説明

X線発生器及びX線装置

【課題】X線管の交換作業を容易にする。
【解決手段】内部にX線管11を収容するX線ハウジング12、前記X線管11の陽極に接続されるとともに前記X線ハウジング12の外部に露出した第1陽極端子21、及び、前記X線管11の陰極に接続されるとともに前記X線ハウジング12の外部に露出した第1陰極端子24を有するX線ユニット10と、前記X線管11に電力を供給する高電圧発生部を内部に備えた電圧ハウジング32、前記第1陽極端子21に接続及び解除可能に構成され、前記高電圧発生部31に接続されるとともに前記電圧ハウジング32の外部に露出した第2陽極端子38、及び、前記第1陰極端子に接続及び解除可能に構成され、前記高電圧発生部に接続されるとともに前記電圧ハウジング32の外部に露出した第2陰極端子41を有する電圧ユニット30と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば診断や検査等に用いられるX線管装置のX線発生器及びこのX線発生器が組み込まれたX線装置に係わるものである。
【背景技術】
【0002】
X線を発生するX線管発生器において、図7及び図8に示すように、X線管101を収容したX線管装置102と高電圧発生器103とが離間して設置された分離型のX線装置104が知られている。このような分離型のX線装置104では、X線管装置102と高電圧発生器103とは高電圧ケーブル105で接続されている。一般に、このような接続に用いられる高電圧ケーブル105は周囲との絶縁構造が必要であるため、高いコストがかかる。したがって、このような高電圧ケーブル105を不要としてコストを低減するために、例えば図9及び図10に示すように、X線管106と高電圧発生器107を一体に構成した一体型のX線発生器108が提供されている(例えば特許文献1参照)。この種の一体型のX線発生器108では、低電圧ケーブル109で接続された高電圧発生器107とX線管106とが、モノタンクと呼ばれる密閉された容器110内に収容されている。この容器110の内部は絶縁機能や冷却機能を有する絶縁油111で充填されている。
【特許文献1】特開2003−123999号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記構成の一体型のX線装置のX線発生器においては、寿命などでX線管を交換する際に、モノタンクを開放して絶縁油を抜いた状態でX線管を取り替え、X線管交換した後に、再度絶縁油を充填し、モノタンクを密閉する工程が必要となる。したがって、X線管の交換作業が煩雑となる。
【0004】
そこで、本発明は容易にX線管を交換できるX線発生器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一形態にかかるX線発生器は、内部にX線管を収容するX線ハウジング、前記X線管の陽極に接続されるとともに前記X線ハウジングの外部に露出した第1陽極端子、及び、前記X線管の陰極に接続されるとともに前記X線ハウジングの外部に露出した第1陰極端子を有するX線ユニットと、前記X線管に電力を供給する高電圧発生部を内部に備えた電圧ハウジング、前記第1陽極端子に接続及び解除可能に構成され、前記高電圧発生部に接続されるとともに前記電圧ハウジングの外部に露出した第2陽極端子、及び、前記第1陰極端子に接続及び解除可能に構成され、前記高電圧発生部に接続されるとともに前記電圧ハウジングの外部に露出した第2陰極端子を有する電圧ユニットと、を備えたことを特徴とする。
【0006】
本発明の、他の形態にかかるX線発生器は、前記X線ユニットの内部において、前記X線管の周囲に固体絶縁物を供えたことを特徴とする。
【0007】
本発明の、他の形態にかかるX線発生器は、前記第1陽極端子、第1陰極端子、第2陽極端子及び前記第2陰極端子の周囲に、弾性変形可能な第1弾性絶縁部及び第2弾性絶縁部が形成され、前記第1陽極端子と前記第2陽極端子とが接続され、前記第1陰極端子と前記第2陰極端子とが接続される接続状態において、前記弾性絶縁部が互いに密着されることを特徴とする。
【0008】
本発明の、他の形態にかかるX線発生器は、前記X線管の陽極に接続された放熱機構を有することを特徴とする。
【0009】
本発明の、他の形態にかかるX線発生器は、周囲に固体絶縁物を供えたことを特徴とする。
【0010】
