、VEGF165bが細胞保護作用を有することが分かった(n=8)。LDHアッセイは細胞質タンパク質を放出する細胞の数だけを測定し、アポプトーシスと壊死を区別しない。興味深いことに、VEGF165bは足細胞の増殖に影響を与えず(15.8±1.0×10cpm/cellに対して16.5±1.1×10cpm/cell、n=6)、ヒト足細胞に対する抗アポプトーシス作用を示唆している。これは、アネキシンV及びヨウ化プロピジウム染色を使用したフローサイトメトリーによって確認された(図7c)。血清飢餓は、かなりの割合の細胞のアポプトーシスを引き起こしたが(図7Ciの領域A)、アポプトーシスは0.3nM VEGF165bによる処理によって阻害された(図7cii)。VEGF165bが経内皮電気抵抗(TEER)の糸球体内皮障壁機能に影響を与えるか否かを調べるために、糸球体内皮透過性のインビトロ検定を使用した。VEGF165は糸球体内皮TEERを有意に減少させたが(単層透過性の上昇を示す)、VEGF165bはTEERを有意に上昇させ、VEGF165による上昇を阻害した(図7d、n=4)。そのため、VEGF165とは対照的に、VEGF165bは、試験管内における足細胞の生存を維持しながら、内皮細胞の遊走を防止し、単層透過性を減少させる。
【0104】
考察
正常状態及び疾病状態の両方において抗体染色法、RT−PCR、in situハイブリダイゼーション及びノーザンブロッティングによって腎皮質及び髄質におけるVEGFの発現が明らかになっているため、腎臓の機能及び発育におけるVEGFの役割は調査対象となってきた。VEGFは他の組織のほとんどと比較して腎臓において高度に発現するが、抗血管新生VEGFxxxb変異体に関する研究はほとんど行われていない[16,20,25]。正常な腎皮質においてVEGFxxxbスプライス変異体をコードするmRNAが最初に文献に記載され、アイソフォーム特異的siRNAによってヒト足細胞においてVEGF165bタンパク質が最初に特定された[26]。しかしながら、本願明細書に記載した実験は、総VEGF濃度に対するVEGFxxxbの寄与を最初に定量化したものである。正常な腎皮質ではVEGFの約半分がVEGFxxxbであるという知見は、正常な腎組織及び疾患状態におけるVEGFの発現に関する多くの研究に関する我々の解釈にとって重要な意義を有する[15]。VEGFxxxbアイソフォームは腎組織における総VEGF濃度の非常に重要な成分であるという知見は、未知の生理的関連性を示唆するものである。
【0105】
pan−VEGF及びVEGFxxxb染色パターンの比較
未知のアイソフォームファミリーのVEGF−A(mRNA及び/又はタンパク質)は、齧歯動物及びヒトの組織における発育中のネフロンの推定及び成熟足細胞及び原始円柱上皮細胞内において検出されている[2,4〜7,27,28]。本研究では、ヒト後腎臓におけるVEGFxxxbタンパク質の存在及び局在化を調べ、その時空間染色パターンをpan−VEGF抗体によって検出されたものと比較した。免疫組織化学的染色を使用して、10及び12週目の胎児から採取した後腎臓においてVEGFxxxbを検出した。後腎臓のpan−VEGF染色は過去の研究(VEGFはネフロンの推定及び成熟足細胞及び原始円柱上皮細胞内において検出された[2,4〜7,29])と非常に良く一致した。後腎臓には、VEGFxxxbアイソフォームについて染色されるが、pan−VEGFについて染色されない領域はなく、pan−VEGFについて染色されるが、VEGFxxxbアイソフォームについて染色されない領域があったため、VEGFxxxbアイソフォームはVEGFを発現する細胞のサブセットに存在するように思われた。成人の腎臓では、曲細管におけるVEGFの存在は、成体組織における腎臓VEGF合成の主要な源は足細胞であることを示すin situハイブリダイゼーション研究[30]と対照的であり、尿細管細胞による糸球体由来VEGFタンパク質の取り込みの可能性を示唆している。
【0106】
糸球体形成及びVEGFxxx
糸球体形成は腎臓内皮細胞とネフロン上皮細胞の間の相互誘導的な相互作用に依存する。特定の段階において様々な遺伝子[31〜34]及び成長因子[9,11,35〜37]の関連が明らかにされているが、細胞分化イベントの分子調整剤は十分に理解されていない。胚全体におけるVEGFの発現において観察されるように[38,39]、VEGFに対する用量感受性は発育糸球体内に存在している[8]。VEGF165bは、VEGF165の作用のいくつかを打ち消し、足細胞生存に用量依存的作用を有することが示されているため、VEGFxxxbに対する糸球体形成の用量感受性も正常な腎皮質形成の重要な要素である可能性が高く、マウス足細胞におけるVEGF165b過剰発現を示す遺伝子導入マウスは糸球体透過性を減少させたことを示す最近の研究[40]は上記示唆を支持するものである。
【0107】
VEGFに関する過去の研究
腎皮質[14]及び糸球体内のタンパク質[16]からのVEGF165b mRNAの単離並びに分化しているが、増殖していない不死化足細胞株におけるVEGF165b mRNA及びタンパク質の特定[26]は別として、過去に使用されている方法は、VEGFxxxbアイソフォームを検出しないか(エクソン8の近位部におけるプライマーを使用したRT−PCR)、VEGFxxxアイソフォームとVEGFxxxbアイソフォームを区別していない。この点を扱った唯一の研究は、胎児、子供及び成人の糸球体から採取した顕微解剖mRNAを調べ、S及びC体におけるVEGF165b mRNAの発現は成人又は子供の糸球体よりも低いことを見い出している。従って、S及びC体を介した凝集小胞から未成熟糸球体へのタンパク質発現の減少は、VEGFタンパク質はmRNAよりもゆっくりとターンオーバーされるため、一時的にわずかにシフトしたmRNAレベルにおける内因性ダウンレギュレーションの結果である可能性がある。また、Schumacherらは、成人の糸球体においてVEGF165よりも高度にVEGF165bが発現することを報告している。VEGFxxxアイソフォームを特異的に検出する抗体は得られていないが、成人の糸球体におけるVEGF染色のほとんどはVEGF165bである可能性が高い。興味深いことに、Schumacherらは、Denys−Drash糸球体におけるVEGF165bの完全な喪失について報告しており(WT1へのリンク[20])、この知見は試験管内における過剰発現研究によって最近確認されている[41]。発育時のVEGFの足細胞特異的ノックアウトにより、糸球体形成の不足及び出産直後の腎不全及び6時間以内の死亡が発生する[8]。これは、おそらくは、内皮細胞は糸球体に移動せず(糸球体における表現型識別可能な内皮細胞の不足によって証明)並びに異常な微小血管形成及び糸球体濾過によるものである。しかしながら、VEGFノックアウトはVEGFxxxbノックアウトでもあり、表現型のどの部分がVEGFxxxbノックアウトに依存しているかは明らかではない。腎臓機能に影響を与えることが示されているVEGF−TRAP[42]、sFlt−1[43]、ベバシズマブ[44]及びその他のモノクローナル抗体等のVEGFの阻害剤もVEGFxxxbアイソフォームに影響を与える可能性が高い。従って、糸球体機能におけるVEGFの阻害的役割について行われた過去の研究の結果が血管新生促進アイソフォーム及び/又は抗血管新生アイソフォームによるものであるか否かは明らかでではない。
【0108】
腎臓におけるVEGFxxxb発現の機能
VEGF165bは、試験管内におけるVEGF165媒介上皮細胞増殖及び遊走並びに生体外における単離動脈の血管拡張[14,16]、腸間膜及び眼におけるVEGF165媒介生理的血管新生[16]、ニワトリ絨毛尿膜及びマウスのdorsal skin chamber[18]、腫瘍モデルにおける病理学的VEGF−媒介血管形成[16]及び生体内における眼の低酸素による網膜血管新生[17]を阻害する。VEGF165bは、内皮媒介シグナル伝達に対する優性阻害及び部分的アゴニスト活性を有することが示されており[18][16]、遊走を阻害し、細胞毒性から保護する能力を有することを潜在的に示している。一方、VEGF165bは試験管内における糸球体の内皮単層の完全性に対する作用は示さなかった(図7C)。発育中の腎臓では、VEGFxxxアイソフォームは、内皮細胞の生存及び遊走、毛細血管透過性[9]及びおそらくは上皮細胞の生存[12]を調節(媒介)すると考えられる。本願明細書に示す結果は、VEGFxxxbアイソフォームは透過性の増加に依存することなく上皮細胞生存を維持し、内皮細胞の遊走時にダウンレギュレートされ、おそらくは糸球体裂溝への浸潤を可能とするというコンセプトと矛盾していない。
【0109】
Ereminaら[8]は、発育時のVEGF165の無制限の発現はかなり有害であることを示しており、これらの結果と考え合わせると、血管新生促進/抗血管新生VEGF−Aの均衡が正常な発育及び機能に必要であることを示唆している[8,9,31,33,45,46]。従って、VEGFxxxbアイソフォームの発現並びに腎臓発育時の遠位及び近位3’末端スプライシングの制御は、VEGFxxxによる応答の調節に重要な役割を果たす可能性がある。VEGFxxxbは発育中の腎臓において調節的な役割を果たす可能性がある。例えば、因子は、原始糸球体及びその後の糸球体の発育において糸球体裂溝への内皮細胞の浸潤を制限・停止させなければならない。この仮説を取り組むためには、VEGF−A生態(血管新生及び透過性)並びにより重要にはそれらの阻害を考慮に入れて設計された条件的トランスジェニックノックアウト及び過剰発現モデルを含むさらなる調査が必要である。
【0110】
結論
