説明

X線造影剤の造影能改善剤ならびに腸管洗浄配合剤および腸管洗浄用キット

【課題】従来の注腸X線検査前処置不良による診断の問題点を解消し、投薬の便宜性を高めかつ患者特に身体の不自由な患者や高齢者に負担をかけることのない消化管X線検査法及びそれに用いる前処置用薬剤を提供すること。
【解決手段】消化管運動促進剤を有効成分としてなることを特徴とする消化管検査用X線造影剤の造影能改善剤、ならびに、腸管洗浄剤およびこれに加えて消化管運動促進剤を有効成分としてなることを特徴とする腸管洗浄配合剤、および、腸管洗浄剤およびこれに加えて消化管運動促進剤を使用することを特徴とする腸管洗浄用キットまたは包装品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線造影剤の造影能改善剤、詳しくは消化管運動促進剤を有効成分としてなることを特徴とする消化管検査用X線造影剤の造影能改善剤、ならびに腸管洗浄配合剤、詳しくは腸管洗浄剤およびこれに加えて消化管運動促進剤を有効成分としてなることを特徴とする腸管洗浄配合剤、および腸管洗浄用キット、詳しくは腸管洗浄剤およびこれに加えて消化管運動促進剤を使用することを特徴とする腸管洗浄用キットまたは包装品に関する。
【背景技術】
【0002】
特公平3−54937号公報「特許請求の範囲」第1項に記載の一般式で表されるベンズアミド誘導体は、消化管運動機能促進作用を有する消化器疾患治療薬として知られていて、制吐剤あるいは消化管機能亢進剤として、急・慢性胃炎、胃・十二指腸潰瘍、胃神経症、胃下垂などの疾患における食欲不振、悪心、嘔吐、腹部膨満感等の治療及び予防に、また食道・胆道系疾患、便秘症の治療及び予防に用いることができる薬物である。そして、各種の誘導体のなかで同第5項に記載の4-アミノ-5-クロロ-2-エトキシ-N-[[4-(4-フルオロベンジル)-2-モルホリニル]メチル]ベンズアミドのクエン酸塩(一般名:クエン酸モサプリド)は、慢性胃炎に伴う消化器症状(胸やけ、悪心・嘔吐)を適用症とした消化管運動促進剤として上市されている(商品名「ガスモチン」、大日本製薬株式会社製)。
【0003】
周知のように、食事の欧米化に伴い日本でも大腸癌が急増しており、早期発見の目的から大腸癌検診が実施されるに至り、大腸内視鏡検査やバリウム注腸X線検査はスクリーニングあるいは精査に欠かせない検査法となっている。また、潰瘍性大腸炎やクローン病をはじめとする炎症性腸疾患も著しい増加を示しており、これら検査の重要性は急速に高まっている。
【0004】
大腸疾患の大部分は粘膜に起こる病変によるものであり、病変の発見はもとより微細な病変の性状を把握するには、注腸X線検査や大腸内視鏡検査は、重要な手段である。
【0005】
従来知られている注腸X線検査法は、大別すると充満法、二重造影法、圧迫法、粘膜法などである。
【0006】
これらの方法のうち注腸二重造影法は病変の描出とその診断に最適であり、現在の検査の主体を占めている。注腸二重造影とは、硫酸バリウム水懸濁液よりなる造影剤を腸内に注入し、これを排出することなく被験者の体位変換により造影剤を深部大腸に到達させ、陽性造影剤である硫酸バリウムを大腸の内壁に薄い層として付着させ、陰性造影剤である空気を同時に注入して大腸を膨らませ、X線を透過して、大腸粘膜面の状態をX線フィルム上に画き出す方法である。
【0007】
注腸X線検査には腸管内容物を排除する前処置の実施が不可欠であり、前処置の結果如何により注腸X線検査の成績は大きく影響を受ける。
【0008】
従来より、注腸X線検査前処置にはBrown変法(ブラウン変法)と呼ばれるは前処置法が行われている。これは、低脂肪・低繊維食よりなる大腸検査食の摂取と下剤(クエン酸マグネシウムなどの塩類下剤およびピコスルファートナトリウムなどの接触性下剤)の投与により大腸内容物を除去する方法であり、この方法により、大腸粘膜の状態を微細な模様の網の目状の像(ファイン・ネットワーク・パターン(fine network pattern))として描出することが可能となっている。
【0009】
