invitroにおけるヒト膵臓腺房細胞の増殖およびインスリン産生細胞への分化転換のための方法
本発明は、例えば、腺房細胞が、腺房細胞および肝臓細胞の特徴を示す改変細胞表現型(IP細胞)への分化転換と共に3〜4倍の増殖を受ける条件下で、細胞用培地および細胞付着表面を含む細胞培養システム中で細胞を培養することを含む、哺乳動物腺房細胞を増殖する方法に関する。本発明はまた、細胞を新規の確定された培地中で培養することを含む、in vitroにおけるこれらのIP細胞からインスリン産生細胞への形質転換方法にも関する。これらの方法を実施するための適切な培地、IP細胞の表現型を有するおよび/またはこれらの方法により産生される単離細胞、およびこの方法を実施するためのキットも開示する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、ヒト膵臓腺房細胞を、増殖および腺上皮細胞およびその後のインスリン産生細胞への分化転換を支持する条件下で培養するための、組成物および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願は、2002年5月28日に提出された仮出願第60/384,000号の利益を請求するものであり、この開示のその全体が本明細書に参照して取り込まれる。
【0003】
インスリン産生細胞を臓器ドナーから取り出し、それらをインスリン依存性I型糖尿病患者に移植することの潜在的な利点は明確である。エドモントンの臨床試験では、多くの患者が、臓器ドナー源からの無傷の島を移植した後、約2年間の間、外来的なインスリンを送達せずに生存している。しかし、現在の技術では、細胞療法のために一人の糖尿病患者に移植するために十分な数の島(約100万の島、各々約1,000個の細胞からなる)を作製するためには、2つの臓器ドナー膵臓が必要である。したがって、糖尿病分野では、移植のためのインスリン産生細胞の新しい源の同定が強調されている。収集後および移植前の島の増殖、および、骨髄に由来するかまたは膵臓に位置する前駆細胞に由来する幹様細胞からの新しい島の生成を含む、多くの手段が試みられている。これらのアプローチにより提示された試みは、長期間の培養におよぶ島の機能の維持、および、骨髄および膵臓からのインスリン産生に利用できる幹様細胞の相対的な希少性の維持に関連している。膵臓に由来する管前駆幹様細胞は、インスリン産生細胞への分化においては骨髄由来細胞よりも効率的であることが報告されており、これは膵臓微小環境に関連した多くの分化シグナルを確実に受けるその起源部位(すなわち膵臓)を反映し得る。膵臓における最も豊富な細胞型は腺房細胞であり、これは膵臓の約85%を構成する。腺房細胞は消化酵素の産生および分泌をつかさどり、島細胞のように、管細胞区画からの発達中に生じる。
【0004】
腺房細胞は、in vitroで特にストレス条件下で培養した場合、CK19、CK7、および炭酸脱水酵素(著者によりすべて管細胞のマーカーであると称されている)(例えば、Kerr−Conte、1996、特許文献1参照)、Hallら、1992)の発現により決定されたように、管細胞に似た細胞型へと「分化転換」を受けることができるという報告がある。さらに、Bouwensら(1998)は、in vivoで、膵管結紮のモデルにおいて、膵臓の結紮部分における腺房細胞は、管表現型をもつ細胞へと分化転換を受けることを示した。さらなる研究により、膵臓の結紮部分における管細胞のさらなる分化時にインスリン産生細胞を産生できることが示唆されている。腺房細胞はまた、一次培養物中では生存度が低いと報告されており、いくつかの培養条件では、1週間以内に少なくとも50%の細胞が消失する。一次管細胞は、in vitroで、いくつかの培養条件下でインスリン産生細胞へと変換されることが実証されているが(例えば、Bonner Weir、2000、特許文献2参照)、in vitroで腺房細胞から生じて分化してさらに島様細胞を産生する細胞は報告されていない。
【特許文献1】国際公開第02/29010A2号
【特許文献2】米国特許第6,011,647号明細書
【非特許文献1】Bonner-Weir, Sら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97: 7999-8004 (2000)
【非特許文献2】Bouwens, L.、Microsc. Res. Tech. 43: 332-6 (1998)
【非特許文献3】Bowens, L.ら、Diabetologia 41: 629-33 (1998)
【非特許文献4】Gmyr, V.ら、Diabetes 49: 1671-80 (2000)
【非特許文献5】Gmyr, V.ら、Cell Transplant 10: 109-21 (2001)
【非特許文献6】Gmyr, V.ら、Diabetes 49: 1671-80 (2000)
【非特許文献7】Hall, P. A.ら、J. Pathol. 166: 97-103 (1992)
【非特許文献8】Kerr-Conte, J.ら、Diabetes 45: 1108-14 (1996)
【非特許文献9】Kerr-Conte, J.ら、Transplant Proc 27: 3268 (1985)
【非特許文献10】Pattou F.ら、Bull. Acad. Natl. Med. 184: 1887-99 (2000)
【非特許文献11】Rao, MSら、Biochem Biophys Res Comm. 156: 131-6 (1988)
【非特許文献12】Rooman, Ilseら、Diabetes 51: 686-90 (2002)
【非特許文献13】Rooman, Iら、Diabetologia 43: 907-14 (2000)
【非特許文献14】Rooman, Iら、Gastroenterology 121: 940-9 (2001)
【非特許文献15】Trivedi, N.ら、Endocrinology 142: 2115-22 (2001)
【非特許文献16】Tsanadis, G.ら、Histol. Histopathol. 10: 1-10 (1995)
【非特許文献17】Wang, R. N.ら、Diabetologia 38: 1405-11 (1995)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明のシステムの開発前には、一次膵臓腺房細胞は、血清含有培地(血清の使用に伴うリスクおよび不確実性の両方から望ましくない)中、または複雑な無血清培地調合物中のいずれにおいても、インスリン産生細胞への分化は伴わずに増殖されていた。同様に、一次膵臓腺房細胞は、増殖は伴わずにインスリン産生細胞へと分化転換されており、インスリン産生表現型をもつ細胞の産生は少数であった。さらに、出発材料として腺房細胞を使用して、良好な量でインスリン産生細胞を得ることは以前には不可能であった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
したがって、豊富な膵臓腺房細胞の増殖および分化転換により、例えばインスリン産生細胞へとさらに分化できる多数の細胞を迅速に作製するための、簡単な細胞培養システムおよび方法が必要である。さらに、このような細胞を培養しインスリン産生細胞へと形質転換するための細胞培養システムおよび方法が必要である。本明細書に開示したある細胞培養システムおよび関連した方法により、インスリン産生細胞を産生することのできる少なくとも80%の中間前駆細胞を含む増殖培養物を生じる簡単な1ステップのアプローチが可能となる。第2の細胞培養システムおよび関連した方法により、これらの中間前駆細胞または他の腺上皮細胞をさらに培養して、インスリン産生細胞を得ることが可能となる。IP細胞およびインスリン産生細胞の両方が、糖尿病などの疾患の治療のための細胞をベースとした療法に有用であろう。
【0007】
本発明は、腺房細胞を、時間の経過と共に3〜4倍の細胞数の増加を起こし、培養の早期に(ex vivoで2〜3日後)腺房および管マーカーを同時発現する細胞集団を生じながら、in vitroで成功裏に培養でき、その後、腺房細胞が最終的に(ex vivoで約7〜8日後)いくつかの腺房関連遺伝子ならびにいくつかの肝臓関連遺伝子の発現により特徴づけられる改変表現型を獲得するための、組成物および方法を提供する。ex vivoで約7〜8日後にこれらの改変された細胞により発現される遺伝子には、例えば、管性サイトケラチン(CK7、CK8、CK18、およびCK19)、肝臓核因子1(HNF1)、α−1アンチトリプシン、pi−グルタチオンsトランスフェラーゼ(pi−GST)、肝臓特異的(塩基性ヘリックス・ループ・ヘリックス(bHLH)転写因子、Thy−1、CCAAT/エンハンサー結合タンパク質(C/EBP)−α、およびC/EBP−βが含まれる。これらの細胞は、あったとしてもわずかな、膵臓関連遺伝子の炭酸脱水酵素、嚢胞性線維性膜貫通調節因子(CFTR)、エラスターゼ、およびアミラーゼの発現を示す。遺伝子の「あったとしてもわずかな」発現とは、本明細書では、本明細書に記載したハイブリダイゼーションおよび免疫細胞化学的方法などの慣用的な方法の下では一般に遺伝子発現が検出不可能であるが、PCRをベースとした解析のような著しく感度の高い方法では検出できることを意味する。この型の改変細胞は、本明細書では、中間前駆(「IP」)細胞と称する。増殖/分化転換された腺房細胞(IP細胞)は、一般的な血清含有培地を使用して産生できるか、または、好ましい方法では、血清を用いずに、1つ以上の細胞外マトリックス分子(ECM)を含む表面上で、1つ以上の可溶性活性因子の存在下で産生できる。ECMは、可溶性活性因子の存在下、2次元または3次元培養システムで提示することができる。
【0008】
これらの培養物から生成されたIP細胞は、一部の医学的適用に直接的に有用であると期待される。例えば、このような細胞は、糖尿病患者にインプラントした場合に、ある条件下で、インスリン産生細胞の機能を果たすようになるという証拠がある。前記細胞はまた、創薬および毒性研究にも使用できる。
【0009】
さらに、本発明のさらなる態様によれば、IP細胞は、任意の標準的な無血清基礎培地(例えば、DMEM:HamsF12)を、BSAと、ECM、小分子および成長因子を含めた因子の組合せと共に含む無血清培地中でさらに培養することができる。5〜10日間培養した後、IP細胞はさらなるステップの分化を受けることができ、プロインスリンおよびC−ペプチドを発現する細胞凝集物の形成は最高に達する。これらの培養物を高グルコース培地で攻撃(challenge)すると、インスリンおよびC−ペプチドの培地への放出が引き起こされ、これにより、これらの培養物中での機能的な島様細胞の産生が示される。
【0010】
したがって、第1の態様において、本発明は、細胞増殖も刺激する優れた細胞付着表面、および基礎培地組成物に添加された有効量の1種または複数の可溶性活性因子、または、血清(例えばウシ胎児血清)を含む単純な培地を含む、細胞培養システムを提供する。細胞培養システムは、哺乳類上皮細胞、特にヒト上皮細胞の一次培養に特に有用である。好ましい実施形態において、細胞培養システムは、一次腺房細胞、特にヒト膵臓腺房細胞の増殖および分化転換に使用される。
【0011】
この細胞培養システムのための細胞付着表面は、2次元(例えばプレート、フラスコ、回転ボトル、ペトリ皿、ウェルなど)および3次元(例えば足場)環境の両方を含む、細胞が付着し増殖できる任意の表面である。好ましくは、表面は、少なくとも1つの型のECM、またはそのペプチド断片を含む。細胞は、いくつかの環境では、これらの表面から脱着し、自己支持凝集物を形成する場合もある。適切な断片は、ECMのアミノ酸配列の任意の部分と同一である3つ以上のアミノ酸残基の配列からなるペプチドを含む。このような断片は、当業者には既知である手段により容易に作製および試験できる。最も好ましくは、表面はコラーゲンIの層である。当分野で既知の多くの他の表面、例えば、コラーゲンVI、コラーゲンIV、ビトロネクチン、またはフィブロネクチンも適している。コラーゲンIが容易さおよび費用の点から好ましい。
【0012】
可溶性活性因子が添加される基礎培地は、上皮細胞の増殖および分化に適した任意の細胞用培地でよい。これらには、DMEM、HamsF12、MEM、M−199、およびRPMIが含まれるがこれに限定されない。このような培地の一般的な必要条件および多くの適切な例は、当業者には既知である。この基礎培地に、血清(例えばウシ胎児血清)、またはウシ血清アルブミン(BSA)などの安定化タンパク質を、有効量の可溶性活性因子と共に加える。培地は好ましくは無血清である。
【0013】
一次膵臓腺房細胞の増殖およびIP細胞への分化転換のための可溶性活性因子には、HGF受容体アクチベーターおよびEGF受容体アクチベーターなどの増殖因子が含まれる。好ましい可溶性活性因子には、EGFおよび形質転換増殖因子−α、IGF1、HGF、ベータセルリン、プロラクチン、およびガストリン1の中の1つ以上が含まれる。HGF、EGFおよび/または形質転換増殖因子−αが特に好ましい。また、IGF1とベータセルリンの組合せも好ましい。
【0014】
1つの特に好ましい実施形態において、基礎培地は、DMEMとHamsF12の1:1混合物を含む。基礎培地は、最終濃度が約4mMとなるまでのグルタミン、インスリン(約0.1〜10μg/ml、好ましくは約0.01mg/ml)、トランスフェリン(約0.5〜10μg/ml、好ましくは約0.0055mg/ml)、セレニウム(約0.25〜5.0ng/ml、好ましくは約0.0067μg/mlの亜セレン酸ナトリウム)、および上皮成長因子(EGF)(約1〜20ng/ml、好ましくは約10ng/ml)を添加することにより完成させる。この培地は、これ以後、膵臓細胞培地、すなわちPCMと称する。この基礎培地調合物に、約20%までのウシ胎児血清(または他の血清)、好ましくは約10〜約15%のウシ胎児血清、最も好ましくは約10%または約15%までのウシ胎児血清)を添加してもよく、あるいは、無血清培養環境を生じるために、血清の代わりに以下の成分を添加する:熱失活させたウシ血清アルブミン(0.1〜2%)、肝細胞増殖因子(HGF)(1〜20ng/ml)、および/または形質転換増殖因子α(TGFα)(1〜10ng/ml)。さらに、培地は、ベータセルリン(0.5〜20ng/ml)、ガストリン1(0.05〜10ng/ml)、プロラクチン(1.0〜10ng/ml)、および/またはIGF−1(5〜100ng/ml)を含んでいてもよい。特定の調合物においては、細胞の増殖および分化転換を支持するのに効果的な調合物を得るために、これらの成分をより多くまたはより少なく加えてもよい。当業者は、成分の有効量の決定には、単なる日常的な実験しか必要ないことを認識しているだろう。
【0015】
この付着表面および培地の使用により、望まれる表現型をもつ一次膵臓細胞の増殖および分化転換は非常に簡単になる。
【0016】
特に好ましい実施形態において、細胞培養システムは、コラーゲンIで被覆された組織培養表面(2次元形または3次元形で提示)と、BSA、インスリン、トランスフェリン、セレニウム、肝細胞増殖因子(HGF)、上皮成長因子(EGF)、および形質転換増殖因子α(TGFA)を含む無血清培地との組合せである。
【0017】
細胞培養システムにより、in vitroにおいて、以前の方法に比べて、接着培養のための一次膵臓上皮細胞の優れた付着が可能となり、一方で、一次膵臓培養物の上皮成分の増殖を促進すると共に、出発材料に存在する腺房細胞からIP細胞への共同性の分化転換も促進する細胞環境も作り、一方で、望ましくない線維芽細胞の出現も最小限とする。この培養システムの利点は構築しやすいこと、必要な成分が少ないこと、そして、すべての成分が容易に入手でき、必要とされる様式で容易に使用されることである。
【0018】
本発明のこの態様の成分は、キットの形態で簡便にパッケージングすることができる。キットには、例えば、1)細胞用培地、例えばDMEM、2)BSA、インスリン、トランスフェリン、セレニウム、HGF、EGF、およびTGFAを、完全培地で前記した濃度を生じるに適切な量で含む、無血清培地サプリメント;および、3)少なくとも1つのコラーゲンIで被覆された基質、例えば組織培養用の容器(例えば、少なくとも1つのコラーゲン−1で被覆された組織培養表面を有する皿(1または複数))、または培養皿または他の実験用商品で使用するためのコラーゲン−1で被覆されたインサートが含まれ得る。キットはまた、場合により、組織培養皿または他の細胞培養付属物、および、上皮細胞培養および分化を行うのに必要とされる場合がある追加の試薬を含んでいてもよい。
【0019】
足場、コラーゲンで被覆されたフラスコまたは他の容器および無血清培地からなる培養システムを、別のバイアルとしての可溶性活性因子と共にパッケージングすることができ、これは使用直前に培地に加える。活性因子の組合せを、同じ目的、例えばin vitroでの一次膵臓腺房細胞の増殖および分化を達成するために、多種多様な基礎培地に添加することができる。このような培養システムはまた、他の細胞型、特に、肝臓、膵臓、腸、前立腺、および乳房に由来するものを含む、他の臓器および組織に由来する腺上皮細胞にも有用であろう。
【0020】
コラーゲンI表面により優れた細胞付着がもたらされ(これにより初回培養中に付着する細胞数は増加し、したがって、培養効率は増強される)、一方、コラーゲンIおよび可溶性活性因子の組合せ(例えば、HGF、TGFA、およびEGF)により、時間の経過と共に連続的な細胞増殖が促進され、一次膵臓腺房細胞で以前に報告されていた数よりも細胞数は増加する。さらに、大半の細胞において、腺房細胞の増殖に、IP表現型への分化転換が伴なって生じ、この表現型は糖尿病などの疾患の処置において治療に有用な可能性のある細胞表現型である。これはコラーゲンI、HGF、TGFAおよびEGFに関連した細胞内シグナル伝達経路の収束に起因して生じるようであり、相乗的な応答が生じている。
【0021】
本発明の細胞培養システムは、以前に使用されていたシステムに比べ、予期されなかった利点を有する。コラーゲンI、IV、VI、ビトロネクチン、およびフィブロネクチンは細胞付着を増強すると期待された。しかし、培養の最初の18時間の間に等価な細胞付着を引き起こした他の細胞外マトリックス分子は、HGF/EGF/TGFAを含む無血清培地中で、時間の経過と共に一貫した細胞増殖を促進しなかった。細胞増殖およびIP細胞への分化を達成する最も効率的かつコスト効果的な方法は、コラーゲン−I表面および減量した血清(好ましくは20%未満、より好ましくは15%、10%、または5%未満、最も好ましくは2%)を含む培地を利用することである。
【0022】
本発明の別の態様は、哺乳類上皮細胞の培養法であって、前記細胞を前記の細胞培養システムに加え、それらを適切な温度および大気条件で維持することを含む。「哺乳類上皮細胞」は、サイトケラチンの発現の存在により、およびしばしば組織特異的機能(すなわち、皮膚の上皮細胞はケラチンを作り、腸の上皮細胞はムチンを作り、前立腺の上皮細胞はPSAを作る)を示唆するマーカーの存在により定義される、上皮細胞表現型をもつ組織または臓器の任意の細胞を意味する。好ましい実施形態において、細胞は、一次膵臓細胞、特にヒト膵臓細胞である。哺乳類細胞に適切な温度は、通常、約37℃の範囲であるが、細胞型に応じて幾分変化してもよい。雰囲気は通常の空気でも、または、当業者はよく知っているように、細胞の維持に適切な他の特殊なガスの混合物でもよい。膵臓腺房細胞の増殖は、培養雰囲気中の酸素圧力を21%未満に減少することにより最大限にすることができ、一方で、IP細胞への分化転換は、酸素圧力を5%より高く増加することにより増強することができる。好ましい酸素圧力の範囲は、約5%から約21%の間である。
【0023】
第2の態様において、本発明はまた、前記したような中間前駆(IP)表現型に特徴的なマーカーの発現を獲得した腺上皮細胞を、インスリン産生細胞へと形質転換するための方法および組成物を提供する。「腺上皮細胞」とは、腺の成分である上皮細胞を意味する。腺は、鍵となる分子の分泌に関連した特別な機能を有する組織であり、生体中の大半の臓器は腺性機能を有し(肝臓、腸、膵臓、前立腺、乳房、下垂体、副腎、腎臓)、これによりそれらはホルモン、消化酵素、または他の生命に必須な液体を産生および放出している。内胚葉に由来する臓器(例えば肝臓、腸、膵臓)由来の腺上皮細胞は、多くの同じ遺伝子を発現する能力を含む、多くの特徴を共有している。特に好ましいのは、膵臓に由来する腺上皮細胞、例えば腺房細胞である。本明細書に使用したような「発現する」および「発現」なる語は、一般に、標準的な免疫細胞化学法により検出可能である核酸(例えばmRNA)またはタンパク質遺伝子産物を意味する。
【0024】
この態様において、本発明は、腺上皮細胞からインスリン産生細胞への形質転換を支持および促進する、細胞付着表面および培地を含む、第2の細胞培養システムを提供する。細胞付着表面は、一次膵臓腺房細胞の増殖のための付着表面と類似しており、それと同一でもよい。容器上に被覆された平坦な表面の形態で提示されていても、または、細胞培養に適合した足場または他の表面の形態で提示されていてもよい。それは、細胞を維持または細胞増殖を支持できる任意の組成物を含んでいても、またはそれで被覆されていてもよい。好ましい実施形態において、それは、少なくとも1つのECM、例えばコラーゲンI、コラーゲンVI、コラーゲンIV、ビトロネクチン、またはフィブロネクチンを含む。特に好ましい実施形態において、細胞付着表面はコラーゲン−Iである。
【0025】
この態様において、本発明は、腺上皮細胞からインスリン産生細胞への形質転換を促進する、少なくとも1つの分化促進因子(「DPF」)を含む、さらなる培地を提供する。腺上皮細胞からインスリン産生細胞への形質転換のためのDPFは、アクチビンA、酸性FGF、塩基性FGF、C型ナトリウム利尿ペプチド(CNP)、カルシトニン遺伝子関連ペプチド、コレラ毒素Bサブユニット、デキサメタゾン、ガストリン放出ペプチド、グルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)、グルコース、IGF1、IGF2、インスリン、ラミニン、LIF、Met−エンケファリン、PDGFAA+PDGFBB、プロラクチン、ソニックヘッジホッグ、サブスタンスP、TGF−α、トロロクス(α−トコフェロール誘導体)、またはVEGFの1種または複数とすることができる。これらの23個の各々のDPFの培地中の好ましい濃度を表1に列挙する。いくつかの場合では1つのDPFで十分であるが、好ましくは2つ以上の因子を使用する。23種の因子のすべてを使用してもよい。
【0026】
【表1】
【0027】
本発明のこの態様の好ましい実施形態において、培地は、以下の分化促進DPFの少なくとも1つ(または10個すべて)を含む:C型ナトリウム利尿ペプチド(CNP)、カルシトニン遺伝子関連ペプチド、コレラ毒素Bサブユニット、デキサメタゾン、ガストリン放出ペプチド、ラミニン、Met−エンケファリン、PDGFAA+PDGFBB、ソニックヘッジホッグ、およびサブスタンスP。
【0028】
好ましい実施形態において、腺上皮細胞からインスリン産生細胞への形質転換を促進する培地は、DMEMとHamsF12の1:1混合物および表2に列挙した成分からなる。この培地は時に本明細書では「培地または培地G9」と称する。
【0029】
【表2−1】
【0030】
【表2−2】
【0031】
