説明

p−キシレンの酸素ベースの酸化における水含量の最適化

【課題】 要求される水の量を最適にした芳香族カルボン酸の酸化製造方法を提供する。
【解決手段】 下記の工程:a)反応装置容器内に収容される有機溶媒、6〜10.5重量%の量の水、少なくとも一種の重金属触媒、及び臭素開始剤を含む液体を準備し;
b)芳香族アルキル反応体を該液体に加え;
c)純又は純に近い酸素を該液体に加え;
d)該芳香族アルキルの酸化による反応の熱を該液体中に存在する揮発性有機物質及び水を蒸発させる際の蒸発冷却によって取り去り;
e)芳香族カルボン酸生成物を回収するを含む芳香族カルボン酸の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、テレフタル酸(TA)の製造方法に関し、一層特には反応において用いる水の量を生産効率を向上させるように最適にするTAの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】テレフタル酸(TA)は、商業上p−キシレンを酢酸中で接触酸化させることによって製造される。このプロセスは、Amoco又はMid−Centuryプロセスとして知られている。典型的な空気ベースのTA製造プロセスは、米国特許第3,089,906号(1963)及び一層最近では米国特許第5,081,290号(1992)に記載されている。p−キシレンの転化率は極めて高く(>99%)、TAの選択率はおよそ98%である。反応は、連続攪拌槽反応装置において行われる。溶媒対反応体の比は、反応体1容積当り溶媒2〜6容積(2:1〜6:1)が典型的である。反応生成物は、溶液から沈降する固体であり、溶媒とスラリー混合物を形成する。
【0003】酸化反応は発熱であり、反応熱は326kcal/gモルである。反応熱は、溶媒及び副生水を蒸発させることによって取り去られる。反応装置の圧力は、液相が反応域において保たれるように、およそ100〜300psig(7〜21Kg/cm2G)の間に固定される。プロセスの温度は、混合物の沸点範囲により、典型的には170°〜225℃の間に設定される。蒸気は凝縮されて反応装置に戻される。商業プロセスでは、水はコンデンセートから除かれた後に、反応装置に戻される。
【0004】圧縮空気が反応装置の底部中にスパージされる。空気からの酸素が溶解して液相中に入りp−キシレンと反応してTAを生成する。中間の酸化生成物及び副生物もまた反応条件に依存する量で形成される。滞留時間は、1時間が典型的である。
【0005】泡から液への酸素の移動は、高い品質の生成物を形成するのに重要である。いくつかの条件で、総括反応速度は、酸素物質移動速度によって制御され、酸素物質移動速度は泡中の酸素の濃度及びプロセスの全圧に依存する。一層特には、溶媒が蒸発して泡に入るにつれて、酸素濃度は減少され、物質移動速度は小さくなる。すべての条件で、低酸素濃度の領域は望ましくない結合副生物の形成を引き起こし得る。
【0006】空気泡が攪拌機によって液相全体を通して分散及び循環されるにつれて、泡中の酸素濃度は、酸素が溶解して反応するので、減少する。空気泡は液相から離脱し、反応装置の頂部に収集して連続した気相を形成する。この廃ガスは、フレッシュな空気供給のための余地を作りかつガスから液相への酸素移動を助成するのに適したガスホールドアップを維持するために、ベントされなければならない。
【0007】火災又は爆発の可能性を回避するために、反応装置の頂部におけるガス空間中の酸素濃度は引火限界よりも低く保たれなければならない。実用的な目的から、酸素濃度は、8〜9容積%よりも低い値に保たれなければならない[米国特許第3.092,658号]。ガス空間における酸素濃度は、引火限界よりも低い安全な余裕をもたらすために、5容積%よりも低い値に保たれるのが一層典型的である。これより、十分に混合される(well−mixed)攪拌槽反応装置では、循環する空気泡中の酸素の平均濃度は、ヘッドスペース中に収集するガス中の平均の酸素濃度が確実に非引火性になるために、5%よりも低くしなければならない。
【0008】ガス空間における酸素濃度は、空気が反応装置中に供給される速度と反応による空気から酸素が消費される速度との関数になる。反応速度、従って、単位反応装置容積当りのTA生産速度は、温度、圧力、ガス空間における酸素濃度、p−キシレン濃度、プロモーター濃度及び触媒濃度によって増大する。液相における溶解される酸素の濃度、故に酸素の反応速度は、気相中の酸素濃度に比例するので、所定の一連の反応条件について、5%の酸素制限は、酸素反応速度を有効に制限する。
