X線管のための改良型陰極構造
【課題】X線管陰極の電子放出構造体を提供する。
【解決手段】螺旋に巻かれた円筒形フィラメントとすることができ、又はリボン又は他の適切な形状で構成することができる陰極構造体を含む装置及び方法。陰極構造体は、電流の通過により又は高エネルギ電子による衝撃など他の手段により加熱することができる。陰極構造体の表面の選択された部分は、表面の非選択部分に対して変更された特性を有する。一実施形態では、変更された特性は、湾曲である。別の実施形態では、変更された特性は、作業関数である。表面の選択部分の特性を変更することにより、電子ビーム強度を増大させ、かつその幅が低減される。
【解決手段】螺旋に巻かれた円筒形フィラメントとすることができ、又はリボン又は他の適切な形状で構成することができる陰極構造体を含む装置及び方法。陰極構造体は、電流の通過により又は高エネルギ電子による衝撃など他の手段により加熱することができる。陰極構造体の表面の選択された部分は、表面の非選択部分に対して変更された特性を有する。一実施形態では、変更された特性は、湾曲である。別の実施形態では、変更された特性は、作業関数である。表面の選択部分の特性を変更することにより、電子ビーム強度を増大させ、かつその幅が低減される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、一般的に、X線管陰極の分野に関するものであり、より具体的には、X線管陰極の電子放出構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
X線管の従来のコイルフィラメントは、図1に示すように、溝内に懸垂された密な巻回螺線形を有する。コイルの縦方向の図を図2に示している。一般的に、フィラメントコイルは、管の陽極に対向しており、電界の幾何学的形状は、特に電子エネルギがまだ低いフィラメントコイル近くでは、広がる傾向があり、電子ビームの広がりをもたらし、従って、陽極に送出される電子ビームの強度が低減される。図2に示すように、陽極に対向する凸状湾曲陰極表面からのビームの広がりは、円筒形フィラメントコイルの幾何学的形状の公知の特性である。図2の広がりは、強調のために誇張されていることに注意すべきである。電子ビームの広がりは、陽極に入射する電子ビームの幅と共に増大し、電子ビームの広がりにより陽極に入射する電子ビーム内の均一性が低減されると共に、陽極に入射する電子ビームの縁部が曖昧になる。
【発明の開示】
【0003】
表面を有するX線管の陰極のために螺旋に巻かれる円筒形フィラメントの装置及び方法を説明する。一実施形態では、表面の選択部分は、円筒形フィラメントの表面の非選択部分に対して変更された特性を有する。一実施形態では、変更特性は、湾曲である。別の実施形態では、変更特性は、仕事関数である。これらの特性の変更の目的は、X線管の陽極に入射する電子ビームの鮮明度及び強度を改善することである。
【0004】
一実施形態では、湾曲は、表面の選択部分から材料を研削するか又は切り取ることにより形成することができる。別の実施形態では、湾曲は、表面の選択部分の材料を曲げ加工することにより形成することができる。
【0005】
一実施形態では、円筒形フィラメントの表面は、関連の仕事関数を有する基部フィラメント材料を有する。一実施形態では、基部フィラメント材料を有する表面の選択部分上に材料薄膜層を堆積することにより仕事関数を変更する。一実施形態では、材料薄膜層は、非選択部分の基部フィラメント材料よりも低い仕事関数を有する。別の実施形態では、仕事関数を変更する段階は、基部フィラメント材料を有する表面の非選択部分上に材料の薄膜層を堆積する段階を含む。材料薄膜層は、選択部分の基部フィラメント材料より高い仕事関数を有する。代替的に、仕事関数を変更する段階は、表面の選択部分上に第1の材料薄膜層を堆積し、かつ表面の非選択部分上に第2の材料薄膜層を堆積する段階を含む。第1の材料薄膜層は、非選択部分の第2の材料薄膜層より低い仕事関数を有する。
【0006】
本発明の更に別の特徴及び利点は、添付図面及び以下に続く詳細説明から明らかになるであろう。
【0007】
本発明の実施形態は、一例として示すものであり、添付図面の図により限定されることは意図していない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下の説明においては、本発明の徹底的な理解を達成するために、特定の材料、処理パラメータ、処理段階のような多くの特定の詳細を説明する。当業者は、主張する実施形態を実施するためにこれらの詳細に具体的に固執する必要があるというものではないことを認識するであろう。他の例においては、公知の処理段階、材料などは、本発明を曖昧なものにしないために説明を割愛する。「仕事関数」という用語は、本明細書で使用される時、金属表面から電子を除去するために必要とされる最小量のエネルギを意味する。
【0009】
陰極に対して説明する。陰極は、X線管においては、陽極と衝突した時にX線を生成するために必要とされる高エネルギまで、蓄積されている電子を放出するのに使用することができる。陰極は、本明細書で説明するように螺旋に巻線することができる円筒形フィラメントとすることができる。円筒形フィラメントは、表面を有する導電体、通常、ワイヤである。表面の機能は、電子ビームを供給することである。表面は、選択部分及び非選択部分を有することができる。以下でより詳細に説明するように、表面の選択部分は、表面の非選択部分に対して変えることができる特性を有する。
【0010】
一般的なコイル状フィラメント内の凸状湾曲により、電子ビームが拡散し、従って、陽極に送出される電子ビーム強度が低減される。一実施形態では、コイル状フィラメントの凸状湾曲は、コイル状フィラメントの電子放出面に対してより良好な幾何学的形状を達成し、電子ビームの広がりを低減して陽極に送出される電子ビーム強度を増大するためにコイル状フィラメントの上面上で実質的に平坦な又は凹状湾曲に変えることができる。輪郭に湾曲を有する表面で、陰極巻線は、電子放出面に接するエンベロープが凹状輪郭を有し、従って、電子を陽極に集束するために1次元Pierce陰極の幾何学的形状に似るように成すことができる。湾曲は、例えば、表面の選択部分内に表面の輪郭を研削、切断、又は曲げ加工することにより形成することができる。代替的に、当業者に公知の他の方法を用いて、表面の選択部分に沿って所要の湾曲を形成することができる。
【0011】
別の実施形態では、仕事関数は、例えば、材料を堆積して選択部分の少なくとも1つの上の仕事関数を変更するか、又は選択した区域を除外して非選択区域上に材料を堆積するか、又は選択部分及び非選択部分の両方に異なる仕事関数の材料を堆積することにより、フィラメント表面の明示的に選択した区域上で変更することができる。これは、表面を基部フィラメント材料と異なる複合物に変換することができる作業による達成することができる。1つのこのような作業の例は、仕事関数を低減するために、選択した区域内で制御可能な深さの表層を浸炭するためにタングステンフィラメントワイヤで行われる。他の表面修正作業を用いて仕事関数を減少又は増加するか、又はフィラメントの定められた区域における表面の挙動を他の方法で変えることができる。当業技術の当業者に公知の方法を用いて、表面の選択部分と非選択部分との仕事関数の差を変えて、選択部分が表面の非選択部分より低い仕事関数を有することを可能にすることができる。
【0012】
陰極の選択部分の幾何学的な定義は、仕事関数が低減された区域からの電子束を増大させることにより電子ビームの集束を改善するように考案することができる。供給源地が小さくなる時に、電子ビーム幅を低減することができて、ビーム縁部を鮮明にすることができ、面積が小さくなると共に縁部鮮明度が明瞭になった専有面積が陽極上で可能になる。電子ビームの小専有面積化にも関わらず、電子ビームは、高密度化が可能であり、かつ全体的なX線生成量を維持することができる。X線画像鮮明度は、一般的に、X線供給源スポットサイズで判断される。電子ビーム強度を増大させ、及び/又は電子ビーム幅を低減すると、陽極に入射する電子ビームの専有面積は、幅が減少し、均一性が増大し、かつより明確な縁部を含む。ビーム強度を増大させ、及び/又は電子ビーム幅を低減することにより、本明細書で説明するフィラメントを含むX線管は、より明瞭かつぼけが少ない画像を生成する。
【0013】
円筒形フィラメントの表面の選択部分の特性を変更することによりフィラメントの電子放出区域を定める更に別の利点は、電子ビーム強度を増大させることができると共に、別々の電気的励起を必要とすることになる更に別の集束電極がなくても、陽極でのビームのための専有面積の鮮明度及びサイズを改善することができる点にある。
【0014】
X線管は、一般的に、電子を加速させると共に、陰極フィラメントから金属陽極に向ける、衝撃によりX線が生成される電極を含む密封部材を含む。従来のX線管には、気体分子との過度の衝突なしに自由に電子を加速させることができる高真空状態を閉じ込める、通常、ガラス又はセラミック及び金属構造の密封部材が設けられている。陰極/フィラメントは、電流で加熱された時に電子を周囲に放出する。電子は、陽極へ加速され、陽極は、加速電子が当たった時にX線を生成する。一部のX線管においては、陽極は、高エネルギ電子が衝突することにより蓄積されたエネルギにより熱を広げるために回転される。X線管内側にある回転陽極は、陽極を回転するように考案された誘導電動機の回転子を含む。誘導電動機の固定子は、通常、X線管の外側に位置する。X線管エンベロープには、X線管により生成されたX線の出口を可能にするために低密度材料で製造された窓を設けることができる。窓は、出力X線ビームの境界を定めるためにより高密度な境界を有することができる。
【0015】
図3は、陰極及び陽極を有するX線管の一実施形態を示している。図3のX線管100は、陰極構造体110及び陽極120を含む。陰極構造体110は、導電性フィラメント111及びフィラメントハウジング構造体112を含むことができる。フィラメント111は、螺旋に巻かれた円筒形ワイヤとすることができる。フィラメント111は、表面を含むことができる。電流の通過により十分に加熱された時のフィラメント111は、表面から電子を放出する。次に、上述のX線管100の陰極構造体110と陽極120の間での数千ボルトから数十万ボルトの範囲の高電圧の印加から生じる陰極構造体110と陽極120の間の電界により、陽極の方向に電子が加速される。
【0016】
加速電子は、電子ビーム強度と、幅と、長さとを有する電子ビームを形成する。ビーム長は、陰極構造体110と陽極120の間の距離に依存する。ビームエネルギ及び幅は、陰極構造体110と陽極120の間に存在する電界により定められる。電子は、低エネルギでフィラメント111の表面から放出されることに注意すべきである。この状態においては、電子は、存在する電界による簡単な操作を受けやすい。特に、エネルギ低い時に、ビーム内の電子源になるように割り当てられる区域の操作のしやすさ及び幾何学的形状と、電子軌道の操作しやすさとを組み合わせることにより、本明細書で説明する方法及び構造体を用いて、電子ビームの幅を減少させることができ、かつ電子ビームの強度を増大させることができる。電子ビームの強度を増大させて幅を低減すると、陽極に入射する電子ビームの専有面積が小さくなる。
【0017】
電子ビームの制御に及ぼす影響の低下は、ビームを分岐したり又は広げたりする原因になる傾向がある電子の相互の静電気的反発にある。陰極構造体110と陽極120の間の強い電界により加速される時に、電子は、横の加速を受けなくなり、ビームは、望ましい狭い専有面積により厳密に保持することができる。
【0018】
陽極に移動する時に電子を加速させるために必要とされる高電界は、高電圧電源により設けられる。通常の電源は、商用の電力線から高電圧交流電源を達成するようになっている変圧器を含む。殆どの場合、交流電源は、真空管、半導体を問わず、高電圧整流器により整流される。尚、高電圧電源を生成する多くの代替手段が、X線生成の当業技術で公知である。整流後の高電圧の印加で、電子は、最初に迅速に高エネルギに加速される。陽極に到達すると、電子は、急激に停止される。ごく僅かの電子に対しては、非常に厳しい停止処理によりX線が生成される。X線は、電子が陽極に衝突する電子ビームの専有面積から始まる。鮮明な境界で狭いX線ビームを形成するために、専有面積は、極力小さなものであるべきであり、従って、陽極上で電子ビームの小さな専有面積を達成することが重要である。
【0019】
陽極120は、円筒形フィラメント111の表面から放出される電子を受け取るように形成することができる。陽極は、電子ビームの方向に傾斜した面を示すように配置することができる。X線は、電子ビーム専有面積の下で生成され、かつ電子衝突の集束点から等方的に分配される。垂直線から陽極面までの90°未満の角度に対しては、X線は、自由に出現する。特に、図3によれば、X線は、経路121に沿って出現する。X線が出現した時、120で入射電子ビームの幅を有する焦点は、X線の観点からは、短縮幅がビーム212として見える。電子ビームの成形は、陽極で矩形専有面積を示すように考案することができる。この構成においては、出口X線ビーム121の方向から見て電子ビーム専有面積により生成されたX線は、適切な角度で、小さな正方形のプロフィールを有するように見える。この構成に適切な角度は、一般的に、0°から20°の範囲に該当する。この幾何学的形状は、電子ビームのエネルギを受け取る区域を陽極上で広げることを可能にし、従って、陽極面の局所的加熱が低減される。1つの例示的な実施形態では、陽極の角度は、ほぼ7°である。代替的に、他の角度を用いることができる。電子ビームの専有面積は、縦軸が出力X線ビームの方向に配置された状態で矩形とすることができる。出力X線ビームの方向で見た時に、この矩形は、断面121で見えるX線の小さい方の見掛けの原点を設けるように短縮される。このような構成は、陽極120の加熱及び侵食を低減する一助になると考えられる。
【0020】
陰極構造体110のフィラメントハウジング構造体112は、フィラメント111を封入する。フィラメントハウジング構造体112は、陰極の周囲に、かつ陰極110と陽極120の間に電界を成形することができ、これは、陰極111が陽極120までの電子の経路に影響を与える可能性がある。より具体的には、フィラメントハウジング構造体112の形状は、ビームの初期の成形に影響を与える可能性がある。この成形に対して特定の言及が為される。
【0021】
上述のように、陰極は、X線管100の陰極構造体110の電子放出要素を設けるために螺旋に巻かれた円筒形ワイヤとすることができるフィラメント111を含むことができる。陰極の表面は、表面の非選択部分に対して変更された特徴を有する選択部分を有することができる。一実施形態では、表面の選択部分の変更された特徴は、表面の選択部分に沿った湾曲とすることができる。選択部分の湾曲は、実質的に凹状、平坦、又は凸状とすることができる。
【0022】
一実施形態では、円筒形フィラメント111の選択部分の特性を変更することは、X線管100の陰極構造体110内で役目をする螺旋に巻かれた円筒形フィラメントの表面を設け、円筒形フィラメントの表面の各部を選択して、選択部分から放出される電子の軌道に有利であるように選択部分の幾何学的形状的特性を変えることにより達成することができる。選択部分の特性を変更する段階は、フィラメント111の表面の選択部分に沿った凸状湾曲を実質的に平坦な又は凹状形状に変える段階を含むことができる。必要とされる幾何学的形状的変更を達成する段階の例を図4a及び図5aに示し、それぞれ、図4bの段階401から403、及び図5bの501から503に示している。凸状湾曲とは、本明細書で言及する時、表面までの巻線フィラメントタングステンのエンベロープが、陽極120に対向する円筒形フィラメント111の中心部からの凸状湾曲を有することを意味する。
【0023】
選択部分の凸状湾曲を変えることは、例えば、405aで、選択部分から材料を研削で除去することにより、段階405で、選択部分から材料を除去して実質的に凹状湾曲を形成することによって達成することができる。代替的な実施形態では、選択部分から材料を除去することは、他の方法、例えば、段階405bで選択部分から材料を切断することにより、段階405cで放電機械加工により、又は当業者に公知の他の方法、例えば、エッチングにより行うことができる。円筒形フィラメント111の選択部分の凸状湾曲を変えることは、円筒形フィラメント111を巻線螺旋に巻回する前又は後に行うことができることに注意すべきである。
【0024】
別の実施形態では(図5aを参照されたい)、選択部分の凸状湾曲を変える段階は、段階505で、材料を凸状形状から実質的に平坦な又は凹状湾曲に曲げ加工することを含むことができる。選択部分から材料を曲げ加工する段階は、段階505aで円筒形フィラメントを巻いて螺旋を形成すること、及び段階505bで選択部分の材料を変形して実質的に平坦な又は凹状湾曲に形成することを含むことができる。1つの例示的な実施形態では、選択部分の材料を曲げ加工する段階は、円筒形フィラメントを円筒形溝付きマンドレルに巻き付ける段階、及び楔部で円筒形溝付きマンドレル上の円筒形フィラメント巻線を押圧することにより選択部分の材料を変形させる段階を含む。楔部は、円筒形フィラメントコイルの選択部分を変形させて円筒形フィラメントの表面の選択部分上に実質的に平坦な又は凹状湾曲を形成する望ましい形状を有する。代替的に、選択部分から材料を曲げ加工する段階としては、当業者に公知の他の方法、例えば、段階505aで円筒形フィラメントをコイル状の螺旋に巻き付ける前に、段階505bで円筒形フィラメントの選択部分の材料を変形させることを含むことができる。
【0025】
図4aは、表面の選択部分上に凹状湾曲を有する円筒形フィラメントコイルの一実施形態の縦断面図を例示している。図4の陰極構造体110は、円筒形フィラメント411及びフィラメントハウジング構造体112を含む。円筒形フィラメント411は、非選択部分414及び選択部分415を有する表面を含む。図4aは、螺旋の軸線に沿った螺旋に巻かれた円筒形フィラメントを例示しており、従って、円筒形フィラメント411の1つのコイルの図を例示することに注意すべきである。一般的に、この成形は、円筒形フィラメント411の2つ又はそれよりも多くのコイルに拡張することができ、かつコイルの全てを含むことさえも可能である。
