説明

YEBFを利用するタンパク質の製造方法

融合タンパク質(前記融合タンパク質は、YebF又はその生物学的に活性な変種若しくは部分に対してカルボキシ末端に配置されたタンパク質又はポリペプチドを含む)をコードする発現ベクターを適切な細菌細胞で発現させ、融合タンパク質を生成するタンパク質又はポリペプチドの製造方法が開示される。前記方法は、さらに分泌された融合タンパク質を増殖培養液から精製する工程を含むことができる。前記融合タンパク質はさらにペプチドタグ又はタンパク質切断部位を含み、前記タンパク質又はポリペプチドをYebF部分又はタグから分離させることができる。融合タンパク質の培養液への発現は精製のための出発物質を提供し、前記出発物質では分泌融合タンパク質は比較的純粋である。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本出願は、米国仮特許出願60/522,125(前記文献の全体が参照により本明細書に含まれる)の優先権を主張する。
【0002】
(技術分野)
本発明は、宿主細胞による増殖培養液へのタンパク質分泌の分野に関する。
【0003】
(背景技術)
細菌のタンパク質分泌は、細菌の生活周期(ピリ線毛及び鞭毛の形成、栄養目的のためにポリマーを消化する細胞外酵素分泌、並びにヒト、動物及び植物の感染で宿主細胞を殺すための毒素の分泌を含む)の多くの局面で重要な役割を果たす。大腸菌(E. coli)の非病原性実験室株、特にK12株は、日常的な増殖条件下で自然な状態ではタンパク質を細胞外培地に分泌しないが(6,8)、遺伝子解析によってタンパク質分泌経路が存在する可能性が示唆された(6)。Pugsleyは、長期にわたる実験室継代及び何十年に及ぶ保存の結果としてこの系が失われたと説明している(6)
枯草菌(Bacillus subtilis)は、詳しく性状が調べられた、細胞外酵素(例えばα-アミラーゼ及びスブチリン)のためのタンパク質分泌系を有し、さらにこの微生物は組換えタンパク質の細胞外製造のための代替として用いられてきた(7)。しかしながら大腸菌と比較して、枯草菌は以下を含むいくつかの欠点を有する:プラスミドの不安定性、適切な発現コントロール系の欠如及びこれら細胞から分泌される高レベルのタンパク分解酵素による培養液中の組換えタンパク質の分解(7)。さらにまた、大腸菌と比べて枯草菌では比較的長い培養期間が要求される。
【0004】
他の研究者らは大腸菌でのタンパク質分泌を調べた。Heら(10)は、その染色体にエルウィニア(Erwinia)のペクテートリアーゼ遺伝子を組み込んだ大腸菌細胞にコスミドが運ぶout遺伝子(約12kb)クラスターを導入した。out遺伝子は、エルウィニア・クリスンテミ(Erwinia chrysnthemi)(腸内細菌系の植物病原体)の分泌装置をコードする。out遺伝子の発現に支援されて、大腸菌は前記酵素を培養液中に分泌することができた。Pugsleyのグループは、第二のプラスミドでクローニングした14のクレブシーラ分泌機構遺伝子の同時発現によって、大腸菌細胞にクレブシーラ・オキシトカ(Klebsiella oxytoca)のプルラナーゼを培養液中に分泌させることができた(8)。Pugsleyのグループはまた、大腸菌の内在性キチナーゼの培養液中への分泌が、第二のプラスミドに運ばれた大腸菌のgsp遺伝子クラスターの同時発現によってPAP5066(hns不活化-大腸菌K12株)で起こり得ることを示した(11)。gsp遺伝子は大腸菌の仮定的なII型分泌機構タンパク質をコードし、H-NSタンパク質(全体的調節物質でありヌクレオチド構造形成タンパク質である)をサイレント化する(11)。全般的に、これらの分泌実験は、分泌機構タンパク質の人工的誘導を必要とする。
大腸菌K12では、詳しく同定された、細胞膜を通過する2つのタンパク質輸送経路、sec-依存経路又は普遍的分泌経路(GSP)、及びsec-非依存Mtt/Tat経路が存在する(12)。グラム陰性細菌のGSPは、外膜の分泌経路に応じて少なくとも6つの異なる末端枝を有する(13)。大腸菌のゲノム解析によって、他の細菌で分泌タンパク質をコードする遺伝子と相同な遺伝子が同定された。これらには、クレブシーラのpulS(11)に相同なgsp及びyacC(gspS)が含まれる(前記は大腸菌染色体の74.5分及び2.95分にそれぞれ見出される)。これらの遺伝子は機能的なタンパク質をコードするようであるが(14)、それらの転写は標準的な増殖条件下では停止され(6)、例えばgspは上記に記載したようにH-NSによってサイレント化される(11)
【0005】
大腸菌は、研究分野及び工業分野の両方でタンパク質の発現にもっとも広く用いられる細菌である。一般的な実験室株での分泌系を所有することが所望されるので、研究者らは培養液中に組換えタンパク質を製造する種々の方法を探索してきた(5)。培養液中への組換えタンパク質の蓄積は潜在的に多数の利点を提供することができる。前記利点には、タンパク質生成及び純度の増加、過剰発現タンパク質の細胞毒性の低下、封入対形成及び細胞質のタンパク分解酵素によるタンパク質の分解の回避が含まれる。適切な組換えタンパク質の折り畳みが培養液中のより好ましいレドックス潜在能力によって強化されることもまた見出された。
配列モチーフアルゴリズムを基に、大腸菌のyebF遺伝子は、未知の機能を有する膜に結合する小さなリポタンパク質(Blattner B1847又Swiss-Prot P33219)をコードすると予測される。yebF遺伝子は、LexA(1,9)によってネガティブに調節されるyebGFEオペロンの部分である。yebF遺伝子の発現は、UV照射(2)及びマイトマイシンC(3,9)誘発DNA損傷を含むいくつかのストレス条件下で観察された。しかしながらその他についてはほとんど報告がない。
【0006】
(発明の要旨)
YebFは小さな(10.8kD)可溶性内在性タンパク質であり、自然には大腸菌細胞によって培養液中に分泌される。一般的に用いられる実験室株のHB101(大腸菌K12とB株のハイブリッド)、BL21(DE3)(B株)及びMG1655(K12株)は、標準的な実験室条件下でYebFを培養液中に分泌する。
YebFは増殖培養液にタンパク質を輸送するために用いることができる。YebF及びヒトインターロイキン-2(hIL2)、シグナル配列を欠く枯草菌X23のα-アミラーゼ遺伝子の短縮形(8)及びリーダーを欠く大腸菌アルカリホスファターゼを含む融合タンパク質が大腸菌で分泌された。したがって、YebFを用いて、タンパク質、ポリペプチド及びペプチドの培養液中への分泌を誘導することができる。さらにまた、分泌された融合タンパク質は活性を有する。
hIL2は15kDの疎水性タンパク質であり(15)、α-アミラーゼ遺伝子の短縮形は48kDの疎水性タンパク質であり、さらにリーダーを欠く大腸菌アルカリホスファターゼは親水性タンパク質である。したがって、YebFは、疎水性及び親水性タンパク質の両者の培養液中への分泌を誘導することができる。さらにまた、YebFは種々のサイズのタンパク質を培養液に運ぶことができる。しかしながら、分泌されたYebF-hIL2融合物は培養液中でのタンパク質分解に感受性を有することが記載された。
【0007】
前記融合タンパク質が、ペプチドタグ(例えばHis6タグ)を含むようにさらに操作されたとき、前記分泌融合タンパク質は、例えばアフィニティークロマトグラフィーによって培養液から容易に精製することができるか、又は前記は、例えば蛍光抗体によって容易に特定することができる。融合タンパク質の培養液への発現は精製のための出発物質を提供し、この場合、前記分泌融合タンパク質は、細胞質で発現されるタンパク質と比較して相対的に純度が高い。したがって、その後の精製工程はより単純であり、費用も安い。さらにまた、培養液への分泌融合タンパク質の産生は、精製された生成物中のリポ多糖類によるこれらタンパク質の汚染を低下させ得る(16)
したがってある特徴では、本発明は、以下の工程を含む、興味の対象(of interest)となるタンパク質、ポリペプチド又はペプチドを製造する方法である:
(a)YebF又はその生物学的に活性な変種若しくは部分に対してカルボキシ末端に配置された興味の対象となるタンパク質、ポリペプチド又はペプチドを含む融合タンパク質をコードする発現ベクターを提供する工程、及び
(b)適切な細菌細胞で前記融合タンパク質を発現させ、それによって分泌融合タンパク質を生成する工程。
前記細菌細胞は大腸菌であり得る。前記方法はさらに、前記細菌細胞が増殖している培養液から分泌融合タンパク質を精製する工程を含むことができる。前記融合タンパク質はさらに、少なくとも1つのタグ又は少なくとも1つのタンパク質切断部位を含むことができる。
【0008】
また別の特徴では、本発明は、以下の工程を含む、興味の対象となるタンパク質、ポリペプチド又はペプチドを細菌細胞から増殖培養液に分泌させる方法である:
(a)YebF又はその生物学的に活性な変種若しくは部分をコードするヌクレオチド配列とインフレーム(in frame)で結合した興味の対象となるタンパク質、ポリペプチド又はペプチドをコードするヌクレオチド配列をさらに含む、組換えDNA分子を含む発現ベクターを作成する工程、
(b)細菌細胞に前記発現ベクターをトランスフェクトする工程、及び
(c)前記タンパク質の増殖培養液への分泌を誘導する条件下で、前記組換えDNA分子によってコードされるタンパク質を前記細菌細胞で発現させる工程。
前記細菌細胞は大腸菌であり得る。前記組換えDNA分子はさらに、タグ又はタンパク質切断部位をコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列を含むことができる。
また別の特徴では、本発明は、興味の対象となるタンパク質、ポリペプチド又はペプチドの細菌増殖培養液への分泌を誘導することを目的とする、YebF又はその生物学的に活性な変種若しくは部分の使用である。
YebF又はその生物学的に活性な変種若しくは部分は、興味の対象となるタンパク質、ポリペプチド又はペプチドをさらに含む融合タンパク質の部分であってもよい。YebF又はその生物学的に活性な変種若しくは部分は、興味の対象となるタンパク質、ポリペプチド又はペプチドに対してアミノ末端で融合されてあってもよい。
