説明

X線発生装置

【課題】X線を発生する際に対陰極から放出される正イオン(矢印B)が陰極に衝突して陰極の寿命に悪影響が及ぶことを防止でき、しかもそれを実現するための構成が非常に簡単であるX線発生装置を提供する。
【解決手段】電子を発生する陰極2と、円筒形状の電子衝突面を有しており電子が電子衝突面に衝突した領域がX線焦点Fとなる回転対陰極4と、陰極2から出た電子に電界Eを付与するウエネルト電極7とを有するX線発生装置である。ウエネルト電極7は、電界Eを形成する電界形成面7aと、電界形成面7aによって形成されている電子通過用の開口14とを有している。ウエネルト電極7の電界形成面7aは、X線焦点Fの中心における回転対陰極4の外周面の接線面S2に対して傾斜している。電子放出用の開口14の中心を通り電界形成面7aに直交する面S3上に陰極2の中心がある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、陰極から発生した電子を対陰極に衝突させて当該対陰極からX線を発生するX線発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のX線発生装置は、例えばX線分析装置において分析対象である試料へ照射されるX線を発生する装置である。例えば、特許文献1に開示されたX線発生装置では、陰極構体(陰極に相当)から放出される電子を陽極ターゲット(対陰極に相当)のテーパ状の側面に衝突させてX線焦点を形成し、そのX線焦点からX線を放出している。このX線発生装置においては、陽極ターゲットに電子が衝突した際に当該陽極ターゲットから正イオンが放出され、この正イオンが陰極に衝突することにより、陰極の寿命に悪影響を及ぼすおそれがある。正イオンが陰極に衝突することは、イオン衝撃と呼ばれることがある。
【0003】
また、特許文献2によれば、フィラメント(陰極に相当)をウエネルト電極に対して偏心して配置することにより、ターゲット(対陰極に相当)上での電子照射領域を偏心させ、これにより、電子照射領域から放出される正イオンがフィラメントに衝突することを防止することが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平05−013030号公報(第2〜3、図1)
【特許文献2】特開2007−115553号公報(第5頁、図7)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2に開示された上記の従来装置においては、ウエネルト電極に対するフィラメント(陰極)の設置位置を計算することが容易ではなく、さらに、ウエネルト電極をターゲット(対陰極)に対する所定位置に設置するための調整が難しいという問題があった。
【0006】
本発明は、従来装置における上記の問題点に鑑みて成されたものであって、X線を発生する際に対陰極から放出される正イオンが陰極に衝突して陰極の寿命に悪影響が及ぶことを防止でき、しかもそれを実現するための構成が非常に簡単であるX線発生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るX線発生装置は、電子を発生する陰極と、円筒形状の電子衝突面を有しており前記電子が当該電子衝突面に衝突した領域がX線焦点となる回転対陰極と、前記陰極から出た電子に電界を付与するウエネルト電極とを有しており、前記ウエネルト電極は、前記電界を形成する電界形成面と、当該電界形成面に形成されている電子通過用の開口とを有しており、前記ウエネルト電極の電界形成面は、前記X線焦点の中心における前記回転対陰極の外周面の接線面に対して傾斜していることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、ウエネルト電極の電界形成面がX線焦点の中心における回転対陰極の外周面の接線面に対して傾斜しているので、回転対陰極の外周面のX線焦点における法線面方向からずれた位置に陰極を置くことができる。こうすれば、X線焦点からX線を発生させている際に同時に回転対陰極の外周面の法線方向に出射する正イオンが陰極にぶつかることを防止でき、その結果、陰極の寿命が短くなることを防止できる。
【0009】
なお、特許文献1(特開平05−013030号公報)に開示されたX線発生装置では、当該文献の図1において、陰極構体(19)の電界形成面が陽極ターゲット(11/対陰極に相当)の円筒状外周面の接線面に対して傾斜している状態が図示されている。しかしながら、この文献において、陽極ターゲット(11)の円筒状外周面にはX線焦点は形成されず、X線焦点は陽極ターゲット(11)のテーパ状の側面に形成されているので、本発明のように回転対陰極の円筒状の外周面にX線焦点が形成される構成とは、根本的に異なっている。
