X線/コンピュータ断層撮影用のナノ粒子系造影剤及びその製造方法
本発明は一般に、ナノ粒子コアとナノ粒子コアの周囲に配置されたナノシェルとを含んでなるコア/シェル型ナノ粒子であって、凝集体においてナノ粒子コア及びナノシェルがX線/コンピュータ断層撮影(CT)に際して造影剤として機能し得るコア/シェル型ナノ粒子を形成するようなものに関する。通例、かかるコア/シェル型ナノ粒子系X線CT用造影剤は、さらに造影剤を疾患部位に対してターゲティングするためのターゲティング化学種を含んでいる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般にはX線/コンピュータ断層撮影で使用するための造影剤に関し、さらに詳しくはナノ粒子系造影剤及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヨウ素化安息香酸誘導体は、静脈内ヨウ素注射に伴うリスクファクターや副作用にもかかわらず、標準的なX線/コンピュータ断層撮影(CT)用造影剤として使用され続けている。さらに、かかる標準的なCT用造影剤は通例低分子量であり、人体から非常に急速に消失することが知られており、したがってこれらの造影剤を疾患部位に対してターゲティングすることは難しい(Shi−Bao Yu and Alan D.Watson,Chem.Rev.1999,99,2353−2377)。
【0003】
文献には、CTイメージング用のガドリニウム(Gd)又はヨウ素(I)を含む実験的ナノ粒子系が記載されている。しかし、かかる系では、標的組織又はその近傍まで送達され得る重原子は比較的少数でしかない。かかるアプローチには、ヨウ素化分子をリポソームに封入するリポソームアプローチ(Leike et al.,Invest.Radiol.2001,36(6),303−308)、並びにG−4 Starburst(登録商標)ポリアミドアミド(PAMAM)デンドリマーにヨウ素原子をコンジュゲートする樹枝状アプローチ(Yordanov et al.,Nano Letters 2002,2(6),595−599)がある。いずれのアプローチでも、せいぜい2〜3百個の重金属(即ち、ガドリニウム)原子が送達されるにすぎない。
【0004】
送達される重金属原子を増やす試みとして、かかる重金属のナノ粒子を使用するものがあった。国際公開第03/075961号及び同第2005/051435号を参照されたい。元素態(ゼロ価)金属種のナノ粒子は最も高い密度(重金属原子の数/体積)を有するものの、確実な合成や酸化による不安定性などに問題がある。金のような不活性金属のナノ粒子(例えば、国際公開第03/075961号に記載されたもの)では、これらの問題を解決できるが、費用効果があまりよくない。
【0005】
国際公開第07/055995号(Bonitatebus et al.)には、ナノ粒子コア及びナノ粒子シェルの少なくとも一方が活性造影剤材料を含むコア/シェル型ナノ粒子が記載されている。
【0006】
以上の点から、新規CT用造影剤、特に確実な合成、コスト削減、画像コントラスト増強、血中半減期の増大、毒性の低下、放射線量の減少及びターゲティング能力の1以上の点で性能の向上及び利益をもたらすことができる造影剤に対するニーズが存在し続けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第03/075961号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2005/051435号パンフレット
【特許文献3】国際公開第07/055995号パンフレット
【特許文献4】国際公開第03/016217号パンフレット
【特許文献5】米国特許第5989580号明細書
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Shi−Bao Yu and Alan D.Watson,Chem.Rev.1999,99,2353−2377.
【非特許文献2】Leike et al.,Invest.Radiol.2001,36(6),303−308.
【非特許文献3】Yordanov et al.,Nano Letters 2002,2(6),595−599.
【非特許文献4】Chan D.C.et al.,Dental Materials,1999,15(3),219−222.
【非特許文献5】Iwasaki,Kentaro et al.,Journal of Physical Chemisty B,2004,108(32),11946−11952.
【非特許文献6】Wang,Chun et al.,ColloidsandSurfaces,B:Biointerfaces,2005,46(4),255−260.
【非特許文献7】Kannan,Balaji et al.,Journal of Vacuum Science & Technology,B:Microelectronics and Nanometer Structures−−Processing,Measurement,and Phenomena,2005,23(4),1364−1370.
【非特許文献8】Papra A.et al.,Langmuir American Chem.Soc.USA,2001,17(5),1457−1460.
【非特許文献9】Agrawal Mukesh et al.,Langmuir:The ACS Journal of Surfaces and Colloids,2008,24(3),1013−1018.
【非特許文献10】Antalek,Brian,Concepts in Magnetic Resonance,Part A:Bridging Education and Research,2007,30A(5),219−235.
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は一般に、ナノ粒子コアとナノ粒子コアの周囲に配置されたナノシェルとを含んでなるコア/シェル型ナノ粒子であって、凝集体においてナノ粒子コア及びナノシェルがX線イメージング(特にコンピュータ断層撮影(CT)イメージング)時に造影剤として機能し得るコア/シェル型ナノ粒子を形成するようなものに関する。
【0010】
本発明は、タンタル(Ta)を非ゼロ価状態で含む能動ナノ粒子コアと、ナノ粒子コアの周囲に配置された受動ナノシェルとを含んでなる造影剤であって、凝集体において能動ナノ粒子コア及び受動ナノシェルがCTイメージング時に造影剤として機能し得るコア/シェル型ナノ粒子を形成するような造影剤に関する。
【0011】
ある実施形態では、X線/コンピュータ断層撮影用造影液が本明細書中に記載される実施形態のいずれかに係る造影剤の集合体(ensemble)を含んでなり、集合体の平均粒径は約10nm以下、好ましくは約3nm以下である。
【0012】
ある実施形態では、本発明は上述の造影剤のいずれかを製造する方法に関する。ある実施形態では、本発明はCTにおけるかかる造影剤の使用方法に関する。
【0013】
ある実施形態では、本発明は、X線/コンピュータ断層撮影用造影剤の製造方法であって、タンタルを含む第1の前駆体材料を用意する段階と、第1の前駆体材料から、タンタルを非ゼロ価状態で含む活性コアを形成する段階と、第2の前駆体材料を用意する段階と、第2の前駆体材料から不活性シェルを形成する段階であって、不活性シェルはコア及びシェルがコア/シェル型ナノ粒子を形成するようにしてコアの周囲に配置される段階とを含んでなる方法に関する。
【0014】
本発明は、ナノ粒子アプローチを使用することで、比較的多数の高密度で高減衰性のタンタル原子を分子状態で送達してCTのコントラスト増強を向上させる。ある実施形態では、本発明はCT造影剤による特定疾患部位のターゲティングを可能にする。ある実施形態では、本発明はマクロファージによるCT用造影剤の取込みを可能にする。ある実施形態では、本発明は血中半減期の増大したCT用造影剤を提供する。
【0015】
以上、本発明の以下の詳細な説明を理解しやすくするため、本発明の特徴をむしろ大まかに略述した。本発明の請求の範囲の主題を構成する本発明のさらなる特徴や利点については、以下に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
本発明及びその利点を一層完全に理解できるように、以下、図面を参照しながら本発明を説明する。
【図1】図1は、構成部分間の関係を示すためコア/シェル型ナノ粒子を一般に示す断面図である。
【図2】図2は、本発明に従って活性コアと不活性シェルとを含むコア/シェル型ナノ粒子の断面図である。
【図3】図3は、本発明のある実施形態に従ってコア/シェル型ナノ粒子をコンピュータ断層撮影用造影剤として使用する方法を流れ図で示す。
【図4】図4は、本発明のある実施形態に従って酸化タンタルコアとポリエチレングリコール(PEG)ポリマーシェルとを含む活性コア/不活性シェル型ナノ粒子の集合体の粒径分布をプロットしたグラフである。
【図5】図5は、本発明のある実施形態に従って酸化タンタルとPEGポリマーシェルとを含む活性コア/不活性シェル型ナノ粒子のTEM画像である。
【図6】図6は、本発明のある実施形態に従って酸化タンタルコアとクエン酸リガンドシェルとを含む活性コア/不活性シェル型ナノ粒子の集合体の粒径分布をプロットしたグラフである。
【図7】図7は、本発明のある実施形態に従って酸化タンタルコアとクエン酸リガンドシェルとを含む活性コア/不活性シェル型ナノ粒子のTEM画像である。
【図8】図8は、酸化タンタルコアとPEGポリマーシェルとを含む活性コア/不活性シェル型ナノ粒子及び酸化タンタルコアとクエン酸リガンドシェルとを含む活性コア/不活性シェル型ナノ粒子に関し、生細胞の百分率をタンタルのモル量に対してプロットしたグラフである。
【図9】図9は、本発明のある実施形態に従って溶液中のC3aを検出するためのC3a標準曲線をプロットしたグラフである。
【図10】図10は、本発明のある実施形態に従って酸化タンタルコアとグルコースシェル、EDTAシェル及びPEGシェルの各々とを含む活性コア/不活性シェル型ナノ粒子並びに各種の対照品に関するC3aの棒グラフである。
【図11】図11は、本発明のある実施形態に従って酸化タンタルコアとPEGシェルとを含む活性コア/不活性シェル型ナノ粒子を注射したラットのコンピュータ断層撮影画像である。
【図12】図12は、本発明のある実施形態に従って酸化タンタルコアとPEGシェルとを含む活性コア/不活性シェル型ナノ粒子を注射したラットの様々な時点における一連のコンピュータ断層撮影画像である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は一般に、ナノ粒子コアとナノ粒子コアの周囲に配置されたナノシェルとを含んでなるコア/シェル型ナノ粒子であって、凝集体においてナノ粒子コア及びナノシェルが特にCTに際してX線造影剤として機能し得るコア/シェル型ナノ粒子を形成するようなものに関する。
【0018】
図面全般に関して述べれば、これらの図面は本発明の特定の実施形態を説明する目的で示すものであって、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではないことを理解されたい。
【0019】
本明細書中で使用する用語の大部分は当業者にとって自明であろうが、本発明の理解を容易にするため、以下の定義を示しておく。しかし、明確に定義されていない場合、各用語は当業者に現在受け入れられている意味をもつものと解釈すべきであることを理解されたい。
【0020】
本明細書中で定義され、またコンピュータ体軸断層撮影法又はコンピュータ支援断層撮影法(CAT)及び体切片X線撮影法としても知られる「コンピュータ断層撮影法」(「CT」と略す)は、単一の回転軸に沿って撮影された多数の一連の二次元X線画像から、デジタル処理を用いて対象物(又は被検体)の内部の三次元画像を生成する断層撮影を用いた医用イメージング方法である。本明細書中ではコンピュータ断層撮影に焦点を合わせて論じるが、当業者であれば、かかる議論が一般にあらゆるタイプのX線イメージングに適用可能であることが理解されよう。
【0021】
本明細書中で定義され、またコントラスト剤としても知られる「造影剤」は、入射するX線を有意に減衰させて、検査対象体積を通過するX線を低減させることができる材料を含む薬剤である。CT画像を再構築し、通常の後処理を行った後には、このようなX線減衰の増大は検査対象体積の密度の増加として解釈され、その結果、画像中においてはバックグラウンド組織に対して造影剤を含む体積のコントラスト増強が生じる。本明細書中での議論は一般にあらゆる形態のX線イメージングに適用可能であるので、本明細書中では本発明の造影剤を一般に「X線/コンピュータ断層撮影用造影剤」という。この用語は、「コンピュータ断層撮影(CT)用造影剤」と互換的に使用される。