また別の特徴では、本発明は、YebF又はその生物学的に活性な変種若しくは部分の転写及び合成を誘導する制御ヌクレオチド配列と動作可能なように連結された、YebF又はその生物学的に活性な変種若しくは部分をコードする発現ベクターである。
さらにまた別の特徴では、本発明は、YebF又はその生物学的に活性な変種若しくは部分及び興味の対象となるタンパク質、ポリペプチド又はペプチドを含む融合タンパク質をコードする発現ベクターである。興味の対象となるタンパク質、ポリペプチド又はペプチドをコードするヌクレオチド配列は、YebF又はその生物学的に活性な変種若しくは部分をコードするヌクレオチド配列の下流に配置することができる。前記発現ベクターは大腸菌での使用を目的とすることができる。前記発現ベクターはさらに、少なくとも1つのタグをさらに含む融合タンパク質をコードすることができる。
【0009】
発明の詳細な説明
本明細書では、興味の対象となるタンパク質、ポリペプチド又はペプチドを細菌の増殖培養液に分泌させる方法が開示される。さらにまた、本明細書では、興味の対象となるタンパク質、ポリペプチド又はペプチドを製造する方法が開示される。本方法は、YebF又はその生物学的に活性な変種若しくは部分を利用して、興味の対象となるタンパク質、ポリペプチド又はペプチドを、融合タンパク質として細菌の増殖培養液中に誘導し又は分泌させる。前記融合タンパク質は、興味の対象となるタンパク質、ポリペプチド又はペプチドと融合したYebF又はその生物学的に活性な変種若しくは部分を含む。前記融合タンパク質には場合によってタグを付加することができ、さらに場合によって、興味の対象となるタンパク質、ポリペプチド又はペプチドからYebFコード部分及び/又はタグを切断することを可能にするアミノ酸配列が含まれ得る。
本発明の理解を容易にするために、多数の用語を以下に定義する。
“ヌクレオチド”という用語は、リボヌクレオチド又はデオキシリボヌクレオチドを指す。“核酸”はヌクレオチドポリマーを指し、一本鎖でも二本鎖でもよい。“ポリヌクレオチド”は、長さが12以上のヌクレオチドである核酸を指す。
“興味の対象となるヌクレオチド配列”という用語は、“興味の対象となるタンパク質、ポリペプチド又はペプチド配列”をコードする任意のヌクレオチド配列であって、何らかの理由のために当業者がその産生を所望すると考えられるものを指す。そのようなヌクレオチド配列には、構造遺伝子(例えばレポーター遺伝子、選別マーカー遺伝子、腫瘍遺伝子、薬剤耐性遺伝子、増殖因子遺伝子など)、調節遺伝子(例えばアクチベータータンパク質1(AP1)、アクチベータータンパク質2(AP2)、SP1)などをコードする遺伝子、抗体遺伝子、酵素遺伝子などのコード配列、又はその部分が含まれるが、ただしこれらに限定されない。興味の対象となるヌクレオチド配列は、多くの異なる生物の1つに由来するコード配列(例えば哺乳動物、昆虫、細菌及びウイルスの遺伝子)を含むことができる。
【0010】
ヌクレオチド配列がタンパク質のアミノ酸配列に翻訳され得るならば、前記ヌクレオチド配列はタンパク質を“コードする”。前記ヌクレオチド配列は実際の翻訳開始コドン又は終止コドンを含む必要はない。
“興味の対象となるタンパク質、ポリペプチド又はペプチド”は、“興味の対象となるヌクレオチド配列”によってコードされる。前記タンパク質、ポリペプチド又はペプチドは、任意の生物(哺乳動物、昆虫、微生物、例えば細菌及びウイルスを含むが、ただしこれらに限定されない)のタンパク質であろう。前記は任意のタイプのタンパク質(構造タンパク質、調節タンパク質、抗体、酵素、インヒビター、トランスポーター、ホルモン、親水性又は疎水性タンパク質、モノマー又はダイマー、仮定的関連タンパク質、工業関連タンパク質又はその部分を含むが、ただしこれらに限定されない)であろう。
本明細書で用いられる、“発現”とは、文脈にしたがって転写又は翻訳、又はその両者を指す。
本明細書で用いられる、“分泌”とは、細菌で発現された融合タンパク質の細菌増殖培養液への排出を指す。
“YebF”は、以下のアミノ酸配列(配列番号:1)を有するタンパク質を意味する。
MKKRGA FLGLLLVSAC ASVFAANNET SKSVTFPKCE DLDAAGIAAS VKRDYQQNRV ARWADDQKIV GQADPVAWVS LQDIQGKDDK WSVPLTVRGK SADIHYQVSV DCKAGMAEYQ RR
“成熟YebF”は、以下のアミノ酸配列(配列番号:2)を有するタンパク質を意味する。
ANNET SKSVTFPKCE DLDAAGIAAS VKRDYQQNRV ARWADDQKIV GQADPVAWVS LQDIQGKDDK WSVPLTVRGK SADIHYQVSV DCKAGMAEYQ RR
【0011】
yebFは、以下の配列(配列番号:3)を有する核酸又はヌクレオチド配列を意味する。
atg aaa aaa aga ggg gcg
ttt tta ggg ctg ttg ttg gtt tct gcc tgc
gca tca gtt ttc gct gcc aat aat gaa acc
agc aag tcg gtc act ttc cca aag tgt gaa
gat ctg gat gct gcc gga att gcc gcg agc
gta aaa cgt gat tat caa caa aat cgc gtg
gcg cgt tgg gca gat gat caa aaa att gtc
ggt cag gcc gat ccc gtg gct tgg gtc agt
ttg cag gac att cag ggt aaa gat gat aaa
tgg tca gta ccg cta acc gtg cgt ggt aaa
agt gcc gat att cat tac cag gtc agc gtg
gac tgc aaa gcg gga atg gcg gaa tat cag
cgg cgt taa
“改変されたもの”、“変異体”又は“変種”という用語は本明細書では相互に用いられ、(a)1つ又は2つ以上のヌクレオチドが添加又は欠失しているか、又は異なるヌクレオチド又は改変塩基(例えばイノシン、メチルシトシン)で置換されているヌクレオチド配列、又は(b)1つ又は2つ以上のアミノ酸が添加又は欠失しているか、又は異なるアミノ酸で置換されているタンパク質、ペプチド又はポリペプチドを指す。変種は天然に存在するものでも、当業者によって実験的に作出されるものでもよい。YebF又はyebFは、1つ若しくは2つ以上のアミノ酸又はヌクレオチドにおいて、それぞれYebF又はyebFの配列と異なるタンパク質、ペプチド、ポリペプチド又はポリヌクレオチドであってもよい。
【0012】
これに関しては、変異、付加、欠失及び置換を含むある種の変更は、リファレンス核酸又はタンパク質に対して実施することができ、それによって前記変更された核酸又はタンパク質は特定の生物学的機能又は活性を維持するか、又はおそらくは変化したけれども有用な活性を示し得ることは、当分野では理解されるであろう。いくつかの欠失、挿入及び置換はYebFタンパク質又はYebF核酸における特徴に激烈な変化を生じないであろう。しかしながら、そのような変更を実施する前に置換、欠失又は挿入の正確な影響を予測することは困難である一方で、その影響を日常的なスクリーニングアッセイによって評価できることは当業者には理解されよう。例えば、YebFの変種が分泌機能をもつか否かは、前記YebF変種、又はYebF変種を含む融合タンパク質が培養液中に分泌されるか否かを、材料と方法の項に開示した方法及び本明細書に開示した実施例によってアッセイすることにより決定することができる。タンパク質の特性(例えばレドックス又は熱安定性、疎水性、タンパク分解に対する感受性、又は担体と凝集する傾向、又はマルチマー形成傾向)は当業者に周知の方法によってアッセイすることができる。
変種は、ランダム変異導入、オリゴヌクレオチド仲介(又は位置特異的)変異導入、PCR変異導入及びカセット変異導入を用いて実験的に作出することができる。オリゴヌクレオチド仲介変異導入は、例えばAdelman(31)が記載したように当分野で周知であり、バクテリオファージM13由来ベクター又は一本鎖ファージの複製起点を含むベクター(Vieraら(32)が記載)のどちらかを用いる。一本鎖鋳型の生成は、例えばSambrookら(17)に記載されている。また別には、一本鎖鋳型は、標準的な技術を用いて二本鎖プラスミド(又は他のDNA)を変性させることによって生成することができる。
【0013】
また別には、DNAのリンカースキャン変異導入を用いて、プラスミドベクターでクローニングした興味の対象となる配列全体に点変異クラスターを導入することができる。例えばAusubel(33)を参考にすることができる。領域特異的変異導入及びPCRを用いる誘導変異導入もまた利用して、本発明の変種を構築することができる。これに関しては、例えばAusubel(33)を参考にすることができる。ランダム変異導入に関する方法には、dNTPアナローグの取り込み(34)及びPCR主体ランダム変異導入(例えばStemmer and Shafikhani(35,36))が含まれる。
YebFの変種又は部分に関して用いられるとき、“生物学的に活性を有する”という用語は、YebFの少なくとも分泌機能を保有するタンパク質、ポリペプチド又はペプチドを指す。YebFの生物学的に活性な変種又は部分は、YebFの分泌活性の少なくとも約5%、好ましくは少なくとも約25%、より好ましくは少なくとも約50%、及びもっとも好ましくは少なくとも約75%を有する。YebFタンパク質の変種又は部分が分泌活性を有するか否かは、例えば本明細書に開示した材料と方法の項及びの実施例に記載した方法によって決定することができる。YebFの生物学的に活性な変種又は部分は増殖培養液に分泌されるか、又は融合タンパク質(前記変種又は部分は融合タンパク質の部分を構成する)の増殖培養液への分泌を惹起するか、又はこれら活性の両方が分泌活性であると考えられる。
【0014】
タンパク質について用いられるとき、“部分”という用語は、当該タンパク質のフラグメントを指す。フラグメントのサイズは4アミノ酸残基からタンパク質の全アミノ酸配列−1アミノ酸の範囲であろう。
