説明

フラットワイヤネット

【課題】省エネ化や、コストダウン、環境保全などを図ることができる洗浄装置や乾燥装置、搬送装置を提供することができるフラットワイヤネットを提供すること。
【解決手段】本発明は、ジグザグに屈曲した複数の金属帯板11を複数のジョイントピン12を挿入することでチェーン状に連結したフラットワイヤネット10であって、金属帯板11の高さは、10mm未満5mm以上であることを特徴とする。フラットワイヤネット10のネット幅が900mm以上3000mm以下である場合、金属帯板11の高さは、10mm未満7mm以上であるとよい。フラットワイヤネット10のネット幅が900mm未満である場合、金属帯板11の高さは、10mm未満5mm以上であるとよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製缶後の金属缶や缶蓋などのワークを搬送し、洗浄又は乾燥処理を行うことが可能なコンベアベルトに用いられるフラットワイヤネットに関する。
【背景技術】
【0002】
製缶後の金属缶や缶蓋などのワークに付着する不純物を除去するために、ワークを洗浄し、乾燥させなければならない。洗浄及び乾燥処理を行うために、ワークを搬送しながら、洗浄装置及び乾燥装置に送り込む必要がある。ワークを搬送させるために、コンベアベルトが用いられる。このようなコンベアベルトとしては、一般的には、金属製のワイヤネットが用いられる。このようなワイヤネットの一例として、フラットワイヤネットと呼ばれるものが存在する。特許文献1、2及び3には、フラットワイヤネットの例が開示されている。
【0003】
特許文献1、2及び3に示されているように、フラットワイヤネットは、ジグザグに屈曲した複数の金属帯板(特許文献1では、リンク1、特許文献2では、牽引ピケット12、特許文献3では、金属帯板21)を複数のジョイントピン(特許文献1では、軸2、特許文献2では、クロスロッド14、特許文献3では、ジョイントピン22)を挿入することでチェーン状に連結することによって構成される。
【0004】
図6は、従来のフラットワイヤネット90の構造を示す図である。図6(a)は、フラットワイヤネット90の平面図である。図6(b)は、フラットワイヤネット90の左側面図である。図6(c)は、屈曲させる前の金属帯板91の穴93近傍の拡大図である。近傍図上の矢印は、進行方向(搬送方向)を示す。
【0005】
フラットワイヤネット90は、複数の金属帯板91と、ジョイントピン92とを備える。金属帯板91には、一定間隔毎に、プレスなどによって、穴93が穿孔されている。穴93の略中心部分で、金属帯板91は、プレスなどによって、屈曲される。このような屈曲が全ての穴93において行われ、穴93の略中心部分でジグザグに屈曲した金属帯板91が提供される。このようにして、複数の金属帯板91が得られる。二つの金属帯板91に、ジョイントピン92が挿入される。これを繰り返すことによって、複数の金属帯板91がチェーン状に連結して、フラットワイヤネット90が得られる。ジョイントピン92の部分で、フラットワイヤネット90は、折り曲げることができる。よって、フラットワイヤネット90をエンドレスに連結して、駆動プーリーに掛けることによって、コンベアベルトを構成することができる。
【0006】
破断強度を確保するといった理由や、業界の慣行といった理由など、種々の理由が考えられるが、従来、フラットワイヤネット90を構成する金属帯板91の高さは、10mmとなっていた(図6(b)及び(c)参照)。10mmの高さで、不具合なく、ワークを搬送して、洗浄装置や乾燥装置に適用することができていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開昭48−67477号公報 第1図
【特許文献2】特開昭63−277113号公報 第1図
【特許文献3】特開平7−10240号公報 図3・図4
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一方、近年、省エネ化や、コストダウン、環境保全などの要求が、このような製缶分野にも要求されてきている。このような要求を実現する方策としては、種々考えられるが、すぐに導入でき、しかも、明らかな効果が得られる手法は、今まで、考えられていなかった。
【0009】
