説明

シンバイオティクス組成物

細菌株およびガラクトオリゴサッカリドを含む健康に有益な栄養組成物を開示する。

【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は、健康に有益な栄養組成物に関する。
【発明の背景】
【0002】
WO 2007/054208は、少なくとも103細菌/グラムの量のプロバイオティック細菌、および少なくとも2つのモノサッカリド単位、好ましくは少なくとも4つのモノサッカリド単位を含有する少なくとも0.5 mg/gのチョウセンニンジンのポリサッカリドを含有する食用製品を記載する。更に、上記製品の治療的および予防的処置における使用を記載する。
【0003】
US 2002/044926は、膣の健康を改善するための、少なくとも一つのラクトバチルス(Lactobacillus)および/または他のプロバイオティック生物、たとえばビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)の経口投与方法および組成物を記載する。また、この文献は、膣炎、細菌性膣炎を治療するため、およびカンジダ菌のコロニー形成を低減するための方法および組成物を開示する。
【発明の概要】
【0004】
プロバイオティック細菌の経口投与に伴う主な問題は、腸管におけるプロバイオティック細菌の不十分または不良なコロニー形成である。不良なコロニー形成は、プロバイオティック細菌の投与量を増加させなければならない、および/または頻繁な投与が必要になるという結果をまねく。これは、費用がかかり、望ましくない摂取頻度につながり、および/または健康上の利益の発生を低下させる。
【0005】
本発明者らは、プロバイティクスラクトバチルス(Lactobacillus)菌株DN-114 001および/またはビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)菌株DN-173 010が、ガラクトオリゴサッカリドと同時投与されると、改良された増殖および/またはコロニー形成を示すことを驚くべきことに見出した。本発明者らは、ガラクトオリゴサッカリドが、腸管においてアセテートの濃度を増大させ、DN-114 001および/またはDN-173 010の好ましい増殖条件をつくりだすと信じる。ガラクトオリゴサッカリドは、好ましくはフルクトオリゴサッカリド(たとえばイヌリン)と組み合わせると、インビボ状況に似た条件下で、DN-114 001および/またはDN-173 010のコロニー形成(たとえば増殖)を刺激することが見出された。
【0006】
理論に縛られないが、この改良は、ガラクトオリゴサッカリドをプロバイオティック菌株と(同時)投与すると、インビボでのアセテートの産生が刺激されることによると本発明者らは信じる。ガラクトオリゴサッカリドの、好ましくはフルクトオリゴサッカリドと組み合わせた経口投与は、腸管でのアセテートの産生につながる。
【0007】
また、DN-114 001および/またはDN-173 010の増殖は、高いpHにより阻害されることが見出された。このpH感受性は、DN-114 001および/またはDN-173 010が(高)タンパク質含有組成物に含有された場合、腸管での増殖の低下につながる。経口摂取されたタンパク質は、しばしば(特に乳幼児および高齢者で)完全に吸収されず、タンパク質が腸管の下部(たとえば大腸)に到達する結果に至る。大腸において、タンパク質は発酵され、アンモニアの産生、pHの増大につながる。この効果は、ガラクトオリゴサッカリドを好ましくはフルクトオリゴサッカリドと組み合わせて投与することにより、中和することができる。ガラクトオリゴサッカリドの投与は、効果的に、腸内pHを低下させ、および/または腸内pHの上昇を防ぐため、これは、DN-114 001および/またはDN-173 010のコロニー形成が、好ましくは一または複数の他のオリゴサッカリドと組み合わせたガラクトオリゴサッカリドにより刺激される(更なる)メカニズムである。更に、本発明の菌株の生存および/またはコロニー形成は、腸内細菌を抑制する、および/または腸内細菌の増殖を低下させる、および/または腸内細菌の付着を低減もしくは妨害することにより、とりわけガラクツロン酸オリゴサッカリド、たとえばペクチン分解産物の同時投与により、促進される。
【0008】
更に、本発明者らは、高タンパク質の摂取が、腸内不均衡の重要な原因となり得ることを見出した。これは、とりわけ、乳幼児および高齢者などの腸内タンパク質代謝が弱い被検者の場合である。それにもかかわらず、好ましくは多量のタンパク質摂取は、乳幼児の場合、成長にとりわけ望ましく、高齢者の場合、異化作用の防止にとりわけ望ましい。しかし、高タンパク質の摂取により、タンパク質は完全に消化吸収されないことがあり、タンパク質は小腸および大腸に到達する結果に至る。ここで、タンパク質は、たとえばクロストリジウム(Clostridium)の増殖を刺激し、フローラを不均衡にする効果を有し、これは、感染につながる可能性がある。
