説明

無線通信システムならびにそれを用いる情報通信システムおよび給電監視制御システム

【課題】遠隔検針を行うことができる給電監視制御システムにおいて、各戸のユニット電力計から定時の検針データを短時間で収集するとともに、負荷開放などの制御を速やかに行えるようにする。
【解決手段】通常時は、末端側のユニット電力計T1−1,T1−2,・・・から前記検針データを上位のユニット電力計T2−1,T2−2,・・・で順に併合して、ゲートウエイGWa,GWbからサーバ装置1に収集する。一方、抜け落ちた検針データの送信や、入退去に伴う給停電の制御などを行う緊急時には、そのユニット電力計T1−12は、到達可能範囲のユニット電力計T3−12を経由して、ジャンプして送受信する。したがって、定時の検針データの収集や制御データの配信を規則的にかつ短時間で行うことができるとともに、緊急時や異常時などでは速やかにデータを伝送することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の無線通信装置が、最上位の基端局から最下位の末端局へ複数の階層を備えるツリー状にネットワークを構築し、各無線通信装置で送受信すべきデータが、自機より上位側の無線通信装置で中継されて前記基端局との間で送受信される無線通信システムならびにそれを用いる情報通信システムおよび給電監視制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
前記のような無線通信システムを、電気、ガス、水道等の検針に用いた典型的な従来技術が、特許文献1に示されている。この従来技術では、検針データを上位側の無線通信装置に吸い上げて統合し、さらに上位側へと転送してゆくので、基端局が各末端局を個別にポーリングする場合に比べて、短時間でデータを収集できるようになっている。
【特許文献1】特開2000−187793号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1の手法では、各階層を順に経由してデータを転送してゆくので、検針データのように到達に多少の時間が掛かってもよいデータには問題がないが、異常の発生を報知するデータや、オペレータ操作による制御データなどの短時間に伝達させなければならないデータに関しては、その遅れが問題になる。たとえば、入退居に伴う給停電を依頼する電話が顧客からあってから、実際に給電状態や停電状態になるまで、かなりの時間を要してしまう。
【0004】
本発明の目的は、定時のデータの収集や配信を規則的にかつ短時間で行うことができるとともに、緊急時や異常時などでは速やかにデータを伝送することができる無線通信システムならびにそれを用いる情報通信システムおよび給電監視制御システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の無線通信システムは、通信手段および記憶手段を備える複数の無線通信装置が、最上位の基端局から最下位の末端局へ複数の階層を備えるツリー状に配列されて成り、一の無線通信装置の通信手段が前記記憶手段に格納されている識別情報を有する他の無線通信装置の通信手段と通信を行うことで、各無線通信装置で送受信すべきデータが、自機より上位側の無線通信装置で中継されて前記基端局との間で送受信される無線通信システムにおいて、前記識別情報は、前記階層に従う隣接する無線通信装置を使用する第1の動作モードに対応した第1の識別情報と、少なくとも一部の無線通信装置において設定され、前記階層を超越する隣接しない無線通信装置を使用する第2の動作モードに対応した第2の識別情報とを含み、自機の動作モードを判定し、前記通信手段に、判定結果に対応した識別情報の無線通信装置と通信を行わせる通信制御手段を備えることを特徴とする。
【0006】
上記の構成によれば、通信手段および記憶手段を備えて無線通信装置が構成され、その無線通信装置が、最上位の基端局から最下位の末端局へ複数の階層を備えるツリー状に配列されて成る無線通信システムにおいて、少なくとも一部の無線通信装置は前記基端局と通信を行う経路を複数有し、第1は前記階層を順に辿る、すなわち自機より上位側の無線通信装置の総てを経由する経路であり、第2は前記階層を超越する、すなわち一部の無線通信装置を経由しない経路であり、前記記憶手段にはこれらの経路に対応した複数の無線通信装置のアドレス、ID、電話番号等の識別情報が予め動作モードに対応付けて設定されている。
【0007】
そして、通常状態などの第1の動作モードでは、通信制御手段は通信手段に第1の識別情報を設定して、各無線通信装置で発生したセンシングデータなどを基端局へ順次転送させてゆき、或いは基端局で発生した制御データなどを各無線通信装置へ順次転送させてゆく。また、その転送の際に、中継局となる無線通信装置では、自機で発生したセンシングデータを下位側から送られて来たセンシングデータに併合したり、自機への制御データを上位側から送られて来た制御データから分割したりしてもよい。
【0008】
これに対して、緊急時や異常時などの1または複数の第2の動作モードでは、前記通信制御手段は通信手段に第2の識別情報を設定して、前記センシングデータや制御データなどを、直接通信(無線信号が到達)可能で、隣接していない、すなわち2段以上上位または下位の無線通信装置を中継、すなわち近接する幾つかの無線通信装置をジャンプして送受信させる。
【0009】
したがって、定時のセンシングデータの収集や制御データの配信を規則的にかつ短時間で行うことができるとともに、緊急時や異常時などでは速やかにデータを伝送することができる。また、各無線通信装置の記憶手段には、隣接する無線通信装置やジャンプ先の無線通信装置の識別情報を記憶しておくだけで、前記ツリー全体のルートテーブルを備えていなくてもよく、記憶容量を小さくすることができるとともに、ルート変更も容易である。
【0010】
また、本発明の無線通信システムでは、前記各無線通信装置は、登録手段をさらに備え、前記通信手段は、データの送信時に、自機の前記識別情報に合わせて前記階層を表す情報を送信しており、他の無線通信装置の通信手段はそれを受信しており、前記登録手段は、前記通信手段で受信された最も上位の階層の無線通信装置の識別情報を、前記第2の識別情報として前記記憶手段に登録することを特徴とする。
【0011】
上記の構成によれば、各無線通信装置の通信手段が送信時に自機の識別情報に合わせて階層を表す情報を送信しておき、他の無線通信装置の通信手段がそれを受信し、登録手段が、受信された最も上位の階層の無線通信装置の識別情報を選択して前記第2の識別情報として前記記憶手段に登録しておくことで、前記緊急時や異常時などの第2の動作モードでのジャンプ送信を行うにあたって、その時点で最大限到達可能な範囲の無線通信装置に向けて送信を行うことができ、中継の段数を最小限とし、最も短時間でデータを伝送することができる。
