説明

X線CT装置及び通信エラー監視方法

【課題】 ガントリの回転部と固定部における通信状態を常時監視し、動的なアラートレベル設定を行うことにより、より迅速なエラー対応や操作者への警告提示を可能とし、深刻なエラーの発生を未然に防ぐことが可能なX線CT装置等を提供する。
【解決手段】 回転部5と固定部6とがスリップリングによって通信接続されたガントリ2を有するX線CT装置1において、メイン制御ユニット31は、スリップリングの通信エラーを監視し、撮影において発生した通信エラーの数を計数する。メイン制御ユニット31は、撮影を行う都度、今回の撮影での単位時間当たりのエラー数と閾値とを比較し、比較結果に応じてアラートレベルを変更する。また、アラートレベルに応じてガントリ2の動作制限や警告出力を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線CT装置及び通信エラー監視方法に係り、詳細にはガントリの回転部−固定部間の通信エラーの監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
X線CT(computed tomography)装置は、被検体の周囲からX線を照射し、被検体を透過したX線の強度に関するデータをX線検出器にて収集し、収集したデータに基づいて被検体内部のX線吸収係数の分布情報を画像化する装置である。
一般的なX線CT装置は、X線管とX線検出器とが中空の回転板に対向配置され、X線検出器で検出したX線データをデータ収集装置により収集するガントリと、データ収集装置にて収集したデータに基づいて被検体断層像等の画像を再構成する画像処理ユニットと、画像処理ユニットにて再構成した画像を表示したり、撮影条件の入力及び表示を行うための入出力装置と、ガントリのX線照射空間に被検体を搬入及び搬出可能な寝台と、を備える。そしてガントリ、入出力装置、寝台等に備えられる各装置にはそれぞれ制御ユニットが設けられており、画像処理ユニットに設けられるメイン制御ユニットから送出される制御信号に基づいて各装置の動作が制御される。例えば、入力された撮影条件に基づくX線制御、コリメータ制御、データ収集制御、回転板の回転速度制御、寝台位置、寝台移動速度、画像の再構成及び記憶、表示等がメイン制御ユニット及び各制御ユニットによって行われる。
【0003】
ところで、上述のガントリは上述の回転板にスリップリング及び信号ブラシを設けることにより回転部と固定部との間でデータ伝送を行っている。そして、回転部−固定部間の通信エラーを監視すべく、例えば特許文献1では、X線検出信号(ローデータ)とは別にモニタ信号を取得している。特許文献1にはエラー監視の方法として、データ収集装置(DAS)からの出力を伝送用に変換したときのデジタル光出力の光強度をモニタ信号として監視したり(段落[0025]等)、ローデータにパリティビットを付加してパリティチェックを行ったり(段落[0040]等)することが記載されている。
また、特許文献2には、医用装置の自己診断により当該医用装置で発生したエラーログを含む履歴情報を遠隔管理装置へ送信し、遠隔管理装置側でエラーログを分析し、異常の有無を判断したり、修復のための処理を行うことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−160830号公報
【特許文献2】特許4138727号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のようにX線CT装置ではガントリの回転部−固定部間の通信エラーが監視されているが、通信品質の劣化の進行の仕方は個々の装置によっても異なるし、装置の使用の仕方によっても異なる。そのため、直近のエラーログのみを参照するだけでは足りず、過去のエラーログまで遡って分析すべきである。例えば、経時的に徐々に通信品質が劣化する場合であっても、劣化の進行度合いが一定のものもあれば、ある程度劣化が進行すると急激に悪化することもある。劣化の進行が急激に進む場合には、これを看過すると急に使用不能となるような深刻な状態に陥ることもあり、問題である。
【0006】
本発明は、以上の問題点に鑑みてなされたものであり、ガントリの回転部と固定部における通信状態を常時監視し、動的なアラートレベル設定を行うことにより、より迅速なエラー対応や操作者への警告提示を可能とし、深刻なエラーの発生を未然に防ぐことが可能なX線CT装置及び通信エラー監視方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した目的を達成するために、第1の発明は、ガントリの回転部と固定部とがスリップリングによって通信接続されたX線CT装置において、前記スリップリングを介した通信のエラーを監視する監視手段と、撮影を行う都度、撮影において発生した前記エラーの数に基づいて、アラートレベルを設定するアラートレベル設定手段と、前記アラートレベル設定手段により設定されたアラートレベルに応じて、前記ガントリの動作の制限を行う動作制限手段と、を備えることを特徴とするX線CT装置である。
