説明

p−ボロノフェニルアラニンとソルビトールとを含有する液状組成物

【課題】優れた溶解性と安定性を有するp−ボロノフェニルアラニンを含有する液状組成物を提供すること。
【解決手段】p−ボロノフェニルアラニンとソルビトールとを含有する液状の組成物を、ソルビトールの含有割合が、p−ボロノフェニルアラニンの含有量に対して、モル比で、0.9から2までの範囲に設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、p−ボロノフェニルアラニン及びソルビトールを含有する液状組成物に関する。さらに、本発明は、ソルビトールにより、p−ボロノフェニルアラニンを含む液状体の安定性を高める方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、放射性アイソトープを利用した癌の治療方法として、ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)が注目を集めている。ホウ素中性子捕捉療法は、ホウ素10同位体(10B)を含むホウ素化合物をガン細胞に取り込ませ、低エネルギーの中性子線(たとえば熱中性子)を照射して、細胞内で起こる核反応により局所的にガン細胞を破壊する治療方法である。この治療方法では、10Bを含むホウ素化合物をガン組織の細胞に選択的に蓄積させることが、治療効果を高める上で重要であるため、ガン細胞に選択的にかつ確実に取り込まれるホウ素化合物を開発することが必要となる。
【0003】
従来までに、BNCTに用いる薬剤として基本骨格にホウ素原子またはホウ素原子団を導入したホウ素含有化合物が合成されている。実際の臨床で用いられている薬剤としては、p−ボロノフェニルアラニン(BPA)やメルカプトウンデカハイドロドデカボレート(BSH)がある。
【0004】
このうち、BPAは、生理的pHでの溶解性が極めて乏しく、利用形態が限られている。
【0005】
水に対するBPAの溶解度を改善する為に、BPAのフルクトース錯体を生成したり(例えば特許文献1)、BPAにアルカリ溶液中(水酸化ナトリウム水溶液中など)で、単糖またはポリオールを添加し、イオン交換樹脂により無機塩を除去して利用したり(例えば特許文献2)という方法が試みられている。
【特許文献1】米国特許第5492900号
【特許文献2】米国特許第6169076号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このように、糖類を添加したり、アルカリ処理したりした液では、安定性の問題や注射剤としてそぐわない性質を有するという問題がある。
【0007】
そこで、本発明の目的は、安定性に優れ、注射剤としての安全性も確保されている、p−ボロノフェニルアラニンを含有する均質な液状組成物を提供することにある。
【0008】
また、本発明の目的は、p−ボロノフェニルアラニン(BPA)を含む液状体の溶解性および安定性を高める方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、ソルビトールが一定条件下において、液体中でのp−ボロノフェニルアラニン(BPA)の溶解性を高めると共に、その安定性、安全性を確保するのに好適であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明は、p−ボロノフェニルアラニンとソルビトールとを含有する液状の組成物であって、ソルビトールの含有割合が、p−ボロノフェニルアラニンの含有量に対して、モル比で、0.9から2までの範囲である組成物に関する。
【0011】
上記p−ボロノフェニルアラニンは、L−p−ボロノフェニルアラニンであり得、上記ソルビトールは、D−ソルビトールであり得る。
【0012】
上記組成物のpH は、6.5から7.5までの範囲内であり得る。
【0013】
上記組成物の浸透圧比は、生理食塩液対比で、1から2までの範囲であり得る。
【0014】
上記組成物中のp−ボロノフェニルアラニンの濃度は、2.0-8.0W/V%であり得る。
【0015】
上記組成物中のナトリウムイオン濃度は、130mEq/Lから160mEq/Lの範囲内であり得る。
【0016】
上記組成物は、医薬品であり得る。
【0017】
上記組成物は、点鼻剤、口腔用剤、膣用剤、座剤及び注射剤から選択されるものであり得る。