【0022】
コア/シェル型ナノ粒子のコア成分及びシェル成分について「活性」及び「不活性」という用語を用いた場合、これらの用語はその成分がCTイメージングにおいてコントラスト増強を生み出す能力を意味する。通常のCTスキャナーは、約10〜約140keVという広いX線エネルギースペクトルを使用している。当業者であればわかるように、特定の材料を通過するX線の単位長さ当たりの減衰量は線形減衰係数として表される。CTイメージングにおいて典型的なX線エネルギースペクトルでは、材料の減衰度は光電吸収効果及びコンプトン散乱効果によって支配される。さらに、線形減衰係数は、入射X線のエネルギー、材料の密度(モル濃度に関係する)、及び材料の原子番号(Z)の関数であることがよく知られている。異種原子の分子化合物又は混合物については、「有効原子番号」Zeffを構成元素の原子番号の関数として計算することができる。化学式が知られている化合物の有効原子番号は、次式で求められる。
【0023】
【数1】
【0024】
式中、Zkは単体元素の原子番号、Pは単体元素の総量、Wfkは分子の総分子量に対する単体元素の重量分率(モル濃度に関係する)である。CTイメージングのための入射X線エネルギーの最適量は撮影対象物のサイズの関数であって、名目値から大きく変動することはないと予測される。また、造影剤材料の線形減衰係数は材料の密度に直線的に依存することも公知である。即ち、材料の密度を増大させたり、或いは造影剤材料のモル濃度を増加させたりすれば、線形減衰係数を増大させることができる。しかし、患者への造影剤材料の注射やそれに付随する有害な効果といった実際的な面から、達成し得るモル濃度には限界がある。したがって、造影剤候補材料を有効原子番号に従って分けるのは合理的である。モル濃度を約50mMとしたときの典型的なCTエネルギースペクトルについての代表的な材料のCTコントラスト増強のシミュレーションに基づけば、有効原子番号が34以上の材料では、約30ハウンスフィールド単位(HU)という適切なコントラスト増強、即ち水より3%高いコントラストが得られると推定される。したがって、本発明者らは、CT用造影剤候補材料を、有効原子番号が34未満(即ち、Zeff<34)であれば不活性であり、有効原子番号が34以上(即ち、Zeff≧34)であれば活性であると定義した。例えば、Handbook of Medical Imaging,Volume 1.Physics and Psychophysics,Eds.J.Beutel,H.L.Kundel,R.L.Van Metter,SPIE Press,2000の第1章を参照されたい。
【0025】
本明細書中で定義される「ナノ粒子」は、約1〜約500nmの平均粒径を有する粒子であり、ナノ粒子コア及びコア/シェル型ナノ粒子凝集体を述べる場合に使用できる。かかるナノ粒子は球状であっても不規則形状であってもよく、特に上記粒度範囲の小さい方の末端では分子錯体と区別される。本明細書中で定義される「ナノシェル」は、コア/シェル型ナノ粒子のシェル領域のことである。かかるナノシェルはナノ粒子コアの周囲に配置されているが、下地であるナノ粒子コアのトポグラフィーに一致する場合としない場合がある。
【0026】
上述の通り、また図1について述べれば、本発明のある実施形態は、(a)ナノ粒子コア101と(b)ナノ粒子コアの周囲に配置されたナノシェル102とを含んでなる造影剤であって、凝集体においてナノ粒子コア及びナノシェルがコンピュータ断層撮影イメージング(一般にはX線イメージング)時に造影剤として機能し得るコア/シェル型ナノ粒子100を形成するようなものに関する。図1には完全に球形のコア/シェル型ナノ粒子の断面を示してあるが、かかるコア/シェル型ナノ粒子は不規則な形状を有していてもよい。
【0027】
ある実施形態では、上述の造影剤はさらに1種以上のターゲティング剤を含んでいる。かかるターゲティング剤は、造影剤を被検体の身体の特定疾患部位に対してターゲティングするために有用である。通例、ターゲティング剤は抗体(例えば、IgG)又は他のペプチドであるが、核酸(例えば、DNA、RNA)その他の適当な化学種であってもよい。一般に、ターゲティング剤はナノ粒子コア及びナノ粒子コアの周囲に配置されたナノシェルの一方又は両方に結合される。かかる結合は、通例、特に限定されないが、ペプチド結合、ジスルフィド結合、イソチオ尿素結合、イソ尿素結合、スルホンアミド結合、アミン結合、カルバメート結合、アミジン結合、ホスホラミデート結合、チオエーテル結合、アリールアミン結合、アリールチオエーテル結合、エーテル結合、ヒドラゾン結合、トリアゾール結合、オキシム結合及びこれらの組合せのような結合からなる。例えば、Bioconjugate Techniques.G.T.Hermanson,Academic Press,1996の第2章を参照されたい。
【0028】
ある実施形態では、上述のCT用造影剤は、コア/シェル型ナノ粒子の表面電荷の制御及び/又はマクロファージ取込みを誘起する官能基(例えば、ポリビニルスルフェート)の付与により、マクロファージ取込みのために最適化される。
【0029】
CT用造影剤/コントラスト剤として使用するための本明細書中に記載されたコア/シェル型ナノ粒子については、ナノ粒子コアは普通には約1〜約100nm、さらに普通には約2〜約80nm、最も普通には約2〜約20nmの平均粒径を有する。ナノ粒子コアの周囲に配置されたナノシェルは、普通には約0.5〜約100nmの平均厚さを有する。したがって、造影剤のナノ粒子コアとナノシェルとの凝集体は、普通には約2〜約500nm、さらに普通には約2〜約100nm、最も普通には約3〜約20nmの平均粒径を有する。
【0030】
ナノ粒子コア及びナノシェルの凝集体は、哺乳類の腎臓(通例はヒトの腎臓)によって排出可能であるのが望ましい場合があることが理解されよう。したがって、造影剤のナノ粒子コア及びナノシェルの凝集体は、普通には約1〜約20nm、さらに普通には約2〜約12nm、最も普通には約3〜約8nmの平均粒径を有し得る。
【0031】
ある実施形態では、X線/コンピュータ断層撮影用造影剤は、本明細書中に記載される実施形態のいずれかに係る造影剤の集合体を含んでいて、集合体の平均粒径は約10nm以下、さらに普通には約7nm以下、さらに普通には約6nm以下、最も普通には約3nm以下である。
【0032】
活性コア/不活性シェル型ナノ粒子
図2について述べれば、本発明は、ナノ粒子コア201とナノ粒子コアの周囲に配置されたナノシェル202とを含んでなる造影剤200であって、凝集体においてナノ粒子コア及びナノシェルがCTイメージング時に造影剤として機能し得るコア/シェル型ナノ粒子200を形成するようなものに関する。
【0033】
上述のナノ粒子コア201を構成する材料は、それがCTでコントラストを増強するための活性材料(Zeff≧34)を含み、活性材料は非ゼロ価状態のタンタルからなるという点で限定されている。ナノ粒子コアは、通例、特に限定されないが酸化タンタルのような材料からなっている。限定ではなく例示を目的として述べれば、Ta2O5に関する有効原子番号(Zeff)は約69である。
【0034】
ナノシェル202を構成する材料は特に限定されないが、一般に活性CT用造影剤材料からなることはなく(Zeff<34)、また一般にナノ粒子コアの周囲に配置できなければならない。好適なかかる材料には、特に限定されないが、リガンド、オリゴマー、ポリマー、クラスター、炭水化物種、官能化シリカ及びこれらの組合せがある。例えば、好適なシェル材料には、特に限定されないが、ポリエチレングリコール、ポリエチレンイミン、ポリメタクリレート、ポリビニルスルフェート、ポリビニルピロリジノン、クエン酸イオン、リンゴ酸イオン、グリコール酸イオン、シラン及びこれらの組合せがある。
【0035】
ある実施形態に従えば、ナノシェルを構成する材料は水溶性である。別法として又は併せて、ある実施形態に従えば、ナノシェルを構成する材料は生体適合性である。
【0036】
ナノシェルは、好ましくはジエチルホスファトエチルトリエトキシシラン(PHS)又は2−[メトキシ(ポリ−エチレノキシ)プロピル]トリメトキシシラン(PEGシラン550)を含む。
【0037】
製造方法
ある実施形態では、本発明は、CT用途において上述のタイプの造影剤のいずれか又はすべてを製造する方法に関する。
【0038】
かかる方法は、(a)タンタルを含む第1の前駆体材料を用意する段階と、(b)第1の前駆体材料から、タンタルを非ゼロ価状態で含む活性コアを形成する段階と、(c)第2の前駆体材料を用意する段階と、(d)第2の前駆体材料から不活性シェルを形成する段階であって、不活性シェルはコア及びシェルがコア/シェル型ナノ粒子を形成するようにしてコアの周囲に配置される段階とを含んでなる。ある実施形態では、不活性シェルは第2の前駆体材料から導かれる水溶性材料を含む。別法として又は併せて、ある実施形態では、かかる方法はさらにナノ粒子の平均粒径を調節する段階を含んでいる。
【0039】
段階の順序及び/又は組合せを変化させ得ることが理解されよう。即ち、ある実施形態に従えば、段階(a)、(b)、(c)及び(d)を順次段階として実施することで活性コア及び第2の前駆体からナノ粒子が形成される。限定ではなく例示を目的として述べれば、ある実施形態では、第1の前駆体はタンタルを非ゼロ価状態で含み、コアは同じ非ゼロ価状態でタンタルの酸化物を含み、段階(b)は第1の前駆体の加水分解を含む。ある実施形態では、第1の前駆体はタンタルの塩(例えば、アルコキシド又はハロゲン化物)を含み、加水分解は第1の前駆体、酸、及び水又は水類似体(例えば、酸化重水素)をアルコール溶媒中で混合すれば進行する。水又は水類似体は加水分解を開始させる。酸とタンタルとのモル比を選択することでナノ粒子コアの粒度を調節できる。ある実施形態に従えば、コアがタンタルの酸化物を含む場合、Si−O結合を介してコアにケイ素含有材料が結合される。ある実施形態に従えば、シロキサンは重合性の基を含むが、これに限定されるものではない。重合は、酸で誘発される縮合重合によって進行し得る。別法として、ある実施形態に従えば、コア上にポリマーを物理吸着させることができる。上述の実施形態のいずれかに従えば、ポリマーは水溶性かつ生体適合性であり得る。好適なポリマーには、特に限定されないが、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリメタクリレート、ポリビニルスルフェート、ポリビニルピロリジノン及びこれらの組合せがある。
【0040】
別法として、ある実施形態に従えば、段階(a)及び(c)が同時に実施される結果、段階(b)及び(d)を同時に実施することで第1及び第2の前駆体からナノ粒子が直接に形成される。限定ではなく例示を目的として述べれば、ある実施形態に従えば、第1の前駆体はタンタルをゼロ価状態で含み、コアはタンタルの酸化物であり、段階(b)及び(d)は一緒になって第1及び第2の前駆体を塩基性水溶液に添加する段階を含む。ある実施形態に従えば、塩基性溶液は約9以上のpHを有する。例えば段階(a)及び(c)を組み合わせることによる同一段階でのコア及びシェルの同時形成は、意外な発見である。さらに、本発明者らは意外にも、例えばこの直接製法を用いて非金属コアの周囲に配置されたリガンド系シェルを形成するため、金属ナノ粒子に関して公知の交換反応(例えば、金ナノ粒子上へのクエン酸シェル形成に関与する反応)が使用できることを発見した。シェルがリガンドを含む場合、第1の前駆体はリガンド試薬を含み得る。例えば、リガンドがクエン酸イオンのようなカルボン酸陰イオンである場合、リガンド試薬は関連するカルボン酸である。好適な代替リガンド試薬には、特に限定されないが、糖、アルコール、ポリアルデヒド及びこれらの組合せがある。グルコースは、非常に小さいナノ粒子の製造を可能にする例である。他の好適な試薬には、特に限定されないが、グリコール酸及びリンゴ酸がある。ある実施形態に従えば、ナノ粒子の粒径はリガンドの正体及び/又は量の選択によって調節される。
【0041】
