説明

X線画像装置

【課題】被検体の撮影又は透視を行う最中に、オペレータを介在することなく、変更するX線の照射面積に応じて、最適なX線条件に設定可能とすること。
【解決手段】X線Bを照射するX線照射手段1と、X線照射手段1のX線条件を設定するX線設定手段51と、被検体Mを透過するX線の画像を取得する画像取得手段7と、被検体Mを透過するX線の受光エリアを計測する受光エリア計測手段56と、被検体Mを透過するX線の透過光量を計測する光量計測手段57と、受光エリアを変更する受光エリア変更手段80,81と、受光エリア及び透過光量から単位エリア透過光量を算出する算出手段58と、予め設定した単位エリア最適量を記憶する記憶手段59と、X線設定手段51を制御する制御手段52とを備え、制御手段52は、受光エリアの変位に応じて、単位エリア透過光量が単位エリア最適量内になるようX線条件を設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線照射手段から被検体にX線を照射して、被検体のX線画像を取得するX線画像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
X線画像装置は、X線照射手段から被検体にX線を照射して、被検体のX線画像を取得する装置である。X線画像装置は、被検体にX線を照射して撮影を行う前に、オペレータが、照射するX線線量が大きいか小さいかを判断して、X線管電圧等のX線条件を入力設定する。この入力設定に基づいて高電圧発生部を操作して、X線照射手段の制御を行う(例えば、特許文献1)。このように、撮影前に、オペレータがX線条件を設定することで、最適な線量のX線を被検体に照射する。
【0003】
ところで、X線画像装置で撮影又は透視を行う最中に、被検体の所定部位にX線が照射されないように、照射するX線の照射面積を変更することがある。そして、オペレータは、照射面積の変更に応じて、撮影前に設定したX線条件を変更して、最適なX線線量になるように再度入力設定を行う。即ち、照射面積を小さくした場合は、それに応じてX線線量を小さくし、照射面積を大きくした場合は、X線線量を大きくする。従って、撮影中に照射面積を変更する度に、オペレータはX線条件を再度入力設定する手間を要し、また、入力ミスにより不適切な線量のX線を被検体に照射することがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−203797号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、上記した問題に鑑みて、被検体の撮影又は透視を行う最中に、オペレータを介在することなく、変更するX線の照射面積に応じて、最適なX線条件に設定可能なX線画像装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係るX線画像装置は、
X線を照射するX線照射手段と、X線照射手段のX線条件を設定するX線設定手段と、被検体を透過するX線の画像を取得する画像取得手段と、被検体を透過するX線の受光エリアを計測する受光エリア計測手段と、被検体を透過するX線の透過光量を計測する光量計測手段と、受光エリアを変更する受光エリア変更手段と、受光エリア及び透過光量から単位エリア透過光量を算出する算出手段と、予め設定した単位エリア最適量を記憶する記憶手段と、X線設定手段を制御する制御手段とを備え、
制御手段は、受光エリアの変位に応じて、単位エリア透過光量が単位エリア最適量内になるようX線条件を設定する。
【0007】
好ましくは、受光エリア変更手段は、X線照射手段から照射するX線の照射角度を変更する照射角度変更手段と、X線照射手段から照射するX線の照射野を変更するコリメータとを備え、
受光エリア計測手段は、照射角度及びコリメータの開き量に基づいて受光エリアを算出する。
【0008】
好ましくは、X線照射手段は、X線を被検体に間欠的に照射して撮影する撮影モードと、X線を被検体に連続的に照射して透視する透視モードとを備え、
単位エリア最適量は、撮影モード及び透視モードのそれぞれについて設定される。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るX線画像装置は、上記の通り、被検体を透過するX線の透過光量を計測する光量計測手段と、受光エリアを計測する受光エリア計測手段と、透過光量及び受光エリアから単位エリア透過光量を算出する算出手段と、予め設定した単位エリア最適量を記憶する記憶手段と、X線設定手段を制御する制御手段とを備える。そして、制御手段は、受光エリアの変位に応じて、単位エリア透過光量が単位エリア最適量内になるようにX線条件を設定する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】X線画像装置を示すブロック図である。
【図2】受光エリアの計測方法を説明するための図である。
【図3】受光エリアの計測方法を説明するための図である。
【図4】X線画像装置の制御方法を説明するためのフローチャート図である。
【0011】
従って、X線撮影又は透視を行う最中に、被検体の所定部位にX線が照射されないように、オペレータが被検体に照射するX線の受光エリアを変更しても、制御手段が、受光エリアの変位に応じて、単位エリア透過光量が単位エリア最適量内になるようにX線条件を設定するので、オペレータはX線条件を再度入力設定する手間がなく、また、オペレータの入力ミスにより不適切な線量のX線を被検体に照射することもない。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面に基づいて、本発明に係るX線画像装置の実施形態について説明する。
