X線コンピュータ断層撮影装置及びその制御方法
【課題】水系冷却液を使用してX線管を冷却することができ、水系冷却液の循環路内におけるキャビテーションの発生を防止することができるX線コンピュータ断層撮影装置及びその制御方法を提供する。
【解決手段】X線コンピュータ断層撮影装置は、X線管ユニット10と、水系冷却液9と、導管11a、11b、21a、21b、21cと、循環ポンプ22と、循環路30に取付けられたベローズ機構と、回転架台と、X線検出器と、を備える。P0−p´>0.5・(R0+R1)・(R0−R1)・ρ・ω2、及びR2>R0である。
【解決手段】X線コンピュータ断層撮影装置は、X線管ユニット10と、水系冷却液9と、導管11a、11b、21a、21b、21cと、循環ポンプ22と、循環路30に取付けられたベローズ機構と、回転架台と、X線検出器と、を備える。P0−p´>0.5・(R0+R1)・(R0−R1)・ρ・ω2、及びR2>R0である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、X線コンピュータ断層撮影装置及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
X線コンピュータ断層撮影装置(以下、X線CT装置と称する)のガントリーは、固定フレームと、固定フレームに回転可能に支持された回転架台と、固定フレーム及び回転架台を収容した筐体と、を備えている。ガントリーは、回転架台に搭載されたX線管ユニット、X線検出器及び冷却ユニットなども備えている。X線管ユニット及び冷却ユニットなどは、比較的コンパクトでありながら質量が大きく、設置面の圧力が高いため、回転架台に強固に取付けられている。
【0003】
X線管ユニット及び冷却ユニットは導管を介して接続され、X線管が発生する熱が伝達される冷却液はX線管ユニット及び冷却ユニットの間で循環する。X線CT装置の発熱源は、X線管である。このため、X線管の発熱は冷却液に伝達され、高温となった冷却液は冷却ユニットに送り込まれる。冷却ユニットで冷却された冷却液は、再びX線管ユニットに戻される。
【0004】
一般に、X線CT装置に使用されるX線管ユニットとして、回転陽極型X線管装置が知られている。回転陽極型X線管装置は、ハウジング及びハウジングに収納された回転陽極型X線管を備えている。この回転陽極型X線管は、ハウジング内に収納された真空外囲器と、真空外囲器内に位置し回転可能に設けられた陽極ターゲットと、真空外囲器内に位置し真空外囲器に対して静止して設けられた陰極とを有している。
【0005】
上記のような回転陽極型X線管装置においては、特に、陽極ターゲットのターゲット面近傍を冷却液により強制的に冷却するものが知られている。これにより、X線を放出させるためにターゲット面に電子ビームを衝突させている期間に、陽極ターゲットから発生する熱を、冷却液に伝熱させることを可能としている。冷却液としては、熱伝達性能に優れる水系冷却液が使用されているものもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−56710号公報
【特許文献2】特開2001−137224号公報
【特許文献3】国際公開第2008/069195号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、X線CT装置においては、スキャン時間(撮影時間)の短縮化が大きな技術的課題である。そこでスキャン時間を短縮するために回転架台をより高速で回転させることが行われている。回転架台の回転速度は多くの場合1乃至2rpsであり、最高機種で3rps程度である。将来は4rps以上を目指す試みもなされつつある。2rpsの場合に比べて4rpsの場合には、回転架台の遠心方向の加速度は300%も増加する。3rpsの場合に比べて4rpsの場合には、回転架台の遠心方向の加速度は約78%も増加することになる。
【0008】
しかしながら、水系冷却液は、絶縁油に比べて飽和蒸気圧が低いため、回転架台の回転速度が4rps以上になると水系冷却液の循環路中にキャビテーションが発生してしまう問題が発生すると予想される。キャビテーションが発生すると水系冷却液の流れが阻害されてX線管の冷却ができなくなったり、循環ポンプに不具合が発生したりする恐れがある。このため、水系冷却液を使用してX線管を冷却することができ、水系冷却液の循環路中におけるキャビテーションの発生を防止することができる技術が求められている。
【0009】
この発明は以上の点に鑑みなされたもので、その目的は、水系冷却液を使用してX線管を冷却することができ、かつ水系冷却液の循環路内におけるキャビテーションの発生を防止することができるX線コンピュータ断層撮影装置及びその制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置は、
ハウジングと、電子を放出する陰極、前記電子が衝突されることによりX線を放出する陽極ターゲット、並びに前記陰極及び陽極ターゲットを収納した真空外囲器を含み、前記ハウジングに収納されたX線管と、を有したX線管ユニットと、
前記X線管が発生する熱の少なくとも一部が伝達される水系冷却液と、
前記ハウジングに接続され、前記水系冷却液が流れる導管と、
前記導管に取付けられ、前記水系冷却液を循環させ、前記X線管ユニット及び導管とともに前記水系冷却液が循環する循環路を形成する循環ポンプと、
前記循環路に取付けられ、前記水系冷却液を前記循環路から外れたガス空間と隔てる弾性隔膜を有し、前記水系冷却液の体積変化を吸収するベローズ機構と、
回転軸を中心に回転し、前記X線管ユニット、導管、循環ポンプ及びベローズ機構が取付けられた回転架台と、
前記回転軸に対して前記X線管ユニットの反対側に位置し、前記回転架台に取付けられ、前記X線を検出するX線検出器と、を備え、
前記回転軸から前記弾性隔膜までの距離の平均値をR0、
前記ガス空間の圧力をP0、
前記ハウジングの表面の最高温度に達した状態における前記水系冷却液の飽和蒸気圧をp´、
前記ハウジングをその一部に含む前記循環路までの、前記回転軸からの距離の最小値をR1、
前記回転軸から前記循環ポンプの前記水系冷却液の導入口までの距離の最小値をR2、
前記水系冷却液の密度をρ、
前記回転架台の角速度をω、とすると、
P0−p´>0.5・(R0+R1)・(R0−R1)・ρ・ω2、及び
R2>R0
であることを特徴としている。
【0011】
また、一実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置の制御方法は、
ハウジングと、電子を放出する陰極、前記電子が衝突されることによりX線を放出する陽極ターゲット、並びに前記陰極及び陽極ターゲットを収納した真空外囲器を含み、前記ハウジングに収納されたX線管と、を有したX線管ユニットと、前記X線管が発生する熱の少なくとも一部が伝達される水系冷却液と、前記ハウジングに接続され、前記水系冷却液が流れる導管と、前記導管に取付けられ、前記水系冷却液を循環させ、前記X線管ユニット及び導管とともに前記水系冷却液が循環する循環路を形成する循環ポンプと、前記循環路に取付けられ、前記水系冷却液を前記循環路から外れたガス空間と隔てる弾性隔膜を有し、前記水系冷却液の体積変化を吸収するベローズ機構と、回転軸を中心に回転し、前記X線管ユニット、導管、循環ポンプ及びベローズ機構が取付けられた回転架台と、前記回転架台を回転させる駆動部と、前記回転軸に対して前記X線管ユニットの反対側に位置し、前記回転架台に取付けられ、前記X線を検出するX線検出器と、前記X線管ユニットの内部を流れる前記水系冷却液の温度を検出する温度検出器と、を備え、前記回転軸から前記弾性隔膜までの距離の平均値をR0、前記ガス空間の圧力をP0、前記ハウジングの表面の最高温度に達した状態における前記水系冷却液の飽和蒸気圧をp´、前記ハウジングをその一部に含む前記循環路までの前記回転軸からの距離の最小値をR1、前記回転軸から前記循環ポンプの前記水系冷却液の導入口までの距離の最小値をR2、前記水系冷却液の密度をρ、前記回転架台の角速度をω、とすると、
P0−p´>0.5・(R0+R1)・(R0−R1)・ρ・ω2、及び
R2>R0
であるX線コンピュータ断層撮影装置の制御方法において、
前記回転架台の回転及び前記水系冷却液の循環を行いながら前記X線管ユニットから放出させたX線を前記X線検出器で検出させて撮影を行い、
前記撮影を行った後、前記X線管ユニットからのX線の放出を休止させ、前記X線管ユニットの内部を流れる前記水系冷却液の温度が所定の許容上限温度以下になるまで前記回転架台の回転及び前記水系冷却液の循環を維持させて冷却を行う、
ことを特徴としている。
【0012】
また、一実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置の制御方法は、
ハウジングと、電子を放出する陰極、前記電子が衝突されることによりX線を放出する陽極ターゲット、並びに前記陰極及び陽極ターゲットを収納した真空外囲器を含み、前記ハウジングに収納されたX線管と、を有したX線管ユニットと、前記X線管が発生する熱の少なくとも一部が伝達される水系冷却液と、前記ハウジングに接続され、前記水系冷却液が流れる導管と、前記導管に取付けられ、前記水系冷却液を循環させ、前記X線管ユニット及び導管とともに前記水系冷却液が循環する循環路を形成する循環ポンプと、前記循環路に取付けられ、前記水系冷却液を前記循環路から外れたガス空間と隔てる弾性隔膜を有し、前記水系冷却液の体積変化を吸収するベローズ機構と、回転軸を中心に回転し、前記X線管ユニット、導管、循環ポンプ及びベローズ機構が取付けられた回転架台と、前記回転架台を回転させる駆動部と、前記回転軸に対して前記X線管ユニットの反対側に位置し、前記回転架台に取付けられ、前記X線を検出するX線検出器と、前記X線管ユニットの内部を流れる前記水系冷却液の温度を検出する温度検出器と、前記ガス空間に連通され、前記ガス空間のガスの圧力を調整可能な圧力調整機構と、を備え、前記回転軸から前記弾性隔膜までの距離の平均値をR0、前記ガス空間の圧力をP0、前記ハウジングの表面の最高温度に達した状態における前記水系冷却液の飽和蒸気圧をp´、前記ハウジングをその一部に含む前記循環路までの前記回転軸からの距離の最小値をR1、前記回転軸から前記循環ポンプの前記水系冷却液の導入口までの距離の最小値をR2、前記水系冷却液の密度をρ、前記回転架台の角速度をω、とすると、
P0−p´>0.5・(R0+R1)・(R0−R1)・ρ・ω2、及び
R2>R0
であるX線コンピュータ断層撮影装置の制御方法において、
前記回転架台の回転及び前記水系冷却液の循環を行いながら前記X線管ユニットから放出させたX線を前記X線検出器で検出させて撮影を行い、
前記撮影モードの後、前記X線管ユニットからのX線の放出を休止させ、前記X線管ユニットの内部を流れる前記水系冷却液の温度が所定の許容上限温度以下になるまで、前記ガス空間のガスの圧力を正圧に調整し前記水系冷却液の循環を維持した状態で前記回転架台の回転を休止させて冷却を行う、
ことを特徴としている。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、第1の実施形態に係るX線CT装置のガントリーの外観を示す斜視図である。
【図2】図2は、図1の線II−IIに沿ったX線CT装置を示す断面図である。
【図3】図3は、図2に示した回転架台、並びに回転架台に搭載されたX線管ユニット、冷却ユニット及びX線検出器を示す正面図である。
【図4】図4は、上記第1の実施形態に係るX線管ユニット及び冷却ユニット示す概略構成図である。
【図5】図5は、上記第1の実施形態に係るX線CT装置の実施例1のX線管ユニットを示す断面図である。
【図6】図6は、上記第1の実施形態に係るX線CT装置の実施例2のX線管ユニットを示す断面図である。
【図7】図7は、図6に示したX線管ユニットを示す他の断面図である。
【図8】図8は、図6及び図7に示したX線管ユニットの一部を拡大して示す断面図である。
【図9】図9は、水100%の温度及びPG50%水溶液の温度に対する飽和蒸気圧の変化のデータを表で示す図である。
【図10】図10は、図9に示したデータをグラフで示す図である。
【図11】図11は、圧力P0=大気圧とするための、上記距離R0及び距離R1の関係をグラフで示した図である。
【図12】図12は、圧力P0=0.5気圧とするための、上記距離R0及び距離R1の関係をグラフで示した図である。
【図13】図13は、第2の実施形態に係るX線CT装置の回転架台、並びに回転架台に搭載されたX線管ユニット、冷却ユニット及びX線検出器を示す正面図である。
【図14】図14は、上記第2の実施形態に係るX線管ユニット及び冷却ユニット示す概略構成図である。
【図15】図15は、図14に示したX線管ユニットの分離状態を示す概略構成図である。
【図16】図16は、図14に示した冷却ユニットの分離状態を示す概略構成図である。
【図17】図17は、第3の実施形態に係るX線CT装置の回転架台、並びに回転架台に搭載されたX線管ユニット、冷却ユニット及びX線検出器を示す正面図である。
【図18】図18は、第4の実施形態に係るX線CT装置の回転架台、並びに回転架台に搭載されたX線管ユニット、冷却ユニット及びX線検出器を示す正面図である。
【図19】図19は、上記X線CT装置の変形例を示す図であり、X線管ユニット及び冷却ユニット示す概略構成図である。
【図20】図20は、図19に示したX線管ユニットの分離状態を示す概略構成図である。
【図21】図21は、図19に示した冷却ユニットの分離状態を示す概略構成図である。
【図22】図22は、図4、図14及び図19に示したX線管の変形例を示す概略断面図である。
【図23】図23は、図4、図14及び図19に示したX線管の他の変形例を示す概略断面図である。
【図24】図24は、図4、図14及び図19に示したX線管の他の変形例を示す概略断面図である。
【図25】図25は、上記X線CT装置の他の変形例を示す図であり、空盆、圧力検出器、圧力制御装置及び圧力調整機構を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら第1の実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置及びその制御方法について詳細に説明する。X線コンピュータ断層撮影装置は、X線CT装置( computed tomography system)である。
【0015】
図1は、第1の実施形態に係るX線CT装置のガントリーの外観を示す斜視図である。図2は、図1の線II−IIに沿ったX線CT装置を示す断面図である。図3は、図2に示した回転架台、並びに回転架台に搭載されたX線管ユニット、冷却ユニット及びX線検出器を示す正面図である。
【0016】
図1乃至図3に示すように、X線CT装置1は、筐体2、土台部4、固定架台5、回転架台6、ベアリング部材8、X線管ユニット10、冷却ユニット20、及びX線検出器40を備えている。
【0017】
筐体2は、上記の多くの部材を収容している。筐体2は、X線CT装置1の外観を飾っている。筐体2は、排気口2a、吸気口2b及び導入口2cを含んでいる。
排気口2aは、筐体2の上部に形成されている。排気口2aは、通気性に優れたメッシュ状のカバー3で塞がれている。なお、図示しないが、X線CT装置1は、筐体2内に設けられカバー3に対向したファンユニットをさらに備えている。これにより、筐体2内の空気を、排気口2aを通して筐体2の外部に排出することができる。
【0018】
吸気口2bは、筐体2の下部に形成されている。ここでは、吸気口2bは、筐体2と
土台部4の間の隙間に形成されている。筐体2の外部の新しい空気を、吸気口2bを通して筐体2の内部に取入れることができる。
上記のことから、筐体2の内部の空気を入れ替えることができるため、筐体2の内部の空気の温度の上昇を抑制することができる。
導入口2cは、被検体を導入するものである。図示しないが、X線CT装置1は、被検体を載せる寝台も備えている。
【0019】
固定架台5は、土台部4に固定されている。軸受機構として機能するベアリング(転がり軸受け、ボール/ロールベアリングなど)部材8は、固定架台5及び回転架台6間に設けられている。
【0020】
回転架台6は、ベアリング部材8を介して固定架台5に回転可能に支持されている。回転架台6は、回転架台6の回転軸a1を中心に回転可能である。X線CT装置1は、回転架台6を回転させるための図示しない駆動部を備えている。この実施形態において、回転架台6を高速回転させるために、X線CT装置は、例えば上記駆動部としてのダイレクトドライブモータを採用している。
【0021】
回転架台6は、最外周に位置したリング状のフレーム部7を有している。フレーム部7には、開口部7aが形成されている。ここでは、開口部7aのサイズ及び個数は、後述するファンユニット25のサイズ及び個数に対応している。
【0022】
X線管ユニット10、冷却ユニット20及びX線検出器40は、回転架台6に取付けられている。X線管ユニット10及び冷却ユニット20は、フレーム部7の内壁に取付けられている。図示しないが、高電圧発生電源などもフレーム部7の内壁に取付けられていてもよい。
【0023】
X線管ユニット10及び冷却ユニット20は、比較的コンパクトでありながら質量が大きく、設置面の圧力が高いため、フレーム部7に強固に固着されている必要がある。これらをフレーム部7の内壁に取り付けることにより、回転架台6が高速で回転し、その結果多大な遠心力がX線管ユニット10及び冷却ユニット20に加わるような場合でも、これらはフレーム部7に対する強固な固着を維持できるものである。
【0024】
X線管ユニット10は、X線を放射する。X線検出器40は、回転軸a1を挟んでX線管ユニット10(X線管)と対向している。X線検出器40は、例えば円弧状に配列された複数のX線検出素子を有している。X線CT装置は、X線検出器40を複数備え、配列させていてもよい。X線検出器40は、X線管ユニット10から放射され被検体を透過したX線を検出し、検出したX線を電気信号に変換する。
【0025】
図示しないが、X線CT装置1は、回転架台6に取付けられ、X線検出器40から出力する電気信号を増幅し、かつAD変換するデータ収集装置をさらに備えていてもよい。また、図示しないが、固定架台5には電力あるいは制御信号などをX線管ユニット10及び冷却ユニット20などに与えるための機器が設けられていてもよい。上記機器は、スリップリングを介して回転架台6に取付けられているX線管ユニット10及び冷却ユニット20などに電力あるいは制御信号などを与えることができる。
【0026】
図4は、X線管ユニット10及び冷却ユニット20示す概略構成図である。図4では、X線管ユニット10及び冷却ユニット20の接続関係を強調して示すものであり、図3のように、X線管ユニット10及び冷却ユニット20の相対的な位置関係を詳細に示すものではない。
【0027】
図3及び図4に示すように、X線管ユニット10は、ハウジング12と、ハウジング12に収納されたX線管13と、を有している。ハウジング12(X線管ユニット10)は、独立して回転架台6に直接又は間接的に取付けられ、固着されている。ここでは、ハウジング12は、フレーム部7の内壁に直接取付けられている。
【0028】
X線管13は、電子を放出する陰極、電子が衝突されることによりX線を放出する陽極ターゲット、並びに陰極及び陽極ターゲットを収納した真空外囲器を含んでいる。ここで、X線CT装置1は、水系冷却液9を有している。水系冷却液9には、X線管13が発生する熱の少なくとも一部が伝達される。
【0029】
X線管ユニット10は、導管11a及び導管11bを有している。導管11aは、ハウジング12の水系冷却液取入れ口12iに気密に取付けられ、一端がX線管13に気密に連結され、他端がソケット72に気密に取付けられている。導管11bは、一端がハウジング12の水系冷却液排出口12oに気密に取付けられ、他端がプラグ82に気密に取付けられている。導管11a、導管11b、X線管13及びハウジング12は、水系冷却液9が循環する循環路30の一部を形成している。
【0030】
この実施形態において、熱伝達面1sがX線管13の内部に位置し、ハウジング12内に水系冷却液9が収容されている。導管11a及びX線管13は、継手を介して間接的に連結されていてもよい。これにより、X線管13の内部の熱伝達面1sを水系冷却液9が循環する。熱伝達面1sは、陽極ターゲットへの電子の衝突に伴って発生する熱を水系冷却液9に熱(沸騰熱)伝達することができるため、X線管13、特に陽極ターゲットの過熱を抑制することができる。
【0031】
X線管ユニット10は、ベローズ機構としての空盆60をさらに有している。空盆60は、循環路30に取付けられ、この実施形態においてはハウジング12の外面に取付けられ、回転架台6に間接的に取付けられている。
【0032】
空盆60は、開口部61aを有したケース61を有している。開口部61aは、導管12aを介してハウジング12に気密に連通されている。空盆60は、ケース61内を開口部61aと繋がった第1空間63及び第2空間64に隔てる弾性隔膜としてのベローズ62を有している。ケース61には、第2空間64に繋がった通気孔65が形成されている。通気孔65は空気の出入りを許可するため、第2空間64は大気に開放されている。ベローズ62は、ケース61に液密に取付けられている。このため、ベローズ62は、水系冷却液9を循環路30から外れたガス空間(第2空間64)と隔てることができる。
【0033】
