説明

X線源用高電圧発生装置及びその輸送補助装置

【課題】本発明は、輸送時にタンク内の電気部品が電気絶縁油から露出するのを防止し、絶縁性能の低下を防止することを目的とするものである。
【解決手段】X線源用高電圧発生装置の輸送時には、タンク7に輸送補助装置が装着される。輸送補助装置は、輸送補助装置本体16を有している。輸送補助装置本体16は、通気管17と、通気管17の下端部に接続されている伸縮袋18と、通気管17の上端部に設けられているバルブコック19とを有している。通気管17の中間部には、通気管17の周囲の挿通孔9aを塞ぐ円板状のフランジ部17aが一体に設けられている。伸縮袋18は、タンク7内の電気絶縁油10内に配置されている。伸縮袋18は、空気の流入・流出により伸縮可能となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、X線管装置に高電圧の電力を供給するX線源用高電圧発生装置、及びその輸送時に使用される輸送補助装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、X線源用高電圧発生装置のタンク内に入れられている電気絶縁油は、タンク内の電気部品の温度上昇により加熱され膨張する。これに対して、自然空冷や強制空冷などで温度上昇を抑えられなかった場合、タンク内の圧力が上昇し、タンクが変形したり電気絶縁油が漏れ出したりするという不具合が生じる。このため、従来のX線源用高電圧発生装置では、電気絶縁油の体積変化を吸収するため、伸縮可能なベローズがタンク内に設けられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかし、ベローズを用いる場合、ベローズ、ベローズを保護するベローズカバー、及びそれらを取り付ける部品等をタンク毎に設ける必要があり、省スペース化の妨げになるとともに、コストが高くなる。
【0004】
これに対して、絶縁設計上問題の無い範囲でタンク内の油面上に空気層を設けるとともに、空気層を外気に連通する通気孔をタンクに設けることにより、ベローズを用いずに電気絶縁油の膨張・収縮を吸収する方法もあり、省スペース化及び低コスト化を図ることができる(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−5382号公報
【特許文献2】特開平11−339995号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記のようなタンク内に空気層を設けるタイプの従来のX線源用高電圧発生装置では、輸送時に電気絶縁油が揺れて電気部品が空気層に露出する可能性があり、絶縁性能を著しく低下させる要因となる。特に、省スペース化を図るために、回路の実装密度を上げ、タンク内いっぱいに電気部品が配置されている場合、電気絶縁油の揺れにより電気部品が露出する可能性が高くなる。
【0007】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、輸送時にタンク内の電気部品が電気絶縁油から露出するのを防止し、絶縁性能の低下を防止することができるX線源用高電圧発生装置及びその輸送補助装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係るX線源用高電圧発生装置は、油面上に空気層が形成されるように電気絶縁油が入れられるとともに、空気層を外気に連通する通気孔が設けられているタンクと、タンク内で電気絶縁油に浸漬され、X線管装置に印加する高電圧を発生する高電圧発生回路と、輸送時にタンクに装着される輸送補助装置本体を有する輸送補助装置とを備え、タンクには、輸送補助装置本体を通す挿通孔が設けられており、輸送補助装置本体は、挿通孔からタンク内に入れられて電気絶縁油に浸漬され、空気の流入・流出により伸縮可能な伸縮容器と、伸縮容器に接続されており、かつ挿通孔を通され、伸縮容器内を外気に連通する通気管と、通気管の周囲の挿通孔を塞ぐ蓋部と、通気管を開閉する開閉部とを有している。