しかし、ブラウン変法は、残渣が腸管内に残り、検査に支障をきたす前処置不良例が見られることが少なくない。また、このブラウン変法は、造影剤の付着性については問題が少ない反面、前日から注腸食を摂取しなければならない、さらには塩類下剤による下痢をきたすため患者には負担が大きい。
【0010】
別法としては、腸管洗浄剤(例えば、商品名「ニフレック」(粉剤)、味の素ファルマ株式会社製)を水に溶解して、この溶解液を経口投与し腸管内容物を排除する前処置法が採用されている。しかし、この腸管洗浄剤を用いた前処置法は、腸管内の残水により造影剤の腸管粘膜への付着具合及びファイン・ネットワーク・パターンの描出が不良である例が散見される。
【0011】
このように、腸管洗浄剤単独による前処置法では、良好な二重造影像が得られず、腸管粘膜面における微細なネットワークパターンの描出が困難な場合が多い。また、腸管洗浄剤の水溶解液の飲用量が多く味も好ましいものではないので嘔気、腹痛等を訴える患者も少なくない。他方、大腸は複雑な立体構造をもっており、注腸された造影剤が体位変換によって大腸深部まで送り込まれるようにするには技術者に相当な熟練が必要とされる。
【0012】
さらに、造影剤を腸壁に充分に付着させるには、体位変換をきめ細かく、種々の体位になるように行う必要があり、その場合、身体の不自由な患者や高齢者には負担の多いこととなる。
【0013】
以上より、造影剤の造影能を損なうことなく消化管X線検査でき、かつ検査前日の食事制限が不要等、簡便で受容性の高い前処置法およびそれに用いる薬剤の開発が望まれている。
【0014】
また、抱井らは、大腸内視鏡検査において、経口腸管洗浄剤とクエン酸モサプリドの併用によって経口腸管洗浄液の飲用量を減量する試みを行っている(Pharma Medica, vol.17, No.12, 1999, 132-133)。この報告では、大腸内視鏡検査時に腸管内残便を観察し、両剤併用による洗浄効果を評価している。
【0015】
しかしながら、大腸内視鏡検査においては、造影剤を用いることなく内視鏡で腸管内を直接観察、診断するため、両剤を併用して注腸X線検査前処置を行った場合の造影剤の造影能についての知見はなんら記載されていない。また、両剤を配合した腸管洗浄配合剤の形態の剤形や両剤を使用した腸管洗浄用キットまたは包装品の形態の剤形についての記載もない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】Pharma Medica, vol.17, No.12, 1999, 132-133
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、従来の注腸X線検査前処置不良による診断の問題点を解消し、投薬の便宜性を高めかつ患者特に身体の不自由な患者や高齢者に負担をかけることのない消化管X線検査法及びそれに用いる前処置用薬剤の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明者らは、前項記載の目的を達成すべく種々研究を行ってきた結果、従来の欠点を解消した消化管検査用X線造影剤の造影能改善剤、ならびに消化管のX線画像の読影を可能とするための造影能改善剤および腸管洗浄剤の両者を配合した腸管洗浄するための洗浄配合剤、および同じ両者を使用する腸管洗浄用キットまたは包装品を提供することに成功した。
【0019】
すなわち、本発明者らは、前掲特公平3−54937号公報「特許請求の範囲」第1項に記載の一般式で表されるベンズアミド誘導体は、急・慢性胃炎、胃・十二指腸潰瘍、胃神経症、胃下垂などの疾患における食欲不振、悪心、嘔吐、腹部膨満感等の治療及び予防に、また食道・胆道系疾患、便秘症の治療及び予防に用いることができるのみならず、硫酸バリウム等の消化管検査用X線造影剤の造影能を改善できるとの知見を得たのである。
【0020】
より詳細には、前記ベンズアミド誘導体によれば、腸管洗浄剤による造影剤の腸管粘膜の付着性が妨げられる問題点が解消され、診断に耐えうるX線透視画像を見ることができ、また鮮明な画像の撮影が可能となること、さらに、腸管洗浄剤と上記ベンズアミド誘導体を同時又は非同時に投与できるキットを使用することで、投薬、服用の利便性が高まり、患者の副作用に対する注意も喚起できること、さらにまた、このようなキットは、その中に処置に必要な薬剤が揃えられており薬剤の取り違え等による医療過誤の防止にも役立つことを見いだし、このような知見に基づいて本発明を完成するに到った。