ベローズ62は伸縮自在である。ここでは、ベローズ62はゴムで形成されている。ベローズ62は、ガスに対して不透過性を示す材料で形成することが好ましい。空盆60は、水系冷却液9の温度変化による体積変化(体積の膨張及び収縮)を吸収することができる。
【0034】
X線管ユニット10は、第1温度検出器16及び第2温度検出器17をさらに備えている。第1温度検出器16は、熱伝達面1sの上流側の水系冷却液9の温度を検出する。第2温度検出器17は、熱伝達面1sの下流側の水系冷却液9の温度を検出する。なお、X線管ユニット10は、少なくとも第2温度検出器17を備えていればよく、これにより水系冷却液9の温度の最高値を検出することができる。
【0035】
冷却ユニット20は、導管21a、導管21b、導管21c、循環ポンプ22及び熱交換器23を有している。導管21aは、一端がソケット81に気密に取付けられている。導管21cは、一端がプラグ71に気密に取付けられている。
【0036】
循環ポンプ22は、独立してフレーム部7の内壁に直接又は間接的に取付けられ、固着されている。ここでは、循環ポンプ22は、フレーム部7の内壁に直接取付けられている。循環ポンプ22は、導管21a及び導管21b間に気密に取付けられている。循環ポンプ22は、導管21bに水系冷却液9を吐き出し、導管21aから水系冷却液9を取り込む。循環ポンプ22は、循環路30において水系冷却液9を循環させることができる。
【0037】
熱交換器23は、ラジエータ24、ファンユニット25、及びダクト26を有している。
ラジエータ24は、導管21b及び導管21c間に接続された図示しない、水系冷却液9が流れる複数の放熱パイプと、放熱パイプに取付けられた図示しない複数の放熱フィンと、を有している。ラジエータ24は、水系冷却液9の熱を外部へ放出させることができる。
【0038】
ファンユニット25は、それぞれ開口部7a及びラジエータ24に対向して位置している。回転軸a1からファンユニット25までの距離は、回転軸a1からラジエータ24までの距離より長い。ファンユニット25は、ラジエータ24の周囲に空気の流れを作りだすことができる。ファンユニット25は、ラジエータ24の周囲を流れる空気を開口部7aを通して回転架台6(フレーム部7)の外部へと放出させることができる。
【0039】
導管21a、導管21b、導管21c、循環ポンプ22及びラジエータ24は、循環路30の一部を形成している。
上記のことから、熱交換器23は、水系冷却液9の熱を外部へ放出させることができる。また、ラジエータ24の周囲を流れる空気を回転架台6の外部へと放出させることができるため、回転架台6の内部の空気の温度の上昇を抑制することができる。
【0040】
ダクト26は、ラジエータ24及びファンユニット25の間に位置している。ダクト26は、ラジエータ24の周縁部及びファンユニット25の周縁部をそれぞれ囲んでいる。ダクト26は、ラジエータ24の周囲の空気の流れをファンユニット25までガイドすることができる。ラジエータ24の周囲の加熱された空気をファンユニット25まで効率良くガイドすることができるため、回転架台6の内部(回転架台6及び筐体2で囲まれた領域)の空気の温度の上昇を一層、抑制することができる。これにより、熱交換器23の冷却性能や、X線検出器40の感度の安定性を高い状態に維持することができる。
【0041】
冷却ユニット20は、回転架台6に取付けられた筐体50をさらに備えている。筐体50は、フレーム部7の内壁に取付けられ、固着されている。筐体50は、例えば板金で形成されている。筐体50は、回転架台6の回転に伴って加わる遠心力に耐え得る機械的強度を持つように設計されている。
【0042】
ラジエータ24、ファンユニット25及びダクト26は、筐体50に収納され、ユニット化されている。筐体50は、ラジエータ24及びファンユニット25を外部に露出させるよう開口して形成されている。
【0043】
ラジエータ24、ファンユニット25及びダクト26は、回転架台6に直接又は間接的に取付けられ、固着されている。ここでは、ラジエータ24、ファンユニット25及びダクト26は、筐体50を介してフレーム部7の内壁に間接的に取付けられている。
【0044】
プラグ71及びソケット72は、着脱自在継手としてのカプラ70を形成し、ソケット81及びプラグ82は、着脱自在継手としてのカプラ80を形成している。カプラ70、80は、プラグ及びソケットが連結した連結状態(固定状態)と、プラグ及びソケットが分離した分離状態とに切替え可能である。カプラ70、80は、連結状態において、気密、かつ液密に連結されている。カプラ70、80は、シャットオフバルブ付きのカプラである。カプラ70、80の分離状態において、プラグ71、82及びソケット72、81は、それぞれ、外部への液(水系冷却液9)漏れを防止することができ、内部への空気の混入を防止することができる構造を採っている。カプラ70、80をそれぞれ分離状態に切替えることにより、2系統に分離することができ、X線管ユニット10及び冷却ユニット20を分離することができる。
【0045】
ここで、この第1の実施形態に係るX線CT装置のX線管ユニット10の例として、実施例1及び実施例2のX線管ユニットについて説明する。始めに、実施例1のX線管ユニット10について説明する。図5は、実施例1のX線管ユニット10を示す断面図である。
【0046】
図5に示すように、X線管ユニット10は回転陽極型のX線管ユニットであり、X線管13は回転陽極型のX線管である。X線管ユニット10は、X線管13の他、磁界を発生させるコイルとしてのステータコイル102を備えている。図示しないが、ハウジング12(図4)は、X線管13及びステータコイル102を収容している。
【0047】
X線管13は、固定体としての固定シャフト110と、管部130と、陽極ターゲット150と、回転体160と、潤滑剤としての液体金属170と、陰極180と、真空外囲器190とを備えている。X線管13は動圧すべり軸受を使っている。
【0048】
固定シャフト110は、回転軸a2に沿って延出して回転軸a2を中心軸として筒状に形成され、一端部が閉塞されている。固定シャフト110は、上記一端部から外れた側面に軸受面110Sを有している。固定シャフト110は、Fe(鉄)合金やMo(モリブデン)合金等の材料で形成されている。固定シャフト110の内部は水系冷却液9で満たされている。固定シャフト110は、この内部に水系冷却液9が流れる流路が形成されている。固定シャフト110は、この他端部側に水系冷却液9を外部に吐出す吐出し口110bを有している。
【0049】
管部130は、固定シャフト110の内部に設けられ、固定シャフトとともに流路を形成している。管部130の一端部は、固定シャフト110の他端部に形成された開口部110aを通って固定シャフト110の外部に延出している。管部130は、開口部110aに密接に固定されている。
【0050】
管部130は、この内部に水系冷却液9を取り入れる取り入れ口130aと、水系冷却液9を固定シャフト110の内部に吐出す吐出し口130bとを有している。取り入れ口130aは、固定シャフト110の外部に位置している。吐出し口130bは、固定シャフト110の一端部に隙間を置いて位置している。
【0051】
取り入れ口130aは導管11aに直接連結され、吐出し口110bはハウジング12内に開放されている。なお、X線管ユニット10が図5に示すように構成されている場合、取り入れ口130aは導管11aに継手を介して間接的に連結されていてもよい。又は、取り入れ口130aはハウジング12内に開放され、吐出し口110bは導管11bに直接又は継手を介して間接的に連結されていてもよい。
【0052】
上記したことから、X線管13外部からの水系冷却液9は、取り入れ口130aから取り入れられ、管部130内部を通って固定シャフト110の内部に吐出され、固定シャフト110及び管部130の間を通り、吐出し口110bからX線管13外部に吐出される。
【0053】
陽極ターゲット150は、陽極151と、この陽極の外面の一部に設けられたターゲット層152とを有している。陽極151は、円盤状に形成され、固定シャフト110と同軸的に設けられている。陽極151は、Mo合金等の材料で形成されている。陽極151は、回転軸a2に沿った方向に凹部151aを有している。凹部151aは、円盤状に窪めて形成されている。凹部151aには固定シャフト110の一端部が嵌合されている。凹部151aは、固定シャフト110の一端部に隙間を置いて形成されている。ターゲット層152は、W(タングステン)合金等の材料で輪状に形成されている。ターゲット層152の表面は電子衝突面である。
【0054】
回転体160は、固定シャフト110より径の大きい筒状に形成されている。回転体160は、固定シャフト110及び陽極ターゲット150と同軸的に設けられている。回転体160は、固定シャフト110より短く形成されている。
【0055】
回転体160は、FeやMo等の材料で形成されている。より詳しくは、回転体160は、筒部161と、筒部161の一端部の側面を囲むように筒部と一体に形成された環部162と、筒部161の他端部に設けられたシール部163と、筒部164とを有している。
【0056】
筒部161は、固定シャフト110の側面を囲んでいる。筒部161は、内面に軸受面110Sに隙間を置いて対向した軸受面160Sを有している。回転体160の一端部、すなわち、筒部161の一端部及び環部162は陽極ターゲット150と接合されている。回転体160は、固定シャフト110を軸に陽極ターゲット150とともに回転可能に設けられている。
【0057】
シール部163は、軸受面160Sに対して環部162(一端部)の反対側に位置している。シール部163は、筒部161の他端部に接合されている。シール部163は、環状に形成され、固定シャフト110の側面全周に亘って隙間を置いて設けられている。筒部164は、筒部161の側面と接合され、筒部161に固定されている。筒部164は、例えばCu(銅)で形成されている。
【0058】
液体金属170は、固定シャフト110の一端部及び凹部151a間の隙間、並びに固定シャフト110(軸受面110S)及び筒部161(軸受面160S)間の隙間に充填されている。なお、これらの隙間は全て繋がっている。この実施の形態において、液体金属170は、ガリウム・インジウム・錫合金(GaInSn)である。
【0059】
回転軸a2に直交した方向において、シール部163及び固定シャフト110間の隙間(クリアランス)は、回転体160の回転を維持するとともに液体金属170の漏洩を抑制できる値に設定されている。上記したことから、隙間はわずかであり、500μm以下である。このため、シール部163は、ラビリンスシールリング(labyrinth seal ring)として機能する。
【0060】
また、シール部163は、内側を円形枠状に窪めてそれぞれ形成された複数の収容部を有している。上記収容部は、万一隙間から液体金属170が漏れた場合、漏れた液体金属170を収容する。
【0061】
陰極180は、陽極ターゲット150のターゲット層252に間隔を置いて対向配置されている。陰極180は、電子を放出するフィラメント181を有している。
真空外囲器190は、固定シャフト110、管部130、陽極ターゲット150、回転体160、液体金属170及び陰極180を収容している。真空外囲器190は、X線透過窓190a及び開口部190bを有している。X線透過窓190aは、回転軸a2に対して直交した方向にターゲット層152と対向している。固定シャフト110の他端部は、開口部190bを通って真空外囲器190の外部に露出されている。開口部190bは、固定シャフト110を密接に固定している。
陰極180は、真空外囲器190の内壁に取付けられている。真空外囲器190は密閉されている。真空外囲器190の内部は真空状態に維持されている。
【0062】
ステータコイル102は、回転体160の側面、より詳しくは筒部164の側面に対向して真空外囲器190の外側を囲むように設けられている。ステータコイル102の形状は環状である。
【0063】
ここで、上記X線管13及びステータコイル102の動作状態について説明する。
ステータコイル102は回転体160(特に筒部164)に与える磁界を発生するため、回転体は回転する。これにより、陽極ターゲット150も回転する。また、陰極180に負の電圧(高電圧)が印加され、陽極ターゲット150は接地電位に設定される。
【0064】
これにより、陰極180及び陽極ターゲット150間に電位差が生じる。このため、陰極180が電子を放出すると、この電子は、加速され、ターゲット層152に衝突する。すなわち、陰極180は、ターゲット層152に電子ビームを照射する。これにより、ターゲット層152は、電子と衝突するときにX線を放出し、放出されたX線はX線透過窓190aを介して真空外囲器190外部、及びハウジング12のX線放射口12w、ひいてはハウジング12外部に放出される。
上記のように、実施例1のX線管ユニット10が形成されている。
【0065】
次に、実施例2のX線管ユニット10について説明する。図6は、実施例2のX線管ユニットを示す断面図である。図7は、図6に示したX線管ユニットを示す他の断面図である。図8は、図6及び図7に示したX線管ユニットの一部を拡大して示す断面図である。
【0066】
図6乃至図8に示すように、X線管ユニット10は固定陽極型のX線管ユニットであり、X線管13は固定陽極型のX線管である。X線管13は、真空外囲器231を備えている。真空外囲器231は、真空容器232と、絶縁部材250とを備えている。この実施形態において、絶縁部材250は、高電圧絶縁部材として機能している。絶縁部材250には陰極236が取り付けられ、絶縁部材250は、真空外囲器231の一部を形成している。
【0067】
陽極ターゲット235は、真空外囲器231の一部を形成している。陽極ターゲット235は、真空外囲器231の外部に小さく開口し、ターゲット面235b近傍で膨らんだ壺形に形成されている。陽極ターゲット235、陰極236、集束電極209及び加速電極208は、真空外囲器231に収納されている。陽極ターゲット235には、電圧供給配線が接続されている。陽極ターゲット235及び加速電極208は接地電位に設定されている。陰極236及び集束電極209と対向した個所の真空容器232は筒状に形成されている。陰極236には、負の高電圧が印加される。集束電極209には、調整された負の高電圧が供給される。真空外囲器231の内部は真空状態である。金属表面部234は、X線透過窓231wの真空側の表面を含む真空容器232の内側に設けられ、接地電位に設定されている。
【0068】
また、X線管13は、管部241と、環部242とを備えている。管部241は、金属で形成されている。管部241の一端部は、陽極ターゲット235の内部に挿入されている。環部242は、陽極ターゲット235内に設けられている。環部242は、管部241の一端部の側面を囲むように管部241と一体に形成されている。環部242は陽極ターゲット235に隙間を置いて設けられている。管部241の他端部は、水系冷却液取入れ口を形成し、導管11aに連結されている。陽極ターゲット235の開口は、管部241との間に水系冷却液排出口を形成している。このため、ハウジング12内は、水系冷却液9で満たされる。ハウジング12は、X線透過窓231wに対向したX線放射口12wを有している。
【0069】
ハウジング12内には、偏向部270が収容されている。偏向部270は、磁気偏向部であり、真空容器232の外側で、電子ビームの軌道を取り囲む位置に設けられている。偏向部270は、陰極236から放出される電子ビームを偏向させ、焦点の位置をターゲット面235b上で移動させるものである。
上記のように、実施例2のX線管ユニットが形成されている。
【0070】
次に、本願発明者等が、水系冷却液9の温度に対する飽和蒸気圧の変化について調査した結果について説明する。水系冷却液9としては、純水や、グリコール水などの不凍液を含むものなど、一般に知られている水系冷却液を利用することができる。
【0071】
ここでは、水系冷却液として、水100%の冷却液を使用した場合と、PG50%水溶液(プロピレングリコール50%、水50%)の冷却液を使用した場合とについてそれぞれ調査した結果について説明する。調査した結果を図9及び図10に示す。なお、100kPaは、概ね1気圧(大気圧)であり、50kPaは、概ね0.5気圧であり、200kPaは、概ね2気圧である。
【0072】
図9及び図10に示すように、水100%の温度が17℃、PG50%水溶液の温度が25℃の場合に飽和蒸気圧は1.9192kPaであった。すなわち、1.9192kPaの環境では、水100%は17℃、PG50%水溶液は25℃でそれぞれ沸点に達することが分かる。
【0073】
水100%の温度が37℃、PG50%水溶液の温度が45℃の場合に飽和蒸気圧は6.2282kPaであった。水100%の温度が57℃、PG50%水溶液の温度が65℃の場合に飽和蒸気圧は17.202kPaであった。水100%の温度が77℃、PG50%水溶液の温度が85℃の場合に飽和蒸気圧は41.647kPaであった。水100%の温度が97℃、PG50%水溶液の温度が105℃の場合に飽和蒸気圧は62.139kPaであった。水100%の温度が107℃、PG50%水溶液の温度が115℃の場合に飽和蒸気圧は128.74kPaであった。水100%の温度が117℃、PG50%水溶液の温度が125℃の場合に飽和蒸気圧は179.48kPaであった。
【0074】
上記のことから、100kPaの環境では、水100%は100℃、PG50%水溶液は108℃で沸点に達することが分かる。200kPaの環境では、水100%は120℃、PG50%水溶液は128℃で沸点に達することが分かる。50kPaの環境では、水100%は82℃、PG50%水溶液は90℃で沸点に達することが分かる。
【0075】
次に、水系冷却液9が流れる循環路30内におけるキャビテーション(トリチェリの真空)の発生を防止するためのX線CT装置1の構成について説明する。X線管13の冷却効率を高めるために絶縁油ではなく水系冷却液9を使用し、スキャン時間(撮影時間)を短縮するために回転架台6の回転速度を3rps以上に設定した場合、循環路30内にキャビテーションが発生し易いものである。しかしながら、本願発明者等が調査した結果、次に述べるように循環ポンプ22及び空盆60の位置を特定することにより、水系冷却液9を使用し、回転架台6の回転速度を3rps以上に設定した場合でも上記キャビテーションの発生を防止することのできるX線CT装置1が得られたものである。
【0076】
図3及び図4に示すように、ここで、回転軸a1からベローズ62までの距離の平均値をR0とする。第2空間64(ガス空間)の圧力をP0とする。この実施形態において、第2空間64は大気に開放されているため、P0=1気圧である。
【0077】
被検者や検査者またはサービスマンの安全性確保(やけど防止)の点から、JIS規格や国際規格などにおいて、ハウジング12の表面温度は85℃以下でなければならないと定められている。このため、ハウジング12の表面の許容最高温度は85℃以下となる値になるように温度制限する必要がある。
【0078】
ハウジング12の表面の最高温度に達した状態における水系冷却液9の飽和蒸気圧をp´とする。この実施形態において、ハウジング12の表面の許容最高温度は、85℃と75℃との間の温度(例えば80℃)に設定されている。
【0079】
ハウジング12をその一部に含み、かつ空盆60を除く循環路30までの回転軸a1からの距離の最小値をR1とする。この最小値R1に対応する領域は、ハウジング12を含んでいるため、この領域の水系冷却液9の温度はハウジング12の表面側の温度にほぼ近い値となる。この実施形態において、最小値R1に対応する領域は、回転軸a1側に位置するハウジング12の内壁近傍の領域である。
【0080】
回転軸a1から循環ポンプ22の水系冷却液9の導入口までの距離の最小値をR2とする。水系冷却液9の密度をρとする。回転架台6の角速度をω、とする。回転軸a1から熱伝達面1sまでの距離の最小値をR3とする。
【0081】
ベローズ62(距離R0)の位置にかかる遠心力差による内圧成分pは、次の式で表される。
【0082】
p=0.5・(R0+R1)・(R0−R1)・ρ・ω2
(1)まず、ハウジング12をその一部に含む循環路30(空盆60を除く)のうちキャビテーションが最も発生し易い領域は、回転軸a1から最も近くに位置する領域である。このため、圧力P0(ベローズ62(距離R0)の位置にかかる全内圧)、内圧成分p、飽和蒸気圧p´は、次の関係を満たすことで、空盆60のベローズ62が大気側に押し出されることを防止することができ(ベローズ62が第2空間64側に膨張することを防止することができ)、回転軸a1から最も近くに位置する循環路30内の領域における真空部分の発生を防止することができることとなる。
【0083】
P0>p+p´
すなわち、
P0−p´>0.5・(R0+R1)・(R0−R1)・ρ・ω2
である。
【0084】
この実施形態において、回転軸a1から最も近くに位置する領域は、ハウジング12内のX線透過窓231w近傍の領域も含まれるため、次に挙げる効果も得られることとなる。
【0085】
・X線透過窓231wの冷却が損なわれる恐れが回避される。
・X線強度分布が常に均一なX線を放射することができる。
【0086】
ここで、本願発明者等が、空盆60の圧力を大気圧に一致させる場合の距離R0、距離R1の関係について計算した結果を図11に示す。
図11に示すように、線グラフよりも下側であればキャビテーションは発生しない。例えば、距離R1が0.625mである場合に、距離R0を0.748m以下に設定すればよいことが分かる。