また、この発明に係るX線源用高電圧発生装置の輸送補助装置は、油面上に空気層が形成されるように電気絶縁油が入れられるとともに、空気層を外気に連通する通気孔が設けられているタンクと、タンク内で電気絶縁油に浸漬され、X線管装置に印加する高電圧を発生する高電圧発生回路とを備えたX線源用高電圧発生装置の輸送時に用いられ、タンクに装着される輸送補助装置本体を備え、輸送補助装置本体は、タンクに設けられている挿通孔からタンク内に入れられて電気絶縁油に浸漬され、空気の流入・流出により伸縮可能な伸縮容器と、伸縮容器に接続されており、かつ挿通孔を通され、伸縮容器内を外気に連通する通気管と、通気管の周囲の挿通孔を塞ぐ蓋部と、通気管を開閉する開閉部とを有している。
【発明の効果】
【0009】
この発明のX線源用高電圧発生装置及びその輸送補助装置によれば、輸送時の電気絶縁油の油面を高くし、輸送時の揺れにより電気部品が電気絶縁油から露出するのを防止し、絶縁性能の低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】この発明の実施の形態1によるX線源用高電圧発生装置を示す回路図である。
【図2】図1のX線源用高電圧発生装置の断面図である。
【図3】図2のX線源用高電圧発生装置の輸送時の状態を示す断面図である。
【図4】この発明の実施の形態2によるX線源用高電圧発生装置の輸送時の状態を示す断面図である。
【図5】この発明の実施の形態3によるX線源用高電圧発生装置の輸送時の状態を示す断面図である。
【図6】この発明の実施の形態4によるX線源用高電圧発生装置の輸送時の状態を示す断面図である。
【図7】この発明の実施の形態5によるX線源用高電圧発生装置の輸送前の状態を一部ブロックで示す断面図である。
【図8】この発明の実施の形態6によるX線源用高電圧発生装置の輸送時の状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、この発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1によるX線源用高電圧発生装置を示す回路図である。高周波電圧を作り出すインバータ回路1には、高電圧変圧器2及び加熱変圧器3が接続されている。高電圧変圧器2は、インバータ回路1に接続された第1及び第2の一次巻線2a,2bと、第1及び第2の二次巻線2c,2dとを有している。
【0012】
二次巻線2c,2dには、第1及び第2の高電圧整流回路4a,4bが接続されている。高電圧整流回路4a,4bは、高電圧変圧器2で昇圧された高周波電圧を直流に変換する。第1の高電圧発生回路5aは、第1の一次巻線2a、第1の二次巻線2c、及び第1の高電圧整流回路4aを有している。第2の高電圧発生回路5bは、第2の一次巻線2b、第2の二次巻線2d、及び第2の高電圧整流回路4bを有している。
【0013】
高電圧整流回路4a,4b及び加熱変圧器3には、X線源であるX線管装置6が接続されている。加熱変圧器3は、X線管装置6の内部の焦点を加熱するための変圧器である。第1及び第2の高電圧発生回路5a,5b及び加熱変圧器3は、タンク(高電圧タンク)7内に実装されている。
【0014】
図2は図1のX線源用高電圧発生装置の断面図である。タンク7は、上部に開口を有するタンク本体8と、タンク本体8の開口を塞ぐ蓋9とを有している。タンク7内には、電気絶縁油10が入れられている。タンク7内の電気絶縁油10の油面上には、空気層11が形成されている。
【0015】