“ペプチド”は4から20アミノ酸のポリマーであり、“ポリペプチド”は21から50アミノ酸のポリマーであり、さらに“タンパク質”は50を越えるアミノ酸のポリマーである。
融合タンパク質は、少なくとも2つの異なるタンパク質に由来する領域を含む組換えタンパク質である。本明細書で用いられる、“融合タンパク質”という用語は、興味の対象となるタンパク質、ポリペプチド又はペプチドが、YebF、YebFの生物学的に活性な変種、又はYebFの生物学的に活性な部分(本明細書では、“YebF又はその生物学的に活性な変種若しくは部分”)と融合したタンパク質分子を指す。ある文脈で“融合する”という用語は、YebF又はその生物学的に活性な変種若しくは部分をコードする核酸が、興味の対象となるタンパク質、ポリペプチド又はペプチドをコードする核酸とインフレームで結合し、転写及び翻訳が生じたとき単一のアミノ酸の鎖を提供することを意味する。別の文脈では、“融合する”はまた、興味の対象となるタンパク質、ポリペプチド又はペプチドがYebF又はその生物学的に活性な変種若しくは部分と結合することを指す。
“分泌融合タンパク質”は、細菌の増殖培養液に分泌される融合タンパク質の部分である。明らかなように、分泌された融合タンパク質は、YebFのリーダー配列、特にMKKRGAFLGLLLVSACASVF(配列番号:20)を含むアミノ酸を欠く蓋然性が高いであろう。
【0015】
“発現ベクター”は、個々の宿主細胞での、動作可能なように連結されたヌクレオチド配列の発現のために必要な適切な制御ヌクレオチド配列(例えばプロモーター、エンハンサー、リプレッサー、オペレーター配列及びリボソーム結合部位)を含む組換えDNA分子を指す。“動作可能なように連結されている”又は”動作可能な組合せで“とは、ヌクレオチド配列が、所望のタンパク質分子の転写及び/又は合成を開始、調節又は誘導するために、制御ヌクレオチド配列に対応して配置されることを意味する。
発現ベクターは自己複製性であってもよく、したがって複製部位を保持するか、または、宿主染色体にランダムに又は標的部位に組み込まれるベクターであってもよい。発現ベクターは、形質転換細胞での表現型の選別を提供するための選別可能マーカーとして選別遺伝子を含むことができる。発現ベクターはまた、翻訳の制御に有用な配列を含むことができる。
“精製された”又は“精製する”とは、サンプルから所望されない成分を除去することを意味する。例えば、細菌増殖培養液から分泌融合タンパク質を精製することは、前記培養液の他の成分(すなわちタンパク質及び他の有機分子)を除去し、それによって分泌融合タンパク質の百分率を増加させることを意味する。
本発明は、YebF又はその生物学的に活性な変種若しくは部分を利用して、細菌の増殖培養液へ興味の対象となるタンパク質、ポリペプチド又はペプチドを誘導する。これは、YebF又はその生物学的に活性な変種若しくは部分及び興味の対象となるタンパク質、ポリペプチド又はペプチドを含む融合タンパク質を作出することによって達成することができる。
【0016】
融合タンパク質をコードする組換えDNA分子は、例えば、興味の対象となるタンパク質、ポリペプチド又はペプチドをコードする核酸(興味の対象となるヌクレオチド配列)を、YebFタンパク質又はその生物学的に活性な変種若しくは部分をコードする核酸とインフレームで連結することによって作成することができる。ある実施態様では、興味の対象となるタンパク質、ポリペプチド又はペプチドをコードする核酸は、YebF又はその生物学的に活性な変種若しくは部分をコードする核酸の3'-末端に(すなわち下流に)連結することができる。また別の実施態様では、興味の対象となるタンパク質、ポリペプチド又はペプチドをコードする核酸は、YebF又はその生物学的に活性な変種若しくは部分をコードする核酸の3'-末端に直接連結されなくてもよい。むしろ、スペーサーヌクレオチド配列が、YebF又はその生物学的に活性な変種若しくは部分をコードするヌクレオチド配列の3'-末端、及び興味の対象となるタンパク質、ポリペプチド又はペプチドをコードするヌクレオチド配列の5'-末端を分離させてもよい。前記スペーサーヌクレオチド配列は、機能的であってもなくてもよいが(すなわち、タグ若しくは切断部位、又は全く機能がないが2つの部分を分離することができるもの)、1つ又は2つ以上のアミノ酸をコードする。したがって、これらの実施態様によって生成される融合タンパク質において、興味の対象となるタンパク質、ポリペプチド又はペプチドは、YebFタンパク質又はその生物学的に活性な変種若しくは部分に対してカルボキシ末端側に配置される。この組換えDNA分子を作成する方法は当業者には公知であり、その例は、材料と方法に開示した方法及び本明細書に開示の実施例によって提供されている。
【0017】
YebFタンパク質又はその生物学的に活性な変種若しくは部分をコードするヌクレオチド配列は、又は興味の対象となるタンパク質、ポリペプチド又はペプチドをコードするヌクレオチド配列はさらにまた転写及び翻訳制御領域を含むことができる。前記制御領域は、転写及び翻訳に中心的に関与する細胞タンパク質と特異的に相互作用するDNA配列の短いアレーである。これらの領域にはプロモーター、オペレーター配列及びリボソーム結合部位が含まれ、前記は当業者には公知である。
融合タンパク質又は分泌融合タンパク質に少なくとも1つのタグを貼付することが所望されるであろう。前記タグは、分泌融合タンパク質を増殖培養液から精製するために、分泌融合タンパク質を特定するために、又は他のいくつかの目的のために有用であり得る。有用なタグには、特異的な抗体によって認識され、それによって融合タンパク質をアフィニティークロマトグラフィーによって精製するか、又は例えば蛍光抗体で特定することを可能にするエピトープタグが含まれる。有用なエピトープの例は以下のとおりである:グルタチオン-S-トランスフェラーゼ、c-myc、ポリヒスチジン、FLAG(商標)、マルトース結合タンパク質、インフルエンザAウイルスヘマグルチニン、β-ガラクトシダーゼ及びGAL4又は前記の部分。好ましいものはポリヒスチジン(ポリ-Hisタグ)である。これらのエピトープタグを認識する同族抗体は当業者に公知である。例えば、ポリヒスチジンは、キアゲン(Qiagen)から入手できる抗Hisモノクローナル抗体によって認識され、FLAG(商標)は、シグマ/コダック(Sigma/Kodak)から入手できる抗FLAG M1、M2、及びM5モノクローナル抗体によって認識される。したがって、本明細書で意図されることは、タグのアミノ酸配列をコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列を組換えDNA分子に加えることであろう。前記タグは融合タンパク質の任意の位置に存在し得るが、ただし、YebFタンパク質又はその生物学的に活性な変種若しくは部分のアミノ末端又はリーダー配列内は例外とすることができる。
【0018】
YebF部分(すなわち成熟YebFタンパク質又はその生物学的に活性な変種若しくは部分)及び/又はタグを興味の対象となるタンパク質、ポリペプチド又はペプチドから分離するために、後で分泌融合タンパク質を切断することが所望され得る。例えば、YebF部分及び/又はタグが、興味の対象となるタンパク質、ポリペプチド又はペプチドの生物学的活性に干渉する場合、融合タンパク質からそれらの一方又は両方を切断することが好ましいであろう。したがって、本明細書で意図されることは、あるアミノ酸配列をコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列を組換えDNA分子に加えることであろう。前記アミノ酸配列は、融合タンパク質からYebF部分及び/又はエピトープタグ及び/又はタンパク質、ポリペプチド又はペプチドの切断を容易にする。特異的なプロテアーゼによる切断のための適切なアミノ酸配列の例は以下のとおりである:(a)Xa因子プロテアーゼ、アミノ酸配列Ile-Glu-Gly-Argを認識し、アルギニン残基のC-末端ペプチド結合を切断する(24,25);(b)タバコエッチウイルス(TEV)のNIaプロテアーゼ、7アミノ酸コンセンサス配列、Glu-X-X-Tyr-X-Gln/Serを認識し(式中Xは種々のアミノアシル残基である)、保存されたGlnとSer残基の間を切断する(26);(c)プレシッジョン(PreScission(商標))、LeuGluValLeuPheGln/GlyProの認識配列のGlnとGly残基の間を切断する(27,28);(d)トロンビン、トロンビンのための認識配列を含むpGEXベクター(GSTジーン融合)から調製した融合タンパク質を消化するために用いられる(29);及び(e)エンテロキナーゼ、Asp-Asp-Asp-Asp-Lysのリジンの後で、又はタンパク質基質の構成に応じて他の塩基性残基を切断する(30)
【0019】
したがって、本明細書で意図される組換えDNA分子は、YebFタンパク質又はその生物学的に活性な変種若しくは部分をコードするヌクレオチド配列、及び興味の対象となるタンパク質、ポリペプチド又はペプチドをコードするヌクレオチド配列、及び場合によってタグをコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列、及び/又は場合によってタンパク質切断部位をコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列を含む。これらの種々のヌクレオチド配列は互いにインフレームの状態にある。したがって、本明細書で意図される融合タンパク質及び分泌融合タンパク質は、場合によって少なくとも1つのタグ、及び/又は場合によって少なくとも1つの切断部位を含む。
続いて作成された組換えDNA分子は発現ベクターに挿入することができる。本明細書に開示した本発明の実施に有用なベクターは、プラスミド、例えばpMS119EH(lacプロモーターを含む)、及びpT7-5(T7プロモーターを含む)である。選択される発現ベクターは、融合タンパク質の発現にどの細菌株又は細菌種が用いられるかに左右されるであろう。
