説明

W/Oエマルジョンの形成を防止するための、または多孔性マトリックス中に既に形成されているW/Oエマルジョンを分解するための水性流体

本発明は、油田における適用のための、10〜90℃にわたる温度で安定しており、8〜20のHLBを有し、0〜60質量%の塩水含有量の水中で可溶性である非イオン性界面活性剤、および或いは塩を含む、水性流体に関する。流体は、オイルベースマッドが使用される油井中で、逆W/Oエマルジョンの形成の防止のための仕上げ流体として、または既に形成されているエマルジョンの分解のための改善用流体として、便利に使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油井中で、逆W/Oエマルジョンの形成を防止するための仕上げ流体として、または既に形成されているW/Oエマルジョンを分解する(resolve)ための改善用流体(remedial fluid)として使用することができる、水性流体に関する。
より具体的には、本発明は、適切なHLBおよび可能な塩によって特徴づけられる非イオン性界面活性剤を含み、油性掘削流体が使用されている油井中で、逆W/Oエマルジョンの形成の防止のために、またはW/Oエマルジョンが既に形成されている場合の分解のために使用することができる、流体に関する。
【背景技術】
【0002】
油井の生産力は、第1の掘削段階から仕上げまで井戸中で実行されるすべての操作に強く影響を受ける。
主として反応性の高粘土含有量を備えた生産フォーメーションによって特徴づけられる鉱化ガス井(gas mineralized well)の掘削は、一般的に、井戸が反応性粘土の膨潤作用のために崩壊するのを防止するために坑壁を安定化できる掘削流体の使用を必要とする。油性流体をこの目的のために使用することができ、一般的にそれは逆W/Oエマルジョン、または粘土と相互作用し膨潤問題を限定することのできる特異的添加物を含有する水に基づく流体である。
【0003】
しかしながらいくつかの事例において、特に多層のフォーメーションにおいて、水性流体は満足な結果を保証せず、従って、唯一の代替物は油性流体の使用である。
しかしながら、残留物として存在するかまたは多孔性マトリックスから濾過される、油性掘削流体が、後続する仕上げ段階中で使用されるもの(通常は塩水溶液(ブライン))と相互作用することは、井戸生産力の一時的または永続的な減少を引き起こしうる。
【0004】
実際は、穿孔の間に多孔性マトリックスに浸透するオイルベースマッドの濾過液が、仕上げブラインと接触する場合、非常に粘性があり、高温においてでさえ安定しているW/Oタイプのエマルジョンを形成しうることが観察された。
オイルベースマッドの濾過液は、低HLBによって特徴づけられ、用語それ自体が示すように、マッド配合中に存在する油(ラミウム(lamium)、ガス油)および界面活性剤からなる。修飾脂肪酸のポリアミド、アルコキシル化脂肪酸のアミンは、オイルベースマッドの市販の配合において最も頻繁に見出されるものである。これらの界面活性剤は、非常に安定した逆W/Oエマルジョンの獲得を可能にするように、オイルベースマッドに配合するために使用される。
【0005】
一旦仕上げ段階が完了したならば、井戸を開き、生産を開始する。しかしながらいくつかの事例において、主としてガス井において、吐出は遅いか、または炭化水素の生産さえもない。
吐出の欠落を引き起こす可能性のある損傷機構の中で、最も可能性の高いものはエマルジョンの形成である。W/Oエマルジョンが形成されるならば、高粘度を有し、連続相が油からなるのでブラインによる後続するフラッシングによって除去することができず、このタイプのエマルジョンは、吐出を妨害する実際のプラグとして働く。
現場圧力の維持のための水注入を油レベルまで注入する場合、エマルジョンによって誘導された損傷は、炭化水素吐出の欠落が観察できる生産井、および水注入井において起こりうる問題である。
この問題の解決/防止のための効果的な技術は現在ない。唯一の代替の選択肢は、仕上げ流体(ブライン)と適合性のあるウォーターベースマッドを掘削のために使用することである。
