説明

X線造影糸付きガーゼ

【課題】 X線造影糸の抜け止め用に縦糸を密織りする手間を省く。X線造影糸の抜け止め用に縦糸を増やさない。X線造影糸の抜け止め効果を高める。
【解決手段】 縦糸と横糸を平織りし、横糸7の折り返し端付近の耳部1の縦糸6群を密織りしたガーゼにおいて、耳部1の密織り縦糸6群にX線造影糸4が縦糸として混入して織り込まれており、X線造影糸4が耳部1の密織り縦糸群6の中間又は横糸7折り返し端側の縁に位置し、X線造影糸4の横糸7折り返し端側の反対側に耳部の密織り縦糸6が配列して隣接している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療に用いられるX線造影糸付きガーゼに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1のX線造影糸付きガーゼは、縦糸と横糸を平織りしており、横糸の折り返し端、耳の縦糸又はこれに近い縦糸をX線造影糸にしている。X線造影糸付きガーゼは、手術時に人体内に入れて使用される。このガーゼは、人体内に残った場合、X線造影糸がX線写真に写り、発見し易い。
【0003】
特許文献2のX線造影糸付きガーゼは、縦糸と横糸を平織りしており、縦糸のうちの少なくとも1本をX線造影糸にし、X線造影糸の抜け止めを施している。この抜け止めは、特許文献2によると、次のようである。X線造影糸の両側に近接する複数本の縦糸は、お互いが接触し、かつ、X線造影糸とも接触するように密に織り込んでいる。X線造影糸の両側に密に織り込まれる縦糸は、それぞれ、2本以上で4本以下にしている。また、X線造影糸の両側に接触する2本の縦糸は、扁平状にし、X線造影糸と面接触するように織り込んでいる。
【0004】
【特許文献1】実公昭49−47500号公報
【特許文献2】特開2003−325573号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
[背景技術の課題]
特許文献1のX線造影糸付きガーゼにおいては、縦糸のX線造影糸は、通常の目の粗い平織りによって横糸に挟まれているだけである。抜け出し易い。X線造影糸が抜け落ちたガーゼは、人体内に残った場合、X線写真に写らず、発見し難い。
【0006】
特許文献2のX線造影糸付きガーゼにおいては、縦糸のX線造影糸は、平織りによって厚さ方向の両側が横糸に挟まれている一方、横糸方向の両側が密に織られた縦糸に挟まれて接触している。
【0007】
ところが、特許文献2の技術においては、X線造影糸の抜け止めのために、X線造影糸とその両側に近接する縦糸をお互いが接触するように密に織り込む手間が掛る。その上、縦糸は、X線造影糸の抜け止め用に密に織り込むために、本数が増加する。製造原価が増える。
【0008】
また、縦糸のX線造影糸は、ガーゼの横糸方向の中間に位置し、X線造影糸の両側の抜け止め用縦糸の外側は、通常の目の粗い平織りである。X線造影糸の片側に隣接する抜け止め用縦糸も、他の片側に隣接する抜け止め用縦糸も、それぞれ、X線造影糸側と反対側、通常の平織り部分にずれてX線造影糸から離れることがある。抜け止め用縦糸がX線造影糸から離れると、X線造影糸が抜け出し易くなる。
【0009】
[課題を解決するための着想]
医療用の平織りのガーゼには、一般に、横糸方向の両側の耳部、横糸の折り返し端付近の縦糸を糸のほつれ止め用に密織りするガーゼと、横糸の折り返し端付近の縦糸を密織りしないガーゼがある。なお、特許文献1、2のガーゼは、耳部の縦糸を密織りしておらず、後者のガーゼである。
【0010】
本発明者は、前者のガーゼ、耳部の縦糸を糸のほつれ止め用に密織りするガーゼに着目した。この種のガーゼにおいて、耳部の密織り縦糸をX線造影糸の抜け止めにも利用することにした。
【0011】