本発明のこの態様の成分はまた、キットの形態で簡便にパッケージングしてもよい。キットは、例えば、1)細胞用培地、例えばDMEM、HamsF12、またはその組合せ;2)BSAおよびDPFsアクチビンA、酸性FGF、塩基性FGF、C型ナトリウム利尿ペプチド(CNP)、カルシトニン遺伝子関連ペプチド、コレラ毒素Bサブユニット、デキサメタゾン、ガストリン放出ペプチド、グルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)、グルコース、IGF1、IGF2、インスリン、ラミニン、LIF、Met−エンケファリン、PDGFAA+PDGFBB、プロラクチン、ソニックヘッジホッグ、サブスタンスP、TGF−α、トロロクス(α−トコフェロール誘導体)、またはVEGF、またはこれらの成分の2つ以上の組合せを、完全培地で表1に記載した濃度を生じるのに適切な量で含む、無血清培地サプリメント;および3)少なくとも1つのコラーゲン−1で被覆された組織培養表面を有する組織培養皿(1または複数)(または培養皿または他の実験商品で使用するためのコラーゲン−1で被覆されたインサート)を含むことができる。キットはまた、場合により、組織培養皿および/または他の細胞培養付属物、ならびに、上皮細胞培養および分化を行うのに必要とされ得る追加の試薬を含むことができる。他の実施形態において、キットは、本明細書に考察した培地または培地成分のいずれかを含むことができる。
【0032】
足場、コラーゲンで被覆されたフラスコまたは他の容器および無血清基礎培地からなる培養システムは、別のバイアルとしてのDPFと共にパッケージングし得、これは使用直前に培地に添加される。DPFの組合せを、同じ目的、例えばin vitroでの一次膵臓腺房細胞の増殖および分化を達成するために、多種多様な基礎培地に添加することができる。このような培養システムはまた、他の細胞型、特に、肝臓、膵臓、腸、前立腺、および乳房に由来するものを含む、他の腺組織に由来する他の上皮細胞にも有用であろう。
【0033】
本発明はまた、腺上皮細胞を、前記の細胞培養システム中で培養することを含む、腺上皮細胞をインスリン産生細胞に変換する方法も提供する。この方法はさらに、培地を細胞培養物から取り除き、細胞培養物にグルコースを含む無血清培地を再度供給し、プロインスリン産生、C−ペプチド産生、またはインスリン放出を測定することを含むことができる。
【0034】
さらに、本発明は、細胞のサブセットがIP細胞に関連した少なくとも1つのマーカーを発現する(例えば、管性サイトケラチン(CK7、CK8、CK18およびCK19)、HNF1、α−1アンチトリプシン、pi−グルタチオンsトランスフェラーゼ(pi−GST)、肝臓特異的bHLH転写因子、Thy−1、C/EBP−αおよびC/EBP−βを含む、いくつかの腺房関連遺伝子ならびにいくつかの肝臓関連遺伝子を発現し、あったとしてもわずかな膵臓関連遺伝子炭酸脱水酵素、嚢胞性線維性膜貫通調節因子(CFTR)、エラスターゼおよびアミラーゼを発現する)ような細胞の集団に由来する、免疫検出可能なプロインスリン、インスリン、および/またはc−ペプチドを有する細胞質顆粒を含む、インスリン産生細胞の単離集団を提供する。
【0035】
「単離」細胞または細胞集団とは、本明細書では、細胞または細胞集団をその元々の環境(例えば、天然である場合には天然環境)から取り出し、天然に結合している少なくとも1つの他の成分から単離または分離することを意味する。例えば、天然に生存している宿主に存在する天然細胞は単離されていないが、天然系に同時存在するいくつかまたはすべての材料から分離された同細胞は単離されている。このような細胞または細胞集団は、細胞培養物または細胞集団の一部となることができ、このような培養物または集団はその天然環境の一部ではないという点で依然として単離されている。
【0036】
1つの好ましい実施形態において、インスリン産生細胞は、哺乳動物膵臓から得られた腺上皮細胞、例えば一次腺房細胞から得られる。
【0037】
以下の実施例に開示したデータは、新しく単離したヒト膵臓細胞から作成されている。これらの条件での一次ヒト膵臓細胞の増殖により、種々の目的のためのin vitroでのIP細胞の研究に適した、および、糖尿病などの疾患の処置のための細胞療法におけるin vivoでの移植に適した、混合上皮IP表現型を有する培養物が生じる。これらの方法により作製されたIP細胞はまた、膵臓上皮癌の研究における正常対照として、膵臓細胞生物学の研究に、および、正常膵臓上皮細胞(管性または腺房性)に対する薬物/化合物の効果を試験するために有用であり得る。さらに、細胞をさらに培養して、以下に実証したようなインスリン産生細胞を作製することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
本発明の好ましい実施形態を記載する上で、明瞭化のために専門用語を使用する。しかし、本発明は、このように選択した専門用語に限定されない。各々の専門的要素にはすべての技術的均等物が含まれており、これは同じように機能して類似の目的を達成する。ここで引用した各文献は、各々を個々に参照により取り込んだのと同様に参照により取り込まれる。
【0039】
以下の略称を使用する:
BSA:ウシ血清アルブミン
BMP 骨形成タンパク質
bHLH:塩基性ヘリックス・ループ・ヘリックス
DMEM:ダルベッコ改変イーグル培地
TGFβ1:形質転換成長因子β1
ECM:細胞外マトリックス分子;構造的支持ならびに接着に関連した細胞シグナル源を提供する組織の細胞により産生される天然に存在するタンパク質。例は、コラーゲン、ビトロネクチン、フィブロネクチン、ラミニンである。
EGF:上皮成長因子
HamsF12:Hamの栄養混合物F12
HGF:肝細胞増殖因子
HNF−1:肝核因子1
IGF1:インスリン様増殖因子1
IGF−II:インスリン様増殖因子2
IP細胞:例えば膵臓腺房細胞または肝臓細胞などの上皮細胞から誘導される中間前駆細胞であって、誘導された細胞は、いくつかの腺房関連遺伝子、ならびに、いくつかの肝臓関連遺伝子(例えばサイトケラチン(CK7、CK8、CK18,およびCK19)、HNF1、α−1アンチトリプシン、pi−グルタチオンsトランスフェラーゼ(pi−GST)、肝臓特異的bHLH転写因子、Thy−1、C/EBP−αおよびC/EBP−βを含む)を発現し、あったとしてもわずかな膵臓関連遺伝子炭酸脱水酵素、嚢胞性線維性膜貫通調節因子(CFTR)、エラスターゼおよびアミラーゼを発現する。
PDGF−A:血小板由来増殖因子α
PDGF−B:血小板由来増殖因子β
TGFA、TGF−α:形質転換成長因子α
【0040】
本明細書に使用したような「培養システム」なる語は、細胞付着表面、好ましくは細胞増殖も刺激するものと、基礎培地組成物に添加された有効量の1つ以上の因子または血清(例えばウシ血清アルブミン)を含む培地とを含む、培養物中で細胞を増殖および/または分化するためのシステムを意味することを意図する。
【0041】
本明細書で活性可溶性因子およびDPFに言及する場合、「有効量」は、単独でまたは他の含まれる因子と組み合わせて、IP細胞への増殖および分化、または適宜インスリン産生細胞への増殖および分化を促進する上で効果的である量を意味する。
【実施例】
【0042】
I.一次腺房細胞から腺上皮細胞への増殖および分化転換(培養第I相)
材料および方法:
出発材料:一次ヒト膵臓腺房細胞を、移植のための島細胞の標準的なCOBE勾配調製物からの廃棄物として回収する(Lakeら、1989)。密度勾配遠心分離後、島は、1.063密度と1.10密度の間の層として存在し、残りの細胞は、密度に基づいて勾配の底に沈降したペレットとして回収される。移植センターで細胞を回収した約48時間後に非組織培養処理ポリスチレンフラスコ中に発明者らは受け取り、RPMI+10%ウシ胎児血清中に、約200万細胞/mlの密度で懸濁する。細胞数および生存度を、光学顕微鏡観察により血球計測器でトリパンブルー排除および計数により評価する。
【0043】
出発材料の表現型評価。出発材料の調製物を、膵臓細胞を最初に収集した約24時間後に細胞ペレットとして、ホルマリン固定し、パラフィン包埋した。パラフィン切片を調製し、スライド上に置き、インスリン(Biogenex、San Ramon、CA)、CK19(Biogenex)、およびアミラーゼ(Biogenex)に対する抗体を用いて免疫細胞化学解析を行った。1試料あたり最小で3つの切片を、各マーカーを用いて評価した。すべての抗体染色を、予め希釈した市販の抗体を用いて製造業者の提言に従って実施した。CK19では、抗原回収の目的で、ペプシン酵素(Biogenex)による3分間の処理を遮断ステップより先に実施した。簡潔には、切片を、等級(graded)エタノールにより再水和し、その後、カルシウムおよびマグネシウムを含まないリン酸緩衝食塩水(PBS)中で15分間インキュベートした。一次抗体を加える30分前にタンパク質ブロッカー(Biogenex)を加えた。3回の5分間の洗浄後、ビオチン化二次抗体(Biogenex)を1:100希釈で加え、切片を30分間室温でインキュベートした。3回の5分間の洗浄後、Alexa488またはAlexa−596コンジュゲートストレプトアビジン(Molecular Probes、Eugene、Oregon)を蛍光可視化のために加えた。各スライドについて、最小で3個の200倍像を、SPOTカメラ(Diagnostic Systems,Inc.、Webster、TX)を具備したNikon蛍光顕微鏡を使用して撮影した。像を、像解析ソフトフェア(MetaMorph/Universal Imaging Corporation、Downington、PA)を使用して定量的に評価して、インスリン陽性、CK19+、およびアミラーゼ+細胞の相対的割合を決定した。インスリン+細胞は島β細胞であり、CK19+細胞は一次管細胞であり、アミラーゼ+細胞は腺房細胞である(実施例1参照)。
【0044】
(実施例1)
細胞培養条件の特徴づけ
A.無血清培地
新しく単離した一次ヒト膵臓細胞を、COBE細胞分離器からペレットとして集め、ホルマリン固定し、パラフィン包埋し、切片化し、アミラーゼ、CK19、およびインスリンに対する抗体を用いて解析した。像(図1Aおよび1B)はユニバーサルイメージングシステム(Universal Imaging Corporation)で集め、MetaMorphソフトウェアで解析した。この細胞ペレット(図1C)は、1.0%インスリン+細胞(島β細胞)、5.8%CK19+細胞(一次管細胞)、および93.2%のアミラーゼ+および非標識(腺房細胞および他の細胞型)から構成されていた。
【0045】
その後、一次ヒト膵臓細胞を、104または105細胞/cm2で組織培養物で処理したポリスチレン上に、DMEM市販培地と10%ウシ胎児血清中またはPCMと10%ウシ胎児血清中に播種した。複製培養物をトリプシン処理により3日間間隔で収集し、生存細胞(トリパンブルー排除により決定)を血球計で計測した。結果(図2に示す)により、本明細書に記載した(血清含有)培地調合物は、一次膵臓細胞の成長および維持には、市販の培地調合物より優れていることが実証される。図3は、細胞を6日間、基礎培地中、基礎培地とすべての可溶性活性因子[HGF、約1〜約20ng/ml、好ましくは約5.0ng/ml;TGFA、約1〜約10ng/ml、好ましくは約2ng/ml;ベータセルリン、約0.5〜約20ng/ml、好ましくは約10ng/ml;ガストリン1、約0.05〜約10ng/ml、好ましくは約0.06ng/ml;プロラクチン、約1.0〜約10ng/ml、好ましくは約2.4ng/ml;およびIGF1、約5〜約100ng/ml、好ましくは約5ng/ml]および基礎培地と10%血清中で増殖した結果を比較する。無血清培地調合物は、培地+血清により得られる増殖を達成/超過する。
【0046】
細胞増殖実験は、基礎培地に、わずか3つの可溶性活性因子:TGF、HGF、およびEGFを補充した以外は、実質的に前記と同様に繰り返した。図6Dは、種々の培地中で細胞を増殖した結果を比較し;図6A、6B、および6Cは、種々の培地条件下で増殖した細胞培養物の高倍率像を示す。
【0047】
B.ECM表面
一次ヒト膵臓細胞の付着は、付着した細胞の数と、コラーゲンI(1μg/cm2)、フィブロネクチン(3μg/cm2)、ラミニン(2μg/cm2)、ビトロネクチン(1μg/cm2)、マトリゲル(1μg/cm2)、ヒトECM(1μg/cm2)、またはポリ−D−リジン(3μg/cm2)からなるECM表面のパネル上に最初に播種した細胞の数を計測することにより評価した。1つの条件では、コラーゲンIV、ラミニン、およびフィブロネクチンの混合物を使用した。ECMを前記濃度で溶液中に入れ、製造業者の提示に従って1時間室温で組織培養処理ポリスチレン表面に被覆した。その後、過剰のECM溶液を除去し、表面を水中で2回濯いだ。細胞を播種する直前に、水を吸引し、その後、細胞をECM表面上に、4mMのグルタミン、1×ITSサプリメント(GIBCO51500−056)、10%ウシ胎児血清(失活、品質保障、GIBC26140−079)、および10ng/mlの上皮増殖因子(EGF)(BD4001)を含む、DMEM:HamsF12混合物(1:1)からなる増殖培地(PCM)中1×105細胞/cm2の密度で播種した。細胞を、対照として組織培養ポリスチレン表面上に播種した。18時間後、非付着細胞を洗浄して除去し、残りの付着細胞にPCMを再度供与し、7日間増殖させてその後に評価した。培養物を10%ホルマリン中で固定し、前記したようにCK19およびアミラーゼについての抗体を用いて免疫細胞化学法にかけて、表現型組成を決定した。細胞を、DAPI蛍光青核染色で対比染色し、個々の細胞核を細胞計数のために可視化した。種々の条件にかけた細胞の代謝活性はMTSアッセイにより決定した。生存細胞を、増殖中の生存細胞数または細胞毒性を決定するための比色法であるMTSアッセイ(プロメガCell Titer 96 Aqueous One Solution Cell Proliferation Assay)を使用して測定した。この解析の結果を図7に示す。
【0048】
(実施例2)
ECM表面および種々の培地成分を用いてのさらなる研究
90%を超える非島/非管細胞からなる一次膵臓細胞を、28,900細胞/ウェル(105細胞/cm2)の密度で種々の被覆表面上に撒いた。付着していない細胞を18時間後に洗浄除去し、培養物を再供与し、8日間増殖させた。培養物をホルマリン(10%)中で固定し、CK19およびアミラーゼに対する抗体を用いて表現型解析にかけた。結果を図4A〜Bに示す。コラーゲンI、IV、ラミニン、フィブロネクチン、およびマトリゲルが細胞付着および増殖に適した表面を提供するが、腺性上皮表現型(CK19+)を有する細胞集団の細胞の増加と共に腺房(アミラーゼ+)表現型の維持は、コラーゲンI上で優れていた。解析した細胞の中で50%を超える細胞がアミラーゼを発現し、解析した細胞の中で50%を超える細胞がCK19を発現し、これは、これらの実験条件において、細胞の亜集団が両方のマーカーを発現することを示唆する。
【0049】
組織培養処理ポリスチレン培養表面を、前記したようにコラーゲンIで被覆した。組織培地(PCM)は前記したように調製した。いくつかの場合では、血清を、IGF1、IGF2、ベータセルリン、HGF、EGF、およびTGF−αを含む可溶性増殖因子の組合せと共に、画分V BSA(99%純粋、熱で失活、シグマ)と交換した。最適な接種密度は、実施例3に実証したように、104ないし105細胞/cm2である。細胞を、PCM中、1.5×106細胞/フラスコでコラーゲン被覆フラスコ(150cm2)上に播種した。約18時間の付着期間後に、付着していない細胞を穏やかな吸引/濯ぎにより洗浄除去し、その後、新しい培地を再供与した。培養物を経過時間にわたって代謝アッセイ(MTT)により、およびトリプシン処理および細胞計測によりモニタリングし、細胞数を確立した(実施例3参照)。培養期間の終了時の細胞表現型を以下のように評価した:小規模の培養物を同時に96ウェルプレートに確立した。培養相の終了時に、単層細胞を10%ホルマリン中で最短1時間で固定した。ホルマリンを除去し単層を濯いだ後、培養物を、CK19、アミラーゼ、インスリン、およびビメンチン(線維芽細胞のマーカー)について前の章で記載したように免疫細胞化学法にかけた。CK19+細胞の相対的割合は、前記したように定量的像解析により決定した(実施例4参照)。ホルマリンを除去し単層を濯いだ後、培養物を、CK19およびビメンチン(線維芽細胞のマーカー)について前の章で記載したように免疫細胞化学法にかけた。細胞はアミラーゼ抗体でも染色したが、培養物中での時間の経過と共に細胞によるアミラーゼなどの消化酵素の放出により陽性結果がでなかった。CK19+細胞の相対的割合は、前記したように定量的像解析により決定した(実施例4参照)。腺房細胞による管マーカーの獲得は、培養の2〜3日中に細胞亜集団におけるCK19およびアミラーゼの同時発現を実証することにより確認された(実施例5参照)。これらの実験のために、CK19一次抗体をホルマリン固定細胞培養物と反応させ、その後、Alexa488コンジュゲートヤギ抗マウスIgG(Molecular Probes)を用いて可視化した。その後、細胞を遮断ステップ(Protein Blocker、BioGenex)にかけ、その後、第2の一次抗体(抗アミラーゼ)を適用した。アミラーゼの可視化は、Alexa594コンジュゲートヤギ抗マウスIgGの適用により行われた。像を前記のように集めた。本明細書に記載の条件で7日間の培養期間の終了時に、培養物中の細胞の65〜90%がCK19を発現し、一方、20%未満の細胞がビメンチンを発現する(実施例6参照)。CK19+細胞の相対的比率のばらつきは、おそらく、個体患者の年齢、性別、および他の独特な特徴に起因した異質性を反映している。
【0050】
(実施例3)
細胞播種の密度
一次膵臓細胞を、組織培養処理ポリスチレン皿(60mm)上に3つの密度で播種し、PCMを供与した。光学顕微鏡観察を毎日行った。24時間の時点で、皿を犠牲にし、トリパンブルーで染色して生存度を評価した。結果を表3に示す。
【0051】
【表3】
【0052】
(実施例4)
細胞を、コラーゲンI表面上で、37℃で、21%酸素中、2%BSA、2ng/mlのTGF−α、10ng/mlのEGF、および10ng/mlのHGFを含むPCM培地または基礎培地中で増殖させた。7日後、培養物を10%ホルマリンで固定し、蛍光検出を含む免疫細胞化学解析にかけ、その後、自動画像収集および解析を行った。結果を図5Aおよび5Bに示す。線維芽細胞(ビメンチン+)画分、腺上皮細胞画分(CK19+)、および非標識細胞の画分(その他)は、増殖後に類似している。このことは、血清を無血清培地と交換しても、血清含有培地中で増殖させた細胞に比べて、線維芽細胞の過剰増殖を伴うことなくCK19+細胞の画分が維持されることを示唆する。
【0053】
(実施例5)
一次膵臓腺房細胞を、数日間、10%ウシ胎児血清、0.01mg/mlのインスリン、0.0055mg/mlのトランスフェリン、0.0067μg/mlの亜セレン酸ナトリウム、10ng/mlのEGF、4mmol/リットルのグルタミンおよび抗生物質を含む、1:1比のDMEMおよびHamsF12の中で培養した。2日間培養した後(ex vivoで4日間)、腺房細胞によるアミラーゼの発現は、免疫細胞化学法により決定したところ依然として強い(図8A、上の左のパネル、赤色染色)。CK19の発現も明確である(図8B、下の左のパネル、緑の染色)。2つの像の重ね合わせ(図8C)により、高い比率の細胞において、アミラーゼおよびCK19の明確な共発現が実証され、このことは、アミラーゼ+腺房細胞からアミラーゼ+/CK19+の混合した腺房/管表現型(AD細胞)への活発な変換から判断して中間細胞が存在することを示している。培養物を毎日評価することにより(図9)、CK19発現の開始は培養の2日目頃から始まり、5日目までには培養物は大半の免疫検出可能なアミラーゼ発現を失い、CK19発現が大半となっていることが実証された。
【0054】
(実施例6)
PCM/コラーゲンI表面中で7日間増殖した後、細胞を固定し、CK19に対する抗体で染色し、核DAPIで対比染色した。全細胞数を自動像解析により評価し(図10Aの左パネル、青色で染色した細胞核)、一方、CK19+細胞を計測した(図10B、右パネル、緑で染色した細胞の細胞質)。378個の全細胞の中で、342個がCK19について免疫陽性であった(90%)。本明細書に記載の条件を使用して約7日間培養した後、腺房細胞は明確な管特徴を有し、この状態ではこれをIP細胞と称する。大半の一次ヒト培養物では、約7日後の培養物中の80%を超える細胞が、種々の組織からの管細胞と関連しているCK19のようなマーカーを発現している。
【0055】
(実施例7)
7日間の培養物の遺伝子発現解析(IP細胞)
2つの独立的なIP細胞培養物を、クロンテック8KAtlas遺伝子アレイ解析にかけた。IP細胞は、PCMおよびコラーゲンI表面を含む細胞培養システム中で一次腺房細胞を培養することにより得られた。単層培養物をPBSで2回濯ぎ、その後、0.25%トリプシンを用いてフラスコから脱着した。細胞を、水平遠心分離機中で1,200RPMで3分間遠心分離することによりペレット化した。細胞ペレットを再懸濁し、2回PBS中で洗浄し、その後、前記したように最終の遠心分離を1,200RPMで3分間行った。上清を廃棄し、穏やかに吸引して、細胞ペレットから可能な限り多くの液体を除去し、その後、ドライアイス/エタノール浴中で迅速凍結し、慣用的な技術を使用して遺伝子発現解析を実施するBDクロンテックに移行するまで−80℃で保存した。
【0056】
標識されたP−33cDNAプローブを、Atlas Pure Total RNAラベリングシステムの一部であるストレプトアビジン磁気ビーズ分離法を使用してポリA+RNAを最初に増やすことにより、各試料からの30μgの全RNAから調製した。各試料からの標識プローブを、約16時間、プラスチックヒト8K遺伝子アレイとハイブリダイズし、アレイを洗浄し、Atlasアレイプロトコルに従って画像化した。Atlas Image2.7ソフトウェアを使用して、アレイ格子鋳型を用いてアレイ像を配列し、強いシグナル過剰発生(strong signal bleedover)に起因する偽バックグラウンドシグナルまたは偽シグナルを排除した。その後、転写シグナルを、Atlas Image2.7ソフトウェアを使用してこれらの配列したアレイから抽出し、遺伝子発現の変化についてのさらなる統計学的解析を実施した。
【0057】
一般に、mRNA転写を、適切なオリゴヌクレオチドプローブへのハイブリダイゼーションによりアッセイした。いくつかの場合では、例えばCK19およびアミラーゼでは、タンパク質発現産物を、慣用的な免疫組織化学的方法を使用して測定した。選択したセットの遺伝子のこれらの細胞集団による発現の要約を表4に提示する。表4は、IP細胞で発現された遺伝子のリスト、および、一次腺房細胞および一次管細胞における発現パターンの比較を含む。「+」として同定された遺伝子産物は発現され;「++」として同定されたものは強く発現された。記号「丸にR」で指定された遺伝子産物は、再生膵臓で見出される。
【0058】
【表4−1】
【0059】
【表4−2】
【0060】
II.腺上皮細胞からインスリン産生細胞への形質転換−IP培養物の分化によるインスリン産生細胞の産生(第II培養期)