当業者に明らかであろうが、組換えDNA分子を含む発現ベクターの作成のために、上記の一連の事象は上記の順序で実施される必要はなく、上記の方法を用いなければならないというわけでもない。例えば、興味の対象となるタンパク質、ポリペプチド又はペプチドをコードする核酸を発現ベクターに挿入し、続いてYebFタンパク質又はその生物学的に活性な変種若しくは部分をコードする核酸を挿入するか、又はその逆を実施することができる(本明細書の材料と方法の項を参照されたい)。使用する場合には、タグ又はタンパク質切断部位をコードする核酸は前記組換えDNA分子の上記成分の前後に挿入して、発現ベクターに挿入される。発現ベクターは、前記成分を別個に添加する必要性を排除するために、タグ配列をコードする核酸を既に含んでいてもよい。
【0020】
続いて、組換えDNA分子を含む発現ベクターを適切な細菌宿主に融合タンパク質の発現のためにトランスフェクトする。前記をどのように達成し得るかの例は、本明細書の材料と方法及び実施例の項で提供される。非限定的な例として、発現ベクターはHB101、BL21又はMG1655にトランスフェクトすることができる。例えば、挿入物を含むpMS119EHをHB101又はMG1655で用いることができ、さらに挿入物を含むpT7-5をBL21で用いることができる。
本発明で用いるために好ましいものは、染色体外で複製する発現ベクターであろう。なぜならば、極めて多数の融合タンパク質核酸構築物コピー(前記は一般的に高レベルの発現(したがって分泌)をもたらすであろう)が生成され得るからである。
本発明は、多数の様々な、興味の対象となるタンパク質、ポリペプチド又はペプチドの分泌を意図する。本発明で意図されるものは、4アミノ酸の小さなペプチドである。さらにまた本発明で意図されるものは、そのサイズに関係なく本明細書に開示した方法によって分泌させることができる任意のタンパク質又はポリペプチドである。提示した実施例では、48kDのタンパク質が分泌され、大きなタンパク質が本開示の方法によって容易に分泌され得ることを示唆している。
親水性及び疎水性タンパク質の両タンパク質が本開示の方法によって分泌され得る。提示した実施例では、疎水性タンパク質(hIL2)及び親水性タンパク質(α-アミラーゼ又はアルカリホスファターゼ)の両者が分泌された。
【0021】
細菌細胞は、増殖培養液から分泌融合タンパク質の採集を所望する時期まで、前記培養液(例えばテリフィックブロス)で増殖させる。必要な時期は、使用される細菌発現系及び製造される融合タンパク質に関係する因子の数に左右される。個々の細菌株又は細菌種の増殖速度、分泌融合タンパク質が培養液に蓄積される速度、分泌される融合タンパク質の培養液中での安定性、及び細菌の溶解(増殖培養液を汚染するであろう)が生じ始める時間が、培養液から分泌融合タンパク質を採集する時期に影響を与えると考えられる典型の非限定的な例である。
必要な純度レベル(前記はまた分泌融合タンパク質が何に用いられるかに左右される)に応じて、前記分泌融合タンパク質は、例えばアフィニティークロマトグラフィーによってさらに精製することができる。所望の場合は、YebF部分及び/又はタグを分泌融合タンパク質から切断し、興味の対象となるタンパク質、ポリペプチド又はペプチドだけを生成することができる。
本明細書に開示されるものは、YebFを用いて、タンパク質、ポリペプチド及びペプチドの培養液中への分泌を誘導することができるという事実である。本発明者らは、3つの異なる興味の対象となるヌクレオチド配列を、yebFのためのヌクレオチド配列を含むベクターでクローニングした。したがって、本明細書で開示されるものは、YebFをコードする核酸を含む発現ベクターであり、前記YebFは、YebFの転写及び合成を開始、調節又は誘導するために必要な制御核酸配列に動作可能なように連結されている。前記発現ベクターは制限エンドヌクレアーゼ部位又は他の部位をYebFコード領域の下流に含むことができ、前記部位は、興味の対象となるタンパク質、ポリペプチド又はペプチドをコードする核酸のインフレーム挿入を容易にするために有用である。前記発現ベクターはまた、本明細書の材料と方法の項で示すようにタグのヌクレオチド配列、又はタンパク質切断部位をコードするヌクレオチド配列を含むことができる。
【0022】
さらにまた本明細書に開示されるものは、YebFのリーダー配列を用いて、ペリプラズムへのタンパク質の輸送を誘導することができるという事実である。したがって、本明細書に開示されるものは、YebFリーダー配列の転写及び合成を開始、調節又は誘導するために必要な制御核酸配列に動作可能なように連結されたYebFのリーダー配列をコードする核酸を含む発現ベクターである。前記発現ベクターは制限エンドヌクレアーゼ部位又は他の部位をYebFリーダーコード領域の下流に含むことができ、前記部位は、興味の対象となるタンパク質、ポリペプチド又はペプチドをコードする核酸のインフレーム挿入を容易にするために有用である。前記発現ベクターはまた、本明細書の材料と方法の項で示すようにタグのヌクレオチド配列、又はタンパク質切断部位をコードするヌクレオチド配列を含むことができる。さらにまた開示されるものは、ペリプラズムへのタンパク質、ペプチド又はポリペプチドの輸送を誘導するためにYebFリーダー配列を使用することである。さらにまた開示されるものは、興味の対象となるタンパク質、ポリペプチド又はペプチドをペリプラズムで発現させる方法である。前記方法は、YebFリーダー配列に対してカルボキシ末端に配置された興味の対象となるタンパク質、ポリペプチド又はペプチドを含むタンパク質をコードする発現ベクターを提供する工程、及び適切な細菌細胞で前記タンパク質を発現させる工程を含む。
開示した実施態様と併せて本発明をこれまで述べてきたが、本発明はこれらの実施態様に限定されないことは理解されよう。反対に、本発明は、添付の請求の範囲によって規定される本発明の範囲内に含まれ得る別の選択肢、改変及び等価物を包含することを意図する。種々の改変が当業者には極めて明白であろう。上記及び下記で提供される例はこれらの例に限定しようとするものではなく、単に本発明を例示することを意図し、むしろ下記の特許請求の範囲を制限するのではなく本発明を詳述しようとするものである。
【0023】
(実施例)
材料と方法
細菌株及び増殖条件:本実験で用いた大腸菌株は、HB101(supE44 hsd20(rb-mb-)recA13 ara-14 proA2 lacY1 galIK2 rpsL20 xyl-5 mtl-1)、BL21(DE3)(hsdS gal(λcIts857 ind1 Sam7 nin5 lacUV5-T7 gene1)、及びMG1655(F-λ- ilvG- rfb-50 rph-1)であった。細胞は30℃でテリフィックブロス(Terrific Broth、TB)で増殖させた。抗生物質は以下の濃度で添加した:アンピシリン(Amp)100μg/mL及びクロラムフェニコール(Cm)80μg/mL。lacプロモーターの制御下での遺伝子の発現は0.1mMのイソプロピル-μ-D-チオガラクトピラノシド(IPTG)で誘発した。
分子生物学的技術及びプラスミドの構築:DNA操作、配列決定及び細菌の形質転換は本質的には記載(17)のとおりであった。発現プラスミドは、lacプロモーターを含むpMS119EH(18)又はT7プロモーターを含むpT7-5を土台にして構築した。タッチダウンプロトコルを用いるPCR増幅及びその後の精製は記載(19)のとおりに実施した。
yebF遺伝子は、それぞれ以下のフォワード及びリバースオリゴマー(下線を付した表示の制限部位を有する)を用いてHB101染色体DNAから増幅させた:yebF5、5'-GAGAATTCGGAGAAAAACATGAAAAAAAG-3'(EcoR1を含む)(配列番号:4);及びyebF3、5'-ATATCTCGAGACGCCGCTGATATTC-3(Xho1)(配列番号:5)。遺伝子の3'-末端に6ヒスチジンタグを添付するために(yebFH6)、前記増幅したDNAをEcoR1及びXho1で消化した後、同じ酵素で切断したpCTTE-2a(+)(Novagen, US)でクローニングした。yebFH6を保持するEcoR1-HindIIフラグメントを続いてpMS119EHでサブクローニングしてpYebFH6/MSを作成するか、又はpT7-5でサブクローニングしてpYebFH6/T7を作成した。
枯草菌X-23(4)のαアミラーゼ遺伝子の成熟切端形(GenBankアクセッション番号AB015592)をpAC92(Dr.Spartaco Atolfi-Filho(University of Brasilia, Brazil)から贈与))から以下のオリゴヌクレオチドを用いて増幅させた:amy5、5'-TAGAATTC(AGGAG)AAAAACATGGTCGACTCGGTCA AAAACGGG-3'(配列番号:6)(EcoR1部位、リボソーム結合部位(括弧内)、インフレーム開始コドンATG及びSal1を用いて操作);amy3、5'-ATATCTCGAGATGAGGCGCATT TCC-3(Xho1)(配列番号:7)。増幅したDNAはEcoR1及びXho1で切断し、pYebFH6/MS内のyebFフラグメント(EcoR1-Xho1)と置き換えてpAmyH6を作成した。
pYebFH6/MSのyebF遺伝子保持EcoR1-Xho1フラグメントで、pAmyH6のEcoR1-Xho1フラグメントを置き換えることによって、yebF-amy融合遺伝子を含むpYebF-AmyH6を作成した。yebFヌクレオチド配列とamyヌクレオチド配列との間には、さらに別の2つのアミノ酸(LE)がコードされてあり、前記はこの2つのタンパク質を連結するであろう。
yebF遺伝子のsec-リーダー配列を成熟α-アミラーゼ遺伝子に融合させるために、先ず前記リーダー配列を、鋳型としてpYebFH6/MSを用いオリゴマーとして以下を用いPCRによって増幅させた:5'-ATATCTCGAGAGCGAAAACTGATGC-3'(配列番号:8)(Xho1制限部位を含む)及びyebF5(上記)。EcoR1及びXho1で消化した後、増幅させたDNAフラグメントをpAmyH6に挿入して、EcoR1-Sal1配列を置き換え、pLS-pAmyH6を作成した。このハイブリッド遺伝子の配列は配列決定によって実証した。