【0012】
さらにまた、本発明の無線通信システムでは、前記通信手段は、自機が中継局となってデータを転送する際は、自機で発生したデータを末端局(下位)側から転送されて来たデータに併合して転送することを特徴とする。
【0013】
上記の構成によれば、転送の際に、中継局となる無線通信装置では、自機で発生した前記センシングデータを末端局(下位)側から送られて来たセンシングデータに併合して転送することで、基端局(上位)側となる程データ長が長くなるが、各無線通信装置が基端局へデータを個別に送信してゆく場合に比べて、トラヒックを大幅に削減することができる。
【0014】
また、本発明の無線通信システムでは、前記各無線通信装置はタイマをさらに備え、前記通信手段は前記タイマに応答して、予め定める周期毎に自機に規定されたタイミングで末端局(下位)側から転送されて来たデータを基端局(上位)側へ転送を行い、同じ階層に位置する無線通信装置間で、同じ無線通信装置の配下に位置する無線通信装置間では前記タイミングは相互に異なるように規定され、相互に異なる無線通信装置の配下に位置する無線通信装置間では前記タイミングに同じタイミングが使用されることを特徴とする。
【0015】
上記の構成によれば、各通信手段は、1対1でしか通信できないが、末端局(下位)側から基端局(上位)側へデータを送信するにあたって、同じ無線通信装置の下層に位置する、すなわち同じツリーの無線通信装置間では、送信タイミングをずらして上位の無線通信装置と前記1対1の通信を行えるようにし、異なる無線通信装置の下層に位置する、すなわち別のツリーの無線通信装置とは同じ送信タイミングを使用可能にする。
【0016】
したがって、階層が多く、多くの無線通信装置を収容するシステムで、上りデータの送信に要する時間を飛躍的に短縮することができる。
【0017】
さらにまた、本発明の無線通信システムでは、前記通信手段は、自機が中継局となってデータを転送する際は、基端局(上位)側から転送されて来たデータから自機が受取るべきデータを分割して転送することを特徴とする。
【0018】
上記の構成によれば、転送の際に、中継局となる無線通信装置では、基端局から自機への制御データを該基端局(上位)側から送られて来た制御データから分割することで、基端局(上位)側となる程データ長が長くなるが、基端局が各無線通信装置へデータを個別に送信してゆく場合に比べて、トラヒックを大幅に削減することができる。
【0019】
好ましくは、末端局(下位)側から基端局(上位)側へ伝送されるデータは各無線通信装置で収集されたセンシングデータであり、基端局(上位)側から末端局(下位)側へ伝送されるデータは末端局に対する制御データであることを特徴とする。
【0020】
また好ましくは、前記通信手段はPHS(Personal Handyphone System)トランシーバモードで通信を行うことを特徴とする。
【0021】
また、本発明の情報通信システムでは、前記の無線通信システムに、前記最上位の基端局で送受信されるデータを取扱うサーバ装置を備えて成ることを特徴とする。
【0022】
上記の構成によれば、サーバ装置は、リモートセンシングおよびリモートコントロールなどを行うことができる。
【0023】
さらにまた、本発明の情報通信システムでは、前記サーバ装置は、少なくとも電界強度変動の大きい無線通信装置を、前記ツリーの主幹から除外することを特徴とする。
【0024】
上記の構成によれば、予め前記階層が設定されるツリーであるが、サーバ装置が保持するルートテーブルを、実使用状態で電波環境の変化に適応させ、適宜ツリー形状を見直してゆくにあたって、少なくとも電界強度変動、好ましくはBER(Bit Error Rate)も含めて、それらの大きい無線通信装置は前記電波環境が不安定であるので、該サーバ装置がその無線通信装置をツリーの主幹から除外してツリーを更新する。
【0025】
したがって、通信ルートの安定性を向上することができる。
【0026】
また、本発明の給電監視制御システムは、前記の無線通信システムにおいて、無線通信装置に、前記センシングデータを取得する電力量計および前記制御データに応答して開閉制御を行う負荷開閉器が併設されて成ることを特徴とする。
【0027】
上記の構成によれば、サーバ装置は、各無線通信装置がどのように配列されているかを表すルートテーブルを保持して、各無線通信装置から定期的に電力量計のセンシングデータを取得し、必要に応じて各無線通信装置を介して負荷開閉器を制御することができる。
【0028】
したがって、時間帯別の使用電力量の集計や、入退居に伴う給停電を、作業者が直接契約家庭や事業所に出向くことなく、電力会社の営業所などで遠隔して行うことができる。これによって、細かな料金体系を採用したり、課金や給停電を速やかに行うことができ、電力会社において、顧客サービスを向上することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明の無線通信システムは、以上のように、通信手段および記憶手段を備えて無線通信装置が構成され、その無線通信装置がツリー状に配列されて成る無線通信システムにおいて、少なくとも一部の無線通信装置は前記基端局と通信を行う経路を複数有し、第1は前記階層を順に辿る経路であり、第2は前記階層を超越する経路であり、前記記憶手段にはこれらの経路に対応した複数の無線通信装置の識別情報が予め動作モードに対応付けて設定されており、通常状態などの第1の動作モードでは、通信制御手段は第1の識別情報を選択して、各無線通信装置で発生したセンシングデータなどを基端局へ順次転送してゆき、或いは基端局で発生した制御データなどを各無線通信装置へ順次転送してゆき、緊急時や異常時などの第2の動作モードでは、前記通信制御手段は第2の識別情報を選択して、前記センシングデータや制御データなどを、近接する幾つかの無線通信装置をジャンプして送受信する。
【0030】
それゆえ、定時のセンシングデータの収集や制御データの配信を規則的にかつ短時間で行うことができるとともに、緊急時や異常時などでは速やかにデータを伝送することができる。また、各無線通信装置の記憶手段には、隣接する無線通信装置やジャンプ先の無線通信装置の識別情報を記憶しておくだけで、前記ツリー全体のルートテーブルを備えていなくてもよく、記憶容量を小さくすることができるとともに、ルート変更も容易である。