ガーゼの原布を織る際、密織り耳部になる縦糸群にX線造影糸を縦糸として混入し、X線造影糸を含めて耳部の縦糸群を密織りし、縦糸のX線造影糸を耳部の密織り縦糸群の横糸方向中間に織り込み、X線造影糸の横糸折り返し端側とその反対側に、それぞれ、耳部の密織り縦糸を配列する。X線造影糸は、横糸方向の両側を耳部の密織り縦糸で挟まれ、横糸方向の両側に抜け止め用縦糸が隣接する。
【0012】
すると、耳部の密織り縦糸以外の縦糸をX線造影糸の抜け止め用に密織りする手間が省かれる。その上、縦糸の本数は、X線造影糸の抜け止め用に増加する必要がない。
【0013】
また、X線造影糸の横糸折り返し端側に隣接する抜け止め用縦糸は、その反対側に隣接する抜け止め用縦糸とは異なり、X線造影糸側と反対側にずれようとしても、横糸の折り返し端に阻まれる。即ち、X線造影糸側と反対側にずれ難く、X線造影糸から離れ難い。抜け止め用縦糸がX線造影糸側と反対側にずれてX線造影糸が抜け出し易くなることが半減する。X線造影糸の抜け止め効果が高い。
【0014】
上記の場合、縦糸のX線造影糸は、耳部の密織り縦糸群の横糸方向中間に配置したが、耳部の密織り縦糸群の縁、横糸折り返し端側の縁に配置する。すると、X線造影糸は、横糸の折り返し端と耳部の密織り縦糸に挟まれ、横糸方向の両側に横糸の折り返し端と耳部のすべての密織り縦糸が隣接する。耳部の密織り縦糸に横糸の折り返し端が加わって、X線造影糸の抜け止めになる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
1)縦糸と横糸を平織りし、横糸の折り返し端付近の密織り耳部の縦糸群にX線造影糸を縦糸として混入し、X線造影糸を含めて耳部の縦糸群を密織りし、縦糸のX線造影糸を耳部の密織り縦糸群の中間又は横糸折り返し端側の縁に配置し、X線造影糸の横糸折り返し端側の反対側に耳部の密織り縦糸を配列して隣接することを特徴とするX線造影糸付きガーゼの製造法。
【0016】
2)縦糸と横糸を平織りし、横糸の折り返し端付近の耳部の縦糸群を密織りしたガーゼであって、
耳部の密織り縦糸群にX線造影糸が縦糸として混入しており、縦糸のX線造影糸が耳部の密織り縦糸群の中間又は横糸折り返し端側の縁に織り込まれており、X線造影糸の横糸折り返し端側の反対側に耳部の密織り縦糸が配列して隣接していることを特徴とするX線造影糸付きガーゼ。
【0017】
3)上記2)のX線造影糸付きガーゼにおいて、
縦糸のX線造影糸は、耳部の密織り縦糸群の中間に位置し、横糸折り返し端側とその反対側に、それぞれ、耳部の密織り縦糸が配列して隣接し、横糸方向の両側が耳部の密織り縦糸で挟まれていることを特徴とする。
【0018】
4)上記2)のX線造影糸付きガーゼにおいて、
縦糸のX線造影糸は、耳部の密織り縦糸群の横糸折り返し端側の縁に位置し、横糸折り返し端側の反対側に耳部の密織り縦糸が配列して隣接し、横糸方向の両側が耳部の密織り縦糸と横糸の折り返し端で挟まれていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
X線造影糸の抜け止め用に耳部以外の縦糸を密織りする手間が省かれる。X線造影糸の抜け止め用に縦糸を増加する必要がない。
【0020】
また、X線造影糸の横糸折り返し端側に抜け止め用縦糸が隣接する場合、その抜け止め用縦糸は、その反対側に隣接する抜け止め用縦糸とは異なり、横糸の折り返し端に阻まれて、X線造影糸側と反対側にずれ難く、X線造影糸から離れ難い。X線造影糸の抜け止め効果が高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
[第1例(図1〜図5参照)]
本例のX線造影糸付きガーゼは、医療用であり、手術時に人体内に入れて使用される。
【0022】
このガーゼの原布は、織機において、縦糸と横糸をそれぞれ40番手の綿糸にし、縦糸と横糸の密度を、それぞれ、密織り部を除いて12±1本/cmにして、約30cm幅の帯状に平織りする。この際、横糸の折り返し端付近の両側の耳部の縦糸群は、それぞれ、最大密度で密織りする。片側の耳部の縦糸群には、X線造影糸を縦糸として混入する。