pYebF-hIL2H6を構築するために、以下のオリゴヌクレオチドを用いhIL2遺伝子をpBM806(Biomira Inc.(Edmonton, Canada)から提供されたhIL-2を含むプラスミド)からPCRによって増幅させた:Sak1部位を有するhil5、GATCATGTCGACGCTCCGACCTCCAGC(配列番号:9);及びXho1部位をもつhil3、ATATCTCGAGGGTCAGGGTGGAGAT(配列番号:10)。PCR生成物のSal1-Xho1フラグメントをpYebFH6/MSのXho1部位に挿入して、pYebF-hIL2H6を作成した。yebFヌクレオチド配列とhIL-2ヌクレオチド配列との間には別の2つのアミノ酸(LE)がコードされてあり(前記はこの2つのタンパク質を連結するであろう)、さらにその後に6つのヒスチジン残基がタグとして続く。
成熟hIL-2(すなわち20アミノ酸のリーダー配列を欠く)のアミノ酸配列は以下のとおりである:
APTSSSTKKT QLQLEHLLLD LQMILNGINN YKNPKLTRML TFKFYMPKKA TELKHLQCLE EELKPLEEVL NLAQSKNFHL RPRDLISNIN VIVLELKGSE TTFMCEYADE TATIVEFLNR WITFCQSIIS TLT(配列番号:11)
pYebF-phoAH6/T7プラスミドを作成するために、phoA遺伝子を以下のオリゴヌクレオチドを用いてPCR-増幅した:Xho1部位を有するphoA5、GCATATCTCGAGCGGACACCAGAAATGCC(配列番号:12);及びSal1部位を有するphoA3、CGATAGTCGACTTTCAGCCCCAGAGC(配列番号:13)。前記PCR生成物のXho1-Sal1フラグメントをpYebFH6/T7のXho1部位に挿入してpYebF-phoAH6/T7を作出した。
【0024】
タンパク質発現及びサンプルの処理:LBプレートの単一コロニー又は-20℃の冷却細胞懸濁物(40%グリセロールで保存)の小アリコットを1.5mLのTBに接種し、30℃で一晩増殖させた。遠心によって細胞を採集した後、新しい1.5mLのTBで1回洗浄し、さらに新しい1.5mLのTBで懸濁し、発現実験のために新しいTBに1容積%で接種した。タンパク質発現は、0.6のOD600時に0.1mMのIPTG又は0.5mMのIPTGの添加によって誘発した。本実験で表示した時点で細胞を採集した。コールドショックを回避するために室温での遠心により採集した後、細胞ペレットを最初の培養容積と等しい容積の100mMのMOPS(pH7.0)で1回洗浄した。得られた培養上清を0.22μmのミリポアフィルターを用いてろ過し、非沈殿細胞を除去した。
亜細胞分画:ペリプラズムを細胞質から浸透圧ショック法(21)によって分離させた。
【0025】
α-アミラーゼ活性アッセイ:このアッセイは、酵素基質としてデンプンを用い、Ohdanら(8)が記載したように3,5-ジニトロサリチル酸法を用いる。反応は、1分当たり1回振盪しながら58℃で10分インキュベートした後、反応混合物200μLに対して0.4NのNaOH中のDNSAを200μL添加することによって停止させた。その後混合物を5分間煮沸し、1mLの水で希釈し、さらに1分遠心してデンプンを沈殿させた。最後に540nmで読みとった。酵素活性は、1分当たり遊離したグルコースのmole数で表した(前記は、反応で酵素がデンプンから遊離させる還元糖の量に等しい)。アッセイされるべき各サンプル対をセットした。一方は反応用であり、他方は読み取りのバックグラウンド用である(前記に200μLのDNSAが反応開始前に添加された)。
培養液中又は浸透圧ショック液中の活性の測定のために、前記液体に反応混合物を直接添加した。浸透圧ショックから得た細胞又は生成スフェロプラストにおける活性をアッセイするために、10mMのトリス塩酸(pH7.0)中の細胞懸濁物又はスフェロプラスト懸濁物を等容積の溶解緩衝液(70μg/mLリゾチーム、6mMのEDTA、2%トリトンX-100から成る、pH8.0)と混合して、細胞又はスフェロプラストを破壊した。溶解を氷上で完了させた後、1μLの210mMのCaCl2を各々70μLの溶解物に添加してEDTAを抑えこみ、α-アミラーゼ活性に必要な反応混合物中の0.1mMのCa2+は見越しておいた。
アルカリホスファターゼ活性アッセイ:1mLの反応混合物は、100mMのトリス塩酸(pH8.0)、10mMのMgCl2、2mMのZnCl2及び0.04%のpNPPから成っていた。表示した時間インキュベートした後、40μLのNaOH(5M)の添加により反応を停止させ、続いて410nmでの読みとり前に14,900rpmで1分遠心した。バックグラウンドの読みを測定するために、反応をNaOHにより停止させた後で、サンプルを混合物に添加した。酵素活性を計算するために以下を用いた:p-ニトロフェノレート陰イオン(pNP;pNPPから遊離される黄色生成物)のε410=17,800M-1cm-1
【0026】
YebFH6の精製及びタンパク質化学:IPTGで誘発した後で一晩(15時間)増殖させた大腸菌HB101/pYebFH6/MSの培養液中の総タンパク質を、0.2mMのPMSFの存在下で70%飽和で硫安により4℃で沈殿させた。ペレットを、0.2mMのPMSF、10mMのイミダゾール及び500mMのNaClを含む20mMトリス塩酸(pH7.5)に溶解した。pYebFH6の精製はニッケルアフィニティークロマトグラフィー(Amersham)を用いて達成した。この部分的に精製したタンパク質をさらに、300ÅのC8カラム(1mmx15cm)で逆相HPLCを用い、0.05%のTFAの存在下で流速100μL/分で0%から2%のアセトニトリルグラディエントによって溶出させてさらに精製した。主要な単一ピークが25分で観察された。このピーク分画を採集し、MALDI-TOFリニアモード質量分析(Voyager 6064, Applied Biosystems)及びN-末端アミノ酸配列決定(ヒューレットパッカードG1000Aタンパク質シークェンサーでルーチン(Routine)3.0を使用)の両方のために用いた。
タンパク質電気泳動及びウェスタンブロッティング:培養液又は細胞由来のタンパク質サンプルを5%のトリクロロ酢酸(TCA)を用いて調製した。エッペンドルフ管で室温で5分14,900rpmで遠心した後、残留TCAを除去するためにペレットを1mLの水に1回懸濁し5分遠心することによって洗浄した。TCAをペレットからほぼ完全に抽出するために、1.5mLの冷アセトン(-20℃)を各管に添加した。続いて前記管を渦巻き攪拌し、さらにもう1回のアセトン洗浄に付した。最後のペレットを50mMのトリス塩酸(pH8.0)に溶解し、その後、等容積の電気泳動ローディング緩衝液を添加した。タンパク質は8.5%のSDS-トリシンゲル(22)で分離し、続いてニトロセルロース膜にイムノブロットのために移した。ヒスチジンタグを検出するために、ヒスチジンタグに対するマウスモノクローナル抗体(Qiagen)を用いた。CRPは、CRPに対するウサギポリクローナル抗血清(Dr. Hiroji Aiba(Nagoya University, Japan)から贈与)を用いて検出した。イムノブロットは、ECLキット(Amersham)を用い強化化学発光によってデベロップした。
【0027】
IL-2バイオアッセイ:YebF-hIL2の生物学的アッセイは、IL-2依存Tリンパ球細胞株CTLL-2を用いるLeiらの方法(23)を改変したものに拠った。アッセイの前に、YebF-hIL2サンプルは、0.1mMのIPTGによる誘発後3時間でHB101/pYebF-hIL2H6又はpMS119EH(コントロール)のどちらかから採集した大腸菌培養液を0.22μmのミリポアフィルターを通すことによって調製した。CTLI-2のための細胞培養液(RHFM)には、10%(v/v)ウシ胎児血清、0.1mMのβ-メルカプトエタノール、25mMのHEPES(pH7.5)、2mMのL-グルタミンを補充したRPMI1640を用いる。50μLの新しいRPMI中のCTLL-2細胞(106細胞/mL)を96ウェルプレートに入れた。50μLの標準hIL-2(Dr. C. Bleackley(Unibersity of Alberta)により贈与された)又はRHFMで希釈したYebF-hIL2サンプルを添加した。細胞を5%CO2下で37℃で20時間インキュベートした。細胞の分裂はMTT(3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド)アッセイを用いて測定した。MTT(5mg/mL)をリン酸緩衝食塩水で調製し、滅菌した。10μLのMTTを各ウェルに添加し、続いて37℃で4時間インキュベートした。0.04NのHClを含む150μLのイソプロパノールを各ウェルに添加し、ピペッターで十分に混合して生じた結晶を溶解させた。吸収は560nmで読みとった。それぞれの値は3つのアッセイの平均である。
【0028】
大腸菌YebFリーダーの性状決定yebGFEオペロンのDNA配列の調査によって、yebG及びyebFの間の領域の第二のATG(1928412-1928414)から上流に典型的なリボソーム結合部位(GGAG、Blattner座標はMG1655の1928421-1928424)が明らかになった。第一のATG(Blattner座標は1928424-1928426)はYebFのインフレーム翻訳を開始させることができたが(さらに、これは、前記が例えばNCBI(B1847)及びSwiss-Prot(P33219)のようなデータベースで報告されている態様であるが)、このATGの前にはリボソーム結合部位は見出されてなかった。yebF遺伝子は、発現ベクターpMS119EHでlacプロモーターの制御下で、ヌクレオチドGから始まって(Blattner座標は1928424)、リボソーム結合部位の添加無し、及び6-ヒスチジンタグをカルボキシ末端に添加してクローニングした。このHis-タグ付加YebFタンパク質はイムノブロッティング(下記参照)によって示されるように明瞭に発現された。
大腸菌YebFのN-末端アミノ酸配列は以下のとおりである:
(-21)MKKRGAFLGLLLVSACASVFA(-1) (1)ANNE……..