【0087】
X線CT装置1の具体例に着目すると、距離R1は0.55m乃至0.70mの範囲内である。回転架台6の回転速度が4rpsの場合、高低差(R0−R1)が12cm程度より大きくなると、距離R1の位置の循環路30(ハウジング12)内に真空部分が発生してしまう。回転架台6の回転速度がより速くなったり、水系冷却液9の温度がより高くなったり、後述するように第2空間64が減圧されたりする場合、上記高低差はより小さくなるものである。例えば、回転架台6の回転速度が4rpsで、第2空間64が負圧(0.5気圧に減圧された)とした場合、図12に示すように、キャビテーションが発生しないための上記高低差は1cm以下となる。このため、第2空間64を減圧する場合などは、キャビテーションの発生に特に注意を要するものである。
【0088】
(2)次に、キャビテーションが発生し易い領域は、循環ポンプ22の水系冷却液9の導入口側である。この領域は圧力が低下し、負圧(大気圧より負の圧力)になり易いためキャビテーションが発生し易い。キャビテーションが発生すると循環ポンプ22が正常に動作せず、流量が低下したり、循環ポンプ22の部品が損傷したりする恐れがある。キャビテーションの発生を防止するためには、回転架台6の回転による遠心力の作用で圧力がかかるようにすることが有効である。
【0089】
すなわち、次の関係を満たすことが、循環路30内において、負圧(大気圧より負の圧力)になり易い領域におけるキャビテーション発生を防止するための必要条件である。
【0090】
R2>R0
(3)さらに、キャビテーションが発生し易い領域は沸騰熱伝達領域である。この領域を流れる水系冷却液9の温度は高いためキャビテーションが発生し易い。キャビテーションが発生すると水系冷却液9の流れが低下して冷却不足となり、X線管13が破損する恐れがある。キャビテーションの発生を防止するためには、回転架台6の回転による遠心力の作用で圧力がかかるようにすることが有効である。
【0091】
すなわち、次の関係を満たすことが、循環路30内において、水系冷却液9が高温になり易い領域における真空部分の発生を防止するための必要条件である。
【0092】
R3>R0
次に、上記のように構成されたX線CT装置1の制御方法として、X線CT装置1による、撮影モード時の動作と、冷却モード時の動作とを説明する。
X線CT装置1は、図示しない制御部をさらに備えている。制御部は、上記駆動部、循環ポンプ22、X線管ユニット10及びX線検出器40を制御し、温度検出器(第1温度検出器16及び第2温度検出器17)で検出した水系冷却液9の温度の情報を取得することができる。制御部は、撮影モードと、冷却モードと、に切替え可能である。
【0093】
制御部は、撮影モードに切替えると、回転架台6の回転及び水系冷却液9の循環を行いながらX線管13から放出させたX線をX線検出器40で検出させて撮影することができる。
【0094】
詳しくは、撮影モードに入ると(制御部が撮影モードに切替えると)、回転架台6が回転軸a1を中心に回転する。このとき、X線管ユニット10、冷却ユニット20及びX線検出器40などは、被検体の周囲を一体になって回転する。また、循環ポンプ22は循環路30内において水系冷却液9の循環を行い、X線管ユニット10はX線を放射する。
【0095】
X線は、被検体を透過し、X線検出器40に入射し、X線検出器40においてX線の強度が検出される。X線検出器40で検出された検出信号は、上述したデータ収集装置で増幅され、かつA/D変換によってディジタル検出信号に変換され、図示しないコンピュータに供給される。
【0096】
コンピュータは、ディジタル検出信号をもとに、被検体の関心領域におけるX線吸収率を演算し、その演算結果から被検体の断層画像を生成するための画像データを構築する。画像データは、図示しない表示装置などに送られ、画面上に断層画像として表示される。
【0097】
上記のように、X線CT装置1は、X線管ユニット10及びX線検出器40が被検体を挟んで回転し、被検体の検査断面内のあらゆる点を透過したX線の強弱いわゆる投影データを、いろいろな角度、例えば360°の範囲から獲得する。そして、この投影データをもとに、予めプログラムされたデータ再構成プログラムにより断層画像を生成する。
【0098】
制御部は、撮影モードの後、冷却モードに切替えると、X線管ユニット10からのX線の放出を休止させ、X線管ユニット10の内部を流れる水系冷却液9の温度が所定の許容上限温度以下(例えば大気圧の場合の沸点以下)になるまで回転架台6の回転及び水系冷却液9の循環を維持させて冷却することができる。
【0099】
すなわち、冷却モードにおいて、回転架台6の回転による遠心力の作用で圧力がかかるようにしていることがポイントであり、X線管13によるX線の曝射終了後も、水系冷却液9の温度が高いうちは回転架台6の回転を停止せず、回転を継続させることが好ましく、これにより、キャビテーションの発生を防止することができる。
【0100】
上記のように構成された第1の実施形態に係るX線CT装置1及びその制御方法によれば、X線CT装置1は、X線管ユニット10と、水系冷却液9と、導管11a、11b、21a、21b、21cと、循環ポンプ22と、循環路30に取付けられた空盆60と、回転架台6と、X線検出器40と、を備えている。
【0101】
X線管13の冷却に絶縁油ではなく水系冷却液9を使用することができるため、X線管13の冷却効率を高めることができる。
X線CT装置1は、P0−p´>0.5・(R0+R1)・(R0−R1)・ρ・ω2の関係を満たしているため、回転軸a1から最も近くに位置する循環路30内の領域におけるキャビテーションの発生を防止することができる。
【0102】
X線CT装置1は、R2>R0の関係を満たしているため、循環路30内において、負圧になり易い領域におけるキャビテーションの発生を防止することができる。
X線CT装置1は、R3>R0の関係を満たしているため、水系冷却液9が高温になり易い領域におけるキャビテーションの発生を防止することができる。
【0103】
制御部は、撮影モードから冷却モードに切替えることができる。このため、X線管13によるX線の曝射終了後に水系冷却液9の温度が高くとも、キャビテーションの発生を防止することができる。
【0104】
上記のことから、水系冷却液9を使用してX線管13を冷却することができ、水系冷却液9の循環路30内におけるキャビテーションの発生を防止することができるX線CT装置1及びその制御方法を得ることができる。
【0105】
また、回転軸a1からファンユニット25までの距離は、回転軸a1からラジエータ24までの距離より長い。ファンユニット25は、ラジエータ24の周囲を流れる空気を開口部7aを通して回転架台6の外部へと放出させる。
【0106】
ラジエータ24はフレーム部7に密着して取り付けられていない。開口部7aのサイズは、ラジエータ24のサイズとほぼ同じである必要はなく、ラジエータ24のサイズより小さくすることができる。このため、フレーム部7の機械的強度の低下を抑制することができる。フレーム部7を広い幅にしたり、厚くしたりするなどの補強の必要は生じないため、装置の小型化及び軽量化を図ることができる。
【0107】
X線CT装置1の使用時間の経過とともに、ラジエータ24の放熱パイプや放熱フィン間の隙間に埃が堆積すると、空気は次第にラジエータ24を通過し難くなってしまい、熱交換器23の冷却性能が低下し、X線管の冷却率も低下してしまう。
【0108】
しかしながら、ラジエータ24は、フレーム部7の内壁側の空間において露出している。このため、筐体2の一部を取り外すだけで、フレーム部7の内壁側の空間からラジエータ24を清掃することができ、ラジエータ24に堆積した埃を除去することができる。回転架台6から、冷却ユニット20を取り外したり、さらに冷却ユニット20に連結されたX線管ユニット10を併せて取り外したりすることなくラジエータ24を清掃することができるため、清掃(メンテナンス作業)にかかる時間を短縮することができる。
【0109】
熱交換器23の機能が低下しないようにメンテナンスすることによりX線管13に生じる過熱を低減できるため、X線管13に頻発する放電の発生を低減することができ、X線管13の製品寿命の短縮を低減することができる。
上記のことから、機械的強度の低下を防止することができ、ラジエータ24を回転架台6から取り外すこと無く清掃することができるX線CT装置1を得ることもできる。
【0110】
次に、第2の実施形態に係るX線CT装置について説明する。この実施形態において、他の構成は上述した第1の実施形態と同一であり、同一の部分には同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。図13は、第2の実施形態に係るX線CT装置1の回転架台6、並びに回転架台6に搭載されたX線管ユニット10、冷却ユニット20及びX線検出器40を示す正面図である。
【0111】
図14は、X線管ユニット10及び冷却ユニット20示す概略構成図である。図14では、X線管ユニット10及び冷却ユニット20の接続関係を強調して示すものであり、図13のように、X線管ユニット10及び冷却ユニット20の相対的な位置関係を詳細に示すものではない。
【0112】
図13及び図14に示すように、冷却ユニット20は、上記筐体50を備えていない。冷却ユニット20は、マウント27及びマウント28を備えている。マウント27及びマウント28は、それぞれ矩形枠状に形成されている。マウント27は、一端部がフレーム部7の内壁に取付けられている。マウント27は、開口部7aの周りを囲んでいる。マウント28は、一側縁部がフレーム部7の内壁に取付けられている。
【0113】
循環ポンプ22は、マウント28内に位置し、マウント28取り付けられ、フレーム部7の内壁には間接的に取付けられ、固着されている。
空盆60は、マウント28及び回転軸a1間に位置し、マウント28に載置され、フレーム部7の内壁には間接的に取付けられ、固着されている。
【0114】
ラジエータ24は、周縁部がマウント27の他端部に取付けられ、フレーム部7の内壁には間接的に取付けられ、固着されている。フレーム部7の内壁側の空間において、ラジエータ24が露出されていることは言うまでもない。
【0115】
ファンユニット25は、フレーム部7に直接取り付けられている。ここでは、ファンユニット25は、フレーム部7の開口部7aに直接取り付けられ固着されている。
このため、マウント27は、ラジエータ24及びファンユニット25の間に位置し、ラジエータ24の周囲の空気の流れをファンユニット25までガイドするダクトとしても機能している。
【0116】
冷却ユニット20は、導管21dをさらに有している。導管21dは、一端が導管21aに気密に取付けられている。
空盆60は、冷却ユニット20に設けられている。空盆60の開口部61aは、導管21dに気密に連通されている。
【0117】
この実施形態においても、X線CT装置1は次の関係を満たすものである。
【0118】
P0−p´>0.5・(R0+R1)・(R0−R1)・ρ・ω2
R2>R0
R3>R0
空盆60、並びに循環路30を形成するように接続されたハウジング12、ラジエータ24及び循環ポンプ22は、2個所の着脱自在継手により、2系統に分離可能である。このため、X線CT装置1の保守方法において、次に示すように、上記2系統に分離した後に、空盆60を含まない方の系統に、他の空盆を着脱自在継手を介して取り付けてもよい。
【0119】
すなわち、分離状態のX線管ユニット10は、水系冷却液9の体積変化を吸収し難い構成である。そこで、導管11a、11bをゴムホースで形成することにより、導管11a、11bに、水系冷却液9の体積変化を吸収させる機能を持たせることができる。しかし、導管11a、11bだけでは水系冷却液9の体積変化を十分に吸収できない場合がある。この場合、分離状態のX線管ユニット10には空盆を取付けた方が好ましい。
【0120】
図15は、図13及び図14に示したX線管ユニット10の分離状態を示す概略構成図である。
図15に示すように、X線管ユニット10には、ベローズ機構としての空盆90が取付けられている。空盆90は、互いに気密、かつ液密に連結されたソケット83及び導管84を介してX線管ユニット10に取付けられている。ソケット83及びプラグ82は、着脱自在継手としてのカプラを形成し、連結状態において、気密、かつ液密に連結されている。
【0121】
空盆90は、開口部91aを有したケース91を有している。開口部91aは、導管84に気密に連通されている。空盆90は、ケース91内を開口部91aと繋がった第1領域93及び第2領域94に区域する弾性隔膜としてのベローズ92を有している。ケース91には、第2領域94に繋がった通気孔95が形成されている。通気孔95は空気の出入りを許可するため、第2領域94は大気に開放されている。なお、ケース91に通気孔95は形成されていなくともよく、この場合、第2領域94は密閉空間となる。
【0122】
ベローズ92は、ケース91に液密に取付けられている。ベローズ92は伸縮自在である。ここでは、ベローズ92はゴムで形成されている。ベローズ92は、水系冷却液9の温度変化による体積変化(体積の膨張及び収縮)を吸収することができる。ベローズ92は、ガスに対して不透過性を示す材料で形成することが好ましい。
これにより、分離状態(分離した後)のX線管ユニット10における、外部への液(水系冷却液9)漏れを防止することができ、内部への空気の混入を防止することができる。
【0123】
図16は、図13及び図14に示した冷却ユニット20の分離状態を示す概略構成図である。
図16に示すように、一方、分離状態の冷却ユニット20は、空盆60を備えている。このため、冷却ユニット20に付加すること無く、分離状態の冷却ユニット20における、外部への液(水系冷却液9)漏れを防止することができ、内部への空気の混入を防止することができる。
【0124】
上記のように構成された第2の実施形態に係るX線CT装置1及びその制御方法によれば、X線CT装置1及びその制御方法は、上記第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0125】
X線CT装置1は、マウント27を備えている。このため、機械的強度の設計が難しい上記第1の実施形態の筐体50無しにX線CT装置1を形成することができる。
X線CT装置1はマウント28を備えている。空盆60をマウント28上に載置することができるため、冷却ユニット20をコンパクトに設計することができる。
上記のことから、水系冷却液9を使用してX線管13を冷却することができ、水系冷却液9の循環路30内におけるキャビテーションの発生を防止することができるX線CT装置1及びその制御方法を得ることができる。
【0126】
次に、第3の実施形態に係るX線CT装置について説明する。この実施形態において、他の構成は上述した第2の実施形態と同一であり、同一の部分には同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。図17は、第3の実施形態に係るX線CT装置1の回転架台6、並びに回転架台6に搭載されたX線管ユニット10、冷却ユニット20及びX線検出器40を示す正面図である。
【0127】
図17に示すように、冷却ユニット20は、上記マウント27、28を備えていない。冷却ユニット20は、マウント29を備えている。マウント29は、矩形枠状の周壁部と、板状の天井壁部と、周壁部及び天井壁部間に位置した板状の一対の側壁部と、が一体に形成されている。マウント29の周壁部は、フレーム部7の内壁に取付けられている。マウント29の周壁部は、は、開口部7aの周りを囲んでいる。
循環ポンプ22及び空盆60は、マウント29及び回転軸a1間に位置し、マウント29の天井壁部に載置され、フレーム部7の内壁には間接的に取付けられ、固着されている。
【0128】
ラジエータ24は、周縁部がマウント29の周壁部に取付けられ、フレーム部7の内壁には間接的に取付けられ、固着されている。フレーム部7の内壁側の空間において、ラジエータ24が露出されるよう、マウント29の一対の側壁部は、所定の高さを持っている。言い換えると、マウント29の天井壁部及びラジエータ24間の空間からラジエータ24を清掃することができるように、マウント29の一対の側壁部は、所定の高さを持っている。また、マウント29の天井壁部及びラジエータ24間の空間では、空気の出入りが許可されるため、マウント29の天井壁部及びラジエータ24間の空間を通った空気がラジエータ24を通ることとなる。
【0129】
ファンユニット25は、フレーム部7に直接取り付けられている。ここでは、ファンユニット25は、フレーム部7の開口部7aに直接取り付けられ固着されている。
このため、マウント29の周壁部は、ラジエータ24及びファンユニット25の間に位置し、ラジエータ24の周囲の空気の流れをファンユニット25までガイドするダクトとしても機能している。
【0130】
上記のように構成された第3の実施形態に係るX線CT装置1及びその制御方法によれば、X線CT装置1及びその制御方法は、上記第2の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0131】
X線CT装置1は、マウント29を備えている。このため、機械的強度の設計が難しい上記第1の実施形態の筐体50無しにX線CT装置1を形成することができる。
循環ポンプ22及び空盆60をマウント29の天井壁部上に載置することができるため、冷却ユニット20をコンパクトに設計することができる。
【0132】
マウント29の一対の側壁部は所定の高さを持っているため、ラジエータ24は、フレーム部7の内壁側の空間において露出している。マウント29の天井壁部及びラジエータ24間の空間から、ラジエータ24にアクセスすることができる。このため、筐体2の一部を取り外すだけで、フレーム部7の内壁側の空間からラジエータ24を清掃することができ、ラジエータ24に堆積した埃を除去することができる。回転架台6から、冷却ユニット20を取り外したり、さらに冷却ユニット20に連結されたX線管ユニット10を併せて取り外したりすることなくラジエータ24を清掃することができるため、清掃(メンテナンス作業)にかかる時間を短縮することができる。
【0133】
上記のことから、水系冷却液9を使用してX線管13を冷却することができ、水系冷却液9の循環路30内におけるキャビテーションの発生を防止することができるX線CT装置1及びその制御方法を得ることができる。
【0134】
次に、第4の実施形態に係るX線CT装置について説明する。この実施形態において、他の構成は上述した第2の実施形態と同一であり、同一の部分には同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。図18は、第4の実施形態に係るX線CT装置1の回転架台6、並びに回転架台6に搭載されたX線管ユニット10、冷却ユニット20及びX線検出器40を示す正面図である。
【0135】
図18に示すように、冷却ユニット20は、上記マウント27を備えていない。冷却ユニット20は、マウント29をさらに備えている。
循環ポンプ22は、マウント28内に位置し、マウント28取り付けられ、フレーム部7の内壁には間接的に取付けられ、固着されている。
空盆60は、マウント28及び回転軸a1間に位置し、マウント28に載置され、フレーム部7の内壁には間接的に取付けられ、固着されている。
【0136】
マウント29は、矩形枠状の周壁部と、板状の天井壁部と、周壁部及び天井壁部間に位置した板状の一対の側壁部と、が一体に形成されている。マウント29の周壁部は、フレーム部7の内壁に取付けられている。マウント29の周壁部は、は、開口部7aの周りを囲んでいる。
【0137】
X線管ユニット10(ハウジング12)は、マウント29及び回転軸a1間に位置し、マウント29の天井壁部に載置され、フレーム部7の内壁には間接的に取付けられ、固着されている。
【0138】
ラジエータ24は、周縁部がマウント29の周壁部に取付けられ、フレーム部7の内壁には間接的に取付けられ、固着されている。フレーム部7の内壁側の空間において、ラジエータ24が露出されるよう、マウント29の一対の側壁部は、所定の高さを持っている。言い換えると、マウント29の天井壁部及びラジエータ24間の空間からラジエータ24を清掃することができるように、マウント29の一対の側壁部は、所定の高さを持っている。また、マウント29の天井壁部及びラジエータ24間の空間では、空気の出入りが許可されるため、マウント29の天井壁部及びラジエータ24間の空間を通った空気がラジエータ24を通ることとなる。
【0139】
ファンユニット25は、フレーム部7に直接取り付けられている。ここでは、ファンユニット25は、フレーム部7の開口部7aに直接取り付けられ固着されている。
このため、マウント29の周壁部は、ラジエータ24及びファンユニット25の間に位置し、ラジエータ24の周囲の空気の流れをファンユニット25までガイドするダクトとしても機能している。
【0140】
上記のように構成された第4の実施形態に係るX線CT装置1及びその制御方法によれば、X線CT装置1及びその制御方法は、上記第2の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0141】
上X線CT装置1は、マウント29を備えている。このため、機械的強度の設計が難しい上記第1の実施形態の筐体50無しにX線CT装置1を形成することができる。
