説明

osmBプロモータで制御される発現プラスミド

【課題】osmBプロモーターの制御下でポリペプチドを発現する方法を提供する。
【解決手段】適切な宿主に導入したときに、該宿主が、大腸菌に由来したosmBプロモータ制御下で所望のポリペプチドをコードしたDNAを発現できるようにするプラスミドを提供する。そのようなプラスミドは、スーパーオキシドジスムターゼ、アセチルコリンエステラーゼ、成長ホルモン、および肝炎抗原のようなポリペプチドを合成させるのに使うことが可能である。

【発明の詳細な説明】
【発明の背景】
【0001】
本願明細書の全体を通して、括弧のなかにアラビア数字を記載することにより種々の刊行物を引用する。これらの引用文献は、明細書の末尾の、請求の範囲の直前で詳しく記述する。本発明に関わる先行技術をより完全に記載するために、これらの刊行物の開示をそのまま参照として本明細書に組み込む。
【0002】
本願は大腸菌(E.coli)のosmBプロモータの制御下でのタンパク質発現のための新規プラスミドに向けられている。
【0003】
大腸菌(E.coli)に関して、多くのプロモータが知られており、またそれらはタンパク質を微生物中で発現するのに用いられてきた。通常使われるプロモータはλバクテリオファージのプロモータである、λPLおよびλPRであり、これらは熱不安定性のリプレッサ、cI857により制御される。クローン化した遺伝子の発現には非常に効果的であるが、このシステムは宿主又はプラスミド中に該熱不安定性リプレッサ、cI857の存在が必要である。このようなシステムは42℃でインキュベーションすることで誘導することができる。誘導する温度を上げると、タンパク質のミスフォルディングを促進する可能性があり、また封入体の形で不溶性のタンパク質凝集物を形成する可能性がある。
【0004】
taclactrpのようなその他のプロモータは、高価な化学誘導剤を培地中に添加して誘導する必要がある。tac発現系の例外を除くと、その他の多くのプロモータはλPLよりも弱く、効率も悪い。
【0005】
もう一つの既知のプロモータは、大腸菌(E. coli)のdeoプロモータである。これはグルコース非存在下において種々の促進能を示す構成的プロモータである。
【0006】
osmB遺伝子は、ジュンらにより記載されている(Jung et al., (1989)(1); Jung et al., (1990)(2))。osmB遺伝子は大腸菌(E.coli)の染色体の28分の位置にあり、49アミノ酸を含んだ、外膜のリポタンパク質をコードしている。該タンパク質を外膜へ向かわせるシグナルペプチドは23アミノ酸よりなる。該シグナルペプチドおよびosmBの成熟型遺伝子産物は多くの側面で、大腸菌(E.coli)のlpp遺伝子産物に似ている(1)。これらのペプチドの発現は、浸透圧(高浸透圧)および加齢プロセス(例えば増殖の定常期に入らせること)の両方によって促進される。この両方により、発現が転写のレベルで制御される。in vivoのmRNAのRNアーゼ保護により、二つの転写開始部位が同定された。この二つの転写開始部位はP1およびP2と命名されている。部位P2はP1の下流150塩基対のところにあり、浸透圧の上昇又は増殖期シグナルへ応答する、主要な制御部位である。P1プロモータは浸透圧および増殖期シグナルの両方が同時に存在する時のみに活性化される。P2の上流に、osmB発現の浸透圧刺激に必須の、7塩基対のシス作用性制御配列が同定された。定常期のosmBの発現はP2から直接引き起こされる(2)。osmBのプロモータ領域のヌクレオチド配列を、ジュンら(1)の記載にならって図1に示してある。
【0007】
出願人はosmBプロモータを含む組み換えプラスミドを作成するのに成功した。このプラスミドは新規の発現系であり、以前には開示されておらず、またosmBプロモータの下の多様な組み換えポリペプチドの高発現を行わせるのに使うことができる。
【発明の要約】
【0008】
本発明は、大腸菌(E.coli)から由来したosmBプロモータ、および組み換えポリペプチドをコードしたDNAを具備したプラスミドを使うことで組み換えポリペプチドを合成する方法であって、該プラスミドで形質転換した微生物を、該ポリペプチドの発現を許容するような条件下で培養することと、発現したポリペプチドを回収することとを具備した方法を提供する。
【0009】
本発明は更に、適切な宿主に導入したときに、該宿主が所望のポリペプチドをコードしたDNAを発現できるようにすることによって、該ポリペプチドを製造するプラスミドであって、大腸菌(E.coli)のosmBプロモータを含むDNAと、ポリペプチドをコードしたDNAから転写されたmRNAを宿主細胞内でリボソームへ結合することができるようにさせるリボソーム結合部位を含んだDNAと、ATG開始コドンと、該ATG開始コドンと同じ位相にあるポリペプチドをコードしたDNAと、宿主内で自律的に複製することが可能な、細菌性プラスミドの複製起点を具備したDNA配列と、宿主に該プラスミドが存在するときに示される、選択的な、又は同定可能な特質を有するDNA配列とを、この順序で5’から3’の方向に含んだプラスミドを提供する。
【発明の詳細な説明】
【0010】
プラスミドpMFO-551およびpMFOA-18は大腸菌(E.coli)中に形質転換した状態で、特許手続き上の微生物の寄託の国際的承認に関するブタペスト条約に準じ、またこれを満たして、郵便番号20852 メリーランド州ロックヴィル パークローン・ドライブ 12301 に所在のアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)に寄託された。受け入れ番号はそれぞれ69339および69340であり、受け入れ日は1993年6月29日であった。
【0011】
プラスミドpchGH77、pMFO/hGH-9、およびpMFO/PreS1は、大腸菌(E.coli)と共に、特許手続き上の微生物の寄託の国際的承認に関するブタペスト条約に準じ、またこれを満たして、郵便番号20852 メリーランド州ロックヴィル パークローン・ドライブ 12301 に所在のアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)に寄託された。受け入れ番号はそれぞれ69359、69360、および69358であり、受け入れ日は1993年6月26日であった。
【0012】
本願発明は、osmBプロモータの制御下でポリペプチド(タンパク質)の発現を行わせるための新規の発現プラスミドである。
【0013】
本願中で使われる「大腸菌(E.coli)のosmBプロモータ」という用語は、いかなる天然のosmBプロモータをも含み、また、修飾又は合成後も大腸菌からの天然のosmBプロモータのプロモータ活性を有する場合には、そのようなosmBプロモータの修飾および合成誘導体をも含む。