【0009】
本発明の更なる目的は、DN-114 001を、免疫系障害に罹っているかまたは罹る可能性のある被検者にタンパク質含有製剤で経口投与したときに、健康な腸内フローラの増殖および発達を刺激することである。これは、ガラクトオリゴサッカリドの経口(同時)投与により達成される。
【詳細な説明】
【0010】
よって、本発明は、(i)感染の治療および/または予防および/または(ii)免疫系の刺激のための、
a.DN-114 001 (CNCM I-1518) と同定される細菌株および/またはDN-173 010 (CNCM I-2494) と同定される細菌株;および
b.100 g乾燥重量あたり0.1〜95 gの(非消化性)ガラクトオリゴサッカリド
を含み、50〜500 mOsm/kgのオスモル濃度(osmolality)を有するタンパク質含有組成物の使用に関する。
【0011】
また、本発明は、
a.DN-114 001 (CNCM I-1518) 菌株および/またはDN-173 010 (CNCM I-2494) 菌株;および
b.ガラクトオリゴサッカリド
を含むタンパク質含有組成物に関する。
【0012】
菌株
本発明の組成物は、DN-114 001菌株および/またはDN-173 010菌株に由来する生細菌または死細菌を含む。WO 2006/077171に記載されるとおり、DN-114 001菌株は、Collection Nationale de Cultures de Microorganisms (CNCM, パスツール研究所, パリ, フランス) に、番号I-1518で寄託されている。この菌株は、時折、ラクトバチルス・カセイ(Lactobacillus casei)と称される。これは、(商業的に)DN-114 001と同定される。また、DN-173 010は、Collection Nationale de Cultures de Microorganisms (CNCM, パスツール研究所, パリ, フランス) に寄託され、番号CNCM I-2494で登録され、時折、ビフィドバクテリウム・アニマリス(Bifidobacterium animalis)と称される。DN-114 001は、DanoneからActimelTMで入手可能である。DN-173 010は、DanoneからActiviaTMで入手可能である。
【0013】
本発明の組成物は、好ましくは、本発明の組成物のグラム(g)乾燥重量あたり102〜1013コロニー形成単位(cfu)の細菌を含み、好ましくは102〜1012 cfu、より好ましくは105〜1010 cfu、最も好ましくは104〜5×109 cfuである。本発明の組成物は、好ましくは、本発明の組成物のグラム(g)乾燥重量あたり102〜1013コロニー形成単位(cfu)のDN-114 001および/またはDN-173 010を含み、g乾燥重量あたり、好ましくは102〜1012 cfu、より好ましくは105〜1010 cfu、最も好ましくは104〜5×109 cfuのDN-114 001および/またはDN-173 010である。
【0014】
ガラクトオリゴサッカリド
本発明者らは、ガラクトオリゴサッカリドが、ビフィドバクテリア(Bifidobacteria)および/またはDN-114 001の増殖を刺激するのに特に有効であったため、本発明の組成物において有利に使用可能であることを見出した。本発明の組成物は、好ましくは、アセテートに発酵されるガラクトオリゴサッカリドを含む。本明細書で使用される「ガラクトオリゴサッカリド」の用語は、サッカリド単位の少なくとも30%がガラクトース単位であり、好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも60%がガラクトース単位である、非消化性(non-digestible)オリゴサッカリドを指す。ラクトースは、消化可能であると考えられる。本発明の組成物は、好ましくは、2〜100のDPのガラクトオリゴサッカリドを含み、より好ましくは2〜10のDPである。好ましくは、ガラクトオリゴサッカリドのサッカリドは、ヒトのミルクオリゴサッカリドのコア構造の場合と同様、β結合される。
【0015】