【0026】
上述のように、十分な温度に加熱するのに十分な電流が円筒形フィラメント411を通った時、陰極構造体110の円筒形フィラメント411は、電子ビーム413を形成する陽極120に向けて電子を放出する。この実施形態では、表面の選択部分415の変更された特性は、湾曲である。段階405で材料を選択部分415から除去した時、非選択部分414は、変更湾曲を有する部分の境界を形成する。選択部分415に沿った湾曲は、実質的に平坦又は凹状とすることができる。
【0027】
上述のように、代替的な実施形態では、材料を除去することは、段階405a及び405bで選択部分415から材料を研削して除去するか又は切断し、それぞれ、非選択部分414が望ましい曲率の領域の境界を形成することを可能にすることにより行うことができる。上述のように、円筒形フィラメント411は、付加的なコイルを含むことができ、従って、材料を除去する上述の方法は、円筒形フィラメント411の表面の付加的な選択部分415上で行うことができる。
【0028】
段階405での表面の選択部分415からの材料の除去により、選択部分415より下方にあるワイヤの断面の区域が減少すると考えられ、従って、フィラメントの局所的電流密度が増大し、それによって表面の選択部分415より下方にある区域内では電流による生成される温度が増大し、かつ表面の非選択部分414より下方にある区域では電流による生成された温度が減少する。これは、表面の選択部分415の方が、表面の非選択部分414によって放出されるよりも、そこでのより高い温度のために、より容易に電子を放出することを可能にすることができる。表面の非選択部分414及び表面より下方にある対応する区域の温度を低減すると、非選択部分414に掛かる機械的応力が低減し、従って、円筒形フィラメント411の寿命を延ばすことができる。
【0029】
例示目的上、一実施形態では、段階405での表面の選択部分415からの材料の除去により、放出面の放出面曲率半径は、円筒形フィラメントワイヤ411の直径のほぼ半分の除去により形成される。
【0030】
上述のように、フィラメントの選択部分415から材料を除去すれば、従って、局所的電流密度が高くなり、従って、局所的温度が高くなり、それによってフィラメントの非選択部分414からの電子放出における付随物の増加なく、選択部分415からの望ましいより高い電子放出が促進されることに注意すべきである。フィラメントの非選択部分414における電流密度により、それらの部分の温度が下がり、従って、上述のように、それらの部分での応力が低減され、それによってフィラメント411の寿命を延ばすことができる。
【0031】
図5aは、表面の選択部分515上に凹状湾曲を有する円筒形フィラメントコイルの別の実施形態の縦断面図を例示している。凹状湾曲は、本明細書の目的上、コイル状フィラメントのエンベロープ表面の湾曲を指す。図5aの陰極構造体110は、コイル状円筒形フィラメント511及びフィラメントハウジング構造体112を含む。円筒形フィラメント511は、非選択部分514及び選択部分515を有する表面を含む。図5aは、螺旋の軸線に沿った螺旋に巻かれた円筒形フィラメントの図を例示しており、従って、円筒形フィラメント511の1つのコイルを例示することに注意すべきである。一般的に、この成形は、円筒形フィラメント511の2つ又はそれよりも多くのコイルに拡張することができ、かつコイルの全てを含むことさえ可能である。
【0032】
上述のように、電流が円筒形フィラメント511を通った時、陰極構造体110の円筒形フィラメント511は、電子ビーム513を形成する陽極120に向けて電子を放出する。この実施形態では、表面の選択部分515の変更された特性は、エンベロープ湾曲である。段階505で選択部分515の材料を曲げ加工することにより、選択部分515は、望ましいエンベロープ湾曲を形成し、これは、選択部分515の初期の材料が無傷のままであり、単に、非選択部分514に対して位置を変えることを意味する。選択部分515に沿って形成されたエンベロープ湾曲は、実質的に平坦又は凹状とすることができる。
【0033】
上述のように、一実施形態では、段階505で選択部分の材料を曲げることは、段階505aで円筒形溝付きマンドレル上へ円筒形フィラメント511を巻き付けて、段階505bで表面の選択部分515の材料を変形させることにより、すなわち、円筒形フィラメント511の選択部分515の材料を変形させる望ましい形状を有する楔部で円筒形溝付きマンドレル上で円筒形フィラメント511を押圧することによって実行することができる。変形した材料は、円筒形フィラメントの表面の選択部分515上で実質的に平坦な又は凹状エンベロープ湾曲を有することができる。代替的に、材料を曲げ加工する他の公知の方法を、たとえば、段階505aで円筒形フィラメント511をコイル状螺旋に巻き付ける前に、段階505bで円筒形フィラメントの選択部分515の材料を変形させることを用いることができる。
【0034】
上述のように、円筒形フィラメント511は、付加的なコイルを含むことができ、従って、材料を曲げる上述の方法は、円筒形フィラメント511の表面の付加的な選択部分上で実行することができる。
【0035】
一実施形態では、段階505で表面の選択部分515の材料を曲げ加工することにより、フィラメントの選択部分515の放出面のエンベロープの曲率半径は、円筒形フィラメント511のコイルの直径の半分とすることができる。他の実施形態では、段階505における表面のフィラメント514上での適切な変形段階により、表面の選択部分515のエンベロープ面曲率半径は、この値よりも大きいか又は小さいとすることができる。
【0036】
図6は、成形された電子放出フィラメントの選択部分の逆数である放出面の曲率半径に対する電子ビームのビーム幅の関係を示す例示的なグラフである。グラフ600は、表面の選択部分の湾曲の縦座標である相対ビーム幅601が、横座標である放出面半径602に対してどのように変化するかの1つの例示的な実施形態を例示している。グラフ600においては、放出面半径602は、ミリメートルの逆数(mm-1)で表され、関連のビーム幅601は、ミリメートルで表される。放出面半径602の符号規約上、正の数は、凸状湾曲を表し、負の数は、凹状湾曲を表し、ゼロは、平坦な湾曲を表している。代替的に、当業者に公知の他の符号規約及び単位を用いることができる。ビーム幅は、X線管の全体的な幾何学的形状、並びに電子放出面の曲率に依存する。図6のビーム幅は、陽極上での専有面積で定められる。
【0037】
この例示的な実施形態において示すように、放出面の逆数半径602が正の数からゼロに減少する時に、相対ビーム幅601は減少する。同様に、逆数半径602が更にゼロから負の数に減少する時に、相対ビーム幅601は、更に減少する。この例示的な実施形態では、正の数は、凸状湾曲を表し、負の数は、凹状湾曲を表し、ゼロは、相互の平面を表している。例示として、グラフ600で表した特定の場合では、放出面逆数602が、+.763ミリメートル(.763=1/1.31)の曲率を有する時、相対ビーム幅601は、8ミリメートルの値を有し、放出面602がゼロの曲率を有する時、相対ビーム幅601は、2ミリメートルの値を有し、放出面逆数602が、−2.56ミリメートル(−2.56=l/(−.39))の曲率を有する時、相対ビーム幅601は、1.5ミリメートルの値を有する。
【0038】
上の説明の陰極構造体の幾何学的形状の影響に加えて、電子ビームの電流密度は、電子放出面の仕事関数によって影響される場合もある。図7aから図7dは、非選択部分714及び選択部分715を有する表面を含む円筒形フィラメント711の1つのコイルの実施形態を例示する縦断面図である。代替的に、円筒形フィラメント711は、円筒形フィラメント711の表面の1つ又はそれよりも多くの選択部分及び非選択部分を有することができる。論じやすいように、以下、選択部分715及び非選択部分714は、選択部分715及び非選択部分714と呼ぶ。円筒形フィラメント711は、更に別のコイルを含むことができるので、以下で説明する仕事関数を変える方法は、円筒形フィラメント711の表面の1つ又はそれよりも多くの選択部分715及び非選択部分714上で実行することができる。
【0039】
一実施形態では、円筒形フィラメント711の選択部分715の特性を変更することは、段階701でX線管100の陰極110に螺旋に巻かれた円筒形フィラメントの表面を設け、段階702で円筒形フィラメント711の表面の部分715を選択し、かつ段階703で実質的に択部分715だけから電子を放出するように選択部分715の特性を変更することにより達成することができる。選択部分715の特性を変更する段階は、段階704で円筒形フィラメントの表面の非選択部分714に対して選択部分715の作業関数を変えることを含むことができる。代替的な実施形態では、選択部分715の特性を変更する段階は、選択部分715の作業関数を変える段階、非選択部分714の作業関数を変える段階、又は円筒形フィラメント711の表面の選択部分715及び非選択部分714の作業関数を変える段階を含むことができる。
【0040】
一実施形態では、段階704でこの実施形態ではタングステンで製造された円筒形フィラメントの表面の非選択部分714に対して選択部分715の作業関数を変える段階は、以下に詳細に説明するように、段階704aで材料を堆積する段階、段階704bで材料を変換/浸炭する段階、又は段階704cで材料を変換/浸炭して材料の拡散に備える段階を含むことができる。タングステンを変換/浸炭する段階は、必要とされる場合に、タングステンを炭化タングステン(WC)又は二炭化タングステン(W2C)に化学的に変更する材料を導入する処理である。
【0041】
選択部分715が非選択部分714よりも低い作業関数を有するように、選択部分715、非選択部分714、又は選択部分及び非選択部分715及び714の両方の作業関数を変えると、表面の選択部分715から放出される電子の数を増大させることができる。選択部分715から放出される電子数が増大すると、陰極構造体110のコイル状円筒形フィラメント711から陽極120に向けて放出される電子ビームの強度を増大させることができる。選択部分715から放出される電子数の増大は、電子ビームの幅の減少により達成することができ、それによって陽極120に入射する電子ビーム専有面積の幅を低減することができる。
【0042】
1つの例示的な実施形態では、選択部分715と非選択部分714の作業関数差異は、電子ボルトのほぼ2/10(0.2eV)である。代替的に、例えば、2と4/10電子ボルト(2.4eV)を上限として、1電子ボルト(1eV)を超えるか又は下回る他の作業関数差異を用いることができる。別の例示的な実施形態では、選択部分715と非選択部分714の作業関数差異は、0.2eVから2.4eVの範囲とすることができる。代替的に、他の範囲を用いることもできる。
【0043】
図7aは、表面を有する円筒形フィラメントコイルの一実施形態の縦断面図を例示している。図7aの陰極構造体110は、円筒形フィラメント711及びフィラメントハウジング構造体112を含む。円筒形フィラメント711は、非選択部分714及び選択部分715を有する表面を含む。上述のように、電流が円筒形フィラメント711を通った時、陰極構造体110の円筒形フィラメント711は、電子ビームを形成する陽極120(図示せず)に向かった電子の出射を可能にする点まで加熱される。この実施形態では、表面の選択部分715の変更された特性は、作業関数である。
【0044】
上述のように、フィラメント711は、表面を有するX線管100の陰極構造体110内に設けられた螺旋に巻かれた円筒形フィラメントとすることができる。表面は、表面の非選択部分714に対して変更特性を有する選択部分715を有することができる。この実施形態では、表面の選択部分715の変更特性は、作業関数とすることができる。この実施形態では、更に、表面の選択部分715は、円筒形フィラメント711の表面の非選択部分714より低い作業関数を有する。
【0045】
以下でより詳細に説明するように、選択部分715が非選択部分714よりも低い作業関数を有するように仕事関数を変える段階は、選択部分715の作業関数を変える段階、非選択部分714の作業関数を変える段階、又は表面の選択部分715値及び非選択部分及び715の両方の作業関数を変える段階を含むことができる。
【0046】
図7bは、作業関数を変えるために円筒形フィラメントコイルの表面の選択部分上に堆積された材料を有する一実施形態の縦断面図を例示している。一実施形態では、段階704aで選択部分715の作業関数を変えることは、段階720で基部フィラメント材料の表面の選択部分715上に材料薄膜層715aを堆積する段階を含むことができる。
【0047】
一実施形態では、材料薄膜層715aは、タンタルであり、選択部分及び非選択部分715及び714の基部フィラメント材料は、タングステンである。タンタルは、ほぼ4.1eVの作業関数を有し、タングステンは、ほぼ4.5eVの作業関数を有し、従って、0.4eVの作業関数差分が発生する。代替的に、材料薄膜層715aが表面の非選択部分714の基部フィラメント材料より低い作業関数を有するように、当業者に公知の他の材料を材料薄膜層715a及び基部フィラメント材料に使用することができる。
【0048】
1つの例示的な実施形態では、選択部分715を被覆する材料薄膜層715aと非選択部分714との作業関数差異は、ほぼ4/10(0.4)eVである(この実施例においては、作業関数は、タングステンの場合は4.5eV、及びタンタルの場合は4.1eVである)。これは、タングステン上のTa薄膜に関するものであると考えられる。代替的に、他の作業関数差異、例えば、1eV又は1eV未満を使用することができる。別の例示的な実施形態では、選択部分715より上方の材料薄膜層715aと非選択部分714との作業関数差異は、2/10eVから1eVの範囲とすることができる。代替的に、他の範囲を使用することもできる。
【0049】
図7cは、円筒形フィラメントコイルの表面の非選択部分上に材料を堆積する段階の別の実施形態の縦断面図を例示している。一部の実施形態では、段階704aで非選択部分714の仕事関数を変える段階は、段階721で基部フィラメント材料を含む表面の非選択部分714上に材料薄膜層714aを堆積する段階を含むことができる。代替的な実施形態では、非選択部分714仕事関数を変える段階は、段階722aで基部フィラメント材料を含む表面の選択部分715及び非選択部分714上に第1の材料薄膜層714aを堆積する段階、及び段階722cで表面の選択部分715上に第1の材料薄膜層714aを堆積させ、従って、図7cに例示するのと類似の構造体をもたらす段階を含むことができ、又は非選択部分714の仕事関数を変える段階は、段階722aで表面の選択部分715及び非選択部分714上に材料薄膜層715aを堆積する段階、及び段階722cで表面の非選択部分714より上方から材料薄膜層715aを除去し、従って、図7bに例示するのと類似の構造体をもたらす段階を含むことができる。
【0050】
1つの例示的な実施形態では、材料薄膜層714aは、プラチナであり、選択部分715及び非選択部分714の基部フィラメント材料は、タングステンである。プラチナは、ほぼ5eVの仕事関数を有し、タングステンは、ほぼ4.5eVの仕事関数を有し、結果としてほぼ0.5eVの仕事関数差になる。代替的に、材料薄膜層714aが、基部フィラメント材料より高い仕事関数を有するように、当業者に公知の他の材料を材料薄膜層714a及び選択部分715及び非選択部分714の基部フィラメント材料に使用することができる。
【0051】
別の実施形態では、選択部分715と表面の非選択部分714の上の材料薄膜層714aとの仕事関数差異は、ほぼ4/10、0.4eVである(タングステン上のTaの場合)。他の仕事関数差異、例えば、1eV又は1eV未満を使用することができる。別の例示的な実施形態では、非選択部分714より上方にある材料薄膜層714aと選択部分715との仕事関数差異は、0.2eVから1eV間の範囲とすることができる。代替的に、他の範囲を使用することもできる。
【0052】
図7dは、円筒形フィラメントコイルの表面の選択部分及び非選択部分の両方の上に材料を堆積する段階の別の実施形態の縦断面図を例示している。一実施形態では、選択部分715及び非選択部分714の仕事関数を変える段階は、段階723aで基部フィラメント材料を有する表面の選択部分715上に第1の材料薄膜層715aを堆積する段階、及び段階723bで表面の非選択部分714上に第2の材料薄膜層714aを堆積する段階を含むことができる。一実施形態では、選択部分715及び非選択部分715の両方の基部フィラメント材料であるフィラメントの仕事関数を変える段階は、段階723aで表面の選択部分715上に第1の材料薄膜層715aを堆積する段階、及び段階723bで表面の非選択部分714上に第2の材料薄膜層714を堆積させる段階を含むことができる。
【0053】
1つの例示的な実施形態では、第1の材料薄膜層715aはタンタルであり、第2の材料薄膜層714aはプラチナであり、選択部分715及び非選択部分714の基部フィラメント材料はタングステンである。代替的に、第1の材料薄膜層715aが第2の材料薄膜層714aより低い仕事関数を有するように、当業者に公知の他の材料を第1の材料薄膜層715a、第2の材料薄膜層714a、及び選択部分715及び非選択部分714の基部フィラメント材料に使用することができる。
【0054】
一実施形態では、選択部分715より上方にある第1の材料薄膜層715aと非選択部分714より上方にある第2の材料薄膜層714aとの仕事関数差異は、ほぼ0.2eVである。代替的に、他の仕事関数差異、例えば、1eV又は1eV未満を使用することができる。別の例示的な実施形態では、非選択部分714より上方にある材料薄膜層714aと、選択部分715より上方にある材料薄膜層715aとの仕事関数差異は、0.2eVから1eVの範囲とすることができる。代替的に、他の範囲を使用することもできる。
【0055】
基部フィラメント材料上に材料を堆積する段階に関して本明細書で説明する方法においては、基部フィラメント材料上での堆積に使用される材料は、X線管100内での作動に関する熱要件及び物理的要件に準拠するものであるべきであることに注意すべきであり、例えば、良好な薄膜接着性がほぼ2000度ケルビンの範囲にわたって維持され、かつ堆積材料が、X線管100のフィラメントの作動温度での蒸発により、又はフィラメントの目標とする寿命終了前の円筒形フィラメント711のバルク材料への拡散により消失しないことを確実にするように適正な注意を向けるべきである。