しかしながら、この選択肢は、高反応性粘土含有量の井戸には必ずしも可能性があるとは限らず、ウォーターベースマッドの使用は、坑不安定性についての深刻な問題を引き起こしうる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特定のタイプの界面活性剤を配合した油性掘削流体が使用される場合、高塩水含有量の水溶液中での適切なHLBおよび溶解度によって特徴づけられる界面活性剤が添加された水性流体の使用が、W/O逆エマルジョンの形成を防止し、これが既に形成されているなら上述のエマルジョンを分解することが、ここで見出された。第1の事例において、改善用流体の使用を、第2の事例において、仕上げ流体の使用を述べる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的は、油田における使用のための、10〜90℃の温度で安定しており、8〜20のHLBを有し、0〜60質量%の塩水含有量の水中で可溶性である、非イオン性界面活性剤、および或いは塩を含む、水性流体に関する。
オイルベースマッドが使用される油井中で、W/O逆エマルジョンの形成の防止のため、または既に形成されているエマルジョンの分解のための前記流体の使用は、本発明のさらなる目的を示す。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】3%KClおよび34%CaCl2をそれぞれ配合した2つのエマルジョンの流動曲線の比較。
【図2】エマルジョンの分解検査開始後のサンプル。それぞれはブランクサンプル、5%のDFEを有するサンプルおよび5%のグルコポン215 CS UPを有するサンプルである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の流体中に存在する塩は、1〜35質量%の濃度のCaCl2、1〜10質量%の濃度のKCl、40〜60質量%の濃度のCaBr2から一般的に選択される。
本発明の流体に添加される非イオン性界面活性剤は、好ましくは10〜15のHLBを有する。
流体がW/Oエマルジョンの形成の防止のための使用される場合、それは仕上げ流体またはブラインと呼ばれ、この事例において界面活性剤は0.1〜1質量%の濃度で存在するが、既に形成されているエマルジョンの分解のための使用される場合、それは改善用流体またはブラインと呼ばれ、界面活性剤は0.2〜5質量%の濃度で存在する。
本発明の流体は、炭化水素吐出の欠落の理由である、炭化水素生産井および水注入井中でのW/O逆エマルジョンの防止または破壊のために適切に使用することができる。
【0010】
アルキルポリグルコシド界面活性剤のグループは、10〜90℃の温度範囲内で安定しており、0〜60質量%の塩含有量を含む水中で可溶性であるため、本発明のために特に適切であることが証明される。
仕上げ流体または改善用流体は、SL8、SL10と名付けられたセピック(Seppic)社製品、およびGP215と呼ばれるコグニス(Cognis)社製品などの、様々な分野(洗剤、化粧品、食品産業)において既に使用されている毒性のない市販のアルキルポリグルコシド界面活性剤を含んで、例えば調製することができる。
これらのいくつかの使用は、ケーシングの洗浄適用について油田において既に公知である。
特に満足な結果は、化1において示されるような構造(式中RはC8−C10長のアルキル鎖を示し、nは1.5の値でありオリゴマー化度を示す)を有するグルコポン(Glucopon)215(コグニス社からのアルキルポリグルコシド)により得られた。
【0011】
【化1】

【0012】
多孔性マトリックスからの残留物または濾過液としての形成物(formation)において存在する油性掘削流体と相互作用する場合、本発明の仕上げ流体は特に効果的である。
それどころか、事前の処理において使用される流体との間(例えば、油性掘削マッドの残留物または濾過液と従来の仕上げブラインとの間)の相互作用産物としての形成物において存在する、既に形成されたW/Oエマルジョンと直接相互作用する場合、本発明の改善用流体は特に効果的である。
