説明

cAMPのためのルシフェラーゼバイオセンサー

cAMPを含む分子のセンサーである修飾ルシフェラーゼタンパク質が提供される。修飾ルシフェラーゼタンパク質は、そのうちの少なくとも1つが直接または間接にcAMPと相互作用する1以上の異種アミノ酸配列を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、米国特許出願第61/054,374号(出願日:2008年5月19日)および米国特許出願第61/119,983号(出願日:2008年12月8日)の出願日に基づく利益を主張し、これらの開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、生化学的アッセイおよび試薬の分野に関する。より具体的には、本発明は、修飾ルシフェラーゼおよびその使用方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ルシフェラーゼは、基質(例えばルシフェリン)の酸化を触媒し、それと同時に光子を放出させる酵素である。ルシフェラーゼは、甲虫目の節足動物および多くの海洋生物を含む多数の種から単離されている。検出が容易であり、高い精度で活性が定量できることから、ルシフェラーゼは、遺伝子発現およびタンパク質の局在化を研究するために広く用いられてきた。発色団を形成させるために最大30分間を必要とする緑色蛍光タンパク質(GFP)とは異なり、ルシフェラーゼ産物は、ポリペプチド鎖の合成完了後直ちに検出できる(基質と酸素もまた存在する場合)。加えて、酵素活性には翻訳後修飾を必要とせず、この酵素は、補欠分子族、結合補因子またはジスルフィド結合を含まない。ルシフェラーゼは、多数の種およびさまざまな細胞における有用なレポーターである。
【0004】
ルシフェラーゼは、バイオセンシングのためのレポーター分子、すなわち系の分子特性を明らかにする分子として特に有用なものにさせるさらなる特徴を有する。バイオセンサー(すなわち、生物学的構成要素を含むセンサー)は、一般に二段階で、すなわち、生物学的構成要素を介したシグナル生成ならびに電気的構成要素によるシグナル伝達および/または増幅により機能する。シグナル生成は、一般的には、結合、エネルギー移動または触媒作用によって達成される。酵素の触媒作用によるシグナル生成は、これらの化学過程の固有の効率および特異性のため、特に有用でありうる。大部分の触媒反応は、ATP2分子分の加水分解エネルギー、すなわち約70kJ/モルよりも少ないエネルギーを生じる。しかしながら、ルシフェラーゼによって生成される発光は、ずっと高いエネルギー量を有する。例えば、ホタルルシフェラーゼによって触媒される反応(560nm)は、214kJ/モルのエネルギーを放出する。さらにまた、ルシフェラーゼは、高い効率で化学エネルギーを光子に変換する。すなわち、ルシフェラーゼは高い量子収率を有する。このように、ルシフェラーゼは極めて効率的に検出可能シグナルを生成する。
【0005】
ルシフェラーゼバイオセンサーについては記載がある。例えば、Sala-Newbyら(Biochem J. 279:727 (1991))は、フォチナス・フィラリス(Photinus pyralis)ルシフェラーゼcDNAを修飾して、サイクリックAMP依存性プロテインキナーゼのリン酸化部位を生じさせたことを開示している。特に、位置217のバリンをアルギニンに変異させて部位RRFS(配列番号1)を生じさせ、ブタピルビン酸キナーゼのリン酸化部位であるヘプタペプチドのケンプチドをルシフェラーゼのN末端またはC末端に付加させた。Sala-Newbyらは、リン酸化部位を含むタンパク質が、比活性、pI、放出される光の色に対するpHの影響およびATPの存在下でのプロテインキナーゼAの触媒サブユニットの影響に関して特徴付けられたことを述べている。組換えタンパク質の内の1つ(RRFS;配列番号1)のみが、野生型ルシフェラーゼとかなり異なり、このRRFS(配列番号1)変異体が、より低い比活性、より低い最適pH、低いpHで増強緑色光が放出され、リン酸化したとき、その活性が最大で80%減少したことを彼らは見出した。後者の効果は、ホスファターゼにより打ち消されたことが開示されている。
【0006】
Wau ら(BBA 1292: 89 (1996))は、フォチナス・フィラリスルシフェラーゼcDNAに、プロテインキナーゼ認識配列およびプロテイナーゼ部位を組み込んだ。Waudらによって、ルシフェラーゼの2つのドメインが修飾された。1つは、アミノ酸209と227の間であり、もう1つは、C末端のアミノ酸537と550の間であった。残基209と227の間のアミノ酸の変異は、野生型組換え体の1%未満に生物発光活性を低下させたが、一方で、C末端でのペプチド配列の操作は、野生型組換えルシフェラーゼの0.06%〜120%の範囲の比活性をもたらしたことをWaudらは開示している。Waudらはまた、アミノ酸位置543にセリンを有するキナーゼ認識配列LRRASLG(配列番号2)を組み込んだバリアントルシフェラーゼにサイクリックAMP依存性プロテインキナーゼ触媒サブユニットを付加することにより、活性が30%低下したことを開示している。アルカリホスファターゼ処理により活性は回復した。Waudらはさらに、アミノ酸542と543の間に位置する切断部位を含むトロンビン認識配列LVPRES(配列番号3)を有するバリアントルシフェラーゼの生物発光活性が、トロンビンの存在下でインキュベートしたとき50%低下したことを開示している。
【0007】
Ozawaら(Analytical Chemistry 73: 2516 (2001))は、合理的に設計されたホタルルシフェラーゼフラグメントの、タンパク質スプライシングによって誘導される相補性に基づくバイオセンサーを記載している。タンパク質スプライシングは、インテイン(内部タンパク質)を前駆体融合タンパク質から切除し、隣接するエクステイン(外部タンパク質)を連結して連続ポリペプチドにする翻訳後タンパク質修飾である。シネコシスティス種(Synechocystis sp.)PCC6803からのN末端およびC末端インテインDnaEのそれぞれを、ルシフェラーゼのN末端およびC末端フラグメントにそれぞれ融合させたことが開示されている。タンパク質-タンパク質相互作用によりDnaEインテインのフォールディングが誘発され、タンパク質スプライシングを引き起こし、それによって、連結されたルシフェラーゼがその酵素活性を回復する。インスリンの存在下で、分割されたルシフェラーゼを用いて、既知の結合パートナーであるリン酸化したインスリン受容体基質1(IRS-1)とその標的であるPI3キナーゼのN末端SH2ドメインとの間の相互作用をモニターしたことをOzawaらは開示している。
【0008】
Paulmuruganら(PNAS USA 99: 3105 (2002))は、相補性戦略およびインテイン媒介再構成戦略の双方を用いて、細胞培養物およびマウスにおいて、分割したホタルルシフェラーゼに基づくアッセイを用いて、2つのタンパク質、すなわちMyoDおよびIdの相互作用をモニターした。レポーター活性を保持するために、相補性戦略においては、融合タンパク質は、タンパク質相互作用、すなわちタンパク質パートナーであるMyoDとIdとの相互作用を必要とし、再構成戦略においては、インテイン媒介スプライシングによって形成される新規な完全甲虫ルシフェラーゼが、タンパク質パートナー間の継続的な相互作用の非存在下であってもその活性を維持する。
【0009】
Michnickら(米国特許第6,270,964号、第6,294,330号および第6,428,951号)において、タンパク質フラグメント相補性アッセイが開示されている。特に、Michnickは、分割したマウスジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)遺伝子に基づくアッセイであって、DHFRのN末端フラグメントおよびDHFRのC末端フラグメントを、それぞれGCN4ロイシンジッパー配列に融合させた前記アッセイを記載している。両方の融合タンパク質を発現する細胞において、DHFR活性が検出された。Michnickらはまた、アミノグリコシドキナーゼ(AK)遺伝子におけるS1ヌクレアーゼで作成した欠失の入れ子セットをロイシンジッパー構築物に導入し、得られた構築物セットを細胞に導入し、AK活性をスクリーニングする他の相補性アプローチも記載している。
【発明の概要】
【0010】
本発明は、1以上の改変された活性を有する、異種非天然変異cAMP結合部位を含む改善された遺伝子産物、例えば、修飾甲虫ルシフェラーゼ(例えば、修飾ホタルもしくはコメツキムシルシフェラーゼ)、修飾花虫類ルシフェラーゼ(例えばレニラ(Renilla)ルシフェラーゼ)、または修飾カイアシ類もしくは十脚類ルシフェラーゼなどの修飾ルシフェラーゼを提供する。
【0011】
本発明の修飾ルシフェラーゼに使用する変異体cAMP結合ドメインを作製するのに有用なcAMP結合部位(ドメイン)は、限定するものではないが、Epac 2B、Epac 1(Nikolav, J. Biol. Chem. 279:372 (2004))および Epac IIAを含む、cAMPに直接活性化される交換タンパク質(exchange protein directly activated by cAMP: Epac) (Bos et al., Nat. Rev. Mol. Cell. Biol. 4:733 (2003);NCBI寄託番号AF115480;配列番号123));ヒトRIα残基245〜381(Genbankアクセッション番号BL036285;配列番号124);過分極活性化サイクリックヌクレオチド調節チャネルなどのサイクリックヌクレオチド依存性イオンチャネル(Zagotta et al., Nature 425: 730 (2003));ニューロパチー標的エステラーゼ(Dremier et al., FEBS Lett. 546:163 (2003)); PKA調節サブユニットIIβ型(例えば、NCBI寄託番号M124921参照)、例えば、PKA IIβAおよびPKA IIβB;PKA調節サブユニットIα型、例えば、PKA IαAおよびPKA IαB、PKG IIA、PKG IIB;トリパノソーマ・ブルセイ(Trypanosoma brucei)PDEのGAF Aドメインの残基241〜375(Genbankアクセッション番号AF192755;配列番号125);ならびにカタボライト活性化タンパク質を含む。一実施形態において、cAMP結合ドメインは、タンパク質フォールドが、例えばRIIβBのcAMP結合部位と実質的に同じ3次元構造を有し、配列番号4を有するRIIβBの残基266、282、284、286、296、316、333、338、382、389、404または407に対応する位置の残基とは異なり、その異なった残基がcAMPに対する改変された親和性をもたらすアミノ酸残基を有する、天然タンパク質由来のタンパク質フォールドを含む。一実施形態において、cAMP結合ドメインは、そのタンパク質フォールドが、RIIβBのcAMP結合部位と実質的に同じ3次元構造を有し、配列番号4を有するRIIβBの残基266、282、284、286、296、316、333、338、382、389、404または407に対応する位置の残基とは異なり、それが、cAMPに対する改変された親和性、例えば活性化のEC50の増加をもたらすおよび/または例えば基本条件での結合の低下の結果として生細胞における反応の増強をもたらすアミノ酸残基を有する、cAMPに結合する天然タンパク質由来のタンパク質フォールドを含む。
【0012】
一実施形態において、変異cAMP結合部位は、1以上の置換を欠くcAMP結合部位を有する対応するルシフェラーゼと比較して、修飾ルシフェラーゼの生物発光シグナルを増強する1以上の置換、細胞内のcAMP量を改変する薬剤に対する修飾ルシフェラーゼの反応を増強する1以上の置換またはその両方を有する。一実施形態において、1以上の置換は、配列番号4を有するRIIβBの残基266、282、284、286、296、316、333、338、382、389、404または407に対応する位置に存在する。一実施形態において、残基266に対応する変異cAMP結合部位における残基はMではなく、残基282に対応する変異cAMP結合部位における残基はFではなく、残基286に対応する変異cAMP結合部位における残基はLではなく、残基296に対応する変異cAMP結合部位における残基はVではなく、残基333に対応する変異cAMP結合部位における残基はVではなく、残基404に対応する変異cAMP結合部位における残基はVではない。一実施形態において、1以上の置換は、配列番号4を有するRIIβBの残基266、282、284、286、296、316、333、338、382、389、404または407に対応する位置に存在する。例えば、残基389に対応する変異cAMP結合部位における残基はMではなく、残基284に対応する変異cAMP結合部位における残基はEではなく、残基308に対応する変異cAMP結合部位における残基はDではなく、残基286に対応する変異cAMP結合部位における残基はLではない。一実施形態において、変異cAMP結合部位は、配列番号4、配列番号5または配列番号6におけるcAMP結合部位、例えば配列番号4における残基266〜414、配列番号5における残基284〜381または配列番号6における残基241〜375に対して、少なくとも約80%、85%、90%、95%または99%ではあるが100%ではないアミノ酸配列同一性を有する。