【0014】
ここで使われるosmBプロモータの合成誘導体、および/又は修飾誘導体という用語は、大腸菌(E.coli)のosmBプロモータをコードしている天然のDNA配列と同様であり、そのDNA配列に1又はそれ以上のヌクレオチドが3’もしくは5’末端、又はその両方に付加されていて、および/又は該配列に対して置換および/又は欠損がなされていて、且つ全体としては天然のosmBプロモータのプロモータ活性を有するものを意味する。
【0015】
本発明の主題となるプラスミドは、原核生物および真核生物のポリペプチド(タンパク質)を発現および合成することが可能である。
【0016】
本発明の主題となるプラスミドによって発現、合成されるポリペプチド(タンパク質)の例は、成長ホルモン、催乳ホルモン(prolactin)、およびその他の脳下垂体ホルモンのような、脳下垂体ホルモン、ならびにスーパーオキシドジスムターゼ、およびアセチルコリンエステラーゼ(AChE)のような酵素、ならびに肝炎抗原のような抗原などがある。
【0017】
ここで使われる「ポリペプチド」という用語は、天然のポリペプチドの相同体も含む。
【0018】
ここで使われるポリペプチドの「相同体」という用語は、天然のポリペプチドと実質的に同じアミノ酸配列および生物学的活性を有するポリペプチドのことである。故に相同体は、天然のポリペプチドと比べて、1又はそれ以上の非必須アミノ酸残基の付加、欠損、又は置換が含まれることで異なっているが、これはこのような変異を含んだポリペプチドに天然のポリペプチドと同じ生物学的活性が残っている場合に限る。当業者らは、確立され、よく知られている方法により、どのアミノ酸残基を付加、欠損、又は置換する(どのアミノ酸残基と置換するかも含まれる)かを決定することはただちにできる。この確立された方法の例としては、ポリペプチドの相同体に関しての細菌発現用のDNA発現の設計及び製造に関する通常の方法、部位特異的突然変異導入技術によるcDNA及びゲノム配列の修飾、組み換えポリペプチド及び発現ベクタの構築、ポリペプチドの細菌発現、ならびに通常の生化学的アッセイによるポリペプチドの生化学的活性の測定が含まれる。
【0019】
本願発明の主題であるプラスミドによって発現される相同体の例は、天然のポリペプチドを構成する全残基よりも短くなった欠損相同体、1又はそれ以上の残基が他の残基と入れ替わった置換相同体、及び1又はそれ以上のアミノ酸残基が該ポリペプチドの末端又は内側に付加された付加相同体であり、これらの相同体は全て、天然のポリペプチドが有する生物学的活性を有する。
【0020】
アミノ酸の置換は、例えばアルバート ・エル・レーニンジェー(Albert L. Lehninger)の方法(Biochemitry, 2nd ed., Worth Publisher Inc. (1975)Chapter 4)又はマーガレット・オー・デイホフ(Margaret O. Dayhoff)の方法(Atlas of protein sequence and structure,Volume 5, The National Biochemical Research Foundation (1972)Chapter 9 )に記載の相同体又は等価群に準じて設計することが可能である。
【0021】
当業者らに知られている方法、例えばバウアー(Bauer)らの方法(Gene, 37:73-81(1985))によりDNAを変異させることが可能である。変異させた配列は、本明細書で記載するように適切な発現ベクタへ挿入することが可能であり、該ベクタは細胞へ導入され、次に、変異DNAがポリペプチド相同体の発現を行わせるように該細胞を処理する。
【0022】
ポリペプチドをコードした、本発明の主題であるプラスミドは、細菌、酵母、又はほ乳類細胞での発現に適用することが可能である。更に該プラスミドは、細菌、酵母、又はほ乳類細胞でのクローン化した遺伝子の発現に必要で、ポリペプチドをコードしている核酸に対して該ポリペプチドの発現を行わせるように位置している制御配列を具備することが必要である。発現に必要な制御配列には、RNAポリメラーゼを結合させるosmBプロモータ配列、及びリボソーム結合用のリボソーム結合部位が含まれる。
【0023】
当業者らは、本願に関して寄託されたプラスミドを既知の方法(例えば部位特異的突然変異導入やリンカーの挿入)により容易に改変し、相同体をコードさせてその発現を促進させ得ることが分かるであろう。そのような技術は、例えばサンブルック(Sambrook)らの文献に記載されている(Sambrook, J., Frisch, E.F., and Maniatis, T., (1989) Molecular Cloning:A laboratory manual, 2nd edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press.)。またプラスミドはその他のポリペプチドをコードさせ、その発現を促進させるようにも改変することが可能である。
【0024】
適切な制御配列はプラスミド内において、ポリペプチドをコードしたDNAに対して、該ポリペプチドの発現に影響を与えるように配置されている。本発明の好ましい態様においては、該制御配列は該ポリペプチドをコードしたDNAの上流で、その近傍に配置されている。
【0025】
所望のポリペプチドをコードしたDNAから転写されるmRNAを、宿主細胞内のリボソームに結合させる、種々のリボソーム結合部位(RBS's)(osmB RBSやdeo RBSなど)もまた、本発明に含まれる。
【0026】
本発明のプラスミドにはまた、ATG開始コドンが含まれる。所望のポリペプチドをコードしたDNAはこのATG開始コドンと同じ位相にある。
【0027】
本発明のプラスミドはまた、宿主細胞内での自己増殖を可能にする細菌プラスミドからの複製起点を具備したDNA配列を含む。適切な複製起点は、プラスミドpBR322(ATCC受け入れ番号37017)のような数多くの供給源より得られる。
【0028】
本発明のプラスミドはまた、アンピシリン、クロラムフェニコール、又はテトラサイクリンに対する抵抗性を例とした薬剤抵抗性遺伝子の様な、宿主細胞内に存在するときに顕在化されるような、選別又は同定可能な表現形の特質に関連した遺伝子を含んだDNA配列を含んでいる。
【0029】
好ましい細菌宿主は大腸菌(E.coli)である。適切な大腸菌(E.coli)の例は、Sφ930株(ATCC受け入れ番号67706)、W2637(大腸菌遺伝子保存センター、エール大学、ニューヘブン、コネチカット)、Sφ732(ATCC受け入れ番号67362)、MC1655(ATCC受け入れ番号69339)、MC1061(ATCC受け入れ番号67364)、W3110(ATCC受け入れ番号67705)、MG294(大腸菌遺伝子保存センター、エール大学、ニューヘブン、コネチカット)であるが、その他の大腸菌(E.coli)株や、その他の細菌もまた該プラスミドの宿主として使用することができる。当業者は本発明の方法を使うためのその他の適切な宿主を決定することができる。