【0013】
油性掘削流体は、主としてラミウムなどの分散相として例えば使用される油(一般的に低毒性パラフィン油)、並びに界面活性剤または一方は一次乳化剤(3〜5%v/vの濃度でマッド中に存在する)としておよび他方は二次乳化剤(マッド中で1〜3%)として働く1対の界面活性剤からなる。
以下は、主な市販タイプのオイルベースマッド中に存在する界面活性剤または対の界面活性剤の例である。

【0014】
これらの界面活性剤は以下の商標名の下で市場で利用可能である。

【0015】
濾過液は、一般的にオイルベースマッド中に存在するすべてのコンポーネントからなる多孔性マトリックスを通って濾過される。
本発明において使用されるモデル濾過液は、ラミウム、以前に考慮された6つのタイプのオイルベースマッド中に存在するものから選択された1対の界面活性剤中で溶解することによって調製された。
しかしながら、ラミウム中の界面活性剤の濃度は、もとのマッド配合中で使用される最小値(0.33%の一次乳化剤、0.13%の二次乳化剤)よりも一桁低い。このように、2つの界面活性剤の低残留は実地で模倣され、マトリックス中での同等の濾過が想定された。
以下に提供される実施例は本発明の説明および非限定の目的のためのものである。
【実施例】
【0016】
エマルジョンの形成
実施例1
この実施例において、W(ブライン)/O(合成濾過液)比率を変形したエマルジョンの形成が確認された。
合成油濾過液(FS)が使用され、ラミウム(油性掘削流体(OBM)の配合のために使用される低毒性パラフィン油)、ならびに2つの界面活性剤のノバテック(Novatec)P(一次)およびノバテックS(二次)を含み、その中で一次乳化剤は0.33%のv/vの濃度、および二次乳化剤は0.13%のv/vの濃度で存在する。
規定の体積のFSを、3つの異なる混合比(全体積200mlで、75/25、50/50および25/75)で、CaCl2の水溶液(380g/lの塩濃度)と混合する(10分間、シルバーソン(Silverson)撹拌機による撹拌(500rpm)下で温度25℃で500mlのビーカー中で)。数か月にわたって安定したW/Oエマルジョンの形成が、3つの混合比について観察された。エマルジョンは、レオロジー測定および電気伝導率測定によって特性を評価した。表1は、得られた結果を示す。
【0017】
実施例2
この実施例において、他の仕上げブラインのエマルジョンの形成も評価した。
エマルジョンの形成を実施例1中で記述されているものと同じ手順を使用して確認したが、W/O混合比が75/25に等しいものが実際の井戸の条件の最も代表的なものと考えられるのでそれのみを考慮し、他の仕上げブライン(3%CaCl2、10%CaCl2、3%KClおよび54%CaBr2)のエマルジョンの形成も確認した。表2中で報告される、同じブラインについて測定された電気伝導率値と比較した様々なエマルジョンの電気伝導率データーによって確認されるように、安定し粘性のあるW/Oエマルジョンの形成がすべての使用されたブラインで観察された。
レオロジー特性評価から、図1の流動曲線の比較によって示されるように、KClを3%配合したエマルジョンの低剪断速度での粘度が、34%CaCl2を含むものに対して約一桁高いこともまた理解されうる。
【0018】
実施例3
この実施例において、異なる市販のオイルベースマッドの代表的な合成濾過液および仕上げブラインとしての3%KClによるエマルジョンの形成が評価された。
以下に報告される表中で示される5つのすべての市販のオイルベースマッドの合成濾過液を調製し、3%KClにより25/75の比率で乳化した。

すべての事例において、エマルジョンが調製され、数か月にわたって安定し、粘性があった。
【0019】
実施例4
この実施例において、異なる市販のオイルベースマッドの合成濾過液の代表的なものおよび仕上げブラインとしてのCaCl2によるエマルジョンの形成が評価される。