【0013】
一実施形態において、修飾ルシフェラーゼは、検出可能な活性を有し、修飾が許容される領域または部位における、対応する未修飾ルシフェラーゼと比較しての1以上のアミノ酸の挿入を含み、その挿入は、cAMPと直接に相互作用するアミノ酸配列、例えばcAMPの認識配列を含むか、または他の分子などを介してcAMPと間接的に相互作用する挿入を含む。一実施形態において、修飾ルシフェラーゼは、10以上の、例えば、20、50、100、200、300以上約1000未満のまたは中間のいずれかの整数のアミノ酸残基の挿入を含む。一実施形態において、挿入を有する修飾ルシフェラーゼは、ルシフェラーゼ配列の欠失、例えば、1以上約100未満の、例えば50、40、30、20、10、5未満または中間のいずれかの整数の残基をさらに含む。
【0014】
よって、一実施形態において、本発明の修飾ルシフェラーゼは、未修飾野生型ルシフェラーゼなどの対応するルシフェラーゼのアミノ酸配列と比較して円順列変異され(circularly permuted)、それによって円順列変異したルシフェラーゼにおける新規なN末端およびC末端が生じ、その少なくとも1つは、修飾が許容される領域または部位に存在し、そしてcAMPと直接または間接に相互作用する異種アミノ酸配列を導入することによって機能性を有するように操作されたアミノ酸配列を含む。他の実施形態において、円順列変異したルシフェラーゼは、円順列変異したルシフェラーゼのN末端またはC末端の内部の挿入および/または欠失、例えば対応する未修飾ルシフェラーゼのN末端およびC末端またはその付近における、例えば対応する未修飾ルシフェラーゼのN末端の残基1〜約10もしくは約30または中間のいずれかの整数に対応する残基および/またはC末端の最終残基またはその約最終30、例えば、最終15または1〜30の中間の整数残基に対応する他の挿入および/または欠失を含むが限定されない他の修飾を含む。
【0015】
一実施形態において、cAMPと相互作用するアミノ酸配列は、例えば各末端においてペプチドリンカーなどの少なくとも1つのリンカーに隣接する。該リンカーは同一であっても異なっていてもよく、場合により、例えばフォルスコリンまたはイソプロテレノールに対して発光および/または反応を改善する。一実施形態において、cAMPと相互作用するアミノ酸配列は、N末端で少なくとも1つのリンカーに隣接し、これは場合により、フォルスコリンまたはイソプロテレノールまたはフォスコリンおよびドーパミンに対して発光および/または反応を改善する。一実施形態において、リンカーは以下の配列の少なくとも1つを有する:GSSGGSGGSGGG、GSSSDSDSSAGS、GSNDSSGGSEGG、GSNGGFDSSEGG、GSIRWSGLSGGD、GSRGGSVYSEGG、GSSEGSSDFGGD、GSIVVSCSSEGG、GSNWDSGCSREG、GSNWDSGCSREC、GSSGCTGDAGGS、GSNWDSGCSRQC、GSS/NS/D/GD/S/GS/FD/GS/GSA/EGS/G,GSI/R/SR/G/EW/GSG/V/SL/Y/DS/FG/EGD/G、GSI/N/SV/W/GV/D/CS/TC/GS/C/DS/AE/R/GG/EG/S、GSI/SV/G/AV/GS/CG/DG/D/SS/AG/EG/EG/N、GSI/N/SV/W/G/AV/D/C/GS/T/CC/GS/C/DS/AE/R/GG/EG/S、GSIAGCGDAGEG、GSNWDSGCSRE、GSIAGCGDAGEG、GSNWDSGCSREG、NWDSGCSREGまたはAGCGDAGEG(それぞれ配列番号41〜57および126〜131)。本発明のバイオセンサーに用いられるリンカーは、バイオセンサーにおけるその存在が、そのバイオセンサーの活性を実質的に低下させないアミノ酸配列、例えば、リンカー(単数または複数)を欠く対応するバイオセンサーと比較して10倍を超えて、例えば4倍または2倍を超えて活性を低下させないアミノ酸配列であり、かつ/または本発明のバイオセンサーに用いられるリンカーの存在は、リンカー(単数または複数)を欠く対応するバイオセンサーもしくはリンカー(単数または複数)GSSGGSGGSGGG(配列番号41)を有する対応するバイオセンサーと比較して、あるいは両方の対応するバイオセンサーと比較して、フォルスコリンもしくはイソプロテレノールまたはその両方などの薬剤に対する発光または反応を増加させる。一実施形態において、リンカー含有バイオセンサーは、cAMPと相互作用する変異アミノ酸配列に隣接する配列番号42〜57または126〜131の1つを有し、リンカー(単数または複数)GSSGGSGGSGGG(配列番号41)を有する対応するバイオセンサーと比較して、フォルスコリンもしくはイソプロテレノールまたはその両方に対する発光を増加させるかまたは反応を増加させる。
【0016】
本発明のペプチドリンカーは、2つのポリペプチドであって、そのそれぞれが活性を有するか、または2つのポリペプチドフラグメントであって、それぞれはほとんど活性を有さないが、一緒になると個々のフラグメントと比較して全長ポリペプチドの1つの活性と同じかまたは増加した活性を示すように分離して用いることができる。一実施形態において、本発明は、第2タンパク質または第2タンパク質のフラグメントに融合させたペプチドリンカーに融合させた第1タンパク質または第1タンパク質のフラグメントのオープンリーディングフレームを含む核酸配列を含むポリヌクレオチドを提供する。一実施形態において、第1タンパク質のフラグメントはルシフェラーゼのフラグメントであり、第2タンパク質のフラグメントはルシフェラーゼの異なるフラグメントであり、例えば、第1フラグメントはホタルルシフェラーゼの残基234〜544を有し、第2フラグメントはホタルルシフェラーゼの残基4〜233を有し、あるいは第1フラグメントはホタルルシフェラーゼの残基359〜544を有し、第2フラグメントはホタルルシフェラーゼの残基4〜355を有し、例えばルシフェラーゼ配列は円順列変異される。一実施形態において、第1タンパク質のフラグメントはルシフェラーゼのフラグメントであり、第2タンパク質のフラグメントは、ルシフェラーゼではないタンパク質のフラグメントであり、例えばそれはデハロゲナーゼなどの加水分解酵素である。他の実施形態において、第1タンパク質のフラグメントは、ルシフェラーゼのフラグメントであり、第2タンパク質のフラグメントは異なるルシフェラーゼのフラグメントである。他の実施形態において、第1タンパク質はルシフェラーゼであり、第2タンパク質は異なるルシフェラーゼである。さらに他の実施形態において、第1タンパク質はルシフェラーゼであり、第2タンパク質はルシフェラーゼではないタンパク質である。
【0017】
本発明のペプチドリンカーは、3つのポリペプチドフラグメントまたは2つのポリペプチドフラグメントおよびもう1つのポリペプチドであって、そのフラグメントはほとんど活性を有さないが、個々のフラグメントと比較して全長ポリペプチドの1つの活性に対応する活性と同じかまたは増加した活性を示すように分離して用いることもできる。従って、一実施形態において、本発明は、第3タンパク質または第3タンパク質のフラグメントに融合させた第2ペプチドリンカーに融合させた第2タンパク質または第2タンパク質のフラグメント、例えば結合または触媒活性を有するタンパク質のドメインに融合させた第1ペプチドリンカーに融合させた第1タンパク質または第1タンパク質のフラグメントのオープンリーディングフレームを含む核酸配列を含むポリヌクレオチドを提供する。一実施形態において、第1タンパク質のフラグメントはルシフェラーゼのフラグメントであり、第3タンパク質のフラグメントはルシフェラーゼの異なるフラグメントであり、第2タンパク質またはそのフラグメントはルシフェラーゼではない。他の実施形態において、第1タンパク質のフラグメントはルシフェラーゼのフラグメントであり、第2タンパク質またはそのフラグメントはルシフェラーゼではなく、第3タンパク質のフラグメントは第1フラグメントのルシフェラーゼ活性を復活させるかまたは増加させるフラグメントである。他の実施形態において、第2タンパク質またはそのフラグメントはルシフェラーゼではなく、第3タンパク質のフラグメントはルシフェラーゼのフラグメントであり、第1タンパク質のフラグメントは、第1フラグメントのルシフェラーゼ活性を復活させるかまたは増加させるルシフェラーゼのフラグメントである。一実施形態において、第2フラグメントはcAMP結合部位を有する。
【0018】
一実施形態において、本発明のペプチドリンカーは、本発明のcAMPバイオセンサー、例えばホタルルシフェラーゼまたはコメツキムシルシフェラーゼ配列を有するcAMPバイオセンサーにおけるcAMP結合部位のN末端に位置する。一実施形態において、本発明のペプチドリンカーは、本発明のcAMPバイオセンサーにおけるcAMP結合部位のC末端に位置する。一実施形態において、本発明のペプチドリンカーは、本発明のcAMPバイオセンサーにおけるcAMP結合部位のN末端およびC末端に位置し、場合により、これらのペプチドリンカーは異なる配列および/または異なる長さを有する。本発明のペプチドリンカーの使用により、例えば内因性または外因性のGsまたはGi共役型7回膜貫通受容体を用いるアッセイにおいて、リンカーGSSGGSGSGGG(配列番号41)と比較して、改善された特性を有するバイオセンサーを生じることができる。
【0019】
一実施形態において、本発明のペプチドリンカーは、目的とする分子、例えば検出される分子と直接または間接に相互作用することができるペプチド配列のN末端に位置する。一実施形態において、本発明のペプチドリンカーは、本発明のバイオセンサーにおける前記ペプチド配列のC末端に位置する。一実施形態において、本発明のペプチドリンカーは、検出される分子と直接または間接に相互作用できるペプチド配列のN末端およびC末端に位置する。
【0020】
一実施形態において、cAMPの非存在下で、本発明の修飾ルシフェラーゼの活性は、対応する未修飾ルシフェラーゼの活性よりも少ない。例えば、修飾ルシフェラーゼのレポーター活性は、対応する未修飾ルシフェラーゼの約0.001%、0.01%、0.1%、1%、10%、20%、50%、70%以上であるが、100%未満であり、その修飾ルシフェラーゼの活性は場合により検出可能である。他の実施形態において、cAMPの非存在下で、本発明の修飾ルシフェラーゼの活性は、対応する未修飾ルシフェラーゼの活性と実質的に同じであるかまたはそれを超える。例えば、本発明の修飾ルシフェラーゼのレポーター活性は、対応する未修飾ルシフェラーゼの約1.5倍であり、例えば、少なくとも2倍、3倍、5倍またはそれ以上である。本発明の修飾ルシフェラーゼの活性は、cAMPの存在下で検出可能な程度に改変される。例えば、cAMPの存在下での修飾ルシフェラーゼの活性の検出可能な改変は、cAMPの非存在下での修飾ルシフェラーゼの活性と比較して、少なくとも0.001%、0.01%、0.1%、1%、10%または100%の改変であり、最大2倍、4倍、10倍、100倍、1,000倍、10,000倍またはそれ以上の改変である。従って、修飾ルシフェラーゼには存在するが、対応する未修飾ルシフェラーゼには存在しない修飾と相互作用するcAMPの物理的近接は、修飾ルシフェラーゼの活性を改変する(例えばそれを低下させるか、消失させるか、または増加させる)。一実施形態において、cAMPの存在下での本発明の修飾ルシフェラーゼの発光シグナルは、cAMPの存在下での異種天然cAMP結合ドメインを有する対応するルシフェラーゼの発光シグナルと比較して増加している。
【0021】
修飾ルシフェラーゼ、例えば、修飾が許容される、例えば、挿入、欠失、円順列変異(circular permutation)、またはそれらの組み合わせが許容される、ルシフェラーゼの部位(残基)または領域における異種アミノ酸配列の挿入の結果としてルシフェラーゼ配列における1以上の置換を有する変異ルシフェラーゼのアミノ酸配列は、対応する未修飾ルシフェラーゼ(天然、野生型または親)のアミノ酸配列とは異なる。一実施形態において、異種アミノ酸配列の挿入に加えて、修飾ルシフェラーゼのルシフェラーゼ配列は、対応する未修飾ルシフェラーゼ(天然、野生型ルシフェラーゼ)のアミノ酸配列と比較して円順列変異しており、ここで円順列変異は、修飾が許容される部位(残基)または領域にある。一実施形態において、修飾が許容される領域は、天然野生型ルシフェラーゼに見出される、βシートまたはαへリックスなどの二次構造間の表面ループを含む。異種アミノ酸配列は、野生型または円順列変異したルシフェラーゼのN末端またはC末端と比較して内部に存在することもできるし、野生型または円順列変異したルシフェラーゼのN末端および/またはC末端に存在することもでき、修飾部位でルシフェラーゼ配列の欠失を含むことができる。一実施形態において、cAMPと直接または間接に相互作用する1以上の異種アミノ酸配列は、円順列変異したまたは円順列変異してないN末端および/またはC末端残基部位またはその付近に存在する。一実施形態において、cAMPと直接または間接に相互作用する1以上の異種アミノ酸配列は、円順列変異したルシフェラーゼまたは円順列変異してないルシフェラーゼのN末端および/またはC末端残基部位またはその付近にはない、すなわち、異種配列はN末端およびC末端の内部にある。一実施形態において、例えば、未修飾ルシフェラーゼのN末端および/またはC末端を含む、修飾が許容される部位(単数または複数)または領域(単数または複数)において、得られた修飾ルシフェラーゼがcAMPとの相互作用の前および/または後に生物発光活性を有する限り(例えば、生物発光活性は、cAMPとの相互作用後に、光強度、色または速度論プロフィールの改変などの改変を受ける)、修飾ルシフェラーゼは円順列変異していることができ、1以上の分離した(単離された)異種アミノ酸配列(その少なくとも1つはcAMPと直接または間接に相互作用する)を有することができ、場合により、1以上のアミノ酸の欠失を含むことができる。