この配列は、脂肪酸アシル化部位(Cys-6)を含む、リポタンパク質(4)に特徴的なモチーフと類似する。このモチーフはまた、シゲラ・フレキシネリ(Shigella flexneri)(97%同一性)のYebFでも保存されている。しかしながらこのCysは、他の同様なタンパク質(例えば腸チフス菌(Salmonella typhi)のSTY2087(77%同一)、ネズミ腸チフス菌(Salmonella typhimurium)のYebF(76%同一)、ペスト菌(Yersinia pestis)のYP01779(43%同一)及びフォトーハブダス・ルミネセンス(Photorhabdus luminescens)のPLU2692(40%同一))では失われている。したがって、YebFはいくつかのデータベース(NCBIでのB1847及びSwiss-ProtでのP33219)で提唱されているようなリポタンパク質ではない可能性がある。大腸菌YebFのアミノ末端配列はまた、典型的な21アミノ酸のsec-リーダーペプチド(N-末端に3つの塩基性残基(-20Lys-Lys-Arg-18)を含む)を含み、16残基の長さの疎水性コア及び小さな残基(Ala-1)が続き、前記はリーダーペプチダーゼIの切断部位として機能することができた(図1)。同様なリーダー配列は全てのYebF関連タンパク質で見出され(図1)、大腸菌YebFはペリプラズムに分泌され得ることを示唆している。
【0029】
YebFの分布:YebFがどこに分布しているかを決定するために、HB101/pYebFH6/MSの200mL培養を600nmの光学密度が0.6に達するまでTBで30℃で増殖させた。前記培養を0.1mMのIPTGで誘発し、誘発後4時間で採集し、200mLのMOPS(ph7.0、100mM)で室温で1回洗浄した。細胞を冷浸透圧ショック(Neu and Heppel, 1965)に付し、細胞質からペリプラズムを分離した。生成されたこれらの分画のタンパク質サンプルのイムノブロッティングを材料と方法の項に記載したように調製した。
YebFはペリプラズムに分布し、さらに驚いたことには培養液にも存在していた。YebFは冷浸透圧ショック後のスフェロプラストでは検出されなかった(図2A)。
タンパク質合成阻害の分泌に対する影響を決定するために、HB101/pYebFH6/MS細胞の10mLを図2Aのために述べたように増殖させた。採集後、細胞を35mLの新しいTBで1回洗浄し、さらにクロラムフェニコールを含む(80μg/mL)10mLの新しいTBに懸濁した。1.5mLの細胞を図2Bに表示した時点で採取した。コールドショックを回避するために、細胞及び培養液を室温で遠心して分離した。His6タグに対して作成したモノクローナル抗体を用い材料と方法の項で述べたようにイムノブロッティングを実施した。
タンパク質合成が阻害されたとき、ペリプラズムのYebFレベルは徐々に痕跡レベルへと下降したが、その後のインキュベーション時間中にだんだんと培養液中に蓄積した(図2B)。
YebFタンパク質が増殖時に培養液中に蓄積するか否かを決定するために、細胞を0.1mMのIPTGで誘発し、一晩増殖させ、表示した誘発後時間に採集し、材料と方法の項で述べたように調製した。図3に示されているように、YebFは培養液に存在していた。
細胞を誘発し一晩増殖させたとき、全てのYebFは培養液に存在していた(データは示されていない)。総合すれば、これらのデータは、YebFが細胞外の可溶性タンパク質である蓋然性が高いことを示している(下記参照)。
【0030】
分泌YebFの特徴:ペリプラズム及び培養液中の両方に分泌されたYebF-His6は、SDS-トリシンポリアクリルアミドゲルで、成熟His-タグ付加タンパク質(約12kD)に一致する分子量で泳動した(図3)。YebF-His6は、材料と方法の項に記載したように培養液から精製され、N-末端アミノ酸配列解析は前記配列が、Ala-Asn-Asn-Glu-Thr-Ser-Lys-Ser-Val-Thrであることが明らかになった。この結果は、YebFは、-6位のCysの前ではなく21アミノ酸のsec-リーダーの直後で切断されることを示している(図1)。成熟YebFタンパク質と結合する任意の脂肪酸が存在するか否かを調べるために、Malidi-TOFリニアモード質量分析によって質量は11,829±1.4ダルトンであることが決定された(図4)。6-ヒスチジンタグ及びLeu-Glu連結アミノ酸を有する成熟His-タグ付加YebFの計算質量は11,860.3ダルトンであった。これは実験的に決定した質量よりも31.1ダルトン(0.26%)大きい。何らかの共有結合脂肪酸が存在するならば、質量分析によって決定される質量は、計算で得た質量よりも大きくなると予測され、したがってYebFはリポタンパク質ではないと示唆される。
【0031】
YebFの培養液への分泌:培養液中のYebFの存在は、細胞溶解、外膜からの漏出、天然の細胞分泌プロセス又は前記いくつかの組合せの可能性がある。溶解について試験するために、イムノブロッティングを用いてYebF及び異化代謝産物リプレッサータンパク質(CRP)(細胞質に存在する周知のDNA結合タンパク質)の細胞内分布を比較した。OD600が0.6に達するまで、大腸菌HB101/pYebFH6/MSを50mLのTBで30℃で増殖させ、0.1mMのIPTGで誘発した。10mLの細胞培養を誘発後2、4及び6時間で採集した。細胞を10mLのMOPS(100mM)で1回洗浄し、同じMOPS緩衝液10mLに懸濁した。培養液は0.22μmのミリポアフィルターでろ過した。細胞懸濁液及び培養液の両方を25%のトリクロロ酢酸(TCA)2.5mLと混合し、タンパク質を沈殿させた。ペレット内に取り込まれたTCAは-20℃のアセトンを用いて2回抽出することによって除去した。タンパク質サンプルを2つの平行したゲルにロードし、前記を続いてイムノブロッティングに付した。
細胞では、CRP及びYebFの両方が容易に検出された。培養液では、YebFは全ての実験時点で検出された(図5A)。しかしながら、CRPは誘発後2及び4時間には培養液には観察されなかった(図5B)。微量のCRPが6時間で検出され、前記は避け得ない細胞溶解の開始を示している(図5)。これは、誘発後4時間までの培養液に見出されるYebFは細胞溶解から生じたものではないことを示している。
外膜からの漏出の可能な関与を解明するために、lac-プロモーターの制御下にある2つのキメラ遺伝子をベクターpMS119EHで構築した。前記は、枯草菌由来の無リーダー成熟α-アミラーゼ遺伝子(9)をyebF遺伝子の3'-末端に融合させるか(pYebF-AmyH6)、又はyebFのsec-リーダー配列に直接融合させる(pLs-AmyH6)ことによって構築した。さらにまた、同じベクター中の無リーダー成熟αアミラーゼをコントロールとして用いた(pAmyH6)。シグナル配列を全くもたない成熟α-アミラーゼは細胞質内に残留するはずである。細胞をHB101で増殖させ、図2のように誘発した。細胞は、一切の細胞溶解の前に、0.1mMのIPTGで誘発し4時間後に採集して冷浸透圧ショック(21)に付し、材料と方法の項に記載したようにα-アミラーゼ活性を定量した。
【0032】
pMS119EFを含むHB101細胞は検出不能レベルのα-アミラーゼを培養液又は細胞内に産生した(データは示されていない)。完全長のYebFと融合したα-アミラーゼだけが培養液で見出され、総活性の35%が培養液中に存在していた。無リーダーα-アミラーゼ及びYebFのリーダーペプチドと融合したα-アミラーゼは発現されたが細胞内に残留し、平均して各々の5%未満が培養液で検出された(図6A)。これらのデータは、図6Bで示した培養液中のタンパク質プロフィルによって確認された。
冷浸透圧ショック法を用いて、細胞のペリプラズムを細胞質から分離した。図6Aに示したように、YebFのリーダーと融合した、68%を超えるα-アミラーゼがペリプラズムで回収された。無リーダーα-アミラーゼの85%が細胞質に残留した。ペリプラズムで見出された12%の無リーダーα-アミラーゼは、冷浸透圧ショック時の細胞破壊によるものであろう。これらのデータは、YebFリーダーは、sec-依存転移系を用いて細胞質からペリプラズムへ融合タンパク質を誘導することができるが、前記タンパク質を培養液に放出することはできなかったことを示した。したがって、これらのデータは、プラスミドpLS-AmyH6を保持する細胞の培養液中にはα-アミラーゼが存在しないことと合わせると、外膜は、成熟α-アミラーゼ(YebFリーダーペプチドはリーダーペプチダーゼによって除去されている)が正常な増殖時に細胞外に漏出するのを防ぐことができることを示している。
YebF-αアミラーゼ融合タンパク質は、ペリプラズムから外膜を通過することができた(図6A)。このことは、YebFは、外膜を通過する分泌のために融合タンパク質を培養液へ誘導する際に不可欠の役割を果たしたことを示している。さらにまた、図2は、ペリプラズムのYebFタンパク質又は培養液のYebFタンパク質の移動度に明白な相違を示していない。このことは、外膜から分泌される間に更なる切断は生じていないことを示している。これはまた質量分析によって決定された分子量(11,829ダルトン)と配列から計算された分子量(11,860ダルトン)の一致によっても支持される。
【0033】
培養液中のYebFの存在は、ペリプラズムの漏れではなく細胞からの分泌によるものであるということをさらに示すために、GZ39T/pYebF-AmyH6細胞でYebF-αアミラーゼの遊離をアルカリホスファターゼ(よく規定された内在性のペリプラズム酵素)の遊離と比較した。アルカリ性ホスファターゼはホスフェート枯渇によって誘発されるので、無機リン酸塩を含む富裕な培養液で増殖した野生型大腸菌細胞ではほとんど発現されない。この点を克服するために、TG1の誘導体、GZ39T(富裕培養液でTG1よりも約10倍多くのアルカリホスファターゼを発現する)を単離した。