【0023】
X線造影糸付きガーゼの平織り原布は、図1に示すように、左右の両側の耳部1の縦糸群をそれぞれに縦糸密織り部1にし、長さ約30cm毎に横糸のない糸抜き部2を形成し、糸抜き部2の前後の両側の横糸群3をそれぞれ横糸密織り部3にしている。片側の密織り耳部1には、横糸方向の中間位置にX線造影糸4を縦糸として織り込んでいる。
【0024】
X線造影糸4は、X線が透過しない造影剤の硫酸バリウムを含んだポリプロピレンやポリエステルなどの合成樹脂の糸である。直径は、0.6〜1mm位であり、40番手の綿糸より太い。
【0025】
片側の密織り耳部1にX線造影糸4を織り込んだ平織り原布は、各糸抜き部2の縦糸とX線造影糸4を中間位置で切断し、図2に示すように、約30cm角の尺角ガーゼにする。
【0026】
この尺角ガーゼの両側の耳部1、縦糸密織り部1は、それぞれ、縦糸6の密度が平織物の最大密度であり、縦糸6の間の距離が横糸7の直径以下であって、横糸7を挟む最小距離である。縦糸6と横糸7は、綿糸、変形し易い糸であって、湾曲したり、扁平になったりする。従って、耳部1の密織り縦糸6は、横糸7横断部分を除いて、隣の縦糸6と接触していることがある。なお、X線造影糸4は、縦糸6と横糸7、綿糸程には変形し易くない。
【0027】
片側の耳部1、縦糸密織り部1は、図3〜図5に一部を拡大して示すように、縦糸のX線造影糸4が横糸7方向の中央に位置している。X線造影糸4の横糸7折り返し端側とその反対側には、それぞれ、耳部1の密織り縦糸6が配列して隣接している。X線造影糸4の両側の密織り縦糸6は、それぞれ、耳部1のすべての密織り縦糸6の半分である。縦糸のX線造影糸4は、横糸7方向の両側が耳部1の密織り縦糸6で挟まれている。また、縦糸のX線造影糸4は、ガーゼの厚さ方向の両側面、上側面と下側面に多数の横糸7が交互に接触して交差し、厚さ方向の両側が多数の横糸7に挟まれている。X線造影糸4の両側の密織り縦糸6は、X線造影糸4を挟む横糸7が緩むのを防止している。X線造影糸4の抜け止め用になっている。
【0028】
X線造影糸4の横糸7折り返し端側に隣接する抜け止め用密織り縦糸6は、その反対側に隣接する抜け止め用密織り縦糸6とは異なり、横糸7の折り返し端に阻まれて、X線造影糸4側と反対側にずれ難く、X線造影糸4から離れ難い。X線造影糸4の抜け止め効果が高い。なお、X線造影糸4の横糸7折り返し端側の反対側に隣接する抜け止め用密織り縦糸6の外側は、通常の目の粗い平織りである。
【0029】
X線造影糸4の両側の抜け止め用密織り縦糸6は、同数であるが、横糸7折り返し端側の抜け止め用密織り縦糸6を減らして、横糸7折り返し端側の反対側の抜け止め用密織り縦糸6を増やしてもよい。また、その増減を逆にしてもよい。
【0030】
[第2例(図6〜図8参照)]
本例のX線造影糸付きガーゼは、縦糸のX線造影糸4の織り込み配置位置が第1例におけるのとは異なる。X線造影糸4は、片側の密織り耳部1の横糸7方向の中間ではなく、横糸7折り返し端側の縁に位置している。
【0031】
このガーゼの片側の耳部1、縦糸密織り部1は、図6〜図8に一部を拡大して示すように、縦糸のX線造影糸4が横糸7折り返し端側の縁に位置している。X線造影糸4は、周面の外側半周強に横糸7の折り返し端が螺旋状に巻き付いて接触している。X線造影糸4の横糸7折り返し端側には、耳部1の密織り縦糸6がなく、横糸7の折り返し端が隣接している。X線造影糸4の横糸7折り返し端側の反対側には、耳部1のすべての密織り縦糸6が配列して隣接している。X線造影糸4は、横糸7方向の両側が耳部1のすべての密織り縦糸6と横糸7の折り返し端で挟まれている。また、X線造影糸4は、多数の横糸7が周面の外側半周強に接触して折り返し、多数の横糸7に挟まれている。
【0032】
