p185neuをコードするDNA、及びその治療上の使用
p185neu腫瘍性タンパク質の様々な断片をコードする配列を含み、ErbBファミリーの癌遺伝子を発現している腫瘍に対する免疫応答を誘導できるプラスミドおよびその医薬品組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、p185neuをコードする配列を含むプラスミドベクター、および腫瘍に対するDNAワクチン接種におけるその使用に関する。本発明に記載のプラスミドは、ヒトまたはラットの腫瘍性タンパク質p185neuの様々な断片をコードする配列を含み、ErbBファミリーの癌遺伝子を発現する腫瘍に対する液性または細胞性免疫応答を誘導することができる。
【0002】
本発明はまた、前記のプラスミドを含む医薬品組成物およびp185neuを発現する腫瘍の予防または治療のための使用方法に関する。
【背景技術】
【0003】
p185neuは、ラットで癌原遺伝子Her−2/neuによりコードされており、また上皮成長因子受容体EGFR(ErbB−1)およびそれに関連する他の受容体(ErbB−3、ErbB−4)も含むチロシンキナーゼ受容体(RTK)のクラスIファミリーに属している膜受容体である。これらの受容体は、細胞の増殖と分化に関与しており(Hynesと Stern、1994 BBA 1198:165)、したがって、生物学的におよび臨床的に高い関心を集めている。受容体は、3つのよく区別されたドメインすなわち細胞外、膜貫通および細胞質内のドメインからなる。p185neuは、増殖と分化プロセスを調節する細胞内シグナル伝達と細胞内情報伝達の機構の複雑なネットワークに関与している(Boyle 1992 Curr.Op.On col.4:156)。癌遺伝子neuは、最初に分離された化学的に誘発したラットの神経膠芽細胞腫にちなんで名付けられている。この活性化されたneuの型には、「A」の「T」による置換を引き起こし、結果としてp185neuの664番目のバリン残基のグルタミン酸残基による置換(Val664Glu)を引き起こす、1つの点突然変異がある(Bargmannら、1986、Cell 45:649)。
【0004】
また、ヒトのneu相同体であるErbB−2が分離されて特性が明らかにされ、ラットのHER2/neu受容体もヒトのErbB−2も共に、EGFRと有意な相同性を持つことが示された(Coussensら、1985、Sciente 230:1132;Yamamotoら、1986、Nature 319:230)。ラットの配列における遺伝子突然変異が、二量体形成を介する構成的な受容体活性化の原因であるが、ErbB−2陽性のヒト腫瘍で、癌遺伝子の異常発現が認められ(Di Marcoら、1990、Mol.Cell.Biol.10:3247;Klapperら、2000、Adv Cancer Res、77:25)、まれではあるが、活性化点突然変異と異常なスプライシング機構が確認されている(Kwongら、1998、Mol Carcinog 23:62;Xieら、2000、J Natl Cancer Inst 92:412)。その全体的な効果は同程度である。すなわち、遺伝子の増幅と転写レベルの増加よりp185neu膜受容体が過剰になり、リガンドとは無関係に増殖信号を細胞内で伝達している活性ダイマーが増加するという結果となる。最近報告されたヒトとラットp185neuの細胞外領域の結晶構造は、このタンパク質は、どのリガンドとも直接結合することなく、他のErbB受容体と相互作用ができ、増殖シグナル伝達の引き金となる強固な立体構造によって特徴づけられることを示している(Cho HSら、2003、Nature 421:756)。
【0005】
正常な状況では、ヒトp185neuは、器官形成および上皮の増殖に関係し、胎盤形成および胎生期には高レベルで発現するが、成体組織では極めて少量しか存在しない(Pressら、1990、Oncogene 5:953)。
【0006】
いくつかの研究により、ヒトp185neuの過剰発現が、腫瘍形成過程と腫瘍の侵襲レベルに関係があることが示された。p185neuの過剰発現が、肺腺癌(Kernら、1986、Cancer Res.50:5184)、結腸腺癌(Cohenら、1989、Oncogene 4:81)、卵巣腺癌(Slamonら、1989、Science 244:707)および多数のヒト乳癌(Slamonら、1989、Science 244:707;Jardinesら、1993、Pathobiology 61:268)で報告されている。
【0007】
p185neuをプラスミドワクチン接種の最適な標的にする基本的特性は、a)p185neuが細胞増殖および癌発生に直接関与し、したがって腫瘍の遺伝的不安定性のために、この抗原の発現を喪失したクローン変異体は腫瘍形成能も失うことと、b)主要組織適合抗原系の発現を喪失した腫瘍細胞でも、抗体で認識できるようにする原形質膜上でのp185neuの発現である(Lollini P.とForni G.2003、Trends Immunol.24:62)。
【0008】
活性化されたラット癌遺伝子Her−2/neuを導入したマウス(p185neu陽性乳癌を自然発症する)、およびp185neu陽性の移植可能な腫瘍細胞株を用いたネズミモデルで実施された研究で、前癌病変を予防し、治癒することができる可能性が実証された。特に、活性化したラットHer−2/neuを導入したマウスでの乳癌の予防に関しては、ラットp185neuの細胞外ドメインおよび膜貫通ドメインをコードするプラスミドは、全長ラットp185neuまたは細胞外ドメイン(分泌された抗原)のみをコードするプラスミドより、効果的に生体内での防御を誘導できることをわれわれは実証した(Amici A.ら、2000、Gene Ther.7:703;Rovero S.ら、2000、J.of Immunol.165:5133)。同様の結果が、Chenらによって報告されている(1998、Cancer Res 58:1965)。他の研究者達も、未改変のまたはチロシンキナーゼ活性を失うように突然変異させたp185neuをコードするプラスミドは、p185neu陽性細胞接種後の腫瘍発症の予防に効果があることを証明した(Wei WZら、1999、Int.J.Cancer 81:748)。さらに小胞体を介するプロセシングを担い、p185neu抗原の細胞質での局在を決める信号(リーダー)を欠くプラスミドも、同じく効果的であることが証明された。p185neuの膜発現の場合、様々なプラスミドにより誘導される防御は、主として液性免疫応答で媒介され、細胞質に局在する場合にはTリンパ球媒介免疫応答で主として媒介された(Pilon SAら、2001、J.of Immunol.167:3201)。しかしながら、細胞質および膜のどちらにおいても、p185neuの過剰発現を誘発するプラスミドを用いる複合ワクチン接種は、腫瘍の増殖を防ぐためにより有効であった(Piechocki MPら、2001、J.Immunol.167:3367)。
【0009】
したがって、異なる免疫応答機構間でのバランスが特に重要である可能性がある(Reillyら、2001、Cancer Res.61:880)。さらに、ラットp185neuの細胞外および膜貫通ドメインをコードするプラスミドを用いるワクチン接種により、p185neuを過剰発現している細胞の接種後直ちに、腫瘍の排除に協同して働く免疫系の多くの異なるエフェクター機構(TヘルパーおよびTキラー細胞、抗体、マクロファージ、好中球、ナチュラルキラー細胞、Fcレセプター、ガンマインターフェロンならびにパーフォリン)を介して、直径2mmの腫瘍塊を根治できることが観察されている(Curcio C.ら、2003、J.Clin.Invest.111:1161)。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明の説明
ヒトまたはヒト/ラットキメラのp185タンパク質をコードする様々な構築物をプラスミドベクターに挿入して、腫瘍進行を予防することを目的とする免疫実験で使用した。プラスミドの構築には、膜貫通領域および短縮した細胞外ドメイン部分を含むヒトp185neuタンパク質の断片をErbB2癌遺伝子配列から調製するか、またはキメラプラスミドを作成するために、その一部をラットHer−2/neu cDNA由来の相同的配列と置換した。
【0011】
こうして得られたプラスミドを、ヒトp185neuを過剰発現している腫瘍細胞を接種したマウスにワクチン接種する実験で評価した。切断型のp185neuを含むプラスミドは、キラーおよびヘルパーTリンパ球により媒介される抗腫瘍反応性を誘発するが、キメラプラスミドはヒトおよびラットのp185neuの両方に対する抗体応答を誘発した。
【0012】
in vivoでの実験の結果に基づき、細胞性および液性の型の強い免疫応答を誘発することができるp185neu配列を含むプラスミドを選択した。本発明の目的であるこれらのプラスミドは、配列番号1〜14からなるグループから選択されるp185neu断片をコードする1つの配列含む(ヒトおよびラットp185neu参照配列は、それぞれGene Bank受入れ番号M11730およびX03362で入手できる)。
【0013】
本発明によれば、p185neuをコードする配列は、ヒトへの投与に適切な任意のプラスミドベクターに挿入することができる。コード配列の他に、プラスミドは、転写調節のための機能的エレメント、特にコード配列の上流に位置するプロモーター、好ましくはCMVプロモーター、開始と終止の転写エレメント、アンピシリンまたはカナマイシン耐性遺伝子等の選択マーカー、CpGのモチーフ、ポリアデニル化部位または転写活性因子(transcription activators)を含むことができる。転写調節エレメントは、ヒトで使用されるベクターとして適合しなければならない。好ましい実施の形態においては、本発明のプラスミドは、少なくとも4個、好ましくは少なくとも8個の、最大では80個までのCpGのモチーフを含む。細菌起源のCpGモチーフ(ATAATCGACGTTCAA)は、マクロファージを誘導してIL−12を分泌させ、次にナチュラルキラー細胞によるIFNγ分泌を誘導し、かくてTヘルパーリンパ球により媒介される応答を活性化する(Chu R.S.ら、1997、J.Exp.Med.、186;1623)。したがって、プラスミド配列中へCpGモチーフを挿入することにより、免疫応答が増強される。
【0014】
さらなる実施態様においては、本発明は、薬剤として許容されるビヒクル(vehicles)および賦形剤と共に、上記に定義した1種または複数の異なるプラスミドを含む医薬品組成物を提供する。医薬品組成物は、非経口投与に適した形態で、好ましくは注射可能な溶液の形態で、DNAワクチン接種に好都合に使用される。DNAワクチン接種に関する原理と方法は、当業者に知られており、例えば、Liu MA 2003;J Int Med 253:402に開示されている。
【0015】
他の実施形態では、本発明は同時に、逐次に、または別々に対象または患者へ投与する、少なくとも2種の、好ましくは少なくとも4種の、より好ましくは少なくとも8種の異なるプラスミドを含んでいる組合せ製剤を提供する。
【0016】
本発明にかかるプラスミド、組成物および製剤は、p185neu陽性の腫瘍を発症する危険がある対象、またはp185neu陽性腫瘍の原発性腫瘍、転移もしくは再発を有する患者の予防もしくは治療処置に使用される。予防は、腫瘍が顕在的でないときは一次、腫瘍が前腫瘍性病変である初期過程のときは二次、または腫瘍が再発または転移過程の場合は三次とすることができる。本発明のプラスミドで治療効果が得られる腫瘍には、上皮起源の腫瘍で、特に肺、卵巣および乳房の腺癌、あるいはさらに一般的には、p185neuタンパク質を発現している腫瘍があげられる。