本実施例では、ヒト胎児から採取した後腎臓におけるVEGFxxxbの発現について調べ、糸球体機能に関与する細胞型に対するVEGFxxxbの役割を理解するためのインビトロ実験を行った。VEGFxxxbは成人の腎皮質において総VEGFタンパク質の45%を構成し、VEGF165bは糸球体内皮細胞透過性を増加させず、遊走を阻害し、足細胞に対して細胞保護作用を有する。腎臓の発育時には、VEGFxxxbは後腎の凝縮小胞、C体の上皮細胞、S体の内皮細胞及び上皮細胞並びに未成熟足細胞で発現した。糸球体が成熟すると発現は減少した。これらの結果は、抗血管新生VEGFxxxbアイソフォームは成人及び発育中の腎皮質において高度に発現することを示し、VEGFxxxbファミリーは、VEGFxxxアイソフォームの血管新生透過性亢進性を調節することによって糸球体成熟化及び足細胞保護において役割を果たすことを示唆している。
【0111】
実施例2
材料及び方法
実験動物
全ての形質転換(TG)系統は、C57BL6xCBA/CAバックグラウンドで発生した。動物の飼育及び処置は、英国内務省のプロトコル及びガイドラインに従って行った。形質転換マウスはC57BL6バックグラウンドのマウスと掛け合わせた。透過性実験のために、F2−3継代形質転換マウス(雄)を選択し、野生型同腹子をヘテロ接合体マウスの対照として使用した。
【0112】
pネフリン−VEGF165bの作成(図9Ai)
文献に記載されている方法でpcDNA3−VEGF165bをクローニングした[1]。VEGF165b cDNAとポリA信号の上流のマウスネフリンプロモーターを有するプラスミドを発生させるために、pcDNA3−VEGF165bをHindIIIで消化させてCMVプロモーターを除去した。マウスネフリンプロモーター(Susan Quaggin教授が提供)はプラスミド5’−ネフリン−pKOに由来する。5’−ネフリン−pKOをPac I及びXho I酵素で消化させ、末端を平滑化させた。Hind III結合末端を得るために、平滑化DNA生成物をリン酸化HindIIIリンカーでライゲートし、HindIII酵素で消化させた。ラピッドDNAライゲーションキット(Roche Applied Science)を使用し、CMVプロモーターを除去し、正しい配向を有するコロニーを選択した鎖状化pcDNA3−VEGF165bにネフリンプロモーターDNAフラグメントを挿入した。
【0113】
足細胞トランスフェクション
特性分析されているヒト条件的不死化内蔵糸球体上皮細胞(hCIP)(39)(Moin Saleem教授から寄贈)を、RPMI 1640培地内において、インシュリン、トランスフェリン、亜セレン酸塩(Sigma、ドーセット(英国))及び10%胎児ウシ血清と共に33℃、5%COで培養した。トランスフェクション実験のために、hCIPを約50%のconfluenceまで培養し、リポフェクトアミン試薬(Invitrogen)を使用して、取扱説明書に従って等量のpネフリン−VEGF165b及び5’−ネフリン−pKO(空のベクター)をHCIPにトランスフェクトした。対照、模擬トランスフェクト足細胞及びpネフリン−VEGF165bトランスフェクト足細胞の上清におけるVEGF165bの発現を、VEGFxxxb−ファミリー特異的ELISA(R&D Systems、DY304E)によって分析した(図9Aii)。
【0114】
形質転換マウスの継代
微量注入のためのmNephrin−VEGF165b−pAのDNAフラグメントは、pネフリン−VEGF165bのHindIIIとHaeIIによる消化によって生成し、elutipミニカラム(Schleicher & Schuell biosciences)による最終精製の前に、QIAEX II DNA Extractionキット(QIAGEN、英国)を使用して取扱説明書に従ってゲル精製した。胎芽への精製DNAの微量注入は、B&K Universal Ltd.(英国)によって行った。簡単に説明すると、5〜10ng/μLの精製DNAフラグメントを、若齢のC57BL6xCBA/CAマウスから得た受精1細胞期の胎芽の前核に微量注入した。M16培地(Sigma Aldrich、英国)内において胎芽を37℃、5%COで一晩培養し、翌日、C57BL6xCBA/CAバックグラウンドの疑似妊娠マウスの卵管に移植した。離乳後、尾部生検から抽出したゲノムDNA(ゲノムDNA)を使用し、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)(図9B)及びサザンブロッティング(図9C)によってトランス遺伝子の存在についてスクリーニングした。マウスは、標準的な飼育/遺伝子型決定プログラムを使用して同型接合性に飼育した。ホモ接合動物を発生させるために、兄弟(創始系統1)を掛け合わせ、野生型と掛け合わせたF1世代の遺伝子型を決定した。ホモ接合体を得るためには、トランス遺伝子を有するようにするために少なくとも3匹の同腹子及び20匹以上の子が必要だった。機能表現型分析のための動物数は、統計分析を行うために必要な数によって決定した(過去のデータによれば、25%の糸球体LpA/vの有意差を得るためには、3匹以上の動物と5つの糸球体の使用が必要である)。(英国内務省(license and ethical review board)の制限)。
【0115】
PCR
PCRは、文献に記載されている方法で行った(Y Qiu et al.、2008、Faseb J.、2008、22(4)、1104−12)。簡単に説明すると、1対のプライマー(フォワードプライマー配列:5’−TCA GCG CAG CTA CTG CCA TC−3’(SEQ.ID.NO:1)及びリバースプライマー配列:5’−GTG CTG GCC TTG GTG AGG TT−3’(SEQ.ID.NO:2))によって208bpのPCR産物を得、トランス遺伝子を特異的に検出した。
【0116】
253bpのバンドのマウスβ−グロビンのための別の1対のプライマー(フォワードプライマー配列:5’−ACG TCC TAA GCC AGT GAG TG−3’(SEQ.ID.NO:3)及びリバースプライマー配列:5’−CAG CCT TCT CAG CAT CAG TC−3’(SEQ.ID.NO:4))も増幅に含めた(内部対照)。
【0117】
各反応には、2μLの10x緩衝液、0.2mM dATP、dGTP、dCTP及びdGTP、1.5 mM MgCl、50 nMフォワード及びリバースプライマー、0.5単位のTaqポリメラーゼ(Abgene、英国)、0.5μLのゲノムDNA、20μLの水を使用した。PCRは94℃で4分の条件で開始し、変性(94℃、30秒)、アニーリング(62℃、30秒)、伸長(72℃、30秒)、最終伸長(72℃、10分)からなるサイクルを35回行った。
【0118】
サザンブロッティング
10〜15μgのgDNA(尾)をEcoRI制限酵素で消化させた。DNAを0.8%アガロースゲルで分離し、変性し、Hybond N+膜(Amersham、英国)に移した(capillary−transferred)。DNAは80℃で2時間のべークによって固定した。膜は、アルカリホスファターゼ標識DNAフラグメント(微量注入に使用したものと同じ)で調べた。プローブの調製及びトランス遺伝子の検出は、Gene Images Alkphos Direct Labelling and Detection System(Amersham、英国)を使用して製造者のガイドラインに従って行った。
【0119】
RT−PCR
RT−PCRは、文献に記載されている方法で行った(Y Qiu et al.、2008、Faseb J.、2008、22(4)、1104−12)。簡単に説明すると、RNAをTrizol(Invitrogen)抽出によって単離し、gDNA汚染を防ぐために製造者の取扱説明書に従ってDNase I(Invitrogen)によって消化させた。製造者(Promega)が推奨しているように、表十的な方法により、AMV逆転写酵素を使用して1μgのDNase処理RNAをcDNAに逆転写した。フォワードプライマー(5’−TCA GCG CAG CTA CTG CCA TC−3’(SEQ.ID.NO:5)及びリバースプライマー(5’−ACA GAT GGC TGG CAA CTA GA−3’(SEQ.ID.NO:6)を使用して、DNase処理cDNA及びRNAに対してPCRを行った。PCR増幅は94℃で4分の条件で開始し、94℃で30秒、50℃で30秒、72℃で30秒、最終伸長(72℃、10分)からなるサイクルを35回行った。199bpにおけるバンドはVEGF165bトランスジェニック発現を示した。
【0120】
VEGFxxxbの酵素結合免疫測定(ELISA)
RIPA緩衝液を使用してマウス腎臓組織から組織タンパク質溶解物を調製した。培養足細胞のために、トランスフェクション行った細胞又は行っていない細胞を含む馴化培地を使用した。タンパク質濃度はBio−radアッセイ(Bio−rad)によって測定し、VEGF165b濃度は、VEGFxxxbアイソフォームに対する特異的検出抗体について報告されているようにELISAによって測定した。
【0121】
簡単に説明すると、1x PBS(pH7.4)で希釈した0.08μgのヤギ抗VEGFポリクローナルIgG(AF293−NA、R&D Systems)を、96ウェルプレート(Immulon 2HB、Thermo Life Sciences、ベイジングストーク(英国))の各ウェルに室温で一晩吸着させた。各工程間に、プレートを1xPBS−Tween(0.05%)で3回洗浄した。37℃で1時間、PBSに溶解した100μLの5%BSAでブロックした後、PBSに溶解した1% BSAで希釈した100μLの組替え型ヒトVEGF165b(R&D Systems)(62.5pg/mL〜4ng/mL)又はタンパク質試料を各ウェルに添加した。振とうしながら37℃で1時間にわたって培養し、3回洗浄した後、100μLのマウスモノクローナル抗VEGFxxxbビオチン化IgG(クローン264610/1、R&D Systems)(0.4μg/mL)を各ウェルに添加し、振とうしながら37℃で1時間放置した。PBSに溶解した1%BSAで1:200に希釈した100μLのストレプトアビジン−HRP(R&D Systems)を添加し、室温で20分間放置し、100μL/ウェルのO−フェニレンジアミンジヒドロクロリド溶液(Substrate Reagent Pack DY−999;R&D Systems)を添加し、遮光し、室温で20分間培養した。50μL/ウェルの1M HSOによって反応を停止させた後、Opsys MR 96ウェルプレートリーダー(Dynex Technologies、バージニア州シャンティイ(米国))を使用して492nmの吸光度を直ちに読み取った(対照は460nm)。