【0010】
本発明に係るX線発生装置においては、前記電子放出用の開口の中心を通り前記電界形成面に直交する面上に前記陰極の中心があることが望ましい。つまり、開口を形成しているウエネルト電極は陰極に対して上下又は左右で対称の位置関係にあることが望ましい。
【0011】
特許文献2(特開2007−115553号公報)に開示されたX線発生装置では陰極をウエネルト電極の中心位置から適切な距離だけずらせることにより、電子ビームの進行方向を曲げて回転対陰極の外周面上にX線焦点を形成し、これにより、X線焦点から回転対陰極の法線方向に出る正イオンが陰極にぶつからないように構成した。しかしながら、この場合には、陰極の配置位置を設計によって求めることが非常に難しく、しかも陰極の配置位置を正確に位置決めするための調整も非常に難しい。これに対し、上記のように電子放出用の開口の中心を通り電界形成面に直交する面上に陰極の中心があるように構成すれば、陰極は単にウエネルト電極の中心位置に配置するだけで良いので、設計が非常に簡単であり、陰極の設置も非常に簡単に行うことができる。
【0012】
本発明に係るX線発生装置においては、陰極から出る電子は曲がることなくウエネルト電極の電界形成面と直交する方向に直線状に進行することが望ましい。こうすれば、X線焦点の形成位置を安定させることができる。
【0013】
本発明に係るX線発生装置において、前記ウエネルト電極は、前記電子通過用の開口に近い位置に設けられた第1空間と、前記電子通過用の開口から遠い位置にあり前記第1空間につながっており当該第1空間よりも容積が小さい第2空間とを有することができる。そして、前記陰極の一部は前記第1空間内にあり、前記陰極の残りの一部は前記第2空間内にある構成とすることができる。
【0014】
本発明に係るX線発生装置において、前記第1空間と前記第2空間との境界部分の壁に第1X線遮蔽部材を取外し可能に取り付けることができ、さらに、前記X線焦点の中心における前記回転対陰極の外周面の法線が前記第1空間を通過して前記第1X線遮蔽部材と交わるように構成できる。この構成により、X線焦点からX線を発生する際に同時にX線焦点から発生する正イオンが陰極にぶつかってその陰極を劣化させることを防止できる。
このX線発生装置おいて、前記第1X線遮蔽部材はMo(モリブデン)を主成分とする金属によって形成できる。
【0015】
本発明に係るX線発生装置において、前記第2空間は第2X線遮蔽部材でふさがれており、前記X線焦点の中心における前記回転対陰極の外周面の法線は前記陰極の周囲の前記第2空間を通過して前記第2X線遮蔽部材と交わる構成とすることができる。この構成により、X線焦点からX線を発生する際に同時にX線焦点から発生する正イオンが陰極にぶつかってその陰極を劣化させることを防止できる。
この構成において、前記第2X線遮蔽部材はW(タングステン)を主成分とする金属によって形成できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ウエネルト電極の電界形成面がX線焦点の中心における回転対陰極の外周面の接線面に対して傾斜しているので、回転対陰極の外周面のX線焦点における法線面方向からずれた位置に陰極を置くことができる。こうすれば、X線焦点からX線を発生させている際に同時に回転対陰極の外周面の法線方向に出射する正イオンが陰極にぶつかることを防止でき、その結果、陰極の寿命が短くなることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係るX線発生装置の一実施形態を示す正面図である。
【図2】図1の主要部であり陰極と対陰極とが対向する部分を一部破断して拡大して示す図である。
【図3】図1の主要部であるウエネルト電極の正面図である。
【図4】回転対陰極の外周面上に形成されるX線焦点を示す斜視図である。
【図5】本発明に係るX線発生装置の他の実施形態を示す正面図である。
【図6】本発明に係るX線発生装置のさらに他の実施形態の主要部を一部破断して示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第1の実施形態)
以下、本発明に係るX線分析装置を実施形態に基づいて説明する。なお、本発明がこの実施形態に限定されないことはもちろんである。また、これ以降の説明では図面を参照するが、その図面では特徴的な部分を分かり易く示すために実際のものとは異なった比率で構成要素を示す場合がある。
【0019】
図1は、本発明に係るX線発生装置の一実施形態の正面図である。図2は図1の主要部であり陰極と対陰極とが対向する部分を一部破断して拡大して示す図である。図3は図1の主要部であるウエネルト電極(Wehnelt Electrode)の正面図である。