先の実施例において報告された5つのすべての市販のオイルベースマッドの合成濾過液は、CaCl2 d=1.25s.g.により25/75の比率で調製および乳化された。すべての事例において、安定し粘性のあるエマルジョンが生産された。
【0020】
エマルジョンの形成の防止:仕上げ流体の有効性の評価
実施例5
この実施例において、この特許の防止処理の目的の有効性が評価される。
実施例1において記述された同じ手順を使用して、ブラインへの界面活性剤の添加によりエマルジョンの形成を防止する可能性が確認された。使用される界面活性剤は、非イオン性アルキルポリグルコシドのクラスに属し、検査のために使用されたブライン中で可溶性である。表3中で報告するように、濃度は0.2〜1%の範囲を採用した。電気伝導率の値から観察できるように、検査されたすべての界面活性剤は、使用した濃度で肯定的な結果を与えなかったSL4システムを例外として、使用したブラインの伝導度と同等の伝導度によって特徴づけられるので、W/Oエマルジョンの防止を可能にする。
【0021】
実施例6
この実施例において、異なる市販のオイルベースマッドの合成濾過液の代表的なもの、および0.5%のグルコポン215を添加したCaCl2 d=1.25によるエマルジョン形成の防止が評価される。
250mlの深型ビーカー中で、選択した5つの市販のオイルベースマッドの50mlの合成濾過液(体積で25%)の代表的なものを、0.5%のグルコポン215を添加した150mlのCaCl2 d=1.25(体積で75%)により、矩形開口のグリッドを装備したシルバーソンで5,000回転で10分間乳化した。水相および油相の間の比率については、野外の状況の代表としてブラインの過剰量を想定し、すべての合成濾過液を一定に維持して評価した。
この手順により、ブラインへの界面活性剤の添加(0.5%のグルコポン215)を介して、粘性があり安定したエマルジョンの形成を防止する可能性が確認された。
乳化手順の終了時に、評価した5つのシステムのすべては、30分未満の時間で水相からの油相の完全な分離を示した。分離した2つの相は透明であった。
【0022】
実施例7
異なる市販のオイルベースマッドの合成濾過液の代表的なもの、および0.5%のグルコポン215を添加した3%KClによる安定したエマルジョンの形成の防止の検定。
実施例6中で報告した同じ実験を行なったが、ブラインを変化させた。
この事例において、乳化手順の終了時に、評価した5つのシステムのほとんどすべては、30分未満の時間で、水相からの油相の完全な分離を達成した。分離した2つの相は透明であった。出発濾過液中の界面活性剤としてカルボテック(Carbotec)+カルボマル(Carbomul)およびフェイズ(Faze)mul+フェイズwetを含む合成濾過液から生ずるエマルジョンについては、常に不安定なエマルジョンが形成されるが、はるかに長い分解時間を必要とすることが観察された。
【0023】
既に形成されたエマルジョンの分解:改善用流体の有効性の評価
実施例8
この実施例において、異なる濃度のグルコポン215を添加したブラインによるエマルジョン(合成濾過液およびCaCl2 d=1.25s.g.により作製された)の分解を評価する。
ブライン相(CaCl2d=1.25s.g.)、および表中のマッド番号1に対応する合成濾過液によるエマルジョンを、シルバーソン撹拌機によって調製する。乳化の操作条件は5,000rpmで5分の撹拌である。二相の間の比率は25:75である。
等容量のブライン(そのままでまたはグルコポンの増加濃度を添加した)がエマルジョンと接触して加えられる、サンプルのシリーズを調製する。
【0024】
この研究は、タービスキャン(Turbiscan)による相の静的分離の動力学検査の調整によって行なわれた。この機器は、サンプルの透過プロファイルおよび後方散乱を、セルの底部から開始して上部まで経時的にモニタリングすることができ、異なる相の存在およびそれらの進化を示す。このシステムにより、目視観測の主観性を除いて、異なる方法で調製されたサンプルの挙動の比較が可能である。検査される10mlの分解剤(=ブライン+界面活性剤)および10mlのエマルジョンを上に配置する(エマルジョンは油中水型であるのでそれは必然的に上にとどまる)。サンプルの初期測定および他の経時的な後続測定は、開始エマルジョンの完全な消失まで、可能な相偏析が続くことを可能にする。