空盆60をマウント28上に載置することができ、X線管ユニット10(ハウジング12)をマウント29の天井壁部上に載置することができるため、冷却ユニット20をコンパクトに設計することができる。
【0142】
上記のことから、水系冷却液9を使用してX線管13を冷却することができ、水系冷却液9の循環路30内におけるキャビテーションの発生を防止することができるX線CT装置1及びその制御方法を得ることができる。
【0143】
なお、この発明は上記実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化可能である。また、上記実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【0144】
例えば、空盆60は、循環路30に取付けられていればよく、第1の実施形態のように、冷却ユニット20とは別に設けられていてもよい。
図19に示すように、空盆60は、X線管ユニット10に設けられていてもよい。
【0145】
ハウジング12及び空盆60の開口部61aは、導管12aを介して気密に連通されている。
【0146】
図20は、図19に示したX線管ユニット10の分離状態を示す概略構成図である。
図20に示すように、分離状態のX線管ユニット10は、空盆60を備えている。このため、X線管ユニット10に付加すること無く、分離状態のX線管ユニット10における、外部への液(水系冷却液9)漏れを防止することができ、内部への空気の混入を防止することができる。
【0147】
分離状態の冷却ユニット20は、水系冷却液9の体積変化を吸収し難い構成である。そこで、導管21a、21b、21cをホースで形成することにより、導管21a、21b、21cに、水系冷却液9の体積変化を吸収させる機能を持たせることができる。しかし、導管21a、21b、21cだけでは水系冷却液9の体積変化を十分に吸収できない場合がある。この場合、分離状態の冷却ユニット20には空盆を取付けた方が好ましい。
【0148】
図21は、図19に示した冷却ユニット20の分離状態を示す概略構成図である。
図21に示すように、冷却ユニット20には、ベローズ機構としての空盆90が取付けられている。空盆90は、互いに気密、かつ液密に連結されたプラグ85及び導管86を介して冷却ユニット20に取付けられている。ソケット81及びプラグ85は、着脱自在継手としてのカプラを形成し、連結状態において、気密、かつ液密に連結されている。開口部91aは、導管86に気密に連通されている。
これにより、分離状態の冷却ユニット20における、外部への液(水系冷却液9)漏れを防止することができ、内部への空気の混入を防止することができる。
【0149】
図22に示すように、熱伝達面1sがX線管13の内部に位置している場合、ハウジング12内に水系冷却液9が収容されている。そして、導管11b及びX線管13は、直接又は継手を介して間接的に連結されていてもよい。導管11aは、一端がハウジング12の水系冷却液取入れ口12iに気密に取付けられている。
【0150】
図23に示すように、熱伝達面1sがX線管13の内部に位置している場合、ハウジング12内に水系冷却液9が収容されている。そして、導管11a及び導管11bは、ともにX線管13に直接又は継手を介して間接的に連結されていてもよい。この場合、ハウジング12内に水系冷却液は収容されていてもよく、逆に収容されていなくともよい。X線管13の内部は、導管11a及び導管11bとともに循環路30の一部を形成している。これにより、X線管13の内部の熱伝達面1sを水系冷却液9が循環することで、X線管13、特に陽極ターゲットを冷却することができる。
【0151】
図24に示すように、熱伝達面1sがX線管13の外面である場合、ハウジング12内に水系冷却液9が収容されている。ハウジング12は、導管11a及び導管11bとともに循環路30の一部を形成している。そして、X線管13の熱伝達面1sを水系冷却液9が循環することで、X線管13、特に後述する陽極ターゲットを冷却することができる。
【0152】
図25に示すように、X線CT装置1は、圧力検出器301、上述した制御部の一部である圧力制御装置302、圧力調整機構303及び導管304をさらに備えていてもよい。圧力検出器301(圧力センサ)は、ケース61に気密に取付けられている。圧力検出器301は、第2空間64の圧力(ガス圧力)を検出するものである。圧力検出器301は、検出した圧力の情報を圧力制御装置302に送信する。圧力制御装置302は、上記圧力の情報に基づいて圧力調整機構303の駆動を制御する。
【0153】
圧力調整機構303は、導管304を介して通気孔65に気密に連通されている。なお、この例では第2空間64が大気に開放されないことは言うまでもない。圧力調整機構303は、第2空間64のガスの圧力を調整可能である。
【0154】
圧力調整機構303が加圧機構として機能する場合、第2空間64のガスの圧力を、大気圧に比べて圧力の高い正圧に調整可能である。圧力調整機構303が減圧機構として機能する場合、第2空間64のガスの圧力を、負圧に調整可能である。
【0155】
次に、図25に示すように構成されたX線CT装置1の制御方法として、X線CT装置1による、冷却モード時の動作とを説明する。制御部(圧力制御装置302)は、圧力調整機構303をさらに制御する。
【0156】
制御部は、撮影モードの後、冷却モードに切替えると、X線管ユニット10からのX線の放出を休止させ、水系冷却液9の温度が所定の許容上限温度以下(例えば大気圧の場合の沸点以下)になるまで、第2空間64のガスの圧力を正圧に調整し水系冷却液9の循環を維持した状態で回転架台6の回転を休止させて冷却することができる。
【0157】
すなわち、冷却モードにおいて、X線管13によるX線の曝射終了後に、水系冷却液9の温度が高いうちは第2空間64のガスの圧力を正圧に調整することにより、回転架台6の回転を維持しなくとも熱伝達面1sの近傍の領域におけるバーンアウトの発生を回避することができる。
【0158】
その他、X線管ユニット10の稼動を開始した直後の初期状態など、水系冷却液9の温度が十分に低い状態では、熱流速を上昇させるため、圧力調整機構303は、第2空間64の圧力を負圧に調整し、水系冷却液9の沸点を下げる。水系冷却液9の温度が低い場合でも沸騰熱伝達が可能となるため、X線管13の発熱部の温度を低く保ったままで熱伝達量を増大させることが可能となる。
【0159】
さらにX線管ユニット10の稼動が続き、X線管13の熱伝達面の温度が上昇すると、水系冷却液9の温度も上昇する。このため、水系冷却液9の温度上昇とともに、圧力調整機構303は、第2空間64の圧力を大気圧に調整し、水系冷却液9の沸点を上昇させ、さらには、第2空間64の圧力を正圧に調整し、水系冷却液9の沸点をさらに上昇させる。これにより、X線管13の熱伝達面1sから放出される沸騰熱を水系冷却液9に伝達させることができる。そして、バーンアウトの発生を回避しつつ、十分な熱流速を得ることができるため、一定のX線管入力パワーでの連続入力を可能とすることができる。
【0160】
水系冷却液9は、予め脱気されていた方が好ましい。そうでない場合には、使用中に水系冷却液9の温度上昇とともに溶存ガスが気泡として発生したり、キャビテーションが起こり易くなったりする原因となる。
【0161】
空盆60は、ハウジング12及び循環ポンプ22とは独立して、直接又は間接的に回転架台6に取付けられていてもよい。
ハウジング12、循環ポンプ22及び空盆60は、それぞれ独立して、直接又は間接的に回転架台6に取付けられていてもよい。
循環ポンプ22、ラジエータ24及びファンユニット25は、筐体に収納され、ユニット化されていてもよい。
【0162】
X線管ユニット10(ハウジング12)、循環ポンプ22、ラジエータ24、ファンユニット25及び空盆60は、互いに独立して、回転架台6に直接又は間接的に取付けられていてもよい。
【0163】
ラジエータ24は、平板状であり、フレーム部7の内壁にほぼ平行に配置されているが、種々変形可能である。ラジエータ24は、任意形状でよく、また積層させてもよく、フレーム部7の内壁に対して傾斜して配置されていてもよい。
【0164】
回転架台6の回転速度は3rpsを超える場合、機械的強度を確保するため、上述した第2乃至第4の実施形態で示したように、ファンユニット25は回転架台6の開口部7aに直接取り付けられていることが好ましく、ラジエータ24、空盆60及び循環ポンプ22も、それぞれ回転架台6に固定された専用のマウントに取付けた方が好ましい。また、第2乃至第4の実施形態の変形例として、循環ポンプ22及びダクト26の少なくとも一つを、ラジエータ24とともに一つの筐体に収納し、その筐体を回転架台6に、ファンユニットの直上に位置するように、取り付けることもできる。
【0165】
なお、ラジエータ24の回転軸側の露出面に、ラジエータ24の冷却性能に悪影響を及ぼさない程度に通気性の良いメッシュ状のカバーもしくはフィルター(以下フィルターなど)を、着脱可能なように設置することにより、大きな埃を除去することができる。これらフィルターなどの清掃、又は交換は、ラジエータ24の清掃に比べてより短時間で実施することができる。フィルターなどの清掃又は交換を頻繁に実施することにより、ラジエータ24の清掃の頻度を低減することが可能となる。
【0166】
圧力調整機構303は、第2空間64のガスの圧力を、大気圧又は正圧に調整可能に形成されていてもよい。また、圧力調整機構303は、第2空間64のガスの圧力を、大気圧又は負圧に調整可能に形成されていてもよい。
循環ポンプ22としては、遠心ポンプや、ギアポンプを利用することができる。
【0167】
本発明は、上述したX線CT装置に限定されるものではなく、各種のX線CT装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0168】
1…X線CT装置、1s…熱伝達面、2…筐体、5…固定架台、6…回転架台、9…冷却液、10…X線管ユニット、11a,11b,12a,21a,21b,21c,21d…導管、12…ハウジング、12w…X線放射口、13…X線管、16…第1温度検出器、17…第2温度検出器、20…冷却ユニット、22…循環ポンプ、23…熱交換器、24…ラジエータ、25…ファンユニット、26…ダクト、27,28,29…マウント、30…循環路、40…X線検出器、50…筐体、60,90…空盆、150,235…陽極ターゲット、180,236…陰極、190,231…真空外囲器、301…圧力検出器、302…圧力制御装置、303…圧力調整機構、a1,a2…回転軸、R0,R1,R2,R3…回転軸からの距離、ρ…冷却液の密度、ω…角速度、p…内圧成分、P0…圧力、p´…飽和蒸気圧。
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、X線コンピュータ断層撮影装置及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
X線コンピュータ断層撮影装置(以下、X線CT装置と称する)のガントリーは、固定フレームと、固定フレームに回転可能に支持された回転架台と、固定フレーム及び回転架台を収容した筐体と、を備えている。ガントリーは、回転架台に搭載されたX線管ユニット、X線検出器及び冷却ユニットなども備えている。X線管ユニット及び冷却ユニットなどは、比較的コンパクトでありながら質量が大きく、設置面の圧力が高いため、回転架台に強固に取付けられている。
【0003】
X線管ユニット及び冷却ユニットは導管を介して接続され、X線管が発生する熱が伝達される冷却液はX線管ユニット及び冷却ユニットの間で循環する。X線CT装置の発熱源は、X線管である。このため、X線管の発熱は冷却液に伝達され、高温となった冷却液は冷却ユニットに送り込まれる。冷却ユニットで冷却された冷却液は、再びX線管ユニットに戻される。
【0004】
一般に、X線CT装置に使用されるX線管ユニットとして、回転陽極型X線管装置が知られている。回転陽極型X線管装置は、ハウジング及びハウジングに収納された回転陽極型X線管を備えている。この回転陽極型X線管は、ハウジング内に収納された真空外囲器と、真空外囲器内に位置し回転可能に設けられた陽極ターゲットと、真空外囲器内に位置し真空外囲器に対して静止して設けられた陰極とを有している。
【0005】
上記のような回転陽極型X線管装置においては、特に、陽極ターゲットのターゲット面近傍を冷却液により強制的に冷却するものが知られている。これにより、X線を放出させるためにターゲット面に電子ビームを衝突させている期間に、陽極ターゲットから発生する熱を、冷却液に伝熱させることを可能としている。冷却液としては、熱伝達性能に優れる水系冷却液が使用されているものもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−56710号公報
【特許文献2】特開2001−137224号公報
【特許文献3】国際公開第2008/069195号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、X線CT装置においては、スキャン時間(撮影時間)の短縮化が大きな技術的課題である。そこでスキャン時間を短縮するために回転架台をより高速で回転させることが行われている。回転架台の回転速度は多くの場合1乃至2rpsであり、最高機種で3rps程度である。将来は4rps以上を目指す試みもなされつつある。2rpsの場合に比べて4rpsの場合には、回転架台の遠心方向の加速度は300%も増加する。3rpsの場合に比べて4rpsの場合には、回転架台の遠心方向の加速度は約78%も増加することになる。
【0008】
しかしながら、水系冷却液は、絶縁油に比べて飽和蒸気圧が低いため、回転架台の回転速度が4rps以上になると水系冷却液の循環路中にキャビテーションが発生してしまう問題が発生すると予想される。キャビテーションが発生すると水系冷却液の流れが阻害されてX線管の冷却ができなくなったり、循環ポンプに不具合が発生したりする恐れがある。このため、水系冷却液を使用してX線管を冷却することができ、水系冷却液の循環路中におけるキャビテーションの発生を防止することができる技術が求められている。
【0009】
この発明は以上の点に鑑みなされたもので、その目的は、水系冷却液を使用してX線管を冷却することができ、かつ水系冷却液の循環路内におけるキャビテーションの発生を防止することができるX線コンピュータ断層撮影装置及びその制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置は、
ハウジングと、電子を放出する陰極、前記電子が衝突されることによりX線を放出する陽極ターゲット、並びに前記陰極及び陽極ターゲットを収納した真空外囲器を含み、前記ハウジングに収納されたX線管と、を有したX線管ユニットと、
前記X線管が発生する熱の少なくとも一部が伝達される水系冷却液と、
前記ハウジングに接続され、前記水系冷却液が流れる導管と、
前記導管に取付けられ、前記水系冷却液を循環させ、前記X線管ユニット及び導管とともに前記水系冷却液が循環する循環路を形成する循環ポンプと、
前記循環路に取付けられ、前記水系冷却液を前記循環路から外れたガス空間と隔てる弾性隔膜を有し、前記水系冷却液の体積変化を吸収するベローズ機構と、
回転軸を中心に回転し、前記X線管ユニット、導管、循環ポンプ及びベローズ機構が取付けられた回転架台と、
前記回転軸に対して前記X線管ユニットの反対側に位置し、前記回転架台に取付けられ、前記X線を検出するX線検出器と、を備え、
前記回転軸から前記弾性隔膜までの距離の平均値をR0、
前記ガス空間の圧力をP0、
前記ハウジングの表面の最高温度に達した状態における前記水系冷却液の飽和蒸気圧をp´、
前記ハウジングをその一部に含む前記循環路までの、前記回転軸からの距離の最小値をR1、
前記回転軸から前記循環ポンプの前記水系冷却液の導入口までの距離の最小値をR2、
前記水系冷却液の密度をρ、
前記回転架台の角速度をω、とすると、
P0−p´>0.5・(R0+R1)・(R0−R1)・ρ・ω2、及び
R2>R0
であることを特徴としている。
【0011】
また、一実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置の制御方法は、
ハウジングと、電子を放出する陰極、前記電子が衝突されることによりX線を放出する陽極ターゲット、並びに前記陰極及び陽極ターゲットを収納した真空外囲器を含み、前記ハウジングに収納されたX線管と、を有したX線管ユニットと、前記X線管が発生する熱の少なくとも一部が伝達される水系冷却液と、前記ハウジングに接続され、前記水系冷却液が流れる導管と、前記導管に取付けられ、前記水系冷却液を循環させ、前記X線管ユニット及び導管とともに前記水系冷却液が循環する循環路を形成する循環ポンプと、前記循環路に取付けられ、前記水系冷却液を前記循環路から外れたガス空間と隔てる弾性隔膜を有し、前記水系冷却液の体積変化を吸収するベローズ機構と、回転軸を中心に回転し、前記X線管ユニット、導管、循環ポンプ及びベローズ機構が取付けられた回転架台と、前記回転架台を回転させる駆動部と、前記回転軸に対して前記X線管ユニットの反対側に位置し、前記回転架台に取付けられ、前記X線を検出するX線検出器と、前記X線管ユニットの内部を流れる前記水系冷却液の温度を検出する温度検出器と、を備え、前記回転軸から前記弾性隔膜までの距離の平均値をR0、前記ガス空間の圧力をP0、前記ハウジングの表面の最高温度に達した状態における前記水系冷却液の飽和蒸気圧をp´、前記ハウジングをその一部に含む前記循環路までの前記回転軸からの距離の最小値をR1、前記回転軸から前記循環ポンプの前記水系冷却液の導入口までの距離の最小値をR2、前記水系冷却液の密度をρ、前記回転架台の角速度をω、とすると、
P0−p´>0.5・(R0+R1)・(R0−R1)・ρ・ω2、及び
R2>R0
であるX線コンピュータ断層撮影装置の制御方法において、
前記回転架台の回転及び前記水系冷却液の循環を行いながら前記X線管ユニットから放出させたX線を前記X線検出器で検出させて撮影を行い、
前記撮影を行った後、前記X線管ユニットからのX線の放出を休止させ、前記X線管ユニットの内部を流れる前記水系冷却液の温度が所定の許容上限温度以下になるまで前記回転架台の回転及び前記水系冷却液の循環を維持させて冷却を行う、
ことを特徴としている。
【0012】
また、一実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置の制御方法は、
ハウジングと、電子を放出する陰極、前記電子が衝突されることによりX線を放出する陽極ターゲット、並びに前記陰極及び陽極ターゲットを収納した真空外囲器を含み、前記ハウジングに収納されたX線管と、を有したX線管ユニットと、前記X線管が発生する熱の少なくとも一部が伝達される水系冷却液と、前記ハウジングに接続され、前記水系冷却液が流れる導管と、前記導管に取付けられ、前記水系冷却液を循環させ、前記X線管ユニット及び導管とともに前記水系冷却液が循環する循環路を形成する循環ポンプと、前記循環路に取付けられ、前記水系冷却液を前記循環路から外れたガス空間と隔てる弾性隔膜を有し、前記水系冷却液の体積変化を吸収するベローズ機構と、回転軸を中心に回転し、前記X線管ユニット、導管、循環ポンプ及びベローズ機構が取付けられた回転架台と、前記回転架台を回転させる駆動部と、前記回転軸に対して前記X線管ユニットの反対側に位置し、前記回転架台に取付けられ、前記X線を検出するX線検出器と、前記X線管ユニットの内部を流れる前記水系冷却液の温度を検出する温度検出器と、前記ガス空間に連通され、前記ガス空間のガスの圧力を調整可能な圧力調整機構と、を備え、前記回転軸から前記弾性隔膜までの距離の平均値をR0、前記ガス空間の圧力をP0、前記ハウジングの表面の最高温度に達した状態における前記水系冷却液の飽和蒸気圧をp´、前記ハウジングをその一部に含む前記循環路までの前記回転軸からの距離の最小値をR1、前記回転軸から前記循環ポンプの前記水系冷却液の導入口までの距離の最小値をR2、前記水系冷却液の密度をρ、前記回転架台の角速度をω、とすると、
P0−p´>0.5・(R0+R1)・(R0−R1)・ρ・ω2、及び
R2>R0
であるX線コンピュータ断層撮影装置の制御方法において、
前記回転架台の回転及び前記水系冷却液の循環を行いながら前記X線管ユニットから放出させたX線を前記X線検出器で検出させて撮影を行い、
前記撮影モードの後、前記X線管ユニットからのX線の放出を休止させ、前記X線管ユニットの内部を流れる前記水系冷却液の温度が所定の許容上限温度以下になるまで、前記ガス空間のガスの圧力を正圧に調整し前記水系冷却液の循環を維持した状態で前記回転架台の回転を休止させて冷却を行う、
ことを特徴としている。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、第1の実施形態に係るX線CT装置のガントリーの外観を示す斜視図である。
【図2】図2は、図1の線II−IIに沿ったX線CT装置を示す断面図である。
【図3】図3は、図2に示した回転架台、並びに回転架台に搭載されたX線管ユニット、冷却ユニット及びX線検出器を示す正面図である。
【図4】図4は、上記第1の実施形態に係るX線管ユニット及び冷却ユニット示す概略構成図である。
【図5】図5は、上記第1の実施形態に係るX線CT装置の実施例1のX線管ユニットを示す断面図である。
【図6】図6は、上記第1の実施形態に係るX線CT装置の実施例2のX線管ユニットを示す断面図である。
【図7】図7は、図6に示したX線管ユニットを示す他の断面図である。