【0031】
また、本発明の情報通信システムは、以上のように、前記の無線通信システムに、前記最上位の基端局で送受信されるデータを取扱うサーバ装置を備えて成る。
【0032】
それゆえ、サーバ装置は、リモートセンシングおよびリモートコントロールなどを行うことができる。
【0033】
また、本発明の給電監視制御システムは、以上のように、前記の無線通信システムにおいて、無線通信装置に、前記センシングデータを取得する電力量計および前記制御データに応答して開閉制御を行う負荷開閉器が併設されて成る。
【0034】
それゆえ、時間帯別の使用電力量の集計や、入退居に伴う給停電を、作業者が直接契約家庭や事業所に出向くことなく、電力会社の営業所などで遠隔して行うことができる。これによって、細かな料金体系を採用したり、課金や給停電を速やかに行うことができ、電力会社において、顧客サービスを向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
図1は、本発明の実施の一形態に係る給電監視制御システムの全体構成を示すブロック図である。この給電監視制御システムは、電力会社の営業所などに設置されるサーバ装置1と、そのサーバ装置1と社内光ファイバ網などのネットワーク2を介して接続され、基端局である1または複数のゲートウエイGWa,GWb,GWc,・・・(総称するときは、以下参照符号GWで示す)と、前記各ゲートウエイGWから最下位の末端局であるユニット電力計T1−1,T1−2,T1−3,・・・まで、複数の階層を備えるツリー状に配列される前記ユニット電力計T1−1,T1−2,T1−3,・・・;T2−1,T2−2,・・・;T3−1,T3−2,・・・(総称するときは、以下参照符号Tで示す)とを備えて構成される。
【0036】
各ユニット電力計Tは、本願出願人が先に特開2006−292442号公報や特開2006−170787号公報で提案したような構造に類似しており、たとえば図2で示すように構成される。すなわち、宅内の各配電線が接続される端子台6側から、負荷開閉器3、電力量計4および無線通信装置5が配列されて構成されている。前記電力量計4は、積算電力量を予め定める周期、たとえば30分毎に検針し、センシングデータであるその検針データを、無線通信装置5が、後述するように各ユニット電力計Tに予め設定されたタイミングに、自機の属するゲートウエイGWへ向けて送信し、集約されてサーバ装置1に入力される。一方、サーバ装置1からは、負荷開閉器3の開閉や、不達検針データを再送するバックアップ検針などを行わせるための制御データが、必要に応じて、ゲートウエイGWを介して各無線通信装置5へ向けて送信される。
【0037】
前記サーバ装置1は、各ユニット電力計Tがどのように配列されているかを表す図1で示すようなルートテーブルを保持しており、上述のようにしてそれぞれに内蔵する無線通信装置5から定期的に電力量計4の検針データを取得し、必要に応じて各無線通信装置5を介して負荷開閉器3を制御することができるようになっており、時間帯別の使用電力量の集計や、入退居に伴う給停電を、作業者が直接契約家庭や事業所に出向くことなく、電力会社の営業所などで遠隔して行うことができる。これによって、細かな料金体系を採用したり、課金や給停電を速やかに行うことができ、電力会社において、顧客サービスを向上することができるようになっている。
【0038】
注目すべきは、各ユニット電力計Tにおいて、前記の従来技術では、前記無線通信装置5の部分には、電柱などからの通信信号線を引込むタイプワイヤードの通信装置が使用されていたのを、本発明では、PHS(Personal Handyphone System)トランシーバモードで無線通信を行う装置を用い、以下のようにして通信動作を行うことである。前記PHSトランシーバモードでは、見通し可能な場合、半径150〜200mの範囲で通信可能となり、各無線通信装置5は、隣接する無線通信装置だけでなく、場合によっては、直接ゲートウエイGWと通信を行うことも可能になる。
【0039】
図3は、無線通信装置5の一構成例を示すブロック図である。この無線通信装置5は、通信手段である前記PHSの無線機11と、その通信を制御する無線通信制御部12およびタイマ13と、通信に必要なパラメータを記憶しており、記憶手段であるメモリ14と、前記メモリ14の内容の一部を設定することができる入力操作部15と、通信状況を記憶しているメモリ16と、電力量計4から検針データを受信するインタフェイス21と、前記負荷開閉器3へ制御データを送信するインタフェイス22と、それらの電力量計4および負荷開閉器3との通信を制御する機内通信制御部23と、前記検針データをバックアップ記憶しておくメモリ24と、前記検針データや制御データを前記無線機11から送受信するにあたって、後述するような併合・分割の処理を行うデータ加工部25と、そのデータ加工の際に使用されるワーキングメモリ26とを備えて構成される。
【0040】
先ず、各無線通信装置5は、前記入力操作部15から設定され、前記メモリ14に、自機の電話番号を、正常時に使用される主電話番号♯01と、ルート故障時に使用される副電話番号♯02との複数有するとともに、前記検針データを転送する上位の相手(発呼)先の電話番号も、通常時の♯11,♯21と、緊急時の♯12との2種類有する。通常時の電話番号♯11,♯21は前記ルートテーブルの階層に従う自機に隣接するユニット電力計の電話番号であり、緊急時の電話番号♯12は少なくとも一部のユニット電力計で前記階層を超越する自機に直接は隣接しないユニット電力計の電話番号である。なお、電話番号♯11,♯12は前記主電話番号♯01に対応した電話番号であり、電話番号♯21は前記副電話番号♯02に対応した電話番号である。
【0041】
具体的には、図1の例では、最下位の末端局であるユニット電力計T1−1,T1−2,T1−3,T1−4,T1−5;T1−11,T1−12(総称するときは、以下参照符号T1で示す)には、それぞれ前記主電話番号♯01として、a−300,a−310,a−320,a−330,a−340;b−300,b−310が予め登録されているとともに、副電話番号♯02として、f−301,e−311,d−321,c−331,b−341;a−301,g−311が予め登録されている。なお、各ユニット電力計Tは、前記正常時における主ルートの電話番号♯01と、その主ルートの故障時に使用される後述する副ルートの電話番号♯02とを有するけれど、以降の説明では、説明の簡略化のために、先ず正常時に使用される主ルートの電話番号を用いて説明する。