本発明の、他の形態にかかるX線装置は、上記のX線発生器と、X線検出器とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、X線管の交換作業を容易にすることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態について、図1乃至図3を参照して説明する。なお、各図において構成を適宜拡大、縮小、省略して示している。
図1は、本実施形態にかかるX線装置1を模式的に示している。X線装置1は診断や検査に用いられる医用画像診断装置であり、支持部2、この支持部2に支持されたX線発生器3、及び検出器4を備えている。支持部2は前後上下方向の往復動、回転、及び首振り可能であり、例えばC字形状をしたアーム5を備えている。アーム5の両端に夫々設けられたX線発生器3と検出器4は、アーム5の移動に伴って被検査体6の周囲において移動可能となっている。
【0013】
X線発生器3は、内部にX線管11を備えるX線ユニット10、及び内部に高電圧発生部31を備える高電圧ユニット30を備えて構成されている。
【0014】
図2に示されるX線ユニット10は、X線ハウジング12と、このX線ハウジング12の内部に収容されたX線管11、コリメータ(不図示)などを備えている。X線ハウジング12の長手方向中央部分には、X線が放射される放射部13が設けられている。本実施例では放射部をハウジングの長手方向中央で示したが、放射口はいずれの方向でも良い。X線管11はガラスなどの絶縁材料と金属材料から円筒状に構成され、内部を真空気密に維持している。このX線管11の内部にターゲットとしての陽極14と、電子ビームを発生する陰極15とが設けられている。陰極15は、熱電子の放出源となるフィラメントや、電子を収束する集束電極などを備えている。陽極14及び陰極15は、夫々X線管11の内壁に絶縁支持されている。
【0015】
また、X線ハウジング12の内部におけるX線管11の周囲には、絶縁樹脂部17が構成されている。絶縁樹脂部17は、シリコン樹脂やエポキシ樹脂などの固体絶縁物で充填されている。この絶縁樹脂部17はX線管11を冷却する機能と、X線管11の陽極14と陰極15とを絶縁する機能とを兼ねている。
【0016】
X線ハウジング12の取付面となる外面12aには、陽極コネクタ18及び陰極コネクタ19が設けられている。陽極コネクタ18は、X線ハウジング12の内部において低圧ケーブル20を介して陽極14と接続された凸状の第1陽極端子21を備えている。この第1陽極端子21の周囲には弾性変形可能な樹脂材料で構成された弾性絶縁部22が設けられている。陽極コネクタ18は後述する高電圧ユニット30の高電圧ハウジング32に形成された陽極コネクタ35と着脱可能に構成されている。
【0017】
また、陰極コネクタ19は、X線ハウジング12の内部において、低圧ケーブル23を介して陰極15に接続された複数の凸状の第1陰極端子24を備えていえる。この第1陰極端子24の周囲には弾性変形可能な樹脂材料で構成された弾性絶縁部25が設けられている。陰極コネクタ19は後述する高電圧ユニット30の高電圧ハウジング32に形成された陰極コネクタ36と嵌合・解除可能に構成されている。
【0018】
高電圧ユニット30は、高電圧ハウジング32と、この高電圧ハウジング32内に収容された高電圧発生部31としての高電圧トランス33、及びフィラメント用トランス34を備え、X線管11に熱電子加速用の高電圧とフィラメント加熱用の高電圧を供給する機能を有する。高電圧発生部31の周りは、X線ユニット10と同様にシリコン樹脂やエポキシ樹脂などの固形絶縁物によって充填されて絶縁樹脂部17を構成している。
【0019】
高電圧ハウジング32の取付面となる外面32aには、陽極コネクタ35及び陰極コネクタ36が設けられている。陽極コネクタ35は、高電圧ハウジング32の内部において低圧ケーブル37を介して陽極14と接続された凹状の第2陽極端子38を備えている。この第2陽極端子38の周囲には弾性変形可能な樹脂材料で構成された弾性絶縁部39が設けられている。
【0020】
また、陰極コネクタ36は、高電圧ハウジング32の内部において、低圧ケーブル40を介して陰極15に接続された凹状の第2陰極端子41を備えている。この第2陰極端子41の周囲には弾性変形可能な樹脂材料で構成された弾性絶縁部42が設けられている。
【0021】