【図8】図8は、図6及び図7に示したX線管ユニットの一部を拡大して示す断面図である。
【図9】図9は、水100%の温度及びPG50%水溶液の温度に対する飽和蒸気圧の変化のデータを表で示す図である。
【図10】図10は、図9に示したデータをグラフで示す図である。
【図11】図11は、圧力P0=大気圧とするための、上記距離R0及び距離R1の関係をグラフで示した図である。
【図12】図12は、圧力P0=0.5気圧とするための、上記距離R0及び距離R1の関係をグラフで示した図である。
【図13】図13は、第2の実施形態に係るX線CT装置の回転架台、並びに回転架台に搭載されたX線管ユニット、冷却ユニット及びX線検出器を示す正面図である。
【図14】図14は、上記第2の実施形態に係るX線管ユニット及び冷却ユニット示す概略構成図である。
【図15】図15は、図14に示したX線管ユニットの分離状態を示す概略構成図である。
【図16】図16は、図14に示した冷却ユニットの分離状態を示す概略構成図である。
【図17】図17は、第3の実施形態に係るX線CT装置の回転架台、並びに回転架台に搭載されたX線管ユニット、冷却ユニット及びX線検出器を示す正面図である。
【図18】図18は、第4の実施形態に係るX線CT装置の回転架台、並びに回転架台に搭載されたX線管ユニット、冷却ユニット及びX線検出器を示す正面図である。
【図19】図19は、上記X線CT装置の変形例を示す図であり、X線管ユニット及び冷却ユニット示す概略構成図である。
【図20】図20は、図19に示したX線管ユニットの分離状態を示す概略構成図である。
【図21】図21は、図19に示した冷却ユニットの分離状態を示す概略構成図である。
【図22】図22は、図4、図14及び図19に示したX線管の変形例を示す概略断面図である。
【図23】図23は、図4、図14及び図19に示したX線管の他の変形例を示す概略断面図である。
【図24】図24は、図4、図14及び図19に示したX線管の他の変形例を示す概略断面図である。
【図25】図25は、上記X線CT装置の他の変形例を示す図であり、空盆、圧力検出器、圧力制御装置及び圧力調整機構を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら第1の実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置及びその制御方法について詳細に説明する。X線コンピュータ断層撮影装置は、X線CT装置( computed tomography system)である。
【0015】
図1は、第1の実施形態に係るX線CT装置のガントリーの外観を示す斜視図である。図2は、図1の線II−IIに沿ったX線CT装置を示す断面図である。図3は、図2に示した回転架台、並びに回転架台に搭載されたX線管ユニット、冷却ユニット及びX線検出器を示す正面図である。
【0016】
図1乃至図3に示すように、X線CT装置1は、筐体2、土台部4、固定架台5、回転架台6、ベアリング部材8、X線管ユニット10、冷却ユニット20、及びX線検出器40を備えている。
【0017】
筐体2は、上記の多くの部材を収容している。筐体2は、X線CT装置1の外観を飾っている。筐体2は、排気口2a、吸気口2b及び導入口2cを含んでいる。
排気口2aは、筐体2の上部に形成されている。排気口2aは、通気性に優れたメッシュ状のカバー3で塞がれている。なお、図示しないが、X線CT装置1は、筐体2内に設けられカバー3に対向したファンユニットをさらに備えている。これにより、筐体2内の空気を、排気口2aを通して筐体2の外部に排出することができる。
【0018】
吸気口2bは、筐体2の下部に形成されている。ここでは、吸気口2bは、筐体2と
土台部4の間の隙間に形成されている。筐体2の外部の新しい空気を、吸気口2bを通して筐体2の内部に取入れることができる。
上記のことから、筐体2の内部の空気を入れ替えることができるため、筐体2の内部の空気の温度の上昇を抑制することができる。
導入口2cは、被検体を導入するものである。図示しないが、X線CT装置1は、被検体を載せる寝台も備えている。
【0019】
固定架台5は、土台部4に固定されている。軸受機構として機能するベアリング(転がり軸受け、ボール/ロールベアリングなど)部材8は、固定架台5及び回転架台6間に設けられている。
【0020】
回転架台6は、ベアリング部材8を介して固定架台5に回転可能に支持されている。回転架台6は、回転架台6の回転軸a1を中心に回転可能である。X線CT装置1は、回転架台6を回転させるための図示しない駆動部を備えている。この実施形態において、回転架台6を高速回転させるために、X線CT装置は、例えば上記駆動部としてのダイレクトドライブモータを採用している。
【0021】
回転架台6は、最外周に位置したリング状のフレーム部7を有している。フレーム部7には、開口部7aが形成されている。ここでは、開口部7aのサイズ及び個数は、後述するファンユニット25のサイズ及び個数に対応している。
【0022】
X線管ユニット10、冷却ユニット20及びX線検出器40は、回転架台6に取付けられている。X線管ユニット10及び冷却ユニット20は、フレーム部7の内壁に取付けられている。図示しないが、高電圧発生電源などもフレーム部7の内壁に取付けられていてもよい。
【0023】
X線管ユニット10及び冷却ユニット20は、比較的コンパクトでありながら質量が大きく、設置面の圧力が高いため、フレーム部7に強固に固着されている必要がある。これらをフレーム部7の内壁に取り付けることにより、回転架台6が高速で回転し、その結果多大な遠心力がX線管ユニット10及び冷却ユニット20に加わるような場合でも、これらはフレーム部7に対する強固な固着を維持できるものである。
【0024】
X線管ユニット10は、X線を放射する。X線検出器40は、回転軸a1を挟んでX線管ユニット10(X線管)と対向している。X線検出器40は、例えば円弧状に配列された複数のX線検出素子を有している。X線CT装置は、X線検出器40を複数備え、配列させていてもよい。X線検出器40は、X線管ユニット10から放射され被検体を透過したX線を検出し、検出したX線を電気信号に変換する。
【0025】
図示しないが、X線CT装置1は、回転架台6に取付けられ、X線検出器40から出力する電気信号を増幅し、かつAD変換するデータ収集装置をさらに備えていてもよい。また、図示しないが、固定架台5には電力あるいは制御信号などをX線管ユニット10及び冷却ユニット20などに与えるための機器が設けられていてもよい。上記機器は、スリップリングを介して回転架台6に取付けられているX線管ユニット10及び冷却ユニット20などに電力あるいは制御信号などを与えることができる。
【0026】
図4は、X線管ユニット10及び冷却ユニット20示す概略構成図である。図4では、X線管ユニット10及び冷却ユニット20の接続関係を強調して示すものであり、図3のように、X線管ユニット10及び冷却ユニット20の相対的な位置関係を詳細に示すものではない。
【0027】
図3及び図4に示すように、X線管ユニット10は、ハウジング12と、ハウジング12に収納されたX線管13と、を有している。ハウジング12(X線管ユニット10)は、独立して回転架台6に直接又は間接的に取付けられ、固着されている。ここでは、ハウジング12は、フレーム部7の内壁に直接取付けられている。
【0028】
X線管13は、電子を放出する陰極、電子が衝突されることによりX線を放出する陽極ターゲット、並びに陰極及び陽極ターゲットを収納した真空外囲器を含んでいる。ここで、X線CT装置1は、水系冷却液9を有している。水系冷却液9には、X線管13が発生する熱の少なくとも一部が伝達される。
【0029】
X線管ユニット10は、導管11a及び導管11bを有している。導管11aは、ハウジング12の水系冷却液取入れ口12iに気密に取付けられ、一端がX線管13に気密に連結され、他端がソケット72に気密に取付けられている。導管11bは、一端がハウジング12の水系冷却液排出口12oに気密に取付けられ、他端がプラグ82に気密に取付けられている。導管11a、導管11b、X線管13及びハウジング12は、水系冷却液9が循環する循環路30の一部を形成している。
【0030】
この実施形態において、熱伝達面1sがX線管13の内部に位置し、ハウジング12内に水系冷却液9が収容されている。導管11a及びX線管13は、継手を介して間接的に連結されていてもよい。これにより、X線管13の内部の熱伝達面1sを水系冷却液9が循環する。熱伝達面1sは、陽極ターゲットへの電子の衝突に伴って発生する熱を水系冷却液9に熱(沸騰熱)伝達することができるため、X線管13、特に陽極ターゲットの過熱を抑制することができる。
【0031】
X線管ユニット10は、ベローズ機構としての空盆60をさらに有している。空盆60は、循環路30に取付けられ、この実施形態においてはハウジング12の外面に取付けられ、回転架台6に間接的に取付けられている。
【0032】
空盆60は、開口部61aを有したケース61を有している。開口部61aは、導管12aを介してハウジング12に気密に連通されている。空盆60は、ケース61内を開口部61aと繋がった第1空間63及び第2空間64に隔てる弾性隔膜としてのベローズ62を有している。ケース61には、第2空間64に繋がった通気孔65が形成されている。通気孔65は空気の出入りを許可するため、第2空間64は大気に開放されている。ベローズ62は、ケース61に液密に取付けられている。このため、ベローズ62は、水系冷却液9を循環路30から外れたガス空間(第2空間64)と隔てることができる。
【0033】
ベローズ62は伸縮自在である。ここでは、ベローズ62はゴムで形成されている。ベローズ62は、ガスに対して不透過性を示す材料で形成することが好ましい。空盆60は、水系冷却液9の温度変化による体積変化(体積の膨張及び収縮)を吸収することができる。
【0034】
X線管ユニット10は、第1温度検出器16及び第2温度検出器17をさらに備えている。第1温度検出器16は、熱伝達面1sの上流側の水系冷却液9の温度を検出する。第2温度検出器17は、熱伝達面1sの下流側の水系冷却液9の温度を検出する。なお、X線管ユニット10は、少なくとも第2温度検出器17を備えていればよく、これにより水系冷却液9の温度の最高値を検出することができる。
【0035】
冷却ユニット20は、導管21a、導管21b、導管21c、循環ポンプ22及び熱交換器23を有している。導管21aは、一端がソケット81に気密に取付けられている。導管21cは、一端がプラグ71に気密に取付けられている。
【0036】
循環ポンプ22は、独立してフレーム部7の内壁に直接又は間接的に取付けられ、固着されている。ここでは、循環ポンプ22は、フレーム部7の内壁に直接取付けられている。循環ポンプ22は、導管21a及び導管21b間に気密に取付けられている。循環ポンプ22は、導管21bに水系冷却液9を吐き出し、導管21aから水系冷却液9を取り込む。循環ポンプ22は、循環路30において水系冷却液9を循環させることができる。
【0037】
熱交換器23は、ラジエータ24、ファンユニット25、及びダクト26を有している。
ラジエータ24は、導管21b及び導管21c間に接続された図示しない、水系冷却液9が流れる複数の放熱パイプと、放熱パイプに取付けられた図示しない複数の放熱フィンと、を有している。ラジエータ24は、水系冷却液9の熱を外部へ放出させることができる。
【0038】
ファンユニット25は、それぞれ開口部7a及びラジエータ24に対向して位置している。回転軸a1からファンユニット25までの距離は、回転軸a1からラジエータ24までの距離より長い。ファンユニット25は、ラジエータ24の周囲に空気の流れを作りだすことができる。ファンユニット25は、ラジエータ24の周囲を流れる空気を開口部7aを通して回転架台6(フレーム部7)の外部へと放出させることができる。
【0039】
導管21a、導管21b、導管21c、循環ポンプ22及びラジエータ24は、循環路30の一部を形成している。
上記のことから、熱交換器23は、水系冷却液9の熱を外部へ放出させることができる。また、ラジエータ24の周囲を流れる空気を回転架台6の外部へと放出させることができるため、回転架台6の内部の空気の温度の上昇を抑制することができる。
【0040】
ダクト26は、ラジエータ24及びファンユニット25の間に位置している。ダクト26は、ラジエータ24の周縁部及びファンユニット25の周縁部をそれぞれ囲んでいる。ダクト26は、ラジエータ24の周囲の空気の流れをファンユニット25までガイドすることができる。ラジエータ24の周囲の加熱された空気をファンユニット25まで効率良くガイドすることができるため、回転架台6の内部(回転架台6及び筐体2で囲まれた領域)の空気の温度の上昇を一層、抑制することができる。これにより、熱交換器23の冷却性能や、X線検出器40の感度の安定性を高い状態に維持することができる。
【0041】
冷却ユニット20は、回転架台6に取付けられた筐体50をさらに備えている。筐体50は、フレーム部7の内壁に取付けられ、固着されている。筐体50は、例えば板金で形成されている。筐体50は、回転架台6の回転に伴って加わる遠心力に耐え得る機械的強度を持つように設計されている。
【0042】
ラジエータ24、ファンユニット25及びダクト26は、筐体50に収納され、ユニット化されている。筐体50は、ラジエータ24及びファンユニット25を外部に露出させるよう開口して形成されている。
【0043】
ラジエータ24、ファンユニット25及びダクト26は、回転架台6に直接又は間接的に取付けられ、固着されている。ここでは、ラジエータ24、ファンユニット25及びダクト26は、筐体50を介してフレーム部7の内壁に間接的に取付けられている。
【0044】
プラグ71及びソケット72は、着脱自在継手としてのカプラ70を形成し、ソケット81及びプラグ82は、着脱自在継手としてのカプラ80を形成している。カプラ70、80は、プラグ及びソケットが連結した連結状態(固定状態)と、プラグ及びソケットが分離した分離状態とに切替え可能である。カプラ70、80は、連結状態において、気密、かつ液密に連結されている。カプラ70、80は、シャットオフバルブ付きのカプラである。カプラ70、80の分離状態において、プラグ71、82及びソケット72、81は、それぞれ、外部への液(水系冷却液9)漏れを防止することができ、内部への空気の混入を防止することができる構造を採っている。カプラ70、80をそれぞれ分離状態に切替えることにより、2系統に分離することができ、X線管ユニット10及び冷却ユニット20を分離することができる。
【0045】
ここで、この第1の実施形態に係るX線CT装置のX線管ユニット10の例として、実施例1及び実施例2のX線管ユニットについて説明する。始めに、実施例1のX線管ユニット10について説明する。図5は、実施例1のX線管ユニット10を示す断面図である。
【0046】
図5に示すように、X線管ユニット10は回転陽極型のX線管ユニットであり、X線管13は回転陽極型のX線管である。X線管ユニット10は、X線管13の他、磁界を発生させるコイルとしてのステータコイル102を備えている。図示しないが、ハウジング12(図4)は、X線管13及びステータコイル102を収容している。
【0047】
X線管13は、固定体としての固定シャフト110と、管部130と、陽極ターゲット150と、回転体160と、潤滑剤としての液体金属170と、陰極180と、真空外囲器190とを備えている。X線管13は動圧すべり軸受を使っている。
【0048】
固定シャフト110は、回転軸a2に沿って延出して回転軸a2を中心軸として筒状に形成され、一端部が閉塞されている。固定シャフト110は、上記一端部から外れた側面に軸受面110Sを有している。固定シャフト110は、Fe(鉄)合金やMo(モリブデン)合金等の材料で形成されている。固定シャフト110の内部は水系冷却液9で満たされている。固定シャフト110は、この内部に水系冷却液9が流れる流路が形成されている。固定シャフト110は、この他端部側に水系冷却液9を外部に吐出す吐出し口110bを有している。
【0049】
管部130は、固定シャフト110の内部に設けられ、固定シャフトとともに流路を形成している。管部130の一端部は、固定シャフト110の他端部に形成された開口部110aを通って固定シャフト110の外部に延出している。管部130は、開口部110aに密接に固定されている。
【0050】
管部130は、この内部に水系冷却液9を取り入れる取り入れ口130aと、水系冷却液9を固定シャフト110の内部に吐出す吐出し口130bとを有している。取り入れ口130aは、固定シャフト110の外部に位置している。吐出し口130bは、固定シャフト110の一端部に隙間を置いて位置している。
【0051】
取り入れ口130aは導管11aに直接連結され、吐出し口110bはハウジング12内に開放されている。なお、X線管ユニット10が図5に示すように構成されている場合、取り入れ口130aは導管11aに継手を介して間接的に連結されていてもよい。又は、取り入れ口130aはハウジング12内に開放され、吐出し口110bは導管11bに直接又は継手を介して間接的に連結されていてもよい。
【0052】
上記したことから、X線管13外部からの水系冷却液9は、取り入れ口130aから取り入れられ、管部130内部を通って固定シャフト110の内部に吐出され、固定シャフト110及び管部130の間を通り、吐出し口110bからX線管13外部に吐出される。
【0053】
陽極ターゲット150は、陽極151と、この陽極の外面の一部に設けられたターゲット層152とを有している。陽極151は、円盤状に形成され、固定シャフト110と同軸的に設けられている。陽極151は、Mo合金等の材料で形成されている。陽極151は、回転軸a2に沿った方向に凹部151aを有している。凹部151aは、円盤状に窪めて形成されている。凹部151aには固定シャフト110の一端部が嵌合されている。凹部151aは、固定シャフト110の一端部に隙間を置いて形成されている。ターゲット層152は、W(タングステン)合金等の材料で輪状に形成されている。ターゲット層152の表面は電子衝突面である。
【0054】
回転体160は、固定シャフト110より径の大きい筒状に形成されている。回転体160は、固定シャフト110及び陽極ターゲット150と同軸的に設けられている。回転体160は、固定シャフト110より短く形成されている。
【0055】
回転体160は、FeやMo等の材料で形成されている。より詳しくは、回転体160は、筒部161と、筒部161の一端部の側面を囲むように筒部と一体に形成された環部162と、筒部161の他端部に設けられたシール部163と、筒部164とを有している。
【0056】
筒部161は、固定シャフト110の側面を囲んでいる。筒部161は、内面に軸受面110Sに隙間を置いて対向した軸受面160Sを有している。回転体160の一端部、すなわち、筒部161の一端部及び環部162は陽極ターゲット150と接合されている。回転体160は、固定シャフト110を軸に陽極ターゲット150とともに回転可能に設けられている。
【0057】
シール部163は、軸受面160Sに対して環部162(一端部)の反対側に位置している。シール部163は、筒部161の他端部に接合されている。シール部163は、環状に形成され、固定シャフト110の側面全周に亘って隙間を置いて設けられている。筒部164は、筒部161の側面と接合され、筒部161に固定されている。筒部164は、例えばCu(銅)で形成されている。
【0058】
液体金属170は、固定シャフト110の一端部及び凹部151a間の隙間、並びに固定シャフト110(軸受面110S)及び筒部161(軸受面160S)間の隙間に充填されている。なお、これらの隙間は全て繋がっている。この実施の形態において、液体金属170は、ガリウム・インジウム・錫合金(GaInSn)である。
【0059】
回転軸a2に直交した方向において、シール部163及び固定シャフト110間の隙間(クリアランス)は、回転体160の回転を維持するとともに液体金属170の漏洩を抑制できる値に設定されている。上記したことから、隙間はわずかであり、500μm以下である。このため、シール部163は、ラビリンスシールリング(labyrinth seal ring)として機能する。
【0060】
また、シール部163は、内側を円形枠状に窪めてそれぞれ形成された複数の収容部を有している。上記収容部は、万一隙間から液体金属170が漏れた場合、漏れた液体金属170を収容する。
【0061】
陰極180は、陽極ターゲット150のターゲット層252に間隔を置いて対向配置されている。陰極180は、電子を放出するフィラメント181を有している。
真空外囲器190は、固定シャフト110、管部130、陽極ターゲット150、回転体160、液体金属170及び陰極180を収容している。真空外囲器190は、X線透過窓190a及び開口部190bを有している。X線透過窓190aは、回転軸a2に対して直交した方向にターゲット層152と対向している。固定シャフト110の他端部は、開口部190bを通って真空外囲器190の外部に露出されている。開口部190bは、固定シャフト110を密接に固定している。
陰極180は、真空外囲器190の内壁に取付けられている。真空外囲器190は密閉されている。真空外囲器190の内部は真空状態に維持されている。
【0062】