【0008】
また、第2の発明は、ガントリの回転部と固定部とがスリップリングによって通信接続されたX線CT装置における通信エラー監視方法であって、前記スリップリングを介した通信のエラーを監視する監視ステップと、撮影を行う都度、撮影において発生した前記エラーの数に基づいて、アラートレベルを設定するアラートレベル設定ステップと、前記アラートレベル設定ステップにより設定されたアラートレベルに応じて、前記ガントリの動作の制限を行う動作制限ステップと、を含むことを特徴とする通信エラー監視方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、ガントリの回転部と固定部における通信状態を常時監視し、動的なアラートレベル設定を行って、より迅速なエラー対応や操作者への警告提示を可能とし、深刻なエラーの発生を未然に防ぐことが可能なX線CT装置及び通信エラー監視方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係るX線CT装置1の通信系及び制御系の構成について説明する図
【図2】X線CT装置1が実行するアラートレベル設定処理の流れを説明するフローチャート
【図3】エラー履歴情報35について説明する図
【図4】撮影処理について説明するフローチャート
【図5】警告の出力例を示す図
【図6】アラートレベルに応じた動作制限の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下図面に基づいて、本発明の実施形態を詳細に説明する。
まず、図1を参照して、本発明に係るX線CT装置1の通信系及び制御系の構成について説明する。
【0012】
図1に示すように、X線CT装置1は、ガントリ2、画像処理ユニット3、入出力装置4を備える。
ガントリ2は、回転部5と固定部6とを有し、回転部5側には、図示しないX線管、コリメータ、X線検出器、データ収集装置、データ転送装置等が設けられ、固定部6側には、図示しない電源ユニット、回転板駆動系、操作盤等が設けられる。なお、図1は、通信系及び制御系を説明する図であるため、各装置の配置等に関しては図示省略する。
上述の各装置を制御するための制御ユニットとして、回転部5及び固定部6の夫々に制御ユニット51,52,・・・53、61,・・・,63が設けられる。具体的には、回転部5の各制御ユニット51,52,・・・53とは、例えば、X線制御ユニット、コリメータ制御ユニット、データ転送制御ユニット等であり、固定部6の各制御ユニット61,・・・,63とは、例えば電源制御ユニット、ガントリ回転・ティルト制御ユニット、操作盤・表示制御ユニット等である。
各制御ユニット51,52,・・・53、61,・・・,63は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を備え、後述するメイン制御ユニット31から送られる制御信号に基づいて、機能に応じた制御動作を実行する。
【0013】
ガントリ2の回転部5は、X線管とX線検出器を対向配置した中空の回転板を備え、回転板のほぼ中央に配置される被検体に対して、被検体周囲の複数の角度方向からX線を照射する。X線管から照射されたX線は、被検体を透過し、X線検出器で検出され、データ収集装置により収集され、増幅、A/D変換される。回転部5にて計測されたデジタルデータは、回転板に設けられたスリップリング7及び固定部6側の信号ブラシ8を介して固定部6の制御ユニットに転送される。固定部6は、取得したデジタルデータを画像処理ユニット3のメイン制御ユニット31に転送する。
【0014】
スリップリング7及び信号ブラシ8は、回転部5の各制御ユニット51,52,・・・53と固定部6の各制御ユニット61,・・・,63とのデータ通信を媒介するものである。図1中、各制御ユニット51,52,・・・53,61,・・・,63を接続する破線は通信経路を示している。また、各制御ユニット51,52,・・・53,61,・・・,63間のデータ伝送は、制御対象の機能に応じて片方向通信または双方向通信のいずれとしてもよい。
【0015】
画像処理ユニット3は、メイン制御ユニット31、記憶装置32、及び画像再構成装置33を備える。画像再構成装置33は、ガントリ2から転送されたデジタルデータに基づいて被検体断層像等の画像を再構成する。
メイン制御ユニット31は、CPU、ROM、RAM等を備える。