【0020】
図1において、本実施形態のX線発生装置1は、陰極2を備えた電子銃3と、電子銃3に対向している回転対陰極4とを有している。電子銃3はセラミックによって形成されたガイシ6の上に設けられている。
【0021】
回転対陰極4は図示しない駆動装置によって駆動されて中心軸線X0を中心として所定の速度、例えば9,000〜12,000rpmで矢印Aに示すように回転できる。回転対陰極4の外周表面は円筒形状となっている。この円筒形状の外周表面は、取り出したいX線の波長に応じた金属、例えばCu(銅)、Cr(クロム)等によって形成されている。
【0022】
電子銃3は、図2に示すように、導電性の金属によって形成されたウエネルト電極7を有しており、陰極2はそのウエネルト電極7の内部に形成された空間内に収容されている。陰極2は、図3に示すように、長さL1のコイル状のフィラメントによって形成されている。図2において、陰極2は紙面と直角の方向(すなわち紙面を貫通する方向)へ延びている。ウエネルト電極7は、周知の通り、陰極2から放出された電子に電界を付与して、電子の進行方向を制御する電極である。
【0023】
ウエネルト電極7の内部空間は、容積の大きい第1空間8と、容積の小さい第2空間9とから成っている。図3から理解されるように、第1空間8及び第2空間9は左右方向(水平方向)に長い立方体形状であり、それらの左右方向の長さL2は同じである。図2に示すように、第2空間9は回転対陰極4から見て第1空間8の後方に位置しており、第1空間8につながっている。陰極2の輪形状の断面部分の一部分は第1空間8内に有り、陰極2の残りの部分は第2空間9内にある。但し、陰極2の配置位置はこの仕様に限られない。
【0024】
第1空間8と第2空間9との境界部分で第1空間8の壁には第1X線遮蔽部材11が取外し可能に取り付けられている。また、第2空間9がウエネルト電極7の外部に開口する部分は第2X線遮蔽部材12が取外し可能に取り付けられている。第1X線遮蔽部材11は、例えばMo(モリブデン)によって形成されている。第2X線遮蔽部材12は、例えばW(タングステン)によって形成されている。
【0025】
図1において、回転対陰極4は電気的に接地されている。回転対陰極4と陰極2との間には負の電圧V1、例えばV1=45〜60kVが印加されている。陰極2とウエネルト電極7との間には負の電圧V2、例えばV2=200Vが印加されている。陰極2とウエネルト電極7との間に電圧V2が印加されると、陰極2とウエネルト電極7との間に図2に模式的に示す電界Eが発生する。陰極2は通電によって発熱して熱電子を放出する。放出された電子は、電界Eによって進行方向を制御されながら、電圧V1によって加速されて回転対陰極4の外周面に衝突する。こうして回転対陰極4の外周面に電子が衝突した領域がX線焦点Fであり、このX線焦点FからX線が空間の全方位に発生する。
【0026】
回転対陰極4の外周面上に形成された実際のX線焦点Fは実焦点と呼ばれる。実焦点Fの大きさは、例えば図4に模式的に示すように、陰極2の形状に対応した幅W1、長さL3の長方形状である。寸法は、例えば、W1=40μm、L3=400μmの長方形状からW1=70μm、L3=700μmの長方形状である。
【0027】
X線焦点Fから全方位に放出されたX線は、回転対陰極4の回転軸線X0と平行方向に設けられた(すなわち実焦点Fの短手側に設けられた)取出し窓13aから外部へ取り出されたり、回転軸線X0と直角方向に設けられた(すなわち実焦点Fの長手側に設けられた)取出し窓13bから外部へ取り出される。X線焦点Fに対する取出し窓13aの角度α1及びX線焦点Fに対する取出し窓13bの角度α2は、X線取出し角と呼ばれており、これらの角度は例えば角度5°〜6°である。
【0028】
実焦点端手側の窓13aから取り出されるX線についてのX線焦点、及び実焦点長手側の窓13bから取り出されるX線についてのX線焦点は、実効焦点と呼ばれている。実焦点短手側の窓13aから取り出されるX線の実効焦点の大きさは、実焦点が40×400μmであれば、40×40μmの矩形状又はφ(直径)40μmの円形状である。他方、実焦点が70×700μmであれば70×70μm又はφ70μmである。こうして取り出されたX線はポイントフォーカスのX線と呼ばれる。
【0029】
実焦点長手側の窓13bから取り出されるX線の実効焦点の大きさは、実焦点が40×400μmであれば、4×400μmの長方形状である。他方、実焦点が70×700μmであれば7×700μmの長方形状である。こうして取り出されたX線はラインフォーカスのX線と呼ばれる。ポイントフォーカス又はラインフォーカスは、X線回折装置、X線散乱装置等といったX線分析装置によって行われる測定の種類に応じて適宜に選択して使用される。