【0018】
本発明はまた、ソルビトールにより、p−ボロノフェニルアラニンおよび金属イオンを含む液状体の溶解性および安定性を高める方法に関する。
【発明の効果】
【0019】
本発明のp−ボロノフェニルアラニンとソルビトールとを含有する液状の組成物は、ソルビトールの作用により、p−ボロノフェニルアラニンが溶液中で均質に溶解しており、かつ安定性にすぐれ、ヒトや動物への投与にも許容できる特性を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の液状組成物は、水性、アルコール性、その他のいずれの液でもよいが、水性液であることが好ましい。
【0021】
本発明の液状組成物の用途としては、医薬品としての利用が好ましく、特にホウ素中性子捕捉療法に用いられるような医薬品であることが好ましい。
【0022】
本発明の組成物には、p−ボロノフェニルアラニンとソルビトールとが含有される。
【0023】
p−ボロノフェニルアラニンとして、現在用いられているのは、L体であり、本発明においてもL−p−ボロノフェニルアラニンが好ましく用いられ得るが、これに限定されない。すなわち、D体あるいはD体とL体の両方を含むラセミ体のp−ボロノフェニルアラニンも本発明に用いられうる。
【0024】
ソルビトールとしては、現在医薬品への使用が認可されており、安全性が確認されているD−ソルビトールが好ましく用いられうるが、これに限定されない。すなわち、本発明においては、L体あるいは、L体とD体との混合体を用いることもできる。
【0025】
ここで、p−ボロノフェニルアラニンは、例えば、公知の方法で合成して(例えば、H.R.Synder,A.J.Reedy,W.M.J.Lennarz,J.Am.Chem.Soc.,1958,80,835: C.Malan,C.Morin,SYNLETT,1996,167: 米国特許第5157149号: 特開2000−212185号公報: および特許第2979139号)使用することができる。
【0026】
本発明の液状組成物に使用されるソルビトールの含有量は、他の添加剤の配合量にもよるが、p−ボロノフェニルアラニンの量に対して、モル比で、0.9から2までの範囲である。より好ましくは、1.1から1.5の範囲である。ソルビトールの添加量を減らすと溶解性に対するpH許容幅が狭く体内で析出する可能性がある.添加量を増やすと浸透圧比が大きくなる。また、溶解補助剤としての効果を生かすことおよび経済性を高める観点からも、この範囲が好ましい。
【0027】
本発明の組成物中のp−ボロノフェニルアラニンの含有量は、その種類および配合する成分の種類により適宜決定されるが、通常2.0−8.0W/V%である。配合量が少ないと臨床での応用の際に大量のボリュームの液が必要となり、不都合である。一方、配合量が多い場合には、溶液安定性が不十分になる傾向があり,かつ浸透圧比が大きくなり注射剤として不都合である。
【0028】
本発明の液状組成物のpHは、生体への投与を考慮して、中性付近のpHであることが好ましい。より具体的には、6.5から7.5の範囲であり、特に好ましくは7.4付近である。pHの調節には必要に応じて、当該技術分野で用いられる適当なpH調節剤(塩酸、炭酸水素ナトリウムなど)、緩衝剤などを使用してもよい。
【0029】
本発明の液状組成物の浸透圧比は特に限定されないが、生理食塩水対比で、1から2までの範囲内にあることが好ましい。より好ましくは、1.1から1.4の範囲である。この範囲にある場合には、注射剤の場合、痛みの軽減や投与時間の短縮が可能になる。
【0030】
本発明の液状組成物中には、その生体内外での安定性を図る為、適宜、生体に含まれていても良い各種金属イオンが含まれていてもよい。好ましくは、ナトリウムイオンが含まれており、その濃度は、特に限定はされないが、130mEq/Lから160mEq/Lが特に好ましい。細胞内液と細胞外液の電解質バランスが大きく崩れないように体液のNaイオン濃度範囲に近いこの数値範囲が好ましい。
【0031】
本発明の液状組成物には、必要に応じて、リン酸緩衝液、トリス塩酸緩衝液、酢酸緩衝液、炭酸緩衝液、クエン酸緩衝液等の緩衝剤を加えてもよい。これらの緩衝剤は、製剤の安定化や刺激性の低下に有用な場合がある。
【0032】