発明の詳細な説明
pCMV3.1プラスミド骨格の構築
ヒトp185neu断片をコードするプラスミドおよびキメラプラスミドを構築するために、pCMV3.1プラスミドの骨格を用いた。制限酵素DraIII(nt1531)およびBsmI(nt3189)で、複製起点f1、複製起点およびSV40初期プロモーター、ネオマイシン抵抗性遺伝子をコードする遺伝子、およびSV40ポリアデニル化シグナルを含む1658塩基対の断片を除去して、ヒト癌原遺伝子ErbB−2cDNAおよびラット癌原遺伝子Her−2/neu cDNA由来の断片を、pCMV3.1(Invitrogen、Milano、イタリア)に挿入した。得られた改変されたプラスミド(pCMV3.1)には、本来のpcDNA3.1と比べていくつかの利点がある。実際、3900塩基対へのサイズの縮小および無関係な配列の除去は、in vivoでのトランスフェクション効率の増加に寄与する。
【0017】
プラスミドpCMV3.1erbB2の構築
プラスミドpSVerbB2から得られたヒトErbB2cDNAを、HindIIIとXbalの制限酵素部位でpCMV3.1のマルチクローニングサイトに挿入した。このプラスミドを、切断して短くしたp185neuを発現するプラスミドおよびキメラプラスミドの構築に用いる。
【0018】
配列4XCpGを含むプラスミド:pCMV3.1hECD−TM−4CpGおよびpCMV3.1hECD−TM−4noCpGの構築
プラスミドpCMV3.1−erbB2から細胞質内ドメインをコードする配列を除去した後、癌原遺伝子ErbB2の細胞外領域および膜貫通領域をコードする2つのプラスミドを調製した。この手順は先ず、ErbB2 cDNAのヌクレオチド配列中に存在する独特の部位を同定するための制限酵素による分析を含んだ。膜貫通領域末端の約20ヌクレオチド下流で、酵素AccIII(nt2195)で認識される独特の部位が同定された。
【0019】
細胞質ドメインを、独特な制限酵素認識部位を示す酵素AccIIIと酵素XbaIを用いて除去した。ErbB2ECD−TMのDNA3’末端に、翻訳終止シグナルと認識されるヌクレオチドトリプレットTAAを再挿入するために、われわれは、末端に制限酵素認識部位AccIIIとXbaIを持つ、2つのセンス(オリゴヌクレオチド#1、#3)およびアンチセンス(オリゴヌクレオチド#2、#4)オリゴヌクレオチドからなる2つの合成配列を使用した。これらの合成配列中には、4つの反復配列CpGとnoCpGが存在する。後者は陰性対照として用いる。これら2つの新規プラスミドは、pCMV3.1hECD−TM−4CpGおよびpCMV3.1hECD−TM−4noCpGと名付けた。
【0020】
8XCpGを含むプラスミド:pCMV3.1H/NhECD−TM−8CpGおよびpCMV3.1H/NhECD−TM−8noCpG配列の構築
さらに非特異的な免疫刺激を付け加えるために、われわれは、pCMV3.1H/N−4CpGと名付けた免疫刺激性のCpC配列を4つ含む新規なプラスミド骨格を構築した。このために、われわれは、2つのセンス(オリゴヌクレオチド#5)およびアンチセンス(オリゴヌクレオチド#6)オリゴヌクレオチドからなる合成配列により、酵素PmeIの2つの制限酵素認識部位の1つを除去し、マルチクローニングサイトに存在するHindIIIとNneIに対する制限酵素認識部位が反転するようにpCMV3.1を改変した。pCMV3.1H/Nと名付けたこの新規のプラスミドでは独特の制限酵素認識部位XbaIおよびPmeI中に、CpGとnoCpG配列の4つの反複を含む、2つのセンス(オリゴヌクレオチド#7、#9)およびアンチセンスヌクレオチド(オリゴヌクレオチド#8、#10)からなる2つの合成配列を挿入して、pCMV3.1H/N−4CpGおよび4noCpGを得た。その後、DNA断片hECD−TM−4CpGおよびhECD−TM−4noCpGを、それぞれpCMV3.1H/N−4CpGおよびpCMV3.1H/N−4noCpGに挿入して、pCMV3.1H/N−hECD−TM−8CpGおよびpCMV3.1H/N−hECD−TM−8noCpGと呼ぶ、2つの新規プラスミドを得た。
【0021】
ヒトp185neuの第2のシステインドメインおよび膜貫通領域を含むプラスミド:pCMV3.1H/Nh2°cysECD−TM−8CpGの構築
ヒトp185neu細胞外ドメインは、第1および第2のシステインサブドメイン(1stcysおよび2ndcys)として知られている2つのシステインリッチ領域を特徴とする。2ndcysから1stcysを分離するヌクレオチド領域に位置する細胞外ドメインに、BstEII(nt1250)の1つの認識部位のみをもつラットcDNA配列と異なり、ErbB2の細胞外ドメインのcDNA配列は、BstEII用の2つの制限酵素認識部位を持つ。すなわちラット(nt1372)の認識部位と同じ部位に加えて、さらにBstEII認識部位(nt963)が、細胞外ドメインの1stcysをコードする部位に存在する。HindIIIおよびBstEIIでプラスミドpCMV3.1H/NhECD−TM−8CpGを消化すると、細胞外ドメインの第2システイン膜貫通領域、8CpG配列およびプラスミドpCMV3.1H/NからなるDNA断片が得られた。次いで、T7 RNAポリメラーゼを認識し、pCMV3.1H/Nマルチクローニングサイトの最初の部分に存在する、プライマーT7(oligonucleotide #11)からなるセンスオリゴヌクレオチドと、末端にBstEIIの認識部位を持つ、アンチセンスオリゴヌクレオチド(オリゴヌクレオチド#12)を用いる酵素的DNA増幅(PCR反応)により、小胞体を介するラットのp185neu分泌のシグナルを挿入した。精製、制限酵素HindIIIとBstEIIによる増幅断片の酵素消化、引き続くクローニングの後、pCMV3.1H/Nh2°cys−TM−8CpG(図1)が得られた。このプラスミドを、pCMV3.1H/NhECD−TM−8CpGと比較するためにワクチン接種実験に使用した。その後、ヒト配列の2ndcysおよび膜貫通領域(nt1372〜nt2204)とラット配列の1stcys(nt1〜nt1250)と間の融合タンパクをコードするキメラのcDNAを調製した。ラットおよびヒトcのDNAにそれぞれ由来する部分を融合して、全タンパク質配列を再構成することにより、免疫応答を強化できる。
【0022】
ラットp185neuの第1システインドメインとヒトの第2システインドメインおよび膜貫通領域(nt1〜nt1250)の配列を含むキメラプラスミド:pCMV3.1H/N−r1°cys−h2°cysTM−8CpGの構築
第1および第2システインリッチ領域を分離するヌクレオチド領域にある細胞外ドメインで、BstEII認識部位(nt1250)だけを含むラットcDNA配列とは異なり、Erb2の細胞外ドメインのcDNA配列は、BstEII用の2つの制限酵素認識部位をもつ。すなわちラット配列の場合と同じく1つは位置1372(nt)にあり、もう一方は位置963(nt)、すなわち細胞外ドメインの1stcysをコードする配列部分にある。ラットcDNAドメイン(1250nt)とヒトcDNA(1372nt)の両方で同じ位置にBstEII認識部位が存在するので、ラット1stcysとヒト2ndcys間での融合産物をコードできるプラスミドが構築できた。実際、制限酵素HindIIIおよびBstEIIでpCMV3.1H/N−h2°cysTM−8CpGを消化することにより、ラットp185neuの分泌シグナルをコードするDNA断片を、同じ酵素でpCMV3.1rECD−TM−4CpGを消化して得られるラットの1stcysをコードするヌクレオチド配列と置換できた。pCMV3.1H/N−rl°cys−h2°cysTM−8CpGプラスミド産物(図2)は、ラットp185neuの412個のアミノ酸の部分とヒトp185neuの274個のアミノ酸部分からなる。この新規のプラスミドpCMV3.1H/Nr1°cys−h2°cysTM−8CpGは比較のために、pCMV3.1H/N−hECD−TM−8CpGを用いるワクチン接種実験に使用した。驚くべきことに、キメラタンパク質をコードする上記プラスミドは、マウスでヒトp185neuを発現する腫瘍に対し完全な防御を誘導した(表)。この防御は、pCMV3.1H/N−hECD−TM−8CpGによって誘導される防御と類似している。さらに、両方のプラスミドをワクチン接種した上記マウスの血清の分析では、ヒトp185neuに対して同程度の抗体価を示した。
【0023】
ヒトp185neuの細胞外および膜貫通ドメインの短縮した断片をコードできるプラスミド
ヒトp185neuの細胞外および膜貫通ドメインの短縮した断片をコードする7つのプラスミド、すなわち:pCMV3.1H/NhECD1−TM−8CpG(−70アミノ酸)、pCMV3.1H/NhECD2−TM−8CpG(−150アミノ酸)、pCMV3.1H/NhECD3−TM−8CpG(−230アミノ酸)、pCMV3.1H/NhECD4−TM−8CpG(−310アミノ酸)、pCMV3.1H/NhECD5−TM−8CpG(−390アミノ酸)、pCMV3.1H/NhECD6−TM−8CpG(−470アミノ酸)およびpCMV3.1H/NhECD7−TM−8CpG(−550アミノ酸)の構築。
【0024】
これらの断片の1番目でコードされた断片は、70アミノ酸短い(360塩基対の欠失)。残りは全て、段階的に80アミノ酸短い(240塩基対の欠失)。
【0025】
これらの断片は、末端にNheI制限酵素認識部位(オリゴヌクレオチド#13−#19)をもつ7つの異なるセンスオリゴヌクレオチドと、pCMV3.1のポリリンカーの3’末端にある「pcDNA3.1/BGHリバースプライミング部位」(830〜850nt)と呼ばれる認識部位を認識できる1つのアンチセンスオリゴヌクレオチド(オリゴヌクレオチド#20)を使用するDNAの酵素的増幅によって得られた。制限酵素NheIおよびPmeIの酵素消化に加えて、増幅産物を、ラットp185neuの小胞体への分泌シグナルを制限部位に挿入して予め得たpCMV3.1H/N−neuリーダーにクローン化した。ラットp185neu分泌シグナルのDNA断片は、センスヌクレオチドとしてプライマーT7(オリゴヌクレオチド#11)と、末端にNheI認識部位をもつアンチセンスヌクレオチド(オリゴヌクレオチド#21)とを用いる、酵素的なDNA増幅によって得られた。精製およびHindIIIとNheIによる制限消化後の増幅断片を、同じ酵素で消化したプラスミドpCMV3.1H/Nにクローン化し、pCMV3.1H/N−neuリーダーを得た。ラットp185neuの小胞体への分泌シグナルの存在を考慮すると、様々なヒトp185neu切断型の膜発現が予測される。切断型をコードするプラスミドpCMV3.1H/NhECD1−TM−8CpG(図3)、pCMV3.1H/NhECD2−TM−8CpG(図4)、pCMV3.1H/NhECD3−TM−8CpG(図5)、pCMV3.1H/NhECD4−TM−8CpG(図6)ならびに対照プラスミドpCMV3.1H/NhECD−TM−8CpGは、ヒトp185neuを発現する腫瘍細胞の致死量接種に対してワクチン接種したマウス100%を予防した(表)。プラスミドpCMV3.1H/NhECD5−TM−8CpG(図7)は60%の動物を防御したが(表)、プラスミドpCMV3.1H/NhECD6−TM−8CpGおよびpCMV3.1H/NhECD7−TM−8CpG(図8、9)は、ヒトp185neuを発現する腫瘍細胞の致死量接種に対して防御効果がなかった(表)。様々なプラスミドで発現される上記タンパク質産物は、小胞体を介して分泌されない。小胞体を介するグリコシド化およびプロセシングに必要なコンセンサス配列の欠如、または−NH2末端でのアミノ酸の欠失による構造の変化で、膜にタンパク質産物が存在しないことを説明することができよう。したがって、ヒトp185neuの細胞外および膜貫通ドメインの様々な切断型が、正しく発現されたか、否かをさらに確認するため、−NH2末端のmycエピトープで特徴づけられる融合タンパク質をコードする新規プラスミドを生成した。これらの組換えタンパク質は、抗mycモノクローナル抗体により認識され、したがって、共焦点顕微鏡でその発現と局在化を解析することが可能である。