上述の実施形態のいずれかと組み合わせて、ある実施形態では、X線/コンピュータ断層撮影用製剤(例えば、複数の造影剤を含むもの)の製造方法は、コア/シェル型ナノ粒子の集合体を形成する段階を含む。この場合、集合体の平均粒径は約10nm以下、さらに普通には約7nm以下、最も普通には約6nm以下である。ある実施形態では、平均粒径は約3nm以下である。ある実施形態に従えば、平均粒径は集合体中のナノ粒子を哺乳類の腎臓(例えば、ヒトの腎臓)によって微粒子状態で実質的に排出可能とするように選択されることが理解されよう。
【0042】
集合体の平均粒径は、溶解状態のナノ粒子の粒度分布を調節するために適した任意の技法を用いて調節できる。したがって、ある実施形態では、上述の集合体を形成する段階は、溶解状態の原料集合体を粒度の異なる2以上の母集団に分けるプロセスに原料集合体を通過させる分別段階を含んでいる。例えば各種の濾過プロセスを含め、いくつかの好適な分別技法が当技術分野で知られている。粒子含有流体を(例えば、遠心力その他の手段によって生じるような)加圧力の下でフィルター膜に向けて直接に押しやる通常濾過が普通の技法である。別の好適な技法は、流れの一部を膜に通過させるために役立つ圧力を加えながら、膜の表面に沿って流体を接線方向にポンプ輸送する接線流濾過である。この技法では、通常濾過の場合と異なり、保持された大きい粒子が膜の表面に蓄積することなく接線流によって掃去される。このような掃去効果は、極めて微粒子状の集合体の効率的な粒度ベース分離を達成する点でしばしば有利である。好適な技法の別の例はダイアフィルトレーション(diafiltration)であり、これは濾液が除去されるに従ってプロセス流に緩衝液を添加する接線流濾過プロセスの一種である。当業者はこれらのプロセスに精通しており、それを使用してナノ粒子集合体の所望粒度分布を得る方法にも精通している。ある実施形態では、原料ナノ粒子集合体を分別することで、上述の範囲のいずれかに従った平均粒径を有するナノ粒子の生成物集合体が得られる。
【0043】
ある実施形態では、X線/コンピュータ断層撮影用製剤を精製することで、製剤の性能を妨害し又はその他のやり方で低下させることがある望ましくない化学種が除去される。この目的には透析のような技法が好適である。さらに、ダイアフィルトレーションのような技法が1つの処理段階でナノ粒子溶液を効果的に精製及び分別することが証明されている。例えば、Sweeney et al.,J.Am.Chem.Soc.2006,vol.128,pp 3190−3197を参照されたい。
【0044】
使用方法
ある実施形態では、本発明は、CT用途において上述のタイプの造影剤のいずれか又はすべてを使用する方法に関する。図3について述べれば、かかる方法は、通例、(段階301)活性コンピュータ断層撮影用造影剤材料を含むコア/シェル型ナノ粒子であって、各コア/シェル型ナノ粒子はナノ粒子コアとナノ粒子コアの周囲に配置されたナノシェルとを含むコア/シェル型ナノ粒子の所定量を用意する段階と、(段階302)コア/シェル型ナノ粒子を哺乳類被検体に投与する段階と、(段階303)コア/シェル型ナノ粒子が造影剤として役立つように、コンピュータ断層撮影に従って被検体にX線を照射する段階とを含んでいる。多くのかかる実施形態では、かかるコア/シェル型ナノ粒子はさらにターゲティング剤を含んでいる結果、造影剤を被検体の身体の特定疾患部位に対してターゲティングすることができる。ある実施形態では、上述のコア/シェル型ナノ粒子は、血液中に残存し得る限りにおいて血液プール剤である。
【0045】
上述の造影剤を使用するための上述した方法では、コア/シェル型ナノ粒子は、一般に約5ハウンスフィールド単位以上で約5000ハウンスフィールド単位以下、さらに詳しくは約100ハウンスフィールド単位以上で約5000ハウンスフィールド単位以下のCT信号を与える。
【実施例】
【0046】
以下の実施例は、本発明の特定の実施形態を実証するために示す。当業者には、以下の実施例で開示される方法は単に本発明の例示的な実施形態を表すにすぎないことが理解されるはずである。しかし当業者であれば、本明細書の開示内容を参考にすることで、本発明の技術思想及び技術的範囲を逸脱することなく、ここに記載された特定の実施形態に対して数多くの変更を加えることができ、それでも同等又は同様な結果が得られることが理解されるはずである。
【0047】
実施例1
この実施例は、本発明のある実施形態に従い、CT用造影剤をいかにして製造できるかを例示するために役立つ。この特定の実施例では、酸化タンタルの活性コアにポリマーの不活性シェルが結合される。さらに、この特定の実施例では、シェルはコアを形成した後にコアの周囲に形成される。
【0048】
この実施例は、X線イメージング用のTa2O5ナノ粒子の製造を例示する。窒素下において34mlのn−プロパノール、0.44mlのイソ酪酸及び0.5mlの酸化重水素を記載の順序で混合し、室温で30分間撹拌した。タンタルエトキシド(1.87g)を急速にではあるが滴下状態で添加し、窒素下で撹拌を18時間続けた。タンタルエトキシドはTa(V)、即ち非ゼロ価状態である+5価状態のタンタルを含んでいる。2−[メトキシ(ポリ−エチレノキシ)プロピル]トリメトキシシラン(PEGシラン550、4.832g)を40mlのn−プロパノール溶液として撹拌混合物に添加し、反応物を空気中で1時間還流させた。室温に冷却した後、HCl(125μl、0.1M)を添加し、反応物を一晩撹拌した。脱イオン水(40ml)を添加し、混合物を撹拌し、次いですべての揮発分を除去して透明で無色乃至わずかに黄色のゲル状生成物を得た。静脈内注射用としてナノ粒子を精製するため、生成物を脱イオン水中に可溶化し、100nmの膜で濾過した。水中で12時間の透析(3500〜8000MWCOの透析チューブ)を行い、100nmで濾過し、次いで凍結乾燥によって水を除去することで、約22%wt/wtのタンタルを含むオフホワイトの沈殿を得た。食塩水(0.9%NaCl)を用いて1.8Mという高いタンタル濃度の溶液を調製した。
【0049】
図4は、この実施例に従って製造したナノ粒子の集合体について、通常のDLSで測定した粒径分布を示しており、集合体の平均粒径が7nmであることを表している。図5は、この実施例に従って製造したナノ粒子のTEM画像を示している。
【0050】
実施例2
この実施例は、本発明のある実施形態に従い、CT用造影剤をいかにして製造できるかを例示するために役立つ。この特定の実施例では、酸化タンタルの活性コアにポリマーの不活性シェルが結合される。さらに、この特定の実施例では、シェルはコアを形成した後にコアの周囲に形成される。
【0051】
この実施例は、X線イメージング用のTa2O5ナノ粒子の製造を例示する。窒素下において34mlのn−プロパノール、0.44mlのイソ酪酸及び0.5mlの酸化重水素を記載の順序で混合し、室温で30分間撹拌した。タンタルエトキシド(1.87g)を急速にではあるが滴下状態で添加し、窒素下で撹拌を18時間続けた。タンタルエトキシドはTa(V)、即ち非ゼロ価状態である+5価状態のタンタルを含んでいる。次に、ジエチルホスファトエチルトリエトキシシラン(PHS、3g)を40mlのn−プロパノール溶液として混合物に添加し、反応物を空気中で1.5時間還流させた。室温に冷却した後、水酸化アンモニウム(250μl、0.1M)を添加し、反応物を一晩撹拌した。次に、脱イオン水(40ml)を撹拌しながら反応物に添加し、次いで塩酸(10ml、1.2M)を添加し、50℃で2日間反応させた。冷却後、反応物を水酸化アンモニウムでpH約7〜8に中和し、100nmの膜で濾過した。すべての揮発分を除去して生成物を得た。静脈内注射用としてナノ粒子を精製するため、生成物を脱イオン水(pH7.5〜8)中に可溶化し、100nmの膜で濾過し、水中で12時間透析し(3500〜8000MWCOの透析チューブ)、凍結乾燥することで、約30%wt/wtのタンタルを含む純白の沈殿を得た。IR(ヌジョールマル,NaCl板,cm-1):1454(非常に強い),1413(弱い),1376(強い),1296(弱い),1274(弱い),1218(強い),1170(中位),1029(非常に強い),964(非常に強い),782(中位)。NMR(D2O,ppm):31P,37.4(広い);1H(広がり共鳴),4.16,1.88,1.37,0.85。
【0052】
実施例3
この実施例は、本発明のある実施形態に従い、CT用造影剤をいかにして製造できるかを例示するために役立つ。この特定の実施例では、酸化タンタルの活性コアにクエン酸リガンドの不活性シェルが結合される。さらに、この特定の実施例では、シェルはコアと一緒に形成される。
【0053】
この実施例では、タンタル粉末(325メッシュ、Aldrich社)からのTa2O5ナノ粒子の直接製造が記載される。タンタル粉末はTa(0)、即ちゼロ価状態のタンタルを含んでいた。20mlの30%過酸化水素及び5mlの水酸化アンモニウム溶液(水中の28〜30%NH3)を混合することで溶液を調製した。二つ口フラスコ内においてこれらを窒素下で混合し、氷浴で冷却した。続いて、Ta粉末(5mmol、0.907g)の添加を行い、混合物を2時間撹拌した(小規模では磁気撹拌を使用できるが、大規模では機械的撹拌機の方が適当であり得る)。次いで、クエン酸(15mmol、3.152g)を添加し、フラスコに凝縮器を取り付けた。スラリーを80℃で18時間加熱した。次いで、反応物を放冷し、残留するタンタル粉末を中位グレードガラスフリットで濾別した。濾液をロトエバポレーションによる水の除去で濃縮した。次いで、残った着色溶液をpH7.2に緩衝した水溶液中において3.5Kカットオフで透析した。得られた溶液をナノ粒子について分析した。所望ならば、ナノ粒子を凍結乾燥によって単離してもよい。
【0054】
図6は、この実施例に従って製造したナノ粒子の集合体について、通常のDLSで測定した粒径分布を示しており、集合体の平均粒径が7nmであることを表している。図7は、この実施例に従って製造したナノ粒子のTEM画像を示している。
【0055】
実施例4
この実施例は、本発明のある実施形態に従い、CT用造影剤をいかにして使用できるかを例示するために役立つ。この特定の実施例では、活性コア/不活性シェル型ナノ粒子に関する細胞生存度試験により、試験期間にわたって細胞生存度がほとんど低下しないことが実証される。
【0056】
THP1単球(ATCC TIB−71)をRPMI 1640+10%FBS培地で1×106細胞/mLの最終密度に希釈し、500μLの細胞を24ウェルプレートの各ウェル内にアリコート化した。無菌濾過した酸化タンタルナノ粒子(100mM Ta)をピペットでウェルに加えた。対照ウェルについては、50μLの無菌0.9%食塩水(陰性対照)又は80μLの30%過酸化水素(陽性対照)を細胞に添加した。添加後、プレートを静かに渦動させ、標準条件(37℃、5%二酸化炭素、100%湿度)下で細胞を培養した。
【0057】
インキュベーション後、細胞をピペットで遠心管に移し、20℃で5分間300×gで遠心し、培地を静かに吸引して除去した。細胞を500μLの1X PBSで洗浄し、静かに渦動させ、20℃で5分間300×gで遠心した。細胞を洗浄し、緩衝液を静かに吸引して除去した。製造者のプロトコル(Annexin V FLUOSキット、Roche社)に従い、(インキュベーション緩衝液、アネキシンV−フルオレセイン及びヨウ化プロピジウムを含む)Annexin V FLUOSアッセイ緩衝液を調製し、100μLを各管に加えた。細胞を含む管を静かに渦動させ、室温で15分間インキュベートした。さらに300μLのインキュベーション緩衝液を各管に加えた後、フローサイトメトリー分析を行った。
【0058】
アネキシンV−フルオレセインのみに対して陽性(アポトーシス細胞)、アネキシンV−フルオレセイン及びヨウ化プロピジウムに対して陽性(壊死細胞)、並びに両方に対して陰性(生細胞)である細胞の数を測定した。
【0059】
図8について述べれば、0.1mMまでのTaを含むすべての酸化タンタル製剤が示すアポトーシス細胞又は壊死細胞の数は無視できる程度であり、ナノ粒子への3時間の暴露後における細胞生存度の低下はないことを表している。
【0060】
実施例5
この実施例は、本発明のある実施形態に従い、CT用造影剤をいかにして使用できるかを例示するために役立つ。この特定の実施例では、活性コア/不活性シェル型ナノ粒子の補体活性化試験により、未処理血清又は食塩水処理血清に比べてC3aの目立った増加はないことが実証される。
【0061】
ヒトの血漿及び血清を販売業者(Bioreclamation社)から購入した。血清を単離するため、全血を血清管内に吸い込み、室温で30〜45分間凝固させた。試料を2000×gで10分間遠心し、直ちに血清を−70℃で凍結した。試料をドライアイス上で一晩輸送し、−70℃で貯蔵した。
【0062】