高電圧発生回路5a,5bは、蓋9からタンク7内に吊り下げられ、電気絶縁油10に浸漬されている。高電圧発生回路5a,5bの下面とタンク7の底面との間には、間隔が設けられている。加熱変圧器3は、高電圧発生回路5b上に配置され、電気絶縁油10に浸漬されている。
【0016】
蓋9には、X線管装置6に高電圧を印加するための出力用高電圧コネクタ12a,12bが設けられている。また、蓋9には、後述する輸送補助装置が通される円形の挿通孔9aが設けられている。挿通孔9aは、空気層11を外気に連通する通気孔を兼ねている。蓋9上には、挿通孔9aを覆う円板状のベントフィルタ13が設けられている。ベントフィルタ13は、通気を許容しつつ、電気絶縁油10の流出を阻止する。
【0017】
ベントフィルタ13は、パッキン14を介して、複数の押さえ具15により蓋9上に保持されている。パッキン14には、挿通孔9aよりも小径のパッキン孔14aが設けられている。パッキン孔14aは、挿通孔9aの中心の真上に配置されている。
【0018】
蓋9上には、押さえ具15を貫通する複数のスタッドボルト(図示せず)が立設されており、各スタッドボルトには、押さえ具15を固定するためのナット(図示せず)が螺着されている。押さえ具15を蓋9上に固定することにより、パッキン14の外周部が蓋9上に押し付けられ、これによりパッキン14及びベントフィルタ13が蓋9上に保持されている。また、パッキン14の外周部の下面は、蓋9の上面に密着されている。
【0019】
このようなX線源用高電圧発生装置では、挿通孔9a及びパッキン14を通して空気層11の空気を出し入れすることにより、ベローズを用いずに、温度変化による電気絶縁油10の膨張・収縮が吸収される。
【0020】
ここで、空気層11の体積が小さいと、電気絶縁油10が高温で膨張したときに、油漏れが生じたりタンク7が変形したりする原因となる。逆に、空気層11の体積が大きいと、電気絶縁油10が低温で収縮したときに、加熱変圧器3が空気層11に露出し、絶縁不良を起こす原因となる。
【0021】
このため、使用温度及び保管管理温度の上限値を電気絶縁油10の体積がタンク7の容積(電気部品を除く)と同じくらいになるように設定し、下限値を加熱変圧器3に対して絶縁距離が十分に確保できる油面高さとなるように設定するのが好ましい。
【0022】
次に、図3は図2のX線源用高電圧発生装置の輸送時の状態を示す断面図である。X線源用高電圧発生装置の輸送時には、タンク7に輸送補助装置が装着される。輸送補助装置は、輸送補助装置本体16を有している。輸送補助装置本体16は、X線源用高電圧発生装置の輸送時に、ベントフィルタ13の代わりに、蓋9に取り付けられる。また、輸送補助装置本体16は、通気管17と、通気管17の下端部に接続されている伸縮袋(伸縮容器)18と、通気管17の上端部に設けられているバルブコック(開閉部)19とを有している。
【0023】
通気管17の中間部には、通気管17の周囲の挿通孔9aを塞ぐ円板状のフランジ部(蓋部)17aが一体に設けられている。フランジ部17aは、ベントフィルタ13と同様に、パッキン14を介して押さえ具15により蓋9上に保持されている。通気管17は、伸縮袋18内を外気に連通する。
【0024】
伸縮袋18は、タンク7内の電気絶縁油10内に配置されている。伸縮袋18は、内部への空気の流入・流出により伸縮可能となっており、膨張時には球状となる。また、伸縮袋18は、風船のように素材自体が伸び縮みして体積が変化するタイプでもよいし、ビニール袋のように素材自体は伸び縮みしないタイプであってもよい。但し、電気絶縁油10に対してある程度の耐性を持つ素材を使用する必要がある。
【0025】
次に、輸送補助装置の使用方法について説明する。X線源用高電圧発生装置の出荷前、押さえ具15及びパッキン14を取り外した状態で、十分に収縮した伸縮袋18を挿通孔9aからタンク7内に挿入する。挿通孔9aの大きさは、収縮した伸縮袋18や通気管17の下端部がスムーズに通るように設定されている。