IP培養物を利用して、血清を含まないが以下の分化促進因子の組合せを含む確定された培地調合物と合わせられた、IP細胞の付着を促進するコラーゲンIなどの表面を含む、培養の第2期中に細胞を入れることによりインスリン産生細胞を生成することができる:アクチビンA、酸性FGF、塩基性FGF、C型ナトリウム利尿ペプチド(CNP)、カルシトニン遺伝子関連ペプチド、コレラ毒素Bサブユニット、デキサメタゾン、ガストリン放出ペプチド、グルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)、グルコース、IGF1、IGF2、インスリン、ラミニン、LIF、Met−エンケファリン、PDGFAA+PDGFBB、プロラクチン、ソニックヘッジホッグ、サブスタンスP、TGF−α、トロロクス(α−トコフェロール誘導体)、およびVEGF。以下の例では、基礎培地は、抗生物質および0.2%ウシ血清アルブミン(画分V、熱失活99%純粋)を含む、HamsF12およびDMEMの1:1混合物からなる。1つの例では(組合せ1)、基礎培地には、コレラ毒素B、デキサメタゾン、GRP、GLP−1、グルコース、IGF−1、IGF−2、インスリン、プロラクチン、ソニックヘッジホッグ、トロロクス、aFGF、およびbFGFが含まれていた。別の例では(組合せ2)、基礎培地には、アクチビンA、CGRP−α、CNP、グルコース、GLP−1、IGF−2、インスリン、LIF、Met−エンケファリン、プロラクチン、ソニックヘッジホッグ、aFGF、およびvEGFが含まれていた。第3の例では(組合せ3)、基礎培地には、アクチビンA、CGRP−α、コレラ毒素B、デキサメタゾン、グルコース、GLP−1、インスリン、LIF、ラミニン、Met−エンケファリン、PDGFAA/BB、ソニックヘッジホッグ、サブスタンスP、TGF−α、aFGF、およびVEGFが含まれている。これらの培地サプリメントの濃度は表1に列挙する。
【0061】
AD細胞を、1)産生される表面からの細胞をトリプシン処理し、新しい付着促進表面上に約5×104細胞/cm2で再分布することにより、または、2)培地を取り出し、PBS中で2回洗浄して古い培地の痕跡を除去し、培養物に、分化促進因子を含む新しい培地(前記)を再供給することにより培養物に入れた。細胞を4〜10日間37℃で21%酸素で培養する。5日後に、培地の半分を除去し、分化促進因子を含む等しい容量の新しい培地と交換する。
【0062】
分化培養後のIP細胞の表現型解析
前記した分化条件で培養したIP細胞の形態学的評価を光学顕微鏡によりとった(以下の実施例8を参照)。これらの培養物を含む細胞の細胞表現型は、ビタミン、プロインスリン、C−ペプチド、MUC−1、およびCK19に対するモノクローナル抗体を使用して前記のように免疫細胞化学法により評価した(以下の実施例10参照)。簡潔には、培養物を1時間室温で10%ホルマリンで固定し、その後、PBSで洗浄し、免疫細胞化学プロトコルにかけた(以下の実施例9を参照)。
【0063】
分化培養後のIP細胞の機能的解析
凝集した細胞クラスターがインスリンおよびC−ペプチドを放出する能力は、以下のように培養細胞をグルコース攻撃にかけることにより評価した。分化培地中で7〜10日間培養しておいた細胞を3回PBS中で洗浄し、その後、1)5mMグルコースを含む基礎培地(前記)、または2)22mMグルコースを含む基礎培地を再度投入した。18時間後、細胞コンディショニングした培地を集め、インスリンおよびC−ペプチド放出についてELISA解析にかけた(Diagnostic Systems Laboratories(DSL))。ELISAは、製造業者の明細書に従って標準的な範囲アッセイ手順を使用して実施した。プレートをアッセイ中に振とう機でインキュベートし、結果をTecan分光測光プレート解読機で解読した。1ウェルあたりのインスリンまたはC−ペプチドの全ngを、5mMグルコース培地および22mMグルコース培地の両方における、各培地条件について計算した(実施例10を参照)。
【0064】
(実施例8)
膵臓腺房細胞を、基礎培地+ITS+血清(10%)中で1週間培養し、その後、トリプシン処理し(EDTAを含まない0.25%トリプシンで10分間37℃で処理)、新しいコラーゲン−1で被覆した表面に移し、列挙した23個すべてのDFPを含む培地中に入れた。3〜5日間の期間かけて、細胞は容易に、光学顕微鏡により明確に観察可能な3次元のさやのような構造を形成した(図11)。いくつかのより大きなさやが、培養物中で4〜6日間の後に培養表面から脱着し、トリパンブルー排除により決定したところ生存したままであった。さやのような構造は、インスリン産生細胞の凝集であると推定され、以下に記載のようにさらなる解析にかけた。
【0065】
(実施例9)
前の実施例に記載したのと同じような様式で生成したさやのような構造を、10%ホルマリン中で固定し、最初にCK19モノクローナル抗体を用いて、その後、前記したように、C−ペプチドモノクローナル抗体を用いて免疫細胞化学解析にかけた。図12Aは、細胞の群を示し(DAPI染色核は青い)、その中のいくつかはCK19に免疫陽性である(緑染色)。図12Bは、同じ細胞群を示し、その中の多くはC−ペプチドに陽性であり、これは、細胞内で合成されたプロインスリン分子が切断されて成熟インスリンを生じた場合に産生され;C−ペプチド染色細胞は赤く、典型的には細胞質の顆粒が染色されている。図12Cは、より高倍率の重ね合わせ像を示し、これは小さな細胞のサブセットにおける、CK19およびC−ペプチドの共局在を実証している。共染色細胞は、重ね合わせ像では黄色−オレンジに見える。
【0066】
(実施例10)
基礎培地(陰性対照)または分化促進培地の組合せ1、2、および3中で培養した細胞を、インスリンおよびC−ペプチドを培地へ放出する能力について評価した。さらに、漸増濃度のグルコースにより、より多くの量のインスリンおよびC−ペプチドの放出がもたらされるかどうかを評価し、これにより、島のような機能性が示された。最初に、細胞を、1週間、基礎培地+EGF(10ng/ml)+ITS+10%ウシ胎児血清(PCM)中で培養した。その後、細胞を、洗浄および培地交換(継代培養せず)、または洗浄、トリプシン処理/脱着、再播種、および培地交換にかけた。複製培養物に、基礎培地(無血清)、新しいPCM、または、分化促進培地の3つの組合せの1つ(すべて無血清)を再投入した。10日後、分化培地を除去し、培養物を3回PBSで洗浄し、その後、5mMグルコースまたは22mMグルコース(最終濃度)を含む無血清培地を再投入した。18時間後、コンディショニングされた培地を集め、インスリンまたはC−ペプチドに対する抗体(DSL laboratories)を用いてELISA解析にかけた。図13A、13B、および13Cは、それぞれ、非継代培養細胞によるインスリン放出、および、グルコース攻撃に応答したインスリン放出およびC−ペプチド放出を示す。いくつかの培養物がインスリンを含み、細胞は培地からインスリンを取り込むことができるので、C−ペプチドの産生は、細胞がプロインスリンの合成およびプロセシングから新規にインスリンを合成しているという重要な情報である。さらに、インスリンおよびC−ペプチドの産生は、グルコース濃度の増加と共に大半の場合には増加し、このことは、これらの培養物中における細胞の島のような機能を示唆する。インスリンまたはC−ペプチドは、DPFをまったく含まない基礎培地中ではほとんど産生されないことに注意する。
【0067】
(実施例11)
インスリンの量およびDNAの量の両方を、酵素的脱着および継代培養を伴うまたは伴わない分化培養にかけた、IP細胞において測定した。培養は、前の章で記載したように正確に実施した。DNAを標準的なPicogreenアッセイ(Molecular Probes)を使用して測定し、一方、インスリンはELISAアッセイにより測定した。インスリンの全ngを、試料中のDNAの全μgで割り、これによりインスリン:DNAの比の値を出し、存在するインスリンの量と存在する細胞数(DNA含量を反映)の比を計算した。結果を図14に示す。各々の分化培地組合せにおいて、インスリン:DNAの比は、基礎培地に比べて増加しており、このことから、DPFを含まずに培養した場合に比べて、DPFの存在下の方が細胞あたり、より多くのインスリンが産生されることが示唆される。さらに、インスリン:DNA比は、グルコース攻撃時に(22mMグルコース対5mM)いくつかの条件ではわずかに増加し、このことから、細胞は、より多くの量のインスリンを放出することによりグルコースに応答することが示唆される。
【0068】
(実施例12)
前の方法により得られたインスリン産生細胞を、前記のように遺伝子発現解析にかけた。表5は、最も多く発現された遺伝子のリスト、クロンテックatlas8K遺伝子アレイにおけるその位置、および、これらの遺伝子の相対的発現(標準化後)を含む。表5は付録1として本明細書に添付する。
【0069】
(実施例13)
一次ヒト膵臓細胞を、コラーゲン−1表面上でPCM中に0.5×105細胞/cm2で播種し、7日間増殖した。インスリンを、以下のように、1日目、7日目、および10日目に測定した:増殖培地を除去し、ウェルを3回リン酸緩衝食塩水で洗浄した。1時間37℃で5mMグルコースを含みインスリンを含まない基礎培地中でプレインキュベートした後、培地を除去し、1)5mMグルコースを含む基礎培地(インスリンを含まない)、または2)22mMグルコースを含む基礎培地(インスリンを含まない)と交換した。インスリンを、細胞コンディショニング培地中で18時間後に37℃で測定した。7日間培養した後、PCM培地を、1)新しいPCM、2)無血清基礎培地、3)23のすべての分化因子を含む無血清基礎培地、4)無血清組合せ1、または5)無血清組合せ2と交換した。結果を図15に示す。3日間分化因子に曝露した後、インスリン放出の増加が、分化因子の存在下で認められる。1日目の結果は、出発材料中における有意な数のインスリン産生細胞の存在について議論しており、一次培養物における腺房細胞からのインスリン産生細胞の新規産生を実証している。10日間の終了時に、グルコース攻撃に応答したインスリン放出は、PCMまたは基礎培地中よりもDFP培地中の方がはるかに高く、このことは、DFPが、腺上皮細胞からインスリン産生細胞への形質転換に対して奏功するという刺激効果を確証するということが図からわかる。
【0070】
(実施例14)
ヒト膵臓腺房細胞を、コラーゲンI表面上でPCM中で1日目から7日目まで培養し、これにより、7日目にはIP細胞の培養物が産生する。7日目に、IP細胞を洗浄し、PCM培地を、表2に列挙した30個の因子を含むG09分化培地と交換した。各時点で(1、7、10、および14日目)、培養物を3回PBSで洗浄し、その後、培養物を、5mMまたは22mMグルコースを含む、DMEMとHAMsF12の1:1混合物で攻撃することによりインスリン放出を測定した。18時間グルコースに曝露した後、上清を集め、インスリンをELISAにより測定した。結果を図15aに示す。
【0071】
(実施例15)
III.増殖させ、IP細胞へと分化させ、その後、インスリン産生細胞へとさらに分化させる、一次ヒト腺房細胞のいくつかの時点における発現研究
3つの独立した一次ヒト膵臓腺房細胞の試料を播種し、前記のように増殖した。0日目から8日目まで、細胞は、PCM中で104細胞/cm2で播種されたコラーゲンI表面上にあった。8日目、培地をPCMから、表2に示した活性因子を有する培地と交換した。細胞に、8日目から16日目までにG09(50%の培地を交換)を2回投入した。細胞は、培養プロセス全体を通じて表面上に留まった。培養物を最初に撒いた3日後に(活発に分化転換している腺房細胞)、撒いた8日後(IP細胞)、および撒いた16日後(インスリン産生細胞と推定)に収集し、実施例7に記載のように、遺伝子発現解析にかけた。mRNA発現データは、クロンテックの12Kマイクロアレイを用いて得られた。
【0072】
簡潔には、増殖培地を培養フラスコから取り出し、溶解溶液を細胞層上でピペッティングすることにより、約2分間、トリゾールLS(Invitrogen)カオトロープ/フェノール試薬中で細胞を溶解した。9mlの溶解溶液あたり、3mlのRNAse非含有水をOak Ridge遠心チューブ中に加えた。その後、2.4mlのクロロホルムを加え、溶液を激しく1分間ボルテックスにかけた。その後、水相および有機相を、4℃での遠心分離により分離し、RNAを含む上の水相を取り出し、清潔なPETチューブに移した。RNAをイソプロパノール沈降により沈降させ、70%エタノールで洗浄し、200μlのRNAse非含有水中に再度溶解した。カオトロープ溶解試薬を直ちにRNAに加え、DNAse消化ステップを含むキアゲンスピンカラム法を使用してさらに精製した。精製RNAは最終的に、80μlのRNAse非含有水に溶出し、−80℃で保存した。
【0073】
Atlas Pure Total RNAラベリングシステムの一部であるストレプトアビジン磁気ビーズ分離法を使用してポリA+RNAを最初に富化することにより、各試料からの30μgの全RNAから標識P−33cDNAプローブを調製した。各試料からの標識プローブを、約16時間、プラスチックヒト12K遺伝子アレイとハイブリダイズさせ、アレイを洗浄し、Atlasアレイプロトコルに従って画像化した。Atlas image2.7ソフトウェアを使用して、アレイ格子鋳型を用いてアレイ像を配列し、強いシグナル過剰発生に起因する偽のバックグラウンドシグナルまたは偽シグナルを排除した。その後、転写シグナルを、Atlas Image2.7ソフトウェアを使用してこれらの配列したアレイから抽出し、遺伝子発現の変化についてのさらなる統計学的解析を実施した。
【0074】
生発現データを以下のように解析した:1)我々は、3つの任意の条件/時点で発現されなかった遺伝子を除外した;2)我々は、アレイ間の差異および試料処理、ハイブリダイゼーションなどにおけるばらつきの効果を除去するために、互いに対してすべてのマイクロアレイを標準化した;3)我々は、条件/時点間の統計学的に有意な差異を示す遺伝子を同定した;そして、4)我々は、試験の設計および表現型の変化に矛盾しない様式で、その一時的パターンに基づいて遺伝子を群にまとめた。
【0075】
表6は、上の解析により同定された遺伝子についての発現データを示す。この表は付録2として本明細書に添付する。これらの同定された遺伝子は、3日後および8日後の両方で高いレベルで発現されているか、または、その発現は、3日後から8日後まで実質的に増加していた。表はまた、16日後におけるこれらの遺伝子の発現レベル、および、3つのすべての条件/時点における平均発現を示す。表はまた、種々の時点における発現比を示す:「I対A」は、推定インスリン産生細胞(16日後)対腺房(8日後)細胞の発現比であり;「Int対A」は、IP細胞(8日後)細胞対腺房細胞(3日後)の比である。
【0076】
表6に示したデータを、それらを17の中の1つの「クラス」に群にまとめることによりさらに解析し、その特徴を表に要約する。これらの17クラスの特徴のグラフ表示を図16に提示する。
【0077】
表6の8日後の時点のデータも、これらの細胞における8日後に発現された遺伝子が、(1)肝臓および膵臓で通常発現される遺伝子;(2)膵臓関連遺伝子;(3)肝臓関連遺伝子;または(4)前駆体関連遺伝子のクラスに属するかどうかに関してグループ分けした。結果を表7に示す。
【0078】
【表5−1】
【0079】
【表5−2】
【0080】
理解されるように、8日目にはIP細胞は、膵臓腺房細胞に一致する遺伝子をもはや発現しておらず、膵管細胞に特異的な遺伝子の相補体も発現していなかった。IP細胞は、インスリン、ソマトスタチン、および膵ポリペプチドを含む、膵臓島に関連したいくつかのマーカーを低いレベルで発現しており、このことは、集団中の少なくともいくつかの細胞は、膵臓島の内分泌遺伝子を発現するのに適合していることを示唆する。
【0081】
驚くべきことに、IP細胞はまた、いくつかの肝臓特異的転写因子(例えばC/EBPα、C−EBP−β)、および、肝臓「卵」幹細胞に関連したマーカーである、低いレベルのThy−1を含む、成熟および発達中の肝臓の他のマーカーを発現していた。このことから、分化中の細胞は単純に膵臓腺房から膵管に移行しているのではなく、肝臓特徴および膵臓特徴の両方をもつ細胞へと発達し、これらの細胞型の1つの任意の単一の遺伝子発現プロファイルにはあてはまらないことが示唆される。この実施例で産生された細胞は、銅欠乏食を供与したげっ歯類の膵臓から出現した細胞に似ている(例えばRaoら、1988参照)。このような動物の膵臓は、膵炎の急性期を通り、その後、肝臓の「ヘパチゼーション」を受ける(膵臓遺伝子よりもむしろ肝臓遺伝子を発現し始める細胞を意味する)。肝臓に似た細胞はまた、ヒト胎児膵臓でも報告されている(Tsanadisら、1995)。本発明の方法により産生された単離細胞(例えば、本発明の方法により一次腺房細胞または他の型の内胚葉細胞または前駆細胞を増殖することにより)は、卵細胞または銅欠乏食を与えたげっ歯類の膵臓から単離された細胞のような、IP細胞の特徴のいくつかを有し得る天然細胞とは区別できる。
【0082】
これらのIP細胞の特徴を有する細胞は、例えば、糖尿病の処置における治療アプローチに有用である場合がある。さらに、この実施例における細胞は膵臓に由来しているが、他の上皮組織、またはおそらくはさらには任意の内胚葉に由来する組織も、追加的な細胞の源となることができ、これは類似の表現型を有する細胞へと分化することができる。適切な組織型には、例えば、肝臓または腸が含まれる。これらのIP細胞は、膵臓、肝臓、腸、および神経組織に関連した遺伝子を発現する。例えば、それらは、膵臓、肝臓、および腸の管細胞に関連した共通のマーカーである、ムチン、CK19、およびCK7を発現する。したがって、これらのIP細胞に見られる遺伝子発現パターンは、インスリン産生細胞を作成する目的でこれらの各組織から誘導された細胞の予測的な目安として機能しうる。さらに、IP細胞は、適切な条件下で、膵臓島細胞だけでなく、肝細胞または任意の内胚葉由来組織も生じる。
【0083】
一部を上で引用した以下の文献の開示は本発明に関する:
特許文献1(Kerr−Conte);
非特許文献1;
非特許文献2;
非特許文献3;
非特許文献4;
非特許文献5;
非特許文献6;
非特許文献7;
非特許文献8;
非特許文献9;
非特許文献10;
非特許文献11;
非特許文献12;
非特許文献13;
非特許文献14;
非特許文献15;
非特許文献16;
非特許文献17;
特許文献2(Ammon Peck)。
【0084】
本明細書に説明および考察した実施形態は、本発明を作成および使用する上で発明者に知られた最善の方法を単に当業者に教示するためものであり、本発明の範囲を限定するものとは捉えるべきではない。本発明の例示した実施形態は改変または変更することができ、本発明から逸脱することなく、前記の教示に照らして当業者には理解されるように、要素を加えたりまたは削除したりすることができる。それ故、特許請求の範囲およびその均等物内で、本発明は、具体的に記載した以外の方法でも実施できることを理解すべきである。
【0085】
前記および図面に引用したすべての出願、特許および刊行物の全開示はその全体を参照することにより取り込まれる。
【0086】
【表6−1】
【0087】
【表6−2】
【0088】
【表6−3】
【0089】
【表6−4】
【0090】
【表6−5】
【0091】
【表6−6】
【0092】
【表7−1】
【0093】
【表7−2】
【0094】
【表7−3】
【0095】
【表7−4】
【0096】
【表7−5】
【0097】
【表7−6】
【0098】
【表7−7】
【0099】
【表7−8】
【0100】
【表7−9】
【0101】
【表7−10】
【0102】
【表7−11】
【0103】
【表7−12】
【0104】
【表7−13】
【0105】
【表7−14】
【0106】
【表7−15】
【0107】
【表7−16】
【0108】
【表7−17】
【0109】
【表7−18】
【0110】
【表7−19】
【0111】
【表7−20】
【0112】
【表7−21】
【0113】
【表7−22】
【0114】
【表7−23】
【0115】
【表7−24】
【0116】
【表7−25】
【0117】
【表7−26】
【0118】
【表7−27】
【0119】
【表7−28】
【0120】
【表7−29】
【0121】
【表7−30】
【0122】
【表7−31】
【0123】
【表7−32】
【0124】
【表7−33】
【0125】
【表7−34】
【0126】
【表7−35】
【0127】
【表7−36】
【0128】
【表7−37】
【0129】
【表7−38】
【0130】
【表7−39】
【0131】
【表7−40】
【0132】
【表7−41】
【0133】
【表7−42】
【0134】
【表7−43】
【0135】
【表7−44】
【0136】
【表7−45】
【0137】
【表7−46】
【0138】
【表7−47】
【0139】
【表7−48】
【0140】
【表7−49】
【0141】
【表7−50】
【0142】
【表7−51】
【0143】
【表7−52】
【0144】
【表7−53】
【0145】
【表7−54】
【0146】
【表7−55】
【0147】
【表7−56】
【0148】
【表7−57】
【0149】
【表7−58】
【0150】
【表7−59】
【0151】
【表7−60】
【0152】
【表7−61】
【0153】
【表7−62】
【0154】
【表7−63】
【0155】
【表7−64】
【0156】
【表7−65】
【0157】
【表7−66】
【0158】
【表7−67】
【0159】
【表7−68】
【0160】
【表7−69】
【0161】
【表7−70】
【0162】
【表7−71】
【0163】
【表7−72】
【0164】
【表7−73】
【0165】
【表7−74】
【0166】
【表7−75】
【0167】
【表7−76】
【0168】
【表7−77】
【0169】
【表7−78】
【0170】
【表7−79】
【0171】
【表7−80】
【0172】
【表7−81】
【0173】
【表7−82】
【0174】
【表7−83】
【0175】
【表7−84】
【0176】
【表7−85】
【0177】
【表7−86】
【0178】
【表7−87】
【0179】
【表7−88】
【0180】
【表7−89】
【0181】
【表7−90】
【0182】
【表7−91】
【0183】
【表7−92】
【0184】
【表7−93】
【0185】
【表7−94】
【0186】
【表7−95】
【図面の簡単な説明】
【0187】
【図1A】アミラーゼ(図1A)に対する抗体で出発材料を処理した後の顕微鏡像を示す図である。
【図1B】インスリン(図1B)に対する抗体で出発材料を処理した後の顕微鏡像を示す図である。
【図1C】CK19(図1C)に対する抗体で出発材料を処理した後の顕微鏡像を示す図である。
【図1D】新しく単離した一次ヒト膵臓細胞の細胞ペレットの組成(図1D)を示す図である。
【図2A】市販の培地(血清を含む)または血清を含む記載の膵臓細胞培地(PCM)中で増殖された一次ヒト膵臓培養物から作成した増殖曲線を示す図である。
【図2B】市販の培地(血清を含む)または血清を含む記載の膵臓細胞培地(PCM)中で増殖された一次ヒト膵臓培養物から作成した増殖曲線を示す図である。
【図3】記載の基礎培地組成物vs基礎培地+可溶性成長因子(無血清調合)vs基礎培地+ウシ胎児血清中の細胞増殖の比較を示す図である。
【図4A】増殖後の全細胞数(図4A)に対する異なる培養表面の効果を示す図である。
【図4B】増殖後の細胞表現型(図4B)に対する異なる培養表面の効果を示す図である。
【図5A】すべての可溶性の活性因子を含む、血清含有(5A)培地中での増殖後の細胞表現型の比較を示す図である。
【図5B】すべての可溶性の活性因子を含む、無血清(5B)培地中での増殖後の細胞表現型の比較を示す図である。
【図6】3つの可溶性活性因子であるHGF、EGFおよびTGFAを補充した無血清培地を含む、種々の条件で増殖した細胞培養物の高倍率像を示す図である。上皮形態に注意。
【図7】経過時間による代謝活性アッセイにより決定される、ECMで被覆した表面上でのIP細胞の増殖の実証を示す図である。コラーゲンI表面を、本明細書に記載の培地調合と組み合わせた場合のより優れた増殖に注意し、マトリゲルと市販の血清を有する培地の組合せよりも優れた結果が得られている。