【0021】
すなわち、本発明は、消化管運動促進剤を有効成分としてなることを特徴とする消化管検査用X線造影剤の造影能改善剤、ならびに、腸管洗浄剤およびこれに加えて消化管運動促進剤を有効成分としてなることを特徴とする腸管洗浄配合剤、および、腸管洗浄剤およびこれに加えて消化管運動促進剤を使用することを特徴とする腸管洗浄用キットまたは包装品に関する。
【0022】
因みに、消化管運動促進剤に消化管検査用X線造影剤の造影能改善作用のあることは、前掲「ニフレック」を後に使用した場合のシサプリド(日本大腸検査学会雑誌第16号第91〜96頁)を除いて、従来知られていない。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0024】
本発明に言う消化管運動促進剤としては、クエン酸モサプリドを含む前掲特公平3−54937号公報「特許請求の範囲」第1項に記載の一般式で表されるベンズアミド誘導体、シサプリド、メトクロプラミドなどのセロトニン5−HT4受容体刺激薬;ドンペリドンなどのドパミンD2受容体遮断薬;塩酸イトプリドなどのアセチルコリンエステラーゼ阻害・ドパミンD2受容体遮断薬;等ならびにこれらの化合物と同じ薬理作用を示す化合物を挙げることができる(日薬理誌113,299〜307(1999)参照)。これらの化合物のなかでは不整脈誘発等の副作用の少ない点でクエン酸モサプリドがもっとも好ましいと考えられる((株)メディカルレビュー社1998年発行「モサプリドと消化管運動」)。
【0025】
本発明に言う腸管洗浄剤としては、等張化剤と電解質(塩類下剤不含)を主要な成分とするもの、あるいはクエン酸マグネシウム(特開平5−306221号公報)、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム等の塩類下剤を等張化剤を使用して等張水溶液としたものを挙げることができる。
【0026】
なお、等張化剤としては、ポリエチレングリコール、特に分子量が4,000程度のもの、デキストラン、デキストリン、ヒドロキシエチルスターチ、ポリデキストロース、アラビアゴム、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、及びペクチンなどの水溶性高分子類が利用できる。さらに、トレハロース、エリトリトール、キシリトール、フラクトオリゴ糖、ラクチトール及びマルチトールなどの糖類が利用できる。
【0027】
因みに、等張化剤と電解質を主要な成分とする腸管洗浄剤の具体例としては、ポリエチレングリコールと電解質との組合せの組成からなるもの(例えば特開平1−125319号公報に開示の発明に係わる前掲「ニフレック」)、デキストラン、デキストリン、ヒドロキシエチルスターチ、ポリデキストロース、アラビアゴム及びペクチンから選ばれる少なくとも1種の水溶性高分子と電解質との組合せの組成からなるもの(特開平2−25424号公報、同3−206046号公報)、エリトリトールまたはキシリトールと電解質との組合せの組成からなるもの(特開平3−284620号公報)、フラクトオリゴ糖と電解質との組合せの組成からなるもの(特開平3−291228号公報)、およびラクチトール、マルチトールおよびカルボキシメチルセルロースから選ばれる少なくとも1種と電解質とを含有する組成物(特開平5−255092号公報)、等を挙げることができる。
【0028】
腸管洗浄剤は、各成分を粉末状で均一に混合した粉末製剤(例えば、前掲特開平1−125319号公報記載の発明に係わる前掲「ニフレック」)、あるいは錠剤または顆粒剤の剤形に製剤化してもよい。さらに、各成分を水で溶解した溶解液をアルミ缶、可撓性容器、剛性もしくは準剛性の容器に充填した形態をとってもよい。この際、溶解液は常法により殺菌あるいは滅菌されることはもちろんである(特開平9−58747号公報、特開平8−253220号公報など)。
【0029】