血清を水浴中において37℃で数分間融解した。250μLの血清を24ウェルプレートの個々のウェルに加えた。無菌の試験試料(Ta剤、食塩水及びコブラ毒因子)を血清に加えて300μLの最終体積にした。24ウェルプレートをインキュベーター(37℃)に移し、時々撹拌しながら30分間インキュベートした。
【0063】
図9について述べれば、製造者のプロトコル(C3aアッセイ、Quidel社)に従い、原液及び希釈液を調製してC3a標準曲線及び高/低C3a試料を作成した。
【0064】
30分のインキュベーション後にC3a産生を停止させるため、37.5mMのクエン酸ナトリウムを各ウェルに加え、0.5μLの血清(試験試料を含むもの及び含まないもの)をエッペンドルフ管中の1.5mLのキット試料緩衝液に移した。管を静かに3回転倒させて血清及び試料緩衝液を混合し、次いで100μLの希釈血清をC3a試験ストリップの個々のウェルに加え、室温で60分間インキュベートした。ウェルを洗浄緩衝液で3回洗浄した(1回当たり200μLの洗浄緩衝液、ウェル内に洗浄緩衝液を1回当たり1分間)。100μLのC3aコンジュゲート溶液を添加し、得られた混合物を室温で60分間インキュベートした。洗浄プロトコル(3回洗浄、1回当たり200μLの洗浄緩衝液、ウェル内に洗浄緩衝液を1回当たり1分間)を繰り返し、次いで100μLの基質を各ウェルに加えた。15分間インキュベートした後、100μLの停止溶液を加え、96ウェルUVプレートリーダー上で450nmの吸光度を測定した。C3aレベルをC3a標準曲線から計算した。
【0065】
図10は、分析から得られたデータを示している。詳しくは、図10は、PEGシェル、EDTAシェル、クエン酸シェル及びグルコースシェルの各々を有する酸化タンタルコアを血清中でインキュベートすることで得られた試験データを示している。一部の化合物(Ta EDTA)はC3aレベルを低下させたものの、未処理血清又は食塩水処理血清に比べてC3aの増加を示したものはない。100mMまでのTaの添加によるC3aレベルの顕著な増加は認められない。全Ta含有量を求めるためには、ICP−MSによる元素分析を使用した。
【0066】
実施例6
この実施例は、本発明のある実施形態に従い、コントラストを増強するためにコア/シェル型ナノ粒子系のCT用造影剤をいかにして使用できるかをさらに例示するために役立つ。
【0067】
すべてのイメージング試験は、8kV及び取得時間4分のパラメーターを用いるEXplore LocusマイクロCTイメージングシステム上で実施した。
【0068】
体重約160gの雌のDark Agoutiラットをケタミン/ジアゼパムのIP注射で麻酔した。IVカテーテル(24ゲージ)を尾静脈内に配置し、200μLの無菌食塩水でフラッシュした。次いで、マイクロCT上でリブケージの基底から膀胱までラットを撮影した(注射前スキャン)。スキャンの直後、カテーテルを通して1mLの210mg Ta/mL酸化タンタル−PEG550造影剤をラットに注射し、前回のスキャンの完了後にスキャンした。
【0069】
図12について述べれば、最大強度投影を用いて1/2解像度で画像を再構成して観察した。注射直後、腹部大動脈、大静脈及び腎動脈にコントラストが認められた。注射後14分以内に、造影剤は(膀胱に排出されるので)腎臓及び尿管に認められた。膀胱のコントラストは、注射後23分以内に顕著となった。やはり図12について述べれば、CTイメージング試験は6〜14分の血中クリアランスを示し、次いで30分以内に膀胱への腎排出を示している。
【0070】
注射後60分間にわたってラットを撮影し、次いでケージに戻した。24時間後、ラットを再び撮影したが、膀胱又は腎臓に残留コントラストは認められなかった。注射したラットにいかなる副作用も認められなかった。
【0071】
図11は、Ta2O5及びPEGシェルを含むナノ粒子を用いてマイクロCTイメージングで得られた腹部大動脈画像を示している。
【0072】
実施例7
この実施例は、本発明のある実施形態に従い、コア/シェル型ナノ粒子の集合体の平均粒径を濾過によりいかにして調節できるかをさらに例示するために役立つ。さらに、この実施例では、様々な粒度の溶液を実験室用ラット被検体に投与した。
【0073】
大きい酸化タンタル粒子を除去する方法として、通常濾過(NF)モードで100nm又は20nmの膜フィルターを使用する代わりに、接線流濾過(TFF)を使用した。大きいナノ粒子を除去するためのTFFプロセスでは、100kD〜10kDの範囲内のTFF適合性分子量カットオフ(MWCO)フィルターを使用した。記載範囲(100kD〜10kD MWCO)のフィルターの透過液(permeate)は小さい酸化タンタルナノ粒子を含んでいた。
【0074】
低分子量不純物、塩などを除去することで前記透過液中の小さい酸化タンタルナノ粒子を精製するための方法としても、透析の代わりにTFFを使用した。不純物を除去するためのTFFプロセスでは、10kD〜5kDの範囲内の分子量カットオフ(MWCO)フィルターを使用した。記載範囲(10kD〜5kD MWCO)のフィルターの保留液(retentate)は、精製された小さい酸化タンタルナノ粒子を含んでいた。
【0075】
さらに、順次段階で酸化タンタルナノ粒子を粒度分別及び精製するための方法としてTFFを使用した。例えば、30kD MWCOフィルターを用いるTFFで多分散酸化タンタルナノ粒子を処理することで、約6nmの粒子を保留する(保留液)と共に約3nmの粒子を通過させた(透過液)。次いで、約3nmの粒子を含む透過液は、10kD又は5kD MWCOフィルターを用いるTFFプロセスでは保留液として作用した。
【0076】
TFFは、通常濾過(膜濾過又は遠心濾過)技法と透析技法との組合せで達成できるよりも高い純度で選択粒度のナノ粒子を製造するための効率的でスケーラブルな方法である。
【0077】
上述した方法に従って相異なる公称平均粒度(20nm、6nm及び3nm)をそれぞれ有する3種のナノ粒子溶液を調製し、同一用量レベルで実験室用ラット被検体に投与した。所定の時間後、ラットの腎臓を分析して(mg Ta/g腎臓試料として算出される)保持粒子の濃度を求めた。結果は、粒子クリアランスが平均粒度の強い関数であることを表している。腎臓に関しては、6nm粒子の濃度は20nm粒子の濃度より約20%低く、3nm粒子の濃度は20nm粒子の濃度より約50%低かった。
【0078】
上述の実施形態に関して上記に記載した構造、機能及び動作の一部は本発明を実施する上で必須ではなく、例示的な実施形態を十分に説明するためにのみ示されていることが理解されよう。さらに、上記に引用した特許や刊行物の特定の構造、機能及び動作は本発明と組み合わせて実施できるものの、これらは本発明を実施する上で必須ではないことも理解されよう。さらに、特記しない限り、方法の複数の段階は、特に限定されないが同時に実施することを含め、任意の組合せ及び/又は順序で実施できることも理解されよう。したがって本発明は、請求の範囲で定義される本発明の技術思想及び技術的範囲から実際に逸脱することなく、上記に記載したのとは異なるやり方で実施できることを理解すべきである。
【符号の説明】
【0079】
100 コア/シェル型ナノ粒子
101 ナノ粒子コア
102 ナノシェル
200 コア/シェル型ナノ粒子
201 活性ナノ粒子コア
202 不活性ナノシェル
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般にはX線/コンピュータ断層撮影で使用するための造影剤に関し、さらに詳しくはナノ粒子系造影剤及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヨウ素化安息香酸誘導体は、静脈内ヨウ素注射に伴うリスクファクターや副作用にもかかわらず、標準的なX線/コンピュータ断層撮影(CT)用造影剤として使用され続けている。さらに、かかる標準的なCT用造影剤は通例低分子量であり、人体から非常に急速に消失することが知られており、したがってこれらの造影剤を疾患部位に対してターゲティングすることは難しい(Shi−Bao Yu and Alan D.Watson,Chem.Rev.1999,99,2353−2377)。
【0003】
文献には、CTイメージング用のガドリニウム(Gd)又はヨウ素(I)を含む実験的ナノ粒子系が記載されている。しかし、かかる系では、標的組織又はその近傍まで送達され得る重原子は比較的少数でしかない。かかるアプローチには、ヨウ素化分子をリポソームに封入するリポソームアプローチ(Leike et al.,Invest.Radiol.2001,36(6),303−308)、並びにG−4 Starburst(登録商標)ポリアミドアミド(PAMAM)デンドリマーにヨウ素原子をコンジュゲートする樹枝状アプローチ(Yordanov et al.,Nano Letters 2002,2(6),595−599)がある。いずれのアプローチでも、せいぜい2〜3百個の重金属(即ち、ガドリニウム)原子が送達されるにすぎない。
【0004】
送達される重金属原子を増やす試みとして、かかる重金属のナノ粒子を使用するものがあった。国際公開第03/075961号及び同第2005/051435号を参照されたい。元素態(ゼロ価)金属種のナノ粒子は最も高い密度(重金属原子の数/体積)を有するものの、確実な合成や酸化による不安定性などに問題がある。金のような不活性金属のナノ粒子(例えば、国際公開第03/075961号に記載されたもの)では、これらの問題を解決できるが、費用効果があまりよくない。
【0005】
国際公開第07/055995号(Bonitatebus et al.)には、ナノ粒子コア及びナノ粒子シェルの少なくとも一方が活性造影剤材料を含むコア/シェル型ナノ粒子が記載されている。
【0006】
以上の点から、新規CT用造影剤、特に確実な合成、コスト削減、画像コントラスト増強、血中半減期の増大、毒性の低下、放射線量の減少及びターゲティング能力の1以上の点で性能の向上及び利益をもたらすことができる造影剤に対するニーズが存在し続けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第03/075961号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2005/051435号パンフレット
【特許文献3】国際公開第07/055995号パンフレット
【特許文献4】国際公開第03/016217号パンフレット
【特許文献5】米国特許第5989580号明細書
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Shi−Bao Yu and Alan D.Watson,Chem.Rev.1999,99,2353−2377.
【非特許文献2】Leike et al.,Invest.Radiol.2001,36(6),303−308.
【非特許文献3】Yordanov et al.,Nano Letters 2002,2(6),595−599.
【非特許文献4】Chan D.C.et al.,Dental Materials,1999,15(3),219−222.
【非特許文献5】Iwasaki,Kentaro et al.,Journal of Physical Chemisty B,2004,108(32),11946−11952.
【非特許文献6】Wang,Chun et al.,ColloidsandSurfaces,B:Biointerfaces,2005,46(4),255−260.
【非特許文献7】Kannan,Balaji et al.,Journal of Vacuum Science & Technology,B:Microelectronics and Nanometer Structures−−Processing,Measurement,and Phenomena,2005,23(4),1364−1370.
【非特許文献8】Papra A.et al.,Langmuir American Chem.Soc.USA,2001,17(5),1457−1460.
【非特許文献9】Agrawal Mukesh et al.,Langmuir:The ACS Journal of Surfaces and Colloids,2008,24(3),1013−1018.
【非特許文献10】Antalek,Brian,Concepts in Magnetic Resonance,Part A:Bridging Education and Research,2007,30A(5),219−235.