【図8A】図8A(上の左)は、2日間培養した後の腺房細胞によるアミラーゼの発現を示す(赤い染色)。
【図8B】図8B(下の左)はCK19の発現を示す(緑の染色)。
【図8C】図8Cは2つの像の重ね合わせを示す図であり、多くの比率の細胞で共発現がなされている(黄色)。
【図9A】5日間におよぶ培養物中での一次腺房細胞の変化している表現型を示す図である。アミラーゼは赤であり、CK19は緑である。2日後および3日後の黄色の出現に注意(アミラーゼ+CK19)。
【図9B】5日間におよぶ培養物中での一次腺房細胞の変化している表現型を示す図である。アミラーゼは赤であり、CK19は緑である。2日後および3日後の黄色の出現に注意(アミラーゼ+CK19)。
【図9C】5日間におよぶ培養物中での一次腺房細胞の変化している表現型を示す図である。アミラーゼは赤であり、CK19は緑である。2日後および3日後の黄色の出現に注意(アミラーゼ+CK19)。
【図9D】5日間におよぶ培養物中での一次腺房細胞の変化している表現型を示す図である。アミラーゼは赤であり、CK19は緑である。2日後および3日後の黄色の出現に注意(アミラーゼ+CK19)。
【図10A】コラーゲンIで被覆された表面上での血清含有培地中で増殖した一次ヒト膵臓細胞を示す図である。像を解析して、全細胞(図10A、青い核)を決定した。
【図10B】コラーゲンIで被覆された表面上での血清含有培地中で増殖した一次ヒト膵臓細胞を示す図である。像を解析して、全陽性細胞(図10B、青い核が、CK19について染色している緑により囲まれている)を決定した。
【図11】すべてのDPF(アクチビンA、0.5ng/ml;酸性FGF、2.5ng/ml;塩基性FGF、C型ナトリウム利尿ペプチド(CNP)、0.11μg/ml;カルシトニン遺伝子関連ペプチド、0.19μg/ml;コレラ毒素Bサブユニット、12.5ng/ml;デキサメタゾン、0.002μg/ml;ガストリン放出ペプチド、0.143μg/ml;グルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)、0.033μg/ml;グルコース、1.08μg/ml;IGF1、0.0025μg/ml;IGF2、0.0025μg/ml;インスリン、9.5μg/ml;ラミニン、2.25μg/ml;LIF、0.0025μg/ml;Met−エンケファリン、0.0030μg/ml;PDGFAA+PDGFBB(0.0050μg/ml:0.0025μg/mlのPDGFAA+0.0025μg/mlのPDGFBB);プロラクチン、0.0012μg/ml;ソニックヘッジホッグ、0.025μg/ml;サブスタンスP、5.0μg/ml;TGF−α、0.0010μg/ml;トロロクス(α−トコフェロール誘導体)、0.625μg/ml;およびVEGF、0.0025μg/ml)を含むコラーゲンI表面上で培養された膵臓腺房細胞の光学顕微鏡(200倍)外観を示す図である。
【図12A】CK19抗体(緑)を用いての免疫細胞化学解析を示す図である。
【図12B】C−ペプチド抗体(赤)を用いての免疫細胞化学解析を示す図である。
【図12C】CK19およびC−ペプチド(オレンジ)の共局在を実証した重ね合わせ像を示す図である。青い部分はDAPI染色核である。
【図13A】成長および分化プロセス中に脱着および再配置(継代培養)していないIP細胞における、グルコース攻撃時のインスリン放出を示す図である。
【図13B】実施例10に従って継代培養しておいたIP細胞における、グルコース攻撃時のインスリン放出を示す図である。
【図13C】実施例10に従って継代培養しておかなかったIP細胞における、グルコース攻撃時のC−ペプチド放出を示す図である。
【図14】実施例11に記載のように、DFP培地の組合せ1、2、および3で処理した継代培養および非継代培養細胞におけるインスリン/DNAの比を示す図である。
【図15】実施例13に記載のように、PCMおよびDPF培地中での10日間の培養にわたる、基礎レベルグルコース(5mm)およびグルコース攻撃(22mm)に応答したインスリン放出を示す図である。
【図15A】実施例14に詳述したように、PCMおよびDMG9培地中での14日間の培養にわたる、基礎レベルグルコース(5mm)およびグルコース攻撃(22mm)に応答したインスリン放出を示す図である。
【図16】実施例14に詳述したように、表の最後の列に示したように、表6に示した17クラスの遺伝子の特徴のグラフ表示である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、ヒト膵臓腺房細胞を、増殖および腺上皮細胞およびその後のインスリン産生細胞への分化転換を支持する条件下で培養するための、組成物および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願は、2002年5月28日に提出された仮出願第60/384,000号の利益を請求するものであり、この開示のその全体が本明細書に参照して取り込まれる。
【0003】
インスリン産生細胞を臓器ドナーから取り出し、それらをインスリン依存性I型糖尿病患者に移植することの潜在的な利点は明確である。エドモントンの臨床試験では、多くの患者が、臓器ドナー源からの無傷の島を移植した後、約2年間の間、外来的なインスリンを送達せずに生存している。しかし、現在の技術では、細胞療法のために一人の糖尿病患者に移植するために十分な数の島(約100万の島、各々約1,000個の細胞からなる)を作製するためには、2つの臓器ドナー膵臓が必要である。したがって、糖尿病分野では、移植のためのインスリン産生細胞の新しい源の同定が強調されている。収集後および移植前の島の増殖、および、骨髄に由来するかまたは膵臓に位置する前駆細胞に由来する幹様細胞からの新しい島の生成を含む、多くの手段が試みられている。これらのアプローチにより提示された試みは、長期間の培養におよぶ島の機能の維持、および、骨髄および膵臓からのインスリン産生に利用できる幹様細胞の相対的な希少性の維持に関連している。膵臓に由来する管前駆幹様細胞は、インスリン産生細胞への分化においては骨髄由来細胞よりも効率的であることが報告されており、これは膵臓微小環境に関連した多くの分化シグナルを確実に受けるその起源部位(すなわち膵臓)を反映し得る。膵臓における最も豊富な細胞型は腺房細胞であり、これは膵臓の約85%を構成する。腺房細胞は消化酵素の産生および分泌をつかさどり、島細胞のように、管細胞区画からの発達中に生じる。
【0004】
腺房細胞は、in vitroで特にストレス条件下で培養した場合、CK19、CK7、および炭酸脱水酵素(著者によりすべて管細胞のマーカーであると称されている)(例えば、Kerr−Conte、1996、特許文献1参照)、Hallら、1992)の発現により決定されたように、管細胞に似た細胞型へと「分化転換」を受けることができるという報告がある。さらに、Bouwensら(1998)は、in vivoで、膵管結紮のモデルにおいて、膵臓の結紮部分における腺房細胞は、管表現型をもつ細胞へと分化転換を受けることを示した。さらなる研究により、膵臓の結紮部分における管細胞のさらなる分化時にインスリン産生細胞を産生できることが示唆されている。腺房細胞はまた、一次培養物中では生存度が低いと報告されており、いくつかの培養条件では、1週間以内に少なくとも50%の細胞が消失する。一次管細胞は、in vitroで、いくつかの培養条件下でインスリン産生細胞へと変換されることが実証されているが(例えば、Bonner Weir、2000、特許文献2参照)、in vitroで腺房細胞から生じて分化してさらに島様細胞を産生する細胞は報告されていない。
【特許文献1】国際公開第02/29010A2号
【特許文献2】米国特許第6,011,647号明細書
【非特許文献1】Bonner-Weir, Sら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97: 7999-8004 (2000)
【非特許文献2】Bouwens, L.、Microsc. Res. Tech. 43: 332-6 (1998)
【非特許文献3】Bowens, L.ら、Diabetologia 41: 629-33 (1998)
【非特許文献4】Gmyr, V.ら、Diabetes 49: 1671-80 (2000)
【非特許文献5】Gmyr, V.ら、Cell Transplant 10: 109-21 (2001)
【非特許文献6】Gmyr, V.ら、Diabetes 49: 1671-80 (2000)
【非特許文献7】Hall, P. A.ら、J. Pathol. 166: 97-103 (1992)
【非特許文献8】Kerr-Conte, J.ら、Diabetes 45: 1108-14 (1996)
【非特許文献9】Kerr-Conte, J.ら、Transplant Proc 27: 3268 (1985)
【非特許文献10】Pattou F.ら、Bull. Acad. Natl. Med. 184: 1887-99 (2000)
【非特許文献11】Rao, MSら、Biochem Biophys Res Comm. 156: 131-6 (1988)
【非特許文献12】Rooman, Ilseら、Diabetes 51: 686-90 (2002)
【非特許文献13】Rooman, Iら、Diabetologia 43: 907-14 (2000)
【非特許文献14】Rooman, Iら、Gastroenterology 121: 940-9 (2001)
【非特許文献15】Trivedi, N.ら、Endocrinology 142: 2115-22 (2001)
【非特許文献16】Tsanadis, G.ら、Histol. Histopathol. 10: 1-10 (1995)
【非特許文献17】Wang, R. N.ら、Diabetologia 38: 1405-11 (1995)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明のシステムの開発前には、一次膵臓腺房細胞は、血清含有培地(血清の使用に伴うリスクおよび不確実性の両方から望ましくない)中、または複雑な無血清培地調合物中のいずれにおいても、インスリン産生細胞への分化は伴わずに増殖されていた。同様に、一次膵臓腺房細胞は、増殖は伴わずにインスリン産生細胞へと分化転換されており、インスリン産生表現型をもつ細胞の産生は少数であった。さらに、出発材料として腺房細胞を使用して、良好な量でインスリン産生細胞を得ることは以前には不可能であった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
したがって、豊富な膵臓腺房細胞の増殖および分化転換により、例えばインスリン産生細胞へとさらに分化できる多数の細胞を迅速に作製するための、簡単な細胞培養システムおよび方法が必要である。さらに、このような細胞を培養しインスリン産生細胞へと形質転換するための細胞培養システムおよび方法が必要である。本明細書に開示したある細胞培養システムおよび関連した方法により、インスリン産生細胞を産生することのできる少なくとも80%の中間前駆細胞を含む増殖培養物を生じる簡単な1ステップのアプローチが可能となる。第2の細胞培養システムおよび関連した方法により、これらの中間前駆細胞または他の腺上皮細胞をさらに培養して、インスリン産生細胞を得ることが可能となる。IP細胞およびインスリン産生細胞の両方が、糖尿病などの疾患の治療のための細胞をベースとした療法に有用であろう。
【0007】
本発明は、腺房細胞を、時間の経過と共に3〜4倍の細胞数の増加を起こし、培養の早期に(ex vivoで2〜3日後)腺房および管マーカーを同時発現する細胞集団を生じながら、in vitroで成功裏に培養でき、その後、腺房細胞が最終的に(ex vivoで約7〜8日後)いくつかの腺房関連遺伝子ならびにいくつかの肝臓関連遺伝子の発現により特徴づけられる改変表現型を獲得するための、組成物および方法を提供する。ex vivoで約7〜8日後にこれらの改変された細胞により発現される遺伝子には、例えば、管性サイトケラチン(CK7、CK8、CK18、およびCK19)、肝臓核因子1(HNF1)、α−1アンチトリプシン、pi−グルタチオンsトランスフェラーゼ(pi−GST)、肝臓特異的(塩基性ヘリックス・ループ・ヘリックス(bHLH)転写因子、Thy−1、CCAAT/エンハンサー結合タンパク質(C/EBP)−α、およびC/EBP−βが含まれる。これらの細胞は、あったとしてもわずかな、膵臓関連遺伝子の炭酸脱水酵素、嚢胞性線維性膜貫通調節因子(CFTR)、エラスターゼ、およびアミラーゼの発現を示す。遺伝子の「あったとしてもわずかな」発現とは、本明細書では、本明細書に記載したハイブリダイゼーションおよび免疫細胞化学的方法などの慣用的な方法の下では一般に遺伝子発現が検出不可能であるが、PCRをベースとした解析のような著しく感度の高い方法では検出できることを意味する。この型の改変細胞は、本明細書では、中間前駆(「IP」)細胞と称する。増殖/分化転換された腺房細胞(IP細胞)は、一般的な血清含有培地を使用して産生できるか、または、好ましい方法では、血清を用いずに、1つ以上の細胞外マトリックス分子(ECM)を含む表面上で、1つ以上の可溶性活性因子の存在下で産生できる。ECMは、可溶性活性因子の存在下、2次元または3次元培養システムで提示することができる。
【0008】
これらの培養物から生成されたIP細胞は、一部の医学的適用に直接的に有用であると期待される。例えば、このような細胞は、糖尿病患者にインプラントした場合に、ある条件下で、インスリン産生細胞の機能を果たすようになるという証拠がある。前記細胞はまた、創薬および毒性研究にも使用できる。
【0009】
さらに、本発明のさらなる態様によれば、IP細胞は、任意の標準的な無血清基礎培地(例えば、DMEM:HamsF12)を、BSAと、ECM、小分子および成長因子を含めた因子の組合せと共に含む無血清培地中でさらに培養することができる。5〜10日間培養した後、IP細胞はさらなるステップの分化を受けることができ、プロインスリンおよびC−ペプチドを発現する細胞凝集物の形成は最高に達する。これらの培養物を高グルコース培地で攻撃(challenge)すると、インスリンおよびC−ペプチドの培地への放出が引き起こされ、これにより、これらの培養物中での機能的な島様細胞の産生が示される。
【0010】
したがって、第1の態様において、本発明は、細胞増殖も刺激する優れた細胞付着表面、および基礎培地組成物に添加された有効量の1種または複数の可溶性活性因子、または、血清(例えばウシ胎児血清)を含む単純な培地を含む、細胞培養システムを提供する。細胞培養システムは、哺乳類上皮細胞、特にヒト上皮細胞の一次培養に特に有用である。好ましい実施形態において、細胞培養システムは、一次腺房細胞、特にヒト膵臓腺房細胞の増殖および分化転換に使用される。
【0011】
この細胞培養システムのための細胞付着表面は、2次元(例えばプレート、フラスコ、回転ボトル、ペトリ皿、ウェルなど)および3次元(例えば足場)環境の両方を含む、細胞が付着し増殖できる任意の表面である。好ましくは、表面は、少なくとも1つの型のECM、またはそのペプチド断片を含む。細胞は、いくつかの環境では、これらの表面から脱着し、自己支持凝集物を形成する場合もある。適切な断片は、ECMのアミノ酸配列の任意の部分と同一である3つ以上のアミノ酸残基の配列からなるペプチドを含む。このような断片は、当業者には既知である手段により容易に作製および試験できる。最も好ましくは、表面はコラーゲンIの層である。当分野で既知の多くの他の表面、例えば、コラーゲンVI、コラーゲンIV、ビトロネクチン、またはフィブロネクチンも適している。コラーゲンIが容易さおよび費用の点から好ましい。
【0012】
可溶性活性因子が添加される基礎培地は、上皮細胞の増殖および分化に適した任意の細胞用培地でよい。これらには、DMEM、HamsF12、MEM、M−199、およびRPMIが含まれるがこれに限定されない。このような培地の一般的な必要条件および多くの適切な例は、当業者には既知である。この基礎培地に、血清(例えばウシ胎児血清)、またはウシ血清アルブミン(BSA)などの安定化タンパク質を、有効量の可溶性活性因子と共に加える。培地は好ましくは無血清である。
【0013】
一次膵臓腺房細胞の増殖およびIP細胞への分化転換のための可溶性活性因子には、HGF受容体アクチベーターおよびEGF受容体アクチベーターなどの増殖因子が含まれる。好ましい可溶性活性因子には、EGFおよび形質転換増殖因子−α、IGF1、HGF、ベータセルリン、プロラクチン、およびガストリン1の中の1つ以上が含まれる。HGF、EGFおよび/または形質転換増殖因子−αが特に好ましい。また、IGF1とベータセルリンの組合せも好ましい。
【0014】
1つの特に好ましい実施形態において、基礎培地は、DMEMとHamsF12の1:1混合物を含む。基礎培地は、最終濃度が約4mMとなるまでのグルタミン、インスリン(約0.1〜10μg/ml、好ましくは約0.01mg/ml)、トランスフェリン(約0.5〜10μg/ml、好ましくは約0.0055mg/ml)、セレニウム(約0.25〜5.0ng/ml、好ましくは約0.0067μg/mlの亜セレン酸ナトリウム)、および上皮成長因子(EGF)(約1〜20ng/ml、好ましくは約10ng/ml)を添加することにより完成させる。この培地は、これ以後、膵臓細胞培地、すなわちPCMと称する。この基礎培地調合物に、約20%までのウシ胎児血清(または他の血清)、好ましくは約10〜約15%のウシ胎児血清、最も好ましくは約10%または約15%までのウシ胎児血清)を添加してもよく、あるいは、無血清培養環境を生じるために、血清の代わりに以下の成分を添加する:熱失活させたウシ血清アルブミン(0.1〜2%)、肝細胞増殖因子(HGF)(1〜20ng/ml)、および/または形質転換増殖因子α(TGFα)(1〜10ng/ml)。さらに、培地は、ベータセルリン(0.5〜20ng/ml)、ガストリン1(0.05〜10ng/ml)、プロラクチン(1.0〜10ng/ml)、および/またはIGF−1(5〜100ng/ml)を含んでいてもよい。特定の調合物においては、細胞の増殖および分化転換を支持するのに効果的な調合物を得るために、これらの成分をより多くまたはより少なく加えてもよい。当業者は、成分の有効量の決定には、単なる日常的な実験しか必要ないことを認識しているだろう。
【0015】
この付着表面および培地の使用により、望まれる表現型をもつ一次膵臓細胞の増殖および分化転換は非常に簡単になる。
【0016】
特に好ましい実施形態において、細胞培養システムは、コラーゲンIで被覆された組織培養表面(2次元形または3次元形で提示)と、BSA、インスリン、トランスフェリン、セレニウム、肝細胞増殖因子(HGF)、上皮成長因子(EGF)、および形質転換増殖因子α(TGFA)を含む無血清培地との組合せである。
【0017】
細胞培養システムにより、in vitroにおいて、以前の方法に比べて、接着培養のための一次膵臓上皮細胞の優れた付着が可能となり、一方で、一次膵臓培養物の上皮成分の増殖を促進すると共に、出発材料に存在する腺房細胞からIP細胞への共同性の分化転換も促進する細胞環境も作り、一方で、望ましくない線維芽細胞の出現も最小限とする。この培養システムの利点は構築しやすいこと、必要な成分が少ないこと、そして、すべての成分が容易に入手でき、必要とされる様式で容易に使用されることである。
【0018】
本発明のこの態様の成分は、キットの形態で簡便にパッケージングすることができる。キットには、例えば、1)細胞用培地、例えばDMEM、2)BSA、インスリン、トランスフェリン、セレニウム、HGF、EGF、およびTGFAを、完全培地で前記した濃度を生じるに適切な量で含む、無血清培地サプリメント;および、3)少なくとも1つのコラーゲンIで被覆された基質、例えば組織培養用の容器(例えば、少なくとも1つのコラーゲン−1で被覆された組織培養表面を有する皿(1または複数))、または培養皿または他の実験用商品で使用するためのコラーゲン−1で被覆されたインサートが含まれ得る。キットはまた、場合により、組織培養皿または他の細胞培養付属物、および、上皮細胞培養および分化を行うのに必要とされる場合がある追加の試薬を含んでいてもよい。
【0019】
足場、コラーゲンで被覆されたフラスコまたは他の容器および無血清培地からなる培養システムを、別のバイアルとしての可溶性活性因子と共にパッケージングすることができ、これは使用直前に培地に加える。活性因子の組合せを、同じ目的、例えばin vitroでの一次膵臓腺房細胞の増殖および分化を達成するために、多種多様な基礎培地に添加することができる。このような培養システムはまた、他の細胞型、特に、肝臓、膵臓、腸、前立腺、および乳房に由来するものを含む、他の臓器および組織に由来する腺上皮細胞にも有用であろう。
【0020】
コラーゲンI表面により優れた細胞付着がもたらされ(これにより初回培養中に付着する細胞数は増加し、したがって、培養効率は増強される)、一方、コラーゲンIおよび可溶性活性因子の組合せ(例えば、HGF、TGFA、およびEGF)により、時間の経過と共に連続的な細胞増殖が促進され、一次膵臓腺房細胞で以前に報告されていた数よりも細胞数は増加する。さらに、大半の細胞において、腺房細胞の増殖に、IP表現型への分化転換が伴なって生じ、この表現型は糖尿病などの疾患の処置において治療に有用な可能性のある細胞表現型である。これはコラーゲンI、HGF、TGFAおよびEGFに関連した細胞内シグナル伝達経路の収束に起因して生じるようであり、相乗的な応答が生じている。
【0021】
本発明の細胞培養システムは、以前に使用されていたシステムに比べ、予期されなかった利点を有する。コラーゲンI、IV、VI、ビトロネクチン、およびフィブロネクチンは細胞付着を増強すると期待された。しかし、培養の最初の18時間の間に等価な細胞付着を引き起こした他の細胞外マトリックス分子は、HGF/EGF/TGFAを含む無血清培地中で、時間の経過と共に一貫した細胞増殖を促進しなかった。細胞増殖およびIP細胞への分化を達成する最も効率的かつコスト効果的な方法は、コラーゲン−I表面および減量した血清(好ましくは20%未満、より好ましくは15%、10%、または5%未満、最も好ましくは2%)を含む培地を利用することである。
【0022】
本発明の別の態様は、哺乳類上皮細胞の培養法であって、前記細胞を前記の細胞培養システムに加え、それらを適切な温度および大気条件で維持することを含む。「哺乳類上皮細胞」は、サイトケラチンの発現の存在により、およびしばしば組織特異的機能(すなわち、皮膚の上皮細胞はケラチンを作り、腸の上皮細胞はムチンを作り、前立腺の上皮細胞はPSAを作る)を示唆するマーカーの存在により定義される、上皮細胞表現型をもつ組織または臓器の任意の細胞を意味する。好ましい実施形態において、細胞は、一次膵臓細胞、特にヒト膵臓細胞である。哺乳類細胞に適切な温度は、通常、約37℃の範囲であるが、細胞型に応じて幾分変化してもよい。雰囲気は通常の空気でも、または、当業者はよく知っているように、細胞の維持に適切な他の特殊なガスの混合物でもよい。膵臓腺房細胞の増殖は、培養雰囲気中の酸素圧力を21%未満に減少することにより最大限にすることができ、一方で、IP細胞への分化転換は、酸素圧力を5%より高く増加することにより増強することができる。好ましい酸素圧力の範囲は、約5%から約21%の間である。
【0023】