【0030】
宿主として使用する細菌は、栄養要求性株、原栄養株、溶菌株、F+及びF-株及びその他の株を含むどのような株であってもよい。
【0031】
当該技術分野でよく知られた方法(例えばR.P.NovickがBacteriol. Review 33,210(1969)で記載した、エチジウムブロマイド法)により、記載した全ての大腸菌(E.coli)からは、その保持するプラスミドを「取り出す」することが可能である。
【0032】
主題発明は、大腸菌(E.coli)由来のosmBプロモータ及び組み換えポリペプチドをコードしたDNAを具備したプラスミドを使って、組み換えポリペプチドを合成する方法を提供する。
【0033】
本発明は更に、適切な宿主に導入したときに、該宿主が所望のポリペプチドをコードしたDNAを発現できるようにすることによって、該ポリペプチドを製造するプラスミドであって、大腸菌(E.coli)のosmBプロモータを含むDNAと、ポリペプチドをコードしたDNAから転写されたmRNAを宿主細胞内でリボソームへ結合することができるようにさせるリボソーム結合部位を含んだDNAと、ATG開始コドンと、該ATG開始コドンと同じ位相にあるポリペプチドをコードしたDNAと、宿主内で自律的に複製することが可能な、細菌性プラスミドの複製起点を具備したDNA配列と、宿主に該プラスミドが存在するときに示される、選択的な又は同定可能な特質を有するDNA配列とを、この順序で5’から3’の方向に含んだプラスミドを提供する。
【0034】
好ましい態様において、大腸菌(E.coli)のosmBプロモータ及びリボソーム結合部位は図2に示されているものである。
【0035】
特に好ましい態様においては、リボソーム結合部位は大腸菌(E.coli)のdeoオペロン由来である。
【0036】
好ましい態様においては、ポリペプチドはヒト銅-亜鉛スーパーオキシドジスムターゼ、アセチルコリンエステラーゼ、ヒト成長ホルモン、及びpre-S1肝炎抗原よりなるグループから選択される。
【0037】
一つの態様において、宿主細胞は細菌細胞であり、またより好ましい態様においては該細菌細胞は大腸菌(E.coli)細胞である。
【0038】
特に好ましい態様においては、前記大腸菌(E.coli)細胞は、ATCC受け入れ番号69339の下に寄託されたプラスミドpMFO-551を具備した大腸菌(E.coli)MC1655、ATCC受け入れ番号69340の下に寄託されたプラスミドpMFOA-18を具備した大腸菌(E.coli)MC1061、ATCC受け入れ番号69360の下に寄託されたプラスミドpMFO/hGH-9を具備した大腸菌(E.coli)MC1061、ATCC受け入れ番号69358の下に寄託されたプラスミドpMFO-preS1を具備した大腸菌(E.coli)MC1061である。
【0039】
主題発明はまた、ヒト銅-亜鉛スーパオキシドジスムターゼ合成用であって、ATCC受け入れ番号69339の下に寄託されたプラスミドpMFO-551;ヒトアセチルコリネステラーゼ合成用であって、ATCC受け入れ番号69340の下に寄託されたプラスミドpMFOA-18;ヒト成長ホルモンの合成用であって、ATCC受け入れ番号69360の下に寄託されたプラスミドpMFO/hGH-9;PreS1肝炎抗原の合成用であって、ATCC受け入れ番号69358の下に寄託されたプラスミドpMFO-PreS1を提供する。
【0040】
主題発明は更に、適切な宿主細胞中にある主題発明のプラスミドを具備した組み換えポリペプチドの合成のための宿主-プラスミド系を提供する。
【0041】
一つの態様において、前記宿主細胞は細菌宿主細胞である。別の態様においては、前記細菌細胞は大腸菌(E.coli)である。好ましい態様においては、前記大腸菌(E.coli)宿主細胞は大腸菌(E.coli)MC1655株、又はMC1061株である。
【0042】
主題発明は更に、CuZnSODを合成する方法であって、主題発明の宿主-プラスミド系をCuZnSODの合成を許容するような条件下で増殖させ、該CuZnSODを回収することを具備した方法を提供する。
【0043】
主題発明は更に、AChEを合成する方法であって、主題発明の宿主-プラスミド系をAChEの合成を許容するような条件下で増殖させ、該AChEを回収することを具備した方法を提供する。
【0044】
主題発明は更に、hGHを合成する方法であって、主題発明の宿主-プラスミド系を、hGHの合成を許容するような条件下で増殖させ、該hGHを回収することを具備した方法を提供する。
【0045】
主題発明は更に、PreS1を合成する方法であって、主題発明の宿主-プラスミド系をPreS1の合成を許容するような条件下で増殖させ、該PreS1を回収することを具備した方法を提供する。
【0046】
要約すると、出願人らはosmBプロモータを利用して新規の発現系を開発したが、該プロモータは以下の表Iに示した既存のプロモータを越える利点を有する。この表は、osmBプロモータによる発現系と、その他のプロモータによる発現系との比較を提供する。
【0047】
更に、osmBプロモータ系の、発現プラスミドにおける驚くべき特徴は、その制御下でポリペプチドが高レベルで合成されることである。
【0048】
【表1】

【例】
【0049】
以下の例は本発明を例示するものであるが、これにより、その後の請求の範囲で定義される本発明の範囲を限定すると解釈するべきものではない。
【0050】
例では、ベクター作成時の通常の方法、即ちポリペプチドをコードしている遺伝子をそのようなベクターに挿入したり、その結果得られたプラスミドを宿主に導入することについては、詳細には記載していない。例ではまた、そのような宿主-ベクター系で合成したポリペプチドのアッセイのための方法や、等電点電気泳動(IEF)ゲルの活性染色でそのようなポリペプチドを同定するための方法について、詳細には記載していない。そのような方法は当業者らにはよく知られており、例として下記のものを含む多くの文献に記載されている。それら文献の開示は、参照として本明細書の参考文献に組み込まれる。
【0051】
Sambrook,J., Fritsch, E.F., and Maniatis,T., (1989) Molecular Cloning:A Laboratory Manual, 2nd edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York.