【0122】
糸球体透過性
単離した完全な糸球体の正規化糸球体限外濾過係数(LpA/vi)を、Salmon et al.2006(40)に記載されたオンコメトリー法を使用して算出した。
【0123】
糸球体の単離及び溶液
マウス(8〜10カ月齢)を頸椎脱臼によって殺し、腎臓を取り出した。通常の方法を使用して、糸球体を1%ウシ血清アルブミン(BSA)を含むリンゲル液に単離した。100μmのメッシュに保持された糸球体を氷上に保持してモフォロジを保存した。単離時に、糸球体毛細血管内の血漿タンパク質濃度は周囲の溶液と平衡化した。希釈BSA(1%)又は濃縮BSA(8%)を含む潅流液をリンゲル液内において調製し、pHを7.45±0.02に調節した。
【0124】
装置
ガラス毛管に接続されたミクロピペット(外径:1.2mm、Clark Electromedical Instruments、レディング(英国))を使用した。13μmの開口部先端は矩形断面を有するマイクロスライド(ガラス製)(内径400μm×4mm、Camlab、ケンブリッジ(英国))内に取り付けた。マイクロスライドは、倒立顕微鏡(Leica DM IL HC Fluo)を使用して10x対物レンズ上で可視化した。モノクロビデオカメラ(日立KP−M3AP)を顕微鏡の上部に取り付け、システムに導入した各糸球体を録画した。ビデオカメラは、デジタルタイマ(FOR.A VT33)を介してビデオカセットレコーダ(パナソニックAG7350)及びモノクロモニタ(ソニーSSM−125CE)に接続した。潅流液は管を介してマイクロスライドに接続された加熱貯槽に保持した。ラピッドレスポンスリモートタップ(075P3、Bio−Chem Valve,Inc.)により、マイクロスライドに流れる潅流液を制御した。システム内の流体は、温水浴に接続されたチューブ及び加熱コイルからなる装置を使用して37℃に維持した。
【0125】
糸球体の体積変化
ボーマン嚢及び細動脈又は管状フラグメントを含まない糸球体を選択した。全ての糸球体の観察は腎切除から3時間以内に行った。希釈潅流液内における平衡化(2分)の後、ラピッドレスポンスタップを切り替え、濃縮BSAをマイクロスライドに流した。
【0126】
糸球体の体積変化の分析
潅流液の切り替えはビデオテープに記録し、Apple imovies(Apple USA)及びアナログデジタルコンバータ(ADVC−300、Canopus)を使用してシーケンスをオフラインでレビューした。全ての測定は遺伝子型又は処理を知らないオペレータが行った。潅流液を切り替えた時点の前後の画像のシーケンスを作成した。各糸球体像をAdobe Photoshop CS3(Adobe Systems, Inc.、カリフォルニア州(米国))で複製し、image J(米国国立衛生研究所)を使用して面積(Aμm)を算出した。糸球体の体積は、糸球体の画像面積(A)を以下の式に代入することによって得た。
【0127】
糸球体の体積=4/3πr
式中、rは糸球体の半径である。従って、糸球体の体積は以下のように表される。
【0128】
糸球体の体積=[4/3A((A/π))]/10−6
糸球体の体積(nL)を、新たなoncopressive潅流液の到着を示すシュリーレン現象が生じてからの時間に対してプロットした。次に、2つの回帰線がこれらの点に適用した。第1の回帰線の傾きはゼロに設定し、糸球体の体積が安定していた時の溶液切り替え前の点に適用した。2つの線はブレイクポイントで交わるように計算した。ブレイクポイントは、糸球体の体積が減少する時点と定義した。第2の線は、ブレイクポイントから少なくとも0.04〜0.1の期間をカバーする点に適用した。これらの境界内において適用した回帰線が最も大きな傾きを有する点を選択した。
【0129】
Aの算出
第2の回帰線の傾きは糸球体の体積変化の最も大きな初期変化度を示し、スターリングの式におけるJと等しい。
【0130】
/A=L[(P−P)−σ(Π−Π)]
単離した糸球体に作用する正味静水圧は無視することができる。過去の研究は、単離した糸球体の反射率はほぼ1であることを示唆している。従って、スターリングの式は以下のように書き直すことができる。
【0131】
A=J/−ΔΠ(nlmin−1mmHg−1
式中、ΔΠは毛管及び間質膠質浸透圧の差である。
【0132】
VEGF165b実験
実験の各群では、野生型C57/Blk6マウスから採取した糸球体を組替え型ヒトVEGF165b(rhVEGH165b;PhiloGene Inc.、ニュージャージー州(米国))に暴露した。単離後、1%BSA溶液又は40pm VEGF165b又は1nM VEGF165bを含有する1%BSA溶液内において、糸球体を37℃で培養した。そして、各溶液の糸球体を個別にマイクロスライドに載置し、限外濾過係数を上述したように算出した。
【0133】
表現型及び組織学的分析
各群のマウス(8〜10カ月齢)から、表現型及び組織学的分析のための組織、血漿及び尿を採取した。動物は代謝ケージ内に個別に12時間収容して尿試料を採取した。5%イソフルランを使用してマウスに麻酔をかけ、心臓から血液試料を直接採取した。次に、頸椎脱臼によってマウスを殺した。腎臓を取り出し、分割し、4%PFA、2.5%グルタルアルデヒド又は液体窒素内に浸漬して保存した。
【0134】
免疫組織化学分析
野生型、ヘテロ接合及びホモ接合体マウスから採取した腎臓試料をホルマリンによって固定し、パラフィンに包埋した。5μmの切片をゼラチン/ポリ−l−リジン被覆ガラススライドに封入した。37℃のインキュベータ内において切片をスライド上で一晩乾燥した。次に、Histoclear(RA Lamb、イーストボーン(英国))を使用して切片を5分間脱ろうし、エタノール溶液(100、90、70%v/v)を使用して再水和させた。全ての腎臓の矢状切片を切断し、染色した(H&E)。切片は、2人の査定者が独自にコード化・レビューした。査定者は切片の由来を知らず、糸球体の大きさ、メサンギウム基質、糸球体のセルスコア又は管状形態に関してマウスを区別することができなかった。
【0135】
0.01mMクエン酸・飽和クエン酸ナトリウム緩衝液(pH6.0)内において、800W、95℃で7分間及び120Wで9分間、マイクロ波抗原回復を行った。切片を室温に冷却し、脱イオン水内で二度洗浄した(各5分間)。次に、1xPBSで希釈した3%v/v過酸化水素(BDH、プール(英国))と共に切片を5分間培養し、1xPBSで5回洗浄し、5 %w/v BSA(Sigma)でブロックした後、5%w/v BSAに溶解した1.5%w/v 正常ヤギ血清(Vector Laboratories)でブロックした(30分間)。切片を室温において0.05%v/v PBS−Tweenで5分間洗浄した後、1xPBSに溶解した1.5%w/v 正常ヤギ血清で希釈した一次抗体と共に培養した。ポリクローナルウサギVEGF抗体(A20 sc152;Santa Cruz Biotechnology Inc.、カリフォルニア州サンタクルス(米国))を使用した。また、組織切片をアフィニティー精製した正常ウサギIgG(Sigma)(等濃度)で処理した(陰性対照)。切片は0.05%v/v PBS−Tweenで2回洗浄した(各5分間)。ブロッキング工程は上述したように繰り返し、0.05%v/v PBS−Tween内で5分間洗浄した。対照を含む全ての切片を、室温の湿度室内において、1.5%w/v正常ヤギ血清で希釈したビオチン化ヤギ抗ウサギIgG(Vector Laboratories)と共に1時間培養した。切片を0.05%v/v PBS−Tweenで2回洗浄し(各5分間)、室温の湿度室内において、アビジン−ビオチン化酵素完全キット(Vector Laboratories)と共に45分間培養した。さらに、切片を0.05%v/v PBS−Tweenで2回洗浄し(各5分間)、3,3’−ジアミノベンジジン基質(Vector Laboratories)と共に培養して茶色の生成物を得た。脱イオン水で2回洗浄(5分間)することによって反応を停止させた。切片をマイヤーヘマトキシリン(BDH)で対比染色し、水中で分化させた。切片を高濃度のエタノール(70、90、100%v/v)内を通過させることによって脱水し(少なくとも各2分間)、キシレン内で少なくとも10分間洗浄し、組織学的分析のためにDPX mountantに封入した。Nikon Eclipse E−400顕微鏡を使用して染色を調べた。画像はDCN−100デジタルイメージングシステム(Nikon Instruments)を使用して撮影した。
【0136】
電子顕微鏡分析
Hayat(23)に記載された腎臓固定法を修正して使用した。各マウスから採取した腎臓の一部を直ちに切除し、グルタルアルデヒド固定液プール(0.1Mカコジル酸緩衝液(pH7.3)に2.5%グルタルアルデヒドを添加、4〜8℃)内でスライスした。また、腎臓皮質の立方体(直径:0.5〜1mm)をグルタルアルデヒド固定液によって4℃で固定した。最低3時間の固定後、組織を新鮮な固定液内に一晩放置し、カコジル酸緩衝液で洗浄し、オスミウム(0.1Mカコジル酸緩衝液に1%四酸化オスミウムを添加、pH7.3、4℃)内において1時間固定した。組織をカコジル酸緩衝液及び蒸留水で洗浄し、エタノールで脱水し、浸透させ、アラルダイト樹脂(Agar Scientific、スタンステッド(英国))に包埋した。糸球体は、トルイジンブルーで染色した切片(0.5μm)から同定した。EM観察のために糸球体を70〜100nmの厚みに切断した。デジタル電子顕微鏡写真(890〜2900倍)を分析した。足細胞下空間(SPS)による糸球体濾過障壁のパーセント範囲(%coverage)、糸球体基底膜の厚み、SPSの高さ、足突起幅(又はスリット隔膜間の間隔)、内皮開窓間の間隔及び開窓幅(width of fenestrations)を測定した。電子顕微鏡写真からの直線的な測定は、Photoshipグリッドを使用してランダムな点で行った。開窓の変化を明確にするために、40nmの切片を使用した。