【0030】
図2において、ウエネルト電極7の先端面7aは電界Eの形成に大きく関わっている面である。本明細書ではこの面7aをウエネルト電極7の電界形成面と呼ぶことにする。この面7aは1つの平らな平面S1に含まれる面である。本明細書ではこの平面S1をウエネルト平面S1と呼ぶことがある。
【0031】
ウエネルト電極7の電界形成面7aは、陰極2から発生した電子を通過させる開口14を区画して形成している。電子はこの開口14を通過して進行する。本実施形態において、ウエネルト電極7の電界形成面7a従ってウエネルト平面S1は、回転対陰極4の外周面上のX線焦点Fの中心における回転対陰極4の外周面の接線を含む面(以下、接線面という)S2に対して角度βで傾いている。角度βは例えば角度3°である。そして、陰極2のコイル輪の中心線X1は、電子放出用の開口14の中心を通り電界形成面7a従ってウエネルト平面S1に直交する面S3内にある。
【0032】
陰極2の中心線X1をウエネルト開口14の中心面S3上に設けたことにより、陰極2から出た電子が電界Eから受ける力は常に均一であり、そのため、電子は曲がることなく直線状に進行して回転対陰極4の外周面上にX線焦点Fを形成する。
【0033】
そして、開口14を含むウエネルト面S1とX線焦点Fを通る接線面S2とが角度βで傾いていることにより、陰極2の中心線X1は、回転対陰極4の回転中心線X0とX線焦点Fの中心線を通る面(本実施形態では水平面)S4に対して距離Dだけずれた位置にある。回転対陰極4の回転中心線X0とX線焦点Fの中心線とを通る面S4は、X線焦点Fにおける回転対陰極4の外周面の接線面S2に直交する面、すなわち法線面である。
【0034】
陰極2から出た電子が回転対陰極4の外周面上でX線焦点Fを結び、そのX線焦点FからX線が放射されることは既述の通りであるが、このX線放射の際には、一般に、X線焦点Fから回転対陰極4の外周面の法線方向に沿って矢印Bで示すように正イオンが放出される。仮にこの正イオンが陰極2に衝突すると、陰極2の劣化が早くなり、陰極2の寿命が短くなるという不都合が発生する。
【0035】
これに対し、本実施形態では、陰極2を回転対陰極4の法線面S4から距離Dだけずらしてあるので、正イオンは陰極2にぶつかることなく、その周囲の第2空間9を通過して第2X線遮蔽部材12にぶつかって吸収される。これにより、正イオンとの衝突に起因して陰極2の寿命が短縮化されることを防止でき、長期間にわたって陰極2の特性を維持できる。長期間にわたる正イオンの衝突により第2X線遮蔽部材12が劣化したときには、その第2X線遮蔽部材12を別の第2X線遮蔽部材12に交換すれば良い。
【0036】
特許文献2(特開2007−115553号公報)に開示されたX線発生装置では陰極をウエネルト電極の中心位置から適切な距離だけずらせることにより、電子ビームの進行方向を曲げて回転対陰極の外周面上にX線焦点を形成し、これにより、X線焦点から回転対陰極の法線方向に出る正イオンが陰極にぶつからないように構成した。しかしながら、この場合には、陰極の配置位置を設計によって求めることが非常に難しく、しかも陰極の配置位置を正確に位置決めするための調整も非常に難しかった。
【0037】
これに対し、本実施形態では、陰極2は単にウエネルト電極7の中心位置に配置するだけで良いので、設計が非常に簡単であり、陰極の設置も非常に簡単に行うことができる。
【0038】
(第2の実施形態)
図5は、本発明に係るX線発生装置の他の実施形態を示している。上記の実施形態では図1に示したように、概ね直方体形状で先端の電界形成面7aの部分に傾斜が付けられた形状のウエネルト電極7をガイシ6の上に直立状態(直角の状態)で取り付けた。
【0039】
これに対し、本実施形態では、図5において、概ね直方体形状で先端の電界形成面7aに傾斜が付けられていない(すなわち電界形成面7aがウエネルト電極7の他の側面と平行である)形状のウエネルト電極7をガイシ6に斜めに取り付けることにより、ウエネルト平面S1と回転対陰極4の接線面S2との間に傾斜角βを形成している。
【0040】
その他の部材で図1に示した部材と同じ符号を付けて示している部材は同じ部材であり、その説明は省略する。本実施形態においても、ウエネルト平面S1と回転対陰極4の接線面S2との間に傾斜角βを設けたことにより、陰極2に正イオンが衝突することを防止でき、その結果、陰極2の寿命を長く維持できる。また、陰極2は単にウエネルト電極7の中心位置に配置するだけで良いので、設計が非常に簡単であり、陰極の設置も非常に簡単に行うことができる。
【0041】
(第3の実施形態)