好ましくは、本発明の組成物は、(トランス)ガラクトオリゴサッカリド、ラクト-N-テトラオース(LNT)およびラクト-N-ネオテトラオース(neo-LNT)からなる群より選択されるガラクトオリゴサッカリドを含む。特に好ましい態様において、本発明の組成物は、トランスガラクトオリゴサッカリドを含む。トランスガラクトオリゴサッカリドは、[ガラクトース]n−グルコースおよび/または[ガラクトース]n−グルコース−([ガラクトース]m)であり、ここでnおよびmは、1から60を含み60までの整数、すなわち、2, 3, 4, 5, 6, …., 59, 60;好ましくはnは、2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9および/または10である。好ましくは、mは、2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9および/または10である。好ましくは、本発明の組成物は、[ガラクトース]n−グルコースを含み、ここでnは、1から60を含み60までの整数である。好ましくは、nは、2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9および/または10である。トランスガラクトオリゴサッカリド(TOS)は、たとえば、商標VivinalTM (Borculo Domo Ingredients, Netherlands) およびYakultからOligomate 55で販売される。好ましくは、ガラクトオリゴサッカリドのサッカリドは、主にβ結合される。
【0016】
本発明の組成物は、好ましくは、100 g乾燥重量あたり0.1〜95 gのガラクトオリゴサッカリドを含み、好ましくは0.5〜50 g、より好ましくは1〜25 g、最も好ましくは2〜10 gである。本発明の組成物は、好ましくは、本発明の組成物の100 g乾燥重量あたり0.5〜75 gの非消化性オリゴサッカリドを含み、好ましくは1〜50 g、より好ましくは2〜25 gである。本発明の方法は、好ましくは、0.05〜25 gのガラクトオリゴサッカリド(galactooligosaccharide)を含む一人分(serving)の投与を含み、好ましくは0.1〜5 gである。本発明の方法は、好ましくは、0.05〜25 gの複数のガラクトオリゴサッカリド(galactooligosaccharides)を含む一人分(serving)の投与を含み、好ましくは0.1〜5 gのガラクトオリゴサッカリドである。
【0017】
(プレバイオティック)オリゴサッカリドの混合物
本発明の組成物は、好ましくは、少なくとも二つの非消化性中性オリゴサッカリドを、異なる平均重合度(DP)で含む。本発明者らは、オリゴサッカリドの組み合わせが、アセテートの産生を改良し、および/またはpH低下効果を改良し、その結果、DN-114 001および/またはDN-173 010による腸管のコロニー形成を改良できることを見出した。本発明の文脈において、中性オリゴサッカリドは、以下で規定されるとおり、ガラクツロン酸オリゴサッカリドとは異なる。
【0018】
本発明の組成物は、好ましくは、異なる構造を備えた二つの非消化性中性オリゴサッカリドを含む。本発明の組成物は、好ましくは、少なくとも二つの異なる非消化性中性オリゴサッカリドを含み、ここで非消化性オリゴサッカリドは、約90%未満のサッカリド単位のホモロジーを有し、好ましくは50%未満、更に好ましくは25%未満、更に好ましくは5%未満である。本発明で使用される「ホモロジー」の用語は、異なる非消化性オリゴサッカリドにおける同一サッカリド単位のパーセンテージと重複する。たとえば、オリゴサッカリド1(OL1)は、fruc-fruc-glu-galの構造を有し、このため、50% fruc、25% galおよび25% gluを含む。オリゴサッカリド2(OL2)は、fruc-fruc-gluの構造を有し、このため、66% fruc、33% gluを含む。よって、異なる非消化性オリゴサッカリドは、75%のホモロジー (50% fruc + 25% glu) を有する。
【0019】
好ましくは、本発明の組成物は、ガラクトオリゴサッカリドに加えて、フルクトオリゴサッカリド (イヌリンを含む)、非消化性デキストリン、キシロオリゴサッカリド、アラビノオリゴサッカリド、アラビノガラクトオリゴサッカリド、グルコオリゴサッカリド (シクロデキストリンおよびゲンチオオリゴサッカリドを含む)、キトオリゴサッカリド、グルコマンノオリゴサッカリド、ガラクトマンノオリゴサッカリド、マンナンオリゴサッカリド、フコオリゴサッカリド、ガラクツロン酸オリゴサッカリド、グルロン酸(guluronic acid)オリゴサッカリド、マンヌロン酸オリゴサッカリド、イズロン酸オリゴサッカリド、リブロン酸(riburonic acid)オリゴサッカリド、グルクロン酸オリゴサッカリドおよびこれらの混合物からなる群より選択される少なくとも一つの非消化性オリゴサッカリドを含み、より好ましくは、本発明の組成物は、ガラクトオリゴサッカリドに加えて、フルクトオリゴサッカリド、ガラクトオリゴサッカリド (トランスガラクトオリゴサッカリドを含む)、フコオリゴサッカリド (硫酸化フコイダンオリゴサッカリドを含む) およびガラクツロン酸オリゴサッカリドおよびこれらの混合物からなる群より選択される少なくとも一つの非消化性オリゴサッカリドを含み、更に好ましくは、本発明の組成物は、ガラクトオリゴサッカリドおよびフルクトオリゴサッカリドおよび/またはイヌリンを含む。