【0137】
マウス特異的VEGF ELISA
形質転換及び対照マウスから腎臓組織タンパク質溶解物を調製し、総タンパク質を上述したようにを定量化した。各試料のマウスVEGF−A濃度は、可溶性アイソフォームであるVEGF120及びVEGF164を認識する市販の酵素免疫測定キット(Quantikine(登録商標)、R&D Systems;ミネソタ州ミネアポリス)を使用して2連(duplicate)で測定した。VEGFに特異的なモノクローナル抗体でマイクロプレートを予めコーティングした。遺伝子組み換えマウスVEGFを7.8〜250pg/mLの範囲の濃度に希釈した。標準及び試料をウェルにピペットで添加した。試料中に存在するVEGF−Aは固定化抗体に結合した。未結合の物質を洗い流した後、セイヨウワサビペルオキシターゼに結合させたVEGFに特異的な酵素結合ポリクローナル抗体をウェルに添加した。洗浄によって未結合の抗体酵素試薬を除去した後、100μL/ウェルのO−フェニレンジアミンジヒドロクロリド溶液(Substrate Reagent Pack DY−999;R&D Systems)を各ウェルに添加し、ホイルを使用してプレートを遮光し、室温で20分間培養した。50μL/ウェルの1M HSOによって反応を停止させた後、Opsys MR 96ウェルプレートリーダー(Dynex Technologies、バージニア州シャンティイ(米国))を使用して492nmの吸光度を直ちに読み取った(対照は460nm)。
【0138】
糸球体濾過率
糸球体濾過率(GFR)は、麻酔をかけた9ヵ月齢のヘテロ接合体マウス及び同一齢の同腹子対照マウスにFITC−イヌリンを1回ボーラス注入することによって測定した。
【0139】
条件的不死化ヒト糸球体内皮細胞(ciGEnC)
ciGEnCsは十分に特性分析されており、文献に記載されている方法で増殖させ、維持した(48)。PV−1ウェスタンブロット実験の場合には、33℃で6日間増殖させた後、37℃で5日間増殖させた。細胞を4時間血清飢餓培養した後、1nM VEGF165又は1nM VEGF165b又は1nM VEGF165又は1nM VEGF165bの組み合わせによって処理し、24時間放置した。腎皮質、125m及び180mの篩いを通過した糸球体溶解物及び足細胞溶解物を対照とした。文献に記載された実験プロトコルを使用した(1)(一次抗体濃度1:200(抗PV−1)、二次抗体濃度1:10,000)。
【0140】
統計
数値は平均±標準誤差として示す。p<0.05は有意であるとみなした。統計分析方法は、「図面の簡単な説明」に記載されているように関連する図面の凡例に含まれる。
【0141】
結果
pNeph−VEGF165bヘテロ接合形質転換マウスの継代
ネフリンプロモーターの対照下でVEGF165b cDNAを発現ベクターにクローニングした(図9Ai)。トランスフェクション及び構成機能性を評価するために、条件的不死化ヒト足細胞を発現構成体でトランスフェクトし、細胞上清における48時間でのVEGF165bの発現を調べた。対照ベクター又はトランスフェクトしていない細胞と比較して有意に多くのVEGF165bがトランスフェクトした足細胞で観察された(図9Aii)。潜在的な創始系統を、注入胎芽からの子のPCR(図9B)及びサザンブロット分析スクリーニングによって特定した(図9C)。これらの創始系統をその後の研究に使用した。創始系統間には、単離した糸球体の機能表現型(LpA/vi:water−area product透過性)には差がなかった(図9D)。
【0142】
pNeph−VEGF165bヘテロ接合及びホモ接合形質転換マウスの腎皮質におけるVEGF165bの発現
形質転換マウス及び同一齢の同腹子野生型対照の腎皮質におけるVEGF165bの発現を3つの方法を使用して測定した。第1の方法は、トランス遺伝子のための腎皮質のエクソン8b特異的RT PCR(図10Ai及び図10Aii)(<0.05、カイ二乗傾向性検定、1群あたりN=3)である。第2の方法は、抗ヒト抗VEGF抗体を使用する免疫組織化学分析(図10B)であり、足細胞におけるVEGFのIHC染色増加が見られた。第3の方法は、VEGFxxxb特異的ELISAを使用する、形質転換及び野生型マウスの腎皮質から抽出したタンパク質に対するエクソン8b特異的ELISAである(図10C)(p<0.01、ANOVA)。これらの方法は、野生型同腹子対照からヘテロ接合体マウス並びにホモ接合体マウスへの形質転換マウスへの発現の勾配があることを示した。
【0143】
機能表現型:足細胞特異的VEGF165bの過剰発現によって糸球体の透水性と尿タンパク喪失が減少(表1に要約を示す)
トランスジェニック動物の糸球体の透水性がVEGF165bの過剰発現によって変化したか否かを調べるために、野生型、ヘテロ接合及びホモ接合VEGF165b過剰発現マウスの糸球体群における正規化糸球体限外濾過係数(LpA/vi)を(我々が過去に特性を明らかにしたオンコメトリー検定(40)を使用して)調べた。これらの3群間ではLpA/viの著しい差が観察された(図11)(野生型では1.95±0.16nl.min−1mmHg−1、ヘテロ接合体マウスでは1.43±0.1nl.min−1mmHg−1、ホモ接合体マウスでは0.67±0.07nl.min−1mmHg−1、表1)。上記減少が外因性VEGF165によって弱められたか否かを調べるために、形質転換マウスの糸球体のLpA/viを測定した後、糸球体を1時間にわたって1nM VEGF165に暴露した。図11は、この処理によってLpA/viが野生型と同等のレべルに回復したことを示す。LpAは透過率と面積の積(permeability−area product)であり、糸球体毛細血管体積は対照及び形質転換体の糸球体から算出した。有意差は観察されず(野生型(平均0.98±0.16)、形質転換(平均0.81±0.11、p>0.4))、LpA/viの変化は、発達異常による糸球体毛細血管面積の減少ではなく、透水性の変化によるものであることを示唆している。また、形質転換マウス及び野生型マウスにおけるVEGF164の発現を推定したが、VEGFxxxアイソフォームの補償的増加に関する証拠は見出されなかった(データは示さず)。血漿クレアチニン及び尿素濃度及びGFR(306.7±57.52μL/min、n=4、野生型対照対344.1±41.80μL/min、n=4、ヘテロ接合体)には有意な差は観察されなかった。形質転換マウス及び野生型同腹子における血漿クレアチニン及び尿素濃度には有意な差はなかった(図12A及び図12B)。しかしながら、代謝ケージを使用して採取した尿の尿タンパク質:クレアチニン比(uPCR)は、野生型対照と比較してホモ接合体マウスにおいて低かったが(図12C及び表1)、有意ではなかった。また、形質転換マウスの体重と血中グルコース濃度は変化しなかった。
【0144】
【表1】

【0145】
rhVEGF165bの外因性投与によってLpA/viの減少を再現することができるか否かを調べるために、rhVEGF165bの用量を漸増させて野生型糸球体を培養した。VEGF165bの外因性投与により、限外濾過係数は用量依存的に有意に減少した(図13A)。図13Bi及び図13Biiに、VEGF165(増加)(図13Bii)及びVEGF165b(減少)(図13Bi)によるLpA/viにおいて誘発される特徴的に異なる透過性の変化を示す。
超微形態学的表現型:足細胞特異的VEGF165bの過剰発現によって開窓の大きさ及び密度が減少
巨視的には、マウスは18カ月齢まで正常であり、行動、成長率、摂食は正常で、尿沈渣はなかった。光学顕微鏡による組織学的評価により、野生型(WT)及び形質転換マウスの間には明らかな異常がないことが明らかになった(図15A)。しかしながら、透過電子顕微鏡(TEM)による調査により、典型的な糸球体内皮開窓はホモ接合体マウスにおいて特定することが困難であることが分かった(図15B)。
【0146】
超微形態学的測定では、足細胞下空間の範囲、足突起幅及びSPS領域におけるGBMの厚みの変化は見られなかった(表1)。しかしながら、SPS範囲のないGFBの領域におけるGBMの厚みはホモ接合体マウス(240±14nm)に対して野生型対照(196±6nm)で有意に小さかった(p<0.01)。また、開窓密度はホモ接合体マウスにおいて減少した(図16C、表1)。さらに、野生型同腹子対照における開窓のほとんどは開窓隔膜を示さなかった。一方、生体内において通常の糸球体内皮に通常見られる(まれな)明確な隔膜(図16E)とは対照的に、ホモ接合形質転換マウスの開窓の多くは電子高密度物質を含んでいた(図16D)。これらの開窓が異常な隔膜(過剰糖衣、糖衣状物質、篩の栓又は開窓の減衰する端部の(比較的)より頻繁な切断よりも小さな開窓を反映)を含むか否かを定義することはできなかったため、これらを「閉鎖型開窓」と呼ぶ。そのため、さらなるEM特性決定は、ホモ接合体マウスと同腹子対照から平行して固定及び処理した一対の試料から得た40nmの切片を使用して行った。Photoshipグリッドを使用してランダムな測定(複数のマウスから200個所超)を行った(図16)。
【0147】
GBMの尿側では、足細胞、足突起及びスリット隔膜の幅及び密度の有意な差は見られなかった(表1)。一方、血管側では、閉鎖型開窓の割合の有意な増加が見られた(図16A及び図16B)。また、開いた開窓の大きさは野生型対照及びホモ接合体マウスにおいて同様だが(図16C)、閉鎖型開窓はかなり狭かった(図16D)。
【0148】