【0009】高い反応速度を維持することによって、望ましくない中間体の形成を最少にすることができる。反応速度は、温度を上げるにつれて増大する。中間体の存在は、高い反応温度を保つことによって、最少にされるのが典型的である。しかし、溶媒の消費速度は、温度を上げるにつれて増大するのが観測された。従って、反応速度を増大させるために高い温度を使用することは、溶媒の損失により、それに有意の運転費を付随させる。加えて、上述した空気ベースのテレフタル酸製造プロセスは、CO2 、CO、臭化メチル及び酢酸メチル副生ガスを生成するので、環境上の問題がある。
【0010】空気ベースの反応における変数としての水の作用が、従来技術において調査された。例えば、Lindahl等は、米国特許第4,835,307号において、TA生産における水含量が、副生物生成を最少にしようと試みる際に考慮すべきいくつかの変数の内の一つであることを教示している。特には、彼等は、反応装置内の水の量を5〜20重量%にすべきことを教示している。タムラ等は、反応装置内の水含量を5〜15重量%のレベルに制御するのがよいことを教示しているが、この範囲がなぜに重要であるかに関して示唆していない。最後に、Roffia等は、Oxidation Communications 8、1〜2号において、反応媒体中の水濃度が、速度論、選択性、酸品質並びに溶媒及び触媒消費に対して影響を与えることを教示している。特には、彼等は、反応装置内の水濃度6〜18重量%の作用について測定している。参考文献の図10は、水濃度が増大されると、酸化の速度が低下することを示している。このことに鑑みて、Roffiaは、水を加える場合に、酸化の速度を維持するように反応の温度を上げなければならないことを教示している。上述した通りに、反応の温度を上昇させることは、溶媒損失により、費用が増大することになる。
【0011】本出願人は、前に米国特許第5,371,283号において、反応速度及び生成物品質を高めるために、空気に代えて純又は純に近い酸素(「純又は純に近い」とは、酸素少なくとも約50容積%、好ましくは酸素を90容積%よりも多く有するガスを意味する)を使用する酸素ベースのプロセスを提案した。p−キシレンのテレフタル酸へのこの反応では、泡中の酸素の分圧を増大させることによって反応速度を高く保つ。こうして、酸素が反応のために液中に移動する速度は、増大され、総括反応速度を増大させる。従って、同等の反応速度が、空気ベースの反応に比べて低い温度で達成されることができる。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】本発明において、本発明者等は、反応において用いる水の量が泡中の酸素の濃度に対して影響を有し、それ故に、決め得る最適な量が存在することを見出した。本発明者等は、空気ベースの反応では、水が酸素の濃度に対して及ぼす影響は、窒素の存在により、有意に弱められるので、この関係は従来研究されなかったと考える。それ故に、従来開示されたそれらの範囲を超える水含量の最適化は、可能なものではない。
【0013】従って、発明の目的は、酸素ベースのTA製造プロセスにおいて用いるべき水の最適な量を求めることにある。その他の目的、特徴及び利点は、好適な実施態様の下記の説明及び添付図面から当業者に思い浮かぶものと思う。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明は、下記の工程:a)反応装置容器内に収容される有機溶媒、約6〜約10.5重量%の量の水、少なくとも一種の重金属触媒、及び臭素開始剤を含む液体を準備し;
b)芳香族アルキル反応体を該液体に加え;
c)純又は純に近い酸素を該液体に加え;
d)該芳香族アルキルの酸化による反応の熱を該液体中に存在する揮発性有機物質及び水を蒸発させる際の蒸発冷却によって取り去り;
e)芳香族カルボン酸生成物を回収するを含む芳香族カルボン酸の製造方法。
【0015】