【0020】
好ましくは、本発明の組成物は、シアル酸、3-シアリルラクトース、6-シアリルラクトース、2-フコシルラクトース、3-フコシルラクトースおよび/またはラクトシルシアリルテトラサッカリドを含有する。
【0021】
本発明の組成物は、好ましくは、ガラクトオリゴサッカリドおよびフルクトオリゴサッカリド、より好ましくは2〜7のDPのトランスガラクトオリゴサッカリドおよび2〜100のDPのフルクトオリゴサッカリドを含む。ガラクトオリゴサッカリドおよびフルクトオリゴサッカリドの組み合わせは、DN-114 001および/またはDN-173 010のコロニー形成を改良する。本発明の組成物は、好ましくは、フルクトオリゴサッカリド(たとえばイヌリン)を含む。好ましくは、本発明の組成物において少なくとも50 wt.%の非消化性オリゴサッカリドは、2〜60の重合度を有する。特に好ましい態様において、本発明の組成物は、少なくともガラクトオリゴサッカリドおよびフルクトオリゴサッカリドを含む。ガラクトオリゴサッカリドは、好ましくは、2〜10のDPのサッカリドを含む。フルクトオリゴサッカリドは、好ましくは、2〜100のDPのサッカリドを含み、好ましくは5〜100のDPである。好ましくは、ガラクトオリゴサッカリドは、ヒトのミルクオリゴサッカリドの場合と同様、β結合を含む。好ましくは、本発明の組成物は、中性非消化性オリゴサッカリドを以下の重量比で含有する:
a. (DP 2〜5の非消化性中性オリゴサッカリド) : (DP 6, 7, 8, および/または9の非消化性中性オリゴサッカリド) > 1; および/または
b. (DP 10〜60の非消化性中性オリゴサッカリド) : (DP 6, 7, 8, および/または9の非消化性中性オリゴサッカリド) > 1。
【0022】
好ましくは、両方の重量比は、2より大きく、更に好ましくは5より大きい。
【0023】
好ましい態様において、本発明の組成物は、ガラクツロン酸オリゴサッカリドを含む。本発明のガラクツロン酸オリゴサッカリドは、腸上皮細胞への病原体微生物の付着を有利に低減し、これにより、(院内)病原体細菌のコロニー形成を低減し、および/または大腸においてバリアの完全性を改良する。更に、本発明のガラクツロン酸オリゴサッカリドは、健康な腸内フローラの形成を刺激し、発酵され、その結果、腸の有機酸の産生および腸内pHの低下につながり、これにより、病原体細菌の増殖を阻害する。したがって、ガラクツロン酸オリゴサッカリドの同時投与は、未発達のバリア機能および/または未発達の腸内細菌フローラのため、感染からの防御を更に改良する。好ましくは、本発明の組成物は、好ましくは2〜250のDPのペクチン分解産物を含む。
【0024】
本発明で使用されるガラクツロン酸オリゴサッカリドの用語は、好ましくは、オリゴサッカリドに存在するモノサッカリド単位の少なくとも50%がガラクツロン酸であるオリゴサッカリドを指す。本発明の組成物は、好ましくは、2〜250のDPのガラクツロン酸オリゴサッカリドを含み、好ましくは2〜50のDP、より好ましくは2〜20のDPである。本発明の組成物は、好ましくは、SEC/GPSにより測定される曲線のピークでDP 2〜DP 500、好ましくはDP 2〜DP 200の質量のガラクツロン酸オリゴサッカリドを含む。
【0025】
本発明で使用されるガラクツロン酸オリゴサッカリドは、好ましくは、ペクチン、ペクチン酸塩(pectate)、および/またはポリガラクツロン酸から調製される。本発明で使用されるガラクツロン酸オリゴサッカリドは、好ましくは、ヒトの栄養のために使用される果菜およびハーブ植物から調製される。ガラクツロン酸オリゴサッカリドは、好ましくはペクチンに由来する。好ましくは、ペクチンオリゴサッカリドは、果実のペクチンおよび/または野菜のペクチンの加水分解および/またはβ脱離により調製され、より好ましくは、リンゴ、柑橘類およびテンサイペクチンであり、より好ましくは、リンゴ、柑橘類および/またはテンサイペクチンは、少なくともリアーゼにより処理されている。好ましくは、ペクチン溶解物および/またはガラクツロン酸オリゴサッカリドは、細菌の産生から調製される。
【0026】