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は一般に、ナノ粒子コアとナノ粒子コアの周囲に配置されたナノシェルとを含んでなるコア/シェル型ナノ粒子であって、凝集体においてナノ粒子コア及びナノシェルがX線イメージング(特にコンピュータ断層撮影(CT)イメージング)時に造影剤として機能し得るコア/シェル型ナノ粒子を形成するようなものに関する。
【0010】
本発明は、タンタル(Ta)を非ゼロ価状態で含む能動ナノ粒子コアと、ナノ粒子コアの周囲に配置された受動ナノシェルとを含んでなる造影剤であって、凝集体において能動ナノ粒子コア及び受動ナノシェルがCTイメージング時に造影剤として機能し得るコア/シェル型ナノ粒子を形成するような造影剤に関する。
【0011】
ある実施形態では、X線/コンピュータ断層撮影用造影液が本明細書中に記載される実施形態のいずれかに係る造影剤の集合体(ensemble)を含んでなり、集合体の平均粒径は約10nm以下、好ましくは約3nm以下である。
【0012】
ある実施形態では、本発明は上述の造影剤のいずれかを製造する方法に関する。ある実施形態では、本発明はCTにおけるかかる造影剤の使用方法に関する。
【0013】
ある実施形態では、本発明は、X線/コンピュータ断層撮影用造影剤の製造方法であって、タンタルを含む第1の前駆体材料を用意する段階と、第1の前駆体材料から、タンタルを非ゼロ価状態で含む活性コアを形成する段階と、第2の前駆体材料を用意する段階と、第2の前駆体材料から不活性シェルを形成する段階であって、不活性シェルはコア及びシェルがコア/シェル型ナノ粒子を形成するようにしてコアの周囲に配置される段階とを含んでなる方法に関する。
【0014】
本発明は、ナノ粒子アプローチを使用することで、比較的多数の高密度で高減衰性のタンタル原子を分子状態で送達してCTのコントラスト増強を向上させる。ある実施形態では、本発明はCT造影剤による特定疾患部位のターゲティングを可能にする。ある実施形態では、本発明はマクロファージによるCT用造影剤の取込みを可能にする。ある実施形態では、本発明は血中半減期の増大したCT用造影剤を提供する。
【0015】
以上、本発明の以下の詳細な説明を理解しやすくするため、本発明の特徴をむしろ大まかに略述した。本発明の請求の範囲の主題を構成する本発明のさらなる特徴や利点については、以下に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
本発明及びその利点を一層完全に理解できるように、以下、図面を参照しながら本発明を説明する。
【図1】図1は、構成部分間の関係を示すためコア/シェル型ナノ粒子を一般に示す断面図である。
【図2】図2は、本発明に従って活性コアと不活性シェルとを含むコア/シェル型ナノ粒子の断面図である。
【図3】図3は、本発明のある実施形態に従ってコア/シェル型ナノ粒子をコンピュータ断層撮影用造影剤として使用する方法を流れ図で示す。
【図4】図4は、本発明のある実施形態に従って酸化タンタルコアとポリエチレングリコール(PEG)ポリマーシェルとを含む活性コア/不活性シェル型ナノ粒子の集合体の粒径分布をプロットしたグラフである。
【図5】図5は、本発明のある実施形態に従って酸化タンタルとPEGポリマーシェルとを含む活性コア/不活性シェル型ナノ粒子のTEM画像である。
【図6】図6は、本発明のある実施形態に従って酸化タンタルコアとクエン酸リガンドシェルとを含む活性コア/不活性シェル型ナノ粒子の集合体の粒径分布をプロットしたグラフである。
【図7】図7は、本発明のある実施形態に従って酸化タンタルコアとクエン酸リガンドシェルとを含む活性コア/不活性シェル型ナノ粒子のTEM画像である。
【図8】図8は、酸化タンタルコアとPEGポリマーシェルとを含む活性コア/不活性シェル型ナノ粒子及び酸化タンタルコアとクエン酸リガンドシェルとを含む活性コア/不活性シェル型ナノ粒子に関し、生細胞の百分率をタンタルのモル量に対してプロットしたグラフである。
【図9】図9は、本発明のある実施形態に従って溶液中のC3aを検出するためのC3a標準曲線をプロットしたグラフである。
【図10】図10は、本発明のある実施形態に従って酸化タンタルコアとグルコースシェル、EDTAシェル及びPEGシェルの各々とを含む活性コア/不活性シェル型ナノ粒子並びに各種の対照品に関するC3aの棒グラフである。
【図11】図11は、本発明のある実施形態に従って酸化タンタルコアとPEGシェルとを含む活性コア/不活性シェル型ナノ粒子を注射したラットのコンピュータ断層撮影画像である。
【図12】図12は、本発明のある実施形態に従って酸化タンタルコアとPEGシェルとを含む活性コア/不活性シェル型ナノ粒子を注射したラットの様々な時点における一連のコンピュータ断層撮影画像である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は一般に、ナノ粒子コアとナノ粒子コアの周囲に配置されたナノシェルとを含んでなるコア/シェル型ナノ粒子であって、凝集体においてナノ粒子コア及びナノシェルが特にCTに際してX線造影剤として機能し得るコア/シェル型ナノ粒子を形成するようなものに関する。
【0018】
図面全般に関して述べれば、これらの図面は本発明の特定の実施形態を説明する目的で示すものであって、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではないことを理解されたい。
【0019】
本明細書中で使用する用語の大部分は当業者にとって自明であろうが、本発明の理解を容易にするため、以下の定義を示しておく。しかし、明確に定義されていない場合、各用語は当業者に現在受け入れられている意味をもつものと解釈すべきであることを理解されたい。
【0020】
本明細書中で定義され、またコンピュータ体軸断層撮影法又はコンピュータ支援断層撮影法(CAT)及び体切片X線撮影法としても知られる「コンピュータ断層撮影法」(「CT」と略す)は、単一の回転軸に沿って撮影された多数の一連の二次元X線画像から、デジタル処理を用いて対象物(又は被検体)の内部の三次元画像を生成する断層撮影を用いた医用イメージング方法である。本明細書中ではコンピュータ断層撮影に焦点を合わせて論じるが、当業者であれば、かかる議論が一般にあらゆるタイプのX線イメージングに適用可能であることが理解されよう。
【0021】
本明細書中で定義され、またコントラスト剤としても知られる「造影剤」は、入射するX線を有意に減衰させて、検査対象体積を通過するX線を低減させることができる材料を含む薬剤である。CT画像を再構築し、通常の後処理を行った後には、このようなX線減衰の増大は検査対象体積の密度の増加として解釈され、その結果、画像中においてはバックグラウンド組織に対して造影剤を含む体積のコントラスト増強が生じる。本明細書中での議論は一般にあらゆる形態のX線イメージングに適用可能であるので、本明細書中では本発明の造影剤を一般に「X線/コンピュータ断層撮影用造影剤」という。この用語は、「コンピュータ断層撮影(CT)用造影剤」と互換的に使用される。
【0022】
コア/シェル型ナノ粒子のコア成分及びシェル成分について「活性」及び「不活性」という用語を用いた場合、これらの用語はその成分がCTイメージングにおいてコントラスト増強を生み出す能力を意味する。通常のCTスキャナーは、約10〜約140keVという広いX線エネルギースペクトルを使用している。当業者であればわかるように、特定の材料を通過するX線の単位長さ当たりの減衰量は線形減衰係数として表される。CTイメージングにおいて典型的なX線エネルギースペクトルでは、材料の減衰度は光電吸収効果及びコンプトン散乱効果によって支配される。さらに、線形減衰係数は、入射X線のエネルギー、材料の密度(モル濃度に関係する)、及び材料の原子番号(Z)の関数であることがよく知られている。異種原子の分子化合物又は混合物については、「有効原子番号」Zeffを構成元素の原子番号の関数として計算することができる。化学式が知られている化合物の有効原子番号は、次式で求められる。
【0023】
【数1】
【0024】
式中、Zkは単体元素の原子番号、Pは単体元素の総量、Wfkは分子の総分子量に対する単体元素の重量分率(モル濃度に関係する)である。CTイメージングのための入射X線エネルギーの最適量は撮影対象物のサイズの関数であって、名目値から大きく変動することはないと予測される。また、造影剤材料の線形減衰係数は材料の密度に直線的に依存することも公知である。即ち、材料の密度を増大させたり、或いは造影剤材料のモル濃度を増加させたりすれば、線形減衰係数を増大させることができる。しかし、患者への造影剤材料の注射やそれに付随する有害な効果といった実際的な面から、達成し得るモル濃度には限界がある。したがって、造影剤候補材料を有効原子番号に従って分けるのは合理的である。モル濃度を約50mMとしたときの典型的なCTエネルギースペクトルについての代表的な材料のCTコントラスト増強のシミュレーションに基づけば、有効原子番号が34以上の材料では、約30ハウンスフィールド単位(HU)という適切なコントラスト増強、即ち水より3%高いコントラストが得られると推定される。したがって、本発明者らは、CT用造影剤候補材料を、有効原子番号が34未満(即ち、Zeff<34)であれば不活性であり、有効原子番号が34以上(即ち、Zeff≧34)であれば活性であると定義した。例えば、Handbook of Medical Imaging,Volume 1.Physics and Psychophysics,Eds.J.Beutel,H.L.Kundel,R.L.Van Metter,SPIE Press,2000の第1章を参照されたい。
【0025】
本明細書中で定義される「ナノ粒子」は、約1〜約500nmの平均粒径を有する粒子であり、ナノ粒子コア及びコア/シェル型ナノ粒子凝集体を述べる場合に使用できる。かかるナノ粒子は球状であっても不規則形状であってもよく、特に上記粒度範囲の小さい方の末端では分子錯体と区別される。本明細書中で定義される「ナノシェル」は、コア/シェル型ナノ粒子のシェル領域のことである。かかるナノシェルはナノ粒子コアの周囲に配置されているが、下地であるナノ粒子コアのトポグラフィーに一致する場合としない場合がある。
【0026】
上述の通り、また図1について述べれば、本発明のある実施形態は、(a)ナノ粒子コア101と(b)ナノ粒子コアの周囲に配置されたナノシェル102とを含んでなる造影剤であって、凝集体においてナノ粒子コア及びナノシェルがコンピュータ断層撮影イメージング(一般にはX線イメージング)時に造影剤として機能し得るコア/シェル型ナノ粒子100を形成するようなものに関する。図1には完全に球形のコア/シェル型ナノ粒子の断面を示してあるが、かかるコア/シェル型ナノ粒子は不規則な形状を有していてもよい。
【0027】
ある実施形態では、上述の造影剤はさらに1種以上のターゲティング剤を含んでいる。かかるターゲティング剤は、造影剤を被検体の身体の特定疾患部位に対してターゲティングするために有用である。通例、ターゲティング剤は抗体(例えば、IgG)又は他のペプチドであるが、核酸(例えば、DNA、RNA)その他の適当な化学種であってもよい。一般に、ターゲティング剤はナノ粒子コア及びナノ粒子コアの周囲に配置されたナノシェルの一方又は両方に結合される。かかる結合は、通例、特に限定されないが、ペプチド結合、ジスルフィド結合、イソチオ尿素結合、イソ尿素結合、スルホンアミド結合、アミン結合、カルバメート結合、アミジン結合、ホスホラミデート結合、チオエーテル結合、アリールアミン結合、アリールチオエーテル結合、エーテル結合、ヒドラゾン結合、トリアゾール結合、オキシム結合及びこれらの組合せのような結合からなる。例えば、Bioconjugate Techniques.G.T.Hermanson,Academic Press,1996の第2章を参照されたい。
【0028】
ある実施形態では、上述のCT用造影剤は、コア/シェル型ナノ粒子の表面電荷の制御及び/又はマクロファージ取込みを誘起する官能基(例えば、ポリビニルスルフェート)の付与により、マクロファージ取込みのために最適化される。
【0029】
CT用造影剤/コントラスト剤として使用するための本明細書中に記載されたコア/シェル型ナノ粒子については、ナノ粒子コアは普通には約1〜約100nm、さらに普通には約2〜約80nm、最も普通には約2〜約20nmの平均粒径を有する。ナノ粒子コアの周囲に配置されたナノシェルは、普通には約0.5〜約100nmの平均厚さを有する。したがって、造影剤のナノ粒子コアとナノシェルとの凝集体は、普通には約2〜約500nm、さらに普通には約2〜約100nm、最も普通には約3〜約20nmの平均粒径を有する。
【0030】
ナノ粒子コア及びナノシェルの凝集体は、哺乳類の腎臓(通例はヒトの腎臓)によって排出可能であるのが望ましい場合があることが理解されよう。したがって、造影剤のナノ粒子コア及びナノシェルの凝集体は、普通には約1〜約20nm、さらに普通には約2〜約12nm、最も普通には約3〜約8nmの平均粒径を有し得る。