第2の態様において、本発明はまた、前記したような中間前駆(IP)表現型に特徴的なマーカーの発現を獲得した腺上皮細胞を、インスリン産生細胞へと形質転換するための方法および組成物を提供する。「腺上皮細胞」とは、腺の成分である上皮細胞を意味する。腺は、鍵となる分子の分泌に関連した特別な機能を有する組織であり、生体中の大半の臓器は腺性機能を有し(肝臓、腸、膵臓、前立腺、乳房、下垂体、副腎、腎臓)、これによりそれらはホルモン、消化酵素、または他の生命に必須な液体を産生および放出している。内胚葉に由来する臓器(例えば肝臓、腸、膵臓)由来の腺上皮細胞は、多くの同じ遺伝子を発現する能力を含む、多くの特徴を共有している。特に好ましいのは、膵臓に由来する腺上皮細胞、例えば腺房細胞である。本明細書に使用したような「発現する」および「発現」なる語は、一般に、標準的な免疫細胞化学法により検出可能である核酸(例えばmRNA)またはタンパク質遺伝子産物を意味する。
【0024】
この態様において、本発明は、腺上皮細胞からインスリン産生細胞への形質転換を支持および促進する、細胞付着表面および培地を含む、第2の細胞培養システムを提供する。細胞付着表面は、一次膵臓腺房細胞の増殖のための付着表面と類似しており、それと同一でもよい。容器上に被覆された平坦な表面の形態で提示されていても、または、細胞培養に適合した足場または他の表面の形態で提示されていてもよい。それは、細胞を維持または細胞増殖を支持できる任意の組成物を含んでいても、またはそれで被覆されていてもよい。好ましい実施形態において、それは、少なくとも1つのECM、例えばコラーゲンI、コラーゲンVI、コラーゲンIV、ビトロネクチン、またはフィブロネクチンを含む。特に好ましい実施形態において、細胞付着表面はコラーゲン−Iである。
【0025】
この態様において、本発明は、腺上皮細胞からインスリン産生細胞への形質転換を促進する、少なくとも1つの分化促進因子(「DPF」)を含む、さらなる培地を提供する。腺上皮細胞からインスリン産生細胞への形質転換のためのDPFは、アクチビンA、酸性FGF、塩基性FGF、C型ナトリウム利尿ペプチド(CNP)、カルシトニン遺伝子関連ペプチド、コレラ毒素Bサブユニット、デキサメタゾン、ガストリン放出ペプチド、グルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)、グルコース、IGF1、IGF2、インスリン、ラミニン、LIF、Met−エンケファリン、PDGFAA+PDGFBB、プロラクチン、ソニックヘッジホッグ、サブスタンスP、TGF−α、トロロクス(α−トコフェロール誘導体)、またはVEGFの1種または複数とすることができる。これらの23個の各々のDPFの培地中の好ましい濃度を表1に列挙する。いくつかの場合では1つのDPFで十分であるが、好ましくは2つ以上の因子を使用する。23種の因子のすべてを使用してもよい。
【0026】
【表1】
【0027】
本発明のこの態様の好ましい実施形態において、培地は、以下の分化促進DPFの少なくとも1つ(または10個すべて)を含む:C型ナトリウム利尿ペプチド(CNP)、カルシトニン遺伝子関連ペプチド、コレラ毒素Bサブユニット、デキサメタゾン、ガストリン放出ペプチド、ラミニン、Met−エンケファリン、PDGFAA+PDGFBB、ソニックヘッジホッグ、およびサブスタンスP。
【0028】
好ましい実施形態において、腺上皮細胞からインスリン産生細胞への形質転換を促進する培地は、DMEMとHamsF12の1:1混合物および表2に列挙した成分からなる。この培地は時に本明細書では「培地または培地G9」と称する。
【0029】
【表2−1】
【0030】
【表2−2】
【0031】
本発明のこの態様の成分はまた、キットの形態で簡便にパッケージングしてもよい。キットは、例えば、1)細胞用培地、例えばDMEM、HamsF12、またはその組合せ;2)BSAおよびDPFsアクチビンA、酸性FGF、塩基性FGF、C型ナトリウム利尿ペプチド(CNP)、カルシトニン遺伝子関連ペプチド、コレラ毒素Bサブユニット、デキサメタゾン、ガストリン放出ペプチド、グルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)、グルコース、IGF1、IGF2、インスリン、ラミニン、LIF、Met−エンケファリン、PDGFAA+PDGFBB、プロラクチン、ソニックヘッジホッグ、サブスタンスP、TGF−α、トロロクス(α−トコフェロール誘導体)、またはVEGF、またはこれらの成分の2つ以上の組合せを、完全培地で表1に記載した濃度を生じるのに適切な量で含む、無血清培地サプリメント;および3)少なくとも1つのコラーゲン−1で被覆された組織培養表面を有する組織培養皿(1または複数)(または培養皿または他の実験商品で使用するためのコラーゲン−1で被覆されたインサート)を含むことができる。キットはまた、場合により、組織培養皿および/または他の細胞培養付属物、ならびに、上皮細胞培養および分化を行うのに必要とされ得る追加の試薬を含むことができる。他の実施形態において、キットは、本明細書に考察した培地または培地成分のいずれかを含むことができる。
【0032】
足場、コラーゲンで被覆されたフラスコまたは他の容器および無血清基礎培地からなる培養システムは、別のバイアルとしてのDPFと共にパッケージングし得、これは使用直前に培地に添加される。DPFの組合せを、同じ目的、例えばin vitroでの一次膵臓腺房細胞の増殖および分化を達成するために、多種多様な基礎培地に添加することができる。このような培養システムはまた、他の細胞型、特に、肝臓、膵臓、腸、前立腺、および乳房に由来するものを含む、他の腺組織に由来する他の上皮細胞にも有用であろう。
【0033】
本発明はまた、腺上皮細胞を、前記の細胞培養システム中で培養することを含む、腺上皮細胞をインスリン産生細胞に変換する方法も提供する。この方法はさらに、培地を細胞培養物から取り除き、細胞培養物にグルコースを含む無血清培地を再度供給し、プロインスリン産生、C−ペプチド産生、またはインスリン放出を測定することを含むことができる。
【0034】
さらに、本発明は、細胞のサブセットがIP細胞に関連した少なくとも1つのマーカーを発現する(例えば、管性サイトケラチン(CK7、CK8、CK18およびCK19)、HNF1、α−1アンチトリプシン、pi−グルタチオンsトランスフェラーゼ(pi−GST)、肝臓特異的bHLH転写因子、Thy−1、C/EBP−αおよびC/EBP−βを含む、いくつかの腺房関連遺伝子ならびにいくつかの肝臓関連遺伝子を発現し、あったとしてもわずかな膵臓関連遺伝子炭酸脱水酵素、嚢胞性線維性膜貫通調節因子(CFTR)、エラスターゼおよびアミラーゼを発現する)ような細胞の集団に由来する、免疫検出可能なプロインスリン、インスリン、および/またはc−ペプチドを有する細胞質顆粒を含む、インスリン産生細胞の単離集団を提供する。
【0035】
「単離」細胞または細胞集団とは、本明細書では、細胞または細胞集団をその元々の環境(例えば、天然である場合には天然環境)から取り出し、天然に結合している少なくとも1つの他の成分から単離または分離することを意味する。例えば、天然に生存している宿主に存在する天然細胞は単離されていないが、天然系に同時存在するいくつかまたはすべての材料から分離された同細胞は単離されている。このような細胞または細胞集団は、細胞培養物または細胞集団の一部となることができ、このような培養物または集団はその天然環境の一部ではないという点で依然として単離されている。
【0036】
1つの好ましい実施形態において、インスリン産生細胞は、哺乳動物膵臓から得られた腺上皮細胞、例えば一次腺房細胞から得られる。
【0037】
以下の実施例に開示したデータは、新しく単離したヒト膵臓細胞から作成されている。これらの条件での一次ヒト膵臓細胞の増殖により、種々の目的のためのin vitroでのIP細胞の研究に適した、および、糖尿病などの疾患の処置のための細胞療法におけるin vivoでの移植に適した、混合上皮IP表現型を有する培養物が生じる。これらの方法により作製されたIP細胞はまた、膵臓上皮癌の研究における正常対照として、膵臓細胞生物学の研究に、および、正常膵臓上皮細胞(管性または腺房性)に対する薬物/化合物の効果を試験するために有用であり得る。さらに、細胞をさらに培養して、以下に実証したようなインスリン産生細胞を作製することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
本発明の好ましい実施形態を記載する上で、明瞭化のために専門用語を使用する。しかし、本発明は、このように選択した専門用語に限定されない。各々の専門的要素にはすべての技術的均等物が含まれており、これは同じように機能して類似の目的を達成する。ここで引用した各文献は、各々を個々に参照により取り込んだのと同様に参照により取り込まれる。
【0039】
以下の略称を使用する:
BSA:ウシ血清アルブミン
BMP 骨形成タンパク質
bHLH:塩基性ヘリックス・ループ・ヘリックス
DMEM:ダルベッコ改変イーグル培地
TGFβ1:形質転換成長因子β1
ECM:細胞外マトリックス分子;構造的支持ならびに接着に関連した細胞シグナル源を提供する組織の細胞により産生される天然に存在するタンパク質。例は、コラーゲン、ビトロネクチン、フィブロネクチン、ラミニンである。
EGF:上皮成長因子
HamsF12:Hamの栄養混合物F12
HGF:肝細胞増殖因子
HNF−1:肝核因子1
IGF1:インスリン様増殖因子1
IGF−II:インスリン様増殖因子2
IP細胞:例えば膵臓腺房細胞または肝臓細胞などの上皮細胞から誘導される中間前駆細胞であって、誘導された細胞は、いくつかの腺房関連遺伝子、ならびに、いくつかの肝臓関連遺伝子(例えばサイトケラチン(CK7、CK8、CK18,およびCK19)、HNF1、α−1アンチトリプシン、pi−グルタチオンsトランスフェラーゼ(pi−GST)、肝臓特異的bHLH転写因子、Thy−1、C/EBP−αおよびC/EBP−βを含む)を発現し、あったとしてもわずかな膵臓関連遺伝子炭酸脱水酵素、嚢胞性線維性膜貫通調節因子(CFTR)、エラスターゼおよびアミラーゼを発現する。
PDGF−A:血小板由来増殖因子α
PDGF−B:血小板由来増殖因子β
TGFA、TGF−α:形質転換成長因子α
【0040】
本明細書に使用したような「培養システム」なる語は、細胞付着表面、好ましくは細胞増殖も刺激するものと、基礎培地組成物に添加された有効量の1つ以上の因子または血清(例えばウシ血清アルブミン)を含む培地とを含む、培養物中で細胞を増殖および/または分化するためのシステムを意味することを意図する。
【0041】
本明細書で活性可溶性因子およびDPFに言及する場合、「有効量」は、単独でまたは他の含まれる因子と組み合わせて、IP細胞への増殖および分化、または適宜インスリン産生細胞への増殖および分化を促進する上で効果的である量を意味する。
【実施例】
【0042】
I.一次腺房細胞から腺上皮細胞への増殖および分化転換(培養第I相)
材料および方法:
出発材料:一次ヒト膵臓腺房細胞を、移植のための島細胞の標準的なCOBE勾配調製物からの廃棄物として回収する(Lakeら、1989)。密度勾配遠心分離後、島は、1.063密度と1.10密度の間の層として存在し、残りの細胞は、密度に基づいて勾配の底に沈降したペレットとして回収される。移植センターで細胞を回収した約48時間後に非組織培養処理ポリスチレンフラスコ中に発明者らは受け取り、RPMI+10%ウシ胎児血清中に、約200万細胞/mlの密度で懸濁する。細胞数および生存度を、光学顕微鏡観察により血球計測器でトリパンブルー排除および計数により評価する。
【0043】
出発材料の表現型評価。出発材料の調製物を、膵臓細胞を最初に収集した約24時間後に細胞ペレットとして、ホルマリン固定し、パラフィン包埋した。パラフィン切片を調製し、スライド上に置き、インスリン(Biogenex、San Ramon、CA)、CK19(Biogenex)、およびアミラーゼ(Biogenex)に対する抗体を用いて免疫細胞化学解析を行った。1試料あたり最小で3つの切片を、各マーカーを用いて評価した。すべての抗体染色を、予め希釈した市販の抗体を用いて製造業者の提言に従って実施した。CK19では、抗原回収の目的で、ペプシン酵素(Biogenex)による3分間の処理を遮断ステップより先に実施した。簡潔には、切片を、等級(graded)エタノールにより再水和し、その後、カルシウムおよびマグネシウムを含まないリン酸緩衝食塩水(PBS)中で15分間インキュベートした。一次抗体を加える30分前にタンパク質ブロッカー(Biogenex)を加えた。3回の5分間の洗浄後、ビオチン化二次抗体(Biogenex)を1:100希釈で加え、切片を30分間室温でインキュベートした。3回の5分間の洗浄後、Alexa488またはAlexa−596コンジュゲートストレプトアビジン(Molecular Probes、Eugene、Oregon)を蛍光可視化のために加えた。各スライドについて、最小で3個の200倍像を、SPOTカメラ(Diagnostic Systems,Inc.、Webster、TX)を具備したNikon蛍光顕微鏡を使用して撮影した。像を、像解析ソフトフェア(MetaMorph/Universal Imaging Corporation、Downington、PA)を使用して定量的に評価して、インスリン陽性、CK19+、およびアミラーゼ+細胞の相対的割合を決定した。インスリン+細胞は島β細胞であり、CK19+細胞は一次管細胞であり、アミラーゼ+細胞は腺房細胞である(実施例1参照)。
【0044】
(実施例1)
細胞培養条件の特徴づけ
A.無血清培地
新しく単離した一次ヒト膵臓細胞を、COBE細胞分離器からペレットとして集め、ホルマリン固定し、パラフィン包埋し、切片化し、アミラーゼ、CK19、およびインスリンに対する抗体を用いて解析した。像(図1Aおよび1B)はユニバーサルイメージングシステム(Universal Imaging Corporation)で集め、MetaMorphソフトウェアで解析した。この細胞ペレット(図1C)は、1.0%インスリン+細胞(島β細胞)、5.8%CK19+細胞(一次管細胞)、および93.2%のアミラーゼ+および非標識(腺房細胞および他の細胞型)から構成されていた。
【0045】
その後、一次ヒト膵臓細胞を、104または105細胞/cm2で組織培養物で処理したポリスチレン上に、DMEM市販培地と10%ウシ胎児血清中またはPCMと10%ウシ胎児血清中に播種した。複製培養物をトリプシン処理により3日間間隔で収集し、生存細胞(トリパンブルー排除により決定)を血球計で計測した。結果(図2に示す)により、本明細書に記載した(血清含有)培地調合物は、一次膵臓細胞の成長および維持には、市販の培地調合物より優れていることが実証される。図3は、細胞を6日間、基礎培地中、基礎培地とすべての可溶性活性因子[HGF、約1〜約20ng/ml、好ましくは約5.0ng/ml;TGFA、約1〜約10ng/ml、好ましくは約2ng/ml;ベータセルリン、約0.5〜約20ng/ml、好ましくは約10ng/ml;ガストリン1、約0.05〜約10ng/ml、好ましくは約0.06ng/ml;プロラクチン、約1.0〜約10ng/ml、好ましくは約2.4ng/ml;およびIGF1、約5〜約100ng/ml、好ましくは約5ng/ml]および基礎培地と10%血清中で増殖した結果を比較する。無血清培地調合物は、培地+血清により得られる増殖を達成/超過する。
【0046】
細胞増殖実験は、基礎培地に、わずか3つの可溶性活性因子:TGF、HGF、およびEGFを補充した以外は、実質的に前記と同様に繰り返した。図6Dは、種々の培地中で細胞を増殖した結果を比較し;図6A、6B、および6Cは、種々の培地条件下で増殖した細胞培養物の高倍率像を示す。
【0047】
B.ECM表面
一次ヒト膵臓細胞の付着は、付着した細胞の数と、コラーゲンI(1μg/cm2)、フィブロネクチン(3μg/cm2)、ラミニン(2μg/cm2)、ビトロネクチン(1μg/cm2)、マトリゲル(1μg/cm2)、ヒトECM(1μg/cm2)、またはポリ−D−リジン(3μg/cm2)からなるECM表面のパネル上に最初に播種した細胞の数を計測することにより評価した。1つの条件では、コラーゲンIV、ラミニン、およびフィブロネクチンの混合物を使用した。ECMを前記濃度で溶液中に入れ、製造業者の提示に従って1時間室温で組織培養処理ポリスチレン表面に被覆した。その後、過剰のECM溶液を除去し、表面を水中で2回濯いだ。細胞を播種する直前に、水を吸引し、その後、細胞をECM表面上に、4mMのグルタミン、1×ITSサプリメント(GIBCO51500−056)、10%ウシ胎児血清(失活、品質保障、GIBC26140−079)、および10ng/mlの上皮増殖因子(EGF)(BD4001)を含む、DMEM:HamsF12混合物(1:1)からなる増殖培地(PCM)中1×105細胞/cm2の密度で播種した。細胞を、対照として組織培養ポリスチレン表面上に播種した。18時間後、非付着細胞を洗浄して除去し、残りの付着細胞にPCMを再度供与し、7日間増殖させてその後に評価した。培養物を10%ホルマリン中で固定し、前記したようにCK19およびアミラーゼについての抗体を用いて免疫細胞化学法にかけて、表現型組成を決定した。細胞を、DAPI蛍光青核染色で対比染色し、個々の細胞核を細胞計数のために可視化した。種々の条件にかけた細胞の代謝活性はMTSアッセイにより決定した。生存細胞を、増殖中の生存細胞数または細胞毒性を決定するための比色法であるMTSアッセイ(プロメガCell Titer 96 Aqueous One Solution Cell Proliferation Assay)を使用して測定した。この解析の結果を図7に示す。
【0048】
(実施例2)
ECM表面および種々の培地成分を用いてのさらなる研究
90%を超える非島/非管細胞からなる一次膵臓細胞を、28,900細胞/ウェル(105細胞/cm2)の密度で種々の被覆表面上に撒いた。付着していない細胞を18時間後に洗浄除去し、培養物を再供与し、8日間増殖させた。培養物をホルマリン(10%)中で固定し、CK19およびアミラーゼに対する抗体を用いて表現型解析にかけた。結果を図4A〜Bに示す。コラーゲンI、IV、ラミニン、フィブロネクチン、およびマトリゲルが細胞付着および増殖に適した表面を提供するが、腺性上皮表現型(CK19+)を有する細胞集団の細胞の増加と共に腺房(アミラーゼ+)表現型の維持は、コラーゲンI上で優れていた。解析した細胞の中で50%を超える細胞がアミラーゼを発現し、解析した細胞の中で50%を超える細胞がCK19を発現し、これは、これらの実験条件において、細胞の亜集団が両方のマーカーを発現することを示唆する。
【0049】
組織培養処理ポリスチレン培養表面を、前記したようにコラーゲンIで被覆した。組織培地(PCM)は前記したように調製した。いくつかの場合では、血清を、IGF1、IGF2、ベータセルリン、HGF、EGF、およびTGF−αを含む可溶性増殖因子の組合せと共に、画分V BSA(99%純粋、熱で失活、シグマ)と交換した。最適な接種密度は、実施例3に実証したように、104ないし105細胞/cm2である。細胞を、PCM中、1.5×106細胞/フラスコでコラーゲン被覆フラスコ(150cm2)上に播種した。約18時間の付着期間後に、付着していない細胞を穏やかな吸引/濯ぎにより洗浄除去し、その後、新しい培地を再供与した。培養物を経過時間にわたって代謝アッセイ(MTT)により、およびトリプシン処理および細胞計測によりモニタリングし、細胞数を確立した(実施例3参照)。培養期間の終了時の細胞表現型を以下のように評価した:小規模の培養物を同時に96ウェルプレートに確立した。培養相の終了時に、単層細胞を10%ホルマリン中で最短1時間で固定した。ホルマリンを除去し単層を濯いだ後、培養物を、CK19、アミラーゼ、インスリン、およびビメンチン(線維芽細胞のマーカー)について前の章で記載したように免疫細胞化学法にかけた。CK19+細胞の相対的割合は、前記したように定量的像解析により決定した(実施例4参照)。ホルマリンを除去し単層を濯いだ後、培養物を、CK19およびビメンチン(線維芽細胞のマーカー)について前の章で記載したように免疫細胞化学法にかけた。細胞はアミラーゼ抗体でも染色したが、培養物中での時間の経過と共に細胞によるアミラーゼなどの消化酵素の放出により陽性結果がでなかった。CK19+細胞の相対的割合は、前記したように定量的像解析により決定した(実施例4参照)。腺房細胞による管マーカーの獲得は、培養の2〜3日中に細胞亜集団におけるCK19およびアミラーゼの同時発現を実証することにより確認された(実施例5参照)。これらの実験のために、CK19一次抗体をホルマリン固定細胞培養物と反応させ、その後、Alexa488コンジュゲートヤギ抗マウスIgG(Molecular Probes)を用いて可視化した。その後、細胞を遮断ステップ(Protein Blocker、BioGenex)にかけ、その後、第2の一次抗体(抗アミラーゼ)を適用した。アミラーゼの可視化は、Alexa594コンジュゲートヤギ抗マウスIgGの適用により行われた。像を前記のように集めた。本明細書に記載の条件で7日間の培養期間の終了時に、培養物中の細胞の65〜90%がCK19を発現し、一方、20%未満の細胞がビメンチンを発現する(実施例6参照)。CK19+細胞の相対的比率のばらつきは、おそらく、個体患者の年齢、性別、および他の独特な特徴に起因した異質性を反映している。
【0050】
(実施例3)
細胞播種の密度
一次膵臓細胞を、組織培養処理ポリスチレン皿(60mm)上に3つの密度で播種し、PCMを供与した。光学顕微鏡観察を毎日行った。24時間の時点で、皿を犠牲にし、トリパンブルーで染色して生存度を評価した。結果を表3に示す。
【0051】
【表3】
【0052】
(実施例4)
細胞を、コラーゲンI表面上で、37℃で、21%酸素中、2%BSA、2ng/mlのTGF−α、10ng/mlのEGF、および10ng/mlのHGFを含むPCM培地または基礎培地中で増殖させた。7日後、培養物を10%ホルマリンで固定し、蛍光検出を含む免疫細胞化学解析にかけ、その後、自動画像収集および解析を行った。結果を図5Aおよび5Bに示す。線維芽細胞(ビメンチン+)画分、腺上皮細胞画分(CK19+)、および非標識細胞の画分(その他)は、増殖後に類似している。このことは、血清を無血清培地と交換しても、血清含有培地中で増殖させた細胞に比べて、線維芽細胞の過剰増殖を伴うことなくCK19+細胞の画分が維持されることを示唆する。
【0053】
(実施例5)
一次膵臓腺房細胞を、数日間、10%ウシ胎児血清、0.01mg/mlのインスリン、0.0055mg/mlのトランスフェリン、0.0067μg/mlの亜セレン酸ナトリウム、10ng/mlのEGF、4mmol/リットルのグルタミンおよび抗生物質を含む、1:1比のDMEMおよびHamsF12の中で培養した。2日間培養した後(ex vivoで4日間)、腺房細胞によるアミラーゼの発現は、免疫細胞化学法により決定したところ依然として強い(図8A、上の左のパネル、赤色染色)。CK19の発現も明確である(図8B、下の左のパネル、緑の染色)。2つの像の重ね合わせ(図8C)により、高い比率の細胞において、アミラーゼおよびCK19の明確な共発現が実証され、このことは、アミラーゼ+腺房細胞からアミラーゼ+/CK19+の混合した腺房/管表現型(AD細胞)への活発な変換から判断して中間細胞が存在することを示している。培養物を毎日評価することにより(図9)、CK19発現の開始は培養の2日目頃から始まり、5日目までには培養物は大半の免疫検出可能なアミラーゼ発現を失い、CK19発現が大半となっていることが実証された。
【0054】
(実施例6)