さらに本発明の組成物には、本発明の目的に反しないかぎり、通常、当該技術分野で用いられる他の成分を、必要に応じて含有させることができる。そのような成分として、通常、液体、特に水性の組成物に用いられる添加剤、例えば、塩化ベンザルコニウム、ソルビン酸カリウム、塩酸クロロヘキシジン等の保存剤、エデト酸Na等の安定化剤、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等の増粘剤、塩化ナトリウム、塩化カリウム、グリセリン、ショ糖、ブドウ糖等の等張化剤、ポリソルベート80、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等の界面活性剤、塩化ナトリウム、塩化カリウム、グリセリン等の等張剤、塩酸、水酸化ナトリウム等のpH調整剤が挙げられる。
【0033】
本発明の液状組成物がホウ素中性子療法に用いられる医薬品である場合、点鼻剤、口腔用剤、膣用剤、座剤、注射剤等の形をとりうる。
【0034】
すなわち、本発明の液状組成物を、医薬品として用いる場合、液剤等による経口投与、又は、動注、静注、筋注等の注射剤 、坐剤、経皮用製剤等による非経口投与のいずれの形態であってもよい。その非経口投与としては、静脈内、筋肉内、皮下、組織内、鼻腔内、皮内、点滴注入、脳内、直腸内、膣内、腹腔内投与等が挙げられる。
【0035】
「経口投与のための液体組成物 」は、薬学的に許容される乳剤、液剤、懸濁剤、シロップ剤、エリキシル剤等を含み、一般的に用いられる不活性な溶剤、例えば、精製水、エタノールを含む。この組成物 は不活性な溶剤以外に可溶化剤、湿潤剤、懸濁化剤のような補助剤、甘味剤、矯味剤、芳香剤、保存剤を含有していてもよい。
【0036】
「非経口投与のための注射剤 」としては、一定量の有効成分を分散剤(例えば、ポリソルベート80,ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60,ポリエチレングリコール,カルボキシメチルセルロース,アルギン酸ナトリウム等)、保存剤(例えば、メチルパラベン,プロピルパラベン,ベンジルアルコール,クロロブタノール,フェノール等)、等張化剤(例えば、塩化ナトリウム,グリセリン,D−マンニトール、グルコース等)等と共に水性溶剤(例えば、注射用蒸留水,生理的食塩水,リンゲル液等)あるいは油性溶剤(例えば、オリーブ油,ゴマ油,綿実油,トウモロコシ油等の植物油、プロピレングリコール等)等に溶解、懸濁あるいは乳化することにより製造される。この際、所望により溶解補助剤(例えば、サリチル酸ナトリウム,酢酸ナトリウム等)、安定剤(例えば、ヒト血清アルブミン等)、無痛化剤(例えば、ベンジルアルコール等)等の添加物を用いてもよい。更に必要に応じて抗酸化剤、着色剤等や他の添加剤を含有せしめてもよい。
【0037】
また、「薬学的に許容される担体」を用いることもできる。このような物質としては、液状製剤における、溶剤、溶解補助剤、懸濁化剤、等張化剤、緩衝剤、無痛化剤等が挙げられる。また、必要に応じて、防腐剤、抗酸化剤、着色剤、甘味剤、吸着剤、ゲル化剤等の製剤添加物を常法に従って用いることもできる。
【0038】
「抗酸化剤」の好適な例としては、例えば、亜硫酸塩、アスコルビン酸等が挙げられる。「等張化剤」の好適な例としては、例えば、グルコース、塩化ナトリウム、グリセリン、D−マンニトール等が挙げられる。
【0039】
「溶解補助剤」の好適な例としては、例えば、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、D−マンニトール、安息香酸ベンジル、エタノール、トリスアミノメタン、コレステロール、トリエタノールアミン、炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0040】
「溶剤」の好適な例としては、例えば、注射用水、アルコール、プロピレングリコール、マクロゴール等が用いられる。
【0041】
「懸濁化剤」の好適な例としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等の親水性高分子等が例示できる。
【0042】
「界面活性剤」として、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリルアミノプロピオン酸、レシチン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、モノステアリン酸グリセリン等が挙げられる。