閉鎖型開窓の性質の詳細な研究は不可能だったが、VEGF165bの過剰発現がPV−1(plasmalemma vesicle protein−1(原形質膜小胞タンパク質−1))の発現に影響を及ぼすか否かを明らかにしようと試みた。免疫金研究において実証された抗体を使用することはできなかったため、条件的不死化糸球体内皮細胞におけるPV−1の発現をウエスタンブロッティングによって調べた。これらの研究では、VEGF165bに暴露した糸球体内皮細胞におけるタンパク質レベルでのPV−1の発現の有意な変化は観察されなかった。
【0149】
糖尿病性糸球体病変に対する耐性
図17は、足細胞特異的VEGF165b過剰発現ヘテロ接合形質転換マウスは、ストレプトゾトシン(STZ)誘導性糖尿病に関連する糸球体病変に対して耐性を有することを示している。
【0150】
野生型同腹子対照と同一齢の12週目のヘテロ接合体VEGF165bマウスの群(n=5、各群)には100μg/g(体重)/日の用量で3日間投与した(200μLの注入量)。対照には同量のクエン酸塩緩衝液を投与した。空腹時(1時間)血糖値、尿タンパク質/クレアチニン比及び体重を2週間毎に測定した。
【0151】
誘導後6週間目に、マウスを代謝ケージに入れ、尿を12時間にわたって採取し、ELISAによって尿中アルブミン量を測定した(*p<0.05(糖尿病野生型と比較、ANOVA、Bonferroni)。STZ群の血中グルコース濃度は同様だった(STZ WT:22.97±1.47mmol/L、STZ HET:26.42±1.45mmol/L(p=NS))。
【0152】
考察
三層フィルタとしての糸球体濾過障壁の従来の見方は、従来は見過ごされていた流体及び分子流に対する抵抗を付加する糸球体構造の超微細構造的(29、30、42)及び生化学的(糖衣)(33)考察並びにGFBは、生物物理学的モデルによって予測されているように水と溶質の移動に対する抵抗となる固定された受動的な篩(又は一連の篩)以上のものであるという認識によって大きく発展した(41)。複雑な超微細構造上には、GFB内において開始し、GFBを変更し、正常な糸球体の表現型を維持するために必要なシグナリング経路が存在する。これらのシグナリング経路はGFB全体において機能し、足細胞と隣接するGECとの間のクロストークに関与すると思われる(12)。そのようなクロストークは、VEGFxxx/VEGFxxxb−VEGF−R2;VEGF−C−VEGF−R3及びAng−1−Tie2軸(他の血管床における微小血管透過性に影響を与えることが示されている全ての分子)を含む(18,2,20,24)。これらの軸は、隣接しているが、上流の糸球体内皮のパラクリン変化を引き出す。これらのtrans−GBM作用の機能的重要性は、複数の足細胞特異的形質転換モデルによって実証されている(14,13,11)。それらのいくつか(タンパク尿及び糸球体血栓性細小血管障害)(13)の表現型は、抗VEGF療法(例えば、モノクローナル抗体であるベバシズマブ)の点からヒトに臨床的に反映されている。これらの研究は、成熟糸球体におけるGEC表現型を維持するために足細胞由来VEGFが必要であるという確固たる証拠となるものである。足細胞VEGF転位によって生じる内皮細胞の変化は、VEGFは確実に足細胞に対する自己分泌作用を有するという事実によって支持され、これは、上皮細胞生存に関して同様な特性を有するVEGF165(16,17)及びVEGF165b(5)アイソフォームに当てはまる(16,5)。
【0153】
その後、足細胞由来VEGF−Aは、細胞生存、増殖及び/又は隣接する糸球体内皮及び足細胞への分化によって濾過障壁を維持する際に重要な役割を果たすことが提案された(14,17)。ヘテロ接合体ヌルVEGF−Aマウスであっても性交後数日間で死ぬため、胚性血管形成の本態性媒介物質である(6)。しかしながら、糸球体等の微小血管における具体的な役割は完全に理解されておらず、糸球体VEGF及び特性が大きく異なるVEGFアイソフォーム(22)の役割は、文献における実験的な矛盾について説明するものと思われる。また、Eremina et al.の研究(14)は、足細胞特異的形質転換過剰発現又はヘテロ接合体KOマウスは異なる糸球体表現型を生じるが、末期腎不全となったため、糸球体における最適なVEGF用量は正常な糸球体の表現型を実証する可能性が高いという見解を最初に支持するものとなった(14)。我々の研究は、VEGF用量は定性的(VEGFxxx/VEGFxxxbアイソフォームのバランス)かつ定量的(生物学的に利用可能なVEGFアイソフォームの絶対量)な特徴を含むかもしれないことを示唆するものである。(lox−P系統はVEGFxxx及びVEGFxxxbアイソホームをノックアウトする可能性があるため)Eremina(14)の研究におけるKO表現型の包括的かつ直接的な比較を行うことは困難だが、VEGF164足細胞特異的pネフリン過剰発現形質転換マウスは同等である。これにより、崩壊腎症及びHIV腎症に典型的な糸球体病変に続くESRFを示す表現型が得られる(27)。腎臓は腎出血を示し、マウスは5日目に死亡した。これは、通常の平均余命を有するマウスにおける適度に減少した透水性及び尿中タンパク喪失の表現型と異なる。また、我々の研究により、VEGF165bの過剰発現により、マウスにおけるVEGFの発現が減少することが示された。これにより、EreminaのKO表現型のどれだけの割合がVEGFxxx阻害によるものであり、VEGFxxxb減少によってどの程度の異常が生じたかについて疑問が生じる。また、本願明細書に記載したモデルにおけるマウスVEGFの寄与が明らかではない。Ereminaの研究におけるマウスの表現型を改善するためのVEGFxxxbの有効性を評価するこれらの2つの線を横切る実験がアイソフォーム特異的ノックアウトと同様に有益であると思われる。
【0154】
足細胞VEGF KO(14)は我々のモデルと直接比較できるものではないが、Ereminaの研究におけるヘテロ接合体マウスは開窓の喪失を示した(14)。VEGF165は、生体外において内皮開窓を生じさせることが示されている(38)。我々の知見は、VEGFの定性的なバランスは生体内における開窓の形成及び維持のために重要である可能性があることを示唆している。
【0155】
糸球体形成におけるVEGFの発現は、単一の毛細血管が糸球体裂溝になるs形状段階で開始する。我々は、s形状段階で発現するVEGFの少なくとも一部がVEGFxxxbであることを示した(5)。当該モデルは、VEGF165bの過剰発現によって特徴付けられ、糸球体は組織学的に正常に思われるため、内皮細胞の原始糸球体への遊走に影響を及ぼさないと思われる。
【0156】
エクソン8b VEGF特異的ELISAを使用し、エクソン8b特異的アイソフォームは多くの組織において支配的であり(3)、正常な腎臓におけるVEGFの約半数に寄与することを示した(5,37)。これらの2つのアイソフォームファミリーの特性は大きく異なる。世界中の多くの研究所では、受容体結合研究、試験管内の内皮増殖及びマイグレーションアッセイ、生体外単離抵抗血管ミオグラフ研究及び生体内新生血管及び腫瘍増殖モデルにおいて、VEGF165bは血管形成性であるだけではなく、抗血管新生性を示し、VEGF165の作用を阻害する(1,48,25,7)ことを確認している。従って、VEGF165bは、ヌードマウスの感染黒色腫(48)、結腸癌(47)、PC3前立腺癌、ユーイング肉腫、CaKi腎癌の腫瘍増殖を減少させる(37)。また、非経口的投与されたrhVEGF165b(IP及びSC)はヌードマウスにおける結腸癌の腫瘍増殖を停止させる(46)。また、我々は、乳房組織においてVEGF165bを過剰発現した形質転換マウスが生理的血管新生を阻害することを示した(17)。従って、VEGF165bは、おそらくはVEGF−R2のVEGF165媒介活性化を阻害することによって血管新生及び血管拡張を阻害することができることは明らかである。
【0157】
微小血管透過性に関しては、カニューレ処置された毛細血管におけるLandis−Michelマイクロ吸蔵(Landis−Michel micro−occlusion)技術を使用した研究は、大量のrhVEGF165bに応じて、おそらくはVEGF−R1の媒介により、微小血管透水性が数秒間のみ(急速に正常に戻る)増加することを示している(20)。しかしながら、この現象に対する生理学的相関はなく、上記研究では、VEGF165とは対照的に、VEGF165bに対応する透水性の長期的な変化は見られなかった(21)。また、VEGF165bは、試験管内においてVEGF165の媒介による経内皮電気抵抗(TEER)の減少(透過性の増加)を阻害する(5,4)。
【0158】
従来のアイソフォームを含むエクソン8a(例えば、VEGF165)が、分化型足細胞に存在するエクソン8b含有アイソフォームを含有しない脱分化型(de−differentiated)ヒト条件的不死化足細胞において支配的となる傾向があるという知見に基づき、Schumacherらは、足細胞(糸球体内皮細胞及びGBM)の成熟化はこれらのアイソフォームファミリーの比率に応じて異なる可能性があることを示唆した。Denys−Drash症候群(DDS)(糸球体発育不全、FSGSによって早発性腎炎症候群、腎不全症及び男性の偽半陰陽が生じる)におけるVEGFアイソフォームファミリーの発現に関するSchumacherらの研究では、DDS足細胞は十分な血管新生・透過性促進VEGF165を産生するが、抗血管新生・抗透過性VEGF165bを完全に欠いていることが示されている(43)。VEGF−Aファミリー間のスプライシングに影響を及ぼす因子が明らかになっており(31)、ヒト遺伝子の74%がmRNAスプライシングを示すため(44)、多くの足細胞由来産物がこの特性を示すことは驚きではない(例えば、ウィルムス腫瘍及びDDSに関与する転写因子WT−1)(28)。WT−1には4種類の主要なアイソフォームがある。WT−1のジンクフィンガー領域はDNA及びRNAに結合することができる。WT−1の標的は未知だが、ヒトにおけるWT−1の突然変異によって糸球体間質硬化症及び十分に特性分析された糸球体病変が生じる場合があることが示されている(28,36)。WT−1は、VEGF等の血管形成に影響を与える因子の発現を調整する可能性があることが示唆されている(28)。従って、WT−1は、足細胞におけるVEGFのスプライシング及び関連する糸球体の表現型を制御する因子である可能性がある。