PCM/コラーゲンI表面中で7日間増殖した後、細胞を固定し、CK19に対する抗体で染色し、核DAPIで対比染色した。全細胞数を自動像解析により評価し(図10Aの左パネル、青色で染色した細胞核)、一方、CK19+細胞を計測した(図10B、右パネル、緑で染色した細胞の細胞質)。378個の全細胞の中で、342個がCK19について免疫陽性であった(90%)。本明細書に記載の条件を使用して約7日間培養した後、腺房細胞は明確な管特徴を有し、この状態ではこれをIP細胞と称する。大半の一次ヒト培養物では、約7日後の培養物中の80%を超える細胞が、種々の組織からの管細胞と関連しているCK19のようなマーカーを発現している。
【0055】
(実施例7)
7日間の培養物の遺伝子発現解析(IP細胞)
2つの独立的なIP細胞培養物を、クロンテック8KAtlas遺伝子アレイ解析にかけた。IP細胞は、PCMおよびコラーゲンI表面を含む細胞培養システム中で一次腺房細胞を培養することにより得られた。単層培養物をPBSで2回濯ぎ、その後、0.25%トリプシンを用いてフラスコから脱着した。細胞を、水平遠心分離機中で1,200RPMで3分間遠心分離することによりペレット化した。細胞ペレットを再懸濁し、2回PBS中で洗浄し、その後、前記したように最終の遠心分離を1,200RPMで3分間行った。上清を廃棄し、穏やかに吸引して、細胞ペレットから可能な限り多くの液体を除去し、その後、ドライアイス/エタノール浴中で迅速凍結し、慣用的な技術を使用して遺伝子発現解析を実施するBDクロンテックに移行するまで−80℃で保存した。
【0056】
標識されたP−33cDNAプローブを、Atlas Pure Total RNAラベリングシステムの一部であるストレプトアビジン磁気ビーズ分離法を使用してポリA+RNAを最初に増やすことにより、各試料からの30μgの全RNAから調製した。各試料からの標識プローブを、約16時間、プラスチックヒト8K遺伝子アレイとハイブリダイズし、アレイを洗浄し、Atlasアレイプロトコルに従って画像化した。Atlas Image2.7ソフトウェアを使用して、アレイ格子鋳型を用いてアレイ像を配列し、強いシグナル過剰発生(strong signal bleedover)に起因する偽バックグラウンドシグナルまたは偽シグナルを排除した。その後、転写シグナルを、Atlas Image2.7ソフトウェアを使用してこれらの配列したアレイから抽出し、遺伝子発現の変化についてのさらなる統計学的解析を実施した。
【0057】
一般に、mRNA転写を、適切なオリゴヌクレオチドプローブへのハイブリダイゼーションによりアッセイした。いくつかの場合では、例えばCK19およびアミラーゼでは、タンパク質発現産物を、慣用的な免疫組織化学的方法を使用して測定した。選択したセットの遺伝子のこれらの細胞集団による発現の要約を表4に提示する。表4は、IP細胞で発現された遺伝子のリスト、および、一次腺房細胞および一次管細胞における発現パターンの比較を含む。「+」として同定された遺伝子産物は発現され;「++」として同定されたものは強く発現された。記号「丸にR」で指定された遺伝子産物は、再生膵臓で見出される。
【0058】
【表4−1】
【0059】
【表4−2】
【0060】
II.腺上皮細胞からインスリン産生細胞への形質転換−IP培養物の分化によるインスリン産生細胞の産生(第II培養期)
IP培養物を利用して、血清を含まないが以下の分化促進因子の組合せを含む確定された培地調合物と合わせられた、IP細胞の付着を促進するコラーゲンIなどの表面を含む、培養の第2期中に細胞を入れることによりインスリン産生細胞を生成することができる:アクチビンA、酸性FGF、塩基性FGF、C型ナトリウム利尿ペプチド(CNP)、カルシトニン遺伝子関連ペプチド、コレラ毒素Bサブユニット、デキサメタゾン、ガストリン放出ペプチド、グルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)、グルコース、IGF1、IGF2、インスリン、ラミニン、LIF、Met−エンケファリン、PDGFAA+PDGFBB、プロラクチン、ソニックヘッジホッグ、サブスタンスP、TGF−α、トロロクス(α−トコフェロール誘導体)、およびVEGF。以下の例では、基礎培地は、抗生物質および0.2%ウシ血清アルブミン(画分V、熱失活99%純粋)を含む、HamsF12およびDMEMの1:1混合物からなる。1つの例では(組合せ1)、基礎培地には、コレラ毒素B、デキサメタゾン、GRP、GLP−1、グルコース、IGF−1、IGF−2、インスリン、プロラクチン、ソニックヘッジホッグ、トロロクス、aFGF、およびbFGFが含まれていた。別の例では(組合せ2)、基礎培地には、アクチビンA、CGRP−α、CNP、グルコース、GLP−1、IGF−2、インスリン、LIF、Met−エンケファリン、プロラクチン、ソニックヘッジホッグ、aFGF、およびvEGFが含まれていた。第3の例では(組合せ3)、基礎培地には、アクチビンA、CGRP−α、コレラ毒素B、デキサメタゾン、グルコース、GLP−1、インスリン、LIF、ラミニン、Met−エンケファリン、PDGFAA/BB、ソニックヘッジホッグ、サブスタンスP、TGF−α、aFGF、およびVEGFが含まれている。これらの培地サプリメントの濃度は表1に列挙する。
【0061】
AD細胞を、1)産生される表面からの細胞をトリプシン処理し、新しい付着促進表面上に約5×104細胞/cm2で再分布することにより、または、2)培地を取り出し、PBS中で2回洗浄して古い培地の痕跡を除去し、培養物に、分化促進因子を含む新しい培地(前記)を再供給することにより培養物に入れた。細胞を4〜10日間37℃で21%酸素で培養する。5日後に、培地の半分を除去し、分化促進因子を含む等しい容量の新しい培地と交換する。
【0062】
分化培養後のIP細胞の表現型解析
前記した分化条件で培養したIP細胞の形態学的評価を光学顕微鏡によりとった(以下の実施例8を参照)。これらの培養物を含む細胞の細胞表現型は、ビタミン、プロインスリン、C−ペプチド、MUC−1、およびCK19に対するモノクローナル抗体を使用して前記のように免疫細胞化学法により評価した(以下の実施例10参照)。簡潔には、培養物を1時間室温で10%ホルマリンで固定し、その後、PBSで洗浄し、免疫細胞化学プロトコルにかけた(以下の実施例9を参照)。
【0063】
分化培養後のIP細胞の機能的解析
凝集した細胞クラスターがインスリンおよびC−ペプチドを放出する能力は、以下のように培養細胞をグルコース攻撃にかけることにより評価した。分化培地中で7〜10日間培養しておいた細胞を3回PBS中で洗浄し、その後、1)5mMグルコースを含む基礎培地(前記)、または2)22mMグルコースを含む基礎培地を再度投入した。18時間後、細胞コンディショニングした培地を集め、インスリンおよびC−ペプチド放出についてELISA解析にかけた(Diagnostic Systems Laboratories(DSL))。ELISAは、製造業者の明細書に従って標準的な範囲アッセイ手順を使用して実施した。プレートをアッセイ中に振とう機でインキュベートし、結果をTecan分光測光プレート解読機で解読した。1ウェルあたりのインスリンまたはC−ペプチドの全ngを、5mMグルコース培地および22mMグルコース培地の両方における、各培地条件について計算した(実施例10を参照)。
【0064】
(実施例8)
膵臓腺房細胞を、基礎培地+ITS+血清(10%)中で1週間培養し、その後、トリプシン処理し(EDTAを含まない0.25%トリプシンで10分間37℃で処理)、新しいコラーゲン−1で被覆した表面に移し、列挙した23個すべてのDFPを含む培地中に入れた。3〜5日間の期間かけて、細胞は容易に、光学顕微鏡により明確に観察可能な3次元のさやのような構造を形成した(図11)。いくつかのより大きなさやが、培養物中で4〜6日間の後に培養表面から脱着し、トリパンブルー排除により決定したところ生存したままであった。さやのような構造は、インスリン産生細胞の凝集であると推定され、以下に記載のようにさらなる解析にかけた。
【0065】
(実施例9)
前の実施例に記載したのと同じような様式で生成したさやのような構造を、10%ホルマリン中で固定し、最初にCK19モノクローナル抗体を用いて、その後、前記したように、C−ペプチドモノクローナル抗体を用いて免疫細胞化学解析にかけた。図12Aは、細胞の群を示し(DAPI染色核は青い)、その中のいくつかはCK19に免疫陽性である(緑染色)。図12Bは、同じ細胞群を示し、その中の多くはC−ペプチドに陽性であり、これは、細胞内で合成されたプロインスリン分子が切断されて成熟インスリンを生じた場合に産生され;C−ペプチド染色細胞は赤く、典型的には細胞質の顆粒が染色されている。図12Cは、より高倍率の重ね合わせ像を示し、これは小さな細胞のサブセットにおける、CK19およびC−ペプチドの共局在を実証している。共染色細胞は、重ね合わせ像では黄色−オレンジに見える。
【0066】
(実施例10)
基礎培地(陰性対照)または分化促進培地の組合せ1、2、および3中で培養した細胞を、インスリンおよびC−ペプチドを培地へ放出する能力について評価した。さらに、漸増濃度のグルコースにより、より多くの量のインスリンおよびC−ペプチドの放出がもたらされるかどうかを評価し、これにより、島のような機能性が示された。最初に、細胞を、1週間、基礎培地+EGF(10ng/ml)+ITS+10%ウシ胎児血清(PCM)中で培養した。その後、細胞を、洗浄および培地交換(継代培養せず)、または洗浄、トリプシン処理/脱着、再播種、および培地交換にかけた。複製培養物に、基礎培地(無血清)、新しいPCM、または、分化促進培地の3つの組合せの1つ(すべて無血清)を再投入した。10日後、分化培地を除去し、培養物を3回PBSで洗浄し、その後、5mMグルコースまたは22mMグルコース(最終濃度)を含む無血清培地を再投入した。18時間後、コンディショニングされた培地を集め、インスリンまたはC−ペプチドに対する抗体(DSL laboratories)を用いてELISA解析にかけた。図13A、13B、および13Cは、それぞれ、非継代培養細胞によるインスリン放出、および、グルコース攻撃に応答したインスリン放出およびC−ペプチド放出を示す。いくつかの培養物がインスリンを含み、細胞は培地からインスリンを取り込むことができるので、C−ペプチドの産生は、細胞がプロインスリンの合成およびプロセシングから新規にインスリンを合成しているという重要な情報である。さらに、インスリンおよびC−ペプチドの産生は、グルコース濃度の増加と共に大半の場合には増加し、このことは、これらの培養物中における細胞の島のような機能を示唆する。インスリンまたはC−ペプチドは、DPFをまったく含まない基礎培地中ではほとんど産生されないことに注意する。
【0067】
(実施例11)
インスリンの量およびDNAの量の両方を、酵素的脱着および継代培養を伴うまたは伴わない分化培養にかけた、IP細胞において測定した。培養は、前の章で記載したように正確に実施した。DNAを標準的なPicogreenアッセイ(Molecular Probes)を使用して測定し、一方、インスリンはELISAアッセイにより測定した。インスリンの全ngを、試料中のDNAの全μgで割り、これによりインスリン:DNAの比の値を出し、存在するインスリンの量と存在する細胞数(DNA含量を反映)の比を計算した。結果を図14に示す。各々の分化培地組合せにおいて、インスリン:DNAの比は、基礎培地に比べて増加しており、このことから、DPFを含まずに培養した場合に比べて、DPFの存在下の方が細胞あたり、より多くのインスリンが産生されることが示唆される。さらに、インスリン:DNA比は、グルコース攻撃時に(22mMグルコース対5mM)いくつかの条件ではわずかに増加し、このことから、細胞は、より多くの量のインスリンを放出することによりグルコースに応答することが示唆される。
【0068】
(実施例12)
前の方法により得られたインスリン産生細胞を、前記のように遺伝子発現解析にかけた。表5は、最も多く発現された遺伝子のリスト、クロンテックatlas8K遺伝子アレイにおけるその位置、および、これらの遺伝子の相対的発現(標準化後)を含む。表5は付録1として本明細書に添付する。
【0069】
(実施例13)
一次ヒト膵臓細胞を、コラーゲン−1表面上でPCM中に0.5×105細胞/cm2で播種し、7日間増殖した。インスリンを、以下のように、1日目、7日目、および10日目に測定した:増殖培地を除去し、ウェルを3回リン酸緩衝食塩水で洗浄した。1時間37℃で5mMグルコースを含みインスリンを含まない基礎培地中でプレインキュベートした後、培地を除去し、1)5mMグルコースを含む基礎培地(インスリンを含まない)、または2)22mMグルコースを含む基礎培地(インスリンを含まない)と交換した。インスリンを、細胞コンディショニング培地中で18時間後に37℃で測定した。7日間培養した後、PCM培地を、1)新しいPCM、2)無血清基礎培地、3)23のすべての分化因子を含む無血清基礎培地、4)無血清組合せ1、または5)無血清組合せ2と交換した。結果を図15に示す。3日間分化因子に曝露した後、インスリン放出の増加が、分化因子の存在下で認められる。1日目の結果は、出発材料中における有意な数のインスリン産生細胞の存在について議論しており、一次培養物における腺房細胞からのインスリン産生細胞の新規産生を実証している。10日間の終了時に、グルコース攻撃に応答したインスリン放出は、PCMまたは基礎培地中よりもDFP培地中の方がはるかに高く、このことは、DFPが、腺上皮細胞からインスリン産生細胞への形質転換に対して奏功するという刺激効果を確証するということが図からわかる。
【0070】
(実施例14)
ヒト膵臓腺房細胞を、コラーゲンI表面上でPCM中で1日目から7日目まで培養し、これにより、7日目にはIP細胞の培養物が産生する。7日目に、IP細胞を洗浄し、PCM培地を、表2に列挙した30個の因子を含むG09分化培地と交換した。各時点で(1、7、10、および14日目)、培養物を3回PBSで洗浄し、その後、培養物を、5mMまたは22mMグルコースを含む、DMEMとHAMsF12の1:1混合物で攻撃することによりインスリン放出を測定した。18時間グルコースに曝露した後、上清を集め、インスリンをELISAにより測定した。結果を図15aに示す。
【0071】
(実施例15)
III.増殖させ、IP細胞へと分化させ、その後、インスリン産生細胞へとさらに分化させる、一次ヒト腺房細胞のいくつかの時点における発現研究
3つの独立した一次ヒト膵臓腺房細胞の試料を播種し、前記のように増殖した。0日目から8日目まで、細胞は、PCM中で104細胞/cm2で播種されたコラーゲンI表面上にあった。8日目、培地をPCMから、表2に示した活性因子を有する培地と交換した。細胞に、8日目から16日目までにG09(50%の培地を交換)を2回投入した。細胞は、培養プロセス全体を通じて表面上に留まった。培養物を最初に撒いた3日後に(活発に分化転換している腺房細胞)、撒いた8日後(IP細胞)、および撒いた16日後(インスリン産生細胞と推定)に収集し、実施例7に記載のように、遺伝子発現解析にかけた。mRNA発現データは、クロンテックの12Kマイクロアレイを用いて得られた。
【0072】
簡潔には、増殖培地を培養フラスコから取り出し、溶解溶液を細胞層上でピペッティングすることにより、約2分間、トリゾールLS(Invitrogen)カオトロープ/フェノール試薬中で細胞を溶解した。9mlの溶解溶液あたり、3mlのRNAse非含有水をOak Ridge遠心チューブ中に加えた。その後、2.4mlのクロロホルムを加え、溶液を激しく1分間ボルテックスにかけた。その後、水相および有機相を、4℃での遠心分離により分離し、RNAを含む上の水相を取り出し、清潔なPETチューブに移した。RNAをイソプロパノール沈降により沈降させ、70%エタノールで洗浄し、200μlのRNAse非含有水中に再度溶解した。カオトロープ溶解試薬を直ちにRNAに加え、DNAse消化ステップを含むキアゲンスピンカラム法を使用してさらに精製した。精製RNAは最終的に、80μlのRNAse非含有水に溶出し、−80℃で保存した。
【0073】
Atlas Pure Total RNAラベリングシステムの一部であるストレプトアビジン磁気ビーズ分離法を使用してポリA+RNAを最初に富化することにより、各試料からの30μgの全RNAから標識P−33cDNAプローブを調製した。各試料からの標識プローブを、約16時間、プラスチックヒト12K遺伝子アレイとハイブリダイズさせ、アレイを洗浄し、Atlasアレイプロトコルに従って画像化した。Atlas image2.7ソフトウェアを使用して、アレイ格子鋳型を用いてアレイ像を配列し、強いシグナル過剰発生に起因する偽のバックグラウンドシグナルまたは偽シグナルを排除した。その後、転写シグナルを、Atlas Image2.7ソフトウェアを使用してこれらの配列したアレイから抽出し、遺伝子発現の変化についてのさらなる統計学的解析を実施した。
【0074】
生発現データを以下のように解析した:1)我々は、3つの任意の条件/時点で発現されなかった遺伝子を除外した;2)我々は、アレイ間の差異および試料処理、ハイブリダイゼーションなどにおけるばらつきの効果を除去するために、互いに対してすべてのマイクロアレイを標準化した;3)我々は、条件/時点間の統計学的に有意な差異を示す遺伝子を同定した;そして、4)我々は、試験の設計および表現型の変化に矛盾しない様式で、その一時的パターンに基づいて遺伝子を群にまとめた。
【0075】
表6は、上の解析により同定された遺伝子についての発現データを示す。この表は付録2として本明細書に添付する。これらの同定された遺伝子は、3日後および8日後の両方で高いレベルで発現されているか、または、その発現は、3日後から8日後まで実質的に増加していた。表はまた、16日後におけるこれらの遺伝子の発現レベル、および、3つのすべての条件/時点における平均発現を示す。表はまた、種々の時点における発現比を示す:「I対A」は、推定インスリン産生細胞(16日後)対腺房(8日後)細胞の発現比であり;「Int対A」は、IP細胞(8日後)細胞対腺房細胞(3日後)の比である。
【0076】
表6に示したデータを、それらを17の中の1つの「クラス」に群にまとめることによりさらに解析し、その特徴を表に要約する。これらの17クラスの特徴のグラフ表示を図16に提示する。
【0077】
表6の8日後の時点のデータも、これらの細胞における8日後に発現された遺伝子が、(1)肝臓および膵臓で通常発現される遺伝子;(2)膵臓関連遺伝子;(3)肝臓関連遺伝子;または(4)前駆体関連遺伝子のクラスに属するかどうかに関してグループ分けした。結果を表7に示す。
【0078】
【表5−1】
【0079】
【表5−2】
【0080】
理解されるように、8日目にはIP細胞は、膵臓腺房細胞に一致する遺伝子をもはや発現しておらず、膵管細胞に特異的な遺伝子の相補体も発現していなかった。IP細胞は、インスリン、ソマトスタチン、および膵ポリペプチドを含む、膵臓島に関連したいくつかのマーカーを低いレベルで発現しており、このことは、集団中の少なくともいくつかの細胞は、膵臓島の内分泌遺伝子を発現するのに適合していることを示唆する。
【0081】
驚くべきことに、IP細胞はまた、いくつかの肝臓特異的転写因子(例えばC/EBPα、C−EBP−β)、および、肝臓「卵」幹細胞に関連したマーカーである、低いレベルのThy−1を含む、成熟および発達中の肝臓の他のマーカーを発現していた。このことから、分化中の細胞は単純に膵臓腺房から膵管に移行しているのではなく、肝臓特徴および膵臓特徴の両方をもつ細胞へと発達し、これらの細胞型の1つの任意の単一の遺伝子発現プロファイルにはあてはまらないことが示唆される。この実施例で産生された細胞は、銅欠乏食を供与したげっ歯類の膵臓から出現した細胞に似ている(例えばRaoら、1988参照)。このような動物の膵臓は、膵炎の急性期を通り、その後、肝臓の「ヘパチゼーション」を受ける(膵臓遺伝子よりもむしろ肝臓遺伝子を発現し始める細胞を意味する)。肝臓に似た細胞はまた、ヒト胎児膵臓でも報告されている(Tsanadisら、1995)。本発明の方法により産生された単離細胞(例えば、本発明の方法により一次腺房細胞または他の型の内胚葉細胞または前駆細胞を増殖することにより)は、卵細胞または銅欠乏食を与えたげっ歯類の膵臓から単離された細胞のような、IP細胞の特徴のいくつかを有し得る天然細胞とは区別できる。
【0082】
これらのIP細胞の特徴を有する細胞は、例えば、糖尿病の処置における治療アプローチに有用である場合がある。さらに、この実施例における細胞は膵臓に由来しているが、他の上皮組織、またはおそらくはさらには任意の内胚葉に由来する組織も、追加的な細胞の源となることができ、これは類似の表現型を有する細胞へと分化することができる。適切な組織型には、例えば、肝臓または腸が含まれる。これらのIP細胞は、膵臓、肝臓、腸、および神経組織に関連した遺伝子を発現する。例えば、それらは、膵臓、肝臓、および腸の管細胞に関連した共通のマーカーである、ムチン、CK19、およびCK7を発現する。したがって、これらのIP細胞に見られる遺伝子発現パターンは、インスリン産生細胞を作成する目的でこれらの各組織から誘導された細胞の予測的な目安として機能しうる。さらに、IP細胞は、適切な条件下で、膵臓島細胞だけでなく、肝細胞または任意の内胚葉由来組織も生じる。
【0083】
一部を上で引用した以下の文献の開示は本発明に関する:
特許文献1(Kerr−Conte);
非特許文献1;
非特許文献2;
非特許文献3;
非特許文献4;
非特許文献5;
非特許文献6;
非特許文献7;
非特許文献8;
非特許文献9;
非特許文献10;
非特許文献11;
非特許文献12;
非特許文献13;
非特許文献14;
非特許文献15;
非特許文献16;
非特許文献17;
特許文献2(Ammon Peck)。
【0084】
本明細書に説明および考察した実施形態は、本発明を作成および使用する上で発明者に知られた最善の方法を単に当業者に教示するためものであり、本発明の範囲を限定するものとは捉えるべきではない。本発明の例示した実施形態は改変または変更することができ、本発明から逸脱することなく、前記の教示に照らして当業者には理解されるように、要素を加えたりまたは削除したりすることができる。それ故、特許請求の範囲およびその均等物内で、本発明は、具体的に記載した以外の方法でも実施できることを理解すべきである。
【0085】
前記および図面に引用したすべての出願、特許および刊行物の全開示はその全体を参照することにより取り込まれる。
【0086】
【表6−1】
【0087】
【表6−2】
【0088】
【表6−3】
【0089】
【表6−4】
【0090】
【表6−5】
【0091】
【表6−6】
【0092】
【表7−1】
【0093】
【表7−2】
【0094】
【表7−3】
【0095】
【表7−4】
【0096】
【表7−5】
【0097】
【表7−6】
【0098】
【表7−7】
【0099】
【表7−8】
【0100】
【表7−9】
【0101】
【表7−10】
【0102】
【表7−11】
【0103】
【表7−12】
【0104】
【表7−13】
【0105】
【表7−14】
【0106】
【表7−15】
【0107】
【表7−16】
【0108】
【表7−17】
【0109】
【表7−18】
【0110】
【表7−19】
【0111】
【表7−20】
【0112】
【表7−21】
【0113】
【表7−22】
【0114】
【表7−23】
【0115】
【表7−24】
【0116】
【表7−25】
【0117】
【表7−26】
【0118】
【表7−27】
【0119】
【表7−28】
【0120】
【表7−29】
【0121】
【表7−30】
【0122】
【表7−31】
【0123】
【表7−32】
【0124】
【表7−33】
【0125】
【表7−34】
【0126】
【表7−35】
【0127】
