説明

X線発生装置

【課題】冷却効率が高く、冷却ファンが不要な密封構造のX線発生装置を提供する。
【解決手段】固定アノード電極7の端部に、封入容器5を貫通して外部へ突出する電気絶縁性の第1の熱伝導部材10を接続し、それら両者の間に熱絶縁体11を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はX線発生装置に関し、詳しくは食料品や医薬品などの被検査物中の異物を検出する非破壊検査に用いられるX線発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
食料品や医薬品などの製造ラインにおいては、製品中の異物の有無について連続的な全品検査が実施されており、その手段としてX線を用いた非破壊の検査が行われている。この検査は、X線発生装置から放射されたX線を被検査物に照射して、その透過量を画像処理することにより異物を検出するものである。
【0003】
このX線発生装置は、図5に示すように、X線管球20と絶縁油21を収納し、上面にフィン状の伝熱器22と放熱器23を有する封入容器24から主に構成され、封入容器24全体を収納する金属製の筐体25を備えている。
【0004】
上記のX線発生装置においては、X線管球20の固定アノード電極26とカソード電極27間に高電圧を印加することによりX線28を外部へ放射するが、このときX線管球20に供給されたエネルギーの99%以上は熱に変化してしまう。そのため、X線管球20で発生した熱を絶縁油21と伝熱器22を介して放熱器23へ伝達し、筐体25に取り付けられた空冷ファン29により外部へ放熱するという冷却方法が取られている。
【0005】
ここで、最近の食料品や医薬品の製造ラインにおいては、主に防塵対策の観点から、冷却ファン29のない密封構造のX線発生装置の採用が要望されている。
【0006】
しかし、従来のX線発生装置では、上記のように主として絶縁油21の対流現象により熱伝達を行っているため冷却効率に限界があり、冷却ファン29の設置は必須のものとされていた。
【0007】
この冷却効率の改善については、固定アノード電極を電気絶縁性の熱伝導部材を介して封入容器内面に連結することにより冷却効率を改善する発明が特許文献1に開示されている。しかし、封入容器に伝達された熱は絶縁油にも伝わってその温度を上昇させてしまうため、冷却効率の改善効果は小さく、依然として冷却ファンが必要であり密封型のX線発生装置を提供することは困難であるという問題があった。
【特許文献1】特許第3168760号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、冷却効率が高く、冷却ファンが不要な密封構造のX線発生装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、請求項1に記載の本発明は、カソード電極と固定アノード電極とが対向して配置されたX線管球と、前記X線管球が浸漬する絶縁油と、前記X線管球と前記絶縁油とを収納する金属製の封入容器とからなるX線発生装置であって、前記固定アノード電極の端部に前記封容器を貫通して外部へ突出する第1の熱伝導部材を接続し、前記封入容器と前記第1の熱伝導部材との間に熱絶縁体を設けたことを特徴とするX線発生装置である。
【0010】
請求項2に記載の本発明は、前記第1の熱伝導部材は、窒化アルミニウム、ベリリア、炭化珪素又はアルミナのいずれか1つであることを特徴とする請求項1に記載のX線発生装置である。
【0011】
請求項3に記載の本発明は、前記第1の熱伝導部材の前記絶縁油と接触する表面は、熱絶縁性物質により覆われていることを特徴とする請求項1又は2に記載のX線発生装置である。
【0012】
請求項4に記載の本発明は、前記X線発生装置は前記封入容器を収納する筐体を備え、前記第1の熱伝導部材を第2の熱伝導部材を介して前記筐体の内面と接続したことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のX線発生装置である。
【0013】
請求項5に記載の本発明は、前記第2の熱伝導部材は、銅、アルミニウム又はヒートパイプのいずれか1つであることを特徴とする請求項4に記載のX線発生装置である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、X線管球の固定アノード電極に、封入容器を貫通して外部へ突出する第1の熱伝導部材を接続し、貫通部との間に熱絶縁体を設けたことにより、X線管球に発生する熱の冷却効率を向上させることができ、冷却ファンが不要な密封構造のX線発生装置を提供することができる。
【0015】
また、上記第1の熱伝導部材を第2の熱伝導部材を介して、封入容器全体を収納する筐体と接続したことにより、冷却効率を更に向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に、本発明に係るX線発生装置について、図面を参照して説明する。
【0017】
本発明の第1実施形態に係るX線発生装置を図1に示す。図1は、X線発生装置の構造を断面図である。
【0018】
このX線発生装置は、X線管球1と絶縁油2を収納し、上面にフィン状の伝熱器3と放熱器4を有する金属製の封入容器5から主に構成されている。
【0019】
X線管球1は、真空ガラス内に封入され対向配置された固定アノード電極7とカソード電極8を備え、それらの間に高電圧発生装置(図示せず)により高電圧を印加して、カソード電極8からの熱電子を固定アノード電極7に衝突させることにより外部へX線9を放射する。
【0020】
絶縁油2は、封入容器5内に充填されており、X線9の放射に伴い発熱するX線管球1を冷却するとともに、固定アノード電極7とカソード電極8の間、及びそれら両極と封入容器5の間を絶縁する役目を有している。
【0021】
そして、X線管球1の固定アノード電極7には、封入容器5を貫通して外部へ突出する第1の熱伝導部材10が接続されており、それら両者の間には熱絶縁体11が設けられている。この熱絶縁体11には、例えばプラスチック材料であるポリブチレンテレフタレートや、セラミックス系材料などを用いることができる。
【0022】
この第1の熱伝導部材10は、固定アノード電極7に接続するため高い電気絶縁性を有する必要があり、例えば窒化アルミニウム、ベリリア、炭化珪素又はアルミナなどを用いることができるが、取り扱いの容易さと熱伝導度の高さから窒化アルミニウムを使用することが好ましい。