第1陽極端子21と第2陽極端子38及び第1陰極端子24と第2陰極端子41が接続されると陽極コネクタ18と陽極コネクタ35及び陰極コネクタ19と陰極コネクタ36が嵌合し、第1陽極端子21と第2陽極端子38及び第1陰極端子24と第2陰極端子41の接続が解除されると陽極コネクタ18,35及び陰極コネクタ19,36の嵌合が開放される。すなわち、選択的に、X線ユニット10と高電圧ユニット30とが電気的に接続されるとともに一体となる接続状態とし、あるいは、X線ユニットと高電圧発生ユニットとが分離されるとともに電気的な接続が解除される分離状態とすることが可能となっている。接続状態においては、弾性絶縁部22と弾性絶縁部39が互いに押し付けられ、弾性絶縁部25と弾性絶縁部42とが互いに押し付けられるように密着することにより、外部からの絶縁状態が確保される。陽極コネクタ18,35を介して正電位の高電圧が、陰極コネクタ19,36を介して負電位の高電圧がそれぞれ印加される。
【0022】
上記のように構成されたX線装置1では、高電圧ユニット30から端子22,24,38,41を経由してX線ユニット10に高電圧が供給される。この高電圧がX線管11の陽極14と陰極15の間に印加されることにより、陰極15のフィラメントが加熱電圧により加熱されて熱電子が放出される。この放出された熱電子が、陽極14の先端傾斜面に衝突してX線を発生する。このX線は、X線管11の放射部13から図1に示す被検査体6に対して曝射され、被検査体6を透過して検出器4に取り込まれる。
【0023】
本実施形態にかかるX線装置1は以下に掲げる効果を奏する。高電圧発生部31と陽極14、陰極15を結ぶケーブルをハウジング12,32の内部に収容し、ユニット10,30の外面の各端子で着脱することにより、ケーブルの絶縁構造が不要となるため、構成が単純で廉価なケーブルを使用することができる。したがって、X線ユニット10と高電圧ユニット30を一体とし、あるいは分離可能として、高電圧ケーブルを不要としつつ、容易にX線管11を交換することが可能となる。また、各コネクタが電気的な接続及び解除にともなって着脱されるため、X線ユニット10と高電圧ユニット30との着脱が容易となる。さらにX線ハウジング12の内部及び高電圧ハウジング32の内部を固体絶縁物から構成される絶縁樹脂部17で充填して固めたため、各コネクタの密閉構造が不要となる。したがって、コネクタを単純な構造とすることが可能であ
る。
【0024】
[第2実施形態]
次に本発明の第2実施形態に係るX線装置7について図5を参照して説明する。なお、放熱機構を備えた点以外については上記第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0025】
本実施形態にかかるX線装置7は、放熱機構としてのラジエータ43を備えている。ラジエータ43は、X線管11の外部に配置され、陽極ロッド44を介して陽極14と接続されている。陽極14で発生した熱は陽極ロッド44を伝わり、X線管11の外部のラジエータ43にて放出される。ここで、陽極接地の場合は陽極ロッド44に銅等の金属を用い、中性点接地、陰極接地の場合には陽極ロッド44に高熱伝導セラミックなどの絶縁物を用いる。本実施形態においても上述した第1実施形態にかかるX線装置1と同様の効果が得られる。さらに本実施形態のX線装置7は、ラジエータ43により、効率の良い放熱が可能となる。
【0026】
[第3実施形態]
次に本発明の第3実施形態に係るX線装置8について図6を参照して説明する。なお、X線ハウジング12や高電圧ハウジング32の外側にも樹脂を充填した以外については上記第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0027】
本実施形態にかかるX線装置8は、X線遮蔽や構造物としてのX線ハウジング12や高電圧ハウジング32の外側にも樹脂を充填した絶縁樹脂部17が構成されている。本実施形態においても上述した第1実施形態にかかるX線装置1と同様の効果が得られる。さらに本実施形態のX線装置8は、外側にも樹脂を充填することにより、容易に機能的なデザインを形成することが可能となる。
【0028】