【0031】
ある実施形態では、X線/コンピュータ断層撮影用造影剤は、本明細書中に記載される実施形態のいずれかに係る造影剤の集合体を含んでいて、集合体の平均粒径は約10nm以下、さらに普通には約7nm以下、さらに普通には約6nm以下、最も普通には約3nm以下である。
【0032】
活性コア/不活性シェル型ナノ粒子
図2について述べれば、本発明は、ナノ粒子コア201とナノ粒子コアの周囲に配置されたナノシェル202とを含んでなる造影剤200であって、凝集体においてナノ粒子コア及びナノシェルがCTイメージング時に造影剤として機能し得るコア/シェル型ナノ粒子200を形成するようなものに関する。
【0033】
上述のナノ粒子コア201を構成する材料は、それがCTでコントラストを増強するための活性材料(Zeff≧34)を含み、活性材料は非ゼロ価状態のタンタルからなるという点で限定されている。ナノ粒子コアは、通例、特に限定されないが酸化タンタルのような材料からなっている。限定ではなく例示を目的として述べれば、Ta2O5に関する有効原子番号(Zeff)は約69である。
【0034】
ナノシェル202を構成する材料は特に限定されないが、一般に活性CT用造影剤材料からなることはなく(Zeff<34)、また一般にナノ粒子コアの周囲に配置できなければならない。好適なかかる材料には、特に限定されないが、リガンド、オリゴマー、ポリマー、クラスター、炭水化物種、官能化シリカ及びこれらの組合せがある。例えば、好適なシェル材料には、特に限定されないが、ポリエチレングリコール、ポリエチレンイミン、ポリメタクリレート、ポリビニルスルフェート、ポリビニルピロリジノン、クエン酸イオン、リンゴ酸イオン、グリコール酸イオン、シラン及びこれらの組合せがある。
【0035】
ある実施形態に従えば、ナノシェルを構成する材料は水溶性である。別法として又は併せて、ある実施形態に従えば、ナノシェルを構成する材料は生体適合性である。
【0036】
ナノシェルは、好ましくはジエチルホスファトエチルトリエトキシシラン(PHS)又は2−[メトキシ(ポリ−エチレノキシ)プロピル]トリメトキシシラン(PEGシラン550)を含む。
【0037】
製造方法
ある実施形態では、本発明は、CT用途において上述のタイプの造影剤のいずれか又はすべてを製造する方法に関する。
【0038】
かかる方法は、(a)タンタルを含む第1の前駆体材料を用意する段階と、(b)第1の前駆体材料から、タンタルを非ゼロ価状態で含む活性コアを形成する段階と、(c)第2の前駆体材料を用意する段階と、(d)第2の前駆体材料から不活性シェルを形成する段階であって、不活性シェルはコア及びシェルがコア/シェル型ナノ粒子を形成するようにしてコアの周囲に配置される段階とを含んでなる。ある実施形態では、不活性シェルは第2の前駆体材料から導かれる水溶性材料を含む。別法として又は併せて、ある実施形態では、かかる方法はさらにナノ粒子の平均粒径を調節する段階を含んでいる。
【0039】
段階の順序及び/又は組合せを変化させ得ることが理解されよう。即ち、ある実施形態に従えば、段階(a)、(b)、(c)及び(d)を順次段階として実施することで活性コア及び第2の前駆体からナノ粒子が形成される。限定ではなく例示を目的として述べれば、ある実施形態では、第1の前駆体はタンタルを非ゼロ価状態で含み、コアは同じ非ゼロ価状態でタンタルの酸化物を含み、段階(b)は第1の前駆体の加水分解を含む。ある実施形態では、第1の前駆体はタンタルの塩(例えば、アルコキシド又はハロゲン化物)を含み、加水分解は第1の前駆体、酸、及び水又は水類似体(例えば、酸化重水素)をアルコール溶媒中で混合すれば進行する。水又は水類似体は加水分解を開始させる。酸とタンタルとのモル比を選択することでナノ粒子コアの粒度を調節できる。ある実施形態に従えば、コアがタンタルの酸化物を含む場合、Si−O結合を介してコアにケイ素含有材料が結合される。ある実施形態に従えば、シロキサンは重合性の基を含むが、これに限定されるものではない。重合は、酸で誘発される縮合重合によって進行し得る。別法として、ある実施形態に従えば、コア上にポリマーを物理吸着させることができる。上述の実施形態のいずれかに従えば、ポリマーは水溶性かつ生体適合性であり得る。好適なポリマーには、特に限定されないが、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリメタクリレート、ポリビニルスルフェート、ポリビニルピロリジノン及びこれらの組合せがある。
【0040】
別法として、ある実施形態に従えば、段階(a)及び(c)が同時に実施される結果、段階(b)及び(d)を同時に実施することで第1及び第2の前駆体からナノ粒子が直接に形成される。限定ではなく例示を目的として述べれば、ある実施形態に従えば、第1の前駆体はタンタルをゼロ価状態で含み、コアはタンタルの酸化物であり、段階(b)及び(d)は一緒になって第1及び第2の前駆体を塩基性水溶液に添加する段階を含む。ある実施形態に従えば、塩基性溶液は約9以上のpHを有する。例えば段階(a)及び(c)を組み合わせることによる同一段階でのコア及びシェルの同時形成は、意外な発見である。さらに、本発明者らは意外にも、例えばこの直接製法を用いて非金属コアの周囲に配置されたリガンド系シェルを形成するため、金属ナノ粒子に関して公知の交換反応(例えば、金ナノ粒子上へのクエン酸シェル形成に関与する反応)が使用できることを発見した。シェルがリガンドを含む場合、第1の前駆体はリガンド試薬を含み得る。例えば、リガンドがクエン酸イオンのようなカルボン酸陰イオンである場合、リガンド試薬は関連するカルボン酸である。好適な代替リガンド試薬には、特に限定されないが、糖、アルコール、ポリアルデヒド及びこれらの組合せがある。グルコースは、非常に小さいナノ粒子の製造を可能にする例である。他の好適な試薬には、特に限定されないが、グリコール酸及びリンゴ酸がある。ある実施形態に従えば、ナノ粒子の粒径はリガンドの正体及び/又は量の選択によって調節される。
【0041】
上述の実施形態のいずれかと組み合わせて、ある実施形態では、X線/コンピュータ断層撮影用製剤(例えば、複数の造影剤を含むもの)の製造方法は、コア/シェル型ナノ粒子の集合体を形成する段階を含む。この場合、集合体の平均粒径は約10nm以下、さらに普通には約7nm以下、最も普通には約6nm以下である。ある実施形態では、平均粒径は約3nm以下である。ある実施形態に従えば、平均粒径は集合体中のナノ粒子を哺乳類の腎臓(例えば、ヒトの腎臓)によって微粒子状態で実質的に排出可能とするように選択されることが理解されよう。
【0042】
集合体の平均粒径は、溶解状態のナノ粒子の粒度分布を調節するために適した任意の技法を用いて調節できる。したがって、ある実施形態では、上述の集合体を形成する段階は、溶解状態の原料集合体を粒度の異なる2以上の母集団に分けるプロセスに原料集合体を通過させる分別段階を含んでいる。例えば各種の濾過プロセスを含め、いくつかの好適な分別技法が当技術分野で知られている。粒子含有流体を(例えば、遠心力その他の手段によって生じるような)加圧力の下でフィルター膜に向けて直接に押しやる通常濾過が普通の技法である。別の好適な技法は、流れの一部を膜に通過させるために役立つ圧力を加えながら、膜の表面に沿って流体を接線方向にポンプ輸送する接線流濾過である。この技法では、通常濾過の場合と異なり、保持された大きい粒子が膜の表面に蓄積することなく接線流によって掃去される。このような掃去効果は、極めて微粒子状の集合体の効率的な粒度ベース分離を達成する点でしばしば有利である。好適な技法の別の例はダイアフィルトレーション(diafiltration)であり、これは濾液が除去されるに従ってプロセス流に緩衝液を添加する接線流濾過プロセスの一種である。当業者はこれらのプロセスに精通しており、それを使用してナノ粒子集合体の所望粒度分布を得る方法にも精通している。ある実施形態では、原料ナノ粒子集合体を分別することで、上述の範囲のいずれかに従った平均粒径を有するナノ粒子の生成物集合体が得られる。
【0043】
ある実施形態では、X線/コンピュータ断層撮影用製剤を精製することで、製剤の性能を妨害し又はその他のやり方で低下させることがある望ましくない化学種が除去される。この目的には透析のような技法が好適である。さらに、ダイアフィルトレーションのような技法が1つの処理段階でナノ粒子溶液を効果的に精製及び分別することが証明されている。例えば、Sweeney et al.,J.Am.Chem.Soc.2006,vol.128,pp 3190−3197を参照されたい。
【0044】
使用方法
ある実施形態では、本発明は、CT用途において上述のタイプの造影剤のいずれか又はすべてを使用する方法に関する。図3について述べれば、かかる方法は、通例、(段階301)活性コンピュータ断層撮影用造影剤材料を含むコア/シェル型ナノ粒子であって、各コア/シェル型ナノ粒子はナノ粒子コアとナノ粒子コアの周囲に配置されたナノシェルとを含むコア/シェル型ナノ粒子の所定量を用意する段階と、(段階302)コア/シェル型ナノ粒子を哺乳類被検体に投与する段階と、(段階303)コア/シェル型ナノ粒子が造影剤として役立つように、コンピュータ断層撮影に従って被検体にX線を照射する段階とを含んでいる。多くのかかる実施形態では、かかるコア/シェル型ナノ粒子はさらにターゲティング剤を含んでいる結果、造影剤を被検体の身体の特定疾患部位に対してターゲティングすることができる。ある実施形態では、上述のコア/シェル型ナノ粒子は、血液中に残存し得る限りにおいて血液プール剤である。
【0045】
上述の造影剤を使用するための上述した方法では、コア/シェル型ナノ粒子は、一般に約5ハウンスフィールド単位以上で約5000ハウンスフィールド単位以下、さらに詳しくは約100ハウンスフィールド単位以上で約5000ハウンスフィールド単位以下のCT信号を与える。
【実施例】
【0046】
以下の実施例は、本発明の特定の実施形態を実証するために示す。当業者には、以下の実施例で開示される方法は単に本発明の例示的な実施形態を表すにすぎないことが理解されるはずである。しかし当業者であれば、本明細書の開示内容を参考にすることで、本発明の技術思想及び技術的範囲を逸脱することなく、ここに記載された特定の実施形態に対して数多くの変更を加えることができ、それでも同等又は同様な結果が得られることが理解されるはずである。
【0047】
実施例1
この実施例は、本発明のある実施形態に従い、CT用造影剤をいかにして製造できるかを例示するために役立つ。この特定の実施例では、酸化タンタルの活性コアにポリマーの不活性シェルが結合される。さらに、この特定の実施例では、シェルはコアを形成した後にコアの周囲に形成される。
【0048】
この実施例は、X線イメージング用のTa2O5ナノ粒子の製造を例示する。窒素下において34mlのn−プロパノール、0.44mlのイソ酪酸及び0.5mlの酸化重水素を記載の順序で混合し、室温で30分間撹拌した。タンタルエトキシド(1.87g)を急速にではあるが滴下状態で添加し、窒素下で撹拌を18時間続けた。タンタルエトキシドはTa(V)、即ち非ゼロ価状態である+5価状態のタンタルを含んでいる。2−[メトキシ(ポリ−エチレノキシ)プロピル]トリメトキシシラン(PEGシラン550、4.832g)を40mlのn−プロパノール溶液として撹拌混合物に添加し、反応物を空気中で1時間還流させた。室温に冷却した後、HCl(125μl、0.1M)を添加し、反応物を一晩撹拌した。脱イオン水(40ml)を添加し、混合物を撹拌し、次いですべての揮発分を除去して透明で無色乃至わずかに黄色のゲル状生成物を得た。静脈内注射用としてナノ粒子を精製するため、生成物を脱イオン水中に可溶化し、100nmの膜で濾過した。水中で12時間の透析(3500〜8000MWCOの透析チューブ)を行い、100nmで濾過し、次いで凍結乾燥によって水を除去することで、約22%wt/wtのタンタルを含むオフホワイトの沈殿を得た。食塩水(0.9%NaCl)を用いて1.8Mという高いタンタル濃度の溶液を調製した。
【0049】
図4は、この実施例に従って製造したナノ粒子の集合体について、通常のDLSで測定した粒径分布を示しており、集合体の平均粒径が7nmであることを表している。図5は、この実施例に従って製造したナノ粒子のTEM画像を示している。
【0050】
実施例2
この実施例は、本発明のある実施形態に従い、CT用造影剤をいかにして製造できるかを例示するために役立つ。この特定の実施例では、酸化タンタルの活性コアにポリマーの不活性シェルが結合される。さらに、この特定の実施例では、シェルはコアを形成した後にコアの周囲に形成される。
【0051】