【0022】
本発明の範囲内の欠失は、欠失が許容されるルシフェラーゼ配列の領域または部位における1以上のアミノ酸残基の欠失を含む。修飾ルシフェラーゼは、未修飾ルシフェラーゼのN末端またはC末端に対応する、N末端およびC末端の1〜約10または約30残基またはいずれかの中間的な整数、例えば15残基における欠失を含むことができる。欠失の長さは、特定のルシフェラーゼに応じて30残基を超えることができ、望ましい欠失の長さは、ルーチンの欠失分析によって決定することができる。
【0023】
甲虫ルシフェラーゼは、コメツキムシルシフェラーゼ、例えば配列番号9を有するコメツキムシルシフェラーゼの残基、例えば、残基21、25、117、358、376、379、398、399、400、401、402、403、405、406、407、409もしくは490または残基15〜30、例えば、残基21もしくは25、残基112〜122、例えば、残基117、残基352〜362、例えば、残基358、残基371〜384、例えば、残基379、残基393〜414、または残基485〜495に対応する領域において修飾されることができ、ホタルルシフェラーゼ、例えば配列番号106、118、または120を有するホタルルシフェラーゼの残基7、37、47、75、83、107、121、144、160、174、188、198、205、225、233、242、255、268、308、316、358、377、403、435、490もしくは540、または残基2〜12、残基32〜53、例えば、残基32〜43または残基42〜52、残基70〜88、例えば、残基70〜80または残基78〜88、残基102〜126、例えば、残基102〜112または残基116〜126、残基139〜165、残基183〜203、残基220〜247、例えば、残基228〜238、残基262〜273、残基303〜313、残基353〜408、残基485〜495、または残基535〜546に対応する領域において修飾されることができる。この残基番号付けは、未修飾(天然)のコメツキムシまたはホタルルシフェラーゼ配列における残基番号付けに基づく。対応する位置は、例えば、配列のアラインメントプログラムを用いてルシフェラーゼ配列をアラインメントすることによって確認できる。ルシフェラーゼにおける修飾が許容される残基または領域は、ルシフェラーゼの円順列変異部位または挿入部位として用いることができる。
【0024】
本発明は、さらに、レニラルシフェラーゼ(Genbank ID AF025843)、例えば配列番号116を有するレニラルシフェラーゼの残基2、30、31、42、45、46、68、69、90、91、92、110、111、150、151、168、169、193、207、208、223、224、251、259、274、もしくは311に対応する残基または残基2〜12、残基26〜36、残基37〜47、残基64〜74、残基86〜97、例えば、残基90もしくは91、残基96〜116、残基147〜157、残基218〜234、例えば、残基223、234、228、229もしくは230、または残基301〜311に対応する領域を含むが限定されない、修飾が許容される領域または部位における少なくとも1つの修飾を有する修飾花虫類ルシフェラーゼを含む。この残基番号付けは、未修飾(天然)レニラルシフェラーゼ配列における残基番号付けに基づく。対応する位置は、例えば、配列のアラインメントプログラムを用いてルシフェラーゼ配列をアラインメントするによって確認できる。ルシフェラーゼにおける修飾が許容される残基または領域は、ルシフェラーゼの円順列変異部位または挿入部位として用いることができる。
【0025】
修飾甲殻類ルシフェラーゼ、例えば、ガウシア(Gaussia)ルシフェラーゼ、例えば配列番号121を有するガウシアルシフェラーゼの残基43〜53、残基63〜73、残基79〜89、残基95〜105、残基105〜115、残基109〜119、残基121〜131もしくは残基157〜168に対応する領域または成熟オプロフォラス(Oplophorus)ルシフェラーゼ、例えば配列番号122を有する成熟オプロフォラスルシフェラーゼの残基45〜55もしくは残基79〜89に対応する領域を含むが限定されない、修飾が許容される領域または部位における少なくとも1つの修飾を有するカイアシ類ルシフェラーゼがさらに含まれる。残基番号付けは、未修飾(天然)ガウシアルシフェラーゼ配列または分子量19kDaのオプロフォラスルシフェラーゼ配列における残基番号付けに基づく。対応する位置は、例えば、配列のアラインメントプログラムを用いるルシフェラーゼ配列をアラインメントするによって確認できる。ルシフェラーゼにおける修飾が許容される残基または領域は、ルシフェラーゼの円順列変異部位または挿入部位として用いることができる。
【0026】
よって、本発明の修飾ルシフェラーゼはバイオセンサーとして用いることができる。
【0027】
本発明はまた、本発明の修飾ルシフェラーゼをコードする核酸配列を含む単離された核酸分子(ポリヌクレオチド)を提供する。修飾ルシフェラーゼならびに修飾ルシフェラーゼのN末端(N末端融合パートナー)および/またはC末端(C末端融合パートナー)における1以上のアミノ酸残基を含む融合タンパク質をコードする核酸配列を含む単離された核酸分子もさらに提供する。従って、本明細書においては、"融合タンパク質"は、本発明の修飾ルシフェラーゼのN末端および/またはC末端における1以上のアミノ酸を含むポリペプチドである。一実施形態において、融合タンパク質における1以上の融合パートナーの存在は、対応する修飾ルシフェラーゼと比較して、融合タンパク質の検出可能な活性を実質的に改変しない。N末端またはC末端融合パートナーは、精製に用いられる配列、例えばグルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)もしくはポリHis配列、修飾ルシフェラーゼの特性を改変する事を目的する配列、例えばタンパク質不安定化配列、タンパク質もしくは核酸相互作用配列(例えば結合配列)、細胞内局在化配列、または融合タンパク質におけるルシフェラーゼの1以上の特性とは区別できる配列であることができる。一実施形態において、融合タンパク質は、修飾ルシフェラーゼならびに、ルシフェラーゼとは異なるレポータータンパク質である融合パートナーであって、分子内対照、例えば蛍光タンパク質または他のルシフェラーゼとして有用な前記レポータータンパク質を含む。他の実施形態において、本発明は、本発明の修飾ルシフェラーゼを含む融合タンパク質をコードする核酸配列および、修飾ルシフェラーゼにおけるルシフェラーゼとは異なるレポータータンパク質をコードする核酸フラグメントを含むベクターを含む。一実施形態において、本発明のルシフェラーゼを含む変異cAMP結合ドメインは、さらに、細胞内局在化および/またはcAMP濃度を検出するのに有用な細胞内局在化シグナルを含む。
【0028】
場合により、本発明の核酸分子に、少なくともルシフェラーゼおよび、一実施形態において修飾ルシフェラーゼまたは修飾ルシフェラーゼを含む融合タンパク質をコードする最適化核酸配列、例えば、ヒトコドン最適化配列が用いられるが、なぜならこれらの最適化配列はルシフェラーゼのシグナル強度を増加させることができるからである。核酸配列の最適化は当業者に公知である。例えばWO02/16944を参照のこと。
【0029】
本発明はまた、本発明の修飾ルシフェラーゼまたは融合タンパク質を発現する安定な細胞株ならびに、本発明の修飾ルシフェラーゼまたは融合タンパク質をコードする核酸分子を含む発現カセットおよび、宿主細胞において本発明の核酸分子を発現することができるベクター(例えば、プラスミド、ウイルスまたは欠損ウイルス粒子)を含む。一実施形態において、発現カセットは、核酸配列に作動可能に連結されたプロモーター、例えば構成的または調節性プロモーターを含む。一実施形態において、発現カセットは誘導性プロモーターを含む。本発明の発現カセットまたはベクターを含む宿主細胞、例えば、原核細胞または真核細胞、例えば植物または脊椎動物細胞、例えばヒト、非ヒト霊長類、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、羊またはげっ歯類(例えば、ウサギ、ラット、フェレットまたはマウス)細胞を含むが限定されない哺乳動物細胞ならびに、本発明の核酸分子、発現カセット、ベクター、宿主細胞または修飾ルシフェラーゼもしくは融合タンパク質を含むキットもまた提供される。
【0030】
例えば、本発明のcAMP結合部位の挿入を含む修飾ルシフェラーゼをコードするベクターまたは本発明のcAMP結合部位の挿入を含む修飾ルシフェラーゼが、試料、例えば、細胞、細胞溶解物、in vitro転写/翻訳混合物または上清と混合され、例えば、場合により1以上の時点で、cAMPを含まないかまたは異なる量のcAMPを含む対照試料と比較して、試料中の修飾ルシフェラーゼの活性が検出または測定される。例えば、経時的なおよび/または対照、例えば特定量のcAMPを含む細胞と比較しての、試料中の発光活性の変化は、試料中のcAMPの存在または量を示すか、実験条件に関連するcAMP量の変化を示す。一実施形態において、細胞は、プロモーター、例えば調節性または構成的プロモーターおよび、サイクリックヌクレオチドと相互作用する挿入を含む本発明の修飾ルシフェラーゼをコードする核酸配列を含むベクターと接触される。一実施形態において、トランスフェクトされた細胞は、修飾ルシフェラーゼの一過性発現をプロモーターが誘導する条件下で培養され、発光の存在または量が測定される。他の実施形態において、cAMPと相互作用する挿入を含む本発明の修飾ルシフェラーゼとAMPを含むと推測される試料とが混合される。次いで、発光量が測定される。このように、本発明は、cAMP量を検出する方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】PKA調節サブユニットIIβ型(RIIβB)を示す図である。ラットRIIβBアミノ酸264〜412(PDB 1CX4)のX線結晶構造を示す。RIIβBを赤いリボンで描き、cAMPを球棒モデルで描いてある。ラット(アミノ酸264〜412)およびヒトRIIβB(アミノ酸266〜414)間の一次配列類似性は96.6%である(Megalignプログラム、DNAStar社)。
【図2】イソプロテレノールで処理した円順列変異ホタルルシフェラーゼ(CPM-FF Luc)/変異RIIβB cAMPバイオセンサーの経時的誘導倍率を示す図である。
【図3】イソプロテレノールで処理したCPM-FF Luc/変異RIIβB cAMPバイオセンサーの経時的誘導倍率を示す図である。
【図4】イソプロテレノールで処理したCPM-FF Luc/変RIIβB cAMPバイオセンサーの経時的誘導倍率を示す図である。
【図5】イソプロテレノールで処理したCPM-FF Luc/変RIIβB cAMPバイオセンサーの経時的誘導倍率を示す図である。
【図6】イソプロテレノールで処理したCPM-FF Luc/変RIIβB cAMPバイオセンサーの経時的誘導倍率を示す図である。
【図7A】リンカーを有する種々のcAMPバイオセンサーの経時的基礎活性を示す図である。
【図7B】リンカーを有する種々のcAMPバイオセンサーのイソプロテレノール誘導後の活性を示す図である。
【図7C】リンカーを有する種々のcAMPバイオセンサーの反応を示す図である。
【図8】A)GSSGGSGGSGGGリンカーを有するCPM-FF Luc/変異RIIβB cAMPバイオセンサーを発現する293細胞と比較しての、イソプロテレノールで処理した修飾リンカーを有するCPM-FF Luc/変異RIIβB cAMPバイオセンサー(L9)を発現する293細胞における経時的倍率変化を示す図である。B)CPM-FF Luc/変異RIIβB cAMPバイオセンサーL9またはGSSGGSGGSGGGリンカーを有するCPM-FF Luc/変異RIIβB cAMPバイオセンサーを発現するHEK293/D2細胞の、フォルスコリンの存在下または非存在下での、t=0に対するRLUの倍率変化を示す図である。
【図9A】種々の化合物およびFSKで処理したクローンの反応倍率を示す図である。
【図9B】種々の化合物およびFSKで処理したクローンの反応倍率を示す図である。
【図9C】種々の化合物およびFSKで処理したクローンの反応倍率を示す図である。
【図10A】各化合物での、かつFSKの有り無しでの30分におけるクローンの絶対RLUのグラフである。
【図10B】各化合物での、かつFSKの有り無しでの30分におけるクローンの絶対RLUのグラフである。
【図10C】各化合物での、かつFSKの有り無しでの30分におけるクローンの絶対RLUのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
発明の詳細な説明
定義
本明細書に記載の全てのアミノ酸残基は、天然のL配置である。標準的ポリペプチド命名法に沿って、アミノ酸残基の略語を以下の対応表に示す。
対応表