【0026】
最初に、ラット小胞体への分泌シグナル(neuリーダー)およびmycエピトープをコードする新規のプラスミドを生成した。両末端にNheI認識部位をもつセンス(オリゴヌクレオチド#22)およびアンチセンス(オリゴヌクレオチド#23)からなる合成配列を用いて、クローニングを行った。正しく連結させた後、酵素で認識されないように、NheI認識部位の5’位を変異させた。われわれは、このようにしてPCMV3.1H/Nneuleader−mycエピトープを得た。このプラスミドを用いて、切断型ヒトp185neuをコードする配列を、NheIおよびPmeI制限酵素認識部位にクローン化した。次いで、in vitroでリポフェクタミン2000(Invitrogen、Milan、イタリア)を用いて、3T3NIH線維芽細胞をプラスミドでトランスフェクションした。48時間後にトランスフェクトした細胞を、FITC結合抗mycモノクローナル抗体(Sigma−Aldrich Srl、Milan、イタリア)を用いて、共焦点顕微鏡で解析した。こうして全てのプラスミドにコードされた切断型は、細胞質中にあることが示された。3T3 NIH線維芽細胞を同時に、プラスミドpCMV3.1H/NhECD−TM−8CpGでトランスフェクションし、一次抗体にc−erbB2/c−neu Ab−3モノクローナル抗体(Oncogene、Boston、MA)を用い、FITC結合抗マウス二次抗体(PharMigen、San Diego、CA)を用いて共焦点顕微鏡で解析した。かくしてヒトECD−TMは、膜で発現することが観察された。前述の最初の4つのプラスミド(pCMV3.1H/NhECD1−TM−8CpG、pCMV3.1H/NhECD2−TM−8CpG、pCMV3.1H/NhECD3−TM−8CpG、pCMV3.1H/NhECD4−TM−8CpG)を用いて得られた結果は、細胞応答は抗腫瘍の予防に十分であることを示している。しかしながら、細胞性および液性の応答の同時活性化がより有効な治療には必要であることが知られている(Riellyら、2001、Cancer Res 61:880)。すでに上記パラグラフで説明したように、pCMV3.1H/N−r1°cys−h2°cysTM−8CpGプラスミドでコードされるキメラタンパク質は、ワクチン接種した動物の100%を防御することができ、マウスで強い液性応答を誘導することができる。
【0027】
5つの異なるヒト−ラットキメラp185neuをコードできるキメラプラスミド
キメラタンパク質をコードするプラスミド構築のために、われわれは、pCMV3.1H/NhECD1−TM−8CpG、pCMV3.1H/NhECD2−TM−8CpG、pCMV3.1H/NhECD3−TM−8CpGおよびpCMV3.1H/NhECD4−TM−8CpGを選択した。これらの4つのプラスミドは、ヒトp185neuを発現する腫瘍細胞の致死量接種に対してワクチン接種したマウスの100%を予防した。また、たとえこのプラスミドをワクチン接種したマウスのわずか60%を防御しただけであっても、プラスミドpCMV3.1H/NhECD5−TM−8CpGも選択した。その理由は、コードされるタンパク質は、ワクチン接種したマウスの20%を防御するpCMV3.1H/Nh2°cysECD−TM−8CpG(275アミノ酸)でコードされるプラスミドと、わずか17アミノ酸しか異ならないからである。われわれは、この17アミノ酸のペプチド配列が、効果的な免疫応答の誘導に重要なエピトープに対応するという仮説をたてることができる。
【0028】
ラットp185neuの一部をコードするDNA断片が、DNAの酵素的増幅によって得られた。これらのcDNA断片を増幅するために、全て同方向の6つのオリゴヌクレオチド、具体的には、T7プライマー(オリゴヌクレオチド#11)を用いたが、一方の5つのアンチセンスは、適切な位置でラットcDNAを認識するように設計され、末端にNheI用の制限酵素認識部位(オリゴヌクレオチド#24〜#28)を有している。精製し、制限酵素HindIIIおよびNheIで消化した後、増幅した断片を、同じ制限酵素で消化した、対応するプラスミド(pCMV3.1H/NhECD1−TM−8CpG、pCMV3.1H/NhECD2−TM−8CpG、pCMV3.1H/NhECD3−TM−8CpG、pCMV3.1H/NhECD4−TM−8CpG、pCMV3.1H/NhECD5−TM−8CpG)に挿入した。このようにしてわれわれは、アミノ酸689個のキメラタンパク質をコードできる、5つの新規プラスミドを得た。これらのアミノ酸うちの2つ(バリン−セリン)は、ラットとヒトDNA間の接合に使われる制限酵素認識部位NheIに属している。これら2つのアミノ酸の存在が、ヒトとラット両方の部分をヘテロクリティック(heteroclytic)にしている。
【0029】
上記キメラタンパク質は、ヒトp185neuの短縮部分およびラットp185neuの増加部分によって異なる。プラスミドpCMV3.1H/Nr73−hECD1−TM−8CpG(図10)は、ラットのp185neuの細胞外ドメインの73アミノ酸およびヒトp185neuの614アミノ酸をコードする。プラスミドpCMV3.1H/Nr153−hECD2−TM−8CpG(図11)は、ラットのp185neuの細胞外ドメインの153アミノ酸およびヒトp185neuの534アミノ酸をコードする。プラスミドpCMV3.1H/Nr233−hECD3−TM−8CpG(図12)は、ラットのp185neu細胞外ドメインの233アミノ酸およびヒトp185neuの454アミノ酸をコードする。プラスミドpCMV3.1H/Nr313−hECD4−TM−8CpG(図13)は、ラットのp185neu細胞外ドメインの313アミノ酸およびヒトp185neuの374アミノ酸をコードする。プラスミドpCMV3.1H/Nr393−hECD5−TM−8CpG(図14)は、ラットのp185neu細胞外ドメインの393アミノ酸およびヒトp185neuの294のアミノ酸をコードする。これらのプラスミドにコードされるヒト/ラットキメラp185neuが膜発現している間接的な証拠が、5つの新規プラスミドおよび陽性対照としてpCMV3.1H/N−r1°cys−h2°cysTM−8CpGでマウスを免疫して得られている。全てのワクチン接種したマウスの血清は、ヒトp185neuに対する特異抗体を含んでいる。さらに、5つの異なるキメラタンパク質をコードするプラスミドでワクチン接種された動物は、ヒトp185neuを発現する腫瘍細胞を致死量接種されても保護される。
【0030】
実施例
実施例1−プラスミドpCMV3.1H/N−r1°cys−h2°cysTM−8CpGの構築
キメラプラスミドpCMV3.1H/N−r1°cys−h2°cysTM−8CpGを構築するために、われわれは、ラットp185neuの細胞外および膜貫通ドメインを発現するプラスミドpCMV−ECD−TMから出発した(Amiciら、2000、Gene Ther.,7:703)。pCMV−ECD−TMを制限酵素HindIIIおよびXbaI(BioLabs,Beverly,MA)で消化し、プラスミド骨格から挿入物を分離した。
【0031】
【表1】
【0032】
混合物を37℃で4時間インキュベートし、分子量マーカーおよび対照として未消化のプラスミドを用いて、消化産物を1%アガロースゲル上での電気泳動で分離した。プラスミドの線状化を確認後、DNAを、1/10量のpH5.2、3M酢酸ナトリウムと、2倍量の冷無水エタノールを添加して沈澱した。
【0033】
サンプルを20分間氷上に保持し、次いでミニ遠心機(minicentrifuge)14,000rpmで、12分間遠心分離した。ペレットを1mlの70%冷エタノールで3回洗浄し、次いで真空下で5分間乾燥し、84μlのH2Oに再懸濁して、制限酵素XbaIで酵素消化した。
【0034】
【表2】
【0035】
上記のように、混合物を37℃で4時間インキュベートし、消化産物を沈澱させ、乾燥した。DNAは、30μlのH2Oに再懸濁した。プラスミド骨格(4400bpのpCMV)と挿入物(2100bpのECD−TM)に対応している上記2つのDNA断片は、1%のアガロースゲル上での電気泳動により分離した。挿入物に対応するバンドを取り出し、Qiaquickゲル抽出キット(Qiagen イタリア)を用いてDNAをゲルから溶離した。これと平行して、ラットp185ECD−TMに対応するDNA断片をその中にもつ新規プラスミド骨格(pCMV3.1H/N−4CpG)を同じ制限酵素で消化し、アガロースゲル上で溶離させた。
【0036】
ラットECD−TMに対応するDNA断片および線形化プラスミドpCMV3.1H/N−4CpGを、ライゲーション反応によりpCMV3.1H/N−rECD−TM−4CpGを得るために用いた。
【0037】
【表3】
【0038】
結合反応は、16℃で4時間インキュベートした。次いでライゲーション反応産物を大腸菌株DH5αの形質転換に用いた。菌体は塩化カルシウム法を用いてコンピテントにした。
【0039】
【表4】
【0040】
プラスミドDNAをコンピテントな細胞に侵入させるために、この混合物を氷上に40分間置き、次いで温度ショックを与えた(42℃で1.5分、次いで氷上に2分)。LB増殖培地1mlを加えた後、形質転換した細菌細胞を37℃で1時間インキュベートして生理的条件を回復させた。次いで細胞懸濁液を6000rpmで1分間遠心し、ペレットを100μlのLBに再懸濁した。
【0041】
細胞を選択的固形培地(寒天+アンピシリン100μg/ml添加LB)平板に播種し、一夜37℃で培養した。アンピシリンは、アンピシリン耐性を与えるプラスミドpCMV3.1H/N−rECD−TM−4CpGをもつ細胞を増殖させる。生じたクローンをアルカリ溶菌法で解析して、組換えプラスミドpCMV3.1H/N−rECD−TM−4CpGをもつクローンを選択した。キメラプラスミドpCMV3.1H/N−r1°cys−h2°cysTM−8CpGを得るために、プラスミドpCMV3.1H/N−rECD−TM−4CpGを、制限酵素BstEIIとXbaIで消化して、ラットp185neuの膜貫通領域と共に第2システインドメインを除去した。同時に、プラスミドpCMV3.1hECD−TM−4CpGを、同じ酵素で消化して、第2システインサブドメインおよびヒト遺伝子の膜貫通領域に対応するDNA断片を分離した。
【0042】
【表5】
【0043】
混合物は、60℃で4時間インキュベートした。Xbalによる制限消化法、クローニングを用いる断片の回収、ライゲーション反応およびコンピテントな細胞の形質転換はこれまでに記載されている。
【0044】
生じたキメラプラスミドpCMV3.1H/N−r1°cys−h2°cysTM−8CpGを、自動ABI PRISM 310 Genetic Analyzer(Applied Biosystem)を用いて配列決定して、ヒト遺伝子の2ndシステインサブドメインおよび膜貫通領域に対応する断片が正しく挿入されていることを確かめた。