なお、消化管運動促進剤および腸管洗浄剤(腸管洗浄液)の本発明における使用量は、それぞれの従来の用途における使用量に準ずることができる。
【0030】
上記の消化管運動促進剤と腸管洗浄剤を有効成分とする本発明の腸管洗浄配合剤は、その調製には特別の制限はなく、適宜常法によることができる。なお、この腸管洗浄配合剤は、注腸X線検査の前処置のみならず、大腸内視鏡検査の前処置にも使用することのできるものである。
【0031】
本発明の腸管洗浄用キットまたは包装品は、その作成には特別の制限はなく、適宜常法によることができる。すなわち、一つの包装形態において少なくとも前述の腸管洗浄剤およびクエン酸モサプリドなどの消化管運動促進剤の両者を有効成分とする製剤が含まれておればよく、そして服用順序、服用方法を記載した指示書、服用を中止しなければならない症状、副作用時の対応が記載された注意書きをキットまたは包装品内に入れることが好ましい。さらに、コップ、服用量のチェックシート、時計、溶解液などを入れておくことができる。
【0032】
一例として、腸管洗浄剤をプラスチック容器に充填し(特開平4−259461号公報参照)、その容器にクエン酸モサプリドの錠剤並びに服用手順が記載された指示書及び副作用の症状とその対処法が記載された注意書きが分離収納されたブリスターパックを取り外し可能に装着する。そして、前記ブリスターパック付プラスチック容器を腸管洗浄剤溶解用の2L容量の容器に挿入あるいは外壁に取り付ける形態が有用である。前記溶解用の容器にあらかじめミネラルウオーター等の溶解液を充填しておくと更に便宜性が高まる。
【0033】
また、腸管洗浄剤の水溶解液が充填された容器に前記ブリスターパックを取り付けてもよい。
【0034】
他の例として、トリプルバッグとも称すべき、可撓性のプラスチック製バッグを融着部によって仕切られた3個の区画に本発明の各薬剤(消化管運動促進剤、腸管洗浄剤および溶解液の3者)を収容できるようにしたキット用バッグを良い例として挙げることができる。このキット用バッグは使用時に手等で押圧することによって、中間の融着部を剥離し、粉末の腸管洗浄剤とその溶解液を混合して腸管洗浄液を調製することができる特徴を有している。そして、このキット用バッグの表面に指示書、注意書きを印刷しておけばバッグひと袋でキット化できる(意願2000−2619)。
【0035】
炎症性腸疾患患者においては、造影剤が腸管粘膜の炎症を刺激し、潰瘍部等の疾患部への悪影響が懸念されるため本発明のキットまたは包装品には、炎症防止の目的でステロイド剤を入れても良い。さらに、腸管洗浄剤の服用を助ける目的で、甘味剤や着香剤を入れても良い。特に等張化剤としてポリエチレングリコールが使用されている場合は、悪味を緩和する目的で着香剤を入れるのが好ましい。
【0036】
なお、消化管運動促進剤と腸管洗浄剤とは同時に使用しても効果の奏される限りは腸管洗浄配合剤(組成物)の形態に調製することができるが、予め消化管運動促進剤を投与しておいてから腸管洗浄液を服用するときのような非同時投与が好ましい場合はキット又は包装品の形態とするのがよい。
【実施例】
【0037】
以下、試験例により本発明を更に詳細に説明する。
【0038】
試験例1
クエン酸モサプリドによる造影剤の造影能改善効果を調べるために、従来大腸内視鏡検査前処置に広く使用されている経口腸管洗浄剤(前掲「ニフレック」(粉剤)1袋を水に溶解して2Lとしたもの)のみで前処置をした場合(対照例)と、前記経口腸管洗浄剤の溶解液を服用する約30分前にクエン酸モサプリド5mgを含有する錠剤(商品名「ガスモチン」、大日本製薬株式会社製)を3錠(合計15mg)服用した以外は対照例と同じ前処置をした場合とで、X線透視画像及び撮像したフイルム上で造影剤の付着性、残水量、およびファイン・ネットワーク・パターンの描出度を比較した。
【0039】
その結果、クエン酸モサプリドを投与した場合は、同量の腸管洗浄液を使用したにも拘わらず残水量が少なく、造影剤の腸管粘膜への付着性が良好で、造影剤の造影能を十分引き出すことができ、従来困難であったファイン・ネットワーク・パターンを描出することが可能となった。従って、クエン酸モサプリドが造影剤の造影能改善剤として有用であることが確認できた。これにより、特にファイン・ネットワーク・パターンの描出度の高さが要求される大腸癌および炎症性腸疾患の診断が精度よく行えることが分かる。