【0033】
本明細書において、用語"細胞"、"細胞株"、"宿主細胞"は同義で使用され、これらすべての名称は、これらの名称の子孫または潜在的子孫を含む。"形質転換細胞"は、本発明の核酸分子が導入された細胞(またはその祖先)を意味する。場合により、本発明の核酸分子は、適切な細胞株に導入され、その遺伝子によりコードされるタンパク質またはポリペプチドを産生することができる安定的にトランスフェクトされた細胞株を作製することができる。このような細胞株を構築するためのベクター、細胞および方法は当該分野で公知である。用語"トランスフォーム細胞"または"形質転換細胞"は、初めて形質転換された細胞由来の初代形質転換細胞を含み、移入の回数を問わない。人工的または非人工的変異によって、すべての子孫のDNA含量は正確には同じではない可能性がある。それにもかかわらず、元の形質転換細胞でスクリーニングされるものと同じ機能性を有する変異体子孫は、トランスフォーム細胞の定義に含まれる。
【0034】
本明細書において、用語"異種"核酸配列またはタンパク質は、参照配列と比較して、例えば、外来種に由来するか、同じ種由来であっても、原型から実質的に修飾されている、異なる源を有する配列のことを言う。用語"相同性"は、2以上の配列間の相補性の程度のことを言う。部分的な相同性であってもよく、完全な相同性(すなわち、一致)であってもよい。相同性は、多くの場合、配列分析ソフトウェアを用いて測定される(例えば、Sequence Analysis Software Package of the Genetics Computer Group. University of Wisconsin Biotechnology Center. 1710 University Avenue. Madison, WI 53705)。このようなソフトウェアは、種々の置換、欠失、挿入および他の修飾に対する相同性の程度を割り当てることによって、類似した配列をマッチさせる。保存的置換は、一般的には、以下の群内での置換を含む:グリシン、アラニン;バリン、イソロイシン、ロイシン;アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン;セリン、トレオニン;リジン、アルギニン;およびフェニルアラニン、チロシン。
【0035】
用語"in vitro"は、人工の環境および人工の環境内で生じるプロセスまたは反応のことを言う。in vitro環境は、限定するものではないが、試験管および細胞溶解物を含む。用語"in vivo"は、自然環境(例えば、動物または細胞)および自然環境内で生じるプロセスまたは反応のことを言う。
【0036】
用語"単離された"は、"単離されたオリゴヌクレオチド"、"単離されたポリヌクレオチド"、“単離されたタンパク質”または“単離されたポリペプチド”のように核酸またはポリペプチドに関して用いられるとき、通常その供給源に関連する少なくとも1つの不純物から識別または分離される核酸またはアミノ酸配列のことを言う。したって、単離された核酸または単離されたポリペプチドは、自然界に見られるものとは異なる形態または環境に存在する。対照的に、単離されていない核酸(例えば、DNAおよびRNA)または単離されていないポリペプチド(例えば、タンパク質および酵素)は、自然に存在する状態で見出される。例えば、所定のDNA配列(例えば、遺伝子)は、宿主細胞染色体において、隣接する遺伝子に近接して見出され、RNA配列(例えば、特定のタンパク質をコードする特定のmRNA配列)は、多数のタンパク質をコードする多数の他のmRNAと共に混合物として細胞内で見出される。しかしながら、単離された核酸は、例として、核酸を通常発現する細胞内の核酸であって、天然の細胞とは異なる染色体位置に存在するかまたは自然界に見られる核酸配列とは異なる核酸配列に隣接する核酸を含む。単離された核酸またはオリゴヌクレオチドは、一本鎖または二本鎖型で存在できる。単離された核酸またはオリゴヌクレオチドがタンパク質を発現するために用いられる場合、そのオリゴヌクレオチドは少なくともセンス鎖またはコード鎖を含むが(すなわち、オリゴヌクレオチド一本鎖であることができる)、センス鎖およびアンチセンス鎖の両方を含むこともできる(すなわち、オリゴヌクレオチドは二本鎖であることができる)。
【0037】
本明細書において、用語"核酸分子’、"ポリヌクレオチド"または"核酸配列"は、ポリペプチドまたはタンパク質前駆体の産生に必要なコード配列を含む核酸、DNAまたはRNAのことを言う。コードされるポリペプチドは、全長ポリペプチド、そのフラグメント(完全長に満たない)または、融合ポリペプチドを生じる、全長ポリペプチドもしくはそのフラグメントのいずれかと他のポリペプチドの融合体であることができる。
【0038】
タンパク質またはポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドは、遺伝子のコード領域を含む核酸配列、すなわち遺伝子産物をコードする核酸配列を意味する。コード領域は、cDNA、ゲノムDNAまたはRNAのいずれかの形態で存在することができる。DNA形態で存在する場合、オリゴヌクレオチドは一本鎖(すなわち、センス鎖)または二本鎖であることができる。適切な転写開始および/または一次RNA転写産物の正確なプロセシングを行うのに必要であれば、エンハンサー/プロモーター、スプライス部位、ポリアデニル化シグナルなどの適切な調節因子は、遺伝子のコード領域のごく近くに位置させることができる。あるいは、コード領域。他の調節因子は、限定するものではないが、転写因子結合部位、スプライシングシグナル、ポリアデニル化シグナル、終結シグナルおよびエンハンサー領域を含む。
【0039】
"ペプチド"、"タンパク質"および"ポリペプチド"は、長さまたは翻訳後修飾(例えば、グリコシル化またはリン酸化)にかかわらず、いずれかのアミノ酸鎖を意味する。本発明の核酸分子は、それが由来する天然に存在する(天然または野生型)タンパク質のアミノ酸配列と少なくとも60%、70%、80%、85%、90%、95%または99%同一であるアミノ酸配列を有する、天然に存在するタンパク質またはそのポリペプチドフラグメントのバリアントをコードすることもできる。例えば、甲虫ルシフェラーゼは、配列番号9、106、118または120の1つに対して少なくとも60%、70%、80%、85%、90%、95%または99%のアミノ酸配列同一性を有し;ホタルルシフェラーゼは106、118または120の1つに対して少なくとも60%、70%、80%、85%、90%、95%または99%のアミノ酸配列同一性を有し;コメツキムシルシフェラーゼは配列番号9に対して少なくとも60%、70%、80%、85%、90%、95%または99%のアミノ酸配列同一性を有し;花虫類ルシフェラーゼは配列番号116に対して少なくとも60%、70%、80%、85%、90%、95%または99%のアミノ酸配列同一性を有し;カイアシ類ルシフェラーゼは配列番号121に対して少なくとも60%、70%、80%、85%、90%、95%または99%のアミノ酸配列同一性を有し;十脚類ルシフェラーゼは配列番号122に対して少なくとも60%、70%、80%、85%、90%、95%または99%のアミノ酸配列同一性を有する。用語"融合ポリペプチド"または"融合タンパク質"は、N末端および/またはC末端で1以上の異種配列(例えば、非ルシフェラーゼポリペプチド)に結合した参照タンパク質(例えば、ルシフェラーゼ)を含むキメラタンパク質のことを言う。いくつかの実施形態において、本発明の修飾ポリペプチド、融合ポリペプチドまたは全長ポリペプチドの一部は、対応する完全長機能性(非キメラ)ポリペプチドの活性の少なくとも一部を保持することができる。他の実施形態において、外因性薬剤または目的とする分子の非存在下で、本発明の修飾ポリペプチド、融合ポリペプチドまたは完全長機能性ポリペプチドの一部は、対応する完全長機能性ポリペプチドと比較して活性を欠くことができる。他の実施形態において、本発明の修飾ポリペプチド、融合ポリペプチドまたは完全長機能性ポリペプチドの一部は、外因性薬剤の存在下で、対応する完全長機能性ポリペプチドと比較して、少なくとも一部の活性を保持するか、または実質的に同等の活性を有することができ、あるいは活性を欠くことができる。
【0040】
本明細書において、"純粋な"は、対象種が存在する主要な種であることを意味し(すなわち、モルベースで組成物中の他のどの個別種よりも豊富にある)、一実施形態において、実質的に精製された分画は、存在するすべての高分子種の少なくとも約50パーセント(モルベースで)を対象種が含む組成物である。一般に、"実質的に純粋な"組成物は、組成物中に存在するすべての高分子種の約80パーセント超を含み、一実施形態において、約85%、約90%、約95%または約99%を超えて含む。一実施形態において、対象種は本質的に均一に(従来の検出法では組成物内の不純物が検出できない)精製されるが、この場合、組成物は本質的に単一の高分子種からなる。
【0041】
核酸は、種類の異なる変異を含むことが知られている。"点"変異は、野生型配列の単一の塩基位置でのヌクレオチド配列の改変のことを言う。変異は、1以上の塩基の挿入または欠失によりその核酸配列が参照配列、例えば野生型配列とは異なることを指すこともできる。
【0042】
本明細書において、用語"組換えベクター"および"発現ベクター"は、所望のコード配列および特定の宿主生物において作動可能に連結されたコード配列の発現に必要な適切なDNAまたはRNA配列を含むDNAまたはRNA配列を指す。原核発現ベクターは、プロモーター、リボソーム結合部位、宿主細胞における自律複製の複製起点およびおそらくは他の配列、例えば場合によるオペレーター配列、場合による制限酵素部位を含む。プロモーターは、RNAポリメラーゼをDNAと結合させ、RNA合成を開始するように指示するDNA配列と定義される。真核発現ベクターは、プロモーターを含み、場合によりポリアデニル化シグナルを含み、場合によりエンハンサー配列を含む。
【0043】
用語"ベクター"は、核酸分子であって、DNAフラグメントを挿入またはクローニングすることができ、細胞にDNAセグメント(単数または複数)を導入するのに用いることができ、細胞内で複製することができる前記核酸分子を指すために用いられる。ベクターは、プラスミド、バクテリオファージ、ウイルス、コスミドなどに由来することができる。
【0044】
本明細書において、用語"野生型"は、天然に存在する供給源から単離された遺伝子または遺伝子産物の特徴を有する遺伝子または遺伝子産物のことを言う。野生型遺伝子は、集団中で最も頻繁に観察される遺伝子であり、従って、その遺伝子の"野生型"形と任意に称される。対照的に、用語"変異体"は、野生型の遺伝子または遺伝子産物と比較して、配列および/または機能的特性の修飾(すなわち、改変された特徴)を示す遺伝子または遺伝子産物のことを言う。天然に存在する変異体が単離されうることに注意されたい。これらは、野生型の遺伝子または遺伝子産物と比較して改変された特徴を有するという事実によって同定される。
【0045】
I.cAMPバイオセンサーのための典型的なポリヌクレオチドおよびタンパク質
本発明は、円順列変異したcAMPルシフェラーゼバイオセンサーを含むcAMPルシフェラーゼバイオセンサーを含み、そのルシフェラーゼ配列は、元の(野生型の)N末端またはC末端またはその両方における残基の欠失、例えばN末端における1〜3またはそれ以上の残基およびC末端における1〜6またはそれ以上の残基の欠失を含むことができるばかりでなく、直接または間接にcAMPと相互作用する配列も含むことができる。修飾ルシフェラーゼのルシフェラーゼ配列は、対応する未修飾ルシフェラーゼのアミノ酸配列と同じかまたは実質的に同じである。実質的に同じ配列を有するポリペプチドまたはペプチドは、アミノ酸配列が、全く同じではないにしても大体は同じであり、それが関連する配列の機能活性を保持していることを意味する。一般に、2つのアミノ酸配列は、それらが少なくとも80%同一である場合、例えば、少なくとも85%、90%、95%、99%またはそれ以上一致する場合、実質的に同じであるか、または実質的に相同である。
【0046】
相同性または同一性は、多くの場合、配列分析ソフトウェアを用いて測定される。このようなソフトウェアは、このようなソフトウェアは、種々の欠失、置換および他の修飾に対する相同性の程度を割り当てることによって、類似した配列をマッチさせる。用語"相同性"および"同一性"は、2以上の核酸またはポリペプチド配列に関連して、任意の数の配列比較アルゴリズムを用いて、またはマニュアルアラインメントおよび目視検査により測定される、比較ウィンドウもしくは指定領域での最大一致を比較およびアラインメントするとき、同じであるかまたは同じであるアミノ酸残基またはヌクレオチドの特定の百分率を有する2以上の配列または部分配列を指す。
【0047】
配列比較に関しては、一般的には、ある配列を参照配列とし、被検配列をこれと比較する。配列比較アルゴリズムを用いる場合、被検配列および参照配列をコンピュータに入力し、必要に応じて部分配列座標を指定し、配列アルゴリズムプログラムパラメータを指定する。デフォルトのプログラムパラメータを用いることもでき、代替パラメータを指定することもできる。次いで、プログラムパラメータに基づいて、配列比較アルゴリズムにより、参照配列と比較しての被検配列の配列同一性パーセントを算出する。