X線造影糸4の横糸7折り返し端側の反対側の密織り縦糸6は、第1例におけるのと同様に、X線造影糸4を挟む横糸7が緩むのを防止している。その密織り縦糸6は、本数が第1例におけるのより倍増している。横糸7は、X線造影糸4の半周強に巻き付いており、X線造影糸4と接触する面積が第1例におけるのより広くなっている。X線造影糸4の抜け止め効果が高い。
【0033】
その他の点は、第1例におけるのと同様である。
【0034】
[変形例]
1)上記の実施形態において、X線造影糸4の織り込み場所は、片側の密織り耳部1であるが、両側の密織り耳部1にする。
2)上記の実施形態において、X線造影糸4の織り込み本数は、1本であるが、複数本にする。
3)上記の実施形態において、X線造影糸4は、X線が透過しない造影剤を含んだ合成樹脂の糸であるが、X線が透過しない金属、例えば銀線を含んだ糸にする。
4)上記の実施形態において、ガーゼは、正方形状にしたが、長方形状にする。
5)上記の実施形態において、ガーゼの原布は、両側の耳部1を縦糸密織り部にしたが、X線造影糸を織り込まない片側の耳部を縦糸密織り部にしない。
6)上記の実施形態において、ガーゼの原布は、一定長さ毎に横糸のない糸抜き部2を設け、糸抜き部2の両側を横糸密織り部3にしたが、糸抜き部を設けない。横糸密織り部を設けない。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施形態の第1例におけるX線造影糸付きガーゼの原布の中間省略部分概略平面図。
【図2】同X線造影糸付きガーゼの中間省略概略平面図。
【図3】同X線造影糸付きガーゼのX線造影糸混入耳部の部分拡大平面図。
【図4】図3のA−A線断面図。
【図5】図3のB−B線断面図。
【図6】実施形態の第2例におけるX線造影糸付きガーゼのX線造影糸混入耳部の部分拡大平面図。
【図7】図6のC−C線断面図。
【図8】図6のD−D線断面図。
【符号の説明】
【0036】
1 X線造影糸付きガーゼの耳部、縦糸密織り部、密織り耳部
2 X線造影糸付きガーゼの横糸のない糸抜き部
3 糸抜き部の前後の横糸群、横糸密織り部
4 X線造影糸、縦糸
6 耳部の密織り縦糸、縦糸
7 横糸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦糸と横糸を平織りし、横糸の折り返し端付近の密織り耳部の縦糸群にX線造影糸を縦糸として混入し、X線造影糸を含めて耳部の縦糸群を密織りし、縦糸のX線造影糸を耳部の密織り縦糸群の中間又は横糸折り返し端側の縁に配置し、X線造影糸の横糸折り返し端側の反対側に耳部の密織り縦糸を配列して隣接することを特徴とするX線造影糸付きガーゼの製造法。
【請求項2】
縦糸と横糸を平織りし、横糸の折り返し端付近の耳部の縦糸群を密織りしたガーゼであって、
耳部の密織り縦糸群にX線造影糸が縦糸として混入しており、縦糸のX線造影糸が耳部の密織り縦糸群の中間又は横糸折り返し端側の縁に織り込まれており、X線造影糸の横糸折り返し端側の反対側に耳部の密織り縦糸が配列して隣接していることを特徴とするX線造影糸付きガーゼ。
【請求項3】
縦糸のX線造影糸は、耳部の密織り縦糸群の中間に位置し、横糸折り返し端側とその反対側に、それぞれ、耳部の密織り縦糸が配列して隣接し、横糸方向の両側が耳部の密織り縦糸で挟まれていることを特徴とする請求項2に記載のX線造影糸付きガーゼ。
【請求項4】
縦糸のX線造影糸は、耳部の密織り縦糸群の横糸折り返し端側の縁に位置し、横糸折り返し端側の反対側に耳部の密織り縦糸が配列して隣接し、横糸方向の両側が耳部の密織り縦糸と横糸の折り返し端で挟まれていることを特徴とする請求項2に記載のX線造影糸付きガーゼ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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