GZ39T/pYebF-AmyH6を25mLのTBで30℃で増殖させた。細胞を0.05mMのIPTGによる誘発後7時間で採集し、100mMのMOPS(pH7.0)で洗浄し、1.5mLの30mMトリス塩酸(pH 8.0)に懸濁した。200μLの細胞を300μLの細胞溶解緩衝液と混合した(材料と方法を参照されたい)。この細胞溶解物をα-アミラーゼ及びアルカリ性ホスファターゼ活性アッセイの両方に用いた。培養液中のα-アミラーゼ活性を測定するために、35μLの培養液を直接用いた。アルカリホスファターゼ活性を測定するために、8mLの培養液をアミコン(Amicon)超遠心フィルター(MWCO 30KD)で50mMのMOPS(pH7.0)を用いて3回ろ過し、ホスフェート及び着色物質を減少させ、最後に0.6mLに濃縮した。この調製物の200μLをアッセイに用いた(材料と方法を参照されたい)。アルカリホスファターゼを37℃で60分、暗所でアッセイした。結果は図7Aに示されている。図7Aは、わずかに5.6%のアルカリホスファターゼに比べて、YebF-αアミラーゼの42.6%が培養液に分泌されたことを示している。
YebFの過剰発現が外膜の脱安定化を引き起こす可能性を、5つの抗生物質(エリスロマイシン、リファンピシン、バンコマイシン、バシトラシン及びアジスロマイシン)の透過性を試験することによって調べた。プラスミドを含まない細胞又はpMS119EHを含む細胞と比較して、これらの物質に応答してYebF又はYebF-αアミラーゼを発現する細胞については、MIC(最小阻害濃度)の変化はほとんど観察されなかった(図7B)。
【0034】
種々の大腸菌株の分泌能力:pYebFH6/MS又はpYebFH6/T7を保有する3mLの細胞を増殖させ、図2Aのように誘発した。タンパク質サンプルの調製及びイムノブロッティングは材料と方法で記載したように実施した。ヒスチジンタグに対するモノクローナル抗体を用いてYebF-His6をモニターした。
MG1655(K12株)、BL21(DE3)(B株)及びHB101(K12とBのハイブリッド)は全てYebFを培養液中に分泌するが、ただし効率は異なっていた(図8)。この結果は、一般的な実験室株を含む大腸菌細胞は、周辺環境にYebFを含むタンパク質を分泌する能力をなお保有していることを示唆しているのかもしれない。
YebFに関する組換えタンパク質製造:材料と方法の項に記載したように、YebFのカルボキシ末端と枯草菌X-23(8)の無リーダーα-アミラーゼ(48kD)、無リーダー大腸菌アルカリホスファターゼ(ダイマーとして94kD)及び医学的に関心のあるタンパク質のヒトインターロイキン-2(hIL-2)(15kD)との融合タンパク質遺伝子構築物を作成した。これらは、親水性(α-アミラーゼ及びアルカリホスファターゼ)及び疎水性(hIL-2)タンパク質の両方を代表する。3つ全てのパッセンジャータンパク質はそのC-末端にHis6タグを保持している。
これら融合タンパク質遺伝子構築物を含む細胞を25mLのTB中で30℃で増殖させた。0.05mMのIPTGを発現誘発のために添加するときに同時に1つの培養に10mMのDTTを添加した。誘発後3時間でサンプルを採取した。
図9Aは、HB101/pYebF-hIL2H6での成熟YebF-hIL2融合タンパク質の発現を示す。融合タンパク質は、通常の増殖条件下では誘発後3時間で培養液に分泌された。培養液に10mMのDTTが存在する場合には、しかしながら、細胞は融合タンパク質を培養液に分泌しなかった。ただし相応の細胞内発現は観察された。CTLL-2 Tリンパ球のin vitro増殖を基準にするYebF-hIL2融合タンパク質の活性アッセイでは、培養液中の分泌タンパク質は活性を有することが示された(図9B)。前記融合タンパク質の活性は、培養液1mLにつき43,800hIL-2ユニットであった。
図10は、誘発後9時間までに成熟YebF-αアミラーゼ融合タンパク質の75%が細胞から分泌されることを示している。前記融合タンパク質は培養液中で安定であり、YebF-αアミラーゼの最大分泌は培養が定常期に達した後で発生するようであった。ニッケルアフィニティークロマトグラフィーを用いて、1リットル規模の実験から31mgの精製YebF-αアミラーゼ融合タンパク質(比活性は380.7μmolグルコース/分/mgタンパク質)が得られた。最初の培養液中のα-アミラーゼの比活性は、誘発後の時間にしたがって、誘発後4時間の150molグルコース/分/mgタンパク質から誘発後9時間の85molグルコース/分/mgタンパク質に変化する。枯草菌培養からは比活性は3.4μmolグルコース/分/mgタンパク質である(4)。前記の高い比活性はまた、図6Bに示されている培養液中の単純なタンパク質プロフィルにも反映されている。
成熟YebF-アルカリホスファターゼ融合タンパク質もまた、BL21(DE3)細胞でT7プロモーターの制御下でpYebF-phoAH6/T7プラスミドから発現された。IPTGによる誘発後7時間で培養液に23%が分泌された。
【0035】
参考文献
下記の参考文献は、明細書の関連部分の括弧中の番号として、明細書中で引用されている。各参考文献は参照することにより明細書に組み込まれる。













【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】大腸菌YebFタンパク質及び他の細菌由来のホモローグのリーダー配列のアラインメントを示す。大腸菌(配列番号:14);S. フレキシネリ(flexneri)(配列番号:15);腸チフス菌(S. typhi)(配列番号:16);Y. ペスチス(配列番号:17);P. ルミネセンス(luminescens)(配列番号:18)。
【図2】大腸菌YebF及び成熟YebFの細胞内分布を示すウェスタンブロットである。記号:S、スフェロプラスト;P、ペリプラズム;H、高張溶液;M、培養液(パネルA)。ある時間の間の大腸菌の成熟YebFタンパク質の分泌を示すウェスタンブロットである。レーン1−7は細胞(0−180分)を、レーン8−14は培養液(0−180分)を30分間隔で示す。レーンFは精製YebF-His6である(パネルB)。
【図3】pMS119EH(Ctrレーン)又はpYebFH6/MS(YebFレーン)を保持するHB101細胞の培養液中のタンパク質プロフィルを示す。サンプルは、0.1mMのIPTGで誘発した後、表示した時間で採集された。タンパク質は10%SDS-トリシンゲルで分離させた。
【図4】6-ヒスチジンタグをもつ精製大腸菌YebFタンパク質のMaldi-TOFリニアモード質量分析を示す。
【図5】ある時間の間の細胞内(C)又は培養液(M)のYebF及び成熟YebF及びCRPの分布を示すウェスタンブロットである。YebF及び成熟YebFは抗His抗体で検出し(パネルA)、CRPは抗CRP抗体で検出した(パネルB)。パネルAのレーンFは精製YebF-His6である。
【図6】パネルA:以下を保持するHB101細胞の種々の液及び細胞内分画のαアミラーゼ活性である:(a)yebF遺伝子と融合させた短縮形αアミラーゼ遺伝子(pYebF-AmyH6)、(b)yebFのsec-リーダー配列と融合させた短縮形αアミラーゼ遺伝子(pLS-AmyH6)、及び(c)短縮形αアミラーゼ遺伝子(pAmyH6)。データは、提示の標準偏差を示す3つの反復実験の平均である。パネルB:培養液中のタンパク質プロフィルを示す。pAmyH6(Aレーン)、pLS-AmyH6(Bレーン)及びpYebF-AmyH6(Cレーン)を保持するHB101細胞をTBで増殖させた。誘発後に表示の時間で採集した培養液からタンパク質サンプルを材料と方法の項にしたがって調製した。タンパク質は10%SDS-PAGEで分離した。
【図7】YebF-αアミラーゼ及びアルカリホスファターゼ(ペリプラズムの酵素)の分布を示す。提示の活性は2つの測定の平均である(パネルA)。表に示した抗生物質に対するプラスミドを保持するHB101細胞のMIC(最小阻害濃度)試験を示す(パネルB)。pBR322-tet及びpYebFH6/MS-tetはテトラサイクリン耐性である。残りのものはamp耐性である。
【図8】大腸菌HB101/ pYebFH6/MS(HB)、BL21(DE3)/ pYebFH6/T7(BL)及びMG1655/ pYebFH6/MS(MG)細胞由来の成熟YebFの分泌を示すウェスタンブロットである。レーンFは精製YebF-His6である。
【図9】成熟YebF-hIL2融合タンパク質のpYebF-hIL2H6/MS保持HB101からの分泌を示すウェスタンブロットである。パネルA:抗6xヒスチジンタグ抗体を用いた免疫ブロッティングによるYebF-hIL2の分布を示す。レーンM1、培養液+10mMのDTT;C1、細胞+10mMのDTT;M2、培養液−DTT;C2、細胞−DTT。パネルB:希釈培養液中の分泌された成熟YebF-hIL2タンパク質の活性を示す。“600ユニット/mL”と表示した棒線は、RHFM培養液(材料と方法の項を参照されたい)中に600ユニット/mLのhIL-2の50μL及びCTLL-2細胞の50μLを含むウェルとの標準hIL-2に対応する。“陰性”と表示した棒線は、hIL-2を含まないRHFMを用いた陰性コントロールである。“培養液”と表示した棒線は、HB101/pMS119EH由来の培養液の10倍希釈に対応する。誘発後3時間で採集した大腸菌培養液を0.22μmのミリポアフィルターでろ過し、続いて表示の割合でRHFMで希釈した。各棒線は3つのウェルの平均であった。
【図10】pYebF-AmyH6を保持するHB101のある時間の間の成熟YebF-αアミラーゼ融合タンパク質の分泌を示す。サンプルは、0.1mMのIPTG誘発後、2時間間隔で採取し、α-アミラーゼ活性についてアッセイした。増殖は、赤色フィルターを備えたクレット(Klett)分光光度計を用いてモニターした。細胞及び培養液のα-アミラーゼ活性は、最初の培養液1mL当たりのユニットで表した。