【0159】
例えば、ヒッペル・リンドウ遺伝子を除去した(HIF−1αサブユニット及びCxcr4発現が増加、半月体形成性腎炎)形質転換モデル(10)において、VEGFアイソフォームバランスの変化は他の形態の糸球体病変に関連付けられている。このモデルでは、足細胞は、VEGFxxxの発現を増加させるが、VEGFxxxbの産生には影響を与えない、低酸素血症において活性化されるシグナリング経路に機能的に応答する(46)。
【0160】
要約すると、VEGF165bの過剰発現により、VEGF165の過剰発現とは異なり、組織学的及び生理学的に健康な腎臓機能が得られ、糸球体の透水性及び尿中タンパク喪失は減少する。
【0161】
実施例3
網膜上皮及び内皮細胞の生存に関する研究
材料及び方法
Cascade Biologics(オレゴン州ポートランド(米国))から購入したヒト微小血管内皮細胞(HMVEC)を、5%FBS及び補助物質を含むEGM−2MV培地(supplement、スイス)内において培養した。ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)を文献に記載された方法で臍帯から抽出し(St Michael’s病院、ブリストル、イギリス)、5%FBS及び補助物質を含むEGM−MV2培地内において培養した。Cell Systems(ワシントン州カークランド(米国))から購入したヒト網膜微小血管内皮細胞(REC)を、10% FBSを含むCSC Complete培地(Cell Systems、ワシントン州カークランド(米国))内において培養した。ヒト網膜色素性内皮細胞(RPE)をヒトの網膜(アイバンク、ブリストル(英国))から単離し、10% FBSを含むDMEM F12(Gibco、Invitrogen、ペイズリー(英国))内において培養した。ATCCから購入した不死化ARPE−19細胞を10% FBSを含むDMEM F12培地内において培養した。細胞は、サイトケラチン18、レチナールデヒド結合タンパク質1及びレチノールデヒドロゲナーゼ5を対象とするRT−PCRによって確認した。
【0162】
VEGF−A165b及びVEGF−A165
VEGF−A165タンパク質は、R&D(ミネソタ州ミネアポリス(米国))から購入し、Kurt Ballmer−Hofer氏(Paul Scherrer Institute(スイス))から受領した。VEGF−A165bタンパク質は、PhiloGene Inc.(イスラエル)から受領した。
【0163】
細胞毒性アッセイ
細胞を96ウェルプレート(10,000 HUVEC、15,000 ARPE−19)に播種し、一晩血清飢餓状態とし、H、Naブチレート又は高濃度の7−ケトコレステロール(Steraloids Inc.、ロードアイランド州ニューポート)及び阻害剤又は賦形剤と共に、2.5nM VEGF165b(Rennel、2008#3849)(R&D systems又はPhilogene Inc、ニューヨーク)と共に培養した。48時間(HUVEC)又は24時間(ARPE−19)後、50μLの培地を取り出し、乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)細胞毒性検出キット(Promega、ウィスコンシン州マディソン(米国))を使用して細胞毒性を調べ、Bichrometric Multiscanプレートリーダー(Labsystems)を使用して定量化した。総細胞数を調べるために、10μLの10x溶解緩衝液を添加して細胞を溶解し、製造者の取扱説明書に従って総LDH濃度を測定した。ARPE−19細胞の細胞生存性アッセイは、Cell Proliferation Reagent WST−1(Roche Diagnostics GmbH、マンハイム(ドイツ))を使用し、取扱説明書に従って行った。試薬と共に24時間培養した後、10μLのWST−1試薬を添加し、37℃で培養し、30分後、上記プレートリーダーを使用して4時間毎に発色を定量的に測定した。
【0164】
ヒトの全RNAからのcDNAに対するPCR
1mLのTrizol試薬を6ウェルプレートの各ウェルに添加し、Chomczynski及びSacchiの方法を使用してmRNAを抽出した。mRNAの50%を、プライマーとしてMMLV RT、RNase H Minus、Point mutant(Promega)、polyd(T)(Promega)を使用して逆転写した。次に、cDNAの10%を、VEGF及びVEGFR2を検出するように設計されたプライマーを使用して増幅し(表2)、PCR Master Mix(Promega)を使用して反応(30サイクル)を行った(変性:95℃、60秒、アニール:55℃、60秒、伸長:72℃、60秒)。PCR産物を0.5μg/mLの臭化エチジウムを含むアガロースゲルに流し、トランスイルミネーターを使用して可視化した。
【0165】
【表2】

【0166】
トランスウェルマイグレーションアッセイ
マイグレーション(遊走)用の内皮細胞は70〜80%の密集度で使用した(3〜6継代)。HMVECは、FBS及び補助物質(EBM)を含まない内皮基底培地内において8〜10時間血清飢餓培養した。細胞をトリプシン化し、0.1% v/v FBSを添加したEBM内に再懸濁させ、500μLの培地に150,000細胞を播種した(接合因子(Cascade Biologics、オレゴン州ポートランド(米国))被覆フィルタインサート(8μm、12mm、Millipore、マサチューセッツ州ビルリカ(米国))を使用)。各処理は三連(triplicate)で行った。細胞を37℃で培養し、一晩放置した(マイグレーション(遊走)させた)。インサートをPBSで洗浄し、4%PFA/PBS(pH7.4)で細胞を10分間固定した。マイグレーション(遊走)していない細胞を膜から除去し、マイグレーション(遊走)した細胞の核をHoechst 33258(5μg/mL、0.5%Triton/PBSで希釈)で染色し、Vectashield(Vetorlabs、カリフォルニア州バーリンゲーム(米国))を備えた顕微鏡スライドに封入した。蛍光顕微鏡(Leica DM、ドイツ、40x対物レンズ)を使用してマイグレーション(遊走)した細胞数を計測した(10フィールド/膜)。マイグレーション(遊走)の変化は基底マイグレーション(遊走)率に対する相対率として示し、平均±semとしてプロットした。1nM VEGF−A165を使用した場合及び使用しない場合でVEGF−A165bの濃度(0〜2nM)を増加させることによってVEGF−A165と比較した場合のVEGF−A165bのマイグレーション(遊走)阻害作用を調べた。IC50は、variable slope sigmoidal fit(Prism4 Software)を使用して正規化データから算出した。RECは血清飢餓培養し、血清及び増殖因子を含まないCSC培地(Cell Systems、ワシントン州カークランド(米国))に再懸濁し、上述したように実験を行った。
【0167】
細胞シグナリング
血清飢餓培養したヒト皮膚内皮細胞を1nM VEGF−A165又はVEGF−A165bによって活性化させた。変性条件下において、7.5%LaemmliアクリルアミドSDSゲル上において細胞溶解物からタンパク質を分離した。タンパク質をゲルからニトロセルロース膜に移し(ウェット移動法)、0.05%Tween/PBSで希釈した5%BSA(Sigma Aldrich、英国)によって4℃で一晩ブロックした。3%BSA/0.05%Tween/PBS内において、マウス抗ヒトホスホp38MAPキナーゼ(Thr180/Tyr182)抗体(9216)、ウサギ抗ヒトVEGF受容体2(Tyr1175)(2478)、ウサギ抗ヒトVEGF受容体2抗体(2479)、マウス抗ヒトホスホp44/p42 MAPK(Thr202/Tyr204)抗体(9106)、ウサギ抗ヒトp44/42 MAPK抗体(9102)(全てCell Signalling Technologies社製)又はマウス抗ヒトIGFBP3抗体(Sigma、2μg/mL)と共に膜を室温で2.5時間培養し、二次抗体(1:15,000、3%BSA/0.05%Tween/PBS)と共に45分間培養し、上述したように処理した。
【0168】
VEGFタンパク質ブロッティング
RPE細胞溶解物(30μg(総タンパク質))及び組み替え型ヒト対照タンパク質(30ng)を、変性条件下において、12%LaemmliアクリルアミドSDSゲル上に流し、上述したように処理した。
【0169】
IGFBP3の発現に対するVEGFの作用
ヒトRPE(3〜4経代、密集度:70〜80%)をFBSを含まない無血清培地内で24時間培養した。無血清培地に添加した2mLの1ng/mLヒト組み換え型VEGF−A165又はVEGF−A165bを添加した。24時間後、RPE細胞は氷冷PBSで3回洗浄し、ウェスタンブロッティングのためにLaemmli緩衝液(200μL)に溶解させた。
【0170】
RPE細胞に対する抗体の細胞毒性作用
フラスコ内の単離したRPE又はARPE−19細胞(サブコンフルエント)を96ウェルプレートに播種し、10%FBS DMEM F12内において70〜80%コンフルエントまで増殖させた。培地を無血清DMEMに取り替え、血清飢餓培養し(一晩)、マウスIgG抗VEGF−A165b抗体(56/1)又はベバシズマブ(Avastin(登録商標))で48時間処理した。Cytotox Non−radioactive Cytotoxicity Assay (Promega、ウィスコンシン州マディソン(米国))を使用し、培地に放出された乳酸脱水素酵素(LDH)の量によって相対細胞死を測定した。実験は製造者のプロトコルに従って行った。