図6は、本発明に係るX線発生装置のさらに他の実施形態を示している。上記の実施形態では図2に示したように、回転対陰極4のX線焦点FからX線を発生している際に回転対陰極4の外周面の法線面方向S4に同時に発生する正イオンを、ウエネルト電極7内の第1空間9をふさいでいる第2X線遮蔽部材12にぶつけて吸収するようにした。
【0042】
これに対し本実施形態では、図6に示すように、回転対陰極4のX線焦点Fの法線面方向S4へ進行する正イオンを、ウエネルト電極7内の第1空間8内の第1X線遮蔽部材11にぶつけて吸収するようにしている。長期間にわたる正イオンの衝突によって第1X線遮蔽部材11が劣化したときには、劣化した第1X線遮蔽部材11を別の第1X線遮蔽部材11に交換すれば良い。
【0043】
(その他の実施形態)
以上、好ましい実施形態を挙げて本発明を説明したが、本発明はその実施形態に限定されるものでなく、請求の範囲に記載した発明の範囲内で種々に改変できる。
例えば、陰極2は、コイル状のフィラメント限られず、LaB(ランタンヘキサボライド)等といったホウ化物によって形成された固形状の物質によって形成することもできる。
【符号の説明】
【0044】
1.X線発生装置、 2.陰極、 3.電子銃、 4.回転対陰極、 6.ガイシ、 7.ウエネルト電極、 7a.電界形成面、 8.第1空間、 9.第2空間、 11.第1X線遮蔽部材、 12.第2X線遮蔽部材、 13a,13b.X線取出し窓、 14.電子通過用開口、 B.正イオン進行方向、 E.電界、 F.X線焦点、 L1.陰極の長さ、 L2.ウエネルト内空間の長さ、 L3.X線焦点の長さ、 S1.ウエネルト平面、 S2.回転対陰極のX線焦点Fにおける接線面、 S3.ウエネルト面に直交する面、 S4.X線焦点における回転対陰極の法線面、 X0.回転対陰極の中心軸線、 X1.陰極のコイル輪の中心線、 W1.X線焦点の幅、 α1,α2.X線取出し角、 β.回転対陰極の接線面S2に対するウエネルト平面S1の傾斜角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子を発生する陰極と、
円筒形状の電子衝突面を有しており前記電子が当該電子衝突面に衝突した領域がX線焦点となる回転対陰極と、
前記陰極から出た電子に電界を付与するウエネルト電極と、を有しており、
前記ウエネルト電極は、前記電界を形成する電界形成面と、当該電界形成面によって形成されている電子通過用の開口とを有しており、
前記ウエネルト電極の電界形成面は、前記X線焦点の中心における前記回転対陰極の外周面の接線面に対して傾斜している
ことを特徴とするX線発生装置。
【請求項2】
前記電子放出用の開口の中心を通り前記電界形成面に直交する面上に前記陰極の中心があることを特徴とする請求項1記載のX線発生装置。
【請求項3】
前記陰極から出る電子は前記ウエネルト電極の電界形成面と直交する方向に直線状に進行することを特徴とする請求項1又は請求項2記載のX線発生装置。
【請求項4】
前記ウエネルト電極は、前記電子通過用の開口に近い位置に設けられた第1空間と、前記電子通過用の開口から遠い位置にあり前記第1空間につながっており当該第1空間よりも容積が小さい第2空間とを有しており、
前記陰極の一部は前記第1空間内にあり、前記陰極の残りの一部は前記第2空間内にある
ことを特徴とする請求項1から請求項3の少なくとも1つに記載のX線発生装置。
【請求項5】
前記第1空間と前記第2空間との境界部分の壁に第1X線遮蔽部材が取外し可能に取り付けられており、
前記X線焦点の中心における前記回転対陰極の外周面の法線は前記第1空間を通過して前記第1X線遮蔽部材と交わる
ことを特徴とする請求項4記載のX線発生装置。
【請求項6】
前記第1X線遮蔽部材はモリブデンを主成分とする金属より成ることを特徴とする請求項5記載のX線発生装置。
【請求項7】
前記第2空間は第2X線遮蔽部材でふさがれており、
前記X線焦点の中心における前記回転対陰極の外周面の法線は前記陰極の周囲の前記第2空間を通過して前記第2X線遮蔽部材と交わる
ことを特徴とする請求項4記載のX線発生装置。
【請求項8】
前記第2X線遮蔽部材はタングステンを主成分とする金属より成ることを特徴とする請求項7記載のX線発生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−142114(P2012−142114A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−292602(P2010−292602)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000250339)株式会社リガク (206)