【0026】
伸縮袋18をタンク7内に挿入した後、通気管17の位置を少し横へずらして、挿通孔9aから電気絶縁油10の油面が見えるようにする。この後、バルブコック19を開き、油面を見ながらエアコンプレッサなどでバルブコック19から伸縮袋18内に空気を入れる。このとき、膨らんでくる伸縮袋18が浮力で上がって来ないように押さえる必要がある。
【0027】
空気層11が無くなるくらいに油面が上がって来たら、バルブコック19を閉じ、パッキン14及び押さえ具15を取り付けて、タンク7内及び伸縮袋18内に空気が入らないようにする。この後、バルブコック19を開き、輸送補助装置本体16の取付が完了する。
【0028】
輸送補助装置本体16を取り付けた状態では、電気絶縁油10の油面が高くなっているため、輸送時の揺れにより電気部品が電気絶縁油10から露出するのが防止される。また、輸送時に温度変化により電気絶縁油10が膨張した場合、伸縮袋18が収縮され、バルブコック19から空気が排出される。逆に、電気絶縁油10が収縮した場合、バルブコック19から空気が取り込まれ、伸縮袋18が膨らむ。
【0029】
X線源用高電圧発生装置を現地で据え付けた後、押さえ具15及びパッキン14を取り外し、輸送補助装置本体16をタンク7から引き抜く。このとき、バルブコック19を開けたまま輸送補助装置本体16を引っ張り出せば、伸縮袋18は空気を排出しながら萎むので、容易に取り出すことができる。この後、ベントフィルタ13、パッキン14及び押さえ具15を図2のように蓋9上に取り付けることにより、X線源用高電圧発生装置の使用が可能となる。
【0030】
このようなX線源用高電圧発生装置では、輸送時に、伸縮袋18を有する輸送補助装置本体16をタンク7に取り付けることにより、タンク7内の電気部品が電気絶縁油10から露出するのを防止し、絶縁性能の低下を防止することができる。
【0031】
また、輸送補助装置本体16は、据付後には撤去され、他のX線源用高電圧発生装置の輸送時に繰り返し使用可能であるため、経済的である。このため、X線源用高電圧発生装置の省スペース化を図ることができるとともに、X線源用高電圧発生装置を安価に構成することができる。
【0032】
さらに、挿通孔9aが通気孔を兼ねているので、タンク7の構成を簡素化することができる。
さらにまた、輸送補助装置本体16とベントフィルタ13とが、共通のパッキン14及び押さえ具15により選択的にタンク7に取り付けられるので、部品点数を少なくしてコストを低減することができる。
【0033】
実施の形態2.
次に、図4はこの発明の実施の形態2によるX線源用高電圧発生装置の輸送時の状態を示す断面図である。図において、蓋9には、タンク7の外部から電気絶縁油10の油面を監視するための円筒状の覗き孔部21が設けられている。覗き孔部21の上部には、覗き孔部21を塞ぐキャップ22が設けられている。他の構成は、実施の形態1と同様である。
【0034】
実施の形態1では、伸縮袋18をタンク7内で膨らますときに、通気管17を横へずらして電気絶縁油10が見えるようにしなければならず、浮力で浮き上がってくる伸縮袋18を押さえながら空気を送り込む作業、及び電気絶縁油10の油面が適切な位置に到達した後にパッキン14と押さえ具15とを再び取り付ける作業が手間になる。
【0035】
これに対して、実施の形態2では、輸送補助装置本体16のある位置とは別の位置に覗き孔部21が設けられているので、パッキン14及び押さえ具15により輸送補助装置本体16を蓋9に固定した状態で、油面を監視しながら伸縮袋18をエアコンプレッサなどで膨らますことができ、作業性が向上する。また、伸縮袋18を膨らませた後、覗き孔部21をキャップ22で閉じれば、タンク7に空気が出入りする箇所が無くなり、輸送時に空気層11の無い状態を維持できる。
【0036】
実施の形態3.