【0045】
実施例2−in vivoでの試験
動物
約7週齢のBalb/cAnCr(H−2d)雌マウスを、全ての実験に使用した。上記動物は、Charles River Laboratories(Calco、MI、イタリア)から供給され、無菌条件で、欧州共同体ガイドラインに従って飼育した。
【0046】
筋肉内投与とそれに続くin vivo電気穿孔法
脛側筋肉の望ましくない収縮が生じないようにするために、トリブロムエタノール(Sigma−Aldrich)0.58gおよびtert−アミルアルコール(Aldrich)310μlを脱イオン水39.5mlに溶解して作製したアバッティン(avertine)300μlを接種して各マウスを麻酔した。次いで注射のために、全マウスの脛側筋肉に対応する部分の毛を剃った。
【0047】
上記マウスの両前脛側筋肉に、DNA50μgを含む溶液40μlをワクチン接種した。F.Pericle博士(Valentis,Inc.,The Woodlands,Texas,USA)の指示に従って、上記DNAを含む混合物は使用直前に調製した。この溶液は、プラスミドDNA1.25mg/ml、ポリL−グルタミン酸ソーダ塩6mg/ml(Sigma−Aldrich,S.r.l.、Milano、イタリア)、塩化ナトリウム150mM(Fluka、BioChemika、Buchs、スイス)およびエンドトキシンを含まない蒸留水(Nucleare Free Water、Promega Corporation)を最終容量1mlに含有する。
【0048】
接種して約5分後に、処置した範囲に、電気穿孔装置Electro Square Porator(T820、BTX、San Diego、CA、米国)を用いて、強度375V/cm2で、各25ms間、電気インパルスを2回印加する電気穿孔法を適用した。各足の付け根にそれぞれを3mm離して設置した2個の正方形のスチール電極を用いて、経皮的電気インパルスを印加した。電気穿孔法による遺伝子免疫化を、それぞれの動物に腫瘍細胞接種の21日および7日前に2回実施した。
【0049】
腫瘍細胞の接種
マウスに、2×105のD2F2/E2細胞を含む懸濁液を接種した。これらの細胞は、BALB/cマウスの過形成肺胞結節で自然発症した乳房腫瘍由来で、高いレベルでヒトp185を発現する。
【0050】
腫瘍増殖のIn vivo評価
腫瘍の増殖は、触診により毎週評価し、腫瘍の大きさは、ゲージを用いての2つの垂直な直径(two perpendicular diameters)で測定した。3mmを超える新生物の塊を腫瘍とみなした。
【0051】
腫瘍の増殖を、腫瘍接種から100日後まで、または腫瘍が直径10mm超に増殖するまで続け、次いで動物を屠殺した。
【0052】
【表6】
【0053】
合成してプラスミド構築に用いたオリゴヌクレオチドのリスト
#1.AccIII−TAA−4CpG−erbB2センス71 nt
5’CCGGAAGTAAATAATCGACGTTCAAATAATCGACGTTCAAATAATCGACGTTCAAATAATCGACGTTCAAT3’
#2.XbaI−TAA−4CpG−erbB2アンチセンス71 nt
5’CTAGATTGAACGTCGATTATTTGAACGTCGATTATTTGAACGTCGATTATTTGAACGTCGATTATTTACTT3’
#3.AccIII−TAA−4noCpG−erbB2センス71 nt
5’CCGGAAGTAAATAATAGAGCTTCAAATAATAGAGCTTCAAATAATAGAGCTTCAAATAATAGAGCTTCAAT3’
#4.XbaI−TAA−4noCpG−erbB2アンチセンス71 nt
5’CTAGATTGAAGCTCTATTATTTGAAGCTCTATTATTTGAAGCTCTATTATTTGAAGCTCTATTATTTACTT3’
#5.HindIII−NheIセンス27 nt
5’CTAGGAAGCTTGTTTAACTTGCTAGCT3’
#6.HindIII−NheIアンチセンス27 nt
5’AGCTAGCTAGCAAGTTAAACAAGCTTC3’
#7.XbaI−4CpG−neuセンス68 nt
5’CTAGATAATCGACGTTCAAATAATCGACGTTCAAATAATCGACGTTCAAATAATCGACGTTCAAGTTT3’
#8.PmeI−CpG−neuアンチセンス64 nt
5’AAACTTGAACGTCGATTATTTGAACGTCGATTATTTGAACGTCGATTATTTGAACGTCGATTAT3’
#9.XbaI−4noCpG−neuセンス68 nt
5’CTAGATAATAGAGCTTCAAATAATAGAGCTTCAAATAATAGAGCTTCAAATAATAGAGCTTCAAGTTT3’
#10.PmeI−4noCpG−neuアンチセンス64 nt
5’AAACTTGAAGCTCTATTATTTGAAGCTCTATTATTTGAAGCTCTATTATTTGAAGCTCTATTAT3’
#11.T7プライマー
5’TAATACGACTCACTATAGGG3’
#12.BstEII−neuリーダーアンチセンス32 nt
5’GGCCGGTTACCCGCGATTCCGGGGGGCAGGAG3’
#13.hECD1−TM−センス−NheI 35 nt
5’CCGGCTAGCTAGCCTGTCCTTCCTGCAGGATATCC3’
#14.hECD2−TM−センス−NheI 35 nt
5’CCGGCTAGCTAGCGGAGGGGTCTTGATCCAGCGGA3’
#15.hECD3−TM−センス−NheI 35 nt
5’CCGGCTAGCTAGCCTGCCCACTGACTGCTGCCATG3’
#16.hECD4−TM−センス−NheI 35 nt
5’CCGGCTAGCTAGCTGCACCCTCGTCTGCCCCCTGC3’
#17.hECD5−TM−センス−NheI 35 nt
5’CCGGCTAGCTAGCCCGCTCCAGCCAGAGCAGCTCC3’
#18.hECD6−TM−センス−NheI 35 nt
5’CCGGCTAGCTAGCAACACCCACCTCTGCTTCGTGC3’
#19.hECD7−TM−センス−NheI 35 nt
CCGGCTAGCTAGCCCCAGGGAGTATGTGAATGCCA3’
#20.pcDNA3.1/BGHリバースプライマー20 nt
5’TAGAAGGCACAGTCGAGGCT3’
#21.NheI−neuリーダー−アンチセンス43 nt
5’CCGGCTAGCTAGCCGCGATTCCGGGGGGCAGGAGGGCGAGGAG3’
#22.His−myc−センス−noNheI 69 nt
5’CTAGGCATCATCATCATCATCATAATGGTCATACCGGTGAACAAAAACTCATCTCAGAAGAGGATCTGG3’
#23.His−myc−アンチセンス−NheI 69 nt
5’CTAGCCAGATCCTCTTCTGAGATGAGTTTTTGTTCACCGGTATGACCATTATGATGATGATGATGATGC3’
#24.NheI−73neuアンチセンス35 nt
5’CCGGCTAGCTAGCGCTGGCATTGGCAGGCACGTAG3’
#25.NheI−153neuアンチセンス35 nt
5’CCGGCTAGCTAGCCAGGATCTCTGTGAGACTTCGA3’
#26.NheI−233neuアンチセンス35 nt
5’CCGGCTAGCTAGCGCCCTTGCACCGGGCACAACCA3’
#27.NheI−313neuアンチセンス35 nt
5’CCGGCTAGCTAGCTCCCACTTCCGTAGACAGGTAG3’
#28.NheI−393neuアンチセンス35 nt
5’CCGGCTAGCTAGCAATGCCGGAGGAGGGGTCCCCA3’
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】pCMV3.1H/Nh2°cys−TM−8CpGプラスミド。
【図2】pCMV3.1H/N−rl°cys−h2°cysTM−8CpGプラスミド。
【図3】プラスミドpCMV3.1H/NhECD1−TM−8CpG。
【図4】プラスミドpCMV3.1H/NhECD2−TM−8CpG。
【図5】プラスミドpCMV3.1H/NhECD3−TM−8CpG。
【図6】プラスミドpCMV3.1H/NhECD4−TM−8CpG。
【図7】プラスミドpCMV3.1H/NhECD5−TM−8CpG。
【図8】プラスミドpCMV3.1H/NhECD6−TM−8CpG。
【図9】プラスミドpCMV3.1H/NhECD7−TM−8CpG。
【図10】プラスミドpCMV3.1H/Nr73−hECD1−TM−8CpG。
【図11】プラスミドpCMV3.1H/Nr153−hECD2−TM−8CpG。
【図12】プラスミドpCMV3.1H/Nr233−hECD3−TM−8CpG。
【図13】プラスミドpCMV3.1H/Nr313−hECD4−TM−8CpG。
【図14】プラスミドpCMV3.1H/Nr393−hECD5−TM−8CpG。
【技術分野】
【0001】
本発明は、p185neuをコードする配列を含むプラスミドベクター、および腫瘍に対するDNAワクチン接種におけるその使用に関する。本発明に記載のプラスミドは、ヒトまたはラットの腫瘍性タンパク質p185neuの様々な断片をコードする配列を含み、ErbBファミリーの癌遺伝子を発現する腫瘍に対する液性または細胞性免疫応答を誘導することができる。
【0002】
本発明はまた、前記のプラスミドを含む医薬品組成物およびp185neuを発現する腫瘍の予防または治療のための使用方法に関する。
【背景技術】
【0003】
p185neuは、ラットで癌原遺伝子Her−2/neuによりコードされており、また上皮成長因子受容体EGFR(ErbB−1)およびそれに関連する他の受容体(ErbB−3、ErbB−4)も含むチロシンキナーゼ受容体(RTK)のクラスIファミリーに属している膜受容体である。これらの受容体は、細胞の増殖と分化に関与しており(Hynesと Stern、1994 BBA 1198:165)、したがって、生物学的におよび臨床的に高い関心を集めている。受容体は、3つのよく区別されたドメインすなわち細胞外、膜貫通および細胞質内のドメインからなる。p185neuは、増殖と分化プロセスを調節する細胞内シグナル伝達と細胞内情報伝達の機構の複雑なネットワークに関与している(Boyle 1992 Curr.Op.On col.4:156)。癌遺伝子neuは、最初に分離された化学的に誘発したラットの神経膠芽細胞腫にちなんで名付けられている。この活性化されたneuの型には、「A」の「T」による置換を引き起こし、結果としてp185neuの664番目のバリン残基のグルタミン酸残基による置換(Val664Glu)を引き起こす、1つの点突然変異がある(Bargmannら、1986、Cell 45:649)。
【0004】