【0025】
この検査に基づいて、CaCl2 d=1.25により調製されたエマルジョン(75w/25o)のための分解剤としてのCaCl2 d=1.25中の界面活性剤DFE 726およびグルコポン215 CSの濃度を5%まで増加し、最初に評価し比較した。最初に相分離がDFEで急速に起こっても、グルコポン215はエマルジョンの分解に効果的であることが証明された。実際、DFEは検査された最も高い濃度(5%)でも、エマルジョンの全面的な分解を導かない。分解剤/エマルジョンの接触から21時間後、3つのサンプルの比較を図2中に写真で示し、それぞれはブランクサンプル(分解剤中で界面活性剤が欠如している)、5%のDFEを有するサンプルおよび5%のグルコポン215 CS UPを有するサンプルである。グルコポンにより、2つの完全に透明な相でエマルジョンの完全な分解が得られるが(既に4時間のみで)、DFEでは濁った輪は水相の内側にとどまり、そのまま長時間にわたって(数か月でさえも)とどまることがわかる。ブランクサンプルにおいて、エマルジョン相の体積は変わらないが、油の過剰量の分離が観察される。
【0026】
実施例9
異なる濃度のグルコポン215を添加した合成濾過液および異なるブラインにより作製されたエマルジョンの分解の検定。
以前の実施例中で説明されたプロトコールに従って、3%KCl、3%CaCl2およびCaBr2d=1.8などの異なるブラインにより形成されたエマルジョンの分解時間を決定した。ブライン中の0.5〜5%のグルコポン溶液は分解剤として調製し、同じタイプのブラインをエマルジョンおよび分解剤の調製のために使用した。
得られたデータを表4中に総合して報告する。高塩水濃度のブラインの存在下において、エマルジョンはより速く分解する。検査されたすべての濃度のグルコポンは、異なる時間でエマルジョンの完全な分解を導くが、界面活性剤の非存在下においてエマルジョンは安定したままである。
【0027】
実施例10
この実施例において、合成濾過液、および異なる濃度のグルコポン215を添加した異なるブラインを含む3%のKClブラインにより作製したエマルジョンの分解が評価される。
エマルジョンの分解率を増加させるために、3%のKClとは異なるブラインがより高効率でグルコポンを保つことができるかどうかが実証された。
異なるブライン中の5%および8%のグルコポンからなる分解剤を含む3%KClからのエマルジョンの分解時間を、表5中に報告した。
3%CaCl2の使用は、3%KClに対する有利な代替物になりえるが、高比重を有するブラインが同じ効率であるようには思われない。
【0028】
実施例11
グルコポン215を添加したブラインCaCl2によるエマルジョン(合成濾過液および3%KClにより作製された)の分解に対する温度効果。
合成濾過液およびKClにより作製されたエマルジョンの分解時間に対する温度効果は、KCl中の8%のグルコポン215の溶液および3%のCaCl2との接触によって、評価された。
エマルジョンの動力学特性および分解能性をよりよく識別することを可能にするために、40℃で温度調節したタービスキャンで20分ごとに継続的に自動測定して、これらの検査を行なった。
【0029】
温度効果は、室温で得られたものに関して60%で促進される分解時間を考慮に入れた(1〜2日)。
表6中に、室温および40℃で、3%のブラインのCaCl2およびKClにより得られたエマルジョンの分解を報告した。
CaCl2が高濃度(8%)で使用される上記のすべての事例中でグルコポンのより透明な溶液が可能になるので、分解時間の有意な変動を導かなくとも、3%の代わりに10%でのCaCl2の使用は有利であると考えることができる。
【0030】