「無痛化剤」の好適な例としては、例えば、ベンジルアルコール等が挙げられる。
【0043】
「保存剤」の好適な例としては、例えば、パラオキシ安息香酸エステル類、クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール、デヒドロ酢酸、ソルビン酸等が挙げられる。
【実施例】
【0044】
以下に実施例を示して、本発明をより詳細に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
【0045】
下記実施例および比較例に示す方法で、それぞれ、液状組成物を調製した。その後、これらの液状組成物について、安定性評価を行った。安定性評価は、主に、ICHガイドラインに基づく医薬品苛酷安定性試験の標準的な条件として、以下の機種や条件を用いて行った。
【0046】
すなわち、光苛酷保存条件は、25℃±2℃/amb H/D65ランプ(瞬時照度5000Lux・hr)で、60万Lux・hrと120万Lux・hrの光照射後に、性状の目視観察、pH測定(781型,メトロノームシバタ製)、浸透圧比測定(OM6060型,ARAKRAY製)、BPA濃度測定(高速液体クロマトグラフLaChromEliteL2000シリーズ,日立ハイテクノロジーズ製)を実施し、試験開始時と比較した。
【0047】
一方、熱苛酷試験では、60℃±2℃/ambH/暗所で、保管装置:ADP300(ヤマト科学製)にて、1週間、2週間、および4週間置き、それぞれの液をサンプリングして、性状の目視観察、pH測定(781型メトロノームシバタ製)、浸透圧比測定(OM6060型ARAKRAY製)、BPA濃度測定(高速液体クロマトグラフLaChromEliteL2000シリーズ,日立ハイテクノロジーズ製)を実施し、試験開始時と比較した。
【0048】
ここで、HPLCによる測定条件は、以下の通りである。
【0049】
使用カラム:Atlantis T3 (3μm,4.6×150mm)Waters製
移動相:水/メタノール/トリフルオロ酢酸(950:50:1)
カラム温度:40℃付近の一定温度
流速:1.0mL/分
注入量:5μL
検出波長:223nm
検出波長(フォトダイオードアレイ検出器:PDA):200〜360nm
【0050】
〔実施例1〕
(BPAソルビトール水溶液の調製)
3w/v%BPAソルビトール水溶液を次のとおりにして調製した。すなわち、まず、1mol/l水酸化ナトリウム水溶液15.0 mLに水82.9 mLを加え撹拌した。L−BPA3.00 g, D−ソルビトール3.15 gを加え室温で30分間撹拌し,完全に溶解した.室温で1mol/l塩酸1.22 mLを加え, pH7.4に調整し、水0.88mLを加えて全量100mLにした。ついで0.2μmのフィルターでろ過した。
【0051】
〔実施例2〕
ソルビトール/BPA比(モル比)を、1.5になるように調整した以外は、実施例1と同様の方法でBPAソルビトール水溶液を調製した。
【0052】
〔実施例3〕
ソルビトール/BPA比(モル比)を、1.75になるように調整した以外は、実施例1と同様の方法でBPAソルビトール水溶液を調製した。
【0053】
〔実施例4〕
2.5w/vBPAソルビトール水溶液を次のとおりにして調製した。すなわち、まず、1mol/l水酸化ナトリウム水溶液25.0 mLに水171.5 mLを加え撹拌した。L−BPA5.00g、 D−ソルビトール6.562gを加え室温で30分間撹拌し、完全に溶解した。室温で1mol/l塩酸2.1 mLを加え、 pH7.4に調整し、塩化ナトリウム0.1751gと水1.4mLを加えて全量200mLにした。ついで0.2μmのフィルターでろ過した。
【0054】
〔実施例5〕
ソルビトール/BPA比(モル比)を、1.75になるように調整した以外は、実施例4と同様の方法でBPAソルビトール水溶液を調製した。
【0055】
〔実施例6〕
ソルビトール/BPA比(モル比)を、2.0になるように調整した以外は、実施例4と同様の方法でBPAソルビトール水溶液を調製した。
【0056】
〔比較例1〕
L−BPA−フルクトース水溶液の調製