【0048】
比較のための配列のアラインメントの方法は当該分野で公知である。比較のための配列の最適のアラインメントは、Smithら(Adv.Appl.Math. 2: 482 (1981))の局所相同性アルゴリズム、Needlemanら(J.Mol.Biol. 48: 443 (1970))の相同性アラインメントアルゴリズム、Personら(1988)の類似性検索方法、これらのアルゴリズムのコンピュータへの実装(Wisconsin Genetics Software Package, Genetics Computer Group, 575 Science Dr., Madison, WIにおけるGAP、BESTFIT、FASTAおよびTFASTA)またはマニュアルアラインメントおよび目視検査によって行うことができる。
【0049】
これらの数学的アルゴリズムのコンピュータによる実装を配列の比較のために用いて、配列同一性を決定することができる。このような実装は、限定するものではないが:PC/GeneプログラムにおけるCLUSTAL(Intelligenetics社(カリフォルニア州マウンテンビュー)から入手できる);ALIGNプログラム(バージョン2.0)ならびにWisconsin Genetics Software Package、バージョン8におけるGAP、BESTFIT、BLAST、FASTAおよび TFASTA(Genetics Computer Group (GCG)、575 Science Drive, Madison, Wisconsin, USAから入手できる)を含む。これらのプログラムを用いるアラインメントは、デフォルトパラメータを用いて行うことができる。CLUSTALプログラムについては、Higginsら(Gene 73: 237 (1988));Higginsら(CABIOS 5: 157 (1989));Corpetら NAR 16: 1088 (1988);Huangら(CABIOS 8: 155 (1992));およびPearsonら(Methods Mol. Biol. 24: 307 (1994))によって十分に説明されている。ALIGNプログラムは、Myersおよび Miller (LABIOS 4: 11 (1988))のアルゴリズムに基づく。Altschulら(J.Mol.Biol. 215: 403 (1990))のBLASTプログラムは、KarlinおよびAltschul(PNAS USA 90: 5873 (1993))のアルゴリズムに基づく。
【0050】
BLAST解析を行うためのソフトウェアは、国立生物工学情報センター(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)から公に入手可能である。このアルゴリズムは、最初に、データベース配列中の同じ長さのワードとアラインメントしたとき、正の値の域値スコアTとマッチするかまたは満足する、クエリー配列中の長さWの短いワードを同定することにより高スコア配列対(HSP)を同定することを含む。Tは、隣接ワードスコア閾値と呼ばれる(Altschul et al. J.Mol.Biol. 215: 403 (1990))。これらの最初の隣接ワードヒットは、それらを含むより長いHSPを見出す検索を開始するためのシードとしての機能を果たす。次いで、累積アラインメントスコアが上昇する限り、各配列に沿って両方向にワードヒットを伸ばす。ヌクレオチド配列に関しては、パラメータM(マッチ残基対に対するリワードスコア;常に>0)およびN(ミスマッチ残基に対するペナルティスコア;常に<0)を用いて累積スコアを算出する。アミノ酸配列に関しては、累積スコアを算出するために、スコアリングマトリックスを用いる。累積アラインメントスコアが最大到達値から量Xだけ減少したとき、1以上の負のスコアの残基アラインメントの蓄積により累積スコアがゼロ以下になったとき、あるいはそれぞれの配列の末端に到達したとき、各方向におけるワードヒットの伸長を停止する。
【0051】
配列同一性パーセントの算出に加えて、BLASTアルゴリズムはまた、2つの配列間の類似性に関する統計解析を行う(例えば、Karlin & Altschul PNAS USA 90: 5873 (1993)を参照のこと)。BLASTアルゴリズムによって提供される類似性の1つの尺度は最小合計確立(P(N))であり、これは2つのヌクレオチドまたはアミノ酸配列間のマッチが偶然に生じる確率の目安を提供する。例えば、被検核酸配列と参照核酸配列との比較における最小合計確立が約0.1未満である場合、例えば約0.01未満である場合、例えば約0.001未満である場合、被検核酸配列は参照配列に類似しているとみなされる。
【0052】
比較目的でギャップ有りアラインメントを得るために、Altschulら(NAR 25: 3389 (1997))の記載に従ってGapped BLAST (BLAST 2.0)を用いることができる。あるいは、分子間の遠距離相互作用を検出するための反復探索法を行うためにPSI-BLAST(BLAST2.0)を用いることができる。前出のAltschulらを参照のこと。BLAST、Gapped BLAST、PSI-BLASTを用いる場合、各プログラムのデフォルトパラメータ(例えばヌクレオチド配列に関してはBLASTN、タンパク質に関してはBLASTX)を用いることができる。BLASTNプログラム(ヌクレオチド配列用)は、デフォルト値として、ワード長(W)11、期待値(E)10、カットオフ100、M=5、N=-4と両鎖の比較を用いる。アミノ酸配列に関しては、BLASTPプログラムは、デフォルト値として、ワード長(W)3、期待値(E)10およびBLOSUM62スコアリングマトリックス(Henikoff & Henikoff. PNAS USA 89: 10915(1989)参照)を用いる。http://www.ncbi.nlm.nih.gov.を参照のこと。
【0053】
特に、ポリペプチドは、保存的変化を除き、実質的に類縁である場合がある。保存的変化は、他の生物学的に類似している残基によるアミノ酸残基の置換を意味する。保存的変化の例は、イソロイシン、バリン、ロイシンまたはメチオニンなどの疎水性残基の1つともう1つとの置換、または、アルギニンとリジンの置換、グルタミン酸とアスパラギン酸の置換、グルタミンとアスパラギンの置換などの、極性残基の1つと他の極性残基との置換を含む。保存的置換の他の具体例は、以下の変化を含む:アラニンからセリン;アルギニンからリジン;アスパラギンからグルタミンまたはヒスチジン;アスパラギン酸からグルタミン酸;システインからセリン;グルタミンからアスパラギン;グルタミン酸からアスパラギン酸;グリシンからプロリン;ヒスチジンからアスパラギンまたはグルタミン;イソロイシンからロイシンまたはバリン;ロイシンからバリンまたはイソロイシン;リジンからアルギニン、グルタミン、またはグルタミン酸;メチオニンからロイシンまたはイソロイシン;フェニルアラニンからチロシン、ロイシンまたはメチオニン;セリンからトレオニン;トレオニンからセリン;トリプトファンからチロシン;チロシンからトリプトファンまたはフェニルアラニン;バリンからイソロイシン、ロイシン。
【0054】
一実施形態において、本発明のポリヌクレオチドは、特定の宿主における発現に最適化されている。本明細書において、最適化は、真核細胞においては、コドン最適化ばかりでなくコザック配列、および/または1以上のイントロンの導入を含む。従って、核酸分子は、コドンの30%、35%、40%を超えて、あるいは45%を超えて、例えば50%、55%、60%またはそれ以上、未修飾ルシフェラーゼをコードする野生型核酸配列のコドン組成とは異なるコドン組成を有することができる。本発明の使用に対応した好ましいコドンは、特定の生物における同じアミノ酸の少なくとも1つの他のコドンよりもより頻繁に用いられるコドンであり、場合により、その生物における低頻度コドンではなく、核酸分子の発現のためのクローニングまたはスクリーニングに用いられる生物における低頻度コドンではない。さらに、特定のアミノ酸に対応した好ましいコドン(すなわち、3以上のコドンを有するアミノ酸)は、他の(好ましくない)コドン(単数または複数)よりもより頻繁に用いられる2以上のコドンを含むことができる。ある生物よりも他の生物においてのほうがより頻繁に用いられる核酸分子のコドンの存在は、より頻繁にこれらのコドンを用いる生物の細胞に導入された場合、これらの細胞において、これらの細胞において野生型または親核酸配列の発現を超えるレベルで核酸分子が発現されるという結果をもたらす。
【0055】
本発明の一実施形態において、異なるコドンは哺乳動物においてより頻繁に用いられるコドンであり、他の実施形態において、異なるコドンは、植物においてより頻繁に用いられるコドンである。哺乳動物の特定の種類、例えばヒトは、哺乳動物の他の種類とは異なる好ましいコドンのセットを有することができる。同様に、植物の特定の種類は、植物の他の種類とは異なる好ましいコドンのセットを有することができる。本発明の一実施形態において、異なるコドンの大部分は、所望の宿主細胞における好ましいコドンである。哺乳動物(例えばヒト)および植物に対応した好ましいコドンは当業者に公知である(例えば、Wada et al. NAR 18: 2367(1990); Murray et al. NAR 17: 477 (1989))。
【0056】
本発明の修飾ルシフェラーゼタンパク質または融合タンパク質は、組換え法または固相化学ペプチド合成法で作製することができる。このような方法は、1960年台初頭から当該技術分野で公知であり(Merrifield. J.Am.Chem.Soc. 2149(1963); Stewart et al., Solid Phase Peptide Synthesis, 2nd ed., Pierce Chemical Co., Rockford, Ill., pp. 11-12))、最近、市販のペプチド設計・合成キット(Cambridge Research Biochemicals)が用いられている。
【0057】
II. 本発明の修飾ルシフェラーゼに有用な融合パートナー
修飾ルシフェラーゼをコードする本発明のポリヌクレオチドは、他の核酸配列、例えば、作製するN末端、C末端またはN末端およびC末端融合タンパク質ために、例えばcDNAなどの天然配列またはin vitroで操作されたもの、例えば、選択マーカーを含む異なるレポーター遺伝子によりコードされるタンパク質との融合体と共に用いることができる。適切な融合パートナーの多くの例が当業者に公知であり、本発明の実施に用いることができる。
【0058】
融合パートナーは、限定するものではないが、親和性ドメインまたは他の機能性タンパク質配列、例えば酵素活性を有するものを含む。例えば、機能性タンパク質配列は、特定のアミノ酸にリン酸部分を酵素的に付加することができる融合タンパク質を産生するキナーゼ触媒ドメイン(Hanks and Hunter. FASEB J. 9: 576(1995))をコードすることもできるし、リン酸化したチロシンに特異的に結合する融合タンパク質を産生するSrc相同性2(SH2)ドメイン(Sadowski et al. Mol. Cell. Bio. 6: 4396(1986); Mayer and Baltimore. Trends Cell. Biol. 3: 8(1993))をコードすることもできる。
【0059】
親和性ドメインは、一般に、結合パートナーと相互作用できるペプチド配列、例えば固体支持体に固定化したペプチド配列である。複数の単一連続アミノ酸(ヒスチジンなど)をコードするDNA配列は、発現タンパク質に融合させたとき、ニッケルセファロースなどの樹脂カラムへの高親和性結合による、組換えタンパク質の1段階精製に用いることができる。キチン結合ドメイン(キチンに結合する)、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(グルタチオンに結合する)、ビオチン(アビジンおよびストレプトアビジンに結合する)などのペプチドをコードする配列もまた、目的とするタンパク質の精製を容易にするために用いることができる。親和性ドメインは、インテイン(タンパク質自己スプライシング領域(Chong et al. Gene 192: 271(1997))の使用を含む、当該分野で公知の方法によって目的とするタンパク質から分離することができる。典型的な親和性ドメインは、HisV5(HHHHH)(配列番号15)、HisX6(HHHHHH)(配列番号16)、C-myc(EQKLISEEDL)(配列番号17)、Flag(DYKDDDDK)(配列番号14)、Step-タグ(WSHPQFEK)(配列番号18)、赤血球凝集素、例えば、HAタグ(YPYDVPDYA)(配列番号19)、GST、チオレドキシン、セルロース結合ドメイン、RYIRS(配列番号20)、Phe-His-His-Thr(配列番号21)、キチン結合ドメイン、S-ペプチド、T7ペプチド、SH2ドメイン、C末端RNAタグ、WEAAAREACCRECCARA(配列番号22)、金属結合ドメイン、例えば、亜鉛結合ドメインまたはカルシウム結合ドメイン、例えばカルシウム結合タンパク質由来のカルシウム結合ドメイン、例えば、カルモジュリン、トロポニンC、カルシニューリンB、ミオシンL鎖、リカバリン、S-モジュリン、ビシニン、VILIP、ニューロカルシン、ヒポカルシン、フリケニン、カルトラシン、カルパイン大サブユニット、S100タンパク質、パルブアルブミン、カルビンジンD9K、カルビンジンD28Kおよびカルレチニン、インテイン、ビオチン、ストレプトアビジン、MyoD、Id、ロイシンジッパー配列およびマルトース結合タンパク質を含む。一実施形態において、融合パートナーは、融合タンパク質を精製するのに有用な配列、例えばHisまたはGSTタグであり、一実施形態において、精製タグは、円順列変異したルシフェラーゼのN末端またはC末端に融合される。
