説明

X線透視撮影台

【課題】 天板から取り外すことなく、簡単且つ確実にその高さを変更することのできる握り棒を備えたX線透視撮影台を提供すること。
【解決手段】 被検者寝載用天板2を備えたX線透視撮影台において、天板2の上面に左右一対の握り棒4が取り付けられ、該握り棒4は被検者Dが握ることのできる握り部6を備え、この握り部6が高さ変更手段を介して天板2の上面に対してその高さが調整できるように形成され、これにより握り棒4を天板2から取り外すことなくその高さを調整できるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検者寝載用天板(寝台)を備えたX線透視撮影台に関するものであり、殊に、天板上に横たわる被検者が握る握り棒を備えたX線透視撮影台に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被検者寝載用天板を備えたX線透視撮影台において、天板上に横たわる被検者を検査する場合、天板の角度をかえることにより被検者の姿勢(体位)を変化させて各部位の透視、撮影を行っている。この場合、天板を動かしている最中や、頭側が下方に傾いた逆傾斜時などに被検者が握って自身の体を支える握り棒が天板に設けられている(特許文献1参照)。
【0003】
この握り棒は、被検者が検査中に天板上で体位変換を行う際に落下しないように支える柵としての機能も有しており、被検者の安心感を得るためにも、ある程度の高さが要求される。反面、検査中に術者が被検者に対し穿刺などの術前処置をする場合や、側方向からの透視、撮影を行う場合、或いは被検者が側方から天板へ乗り降りする場合などには握り棒が邪魔になる。
このように握り棒が邪魔になるときに、例えば特許文献2に示すように、天板から取り外すことができるようにしたものが提案されている。これによれば、両端を折り曲げた握り棒(2)の各先端に、頭部を大径とした軸状の係合部(きのこ形支持軸2a)を設け、この係合部(2a)を天板(1)に設けた一対の鍵穴状の取付孔(だるま形透孔1b)の大径部(1b2)に差し込んで、係合部の大径頭部(2a1)を取付孔の小径部(1b1)に移行させることにより取り付けるようにし、逆に小径部から大径部にスライドさせることにより取り外すことができるように形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−113346号公報
【特許文献2】特開平10−184629号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記の従来手段では、握り棒を天板に取り付ける際に、係合部(2a)を左右の取付孔(1b)の大径部(1b2)に差し込んで小径部(1b2)に移行させたる操作が面倒であると共に、着脱できるようにするためには係合部と取付孔の小径部との係合力に限界があり、そのため、使用中に握り棒の係合部が取付孔の大径部の方向に移動して握り棒がガタついたり、不用意に外れたりする虞があった。また、握り棒を取り外したときにその格納、管理が面倒である、といった大きな欠点があった。
【0006】
そこで本発明は、上記の課題を解決し、天板から取り外すことなく、簡単且つ確実にその高さを変更することのできる握り棒を備えたX線透視撮影台を提供することを主たる目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明では次のような技術的手段を講じた。即ち、本発明のX線透視撮影台にあっては、被検者寝載用天板を備えたX線透視撮影台において、天板の上面に左右一対の握り棒が取り付けられ、該握り棒は被検者が握ることのできる握り部を備え、この握り部が、高さ変更手段を介して天板の上面に対してその高さが調整できるように形成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明のX線透視撮影台は上記のごとく構成されているので、検査中に術者が被検者に術前処置をする場合や、側方向からの透視、撮影を行う場合、或いは被検者が側方から天板へ乗り降りする場合などには握り棒を低くすることによって握り棒による障害を解消することができ、殊に握り棒を天板に取り付けたり、取り外したりするものでなく、握り棒を天板に取り付けたまま握り部の天板上面に対する高さを変更するものであるから、高さ変更に要する時間が短くなって検査中の作業の流れを妨げることがなく、加えて、不要なときに握り棒を天板から取り外す必要がないから、従来のように取り外したあとの握り棒の格納や保管に煩わされることがない、といった優れた効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明にかかるX線透視撮影台の概略的な構成図。
【図2】本発明における高さ変更手段の第1の実施例を示す一部断面正面図。
【図3】上記実施例の動作状態を示す正面図。
【図4】図2におけるA−A線断面図。
【図5】本発明における高さ変更手段の第2の実施例を示す一部断面正面図。
【図6】図5におけるB−B線断面図。
【図7】第2実施例におけるロック機構の別実施例を示す断面図。
【図8】図7におけるC−C線断面図。
【図9】本発明における高さ変更手段の第3の実施例を示す一部断面正面図。
【図10】上記第3実施例の動作状態を示す正面図。
【図11】上記第3実施例の側面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下において本発明にかかるX線透視撮影台について図面に示した実施例に基づき説明する。
図1は本発明にかかるX線透視撮影台の概略構成を示した全体図であって、床面に設置固定される基台1と、この基台1に起倒回動可能に支持された天板2と、この天板2上の被検者Dを透視撮影するためのX線管3とからなり、天板2の上面には左右一対の握り棒4並びに被検者Dの肩を支える肩当て5が設けられている。前記握り棒4は天板2の上面に対して平行な棒状の握り部6を備え、この握り部6が高さ変更手段を介して天板2の上面に対してその高さが調整できるように形成されている。
【0011】
図2〜図4は本発明における握り部6の高さ変更手段の第1の実施例を示すものであって、この実施例では握り部6の両端に配置された脚杆7を含み、脚杆7の上端が上部枢軸8を介して握り部6に回動可能に連結され、下端が天板2に固定されたボス9に対して下部枢軸10を介して回動可能に連結されている。即ち、握り部6並びに左右の脚杆7は4つの枢軸8、8、10、10による4点リンク機構により折りたたみ可能に形成されている。尚、前記ボス9は凹状受け部9aを有し、この凹部受け部9aに脚杆7の薄く形成された差込部7aが差し込まれて前記枢軸10により連結されている。