メイン制御ユニット31は、X線CT装置1のシステム全体を制御するものであり、上述の各制御ユニット51,52,・・・53、61,・・・,63、入出力装置4に制御信号を送出し、ガントリ2の各部及び入出力装置4の各部の動作を制御する。またメイン制御ユニット31は、各制御ユニット51,52,・・・53、61,・・・,63から送信される各種信号を取得し、取得した信号に応じた動作を行う。
【0016】
入出力装置4は、X線CT装置1のユーザインターフェースであり、入力装置及び表示装置を備える。入力装置は、例えば、キーボード、マウス、テンキー、及び各種スイッチボタン等により構成され、操作者によって入力される各種の指示や情報をメイン制御ユニット31に出力する。表示装置は、液晶パネル等のディスプレイ装置と、ディスプレイ装置と連携して表示処理を実行するための論理回路で構成され、メイン制御ユニット31が取り扱う種々の情報を表示する。入出力装置4は、入力装置と表示装置とが一体化したタッチパネル式の操作パネルとしてもよい。
【0017】
本発明において、メイン制御ユニット31は、ガントリ2の回転部5及び固定部6の通信エラーを監視している。
通信エラーの監視は、例えばパリティチェック、CRC(Cyclic Redundancy Check)等の方式にて行うものとすればよい。例えば、ガントリ2の回転部5側でローデータをマルチプレクスする際にパリティビットを付加し、固定部6のエラー監視用の制御ユニット(以下、エラー監視ユニットという)にてパリティチェックを行って、エラーの有無を判定する。エラー監視ユニットは、通信エラーの判定結果に応じて、データ処理装置の制御ユニットにローデータの再送信を要求したり、エラーの有無をメイン制御ユニット31に出力する。
【0018】
メイン制御ユニット31は、撮影において発生した通信エラーの数を計数し、エラー履歴情報35として記憶装置32に蓄積する。ここでいう通信エラーの数とは、例えば1回の撮影におけるエラー発生数(エラー総数)、エラー総数と撮影時間とに基づいて算出される単位時間当たりエラー数等を含む。
またメイン制御ユニット31は、後述するアラートレベル設定処理(図2参照)を実行し、撮影を行う都度、上述の通信エラーの数に基づいて、アラートレベルを設定し、設定したアラートレベルに応じてガントリ2の動作制限を行う。
【0019】
次に、図2を参照して、X線CT装置1のアラートレベル設定処理について説明する。
【0020】
X線CT装置1に電源が投入されると、メイン制御ユニット31は、システムを起動し(ステップS100)、準備状態とする。この際、メイン制御ユニット31は、記憶装置32に記憶されている前回までのエラー履歴情報35を読み出す(ステップS101)。メイン制御ユニット31は、エラー履歴情報35に記録されている前回のアラートレベルを初期設定する(ステップS102)。
【0021】
図3は、記憶装置32に記憶されているエラー履歴情報35の一例を示す図である。
図3に示すように、エラー履歴情報35には、各撮影の撮影日時35a、単位時間当たりエラー数35b、エラー総数35c、各撮影でのアラートレベル35d等が記録されている。すなわち、アラートレベル35dが撮影毎に記録されている。
アラートレベル35dは、本実施の形態では、LV.「0」、LV.「1」、LV.「2」、LV.「3」の4段階として説明する。また、各アラートレベル35dは、LV.「0」が最も良好な通信状態であり、LV.「3」が最も劣悪な通信状態とする。
また後述する処理では、エラー数と閾値との比較処理を行うが、比較するエラー数とは、単位時間当たりエラー数とする。単位時間は例えば1分等とすればよい。撮影時間は、撮影内容によって異なるため10秒で終わることもあれば1分以上に及ぶこともある。そこで、閾値には単位時間当たりのエラー数として正規化された値を予め設定しておき、エラー判定を行う際に、直近の1回分の撮影にて発生したエラーの数を単位時間当たりに換算して上記閾値と比較を行うこととする。
またレベル判定に用いる閾値はA,B,Cの3種類とし、その値の大小関係は、C<A<Bとする。
【0022】
撮影開始指示が入力されると(ステップS103;Yes)、メイン制御ユニット31は撮影処理を開始する(ステップS104)。
撮影処理の詳細は後述するが、撮影処理ではアラートレベルに応じてその動作の一部または全部が制限される(図4、図6参照)。また、撮影中はガントリ2のエラー監視ユニットにより回転部5及び固定部6における通信エラーが監視される。メイン制御ユニット31は、ガントリ2のエラーの有無及びエラー数を取得する。
撮影処理が終了すると、メイン制御ユニット31は、アラートレベルの値を判定する(ステップS105)。
【0023】