次に、図5はこの発明の実施の形態3によるX線源用高電圧発生装置の輸送時の状態を示す断面図である。実施の形態1、2では球状の伸縮袋18を用いたが、実施の形態3では、膨張時の形状が円錐状の伸縮袋23が用いられている。他の構成は、実施の形態2と同様である。
【0037】
実施の形態1、2で示した球状の伸縮袋18は、タンク7内のスペースを十分に確保できるのであれば特に問題は無い。しかし、絶縁設計に支障の無い範囲でタンク7をできるだけ小型化し、タンク7内のスペースが狭くなっている場合、球状に膨らんだ伸縮袋18が真下にある電気部品に干渉し易くなり、場合によっては伸縮袋18が損傷する可能性がある。
【0038】
これに対して、実施の形態3では、放射状に膨らむ球状ではなく、円錐状の伸縮袋23を用いたので、横方向に膨らむ割合増えるとともに、縦方向に膨らむ割合が減る。これにより、真下にある電気部品に伸縮袋23が干渉し難くなり、実装密度の高密度化に対応することができる。
【0039】
なお、実施の形態3では円錐状の伸縮袋23を示したが、例えば三角錐状又は四角錐状等であってもよい。但し、伸縮袋23の形状は、据え付け後に挿通孔9aを通して取り出し易い形状が望ましい。
また、タンク7内のスペースの状況によっては、例えば直方体状の伸縮袋や、より複雑な形状の伸縮袋を用いてもよいが、製造コストやタンク7内への出し入れのし易さの点からは、シンプルな形状とするのが望ましい。
さらに、異なるサイズや形状の伸縮袋を複数用意し、輸送するX線源用高電圧発生装置に応じた伸縮袋を選択して通気管17に取り付けて使用してもよい。
【0040】
実施の形態4.
次に、図6はこの発明の実施の形態4によるX線源用高電圧発生装置の輸送時の状態を示す断面図である。図において、蓋9の下部には、伸縮袋18を囲むコップ形のメッシュ状容器24が固定されている。メッシュ状容器24は、空気層11の容量に許容できる大きさで、電気絶縁材料(例えばプラスチック等)により構成されている。実施の形態4の輸送補助装置は、輸送補助装置本体16及びメッシュ状容器24を有している。他の構成は、実施の形態2と同様である。
【0041】
実施の形態3のように、タンク7内のスペースに合わせた形状の伸縮袋23を用いても、繰り返し使用することや、万一、高電圧発生部品に干渉した場合などを考慮し、伸縮袋23が破れないように伸縮袋23の厚みを大きくすることにより、信頼性をさらに向上させる方法がある。しかし、この方法では、伸縮袋23内の容積が縮小してしまうとともに、伸縮袋23の伸縮性が低下するというデメリットがある。
【0042】
これに対して、実施の形態4では、メッシュ状容器24により伸縮袋18を囲んでいる。このメッシュ状容器24は、電気絶縁油10の出入りを許容しつつ、伸縮袋18が高電圧発生部品と干渉しないようガードすることができる。これにより、伸縮袋18の厚みを薄くすることができ、伸縮袋18の容積を確保しつつ、伸縮性の低下も防止することができる。
【0043】
なお、メッシュ状容器24の形状や大きさは、タンク7内のスペースに応じて適宜設定することができる。
また、メッシュ状容器24は、球状の伸縮袋18だけではなく、あらゆる形状の伸縮袋と組み合わせて使用することができる。
【0044】
実施の形態5.
次に、図7はこの発明の実施の形態5によるX線源用高電圧発生装置の輸送前の状態を一部ブロックで示す断面図である。図において、蓋9には、油面監視機能の代わりに、油面センサ25が設けられている。油面センサ25は、油面がタンク7内の上面に達するとONする構造であればよく、浮力を利用したものを用いることができる。
【0045】
油面センサ25には、検出回路26が接続されている。検出回路26は、油面センサ25からの信号に基づいて、輸送補助装置本体16に空気を入れる際、電気絶縁油10の油面がタンク7内の上面に達したことを検出する。
【0046】
検出回路26には、制御回路27が接続されている。制御回路27には、輸送補助装置本体16に空気を送り込むエアコンプレッサ28が接続されている。制御回路27は、検出回路26からの情報に基づいて、エアコンプレッサ28を制御する。空気送込装置29は、検出回路26、制御回路27及びエアコンプレッサ28を有している。実施の形態5の輸送補助装置は、輸送補助装置本体16、メッシュ状容器24、油面センサ25及び空気送込装置29を有している。他の構成は、実施の形態4と同様である。
【0047】
実施の形態2〜4に示したように、覗き孔部21からタンク7内の油面高さを確認する場合、タンク7内が暗いため、確認が難しく、輸送補助装置本体16に空気を入れる作業を慎重に行う必要がある。
【0048】
これに対して、実施の形態5では、輸送補助装置本体16に空気を入れる作業(簡易油密化作業)を自動化することができ、生産上の安定性を維持することができる。
【0049】
なお、油面センサ25は、安価であれば、そのままタンク7に取り付けた状態で出荷してもよいし、高価であれば、輸送補助装置本体16に空気を入れてバルブコック19を閉めた後にタンク7から取り外してもよい。出荷時に油面センサ25をタンク7から取り外す場合、タンク7の油面センサ25の取付孔を封止する。
【0050】
実施の形態6.