J.M. McCord and I. Fridovich (1969), J.Biol. Chem. 244:6049-55.
C.Beauchamp and I. Fridovich (1971), Anal. Biochem. 44:276-287.
【0052】
例1:SOD発現プラスミドの構築。
osmBプロモータ由来のプロモータを含んだベクターを、当該技術分野でよく知られている、天然のヌクレオチド配列に対して3’末端に変異を含んだ約100塩基対の合成配列の構築により調製した。
図2に示した、A-Dの合成配列を調製した。
【0053】
オリゴヌクレオチドB及びCは、ポリヌクレオチドキナーゼを使ってその5’末端でリン酸化し、次いで相補鎖と混合して上記した様な二本鎖を生成した。それぞれの二本鎖を約25pmolずつ混合して、T4 DNAリガーゼで連結した。連結したオリゴヌクレオチドを、NdeI-BamHIで切断したプラスミドpMFAT-5534に挿入した(図3)。pMFO-12と命名された、得られたプラスミドは、osmB P2プロモータ、及びヒトCuZnSOD遺伝子に融合されたリボソーム結合部位を含む、合成のosmB配列を有している。プラスミドpMFO-12を大腸菌(E.coli)MC1061に導入して、ヒトCuZnSODの発現を試験した。
【0054】
osmBによる発現系を含む宿主の全細胞抽出物を、SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動で分析した。得られた酵素電気泳動像(zymogram)は、CuZnSODのサイズに対応したタンパク質のバンドを検出した。発現は全細胞タンパク質の約1-2%であると推定された。
【0055】
例2:改善したosmB発現プラスミド。
プラスミドpMFO-12の発現レベルは、全タンパク質の1-2%であった。発現レベルを改善する目的で、図4に示した方法により、osmBリボソーム結合部位をdeoリボソーム結合部位と置換した。osmBプロモータの制御下にあるヒトCuZnSOD遺伝子と、deoリボソーム結合部位とを含んでいる、pMAO-551と命名された、得られたプラスミド(図4、ATCC受け入れ番号69339)を大腸菌(E.coli)の原栄養株宿主である、Sφ930(ATCC受け入れ番号67706)、W2637(大腸菌遺伝子保存センター、エール大学、ニューヘブン、コネチカット)、Sφ732(ATCC受け入れ番号)、及びMC1655(ATCC受け入れ番号69339)に導入した。
【0056】
プラスミドpMFO-551による CuZnSODの発現に与える宿主の影響を決定するために、プラスミドpMFO-551を含んだ、上記で参照した4つの宿主を、1XM9塩と0.1-0.2%のグルコースを添加したLB培地中で、37℃で18時間増殖させた。培養物のうち1mlを回収して、全細胞の溶菌液をSDS-PAGE分析にかけた。
【0057】
SDS-PAGEの結果は、osmBプロモータによるCuZnSOD発現は宿主に依存することを示した。W2637では、CuZnSODの発現レベルは全タンパク質の1%よりも高くなかったが、Sφ930やSφ732では、発現量は約15%であった。全タンパク質に対して約25%の、もっとも高かった発現レベルはMC1655で得られた。
【0058】
例3:osmB、deo、及びλPLプロモータ制御下でのCuZnSOD発現の比較。
osmBプロモータの一つの利点は、λPLプロモータ及びdeoプロモータの制御下でのタンパク質発現と比較したときに、タンパク質発現レベルが増加しているという観察によって決定されるものである。
【0059】
細菌の増殖は、当該技術分野でよく知られ、基本的にハートマン(Hartman)ら(3、5)及びフィッシャー(Fischer)ら(4)によって記載された方法により行った。
【0060】
試験した株は:
1.プラスミドpSODβ1T11(λPLプロモータ、ATCC受け入れ番号53468)を含んだ大腸菌(E.coli)A4255。
2.プラスミドpMF-5534(deoプロモータ、ATCC受け入れ番号67703)を含んだ大腸菌(E.coli)Sφ930。
3.プラスミドpMFO-551(osmBプロモータ、ATCC受け入れ番号69339)を含んだ大腸菌(E.coli)MC1655。
であった。
【0061】
42℃にまで加熱して誘導することが必要なプラスミドpSODβ1T11に対し、プラスミドpMF-5534及びpMFO-551は、構成的発現を提供する。
【0062】
宿主-プラスミド系である、プラスミドpSODβ1T11を含む大腸菌(E.coli)A4255、及びプラスミドpMF-5534を含む大腸菌(E.coli)Sφ930を、CuZnSODの発現の為に最適化した。
【0063】
基礎となる増殖培地には、
トリプトン 10g
酵母抽出物 5g
NaCl 5g
グルコース* 1g
脱イオン水 1l
*:オートクレーブした無菌のストック溶液より添加
が含まれる。
【0064】
基礎培地にはまた、上記の3つの株が合成する特異的ポリペプチド(CuZnSOD)の、酵素活性のために必要な補助因子である以下の添加物が含まれる。
CuSO4・5H2O 0.48g
ZnSO4・7H2O 0.009g
【0065】
よって完全な培地には、123ppmのCu++及び2ppmのZn++が含まれる。オートクレーブした後、適切な抗生物質を無菌条件下で添加した。ラムダプロモータの制御下にあるプラスミドpSODβ1T11を含んだ大腸菌(E.coli)A4255の二つ組の培養物を、12.5mg/lのテトラサイクリン存在下で、30℃でOD600が1.1になるまで培養した。培養物を42℃で15分間加熱して誘導し、次いで38℃で75分間培養した。培養物は誘導期間の最後に回収した.