【0013】
図1は、X線画像装置を示すブロック図である。図2及び図3は、受光エリアの計測方法を説明するための図である。図4は、X線画像装置の制御方法を説明するためのフローチャート図である。
【0014】
図1の通り、X線画像装置は、X線透過材料で形成された天板4を備える。天板4に、被検体(例えば患者)Mが載せられる。X線画像装置は、被検体MにX線Bを照射するX線管(X線照射手段)1を備える。X線管1は、照射されるX線の一部を遮蔽して、照射野を規定するコリメータ2を備える。X線画像装置は、被検体Mを透過するX線を検出するX線検出器3を備える。X線検出器3は、例えば、FPD(フラットパネル型X線検出器)からなる。
【0015】
X線画像装置は、管電圧発生装置5を備える。管電圧発生装置5は、X線管1に管電圧V及び管電流Iを与える管電圧発生部50と、管電圧発生部50が与えるX線条件(管電圧V、管電流I等)を設定するX線設定部51と、を備える。X線画像装置は、画像取得部7を備える。画像取得部7は、X線検出器3で検出した透過X線の検出信号を読み取る画像読取部70と、画像読取部70からの読取データを処理して画像データを生成する画像処理部71と、画像処理部71からの画像データを格納する画像メモリ72と、画像メモリ72に接続され、X線画像を表示するモニタ72とを備える。
【0016】
X線画像装置は、X線管1を角度回転して、X線Bの照射角度を変更する照射角度変更部80を備える。照射角度変更部80は、例えば、X線管1に出力軸が連結されたパルスモーターからなる。X線画像装置は、コリメータ2を駆動して、X線の照射野を変更するコリメータ駆動部81を備える。コリメータ駆動部81は、例えば、コリメータ2を縦軸及び横軸にスライド移動するレール及びモーター等のスライド機構を備える。
【0017】
X線画像装置は、照射角度変更部80及びコリメータ駆動部81の駆動を操作するための操作部8を備える。オペレータは、モニタ73に表示されたX線画像を観察しながら、操作部8で照射角度変更部80及びコリメータ駆動部81を操作して、被検体Mの所定部位にX線Bが照射されないように、被検体Mに照射されるX線Bの位置を移動したり、被検体Mに照射されるX線Bの照射野を変更する。従って、照射角度変更部80及びコリメータ駆動部81は、被検体Mを透過するX線Bの受光エリア(受光面積)を変更できる(受光エリア変更手段)。
【0018】
高電圧発生装置5は、X線設定部51を制御して、照射するX線BのX線条件を変更設定する制御部52を備える。高電圧発生装置5は、X線管1からのX線Bの照射角度θを計測する照射角度計測部53と、コリメータ2の開き量Sを計測する照射野計測部54と、X線管1とX線検出器3との距離Lを計測する照射距離計測部55とを備える。照射角度計測部53は、例えば、照射角度変更部80のパルスモーター等に接続された角度センサーからなる。照射野計測部54は、例えば、コリメータ駆動部81のスライド機構に接続された水平位置センサーに基づいて計測する。また、照射距離計測部55は、例えば、X線管1及びX線検出器3に接続された昇降位置センサーに基づいて計測する。
【0019】
高電圧発生装置5は、被検体Mを透過するX線Bの受光エリア(受光面積)Sを計測する受光エリア計測部56を備える。受光エリア計測部56は、照射距離計測部55で求めた距離L、X線管1のX線焦点1aとコリメータ2との距離L、照射野計測部54で求めた開き量S、照射角度計測部53で求めた照射角度θに基づいて、受光エリアSを算出する。
【0020】
図2及び図3の通り、受光エリアSは、距離L、距離L、開き量S、照射角度θに基づいて、下記(1)式より算出する。図2はθ=0の場合を示す。
・ S=((L/L×S)/cosθ ・・・(1)
なお、上記(1)式は、算出速度を高速化するために近似化した式であるが、詳細に求めた式でも良い。
【0021】
高電圧発生装置5は、被検体Mを透過するX線Bの透過光量Pを計測する光量計測部57を備える。光量計測部57は、例えば、X線検出器3から取得される画素値に基づいて透過光量Pを計測する。従って、光量計測部57は、被検体Mの体厚に応じて変位する透過光量Pを実測することになる。透過光量Pは、X線CT装置ではCT値に基づいて計測することができる。
【0022】
高電圧発生装置5は、受光エリア計測部56で計測した受光エリアS、光量計測部57で計測した透過光量Pに基づいて、単位エリア透過光量Aを算出する算出部58を備える。単位エリア透過光量Aは、単位エリア当たりの透過光量であり、下記(2)式より算出する。単位エリア透過光量Aは、オペレータが操作部8を操作して変更する受光エリアSに応じて変位するので、例えば所定時間単位Δt毎にその都度算出する。
・ A=P/S ・・・(2)
【0023】
高電圧発生装置5は、予め設定した単位エリア最適量Aを記憶する記憶部59を備える。単位エリア最適量Aは、単位エリア当たりに対する被検体Mを透過するX線の最適な透過光量Pである。単位エリア最適量Aは、一義的な値でなく、所定許容範囲を有した値とすることができる。そして、単位エリア最適量Aは、X線を被検体に間欠的に照射して撮影する撮影モードと、X線を被検体に連続的に照射して透視する透視モードとによって、それぞれ異なる値が設定されている。撮影モードと透視モードとは、被検体Mに対するX線照射時間(撮影時間)が異なるから、その照射時間を考慮して、単位エリア最適量Aを設定できる。従って、撮影モード及び透視モードによって、それぞれの単位エリア最適量Aが選択される。