【表7−36】
【0128】
【表7−37】
【0129】
【表7−38】
【0130】
【表7−39】
【0131】
【表7−40】
【0132】
【表7−41】
【0133】
【表7−42】
【0134】
【表7−43】
【0135】
【表7−44】
【0136】
【表7−45】
【0137】
【表7−46】
【0138】
【表7−47】
【0139】
【表7−48】
【0140】
【表7−49】
【0141】
【表7−50】
【0142】
【表7−51】
【0143】
【表7−52】
【0144】
【表7−53】
【0145】
【表7−54】
【0146】
【表7−55】
【0147】
【表7−56】
【0148】
【表7−57】
【0149】
【表7−58】
【0150】
【表7−59】
【0151】
【表7−60】
【0152】
【表7−61】
【0153】
【表7−62】
【0154】
【表7−63】
【0155】
【表7−64】
【0156】
【表7−65】
【0157】
【表7−66】
【0158】
【表7−67】
【0159】
【表7−68】
【0160】
【表7−69】
【0161】
【表7−70】
【0162】
【表7−71】
【0163】
【表7−72】
【0164】
【表7−73】
【0165】
【表7−74】
【0166】
【表7−75】
【0167】
【表7−76】
【0168】
【表7−77】
【0169】
【表7−78】
【0170】
【表7−79】
【0171】
【表7−80】
【0172】
【表7−81】
【0173】
【表7−82】
【0174】
【表7−83】
【0175】
【表7−84】
【0176】
【表7−85】
【0177】
【表7−86】
【0178】
【表7−87】
【0179】
【表7−88】
【0180】
【表7−89】
【0181】
【表7−90】
【0182】
【表7−91】
【0183】
【表7−92】
【0184】
【表7−93】
【0185】
【表7−94】
【0186】
【表7−95】
【図面の簡単な説明】
【0187】
【図1A】アミラーゼ(図1A)に対する抗体で出発材料を処理した後の顕微鏡像を示す図である。
【図1B】インスリン(図1B)に対する抗体で出発材料を処理した後の顕微鏡像を示す図である。
【図1C】CK19(図1C)に対する抗体で出発材料を処理した後の顕微鏡像を示す図である。
【図1D】新しく単離した一次ヒト膵臓細胞の細胞ペレットの組成(図1D)を示す図である。
【図2A】市販の培地(血清を含む)または血清を含む記載の膵臓細胞培地(PCM)中で増殖された一次ヒト膵臓培養物から作成した増殖曲線を示す図である。
【図2B】市販の培地(血清を含む)または血清を含む記載の膵臓細胞培地(PCM)中で増殖された一次ヒト膵臓培養物から作成した増殖曲線を示す図である。
【図3】記載の基礎培地組成物vs基礎培地+可溶性成長因子(無血清調合)vs基礎培地+ウシ胎児血清中の細胞増殖の比較を示す図である。
【図4A】増殖後の全細胞数(図4A)に対する異なる培養表面の効果を示す図である。
【図4B】増殖後の細胞表現型(図4B)に対する異なる培養表面の効果を示す図である。
【図5A】すべての可溶性の活性因子を含む、血清含有(5A)培地中での増殖後の細胞表現型の比較を示す図である。
【図5B】すべての可溶性の活性因子を含む、無血清(5B)培地中での増殖後の細胞表現型の比較を示す図である。
【図6】3つの可溶性活性因子であるHGF、EGFおよびTGFAを補充した無血清培地を含む、種々の条件で増殖した細胞培養物の高倍率像を示す図である。上皮形態に注意。
【図7】経過時間による代謝活性アッセイにより決定される、ECMで被覆した表面上でのIP細胞の増殖の実証を示す図である。コラーゲンI表面を、本明細書に記載の培地調合と組み合わせた場合のより優れた増殖に注意し、マトリゲルと市販の血清を有する培地の組合せよりも優れた結果が得られている。
【図8A】図8A(上の左)は、2日間培養した後の腺房細胞によるアミラーゼの発現を示す(赤い染色)。
【図8B】図8B(下の左)はCK19の発現を示す(緑の染色)。
【図8C】図8Cは2つの像の重ね合わせを示す図であり、多くの比率の細胞で共発現がなされている(黄色)。
【図9A】5日間におよぶ培養物中での一次腺房細胞の変化している表現型を示す図である。アミラーゼは赤であり、CK19は緑である。2日後および3日後の黄色の出現に注意(アミラーゼ+CK19)。
【図9B】5日間におよぶ培養物中での一次腺房細胞の変化している表現型を示す図である。アミラーゼは赤であり、CK19は緑である。2日後および3日後の黄色の出現に注意(アミラーゼ+CK19)。
【図9C】5日間におよぶ培養物中での一次腺房細胞の変化している表現型を示す図である。アミラーゼは赤であり、CK19は緑である。2日後および3日後の黄色の出現に注意(アミラーゼ+CK19)。
【図9D】5日間におよぶ培養物中での一次腺房細胞の変化している表現型を示す図である。アミラーゼは赤であり、CK19は緑である。2日後および3日後の黄色の出現に注意(アミラーゼ+CK19)。
【図10A】コラーゲンIで被覆された表面上での血清含有培地中で増殖した一次ヒト膵臓細胞を示す図である。像を解析して、全細胞(図10A、青い核)を決定した。
【図10B】コラーゲンIで被覆された表面上での血清含有培地中で増殖した一次ヒト膵臓細胞を示す図である。像を解析して、全陽性細胞(図10B、青い核が、CK19について染色している緑により囲まれている)を決定した。
【図11】すべてのDPF(アクチビンA、0.5ng/ml;酸性FGF、2.5ng/ml;塩基性FGF、C型ナトリウム利尿ペプチド(CNP)、0.11μg/ml;カルシトニン遺伝子関連ペプチド、0.19μg/ml;コレラ毒素Bサブユニット、12.5ng/ml;デキサメタゾン、0.002μg/ml;ガストリン放出ペプチド、0.143μg/ml;グルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)、0.033μg/ml;グルコース、1.08μg/ml;IGF1、0.0025μg/ml;IGF2、0.0025μg/ml;インスリン、9.5μg/ml;ラミニン、2.25μg/ml;LIF、0.0025μg/ml;Met−エンケファリン、0.0030μg/ml;PDGFAA+PDGFBB(0.0050μg/ml:0.0025μg/mlのPDGFAA+0.0025μg/mlのPDGFBB);プロラクチン、0.0012μg/ml;ソニックヘッジホッグ、0.025μg/ml;サブスタンスP、5.0μg/ml;TGF−α、0.0010μg/ml;トロロクス(α−トコフェロール誘導体)、0.625μg/ml;およびVEGF、0.0025μg/ml)を含むコラーゲンI表面上で培養された膵臓腺房細胞の光学顕微鏡(200倍)外観を示す図である。
【図12A】CK19抗体(緑)を用いての免疫細胞化学解析を示す図である。
【図12B】C−ペプチド抗体(赤)を用いての免疫細胞化学解析を示す図である。
【図12C】CK19およびC−ペプチド(オレンジ)の共局在を実証した重ね合わせ像を示す図である。青い部分はDAPI染色核である。
【図13A】成長および分化プロセス中に脱着および再配置(継代培養)していないIP細胞における、グルコース攻撃時のインスリン放出を示す図である。
【図13B】実施例10に従って継代培養しておいたIP細胞における、グルコース攻撃時のインスリン放出を示す図である。
【図13C】実施例10に従って継代培養しておかなかったIP細胞における、グルコース攻撃時のC−ペプチド放出を示す図である。
【図14】実施例11に記載のように、DFP培地の組合せ1、2、および3で処理した継代培養および非継代培養細胞におけるインスリン/DNAの比を示す図である。
【図15】実施例13に記載のように、PCMおよびDPF培地中での10日間の培養にわたる、基礎レベルグルコース(5mm)およびグルコース攻撃(22mm)に応答したインスリン放出を示す図である。
【図15A】実施例14に詳述したように、PCMおよびDMG9培地中での14日間の培養にわたる、基礎レベルグルコース(5mm)およびグルコース攻撃(22mm)に応答したインスリン放出を示す図である。
【図16】実施例14に詳述したように、表の最後の列に示したように、表6に示した17クラスの遺伝子の特徴のグラフ表示である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
腺房細胞が、腺房細胞および肝臓細胞の特徴を示す改変細胞表現型(IP細胞)への分化転換と共に3〜4倍の増殖を受ける条件下で、細胞用培地および細胞付着表面を含む細胞培養システム中で、細胞を培養することを含む哺乳類腺房細胞の増殖法。
【請求項2】
改変表現型を有する前記細胞は、サイトケラチン18(CK18)、CK8、CK19、CK7、HNF1、α−1アンチトリプシン、pi−グルタチオンsトランスフェラーゼ(pi−GST)、肝臓特異的bHLH転写因子、Thy−1、C/EBP−α、およびC/EBP−βを発現し、炭酸脱水酵素、嚢胞性線維性膜貫通調節因子(CFTR)、エラスターゼ、およびアミラーゼをほとんど発現しないことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記培地は、上皮細胞の維持に適した基礎培地中に、インスリン、トランスフェリン、セレニウム、および上皮増殖因子(EGF)を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記培地は血清を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記培地は15%までの血清を含むことを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記細胞用培地は無血清であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記培地は、腺房細胞の成長増殖およびIP細胞への分化転換を促進する、少なくとも1つの可溶性活性因子の有効量を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記培地は、熱失活ウシ血清アルブミン(BSA)および可溶性活性因子肝細胞増殖因子(HGF)、インスリン様増殖因子−1(IGF−1)、形質転換増殖因子α(TGF−α)、ベータセルリン、ガストリンI、およびプロラクチンからなる群から選択される少なくとも1つの因子の有効量を含むことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記培地は、HGF、ベータセルリン、およびプロラクチンからなる群から選択される少なくとも1つの可溶性活性因子の有効量を含むことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記細胞付着表面は、1つ以上の細胞外マトリックス分子を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記細胞付着表面は、コラーゲンI、コラーゲンVI、コラーゲンIV、ビトロネクチン、およびフィブロネクチンからなる群から選択される1つ以上の細胞外マトリックス分子を含むことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
細胞は、103〜105細胞/cm2の密度で播種されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項13】
細胞は4〜8日間の期間培養されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項14】
腺房細胞はヒト腺房細胞であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項15】
腺房細胞は、アミラーゼ+腺房表現型からアミラーゼ+/CK19+混合腺房/肝臓特異的表現型への分化転換を受けることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項16】
インスリン、トランスフェリン、セレニウム、およびEGFを含む哺乳類上皮細胞を維持するのに適した基礎培地を含む培地であって、適切な条件下で4〜8日間前記培地中でヒト腺房細胞を培養することにより、前記細胞が3〜4倍まで増殖し、腺房細胞および肝臓細胞の特徴を示す改変細胞表現型へと分化転換されることを特徴とする培地。
【請求項17】
基礎培地は、DMEM、HamsF12、MEM、M−199、またはRPMI、またはその組合せを含むことを特徴とする請求項16に記載の培地。
【請求項18】
基礎培地は、4mMのグルタミン、および、DMEMとHams12の1:1混合物を含むことを特徴とする請求項17に記載の培地。
【請求項19】
さらに血清を含むことを特徴とする請求項16に記載の培地。
【請求項20】
さらに15%までの血清を含むことを特徴とする請求項19に記載の培地。
【請求項21】
無血清であることを特徴とする請求項16に記載の培地。
【請求項22】
約0.1〜10μg/mlのインスリン、約0.5〜10μg/mlのトランスフェリン、約0.25〜5.0ng/mlのセレニウム、および約1〜20ng/lのEGFを含むことを特徴とする請求項16に記載の細胞用培地。
【請求項23】
腺房細胞の増殖およびIP細胞への分化転換を促進する少なくとも1つの可溶性活性因子の有効量をさらに含むことを特徴とする請求項16に記載の細胞用培地。
【請求項24】
熱失活BNSAおよび可溶性活性因子アルブミン、HGF、IGF−1、TGF−α、ベータセルリン、ガストリンI、およびプロラクチンからなる群から選択される少なくとも1つの因子の有効量をさらに含むことを特徴とする請求項16に記載の細胞用培地。
【請求項25】
BSAの濃度は0.1〜2%であり、HGFの濃度は1〜20ng/mlであり、IGF−1の濃度は0.5〜50ng/mlであり、TGF−αの濃度は1〜10ng/mlであり、ベータセルリンの濃度は0.0005〜0.1μg/mlであり、ガストリンIの濃度は1〜100pg/mlであり、プロラクチンの濃度は1〜10ng/mlであることを特徴とする請求項24に記載の細胞用培地。
【請求項26】
HGF、ベータセルリン、およびプロラクチンからなる群から選択される少なくとも1つの可溶性活性因子の有効量を含むことを特徴とする請求項24に記載の細胞用培地。
【請求項27】
請求項16に記載の細胞用培地および細胞付着表面を含むことを特徴とする細胞培養システム。
【請求項28】
細胞付着表面は、コラーゲンI、コラーゲンVI、コラーゲンIV、ビトロネクチン、およびフィブロネクチンからなる群から選択される組成物を含むことを特徴とする請求項27に記載の細胞培養システム。
【請求項29】
腺房および肝臓関連マーカーの両方を含む表現型を有する単離された哺乳類細胞。
【請求項30】
CK18、CK8、CK19、CK7、HNF1、α−1アンチトリプシン、pi−グルタチオンsトランスフェラーゼ(pi−GST)、肝臓特異的bHLH転写因子、Thy−1、C/EBP−α、およびC/EBP−βからなる群から選択される少なくとも1つのマーカーを発現し、以下のマーカー:炭酸脱水酵素、嚢胞性線維性膜貫通調節因子(CFTR)、エラスターゼ、およびアミラーゼをほとんどまたはまったく発現しないことを特徴とする請求項29に記載の単離細胞。
【請求項31】
CK18、CK8、CK19、CK7、HNF1、α−1アンチトリプシン、pi−グルタチオンsトランスフェラーゼ(pi−GST)、肝臓特異的bHLH転写因子、Thy−1、C/EBP−α、およびC/EBP−βを発現することを特徴とする請求項29に記載の単離細胞。
【請求項32】
膵臓腺房細胞の一次培養物から誘導されることを特徴とする請求項29に記載の単離細胞。
【請求項33】
ヒトである請求項29に記載の単離細胞。
【請求項34】
表6に示したようなex vivoでの8日後の発現プロファイルを有することを特徴とする請求項29に記載の単離細胞。
【請求項35】
請求項1に記載の方法により調製された単離細胞。
【請求項36】
a)哺乳類上皮細胞の培養に適した基礎培地:
b)コラーゲンIで被覆された培養基質、および、別個にパッケージングされた、
c)BSA、HGF、EGF、TGFA、ベータセルリン、ガストリンI、およびIGF−1からなる群から選択された1つ以上の成分を含む無血清培地サプリメントとを含むことを特徴とする哺乳類腺房細胞の増殖に適したキット。
【請求項37】
無血清培地サプリメントは、予め決められた量の基礎培地の添加により、0.1〜2%のBSA、1〜20ng/mlのHGF、1〜20ng/mlのEGF、1〜10ng/mlのTGFA、0.0005〜0.10μg/mlのベータセルリン、1.0〜100pg/mLのガストリン1、および0.5〜50ng/mLのIGF1を含む培地を作製するために適切な比で成分を含むことを特徴とする請求項36に記載のキット。
【請求項38】
細胞培養基質は、細胞培養に適した、フラスコ、ボトル、ペトリ皿、プレート、またはウェルの表面上にあるか、または足場の一部であることを特徴とする請求項36に記載のキット。
【請求項39】
腺房細胞および肝臓関連遺伝子のマーカーを発現するIP細胞を、in vitroで、インスリン産生細胞に形質転換する方法であって、前記IP細胞を、アクチビンA、酸性FGF、塩基性FGF、C−ナトリウム利尿ペプチド(CNP)、カルシトニン遺伝子関連ペプチド、コレラ毒素Bサブユニット、デキサメタゾン、ガストリン放出ペプチド、グルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)、グルコース、IGF1、IGF2、インスリン、ラミニン、LIF、Met−エンケファリン、PDGFAA+PDGFBB、プロラクチン、ソニックヘッジホッグ、サブスタンスP、TGF−α、トロロクス(α−トコフェロール誘導体)、およびVEGFからなる群から選択される少なくとも1種の分化促進因子の有効量を含む細胞用培地中で、IP細胞がインスリン産生細胞へと形質転換されるように培養することを含むことを特徴とする方法。
【請求項40】
IP細胞は、膵臓腺房細胞の培養物由来であることを特徴とする請求項39に記載の方法。
【請求項41】
細胞はヒト細胞であることを特徴とする請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記細胞を、1種または複数の細胞外マトリックス分子で被覆されている基質と接触させることをさらに含むことを特徴とする請求項39に記載の方法。
【請求項43】
細胞外マトリックス分子は、コラーゲンI、コラーゲンVI、コラーゲンIV、ビトロネクチン、および/またはフィブロネクチンであることを特徴とする請求項42に記載の方法。
【請求項44】
基質は、フラスコ、ペトリ皿、プレート、ウェル、または回転ボトルの表面上にあるか、または足場の一部であることを特徴とする請求項42に記載の方法。
【請求項45】
培地は無血清であることを特徴とする請求項39に記載の方法。
【請求項46】
培地は血清を含むことを特徴とする請求項39に記載の方法。
【請求項47】
培地は、BSA、インスリン、トランスフェリン、セレニウム、および上皮成長因子(EGF)を含むことを特徴とする請求項46に記載の方法。
【請求項48】
細胞は、5×103から20×105細胞/cm2の密度で基質上に播種されることを特徴とする請求項39に記載の方法。
【請求項49】
請求項39の方法により生成された単離インスリン産生細胞。
【請求項50】
哺乳類腺房細胞をin vitroで分化することにより調製されたインスリン産生細胞であって、前記インスリン産生細胞は、16日後に表6に示したようなex vivoでの発現プロファイルを有することを特徴とするインスリン産生細胞。
【請求項51】
アクチビンA、酸性FGF、塩基性FGF、C−ナトリウム利尿ペプチド(CNP)、カルシトニン遺伝子関連ペプチド、コレラ毒素Bサブユニット、デキサメタゾン、ガストリン放出ペプチド、グルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)、グルコース、IGF1、IGF2、インスリン、ラミニン、LIF、Met−エンケファリン、PDGFAA+PDGFBB、プロラクチン、ソニックヘッジホッグ、サブスタンスP、TGF−α、トロロクス(α−トコフェロール誘導体)、およびVEGFからなる群から選択された少なくとも1種の活性因子を含む無血清培地であって、前記培地は、インスリン産生細胞へのIP細胞の分化を促進することを特徴とする培地。
【請求項52】
DMEMおよびHamsF12の1:1混合物と表2に列挙した成分を含む無血清培地。
【請求項53】
a)哺乳類上皮細胞の培養に適した基礎培地、
b)コラーゲンIで被覆された培養基質、および、別個にパッケージングされた、
c)BSA、アクチビンA、酸性FGF、塩基性FGF、C−ナトリウム利尿ペプチド(CNP)、カルシトニン遺伝子関連ペプチド、コレラ毒素Bサブユニット、デキサメタゾン、ガストリン放出ペプチド、グルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)、グルコース、IGF1、IGF2、インスリン、ラミニン、LIF、Met−エンケファリン、PDGFAA+PDGFBB、プロラクチン、ソニックヘッジホッグ、サブスタンスP、TGF−α、トロロクス(α−トコフェロール誘導体)、またはVEGF、またはこれらの成分の2種以上の組合せを、本明細書の表1に示したような完全培地中での最終濃度を生じるに適切な量で含む、無血清培地サプリメントとを含有することを特徴とするIP細胞をインスリン産生細胞に分化するのに適したキット。
【請求項54】
細胞培養基質は、細胞培養に適したフラスコ、ボトル、ペトリ皿、プレート、またはウェルの表面上に含まれることを特徴とする請求項53に記載のキット。
【請求項55】
in vitroで膵臓腺房細胞の培養および操作を通じてインスリン産生細胞を得る方法であって、
i)腺房細胞が、サイトケラチン18(CK18)、CK8、CK19、CK7、HNF1、α−1アンチトリプシン、pi−グルタチオンsトランスフェラーゼ(pi−GST)、肝臓特異的bHLH転写因子、Thy−1、C/EBP−αおよびC/EBP−βを発現し、炭酸脱水酵素、嚢胞性線維性膜貫通調節因子(CFTR)、エラスターゼ、およびアミラーゼはほとんど発現しない部分的に分化したIP細胞への分化転換と共に3〜4倍の増殖を受ける条件下で、培地および培養付着表面を含む細胞培養システム中で膵臓腺房細胞を培養し、
ii)前記IP細胞を、細胞用培地および基質を含む細胞培養システム中で培養し、前記培地は、アクチビンA、酸性FGF、塩基性FGF、C−ナトリウム利尿ペプチド(CNP)、カルシトニン遺伝子関連ペプチド、コレラ毒素Bサブユニット、デキサメタゾン、ガストリン放出ペプチド、グルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)、グルコース、IGF1、IGF2、インスリン、ラミニン、LIF、Met−エンケファリン、PDGFAA+PDGFBB、プロラクチン、ソニックヘッジホッグ、サブスタンスP、TGF−α、トロロクス(α−トコフェロール誘導体)、およびVEGFからなる群から選択された少なくとも1つの分化促進因子の有効量を含み、よって、IP細胞は、インスリン産生細胞へと形質転換されるステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項56】
前記インスリン産生細胞は、グルコースへの曝露に応答して、c−ペプチドおよび/またはインスリンを放出することを特徴とする請求項55に記載の方法。
【請求項57】