【0042】
そして、通常時に通信する第1の識別情報である電話番号♯11には、それぞれ1つ上位の局であるユニット電力計T2−2,T2−4,T2−6,T2−8,T2−10;T2−12,T1−14の電話番号a−120,a−140,a−160,a−180,a−200;b−120,b−140が予め登録されている。これに対して、緊急時に通信する第2の識別情報である電話番号♯12には、それぞれ2つ以上上位の局であるユニット電力計の電話番号、たとえばユニット電力計T1−11,T1−12では、T4−11,T3−12の電話番号b−30,b−80が予め登録されている。
【0043】
同様に、図1の例では、たとえば前記ユニット電力計T1−11,T1−12の緊急時における通信相手先のユニット電力計T4−11,T3−12では、主電話番号♯01として、前記b−30,b−80が予め登録されるとともに、副電話番号♯02として、a−31,g−81が予め登録されている。また、正常時の通常時に通信する電話番号♯11には、1つ上位のユニット電力計T5−11,T4−11の電話番号b−10,b−30がそれぞれ予め登録されている。また、緊急時に通信する電話番号♯12には、共にゲートウエイGWbの電話番号が予め登録されているとともに、電話番号♯12には前記末端局のユニット電力計T1−11,T1−12の電話番号b−300,b−310がそれぞれ予め登録されている。
【0044】
このように構成される無線通信装置5において、先ず第1の動作モードである通常状態では、無線通信制御部12は、無線機11で受信された下位側からの検針データを前記データ加工部25に入力する。一方、前記データ加工部25には、前記インタフェイス21を介して機内通信制御部23が受信し、メモリ24に格納しておいた自機の電力量計4からの検針データが、予め定める送信周期、たとえば前記30分毎に読出されている。そして前記データ加工部25は、ワーキングメモリ26を使用して、入力されたデータを併合する処理を行い、新たな検針データを作成する。
【0045】
その新たな検針データには、無線通信制御部12において、前記メモリ14の電話番号♯01に格納されている自機の電話番号、たとえば前記ユニット電力計T3−12ではb−80が付加された後、後述するようにタイマ13で規定されたタイミングで、無線機11から、前記電話番号♯11に格納されている自機に隣接する上位側の無線通信装置の電話番号、たとえば前記ユニット電力計T3−12ではユニット電力計T4−11のb−30に発呼させて送信を行う。
【0046】
こうして、自機が中継局となってデータを転送する際に、無線通信制御部12が、下位側からの検針データに、自機の検針データを併合して、上位側へ転送してゆくことで、基端局(上位)側となる程データ長が長くなるが、各無線通信装置が基端局へデータを個別に送信してゆく場合に比べて、トラヒックを大幅に削減することができる。なお、自機が末端局である場合は、転送されて来る検針データが無いので、前記無線機11での受信は行われず、またデータ加工部25での検針データの併合は行われず、メモリ24からの検針データがそのまま送信される。
【0047】
これに対して、サーバ1からの制御データには、そのヘッダ部分に前記ルートテーブルに従い途中に経由すべき無線通信装置の電話番号が総て記載されており、無線通信制御部12は、自機に届いた制御データを解析し、次に送信すべき無線通信装置の電話番号に発呼することで転送を行う。たとえば前記ユニット電力計T4−11で中継されたサーバ1からの制御データは、任意のタイミングで、次の階層のユニット電力計T3−11とT3−12との内、データに従って、たとえばT3−12に転送されることになる。このとき、前記無線機11で受信された制御データは、無線通信制御部12から前記データ加工部25に入力されて、ワーキングメモリ26を使用して自機宛の制御データが分割される。その制御データに応答して、機内通信制御部23は、前記インタフェイス21を介して、前記負荷開閉器3の開閉制御を行い、或いは不達となった検針データをメモリ24から読出して、前記送信機11にバックアップ送信させる。
【0048】
こうして、上位側からの制御データから、自機が受取るべき制御データを分割して、下位側へ転送してゆくことで、基端局(上位)側となる程データ長が長くなるが、基端局が各無線通信装置へデータを個別に送信してゆく場合に比べて、トラヒックを大幅に削減することができる。なお、自機が末端局である場合は、転送すべき制御データが無いので、前記無線機11での送信は行われず、またデータ加工部25での制御データの分割は行われない。図1では、ゲートウエイGWa側のツリーにおいて、前記検針データの併合および制御データの分割の様子を分り易く示すように、データ量に対応した太さの矢印を付して示している。
【0049】
前記メモリ24に格納されるデータは、図3において参照符号24aで示すような、毎時0分および30分において電力量計4で検針された積算電力量のデータであり、或いは図示しない停電などの情報も合わせて格納されていてもよく、その記憶容量は、検針データを、たとえば40日分蓄積可能な容量に選ばれる。
【0050】
これに対して、前記負荷開閉器3から開閉制御の結果やバックアップ検針データなどの緊急に伝送すべきデータが発生すると、無線通信制御部12は、第2の動作モードである緊急状態となる。そして、無線通信制御部12は、それらのデータに、電話番号♯01に格納されている自機の電話番号を付加して送信データを作成し、無線機11に、メモリ14に前記電話番号♯12として格納されている自機に隣接していないジャンプ先の無線通信装置の電話番号、たとえば前記ユニット電力計T1−12ではユニット電力計T3−12のb−80で発呼させて送信を行う。このとき、PHSトランシーバモードでは、1:1の通信しか行えないので、既にそのジャンプ先のユニット電力計T3−12が話中であるときには、前記無線通信制御部12は、通信が終了すると想定されるまでの間待機した後、前記緊急時のデータを送信する。すなわち、各無線通信装置5は、1回の通信を15秒以内で終えるようになっており、前記ジャンプ送信ができなかった場合、再試行を5秒間隔で3回行うことで、前記ジャンプ送信を実現する。
【0051】
そのデータを無線機11で受信したユニット電力計T3−12の無線通信制御部12は、前記無線機11に自機のメモリ14に前記電話番号♯12として格納されているゲートウエイGWbに即座に発呼させて転送を行う。こうして、下位側からの緊急時のデータを最小限の中継回数で速やかに伝送することができる。
【0052】