【0024】
高電圧発生装置5は、算出部58及び記憶部59に接続された比較部60を備える。比較部60は、算出部58で求めた単位エリア透過光量Aと、記憶部59からの単位エリア最適量Aとが入力される。そして、比較部60は、計測した単位エリア透過光量Aと単位エリア最適量Aとを比較して、下記(3)式のように、例えば所定時間単位Δt毎に光量差Aを算出する。
・ A=A−A ・・・(3)
【0025】
比較部60は、照射するX線のX線条件を変更設定する制御部52に接続されている。そして、制御部52は、光量差Aが0になるように、X線条件を所定時間単位Δt毎に変更設定して、単位エリア透過光量Aを調整する。例えば、単位エリア最適量Aが画素値600と設定されたとき、計測する単位エリア透過光量Aが画素値600になるように、X線条件を変更設定する。これにより、受光エリアSが変位する度に、オペレータを介することなく自動的に、単位受光エリアに対する被検体Mを透過するX線線量を最適なものにすることができる。
【0026】
続いて、図4に基づいて、一連のX線撮影方法について説明する。
先ず、オペレータは、記憶部59に単位エリア最適量Aを記憶する(ステップS1)。上記の通り、単位エリア最適量Aは、撮影モードと透視モードとのそれぞれ異なる値を設定できる。そして、オペレータは、操作部8を操作して、照射角度変更部80及びコリメータ駆動部81を駆動することにより、被検体Mの所定部位にX線が照射されないようにする(ステップS2)。照射角度変更部80及びコリメータ駆動部81の駆動に伴って、受光エリア計測部56は、上記(1)式に基づいて、受光エリアSを計測する(ステップS3)。さらに、光量計測部57は、被検体Mを透過するX線Bの透過光量Pを計測する(ステップS4)。
【0027】
受光エリア計測部56で求めた受光エリアSと、光量計測部57で求めた透過光量Pとに基づいて、算出部58は、上記(2)式より、単位エリア透過光量Aを算出する(ステップS5)。そして、算出部58で求めた単位エリア透過光量Aと、記憶部59に記憶した単位エリア最適量Aとに基づいて、比較部60は、上記(3)式のように、単位エリア透過光量Aと単位エリア最適量Aとの光量差Aを算出する(ステップS6)。そして、制御部52は、光量差Aが0になるように、X線設定部51のX線条件を変更設定する(ステップS7)。そして、上記ステップS2〜S7を所定単位時間Δt毎に繰り返し行うことにより、オペレータが照射角度変更部80及びコリメータ駆動部81を駆動して、受光エリアSを変更する度に、オペレータを介在することなく自動的に、最適なX線条件のX線を被検体へ照射できるので、オペレータによるX線条件の再入力設定を不要とし、入力ミスによる不適切な線量のX線を被検体に照射することがない。
【0028】
さらに、本発明に係るX線画像装置は、フィルム式のX線撮影装置に対しても適用できる。その場合、X線検出器3は、被写体Mを撮影するX線フィルムと、X線を検出するエリアセンサーとを備える。そして、エリアセンサーが、光量計測部57に接続されており、被検体Mを透過するX線の透過光量Pを計測するよう構成される。
【符号の説明】
【0029】
1 X線管(X線照射手段)
2 コリメータ
3 X線検出器
5 高電圧発生装置
7 画像取得部
51 X線設定部
52 制御部
56 受光エリア計測部
57 光量計測部
58 算出部
59 記憶部
80 照射角度変更部
81 コリメータ駆動部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線を照射するX線照射手段と、前記X線照射手段のX線条件を設定するX線設定手段と、被検体を透過するX線の画像を取得する画像取得手段と、被検体を透過するX線の受光エリアを計測する受光エリア計測手段と、被検体を透過するX線の透過光量を計測する光量計測手段と、前記受光エリアを変更する受光エリア変更手段と、前記受光エリア及び前記透過光量から単位エリア透過光量を算出する算出手段と、予め設定した単位エリア最適量を記憶する記憶手段と、前記X線設定手段を制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、前記受光エリアの変位に応じて、前記単位エリア透過光量が前記単位エリア最適量内になるよう前記X線条件を設定することを特徴とするX線画像装置。
【請求項2】
前記受光エリア変更手段は、前記X線照射手段から照射するX線の照射角度を変更する照射角度変更手段と、前記X線照射手段から照射するX線の照射野を変更するコリメータとを備え、
前記受光エリア計測手段は、前記照射角度及び前記コリメータの開き量に基づいて前記受光エリアを算出することを特徴とする請求項1に記載のX線画像装置。
【請求項3】
前記X線照射手段は、X線を被検体に間欠的に照射して撮影する撮影モードと、X線を被検体に連続的に照射して透視する透視モードとを備え、
前記単位エリア最適量は、前記撮影モード及び前記透視モードのそれぞれについて設定されることを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載のX線画像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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