また、ヒトのneu相同体であるErbB−2が分離されて特性が明らかにされ、ラットのHER2/neu受容体もヒトのErbB−2も共に、EGFRと有意な相同性を持つことが示された(Coussensら、1985、Sciente 230:1132;Yamamotoら、1986、Nature 319:230)。ラットの配列における遺伝子突然変異が、二量体形成を介する構成的な受容体活性化の原因であるが、ErbB−2陽性のヒト腫瘍で、癌遺伝子の異常発現が認められ(Di Marcoら、1990、Mol.Cell.Biol.10:3247;Klapperら、2000、Adv Cancer Res、77:25)、まれではあるが、活性化点突然変異と異常なスプライシング機構が確認されている(Kwongら、1998、Mol Carcinog 23:62;Xieら、2000、J Natl Cancer Inst 92:412)。その全体的な効果は同程度である。すなわち、遺伝子の増幅と転写レベルの増加よりp185neu膜受容体が過剰になり、リガンドとは無関係に増殖信号を細胞内で伝達している活性ダイマーが増加するという結果となる。最近報告されたヒトとラットp185neuの細胞外領域の結晶構造は、このタンパク質は、どのリガンドとも直接結合することなく、他のErbB受容体と相互作用ができ、増殖シグナル伝達の引き金となる強固な立体構造によって特徴づけられることを示している(Cho HSら、2003、Nature 421:756)。
【0005】
正常な状況では、ヒトp185neuは、器官形成および上皮の増殖に関係し、胎盤形成および胎生期には高レベルで発現するが、成体組織では極めて少量しか存在しない(Pressら、1990、Oncogene 5:953)。
【0006】
いくつかの研究により、ヒトp185neuの過剰発現が、腫瘍形成過程と腫瘍の侵襲レベルに関係があることが示された。p185neuの過剰発現が、肺腺癌(Kernら、1986、Cancer Res.50:5184)、結腸腺癌(Cohenら、1989、Oncogene 4:81)、卵巣腺癌(Slamonら、1989、Science 244:707)および多数のヒト乳癌(Slamonら、1989、Science 244:707;Jardinesら、1993、Pathobiology 61:268)で報告されている。
【0007】
p185neuをプラスミドワクチン接種の最適な標的にする基本的特性は、a)p185neuが細胞増殖および癌発生に直接関与し、したがって腫瘍の遺伝的不安定性のために、この抗原の発現を喪失したクローン変異体は腫瘍形成能も失うことと、b)主要組織適合抗原系の発現を喪失した腫瘍細胞でも、抗体で認識できるようにする原形質膜上でのp185neuの発現である(Lollini P.とForni G.2003、Trends Immunol.24:62)。
【0008】
活性化されたラット癌遺伝子Her−2/neuを導入したマウス(p185neu陽性乳癌を自然発症する)、およびp185neu陽性の移植可能な腫瘍細胞株を用いたネズミモデルで実施された研究で、前癌病変を予防し、治癒することができる可能性が実証された。特に、活性化したラットHer−2/neuを導入したマウスでの乳癌の予防に関しては、ラットp185neuの細胞外ドメインおよび膜貫通ドメインをコードするプラスミドは、全長ラットp185neuまたは細胞外ドメイン(分泌された抗原)のみをコードするプラスミドより、効果的に生体内での防御を誘導できることをわれわれは実証した(Amici A.ら、2000、Gene Ther.7:703;Rovero S.ら、2000、J.of Immunol.165:5133)。同様の結果が、Chenらによって報告されている(1998、Cancer Res 58:1965)。他の研究者達も、未改変のまたはチロシンキナーゼ活性を失うように突然変異させたp185neuをコードするプラスミドは、p185neu陽性細胞接種後の腫瘍発症の予防に効果があることを証明した(Wei WZら、1999、Int.J.Cancer 81:748)。さらに小胞体を介するプロセシングを担い、p185neu抗原の細胞質での局在を決める信号(リーダー)を欠くプラスミドも、同じく効果的であることが証明された。p185neuの膜発現の場合、様々なプラスミドにより誘導される防御は、主として液性免疫応答で媒介され、細胞質に局在する場合にはTリンパ球媒介免疫応答で主として媒介された(Pilon SAら、2001、J.of Immunol.167:3201)。しかしながら、細胞質および膜のどちらにおいても、p185neuの過剰発現を誘発するプラスミドを用いる複合ワクチン接種は、腫瘍の増殖を防ぐためにより有効であった(Piechocki MPら、2001、J.Immunol.167:3367)。
【0009】
したがって、異なる免疫応答機構間でのバランスが特に重要である可能性がある(Reillyら、2001、Cancer Res.61:880)。さらに、ラットp185neuの細胞外および膜貫通ドメインをコードするプラスミドを用いるワクチン接種により、p185neuを過剰発現している細胞の接種後直ちに、腫瘍の排除に協同して働く免疫系の多くの異なるエフェクター機構(TヘルパーおよびTキラー細胞、抗体、マクロファージ、好中球、ナチュラルキラー細胞、Fcレセプター、ガンマインターフェロンならびにパーフォリン)を介して、直径2mmの腫瘍塊を根治できることが観察されている(Curcio C.ら、2003、J.Clin.Invest.111:1161)。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明の説明
ヒトまたはヒト/ラットキメラのp185タンパク質をコードする様々な構築物をプラスミドベクターに挿入して、腫瘍進行を予防することを目的とする免疫実験で使用した。プラスミドの構築には、膜貫通領域および短縮した細胞外ドメイン部分を含むヒトp185neuタンパク質の断片をErbB2癌遺伝子配列から調製するか、またはキメラプラスミドを作成するために、その一部をラットHer−2/neu cDNA由来の相同的配列と置換した。
【0011】
こうして得られたプラスミドを、ヒトp185neuを過剰発現している腫瘍細胞を接種したマウスにワクチン接種する実験で評価した。切断型のp185neuを含むプラスミドは、キラーおよびヘルパーTリンパ球により媒介される抗腫瘍反応性を誘発するが、キメラプラスミドはヒトおよびラットのp185neuの両方に対する抗体応答を誘発した。
【0012】
in vivoでの実験の結果に基づき、細胞性および液性の型の強い免疫応答を誘発することができるp185neu配列を含むプラスミドを選択した。本発明の目的であるこれらのプラスミドは、配列番号1〜14からなるグループから選択されるp185neu断片をコードする1つの配列含む(ヒトおよびラットp185neu参照配列は、それぞれGene Bank受入れ番号M11730およびX03362で入手できる)。
【0013】
本発明によれば、p185neuをコードする配列は、ヒトへの投与に適切な任意のプラスミドベクターに挿入することができる。コード配列の他に、プラスミドは、転写調節のための機能的エレメント、特にコード配列の上流に位置するプロモーター、好ましくはCMVプロモーター、開始と終止の転写エレメント、アンピシリンまたはカナマイシン耐性遺伝子等の選択マーカー、CpGのモチーフ、ポリアデニル化部位または転写活性因子(transcription activators)を含むことができる。転写調節エレメントは、ヒトで使用されるベクターとして適合しなければならない。好ましい実施の形態においては、本発明のプラスミドは、少なくとも4個、好ましくは少なくとも8個の、最大では80個までのCpGのモチーフを含む。細菌起源のCpGモチーフ(ATAATCGACGTTCAA)は、マクロファージを誘導してIL−12を分泌させ、次にナチュラルキラー細胞によるIFNγ分泌を誘導し、かくてTヘルパーリンパ球により媒介される応答を活性化する(Chu R.S.ら、1997、J.Exp.Med.、186;1623)。したがって、プラスミド配列中へCpGモチーフを挿入することにより、免疫応答が増強される。
【0014】
さらなる実施態様においては、本発明は、薬剤として許容されるビヒクル(vehicles)および賦形剤と共に、上記に定義した1種または複数の異なるプラスミドを含む医薬品組成物を提供する。医薬品組成物は、非経口投与に適した形態で、好ましくは注射可能な溶液の形態で、DNAワクチン接種に好都合に使用される。DNAワクチン接種に関する原理と方法は、当業者に知られており、例えば、Liu MA 2003;J Int Med 253:402に開示されている。
【0015】
他の実施形態では、本発明は同時に、逐次に、または別々に対象または患者へ投与する、少なくとも2種の、好ましくは少なくとも4種の、より好ましくは少なくとも8種の異なるプラスミドを含んでいる組合せ製剤を提供する。
【0016】
本発明にかかるプラスミド、組成物および製剤は、p185neu陽性の腫瘍を発症する危険がある対象、またはp185neu陽性腫瘍の原発性腫瘍、転移もしくは再発を有する患者の予防もしくは治療処置に使用される。予防は、腫瘍が顕在的でないときは一次、腫瘍が前腫瘍性病変である初期過程のときは二次、または腫瘍が再発または転移過程の場合は三次とすることができる。本発明のプラスミドで治療効果が得られる腫瘍には、上皮起源の腫瘍で、特に肺、卵巣および乳房の腺癌、あるいはさらに一般的には、p185neuタンパク質を発現している腫瘍があげられる。
発明の詳細な説明
pCMV3.1プラスミド骨格の構築
ヒトp185neu断片をコードするプラスミドおよびキメラプラスミドを構築するために、pCMV3.1プラスミドの骨格を用いた。制限酵素DraIII(nt1531)およびBsmI(nt3189)で、複製起点f1、複製起点およびSV40初期プロモーター、ネオマイシン抵抗性遺伝子をコードする遺伝子、およびSV40ポリアデニル化シグナルを含む1658塩基対の断片を除去して、ヒト癌原遺伝子ErbB−2cDNAおよびラット癌原遺伝子Her−2/neu cDNA由来の断片を、pCMV3.1(Invitrogen、Milano、イタリア)に挿入した。得られた改変されたプラスミド(pCMV3.1)には、本来のpcDNA3.1と比べていくつかの利点がある。実際、3900塩基対へのサイズの縮小および無関係な配列の除去は、in vivoでのトランスフェクション効率の増加に寄与する。
【0017】
プラスミドpCMV3.1erbB2の構築
プラスミドpSVerbB2から得られたヒトErbB2cDNAを、HindIIIとXbalの制限酵素部位でpCMV3.1のマルチクローニングサイトに挿入した。このプラスミドを、切断して短くしたp185neuを発現するプラスミドおよびキメラプラスミドの構築に用いる。
【0018】
配列4XCpGを含むプラスミド:pCMV3.1hECD−TM−4CpGおよびpCMV3.1hECD−TM−4noCpGの構築
プラスミドpCMV3.1−erbB2から細胞質内ドメインをコードする配列を除去した後、癌原遺伝子ErbB2の細胞外領域および膜貫通領域をコードする2つのプラスミドを調製した。この手順は先ず、ErbB2 cDNAのヌクレオチド配列中に存在する独特の部位を同定するための制限酵素による分析を含んだ。膜貫通領域末端の約20ヌクレオチド下流で、酵素AccIII(nt2195)で認識される独特の部位が同定された。
【0019】
細胞質ドメインを、独特な制限酵素認識部位を示す酵素AccIIIと酵素XbaIを用いて除去した。ErbB2ECD−TMのDNA3’末端に、翻訳終止シグナルと認識されるヌクレオチドトリプレットTAAを再挿入するために、われわれは、末端に制限酵素認識部位AccIIIとXbaIを持つ、2つのセンス(オリゴヌクレオチド#1、#3)およびアンチセンス(オリゴヌクレオチド#2、#4)オリゴヌクレオチドからなる2つの合成配列を使用した。これらの合成配列中には、4つの反復配列CpGとnoCpGが存在する。後者は陰性対照として用いる。これら2つの新規プラスミドは、pCMV3.1hECD−TM−4CpGおよびpCMV3.1hECD−TM−4noCpGと名付けた。