【0060】
III.修飾ルシフェラーゼまたはその融合体をコードするベクターおよび宿主細胞
修飾ルシフェラーゼまたはその融合体をコードする望ましい核酸分子が作製されたら、修飾ルシフェラーゼまたは修飾ルシフェラーゼを含む融合タンパク質をコードする発現カセットを作製する。例えば、修飾ルシフェラーゼをコードする核酸配列を含む核酸分子は、場合により、転写調節配列、例えば1以上のエンハンサー、プロモーター、転写終結配列またはそれらの組み合わせに作動可能に連結され、発現カセットが形成される。核酸分子または発現カセットは、場合により選択マーカー遺伝子を含むベクター、例えばプラスミドまたはウイルスベクターに導入され、そのベクターは、目的とする細胞、例えば大腸菌(E. coli)、ストレプトマイセス属種(Streptomyces spp.)、バシラス属種(Bacillus spp.)、スタフィロコッカス属種(Staphylococcus spp.)などの原核細胞ばかりでなく、植物(双子葉植物または単子葉植物)、真菌、酵母、例えば、ピキア属(Pichia)、サッカロミセス属(Saccharomyces)もしくはシゾサッカロミセス属(Schizosaccharomyces)または哺乳動物細胞を含む真核細胞に導入されることができる。典型的な哺乳動物細胞は、ウシ、ヤギ、羊、イヌ、ネコ、非ヒト霊長類、例えばサルおよびヒト細胞を含む。典型的な哺乳動物細胞株は、限定するものではないが、CHO、COS、293、Hela、CV-1、SH-SY5Y、HEK293およびNIH3T3細胞を含む。
【0061】
コードされる修飾ルシフェラーゼの発現は、原核細胞または真核細胞中で発現できるいずれかのプロモーターで調節できる。典型的な原核プロモーターは、限定するものではないが、SP6、T7、T5、tac、bla、trp、gal、lacまたはマルトースプロモーターを含む。典型的な真核プロモーターは、限定するものではないが、構成的プロモーター、例えばCMV、SV40およびRSVプロモーターなどのウイルスプロモーターばかりでなく、調節性プロモーター、例えば誘導性または抑制プロモーター、例えばtetプロモーター、hsp70プロモーターおよびCREによって調節される合成プロモーターを含む。本発明の核酸分子、発現カセットおよび/またはベクターは、限定するものではないが、カルシウム媒介形質転換、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、リポフェクションなどを含むいずれかの方法で細胞に導入することができる。
【0062】
IV.典型的な使用
修飾ルシフェラーゼまたはその融合体は、限定するものではないが、cAMPの量もしくは存在の検出(バイオセンサー)、特定の分子の単離、例えば結合による特定の分子のコンホメーション変化の検出、低スループットまたは高スループットスクリーニングの簡便化、タンパク質-タンパク質、タンパク質-DNAもしくは他のタンパク質ベースの相互作用の検出、またはバイオセンサーの選択もしくは開発を含むいずれの目的にも有用である。例えば、修飾ルシフェラーゼまたはその融合体は、例えばin vitroもしくは細胞系アッセイにおけるcAMPの量、存在もしくは活性の検出(例えば、ルシフェラーゼタンパク質へのcAMP結合部位の挿入による);例えば、選択された認識配列を有する修飾ルシフェラーゼもしくは、目的とする1つの分子もしくは複数(例えば、ライブラリー)の分子を有する複数の異なる配列を有する修飾ルシフェラーゼのライブラリーを用いる認識部位の同定もしくは基質特異性の検出;バイオセンサーもしくは目的とする分子の選択もしくは開発;または例えばin vitroもしくは細胞系アプローチにおける、相補性もしくは結合によるタンパク質-タンパク質相互作用の検出に有用である。一実施形態において、cAMP結合部位を含む修飾ルシフェラーゼが分子のランダムライブラリーもしくは変異ライブラリーと接触され、その部位と相互作用する分子が同定される。他の実施形態において、複数のcAMP結合部位を有する修飾ルシフェラーゼのライブラリーが分子と接触され、分子と相互作用する修飾ルシフェラーゼが同定される。一実施形態において、修飾ルシフェラーゼまたはその融合体は、例えばin vitroもしくは細胞アッセイにおけるcAMPの量もしくは存在の検出(例えば、円順列変異したルシフェラーゼへのcAMP結合部位の挿入による)、阻害薬もしくはアクチベーター、例えばcAMPの阻害薬もしくはアクチベーター、cAMP結合部位へのcAMP結合の阻害薬もしくはアクチベーターまたはGタンパク質共役型受容体(GPCR)の阻害薬もしくはアクチベーターのスクリーニング、例えば選択された認識配列を有する修飾ルシフェラーゼもしくは、目的とする1つの分子もしくは複数(例えば、ライブラリー)の分子を有する複数の異なる配列を有する修飾ルシフェラーゼのライブラリーを用いる認識部位の同定もしくは基質特異性の検出、cAMP結合部位の選択もしくは開発あるいは動物全体のイメージングに有用である。
【0063】
本発明はまた、cAMPの量を調節することができる薬剤("被検"薬剤)のスクリーニング法を提供する。"調節作用"とは、生物学的活性または化学的活性の促進または抑制などの特性の改変のことを言い、ここで改変は、シグナル伝達経路の活性化などの特定の事象の発生に付随することができ、かつ/または特定の細胞型のみに現れることができる。"モジュレーター"は、例えば、生体高分子(例えば、核酸、タンパク質、非ペプチド、もしくは有機分子)、小分子、細菌、植物、真菌、もしくは動物(特に哺乳動物)の細胞もしくは組織などの生物材料から調製された抽出物などの薬剤(天然に存在するまたは天然に存在しない)あるいはいずれかの他の薬剤のことを言う。モジュレーターは、本明細書記載のスクリーニングアッセイに組み込むことにより、生物過程もしくはプロセスの阻害薬またはアクチベーターとしての潜在的活性を(直接または間接に)評価される。モジュレーターの活性(単数または複数)は既知の場合もあり、未知の場合もあり、部分的に既知の場合もある。このようなモジュレーターは本発明の方法を用いてスクリーニングすることができる。用語"被検薬剤"は、推定上のモジュレーターとして本発明の1以上のスクリーニング方法(単数または複数)によって試験される薬剤のことを言う。通例、0.01μM、0.1μM、1.0μMおよび10.0μMなどの、種々の所定の濃度がスクリーニングに用いられる。対照は、被検薬剤の非存在下でのシグナルの測定、標的を調節することが知られている薬剤との比較、または被検薬剤との接触の前、最中および/または後における試料(例えば細胞、組織または生物)との比較を含むことができる。
【0064】
一実施形態において、本発明の修飾ルシフェラーゼは、修飾ルシフェラーゼにおけるcAMP結合部位とサイクリックヌクレオチドなどの目的とする分子との間の相互作用を調節する薬剤もしくは条件、サイクリックヌクレオチドの存在もしくは量を調節する薬剤もしくは条件または細胞内サイクリックヌクレオチド濃度と関連する受容体などの分子を調節する薬剤もしくは条件を研究するための基質として有用である。特に、本発明は、挿入がcAMP結合部位を含む修飾ルシフェラーゼタンパク質を考える。従って、目的とする分子がcAMPであるとき、本発明は、本発明の修飾ルシフェラーゼポリペプチドと試料とを接触させ、ルシフェラーゼ活性の変化を測定することによって、試料中のcAMPの存在または量を測定する方法を提供する。本発明の修飾ルシフェラーゼタンパク質は、特に、修飾ルシフェラーゼを有する細胞内のcAMPの量または存在を変えるcAMPまたは分子の量または存在のモニタリングに使用することができる。
【0065】
本発明のアッセイは、量、例えばサイクリックヌクレオチドの量を変える化合物またはサイクリックヌクレオチド結合部位へのサイクリックヌクレオチドの結合を変える化合物を同定するための薬物のスクリーニングに用いることができる。一実施形態において、本アッセイは、in vitroでcAMPを含む試料に実施することができる。既知量のcAMPを含む試料と、被検薬剤を含む本発明の修飾ルシフェラーゼとが混合される。次いで、試料中のルシフェラーゼ活性の量が測定される。次いで、被検薬剤の存在下でのcAMP1モル当たりの活性の量を、被検薬剤の非存在下でのcAMP1モル当たりの活性と比較することができる。差異は、被検薬剤が、cAMP結合部位へのcAMPまたはcAMPの結合の量を改変することを示す。
【0066】
一実施形態において、例えば、cAMPの量または結合を直接または間接に調節することが推測される薬剤に細胞が馴化または接触される。細胞または培養物中の細胞を溶解し、cAMPの量を測定する。例えば、既知または未知のcAMP量を含む溶解細胞試料を本発明の修飾ルシフェラーゼと混合する。次いで、対照または非処理試料および処理した溶解細胞試料における修飾ルシフェラーゼ活性の程度を測定することによって、上記のように試料中のcAMP量を測定する。試料中のマイクログラムまたはミリグラム当たりのタンパク質に基づいて、活性または抑制を算出することができる。一般的には、標準測定値に対して差を換算し、cAMPの絶対量を得る。
【0067】
本発明のアッセイに使用する材料および組成物は、キットの製造に申し分なく適している。このようなキットは、バイアル、チューブなどの1以上の容器手段であって、それぞれの容器手段が、本方法に用いられる別々の要素の1つを含む前記容器手段を含む輸送手段を含むことができる。容器の1つは、本発明の修飾ルシフェラーゼまたはポリヌクレオチド(例えば、ベクターの形態で)を含む。もう1つの容器は、修飾ルシフェラーゼの基質を含むことができる。
【実施例】
【0068】
限定するものではない以下の実施例によって、本発明をさらに詳細に説明する。
【0069】
実施例1
ルシフェラーゼにおける、修飾が許容される典型的な部位
cAMPルシフェラーゼバイオセンサーを作製するために、cAMP結合部位は、修飾が許容されるルシフェラーゼに融合される。例えば異種配列の円順列変異または挿入のための、コメツキムシおよびホタルルシフェラーゼにおける修飾が許容される位置は、米国公開公報第20050153310号、米国出願番号第11/732,105号、PCT/US2004/032705およびPCT/US2007/008176に開示されており、これらは参照により本明細書に組み込まれる。
【0070】
例えば、ホタルルシフェラーゼにおける修飾部位は、限定するものではないが、残基7、37、47、75、83、107、121、144、160、174、188、198、205、225、233、242、255、268、294、303、308、316、358、361、377、403、435、490、540もしくは541またはこれらの(N末端またはC末端の)残基の5残基以内の残基を含む。コメツキムシルシフェラーゼにおける修飾部位は、限定するものではないが、残基21、25、117、358、376、379、398、399、400、401、402、403、405、406、407、409もしくは490またはこれらの(N末端またはC末端の)残基の5残基以内の残基を含む。
【0071】
OpLuc構築物の修飾部位は、残基50/51、84/85または112/113を含む。典型的な円順列変異構築物は、[51〜169]-4-cAMP結合部位-4-[1〜50]、[51〜169]-10-cAMP結合部位-10-[1〜50],[51〜169]-20-cAMP結合部位-20-[1〜50]、[85〜169]-4-cAMP結合部位-4-[1〜84]、[85〜169]-10-cAMP結合部位-10-[1〜84]、[85〜169]-20-cAMP結合部位-20-[1〜84]、[113〜169]-4-cAMP結合部位-4-[1〜112]、[113〜169]-10-cAMP結合部位-10-[1〜112]、[113〜169]-20-cAMP結合部位-20-[1〜112]、[135〜169]-4-cAMP結合部位-4-[1〜134]、[135〜169]-10-cAMP結合部位-10-[1〜134]および[135〜169]-20-cAMP結合部位-20-[1〜134]を含む。
【0072】
例えばcAMP結合部位の挿入などのレニラルシフェラーゼの修飾のための部位は、限定するものではないが、表1の部位を含む。
表1