【0056】
別の実施形態では、段階704bで選択部分715の仕事関数を変える段階は、段階730で選択部分715の基部フィラメント材料を基部フィラメント材料及び追加材料の化学化合物とすることができる第1の材料に変換する段階を含むことができる。
【0057】
好ましい電子放出区域を達成するために基部フィラメント材料を変換する段階は、段階730で表面の選択部分715の基部フィラメント材料を非浸炭基部フィラメント材料より低い仕事関数を有する第1の材料に浸炭させることによって変換する段階を含むことができる。低い方の仕事関数の好ましい区域に備える手段の一部の代替例は、以下のものである。第1の例に対しては、段階731で基部フィラメント面714の非選択部分を第1の変更材料に変換する段階であり、変更材料は、フィラメントの選択部分で露光されたままである基部フィラメント材料より高い仕事関数を有する。第2の例に対しては、段階732aで基部フィラメント面715の選択部分を第1の変更材料に変えて、段階732bで基部フィラメント面714の非選択部分を第2の変更材料に変換する段階であり、第2の変更材料は、第1の変更材料より高い仕事関数を有する。第3の例に対しては、段階733aで基部フィラメント面を第1の変更材料に変換し、第1の変更材料が、基部フィラメント材料より高い仕事関数を有する段階、及び次に段階733bで選択部分715を定める領域から第1の材料を除去する段階である。第4の例に対しては、段階733aで基部フィラメント面を第1の変更材料に変換し、第1の変更材料が、基部フィラメント材料より低い仕事関数を有する段階、及び次に段階733cで非選択部分714から変換基部フィラメント材料を除去する段階である。基部フィラメント材料は、タングステンとすることができ、選択部分715の変換化合材は、炭化タングステンWC、又は二炭化タングステンW2Cとすることができる。注意事項として、タングステンは、4.5eVの仕事関数を有し、WCは、3.6eVの仕事関数を有し、W2Cは、4.58eVの仕事関数を有する。これらの差異を利用して異なる電子放出区域を局所化することができる。タングステンの炭化物を引用しているが、表面の選択部分715の得られる変更表面の材料の方が基部フィラメント材料と比較した時に低い仕事関数を有するように、当業者に公知の他の材料を基部フィラメント材料に使用することができる。
【0058】
1つの例示的な実施形態では、段階730及び段階731で、選択部分715及び非選択部分714にわたってタングステンを炭素と化合させて、表面のそれぞれWC及びW2Cに対して化合を行うことにより、選択部分715と非選択部分714との仕事関数の差異は、結果として、ほぼ0.9eVの仕事関数差になる。代替的に、第1の材料が基部フィラメント材料より低い仕事関数を有するように、当業者に公知の他の材料を第1の材料及び基部フィラメント材料に使用することができる。
【0059】
別の例示的な実施形態では、段階731で表面の非選択部分714の仕事関数を変える段階は、非選択部分714のWをW2Cに変換する段階を含むことができる。代替的に、第1の材料が基部フィラメント材料より高い仕事関数を有するように、当業者に公知の他の材料を第1の材料及び基部フィラメント材料に使用することができる。
【0060】
別の例示的な実施形態では、段階732で選択部分715及び非選択部分714の仕事関数を変える段階は、選択部分715のWをWCに変換する段階、及び段階732bで非選択部分714のWをW2Cに変換する段階を含むことができる。代替的に、第1の材料が第2の材料より低い仕事関数を有するように、当業者に公知の他の材料を第1の材料、第2の材料、及び基部フィラメント材料に使用することができる。
【0061】
表面を1つの化合物に変換し、次に、結果として生じる材料を別の化合物に変換することにより、変換材料は、フィラメント温度範囲を通して積層剥離、蒸発、及び拡散の影響を受けなくなることが可能であることに注意すべきである。
【0062】
別の実施形態では、段階704cで選択部分715の仕事関数を変える段階は、化学的に操作することができる第1の元素を組み込む基部フィラメント材料の使用を含むことができる。例えば、タングステンフィラメント内でのトリアの導入は、第1の元素を供給することができる。反応するとタングステンに組み込まれていた酸化物を低減することができる炭化タングステンは、第1の材料としてタングステン内で生成することができる。一例においては、酸化物を組み込むタングステンフィラメントの表面の選択部分715を浸炭させることにより、段階741で第1の材料、炭化タングステンを供給して、還元後の酸化物(第2の要素)を形成するために選択部分における酸化物(第1の要素)を還元し、段階742で円筒形フィラメント711の基部フィラメント材料から生じる第2の要素を表面の選択部分715に拡散することができる。基部フィラメント材料に取り込まれた各種要素を適切に選択すると、この処理により選択部分表面までに拡散してその部分での仕事関数を変えることができる成分を達成することができる。代替的に、段階704cで選択部分715の仕事関数を変える段階は、段階750で表面の選択部分715及び非選択部分714の両方の基部フィラメント材料を第1の材料に変換する段階と、段階751で表面の非選択部分から第1の材料を除去する段階と、段階752で基部フィラメント材料の第1の要素を第2の要素に変換する段階と、段階753で円筒形フィラメント711の基部フィラメント材料に取り込まれた第2の要素を表面の選択部分715に拡散する段階と含むことができる。例えば、基部フィラメント材料は、トリア化タングステン(ごく僅かなトリアを含有するタングステン)とすることができ、第1の材料は、トリア化炭化タングステンとすることができる。代替的な実施形態では、他の基部フィラメント材料を使用することができ、選択化合物は、選択的に組み込むことができる。陰極構造体に取り込まれる化合物の例としては、タングステンに取り込まれると、トリア化タングステン、セリウム化タングステン、又はランタン化タングステンと呼ばれるフィラメントワイヤをもたらす酸化ランタンを含むことができる。尚、トリア、セリア、酸化ランタンなどを電子放出陰極に導入するための手段は、フィラメントワイヤ又は他の陰極構造体に対して機械的特性が得られるように、単純な混合以外の方法を含むことができる。例えば、ランタニドは、微量レベルの酸素が存在する状態でタングステンと適切に協働して同時スパッタリングすることができる。望ましい分布を生成する他の方法を用いることができる。
【0063】
例示的な実施形態では、基部フィラメント材料は、トリア化タングステンである。トリア化タングステンは、1%から2%のトリアを含有する。この実施形態は、段階740で、表面の選択部分715のトリア化タングステンを第1の材料、炭化タングステンに浸炭させる段階を含む。表面の選択部分715は、浸炭表面に変換されており、円筒形フィラメント711のトリア化タングステンの大半中のトリアは、段階741でトリウムに還元される。トリウムは、段階742で表面の選択部分715に拡散する。トリウムは、蒸発によって表面の選択部分715から枯渇される。蒸発したトリウムは、タングステンフィラメントに取り込まれたままのトリアがある限り、トリアの継続的な還元により、表面の選択部分715内に存在する炭化タングステンによりトリウムに連続的に置換される。
【0064】
トリアがトリウムに変換されて表面の選択部分715に拡散される速度は、選択部分715がどれだけ浸炭されたかに依存する。表面の非選択部分714は浸炭されていないために、表面の非選択部分714の領域では、その中のトリアはトリウムに変換されず、従って、表面の非選択部分714は、拡散しないトリアだけを含有する。表面の選択部分715は、表面に拡散することができるトリウムを含有し、従って、選択部分において、トリウムを含まず拡散しないトリアだけを含有する非選択部分714での仕事関数より低い仕事関数を達成する。この例示的な実施形態では、選択部分715は、ほぼ2.6eVの仕事関数を有し、従って、ほぼ1.9eVの非常に好ましい仕事関数差分が生じる。
【0065】
別の例示的な実施形態では、基部フィラメント材料は、セリウム化タングステンである。この実施形態は、段階740で表面の選択部分715のセリウム化タングステンを炭化タングステンに浸炭させる段階を含む。表面の選択部分715が浸炭表面に変換されているために、円筒形フィラメント711のセリウム化タングステンの大半中のセリアは、段階741で表面の選択部分715の表面に拡散することができるセリウム(Ce)に還元され、従って、段階742で仕事関数が変更される。セリウムは、最終的に、表面の選択部分715から蒸発するが、その大半から補充され、たとえセリウムが蒸発したとしても、浸炭タングステンは、セリウムに残っている組み込まれたセリアを還元し続けて、十分な量が、表面の選択部分715の表面に拡散して、表面の選択部分715にセリウムの安定した供給を行う。
【0066】
セリアがセリウムに変換されて表面の選択部分715に拡散する速度は、選択部分715がどれだけ浸炭されたかに依存する。表面の非選択部分714は浸炭させられていないために、表面の非選択部分714の領域では、その中のセリアはセリウムに変換されず、従って、表面の非選択部分714は、拡散しないセリアだけを含有する。表面の選択部分715はセリウムを含有するために、選択部分715は、拡散しないセリアだけを含有する非選択部分714より低い仕事関数を有する。
【0067】
別の例示的な実施形態では、基部フィラメント材料は、ランタン化タングステンである。この実施形態は、段階740で表面の選択部分715のランタン化タングステンを炭化タングステンに浸炭させる段階を含む。表面の選択部分715が浸炭表面に変換されているために、円筒形フィラメント711のランタン化タングステンの殆どの酸化ランタンは、段階742で表面の選択部分715の表面に拡散することができ、段階741でランタンに還元される。ランタンは、最終的に表面の選択部分715から蒸発する。たとえランタンが表面の選択部分715から蒸したとしても、選択部分715の浸炭表面は、円筒形フィラメント711の基部フィラメント材料の大半中の残りの酸化ランタンをランタンに還元し続け、表面の選択部分715へのランタンの安定した流れを達成する。
【0068】
酸化ランタンがランタンに変換されて表面の選択部分715に拡散する速度は、選択部分715がどれだけ浸炭されたかに依存する。表面の非選択部分714が浸炭されていないために、その中の酸化ランタンは、表面の非選択部分714の領域においてはランタンに変換されず、従って、表面の非選択部分714は、拡散しない酸化ランタンだけを含有する。表面の選択部分715はランタンを含有するために、選択部分715は、拡散しない酸化ランタンだけを含有する非選択部分714より低い仕事関数を有する。
【0069】
上述の実施形態では、選択部分715の浸炭表面は消耗されることに注意すべきである。更に、円筒形フィラメント711は、選択部分715が過度に浸炭された場合は脆すぎるものになる場合がある。この要素は、円筒形フィラメント711の寿命を決める可能性がある。
【0070】
図8は、X線管において陰極の均一な浸炭フィラメントコイルから陽極(図示せず)に向けて放出される電子ビームを示す例示的なグラフを示している。グラフ800は、フィラメントハウジング構造体112に封入された円筒形フィラメント811の概要を示している。円筒形フィラメント811は、基部フィラメント材料を有する。この例示的な実施形態では、円筒形フィラメント811の表面の選択部分715及び非選択部分714は浸炭されており。従って、同じ仕事関数を有する。上述のように、電流が円筒形フィラメント811を通過した時、陰極110の円筒形フィラメント811は、電子ビーム813を形成する陽極120(図示せず)に向けて電子を放出する。電子ビームは、光線の断面に対応する専有面積でX線管(図示せず)の陽極120に衝突する。グラフ800において例示するように、電子ビーム813が円筒形フィラメント811から遠くに進む時に、電子ビーム813の電子は広がり始め、電子ビーム813の幅を増大させ、電子ビームの強度を低減し、かつ陽極120に入射する電子ビームの専有面積の幅を増大させる。
【0071】
図9は、X線管において陰極の選択的に浸炭されたフィラメントコイルから陽極へ放出される電子ビームを示すグラフの例示的な実施形態を例示している。グラフ900は、フィラメントハウジング構造体112に封入されたコイル状円筒形フィラメント911の概要を示している。円筒形フィラメント911は、基部フィラメント材料を有する。この実施形態では、表面の選択部分715は浸炭されており、非選択部分714は浸炭されていないために、選択部分715は、表面の非選択部分714より低い仕事関数を有する。
【0072】
上述のように、電流が円筒形フィラメント911を通過した時、陰極110の円筒形フィラメント911は、電子ビーム913を形成する陽極120(図示せず)に向けて電子を放出する。電子ビーム913を図8の電子ビーム813と比較すると、電子ビーム913が円筒形フィラメント911から遠ざかる時に、電子ビーム913は、電子ビーム幅が電子ビーム813の電子ビーム幅より小さい。電子ビーム913は、図8の電子ビーム813よりも広がりの効果が小さい。陽極120に入射する電子ビーム913は、専有面積が陽極120に入射する電子ビーム813の幅よりも小さく、陽極120に入射する電子ビーム813よりも均一な電子の分布を有する。陽極120に入射する電子ビーム813は、陽極120に入射する電子ビーム813の中心に向けて高い電子密度を有することができるが、図8との関係で説明するように、電子密度分布は、広がり効果により引き起こされる陽極120に入射する電子ビーム813の縁部に接近する電子の境界が鮮明ではなく分岐している。専有面積が広がって陽極120に入射する電子ビーム813の電子の分布がこのように均一でなければ、結果として、曖昧な又はぼやけたX線像になる恐れがあり、これは、電子ビーム813が陽極120に当たった時に、電子ビーム813領域が異なると、印加する電子ビーム強度が異なるからである。
【0073】
逆に、電子ビーム913は、陽極に衝突する電子の分布が実質的に均一であり、この分布は、陽極120に入射する電子ビーム913の縁部を鮮明にし、かつ陽極120に入射する電子ビーム913内で均一なビーム強度分布を達成することができる。縁部が鮮明になり、かつ陽極120に入射する電子ビーム913内でのエネルギ分布が均一になると、陽極上の定められるスポットサイズが小さくかつ良好になり、従って、生成されるX線像はより鮮明なものになる。更に、陽極120に入射する電子ビーム913内での電子分布の均一性を増大させ、かつその縁部を鮮明化することにより、陰極構造体110は、電子ビーム強度を陽極120上の望ましい位置で最大にすることができる。この条件では、従って、陽極上での電子の専有面積は、図8の電子ビーム813の場合より幅は小さく、強度は大きく、縁部はより鮮明なものになる。
【0074】
図10は、選択的に浸炭されたフィラメントコイルから図9の陽極に放出される電子ビームの拡大図を例示している。図10のグラフ900は、フィラメントハウジング構造体112に封入されたコイル状円筒形フィラメント911の概要を示している。上述のように、この実施形態では、円筒形フィラメント911は、タングステンとすることができる基部フィラメント材料を有する。この例においては、円筒形フィラメント911の表面の選択部分715は浸炭されており、従って、選択部分715の仕事関数は、非選択部分714より低い。上述のように、電流が円筒形フィラメント911を通過した時、陰極構造体110の円筒形フィラメント911は、加熱されて、電子ビーム913を形成する陽極120(図示せず)に向けて電子を放出する。電子は、陰極110から陽極120まで進む時に、エネルギが増加することに注意すべきである。光線913の電子が加速されると、ビームが広がる傾向は、ある程度、電子の発生点に依存する。特に、フィラメントの放出面715のサイズ及び向きは、ビーム幅及びその専有面積のサイズに影響する。エネルギの増大のために、陽極120に入射する電子ビーム913の幅を決める電子ビーム913の形状は、電子ビーム913が陰極110から離れて陽極120に進む時に、電界を使用して制御することが困難になる。円筒形フィラメント911の選択部分715を浸炭させることによるか、又は他の手段による円筒形フィラメント911の放出区域の鮮明度により、陽極120に入射する電子ビーム913の形状は、無処置円筒形フィラメントの場合より正確な制御を可能にすることができる。円筒形フィラメント911の選択部分715は、周囲の区域714と比較すると、仕事関数が低いために、主としてより小さな放出区域715に放出を限定することにより、電子ビーム913の広がりを低減することができる。
尚、陰極構造体の特定の例、すなわち、コイル状円筒形フィラメントを上述したが、他の加熱形状を使用することもできる。例えば、望ましい湾曲への変形に対してより適切であると考えられるリボンフィラメントを使用することができる。更に、陰極形状の加熱は、代替的に、陰極構造体の電子衝撃のような間接的な手段によるものとすることができる。
【0075】
上述の詳細説明において、本発明の実施形態の方法及び装置は、その特定の例示的な実施形態を参照して説明した。しかし、本発明の実施形態のより広い精神及び範囲から逸脱することなく様々な修正及び変更を行うことができることは明らかであろう。更に、上述で引用した上述の材料は、フィラメントで使用される材料を表すように一例として示したものである。他の材料を使用することができることも認められるであろう。これ以外に望ましい熱的、化学的、物理的、かつ電気的パラメータを満たすあらゆる材料を使用することができる。本発明の明細書及び図は、従って、制限的ではなく例示的であると見なすものとする。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】螺旋形を有するX線管の従来のコイル状フィラメントを示す図である。
【図2】図1のコイル状フィラメントの縦断面図である。