【0066】
プラスミドoMF-5534を含んだ大腸菌(E.coli)株Sφ930、及びpMFO-551を含んだ大腸菌(E.coli)株MC1655を100mg/lのアンピシリンナトリウム存在下で30℃で培養した。培養は開始培養物(starters)を接種し、一晩インキュベーションし、翌朝回収した。
【0067】
それぞれの試料に対して、660nmでの培養物の光学的密度を測定し、乾燥細胞質量(DCW)を、1 O.D.単位=0.38g/l DCW の式を利用して計算した。
【0068】
試料を卓上エッペンドルフ遠心機で10分間遠心して(14,000rpm)、上清を捨てた。沈殿物は、分析するまで凍らせて保存した。
【0069】
沈殿物は、還元条件下のSDS-PAGE、及びマッコードとフリドヴィック(McCord and Fridovich)が記載した、キサンチン-キサンチン オキシダーゼ法(J.Biol. Chem.244:6049-6055)を利用したSOD活性決定により分析した。CuZnSODの特異的生産性は、乾燥細胞質量(DCW)mg当りの活性CuZnSOD mg量に等しい。
【0070】
上記の3つの宿主-プラスミド系より得られたCuZnSOD酵素活性の比較は表2に示してある。
【0071】
【表2】

【0072】
この結果は、試験した株のなかではosmBプロモータで制御されるプラスミドpMFO-551を使ったときに、もっとも高いCuZnSOD生産性が得られることと、この高さはその他の二つのプラスミドによるレベルよりも3-4倍高いことを明かに示している。
【0073】
例4:最小培地中での、osmBプロモータ制御下でのCuZnSODの発現。
更にosmBプロモータの特徴を調べるために、上記した、osmB及びdeoプロモータをそれぞれ備えた構成的株の比較を最小培地中で更に行った。
【0074】
グルコースミネラル塩培地
K2HPO4 9g
KH2PO4 1g
NaCl 5g
NH4Cl 1g
MgSO4・7H2O 0.2g
FeNH4クエン酸塩 0.01g
微量元素 1ml
ビオチン 0.5mg
酵母抽出物 0.1g
グルコース* 2g
アンピシリンナトリウム* 0.1g
脱イオン水 1l
*:オートクレーブした無菌のストック溶液より添加した。
【0075】
以下のものを含んだ無菌の溶液を無菌の培地1l当りにオートクレーブした後に添加した。
CuSO4・5H2O 0.48g
クエン酸三ナトリウム 0.69g
ZnSO4・7H2O 0.009g
【0076】
この添加により、培地は123ppmのCu++と、2ppmのZn++を含むことになる。
実験は基本的に例3に記載したようにして行い、結果は表3に記載した。この場合も、宿主-プラスミド系の、プラスミドpMF-5534を有する大腸菌(E.coli)Sφ930を、CuZnSOD発現のために最適化した。
【0077】
【表3】

【0078】
osmBプロモータの制御下で発現したCuZnSODの特異的生産性は、deoプロモータ制御下での発現に比べて、平均して1.5倍高い。
【0079】
主題発明の修飾したosmBプロモータを有する発現プラスミドを使い、また同様の高レベルでの発現を500リットルの発酵槽で行うために当該技術分野で知られた方法を使い、CuZnSODの生産をスケールアップした。
【0080】
例5:ヒトアセチルコリンエステラーゼ(AChE)の発現用の、osmB発現プラスミドの構築。
ヒトアセチルコリンエステラーゼ(AChE)遺伝子を、図5に示した様に分離してosmBプロモータの制御下においた。pMFOA-18(ATCC受け入れ番号69340)と命名された、得られたプラスミドはosmBプロモータの制御下のAChE遺伝子、及びdeoリボソーム結合部位を含んでいる。プラスミドpMFOA-18を、大腸菌(E.coli)宿主であるMC1061(ATCC受け入れ番号67364)、MC1655(ATCC受け入れ番号69339)、W3110(ATCC受け入れ番号67705)、及びMG294(大腸菌遺伝子保存センター、エール大学、ニューヘブン、コネチカット)に導入した。分離したコロニーを、M9塩及び0.1-0.2%のグルコースを添加したLB培地へ接種した。培養物は37℃で18時間増殖させて、回収後SDS-PAGE分析にかけた。CuZnSODの場合と同様に、発現レベルは宿主に依存して変化した。pMFOA-18を有するMC1061はAChEを、全タンパク質の約10-15%もの高レベルで発現し、一方その他の株全てでは全タンパク質の約2-5%のレベルで発現した。AChEは極度に疎水性であるので、該タンパク質は封入体として凝集物の形態で蓄積した。osmBプロモータ制御下でのAChEの発現は、それぞれのプロモータ系に適した条件下でのλPLプロモータに対して得られた発現レベルを上まるものである。
【0081】
AChE遺伝子は、例えばNdeI-HindIII消化又は当該技術分野で知られたその他の方法によりこのプラスミドから除去することができ、ついで別のポリペプチドをコードしたDNA配列で置換して、osmBプロモータの制御下でその他のポリペプチドを発現することができる。この方法の例は、例6に記載の、AChE遺伝子のhGH遺伝子による置換、及び例7に記載の、AChE遺伝子のpreS1をコードした遺伝子による置換である。故に、本願で記載したosmBプロモータ系は、多種多様なポリペプチドの発現に用いることが可能である。
【0082】
例6:ヒト成長ホルモンの発現用のosmB発現プラスミドの構築。
a. 成熟型hGHのN末端配列におけるNdeI部位の導入。
開始コドンATG、及びユニークな制限酵素部位であるNdeIを成熟型ヒト増殖ホルモン(hGH)タンパク質のN末端のアミノ酸、Pheに導入するために、部位特異的突然変異導入を、fGH cDNAプラスミドのpchGH77(ATCC受け入れ番号69359)を使って行った(図6参照)。
【0083】
pchGH77のDNAのアリコットを以下のエンドヌクレアーゼで消化した:
アリコットA:PvuI+ScaI
アリコットB:EcoRV+BglII
【0084】
上記のエンドヌクレアーゼ消化物のそれぞれの大型の断片を分離して、混合し、以下の合成オリゴマー(配列認識番号6)存在下でアニールした。
E 5'-GGCTCCAAGAGGGCCATATGTTCCCAACATTCCC-3'
NdeI
【0085】
アニーリング反応(95℃で2.5分間、40℃で60分間、4℃で60分間)の後、4つ全てのdNTP及びT4DNAリガーゼの存在下でDNAポリメラーゼ-クレノウ反応を行った。連結反応混合物を使って、大腸菌(E.coli)MC1061(ATCC受け入れ番号67364)のコンピテント細胞を形質転換した。