【0020】
8XCpGを含むプラスミド:pCMV3.1H/NhECD−TM−8CpGおよびpCMV3.1H/NhECD−TM−8noCpG配列の構築
さらに非特異的な免疫刺激を付け加えるために、われわれは、pCMV3.1H/N−4CpGと名付けた免疫刺激性のCpC配列を4つ含む新規なプラスミド骨格を構築した。このために、われわれは、2つのセンス(オリゴヌクレオチド#5)およびアンチセンス(オリゴヌクレオチド#6)オリゴヌクレオチドからなる合成配列により、酵素PmeIの2つの制限酵素認識部位の1つを除去し、マルチクローニングサイトに存在するHindIIIとNneIに対する制限酵素認識部位が反転するようにpCMV3.1を改変した。pCMV3.1H/Nと名付けたこの新規のプラスミドでは独特の制限酵素認識部位XbaIおよびPmeI中に、CpGとnoCpG配列の4つの反複を含む、2つのセンス(オリゴヌクレオチド#7、#9)およびアンチセンスヌクレオチド(オリゴヌクレオチド#8、#10)からなる2つの合成配列を挿入して、pCMV3.1H/N−4CpGおよび4noCpGを得た。その後、DNA断片hECD−TM−4CpGおよびhECD−TM−4noCpGを、それぞれpCMV3.1H/N−4CpGおよびpCMV3.1H/N−4noCpGに挿入して、pCMV3.1H/N−hECD−TM−8CpGおよびpCMV3.1H/N−hECD−TM−8noCpGと呼ぶ、2つの新規プラスミドを得た。
【0021】
ヒトp185neuの第2のシステインドメインおよび膜貫通領域を含むプラスミド:pCMV3.1H/Nh2°cysECD−TM−8CpGの構築
ヒトp185neu細胞外ドメインは、第1および第2のシステインサブドメイン(1stcysおよび2ndcys)として知られている2つのシステインリッチ領域を特徴とする。2ndcysから1stcysを分離するヌクレオチド領域に位置する細胞外ドメインに、BstEII(nt1250)の1つの認識部位のみをもつラットcDNA配列と異なり、ErbB2の細胞外ドメインのcDNA配列は、BstEII用の2つの制限酵素認識部位を持つ。すなわちラット(nt1372)の認識部位と同じ部位に加えて、さらにBstEII認識部位(nt963)が、細胞外ドメインの1stcysをコードする部位に存在する。HindIIIおよびBstEIIでプラスミドpCMV3.1H/NhECD−TM−8CpGを消化すると、細胞外ドメインの第2システイン膜貫通領域、8CpG配列およびプラスミドpCMV3.1H/NからなるDNA断片が得られた。次いで、T7 RNAポリメラーゼを認識し、pCMV3.1H/Nマルチクローニングサイトの最初の部分に存在する、プライマーT7(oligonucleotide #11)からなるセンスオリゴヌクレオチドと、末端にBstEIIの認識部位を持つ、アンチセンスオリゴヌクレオチド(オリゴヌクレオチド#12)を用いる酵素的DNA増幅(PCR反応)により、小胞体を介するラットのp185neu分泌のシグナルを挿入した。精製、制限酵素HindIIIとBstEIIによる増幅断片の酵素消化、引き続くクローニングの後、pCMV3.1H/Nh2°cys−TM−8CpG(図1)が得られた。このプラスミドを、pCMV3.1H/NhECD−TM−8CpGと比較するためにワクチン接種実験に使用した。その後、ヒト配列の2ndcysおよび膜貫通領域(nt1372〜nt2204)とラット配列の1stcys(nt1〜nt1250)と間の融合タンパクをコードするキメラのcDNAを調製した。ラットおよびヒトcのDNAにそれぞれ由来する部分を融合して、全タンパク質配列を再構成することにより、免疫応答を強化できる。
【0022】
ラットp185neuの第1システインドメインとヒトの第2システインドメインおよび膜貫通領域(nt1〜nt1250)の配列を含むキメラプラスミド:pCMV3.1H/N−r1°cys−h2°cysTM−8CpGの構築
第1および第2システインリッチ領域を分離するヌクレオチド領域にある細胞外ドメインで、BstEII認識部位(nt1250)だけを含むラットcDNA配列とは異なり、Erb2の細胞外ドメインのcDNA配列は、BstEII用の2つの制限酵素認識部位をもつ。すなわちラット配列の場合と同じく1つは位置1372(nt)にあり、もう一方は位置963(nt)、すなわち細胞外ドメインの1stcysをコードする配列部分にある。ラットcDNAドメイン(1250nt)とヒトcDNA(1372nt)の両方で同じ位置にBstEII認識部位が存在するので、ラット1stcysとヒト2ndcys間での融合産物をコードできるプラスミドが構築できた。実際、制限酵素HindIIIおよびBstEIIでpCMV3.1H/N−h2°cysTM−8CpGを消化することにより、ラットp185neuの分泌シグナルをコードするDNA断片を、同じ酵素でpCMV3.1rECD−TM−4CpGを消化して得られるラットの1stcysをコードするヌクレオチド配列と置換できた。pCMV3.1H/N−rl°cys−h2°cysTM−8CpGプラスミド産物(図2)は、ラットp185neuの412個のアミノ酸の部分とヒトp185neuの274個のアミノ酸部分からなる。この新規のプラスミドpCMV3.1H/Nr1°cys−h2°cysTM−8CpGは比較のために、pCMV3.1H/N−hECD−TM−8CpGを用いるワクチン接種実験に使用した。驚くべきことに、キメラタンパク質をコードする上記プラスミドは、マウスでヒトp185neuを発現する腫瘍に対し完全な防御を誘導した(表)。この防御は、pCMV3.1H/N−hECD−TM−8CpGによって誘導される防御と類似している。さらに、両方のプラスミドをワクチン接種した上記マウスの血清の分析では、ヒトp185neuに対して同程度の抗体価を示した。
【0023】
ヒトp185neuの細胞外および膜貫通ドメインの短縮した断片をコードできるプラスミド
ヒトp185neuの細胞外および膜貫通ドメインの短縮した断片をコードする7つのプラスミド、すなわち:pCMV3.1H/NhECD1−TM−8CpG(−70アミノ酸)、pCMV3.1H/NhECD2−TM−8CpG(−150アミノ酸)、pCMV3.1H/NhECD3−TM−8CpG(−230アミノ酸)、pCMV3.1H/NhECD4−TM−8CpG(−310アミノ酸)、pCMV3.1H/NhECD5−TM−8CpG(−390アミノ酸)、pCMV3.1H/NhECD6−TM−8CpG(−470アミノ酸)およびpCMV3.1H/NhECD7−TM−8CpG(−550アミノ酸)の構築。
【0024】
これらの断片の1番目でコードされた断片は、70アミノ酸短い(360塩基対の欠失)。残りは全て、段階的に80アミノ酸短い(240塩基対の欠失)。
【0025】
これらの断片は、末端にNheI制限酵素認識部位(オリゴヌクレオチド#13−#19)をもつ7つの異なるセンスオリゴヌクレオチドと、pCMV3.1のポリリンカーの3’末端にある「pcDNA3.1/BGHリバースプライミング部位」(830〜850nt)と呼ばれる認識部位を認識できる1つのアンチセンスオリゴヌクレオチド(オリゴヌクレオチド#20)を使用するDNAの酵素的増幅によって得られた。制限酵素NheIおよびPmeIの酵素消化に加えて、増幅産物を、ラットp185neuの小胞体への分泌シグナルを制限部位に挿入して予め得たpCMV3.1H/N−neuリーダーにクローン化した。ラットp185neu分泌シグナルのDNA断片は、センスヌクレオチドとしてプライマーT7(オリゴヌクレオチド#11)と、末端にNheI認識部位をもつアンチセンスヌクレオチド(オリゴヌクレオチド#21)とを用いる、酵素的なDNA増幅によって得られた。精製およびHindIIIとNheIによる制限消化後の増幅断片を、同じ酵素で消化したプラスミドpCMV3.1H/Nにクローン化し、pCMV3.1H/N−neuリーダーを得た。ラットp185neuの小胞体への分泌シグナルの存在を考慮すると、様々なヒトp185neu切断型の膜発現が予測される。切断型をコードするプラスミドpCMV3.1H/NhECD1−TM−8CpG(図3)、pCMV3.1H/NhECD2−TM−8CpG(図4)、pCMV3.1H/NhECD3−TM−8CpG(図5)、pCMV3.1H/NhECD4−TM−8CpG(図6)ならびに対照プラスミドpCMV3.1H/NhECD−TM−8CpGは、ヒトp185neuを発現する腫瘍細胞の致死量接種に対してワクチン接種したマウス100%を予防した(表)。プラスミドpCMV3.1H/NhECD5−TM−8CpG(図7)は60%の動物を防御したが(表)、プラスミドpCMV3.1H/NhECD6−TM−8CpGおよびpCMV3.1H/NhECD7−TM−8CpG(図8、9)は、ヒトp185neuを発現する腫瘍細胞の致死量接種に対して防御効果がなかった(表)。様々なプラスミドで発現される上記タンパク質産物は、小胞体を介して分泌されない。小胞体を介するグリコシド化およびプロセシングに必要なコンセンサス配列の欠如、または−NH2末端でのアミノ酸の欠失による構造の変化で、膜にタンパク質産物が存在しないことを説明することができよう。したがって、ヒトp185neuの細胞外および膜貫通ドメインの様々な切断型が、正しく発現されたか、否かをさらに確認するため、−NH2末端のmycエピトープで特徴づけられる融合タンパク質をコードする新規プラスミドを生成した。これらの組換えタンパク質は、抗mycモノクローナル抗体により認識され、したがって、共焦点顕微鏡でその発現と局在化を解析することが可能である。
【0026】
最初に、ラット小胞体への分泌シグナル(neuリーダー)およびmycエピトープをコードする新規のプラスミドを生成した。両末端にNheI認識部位をもつセンス(オリゴヌクレオチド#22)およびアンチセンス(オリゴヌクレオチド#23)からなる合成配列を用いて、クローニングを行った。正しく連結させた後、酵素で認識されないように、NheI認識部位の5’位を変異させた。われわれは、このようにしてPCMV3.1H/Nneuleader−mycエピトープを得た。このプラスミドを用いて、切断型ヒトp185neuをコードする配列を、NheIおよびPmeI制限酵素認識部位にクローン化した。次いで、in vitroでリポフェクタミン2000(Invitrogen、Milan、イタリア)を用いて、3T3NIH線維芽細胞をプラスミドでトランスフェクションした。48時間後にトランスフェクトした細胞を、FITC結合抗mycモノクローナル抗体(Sigma−Aldrich Srl、Milan、イタリア)を用いて、共焦点顕微鏡で解析した。こうして全てのプラスミドにコードされた切断型は、細胞質中にあることが示された。3T3 NIH線維芽細胞を同時に、プラスミドpCMV3.1H/NhECD−TM−8CpGでトランスフェクションし、一次抗体にc−erbB2/c−neu Ab−3モノクローナル抗体(Oncogene、Boston、MA)を用い、FITC結合抗マウス二次抗体(PharMigen、San Diego、CA)を用いて共焦点顕微鏡で解析した。かくしてヒトECD−TMは、膜で発現することが観察された。前述の最初の4つのプラスミド(pCMV3.1H/NhECD1−TM−8CpG、pCMV3.1H/NhECD2−TM−8CpG、pCMV3.1H/NhECD3−TM−8CpG、pCMV3.1H/NhECD4−TM−8CpG)を用いて得られた結果は、細胞応答は抗腫瘍の予防に十分であることを示している。しかしながら、細胞性および液性の応答の同時活性化がより有効な治療には必要であることが知られている(Riellyら、2001、Cancer Res 61:880)。すでに上記パラグラフで説明したように、pCMV3.1H/N−r1°cys−h2°cysTM−8CpGプラスミドでコードされるキメラタンパク質は、ワクチン接種した動物の100%を防御することができ、マウスで強い液性応答を誘導することができる。