【図3】陰極及び陽極を含むX線管の一実施形態を示す図である。
【図4a】表面の選択部分上に凹状湾曲を有する円筒形フィラメントコイルの一実施形態の縦断面図である。
【図4b】選択部分内の表面の凸状湾曲を実質的に平坦な又は凹状湾曲に変える方法の一実施形態を示す図である。
【図5a】表面の選択部分上に凹状湾曲を有する円筒形フィラメントコイルの別の実施形態の縦断面図である。
【図5b】選択部分内の表面の凸状湾曲を実質的に平坦な又は凹状湾曲に変える方法の別の実施形態を示す図である。
【図6】表面の選択部分の湾曲の放出面半径に対する相対的なビーム幅を示すグラフである。
【図7a】表面の選択部分及び非選択部分の境界を示す、円筒形フィラメントコイルの一実施形態の縦断面図である。
【図7b】円筒形フィラメントコイルの表面の選択部分上に材料を堆積する一実施形態の縦断面図である。
【図7c】円筒形フィラメントコイルの表面の非選択部分上に材料を堆積する別の実施形態の縦断面図である。
【図7d】円筒形フィラメントコイルの表面の選択部分及び非選択部分の両方上に材料を堆積する別の実施形態の縦断面図である。
【図7e】表面の非選択部分に対して選択部分の仕事関数を変える方法の一実施形態を示す図である。
【図7f】コイル状フィラメントの表面上に材料を堆積する方法の一実施形態を示す図である。
【図7g】コイル状フィラメントの表面の材料を変換/浸炭する方法の一実施形態を示す図である。
【図7h】コイル状フィラメントの表面の材料を変換/浸炭し、かつ拡散する方法の一実施形態を示す図である。
【図8】X線管において陰極の均一な浸炭フィラメントコイルから陽極に放出される電子ビームを示すグラフの例示的な実施形態を示す図である。
【図9】X線管において陰極の選択的に浸炭されたフィラメントコイルから陽極に放出される電子ビームを示すグラフの例示的な実施形態を示す図である。
【図10】図9の選択的に浸炭されたフィラメントコイルから陽極に放出される電子ビームの拡大図である。
【符号の説明】
【0077】
100 X線管
110 陰極構造体
120 陽極
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、一般的に、X線管陰極の分野に関するものであり、より具体的には、X線管陰極の電子放出構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
X線管の従来のコイルフィラメントは、図1に示すように、溝内に懸垂された密な巻回螺線形を有する。コイルの縦方向の図を図2に示している。一般的に、フィラメントコイルは、管の陽極に対向しており、電界の幾何学的形状は、特に電子エネルギがまだ低いフィラメントコイル近くでは、広がる傾向があり、電子ビームの広がりをもたらし、従って、陽極に送出される電子ビームの強度が低減される。図2に示すように、陽極に対向する凸状湾曲陰極表面からのビームの広がりは、円筒形フィラメントコイルの幾何学的形状の公知の特性である。図2の広がりは、強調のために誇張されていることに注意すべきである。電子ビームの広がりは、陽極に入射する電子ビームの幅と共に増大し、電子ビームの広がりにより陽極に入射する電子ビーム内の均一性が低減されると共に、陽極に入射する電子ビームの縁部が曖昧になる。
【発明の開示】
【0003】
表面を有するX線管の陰極のために螺旋に巻かれる円筒形フィラメントの装置及び方法を説明する。一実施形態では、表面の選択部分は、円筒形フィラメントの表面の非選択部分に対して変更された特性を有する。一実施形態では、変更特性は、湾曲である。別の実施形態では、変更特性は、仕事関数である。これらの特性の変更の目的は、X線管の陽極に入射する電子ビームの鮮明度及び強度を改善することである。
【0004】
一実施形態では、湾曲は、表面の選択部分から材料を研削するか又は切り取ることにより形成することができる。別の実施形態では、湾曲は、表面の選択部分の材料を曲げ加工することにより形成することができる。
【0005】
一実施形態では、円筒形フィラメントの表面は、関連の仕事関数を有する基部フィラメント材料を有する。一実施形態では、基部フィラメント材料を有する表面の選択部分上に材料薄膜層を堆積することにより仕事関数を変更する。一実施形態では、材料薄膜層は、非選択部分の基部フィラメント材料よりも低い仕事関数を有する。別の実施形態では、仕事関数を変更する段階は、基部フィラメント材料を有する表面の非選択部分上に材料の薄膜層を堆積する段階を含む。材料薄膜層は、選択部分の基部フィラメント材料より高い仕事関数を有する。代替的に、仕事関数を変更する段階は、表面の選択部分上に第1の材料薄膜層を堆積し、かつ表面の非選択部分上に第2の材料薄膜層を堆積する段階を含む。第1の材料薄膜層は、非選択部分の第2の材料薄膜層より低い仕事関数を有する。
【0006】
本発明の更に別の特徴及び利点は、添付図面及び以下に続く詳細説明から明らかになるであろう。
【0007】
本発明の実施形態は、一例として示すものであり、添付図面の図により限定されることは意図していない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下の説明においては、本発明の徹底的な理解を達成するために、特定の材料、処理パラメータ、処理段階のような多くの特定の詳細を説明する。当業者は、主張する実施形態を実施するためにこれらの詳細に具体的に固執する必要があるというものではないことを認識するであろう。他の例においては、公知の処理段階、材料などは、本発明を曖昧なものにしないために説明を割愛する。「仕事関数」という用語は、本明細書で使用される時、金属表面から電子を除去するために必要とされる最小量のエネルギを意味する。
【0009】
陰極に対して説明する。陰極は、X線管においては、陽極と衝突した時にX線を生成するために必要とされる高エネルギまで、蓄積されている電子を放出するのに使用することができる。陰極は、本明細書で説明するように螺旋に巻線することができる円筒形フィラメントとすることができる。円筒形フィラメントは、表面を有する導電体、通常、ワイヤである。表面の機能は、電子ビームを供給することである。表面は、選択部分及び非選択部分を有することができる。以下でより詳細に説明するように、表面の選択部分は、表面の非選択部分に対して変えることができる特性を有する。
【0010】
一般的なコイル状フィラメント内の凸状湾曲により、電子ビームが拡散し、従って、陽極に送出される電子ビーム強度が低減される。一実施形態では、コイル状フィラメントの凸状湾曲は、コイル状フィラメントの電子放出面に対してより良好な幾何学的形状を達成し、電子ビームの広がりを低減して陽極に送出される電子ビーム強度を増大するためにコイル状フィラメントの上面上で実質的に平坦な又は凹状湾曲に変えることができる。輪郭に湾曲を有する表面で、陰極巻線は、電子放出面に接するエンベロープが凹状輪郭を有し、従って、電子を陽極に集束するために1次元Pierce陰極の幾何学的形状に似るように成すことができる。湾曲は、例えば、表面の選択部分内に表面の輪郭を研削、切断、又は曲げ加工することにより形成することができる。代替的に、当業者に公知の他の方法を用いて、表面の選択部分に沿って所要の湾曲を形成することができる。
【0011】
別の実施形態では、仕事関数は、例えば、材料を堆積して選択部分の少なくとも1つの上の仕事関数を変更するか、又は選択した区域を除外して非選択区域上に材料を堆積するか、又は選択部分及び非選択部分の両方に異なる仕事関数の材料を堆積することにより、フィラメント表面の明示的に選択した区域上で変更することができる。これは、表面を基部フィラメント材料と異なる複合物に変換することができる作業による達成することができる。1つのこのような作業の例は、仕事関数を低減するために、選択した区域内で制御可能な深さの表層を浸炭するためにタングステンフィラメントワイヤで行われる。他の表面修正作業を用いて仕事関数を減少又は増加するか、又はフィラメントの定められた区域における表面の挙動を他の方法で変えることができる。当業技術の当業者に公知の方法を用いて、表面の選択部分と非選択部分との仕事関数の差を変えて、選択部分が表面の非選択部分より低い仕事関数を有することを可能にすることができる。
【0012】
陰極の選択部分の幾何学的な定義は、仕事関数が低減された区域からの電子束を増大させることにより電子ビームの集束を改善するように考案することができる。供給源地が小さくなる時に、電子ビーム幅を低減することができて、ビーム縁部を鮮明にすることができ、面積が小さくなると共に縁部鮮明度が明瞭になった専有面積が陽極上で可能になる。電子ビームの小専有面積化にも関わらず、電子ビームは、高密度化が可能であり、かつ全体的なX線生成量を維持することができる。X線画像鮮明度は、一般的に、X線供給源スポットサイズで判断される。電子ビーム強度を増大させ、及び/又は電子ビーム幅を低減すると、陽極に入射する電子ビームの専有面積は、幅が減少し、均一性が増大し、かつより明確な縁部を含む。ビーム強度を増大させ、及び/又は電子ビーム幅を低減することにより、本明細書で説明するフィラメントを含むX線管は、より明瞭かつぼけが少ない画像を生成する。
【0013】
円筒形フィラメントの表面の選択部分の特性を変更することによりフィラメントの電子放出区域を定める更に別の利点は、電子ビーム強度を増大させることができると共に、別々の電気的励起を必要とすることになる更に別の集束電極がなくても、陽極でのビームのための専有面積の鮮明度及びサイズを改善することができる点にある。
【0014】
X線管は、一般的に、電子を加速させると共に、陰極フィラメントから金属陽極に向ける、衝撃によりX線が生成される電極を含む密封部材を含む。従来のX線管には、気体分子との過度の衝突なしに自由に電子を加速させることができる高真空状態を閉じ込める、通常、ガラス又はセラミック及び金属構造の密封部材が設けられている。陰極/フィラメントは、電流で加熱された時に電子を周囲に放出する。電子は、陽極へ加速され、陽極は、加速電子が当たった時にX線を生成する。一部のX線管においては、陽極は、高エネルギ電子が衝突することにより蓄積されたエネルギにより熱を広げるために回転される。X線管内側にある回転陽極は、陽極を回転するように考案された誘導電動機の回転子を含む。誘導電動機の固定子は、通常、X線管の外側に位置する。X線管エンベロープには、X線管により生成されたX線の出口を可能にするために低密度材料で製造された窓を設けることができる。窓は、出力X線ビームの境界を定めるためにより高密度な境界を有することができる。
【0015】
図3は、陰極及び陽極を有するX線管の一実施形態を示している。図3のX線管100は、陰極構造体110及び陽極120を含む。陰極構造体110は、導電性フィラメント111及びフィラメントハウジング構造体112を含むことができる。フィラメント111は、螺旋に巻かれた円筒形ワイヤとすることができる。フィラメント111は、表面を含むことができる。電流の通過により十分に加熱された時のフィラメント111は、表面から電子を放出する。次に、上述のX線管100の陰極構造体110と陽極120の間での数千ボルトから数十万ボルトの範囲の高電圧の印加から生じる陰極構造体110と陽極120の間の電界により、陽極の方向に電子が加速される。
【0016】
加速電子は、電子ビーム強度と、幅と、長さとを有する電子ビームを形成する。ビーム長は、陰極構造体110と陽極120の間の距離に依存する。ビームエネルギ及び幅は、陰極構造体110と陽極120の間に存在する電界により定められる。電子は、低エネルギでフィラメント111の表面から放出されることに注意すべきである。この状態においては、電子は、存在する電界による簡単な操作を受けやすい。特に、エネルギ低い時に、ビーム内の電子源になるように割り当てられる区域の操作のしやすさ及び幾何学的形状と、電子軌道の操作しやすさとを組み合わせることにより、本明細書で説明する方法及び構造体を用いて、電子ビームの幅を減少させることができ、かつ電子ビームの強度を増大させることができる。電子ビームの強度を増大させて幅を低減すると、陽極に入射する電子ビームの専有面積が小さくなる。
【0017】
電子ビームの制御に及ぼす影響の低下は、ビームを分岐したり又は広げたりする原因になる傾向がある電子の相互の静電気的反発にある。陰極構造体110と陽極120の間の強い電界により加速される時に、電子は、横の加速を受けなくなり、ビームは、望ましい狭い専有面積により厳密に保持することができる。
【0018】
陽極に移動する時に電子を加速させるために必要とされる高電界は、高電圧電源により設けられる。通常の電源は、商用の電力線から高電圧交流電源を達成するようになっている変圧器を含む。殆どの場合、交流電源は、真空管、半導体を問わず、高電圧整流器により整流される。尚、高電圧電源を生成する多くの代替手段が、X線生成の当業技術で公知である。整流後の高電圧の印加で、電子は、最初に迅速に高エネルギに加速される。陽極に到達すると、電子は、急激に停止される。ごく僅かの電子に対しては、非常に厳しい停止処理によりX線が生成される。X線は、電子が陽極に衝突する電子ビームの専有面積から始まる。鮮明な境界で狭いX線ビームを形成するために、専有面積は、極力小さなものであるべきであり、従って、陽極上で電子ビームの小さな専有面積を達成することが重要である。
【0019】
陽極120は、円筒形フィラメント111の表面から放出される電子を受け取るように形成することができる。陽極は、電子ビームの方向に傾斜した面を示すように配置することができる。X線は、電子ビーム専有面積の下で生成され、かつ電子衝突の集束点から等方的に分配される。垂直線から陽極面までの90°未満の角度に対しては、X線は、自由に出現する。特に、図3によれば、X線は、経路121に沿って出現する。X線が出現した時、120で入射電子ビームの幅を有する焦点は、X線の観点からは、短縮幅がビーム212として見える。電子ビームの成形は、陽極で矩形専有面積を示すように考案することができる。この構成においては、出口X線ビーム121の方向から見て電子ビーム専有面積により生成されたX線は、適切な角度で、小さな正方形のプロフィールを有するように見える。この構成に適切な角度は、一般的に、0°から20°の範囲に該当する。この幾何学的形状は、電子ビームのエネルギを受け取る区域を陽極上で広げることを可能にし、従って、陽極面の局所的加熱が低減される。1つの例示的な実施形態では、陽極の角度は、ほぼ7°である。代替的に、他の角度を用いることができる。電子ビームの専有面積は、縦軸が出力X線ビームの方向に配置された状態で矩形とすることができる。出力X線ビームの方向で見た時に、この矩形は、断面121で見えるX線の小さい方の見掛けの原点を設けるように短縮される。このような構成は、陽極120の加熱及び侵食を低減する一助になると考えられる。
【0020】
陰極構造体110のフィラメントハウジング構造体112は、フィラメント111を封入する。フィラメントハウジング構造体112は、陰極の周囲に、かつ陰極110と陽極120の間に電界を成形することができ、これは、陰極111が陽極120までの電子の経路に影響を与える可能性がある。より具体的には、フィラメントハウジング構造体112の形状は、ビームの初期の成形に影響を与える可能性がある。この成形に対して特定の言及が為される。
【0021】
上述のように、陰極は、X線管100の陰極構造体110の電子放出要素を設けるために螺旋に巻かれた円筒形ワイヤとすることができるフィラメント111を含むことができる。陰極の表面は、表面の非選択部分に対して変更された特徴を有する選択部分を有することができる。一実施形態では、表面の選択部分の変更された特徴は、表面の選択部分に沿った湾曲とすることができる。選択部分の湾曲は、実質的に凹状、平坦、又は凸状とすることができる。
【0022】
一実施形態では、円筒形フィラメント111の選択部分の特性を変更することは、X線管100の陰極構造体110内で役目をする螺旋に巻かれた円筒形フィラメントの表面を設け、円筒形フィラメントの表面の各部を選択して、選択部分から放出される電子の軌道に有利であるように選択部分の幾何学的形状的特性を変えることにより達成することができる。選択部分の特性を変更する段階は、フィラメント111の表面の選択部分に沿った凸状湾曲を実質的に平坦な又は凹状形状に変える段階を含むことができる。必要とされる幾何学的形状的変更を達成する段階の例を図4a及び図5aに示し、それぞれ、図4bの段階401から403、及び図5bの501から503に示している。凸状湾曲とは、本明細書で言及する時、表面までの巻線フィラメントタングステンのエンベロープが、陽極120に対向する円筒形フィラメント111の中心部からの凸状湾曲を有することを意味する。
【0023】
選択部分の凸状湾曲を変えることは、例えば、405aで、選択部分から材料を研削で除去することにより、段階405で、選択部分から材料を除去して実質的に凹状湾曲を形成することによって達成することができる。代替的な実施形態では、選択部分から材料を除去することは、他の方法、例えば、段階405bで選択部分から材料を切断することにより、段階405cで放電機械加工により、又は当業者に公知の他の方法、例えば、エッチングにより行うことができる。円筒形フィラメント111の選択部分の凸状湾曲を変えることは、円筒形フィラメント111を巻線螺旋に巻回する前又は後に行うことができることに注意すべきである。
【0024】
別の実施形態では(図5aを参照されたい)、選択部分の凸状湾曲を変える段階は、段階505で、材料を凸状形状から実質的に平坦な又は凹状湾曲に曲げ加工することを含むことができる。選択部分から材料を曲げ加工する段階は、段階505aで円筒形フィラメントを巻いて螺旋を形成すること、及び段階505bで選択部分の材料を変形して実質的に平坦な又は凹状湾曲に形成することを含むことができる。1つの例示的な実施形態では、選択部分の材料を曲げ加工する段階は、円筒形フィラメントを円筒形溝付きマンドレルに巻き付ける段階、及び楔部で円筒形溝付きマンドレル上の円筒形フィラメント巻線を押圧することにより選択部分の材料を変形させる段階を含む。楔部は、円筒形フィラメントコイルの選択部分を変形させて円筒形フィラメントの表面の選択部分上に実質的に平坦な又は凹状湾曲を形成する望ましい形状を有する。代替的に、選択部分から材料を曲げ加工する段階としては、当業者に公知の他の方法、例えば、段階505aで円筒形フィラメントをコイル状の螺旋に巻き付ける前に、段階505bで円筒形フィラメントの選択部分の材料を変形させることを含むことができる。