この実施例は、X線イメージング用のTa2O5ナノ粒子の製造を例示する。窒素下において34mlのn−プロパノール、0.44mlのイソ酪酸及び0.5mlの酸化重水素を記載の順序で混合し、室温で30分間撹拌した。タンタルエトキシド(1.87g)を急速にではあるが滴下状態で添加し、窒素下で撹拌を18時間続けた。タンタルエトキシドはTa(V)、即ち非ゼロ価状態である+5価状態のタンタルを含んでいる。次に、ジエチルホスファトエチルトリエトキシシラン(PHS、3g)を40mlのn−プロパノール溶液として混合物に添加し、反応物を空気中で1.5時間還流させた。室温に冷却した後、水酸化アンモニウム(250μl、0.1M)を添加し、反応物を一晩撹拌した。次に、脱イオン水(40ml)を撹拌しながら反応物に添加し、次いで塩酸(10ml、1.2M)を添加し、50℃で2日間反応させた。冷却後、反応物を水酸化アンモニウムでpH約7〜8に中和し、100nmの膜で濾過した。すべての揮発分を除去して生成物を得た。静脈内注射用としてナノ粒子を精製するため、生成物を脱イオン水(pH7.5〜8)中に可溶化し、100nmの膜で濾過し、水中で12時間透析し(3500〜8000MWCOの透析チューブ)、凍結乾燥することで、約30%wt/wtのタンタルを含む純白の沈殿を得た。IR(ヌジョールマル,NaCl板,cm-1):1454(非常に強い),1413(弱い),1376(強い),1296(弱い),1274(弱い),1218(強い),1170(中位),1029(非常に強い),964(非常に強い),782(中位)。NMR(D2O,ppm):31P,37.4(広い);1H(広がり共鳴),4.16,1.88,1.37,0.85。
【0052】
実施例3
この実施例は、本発明のある実施形態に従い、CT用造影剤をいかにして製造できるかを例示するために役立つ。この特定の実施例では、酸化タンタルの活性コアにクエン酸リガンドの不活性シェルが結合される。さらに、この特定の実施例では、シェルはコアと一緒に形成される。
【0053】
この実施例では、タンタル粉末(325メッシュ、Aldrich社)からのTa2O5ナノ粒子の直接製造が記載される。タンタル粉末はTa(0)、即ちゼロ価状態のタンタルを含んでいた。20mlの30%過酸化水素及び5mlの水酸化アンモニウム溶液(水中の28〜30%NH3)を混合することで溶液を調製した。二つ口フラスコ内においてこれらを窒素下で混合し、氷浴で冷却した。続いて、Ta粉末(5mmol、0.907g)の添加を行い、混合物を2時間撹拌した(小規模では磁気撹拌を使用できるが、大規模では機械的撹拌機の方が適当であり得る)。次いで、クエン酸(15mmol、3.152g)を添加し、フラスコに凝縮器を取り付けた。スラリーを80℃で18時間加熱した。次いで、反応物を放冷し、残留するタンタル粉末を中位グレードガラスフリットで濾別した。濾液をロトエバポレーションによる水の除去で濃縮した。次いで、残った着色溶液をpH7.2に緩衝した水溶液中において3.5Kカットオフで透析した。得られた溶液をナノ粒子について分析した。所望ならば、ナノ粒子を凍結乾燥によって単離してもよい。
【0054】
図6は、この実施例に従って製造したナノ粒子の集合体について、通常のDLSで測定した粒径分布を示しており、集合体の平均粒径が7nmであることを表している。図7は、この実施例に従って製造したナノ粒子のTEM画像を示している。
【0055】
実施例4
この実施例は、本発明のある実施形態に従い、CT用造影剤をいかにして使用できるかを例示するために役立つ。この特定の実施例では、活性コア/不活性シェル型ナノ粒子に関する細胞生存度試験により、試験期間にわたって細胞生存度がほとんど低下しないことが実証される。
【0056】
THP1単球(ATCC TIB−71)をRPMI 1640+10%FBS培地で1×106細胞/mLの最終密度に希釈し、500μLの細胞を24ウェルプレートの各ウェル内にアリコート化した。無菌濾過した酸化タンタルナノ粒子(100mM Ta)をピペットでウェルに加えた。対照ウェルについては、50μLの無菌0.9%食塩水(陰性対照)又は80μLの30%過酸化水素(陽性対照)を細胞に添加した。添加後、プレートを静かに渦動させ、標準条件(37℃、5%二酸化炭素、100%湿度)下で細胞を培養した。
【0057】
インキュベーション後、細胞をピペットで遠心管に移し、20℃で5分間300×gで遠心し、培地を静かに吸引して除去した。細胞を500μLの1X PBSで洗浄し、静かに渦動させ、20℃で5分間300×gで遠心した。細胞を洗浄し、緩衝液を静かに吸引して除去した。製造者のプロトコル(Annexin V FLUOSキット、Roche社)に従い、(インキュベーション緩衝液、アネキシンV−フルオレセイン及びヨウ化プロピジウムを含む)Annexin V FLUOSアッセイ緩衝液を調製し、100μLを各管に加えた。細胞を含む管を静かに渦動させ、室温で15分間インキュベートした。さらに300μLのインキュベーション緩衝液を各管に加えた後、フローサイトメトリー分析を行った。
【0058】
アネキシンV−フルオレセインのみに対して陽性(アポトーシス細胞)、アネキシンV−フルオレセイン及びヨウ化プロピジウムに対して陽性(壊死細胞)、並びに両方に対して陰性(生細胞)である細胞の数を測定した。
【0059】
図8について述べれば、0.1mMまでのTaを含むすべての酸化タンタル製剤が示すアポトーシス細胞又は壊死細胞の数は無視できる程度であり、ナノ粒子への3時間の暴露後における細胞生存度の低下はないことを表している。
【0060】
実施例5
この実施例は、本発明のある実施形態に従い、CT用造影剤をいかにして使用できるかを例示するために役立つ。この特定の実施例では、活性コア/不活性シェル型ナノ粒子の補体活性化試験により、未処理血清又は食塩水処理血清に比べてC3aの目立った増加はないことが実証される。
【0061】
ヒトの血漿及び血清を販売業者(Bioreclamation社)から購入した。血清を単離するため、全血を血清管内に吸い込み、室温で30〜45分間凝固させた。試料を2000×gで10分間遠心し、直ちに血清を−70℃で凍結した。試料をドライアイス上で一晩輸送し、−70℃で貯蔵した。
【0062】
血清を水浴中において37℃で数分間融解した。250μLの血清を24ウェルプレートの個々のウェルに加えた。無菌の試験試料(Ta剤、食塩水及びコブラ毒因子)を血清に加えて300μLの最終体積にした。24ウェルプレートをインキュベーター(37℃)に移し、時々撹拌しながら30分間インキュベートした。
【0063】
図9について述べれば、製造者のプロトコル(C3aアッセイ、Quidel社)に従い、原液及び希釈液を調製してC3a標準曲線及び高/低C3a試料を作成した。
【0064】
30分のインキュベーション後にC3a産生を停止させるため、37.5mMのクエン酸ナトリウムを各ウェルに加え、0.5μLの血清(試験試料を含むもの及び含まないもの)をエッペンドルフ管中の1.5mLのキット試料緩衝液に移した。管を静かに3回転倒させて血清及び試料緩衝液を混合し、次いで100μLの希釈血清をC3a試験ストリップの個々のウェルに加え、室温で60分間インキュベートした。ウェルを洗浄緩衝液で3回洗浄した(1回当たり200μLの洗浄緩衝液、ウェル内に洗浄緩衝液を1回当たり1分間)。100μLのC3aコンジュゲート溶液を添加し、得られた混合物を室温で60分間インキュベートした。洗浄プロトコル(3回洗浄、1回当たり200μLの洗浄緩衝液、ウェル内に洗浄緩衝液を1回当たり1分間)を繰り返し、次いで100μLの基質を各ウェルに加えた。15分間インキュベートした後、100μLの停止溶液を加え、96ウェルUVプレートリーダー上で450nmの吸光度を測定した。C3aレベルをC3a標準曲線から計算した。
【0065】
図10は、分析から得られたデータを示している。詳しくは、図10は、PEGシェル、EDTAシェル、クエン酸シェル及びグルコースシェルの各々を有する酸化タンタルコアを血清中でインキュベートすることで得られた試験データを示している。一部の化合物(Ta EDTA)はC3aレベルを低下させたものの、未処理血清又は食塩水処理血清に比べてC3aの増加を示したものはない。100mMまでのTaの添加によるC3aレベルの顕著な増加は認められない。全Ta含有量を求めるためには、ICP−MSによる元素分析を使用した。
【0066】
実施例6
この実施例は、本発明のある実施形態に従い、コントラストを増強するためにコア/シェル型ナノ粒子系のCT用造影剤をいかにして使用できるかをさらに例示するために役立つ。
【0067】
すべてのイメージング試験は、8kV及び取得時間4分のパラメーターを用いるEXplore LocusマイクロCTイメージングシステム上で実施した。
【0068】
体重約160gの雌のDark Agoutiラットをケタミン/ジアゼパムのIP注射で麻酔した。IVカテーテル(24ゲージ)を尾静脈内に配置し、200μLの無菌食塩水でフラッシュした。次いで、マイクロCT上でリブケージの基底から膀胱までラットを撮影した(注射前スキャン)。スキャンの直後、カテーテルを通して1mLの210mg Ta/mL酸化タンタル−PEG550造影剤をラットに注射し、前回のスキャンの完了後にスキャンした。
【0069】
図12について述べれば、最大強度投影を用いて1/2解像度で画像を再構成して観察した。注射直後、腹部大動脈、大静脈及び腎動脈にコントラストが認められた。注射後14分以内に、造影剤は(膀胱に排出されるので)腎臓及び尿管に認められた。膀胱のコントラストは、注射後23分以内に顕著となった。やはり図12について述べれば、CTイメージング試験は6〜14分の血中クリアランスを示し、次いで30分以内に膀胱への腎排出を示している。
【0070】
注射後60分間にわたってラットを撮影し、次いでケージに戻した。24時間後、ラットを再び撮影したが、膀胱又は腎臓に残留コントラストは認められなかった。注射したラットにいかなる副作用も認められなかった。
【0071】
図11は、Ta2O5及びPEGシェルを含むナノ粒子を用いてマイクロCTイメージングで得られた腹部大動脈画像を示している。
【0072】
実施例7
この実施例は、本発明のある実施形態に従い、コア/シェル型ナノ粒子の集合体の平均粒径を濾過によりいかにして調節できるかをさらに例示するために役立つ。さらに、この実施例では、様々な粒度の溶液を実験室用ラット被検体に投与した。
【0073】
大きい酸化タンタル粒子を除去する方法として、通常濾過(NF)モードで100nm又は20nmの膜フィルターを使用する代わりに、接線流濾過(TFF)を使用した。大きいナノ粒子を除去するためのTFFプロセスでは、100kD〜10kDの範囲内のTFF適合性分子量カットオフ(MWCO)フィルターを使用した。記載範囲(100kD〜10kD MWCO)のフィルターの透過液(permeate)は小さい酸化タンタルナノ粒子を含んでいた。
【0074】
低分子量不純物、塩などを除去することで前記透過液中の小さい酸化タンタルナノ粒子を精製するための方法としても、透析の代わりにTFFを使用した。不純物を除去するためのTFFプロセスでは、10kD〜5kDの範囲内の分子量カットオフ(MWCO)フィルターを使用した。記載範囲(10kD〜5kD MWCO)のフィルターの保留液(retentate)は、精製された小さい酸化タンタルナノ粒子を含んでいた。
【0075】
さらに、順次段階で酸化タンタルナノ粒子を粒度分別及び精製するための方法としてTFFを使用した。例えば、30kD MWCOフィルターを用いるTFFで多分散酸化タンタルナノ粒子を処理することで、約6nmの粒子を保留する(保留液)と共に約3nmの粒子を通過させた(透過液)。次いで、約3nmの粒子を含む透過液は、10kD又は5kD MWCOフィルターを用いるTFFプロセスでは保留液として作用した。
【0076】
TFFは、通常濾過(膜濾過又は遠心濾過)技法と透析技法との組合せで達成できるよりも高い純度で選択粒度のナノ粒子を製造するための効率的でスケーラブルな方法である。
【0077】
上述した方法に従って相異なる公称平均粒度(20nm、6nm及び3nm)をそれぞれ有する3種のナノ粒子溶液を調製し、同一用量レベルで実験室用ラット被検体に投与した。所定の時間後、ラットの腎臓を分析して(mg Ta/g腎臓試料として算出される)保持粒子の濃度を求めた。結果は、粒子クリアランスが平均粒度の強い関数であることを表している。腎臓に関しては、6nm粒子の濃度は20nm粒子の濃度より約20%低く、3nm粒子の濃度は20nm粒子の濃度より約50%低かった。
【0078】
上述の実施形態に関して上記に記載した構造、機能及び動作の一部は本発明を実施する上で必須ではなく、例示的な実施形態を十分に説明するためにのみ示されていることが理解されよう。さらに、上記に引用した特許や刊行物の特定の構造、機能及び動作は本発明と組み合わせて実施できるものの、これらは本発明を実施する上で必須ではないことも理解されよう。さらに、特記しない限り、方法の複数の段階は、特に限定されないが同時に実施することを含め、任意の組合せ及び/又は順序で実施できることも理解されよう。したがって本発明は、請求の範囲で定義される本発明の技術思想及び技術的範囲から実際に逸脱することなく、上記に記載したのとは異なるやり方で実施できることを理解すべきである。
【符号の説明】
【0079】
100 コア/シェル型ナノ粒子
101 ナノ粒子コア
102 ナノシェル
200 コア/シェル型ナノ粒子
201 活性ナノ粒子コア
202 不活性ナノシェル