アラートレベルがLV.「0」であった場合(ステップS105;Yes)、メイン制御ユニット31は、直近の撮影時に通信エラーがあったか否かを判定する(ステップS106)。通信エラーがなければ(ステップS106;No)、アラートレベルを変更せず、ステップS103へ移行して次の撮影開始指示の入力を待機する。
直近の撮影時に通信エラーがあった場合は(ステップS106;Yes)、アラートレベルをLV.「1」に変更し(ステップS107)、エラー履歴情報35に書き込み(ステップS108)、ステップS103へ移行して次の撮影開始指示の入力を待機する。
【0024】
アラートレベルがレベルLV.「1」に設定されている場合(ステップS109;Yes)、メイン制御ユニット31は、直近の撮影時に通信エラーがあったか否かを判定する(ステップS110)。通信エラーがなければ(ステップS110;No)、アラートレベルを変更せず、ステップS103へ移行して次の撮影開始指示の入力を待機する。
直近の撮影時に通信エラーがあった場合は(ステップS110;Yes)、閾値Aと直近の撮影における通信エラーの数とを比較し、閾値A以上であれば(ステップS111;Yes)、アラートレベルをLV.「2」に変更し(ステップS112)、エラー履歴情報35に書き込み(ステップS113)、ステップS103へ移行して次の撮影開始指示の入力を待機する。
【0025】
アラートレベルがレベルLV.「2」に設定されている場合(ステップS114;Yes)、メイン制御ユニット31は、直近の撮影時に通信エラーがあったか否かを判定する(ステップS115)。直近の撮影時に通信エラーがなければ(ステップS115;No)、アラートレベルを変更せず、ステップS103へ移行して次の撮影開始指示の入力を待機する。
直近の撮影時に通信エラーがあった場合は(ステップS115;Yes)、メイン制御ユニット31は、直近の撮影における通信エラーの数と閾値B,Cを比較し、閾値C以下であれば(ステップS116;No→ステップS117;Yes)、アラートレベルをLV.「1」に引き下げる(ステップS118)。一方、直近の撮影における通信エラーの数が閾値B以上であれば(ステップS116;Yes)、アラートレベルをLV.「3」に変更する(ステップS119)。メイン制御ユニット31は、変更されたアラートレベルをエラー履歴情報35に書き込み(ステップS120)、ステップS103へ移行して次の撮影開始指示の入力を待機する。
【0026】
アラートレベルがレベルLV.「3」である場合は(ステップS114;No)、メイン制御ユニット31は、アラートレベルの設定変更は行わず(ステップS121)、ステップS103へ移行し、次の撮影開始指示の入力を待機する。
【0027】
上述の処理において、撮影開始の指示が入力されず、シャットダウンが指示された場合は(ステップS122;Yes)、メイン制御ユニット31はシステムをシャットダウン処理するとともに、アラートレベル設定処理を終了する(ステップS123)。
【0028】
本実施の形態の撮影処理では、X線CT装置1は、アラートレベルに応じた動作を行う。以下、図4のフローチャートを参照し、撮影処理における動作制御の流れについて説明する。図4のフローチャートは、図2のアラートレベル設定処理におけるS104の詳細を示している。
【0029】
図4に示すように、メイン制御ユニット31は、設定されたアラートレベルに応じた警告表示を行う(ステップS201)。
また、アラートレベルが所定値以上(例えば、LV.「3」以上)である場合は(ステップS202;Yes)、メイン制御ユニット31は、パスワード操作ロックをかける(ステップS203)。以降、パスワードの入力がない限り、操作を行えないものとする。アラートレベルが所定値より小さい場合は(ステップS202;No)、メイン制御ユニット31は、アラートレベルに応じて制限された撮影動作を行う(ステップS205)。
【0030】
パスワード操作ロックがなされている場合は、入出力装置4を介してパスワードが入力されると、メイン制御ユニット31は操作ロックを解除し(ステップS204;Yes)、アラートレベルに応じて制限された撮影動作を行う(ステップS205)。
【0031】
図5は、入出力装置4における警告表示及びパスワード操作ロックの表示例を示す図である。
例えば、アラートレベルがLV.「3」に設定されている場合、入出力装置4の表示装置の一部には、アラートアイコン45が表示されるとともに、警告ウィンドウ46がポップアップ表示される。警告ウィンドウ46内には、パスワード入力欄が表示される。
アラートアイコン45や警告ウィンドウ46におけるメッセージの内容は、アラートレベルに応じて変化させることが望ましい。
【0032】
アラートレベルがLV.「0」、「1」、「2」のいずれか、或いはアラートレベルがLV.「3」であって、パスワード操作ロックが解除された場合は、前述した通り、メイン制御ユニット31は、図6の表36に示すような制限動作を行うように制御する。