好ましい態様において、ガラクツロン酸オリゴサッカリドの末端のヘキスロン酸単位の少なくとも一つは、二重結合を有し、これは、好ましくは、末端のヘキスロン酸単位のC位とC位の間に位置する。この二重結合は、病原体細菌が腸上皮細胞に付着することに対して効果的に防御する。これは、帝王切開によりデリバーされる乳幼児にとって有利である。ガラクツロン酸オリゴサッカリドの末端のヘキスロン酸単位の好ましくは少なくとも5%、より好ましくは少なくとも10%、更に好ましくは少なくとも25%は、不飽和のヘキスロン酸単位である。個々のガラクツロン酸オリゴサッカリドは、好ましくは、たった一つの不飽和の末端のヘキスロン酸単位を含むため、末端のヘキスロン酸単位の好ましくは50%未満が、不飽和のヘキスロン酸単位であり、すなわち二重結合を含む。
【0027】
本発明の組成物は、好ましくは、組成物の100 g乾燥重量あたり2〜250のDPのガラクツロン酸オリゴサッカリドを0.01〜10 g含み、より好ましくは0.05〜6 g、更に好ましくは0.2〜2 g含む。好ましくは、本発明の組成物は、栄養組成物の100 g乾燥重量あたり2〜25のDPのガラクツロン酸オリゴサッカリドを0.01〜10 g含み、より好ましくは0.05〜6 g、更に好ましくは0.2〜2 g含む。短い(DP 2〜25)鎖のガラクツロン酸オリゴサッカリドは、本発明の組成物に含有させるのに、より効果的で、および/またはより適切である。一つの態様において、本発明の組成物は、ガラクトオリゴサッカリドに加えて、イヌリン、フルクトオリゴサッカリドおよびガラクツロン酸オリゴサッカリドからなる群より選択されるサッカリドを更に含む。一つの態様において、本発明の組成物は、(i) ガラクトオリゴサッカリド、(ii) イヌリンおよび/またはフルクトオリゴサッカリドおよび(iii) ペクチン分解産物を含む。
【0028】
細菌
更なる改良において、本発明の組成物は、複数のプロバイオティック細菌を含有する。多様性の改良により、バリアの完全性が刺激され、および/または健康的なフローラが維持される。加えて、これら細菌は、同時投与されるガラクトオリゴサッカリド(好ましくは追加の中性および/またはガラクツロン酸オリゴサッカリドを含む)から恩恵を受けることにより、生存および腸内フローラを改良する。
【0029】
好ましくは、本発明の組成物は、ラクトバチルス(Lactobacillus)属および/またはビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属の細菌を含む。好ましくは、組成物は、B. longum、B. breve、B. infantis、B. catenulatum、B. pseudocatenulatum、B. adolescentis、B. animalis、B. gallicum、B. lactisおよびB. bifidumからなる群より選択される少なくとも一つのビフィドバクテリウム、より好ましくは、B. breve、B. infantis、B. bifidum、B. catenulatum、B. longumからなる群より選択される少なくとも一つのビフィドバクテリウム、更に好ましくは、B. breveおよびB. longumからなる群より選択される少なくとも一つのビフィドバクテリウム、最も好ましくは、B. breveを更に含む。好ましくは、本発明の組成物は、L. casei、L. reuteri、L paracasei、L. rhamnosus、L. acidophilus、L. johnsonii、L. lactis、L. salivarius、L. crispatus、L. gasseri、L. zeae、L. fermentumおよびL. plantarumからなる群より選択されるラクトバチルスを更に含む。好ましくは、本発明の組成物は、ラクトバチルス・ブルガリクス(Lactobacillus bulgaricus)および/またはストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)を含む。
【0030】
本発明の組成物は、本発明の組成物のg乾燥重量あたり102〜1013コロニー形成単位(cfu)の(乳酸産生)細菌を含み、好ましくは102〜1012cfu、より好ましくは105〜1010 cfu、最も好ましくは104〜5×109cfuである。
【0031】
タンパク質