【0027】
5つの異なるヒト−ラットキメラp185neuをコードできるキメラプラスミド
キメラタンパク質をコードするプラスミド構築のために、われわれは、pCMV3.1H/NhECD1−TM−8CpG、pCMV3.1H/NhECD2−TM−8CpG、pCMV3.1H/NhECD3−TM−8CpGおよびpCMV3.1H/NhECD4−TM−8CpGを選択した。これらの4つのプラスミドは、ヒトp185neuを発現する腫瘍細胞の致死量接種に対してワクチン接種したマウスの100%を予防した。また、たとえこのプラスミドをワクチン接種したマウスのわずか60%を防御しただけであっても、プラスミドpCMV3.1H/NhECD5−TM−8CpGも選択した。その理由は、コードされるタンパク質は、ワクチン接種したマウスの20%を防御するpCMV3.1H/Nh2°cysECD−TM−8CpG(275アミノ酸)でコードされるプラスミドと、わずか17アミノ酸しか異ならないからである。われわれは、この17アミノ酸のペプチド配列が、効果的な免疫応答の誘導に重要なエピトープに対応するという仮説をたてることができる。
【0028】
ラットp185neuの一部をコードするDNA断片が、DNAの酵素的増幅によって得られた。これらのcDNA断片を増幅するために、全て同方向の6つのオリゴヌクレオチド、具体的には、T7プライマー(オリゴヌクレオチド#11)を用いたが、一方の5つのアンチセンスは、適切な位置でラットcDNAを認識するように設計され、末端にNheI用の制限酵素認識部位(オリゴヌクレオチド#24〜#28)を有している。精製し、制限酵素HindIIIおよびNheIで消化した後、増幅した断片を、同じ制限酵素で消化した、対応するプラスミド(pCMV3.1H/NhECD1−TM−8CpG、pCMV3.1H/NhECD2−TM−8CpG、pCMV3.1H/NhECD3−TM−8CpG、pCMV3.1H/NhECD4−TM−8CpG、pCMV3.1H/NhECD5−TM−8CpG)に挿入した。このようにしてわれわれは、アミノ酸689個のキメラタンパク質をコードできる、5つの新規プラスミドを得た。これらのアミノ酸うちの2つ(バリン−セリン)は、ラットとヒトDNA間の接合に使われる制限酵素認識部位NheIに属している。これら2つのアミノ酸の存在が、ヒトとラット両方の部分をヘテロクリティック(heteroclytic)にしている。
【0029】
上記キメラタンパク質は、ヒトp185neuの短縮部分およびラットp185neuの増加部分によって異なる。プラスミドpCMV3.1H/Nr73−hECD1−TM−8CpG(図10)は、ラットのp185neuの細胞外ドメインの73アミノ酸およびヒトp185neuの614アミノ酸をコードする。プラスミドpCMV3.1H/Nr153−hECD2−TM−8CpG(図11)は、ラットのp185neuの細胞外ドメインの153アミノ酸およびヒトp185neuの534アミノ酸をコードする。プラスミドpCMV3.1H/Nr233−hECD3−TM−8CpG(図12)は、ラットのp185neu細胞外ドメインの233アミノ酸およびヒトp185neuの454アミノ酸をコードする。プラスミドpCMV3.1H/Nr313−hECD4−TM−8CpG(図13)は、ラットのp185neu細胞外ドメインの313アミノ酸およびヒトp185neuの374アミノ酸をコードする。プラスミドpCMV3.1H/Nr393−hECD5−TM−8CpG(図14)は、ラットのp185neu細胞外ドメインの393アミノ酸およびヒトp185neuの294のアミノ酸をコードする。これらのプラスミドにコードされるヒト/ラットキメラp185neuが膜発現している間接的な証拠が、5つの新規プラスミドおよび陽性対照としてpCMV3.1H/N−r1°cys−h2°cysTM−8CpGでマウスを免疫して得られている。全てのワクチン接種したマウスの血清は、ヒトp185neuに対する特異抗体を含んでいる。さらに、5つの異なるキメラタンパク質をコードするプラスミドでワクチン接種された動物は、ヒトp185neuを発現する腫瘍細胞を致死量接種されても保護される。
【0030】
実施例
実施例1−プラスミドpCMV3.1H/N−r1°cys−h2°cysTM−8CpGの構築
キメラプラスミドpCMV3.1H/N−r1°cys−h2°cysTM−8CpGを構築するために、われわれは、ラットp185neuの細胞外および膜貫通ドメインを発現するプラスミドpCMV−ECD−TMから出発した(Amiciら、2000、Gene Ther.,7:703)。pCMV−ECD−TMを制限酵素HindIIIおよびXbaI(BioLabs,Beverly,MA)で消化し、プラスミド骨格から挿入物を分離した。
【0031】
【表1】
【0032】
混合物を37℃で4時間インキュベートし、分子量マーカーおよび対照として未消化のプラスミドを用いて、消化産物を1%アガロースゲル上での電気泳動で分離した。プラスミドの線状化を確認後、DNAを、1/10量のpH5.2、3M酢酸ナトリウムと、2倍量の冷無水エタノールを添加して沈澱した。
【0033】
サンプルを20分間氷上に保持し、次いでミニ遠心機(minicentrifuge)14,000rpmで、12分間遠心分離した。ペレットを1mlの70%冷エタノールで3回洗浄し、次いで真空下で5分間乾燥し、84μlのH2Oに再懸濁して、制限酵素XbaIで酵素消化した。
【0034】
【表2】
【0035】
上記のように、混合物を37℃で4時間インキュベートし、消化産物を沈澱させ、乾燥した。DNAは、30μlのH2Oに再懸濁した。プラスミド骨格(4400bpのpCMV)と挿入物(2100bpのECD−TM)に対応している上記2つのDNA断片は、1%のアガロースゲル上での電気泳動により分離した。挿入物に対応するバンドを取り出し、Qiaquickゲル抽出キット(Qiagen イタリア)を用いてDNAをゲルから溶離した。これと平行して、ラットp185ECD−TMに対応するDNA断片をその中にもつ新規プラスミド骨格(pCMV3.1H/N−4CpG)を同じ制限酵素で消化し、アガロースゲル上で溶離させた。
【0036】
ラットECD−TMに対応するDNA断片および線形化プラスミドpCMV3.1H/N−4CpGを、ライゲーション反応によりpCMV3.1H/N−rECD−TM−4CpGを得るために用いた。
【0037】
【表3】
【0038】
結合反応は、16℃で4時間インキュベートした。次いでライゲーション反応産物を大腸菌株DH5αの形質転換に用いた。菌体は塩化カルシウム法を用いてコンピテントにした。
【0039】
【表4】
【0040】
プラスミドDNAをコンピテントな細胞に侵入させるために、この混合物を氷上に40分間置き、次いで温度ショックを与えた(42℃で1.5分、次いで氷上に2分)。LB増殖培地1mlを加えた後、形質転換した細菌細胞を37℃で1時間インキュベートして生理的条件を回復させた。次いで細胞懸濁液を6000rpmで1分間遠心し、ペレットを100μlのLBに再懸濁した。
【0041】
細胞を選択的固形培地(寒天+アンピシリン100μg/ml添加LB)平板に播種し、一夜37℃で培養した。アンピシリンは、アンピシリン耐性を与えるプラスミドpCMV3.1H/N−rECD−TM−4CpGをもつ細胞を増殖させる。生じたクローンをアルカリ溶菌法で解析して、組換えプラスミドpCMV3.1H/N−rECD−TM−4CpGをもつクローンを選択した。キメラプラスミドpCMV3.1H/N−r1°cys−h2°cysTM−8CpGを得るために、プラスミドpCMV3.1H/N−rECD−TM−4CpGを、制限酵素BstEIIとXbaIで消化して、ラットp185neuの膜貫通領域と共に第2システインドメインを除去した。同時に、プラスミドpCMV3.1hECD−TM−4CpGを、同じ酵素で消化して、第2システインサブドメインおよびヒト遺伝子の膜貫通領域に対応するDNA断片を分離した。
【0042】
【表5】
【0043】
混合物は、60℃で4時間インキュベートした。Xbalによる制限消化法、クローニングを用いる断片の回収、ライゲーション反応およびコンピテントな細胞の形質転換はこれまでに記載されている。
【0044】
生じたキメラプラスミドpCMV3.1H/N−r1°cys−h2°cysTM−8CpGを、自動ABI PRISM 310 Genetic Analyzer(Applied Biosystem)を用いて配列決定して、ヒト遺伝子の2ndシステインサブドメインおよび膜貫通領域に対応する断片が正しく挿入されていることを確かめた。
【0045】
実施例2−in vivoでの試験
動物
約7週齢のBalb/cAnCr(H−2d)雌マウスを、全ての実験に使用した。上記動物は、Charles River Laboratories(Calco、MI、イタリア)から供給され、無菌条件で、欧州共同体ガイドラインに従って飼育した。
【0046】
筋肉内投与とそれに続くin vivo電気穿孔法
脛側筋肉の望ましくない収縮が生じないようにするために、トリブロムエタノール(Sigma−Aldrich)0.58gおよびtert−アミルアルコール(Aldrich)310μlを脱イオン水39.5mlに溶解して作製したアバッティン(avertine)300μlを接種して各マウスを麻酔した。次いで注射のために、全マウスの脛側筋肉に対応する部分の毛を剃った。
【0047】
上記マウスの両前脛側筋肉に、DNA50μgを含む溶液40μlをワクチン接種した。F.Pericle博士(Valentis,Inc.,The Woodlands,Texas,USA)の指示に従って、上記DNAを含む混合物は使用直前に調製した。この溶液は、プラスミドDNA1.25mg/ml、ポリL−グルタミン酸ソーダ塩6mg/ml(Sigma−Aldrich,S.r.l.、Milano、イタリア)、塩化ナトリウム150mM(Fluka、BioChemika、Buchs、スイス)およびエンドトキシンを含まない蒸留水(Nucleare Free Water、Promega Corporation)を最終容量1mlに含有する。
【0048】
接種して約5分後に、処置した範囲に、電気穿孔装置Electro Square Porator(T820、BTX、San Diego、CA、米国)を用いて、強度375V/cm2で、各25ms間、電気インパルスを2回印加する電気穿孔法を適用した。各足の付け根にそれぞれを3mm離して設置した2個の正方形のスチール電極を用いて、経皮的電気インパルスを印加した。電気穿孔法による遺伝子免疫化を、それぞれの動物に腫瘍細胞接種の21日および7日前に2回実施した。
【0049】
腫瘍細胞の接種
マウスに、2×105のD2F2/E2細胞を含む懸濁液を接種した。これらの細胞は、BALB/cマウスの過形成肺胞結節で自然発症した乳房腫瘍由来で、高いレベルでヒトp185を発現する。
【0050】
腫瘍増殖のIn vivo評価
腫瘍の増殖は、触診により毎週評価し、腫瘍の大きさは、ゲージを用いての2つの垂直な直径(two perpendicular diameters)で測定した。3mmを超える新生物の塊を腫瘍とみなした。