更に、脚杆7を図2に示す立ち上がり姿勢と図3の傾倒姿勢とに保持するロック機構11が前記脚杆7の何れか一方に設けられている。このロック機構11は前記下部枢軸10を含み、枢軸10の先端部分がボス9に螺入され、枢軸10の他端部が外部に露出して大径のつまみ12を形成している。このつまみ12を螺入方向、即ち締付方向に回動することにより、脚杆7の差込部7aとボス9の凹状受け部9aとの相対的な隙間を埋めて脚杆7の回動がロックされるようになっている。
【0012】
従ってこの実施例にあっては、脚杆7を立ち上げたり傾倒させたりすることにより、簡単に握り部6を天板2の上面に対して高くしたり、低くしたりすることができるとともに、ロック機構11により立ち上がり姿勢を確実にロックすることができるので、安全に使用することができる。
【0013】
図5並びに図6は本発明における高さ変更手段の第2の実施例を示すものであって、天板2の上面に対して平行な握り部6の両端が同方向に折り曲げられて脚杆7’を形成しており、この脚杆7’の下端の薄く形成された差込部7aがボス9の凹状受け部9aに差し込まれ、握り部6の軸芯方向に沿った枢軸10により回動可能に連結されている。また何れか一方の枢軸10、実施例では右側の枢軸10は、前記第1実施例と同様にロック機構11の一部を構成しており、上述同様に、枢軸10の先端部分がボス9に螺入され、枢軸10の他端部が外部に露出して大径のつまみ12を形成している。このつまみ12を螺入方向、即ち締付方向に回動することにより、握り部6下端の枢支部分とボス9との相対的な隙間を埋めて脚杆7の回動がロックされるようになっている。従って、ロック機構11を解除することにより容易に図5の立ち上がり姿勢と、図6の天板側方に向かった傾倒姿勢とに変更することができる。またこの実施例では、枢軸10が左右2箇所だけで済むことから構造を簡略化することができる。
【0014】
図7並びに図8は前記第2実施例におけるロック機構11の別実施例を示すものであって、枢軸10の両端が外部に露出してその一端に押しボタン13が設けられ、他端に大径のフランジ14が設けられており、このフランジ14からボス9を貫通して脚杆7’の差込部7aに設けた二つの係合孔7b、7b’に選択的に係合、離脱可能に挿入される係合ピン16が設けられている。この係合ピン16はスプリング15により常時何れかの係合孔に係合した姿勢に付勢されているが、押しボタン13をスプリング15に抗して押すことにより係合孔7b、7b’から離脱するように形成されている。また、係合ピン16が図7並びに図8に示すように、係合孔7bに係合したときには脚杆7’が立ち上がり姿勢となり、他方の係合孔7b’に係合したときには図8の仮想線で示した傾倒姿勢となるように設定されている。
これにより、押しボタン13を押すだけでロックを解除することができて簡単に握り部6を高くしたり低くしたりすることができ、高くして被検者が使用するときは係合ピン16が係合孔7bに係入して確実にその姿勢をロックすることができるので安全に使用することができる。
尚、この図7並びに図8で示したロック機構11は、第1実施例のロック機構11にかえてそのまま適用することが可能である。
【0015】
図9〜図11は本発明における高さ変更手段の第3の実施例を示す。この実施例では、前記握り部6の両端が同方向に折り曲げられて下端が開口する筒状部17を形成しており、この筒状部17が天板2に固定された円柱状のボス9’にスライド可能に套嵌されている。従って、この実施例では、円柱状のボス9’と前記筒状部17とが協働して伸縮可能な脚杆7’を形成する。更に、この脚杆7’を所望の長さで保持するロック機構11が設けられている。この実施例におけるロック機構11は、筒状部17の側面に上下方向に沿って形成された長孔18と、該長孔18からボス9’に向かって螺入された調整ネジ19と、調整ネジ19の外端に設けられた大径のつまみ20とからなり、調整ネジ19を緩めることにより脚杆7’が伸縮可能となり、調整ネジ19を締め付けることによりロックできるように形成されている。
従って、調整ネジ19を緩めたり、締め付けたりすることにより容易に図9の握り部6を持ち上げた姿勢と、図10の押し下げた姿勢、若しくはその中間の姿勢に変更することができる。尚、この実施例において、図に示すように筒状部17の内部にスプリング21を収納して握り部6を常時持ち上げ方向に付勢させるようにしてもよい。これにより握り部6を低い姿勢から高くする場合に左右バランスよく容易に上動させることができる。
【0016】
以上本発明の代表的な実施例について説明したが、本発明は必ずしも上記の実施例構造のみに特定されるものではない。例えば、上記実施例ではロック機構を何れか一方の脚杆に設けた例を示したが、両方の脚杆に設けてもよいことは勿論である。その他本発明ではその目的を達成する範囲内で適宜修正、変更することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0017】
本発明は、X線透視撮影台の被検者寝載用天板(寝台)に適用することができる。
【符号の説明】
【0018】
D 被検者
2 天板
4 握り棒
6 握り部
7、7’ 脚杆
11 ロック機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者寝載用天板を備えたX線透視撮影台において、天板の上面に左右一対の握り棒が取り付けられ、該握り棒は被検者が握ることのできる握り部を備え、この握り部が高さ変更手段を介して天板の上面に対してその高さが調整できるように形成されていることを特徴とするX線透視撮影台。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−196583(P2012−196583A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−167605(P2012−167605)
【出願日】平成24年7月27日(2012.7.27)
【分割の表示】特願2008−271787(P2008−271787)の分割
【原出願日】平成20年10月22日(2008.10.22)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】