【図11】pYebFH6/MS(配列番号:19)の配列を示す。リボソーム結合部位は太字で示され、6-ヒスチジンタグを有するYebFコード領域は下線が付されている。
【図12】pYebFH6/MSの物理的地図を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程を含む、興味の対象となるタンパク質、ポリペプチド又はペプチドを製造する方法:
(a)YebF又はその生物学的に活性な変種若しくは部分に対してカルボキシ末端に配置された興味の対象となるタンパク質、ポリペプチド又はペプチドを含む融合タンパク質をコードする発現ベクターを提供する工程、及び
(b)適切な細菌細胞で前記融合タンパク質を発現させ、それによって分泌融合タンパク質を生成する工程。
【請求項2】
さらに、前記細菌細胞が増殖する培養液から前記分泌融合タンパク質を精製する工程を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項3】
前記細菌細胞が大腸菌(Escherichia coli)である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記融合タンパク質がさらに少なくとも1つのタグを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記融合タンパク質がさらに少なくとも1つのタンパク質切断部位を含む、請求項1、2、3又は4に記載の方法。
【請求項6】
以下の工程を含む、興味の対象となるタンパク質、ポリペプチド又はペプチドを細菌細胞から増殖培養液に分泌させる方法:
(a)YebF又はその生物学的に活性な変種若しくは部分をコードするヌクレオチド配列とインフレームで結合した興味の対象となるタンパク質、ポリペプチド又はペプチドをコードするヌクレオチド配列をさらに含む、組換えDNA分子を含む発現ベクターを作成する工程、
(b)前記発現ベクターを細菌細胞にトランスフェクトする工程、及び
(c)前記タンパク質の増殖培養液への分泌を誘導する条件下で、前記組換えDNA分子によってコードされるタンパク質を前記細菌細胞で発現させる工程。
【請求項7】
前記細菌細胞が大腸菌(Escherichia coli)である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記組換えDNA分子がさらにタグをコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列を含む、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
前記組換えDNA分子がさらにタンパク質切断部位をコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列を含む、請求項6、7又は8に記載の方法。
【請求項10】
興味の対象となるタンパク質、ポリペプチド又はペプチドの細菌増殖培養液への分泌を誘導するための、YebF又はその生物学的に活性な変種若しくは部分の使用。
【請求項11】
前記YebF又はその生物学的に活性な変種若しくは部分が、興味の対象となるタンパク質、ポリペプチド又はペプチドをさらに含む融合タンパク質の部分である、請求項10に記載の使用。
【請求項12】
前記YebF又はその生物学的に活性な変種若しくは部分が、興味の対象となるタンパク質、ポリペプチド又はペプチドとアミノ末端で融合されている、請求項10又は11に記載の使用。
【請求項13】
YebF又はその生物学的に活性な変種若しくは部分の転写及び合成を誘導する制御ヌクレオチド配列と動作可能なように連結された、YebF又はその生物学的に活性な変種若しくは部分をコードする発現ベクター。
【請求項14】
YebF又はその生物学的に活性な変種若しくは部分及び興味の対象となるタンパク質、ポリペプチド又はペプチドを含む融合タンパク質をコードする、請求項13に記載の発現ベクター。
【請求項15】
興味の対象となるタンパク質、ポリペプチド又はペプチドをコードする前記ヌクレオチド配列が、YebF又は生物学的に活性な変種若しくはその部分をコードするヌクレオチド配列の下流に配置される、請求項13又は14に記載の発現ベクター。
【請求項16】
大腸菌(Escherichia coli)での使用を目的とする、請求項13、14又は15に記載の発現ベクター。
【請求項17】
さらに少なくとも1つのタグを含む融合タンパク質をコードする、請求項13、14、15又は16に記載の発現ベクター。
【請求項18】
さらに少なくとも1つのタンパク質切断部位を含む融合タンパク質をコードする、請求項13、14、15、16又は17に記載の発現ベクター。
【請求項19】
YebF又はその生物学的に活性な変種若しくは部分をコードする第一のヌクレオチド配列及び興味の対象となるタンパク質、ポリペプチド又はペプチドをコードする第二のヌクレオチド配列を発現のためにインフレームで含む、組換えDNA構築物。
【請求項20】
第一のヌクレオチド配列と第二のヌクレオチド配列との間にインフレームで配置されるか、又は第二のヌクレオチド配列の後にインフレームで配置された少なくとも1つの追加ヌクレオチド配列をさらに含み、前記追加ヌクレオチド配列が、タグ、タンパク質切断部位又はスペーサーから選択されるアミノ酸配列をコードする、請求項19に記載の組換えDNA構築物。
【請求項21】
請求項19又は20に記載の組換えDNA構築物を含む発現ベクター。
【請求項22】
大腸菌(Escherichia coli)での使用を目的とする、請求項21に記載の発現ベクター。
【請求項23】
請求項19又は20に記載の組換えDNA構築物を含む宿主細胞。
【請求項24】
前記宿主細胞が大腸菌(Escherichia coli)である、請求項23に記載の宿主細胞。
【請求項25】
請求項21又は22に記載の発現ベクターを含む宿主細胞。
【請求項26】
前記宿主細胞が大腸菌(Escherichia coli)である、請求項23に記載の宿主細胞。
【請求項27】
請求項19又は20に記載の組換えDNA構築物によってコードされる融合タンパク質。
【請求項28】
請求項21又は22に記載の発現ベクターによってコードされる融合タンパク質。
【請求項29】
請求項21又は22に記載の発現ベクターを宿主細胞へ導入する工程を含む融合タンパク質の製造方法であって、前記発現ベクターを含む宿主細胞が適切な条件下で増殖するときに前記融合タンパク質を発現する、前記融合タンパク質の製造方法。
【請求項30】
YebFのリーダー配列の転写及び合成を誘導する制御ヌクレオチド配列と動作可能なように連結された、前記YebFのリーダー配列をコードする発現ベクター。
【請求項31】
前記YebFのリーダー配列及び興味の対象となるタンパク質、ポリペプチド又はペプチドを含むタンパク質をコードする、請求項30に記載の発現ベクター。
【請求項32】
興味の対象となるタンパク質、ポリペプチド又はペプチドをコードする前記ヌクレオチド配列が、YebFのリーダー配列をコードするヌクレオチド配列の下流に配置される、請求項30又は31に記載の発現ベクター。
【請求項33】
大腸菌(Escherichia coli)での使用を目的とする、請求項30、31又は32に記載の発現ベクター。
【請求項34】
さらに少なくとも1つのタグを含むタンパク質をコードする、請求項30、31、32又は33に記載の発現ベクター。
【請求項35】
さらに少なくとも1つのタンパク質切断部位を含むタンパク質をコードする、請求項30、31、32、33又は34に記載の発現ベクター。
【請求項36】
興味の対象となるタンパク質、ペプチド又はポリペプチドのペリプラズムへの輸送を誘導するための、YebFリーダーのリーダー配列の使用。
【請求項37】
前記YebFのリーダー配列が、興味の対象となるタンパク質、ポリペプチド又はペプチドをさらに含むタンパク質の部分である、請求項36に記載の使用。
【請求項38】
前記YebFのリーダー配列が、興味の対象となるタンパク質、ポリペプチド又はペプチドとアミノ末端で融合されている、請求項36又は37に記載の使用。
【請求項39】
以下の工程を含む、興味の対象となるタンパク質、ポリペプチド又はペプチドをペリプラズムで発現させる方法:
(a)YebFのリーダー配列に対してカルボキシ末端に配置された興味の対象となるタンパク質、ポリペプチド又はペプチドを含むタンパク質をコードする発現ベクターを提供する工程、及び
(b)適切な細菌細胞で前記タンパク質を発現させる工程。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11a】
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【図11b】
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【図12】
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【公表番号】特表2008−509682(P2008−509682A)
【公表日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−526148(P2007−526148)
【出願日】平成17年8月12日(2005.8.12)
【国際出願番号】PCT/CA2005/001249
【国際公開番号】WO2006/017929
【国際公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【出願人】(507051329)ガヴァナーズ オブ ザ ユニヴァーシティー オブ アルバータ (1)
【Fターム(参考)】