【0025】
図4aは、表面の選択部分上に凹状湾曲を有する円筒形フィラメントコイルの一実施形態の縦断面図を例示している。図4の陰極構造体110は、円筒形フィラメント411及びフィラメントハウジング構造体112を含む。円筒形フィラメント411は、非選択部分414及び選択部分415を有する表面を含む。図4aは、螺旋の軸線に沿った螺旋に巻かれた円筒形フィラメントを例示しており、従って、円筒形フィラメント411の1つのコイルの図を例示することに注意すべきである。一般的に、この成形は、円筒形フィラメント411の2つ又はそれよりも多くのコイルに拡張することができ、かつコイルの全てを含むことさえも可能である。
【0026】
上述のように、十分な温度に加熱するのに十分な電流が円筒形フィラメント411を通った時、陰極構造体110の円筒形フィラメント411は、電子ビーム413を形成する陽極120に向けて電子を放出する。この実施形態では、表面の選択部分415の変更された特性は、湾曲である。段階405で材料を選択部分415から除去した時、非選択部分414は、変更湾曲を有する部分の境界を形成する。選択部分415に沿った湾曲は、実質的に平坦又は凹状とすることができる。
【0027】
上述のように、代替的な実施形態では、材料を除去することは、段階405a及び405bで選択部分415から材料を研削して除去するか又は切断し、それぞれ、非選択部分414が望ましい曲率の領域の境界を形成することを可能にすることにより行うことができる。上述のように、円筒形フィラメント411は、付加的なコイルを含むことができ、従って、材料を除去する上述の方法は、円筒形フィラメント411の表面の付加的な選択部分415上で行うことができる。
【0028】
段階405での表面の選択部分415からの材料の除去により、選択部分415より下方にあるワイヤの断面の区域が減少すると考えられ、従って、フィラメントの局所的電流密度が増大し、それによって表面の選択部分415より下方にある区域内では電流による生成される温度が増大し、かつ表面の非選択部分414より下方にある区域では電流による生成された温度が減少する。これは、表面の選択部分415の方が、表面の非選択部分414によって放出されるよりも、そこでのより高い温度のために、より容易に電子を放出することを可能にすることができる。表面の非選択部分414及び表面より下方にある対応する区域の温度を低減すると、非選択部分414に掛かる機械的応力が低減し、従って、円筒形フィラメント411の寿命を延ばすことができる。
【0029】
例示目的上、一実施形態では、段階405での表面の選択部分415からの材料の除去により、放出面の放出面曲率半径は、円筒形フィラメントワイヤ411の直径のほぼ半分の除去により形成される。
【0030】
上述のように、フィラメントの選択部分415から材料を除去すれば、従って、局所的電流密度が高くなり、従って、局所的温度が高くなり、それによってフィラメントの非選択部分414からの電子放出における付随物の増加なく、選択部分415からの望ましいより高い電子放出が促進されることに注意すべきである。フィラメントの非選択部分414における電流密度により、それらの部分の温度が下がり、従って、上述のように、それらの部分での応力が低減され、それによってフィラメント411の寿命を延ばすことができる。
【0031】
図5aは、表面の選択部分515上に凹状湾曲を有する円筒形フィラメントコイルの別の実施形態の縦断面図を例示している。凹状湾曲は、本明細書の目的上、コイル状フィラメントのエンベロープ表面の湾曲を指す。図5aの陰極構造体110は、コイル状円筒形フィラメント511及びフィラメントハウジング構造体112を含む。円筒形フィラメント511は、非選択部分514及び選択部分515を有する表面を含む。図5aは、螺旋の軸線に沿った螺旋に巻かれた円筒形フィラメントの図を例示しており、従って、円筒形フィラメント511の1つのコイルを例示することに注意すべきである。一般的に、この成形は、円筒形フィラメント511の2つ又はそれよりも多くのコイルに拡張することができ、かつコイルの全てを含むことさえ可能である。
【0032】
上述のように、電流が円筒形フィラメント511を通った時、陰極構造体110の円筒形フィラメント511は、電子ビーム513を形成する陽極120に向けて電子を放出する。この実施形態では、表面の選択部分515の変更された特性は、エンベロープ湾曲である。段階505で選択部分515の材料を曲げ加工することにより、選択部分515は、望ましいエンベロープ湾曲を形成し、これは、選択部分515の初期の材料が無傷のままであり、単に、非選択部分514に対して位置を変えることを意味する。選択部分515に沿って形成されたエンベロープ湾曲は、実質的に平坦又は凹状とすることができる。
【0033】
上述のように、一実施形態では、段階505で選択部分の材料を曲げることは、段階505aで円筒形溝付きマンドレル上へ円筒形フィラメント511を巻き付けて、段階505bで表面の選択部分515の材料を変形させることにより、すなわち、円筒形フィラメント511の選択部分515の材料を変形させる望ましい形状を有する楔部で円筒形溝付きマンドレル上で円筒形フィラメント511を押圧することによって実行することができる。変形した材料は、円筒形フィラメントの表面の選択部分515上で実質的に平坦な又は凹状エンベロープ湾曲を有することができる。代替的に、材料を曲げ加工する他の公知の方法を、たとえば、段階505aで円筒形フィラメント511をコイル状螺旋に巻き付ける前に、段階505bで円筒形フィラメントの選択部分515の材料を変形させることを用いることができる。
【0034】
上述のように、円筒形フィラメント511は、付加的なコイルを含むことができ、従って、材料を曲げる上述の方法は、円筒形フィラメント511の表面の付加的な選択部分上で実行することができる。
【0035】
一実施形態では、段階505で表面の選択部分515の材料を曲げ加工することにより、フィラメントの選択部分515の放出面のエンベロープの曲率半径は、円筒形フィラメント511のコイルの直径の半分とすることができる。他の実施形態では、段階505における表面のフィラメント514上での適切な変形段階により、表面の選択部分515のエンベロープ面曲率半径は、この値よりも大きいか又は小さいとすることができる。
【0036】
図6は、成形された電子放出フィラメントの選択部分の逆数である放出面の曲率半径に対する電子ビームのビーム幅の関係を示す例示的なグラフである。グラフ600は、表面の選択部分の湾曲の縦座標である相対ビーム幅601が、横座標である放出面半径602に対してどのように変化するかの1つの例示的な実施形態を例示している。グラフ600においては、放出面半径602は、ミリメートルの逆数(mm-1)で表され、関連のビーム幅601は、ミリメートルで表される。放出面半径602の符号規約上、正の数は、凸状湾曲を表し、負の数は、凹状湾曲を表し、ゼロは、平坦な湾曲を表している。代替的に、当業者に公知の他の符号規約及び単位を用いることができる。ビーム幅は、X線管の全体的な幾何学的形状、並びに電子放出面の曲率に依存する。図6のビーム幅は、陽極上での専有面積で定められる。
【0037】
この例示的な実施形態において示すように、放出面の逆数半径602が正の数からゼロに減少する時に、相対ビーム幅601は減少する。同様に、逆数半径602が更にゼロから負の数に減少する時に、相対ビーム幅601は、更に減少する。この例示的な実施形態では、正の数は、凸状湾曲を表し、負の数は、凹状湾曲を表し、ゼロは、相互の平面を表している。例示として、グラフ600で表した特定の場合では、放出面逆数602が、+.763ミリメートル(.763=1/1.31)の曲率を有する時、相対ビーム幅601は、8ミリメートルの値を有し、放出面602がゼロの曲率を有する時、相対ビーム幅601は、2ミリメートルの値を有し、放出面逆数602が、−2.56ミリメートル(−2.56=l/(−.39))の曲率を有する時、相対ビーム幅601は、1.5ミリメートルの値を有する。
【0038】
上の説明の陰極構造体の幾何学的形状の影響に加えて、電子ビームの電流密度は、電子放出面の仕事関数によって影響される場合もある。図7aから図7dは、非選択部分714及び選択部分715を有する表面を含む円筒形フィラメント711の1つのコイルの実施形態を例示する縦断面図である。代替的に、円筒形フィラメント711は、円筒形フィラメント711の表面の1つ又はそれよりも多くの選択部分及び非選択部分を有することができる。論じやすいように、以下、選択部分715及び非選択部分714は、選択部分715及び非選択部分714と呼ぶ。円筒形フィラメント711は、更に別のコイルを含むことができるので、以下で説明する仕事関数を変える方法は、円筒形フィラメント711の表面の1つ又はそれよりも多くの選択部分715及び非選択部分714上で実行することができる。
【0039】
一実施形態では、円筒形フィラメント711の選択部分715の特性を変更することは、段階701でX線管100の陰極110に螺旋に巻かれた円筒形フィラメントの表面を設け、段階702で円筒形フィラメント711の表面の部分715を選択し、かつ段階703で実質的に択部分715だけから電子を放出するように選択部分715の特性を変更することにより達成することができる。選択部分715の特性を変更する段階は、段階704で円筒形フィラメントの表面の非選択部分714に対して選択部分715の作業関数を変えることを含むことができる。代替的な実施形態では、選択部分715の特性を変更する段階は、選択部分715の作業関数を変える段階、非選択部分714の作業関数を変える段階、又は円筒形フィラメント711の表面の選択部分715及び非選択部分714の作業関数を変える段階を含むことができる。
【0040】
一実施形態では、段階704でこの実施形態ではタングステンで製造された円筒形フィラメントの表面の非選択部分714に対して選択部分715の作業関数を変える段階は、以下に詳細に説明するように、段階704aで材料を堆積する段階、段階704bで材料を変換/浸炭する段階、又は段階704cで材料を変換/浸炭して材料の拡散に備える段階を含むことができる。タングステンを変換/浸炭する段階は、必要とされる場合に、タングステンを炭化タングステン(WC)又は二炭化タングステン(W2C)に化学的に変更する材料を導入する処理である。
【0041】
選択部分715が非選択部分714よりも低い作業関数を有するように、選択部分715、非選択部分714、又は選択部分及び非選択部分715及び714の両方の作業関数を変えると、表面の選択部分715から放出される電子の数を増大させることができる。選択部分715から放出される電子数が増大すると、陰極構造体110のコイル状円筒形フィラメント711から陽極120に向けて放出される電子ビームの強度を増大させることができる。選択部分715から放出される電子数の増大は、電子ビームの幅の減少により達成することができ、それによって陽極120に入射する電子ビーム専有面積の幅を低減することができる。
【0042】
1つの例示的な実施形態では、選択部分715と非選択部分714の作業関数差異は、電子ボルトのほぼ2/10(0.2eV)である。代替的に、例えば、2と4/10電子ボルト(2.4eV)を上限として、1電子ボルト(1eV)を超えるか又は下回る他の作業関数差異を用いることができる。別の例示的な実施形態では、選択部分715と非選択部分714の作業関数差異は、0.2eVから2.4eVの範囲とすることができる。代替的に、他の範囲を用いることもできる。
【0043】
図7aは、表面を有する円筒形フィラメントコイルの一実施形態の縦断面図を例示している。図7aの陰極構造体110は、円筒形フィラメント711及びフィラメントハウジング構造体112を含む。円筒形フィラメント711は、非選択部分714及び選択部分715を有する表面を含む。上述のように、電流が円筒形フィラメント711を通った時、陰極構造体110の円筒形フィラメント711は、電子ビームを形成する陽極120(図示せず)に向かった電子の出射を可能にする点まで加熱される。この実施形態では、表面の選択部分715の変更された特性は、作業関数である。
【0044】
上述のように、フィラメント711は、表面を有するX線管100の陰極構造体110内に設けられた螺旋に巻かれた円筒形フィラメントとすることができる。表面は、表面の非選択部分714に対して変更特性を有する選択部分715を有することができる。この実施形態では、表面の選択部分715の変更特性は、作業関数とすることができる。この実施形態では、更に、表面の選択部分715は、円筒形フィラメント711の表面の非選択部分714より低い作業関数を有する。
【0045】
以下でより詳細に説明するように、選択部分715が非選択部分714よりも低い作業関数を有するように仕事関数を変える段階は、選択部分715の作業関数を変える段階、非選択部分714の作業関数を変える段階、又は表面の選択部分715値及び非選択部分及び715の両方の作業関数を変える段階を含むことができる。
【0046】
図7bは、作業関数を変えるために円筒形フィラメントコイルの表面の選択部分上に堆積された材料を有する一実施形態の縦断面図を例示している。一実施形態では、段階704aで選択部分715の作業関数を変えることは、段階720で基部フィラメント材料の表面の選択部分715上に材料薄膜層715aを堆積する段階を含むことができる。
【0047】
一実施形態では、材料薄膜層715aは、タンタルであり、選択部分及び非選択部分715及び714の基部フィラメント材料は、タングステンである。タンタルは、ほぼ4.1eVの作業関数を有し、タングステンは、ほぼ4.5eVの作業関数を有し、従って、0.4eVの作業関数差分が発生する。代替的に、材料薄膜層715aが表面の非選択部分714の基部フィラメント材料より低い作業関数を有するように、当業者に公知の他の材料を材料薄膜層715a及び基部フィラメント材料に使用することができる。
【0048】
1つの例示的な実施形態では、選択部分715を被覆する材料薄膜層715aと非選択部分714との作業関数差異は、ほぼ4/10(0.4)eVである(この実施例においては、作業関数は、タングステンの場合は4.5eV、及びタンタルの場合は4.1eVである)。これは、タングステン上のTa薄膜に関するものであると考えられる。代替的に、他の作業関数差異、例えば、1eV又は1eV未満を使用することができる。別の例示的な実施形態では、選択部分715より上方の材料薄膜層715aと非選択部分714との作業関数差異は、2/10eVから1eVの範囲とすることができる。代替的に、他の範囲を使用することもできる。
【0049】
図7cは、円筒形フィラメントコイルの表面の非選択部分上に材料を堆積する段階の別の実施形態の縦断面図を例示している。一部の実施形態では、段階704aで非選択部分714の仕事関数を変える段階は、段階721で基部フィラメント材料を含む表面の非選択部分714上に材料薄膜層714aを堆積する段階を含むことができる。代替的な実施形態では、非選択部分714仕事関数を変える段階は、段階722aで基部フィラメント材料を含む表面の選択部分715及び非選択部分714上に第1の材料薄膜層714aを堆積する段階、及び段階722cで表面の選択部分715上に第1の材料薄膜層714aを堆積させ、従って、図7cに例示するのと類似の構造体をもたらす段階を含むことができ、又は非選択部分714の仕事関数を変える段階は、段階722aで表面の選択部分715及び非選択部分714上に材料薄膜層715aを堆積する段階、及び段階722cで表面の非選択部分714より上方から材料薄膜層715aを除去し、従って、図7bに例示するのと類似の構造体をもたらす段階を含むことができる。
【0050】
1つの例示的な実施形態では、材料薄膜層714aは、プラチナであり、選択部分715及び非選択部分714の基部フィラメント材料は、タングステンである。プラチナは、ほぼ5eVの仕事関数を有し、タングステンは、ほぼ4.5eVの仕事関数を有し、結果としてほぼ0.5eVの仕事関数差になる。代替的に、材料薄膜層714aが、基部フィラメント材料より高い仕事関数を有するように、当業者に公知の他の材料を材料薄膜層714a及び選択部分715及び非選択部分714の基部フィラメント材料に使用することができる。
【0051】
別の実施形態では、選択部分715と表面の非選択部分714の上の材料薄膜層714aとの仕事関数差異は、ほぼ4/10、0.4eVである(タングステン上のTaの場合)。他の仕事関数差異、例えば、1eV又は1eV未満を使用することができる。別の例示的な実施形態では、非選択部分714より上方にある材料薄膜層714aと選択部分715との仕事関数差異は、0.2eVから1eV間の範囲とすることができる。代替的に、他の範囲を使用することもできる。
【0052】
図7dは、円筒形フィラメントコイルの表面の選択部分及び非選択部分の両方の上に材料を堆積する段階の別の実施形態の縦断面図を例示している。一実施形態では、選択部分715及び非選択部分714の仕事関数を変える段階は、段階723aで基部フィラメント材料を有する表面の選択部分715上に第1の材料薄膜層715aを堆積する段階、及び段階723bで表面の非選択部分714上に第2の材料薄膜層714aを堆積する段階を含むことができる。一実施形態では、選択部分715及び非選択部分715の両方の基部フィラメント材料であるフィラメントの仕事関数を変える段階は、段階723aで表面の選択部分715上に第1の材料薄膜層715aを堆積する段階、及び段階723bで表面の非選択部分714上に第2の材料薄膜層714を堆積させる段階を含むことができる。
【0053】
1つの例示的な実施形態では、第1の材料薄膜層715aはタンタルであり、第2の材料薄膜層714aはプラチナであり、選択部分715及び非選択部分714の基部フィラメント材料はタングステンである。代替的に、第1の材料薄膜層715aが第2の材料薄膜層714aより低い仕事関数を有するように、当業者に公知の他の材料を第1の材料薄膜層715a、第2の材料薄膜層714a、及び選択部分715及び非選択部分714の基部フィラメント材料に使用することができる。
【0054】