【0086】
プローブとして標識した合成オリゴマーEを高厳密度のハイブリダイゼーション条件下で使って、in-situフィルタハイブリダイゼーションによりクローンを、NdeIの変異に関してスクリーニングした。
【0087】
ハイブリダイゼーションで陽性だったクローンを更にNdeIによる制限酵素消化、及びDNAスクリーニングで分析した。陽性クローンのうちの一つを、プラスミドphGH/pBR-N1と命名した。
【0088】
b. hGHの発現用のosmB発現プラスミドの構築。
図7に示すように、hGH遺伝子をプラスミドPhGH/pBR-N1より分離して、osmBプロモータの制御下に置いた。pMFO-/hGH-9と命名した、得られたプラスミド(ATCC受け入れ番号69360)は、osmBプロモータ制御下のhGH遺伝子と、deoリボソーム結合部位とを含んでいる。
【0089】
c. hGHの発現。
プラスミドpMFO/hGH-9を使って大腸菌(E.coli)MC1061(ATCC受け入れ番号67364)、大腸菌(E.coli)W3110(ATCC受け入れ番号67705)、大腸菌(E.coli)W2637(大腸菌(E.coli)遺伝子保存センター、エール大学、ニューヘブン、コネチカット)のコンピテント細胞を形質転換した。
【0090】
プラスミドpMFO/hGH-9を有した大腸菌(E.coli)株MC1061、W3110、W2637の細胞を、LB培地中で37℃でO.D.660=1.0になるまで増殖させた。細胞を遠心し、溶菌し、全細菌タンパク質をSDS-PAGE電気泳動により分析した。クーマシーブルー染色によって、分子量が22kDの、主要なhGHタンパク質バンドが検出された。大腸菌MC1061及びW3110は、全細胞タンパク質の約20%のレベルでhGHを発現した。
【0091】
例7:PreS1 -HBVの発現のためのosmB発現プラスミドの構築。
a. N末端アミノ酸の再構築。
図8のようにして、HBV-PreS1領域をプラスミドpSP-HBV-3から分離し、合成オリゴマーF及びGに連結した。
開始コドンATGに隣接するNdeIを含んだPreS1のN末端のアミノ酸を再構築する為に、この連結は、EcoRI、NdeI、AvaIエンドヌクレアーゼで消化したプラスミドpBR322(ATCC受け入れ番号37017)から得た、EcoRI-NdeIの大型断片の存在下で行った。新規に得たプラスミドをpBR-HBV-Nと命名した。
【0092】
b. 終止コドンの導入。
翻訳の終止コドンを導入するために、pHBV/BASAを図9に示すようにして構築した。
【0093】
c. PreS1-HBVの発現のためのosmB発現プラスミドの構築。
図10に示すようにして、HBV-PreS1断片を分離してosmBプロモータの制御下に置いた。pMFO/PreS1と命名した、得られたプラスミド(ATCC受け入れ番号69358)は、osmBプロモータの制御下にあるPreS1のコード領域と、deoリボソーム結合部位とを含んでいた。
【0094】
d. プラスミドpMFO/PreS1を使って大腸菌(E.coli)株MC1061のコンピテント細胞を形質転換した。
プラスミドpMFO/PreS1を有する大腸菌(E.coli)MC1061細胞をLB培地中で、37℃でO.D.660=1.0になるまで増殖させた。次いで細胞を遠心し、溶菌し、全細菌タンパク質をSDS-PAGE電気泳動で分析した。クーマシー染色すると、14kDの分子量に対応したPreS1タンパク質のバンドが検出された。
【参考文献】
【0095】

【0096】
図3から10に示したそれぞれの制限酵素地図は、それぞれのプラスミドに存在する全ての制限部位を同定しているわけではない。ある図においては示されているが、別の図では示されていない制限部位がある。しかしながら、全ての場合において当業者らが本発明を実施するに必要な制限部位は示してある。種々のプラスミドの相対的サイズはその大きさには比例しておらず、いかなる挿入断片もその大きさについては図からは結論づけることはできない。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】図1:osmBのプロモータ領域のヌクレオチド配列。 ジュンらが記載した(1)、osmBのプロモータ領域のヌクレオチド配列(配列認識番号7)を示した。「P1」および「P2」という表記は、転写の開始部位を意味している。
【図2】図2:osmBのプロモータ領域の改変した合成ヌクレオチド配列。 合成のosmB配列を示している(配列認識番号8から11)。この配列にはosmB P2プロモータと、osmBリボソーム結合部位(改変済み)と、とりわけ以下の制限部位とを含んでいる:XmnI(221から225番目のヌクレオチド)およびAflII(287から292番目のヌクレオチド)。 図2のヌクレオチドの番号は、ジュンら(1)の番号に対応している。
【図3】図3:プラスミドpMFO-12の構築。 プラスミドpMFO-12の構築は、プラスミドpMFAT-5534をBamHIおよびNdeIで消化して得た、銅-亜鉛スーパーオキシドジスムターゼ(CuZnSOD)のコード領域を含んだ大型の断片を、図2と例1とに示した、改変したosmBプロモータ領域をコードした合成配列に連結して行った。 プラスミドpMFAT-5534は、プラスミドpMF-5534(ATCC受け入れ番号67703)に非常に似ている。プラスミドpMFAT-5534は、pMF-5534とは反対の方向でdeoプロモータを含んでいる。プラスミドpMF-5534をBamHIで消化した後、再連結化すると、1:1の比率で二つの配向性が得られる。更に、プラスミドpMFAT-5534は、プラスミドpMF-5534には欠けているXhoIが連結したTrpA転写終結配列を有している(Wu et al., PNAS 75:5442-5446(1978))。
【図4】図4:プラスミドpMFO-551の構築。 プラスミドpMFAT-5534をAvrIIで切断し、5’末端をE.coliのDNAポリメラーゼ(クレノウ断片)で処理して埋めた。線状のpMFAT-5534をHindIIIで切断した。deoリボソーム結合部位およびCuZnSODのコード領域を含む600塩基対の断片を得た。 プラスミドpMFO-551(ATCC受け入れ番号69339)は、上記のようにしてプラスミドpMFAT-5534から得た600塩基対の断片を、AflIIでプラスミドpMFO-12を切断し、その5’末端を大腸菌(E.coli)のDNAポリメラーゼで埋め、次にHindIIIで切断して得た大型断片に連結して構築した。得られたプラスミド、pMFO-551において、deoリボソーム結合部位はNdeI部位のすぐ上流に存在する。