なお、本発明は上記各実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では中性点接地としたが、陰極接地、陽極接地でも良い。また、上記実施形態でX線ユニット10の端子21,24を凸形状、高電圧ユニット30の端子38,41を凹形状としたが、逆であってもよい。また、上記実施形態ではX線ユニット10の内部及び高電圧ユニット30の内部をいずれも固体絶縁物で構成される絶縁樹脂部17で成型する構成としたが、絶縁油で充填させても良い。また、X線装置は診断や検査に用いられる医用画像診断装置としたが、工業用非破壊検査装置でもよい。この他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施可能であるのは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の第1実施形態にかかるX線装置を模式的に示す側面図。
【図2】同実施形態にかかるX線発生器を模式的に示す横断面図。
【図3】同実施形態にかかるX線発生器を模式的に示す縦断面図。
【図4】同実施形態にかかる接続端子を示す斜視図。
【図5】本発明の第2実施形態にかかるX線装置を模式的に示す縦断面図。
【図6】本発明の第3実施形態にかかるX線装置を模式的に示す縦断面図。
【図7】分離型X線発生器の一例を模式的に示す横断面図。
【図8】分離型X線発生器の一例を模式的に示す縦断面図。
【図9】一体型X線発生器の一例を模式的に示す横断面図。
【図10】一体型X線発生器の一例を模式的に示す縦断面図。
【符号の説明】
【0030】
1、7、8…X線装置、3…X線発生器、10…X線ユニット、11…X線管、12…X線ハウジング、12a…外面、14…陽極、15…陰極、17…絶縁樹脂部、18…陽極コネクタ、19…陰極コネクタ、20、23…低圧ケーブル、21…第1陽極端子、22,25…弾性絶縁部、24…第1陰極端子、30…電圧ユニット、31…高電圧発生部、32…高電圧ハウジング、32a…外面、33…高電圧トランス、34…フィラメント用トランス、35…陽極コネクタ、36…陰極コネクタ、37…低圧ケーブル、38…第2陽極端子、39…弾性絶縁部、40…低圧ケーブル、41…第2陰極端子、42…弾性絶縁部、43…ラジエータ(放熱機構)、44…陽極ロッド。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部にX線管を収容するX線ハウジング、前記X線管の陽極に接続されるとともに前記X線ハウジングの外部に露出した第1陽極端子、及び、前記X線管の陰極に接続されるとともに前記X線ハウジングの外部に露出した第1陰極端子を有するX線ユニットと、
前記X線管に電力を供給する高電圧発生部を内部に備えた電圧ハウジング、前記第1陽極端子に接続及び解除可能に構成され、前記高電圧発生部に接続されるとともに前記電圧ハウジングの外部に露出した第2陽極端子、及び、前記第1陰極端子に接続及び解除可能に構成され、前記高電圧発生部に接続されるとともに前記電圧ハウジングの外部に露出した第2陰極端子を有する電圧ユニットと、
を備えたことを特徴とするX線発生器。
【請求項2】
前記X線ユニットの内部において、前記X線管の周囲に固体絶縁物を供えたことを特徴とする請求項1記載のX線発生器。
【請求項3】
前記第1陽極端子、第1陰極端子、第2陽極端子及び前記第2陰極端子の周囲に、弾性変形可能な第1弾性絶縁部及び第2弾性絶縁部が形成され、
前記第1陽極端子と前記第2陽極端子とが接続され、前記第1陰極端子と前記第2陰極端子とが接続される接続状態において、前記弾性絶縁部が互いに密着されることを特徴とする請求項1記載のX線発生装置。
【請求項4】
前記X線管の陽極に接続された放熱機構を有することを特徴とする請求項1記載のX線発生器。
【請求項5】
前記X線発生器において、前記X線発生器の周囲に固体絶縁物を供えたことを特徴とする請求項1記載のX線発生器。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のX線発生器と、X線検出器とを備えたことを特徴とするX線装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−226783(P2008−226783A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−67282(P2007−67282)
【出願日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(503382542)東芝電子管デバイス株式会社 (369)
【Fターム(参考)】