具体的には、制限動作の対象として、ガントリ2の回転速度の速度制限、回転加速度制限、撮影時間の時間制限、またはガントリ2の自動回転停止の強制、自動回転開始の禁止のうち、少なくともいずれか1つを含むものとする。
【0033】
回転速度は、アラートレベルLV.「0」、LV.「1」においては、「速度制限なし」とし、アラートレベルLV.「2」では「高速制限1」、LV.「3」では「高速制限2」として、高速スピードが2段階に制限されるものとする。
【0034】
ガントリ2の回転部5の高速回転がエラー発生の要因となる場合があるため、エラー数が増加してきたら回転速度を制限することは、エラー発生の抑制に有効である。
【0035】
回転加速度については、アラートレベルLV.「0」、LV.「1」においては、「制限なし」とし、アラートレベルLV.「2」では「高速制限1」、LV.「3」では「高速制限2」として、高速スピードが2段階に制限されるものとする。
【0036】
回転加速度が大きいと、摩耗などの劣化が進んでしまうので、回転加速度が急激に変化しないように、制限をかけることも有効である。回転加速度は、通常の撮影であれば変化しないが、例えば、臓器ごとに回転速度を変えて撮影するときには、回転加速度が変化する。また、回転開始直後も、急激に変化する。そこで、回転開始直後は、徐々に回転を速めていくような制限をかけるようにする。
【0037】
撮影時間については、アラートレベルLV.「0」、LV.「1」においては、「時間制限なし」とし、アラートレベルLV.「2」では「時間制限1」、LV.「3」では「時間制限2」として、撮影時間が2段階に制限されるものとする。
【0038】
撮影時間が長ければ、摩耗などの劣化が進んでしまうので、撮影時間が短くなるように、制限をかけることも有効である。
【0039】
自動回転停止の強制については、アラートレベルLV.「0」では制限されず(回転を自動で停止しても良いし、手動で停止しても良い。)、LV.「1」、LV.「2」、LV.「3」では、オン(回転を自動で停止)とする。
【0040】
一般に、X線の照射が終了した後、回転を自動で止めるか、手動で止めるかを設定することが可能である。しかし、手動で止めるという設定では、X線の照射が終了した後も回転が無駄に継続してしまうことが考えられ、その場合は劣化が進んでしまう。そこで、手動で止めるという設定はできないようにして、強制的に自動回転停止の設定とする。
【0041】
自動回転開始の禁止については、アラートレベルLV.「0」では制限されず(本撮影の回転を自動で開始しても良いし、手動で開始しても良い。)、LV.「1」、LV.「2」、LV.「3」では、オン(本撮影の回転を手動で開始)とする。
【0042】
一般に、被検者の負担を軽くする為に、撮影全体(撮影準備も含む。)の時間を短くすることが望ましい。そこで、位置決め撮影が終了した後、すぐに本撮影が開始できるように、位置決め撮影が終了して所定時間が経過した後、自動的に本撮影を行う為のウォーミングアップ(X線は照射せず、回転のみ開始)を開始する設定ができるようになっている。しかし、実際には、本撮影の準備が整っていないこともあり、その場合は回転が無駄に行われて、劣化が進んでしまう。そこで、自動的に回転を開始することを禁止して、手動で本撮影のためのウォーミングアップを開始させる設定とする。
【0043】
自動メンテナンスについては、アラートレベルLV.「0」、LV.「1」では「不許可」、LV.「2」では「推奨」、LV.「3」では「警告」とする。
【0044】
X線CT装置1が、スリップリング7の自動メンテナンス機構を備えている場合、ユーザに対して、自動メンテナンスの推奨や警告を行うことも有効である。
【0045】
以上説明したように、本発明のX線CT装置1は、ガントリ2の回転部5と固定部6とがスリップリング7によって通信接続され、スリップリング7を介した通信のエラーを監視する。そして、メイン制御ユニット31は、撮影を行う都度、撮影において発生した通信エラーの数に基づいて、アラートレベルを設定し、設定されたアラートレベルに応じて、ガントリ2の動作の制限を行う。
【0046】
これにより、撮影の都度、アラートレベルを動的に設定でき、通信劣化の進行状況を迅速に把握できるようになる。またアラートレベルに応じて動作制限を行うため、通信劣化の状態に適切な動作を行える。このため、深刻なエラーの発生を未然に防ぐことが可能となる。
【0047】
更に、アラートレベル設定処理では、撮影において発生したエラーの数及び撮影時間に基づいて単位時間当たりエラー数を算出し、単位時間当たりエラー数と閾値を比較することによって、アラートレベルを変更するか否かを判断するため、現在のエラー数だけでなくエラー数の変化を比較して通信劣化の状態を的確に判断できる。