【0040】
次に、大腸検診受験者6名におけるクエン酸モサプリドの服用時期を変更した場合の効果を確認した(試験例2および3)。
【0041】
試験例2
クエン酸モサプリド7.5mgを経口腸管洗浄剤(前掲「ニフレック」(粉剤)1袋を水に溶解して2Lとしたもの)の服用前後に服用した場合(クエン酸モサプリドの服用総量は試験例1におけると同じ15mg)の、左側大腸および右側大腸における造影剤の付着性と大腸内の残水をそれぞれ4段階(4:良好、3:普通、2:やや不良、そして1:不良)で評価した(なお、本試験例では、クエン酸モサプリドは、服用総量を二分して経口腸管洗浄剤の服用30分前に7.5mgおよび服用終了してから30分後に同じく7.5mgを服用したものである)。
【0042】
この評価記録(右側大腸部および左側大腸部それぞれの6例のデータ)に基づき造影剤の付着性、そして残水の両項目につき、前記1〜4の各段階の評価が出現する頻度%を算出した。その結果を下記第1表および第2表に示した。
【0043】
【表1】

【0044】
【表2】

【0045】
試験例3
クエン酸モサプリド15mgを経口腸管洗浄剤(前掲「ニフレック」(粉剤)1袋を水に溶解して2Lとしたもの)の服用終了30分後に服用した場合(クエン酸モサプリドの服用総量は試験例1におけると同じ15mg)について、試験例2におけると同様に評価した結果を下記第3表および第4表に示した。
【0046】
【表3】

【0047】
【表4】

【0048】
このように、試験例1〜3から、クエン酸モサプリドによる造影剤の造影能改善効果は、クエン酸モサプリドを経口腸管洗浄剤の服用前後に分割投与した場合、そして経口腸管洗浄剤の服用前または服用後に投与した場合のいずれの場合でも認められた。
【0049】
本発明に従って腸管洗浄剤に消化管運動促進剤(造影能改善剤)を併用すると残水がより少なくなることから、上記に加えて、鮮明な透視画像が得られ、同定された病変部位を目標に最小限のスキャンで検査を行うことができるので、患者の苦痛や患者のX線被爆量も大幅に軽減することができる。特に高齢者への検査負担を軽減することが可能となる。
【0050】
更に、本発明のキットまたは包装品を使用することにより医療過誤の防止、副作用の発現の未然防止、大腸癌早期発見による医療費の抑制、投薬の簡便性が高まる。
【0051】
なお、コンピューター断層撮影(X線CT)を行う場合においても、前述の効果を奏する。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明の、造影能改善剤は大腸内視鏡検査やバリウム注腸X線検査の精度を高めるとともに患者の検査前処置及び検査時の負担を軽減して患者のQOL(生活の質)の改善に貢献する。さらに、キット化することにより、投薬の便宜性、安全性が向上し医療従事者の負担を軽減することが可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
消化管運動促進剤を有効成分としてなることを特徴とする消化管検査用X線造影剤の造影能改善剤。
【請求項2】
腸管洗浄剤およびこれに加えて消化管運動促進剤を有効成分としてなることを特徴とする腸管洗浄配合剤。
【請求項3】
腸管洗浄剤およびこれに加えて消化管運動促進剤を使用することを特徴とする腸管洗浄用キットまたは包装品。

【公開番号】特開2010−265328(P2010−265328A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−188993(P2010−188993)
【出願日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【分割の表示】特願2000−293507(P2000−293507)の分割
【原出願日】平成12年9月27日(2000.9.27)
【出願人】(000000066)味の素株式会社 (887)
【出願人】(000002912)大日本住友製薬株式会社 (332)
【Fターム(参考)】