【0073】
cAMP結合部位の挿入などの、ガウシアルシフェラーゼ(Gluc Genbank AAG54095;アミノ酸18〜185)の修飾のための部位を、例えばMet-(Gluc A-185)-(リンカーX)-(cAMP結合部位)-(リンカーY)-(Gluc 18-B)をコードする構築物に関して表2に示す。
表2

【0074】
種々のリンカーの組み合わせは以下の配列を有する:
表3

【0075】
実施例2
ヒトRIIβB部位における変異の作製
cAMPのための改善されたバイオセンサーを同定するために、ヒトcAMP結合ドメイン(ヒトPKA調節サブユニットIIβ型由来のサブサイトB(RIIβB;Genbankアクセッション番号BC075800、残基266〜414)における置換を有する構築物を作製した。ヒトRIIβB部位に関しては、製造業者の使用説明書に従って、オリゴベース部位特異的変異導入法キット(Kunkel, PNAS USA 82(2):488 (1985))であるQuik Change (Stratagene社)を用い、円順列変異ホタルルシフェラーゼ構築物(Met-(FF luc359〜544)-(RIIβB)-(FF luc4〜355)-Val)に関しては、エラープローン変異導入PCRベース系(Daugherty, PNAS USA 97(5):2029 (2000))であるGeneMorph II(Stratagene社)を用いてRIIβBにおける置換を作製した。
【0076】
実施例3
ヒトRIIβB変異体のスクリーニング
RIIβBにおける変異を含むバイオセンサー構築物(実施例2)を、円順列変異したホタルルシフェラーゼ(CP-FF)構築物(Met-(FF luc359〜544)-(RIIβB)-(FFluc4〜355)-Val)に挿入した。改善された発光、改善された反応またはその両方を示す変異RIIβB部位を同定するために、最初にこれらの構築物を大腸菌においてスクリーニングした。簡潔に言えば、50μM cAMPの存在下または非存在下で、大腸菌において構築物を過剰発現させた。HEK293細胞においてcAMPを増加させる薬剤に対するシグナルの増強または反応の増強に関して、改善された発光を示す構築物をスクリーニングした。これらの変異バイオセンサーの性能を、一次配列Met-(FF luc359〜544)-GSSGGSGGSGGG(配列番号41)-(RIIβB)-(FFluc4〜355)-Valを有する親構築物(GS358)の性能と比較した。
【0077】
方法と結果
A.1日目に、HEK293細胞15,000個を96ウェルプレートの各ウェルにプレーティングした。2日目に、Mirus Bio社製のTransIT-LT1試薬を用いて、種々のバイオセンサー変異体(RIIβB cAMP結合ドメインに変異を有する)をコードするプラスミドDNAで、細胞を一過性にトランスフェクトした。プラスミドはまた、トランスフェクション対照としての機能を果たすレニラルシフェラーゼの構成発現のための遺伝子を有していた。2mMエンドトキシンフリールシフェリン(EF-luc)を用いて、室温で2時間細胞を平衡化させた。各ウェルに最終濃度10μMでイソプロテレノールまたはフォスコリン(FSK)を添加し、時間的に連続で発光をモニターした(Mithrasルミノメーター;積分時間1秒)。測定が完了したら(>30分)、細胞を溶解し、レニラルシフェラーゼ活性を測定した。
【0078】
レニラ発光シグナル(RL norm)を用いてバイオセンサー発光(FF RLU)を正規化し、イソプロテレノールまたはフォルスコリン処理ウェルからの正規化したバイオセンサー発光を化合物を添加しなかった対照ウェルからの正規化した発光によって割ることにより誘導(反応)倍率を算出した(図2〜6)。
【0079】
表4に示すように、置換のいくつかは、発光シグナルまたは反応だけを改善することが見出された。他の置換、例えば、残基389および333は、その残基で置換されたアミノ酸に応じて、発光シグナルまたは反応のいずれかを改善することが見出された。いくつかの置換、例えばV333Nは、発光シグナルおよび反応の両方の改善をもたらした。発光シグナルまたは反応の改善に対する累積効果を置換が有するかどうかを測定するために、置換の組み合わせもまたスクリーニングした。
表4

【0080】
実施例4
変異リンカー配列の作製
cAMPバイオセンサーのリンカー配列における変化が、薬剤に対する発光または反応を改善することもできるのか、またはその両方であるのかを明らかにするために、親リンカー配列GS358であるGSSGGSGGSGGG(配列番号41)における置換を有するリンカーバリアントを作製した。カセットベースクローニングアプローチを用いて、あるいはアニーリングした二本鎖オリゴリンカーを直接に合成することにより、リンカーバリアントを作製した。カセットベースアプローチは、配列/遺伝子への、二本鎖ライブラリーフラグメントまたは各フラグメントの直接連結反応を含む。簡潔に言えば、リンカー領域を代理する一本鎖ランダム配列の増幅によってリンカーバリアントを作製した。適切な制限部位を含む得られた二本鎖カセットを配列の適切な領域に連結し、リンカーバリアントのプラスミドベースのライブラリーを作製した。直接に合成されるリンカーバリアントに関しては、リンカーカセットの両鎖を合成し(IDT)、アニーリングさせ、カセットベースアプローチと同様にクローニングした。大腸菌において、改善された発光、改善された反応、またはその両方に関してリンカーバリアントをスクリーニングした。次いで、最良のリンカーバリアントを用いて、これらの最良のリンカーバリアントのアミノ酸配列から、リンカー複合物(n=48)を合理的に設計した。これらの複合物を合成し(IDT)、アニーリングさせ、CP-FF Luc構築物にクローニングした。
【0081】
作製されたバリアントリンカー配列を表5に示す。
表5

【0082】
実施例5
変異リンカー配列のスクリーニング
実施例3のリンカーバリアントを、実施例2と同様にCP-FF構築物に挿入した。構築物はさらに、E284AおよびV316Iでの置換を含む変異RIIβb cAMP結合部位を含んだ。実施例と同様に、最初に大腸菌において構築物をスクリーニングして、改善された発光、改善された反応またはその両方を提供するリンカー配列を同定した。次いで、HEK293細胞において、イソプロテレノールに対する改善された発光シグナル、反応またはその両方に関してリンカーバリアントをスクリーニングした。
【0083】
方法と結果
1日目に、HEK293細胞15,000個を96ウェルプレートの各ウェルにプレーティングした。2日目に、Mirus Bio社製のLT1試薬を用いて、バリアントリンカー配列を含むcAMPバイオセンサーバリアントをコードするプラスミドDNAで細胞を一過性にトランスフェクトした。プラスミドはまた、トランスフェクション対照としての機能を果たすレニラルシフェラーゼの構成発現のための遺伝子を有していた。5mMルシフェリンEF(EF-luc)を用いて、室温で2時間細胞を平衡化させた。各ウェルに最終濃度10μMでイソプロテレノールを添加し、時間的に連続で発光をモニターした(Mithrasルミノメーター;積分時間1秒)。測定が完了したら(>30分)、細胞を溶解し、レニラルシフェラーゼ活性を測定した。
【0084】
レニラ発光シグナル(RL norm)を用いてバイオセンサー発光(FF RLU)を正規化し、イソプロテレノール処理ウェルからの正規化したバイオセンサー発光を化合物を添加しなかった対照ウェルからの正規化した発光によって割ることにより誘導(反応)倍率を算出した(図)。表6にリンカーの改善の概要を示す。表8におけるデータは、親GS358構築物(RIIβBにおけるE284AおよびV316I置換を含むGS358)と比較しての、イソプロテレノールに対する発光シグナル、反応またはその両方の改善倍率を含む。
表6

【0085】
実施例6
CPM-FF Luc/変異RIIβB cAMPバイオセンサーでのcAMPのin vitro検出
製造業者の使用説明書に従って、30℃で1時間、TnT(登録商標)T7共役ウサギ網状赤血球ライセートシステム(T7Coupled Rabbit Reticulocyte Lysate System)(Promega社)を用いてin vitroでcAMPバイオセンサーバリアントをコードするプラスミドDNAを発現させた。発現させたcAMPバイオセンサーバリアントには、RIIβBにおける置換V316IおよびE284Iを含む二重バリアント、RIIβBにおけるV316IおよびE284置換ならびに修飾リンカー配列GSNWDSGCSRE(配列番号127)を含むクローン7A1(配列番号113;配列番号114)、RIIβBにおける置換E284AおよびV316Iならびに修飾リンカー配列GSIAGCGDAGEG(配列番号56;配列番号128)を含むクローンL9(配列番号104;配列番号105)ならびに親クローンGS358(配列番号111;配列番号112)を含めた。発現後、TnT(登録商標)反応物20μLを、H2Oで希釈したcAMP10X原液2μLと混合した。この混合物を室温で15分間インキュベートし、ルシフェラーゼアッセイ試薬90μLの注入後に、Glomaxルミノメーターを用いて試料5μLからの発光を測定した(積分時間0.5秒)。これら3つのcAMPバリアントは、すべて右にシフトしたが、これはcAMPに対する親和性の低下を示す(図9)。
【0086】
実施例7
修飾リンカー領域を有するCPM-FF Luc/変異RIIβB cAMPバイオセンサーによる、イソプロテレノールに対する刺激反応の増加
A.変異RIIβB結合部位(置換E284AおよびV316I)ならびに修飾リンカー配列(GSIAGCGDAGEG、配列番号57;配列番号128)を有する変異cAMPバイオセンサー(L9と呼ぶ;配列番号104;配列番号105)を、哺乳動物細胞内で発現させて、光出力の増加および反応倍率の増加をスクリーニングした(一次配列Met-(フォチナス・フィラリスルシフェラーゼ残基359〜544)-(GSIAGCGDAGEG(配列番号57;配列番号配列番号128))-(RIIβB E284A、V316I)-(フォチナス・フィラリスルシフェラーゼ残基4〜355)-Val)。刺激反応に関しては、HEK293細胞内での一過性発現後に、10μMイソプロテレノール(内因性β2-アドレナリン受容体のアゴニスト)で処理した。抑制反応に関しては、ドーパミンD2受容体を安定に発現するHEK293細胞内での一過性発現後に、フォルスコリンの存在下または非存在下で同時処理を行った。
【0087】
L9でトランスフェクトされた細胞は、Gs経路のイソプロテレノール誘導に対する改善された反応倍率を示し(図8A)、同様に、Gi経路の関する改善された反応倍率も示した(図8B)。
【0088】
B.上記のように、種々のバイオセンサー変異体をコードするプラスミドDNAでHEK293細胞を一過性にトランスフェクトした。これらのバイオセンサー変異体は、RIIβB cAMP結合ドメインにおけるE284AおよびV316I変異ならびに修飾リンカー配列7A1(GSNWDSGCSREG;配列番号129)を含んでいた。これらのクローンはまた、表8に概略を示すさらなる変異も含んでいた。室温で2時間、2mM EF-Lucで細胞を平衡化した。イソプロテレノール添加の5分後および15分後、ならびにFSK添加の15分後に発光を測定した。誘導細胞からの相対発光量(relative light unit:RLU)を非誘導細胞からのRLUで割ることにより、反応倍率(反応;Resp.)を算出した。対照として、バイオセンサーGS358および7A1を含めた。
表7

【0089】
表8

【0090】
実施例8
cAMPの細胞内濃度の変化を測定するために、HEK293細胞を変異cAMPバイオセンサーで一過性にトランスフェクトし、次いで、それぞれGsまたはGi共役型受容体のGPCR活性化を介して細胞内cAMP濃度を増減させることが知られている化合物で処理した。cAMPを上昇させるためにFSK(内因性アデニル酸シクラーゼの直接アクチベーター)を用い、cAMPを低下させるドーパミン(Gi共役型ドーパミンD2受容体のアゴニスト)を用い、Gi共役型受容体アンタゴニストのスクリーニングにおけるアッセイの使用を明らかにするためにハロペリドール(ドーパミンD2受容体アンタゴニスト)を用いる。
【0091】
材料および結果
ドーパミンD2受容体を安定的に発現するHEK293細胞を、実施例7Bからの変異cAMPバイオセンサーで一過性にトランスフェクトした。同様に、対照として7A1(実施例3)またはGS358(親バイオセンサー)で細胞をトランスフェクトした。2mM EF-lucを用いて、室温で2時間細胞を平衡化した。アンタゴニストアッセイウェルを、室温で10〜15分間10μMハロペリドール(Halo)で前処理した。次いで、それぞれのウェルに以下の試薬を添加した:未処理”試料に培地のみ;“フォルスコリン処理”試料に3μMフォルスコリン(FSK);“アゴニスト処理”試料に3μM FSK+0.3μMドーパミン;そしてHaloで前処理した前述のウェルに3μM FSK+0.3μMドーパミン。次いで、細胞を室温で10分間インキュベートし、発光を測定した。“フォルスコリン処理”細胞からのRLUを”未処理”細胞からのRLUで割ることにより、FSKの反応倍率を算出した。”アゴニスト処理”細胞からのRLUを“フォルスコリン処理”細胞からのRLUで割ることにより、ドーパミン処理の反応倍率を算出した。ハロペリドール、次いでフォルスコリン+ドーパミンで処理した細胞からのRLUをフォルスコリン+ドーパミン単独で処理した細胞のRLUで割ることにより、ハロペリドール処理の反応倍率を算出した。
表9