【0171】
ARPE−19細胞の免疫組織化学分析
細胞を無菌カバースリップ上で50%コンフルエントまで増殖させた。細胞を4%PFA/PBS(pH7.4)で固定し(10分間)、2xPBSで洗浄し、0.5%Triton/PBSで希釈した5%正常ヤギ血清(Sigma Aldrich、英国)でブロックし(1時間)、加湿室内において抗VEGF−A165b抗体(R&D、MAB3045)(8μg/mL、ブロッキング溶液)と共に一晩培養した。細胞を0.5%Triton/PBSで洗浄し、1:400ヤギ抗マウスAlexaFluor546抗体(Molecular Probes、Invtitrogen、英国)(ブロッキング溶液で希釈)と共に3時間培養し、最後の30分間は、ファロイジンAlexaFluor 488(Molecular Probes)及び5μg/mLのHoechst 33258の1:200希釈液と共に培養した。Triton/PBSで洗浄した後、PBSで洗浄し、カバースリップにVectashieldを取り付け、Leica DM蛍光顕微鏡(40x対物レンズ)に適当なフィルタを付けて画像を撮影し、Photoshopで統合した。
【0172】
図18〜図22に得られた結果を示す。図18〜図22は、上皮細胞生存を維持するための薬剤としてのVEGF165bの作用を示している。
【0173】
図18は、VEGF−A165bが酸素誘発網膜障害モデルにおいて新血管形成を阻害するが、血管再生を妨げないことを示している。
【0174】
図18Aに示すように、VEGF−A165bの眼内注射は62.6時間の半減期を有する。125I−VEGF−A165bを硝子体に注射し、ラットを殺し、ガンマカウンターを使用して眼、尿及び血液を調べた。双指数クリアランス(bi−exponential clearance)は組織1g当たりのガンマカウントで表し、消失半減期は2.6日間(62.6時間)だった。尿及び血液への取り込みは30分以内に見られた。フルオレセインデキストランはマウスの眼内注射後にリークしていない(挿入画像を参照)。
【0175】
図18Bに示すように、生後発育時にマウスを酸素過剰とした。マウスに高濃度のVEGF−A165b又はHBSS(対照)を注射し、イソレクチンB4染色によって網膜血管を可視化した。左側の画像はHBSS(対照)を示し、右側の画像はVEGF−A165bによって処理した網膜を示す。中央の虚血性無血管領域(矢印Cで示す)、網膜下増殖領域(新血管形成、矢印Bで示す)、総血管形成網膜(矢印Aで示す)及び面積を測定した。
【0176】
図18C〜図18Eに示すように、画像Jにおける各領域の面積(μm)を測定した。VEGF−A165b注射によって新血管形成は有意に減少し(図18C)、正常な血管新生量は増加した(図18D)。これは、部分的に、無血管野になる血管が減少した結果によるものである(図18E)。従って、VEGF−A165bは、新血管形成を阻害すると共に正常な血管再生を維持することができ、虚血誘発性血管新生に理想的な薬剤である。
【0177】
図19は、VEGF−A165bがヒト網膜内皮細胞の遊走を阻害することを示している。
【0178】
図19Aに示すように、ヒトRECをポリカーボネートフィルタに播種し、VEGF−A165b濃度の上昇に対する遊走を測定した。
【0179】
図19Bでは、1nM VEGF−A165bによるREC遊走の阻害を1nM ラニビズマブと比較している。
【0180】
図20は、VEGF−A165bがヒト内皮細胞の生存因子であることを示している。
【0181】
図20Aにおいて、HUVEC細胞を血清飢餓培養した(0.1%血清、SFM)。LDHアッセイにより、48時間の処理後のVEGFアイソフォームによる細胞毒性を測定した。VEGF−A165及びVEGF−A165bは、血清飢餓による細胞毒性を阻害した。
【0182】
図20Bにおいて、細胞をVEGF−A165b、VEGF−A165又はVEGF−A165b及びVEGFR阻害剤と共に培養し、培地内のLDHについてELISAによって細胞毒性を測定した。細胞毒性は適当な対照(SFM内の阻害剤)と相対的な値として表した。VEGFR阻害剤(PTK787(両VEGFRを阻害)、ZM323881(VEGFR2に特異的))は細胞毒性を阻害した。
【0183】
図20Cにおいて、VEGF−A165b、p38MAPKを阻害するSB203580、MEKによるp42/p44 MAPKリン酸化を阻害するPD98059、PI3Kを阻害するLY294002の存在下又は非存在下で細胞を3種類のシグナル伝達阻害剤で処理し、細胞毒性を測定した。MEK及びPI3K阻害剤は細胞毒性の減少を阻害したが、p38MAPK阻害剤は阻害しなかった。
【0184】
図20Dは、内皮細胞におけるVEGF−A165及びVEGF−A165bによるVEGFR2、VEGFR2のTyr残基1175、Akt、p42p44MAPK及びp38MAPKの活性化を示す。細胞はVEGFで10分間処理した(**p<0.01、***p<0.001(対照と比較)、片側ANOVA、Student Newman Keuls post hoc検定)。
【0185】
図21は、VEGF−A165bがRPE細胞の細胞保護剤であることを示している。
【0186】
図21A〜図21Cにおいて、ARPE19細胞をNaブチレート(図21A)又は過酸化水素(図21B及び図21C)で処理した。細胞をVEGF−A165b、VEGF−A165又はEGFと共に培養し、培地内のLDHについてELISAによって細胞毒性を測定した。VEGF−A165bはNaブチレート(図21A)及び過酸化水素(H)(図21B)による細胞毒性を阻害した。細胞をVEGF−A165bの存在下又は非存在下において過酸化水素(H)及び2種類の阻害剤で処理した(図21C)。阻害剤としては、VEGFR1及びVEGFR2を阻害するPTK787又はVEGFR2に特異的なZM323881を使用した。これらの阻害剤はVEGF−A165bによる細胞毒性の減少を阻害した。
【0187】
図21Dにおいて、RPE細胞から抽出したmRNAのRT−PCRはVEGFR2の発現を示している。
【0188】
図21Eにおいて、VEGF165bは7−ケトコレステロールによる細胞生存率の低下を減少させた(WST1アッセイ)。具体的には、2.5nM VEGF165bは、対照と比較して、7−ケトコレステロールの存在下においてARPE−19細胞生存率を高めた(WST−1細胞生存率アッセイ)。細胞を7−ケトコレステロールで24時間処理し、WST−1と共に240分間培養した。着色物(ホルマザン塩)を450nmで観察し、細胞生存率の基準とした。VEGF165bは処理培地内においてARPE−19の増殖を引き起こさず、細胞生存率の上昇は細胞保護作用によるものであることが示された。
【0189】
図21Fにおいて、VEGF165bは7−ケトコレステロールによる処理時に細胞からのLDHの放出を減少させた(VEGF165b媒介細胞保護作用)。
【0190】
図21Gにおいて、VEGF−A165bはRPE細胞におけるIGFBP3の発現を増加させたが、VEGF−A165ではIGFBP3の発現の増加は観察されなかった。
【0191】
図22は、VEGF−A165bが内因性生存因子であることを示している。
【0192】
図22Aにおいて、免疫蛍光染色によってRPE細胞におけるVEGF165b(赤)の発現が観察され(i)、VEGFxxxb特異的抗体を使用したウエスタンブロッティングによって確認し(ii)、mRNAはRT−PCRによって確認した(iii)。ベバシズマブによる内因性VEGFxxxb又は全てのVEGFアイソフォームの阻害によって細胞毒性が増加した(iv)。
【0193】
図22Bにおいて、ヒト内皮細胞はVEGF165bの発現を示し(i)、VEGFxxxbの阻害によって細胞毒性が増加した(ii)(***=p<0.001(対照と比較)、アクチン(緑)、核(青))。
【0194】
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【産業上の利用可能性】
【0195】
本発明は、微小血管透過性亢進疾患を治療又は予防するために使用されるか、VEGFxxxアイソフォームの血管新生透過性亢進性を調節するために使用されるか、血管透過性の増加に依存することなく上皮細胞生存を維持するために使用されるか、上皮濾過膜の開窓性(例えば、数密度及び/又は大きさ)を減少させるために使用される活性薬剤の新たなファミリーを提供する。
【0196】
VEGFxxxbファミリータンパク質、特にVEGF165bの活性は、これらのタンパク質の公知の特性から予期されるものではない。
【0197】
この知見は、微小血管透過性亢進疾患に罹患したか、罹患しやすいヒト及び動物の多くの新たな治療及び非治療処置の可能性を開くものである。
【配列表フリーテキスト】
【0198】
配列データ
SEQ. ID. NO: 1
TCA GCG CAG CTA CTG CCA TC
SEQ. ID. NO: 2
GTG CTG GCC TTG GTG AGG TT
SEQ. ID. NO: 3
ACG TCC TAA GCC AGT GAG TG
SEQ . ID. NO: 4
CAG CCT TCT CAG CAT CAG TC
SEQ. ID. NO: 5
ACA AGA TCC GCA GAC GTG TA
SEQ.ID. NO. 6
ACA GAT GGC TGG CAA CTA GA
SEQ.ID NO. 7
AAA ACC TTT TGT TGC TTT GGA
SEQ.ID NO. 8
GAA ATG GGA TTG GTA AGA TGA
SEQ.ID NO. 9
GGC AGC TTG AGT TAA ACG AAC G
SEQ.ID NO. 10
ATG GAT CCG TAT CAG TCT TTC CTG C