ステップi)の培地は、HGF受容体アクチベーターおよびEGF受容体アクチベーターを含むことを特徴とする請求項55に記載の方法。
【請求項58】
ステップii)の培地は、C−ナトリウム利尿ペプチド(CNP)、カルシトニン遺伝子関連ペプチド、コレラ毒素Bサブユニット、デキサメタゾン、ガストリン放出ペプチド、ラミニン、Met−エンケファリン、PDGFAA+PDGFBB、ソニックヘッジホッグ、およびサブスタンスPからなる群から選択される少なくとも1つの可溶性活性因子の有効量を含むことを特徴とする請求項55に記載の方法。
【請求項59】
インスリン産生細胞を得る方法であって、前記方法は、一次膵臓細胞を二期培養システムで培養することを含み、第一期では、細胞を、HGF、TGFα、EGF、IGF1、ベータセルリン、プロラクチン、およびガストリン1からなる群から選択された少なくとも1つの活性可溶性因子を含む培地中に少なくとも1つのECMの有効量を含む表面上で4〜10日間培養し、第二期では、細胞を、アクチビンA、CGRPα、Cナトリウム利尿ペプチド(CNP)、コレラ毒素Bサブユニット、デキサメタゾン、aFGF、グルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)、グルコース、インスリン、LIF、PDGFAA、PDGFBB、TGF−α、プロラクチン、トロロクス(ビタミンE)、ガストリン放出ペプチド(GRP)、IGF−1、IGF−2、ラミニン、Met−エンケファリン、ソニックヘッジホッグ、サブスタンスP、bFGF、およびVEGFからなる群から選択された少なくとも1つの分化促進因子の有効量を含む培地中に少なくとも1つのECMを含む表面上で3〜14日間培養して、インスリン産生細胞を得ることを特徴とする方法。
【請求項60】
サイトケラチン18(CK18)、CK8、CK19、CK7、HNF1、α−1アンチトリプシン、pi−グルタチオンsトランスフェラーゼ(pi−GST)、肝臓特異的bHLH転写因子、Thy−1、C/EBP−αおよびC/EBP−βからなる群から選択された少なくとも1つのマーカーを発現し、炭酸脱水酵素、嚢胞性線維性膜貫通調節因子(CFTR)、エラスターゼ、およびアミラーゼはほとんど発現しない腺性上皮細胞から誘導されたインスリン産生細胞の一次培養物であって、前記インスリン産生細胞は、プロインスリンおよび/またはインスリンおよび/またはc−ペプチドを含む3次元細胞クラスターを形成する特徴を有する一次培養物。
【請求項61】
腺性上皮細胞は、膵臓細胞であることを特徴とする請求項60に記載の培養物。
【請求項62】
培養物は、グルコース攻撃に応答して、インスリンおよび/またはc−ペプチドを放出することを特徴とする請求項60に記載の培養物。
【請求項63】
腺性上皮細胞はヒト細胞であることを特徴とする請求項60に記載の培養物。
【請求項1】
腺房細胞が、腺房細胞および肝臓細胞の特徴を示す改変細胞表現型(IP細胞)への分化転換と共に3〜4倍の増殖を受ける条件下で、細胞用培地および細胞付着表面を含む細胞培養システム中で、細胞を培養することを含む哺乳類腺房細胞の増殖法。
【請求項2】
改変表現型を有する前記細胞は、サイトケラチン18(CK18)、CK8、CK19、CK7、HNF1、α−1アンチトリプシン、pi−グルタチオンsトランスフェラーゼ(pi−GST)、肝臓特異的bHLH転写因子、Thy−1、C/EBP−α、およびC/EBP−βを発現し、炭酸脱水酵素、嚢胞性線維性膜貫通調節因子(CFTR)、エラスターゼ、およびアミラーゼをほとんど発現しないことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記培地は、上皮細胞の維持に適した基礎培地中に、インスリン、トランスフェリン、セレニウム、および上皮増殖因子(EGF)を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記培地は血清を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記培地は15%までの血清を含むことを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記細胞用培地は無血清であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記培地は、腺房細胞の成長増殖およびIP細胞への分化転換を促進する、少なくとも1つの可溶性活性因子の有効量を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記培地は、熱失活ウシ血清アルブミン(BSA)および可溶性活性因子肝細胞増殖因子(HGF)、インスリン様増殖因子−1(IGF−1)、形質転換増殖因子α(TGF−α)、ベータセルリン、ガストリンI、およびプロラクチンからなる群から選択される少なくとも1つの因子の有効量を含むことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記培地は、HGF、ベータセルリン、およびプロラクチンからなる群から選択される少なくとも1つの可溶性活性因子の有効量を含むことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記細胞付着表面は、1つ以上の細胞外マトリックス分子を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記細胞付着表面は、コラーゲンI、コラーゲンVI、コラーゲンIV、ビトロネクチン、およびフィブロネクチンからなる群から選択される1つ以上の細胞外マトリックス分子を含むことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
細胞は、103〜105細胞/cm2の密度で播種されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項13】
細胞は4〜8日間の期間培養されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項14】
腺房細胞はヒト腺房細胞であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項15】
腺房細胞は、アミラーゼ+腺房表現型からアミラーゼ+/CK19+混合腺房/肝臓特異的表現型への分化転換を受けることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項16】
インスリン、トランスフェリン、セレニウム、およびEGFを含む哺乳類上皮細胞を維持するのに適した基礎培地を含む培地であって、適切な条件下で4〜8日間前記培地中でヒト腺房細胞を培養することにより、前記細胞が3〜4倍まで増殖し、腺房細胞および肝臓細胞の特徴を示す改変細胞表現型へと分化転換されることを特徴とする培地。
【請求項17】
基礎培地は、DMEM、HamsF12、MEM、M−199、またはRPMI、またはその組合せを含むことを特徴とする請求項16に記載の培地。
【請求項18】
基礎培地は、4mMのグルタミン、および、DMEMとHams12の1:1混合物を含むことを特徴とする請求項17に記載の培地。
【請求項19】
さらに血清を含むことを特徴とする請求項16に記載の培地。
【請求項20】
さらに15%までの血清を含むことを特徴とする請求項19に記載の培地。
【請求項21】
無血清であることを特徴とする請求項16に記載の培地。
【請求項22】
約0.1〜10μg/mlのインスリン、約0.5〜10μg/mlのトランスフェリン、約0.25〜5.0ng/mlのセレニウム、および約1〜20ng/lのEGFを含むことを特徴とする請求項16に記載の細胞用培地。
【請求項23】
腺房細胞の増殖およびIP細胞への分化転換を促進する少なくとも1つの可溶性活性因子の有効量をさらに含むことを特徴とする請求項16に記載の細胞用培地。
【請求項24】
熱失活BNSAおよび可溶性活性因子アルブミン、HGF、IGF−1、TGF−α、ベータセルリン、ガストリンI、およびプロラクチンからなる群から選択される少なくとも1つの因子の有効量をさらに含むことを特徴とする請求項16に記載の細胞用培地。
【請求項25】
BSAの濃度は0.1〜2%であり、HGFの濃度は1〜20ng/mlであり、IGF−1の濃度は0.5〜50ng/mlであり、TGF−αの濃度は1〜10ng/mlであり、ベータセルリンの濃度は0.0005〜0.1μg/mlであり、ガストリンIの濃度は1〜100pg/mlであり、プロラクチンの濃度は1〜10ng/mlであることを特徴とする請求項24に記載の細胞用培地。
【請求項26】
HGF、ベータセルリン、およびプロラクチンからなる群から選択される少なくとも1つの可溶性活性因子の有効量を含むことを特徴とする請求項24に記載の細胞用培地。
【請求項27】
請求項16に記載の細胞用培地および細胞付着表面を含むことを特徴とする細胞培養システム。
【請求項28】
細胞付着表面は、コラーゲンI、コラーゲンVI、コラーゲンIV、ビトロネクチン、およびフィブロネクチンからなる群から選択される組成物を含むことを特徴とする請求項27に記載の細胞培養システム。
【請求項29】
腺房および肝臓関連マーカーの両方を含む表現型を有する単離された哺乳類細胞。
【請求項30】
CK18、CK8、CK19、CK7、HNF1、α−1アンチトリプシン、pi−グルタチオンsトランスフェラーゼ(pi−GST)、肝臓特異的bHLH転写因子、Thy−1、C/EBP−α、およびC/EBP−βからなる群から選択される少なくとも1つのマーカーを発現し、以下のマーカー:炭酸脱水酵素、嚢胞性線維性膜貫通調節因子(CFTR)、エラスターゼ、およびアミラーゼをほとんどまたはまったく発現しないことを特徴とする請求項29に記載の単離細胞。
【請求項31】
CK18、CK8、CK19、CK7、HNF1、α−1アンチトリプシン、pi−グルタチオンsトランスフェラーゼ(pi−GST)、肝臓特異的bHLH転写因子、Thy−1、C/EBP−α、およびC/EBP−βを発現することを特徴とする請求項29に記載の単離細胞。
【請求項32】
膵臓腺房細胞の一次培養物から誘導されることを特徴とする請求項29に記載の単離細胞。
【請求項33】
ヒトである請求項29に記載の単離細胞。
【請求項34】
表6に示したようなex vivoでの8日後の発現プロファイルを有することを特徴とする請求項29に記載の単離細胞。
【請求項35】
請求項1に記載の方法により調製された単離細胞。
【請求項36】
a)哺乳類上皮細胞の培養に適した基礎培地:
b)コラーゲンIで被覆された培養基質、および、別個にパッケージングされた、
c)BSA、HGF、EGF、TGFA、ベータセルリン、ガストリンI、およびIGF−1からなる群から選択された1つ以上の成分を含む無血清培地サプリメントとを含むことを特徴とする哺乳類腺房細胞の増殖に適したキット。
【請求項37】
無血清培地サプリメントは、予め決められた量の基礎培地の添加により、0.1〜2%のBSA、1〜20ng/mlのHGF、1〜20ng/mlのEGF、1〜10ng/mlのTGFA、0.0005〜0.10μg/mlのベータセルリン、1.0〜100pg/mLのガストリン1、および0.5〜50ng/mLのIGF1を含む培地を作製するために適切な比で成分を含むことを特徴とする請求項36に記載のキット。
【請求項38】
細胞培養基質は、細胞培養に適した、フラスコ、ボトル、ペトリ皿、プレート、またはウェルの表面上にあるか、または足場の一部であることを特徴とする請求項36に記載のキット。
【請求項39】
腺房細胞および肝臓関連遺伝子のマーカーを発現するIP細胞を、in vitroで、インスリン産生細胞に形質転換する方法であって、前記IP細胞を、アクチビンA、酸性FGF、塩基性FGF、C−ナトリウム利尿ペプチド(CNP)、カルシトニン遺伝子関連ペプチド、コレラ毒素Bサブユニット、デキサメタゾン、ガストリン放出ペプチド、グルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)、グルコース、IGF1、IGF2、インスリン、ラミニン、LIF、Met−エンケファリン、PDGFAA+PDGFBB、プロラクチン、ソニックヘッジホッグ、サブスタンスP、TGF−α、トロロクス(α−トコフェロール誘導体)、およびVEGFからなる群から選択される少なくとも1種の分化促進因子の有効量を含む細胞用培地中で、IP細胞がインスリン産生細胞へと形質転換されるように培養することを含むことを特徴とする方法。
【請求項40】
IP細胞は、膵臓腺房細胞の培養物由来であることを特徴とする請求項39に記載の方法。
【請求項41】
細胞はヒト細胞であることを特徴とする請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記細胞を、1種または複数の細胞外マトリックス分子で被覆されている基質と接触させることをさらに含むことを特徴とする請求項39に記載の方法。
【請求項43】
細胞外マトリックス分子は、コラーゲンI、コラーゲンVI、コラーゲンIV、ビトロネクチン、および/またはフィブロネクチンであることを特徴とする請求項42に記載の方法。
【請求項44】
基質は、フラスコ、ペトリ皿、プレート、ウェル、または回転ボトルの表面上にあるか、または足場の一部であることを特徴とする請求項42に記載の方法。
【請求項45】
培地は無血清であることを特徴とする請求項39に記載の方法。
【請求項46】
培地は血清を含むことを特徴とする請求項39に記載の方法。
【請求項47】
培地は、BSA、インスリン、トランスフェリン、セレニウム、および上皮成長因子(EGF)を含むことを特徴とする請求項46に記載の方法。
【請求項48】
細胞は、5×103から20×105細胞/cm2の密度で基質上に播種されることを特徴とする請求項39に記載の方法。
【請求項49】
請求項39の方法により生成された単離インスリン産生細胞。
【請求項50】
哺乳類腺房細胞をin vitroで分化することにより調製されたインスリン産生細胞であって、前記インスリン産生細胞は、16日後に表6に示したようなex vivoでの発現プロファイルを有することを特徴とするインスリン産生細胞。
【請求項51】
アクチビンA、酸性FGF、塩基性FGF、C−ナトリウム利尿ペプチド(CNP)、カルシトニン遺伝子関連ペプチド、コレラ毒素Bサブユニット、デキサメタゾン、ガストリン放出ペプチド、グルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)、グルコース、IGF1、IGF2、インスリン、ラミニン、LIF、Met−エンケファリン、PDGFAA+PDGFBB、プロラクチン、ソニックヘッジホッグ、サブスタンスP、TGF−α、トロロクス(α−トコフェロール誘導体)、およびVEGFからなる群から選択された少なくとも1種の活性因子を含む無血清培地であって、前記培地は、インスリン産生細胞へのIP細胞の分化を促進することを特徴とする培地。
【請求項52】
DMEMおよびHamsF12の1:1混合物と表2に列挙した成分を含む無血清培地。
【請求項53】
a)哺乳類上皮細胞の培養に適した基礎培地、
b)コラーゲンIで被覆された培養基質、および、別個にパッケージングされた、
c)BSA、アクチビンA、酸性FGF、塩基性FGF、C−ナトリウム利尿ペプチド(CNP)、カルシトニン遺伝子関連ペプチド、コレラ毒素Bサブユニット、デキサメタゾン、ガストリン放出ペプチド、グルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)、グルコース、IGF1、IGF2、インスリン、ラミニン、LIF、Met−エンケファリン、PDGFAA+PDGFBB、プロラクチン、ソニックヘッジホッグ、サブスタンスP、TGF−α、トロロクス(α−トコフェロール誘導体)、またはVEGF、またはこれらの成分の2種以上の組合せを、本明細書の表1に示したような完全培地中での最終濃度を生じるに適切な量で含む、無血清培地サプリメントとを含有することを特徴とするIP細胞をインスリン産生細胞に分化するのに適したキット。
【請求項54】
細胞培養基質は、細胞培養に適したフラスコ、ボトル、ペトリ皿、プレート、またはウェルの表面上に含まれることを特徴とする請求項53に記載のキット。
【請求項55】
in vitroで膵臓腺房細胞の培養および操作を通じてインスリン産生細胞を得る方法であって、
i)腺房細胞が、サイトケラチン18(CK18)、CK8、CK19、CK7、HNF1、α−1アンチトリプシン、pi−グルタチオンsトランスフェラーゼ(pi−GST)、肝臓特異的bHLH転写因子、Thy−1、C/EBP−αおよびC/EBP−βを発現し、炭酸脱水酵素、嚢胞性線維性膜貫通調節因子(CFTR)、エラスターゼ、およびアミラーゼはほとんど発現しない部分的に分化したIP細胞への分化転換と共に3〜4倍の増殖を受ける条件下で、培地および培養付着表面を含む細胞培養システム中で膵臓腺房細胞を培養し、
ii)前記IP細胞を、細胞用培地および基質を含む細胞培養システム中で培養し、前記培地は、アクチビンA、酸性FGF、塩基性FGF、C−ナトリウム利尿ペプチド(CNP)、カルシトニン遺伝子関連ペプチド、コレラ毒素Bサブユニット、デキサメタゾン、ガストリン放出ペプチド、グルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)、グルコース、IGF1、IGF2、インスリン、ラミニン、LIF、Met−エンケファリン、PDGFAA+PDGFBB、プロラクチン、ソニックヘッジホッグ、サブスタンスP、TGF−α、トロロクス(α−トコフェロール誘導体)、およびVEGFからなる群から選択された少なくとも1つの分化促進因子の有効量を含み、よって、IP細胞は、インスリン産生細胞へと形質転換されるステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項56】
前記インスリン産生細胞は、グルコースへの曝露に応答して、c−ペプチドおよび/またはインスリンを放出することを特徴とする請求項55に記載の方法。
【請求項57】
ステップi)の培地は、HGF受容体アクチベーターおよびEGF受容体アクチベーターを含むことを特徴とする請求項55に記載の方法。
【請求項58】
ステップii)の培地は、C−ナトリウム利尿ペプチド(CNP)、カルシトニン遺伝子関連ペプチド、コレラ毒素Bサブユニット、デキサメタゾン、ガストリン放出ペプチド、ラミニン、Met−エンケファリン、PDGFAA+PDGFBB、ソニックヘッジホッグ、およびサブスタンスPからなる群から選択される少なくとも1つの可溶性活性因子の有効量を含むことを特徴とする請求項55に記載の方法。
【請求項59】
インスリン産生細胞を得る方法であって、前記方法は、一次膵臓細胞を二期培養システムで培養することを含み、第一期では、細胞を、HGF、TGFα、EGF、IGF1、ベータセルリン、プロラクチン、およびガストリン1からなる群から選択された少なくとも1つの活性可溶性因子を含む培地中に少なくとも1つのECMの有効量を含む表面上で4〜10日間培養し、第二期では、細胞を、アクチビンA、CGRPα、Cナトリウム利尿ペプチド(CNP)、コレラ毒素Bサブユニット、デキサメタゾン、aFGF、グルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)、グルコース、インスリン、LIF、PDGFAA、PDGFBB、TGF−α、プロラクチン、トロロクス(ビタミンE)、ガストリン放出ペプチド(GRP)、IGF−1、IGF−2、ラミニン、Met−エンケファリン、ソニックヘッジホッグ、サブスタンスP、bFGF、およびVEGFからなる群から選択された少なくとも1つの分化促進因子の有効量を含む培地中に少なくとも1つのECMを含む表面上で3〜14日間培養して、インスリン産生細胞を得ることを特徴とする方法。
【請求項60】
サイトケラチン18(CK18)、CK8、CK19、CK7、HNF1、α−1アンチトリプシン、pi−グルタチオンsトランスフェラーゼ(pi−GST)、肝臓特異的bHLH転写因子、Thy−1、C/EBP−αおよびC/EBP−βからなる群から選択された少なくとも1つのマーカーを発現し、炭酸脱水酵素、嚢胞性線維性膜貫通調節因子(CFTR)、エラスターゼ、およびアミラーゼはほとんど発現しない腺性上皮細胞から誘導されたインスリン産生細胞の一次培養物であって、前記インスリン産生細胞は、プロインスリンおよび/またはインスリンおよび/またはc−ペプチドを含む3次元細胞クラスターを形成する特徴を有する一次培養物。
【請求項61】
腺性上皮細胞は、膵臓細胞であることを特徴とする請求項60に記載の培養物。
【請求項62】
培養物は、グルコース攻撃に応答して、インスリンおよび/またはc−ペプチドを放出することを特徴とする請求項60に記載の培養物。
【請求項63】
腺性上皮細胞はヒト細胞であることを特徴とする請求項60に記載の培養物。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図9D】
【図10A】
【図10B】
【図11】
【図12A】
【図12B】
【図12C】
【図13A】
【図13B】
【図13C】
【図14】
【図15】
【図15A】
【図16】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図9D】
【図10A】
【図10B】
【図11】
【図12A】
【図12B】
【図12C】
【図13A】
【図13B】
【図13C】
【図14】
【図15】
【図15A】
【図16】
【公表番号】特表2006−512046(P2006−512046A)
【公表日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−510376(P2004−510376)
【出願日】平成15年5月22日(2003.5.22)
【国際出願番号】PCT/US2003/016124
【国際公開番号】WO2003/102134
【国際公開日】平成15年12月11日(2003.12.11)
【出願人】(595117091)ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー (539)
【氏名又は名称原語表記】BECTON, DICKINSON AND COMPANY
【住所又は居所原語表記】1 BECTON DRIVE, FRANKLIN LAKES, NEW JERSEY 07417−1880, UNITED STATES OF AMERICA
【出願人】(504438772)ノボセル インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成15年5月22日(2003.5.22)
【国際出願番号】PCT/US2003/016124
【国際公開番号】WO2003/102134
【国際公開日】平成15年12月11日(2003.12.11)
【出願人】(595117091)ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー (539)
【氏名又は名称原語表記】BECTON, DICKINSON AND COMPANY
【住所又は居所原語表記】1 BECTON DRIVE, FRANKLIN LAKES, NEW JERSEY 07417−1880, UNITED STATES OF AMERICA
【出願人】(504438772)ノボセル インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】
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