【0051】
腫瘍の増殖を、腫瘍接種から100日後まで、または腫瘍が直径10mm超に増殖するまで続け、次いで動物を屠殺した。
【0052】
【表6】
【0053】
合成してプラスミド構築に用いたオリゴヌクレオチドのリスト
#1.AccIII−TAA−4CpG−erbB2センス71 nt
5’CCGGAAGTAAATAATCGACGTTCAAATAATCGACGTTCAAATAATCGACGTTCAAATAATCGACGTTCAAT3’
#2.XbaI−TAA−4CpG−erbB2アンチセンス71 nt
5’CTAGATTGAACGTCGATTATTTGAACGTCGATTATTTGAACGTCGATTATTTGAACGTCGATTATTTACTT3’
#3.AccIII−TAA−4noCpG−erbB2センス71 nt
5’CCGGAAGTAAATAATAGAGCTTCAAATAATAGAGCTTCAAATAATAGAGCTTCAAATAATAGAGCTTCAAT3’
#4.XbaI−TAA−4noCpG−erbB2アンチセンス71 nt
5’CTAGATTGAAGCTCTATTATTTGAAGCTCTATTATTTGAAGCTCTATTATTTGAAGCTCTATTATTTACTT3’
#5.HindIII−NheIセンス27 nt
5’CTAGGAAGCTTGTTTAACTTGCTAGCT3’
#6.HindIII−NheIアンチセンス27 nt
5’AGCTAGCTAGCAAGTTAAACAAGCTTC3’
#7.XbaI−4CpG−neuセンス68 nt
5’CTAGATAATCGACGTTCAAATAATCGACGTTCAAATAATCGACGTTCAAATAATCGACGTTCAAGTTT3’
#8.PmeI−CpG−neuアンチセンス64 nt
5’AAACTTGAACGTCGATTATTTGAACGTCGATTATTTGAACGTCGATTATTTGAACGTCGATTAT3’
#9.XbaI−4noCpG−neuセンス68 nt
5’CTAGATAATAGAGCTTCAAATAATAGAGCTTCAAATAATAGAGCTTCAAATAATAGAGCTTCAAGTTT3’
#10.PmeI−4noCpG−neuアンチセンス64 nt
5’AAACTTGAAGCTCTATTATTTGAAGCTCTATTATTTGAAGCTCTATTATTTGAAGCTCTATTAT3’
#11.T7プライマー
5’TAATACGACTCACTATAGGG3’
#12.BstEII−neuリーダーアンチセンス32 nt
5’GGCCGGTTACCCGCGATTCCGGGGGGCAGGAG3’
#13.hECD1−TM−センス−NheI 35 nt
5’CCGGCTAGCTAGCCTGTCCTTCCTGCAGGATATCC3’
#14.hECD2−TM−センス−NheI 35 nt
5’CCGGCTAGCTAGCGGAGGGGTCTTGATCCAGCGGA3’
#15.hECD3−TM−センス−NheI 35 nt
5’CCGGCTAGCTAGCCTGCCCACTGACTGCTGCCATG3’
#16.hECD4−TM−センス−NheI 35 nt
5’CCGGCTAGCTAGCTGCACCCTCGTCTGCCCCCTGC3’
#17.hECD5−TM−センス−NheI 35 nt
5’CCGGCTAGCTAGCCCGCTCCAGCCAGAGCAGCTCC3’
#18.hECD6−TM−センス−NheI 35 nt
5’CCGGCTAGCTAGCAACACCCACCTCTGCTTCGTGC3’
#19.hECD7−TM−センス−NheI 35 nt
CCGGCTAGCTAGCCCCAGGGAGTATGTGAATGCCA3’
#20.pcDNA3.1/BGHリバースプライマー20 nt
5’TAGAAGGCACAGTCGAGGCT3’
#21.NheI−neuリーダー−アンチセンス43 nt
5’CCGGCTAGCTAGCCGCGATTCCGGGGGGCAGGAGGGCGAGGAG3’
#22.His−myc−センス−noNheI 69 nt
5’CTAGGCATCATCATCATCATCATAATGGTCATACCGGTGAACAAAAACTCATCTCAGAAGAGGATCTGG3’
#23.His−myc−アンチセンス−NheI 69 nt
5’CTAGCCAGATCCTCTTCTGAGATGAGTTTTTGTTCACCGGTATGACCATTATGATGATGATGATGATGC3’
#24.NheI−73neuアンチセンス35 nt
5’CCGGCTAGCTAGCGCTGGCATTGGCAGGCACGTAG3’
#25.NheI−153neuアンチセンス35 nt
5’CCGGCTAGCTAGCCAGGATCTCTGTGAGACTTCGA3’
#26.NheI−233neuアンチセンス35 nt
5’CCGGCTAGCTAGCGCCCTTGCACCGGGCACAACCA3’
#27.NheI−313neuアンチセンス35 nt
5’CCGGCTAGCTAGCTCCCACTTCCGTAGACAGGTAG3’
#28.NheI−393neuアンチセンス35 nt
5’CCGGCTAGCTAGCAATGCCGGAGGAGGGGTCCCCA3’
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】pCMV3.1H/Nh2°cys−TM−8CpGプラスミド。
【図2】pCMV3.1H/N−rl°cys−h2°cysTM−8CpGプラスミド。
【図3】プラスミドpCMV3.1H/NhECD1−TM−8CpG。
【図4】プラスミドpCMV3.1H/NhECD2−TM−8CpG。
【図5】プラスミドpCMV3.1H/NhECD3−TM−8CpG。
【図6】プラスミドpCMV3.1H/NhECD4−TM−8CpG。
【図7】プラスミドpCMV3.1H/NhECD5−TM−8CpG。
【図8】プラスミドpCMV3.1H/NhECD6−TM−8CpG。
【図9】プラスミドpCMV3.1H/NhECD7−TM−8CpG。
【図10】プラスミドpCMV3.1H/Nr73−hECD1−TM−8CpG。
【図11】プラスミドpCMV3.1H/Nr153−hECD2−TM−8CpG。
【図12】プラスミドpCMV3.1H/Nr233−hECD3−TM−8CpG。
【図13】プラスミドpCMV3.1H/Nr313−hECD4−TM−8CpG。
【図14】プラスミドpCMV3.1H/Nr393−hECD5−TM−8CpG。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
p185neu断片をコードする配列を含むDNAトランスファーベクターであって、前記配列が配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14からなる群より選択されるDNAトランスファーベクター。
【請求項2】
プラスミドである請求項1に記載のDNAトランスファーベクター。
【請求項3】
転写プロモーターをさらに有する請求項2に記載のプラスミド。
【請求項4】
前記プロモーターがCMVである請求項3に記載のプラスミド。
【請求項5】
4つのCpGモチーフをさらに含む請求項2に記載のプラスミド。
【請求項6】
8つのCpGモチーフをさらに含む請求項5に記載のプラスミド。
【請求項7】
薬剤として許容されるビヒクルおよび賦形剤との混合調剤として、請求項1から6のいずれか一項に記載のDNAトランスファーベクターを含む医薬品組成物。
【請求項8】
非経口投与に好適である請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
注射可能な溶液の形態である請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
同時に、逐次的に、または別々に治療的に使用するための、請求項1から6に記載の少なくとも2つの異なるプラスミドを含む組合せ医薬品。
【請求項11】
DNAワクチン接種に適切な形態である、請求項10に記載の組合せ医薬品。
【請求項12】
p185neu陽性腫瘍を発症する危険性がある対象または、p185neu発現腫瘍の原発性腫瘍、転移または再発が認められる患者の、予防的または治療的な処置に用いる医薬品組成物を調製するための、請求項1から6に記載のプラスミドの使用。
【請求項13】
DNAワクチンの調製のための、請求項12に記載の使用。
【請求項1】
p185neu断片をコードする配列を含むDNAトランスファーベクターであって、前記配列が配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14からなる群より選択されるDNAトランスファーベクター。
【請求項2】
プラスミドである請求項1に記載のDNAトランスファーベクター。
【請求項3】
転写プロモーターをさらに有する請求項2に記載のプラスミド。
【請求項4】
前記プロモーターがCMVである請求項3に記載のプラスミド。
【請求項5】
4つのCpGモチーフをさらに含む請求項2に記載のプラスミド。
【請求項6】
8つのCpGモチーフをさらに含む請求項5に記載のプラスミド。
【請求項7】
薬剤として許容されるビヒクルおよび賦形剤との混合調剤として、請求項1から6のいずれか一項に記載のDNAトランスファーベクターを含む医薬品組成物。
【請求項8】
非経口投与に好適である請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
注射可能な溶液の形態である請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
同時に、逐次的に、または別々に治療的に使用するための、請求項1から6に記載の少なくとも2つの異なるプラスミドを含む組合せ医薬品。
【請求項11】
DNAワクチン接種に適切な形態である、請求項10に記載の組合せ医薬品。
【請求項12】
p185neu陽性腫瘍を発症する危険性がある対象または、p185neu発現腫瘍の原発性腫瘍、転移または再発が認められる患者の、予防的または治療的な処置に用いる医薬品組成物を調製するための、請求項1から6に記載のプラスミドの使用。
【請求項13】
DNAワクチンの調製のための、請求項12に記載の使用。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公表番号】特表2007−508004(P2007−508004A)
【公表日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−530102(P2006−530102)
【出願日】平成16年10月6日(2004.10.6)
【国際出願番号】PCT/EP2004/011161
【国際公開番号】WO2005/039618
【国際公開日】平成17年5月6日(2005.5.6)
【出願人】(591092198)インデナ エッセ ピ ア (52)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年10月6日(2004.10.6)
【国際出願番号】PCT/EP2004/011161
【国際公開番号】WO2005/039618
【国際公開日】平成17年5月6日(2005.5.6)
【出願人】(591092198)インデナ エッセ ピ ア (52)
【Fターム(参考)】
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