本発明の組成物は、好ましくはタンパク質を含有する。本発明の組成物で使用されるタンパク質は、好ましくは、非ヒト動物性タンパク質(たとえば乳タンパク質、肉タンパク質および卵タンパク質)、植物性タンパク質(たとえば大豆タンパク質、小麦タンパク質、米タンパク質、ポテトタンパク質およびエンドウ豆タンパク質)、遊離のアミノ酸およびこれらの混合物からなる群より選択される少なくとも一つを含む。牛乳由来の窒素源、とりわけ牛乳タンパク質、たとえばカゼインおよび乳漿タンパク質が特に好ましい。より好ましくは、組成物は、細菌により発酵される。好ましくは、タンパク質成分は、インタクトなタンパク質を含み、より好ましくは、インタクトなウシの乳漿タンパク質および/またはインタクトなウシのカゼインタンパク質を含む。
【0032】
本発明の組成物は、液体形態のとき、好ましくは100 mlあたり0.5〜8 gのタンパク質を含み、好ましくは100 mlあたり1〜8 gのタンパク質、好ましくは100 mlあたり1.5〜6 gの タンパク質、より好ましくは100 mlあたり1.5〜3 gのタンパク質を含む。
【0033】
組成物を乳幼児に投与する場合、組成物は、好ましくは、甘い乳漿および/または酸性乳漿を含有する。
【0034】
長鎖多価不飽和脂肪酸
非消化性オリゴサッカリドとLC-PUFAおよび/またはヌクレオチドとの同時投与は、小腸においてLC-PUFAおよび/またはヌクレオチドの吸収の遅延を引き起こし、これにより大腸においてLC-PUFAおよび/またはヌクレオチドの効果を延長および/または増大させるため、本発明のシンバイオティック組成物の有効性は、本発明の組成物にLC-PUFAおよび/またはヌクレオチドを含めることにより向上させることができる。好ましくは、本発明の組成物は、エイコサペンタエン酸(EPA, 20:5 n3)、ドコサヘキサエン酸(DHA, 22:6 n3)、アラキドン酸(ARA, 20:4 n6) およびドコサペンタエン酸(DPA, 22:5 n3)からなる群より選択される少なくとも一つのLC-PUFAを含む。
【0035】
LC-PUFAは、遊離の脂肪酸、トリグリセリドの形態、ジグリセリドの形態、モノグリセリドの形態、リン脂質の形態、または上述のものの一つの混合物として提供することができ、好ましくはトリグリセリドの形態である。本発明の組成物は、好ましくは、ARAおよびDHAの少なくとも一つをリン脂質の形態で含む。
【0036】
ヌクレオチド
好ましい態様において、本発明の組成物は、ヌクレオチド、および/またはヌクレオシド、プリン塩基、ピリジン塩基、リボースおよびデオキシリボースからなる群より選択されるヌクレオチド前駆体を含む。より好ましくは、組成物は、ヌクレオチドを含む。ヌクレオチドは、好ましくは、一リン酸、二リン酸または三リン酸の形態であり、より好ましくは、ヌクレオチド一リン酸である。ヌクレオチドは、好ましくは、リボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチドであり、より好ましくは、リボヌクレオチドである。ヌクレオチドは、モノマー、ダイマーまたはポリマー(RNAおよびDNAを含む)とすることができる。ヌクレオチドは、好ましくは、遊離の酸または塩の形態として存在し、より好ましくはモノナトリウム塩である。ヌクレオチドを本発明の組成物に含有させると、腸内バリアの完全性および/または成熟が改良される。
【0037】
好ましくは、組成物は、本発明の組成物の100 g乾燥重量あたり、5 mg〜5 g、より好ましくは5〜1000 mg、最も好ましくは10〜500 mgのヌクレオチドを含む。ヌクレオチドは、更に免疫系を刺激し、これによりE.coliなどの高負荷の腸内病原菌に対する防御を向上させる。
【0038】
調合乳(formula)
本発明の組成物は、好ましくは経腸投与され、より好ましくは経口投与される。
【0039】
一つの態様において、本発明の組成物は、乳幼児用調合乳(infant formula)である。本発明の組成物は、好ましくは、様々な成分を混合することにより調製される合成調合乳である。本発明の組成物は、天然に(無処理で)存在する哺乳類のミルクではなく、たとえばヒトの母乳ではない。本発明の組成物は、乳幼児のための完全な栄養として有利に使用することができる。本発明の組成物は、好ましくは、脂質、タンパク質および炭水化物を含み、好ましくは、液体食品として投与される。本発明で使用される「液体食品」の用語は、適切な液体、たとえば水とドライフード混合物を混合するための指示書を添付したドライフード(たとえばパウダー)を含む。
【0040】
本発明の組成物は、好ましくは栄養を提供し、脂質成分、タンパク質成分および炭水化物成分を含む。脂質成分は、好ましくは全カロリーの5〜50%を提供し、タンパク質成分は、好ましくは全カロリーの5〜50%を提供し、炭水化物成分は、好ましくは全カロリーの15〜90%を提供する。本発明の組成物は、好ましくは、乳幼児に栄養を提供するために、たとえば乳幼児用調合乳として使用され、ここで脂質成分は、全カロリーの35〜50%を提供し、タンパク質成分は、全カロリーの7.5〜12.5%を提供し、炭水化物成分は、全カロリーの40〜55%を提供する。タンパク質成分について全カロリーの%を計算するため、タンパク質、ペプチドおよびアミノ酸により提供されるエネルギーのトータルが考慮される必要があり、消化性炭水化物により提供されるエネルギーが考慮される必要がある。