また、サーバ装置1から、たとえば前記入退居に伴う給停電(負荷開閉器3の開閉制御)やバックアップ検針データの送信要求などが指示されると、その制御データは、ゲートウエイGWbから、その制御データに格納されている前記ユニット電力計T3−12の電話番号b−80に発呼されて送信が行われる。これを受信したユニット電力計T3−12の無線通信装置5の通信制御部12は、同様に制御データ中に格納されている前記ユニット電力計T1−12の電話番号b−310に発呼させて転送を行う。こうして、上位側からの緊急時のデータも、最小限の中継回数で速やかに伝送することができる。
【0053】
このようにして、第1の動作モードの通常状態では、定時の検針データの収集や制御データの配信を規則的にかつ短時間で行うことができるとともに、第2の動作モードの緊急時や異常時などでは、速やかにデータを伝送することができる。また、各無線通信装置5のメモリ14には、隣接する上位の無線通信装置の電話番号♯11やジャンプ先の上位の無線通信装置の電話番号♯12を記憶しておくだけで、前記ツリー全体のルートテーブルを備えていなくてもよく、記憶容量を小さくすることができるとともに、ルート変更も容易である。
【0054】
また、注目すべきは、前記メモリ14には、入力操作部15から、自機が前記ルートテーブルにおけるどの階層に属するのかを表す階層情報が登録されており、前記無線通信制御部12は、送信時に、その階層情報を自機の電話番号に合わせて送信しており、他の無線通信装置において、登録手段である無線通信制御部12は、その階層情報を受信し、受信された最も上位の階層の無線通信装置の電話番号を、前記電話番号♯12に登録することである。図1の例では、前記基端局であるゲートウエイGWa,GWb,GWc,・・・が最上位の第1の階層に位置し、ユニット電力計T5−1,T5−2;T5−11,T5−12が次の第2の階層に位置し、同様にユニット電力計T4−1〜T4−4;T4−11,T4−12がさらに次の第3の階層に位置し、ユニット電力計T3−1〜T3−5;T3−11,T3−12がさらに次の第4の階層に位置し、ユニット電力計T2−1〜T2−10;T2−11〜T2−14がさらに次の第5の階層に位置し、ユニット電力計T1−1〜T1−5;T1−11,T1−12がさらに次の第6の階層に位置する。
【0055】
したがって、たとえば上述の説明では、末端局のユニット電力計T1−11において、前記電話番号♯12にはユニット電力計T4−11の電話番号b−30が登録されているけれども、電波環境が改善するなどして、直接ゲートウエイGWbと通信可能となると、そのゲートウエイGWbの電話番号に更新する。一方、電波環境が悪化するなどして、ユニット電力計T4−11からの発信信号を受信できなくなると、1階層下のユニット電力計T3−11からの発信信号を受信してみて、受信できると、その電話番号b−70が登録される。
【0056】
ここで、通信状況を記憶しているメモリ16には、図3において参照符号16aで示すように、各無線通信装置から送信された信号の無線通信制御部12によるモニタ結果が格納されており、同じ階層の無線通信装置からの送信信号が複数受信される場合には、電界強度レベルの平均値が最も高い(たとえば30dBμV以上)局が選択される。或いは、BERが低い局を選択するようにしてもよく、それらを併用するようにしてもよい。また、ジャンプ送信には確実に転送されてゆくことが要求されるので、前記電界強度レベルが所定レベルを下回る局は、その階層で1つしか存在しなくても選択されず、さらに下層の無線通信装置がジャンプ先に選択されることになる。さらに、各無線通信装置で選択されたジャンプ先が、予め定める周期、たとえば1日に1回、サーバ装置1に送信されて、サーバ装置1側からの制御データについても、同じ無線通信装置を中継してジャンプ送信が行われることが望ましい。特に、前記バックアップ検針データや負荷開閉器3の制御結果などのように、サーバ装置1が目的とするユニット電力計に対するコマンドを送信し、その実行結果を必要とする場合、上りと下りとで同一のルートを利用することで、信頼性を向上することができる(応答が帰って来る可能性が高い)。
【0057】
このように構成することで、前記緊急時や異常時などにジャンプ送信を行うにあたって、その時点で最大限到達可能な範囲の無線通信装置に向けて送信を行うことができ、中継の段数を最小限とし、最も短時間でデータを伝送することができる。本実施の形態では、メモリ14には、正常時のジャンプ先のみが前記電話番号♯12に記憶されているだけであるけれども、前記故障時の副ルートにおいてもジャンプ送信が行われてもよい。また、前記電話番号♯12には、ジャンプ先の電話番号が1つ記憶されているだけであるけれども、前記電界強度レベルの平均値および階層が次に高い無線通信装置からの電話番号が合わせて記憶されてもよく、第1の電話番号で所定回数ジャンプ送信に失敗したら、その次位の無線通信装置へ発呼するようにしてもよい。
【0058】
さらにまた、注目すべきは、各無線通信装置5において、検針データの送信タイミングが、タイマ13によって、同じ階層に位置する無線通信装置間で、同じ無線通信装置の配下に位置する無線通信装置間では相互に異なるように規定され、相互に異なる無線通信装置の配下に位置する無線通信装置間では同じタイミングが使用されることである。すなわち、各無線通信装置5は、1対1でしか通信できなくても、末端局(下位)であるユニット電力計T1側から、基端局(上位)であるゲートウエイGWa側へデータを送信するにあたって、同じ無線通信装置の下層に位置する、すなわち同じツリーの無線通信装置間では、送信タイミングをずらして上位の無線通信装置と前記1対1の通信を行えるようにし、異なる無線通信装置の下層に位置する、すなわち別のツリーの無線通信装置とは同じ送信タイミングを使用可能にする。
【0059】
具体的には、図1のゲートウエイGWaに関するルートテーブルを図4に拡大して示すと、最下層である前記第6の階層のユニット電力計T1−1,T1−2,T1−3,T1−4,T1−5は、相互に異なるユニット電力計T2−2,T2−4,T1−6,T2−8,T2−10の下位側にそれぞれ位置しており、30分検針データの送信タイミングは、毎時0分および30分の0秒に設定される。
【0060】