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)タンタル(Ta)を非ゼロ価状態で含む活性ナノ粒子コアと、
b)ナノ粒子コアの周囲に配置された不活性ナノシェルと
を含んでなるX線/コンピュータ断層撮影用造影剤であって、凝集体において活性ナノ粒子コア及び不活性ナノシェルがX線/コンピュータ断層撮影イメージングで造影剤として機能し得るコア/シェル型ナノ粒子を形成するようなX線/コンピュータ断層撮影用造影剤。
【請求項2】
活性ナノ粒子コアが酸化タンタルを含む、請求項1記載のX線/コンピュータ断層撮影用造影剤。
【請求項3】
活性ナノ粒子コアがTa2O5を含む、請求項1又は請求項2記載のX線/コンピュータ断層撮影用造影剤。
【請求項4】
ナノ粒子が約1〜約20nmの平均粒径を有する、請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載のX線/コンピュータ断層撮影用造影剤。
【請求項5】
ナノ粒子が約2〜約12nmの平均粒径を有する、請求項4記載のX線/コンピュータ断層撮影用造影剤。
【請求項6】
ナノ粒子が約3〜約8nmの平均粒径を有する、請求項5記載のX線/コンピュータ断層撮影用造影剤。
【請求項7】
ナノシェルが水溶性かつ生体適合性の材料を含む、請求項1乃至請求項6のいずれか1項記載のX線/コンピュータ断層撮影用造影剤。
【請求項8】
ナノシェルが、リガンド、オリゴマー、ポリマー、クラスター、炭水化物種、官能化シリカ及びこれらの組合せからなる群から選択される材料を含む、請求項7記載のX線/コンピュータ断層撮影用造影剤。
【請求項9】
ナノシェルがポリエチレングリコール、ポリエチレンイミン、ポリメタクリレート、ポリビニルスルフェート、ポリビニルピロリジノン、クエン酸イオン、リンゴ酸イオン、グリコール酸イオン、シラン及びこれらの組合せからなる群から選択される材料を含む、請求項8記載のX線/コンピュータ断層撮影用造影剤。
【請求項10】
ナノシェルがジエチルホスファトエチルトリエトキシシラン(PHS)及び2−[メトキシ(ポリ−エチレノキシ)プロピル]トリメトキシシラン(PEGシラン550)から選択される材料を含む、請求項9記載のX線/コンピュータ断層撮影用造影剤。
【請求項11】
請求項1乃至請求項10のいずれか1項記載の造影剤の集合体を含んでなるX線/コンピュータ断層撮影用造影液であって、集合体の平均粒径が約10nm以下である、X線/コンピュータ断層撮影用造影液。
【請求項12】
集合体の平均粒径が約7nm以下である、請求項11記載のX線/コンピュータ断層撮影用造影液。
【請求項13】
集合体の平均粒径が約6nm以下である、請求項12記載のX線/コンピュータ断層撮影用造影液。
【請求項14】
集合体の平均粒径が約3nm以下である、請求項13記載のX線/コンピュータ断層撮影用造影液。
【請求項15】
X線/コンピュータ断層撮影用造影剤の製造方法であって、
a)タンタルを含む第1の前駆体材料を用意する段階と、
b)第1の前駆体材料から、タンタルを非ゼロ価状態で含む活性コアを形成する段階と、
c)第2の前駆体材料を用意する段階と、
d)第2の前駆体材料から不活性シェルを形成する段階であって、不活性シェルはコア及びシェルがコア/シェル型ナノ粒子を形成するようにしてコアの周囲に配置される段階と
を含んでなる方法。
【請求項16】
第1の前駆体がタンタルの塩を含む、請求項15記載の方法。
【請求項17】
第1の前駆体がタンタルのアルコキシド又はハロゲン化物を含む、請求項16記載の方法。
【請求項18】
活性コアがTa2O5を含む、請求項15乃至請求項17のいずれか1項記載の方法。
【請求項19】
不活性シェルが第2の前駆体材料から導かれる水溶性材料を含む、請求項15乃至請求項18のいずれか1項記載の方法。
【請求項20】
第2の前駆体材料が重合性シランを含み、不活性シェルがポリエチレングリコール、ポリエチレンイミン、ポリメタクリレート、ポリビニルスルフェート、ポリビニルピロリジノン及びこれらの組合せからなる群から選択されるポリマーを含む、請求項19記載の方法。
【請求項21】
不活性シェルがジエチルホスファトエチルトリエトキシシラン(PHS)及び2−[メトキシ(ポリ−エチレノキシ)プロピル]トリメトキシシラン(PEGシラン550)から選択される材料を含む、請求項20記載の方法。
【請求項22】
段階(a)、(b)、(c)及び(d)を順次段階として実施することで活性コア及び第2の前駆体からナノ粒子が形成される、請求項15乃至請求項21のいずれか1項記載の方法。
【請求項23】
第2の前駆体がカルボン酸を含み、不活性シェルがクエン酸イオン、グリコール酸イオン及びリンゴ酸イオンからなる群から選択されるカルボン酸陰イオンを含む、請求項15乃至請求項22のいずれか1項記載の方法。
【請求項24】
段階(a)及び(c)が同時に実施される結果、段階(b)及び(d)を同時に実施することで第1及び第2の前駆体からナノ粒子が直接に形成される、請求項15乃至請求項21のいずれか1項記載の方法。
【請求項25】
段階(b)及び(d)が一緒になって、第1及び第2の前駆体を酸化性水溶液に添加する段階を含む、請求項24記載の方法。
【請求項26】
さらに、接線流濾過、ダイアフィルトレーション及び通常濾過によってナノ粒子の平均粒径を選択する段階を含む、請求項15乃至請求項25のいずれか1項記載の方法。
【請求項27】
請求項15乃至請求項26のいずれか1項記載の方法に従って製造されるコア/シェル型ナノ粒子の集合体を形成する段階を含んでなるX線/コンピュータ断層撮影用製剤の製造方法であって、コア/シェル型ナノ粒子の集合体の平均粒径が集合体中のナノ粒子を哺乳類の腎臓によって実質的に排出可能とするように選択される、方法。
【請求項28】
ナノ粒子の平均粒径が約10nm未満、好ましくは約3nm未満である、請求項27記載の方法。
【請求項29】
さらに、透析、接線流濾過又はダイアフィルトレーションの使用によって集合体を精製する段階を含む、請求項25乃至請求項28のいずれか1項記載の方法。
【請求項1】
a)タンタル(Ta)を非ゼロ価状態で含む活性ナノ粒子コアと、
b)ナノ粒子コアの周囲に配置された不活性ナノシェルと
を含んでなるX線/コンピュータ断層撮影用造影剤であって、凝集体において活性ナノ粒子コア及び不活性ナノシェルがX線/コンピュータ断層撮影イメージングで造影剤として機能し得るコア/シェル型ナノ粒子を形成するようなX線/コンピュータ断層撮影用造影剤。
【請求項2】
活性ナノ粒子コアが酸化タンタルを含む、請求項1記載のX線/コンピュータ断層撮影用造影剤。
【請求項3】
活性ナノ粒子コアがTa2O5を含む、請求項1又は請求項2記載のX線/コンピュータ断層撮影用造影剤。
【請求項4】
ナノ粒子が約1〜約20nmの平均粒径を有する、請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載のX線/コンピュータ断層撮影用造影剤。
【請求項5】
ナノ粒子が約2〜約12nmの平均粒径を有する、請求項4記載のX線/コンピュータ断層撮影用造影剤。
【請求項6】
ナノ粒子が約3〜約8nmの平均粒径を有する、請求項5記載のX線/コンピュータ断層撮影用造影剤。
【請求項7】
ナノシェルが水溶性かつ生体適合性の材料を含む、請求項1乃至請求項6のいずれか1項記載のX線/コンピュータ断層撮影用造影剤。
【請求項8】
ナノシェルが、リガンド、オリゴマー、ポリマー、クラスター、炭水化物種、官能化シリカ及びこれらの組合せからなる群から選択される材料を含む、請求項7記載のX線/コンピュータ断層撮影用造影剤。
【請求項9】
ナノシェルがポリエチレングリコール、ポリエチレンイミン、ポリメタクリレート、ポリビニルスルフェート、ポリビニルピロリジノン、クエン酸イオン、リンゴ酸イオン、グリコール酸イオン、シラン及びこれらの組合せからなる群から選択される材料を含む、請求項8記載のX線/コンピュータ断層撮影用造影剤。
【請求項10】
ナノシェルがジエチルホスファトエチルトリエトキシシラン(PHS)及び2−[メトキシ(ポリ−エチレノキシ)プロピル]トリメトキシシラン(PEGシラン550)から選択される材料を含む、請求項9記載のX線/コンピュータ断層撮影用造影剤。
【請求項11】
請求項1乃至請求項10のいずれか1項記載の造影剤の集合体を含んでなるX線/コンピュータ断層撮影用造影液であって、集合体の平均粒径が約10nm以下である、X線/コンピュータ断層撮影用造影液。
【請求項12】
集合体の平均粒径が約7nm以下である、請求項11記載のX線/コンピュータ断層撮影用造影液。
【請求項13】
集合体の平均粒径が約6nm以下である、請求項12記載のX線/コンピュータ断層撮影用造影液。
【請求項14】
集合体の平均粒径が約3nm以下である、請求項13記載のX線/コンピュータ断層撮影用造影液。
【請求項15】
X線/コンピュータ断層撮影用造影剤の製造方法であって、
a)タンタルを含む第1の前駆体材料を用意する段階と、
b)第1の前駆体材料から、タンタルを非ゼロ価状態で含む活性コアを形成する段階と、
c)第2の前駆体材料を用意する段階と、
d)第2の前駆体材料から不活性シェルを形成する段階であって、不活性シェルはコア及びシェルがコア/シェル型ナノ粒子を形成するようにしてコアの周囲に配置される段階と
を含んでなる方法。
【請求項16】
第1の前駆体がタンタルの塩を含む、請求項15記載の方法。
【請求項17】
第1の前駆体がタンタルのアルコキシド又はハロゲン化物を含む、請求項16記載の方法。
【請求項18】
活性コアがTa2O5を含む、請求項15乃至請求項17のいずれか1項記載の方法。
【請求項19】
不活性シェルが第2の前駆体材料から導かれる水溶性材料を含む、請求項15乃至請求項18のいずれか1項記載の方法。
【請求項20】
第2の前駆体材料が重合性シランを含み、不活性シェルがポリエチレングリコール、ポリエチレンイミン、ポリメタクリレート、ポリビニルスルフェート、ポリビニルピロリジノン及びこれらの組合せからなる群から選択されるポリマーを含む、請求項19記載の方法。
【請求項21】
不活性シェルがジエチルホスファトエチルトリエトキシシラン(PHS)及び2−[メトキシ(ポリ−エチレノキシ)プロピル]トリメトキシシラン(PEGシラン550)から選択される材料を含む、請求項20記載の方法。
【請求項22】
段階(a)、(b)、(c)及び(d)を順次段階として実施することで活性コア及び第2の前駆体からナノ粒子が形成される、請求項15乃至請求項21のいずれか1項記載の方法。
【請求項23】
第2の前駆体がカルボン酸を含み、不活性シェルがクエン酸イオン、グリコール酸イオン及びリンゴ酸イオンからなる群から選択されるカルボン酸陰イオンを含む、請求項15乃至請求項22のいずれか1項記載の方法。
【請求項24】
段階(a)及び(c)が同時に実施される結果、段階(b)及び(d)を同時に実施することで第1及び第2の前駆体からナノ粒子が直接に形成される、請求項15乃至請求項21のいずれか1項記載の方法。
【請求項25】
段階(b)及び(d)が一緒になって、第1及び第2の前駆体を酸化性水溶液に添加する段階を含む、請求項24記載の方法。
【請求項26】
さらに、接線流濾過、ダイアフィルトレーション及び通常濾過によってナノ粒子の平均粒径を選択する段階を含む、請求項15乃至請求項25のいずれか1項記載の方法。
【請求項27】
請求項15乃至請求項26のいずれか1項記載の方法に従って製造されるコア/シェル型ナノ粒子の集合体を形成する段階を含んでなるX線/コンピュータ断層撮影用製剤の製造方法であって、コア/シェル型ナノ粒子の集合体の平均粒径が集合体中のナノ粒子を哺乳類の腎臓によって実質的に排出可能とするように選択される、方法。
【請求項28】
ナノ粒子の平均粒径が約10nm未満、好ましくは約3nm未満である、請求項27記載の方法。
【請求項29】
さらに、透析、接線流濾過又はダイアフィルトレーションの使用によって集合体を精製する段階を含む、請求項25乃至請求項28のいずれか1項記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2010−516782(P2010−516782A)
【公表日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−547437(P2009−547437)
【出願日】平成20年1月25日(2008.1.25)
【国際出願番号】PCT/US2008/052007
【国際公開番号】WO2008/092059
【国際公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年1月25日(2008.1.25)
【国際出願番号】PCT/US2008/052007
【国際公開番号】WO2008/092059
【国際公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】
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