【0092】
実施例9
実施例において最も改善された反応を示すと考えられたアミノ酸置換の組み合わせを含むcAMP変異体バイオセンサーバリアントを作製した。これらのアミノ酸置換は、Luc2.0における置換:F369I(I)、K541Q(Q)、F518L(L)および/またはRIIβBにおける置換:F407Y(Y)を含んでいた。7A1またはL9バックグラウンドのいずれかにおいて、cAMPバイオセンサーバリアントを作製した。バリアントの命名は、バックグラウンドクローン(7A1またはL9)+アミノ酸置換(単数または複数)(I、Q、Lおよび/またはY)として行った。改善された発光および/または反応に関してこれらのバリアントをスクリーニングした。
【0093】
GPCR受容体GPR41(Multispan社)、GPR44(Multispan社)またはドーパミンD2受容体を安定的に発現するHEK293細胞を、96ウェルプレートの各ウェルに15,000細胞/ウェルでプレーティングした。24時間後、cAMPバイオセンサーバリアント(表7Aおよび7B)の1つで細胞を一過性にトランスフェクトした。さらに24時間後、10%FBSを含むCO2非依存性培地中で、5mM EF-lucを用いて室温で2時間を平衡化させた。化合物添加の前に発光を測定した。次いで、細胞に化合物(FBSを含まないCO2非依存性培地中の12x原液)を添加した。GPR41発現細胞には、プロピオン酸ナトリウムCRCを加えた。GPR44発現細胞には、15(R)-プロスタグランジンD2(PGD2)CRCを加えた。ドーパミンD2発現細胞には、ドーパミンCRCを加えた。化合物での5分間のインキュベーション後、すべての細胞にFSKを加えた。さらに30分間、細胞をインキュベートし、Varioskan Flashで発光を読み取った。FSKの有り無しでの化合物のそれぞれでのクローンのそれぞれについて、EC50値および反応倍率を算出した。さらに、バリアントL9、15C6(実施例8B)、4H7(実施例7B)、16A2(実施例7B)およびGS358もまたスクリーニングした。
【0094】
表10Aおよび10Bは、プロピオン酸ナトリウム処理GPR41細胞についての反応倍率(非誘導シグナルに対する誘導シグナルの比率)およびシグナル倍率変化(未処理ウェルに対するFSK処理ウェルのRLUの比率)を示す。表11Aおよび11Bは、FSKの有り無しでの化合物のそれぞれでのクローンのそれぞれに関して得られたEC50値を示す。図9(A=GPR44、B=GPR41、C=D2)は、FSKありでの(FSK無しに対しての)化合物のそれぞれでの化合物のそれぞれにおいて認められた反応倍率を示す。30分でのRLUを化合物添加の前のRLUによって割ることにより反応倍率を算出する。図10(A=GPR44、B=GRP41、C=D2)は、FSKの有り無しでの各化合物での30分におけるクローンのそれぞれについての絶対RLUのグラフを示す。
表10A

【0095】
表10B

【0096】
表11A

【0097】
表11B

【0098】
典型的なcAMPバイオセンサークローンは、限定するものではないが、15H6(配列番号107;配列番号108);7A1-QY(配列番号109;配列番号110);GS358(配列番号111;配列番号112);7A1(配列番号113;配列番号114);7A1-IQ(配列番号23;配列番号24);7A1-LY(配列番号25;配列番号26);7A1-ILY(配列番号27;配列番号28);7A1-IQY(配列番号29;配列番号30);7A1-ILQY(配列番号31;配列番号32);1B3(配列番号33;配列番号34);4H7(配列番号35;配列番号36);9G4(配列番号37;配列番号38);7A1-IY(配列番号39;配列番号40);7A1-LQY(配列番号58;配列番号59);16A2(配列番号60;配列番号61);7A1-Q(配列番号62;配列番号63);7A1-LQ(配列番号64;配列番号65);7A1-I(配列番号66;配列番号67);7A1-ILQ(配列番号68;配列番号69);7A1-IL(配列番号70;配列番号71);16B3(配列番号72;配列番号73);L9-IQ(配列番号74;配列番号75);L9-IY(配列番号76;配列番号77);L9-IQY(配列番号78;配列番号79);L9-ILQY(配列番号80;配列番号81);L9-ILY(配列番号82;配列番号83);L9-IL(配列番号84;配列番号85);L9-ILQ(配列番号86;配列番号87);L9-LQY(配列番号88;配列番号89);L9-QY(配列番号90;配列番号91);L9-I(配列番号92;配列番号93);L9-L(配列番号94;配列番号95);L9-Q(配列番号96;配列番号97);L9-Y(配列番号98;配列番号99);L9-LY(配列番号100;配列番号101);L9-LQ(配列番号102;配列番号103);およびL9(配列番号104;配列番号105)を含む。
【0099】
D7A1-ILY(配列番号12)は、cAMP結合部位における3つの置換、7AIリンカー(NWDSGCSREGを含む;配列番号130)およびルシフェラーゼ配列における2つの置換を有するcAMPバイオセンサーである(Met-FF Luc2.0(359〜544)-7AI-cAMP結合部位-FF Luc2.0(4〜355)-Val)。DL9-IL(配列番号13)は、cAMP結合部位における2つの置換、L9リンカー(IAGCGDAGEGを含む;配列番号131)およびルシフェラーゼ配列における2つの置換を有するcAMPバイオセンサーである(Met-FF Luc2.0(359〜544)-L9-cAMP結合部位-FF Luc2.0(4〜355)-Val)。これらのクローンは、ランダムカセット変異誘発および全遺伝子のランダム変異導入/変異導入PCR法/組換えで得られた変異cAMP結合部位、リンカーを含んでいた。D7A1-ILYおよびDL9-ILは、GS358と比較して、発光の増強および反応の増強を含む改善された特性を有する。
【0100】
すべての公報、特許および特許出願は、参照により本願に組み込まれる。前述の明細書において本発明をその特定の実施形態に関して説明し、多くの詳細を説明のために示してきたが、本発明は、さらなる実施形態が可能であり、本発明の基本原理から逸脱することなく本明細書の特定の詳細を少なからず変えうることは当業者には明らかであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ルシフェラーゼ配列および変異cAMP結合部位の異種アミノ酸配列を含む修飾ルシフェラーゼのオープンリーディングフレームを含む核酸配列を含むポリヌクレオチドであって、1以上の置換を欠くcAMP結合部位を有する対応するルシフェラーゼと比較して、前記変異cAMP結合部位が、前記修飾ルシフェラーゼの発光シグナルを増強する1以上の置換、細胞内のcAMP量を改変する薬剤に対する前記修飾ルシフェラーゼの反応を増強する1以上の置換、野生型cAMP結合ドメインの親和性を低下させる1以上の置換またはそれらの組み合わせを有する前記ポリヌクレオチド。
【請求項2】
前記修飾ルシフェラーゼにおけるルシフェラーゼ配列が、野生型ルシフェラーゼと比較して円順列変異された、請求項1記載のポリペプチド。
【請求項3】
前記修飾ルシフェラーゼにおけるルシフェラーゼ配列が、
a.甲虫ルシフェラーゼ配列、
b.コメツキムシルシフェラーゼ配列、
c.ホタルルシフェラーゼ配列、または
d.花虫類ルシフェラーゼ配列
である、請求項1または2記載のポリヌクレオチド。
【請求項4】
前記cAMP結合部位が、
a.ホタルルシフェラーゼの残基2〜12、残基32〜53、残基70〜88、残基102〜126、残基139〜165、残基183〜203、残基220〜247、残基262〜273、残基303〜313、残基353〜408、残基485〜495もしくは残基535〜546、
b.コメツキムシルシフェラーゼの残基15〜30、残基112〜122、残基352〜362、残基371〜384、残基393〜414もしくは残基485〜495、
c.レニラ(Renilla)ルシフェラーゼの残基2〜12、残基26〜47、残基64〜74、残基86〜116、残基147〜157、残基223〜234もしくは残基301〜311、
d.ガウシア(Gaussia)ルシフェラーゼの残基43〜53、残基63〜73、残基79〜89、残基95〜105、残基105〜115、残基109〜119、残基121〜131もしくは残基157〜168、または
e.オプロフォラス(Oplophorus)ルシフェラーゼの残基45〜55もしくは残基79〜89
に対応する領域中に存在する、請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項5】
円順列変異が、
a.ホタルルシフェラーゼの残基2〜12、残基32〜53、残基70〜88、残基102〜126、残基139〜165、残基203〜193、残基220〜247、残基262〜273、残基303〜313、残基353〜408、残基485〜495、もしくは残基535〜546、
b.コメツキムシルシフェラーゼの残基15〜30、残基112〜122、残基352〜362、残基371〜384、残基393〜414もしくは残基485〜495、
c.レニラルシフェラーゼの残基26〜47、残基64〜74、残基85〜116、残基147〜157、残基223〜234もしくは残基301〜311、
d.オプロフォラスルシフェラーゼの残基45〜55もしくは残基79〜89、または
e.ガウシアルシフェラーゼの残基43〜53、残基63〜73、残基79〜89、残基95〜105、残基105〜115、残基109〜119、残基121〜131もしくは残基157〜168
に対応する領域中に存在する、請求項2記載のポリヌクレオチド。
【請求項6】
前記変異cAMP結合部位が、変異RIIβB配列またはRIα配列を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項7】
前記置換のうちの1以上が、配列番号4を有するRIIβBの残基266、282、284、286、296、316、333、338、382、389、404または407に対応する位置に存在する、請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項8】
前記変異cAMP結合部位の前記オープンリーディングフレームが、ペプチドリンカーをコードする核酸配列と少なくとも1つの末端で隣接する、請求項1〜7のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項9】
前記ペプチドリンカーが、GSSGGSGGSGGG(配列番号41)、GSSSDSDSSAGS(配列番号42)、GSNDSSGGSEGG(配列番号43)、GSNGGFDSSEGG(配列番号44)、GSIRWSGLSGGD(配列番号45)、GSRGGSVYSEGG(配列番号46)、GSSEGSSDFGGD(配列番号47)、GSIVVSCSSEGG(配列番号48)、GSNWDSGCSREG(配列番号49)、GSNWDSGCSREC(配列番号50)、GSSGCTGDAGGS(配列番号51)、GSNWDSGCSRQC(配列番号52)、GSS/NS/D/GD/S/GS/FD/GS/GSA/EGS/G(配列番号53)、GSI/R/SR/G/EW/GSG/V/SL/Y/DS/FG/EGD/G(配列番号54)、GSI/N/SV/W/GV/D/CS/TC/GS/C/DS/AE/R/GG/EG/S(配列番号55)、GSI/SV/G/AV/GS/CG/DG/D/SS/AG/EG/EG/N(配列番号56)、GSI/N/SV/W/G/AV/D/C/GS/T/CC/GS/C/DS/AE/R/GG/EG/S(配列番号57)、GSIAGCGDAGEG(配列番号126)、GSNWDSGCSRE(配列番号127)、GSNWDSGCSREG(配列番号129)、NWDSGCSREG(配列番号130)またはIAGCGDAGEG(配列番号131)を含む、請求項8記載のポリヌクレオチド。
【請求項10】
請求項1〜10のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチド。
【請求項12】
請求項11記載のポリペプチドを含む融合タンパク質。
【請求項13】
a)請求項1〜10のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドおよび発光反応試薬を含む試料を提供すること;及び
b)混合物中の発光を検出または測定し、それによって、細胞内のcAMPの量または濃度を検出または測定すること
を含む、細胞内のサイクリックヌクレオチドの量または濃度の変化を検出する方法。
【請求項14】
a)1以上の試験薬剤、請求項1〜10のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドおよび発光反応試薬を含む試料を提供すること;及び
b)前記試料中の発光を検出または測定すること
を含む、Gタンパク質共役型受容体の1以上のモジュレーターを検出する方法。
【請求項15】
修飾ルシフェラーゼのアミノ酸配列および変異cAMP結合部位の異種アミノ酸配列を含むポリペプチドであって、1以上の置換を欠くcAMP結合部位を有する対応するルシフェラーゼと比較して、前記変異cAMP結合部位が、前記修飾ルシフェラーゼの発光シグナルを増強する1以上の置換、細胞内のcAMP量を改変する薬剤に対する前記修飾ルシフェラーゼの反応を増強する1以上の置換、野生型cAMP結合ドメインの親和性を低下させる1以上の置換またはそれらの組み合わせを含む前記ポリペプチド。
【請求項16】
前記修飾ルシフェラーゼのアミノ酸配列が、
a.甲虫ルシフェラーゼ配列、
b.コメツキムシルシフェラーゼ配列、
c.ホタルルシフェラーゼ配列、または
d.花虫類ルシフェラーゼ配列
である、請求項15記載のポリペプチド。
【請求項17】
前記置換のうちの1以上が、配列番号4を有するRIIβBの残基266、282、284、286、296、316、333、338、382、389、404または407に対応する位置に存在する、請求項15または16記載のポリペプチド。
【請求項18】
請求項15、16または17記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
【請求項19】
請求項15、16または17記載のポリペプチドを含む融合タンパク質。
【請求項20】
a)請求項15〜17のいずれか1項に記載のポリペプチドおよび発光反応試薬を含む試料を提供すること;及び
b)混合物中の発光を検出または測定し、それによって、細胞内のcAMPの量または濃度を検出または測定すること
を含む、細胞内のサイクリックヌクレオチドの量または濃度の変化を検出する方法。
【請求項21】
a)1以上の試験薬剤、請求項15〜17のいずれか1項に記載のポリペプチドおよび発光反応試薬を含む試料を提供すること;及び
b)前記試料中の発光を検出または測定すること
を含む、Gタンパク質共役型受容体の1以上のモジュレーターを検出する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【公表番号】特表2011−520466(P2011−520466A)
【公表日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−510512(P2011−510512)
【出願日】平成21年5月19日(2009.5.19)
【国際出願番号】PCT/US2009/003132
【国際公開番号】WO2009/142735
【国際公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【出願人】(593089149)プロメガ コーポレイション (57)
【氏名又は名称原語表記】Promega Corporation
【Fターム(参考)】