これに対して、第5の階層のユニット電力計T2−1,T2−2,T2−3,T2−4,T2−5,T2−6,T2−7,T2−8,T2−9,T2−10において、ユニット電力計T2−1,T2−2;T2−3,T2−4;T2−5,T2−6;T2−7,T2−8;T2−9,T2−10は、それぞれ同じユニット電力計T3−1,T3−2,T3−3,T3−4,T3−5の下位側に位置しており、ユニット電力計T2−1,T2−3,T2−5,T2−7,T2−9については毎時0分および30分の5秒に設定され、ユニット電力計T2−2,T2−4,T2−6,T2−8,T2−10については、前述のようにデータの併合を行って、毎時0分および30分の10秒に設定される。
【0061】
同様に、第4の階層のユニット電力計T3−1,T3−2,T3−3,T3−4,T3−5において、ユニット電力計T3−1は単独でユニット電力計T4−1の下位側に位置しているのに対して、ユニット電力計T3−2,T3−3;T3−4,T3−5は、それぞれ同じユニット電力計T4−2,T4−3の下位側に位置しており、ユニット電力計T3−1,T3−2,T3−4については毎時0分および30分の15秒に設定され、ユニット電力計T3−3,T3−5については、毎時0分および30分の20秒に設定される。
【0062】
さらに、第3の階層のユニット電力計T4−1,T4−2,T4−3,T4−4において、ユニット電力計T4−1,T4−2;T4−3,T4−4は、それぞれ同じユニット電力計T5−1,T5−2の下位側に位置しており、ユニット電力計T4−1,T4−3については毎時0分および30分の25秒に設定され、ユニット電力計T4−2,T4−4については、毎時0分および30分の30秒に設定される。そして、第2の階層のユニット電力計T5−1,T5−2は、同じ第1の階層のゲートウエイGWaの下位側に位置しており、ユニット電力計T5−1については毎時0分および30分の35秒に設定され、ユニット電力計T5−2については、毎時0分および30分の40秒に設定される。これらのタイミングは、メモリ14内に、τ1として格納される。
【0063】
このように構成することで、前述のように階層が多く、多くの無線通信装置5を収容するシステムで、上りデータの送信に要する時間を飛躍的に短縮することができる。
【0064】
前記30分検針データのデータ量は、たとえば34バイトであり、前記PHSのトランシーバモードにおける伝送レート28kbpsでは、上述のように下位側のデータを併合しても、1送信期間の5秒間で送信可能である。なお、上述のように各階層間の送信タイミングを隣接させるのではなく、ルートテーブルの見直しや、新築などによるユニット電力計Tの増設などに備えて、冗長期間を設けておくようにしてもよい。
【0065】
次に、PHSトランシーバモードによる無線ネットワークにおいて、ツリー&メッシュの複合型ルーティングマップによる前記主ルートおよび副ルートのルートテーブルの作成方法を説明する。前記主ルートは、前述のように正常時に使用され、各無線通信装置5からゲートウエイGWへ短い時間で確実に伝送することを目的として作成されるルートである。各無線通信装置5はこの主ルートを優先して使用し、該主ルートでの通信を実現するために、自機の主電話番号♯01と、発呼先の電話番号♯11,♯12とを有する。一方、前記副ルートは、主ルートに一時的な通信障害が発生した際に使用される迂回ルートであり、自機の主ルートにおける階層より上位段、同位段、下位段の無線通信装置へ接続するルートに、隣接する別のゲートウエイ側の無線通信装置へ接続するルートなどを有し、自機の副電話番号♯02と、発呼先の電話番号♯21とを有する。
【0066】
図5を用いて、主ルートのルートマップの作成方法の一例を示す。作成にあたって、ゲートウエイGWおよび各ユニット電力計Ta〜Ti間の電界強度レベルが測定され、この図5では、それをルート間に数値で示している。先ず、第1の階層のゲートウエイGWにおいて、電界強度が予め定めるレベルα1以上の局で、最大k1局を第2の階層(1ホップ目)の局に決定する。図5の例では、α1=50dBμV、k1=2であり、前記電界強度レベルが高い上位2つのユニット電力計Tb,Tdが1ホップ目の局となっている。
【0067】
次に、その1ホップ目の局における電界強度が予め定めるレベルα2以上で、最大k2局を第3の階層(2ホップ目)の局に決定する。図5の例では、α2=30dBμV、k2=2であり、前記2つのユニット電力計Tb,Tdに対して、電界強度レベルが高い上位2つのユニット電力計Ta,Tc;Tf,Tgがそれぞれ2ホップ目の局となっている。その後、これらユニット電力計Ta,Tc;Tf,Tgから3ホップ目以降についても、選択できる局がなくなるまで同様に選択が繰返し行われる。孤立した局ができてしまった場合は、電界強度の強い局に分岐数k2の上限に関係なく接続する。こうして作成されたルートテーブルが、主ルートに確定される。主ルートが確定すると、以下のようにして副ルートを作成する。
【0068】
図6に、図1の一部を抜出して示すその副ルートの一例を示す。この例では、第4層のユニット電力計T3−5に故障が生じた場合に、主ルートとして該ユニット電力計T3−5の配下に位置するユニット電力計T2−10における副ルートの例を示している。先ず、前記上位段へのルートとしては、参照符号R1で示すように前記ユニット電力計T3−5をジャンプしたユニット電力計T4−4へのルートおよび1階層上の参照符号R2で示すようにユニット電力計T3−4へのルートがあり、同位段へのルートとしては、参照符号R3で示すようにユニット電力計T2−8へのルートがあり、下位段(当然自機の配下に位置するユニット電力計T1−5は除く)へのルートとしては、参照符号R4で示すようにユニット電力計T1−4へのルートがあり、他のゲートウエイへのルートとしては、参照符号R5で示すようにユニット電力計T3−11へのルートがあり、これらの電話番号a−60,a−00,a−180,a−330,b−70が、前記電話番号♯21として登録されている。副ルートの電話番号は、このような5つに限らず、前記ツリー&メッシュの構造に応じて適宜選択されればよい。
【0069】
そして、ユニット電力計T2−10の無線通信装置5が、前記主ルートでの障害の発生を検知すると、無線通信制御部12は、メモリ14の電話番号♯21に記憶されている前記ルートR1〜R5にそれぞれ対応した発呼先の電話番号から、電界強度の高いルートを順に選択して発呼を行う。したがって、たとえば図7で示すようにゲートウエイGWaに異常が生じると、次位のユニット電力計T5−1,T5−2では、前記検針データの送信失敗により、それを検知することができるけれども、さらに次位のユニット電力計T4−1,T4−2,・・・では、それを検知することができない。しかしながら、その次位のユニット電力計T5−1,T5−2では、直上位がそのゲートウエイGWaであり、同じツリー内での迂回ルートは存在せず、電話番号♯21として記憶しているのは他のゲートウエイGWb,GWc,GWd,・・・へのルートであるので、自機の電話番号を副電話番号♯02に切換えて発呼する。これによって、順次下位のユニット電力計T4−1,T4−2,・・・でもゲートウエイGWaの異常を検知し、他のゲートウエイGWb,GWc,GWd,・・・への副ルートを選択する。