ステータコイル102は、回転体160の側面、より詳しくは筒部164の側面に対向して真空外囲器190の外側を囲むように設けられている。ステータコイル102の形状は環状である。
【0063】
ここで、上記X線管13及びステータコイル102の動作状態について説明する。
ステータコイル102は回転体160(特に筒部164)に与える磁界を発生するため、回転体は回転する。これにより、陽極ターゲット150も回転する。また、陰極180に負の電圧(高電圧)が印加され、陽極ターゲット150は接地電位に設定される。
【0064】
これにより、陰極180及び陽極ターゲット150間に電位差が生じる。このため、陰極180が電子を放出すると、この電子は、加速され、ターゲット層152に衝突する。すなわち、陰極180は、ターゲット層152に電子ビームを照射する。これにより、ターゲット層152は、電子と衝突するときにX線を放出し、放出されたX線はX線透過窓190aを介して真空外囲器190外部、及びハウジング12のX線放射口12w、ひいてはハウジング12外部に放出される。
上記のように、実施例1のX線管ユニット10が形成されている。
【0065】
次に、実施例2のX線管ユニット10について説明する。図6は、実施例2のX線管ユニットを示す断面図である。図7は、図6に示したX線管ユニットを示す他の断面図である。図8は、図6及び図7に示したX線管ユニットの一部を拡大して示す断面図である。
【0066】
図6乃至図8に示すように、X線管ユニット10は固定陽極型のX線管ユニットであり、X線管13は固定陽極型のX線管である。X線管13は、真空外囲器231を備えている。真空外囲器231は、真空容器232と、絶縁部材250とを備えている。この実施形態において、絶縁部材250は、高電圧絶縁部材として機能している。絶縁部材250には陰極236が取り付けられ、絶縁部材250は、真空外囲器231の一部を形成している。
【0067】
陽極ターゲット235は、真空外囲器231の一部を形成している。陽極ターゲット235は、真空外囲器231の外部に小さく開口し、ターゲット面235b近傍で膨らんだ壺形に形成されている。陽極ターゲット235、陰極236、集束電極209及び加速電極208は、真空外囲器231に収納されている。陽極ターゲット235には、電圧供給配線が接続されている。陽極ターゲット235及び加速電極208は接地電位に設定されている。陰極236及び集束電極209と対向した個所の真空容器232は筒状に形成されている。陰極236には、負の高電圧が印加される。集束電極209には、調整された負の高電圧が供給される。真空外囲器231の内部は真空状態である。金属表面部234は、X線透過窓231wの真空側の表面を含む真空容器232の内側に設けられ、接地電位に設定されている。
【0068】
また、X線管13は、管部241と、環部242とを備えている。管部241は、金属で形成されている。管部241の一端部は、陽極ターゲット235の内部に挿入されている。環部242は、陽極ターゲット235内に設けられている。環部242は、管部241の一端部の側面を囲むように管部241と一体に形成されている。環部242は陽極ターゲット235に隙間を置いて設けられている。管部241の他端部は、水系冷却液取入れ口を形成し、導管11aに連結されている。陽極ターゲット235の開口は、管部241との間に水系冷却液排出口を形成している。このため、ハウジング12内は、水系冷却液9で満たされる。ハウジング12は、X線透過窓231wに対向したX線放射口12wを有している。
【0069】
ハウジング12内には、偏向部270が収容されている。偏向部270は、磁気偏向部であり、真空容器232の外側で、電子ビームの軌道を取り囲む位置に設けられている。偏向部270は、陰極236から放出される電子ビームを偏向させ、焦点の位置をターゲット面235b上で移動させるものである。
上記のように、実施例2のX線管ユニットが形成されている。
【0070】
次に、本願発明者等が、水系冷却液9の温度に対する飽和蒸気圧の変化について調査した結果について説明する。水系冷却液9としては、純水や、グリコール水などの不凍液を含むものなど、一般に知られている水系冷却液を利用することができる。
【0071】
ここでは、水系冷却液として、水100%の冷却液を使用した場合と、PG50%水溶液(プロピレングリコール50%、水50%)の冷却液を使用した場合とについてそれぞれ調査した結果について説明する。調査した結果を図9及び図10に示す。なお、100kPaは、概ね1気圧(大気圧)であり、50kPaは、概ね0.5気圧であり、200kPaは、概ね2気圧である。
【0072】
図9及び図10に示すように、水100%の温度が17℃、PG50%水溶液の温度が25℃の場合に飽和蒸気圧は1.9192kPaであった。すなわち、1.9192kPaの環境では、水100%は17℃、PG50%水溶液は25℃でそれぞれ沸点に達することが分かる。
【0073】
水100%の温度が37℃、PG50%水溶液の温度が45℃の場合に飽和蒸気圧は6.2282kPaであった。水100%の温度が57℃、PG50%水溶液の温度が65℃の場合に飽和蒸気圧は17.202kPaであった。水100%の温度が77℃、PG50%水溶液の温度が85℃の場合に飽和蒸気圧は41.647kPaであった。水100%の温度が97℃、PG50%水溶液の温度が105℃の場合に飽和蒸気圧は62.139kPaであった。水100%の温度が107℃、PG50%水溶液の温度が115℃の場合に飽和蒸気圧は128.74kPaであった。水100%の温度が117℃、PG50%水溶液の温度が125℃の場合に飽和蒸気圧は179.48kPaであった。
【0074】
上記のことから、100kPaの環境では、水100%は100℃、PG50%水溶液は108℃で沸点に達することが分かる。200kPaの環境では、水100%は120℃、PG50%水溶液は128℃で沸点に達することが分かる。50kPaの環境では、水100%は82℃、PG50%水溶液は90℃で沸点に達することが分かる。
【0075】
次に、水系冷却液9が流れる循環路30内におけるキャビテーション(トリチェリの真空)の発生を防止するためのX線CT装置1の構成について説明する。X線管13の冷却効率を高めるために絶縁油ではなく水系冷却液9を使用し、スキャン時間(撮影時間)を短縮するために回転架台6の回転速度を3rps以上に設定した場合、循環路30内にキャビテーションが発生し易いものである。しかしながら、本願発明者等が調査した結果、次に述べるように循環ポンプ22及び空盆60の位置を特定することにより、水系冷却液9を使用し、回転架台6の回転速度を3rps以上に設定した場合でも上記キャビテーションの発生を防止することのできるX線CT装置1が得られたものである。
【0076】
図3及び図4に示すように、ここで、回転軸a1からベローズ62までの距離の平均値をR0とする。第2空間64(ガス空間)の圧力をP0とする。この実施形態において、第2空間64は大気に開放されているため、P0=1気圧である。
【0077】
被検者や検査者またはサービスマンの安全性確保(やけど防止)の点から、JIS規格や国際規格などにおいて、ハウジング12の表面温度は85℃以下でなければならないと定められている。このため、ハウジング12の表面の許容最高温度は85℃以下となる値になるように温度制限する必要がある。
【0078】
ハウジング12の表面の最高温度に達した状態における水系冷却液9の飽和蒸気圧をp´とする。この実施形態において、ハウジング12の表面の許容最高温度は、85℃と75℃との間の温度(例えば80℃)に設定されている。
【0079】
ハウジング12をその一部に含み、かつ空盆60を除く循環路30までの回転軸a1からの距離の最小値をR1とする。この最小値R1に対応する領域は、ハウジング12を含んでいるため、この領域の水系冷却液9の温度はハウジング12の表面側の温度にほぼ近い値となる。この実施形態において、最小値R1に対応する領域は、回転軸a1側に位置するハウジング12の内壁近傍の領域である。
【0080】
回転軸a1から循環ポンプ22の水系冷却液9の導入口までの距離の最小値をR2とする。水系冷却液9の密度をρとする。回転架台6の角速度をω、とする。回転軸a1から熱伝達面1sまでの距離の最小値をR3とする。
【0081】
ベローズ62(距離R0)の位置にかかる遠心力差による内圧成分pは、次の式で表される。
【0082】
p=0.5・(R0+R1)・(R0−R1)・ρ・ω2
(1)まず、ハウジング12をその一部に含む循環路30(空盆60を除く)のうちキャビテーションが最も発生し易い領域は、回転軸a1から最も近くに位置する領域である。このため、圧力P0(ベローズ62(距離R0)の位置にかかる全内圧)、内圧成分p、飽和蒸気圧p´は、次の関係を満たすことで、空盆60のベローズ62が大気側に押し出されることを防止することができ(ベローズ62が第2空間64側に膨張することを防止することができ)、回転軸a1から最も近くに位置する循環路30内の領域における真空部分の発生を防止することができることとなる。
【0083】
P0>p+p´
すなわち、
P0−p´>0.5・(R0+R1)・(R0−R1)・ρ・ω2
である。
【0084】
この実施形態において、回転軸a1から最も近くに位置する領域は、ハウジング12内のX線透過窓231w近傍の領域も含まれるため、次に挙げる効果も得られることとなる。
【0085】
・X線透過窓231wの冷却が損なわれる恐れが回避される。
・X線強度分布が常に均一なX線を放射することができる。
【0086】
ここで、本願発明者等が、空盆60の圧力を大気圧に一致させる場合の距離R0、距離R1の関係について計算した結果を図11に示す。
図11に示すように、線グラフよりも下側であればキャビテーションは発生しない。例えば、距離R1が0.625mである場合に、距離R0を0.748m以下に設定すればよいことが分かる。
【0087】
X線CT装置1の具体例に着目すると、距離R1は0.55m乃至0.70mの範囲内である。回転架台6の回転速度が4rpsの場合、高低差(R0−R1)が12cm程度より大きくなると、距離R1の位置の循環路30(ハウジング12)内に真空部分が発生してしまう。回転架台6の回転速度がより速くなったり、水系冷却液9の温度がより高くなったり、後述するように第2空間64が減圧されたりする場合、上記高低差はより小さくなるものである。例えば、回転架台6の回転速度が4rpsで、第2空間64が負圧(0.5気圧に減圧された)とした場合、図12に示すように、キャビテーションが発生しないための上記高低差は1cm以下となる。このため、第2空間64を減圧する場合などは、キャビテーションの発生に特に注意を要するものである。
【0088】
(2)次に、キャビテーションが発生し易い領域は、循環ポンプ22の水系冷却液9の導入口側である。この領域は圧力が低下し、負圧(大気圧より負の圧力)になり易いためキャビテーションが発生し易い。キャビテーションが発生すると循環ポンプ22が正常に動作せず、流量が低下したり、循環ポンプ22の部品が損傷したりする恐れがある。キャビテーションの発生を防止するためには、回転架台6の回転による遠心力の作用で圧力がかかるようにすることが有効である。
【0089】
すなわち、次の関係を満たすことが、循環路30内において、負圧(大気圧より負の圧力)になり易い領域におけるキャビテーション発生を防止するための必要条件である。
【0090】
R2>R0
(3)さらに、キャビテーションが発生し易い領域は沸騰熱伝達領域である。この領域を流れる水系冷却液9の温度は高いためキャビテーションが発生し易い。キャビテーションが発生すると水系冷却液9の流れが低下して冷却不足となり、X線管13が破損する恐れがある。キャビテーションの発生を防止するためには、回転架台6の回転による遠心力の作用で圧力がかかるようにすることが有効である。
【0091】
すなわち、次の関係を満たすことが、循環路30内において、水系冷却液9が高温になり易い領域における真空部分の発生を防止するための必要条件である。
【0092】
R3>R0
次に、上記のように構成されたX線CT装置1の制御方法として、X線CT装置1による、撮影モード時の動作と、冷却モード時の動作とを説明する。
X線CT装置1は、図示しない制御部をさらに備えている。制御部は、上記駆動部、循環ポンプ22、X線管ユニット10及びX線検出器40を制御し、温度検出器(第1温度検出器16及び第2温度検出器17)で検出した水系冷却液9の温度の情報を取得することができる。制御部は、撮影モードと、冷却モードと、に切替え可能である。
【0093】
制御部は、撮影モードに切替えると、回転架台6の回転及び水系冷却液9の循環を行いながらX線管13から放出させたX線をX線検出器40で検出させて撮影することができる。
【0094】
詳しくは、撮影モードに入ると(制御部が撮影モードに切替えると)、回転架台6が回転軸a1を中心に回転する。このとき、X線管ユニット10、冷却ユニット20及びX線検出器40などは、被検体の周囲を一体になって回転する。また、循環ポンプ22は循環路30内において水系冷却液9の循環を行い、X線管ユニット10はX線を放射する。
【0095】
X線は、被検体を透過し、X線検出器40に入射し、X線検出器40においてX線の強度が検出される。X線検出器40で検出された検出信号は、上述したデータ収集装置で増幅され、かつA/D変換によってディジタル検出信号に変換され、図示しないコンピュータに供給される。
【0096】
コンピュータは、ディジタル検出信号をもとに、被検体の関心領域におけるX線吸収率を演算し、その演算結果から被検体の断層画像を生成するための画像データを構築する。画像データは、図示しない表示装置などに送られ、画面上に断層画像として表示される。
【0097】
上記のように、X線CT装置1は、X線管ユニット10及びX線検出器40が被検体を挟んで回転し、被検体の検査断面内のあらゆる点を透過したX線の強弱いわゆる投影データを、いろいろな角度、例えば360°の範囲から獲得する。そして、この投影データをもとに、予めプログラムされたデータ再構成プログラムにより断層画像を生成する。
【0098】
制御部は、撮影モードの後、冷却モードに切替えると、X線管ユニット10からのX線の放出を休止させ、X線管ユニット10の内部を流れる水系冷却液9の温度が所定の許容上限温度以下(例えば大気圧の場合の沸点以下)になるまで回転架台6の回転及び水系冷却液9の循環を維持させて冷却することができる。
【0099】
すなわち、冷却モードにおいて、回転架台6の回転による遠心力の作用で圧力がかかるようにしていることがポイントであり、X線管13によるX線の曝射終了後も、水系冷却液9の温度が高いうちは回転架台6の回転を停止せず、回転を継続させることが好ましく、これにより、キャビテーションの発生を防止することができる。
【0100】
上記のように構成された第1の実施形態に係るX線CT装置1及びその制御方法によれば、X線CT装置1は、X線管ユニット10と、水系冷却液9と、導管11a、11b、21a、21b、21cと、循環ポンプ22と、循環路30に取付けられた空盆60と、回転架台6と、X線検出器40と、を備えている。
【0101】
X線管13の冷却に絶縁油ではなく水系冷却液9を使用することができるため、X線管13の冷却効率を高めることができる。
X線CT装置1は、P0−p´>0.5・(R0+R1)・(R0−R1)・ρ・ω2の関係を満たしているため、回転軸a1から最も近くに位置する循環路30内の領域におけるキャビテーションの発生を防止することができる。
【0102】
X線CT装置1は、R2>R0の関係を満たしているため、循環路30内において、負圧になり易い領域におけるキャビテーションの発生を防止することができる。
X線CT装置1は、R3>R0の関係を満たしているため、水系冷却液9が高温になり易い領域におけるキャビテーションの発生を防止することができる。
【0103】
制御部は、撮影モードから冷却モードに切替えることができる。このため、X線管13によるX線の曝射終了後に水系冷却液9の温度が高くとも、キャビテーションの発生を防止することができる。
【0104】
上記のことから、水系冷却液9を使用してX線管13を冷却することができ、水系冷却液9の循環路30内におけるキャビテーションの発生を防止することができるX線CT装置1及びその制御方法を得ることができる。
【0105】
また、回転軸a1からファンユニット25までの距離は、回転軸a1からラジエータ24までの距離より長い。ファンユニット25は、ラジエータ24の周囲を流れる空気を開口部7aを通して回転架台6の外部へと放出させる。
【0106】
ラジエータ24はフレーム部7に密着して取り付けられていない。開口部7aのサイズは、ラジエータ24のサイズとほぼ同じである必要はなく、ラジエータ24のサイズより小さくすることができる。このため、フレーム部7の機械的強度の低下を抑制することができる。フレーム部7を広い幅にしたり、厚くしたりするなどの補強の必要は生じないため、装置の小型化及び軽量化を図ることができる。
【0107】
X線CT装置1の使用時間の経過とともに、ラジエータ24の放熱パイプや放熱フィン間の隙間に埃が堆積すると、空気は次第にラジエータ24を通過し難くなってしまい、熱交換器23の冷却性能が低下し、X線管の冷却率も低下してしまう。
【0108】
しかしながら、ラジエータ24は、フレーム部7の内壁側の空間において露出している。このため、筐体2の一部を取り外すだけで、フレーム部7の内壁側の空間からラジエータ24を清掃することができ、ラジエータ24に堆積した埃を除去することができる。回転架台6から、冷却ユニット20を取り外したり、さらに冷却ユニット20に連結されたX線管ユニット10を併せて取り外したりすることなくラジエータ24を清掃することができるため、清掃(メンテナンス作業)にかかる時間を短縮することができる。
【0109】
熱交換器23の機能が低下しないようにメンテナンスすることによりX線管13に生じる過熱を低減できるため、X線管13に頻発する放電の発生を低減することができ、X線管13の製品寿命の短縮を低減することができる。
上記のことから、機械的強度の低下を防止することができ、ラジエータ24を回転架台6から取り外すこと無く清掃することができるX線CT装置1を得ることもできる。
【0110】
次に、第2の実施形態に係るX線CT装置について説明する。この実施形態において、他の構成は上述した第1の実施形態と同一であり、同一の部分には同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。図13は、第2の実施形態に係るX線CT装置1の回転架台6、並びに回転架台6に搭載されたX線管ユニット10、冷却ユニット20及びX線検出器40を示す正面図である。
【0111】
図14は、X線管ユニット10及び冷却ユニット20示す概略構成図である。図14では、X線管ユニット10及び冷却ユニット20の接続関係を強調して示すものであり、図13のように、X線管ユニット10及び冷却ユニット20の相対的な位置関係を詳細に示すものではない。
【0112】
図13及び図14に示すように、冷却ユニット20は、上記筐体50を備えていない。冷却ユニット20は、マウント27及びマウント28を備えている。マウント27及びマウント28は、それぞれ矩形枠状に形成されている。マウント27は、一端部がフレーム部7の内壁に取付けられている。マウント27は、開口部7aの周りを囲んでいる。マウント28は、一側縁部がフレーム部7の内壁に取付けられている。
【0113】
循環ポンプ22は、マウント28内に位置し、マウント28取り付けられ、フレーム部7の内壁には間接的に取付けられ、固着されている。
空盆60は、マウント28及び回転軸a1間に位置し、マウント28に載置され、フレーム部7の内壁には間接的に取付けられ、固着されている。
【0114】
ラジエータ24は、周縁部がマウント27の他端部に取付けられ、フレーム部7の内壁には間接的に取付けられ、固着されている。フレーム部7の内壁側の空間において、ラジエータ24が露出されていることは言うまでもない。
【0115】
ファンユニット25は、フレーム部7に直接取り付けられている。ここでは、ファンユニット25は、フレーム部7の開口部7aに直接取り付けられ固着されている。
このため、マウント27は、ラジエータ24及びファンユニット25の間に位置し、ラジエータ24の周囲の空気の流れをファンユニット25までガイドするダクトとしても機能している。
【0116】
冷却ユニット20は、導管21dをさらに有している。導管21dは、一端が導管21aに気密に取付けられている。
空盆60は、冷却ユニット20に設けられている。空盆60の開口部61aは、導管21dに気密に連通されている。
【0117】
この実施形態においても、X線CT装置1は次の関係を満たすものである。
【0118】
P0−p´>0.5・(R0+R1)・(R0−R1)・ρ・ω2
R2>R0
R3>R0
空盆60、並びに循環路30を形成するように接続されたハウジング12、ラジエータ24及び循環ポンプ22は、2個所の着脱自在継手により、2系統に分離可能である。このため、X線CT装置1の保守方法において、次に示すように、上記2系統に分離した後に、空盆60を含まない方の系統に、他の空盆を着脱自在継手を介して取り付けてもよい。
【0119】
すなわち、分離状態のX線管ユニット10は、水系冷却液9の体積変化を吸収し難い構成である。そこで、導管11a、11bをゴムホースで形成することにより、導管11a、11bに、水系冷却液9の体積変化を吸収させる機能を持たせることができる。しかし、導管11a、11bだけでは水系冷却液9の体積変化を十分に吸収できない場合がある。この場合、分離状態のX線管ユニット10には空盆を取付けた方が好ましい。