【0023】
また、冷却効率を高める観点から、第1の熱伝導部材10の形状は、外部に突出する部分の表面積が大きくなるように、図1に示すように、長手方向の断面がT字状になるようにすることが望ましい。
【0024】
このような構成においては、X線管球1からのX線9の発生に伴い固定アノード電極7に生じた熱は、第1の熱伝導部材10を通じて封入容器5の外部へ直接的に導かれることにより放熱される。このとき、第1の熱伝導部材10と封入容器5との間には、熱絶縁体11が設けられているため、貫通部分からの絶縁油2の漏洩と、固定アノード電極7からの熱が封入容器5を介して絶縁油2に伝わることを防ぐことができる。
【0025】
従って、固定アノード電極7の熱を効率よく封入容器5外へ放熱することができるため、冷却効率を大幅に向上させ、かつ絶縁油の温度上昇を抑えることができる。
【0026】
また、第1の熱伝導部材10と絶縁油2が直接接触する部分から、固定アノード電極7の熱が絶縁油2に局所的に伝わり、絶縁油2の温度が上昇することを防ぐために、図2に示すように、接触部分を熱絶縁性部材12により覆うことが好ましい。
【0027】
この熱絶縁部材12の材料は熱絶縁体11と同じでよく、電気絶縁性を高めるために、図2に示すような波形の断面形状にして沿面距離を長くすることが望ましい。
【0028】
このような構成により、冷却効率をより向上させることができる。また、絶縁油2の局所的な温度上昇を抑えることができるため、その耐久性を高めることができるとともに、封入容器5内の熱平衡を均一にしてX線9の安定発生を担保することも可能である。
【0029】
本発明の第2実施形態に係るX線発生装置を図3に示す。図3は、X線発生装置の構造を断面図であり、図1と共通する部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【0030】
本X線発生装置は封入容器5全体を収納する金属製の筐体6を備えており、第1実施形態における第1の熱伝導部材10の外側に突出する部分を、第2の熱伝導部材13を介して筐体6の内面と接続したものである。
【0031】
この第2の熱伝導部材13には電気絶縁性は必要ないため、例えば銅、アルミニウムなどの極めて高い熱伝導度を有する材料を用いることができる。なお、第2の熱伝導部材13と、第1の熱伝導部材10及び筐体6内面との接合は、溶接又は機械的な固定のいずれでもよい。
【0032】
このような構成においては、固定アノード電極7に生じた熱は、第1の熱伝導部材10と第2の熱伝導部材13を介して、表面積の大きな筐体6へ伝えられることにより外部へ放熱される。
【0033】
従って、第1実施形態の場合よりも冷却効率を更に向上させることができる。
【0034】
また、第2の熱伝導部材13として、図4に示すように、ヒートパイプ14を用いることもできる。ここで、ヒートパイプ14とは、液体の蒸発と凝縮の潜熱を利用して熱伝達を行う装置を意味する。ヒートパイプ14と、第1の熱伝導部材10及び筐体6内面との接合は、直接的に機械的手段などで固定するか、あるいはヒートブロック等を介して固定してもよい。
【0035】
このような構成により、冷却効率を一層向上できるとともに、ヒートパイプ14自体が小型で設備スペースを取らず、しかも安価であるため、X線発生装置全体の小型化及び低コスト化をも図ることが可能となる。
【0036】
なお、以上の実施形態における第1及び第2の熱伝導部材の形状、大きさ及び配置などについては、X線発生装置の性能や使用環境により適宜設計変更されるものであり、図面に示す例に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の第1実施形態に係るX線発生装置の断面図である。
【図2】第1実施形態において熱絶縁性部材を設置したX線発生装置の断面図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係るX線発生装置の断面図である。
【図4】第2実施形態においてヒートパイプを用いたX線発生装置の断面図である。
【図5】従来のX線発生装置の断面図である。
【符号の説明】
【0038】
1 X線管球 2 絶縁油 3 伝熱器
4 放熱器 5 封入容器 6 筐体
7 固定アノード電極8 カソード電極 9 X線
10 第1の熱伝導部材 11 熱絶縁体12 熱絶縁性部材
13 第2の熱伝導部材 14 ヒートパイプ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
カソード電極と固定アノード電極とが対向して配置されたX線管球と、前記X線管球が浸漬する絶縁油と、前記X線管球と前記絶縁油とを収納する金属製の封入容器とからなるX線発生装置であって、前記固定アノード電極の端部に前記封入容器を貫通して外部へ突出する第1の熱伝導部材を接続し、前記封入容器と前記第1の熱伝導部材との間に熱絶縁体を設けたことを特徴とするX線発生装置。
【請求項2】
前記第1の熱伝導部材は、窒化アルミニウム、ベリリア、炭化珪素又はアルミナのいずれか1つであることを特徴とする請求項1に記載のX線発生装置。
【請求項3】
前記第1の熱伝導部材の前記絶縁油と接触する表面は、熱絶縁性物質により覆われていることを特徴とする請求項1又は2に記載のX線発生装置。
【請求項4】
前記X線発生装置は前記封入容器を収納する筐体を備え、前記第1の熱伝導部材を第2の熱伝導部材を介して前記筐体の内面と接続したことを特徴とする請求項1、2又は3に記載のX線発生装置。
【請求項5】
前記第2の熱伝導部材は、銅、アルミニウム又はヒートパイプのいずれか1つであることを特徴とする請求項4に記載のX線発生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−257995(P2007−257995A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−80661(P2006−80661)
【出願日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【出願人】(500561263)株式会社ジョブ (6)
【出願人】(000147833)株式会社イシダ (859)