【0070】
この副ルートでの発呼は、前述のジャンプ送信の場合と同様に任意タイミングであり、衝突によりエラーが発生しても、上述のような再試行で衝突を回避する。また、他のゲートウエイ(図7の例ではGWb)側では、その他のゲートウエイGWb側での検針データは定時に送信しており、追送されることになる故障ゲートウエイGWa側のデータには、前述のようなデータの併合が行われないので、図7で示すようにデータ量を示す矢印の太さは一定である。
【0071】
また、サーバ装置1は、所定時間間隔で各ゲートウエイGWと通信を行っており、それらに異常、すなわちツリー全体に障害が発生した場合には、別のゲートウエイ側から異常を報知して、副ルートに切換えさせる。たとえば前記図6を参照して、前記ゲートウエイGWaに異常が生じた場合は、前記ユニット電力計T2−10に対して、サーバ装置1は、隣接するゲートウエイGWb内のユニット電力計T3−11から、故障時の副電話番号♯02を使用して、R5のルートで個別に制御データを送信し、該R5のルートを選択させる。これに応答した無線通信制御部12は、自機の電話番号を、正常時の主電話番号♯01から、故障時の副電話番号♯02に切換えて、以後この別のゲートウエイGWbに検針データを送信する。こうして、ゲートウエイGWaのツリー下で、副ルートとして前記ゲートウエイGWbのツリー下にある無線通信装置は、順次個別に副ルートに切換えられてゆく。前記ゲートウエイGWbのツリー下にない無線通信装置でも、他のゲートウエイGWc,GWd,・・・のツリー下にあるものは、そのルートで順次個別に副ルートに切換えられてゆく。
【0072】
このように構成することで、複数のユニット電力計Tが、最上位のゲートウエイGWから最下位のユニット電力計T1まで複数の階層を備えるツリー状に配列され、前記階層を順に辿る、すなわち自機より上位側のユニット電力計を経由する経路で、各ユニット電力計Tで発生した検針データをゲートウエイGWaからサーバ装置1へ順次転送してゆき、サーバ装置1で発生した制御データなどをゲートウエイGWaから各ユニット電力計Tへ順次転送してゆく給電監視制御システムにおいて、少なくとも一部のユニット電力計Tの無線通信装置5は、そのメモリ14に、上記のような主ルートを順に辿る電話番号♯11とは別に、電話番号♯21として、別の中継局を介して通信を行う経路、或いは他のゲートウエイGWbと通信を行う経路を有しており、主ルートが中継局となる上位の無線通信装置の故障や停電、或いは電波障害などで使用できなくなると、自動的に副ルートに切換えて前記ゲートウエイGWbと通信を行えるようにするので、定時のセンシングデータの収集や制御データの配信などを、滞りなく、確実に行うことができる。また、或るルートが使用できなくなった時点で新たなルートを再構築するようにしたとき、自機から近い範囲の中継局が使用できなくなった場合はその中継局を回避したルートで再構築を行える可能性が高いが、自機から遠い中継局が使用できなくなった場合は自機の周囲では別のルートが再構築できても、上位側で同じ使用できなくなった中継局を経由してしまう可能性があり、予め予備の副ルートも構築しておくことで、そのような不具合も無くすことができる。
【0073】
また、注目すべきは、前記無線通信制御部12は、主ルートにおける上位側の無線通信装置が使用できなくなって、図6において、参照符号R1〜R4で示す他の無線通信装置を使用する副ルートに切換えて通信を行うにあたって、検針データに、下位側の無線通信装置へのデータの転送を禁止することを表すフラグを設定しておき、これを受信した無線通信装置の無線通信制御部12は、下位側の無線通信装置へは、その検針データの転送を行わないことである。詳しくは、たとえば図8で示すように、前記図6と同様に、第4層のユニット電力計T3−5に故障が生じた場合、その配下に位置するユニット電力計T2−10が、参照符号F1で示す正ルートでの送信が行えないことから、上位階層で異常が生じていることを検知する。そして、第1の副ルートとして、参照符号F2で示すように同じ第5層のユニット電力計T2−9に送信すると、このユニット電力計T2−9はユニット電力計T2−10と同じ故障したユニット電力計T3−5の配下であるので、このユニット電力計T2−9も参照符号F3で示すルートでの送信は行えず、参照符号F4で示すようにユニット電力計T2−10に返信してきたり、その配下のユニット電力計T1−5に転送してしまう可能性がある。それを受けてユニット電力計T2−10が再送すると、無限ループを形成してしまうことになる。
【0074】
そこで前述のようなフラグを設定することで、前記参照符号F4,F5で示すような送信は禁止され、そのような無限ループの発生を未然に防止することができる。
【0075】
さらにまた、注目すべきは、前記無線通信制御部12は、主ルートにおけるゲートウエイGWaが使用できなくなって、図6において、参照符号R5で示す他のゲートウエイGWbを使用する、すなわち他のツリーの副ルートに切換えて通信を行うにあたって、検針データに、さらに他のゲートウエイGWa,GWc、・・・のツリーへのデータの転送を禁止することを表すフラグを設定しておき、これを受信した無線通信装置の無線通信制御部12は、その他のゲートウエイGWa,GWc、・・・のツリーへは、検針データの転送を行わないことである。これによって、同じデータがツリー間で無限にやりとりされてしまうことを未然に防止することができる。
【0076】
また、注目すべきは、前記無線通信制御部12は、周囲の無線通信装置からの送信信号の電界強度レベルをモニタして、予め定める周期、たとえば1日1回、サーバ装置1へ送信しており、これを受信したサーバ装置1は、電界強度変動の大きい局はツリーの主幹(たとえば、図1の例では、ユニット電力計T5−1,T4−1;T5−2,T4−4;T5−11,T4−11)から除外するように前記主ルートのルートテーブルを変更することである。その変更されたルートテーブルは、制御データとして各無線通信装置5へ向けて順次送信され、上位局が変更となった無線通信装置では、前記メモリ14の電話番号♯11およびタイミングτ1が書替えられる。書替えが行われると、次の30分検針から、その新たな電話番号が使用される。