一実施形態では、選択部分715より上方にある第1の材料薄膜層715aと非選択部分714より上方にある第2の材料薄膜層714aとの仕事関数差異は、ほぼ0.2eVである。代替的に、他の仕事関数差異、例えば、1eV又は1eV未満を使用することができる。別の例示的な実施形態では、非選択部分714より上方にある材料薄膜層714aと、選択部分715より上方にある材料薄膜層715aとの仕事関数差異は、0.2eVから1eVの範囲とすることができる。代替的に、他の範囲を使用することもできる。
【0055】
基部フィラメント材料上に材料を堆積する段階に関して本明細書で説明する方法においては、基部フィラメント材料上での堆積に使用される材料は、X線管100内での作動に関する熱要件及び物理的要件に準拠するものであるべきであることに注意すべきであり、例えば、良好な薄膜接着性がほぼ2000度ケルビンの範囲にわたって維持され、かつ堆積材料が、X線管100のフィラメントの作動温度での蒸発により、又はフィラメントの目標とする寿命終了前の円筒形フィラメント711のバルク材料への拡散により消失しないことを確実にするように適正な注意を向けるべきである。
【0056】
別の実施形態では、段階704bで選択部分715の仕事関数を変える段階は、段階730で選択部分715の基部フィラメント材料を基部フィラメント材料及び追加材料の化学化合物とすることができる第1の材料に変換する段階を含むことができる。
【0057】
好ましい電子放出区域を達成するために基部フィラメント材料を変換する段階は、段階730で表面の選択部分715の基部フィラメント材料を非浸炭基部フィラメント材料より低い仕事関数を有する第1の材料に浸炭させることによって変換する段階を含むことができる。低い方の仕事関数の好ましい区域に備える手段の一部の代替例は、以下のものである。第1の例に対しては、段階731で基部フィラメント面714の非選択部分を第1の変更材料に変換する段階であり、変更材料は、フィラメントの選択部分で露光されたままである基部フィラメント材料より高い仕事関数を有する。第2の例に対しては、段階732aで基部フィラメント面715の選択部分を第1の変更材料に変えて、段階732bで基部フィラメント面714の非選択部分を第2の変更材料に変換する段階であり、第2の変更材料は、第1の変更材料より高い仕事関数を有する。第3の例に対しては、段階733aで基部フィラメント面を第1の変更材料に変換し、第1の変更材料が、基部フィラメント材料より高い仕事関数を有する段階、及び次に段階733bで選択部分715を定める領域から第1の材料を除去する段階である。第4の例に対しては、段階733aで基部フィラメント面を第1の変更材料に変換し、第1の変更材料が、基部フィラメント材料より低い仕事関数を有する段階、及び次に段階733cで非選択部分714から変換基部フィラメント材料を除去する段階である。基部フィラメント材料は、タングステンとすることができ、選択部分715の変換化合材は、炭化タングステンWC、又は二炭化タングステンW2Cとすることができる。注意事項として、タングステンは、4.5eVの仕事関数を有し、WCは、3.6eVの仕事関数を有し、W2Cは、4.58eVの仕事関数を有する。これらの差異を利用して異なる電子放出区域を局所化することができる。タングステンの炭化物を引用しているが、表面の選択部分715の得られる変更表面の材料の方が基部フィラメント材料と比較した時に低い仕事関数を有するように、当業者に公知の他の材料を基部フィラメント材料に使用することができる。
【0058】
1つの例示的な実施形態では、段階730及び段階731で、選択部分715及び非選択部分714にわたってタングステンを炭素と化合させて、表面のそれぞれWC及びW2Cに対して化合を行うことにより、選択部分715と非選択部分714との仕事関数の差異は、結果として、ほぼ0.9eVの仕事関数差になる。代替的に、第1の材料が基部フィラメント材料より低い仕事関数を有するように、当業者に公知の他の材料を第1の材料及び基部フィラメント材料に使用することができる。
【0059】
別の例示的な実施形態では、段階731で表面の非選択部分714の仕事関数を変える段階は、非選択部分714のWをW2Cに変換する段階を含むことができる。代替的に、第1の材料が基部フィラメント材料より高い仕事関数を有するように、当業者に公知の他の材料を第1の材料及び基部フィラメント材料に使用することができる。
【0060】
別の例示的な実施形態では、段階732で選択部分715及び非選択部分714の仕事関数を変える段階は、選択部分715のWをWCに変換する段階、及び段階732bで非選択部分714のWをW2Cに変換する段階を含むことができる。代替的に、第1の材料が第2の材料より低い仕事関数を有するように、当業者に公知の他の材料を第1の材料、第2の材料、及び基部フィラメント材料に使用することができる。
【0061】
表面を1つの化合物に変換し、次に、結果として生じる材料を別の化合物に変換することにより、変換材料は、フィラメント温度範囲を通して積層剥離、蒸発、及び拡散の影響を受けなくなることが可能であることに注意すべきである。
【0062】
別の実施形態では、段階704cで選択部分715の仕事関数を変える段階は、化学的に操作することができる第1の元素を組み込む基部フィラメント材料の使用を含むことができる。例えば、タングステンフィラメント内でのトリアの導入は、第1の元素を供給することができる。反応するとタングステンに組み込まれていた酸化物を低減することができる炭化タングステンは、第1の材料としてタングステン内で生成することができる。一例においては、酸化物を組み込むタングステンフィラメントの表面の選択部分715を浸炭させることにより、段階741で第1の材料、炭化タングステンを供給して、還元後の酸化物(第2の要素)を形成するために選択部分における酸化物(第1の要素)を還元し、段階742で円筒形フィラメント711の基部フィラメント材料から生じる第2の要素を表面の選択部分715に拡散することができる。基部フィラメント材料に取り込まれた各種要素を適切に選択すると、この処理により選択部分表面までに拡散してその部分での仕事関数を変えることができる成分を達成することができる。代替的に、段階704cで選択部分715の仕事関数を変える段階は、段階750で表面の選択部分715及び非選択部分714の両方の基部フィラメント材料を第1の材料に変換する段階と、段階751で表面の非選択部分から第1の材料を除去する段階と、段階752で基部フィラメント材料の第1の要素を第2の要素に変換する段階と、段階753で円筒形フィラメント711の基部フィラメント材料に取り込まれた第2の要素を表面の選択部分715に拡散する段階と含むことができる。例えば、基部フィラメント材料は、トリア化タングステン(ごく僅かなトリアを含有するタングステン)とすることができ、第1の材料は、トリア化炭化タングステンとすることができる。代替的な実施形態では、他の基部フィラメント材料を使用することができ、選択化合物は、選択的に組み込むことができる。陰極構造体に取り込まれる化合物の例としては、タングステンに取り込まれると、トリア化タングステン、セリウム化タングステン、又はランタン化タングステンと呼ばれるフィラメントワイヤをもたらす酸化ランタンを含むことができる。尚、トリア、セリア、酸化ランタンなどを電子放出陰極に導入するための手段は、フィラメントワイヤ又は他の陰極構造体に対して機械的特性が得られるように、単純な混合以外の方法を含むことができる。例えば、ランタニドは、微量レベルの酸素が存在する状態でタングステンと適切に協働して同時スパッタリングすることができる。望ましい分布を生成する他の方法を用いることができる。
【0063】
例示的な実施形態では、基部フィラメント材料は、トリア化タングステンである。トリア化タングステンは、1%から2%のトリアを含有する。この実施形態は、段階740で、表面の選択部分715のトリア化タングステンを第1の材料、炭化タングステンに浸炭させる段階を含む。表面の選択部分715は、浸炭表面に変換されており、円筒形フィラメント711のトリア化タングステンの大半中のトリアは、段階741でトリウムに還元される。トリウムは、段階742で表面の選択部分715に拡散する。トリウムは、蒸発によって表面の選択部分715から枯渇される。蒸発したトリウムは、タングステンフィラメントに取り込まれたままのトリアがある限り、トリアの継続的な還元により、表面の選択部分715内に存在する炭化タングステンによりトリウムに連続的に置換される。
【0064】
トリアがトリウムに変換されて表面の選択部分715に拡散される速度は、選択部分715がどれだけ浸炭されたかに依存する。表面の非選択部分714は浸炭されていないために、表面の非選択部分714の領域では、その中のトリアはトリウムに変換されず、従って、表面の非選択部分714は、拡散しないトリアだけを含有する。表面の選択部分715は、表面に拡散することができるトリウムを含有し、従って、選択部分において、トリウムを含まず拡散しないトリアだけを含有する非選択部分714での仕事関数より低い仕事関数を達成する。この例示的な実施形態では、選択部分715は、ほぼ2.6eVの仕事関数を有し、従って、ほぼ1.9eVの非常に好ましい仕事関数差分が生じる。
【0065】
別の例示的な実施形態では、基部フィラメント材料は、セリウム化タングステンである。この実施形態は、段階740で表面の選択部分715のセリウム化タングステンを炭化タングステンに浸炭させる段階を含む。表面の選択部分715が浸炭表面に変換されているために、円筒形フィラメント711のセリウム化タングステンの大半中のセリアは、段階741で表面の選択部分715の表面に拡散することができるセリウム(Ce)に還元され、従って、段階742で仕事関数が変更される。セリウムは、最終的に、表面の選択部分715から蒸発するが、その大半から補充され、たとえセリウムが蒸発したとしても、浸炭タングステンは、セリウムに残っている組み込まれたセリアを還元し続けて、十分な量が、表面の選択部分715の表面に拡散して、表面の選択部分715にセリウムの安定した供給を行う。
【0066】
セリアがセリウムに変換されて表面の選択部分715に拡散する速度は、選択部分715がどれだけ浸炭されたかに依存する。表面の非選択部分714は浸炭させられていないために、表面の非選択部分714の領域では、その中のセリアはセリウムに変換されず、従って、表面の非選択部分714は、拡散しないセリアだけを含有する。表面の選択部分715はセリウムを含有するために、選択部分715は、拡散しないセリアだけを含有する非選択部分714より低い仕事関数を有する。
【0067】
別の例示的な実施形態では、基部フィラメント材料は、ランタン化タングステンである。この実施形態は、段階740で表面の選択部分715のランタン化タングステンを炭化タングステンに浸炭させる段階を含む。表面の選択部分715が浸炭表面に変換されているために、円筒形フィラメント711のランタン化タングステンの殆どの酸化ランタンは、段階742で表面の選択部分715の表面に拡散することができ、段階741でランタンに還元される。ランタンは、最終的に表面の選択部分715から蒸発する。たとえランタンが表面の選択部分715から蒸したとしても、選択部分715の浸炭表面は、円筒形フィラメント711の基部フィラメント材料の大半中の残りの酸化ランタンをランタンに還元し続け、表面の選択部分715へのランタンの安定した流れを達成する。
【0068】
酸化ランタンがランタンに変換されて表面の選択部分715に拡散する速度は、選択部分715がどれだけ浸炭されたかに依存する。表面の非選択部分714が浸炭されていないために、その中の酸化ランタンは、表面の非選択部分714の領域においてはランタンに変換されず、従って、表面の非選択部分714は、拡散しない酸化ランタンだけを含有する。表面の選択部分715はランタンを含有するために、選択部分715は、拡散しない酸化ランタンだけを含有する非選択部分714より低い仕事関数を有する。
【0069】
上述の実施形態では、選択部分715の浸炭表面は消耗されることに注意すべきである。更に、円筒形フィラメント711は、選択部分715が過度に浸炭された場合は脆すぎるものになる場合がある。この要素は、円筒形フィラメント711の寿命を決める可能性がある。
【0070】
図8は、X線管において陰極の均一な浸炭フィラメントコイルから陽極(図示せず)に向けて放出される電子ビームを示す例示的なグラフを示している。グラフ800は、フィラメントハウジング構造体112に封入された円筒形フィラメント811の概要を示している。円筒形フィラメント811は、基部フィラメント材料を有する。この例示的な実施形態では、円筒形フィラメント811の表面の選択部分715及び非選択部分714は浸炭されており。従って、同じ仕事関数を有する。上述のように、電流が円筒形フィラメント811を通過した時、陰極110の円筒形フィラメント811は、電子ビーム813を形成する陽極120(図示せず)に向けて電子を放出する。電子ビームは、光線の断面に対応する専有面積でX線管(図示せず)の陽極120に衝突する。グラフ800において例示するように、電子ビーム813が円筒形フィラメント811から遠くに進む時に、電子ビーム813の電子は広がり始め、電子ビーム813の幅を増大させ、電子ビームの強度を低減し、かつ陽極120に入射する電子ビームの専有面積の幅を増大させる。
【0071】
図9は、X線管において陰極の選択的に浸炭されたフィラメントコイルから陽極へ放出される電子ビームを示すグラフの例示的な実施形態を例示している。グラフ900は、フィラメントハウジング構造体112に封入されたコイル状円筒形フィラメント911の概要を示している。円筒形フィラメント911は、基部フィラメント材料を有する。この実施形態では、表面の選択部分715は浸炭されており、非選択部分714は浸炭されていないために、選択部分715は、表面の非選択部分714より低い仕事関数を有する。
【0072】
上述のように、電流が円筒形フィラメント911を通過した時、陰極110の円筒形フィラメント911は、電子ビーム913を形成する陽極120(図示せず)に向けて電子を放出する。電子ビーム913を図8の電子ビーム813と比較すると、電子ビーム913が円筒形フィラメント911から遠ざかる時に、電子ビーム913は、電子ビーム幅が電子ビーム813の電子ビーム幅より小さい。電子ビーム913は、図8の電子ビーム813よりも広がりの効果が小さい。陽極120に入射する電子ビーム913は、専有面積が陽極120に入射する電子ビーム813の幅よりも小さく、陽極120に入射する電子ビーム813よりも均一な電子の分布を有する。陽極120に入射する電子ビーム813は、陽極120に入射する電子ビーム813の中心に向けて高い電子密度を有することができるが、図8との関係で説明するように、電子密度分布は、広がり効果により引き起こされる陽極120に入射する電子ビーム813の縁部に接近する電子の境界が鮮明ではなく分岐している。専有面積が広がって陽極120に入射する電子ビーム813の電子の分布がこのように均一でなければ、結果として、曖昧な又はぼやけたX線像になる恐れがあり、これは、電子ビーム813が陽極120に当たった時に、電子ビーム813領域が異なると、印加する電子ビーム強度が異なるからである。
【0073】
逆に、電子ビーム913は、陽極に衝突する電子の分布が実質的に均一であり、この分布は、陽極120に入射する電子ビーム913の縁部を鮮明にし、かつ陽極120に入射する電子ビーム913内で均一なビーム強度分布を達成することができる。縁部が鮮明になり、かつ陽極120に入射する電子ビーム913内でのエネルギ分布が均一になると、陽極上の定められるスポットサイズが小さくかつ良好になり、従って、生成されるX線像はより鮮明なものになる。更に、陽極120に入射する電子ビーム913内での電子分布の均一性を増大させ、かつその縁部を鮮明化することにより、陰極構造体110は、電子ビーム強度を陽極120上の望ましい位置で最大にすることができる。この条件では、従って、陽極上での電子の専有面積は、図8の電子ビーム813の場合より幅は小さく、強度は大きく、縁部はより鮮明なものになる。
【0074】
図10は、選択的に浸炭されたフィラメントコイルから図9の陽極に放出される電子ビームの拡大図を例示している。図10のグラフ900は、フィラメントハウジング構造体112に封入されたコイル状円筒形フィラメント911の概要を示している。上述のように、この実施形態では、円筒形フィラメント911は、タングステンとすることができる基部フィラメント材料を有する。この例においては、円筒形フィラメント911の表面の選択部分715は浸炭されており、従って、選択部分715の仕事関数は、非選択部分714より低い。上述のように、電流が円筒形フィラメント911を通過した時、陰極構造体110の円筒形フィラメント911は、加熱されて、電子ビーム913を形成する陽極120(図示せず)に向けて電子を放出する。電子は、陰極110から陽極120まで進む時に、エネルギが増加することに注意すべきである。光線913の電子が加速されると、ビームが広がる傾向は、ある程度、電子の発生点に依存する。特に、フィラメントの放出面715のサイズ及び向きは、ビーム幅及びその専有面積のサイズに影響する。エネルギの増大のために、陽極120に入射する電子ビーム913の幅を決める電子ビーム913の形状は、電子ビーム913が陰極110から離れて陽極120に進む時に、電界を使用して制御することが困難になる。円筒形フィラメント911の選択部分715を浸炭させることによるか、又は他の手段による円筒形フィラメント911の放出区域の鮮明度により、陽極120に入射する電子ビーム913の形状は、無処置円筒形フィラメントの場合より正確な制御を可能にすることができる。円筒形フィラメント911の選択部分715は、周囲の区域714と比較すると、仕事関数が低いために、主としてより小さな放出区域715に放出を限定することにより、電子ビーム913の広がりを低減することができる。
尚、陰極構造体の特定の例、すなわち、コイル状円筒形フィラメントを上述したが、他の加熱形状を使用することもできる。例えば、望ましい湾曲への変形に対してより適切であると考えられるリボンフィラメントを使用することができる。更に、陰極形状の加熱は、代替的に、陰極構造体の電子衝撃のような間接的な手段によるものとすることができる。
【0075】