【0120】
図15は、図13及び図14に示したX線管ユニット10の分離状態を示す概略構成図である。
図15に示すように、X線管ユニット10には、ベローズ機構としての空盆90が取付けられている。空盆90は、互いに気密、かつ液密に連結されたソケット83及び導管84を介してX線管ユニット10に取付けられている。ソケット83及びプラグ82は、着脱自在継手としてのカプラを形成し、連結状態において、気密、かつ液密に連結されている。
【0121】
空盆90は、開口部91aを有したケース91を有している。開口部91aは、導管84に気密に連通されている。空盆90は、ケース91内を開口部91aと繋がった第1領域93及び第2領域94に区域する弾性隔膜としてのベローズ92を有している。ケース91には、第2領域94に繋がった通気孔95が形成されている。通気孔95は空気の出入りを許可するため、第2領域94は大気に開放されている。なお、ケース91に通気孔95は形成されていなくともよく、この場合、第2領域94は密閉空間となる。
【0122】
ベローズ92は、ケース91に液密に取付けられている。ベローズ92は伸縮自在である。ここでは、ベローズ92はゴムで形成されている。ベローズ92は、水系冷却液9の温度変化による体積変化(体積の膨張及び収縮)を吸収することができる。ベローズ92は、ガスに対して不透過性を示す材料で形成することが好ましい。
これにより、分離状態(分離した後)のX線管ユニット10における、外部への液(水系冷却液9)漏れを防止することができ、内部への空気の混入を防止することができる。
【0123】
図16は、図13及び図14に示した冷却ユニット20の分離状態を示す概略構成図である。
図16に示すように、一方、分離状態の冷却ユニット20は、空盆60を備えている。このため、冷却ユニット20に付加すること無く、分離状態の冷却ユニット20における、外部への液(水系冷却液9)漏れを防止することができ、内部への空気の混入を防止することができる。
【0124】
上記のように構成された第2の実施形態に係るX線CT装置1及びその制御方法によれば、X線CT装置1及びその制御方法は、上記第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0125】
X線CT装置1は、マウント27を備えている。このため、機械的強度の設計が難しい上記第1の実施形態の筐体50無しにX線CT装置1を形成することができる。
X線CT装置1はマウント28を備えている。空盆60をマウント28上に載置することができるため、冷却ユニット20をコンパクトに設計することができる。
上記のことから、水系冷却液9を使用してX線管13を冷却することができ、水系冷却液9の循環路30内におけるキャビテーションの発生を防止することができるX線CT装置1及びその制御方法を得ることができる。
【0126】
次に、第3の実施形態に係るX線CT装置について説明する。この実施形態において、他の構成は上述した第2の実施形態と同一であり、同一の部分には同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。図17は、第3の実施形態に係るX線CT装置1の回転架台6、並びに回転架台6に搭載されたX線管ユニット10、冷却ユニット20及びX線検出器40を示す正面図である。
【0127】
図17に示すように、冷却ユニット20は、上記マウント27、28を備えていない。冷却ユニット20は、マウント29を備えている。マウント29は、矩形枠状の周壁部と、板状の天井壁部と、周壁部及び天井壁部間に位置した板状の一対の側壁部と、が一体に形成されている。マウント29の周壁部は、フレーム部7の内壁に取付けられている。マウント29の周壁部は、は、開口部7aの周りを囲んでいる。
循環ポンプ22及び空盆60は、マウント29及び回転軸a1間に位置し、マウント29の天井壁部に載置され、フレーム部7の内壁には間接的に取付けられ、固着されている。
【0128】
ラジエータ24は、周縁部がマウント29の周壁部に取付けられ、フレーム部7の内壁には間接的に取付けられ、固着されている。フレーム部7の内壁側の空間において、ラジエータ24が露出されるよう、マウント29の一対の側壁部は、所定の高さを持っている。言い換えると、マウント29の天井壁部及びラジエータ24間の空間からラジエータ24を清掃することができるように、マウント29の一対の側壁部は、所定の高さを持っている。また、マウント29の天井壁部及びラジエータ24間の空間では、空気の出入りが許可されるため、マウント29の天井壁部及びラジエータ24間の空間を通った空気がラジエータ24を通ることとなる。
【0129】
ファンユニット25は、フレーム部7に直接取り付けられている。ここでは、ファンユニット25は、フレーム部7の開口部7aに直接取り付けられ固着されている。
このため、マウント29の周壁部は、ラジエータ24及びファンユニット25の間に位置し、ラジエータ24の周囲の空気の流れをファンユニット25までガイドするダクトとしても機能している。
【0130】
上記のように構成された第3の実施形態に係るX線CT装置1及びその制御方法によれば、X線CT装置1及びその制御方法は、上記第2の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0131】
X線CT装置1は、マウント29を備えている。このため、機械的強度の設計が難しい上記第1の実施形態の筐体50無しにX線CT装置1を形成することができる。
循環ポンプ22及び空盆60をマウント29の天井壁部上に載置することができるため、冷却ユニット20をコンパクトに設計することができる。
【0132】
マウント29の一対の側壁部は所定の高さを持っているため、ラジエータ24は、フレーム部7の内壁側の空間において露出している。マウント29の天井壁部及びラジエータ24間の空間から、ラジエータ24にアクセスすることができる。このため、筐体2の一部を取り外すだけで、フレーム部7の内壁側の空間からラジエータ24を清掃することができ、ラジエータ24に堆積した埃を除去することができる。回転架台6から、冷却ユニット20を取り外したり、さらに冷却ユニット20に連結されたX線管ユニット10を併せて取り外したりすることなくラジエータ24を清掃することができるため、清掃(メンテナンス作業)にかかる時間を短縮することができる。
【0133】
上記のことから、水系冷却液9を使用してX線管13を冷却することができ、水系冷却液9の循環路30内におけるキャビテーションの発生を防止することができるX線CT装置1及びその制御方法を得ることができる。
【0134】
次に、第4の実施形態に係るX線CT装置について説明する。この実施形態において、他の構成は上述した第2の実施形態と同一であり、同一の部分には同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。図18は、第4の実施形態に係るX線CT装置1の回転架台6、並びに回転架台6に搭載されたX線管ユニット10、冷却ユニット20及びX線検出器40を示す正面図である。
【0135】
図18に示すように、冷却ユニット20は、上記マウント27を備えていない。冷却ユニット20は、マウント29をさらに備えている。
循環ポンプ22は、マウント28内に位置し、マウント28取り付けられ、フレーム部7の内壁には間接的に取付けられ、固着されている。
空盆60は、マウント28及び回転軸a1間に位置し、マウント28に載置され、フレーム部7の内壁には間接的に取付けられ、固着されている。
【0136】
マウント29は、矩形枠状の周壁部と、板状の天井壁部と、周壁部及び天井壁部間に位置した板状の一対の側壁部と、が一体に形成されている。マウント29の周壁部は、フレーム部7の内壁に取付けられている。マウント29の周壁部は、は、開口部7aの周りを囲んでいる。
【0137】
X線管ユニット10(ハウジング12)は、マウント29及び回転軸a1間に位置し、マウント29の天井壁部に載置され、フレーム部7の内壁には間接的に取付けられ、固着されている。
【0138】
ラジエータ24は、周縁部がマウント29の周壁部に取付けられ、フレーム部7の内壁には間接的に取付けられ、固着されている。フレーム部7の内壁側の空間において、ラジエータ24が露出されるよう、マウント29の一対の側壁部は、所定の高さを持っている。言い換えると、マウント29の天井壁部及びラジエータ24間の空間からラジエータ24を清掃することができるように、マウント29の一対の側壁部は、所定の高さを持っている。また、マウント29の天井壁部及びラジエータ24間の空間では、空気の出入りが許可されるため、マウント29の天井壁部及びラジエータ24間の空間を通った空気がラジエータ24を通ることとなる。
【0139】
ファンユニット25は、フレーム部7に直接取り付けられている。ここでは、ファンユニット25は、フレーム部7の開口部7aに直接取り付けられ固着されている。
このため、マウント29の周壁部は、ラジエータ24及びファンユニット25の間に位置し、ラジエータ24の周囲の空気の流れをファンユニット25までガイドするダクトとしても機能している。
【0140】
上記のように構成された第4の実施形態に係るX線CT装置1及びその制御方法によれば、X線CT装置1及びその制御方法は、上記第2の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0141】
上X線CT装置1は、マウント29を備えている。このため、機械的強度の設計が難しい上記第1の実施形態の筐体50無しにX線CT装置1を形成することができる。
空盆60をマウント28上に載置することができ、X線管ユニット10(ハウジング12)をマウント29の天井壁部上に載置することができるため、冷却ユニット20をコンパクトに設計することができる。
【0142】
上記のことから、水系冷却液9を使用してX線管13を冷却することができ、水系冷却液9の循環路30内におけるキャビテーションの発生を防止することができるX線CT装置1及びその制御方法を得ることができる。
【0143】
なお、この発明は上記実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化可能である。また、上記実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【0144】
例えば、空盆60は、循環路30に取付けられていればよく、第1の実施形態のように、冷却ユニット20とは別に設けられていてもよい。
図19に示すように、空盆60は、X線管ユニット10に設けられていてもよい。
【0145】
ハウジング12及び空盆60の開口部61aは、導管12aを介して気密に連通されている。
【0146】
図20は、図19に示したX線管ユニット10の分離状態を示す概略構成図である。
図20に示すように、分離状態のX線管ユニット10は、空盆60を備えている。このため、X線管ユニット10に付加すること無く、分離状態のX線管ユニット10における、外部への液(水系冷却液9)漏れを防止することができ、内部への空気の混入を防止することができる。
【0147】
分離状態の冷却ユニット20は、水系冷却液9の体積変化を吸収し難い構成である。そこで、導管21a、21b、21cをホースで形成することにより、導管21a、21b、21cに、水系冷却液9の体積変化を吸収させる機能を持たせることができる。しかし、導管21a、21b、21cだけでは水系冷却液9の体積変化を十分に吸収できない場合がある。この場合、分離状態の冷却ユニット20には空盆を取付けた方が好ましい。
【0148】
図21は、図19に示した冷却ユニット20の分離状態を示す概略構成図である。
図21に示すように、冷却ユニット20には、ベローズ機構としての空盆90が取付けられている。空盆90は、互いに気密、かつ液密に連結されたプラグ85及び導管86を介して冷却ユニット20に取付けられている。ソケット81及びプラグ85は、着脱自在継手としてのカプラを形成し、連結状態において、気密、かつ液密に連結されている。開口部91aは、導管86に気密に連通されている。
これにより、分離状態の冷却ユニット20における、外部への液(水系冷却液9)漏れを防止することができ、内部への空気の混入を防止することができる。
【0149】
図22に示すように、熱伝達面1sがX線管13の内部に位置している場合、ハウジング12内に水系冷却液9が収容されている。そして、導管11b及びX線管13は、直接又は継手を介して間接的に連結されていてもよい。導管11aは、一端がハウジング12の水系冷却液取入れ口12iに気密に取付けられている。
【0150】
図23に示すように、熱伝達面1sがX線管13の内部に位置している場合、ハウジング12内に水系冷却液9が収容されている。そして、導管11a及び導管11bは、ともにX線管13に直接又は継手を介して間接的に連結されていてもよい。この場合、ハウジング12内に水系冷却液は収容されていてもよく、逆に収容されていなくともよい。X線管13の内部は、導管11a及び導管11bとともに循環路30の一部を形成している。これにより、X線管13の内部の熱伝達面1sを水系冷却液9が循環することで、X線管13、特に陽極ターゲットを冷却することができる。
【0151】
図24に示すように、熱伝達面1sがX線管13の外面である場合、ハウジング12内に水系冷却液9が収容されている。ハウジング12は、導管11a及び導管11bとともに循環路30の一部を形成している。そして、X線管13の熱伝達面1sを水系冷却液9が循環することで、X線管13、特に後述する陽極ターゲットを冷却することができる。
【0152】
図25に示すように、X線CT装置1は、圧力検出器301、上述した制御部の一部である圧力制御装置302、圧力調整機構303及び導管304をさらに備えていてもよい。圧力検出器301(圧力センサ)は、ケース61に気密に取付けられている。圧力検出器301は、第2空間64の圧力(ガス圧力)を検出するものである。圧力検出器301は、検出した圧力の情報を圧力制御装置302に送信する。圧力制御装置302は、上記圧力の情報に基づいて圧力調整機構303の駆動を制御する。
【0153】
圧力調整機構303は、導管304を介して通気孔65に気密に連通されている。なお、この例では第2空間64が大気に開放されないことは言うまでもない。圧力調整機構303は、第2空間64のガスの圧力を調整可能である。
【0154】
圧力調整機構303が加圧機構として機能する場合、第2空間64のガスの圧力を、大気圧に比べて圧力の高い正圧に調整可能である。圧力調整機構303が減圧機構として機能する場合、第2空間64のガスの圧力を、負圧に調整可能である。
【0155】
次に、図25に示すように構成されたX線CT装置1の制御方法として、X線CT装置1による、冷却モード時の動作とを説明する。制御部(圧力制御装置302)は、圧力調整機構303をさらに制御する。
【0156】
制御部は、撮影モードの後、冷却モードに切替えると、X線管ユニット10からのX線の放出を休止させ、水系冷却液9の温度が所定の許容上限温度以下(例えば大気圧の場合の沸点以下)になるまで、第2空間64のガスの圧力を正圧に調整し水系冷却液9の循環を維持した状態で回転架台6の回転を休止させて冷却することができる。
【0157】
すなわち、冷却モードにおいて、X線管13によるX線の曝射終了後に、水系冷却液9の温度が高いうちは第2空間64のガスの圧力を正圧に調整することにより、回転架台6の回転を維持しなくとも熱伝達面1sの近傍の領域におけるバーンアウトの発生を回避することができる。
【0158】
その他、X線管ユニット10の稼動を開始した直後の初期状態など、水系冷却液9の温度が十分に低い状態では、熱流速を上昇させるため、圧力調整機構303は、第2空間64の圧力を負圧に調整し、水系冷却液9の沸点を下げる。水系冷却液9の温度が低い場合でも沸騰熱伝達が可能となるため、X線管13の発熱部の温度を低く保ったままで熱伝達量を増大させることが可能となる。
【0159】
さらにX線管ユニット10の稼動が続き、X線管13の熱伝達面の温度が上昇すると、水系冷却液9の温度も上昇する。このため、水系冷却液9の温度上昇とともに、圧力調整機構303は、第2空間64の圧力を大気圧に調整し、水系冷却液9の沸点を上昇させ、さらには、第2空間64の圧力を正圧に調整し、水系冷却液9の沸点をさらに上昇させる。これにより、X線管13の熱伝達面1sから放出される沸騰熱を水系冷却液9に伝達させることができる。そして、バーンアウトの発生を回避しつつ、十分な熱流速を得ることができるため、一定のX線管入力パワーでの連続入力を可能とすることができる。
【0160】
水系冷却液9は、予め脱気されていた方が好ましい。そうでない場合には、使用中に水系冷却液9の温度上昇とともに溶存ガスが気泡として発生したり、キャビテーションが起こり易くなったりする原因となる。
【0161】
空盆60は、ハウジング12及び循環ポンプ22とは独立して、直接又は間接的に回転架台6に取付けられていてもよい。
ハウジング12、循環ポンプ22及び空盆60は、それぞれ独立して、直接又は間接的に回転架台6に取付けられていてもよい。
循環ポンプ22、ラジエータ24及びファンユニット25は、筐体に収納され、ユニット化されていてもよい。
【0162】
X線管ユニット10(ハウジング12)、循環ポンプ22、ラジエータ24、ファンユニット25及び空盆60は、互いに独立して、回転架台6に直接又は間接的に取付けられていてもよい。
【0163】
ラジエータ24は、平板状であり、フレーム部7の内壁にほぼ平行に配置されているが、種々変形可能である。ラジエータ24は、任意形状でよく、また積層させてもよく、フレーム部7の内壁に対して傾斜して配置されていてもよい。
【0164】
回転架台6の回転速度は3rpsを超える場合、機械的強度を確保するため、上述した第2乃至第4の実施形態で示したように、ファンユニット25は回転架台6の開口部7aに直接取り付けられていることが好ましく、ラジエータ24、空盆60及び循環ポンプ22も、それぞれ回転架台6に固定された専用のマウントに取付けた方が好ましい。また、第2乃至第4の実施形態の変形例として、循環ポンプ22及びダクト26の少なくとも一つを、ラジエータ24とともに一つの筐体に収納し、その筐体を回転架台6に、ファンユニットの直上に位置するように、取り付けることもできる。
【0165】
なお、ラジエータ24の回転軸側の露出面に、ラジエータ24の冷却性能に悪影響を及ぼさない程度に通気性の良いメッシュ状のカバーもしくはフィルター(以下フィルターなど)を、着脱可能なように設置することにより、大きな埃を除去することができる。これらフィルターなどの清掃、又は交換は、ラジエータ24の清掃に比べてより短時間で実施することができる。フィルターなどの清掃又は交換を頻繁に実施することにより、ラジエータ24の清掃の頻度を低減することが可能となる。
【0166】
圧力調整機構303は、第2空間64のガスの圧力を、大気圧又は正圧に調整可能に形成されていてもよい。また、圧力調整機構303は、第2空間64のガスの圧力を、大気圧又は負圧に調整可能に形成されていてもよい。
循環ポンプ22としては、遠心ポンプや、ギアポンプを利用することができる。
【0167】
本発明は、上述したX線CT装置に限定されるものではなく、各種のX線CT装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0168】
1…X線CT装置、1s…熱伝達面、2…筐体、5…固定架台、6…回転架台、9…冷却液、10…X線管ユニット、11a,11b,12a,21a,21b,21c,21d…導管、12…ハウジング、12w…X線放射口、13…X線管、16…第1温度検出器、17…第2温度検出器、20…冷却ユニット、22…循環ポンプ、23…熱交換器、24…ラジエータ、25…ファンユニット、26…ダクト、27,28,29…マウント、30…循環路、40…X線検出器、50…筐体、60,90…空盆、150,235…陽極ターゲット、180,236…陰極、190,231…真空外囲器、301…圧力検出器、302…圧力制御装置、303…圧力調整機構、a1,a2…回転軸、R0,R1,R2,R3…回転軸からの距離、ρ…冷却液の密度、ω…角速度、p…内圧成分、P0…圧力、p´…飽和蒸気圧。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、電子を放出する陰極、前記電子が衝突されることによりX線を放出する陽極ターゲット、並びに前記陰極及び陽極ターゲットを収納した真空外囲器を含み、前記ハウジングに収納されたX線管と、を有したX線管ユニットと、
前記X線管が発生する熱の少なくとも一部が伝達される水系冷却液と、
前記ハウジングに接続され、前記水系冷却液が流れる導管と、
前記導管に取付けられ、前記水系冷却液を循環させ、前記X線管ユニット及び導管とともに前記水系冷却液が循環する循環路を形成する循環ポンプと、
前記循環路に取付けられ、前記水系冷却液を前記循環路から外れたガス空間と隔てる弾性隔膜を有し、前記水系冷却液の体積変化を吸収するベローズ機構と、
回転軸を中心に回転し、前記X線管ユニット、導管、循環ポンプ及びベローズ機構が取付けられた回転架台と、
前記回転軸に対して前記X線管ユニットの反対側に位置し、前記回転架台に取付けられ、前記X線を検出するX線検出器と、を備え、
前記回転軸から前記弾性隔膜までの距離の平均値をR0、
前記ガス空間の圧力をP0、