【0077】
なお、前記電界強度の変動には、たとえば表1で示すような態様があり、一時的や周期的な落ち込みでは、落ち込みが軽度の場合は前記主幹の無線通信装置に選択可能であるが、落ち込みが重度の場合や恒久的な場合は、選択対象から除外される。
【0078】
【表1】

【0079】
このように構成することで、予め前記階層が設定されるツリーであるが、サーバ装置1が保持するルートテーブルを、実使用状態で電波環境の変化に適応させ、適宜ツリー形状を見直してゆくにあたって、前記電界強度変動の大きい電波環境が不安定な無線通信装置をツリーの主幹から除外するので、通信ルートの安定性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明の実施の一形態に係る給電監視制御システムの全体構成を示すブロック図である。
【図2】前記給電監視制御システムに用いられるユニット電力計の一構成例を示す正面図である。
【図3】前記ユニット電力計における無線通信装置の一構成例を示すブロック図である。
【図4】ツリー状に配列される各無線通信装置の送信タイミングを説明するための図である。
【図5】ルートマップの作成方法の一例を示す図である。
【図6】故障時に使用される副ルートの作成方法の一例を示す図である。
【図7】ゲートウエイ故障時に使用される副ルートの一例を示す図である。
【図8】前記副ルートの不適切な例を説明するための図である。
【符号の説明】
【0081】
1 サーバ装置
2 ネットワーク
3 負荷開閉器
4 電力量計
5 無線通信装置
6 端子台
11 無線機
12 無線通信制御部
13 タイマ
14,16,24 メモリ
15 入力操作部
21,22 インタフェイス
23 機内通信制御部
25 データ加工部
26 ワーキングメモリ
T1−1〜T1−5,T1−11,T1−12 ユニット電力計
T2−1〜T2−10,T2−11〜T2−14 ユニット電力計
T3−1〜T3−5,T3−11,T3−12 ユニット電力計
T4−1〜T4−4,T4−11,T4−12 ユニット電力計
T5−1,T5−2,T5−11,T5−12 ユニット電力計
GWa,GWb,GWc,・・・ ゲートウエイ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信手段および記憶手段を備える複数の無線通信装置が、最上位の基端局から最下位の末端局へ複数の階層を備えるツリー状に配列されて成り、一の無線通信装置の通信手段が前記記憶手段に格納されている識別情報を有する他の無線通信装置の通信手段と通信を行うことで、各無線通信装置で送受信すべきデータが、自機より上位側の無線通信装置で中継されて前記基端局との間で送受信される無線通信システムにおいて、
前記識別情報は、前記階層に従う隣接する無線通信装置を使用する第1の動作モードに対応した第1の識別情報と、少なくとも一部の無線通信装置において設定され、前記階層を超越する隣接しない無線通信装置を使用する第2の動作モードに対応した第2の識別情報とを含み、
自機の動作モードを判定し、前記通信手段に、判定結果に対応した識別情報の無線通信装置と通信を行わせる通信制御手段を備えることを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
前記各無線通信装置は、登録手段をさらに備え、
前記通信手段は、データの送信時に、自機の前記識別情報に合わせて前記階層を表す情報を送信しており、他の無線通信装置の通信手段はそれを受信しており、
前記登録手段は、前記通信手段で受信された最も上位の階層の無線通信装置の識別情報を、前記第2の識別情報として前記記憶手段に登録することを特徴とする請求項1記載の無線通信システム。
【請求項3】
前記通信手段は、自機が中継局となってデータを転送する際は、自機で発生したデータを末端局側から転送されて来たデータに併合して転送することを特徴とする請求項1または2記載の無線通信システム。
【請求項4】
前記各無線通信装置はタイマをさらに備え、前記通信手段は前記タイマに応答して、予め定める周期毎に自機に規定されたタイミングで末端局側から転送されて来たデータを基端局側へ転送を行い、
同じ階層に位置する無線通信装置間で、同じ無線通信装置の配下に位置する無線通信装置間では前記タイミングは相互に異なるように規定され、相互に異なる無線通信装置の配下に位置する無線通信装置間では前記タイミングに同じタイミングが使用されることを特徴とする請求項3記載の無線通信システム。
【請求項5】
前記通信手段は、自機が中継局となってデータを転送する際は、基端局側から転送されて来たデータから自機が受取るべきデータを分割して転送することを特徴とする請求項3または4記載の無線通信システム。
【請求項6】
末端局側から基端局側へ伝送されるデータは各無線通信装置で収集されたセンシングデータであり、基端局側から末端局側へ伝送されるデータは末端局に対する制御データであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の無線通信システム。
【請求項7】
前記通信手段はPHSトランシーバモードで通信を行うことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の無線通信システム。
【請求項8】
前記請求項1〜7のいずれか1項に記載の無線通信システムに、前記最上位の基端局で送受信されるデータを取扱うサーバ装置を備えて成ることを特徴とする情報通信システム。
【請求項9】
前記サーバ装置は、少なくとも電界強度変動の大きい無線通信装置を、前記ツリーの主幹から除外することを特徴とする請求項8記載の情報通信システム。
【請求項10】
前記請求項8または9記載の無線通信システムにおいて、無線通信装置に、前記センシングデータを取得する電力量計および前記制御データに応答して開閉制御を行う負荷開閉器が併設されて成ることを特徴とする給電監視制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−118170(P2009−118170A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−288856(P2007−288856)
【出願日】平成19年11月6日(2007.11.6)
【出願人】(000156938)関西電力株式会社 (1,442)
【出願人】(000204424)大井電気株式会社 (25)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】