L−BPA4.84gとフルクトース10.76gとを水145mLに加え、室温にて撹拌しつつ1mol/l水酸化ナトリウム26.9mLを加えて溶解させた。1mol/l塩酸4.4mLを加えpH7.4に調整し,水23.6mLを加えて容量を200mLとした。ついで0.2μmのフィルターでろ過した。
【0057】
〔比較例2〕
L−BPA−フルクトース水溶液の調製
L−BPA4.84gとフルクトース10.76gとを水145mLに加え、室温にて撹拌しつつ1mol/l水酸化ナトリウム26.9mLを加えて溶解させた。1mol/l塩酸または7%炭酸水素ナトリウム水で調整しながら、容量を200mLとして、pH7.9に調製した。ついで0.2μmのフィルターでろ過した。
【0058】
実施例1から3および比較例1の水溶液について、光苛酷保存試験を行った結果を表1に示す。
【表1】

【0059】
この結果、光苛酷試験では、実施例および比較例のいずれの製剤もpH、浸透圧比、含量に大きな変化は確認されなかったが、臨床研究で使用されているフルクトース製剤と同等の安定性を示した。
【0060】
実施例4から6および比較例2の水溶液について、熱苛酷試験を行った結果を表2に示す。
【表2】

【0061】
この結果、熱安定性試験では、性状観察では、比較例において、色の変化が大きく、見た目からも成分の変化が推察されたが、実施例の水溶液ではいずれもそのような変化は見られなかった。さらに、比較例においては、浸透圧比も時間を追うごとに変化し、BPA濃度も変化している、など、溶液の不安定性を示す結果が出ているが、実施例の水溶液ではそのような変化は見られず、溶液が安定していることがわかった。すなわち、フルクトース製剤は色の変化が著しく、BPA濃度が大きく低下するのに対し,ソルビトールを含有する液状組成物は濃度変化が少なく、安定である。
【0062】
また、HPLCの測定によって溶解濃度が示されているが、通常のBPAの水に対する溶解度は1.6g/Lで、それとの比較で実施例の溶液は、BPAの溶解度が飛躍的に増加していることが確認される。溶解性、熱苛酷および光苛酷の結果を総合的に判断して、本発明のソルビトールを含有する液状組成物は、安定性に優れ、液の均質性にも優れていることがわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
p−ボロノフェニルアラニンとソルビトールとを含有する液状の組成物であって、ソルビトールの含有割合が、p−ボロノフェニルアラニンの含有量に対して、モル比で、0.9から2までの範囲である、組成物。
【請求項2】
p−ボロノフェニルアラニンが、L−p−ボロノフェニルアラニンであり、ソルビトールが、D−ソルビトールである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
pH が6.5から7.5までの範囲内である、請求項1または2のいずれかに記載の組成物。
【請求項4】
浸透圧比が、生理食塩液対比で、1から2までの範囲である、請求項1から3までのいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
p−ボロノフェニルアラニンの濃度が2.0-8.0W/V%である、請求項1から4までのいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
ナトリウムイオン濃度が、130mEq/Lから160mEq/Lの範囲内である、請求項1から5までのいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
医薬品である請求項1から6までのいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
点鼻剤、口腔用剤、膣用剤、座剤、注射剤から選択される、請求項1から7までのいずれかに記載の組成物。
【請求項9】
ソルビトールにより、p−ボロノフェニルアラニンおよび金属イオンを含む液状体の溶解性および安定性を高める方法。

【公開番号】特開2009−51766(P2009−51766A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−219620(P2007−219620)
【出願日】平成19年8月27日(2007.8.27)
【出願人】(507288132)ステラファーマ株式会社 (3)
【Fターム(参考)】