【発明の実施の形態】本発明者等の発明では、反応混合物中の水含量を最適化することを用いて泡中の酸素の高い濃度を保つ。この概念に重要なことは、水が泡中の酸素濃度に及ぼす影響を理解することである。溶媒(典型的には酢酸)及び水は気化して酸素気泡中に入り、酸素の濃度は低減される。水の気化の潜熱は酢酸の潜熱に比べてずっと大きい(それぞれ8.4kcal/gモル及び5.1kcal/gモル)ので、蒸発される混合物の全モル数は、ずっと少なくなる。この一般的な作用を図1R>1に例示する。図1は、水の濃度を増大させるにつれて、反応の熱を取り去るのに要する溶媒及び水の相対的なモル数が減少されることを示す。これにより、泡中の溶媒/水の量が減少し、よって泡中の酸素の濃度が増大することになる。正味の結果は、物質移動及び反応速度の増大である。この作用は、空気ベースの反応にについては観測されない、というのは、空気中の他の成分(例えば、窒素)が泡中の酸素濃度を希薄にするからである。酸素ベースの反応の酸化速度に対する水の作用は、空気ベースの反応に関してRoffia等によって示される作用と反対であることに留意すべきである。その場合に、観測される水の唯一の影響は、水が触媒失活により運動速度に及ぼす負の影響である。
【0016】図2は、希釈が酸素泡に及ぼす影響と、同じ量の酸素を含有するが、また希釈窒素も含む空気泡に及ぼす影響との差を例示する。酸素泡中の酸素濃度は、示す範囲にわたって100%から25%に低減される。対照して、空気泡中の酸素濃度は、同じ範囲にわたって21%から13%に低減される。
【0017】反応混合物中に水が存在することは、また混合物の沸点を下げる。空気ベースの場合に、反応速度を増大させるために、一層高い温度が用いられるので、これは望ましいことではない。しかし、上述した通りに、温度を高くする程、また溶媒損失速度を増大させる。従って、酸素ベースの反応混合物の水含量を増大させると、反応速度を犠牲にしないで溶媒損失を減少させることができる。3つの反応圧力について水が沸点に与える作用を図3に例示する。図3では、水濃度が大きい程、沸点が低くなることが示される。各々の圧力について、上のカーブは露点カーブであり、下のカーブはバブルポイントカーブである。
【0018】反応は、混合物の沸点においてランすることから、本発明者等は、反応からの熱を蒸発によって自動的に除いており、これより、特に好適な実施態様では、TA生産は、蒸発冷却を採用することを可能にさせるように、特に改正LORプロセス及びシステム(本明細書以降、蒸発冷却式LORと呼ぶ)を有利に使用することによって行われる。このプロセス及びシステムの詳細は、同時継続米国特許出願第08/241,438号に開示されており、同出願を本明細書中に援用する。
【0019】蒸発冷却式LORプロセスでは、酸素を、反応装置容器の溶媒/反応混合物の本体中の他のどこよりもむしろ中空のドラフトチューブ内又はその直ぐ下の高い乱流の点に加える。酸素をそのような点に注入することは、所望の酸素消費に重要である。注入の点で気相中の酸素濃度が初めに高いことは、液状反応体のこの領域中への酸素の物質移動速度を増進させる働きをし、注入の点で気相中の酸素濃度が初めに高くなければ、酸化反応の急速な速度により、酸素は枯渇されることになろう。
【0020】発明の実施は、純又は純に近い酸素を初めに反応装置に注入する際に、極めて高い酸素使用効率、すなわち少なくとも75%、好ましくは90%又はそれ以上が得られるように、急速な酸素消費速度を達成することを可能にする。この実施態様の実施では、p−キシレンと酸素との反応は、約95%よりも大きくなる。すなわち、未反応でベントされる酸素は、反応装置に供給する酸素の約5%よりも少ない。
【0021】蒸発冷却に関しては、下記に留意する。TA生産作業では、有意の量の揮発性有機物質及び水が反応混合物から蒸発する。ベントガスを冷却し、それからの凝縮物を反応装置に戻す。ベント流の一部を、二酸化炭素及び酸素をガス分析するのに向けるのが望ましい。
【0022】蒸発式LORの利点をここで説明することにする。TA生成物は固相で得られるが、蒸発式LORの使用は、TAから生じる酸化反応の熱を取り除くために直接冷却熱交換表面を一般に使用すること及びその他冷却コイル等の伝熱面上に固形分が沈殿することに付随する実際的な作業問題を回避する。これより、p−キシレン酸化反応のために純又は純に近い酸素を安全かつ効率的に用いることは、酸化反応の間に発生される反応熱を取り除くのに蒸発冷却を使用して、簡便に行うことができる。