【0041】
更なる態様において、本発明の組成物は、高齢者および/または病人への投与に適している。高齢者は、典型的には、55才以上の年齢の成人である。入院している成人は、本発明の組成物から特に恩恵を受ける。なお、健康な成人も、本発明の製品を有利に使用することができる。健康な成人は、本発明の組成物を摂取することにより感染に対する抵抗性を改良することができる。本発明の組成物は、好ましくは、成人のための栄養組成物として、とりわけ高齢者および入院している成人に好ましく栄養を提供するために使用される場合、脂質成分は、好ましくは全カロリーの20〜50%を提供し、タンパク質成分は、全カロリーの10〜35%を提供し、炭水化物成分は、全カロリーの30〜75%を提供する。
【0042】
本発明の組成物は、好ましくは炭水化物を含む。好ましくは、組成物は、消化性炭水化物を含む。本発明の組成物で使用される消化性炭水化物は、好ましくは、スクロース、ラクトース、グルコース、フルクトース、コーンシロップ固形物、デンプンおよびマルトデキストリン、およびこれらの混合物からなる群より選択され、より好ましくは、ラクトースである。
【0043】
本発明の組成物は、好ましくは脂質を含む。好ましくは、本発明の組成物は、植物性脂質および動物性脂質からなる群より選択される少なくとも一つの脂質と、魚油、動物油、植物油、藻類の油、真菌類の油および細菌類の油からなる群より選択される少なくとも一つの油との組み合わせを含む。
【0044】
便通の不規則(irregularities)
便通の不規則(たとえば、硬い便、不十分な便の量、下痢)の低減は、本発明の組成物の主要な目的である。よって、本発明の組成物は、好ましくは、下痢、便秘および/または鼓脹の予防および/または治療のための方法で使用される。腸の不快感を防ぐために、本発明の成分は、50〜500 mOsm/kgのオスモル濃度(osmolality)を備えた組成物で投与されることが重要である。よって、本発明の組成物は、好ましくは50〜500 mOsm/kg、より好ましくは100〜400 mOsm/kgのオスモル濃度を有する。上記のことを考慮すれば、液体食品は、過度のカロリー密度(caloric density)を有していないが、被検体に食物を与えるのに十分なカロリーを提供することも重要である。よって、液体食品は、好ましくは0.1〜2.5 kcal/mlのカロリー密度、更に好ましくは0.5〜1.5 kcal/mlのカロリー密度、最も好ましくは0.6〜0.8 kcal/mlのカロリー密度を有する。便通の問題を軽減するために、本発明の製品の一日の投与体積は、好ましくは制限される。よって、本発明の組成物は、好ましくは、25〜200 ml/日の体積で投与され、好ましくは75〜150 ml/日である。これは、好ましくは、成人用の栄養組成物に適用する。
【0045】
適用
本発明の組成物は、感染、アレルギーまたは下痢の治療または予防のために特に適している。更に、本発明は、腸内フローラが存在しないか、またはひどく乱れている被検体に特に適している。また、本発明は、帝王切開により産まれた乳幼児に投与するため、好ましくは腸内フローラの発達を刺激するための本発明の組成物の使用を提供する。更なる側面において、本発明は、抗生物質治療を終えた被検体に投与するため、好ましくは腸内フローラを回復するため、好ましくは抗生物質治療後の回復のための本発明の組成物の使用を提供する。本発明の組成物は、とりわけ女性において、消化管の健康を刺激するために特に適している。
【実施例】
【0046】
例1:アセテートの産生
微生物は、ミルクで育った赤ん坊の生の糞便から得た。基質として、a) トランスガラクトオリゴサッカリド(TOS)、b) イヌリンHP、およびc) TOSおよびイヌリンHPの9/1(w/w)の比の混合物の何れかのプレバイオティクスを使用した。3.0 ml体積の糞便懸濁液を、ボトル中で85 mgのプレバイオティクスと一緒にし、完全に混合した。t=0およびt=3でサンプルを採取した。
【0047】
インビトロにおいて、以下のサンプルを用いて発酵を行った:a) 85mg TOS;b) 85 mg イヌリンHP;c) TOS/イヌリンHPの比が9/1 (w/w) の85mg TOS/イヌリンHP。
【0048】