次に、図8はこの発明の実施の形態6によるX線源用高電圧発生装置の輸送時の状態を示す断面図である。図において、タンク7には、油面高さを外部から目視確認するための油面検出器31が設けられている。油面検出器31は、下部がタンク7内に設けられ、上部がタンク7外に突出しており、電気絶縁油10の油面の上昇により浮き上がり、油面高さを知らせることができる。
【0051】
また、油面検出器31は、検出棒32と、検出棒32の下端部に固定された円板状のスポンジ(フロート部)33とを有している。スポンジ33は、電気絶縁油10の油面に浮いている。検出棒32の上部は、タンク7外に突出し露出されている。タンク7からの検出棒32の引出部には、パッキン34及びキャップ35が設けられている。
【0052】
検出棒32の上端部には、油面検出器31のタンク7内への落下を阻止する円板状のストッパ部32aが設けられている。また、検出棒32の中間部には、目盛が刻まれている。目盛は、検出棒32が最上位置にあるときに0mm(油密状態)となっており、上方向に刻まれるにつれて数字が増えていく。
【0053】
パッキン34には、輸送補助装置本体16に空気を入れているときに、検出棒32がスムーズに上動できるように、検出棒32の径よりも僅かに大きい径の孔が設けられている。但し、パッキン34の孔の径が大き過ぎると、封をするときに検出棒32との隙間を埋めるのが難しくなり、シール性が低下する。
【0054】
キャップ35のパッキン34に当たる部分は、傾斜面となっている。これにより、タンク7内の油密化作業が終わった後にキャップ35を締め付ける際、傾斜面によりパッキン34が締め付けられ、パッキン34の孔が収縮され、シール性が向上する。実施の形態6の輸送補助装置は、輸送補助装置本体16、メッシュ状容器24及び油面検出器31を有している。他の構成は、実施の形態4と同様である。
【0055】
このようなX線源用高電圧発生装置では、実施の形態5のように油密化作業を自動化したシステムに比べて、安価に構成することができ、少量生産にも適用することができる。
【0056】
また、検出棒32が上下動可能な状態で油面検出器31をタンク7に残しておくことにより、保守点検時等に油面高さを容易に確認することができる。
【0057】
なお、電気絶縁油10上に浮くフロート部は、スポンジ33に限定されるものではない。例えば、検出棒32が電気絶縁油10に浮く材料で構成されている場合、検出棒32の下部にフロート部を一体形成してもよい。
また、実施の形態1〜6では、輸送時にタンク7内を油密化したが、必ずしも完全に油密化しなくてもよい。
【符号の説明】
【0058】
5a 第1の高電圧発生回路、5b 第2の高電圧発生回路、7 タンク、9a 挿通孔(通気孔)、10 電気絶縁油、11 空気層、13 ベントフィルタ、14 パッキン、15 押さえ具、16 輸送補助装置本体、17 通気管、17a 蓋部、18,23 伸縮袋(伸縮容器)、19 バルブコック(開閉部)、21 覗き孔部、24 メッシュ状容器、25 油面センサ、29 空気送込装置、31 油面検出器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油面上に空気層が形成されるように電気絶縁油が入れられるとともに、前記空気層を外気に連通する通気孔が設けられているタンクと、
前記タンク内で前記電気絶縁油に浸漬され、X線管装置に印加する高電圧を発生する高電圧発生回路と、
輸送時に前記タンクに装着される輸送補助装置本体を有する輸送補助装置と
を備え、
前記タンクには、前記輸送補助装置本体を通す挿通孔が設けられており、
前記輸送補助装置本体は、
前記挿通孔から前記タンク内に入れられて前記電気絶縁油に浸漬され、空気の流入・流出により伸縮可能な伸縮容器と、
前記伸縮容器に接続されており、かつ前記挿通孔を通され、前記伸縮容器内を外気に連通する通気管と、