【図5】図5:プラスミドpMFOA-18の構築。 プラスミドpMFOA-18(ATCC受け入れ番号69340)は、pAIF-51をNdeIとHindIIIとで消化して得た、アセチルコリンエステラーゼ(AChE)のコード領域を含む1900塩基対の断片を、pMFO-551をNdeIとHindIIIとで消化して得た大型断片に連結して構築した。 AChE断片は同様にしてプラスミドpAIF-34(ATCC受け入れ番号68638)からも得ることができるが、これはプラスミドpAIF-51とpAIF-34とが同じAChE断片を含んでいるためである(6、7)。
【図6】図6:プラスミドphGH/pBR-N1の構築。 プラスミドphGH/pBR-N1は、プラスミドpchGH77(ATCC受け入れ番号69359)をPvuIおよびScaIで消化して得た断片と、pchGH77をEcoRVおよびBglIIとで消化して得た断片と、以下の合成オリゴマー(配列認識番号1)との間の三者間連結により構築した。 E 5'-GGCTCCAAGAGGGCCATATGTTCCCAACATTCCC-3' NdeI
【図7】図7:プラスミドpMFO/hGH-9の構築。 プラスミドpMFO-/hGH-9(ATCC受け入れ番号69360)は、(osmBプロモータを有する)プラスミドpMFOA-18をNdeIおよびHindIIIで消化して得た大型断片を、プラスミドphGH/pBR-N1をNdeIおよびHindIIIで消化して得た小型断片に連結して構築した。
【図8】図8:プラスミドpBR-HBV-Nの構築。 プラスミドpSP-HBV-3をEcoRIで消化し、700塩基対のEcoRI-EcoRI断片を分離し、XhoIで消化した。HBV-PreS1をコードした、341塩基対のXhoI-EcoRI断片を分離した。 プラスミドpBR-HBV-Nは、上記のようにして得た341塩基対のXhoI-EcoRI断片と、pBR-322(ATCC受け入れ番号37017)をNdeI、AvaI、およびEcoRIで消化して得た大型の断片と、以下に示した合成オリゴマー(配列認識番号2および3)との三者間連結により構築した。 開始 F 5'-TATGGAACTTTCTTGGACAGTTCCTC -3' G 3'- ACCTTGAAAGAACCTGTCAAGGAGAGCT-5' NdeI XhoI 相補的部位
【図9】図9:プラスミドpHBV/BASAの構築。 プラスミドpHBV/BASAは、pBASAをNdeIおよびBamHIで消化して得た大型断片と、プラスミドpBR-HBV-NをNdeIおよびEcoRIで消化して得たPreS1断片と、以下に示した合成オリゴマー(配列認識番号4および5)との三者間連結により構築した。 H 5'-AATTAAGATCTG -3' I 3'- TTCTAGACCTAG-5' BglII BamHI
【図10】図10:プラスミドpMFO/PreS1の構築。 プラスミドpMFO-PreS1(ATCC受け入れ番号69358)は、(osmBプロモータをコードした)プラスミドpMFOA-18をNdeIおよびEcoRIで消化して得た大型断片と、プラスミドpHBV/BASAをNdeIおよびBglIIで消化して得た小型断片との連結により構築した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
大腸菌(E.coli)のosmBプロモータ、および組み換えポリペプチドをコードしたDNAを具備したプラスミドを使うことで組み換えポリペプチドを合成する方法であって、該プラスミドで形質転換した微生物を、該ポリペプチドの発現を許容するような条件下で培養することと、発現したポリペプチドを回収することとを具備した方法。
【請求項2】
適切な宿主に導入したときに、該宿主が所望のポリペプチドをコードしたDNAを発現できるようにすることによって、該ポリペプチドを製造するプラスミドであって、
a)大腸菌(E.coli)のosmBプロモータを含むDNAと、
b)ポリペプチドをコードしたDNAから転写されたmRNAを宿主細胞内でリボソームへ結合することができるようにさせるリボソーム結合部位を含んだDNAと、
c)ATG開始コドンと、
d)該ATG開始コドンと同じ位相にあるポリペプチドをコードしたDNAと、
を具備し、
更に宿主内で自律的に複製することが可能な、細菌性プラスミドの複製起点を具備したDNA配列と、宿主に該プラスミドが存在するときに示される、選択的な、又は同定可能な特質を有するDNA配列とを、この順序で5’から3’の方向に含んだプラスミド。
【請求項3】
前記の大腸菌(E.coli)のosmBプロモータが、図2に記載されたものである、請求項2に記載のプラスミド。
【請求項4】
前記のリボソーム結合部位がosmB遺伝子由来である、請求項2又は3の何れか一項に記載のプラスミド。
【請求項5】
前記のリボソーム結合部位が大腸菌(E.colideoオペロン由来である、請求項2又は3の何れか一項に記載のプラスミド。
【請求項6】
前記のポリペプチドが、ヒト銅-亜鉛スーパーオキシドジスムターゼ、アセチルコリンエステラーゼ、ヒト成長ホルモン、及びpre-S1肝炎抗原よりなるグループから選択される、請求項2、3、4、又は5の何れか一項に記載のプラスミド。
【請求項7】
前記の宿主細胞が細菌細胞である、請求項2に記載のプラスミド。
【請求項8】
前記の宿主細胞が大腸菌(E.coli)細胞である、請求項2に記載のプラスミド。
【請求項9】
前記の大腸菌(E.coli)細胞が、ATCC受け入れ番号69339の下、寄託されたプラスミドpMFO-551を有する、大腸菌(E.coli)MC1655である、請求項8に記載のプラスミド。
【請求項10】
前記の大腸菌(E.coli)細胞が、ATCC受け入れ番号69340の下、寄託されたプラスミドpMFOA-18を有する、大腸菌(E.coli)MC1061である、請求項8に記載のプラスミド。
【請求項11】
前記の大腸菌(E.coli)細胞が、ATCC受け入れ番号69360の下、寄託されたプラスミドpMFO/hGH-9を有する、大腸菌(E.coli)MC1061である、請求項8に記載のプラスミド。
【請求項12】
前記の大腸菌(E.coli)細胞が、ATCC受け入れ番号69358の下、寄託されたプラスミドpMFO-PreS1を有する、大腸菌(E.coli)MC1061である、請求項8に記載のプラスミド。
【請求項13】
ATCC受け入れ番号69339の下に寄託され、pMFO-551と命名された、ヒト銅-亜鉛スーパーオキシドジスムターゼの合成のための、請求項2に記載のプラスミド。
【請求項14】