エマルジョンの形成の検定、および多孔性媒体中でのそれらの形成の防止
実施例12
仕上げブラインと油濾過液の相互作用によって誘導される多孔性媒体の損傷の評価のための検査。
掘削フェーズおよび仕上げフェーズの間に生産フォーメーション上の流体によって引き起こされた損傷度の評価は、多孔性媒体(岩石コア)中の流体のフラッシングを可能にする実験装置によって実行される。このシステムは、ラバースリーブ中に含まれる、2.54cmの直径および変化する長さ(我々の検査においては7cmであった)を有する、岩石コアが挿入される水で加圧したハスラーセル(Hassler cell)からなる。装置は、コアの初期浸透率および最終浸透率、ならびにコアの残留損傷の評価の正確な特徴づけを可能にする。
【0031】
検査は以下の手順に従って行なった。
1.掘削オイルベースマッドの濾過液を模倣する、流体SF=合成物濾過液によるコアの真空飽和。
SFは、ラミウム(製油所で脂肪族炭化水素に基づいて切断した)、およびオイルベースマッドの配合のために使用される1/10の濃度の界面活性剤(一次乳化剤および二次乳化剤)を含む。
2.油に対する初期浸透率の決定後に、浮動ピストンを装備したシリンダーの使用により圧力定数(70bar)を維持して、34%のブラインCaCl2をコアの中へ注入する。同時に、コアを通って濾過された流体の量は、データー処理システムに接続された電子はかりによってモニタリングされる。
3.最終的に、完全にコアがふさがれなければSFを再び注入し、油に対する最終浸透率を測定する。
4.コアの全体的な損傷は、最終浸透率と初期浸透率との間の比率として決定する。
【0032】
実施例13−比較
油(8mD)に対する初期浸透率の決定後に、実施例12の要点2で記述されたものに従って、CaCl2の注入を75barの圧力で始めた。5mlの油の放出が観察され、続いて濾過がブロックされた。圧力を90barに増加したが、さらに5〜6mlの放出後に完全にブロックされた。ブラインの圧力に関して反対方向で85〜90barの圧力によりSFを注入する試みは、コア中での流動の再建を可能にせず、それは完全な損傷を生じた。
【0033】
実施例14
1%の界面活性剤GP215を添加したCaCl2による検査は、実施例12の要点2で記述された手順に従って行なわれた。コアの任意のブロックが観察され、その浸透率は油によるフラッシング後に完全に回復した。残留損傷は従ってゼロだった。
野外適用
エマルジョンの形成を防止するために仕上げブラインに添加したグルコポンにより実行される、野外の適用のための最も代表例使用歴のいくつかを、以下に提供する。
【0034】
実施例15
アルミダ4ビス(Armida 4 bis)では、OBM中で井戸を掘削し、ブライン+グルコポン中で噴出させ;バジル8(Basil 8)では、グルコポンを仕上げブラインに添加して、砂対照についてのHRWPをもたらし;アルミダ4において、グルコポンをブラインに添加して有線操作の間に井戸を制御した。
すべての事例において、井戸生産に対するこのシステムの有効性が指摘され、それは新しいレベルが完了した場合は推定に従って得られるか、または井戸の閉鎖が必要とされる場合は操作が実行される井戸の傾向に従って維持された。
【0035】
イタリア
・アルミダ4ビス
井戸 アルミダ4ビス
日付31/08/05
(2か月の間の生産において)
Qガス96.800Sm3/g
FTHP 234kg/cm2
SBHP 483kg/cm2
掘削流体 OBM
仕上げ流体 ブライン+3%グルコポン
・バジル8
井戸 バジル8
日付10/12/05
Qガス225.600 Sm3/g(*)
FTHP 144kg/cm2
SBHP 235kg/cm2
掘削流体OBM
HRPWのための仕上げ流体ブライン+3%グルコポン
(*)初期生産から
*アルミダ4
【0036】
グルコポンを、有線操作中の井戸の制御のために使用されたブラインに添加した。これらの操作の間に、実際は、ブラインはOBM中に噴出された形成物と接触することができ、したがってエマルジョンを生成した。井戸の生産は、生産の減少なしに再開されたので、操作は成功して達成された。