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微小血管透過性亢進疾患を治療又は予防するために使用されるか、VEGFxxxアイソフォームの血管新生透過性亢進性を調節するために使用されるか、透過性の増加に依存することなく上皮細胞生存を維持するために使用されるか、上皮濾過膜の開窓性(例えば、数密度及び/又は大きさ)を減少させるために使用されるVEGFxxxb活性薬剤。
【請求項2】
微小血管透過性亢進疾患を治療又は予防するか、VEGFxxxアイソフォームの血管新生透過性亢進性を調節するか、血管透過性の増加に依存することなく上皮細胞生存を維持するか、上皮濾過膜の開窓性(例えば、数密度及び/又は大きさ)を減少させるための方法であって、生体内又は試験管内において、被投与者又は上皮濾過膜に有効量のVEGFxxxb活性薬剤を投与することを含む方法。
【請求項3】
VEGFxxxb活性薬剤の、生体内又は試験管内において、微小血管透過性亢進疾患を治療又は予防するか、VEGFxxxアイソフォームの血管新生透過性亢進性を調節するか、血管透過性の増加に依存することなく上皮細胞生存を維持するか、上皮濾過膜の開窓性(例えば、数密度及び/又は大きさ)を減少させるために使用される組成物の製造における使用。
【請求項4】
生体内又は試験管内において微小血管膜の透過性を減少させるか、膜に関連してVEGFxxxアイソフォームの血管新生透過性亢進性を調節するか、血管透過性の増加に依存することなく膜内において上皮細胞生存を維持するか、生体内において上皮濾過膜の開窓性(例えば、数密度及び/又は大きさ)を減少させるための方法であって、前記膜に有効量のVEGFxxxb活性薬剤を接触させることを含む方法。
【請求項5】
請求項1において、VEGFxxxb又は被投与者の細胞内又は試験管内においてVEGFxxxに優先してVEGFxxxbの存在又は発現を選択的に促進する薬剤である、薬剤。
【請求項6】
請求項2又は4において、前記VEGFxxxb活性薬剤が、VEGFxxxb又は被投与者の細胞内又は試験管内においてVEGFxxxに優先してVEGFxxxbの存在又は発現を選択的に促進する薬剤である、方法。
【請求項7】
請求項3において、前記VEGFxxxb活性薬剤が、VEGFxxxb又は被投与者の細胞内又は試験管内においてVEGFxxxに優先してVEGFxxxbの存在又は発現を選択的に促進する薬剤である、使用。
【請求項8】
生体内又は試験管内において、微小血管透過性亢進疾患を治療又は予防するか、VEGFxxxアイソフォームの血管新生透過性亢進性を調節するか、血管透過性の増加に依存することなく上皮細胞生存を維持するか、上皮濾過膜の開窓性(例えば、数密度及び/又は大きさ)を減少させるために使用されるVEGFxxxb活性薬剤を宿主生物内において発現させる発現ベクター系。
【請求項9】
微小血管透過性亢進疾患を治療又は予防するか、VEGFxxxアイソフォームの血管新生透過性亢進性を調節するか、血管透過性の増加に依存することなく上皮細胞生存を維持するか、上皮濾過膜の開窓性(例えば、数密度及び/又は大きさ)を減少させるための方法であって、生体内又は試験管内において、被投与者又は上皮濾過膜に、有効量の、VEGFxxxb活性薬剤を宿主生物内において発現させる発現ベクター系を投与することを含む方法。
【請求項10】
VEGFxxxb活性薬剤を宿主生物内において発現させる発現ベクター系の、生体内又は試験管内において、微小血管透過性亢進疾患を治療又は予防するか、VEGFxxxアイソフォームの血管新生透過性亢進性を調節するか、血管透過性の増加に依存することなく上皮細胞生存を維持するか、上皮濾過膜の開窓性(例えば、数密度及び/又は大きさ)を減少させるための組成物の製造における使用。
【請求項11】
生体内において、微小血管膜の透過性を減少させるか、膜に関連してVEGFxxxアイソフォームの血管新生透過性亢進性を調節するか、血管透過性の増加に依存することなく膜内において上皮細胞生存を維持するか、生体内において上皮濾過膜の開窓性(例えば、数密度及び/又は大きさ)を減少させるための方法であって、前記膜に、有効量の、VEGFxxxb活性薬剤を宿主生物内において発現させる発現ベクター系を接触させることを含む方法。
【請求項12】
微小血管透過性亢進疾患、VEGFxxxアイソフォームの血管新生促進・透過性促進性調節疾患、上皮細胞生存及び透過性疾患及び/又は上皮濾過膜の開窓性(例えば、数密度及び/又は大きさ)疾患に対するリスク又は感受性について患者を検査する方法であって、前記患者から生体試料を採取し、正常な絶対VEGFxxxb濃度又は正常なVEGFxxxb:VEGFxxx比に対する前記試料中のVEGFxxxb濃度について分析することを含む方法。
【請求項13】
微小血管透過性亢進疾患、VEGFxxxアイソフォームの血管新生促進・透過性促進性調節疾患、上皮細胞生存及び透過性疾患及び/又は上皮濾過膜の開窓性(例えば、数密度及び/又は大きさ)疾患に対するリスク又は感受性について患者を検査する方法であって、前記患者の遺伝子型を決定して正常な絶対VEGFxxxb濃度又は正常なVEGFxxxb:VEGFxxx比に対するVEGFxxxbの過小発現のリスクを判定することを含む方法。
【請求項14】
前記請求項のいずれか1項において、前記VEGFxxxbが、VEGF165b、VEGF189b、VEGF145b、VEGF183b及びVEGF121bの1以上、好ましくはVEGF165bを含む、薬剤、使用又は方法。
【請求項15】
上皮細胞変性の増加又は上皮残存の減少によって生じる疾患を治療又は予防するために使用されるVEGFxxxb活性薬剤。
【請求項16】
上皮細胞変性の増加又は上皮残存の減少によって生じる疾患を予防又は治療するための方法であって、生体内又は試験管内において、被投与者又は上皮細胞集団に有効量のVEGFxxxb活性薬剤を投与することを含む方法。
【請求項17】
VEGFxxxb活性薬剤の、上皮細胞変性の増加又は上皮残存の減少によって生じる疾患を治療又は予防するために使用される組成物の製造における使用。
【請求項18】
上皮細胞変性の増加又は上皮残存の減少によって生じる疾患を予防又は治療するための方法であって、膜又は細胞に有効量のVEGFxxxb活性薬剤を接触させることを含む方法。
【請求項19】
請求項15において、VEGFxxxb又は被投与者の細胞内又は試験管内においてVEGFxxxに優先してVEGFxxxbの存在又は発現を選択的に促進する薬剤である、薬剤。
【請求項20】
請求項16又は18において、前記VEGFxxxb活性薬剤が、VEGFxxxb又は被投与者の細胞内又は試験管内においてVEGFxxxに優先してVEGFxxxbの存在又は発現を選択的に促進する薬剤である、方法。
【請求項21】
請求項17において、前記VEGFxxxb活性薬剤が、VEGFxxxb又は被投与者の細胞内又は試験管内においてVEGFxxxに優先してVEGFxxxbの存在又は発現を選択的に促進する薬剤である、使用。
【請求項22】
上皮細胞生存を維持するために使用される、宿主生物内においてVEGFxxxb活性薬剤を発現させる発現ベクター系。
【請求項23】
上皮細胞生存を維持するための方法であって、生体内又は試験管内において、被投与者又は上皮膜に、有効量の、宿主生物内においてVEGFxxxb活性薬剤を発現させる発現ベクター系を投与することを含む方法。
【請求項24】
宿主生物内においてVEGFxxxb活性薬剤を発現させる発現ベクター系の、上皮細胞生存を維持するために使用される組成物の製造における使用。
【請求項25】
生体内において膜内における上皮細胞生存を維持するための方法であって、前記膜に、有効量の、宿主生物内においてVEGFxxxb活性薬剤を発現させる発現ベクター系を接触させることを含む方法。
【請求項26】
上皮細胞生存疾患に対するリスク又は感受性について患者を検査する方法であって、前記患者から生体試料を採取し、正常な絶対VEGFxxxb濃度又は正常なVEGFxxxb:VEGFxxx比に対する前記試料中のVEGFxxxb濃度について分析することを含む方法。
【請求項27】
上皮細胞生存疾患に対するリスク又は感受性について患者を検査する方法であって、前記患者の遺伝子型を決定して正常な絶対VEGFxxxb濃度又は正常なVEGFxxxb:VEGFxxx比に対するVEGFxxxbの過小発現のリスクを判定することを含む方法。
【請求項28】
請求項15〜27のいずれか1項において、前記VEGFxxxbが、VEGF165b、VEGF189b、VEGF145b、VEGF183b及びVEGF121bの1以上、好ましくはVEGF165bを含む、薬剤、使用、方法又は発現ベクター系。

【図1】
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【図7】
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【図17】
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【図19】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図18】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公表番号】特表2012−509306(P2012−509306A)
【公表日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−536954(P2011−536954)
【出願日】平成21年11月23日(2009.11.23)
【国際出願番号】PCT/GB2009/051591
【国際公開番号】WO2010/058227
【国際公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【出願人】(301046835)ザ ユニバーシティ オブ ブリストル (1)
【Fターム(参考)】