十分なアセテートの産生は、a) TOSで観察された (0.23 mmol/グラム繊維) が、b) イヌリンは、3時間後にアセテートの産生を示さなかった (0 mmol/g 繊維)。単一の成分 a) TOSおよびb) イヌリンHPと比較して、二種類のオリゴサッカリドの混合物 c) TOS/イヌリンHPにおいて、相乗作用的な大量のアセテート形成が観察された (0.4 mmol/グラム繊維)。
【0049】
例2:タンパク質を備えた組成物
− 0.7 g TOS、
− 0.1 g イヌリンHP、
− 1.6 g 乳漿タンパク質、
− 7 g ラクトース、
− 1.5 g 脂肪、
− ビタミンおよびミネラル
− 106 cfu DN-114 001および105 cfu DN-173 010
を100 mlあたり含む液体組成物。
【0050】
例3:タンパク質を備えた組成物
− ヨーグルト、
− スキムミルク、
− TOSおよびオリゴフルクトース、
− デキストロース、
− ペクチン、
− 加工タピオカデンプン、
− 香味料、
− アスパルテーム、
− アセスルファームK、および
− DN-114 001
を含む、タンパク質を備えた組成物。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)感染の治療および/または予防、および/または(ii)免疫系の刺激のための、
a.DN-114 001 (CNCM I-1518) と同定される細菌株および/またはDN-173 010 (CNCM I-2494) と同定される細菌株;および
b.100 g乾燥重量あたり0.1〜95 gのガラクトオリゴサッカリド
を含み、50〜500 mOsm/kgのオスモル濃度を有する、タンパク質含有組成物の使用。
【請求項2】
前記組成物が、乳幼児または高齢者の治療のためのものである、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記組成物が、100 mlあたり0.5〜8 gのタンパク質を含有し、0.5〜1.5 kcal/mlのカロリー密度を有する、請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
前記組成物が、フルクトオリゴサッカリドを含む、請求項1〜3の何れか1項に記載の使用。
【請求項5】
a.DN-114 001 (CNCM I-1518) 菌株および/またはDN-173 010 (CNCM I-2494) 菌株;および
b.ガラクトオリゴサッカリド
を含む、タンパク質含有組成物。
【請求項6】
イヌリン、フルクトオリゴサッカリドおよびガラクツロン酸オリゴサッカリドからなる群より選択されるサッカリドを更に含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
イヌリンおよびペクチン分解産物を更に含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項8】
乳幼児に栄養を提供するための請求項5〜7の何れか1項に記載の組成物であって、前記組成物が、脂質成分、タンパク質成分および炭水化物成分を含み、脂質成分が、全カロリーの35〜50%を提供し、タンパク質成分が、全カロリーの7.5〜12.5%を提供し、炭水化物成分が、全カロリーの40〜55%を提供する、組成物。
【請求項9】
高齢者または入院している成人に栄養を提供するための請求項5〜7の何れか1項に記載の組成物であって、前記組成物が、脂質成分、タンパク質成分および炭水化物成分を含み、脂質成分が、好ましくは全カロリーの20〜50%を提供し、タンパク質成分が、全カロリーの10〜35%を提供し、炭水化物成分が、全カロリーの30〜75%を提供する、組成物。
【請求項10】
感染、アレルギーまたは下痢の治療または予防のための、請求項5〜9の何れか1項に記載の組成物の使用。
【請求項11】
帝王切開により産まれた乳幼児のための、請求項5〜9の何れか1項に記載の組成物の使用。
【請求項12】
抗生物質治療後の回復のための、請求項5〜9の何れか1項に記載の組成物の使用。

【公表番号】特表2011−503225(P2011−503225A)
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−534478(P2010−534478)
【出願日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際出願番号】PCT/EP2008/065936
【国際公開番号】WO2009/065905
【国際公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【出願人】(505296821)エヌ.ブイ.・ヌートリシア (32)
【Fターム(参考)】