前記通気管の周囲の前記挿通孔を塞ぐ蓋部と、
前記通気管を開閉する開閉部と
を有していることを特徴とするX線源用高電圧発生装置。
【請求項2】
前記挿通孔は、前記通気孔を兼ねていることを特徴とする請求項1記載のX線源用高電圧発生装置。
【請求項3】
通気を許容しつつ、前記挿通孔からの前記電気絶縁油の流出を阻止するベントフィルタをさらに備え、
前記輸送補助装置本体と前記ベントフィルタとが、共通のパッキン及び押さえ具により選択的に前記タンクに取り付けられることを特徴とする請求項2記載のX線源用高電圧発生装置。
【請求項4】
前記タンクには、外部から前記電気絶縁油の油面を監視するための筒状の覗き孔部が設けられていることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載のX線源用高電圧発生装置。
【請求項5】
前記輸送補助装置は、前記タンクに設けられ前記電気絶縁油の油面高さに応じて信号を発生する油面センサをさらに有していることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載のX線源用高電圧発生装置。
【請求項6】
前記輸送補助装置は、前記油面センサからの信号に基づいて前記伸縮容器に空気を送り込む空気送込装置をさらに有していることを特徴とする請求項5記載のX線源用高電圧発生装置。
【請求項7】
前記輸送補助装置は、下部が前記タンク内に設けられ、上部が前記タンク外に突出しており、前記電気絶縁油の油面の上昇により浮き上がる油面検出器をさらに有していることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載のX線源用高電圧発生装置。
【請求項8】
前記輸送補助装置は、前記タンク内に設けられ前記伸縮容器を囲むメッシュ状容器をさらに有していることを特徴とする請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載のX線源用高電圧発生装置。
【請求項9】
油面上に空気層が形成されるように電気絶縁油が入れられるとともに、前記空気層を外気に連通する通気孔が設けられているタンクと、
前記タンク内で前記電気絶縁油に浸漬され、X線管装置に印加する高電圧を発生する高電圧発生回路と
を備えたX線源用高電圧発生装置の輸送時に用いられる輸送補助装置であって、
前記タンクに装着される輸送補助装置本体を備え、
前記輸送補助装置本体は、
前記タンクに設けられている挿通孔から前記タンク内に入れられて前記電気絶縁油に浸漬され、空気の流入・流出により伸縮可能な伸縮容器と、
前記伸縮容器に接続されており、かつ前記挿通孔を通され、前記伸縮容器内を外気に連通する通気管と、
前記通気管の周囲の前記挿通孔を塞ぐ蓋部と、
前記通気管を開閉する開閉部と
を有していることを特徴とするX線源用高電圧発生装置の輸送補助装置。
【請求項10】
前記タンクに設けられ、前記電気絶縁油の油面高さに応じて信号を発生する油面センサをさらに備えていることを特徴とする請求項9記載のX線源用高電圧発生装置の輸送補助装置。
【請求項11】
前記油面センサからの信号に基づいて前記伸縮容器に空気を送り込む空気送込装置をさらに備えていることを特徴とする請求項10記載のX線源用高電圧発生装置の輸送補助装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−98113(P2013−98113A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−242155(P2011−242155)
【出願日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【出願人】(000153498)株式会社日立メディコ (1,613)
【Fターム(参考)】