前記ハウジングの表面の最高温度に達した状態における前記水系冷却液の飽和蒸気圧をp´、
前記ハウジングをその一部に含む前記循環路までの前記回転軸からの距離の最小値をR1、
前記回転軸から前記循環ポンプの前記水系冷却液の導入口までの距離の最小値をR2、
前記水系冷却液の密度をρ、
前記回転架台の角速度をω、とすると、
P0−p´>0.5・(R0+R1)・(R0−R1)・ρ・ω2、及び
R2>R0
であることを特徴とするX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項2】
前記X線管ユニットは、前記陽極ターゲットへの電子の衝突に伴って発生する熱を前記水系冷却液に沸騰熱伝達する熱伝達面をさらに有し、
前記回転軸から前記熱伝達面までの距離の最小値をR3、とすると、
R3>R0
であることを特徴とする請求項1に記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項3】
前記ガス空間は大気に開放され、
P0=1気圧
であることを特徴とする請求項1又は2に記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項4】
前記回転架台に取付けられ、前記導管に取付けられて前記循環路の一部を形成し、前記水系冷却液の熱を外部へ放出させるラジエータと、
前記回転架台に取付けられ、前記ラジエータの周囲に空気の流れを作りだすファンユニットと、をさらに備えていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項5】
前記ベローズ機構は、前記ハウジング及び循環ポンプとは独立して、直接又は間接的に前記回転架台に取付けられていることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項6】
前記ハウジング、循環ポンプ及びベローズ機構は、それぞれ独立して、直接又は間接的に前記回転架台に取付けられていることを特徴とする請求項5に記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項7】
前記ベローズ機構は、前記ハウジングの外面に取付けられていることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項8】
前記回転架台に取付けられた筐体をさらに備え、
前記循環ポンプ、ラジエータ及びファンユニットは、前記筐体に収納され、ユニット化されていることを特徴とする請求項4に記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項9】
前記X線管ユニットの内部を流れる前記水系冷却液の温度を検出する温度検出器をさらに備えたことを特徴とする請求項1乃至8の何れか1項に記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項10】
前記水系冷却液は予め脱気されていることを特徴とする請求項1乃至9の何れか1項に記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項11】
前記回転架台を回転させる駆動部と、
前記駆動部、循環ポンプ、X線管ユニット及びX線検出器を制御し、前記温度検出器で検出した前記水系冷却液の温度の情報を取得する制御部と、をさらに備え、
前記制御部は、
前記回転架台の回転及び前記水系冷却液の循環を行いながら前記X線管ユニットから放出させたX線を前記X線検出器で検出させる撮影モードと、
前記撮影モードの後、前記X線管ユニットからのX線の放出を休止させ、前記X線管ユニットの内部を流れる前記水系冷却液の温度が所定の許容上限温度以下になるまで前記回転架台の回転及び前記水系冷却液の循環を維持させる冷却モードと、
に切替え可能であることを特徴とする請求項9に記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項12】
前記回転架台を回転させる駆動部と、
前記ガス空間に連通され、前記ガス空間のガスの圧力を調整可能な圧力調整機構と、
前記駆動部、循環ポンプ、X線管ユニット、X線検出器及び圧力調整機構を制御し、前記温度検出器で検出した前記水系冷却液の温度の情報を取得する制御部と、をさらに備え、
前記制御部は、
前記回転架台の回転及び前記水系冷却液の循環を行いながら前記X線管ユニットから放出させたX線を前記X線検出器で検出させる撮影モードと、
前記撮影モードの後、前記X線管ユニットからのX線の放出を休止させ、前記X線管ユニットの内部を流れる前記水系冷却液の温度が所定の許容上限温度以下になるまで、前記ガス空間のガスの圧力を正圧に調整し前記水系冷却液の循環を維持した状態で前記回転架台の回転を休止させる冷却モードと、
に切替え可能であることを特徴とする請求項9に記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項13】
前記所定の許容上限温度は大気圧の場合の前記水系冷却液の沸点であることを特徴とする請求項11又は12に記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項14】
ハウジングと、電子を放出する陰極、前記電子が衝突されることによりX線を放出する陽極ターゲット、並びに前記陰極及び陽極ターゲットを収納した真空外囲器を含み、前記ハウジングに収納されたX線管と、を有したX線管ユニットと、前記X線管が発生する熱の少なくとも一部が伝達される水系冷却液と、前記ハウジングに接続され、前記水系冷却液が流れる導管と、前記導管に取付けられ、前記水系冷却液を循環させ、前記X線管ユニット及び導管とともに前記水系冷却液が循環する循環路を形成する循環ポンプと、前記循環路に取付けられ、前記水系冷却液を前記循環路から外れたガス空間と隔てる弾性隔膜を有し、前記水系冷却液の体積変化を吸収するベローズ機構と、回転軸を中心に回転し、前記X線管ユニット、導管、循環ポンプ及びベローズ機構が取付けられた回転架台と、前記回転架台を回転させる駆動部と、前記回転軸に対して前記X線管ユニットの反対側に位置し、前記回転架台に取付けられ、前記X線を検出するX線検出器と、前記X線管ユニットの内部を流れる前記水系冷却液の温度を検出する温度検出器と、を備え、前記回転軸から前記弾性隔膜までの距離の平均値をR0、前記ガス空間の圧力をP0、前記ハウジングの表面の最高温度に達した状態における前記水系冷却液の飽和蒸気圧をp´、前記ハウジングをその一部に含む前記循環路までの前記回転軸からの距離の最小値をR1、前記回転軸から前記循環ポンプの前記水系冷却液の導入口までの距離の最小値をR2、前記水系冷却液の密度をρ、前記回転架台の角速度をω、とすると、
P0−p´>0.5・(R0+R1)・(R0−R1)・ρ・ω2、及び
R2>R0
であるX線コンピュータ断層撮影装置の制御方法において、
前記回転架台の回転及び前記水系冷却液の循環を行いながら前記X線管ユニットから放出させたX線を前記X線検出器で検出させて撮影を行い、
前記撮影を行った後、前記X線管ユニットからのX線の放出を休止させ、前記X線管ユニットの内部を流れる前記水系冷却液の温度が所定の許容上限温度以下になるまで前記回転架台の回転及び前記水系冷却液の循環を維持させて冷却を行う、
ことを特徴とするX線コンピュータ断層撮影装置の制御方法。
【請求項15】
ハウジングと、電子を放出する陰極、前記電子が衝突されることによりX線を放出する陽極ターゲット、並びに前記陰極及び陽極ターゲットを収納した真空外囲器を含み、前記ハウジングに収納されたX線管と、を有したX線管ユニットと、前記X線管が発生する熱の少なくとも一部が伝達される水系冷却液と、前記ハウジングに接続され、前記水系冷却液が流れる導管と、前記導管に取付けられ、前記水系冷却液を循環させ、前記X線管ユニット及び導管とともに前記水系冷却液が循環する循環路を形成する循環ポンプと、前記循環路に取付けられ、前記水系冷却液を前記循環路から外れたガス空間と隔てる弾性隔膜を有し、前記水系冷却液の体積変化を吸収するベローズ機構と、回転軸を中心に回転し、前記X線管ユニット、導管、循環ポンプ及びベローズ機構が取付けられた回転架台と、前記回転架台を回転させる駆動部と、前記回転軸に対して前記X線管ユニットの反対側に位置し、前記回転架台に取付けられ、前記X線を検出するX線検出器と、前記X線管ユニットの内部を流れる前記水系冷却液の温度を検出する温度検出器と、前記ガス空間に連通され、前記ガス空間のガスの圧力を調整可能な圧力調整機構と、を備え、前記回転軸から前記弾性隔膜までの距離の平均値をR0、前記ガス空間の圧力をP0、前記ハウジングの表面の最高温度に達した状態における前記水系冷却液の飽和蒸気圧をp´、前記ハウジングをその一部に含む前記循環路までの前記回転軸からの距離の最小値をR1、前記回転軸から前記循環ポンプの前記水系冷却液の導入口までの距離の最小値をR2、前記水系冷却液の密度をρ、前記回転架台の角速度をω、とすると、
P0−p´>0.5・(R0+R1)・(R0−R1)・ρ・ω2、及び
R2>R0
であるX線コンピュータ断層撮影装置の制御方法において、
前記回転架台の回転及び前記水系冷却液の循環を行いながら前記X線管ユニットから放出させたX線を前記X線検出器で検出させて撮影を行い、
前記撮影モードの後、前記X線管ユニットからのX線の放出を休止させ、前記X線管ユニットの内部を流れる前記水系冷却液の温度が所定の許容上限温度以下になるまで、前記ガス空間のガスの圧力を正圧に調整し前記水系冷却液の循環を維持した状態で前記回転架台の回転を休止させて冷却を行う、
ことを特徴とするX線コンピュータ断層撮影装置の制御方法。
【請求項16】
前記所定の許容上限温度は大気圧の場合の前記水系冷却液の沸点であることを特徴とする請求項14又は15に記載のX線コンピュータ断層撮影装置の制御方法。
【請求項1】
ハウジングと、電子を放出する陰極、前記電子が衝突されることによりX線を放出する陽極ターゲット、並びに前記陰極及び陽極ターゲットを収納した真空外囲器を含み、前記ハウジングに収納されたX線管と、を有したX線管ユニットと、
前記X線管が発生する熱の少なくとも一部が伝達される水系冷却液と、
前記ハウジングに接続され、前記水系冷却液が流れる導管と、
前記導管に取付けられ、前記水系冷却液を循環させ、前記X線管ユニット及び導管とともに前記水系冷却液が循環する循環路を形成する循環ポンプと、
前記循環路に取付けられ、前記水系冷却液を前記循環路から外れたガス空間と隔てる弾性隔膜を有し、前記水系冷却液の体積変化を吸収するベローズ機構と、
回転軸を中心に回転し、前記X線管ユニット、導管、循環ポンプ及びベローズ機構が取付けられた回転架台と、
前記回転軸に対して前記X線管ユニットの反対側に位置し、前記回転架台に取付けられ、前記X線を検出するX線検出器と、を備え、
前記回転軸から前記弾性隔膜までの距離の平均値をR0、
前記ガス空間の圧力をP0、
前記ハウジングの表面の最高温度に達した状態における前記水系冷却液の飽和蒸気圧をp´、
前記ハウジングをその一部に含む前記循環路までの前記回転軸からの距離の最小値をR1、
前記回転軸から前記循環ポンプの前記水系冷却液の導入口までの距離の最小値をR2、
前記水系冷却液の密度をρ、
前記回転架台の角速度をω、とすると、
P0−p´>0.5・(R0+R1)・(R0−R1)・ρ・ω2、及び
R2>R0
であることを特徴とするX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項2】
前記X線管ユニットは、前記陽極ターゲットへの電子の衝突に伴って発生する熱を前記水系冷却液に沸騰熱伝達する熱伝達面をさらに有し、
前記回転軸から前記熱伝達面までの距離の最小値をR3、とすると、
R3>R0
であることを特徴とする請求項1に記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項3】
前記ガス空間は大気に開放され、
P0=1気圧
であることを特徴とする請求項1又は2に記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項4】
前記回転架台に取付けられ、前記導管に取付けられて前記循環路の一部を形成し、前記水系冷却液の熱を外部へ放出させるラジエータと、
前記回転架台に取付けられ、前記ラジエータの周囲に空気の流れを作りだすファンユニットと、をさらに備えていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項5】
前記ベローズ機構は、前記ハウジング及び循環ポンプとは独立して、直接又は間接的に前記回転架台に取付けられていることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項6】
前記ハウジング、循環ポンプ及びベローズ機構は、それぞれ独立して、直接又は間接的に前記回転架台に取付けられていることを特徴とする請求項5に記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項7】
前記ベローズ機構は、前記ハウジングの外面に取付けられていることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項8】
前記回転架台に取付けられた筐体をさらに備え、
前記循環ポンプ、ラジエータ及びファンユニットは、前記筐体に収納され、ユニット化されていることを特徴とする請求項4に記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項9】
前記X線管ユニットの内部を流れる前記水系冷却液の温度を検出する温度検出器をさらに備えたことを特徴とする請求項1乃至8の何れか1項に記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項10】
前記水系冷却液は予め脱気されていることを特徴とする請求項1乃至9の何れか1項に記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項11】
前記回転架台を回転させる駆動部と、
前記駆動部、循環ポンプ、X線管ユニット及びX線検出器を制御し、前記温度検出器で検出した前記水系冷却液の温度の情報を取得する制御部と、をさらに備え、
前記制御部は、
前記回転架台の回転及び前記水系冷却液の循環を行いながら前記X線管ユニットから放出させたX線を前記X線検出器で検出させる撮影モードと、
前記撮影モードの後、前記X線管ユニットからのX線の放出を休止させ、前記X線管ユニットの内部を流れる前記水系冷却液の温度が所定の許容上限温度以下になるまで前記回転架台の回転及び前記水系冷却液の循環を維持させる冷却モードと、
に切替え可能であることを特徴とする請求項9に記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項12】
前記回転架台を回転させる駆動部と、
前記ガス空間に連通され、前記ガス空間のガスの圧力を調整可能な圧力調整機構と、
前記駆動部、循環ポンプ、X線管ユニット、X線検出器及び圧力調整機構を制御し、前記温度検出器で検出した前記水系冷却液の温度の情報を取得する制御部と、をさらに備え、
前記制御部は、
前記回転架台の回転及び前記水系冷却液の循環を行いながら前記X線管ユニットから放出させたX線を前記X線検出器で検出させる撮影モードと、
前記撮影モードの後、前記X線管ユニットからのX線の放出を休止させ、前記X線管ユニットの内部を流れる前記水系冷却液の温度が所定の許容上限温度以下になるまで、前記ガス空間のガスの圧力を正圧に調整し前記水系冷却液の循環を維持した状態で前記回転架台の回転を休止させる冷却モードと、
に切替え可能であることを特徴とする請求項9に記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項13】
前記所定の許容上限温度は大気圧の場合の前記水系冷却液の沸点であることを特徴とする請求項11又は12に記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項14】
ハウジングと、電子を放出する陰極、前記電子が衝突されることによりX線を放出する陽極ターゲット、並びに前記陰極及び陽極ターゲットを収納した真空外囲器を含み、前記ハウジングに収納されたX線管と、を有したX線管ユニットと、前記X線管が発生する熱の少なくとも一部が伝達される水系冷却液と、前記ハウジングに接続され、前記水系冷却液が流れる導管と、前記導管に取付けられ、前記水系冷却液を循環させ、前記X線管ユニット及び導管とともに前記水系冷却液が循環する循環路を形成する循環ポンプと、前記循環路に取付けられ、前記水系冷却液を前記循環路から外れたガス空間と隔てる弾性隔膜を有し、前記水系冷却液の体積変化を吸収するベローズ機構と、回転軸を中心に回転し、前記X線管ユニット、導管、循環ポンプ及びベローズ機構が取付けられた回転架台と、前記回転架台を回転させる駆動部と、前記回転軸に対して前記X線管ユニットの反対側に位置し、前記回転架台に取付けられ、前記X線を検出するX線検出器と、前記X線管ユニットの内部を流れる前記水系冷却液の温度を検出する温度検出器と、を備え、前記回転軸から前記弾性隔膜までの距離の平均値をR0、前記ガス空間の圧力をP0、前記ハウジングの表面の最高温度に達した状態における前記水系冷却液の飽和蒸気圧をp´、前記ハウジングをその一部に含む前記循環路までの前記回転軸からの距離の最小値をR1、前記回転軸から前記循環ポンプの前記水系冷却液の導入口までの距離の最小値をR2、前記水系冷却液の密度をρ、前記回転架台の角速度をω、とすると、
P0−p´>0.5・(R0+R1)・(R0−R1)・ρ・ω2、及び
R2>R0
であるX線コンピュータ断層撮影装置の制御方法において、
前記回転架台の回転及び前記水系冷却液の循環を行いながら前記X線管ユニットから放出させたX線を前記X線検出器で検出させて撮影を行い、
前記撮影を行った後、前記X線管ユニットからのX線の放出を休止させ、前記X線管ユニットの内部を流れる前記水系冷却液の温度が所定の許容上限温度以下になるまで前記回転架台の回転及び前記水系冷却液の循環を維持させて冷却を行う、
ことを特徴とするX線コンピュータ断層撮影装置の制御方法。
【請求項15】
ハウジングと、電子を放出する陰極、前記電子が衝突されることによりX線を放出する陽極ターゲット、並びに前記陰極及び陽極ターゲットを収納した真空外囲器を含み、前記ハウジングに収納されたX線管と、を有したX線管ユニットと、前記X線管が発生する熱の少なくとも一部が伝達される水系冷却液と、前記ハウジングに接続され、前記水系冷却液が流れる導管と、前記導管に取付けられ、前記水系冷却液を循環させ、前記X線管ユニット及び導管とともに前記水系冷却液が循環する循環路を形成する循環ポンプと、前記循環路に取付けられ、前記水系冷却液を前記循環路から外れたガス空間と隔てる弾性隔膜を有し、前記水系冷却液の体積変化を吸収するベローズ機構と、回転軸を中心に回転し、前記X線管ユニット、導管、循環ポンプ及びベローズ機構が取付けられた回転架台と、前記回転架台を回転させる駆動部と、前記回転軸に対して前記X線管ユニットの反対側に位置し、前記回転架台に取付けられ、前記X線を検出するX線検出器と、前記X線管ユニットの内部を流れる前記水系冷却液の温度を検出する温度検出器と、前記ガス空間に連通され、前記ガス空間のガスの圧力を調整可能な圧力調整機構と、を備え、前記回転軸から前記弾性隔膜までの距離の平均値をR0、前記ガス空間の圧力をP0、前記ハウジングの表面の最高温度に達した状態における前記水系冷却液の飽和蒸気圧をp´、前記ハウジングをその一部に含む前記循環路までの前記回転軸からの距離の最小値をR1、前記回転軸から前記循環ポンプの前記水系冷却液の導入口までの距離の最小値をR2、前記水系冷却液の密度をρ、前記回転架台の角速度をω、とすると、
P0−p´>0.5・(R0+R1)・(R0−R1)・ρ・ω2、及び
R2>R0
であるX線コンピュータ断層撮影装置の制御方法において、
前記回転架台の回転及び前記水系冷却液の循環を行いながら前記X線管ユニットから放出させたX線を前記X線検出器で検出させて撮影を行い、
前記撮影モードの後、前記X線管ユニットからのX線の放出を休止させ、前記X線管ユニットの内部を流れる前記水系冷却液の温度が所定の許容上限温度以下になるまで、前記ガス空間のガスの圧力を正圧に調整し前記水系冷却液の循環を維持した状態で前記回転架台の回転を休止させて冷却を行う、
ことを特徴とするX線コンピュータ断層撮影装置の制御方法。
【請求項16】
前記所定の許容上限温度は大気圧の場合の前記水系冷却液の沸点であることを特徴とする請求項14又は15に記載のX線コンピュータ断層撮影装置の制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【公開番号】特開2013−56119(P2013−56119A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−197575(P2011−197575)
【出願日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(503382542)東芝電子管デバイス株式会社 (369)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(503382542)東芝電子管デバイス株式会社 (369)
【Fターム(参考)】
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