【0023】LORプロセス及びシステムでは、発明の実施において使用する通りに、空気の代わりに純又は純に近い酸素を使用する。これは、火災又は爆発についての可能性を防ぎ、テレフタル酸生成物中に存在する望まない副生物の量を最少にする働きをする望ましい作業条件を可能にする。加えて、処理すべきベントガスの量を最少にする。発明の実施は、純又は純に近い酸素を初めに反応装置に注入する際に、極めて高い酸素使用効率、すなわち少なくとも75%、好ましくは90%又はそれ以上が得られるように、急速な酸素消費速度を達成することを可能にする。この実施態様の実施では、p−キシレンと酸素との反応は、約95%よりも大きくなる。すなわち、未反応でベントされる酸素は、反応装置に供給する酸素の約5%よりも少ない。それ程好適な実施態様とは言えないが、発明のプロセスを従来の反応装置容器において実施することができ、本発明者等は、別の反応装置構造における最適な水濃度が、LORケースにおいて要求されるのと同じであろうと考える。更に、炭化水素の酸化において空気を酸素に替えることは、従来の反応装置デザインによって行うことができ、これらの反応装置は、反応混合物の沸点においてランし、こうして蒸発冷却により混合物から反応の熱を取り除くことができる。そのような条件下で、酸素ベースの処理加工により観測される利点の多く、すなわち反応速度の増大、ベント流の減少、副生物生成の減少、が実現される。
【0024】しかし、フローパターンが従来のシステムでは異なることから、オーバーヘッド気相中に逃げる未溶解の酸素は多くなる。従って、従来のシステムは、LOR実施態様に比べて酸素効率が低くなる。経済的に実行可能にするために、そのような実施態様において用いられるインペラーは、酸素使用において酸素を極めて小さい泡として分配させかつ酸素泡が液相中にある平均滞留時間を長くさせるのを助成することによって、効率的でなければならない。
【0025】上述した通りに、従来の反応装置では、オーバーヘッド気相中に過剰の酸素が存在することになろう。その結果、そのような過剰の酸素が存在することに伴う安全問題を回避するために、多量の窒素又はその他の不活性なベントガスをオーバーヘッド気相に通さなければならない。そのような窒素の更なる費用並びに更なる酸素又はその他のガスの費用は、この実施態様を実際の作業上の観点から、十分に経済的でないものにする。
【0026】水は、水がプロセス条件に与える物理的な作用に加えて、また反応のケミストリーにも影響を与え得ることに留意すべきである。高い水含量は、遺憾ながら、重金属触媒を失活させ得る。空気ベースの酸化では、水含量およそ20〜25%が、この影響を与えることが知られており、本発明者等は、酸素ベースの反応で、約18重量%において同様の作用を認めた。本発明者等は、これらの作用及び本発明者等の研究に基づいて、酸素ベースの反応について反応装置内の最適な水含量が、約6〜約10.5重量%、好ましくは約8〜約10重量%であることを見出した。
【0027】この範囲は、空気ベースの反応について提案されている範囲に比べて相当に狭い。本発明者等は、これについての理由の一部は、空気ベースのプロセスでは、水の物理的な影響が相当に弱められかつ空気中に窒素が存在することから生じる大きな窒素ガス流の影響により検出し得ないものと考える。それ故に、水の量であって、従来開示されたものを越える量の最適化は、可能でない。
【0028】発明の実施では、好適な溶媒:反応体比は、容積:容積基準で約1:1〜約8:1である。好適な触媒添加量は、下記の範囲内にすべきである:コバルト(400〜700ppm)、マンガン(800〜1700ppm)、及び臭素(500〜1200ppm)。全添加量は、500〜3000ppmにすべきであり、Co:Mn比は、1:10〜10:1にすべきである。液についての滞留時間は、30〜90分の時間が適しているが、好適な滞留時間は約60分である。作業温度は、約170°〜約190℃が普通であり、180°〜190℃が好ましい。作業圧力は、約90〜300psig(6.3〜21Kg/cm2G)であり、100〜125psig(7〜8.79Kg/cm2G)が好ましく、115psig(8.09Kg/cm2G)が最も好ましい。好適な炭化水素反応体供給濃度は、約8.9〜約14.2%の範囲である。オキシダントは、純又は純に近い酸素にすべきである。
【0029】下記に提示する例は、例示又は比較のために提示するものであり、制限する意図のものではない。
【0030】
【実施例】p−キシレンを蒸発冷却式LORにおいて酸化させることによって、テレフタル酸を製造した。酸化は、圧力115psig及び温度170°〜190℃で行った。触媒添加量は、下記の範囲内で変えた:コバルト(400〜700ppm)、マンガン(800〜1700ppm)、及び臭素(500〜1200ppm)。炭化水素反応体供給濃度は、9〜14%の間で変えた。オキシダントは、純酸素であった。