上述の詳細説明において、本発明の実施形態の方法及び装置は、その特定の例示的な実施形態を参照して説明した。しかし、本発明の実施形態のより広い精神及び範囲から逸脱することなく様々な修正及び変更を行うことができることは明らかであろう。更に、上述で引用した上述の材料は、フィラメントで使用される材料を表すように一例として示したものである。他の材料を使用することができることも認められるであろう。これ以外に望ましい熱的、化学的、物理的、かつ電気的パラメータを満たすあらゆる材料を使用することができる。本発明の明細書及び図は、従って、制限的ではなく例示的であると見なすものとする。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】螺旋形を有するX線管の従来のコイル状フィラメントを示す図である。
【図2】図1のコイル状フィラメントの縦断面図である。
【図3】陰極及び陽極を含むX線管の一実施形態を示す図である。
【図4a】表面の選択部分上に凹状湾曲を有する円筒形フィラメントコイルの一実施形態の縦断面図である。
【図4b】選択部分内の表面の凸状湾曲を実質的に平坦な又は凹状湾曲に変える方法の一実施形態を示す図である。
【図5a】表面の選択部分上に凹状湾曲を有する円筒形フィラメントコイルの別の実施形態の縦断面図である。
【図5b】選択部分内の表面の凸状湾曲を実質的に平坦な又は凹状湾曲に変える方法の別の実施形態を示す図である。
【図6】表面の選択部分の湾曲の放出面半径に対する相対的なビーム幅を示すグラフである。
【図7a】表面の選択部分及び非選択部分の境界を示す、円筒形フィラメントコイルの一実施形態の縦断面図である。
【図7b】円筒形フィラメントコイルの表面の選択部分上に材料を堆積する一実施形態の縦断面図である。
【図7c】円筒形フィラメントコイルの表面の非選択部分上に材料を堆積する別の実施形態の縦断面図である。
【図7d】円筒形フィラメントコイルの表面の選択部分及び非選択部分の両方上に材料を堆積する別の実施形態の縦断面図である。
【図7e】表面の非選択部分に対して選択部分の仕事関数を変える方法の一実施形態を示す図である。
【図7f】コイル状フィラメントの表面上に材料を堆積する方法の一実施形態を示す図である。
【図7g】コイル状フィラメントの表面の材料を変換/浸炭する方法の一実施形態を示す図である。
【図7h】コイル状フィラメントの表面の材料を変換/浸炭し、かつ拡散する方法の一実施形態を示す図である。
【図8】X線管において陰極の均一な浸炭フィラメントコイルから陽極に放出される電子ビームを示すグラフの例示的な実施形態を示す図である。
【図9】X線管において陰極の選択的に浸炭されたフィラメントコイルから陽極に放出される電子ビームを示すグラフの例示的な実施形態を示す図である。
【図10】図9の選択的に浸炭されたフィラメントコイルから陽極に放出される電子ビームの拡大図である。
【符号の説明】
【0077】
100 X線管
110 陰極構造体
120 陽極
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面を有するX線管の陰極として機能する円筒形フィラメント、
を含み、
前記表面の選択された部分は、該表面の非選択部分に対して少なくとも1つの変更された特性を有する、
ことを特徴とする装置。
【請求項2】
前記円筒形フィラメントの前記表面から放出された電子を受け取る陽極を更に含むことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記陽極上に入射する電子ビームを更に含み、
前記電子ビームは、実質的に、前記電子放出陰極構造体の前記表面の前記選択部分のみから前記陽極に向けて放出される、
ことを特徴とする請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記電子ビームは、前記陰極表面の非選択部分に対して、該陰極表面の前記選択部分からより高いビーム強度を放出することを特徴とする請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記表面の前記選択部分の前記変更された特性は、実質的に前記選択部分のみから電子を放出するように構成されることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記変更された特性は、前記選択部分に沿った実質的に平坦又は凹状の湾曲であることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記表面の前記選択部分の放出面半径は、前記電子放出陰極を含む円筒形フィラメントの直径の半分であることを特徴とする請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記表面の前記選択部分の放出面半径は、前記円筒形フィラメントの直径の半分よりも小さいか又は半分よりも大きいことを特徴とする請求項6に記載の装置。
【請求項9】
前記円筒形フィラメントの前記表面から放出された電子を受け取る陽極を更に含むことを特徴とする請求項6に記載の装置。
【請求項10】
電子ビームが、前記陽極上に入射し、
前記電子ビームは、実質的に前記円筒形フィラメントの前記表面の前記選択部分から前記陽極に向けて放出される、
ことを特徴とする請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記電子ビームは、前記表面の非選択部分に対して、前記選択部分からより高いビーム強度を放出することを特徴とする請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記変更された特性は、仕事関数であることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項13】
前記選択部分の前記仕事関数は、前記表面の非選択部分に対してより低いことを特徴とする請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記選択部分と前記非選択部分の前記仕事関数の差は、電子ボルト(eV)の約1と9/10(1.9eV)であることを特徴とする請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記選択部分と前記非選択部分の前記仕事関数の差は、0.1よりも大きく、かつ3電子ボルト(3eV)を超えるまでであることを特徴とする請求項13に記載の装置。
【請求項16】
前記表面の前記非選択部分は、基部フィラメント材料を含み、該表面の前記選択部分は、該基部フィラメントの材料と該基部フィラメント材料上の材料の薄膜層とを含むことを特徴とする請求項13に記載の装置。
【請求項17】
前記材料の薄膜層は、タンタルであり、前記基部フィラメント材料は、タングステンであることを特徴とする請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記表面の前記選択部分は、基部フィラメント材料を含み、該表面の前記非選択部分は、該基部フィラメントの材料と該基部フィラメント材料上の材料の薄膜層とを含むことを特徴とする請求項13に記載の装置。
【請求項19】
前記材料の薄膜層は、プラチナであり、前記基部フィラメント材料は、タングステンであることを特徴とする請求項18に記載の装置。
【請求項20】
前記表面の前記選択部分は、基部フィラメントの材料と該基部フィラメント材料上の材料の薄膜層とを含み、該表面の前記非選択部分は、該基部フィラメント材料と該基部フィラメント材料上の材料の第2の薄膜層とを含むことを特徴とする請求項13に記載の装置。
【請求項21】
材料の第1の薄膜層が、タンタルであり、前記材料の前記第2の薄膜層は、プラチナであり、前記基部フィラメント材料は、タングステンであることを特徴とする請求項20に記載の装置。
【請求項22】
前記非選択部分は、基部フィラメント材料を含み、前記選択部分は、変換された材料を含むことを特徴とする請求項13に記載の装置。
【請求項23】
前記基部フィラメント材料は、タングステンであり、前記変換された材料は、炭化タングステンであることを特徴とする請求項22に記載の装置。
【請求項24】
前記選択部分は、基部フィラメント材料を含み、前記非選択部分は、変換された材料を含むことを特徴とする請求項13に記載の装置。
【請求項25】
前記基部フィラメント材料は、タングステンであり、前記変換された材料は、二炭化タングステンであることを特徴とする請求項23に記載の装置。
【請求項26】
前記選択部分は、第1の変換された材料を含み、前記非選択部分は、第2の変換材料を含むことを特徴とする請求項13に記載の装置。
【請求項27】
前記第1の変換された材料は、炭化タングステンであり、前記第2の変換された材料は、二炭化タングステンであることを特徴とする請求項25に記載の装置。
【請求項28】
前記非選択部分は、基部フィラメント材料を含み、前記選択部分は、浸炭された材料を含むことを特徴とする請求項13に記載の装置。
【請求項29】
前記非選択部分は、基部フィラメント材料を含み、前記選択部分は、該基部フィラメント材料から拡散されたそこからの元素を含むことを特徴とする請求項13に記載の装置。
【請求項30】
前記基部フィラメント材料からの前記拡散元素は、トリウムであり、該基部フィラメント材料は、トリア化タングステンであることを特徴とする請求項28に記載の装置。
【請求項31】
前記基部フィラメント材料の前記拡散元素は、セリウムであり、該基部フィラメント材料は、セリウム化タングステンであることを特徴とする請求項28に記載の装置。
【請求項32】
前記基部フィラメント材料の前記拡散元素は、ランタンであり、該基部フィラメント材料は、ランタン化タングステンであることを特徴とする請求項28に記載の装置。
【請求項33】
前記円筒形フィラメントの前記表面から放出された電子を受け取るために配置された陽極を更に含むことを特徴とする請求項13に記載の装置。
【請求項34】
電子ビームが、前記陽極上に入射し、
前記電子ビームは、実質的に前記円筒形フィラメントの前記表面の前記選択部分から前記陽極に向けて放出される、
ことを特徴とする請求項33に記載の装置。
【請求項35】
前記電子ビームは、前記表面の非選択部分に対して、前記選択部分からより高いビーム強度を放出することを特徴とする請求項33に記載の装置。
【請求項36】
前記表面の前記選択部分の前記変更された特性は、実質的に該選択部分からのみの電子の放出をもたらすことを特徴とする請求項13に記載の装置。
【請求項37】
X線管の陰極に対して、表面を有する円筒形フィラメントを設ける段階と、
前記円筒形フィラメントの前記表面の一部分を選択する段階と、
優先的に前記選択部分から電子を放出するように前記選択部分の特性を変更する段階と、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項38】
前記円筒形フィラメントの前記表面は、凸状湾曲を有し、
前記特性は、前記凸状湾曲であり、
前記特性を変更する段階は、前記凸状湾曲を前記円筒形フィラメントの前記選択部分に沿って実質的に平坦又は凹状の湾曲に変える段階を含む、
ことを特徴とする請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記表面の前記凸状湾曲を変える段階は、前記円筒形フィラメントの選択部分から材料を除去する段階を含むことを特徴とする請求項37に記載の方法。
【請求項40】
前記選択部分から材料を除去する段階は、前記円筒形フィラメントの該選択部分を研削する段階を含むことを特徴とする請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記選択部分から材料を除去する段階は、前記円筒形フィラメントの該選択部分の区域を切り込む段階を含むことを特徴とする請求項39に記載の方法。
【請求項42】
前記選択部分から材料を除去する段階は、前記円筒形フィラメントの直径の半分を除去して、前記表面の該選択部分内に放出面湾曲を設ける段階を更に含むことを特徴とする請求項39に記載の方法。
【請求項43】
前記選択部分から材料を除去する段階は、前記円筒形フィラメントの直径の半分未満を除去して、前記表面の該選択部分内に放出面湾曲を形成する段階を更に含むことを特徴とする請求項39に記載の方法。
【請求項44】
前記選択部分から材料を除去する段階は、放電機械加工を用いる段階を含むことを特徴とする請求項41に記載の方法。
【請求項45】
前記表面の前記凸状湾曲を変える段階は、前記選択部分の材料を曲げる段階を含むことを特徴とする請求項38に記載の方法。
【請求項46】
前記材料を曲げる段階は、
前記円筒形フィラメントを円筒形溝付きマンドレル上に巻き付ける段階と、
前記円筒形フィラメントの前記選択部分の前記材料を変形させる望ましい形状を有する楔部で該円筒形フィラメントを押圧することにより、該選択部分の該材料を変形させる段階と、
を更に含む、
ことを特徴とする請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記円筒形フィラメントの前記表面は、仕事関数を有する基部フィラメント材料を有し、
前記特性は、前記仕事関数であり、
前記特性を変更する段階は、前記円筒形フィラメントの前記表面の非選択部分に対して前記選択部分における前記仕事関数を変える段階を含む、
ことを特徴とする請求項37に記載の方法。
【請求項48】
前記選択部分の前記仕事関数は、前記表面の非選択部分に対してより低いことを特徴とする請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記仕事関数を変更する段階は、基部フィラメント材料を有する前記表面の前記選択部分上に材料の薄膜層を堆積させる段階を含むことを特徴とする請求項47に記載の方法。
【請求項50】
前記材料の薄膜層は、タンタルであり、前記基部フィラメント材料は、タングステンであることを特徴とする請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記仕事関数を変更する段階は、基部フィラメント材料を有する前記表面の非選択部分上に材料の薄膜層を堆積させる段階を含むことを特徴とする請求項47に記載の方法。
【請求項52】
前記材料の薄膜層は、プラチナであり、前記基部フィラメント材料は、タングステンであることを特徴とする請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記仕事関数を変更する段階は、
基部フィラメント材料を有する前記表面の前記選択部分上に材料の第1の薄膜層を堆積させる段階と、
前記表面の非選択部分上に材料の第2の薄膜層を堆積させる段階と、
を含む、
ことを特徴とする請求項47に記載の方法。
【請求項54】
前記材料の第1の薄膜層は、炭化タングステンであり、前記材料の第2の薄膜層は、二炭化タングステンであることを特徴とする請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記仕事関数を変更する段階は、前記選択部分の前記基部フィラメント材料の組成を第1の材料に変換する段階を含むことを特徴とする請求項47に記載の方法。
【請求項56】
前記基部フィラメント材料は、タングステンであり、前記第1の材料は、炭化タングステンであることを特徴とする請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記仕事関数を変更する段階は、前記非選択部分の基部フィラメント材料を第1の材料に変換する段階を含むことを特徴とする請求項47に記載の方法。
【請求項58】
前記基部フィラメント材料は、タングステンであり、前記第1の材料は、二炭化タングステンであることを特徴とする請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記仕事関数を変更する段階は、基部フィラメント材料を炭化タングステンまで浸炭し、かつ該浸炭基部フィラメント材料を前記非選択部分から除去する段階を含むことを特徴とする請求項47に記載の方法。
【請求項60】
前記仕事関数を変更する段階は、表面の前記選択部分において基部フィラメント材料であるタングステンを炭化タングステンまで浸炭する段階を含むことを特徴とする請求項47に記載の方法。
【請求項61】
前記仕事関数を変更する段階は、前記選択部分の基部フィラメント材料を第1の材料に変換し、かつ前記非選択部分の該基部フィラメント材料を第2の材料に変換する段階を含むことを特徴とする請求項53に記載の方法。
【請求項62】
前記第1の材料は、炭化タングステンであり、前記第2の材料は、二炭化タングステンであることを特徴とする請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記仕事関数を変更する段階は、
表面の前記選択部分の基部フィラメント材料を浸炭する段階と、
前記炭化タングステンとの反応により、前記円筒形フィラメントの前記基部材料の第1の元素を第2の元素へ化学還元する段階と、
前記円筒形フィラメントの前記基部材料に形成された前記第2の元素を前記表面の前記選択部分まで拡散させる段階と、
を含む、
ことを特徴とする請求項47に記載の方法。
【請求項64】
前記仕事関数を変更する段階は、
表面の前記選択及び非選択部分の基部フィラメント材料を浸炭する段階と、
表面の前記非選択部分から前記浸炭された材料を除去する段階と、
前記円筒形フィラメントの前記基部材料の第1の元素を第2の元素に還元する段階と、
前記円筒形フィラメントの前記基部材料の前記第2の元素を前記表面の前記選択部分まで拡散させる段階と、
を含む、
ことを特徴とする請求項48に記載の方法。
【請求項65】
前記基部フィラメント材料は、トリア化タングステンであり、該基部フィラメント材料の前記第1の元素は、トリアであり、前記第2の元素は、トリウムであることを特徴とする請求項64に記載の方法。
【請求項66】
前記基部フィラメント材料は、セリウム化タングステンであり、該基部フィラメント材料の前記第1の元素は、セリアであり、前記第2の元素は、セリウムであることを特徴とする請求項64に記載の方法。
【請求項67】
前記基部フィラメント材料は、ランタン化タングステンであり、該基部フィラメント材料の前記第1の元素は、酸化ランタンであり、前記第2の元素は、ランタンであることを特徴とする請求項64に記載の方法。