【0037】
表1

【0038】
表2 ブラインおよびそれにより調製されたエマルジョンの電気伝導率値

【0039】
表3 界面活性剤/水/SFシステムの電気伝導率値

【0040】
表4 検査された様々な分解剤についてのエマルジョン分解時間

【0041】
表5 異なるブラインおよび2つのグルコポン濃度による3%KClからのエマルジョンの分解時間

【0042】
表6 25℃および40℃の温度で得られた、2つの異なるブライン(3%のKClおよびCaCl2)により携えられた8%グルコポンによる3%KClからのエマルジョンの分解時間


【特許請求の範囲】
【請求項1】
油田における適用のための、10〜90℃の温度で安定しており、8〜20のHLBを有し、0〜60質量%の塩水含有量の水中で可溶性である非イオン性界面活性剤、および或いは塩を含む、水性流体。
【請求項2】
前記塩が、1〜35質量%の濃度のCaCl2、1〜10質量%の濃度のKCl、40〜60質量%の濃度のCaBr2から選択される、請求項1に記載の流体。
【請求項3】
前記非イオン性界面活性剤が、10〜15のHLBを有する、請求項1に記載の流体。
【請求項4】
前記非イオン性界面活性剤が、アルキルポリグルコシド界面活性剤のグループに属する、請求項1に記載の流体。
【請求項5】
前記アルキルポリグルコシド界面活性剤が、セピックの市販名SL8、L10である界面活性剤、およびコグニスのグルコポン215と呼ばれる界面活性剤から選択される、請求項4に記載の流体。
【請求項6】
オイルベースマッドが使用されている油井中で、W/O逆エマルジョンの形成を防止するための仕上げ流体として、または既に形成されたエマルジョンを分解するための改善用流体としての、請求項1に記載の流体の使用。
【請求項7】
前記流体が、エマルジョンの形成を防止するために使用される場合、0.1〜1質量%の濃度で非イオン性界面活性剤を含み、エマルジョンを分解するために使用される場合、0.2〜5質量%の濃度で非イオン性界面活性剤を含む、請求項6に記載の使用。
【請求項8】
炭化水素生産井および水注入井の両方における、請求項6に記載の使用。
【請求項9】
前記オイルベースマッドが、分散相として使用されるパラフィン油並びに界面活性剤または一方は一次乳化剤としておよび他方は二次乳化剤として働く1対の界面活性剤を含む、請求項6に記載の使用。
【請求項10】
前記パラフィン油が、ラミウムである、請求項9に記載の使用。
【請求項11】
前記一次乳化剤が3〜5質量%の濃度で、および前記二次乳化剤が1〜3質量%の濃度で前記マッド中に存在する、請求項9に記載の使用。
【請求項12】
油性流体により掘削される炭化水素生産井中で形成されるW/O逆エマルジョンを防止するための方法であって、請求項1の水性流体が前記井中へ注入され、残存して、残留物としてまたは多孔性マトリックスからの濾過液としての形成物において存在する掘削油性流体と相互作用する方法。
【請求項13】
油性流体により掘削される炭化水素生産井中で形成されるW/O逆エマルジョンを分解するための方法であって、請求項1の水性流体が前記井中へ注入され、残存して、既に形成されている前記W/Oエマルジョンと直接相互作用する方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−529269(P2010−529269A)
【公表日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−511535(P2010−511535)
【出願日】平成20年6月9日(2008.6.9)
【国際出願番号】PCT/EP2008/004678
【国際公開番号】WO2008/151791
【国際公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【出願人】(599068430)エニ、ソシエタ、ペル、アチオニ (16)
【氏名又は名称原語表記】ENI S.P.A.