【0031】水含量が炭素酸化物の発生に与える影響を図4に例示する。分かる通りに、水の量は、COx 発生に有意の影響を与える。本発明者等は、これらの条件について反応装置内の最適な水濃度が、約6〜約10.5重量%、好ましくは約8〜約10重量%であると提案する、水濃度が高くなる程、触媒失活の影響が明らかになる。泡中の酸素濃度の増大が酸素物質移動に与えるポジティブな影響は、反応の運動速度を減じることによって克服される。運動速度は支配的な速度になり、更なる水は、単に反応速度を減小させるだけであることが観測される。
【0032】炭化水素の酸化において空気を酸素に替えることは、従来の反応装置デザインによって行うことができる。加えて、これらの反応装置は、反応混合物の沸点においてランし、こうして蒸発冷却により混合物から反応の熱を取り除くことができる。酸素ベースのプロセスにより観測される利点、すなわち副生物生成の減少、が実現されることになる。別の反応装置構造における最適な水濃度は、LORケースと同じである。しかし、そのような反応装置のガス空間における過剰の酸素に伴う安全問題を回避するために、ガス空間への大きな窒素フラッドをもたらさなければならない。窒素の更なる費用は、発明のこの実施態様を十分に経済的でないものにする。経済的に実行可能にするために、そのような実施態様において用いられるインペラーは、酸素使用において、酸素を極めて小さい泡として分配させかつ酸素気泡が液相中にある平均滞留時間を長くさせるのを助成することによって、効率的でなければならない。
【0033】発明は、酢酸よりも低い沸点及び比較的大きな潜熱を有する補助溶剤(水)を使用することを伴うので、酢酸の代用溶剤を使用して同じ効果を達成することができよう。既存の触媒システムに関しては、純水は適した溶剤ではない。しかし、水よりも大きな潜熱を有しかつ水よりも低い沸点を有し、p−キシレンと水との両方が十分に可溶性でありかつテレフタル酸が比較的に不溶性の酸性有機溶媒を、発明において使用してよい。
【0034】当業者ならば、種々の変更及び変更態様を、発明の細部において特許請求の範囲に記載する通りの発明の範囲から逸脱しないでなし得ることを認めるものと思う。例えば、上記のプロセスは、その他の任意の有機ケミカルであって、それの酸化が固体を生成物又は副生物として生成するものを酸化するのに適している。そのようなケミカルは、トルエン、メタ−及びオルト−キシレン及びトリメチルベンゼンを含み、これらに限られない。生成する生成物は、安息香酸、オルトフタル酸、イソフタル酸及びベンゼントリカルボン酸を含み、これらに限られない。TAの製造に加えて、イソフタル酸や2,6−ジカルボキシナフタレンの製造は、技術の論理的な延長である。
【0035】発明の特定の特徴を単に簡便のために図面の内の1つ又はそれ以上に示すが、各々の特徴を発明に従う他の特徴と組み合わせてもよい。当業者ならば別の実施態様を認めることになり、これらは発明の範囲内に含む意図である。
【図面の簡単な説明】
【図1】水濃度が蒸発される溶媒/水混合物の全モル数に与える作用を示すグラフである。
【図2】希釈が酸素泡に及ぼす影響と、同じ量の酸素を含有するが、また希釈窒素も含む空気泡に及ぼす影響との差を例示するグラフである。
【図3】水濃度と溶媒/水混合物の沸点との間の関係を示すグラフである。
【図4】水濃度とCOx の発生との間の関係を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 下記の工程:a)反応装置容器内に収容される有機溶媒、6〜10.5重量%の量の水、少なくとも一種の重金属触媒、及び臭素開始剤を含む液体を準備し;
b)芳香族アルキル反応体を該液体に加え;
c)純又は純に近い酸素を該液体に加え;
d)該芳香族アルキルの酸化による反応の熱を該液体中に存在する揮発性有機物質及び水を蒸発させる際の蒸発冷却によって取り去り;
e)芳香族カルボン酸生成物を回収するを含む芳香族カルボン酸の製造方法。
【請求項2】 芳香族カルボン酸がテレフタル酸、イソフタル酸又は2,6−ジカルボキシナフタレンである請求項1の方法。
【請求項3】 溶媒が酢酸である請求項1の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開平9−255618
【公開日】平成9年(1997)9月30日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平9−85518
【出願日】平成9年(1997)3月21日
【出願人】(392032409)プラクスエア・テクノロジー・インコーポレイテッド (119)