【請求項68】
陰極のフィラメントからX線管内の陽極に電子ビームを放出する段階、
を含み、
前記フィラメントは、選択された部分に変更された特性を有する表面を収容し、
それによって前記X線管の陽極上に入射する電子ビームの幅を低減する段階、
を更に含むことを特徴とする方法。
【請求項69】
前記フィラメントの前記表面の選択部分から放出される電子の数を該表面の非選択部分から放出される電子の数よりも大きいように増大する段階を更に含むことを特徴とする請求項68に記載の方法。
【請求項1】
表面を有するX線管の陰極として機能する円筒形フィラメント、
を含み、
前記表面の選択された部分は、該表面の非選択部分に対して少なくとも1つの変更された特性を有する、
ことを特徴とする装置。
【請求項2】
前記円筒形フィラメントの前記表面から放出された電子を受け取る陽極を更に含むことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記陽極上に入射する電子ビームを更に含み、
前記電子ビームは、実質的に、前記電子放出陰極構造体の前記表面の前記選択部分のみから前記陽極に向けて放出される、
ことを特徴とする請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記電子ビームは、前記陰極表面の非選択部分に対して、該陰極表面の前記選択部分からより高いビーム強度を放出することを特徴とする請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記表面の前記選択部分の前記変更された特性は、実質的に前記選択部分のみから電子を放出するように構成されることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記変更された特性は、前記選択部分に沿った実質的に平坦又は凹状の湾曲であることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記表面の前記選択部分の放出面半径は、前記電子放出陰極を含む円筒形フィラメントの直径の半分であることを特徴とする請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記表面の前記選択部分の放出面半径は、前記円筒形フィラメントの直径の半分よりも小さいか又は半分よりも大きいことを特徴とする請求項6に記載の装置。
【請求項9】
前記円筒形フィラメントの前記表面から放出された電子を受け取る陽極を更に含むことを特徴とする請求項6に記載の装置。
【請求項10】
電子ビームが、前記陽極上に入射し、
前記電子ビームは、実質的に前記円筒形フィラメントの前記表面の前記選択部分から前記陽極に向けて放出される、
ことを特徴とする請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記電子ビームは、前記表面の非選択部分に対して、前記選択部分からより高いビーム強度を放出することを特徴とする請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記変更された特性は、仕事関数であることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項13】
前記選択部分の前記仕事関数は、前記表面の非選択部分に対してより低いことを特徴とする請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記選択部分と前記非選択部分の前記仕事関数の差は、電子ボルト(eV)の約1と9/10(1.9eV)であることを特徴とする請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記選択部分と前記非選択部分の前記仕事関数の差は、0.1よりも大きく、かつ3電子ボルト(3eV)を超えるまでであることを特徴とする請求項13に記載の装置。
【請求項16】
前記表面の前記非選択部分は、基部フィラメント材料を含み、該表面の前記選択部分は、該基部フィラメントの材料と該基部フィラメント材料上の材料の薄膜層とを含むことを特徴とする請求項13に記載の装置。
【請求項17】
前記材料の薄膜層は、タンタルであり、前記基部フィラメント材料は、タングステンであることを特徴とする請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記表面の前記選択部分は、基部フィラメント材料を含み、該表面の前記非選択部分は、該基部フィラメントの材料と該基部フィラメント材料上の材料の薄膜層とを含むことを特徴とする請求項13に記載の装置。
【請求項19】
前記材料の薄膜層は、プラチナであり、前記基部フィラメント材料は、タングステンであることを特徴とする請求項18に記載の装置。
【請求項20】
前記表面の前記選択部分は、基部フィラメントの材料と該基部フィラメント材料上の材料の薄膜層とを含み、該表面の前記非選択部分は、該基部フィラメント材料と該基部フィラメント材料上の材料の第2の薄膜層とを含むことを特徴とする請求項13に記載の装置。
【請求項21】
材料の第1の薄膜層が、タンタルであり、前記材料の前記第2の薄膜層は、プラチナであり、前記基部フィラメント材料は、タングステンであることを特徴とする請求項20に記載の装置。
【請求項22】
前記非選択部分は、基部フィラメント材料を含み、前記選択部分は、変換された材料を含むことを特徴とする請求項13に記載の装置。
【請求項23】
前記基部フィラメント材料は、タングステンであり、前記変換された材料は、炭化タングステンであることを特徴とする請求項22に記載の装置。
【請求項24】
前記選択部分は、基部フィラメント材料を含み、前記非選択部分は、変換された材料を含むことを特徴とする請求項13に記載の装置。
【請求項25】
前記基部フィラメント材料は、タングステンであり、前記変換された材料は、二炭化タングステンであることを特徴とする請求項23に記載の装置。
【請求項26】
前記選択部分は、第1の変換された材料を含み、前記非選択部分は、第2の変換材料を含むことを特徴とする請求項13に記載の装置。
【請求項27】
前記第1の変換された材料は、炭化タングステンであり、前記第2の変換された材料は、二炭化タングステンであることを特徴とする請求項25に記載の装置。
【請求項28】
前記非選択部分は、基部フィラメント材料を含み、前記選択部分は、浸炭された材料を含むことを特徴とする請求項13に記載の装置。
【請求項29】
前記非選択部分は、基部フィラメント材料を含み、前記選択部分は、該基部フィラメント材料から拡散されたそこからの元素を含むことを特徴とする請求項13に記載の装置。
【請求項30】
前記基部フィラメント材料からの前記拡散元素は、トリウムであり、該基部フィラメント材料は、トリア化タングステンであることを特徴とする請求項28に記載の装置。
【請求項31】
前記基部フィラメント材料の前記拡散元素は、セリウムであり、該基部フィラメント材料は、セリウム化タングステンであることを特徴とする請求項28に記載の装置。
【請求項32】
前記基部フィラメント材料の前記拡散元素は、ランタンであり、該基部フィラメント材料は、ランタン化タングステンであることを特徴とする請求項28に記載の装置。
【請求項33】
前記円筒形フィラメントの前記表面から放出された電子を受け取るために配置された陽極を更に含むことを特徴とする請求項13に記載の装置。
【請求項34】
電子ビームが、前記陽極上に入射し、
前記電子ビームは、実質的に前記円筒形フィラメントの前記表面の前記選択部分から前記陽極に向けて放出される、
ことを特徴とする請求項33に記載の装置。
【請求項35】
前記電子ビームは、前記表面の非選択部分に対して、前記選択部分からより高いビーム強度を放出することを特徴とする請求項33に記載の装置。
【請求項36】
前記表面の前記選択部分の前記変更された特性は、実質的に該選択部分からのみの電子の放出をもたらすことを特徴とする請求項13に記載の装置。
【請求項37】
X線管の陰極に対して、表面を有する円筒形フィラメントを設ける段階と、
前記円筒形フィラメントの前記表面の一部分を選択する段階と、
優先的に前記選択部分から電子を放出するように前記選択部分の特性を変更する段階と、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項38】
前記円筒形フィラメントの前記表面は、凸状湾曲を有し、
前記特性は、前記凸状湾曲であり、
前記特性を変更する段階は、前記凸状湾曲を前記円筒形フィラメントの前記選択部分に沿って実質的に平坦又は凹状の湾曲に変える段階を含む、
ことを特徴とする請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記表面の前記凸状湾曲を変える段階は、前記円筒形フィラメントの選択部分から材料を除去する段階を含むことを特徴とする請求項37に記載の方法。
【請求項40】
前記選択部分から材料を除去する段階は、前記円筒形フィラメントの該選択部分を研削する段階を含むことを特徴とする請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記選択部分から材料を除去する段階は、前記円筒形フィラメントの該選択部分の区域を切り込む段階を含むことを特徴とする請求項39に記載の方法。
【請求項42】
前記選択部分から材料を除去する段階は、前記円筒形フィラメントの直径の半分を除去して、前記表面の該選択部分内に放出面湾曲を設ける段階を更に含むことを特徴とする請求項39に記載の方法。
【請求項43】
前記選択部分から材料を除去する段階は、前記円筒形フィラメントの直径の半分未満を除去して、前記表面の該選択部分内に放出面湾曲を形成する段階を更に含むことを特徴とする請求項39に記載の方法。
【請求項44】
前記選択部分から材料を除去する段階は、放電機械加工を用いる段階を含むことを特徴とする請求項41に記載の方法。
【請求項45】
前記表面の前記凸状湾曲を変える段階は、前記選択部分の材料を曲げる段階を含むことを特徴とする請求項38に記載の方法。
【請求項46】
前記材料を曲げる段階は、
前記円筒形フィラメントを円筒形溝付きマンドレル上に巻き付ける段階と、
前記円筒形フィラメントの前記選択部分の前記材料を変形させる望ましい形状を有する楔部で該円筒形フィラメントを押圧することにより、該選択部分の該材料を変形させる段階と、
を更に含む、
ことを特徴とする請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記円筒形フィラメントの前記表面は、仕事関数を有する基部フィラメント材料を有し、
前記特性は、前記仕事関数であり、
前記特性を変更する段階は、前記円筒形フィラメントの前記表面の非選択部分に対して前記選択部分における前記仕事関数を変える段階を含む、
ことを特徴とする請求項37に記載の方法。
【請求項48】
前記選択部分の前記仕事関数は、前記表面の非選択部分に対してより低いことを特徴とする請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記仕事関数を変更する段階は、基部フィラメント材料を有する前記表面の前記選択部分上に材料の薄膜層を堆積させる段階を含むことを特徴とする請求項47に記載の方法。
【請求項50】
前記材料の薄膜層は、タンタルであり、前記基部フィラメント材料は、タングステンであることを特徴とする請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記仕事関数を変更する段階は、基部フィラメント材料を有する前記表面の非選択部分上に材料の薄膜層を堆積させる段階を含むことを特徴とする請求項47に記載の方法。
【請求項52】
前記材料の薄膜層は、プラチナであり、前記基部フィラメント材料は、タングステンであることを特徴とする請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記仕事関数を変更する段階は、
基部フィラメント材料を有する前記表面の前記選択部分上に材料の第1の薄膜層を堆積させる段階と、
前記表面の非選択部分上に材料の第2の薄膜層を堆積させる段階と、
を含む、
ことを特徴とする請求項47に記載の方法。
【請求項54】
前記材料の第1の薄膜層は、炭化タングステンであり、前記材料の第2の薄膜層は、二炭化タングステンであることを特徴とする請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記仕事関数を変更する段階は、前記選択部分の前記基部フィラメント材料の組成を第1の材料に変換する段階を含むことを特徴とする請求項47に記載の方法。
【請求項56】
前記基部フィラメント材料は、タングステンであり、前記第1の材料は、炭化タングステンであることを特徴とする請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記仕事関数を変更する段階は、前記非選択部分の基部フィラメント材料を第1の材料に変換する段階を含むことを特徴とする請求項47に記載の方法。
【請求項58】
前記基部フィラメント材料は、タングステンであり、前記第1の材料は、二炭化タングステンであることを特徴とする請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記仕事関数を変更する段階は、基部フィラメント材料を炭化タングステンまで浸炭し、かつ該浸炭基部フィラメント材料を前記非選択部分から除去する段階を含むことを特徴とする請求項47に記載の方法。
【請求項60】
前記仕事関数を変更する段階は、表面の前記選択部分において基部フィラメント材料であるタングステンを炭化タングステンまで浸炭する段階を含むことを特徴とする請求項47に記載の方法。
【請求項61】
前記仕事関数を変更する段階は、前記選択部分の基部フィラメント材料を第1の材料に変換し、かつ前記非選択部分の該基部フィラメント材料を第2の材料に変換する段階を含むことを特徴とする請求項53に記載の方法。
【請求項62】
前記第1の材料は、炭化タングステンであり、前記第2の材料は、二炭化タングステンであることを特徴とする請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記仕事関数を変更する段階は、
表面の前記選択部分の基部フィラメント材料を浸炭する段階と、
前記炭化タングステンとの反応により、前記円筒形フィラメントの前記基部材料の第1の元素を第2の元素へ化学還元する段階と、
前記円筒形フィラメントの前記基部材料に形成された前記第2の元素を前記表面の前記選択部分まで拡散させる段階と、
を含む、
ことを特徴とする請求項47に記載の方法。
【請求項64】
前記仕事関数を変更する段階は、
表面の前記選択及び非選択部分の基部フィラメント材料を浸炭する段階と、
表面の前記非選択部分から前記浸炭された材料を除去する段階と、
前記円筒形フィラメントの前記基部材料の第1の元素を第2の元素に還元する段階と、
前記円筒形フィラメントの前記基部材料の前記第2の元素を前記表面の前記選択部分まで拡散させる段階と、
を含む、
ことを特徴とする請求項48に記載の方法。
【請求項65】
前記基部フィラメント材料は、トリア化タングステンであり、該基部フィラメント材料の前記第1の元素は、トリアであり、前記第2の元素は、トリウムであることを特徴とする請求項64に記載の方法。
【請求項66】
前記基部フィラメント材料は、セリウム化タングステンであり、該基部フィラメント材料の前記第1の元素は、セリアであり、前記第2の元素は、セリウムであることを特徴とする請求項64に記載の方法。
【請求項67】
前記基部フィラメント材料は、ランタン化タングステンであり、該基部フィラメント材料の前記第1の元素は、酸化ランタンであり、前記第2の元素は、ランタンであることを特徴とする請求項64に記載の方法。
【請求項68】
陰極のフィラメントからX線管内の陽極に電子ビームを放出する段階、
を含み、
前記フィラメントは、選択された部分に変更された特性を有する表面を収容し、
それによって前記X線管の陽極上に入射する電子ビームの幅を低減する段階、
を更に含むことを特徴とする方法。
【請求項69】
前記フィラメントの前記表面の選択部分から放出される電子の数を該表面の非選択部分から放出される電子の数よりも大きいように増大する段階を更に含むことを特徴とする請求項68に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4a】
【図4b】
【図5a】
【図5b】
【図6】
【図7a】
【図7b】
【図7c】
【図7d】
【図7e】
【図7f】
【図7g】
【図7h】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4a】
【図4b】
【図5a】
【図5b】
【図6】
【図7a】
【図7b】
【図7c】
【図7d】
【図7e】
【図7f】
【図7g】
【図7h】
【図8】
【図9】
【図10】
【公表番号】特表2009−526366(P2009−526366A)
【公表日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−554275(P2008−554275)
【出願日】平成19年1月29日(2007.1.29)
【国際出願番号】PCT/US2007/002661
【国際公開番号】WO2007/092228
【国際公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【出願人】(500414202)ヴァリアン メディカル システムズ インコーポレイテッド (6)
【公表日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年1月29日(2007.1.29)
【国際出願番号】PCT/US2007/002661
【国際公開番号】WO2007/092228
【国際公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【出願人】(500414202)ヴァリアン メディカル システムズ インコーポレイテッド (6)
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