ATCC受け入れ番号69340の下に寄託され、pMFOA-18と命名された、アセチルコリンエステラーゼの合成のための、請求項2に記載のプラスミド。
【請求項15】
ATCC受け入れ番号69360の下に寄託され、pMFO/hGH-9と命名された、ヒト成長ホルモンの合成のための、請求項2に記載のプラスミド。
【請求項16】
ATCC受け入れ番号69358の下に寄託され、pMFO-PreS1と命名された、Pre-S1肝炎抗原の合成のための、請求項2に記載のプラスミド。
【請求項17】
適切な宿主細胞内において、請求項2又は3の何れか一項に記載のプラスミドを具備した、組み換えポリペプチドの合成のための宿主-プラスミド系。
【請求項18】
前記の宿主細胞が細菌宿主細胞である、請求項17に記載の宿主-プラスミド系。
【請求項19】
前記の細菌宿主細胞が大腸菌(E.coli)である、請求項18に記載の宿主-プラスミド系。
【請求項20】
前記の大腸菌(E.coli)が大腸菌(E.coli)MC1655株又は大腸菌(E.coli)MC1061である、請求項19に記載の宿主-プラスミド系。
【請求項21】
CuZnSODを合成するための方法であって、請求項17の宿主-プラスミド系を、CuZnSODの発現を許容する条件下で増殖させ、CuZnSODを回収することを具備した方法。
【請求項22】
AChEを合成するための方法であって、請求項17の宿主-プラスミド系を、AChEの発現を許容する条件下で増殖させ、AChEを回収することを具備した方法。
【請求項23】
hGHを合成するための方法であって、請求項17の宿主-プラスミド系を、hGHの発現を許容する条件下で増殖させ、hGHを回収することを具備した方法。
【請求項24】
PreS1肝炎抗原を合成するための方法であって、請求項17の宿主-プラスミド系を、PreS1肝炎抗原の発現を許容する条件下で増殖させ、PreS1肝炎抗原を回収することを具備した方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a) i.配列番号8の配列を含むプロモーター;
ii.配列番号10の配列を含むプロモーター;
iii.図2の配列を含むプロモーター;
iv.上記の何れかの配列を含むプロモーターであって、一または複数のヌクレオチドが3’端、5’端またはその両端において付加または欠失された、および/または前記配列に対して置換がなされたプロモーター;および
v.配列番号7の134−215ヌクレオチドを含み、135−138、212および215の位置の何れかにおいて修飾されたプロモーター
から成る群より選択される大腸菌(E.coli)の修飾osmBプロモーター;および
(b) 真核生物の組み換えポリペプチドをコードするDNA
を具備したプラスミドを使うことで真核生物の組み換えポリペプチドを産生する方法であって、
該プラスミドで形質転換した微生物を、該真核生物の組み換えポリペプチドの発現を許容するような条件下で培養することと、産生された該真核生物の組み換えポリペプチドを回収することとを具備した方法。
【請求項2】
適切な宿主細胞に導入したときに、該宿主が所望の真核生物ポリペプチドをコードするDNAを発現できるようにすることによって、該真核生物ポリペプチドを産生するプラスミドであって、
a) i.配列番号8の配列を含むプロモーター;
ii.配列番号10の配列を含むプロモーター;
iii.図2の配列を含むプロモーター;
iv.上記の何れかの配列を含むプロモーターであって、一または複数のヌクレオチドが3’端、5’端またはその両端において付加または欠失された、および/または前記配列に対して置換がなされたプロモーター;および
v.配列番号7の134−215ヌクレオチドを含み、135−138、212および215の位置の何れかにおいて修飾されたプロモーター
から成る群より選択される大腸菌(E.coli)の修飾osmBプロモーターを含むDNAと;
b) 該ポリペプチドをコードするDNAから転写されるmRNAを、該宿主細胞内でリボソームに結合することができるようにさせるリボソーム結合部位を含むDNAと;
c) ATG開始コドンと;
d) 該ATG開始コドンと同じ位相にある真核生物ポリペプチドをコードするDNAと
をこの順序で5’から3’の方向に具備し;
更に、該宿主細胞で自律的に複製することが可能な、細菌性プラスミド由来の複製起点を具備したDNA配列と、該宿主細胞に該プラスミドが存在するときに現れる選択可能または同定可能な特質と関連した遺伝子を有するDNA配列とを含む、
プラスミド。
【請求項3】
前記のプロモーターが、配列番号8を含み、前記のリボソーム結合部位が、大腸菌(E.coli)deoリボソーム結合部位である、請求項2に記載のプラスミド。
【請求項4】
前記のポリペプチドが、ヒト銅−亜鉛スーパーオキシドジスムターゼ、アセチルコリンエステラーゼ、ヒト成長ホルモン、およびpre-S1肝炎抗原からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記のポリペプチドが、ヒト銅−亜鉛スーパーオキシドジスムターゼ、アセチルコリンエステラーゼ、ヒト成長ホルモン、およびpre-S1肝炎抗原からなる群より選択される、請求項2に記載のプラスミド。
【請求項6】
プラスミドpMFO-551(ATCC受託番号69339)、プラスミドpMFOA-18(ATCC受託番号69340)、プラスミドpMFO/hGH-9(ATCC受託番号69360)、およびプラスミドpMFO-PreS1(ATCC受託番号69358)からなる群より選択される、請求項5に記載のプラスミド。
【請求項7】
請求項2、3、5および6の何れか1項に記載のプラスミドを含む宿主細胞。
【請求項8】
細菌細胞、好ましくは大腸菌(E.coli)である、請求項7に記載の宿主細胞。
【請求項9】
前記の大腸菌(E.coli)株が、大腸菌(E.coli)MC1061株または大腸菌(E.coli)MC1655株である、請求項8に記載の宿主細胞。
【請求項10】
前記の微生物が、請求項7〜9の何れか1項に記載の宿主細胞である、請求項1または4に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−68019(P2006−68019A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−292784(P2005−292784)
【出願日】平成17年10月5日(2005.10.5)
【分割の表示】特願平7−524813の分割
【原出願日】平成7年3月22日(1995.3.22)
【出願人】(505334134)バイオ − テクノロジー・ジェネラル・コーポレーション (1)
【Fターム(参考)】