【0048】
また、メイン制御ユニット31は、アラートレベルに応じた動作制限として、ガントリ2の回転速度の速度制限、回転加速度の速度制限、撮影時間の時間制限、またはガントリ2の自動回転停止の強制、ガントリ2の自動回転開始の制限のいずれかを行うことができるため、摩耗などの劣化を遅らせて、撮影が可能な状態を維持することができる。
【0049】
また、設定されたアラートレベルに応じて、スリップリング7に関する警告内容を変更して出力するため、操作者にとって分かり易い警告を行える。
【0050】
なお、上述のアラートレベル設定処理において設定されたアラートレベルは撮影の都度、X線CT装置1内の記憶装置32にエラー履歴情報35に書き込まれ、保持されるものとしたが、更に、メイン制御ユニット31は、アラートレベルの設定変更の都度、アラートレベルやエラー履歴情報35をネットワークを介してメンテナンス管理サーバへ送信するようにしてもよい。メンテナンス管理サーバでは、ネットワークを介して通信接続された全てのX線CT装置1におけるアラートレベルを遠隔管理することができ、迅速にメンテナンス等の対応を行えるようになる。
【0051】
以上、添付図面を参照しながら、本発明に係るX線CT装置の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、上述の撮影処理において、アラートレベルがLV.「3」以上である場合にパスワード操作ロックを行うようにしたが、LV.「2」以下であってもパスワード操作ロックを行うようにしてもよい。その他、当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0052】
1・・・・・X線CT装置
2・・・・・ガントリ
3・・・・・画像処理ユニット
31・・・・メイン制御ユニット
32・・・・記憶装置
33・・・・画像再構成装置
35・・・・エラー履歴情報
36・・・・アラートレベルに応じた動作制限を示す表
4・・・・・入出力装置
45・・・・アラートアイコン
46・・・・警告ウィンドウ
5・・・・・回転部
51,52,53・・・・制御ユニット
6・・・・・固定部
61,63・・・・・制御ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガントリの回転部と固定部とがスリップリングによって通信接続されたX線CT装置において、
前記スリップリングを介した通信のエラーを監視する監視手段と、
撮影を行う都度、撮影において発生した前記エラーの数に基づいて、アラートレベルを設定するアラートレベル設定手段と、
前記アラートレベル設定手段により設定されたアラートレベルに応じて、前記ガントリの動作の制限を行う動作制限手段と、
を備えることを特徴とするX線CT装置。
【請求項2】
前記アラートレベル設定手段は、撮影において発生した前記エラーの数及び撮影時間に基づいて単位時間当たりエラー数を算出し、前記単位時間当たりエラー数と閾値を比較することによって、前記アラートレベルを変更するか否かを判断することを特徴とする請求項1に記載のX線CT装置。
【請求項3】
前記動作制限手段は、前記ガントリの回転速度の速度制限、撮影時間の時間制限、または前記ガントリの自動回転停止の強制、のいずれかを行うことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のX線CT装置。
【請求項4】
前記動作制限手段は、更に、前記ガントリの回転加速度の速度制限、または前記ガントリの自動回転開始の制限のいずれかを行うことを特徴とする請求項3に記載のX線CT装置。
【請求項5】
前記アラートレベル設定手段により設定されたアラートレベルに応じて、前記スリップリングに関する警告内容を変更し、前記警告内容を出力する警告手段を更に備えることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のX線CT装置。
【請求項6】
ガントリの回転部と固定部とがスリップリングによって通信接続されたX線CT装置における通信エラー監視方法であって、
前記スリップリングを介した通信のエラーを監視する監視ステップと、
撮影を行う都度、撮影において発生した前記エラーの数に基づいて、アラートレベルを設定するアラートレベル設定ステップと、
前記アラートレベル設定ステップにより設定されたアラートレベルに応じて、前記ガントリの動作の制限を行う動作制限ステップと、
を含むことを特徴とする通信エラー監視方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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