本発明者は、フラットワイヤネットの構造に着目し、フラットワイヤネットの構造を従来のものから変更することによって、省エネ化や、コストダウン、環境保全などを図ることができる洗浄装置や乾燥装置、搬送装置を提供することができた。
【0010】
それゆえ、本発明の目的は、省エネ化や、コストダウン、環境保全などを図ることができる洗浄装置や乾燥装置、搬送装置を提供することができるフラットワイヤネットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明は、以下のような特徴を有する。本発明は、ジグザグに屈曲した複数の金属帯板を複数のジョイントピンを挿入することでチェーン状に連結したフラットワイヤネットであって、金属帯板の高さは、10mm未満5mm以上であることを特徴とする。
【0012】
好ましくは、フラットワイヤネットのネット幅が900mm以上3000mm以下である場合、金属帯板の高さは、10mm未満7mm以上であるとよい。
【0013】
好ましくは、フラットワイヤネットのネット幅が900mm未満である場合、金属帯板の高さは、10mm未満5mm以上であるとよい。
【0014】
好ましくは、ジョイントピンを挿入するために金属帯板に設けられた穴の形状は、穴の略中心部分で屈曲した際に所定の破断強度以上の破断強度を金属帯板が有するように、設計されているとよい。
【0015】
また、本発明は、コンベアベルト用いてワークを搬送しながら、上方から熱風を吹き付けてワークを乾燥させる乾燥装置であって、コンベアベルトの下部に設けられた整流板を備え、コンベアベルトは、上記のフラットワイヤネットをエンドレスに連結してなる。
【0016】
また、本発明は、コンベアベルトを用いてワークを搬送しながら、上方から洗浄液を吹き付けてワークを洗浄する洗浄装置であって、搬送方向に複数の洗浄層を備え、コンベアベルトは、上記のフラットワイヤネットをエンドレスに連結してなる。
【0017】
また、本発明は、コンベアベルトを用いてワークを搬送する搬送装置であって、コンベアベルトは、上記のフラットワイヤネットをエンドレスに連結してなる。
【0018】
また、本発明は、コンベアベルト用いてワークを搬送しながら、上方から熱風を吹き付けてワークを乾燥させる乾燥方法であって、コンベアベルトの下部に、整流板を設け、コンベアベルトとして、エンドレスに連結した上記のフラットワイヤネットを用いる。
【0019】
また、本発明は、コンベアベルトを用いてワークを搬送しながら、上方から洗浄液を吹き付けてワークを洗浄する洗浄方法であって、搬送方向に、複数の洗浄層を設け、コンベアベルトとして、エンドレスに連結した上記のフラットワイヤネットを用いる。
【0020】
また、本発明は、コンベアベルトを用いてワークを搬送する搬送方法であって、コンベアベルトとして、エンドレスに連結した上記のフラットワイヤネットを用いる。
【0021】
上記各発明において、好ましくは、金属帯板の高さは、7mmであるとよい。
【発明の効果】
【0022】
金属帯板の高さを10mm未満5mm以上とすることによって、フラットワイヤネットの表面積を従来よりも小さくすることができる。したがって、フラットワイヤネット自体を、高さを10mmとしていた従来よりも早く加熱することができる。また、フラットワイヤネット自体に取られる熱量が少なくなる。よって、フラットワイヤネットに載置されたワーク自体を、従来よりも早く加熱することができる。ワークを早く加熱できるので、ワークの乾燥に必要な熱量を従来よりも少なくすることができるので、省エネ化が図られる。
【0023】
また、従来と同じ熱量でワークを加熱したとしても、乾燥に要する時間が従来よりも短くて済むので、加熱装置内での搬送路の距離を短くすることができ、単位時間当たりの生産量が増えて、ワークのコストダウンにつながる。また、乾燥に要する時間が従来よりも短くて済むということは、必要な熱量の総量が従来よりも少なくて済むということになるので、結果、省エネ化が図られる。
【0024】
フラットワイヤネットの下に整流板を設ける場合、整流板によって反射された熱風によってもワークが加熱される。金属帯板の高さを10mm未満5mm以上とすることによって、ワークと整流板との間の距離を、高さを10mmにしていたときよりも近くすることができる。よって、反射熱によるワークの加熱が従来よりも効率的に行われることとなる。よって、ワークの加熱が従来よりも早く行われるので、省エネ化、コストダウンにつながる。
【0025】
さらに、金属帯板の高さを10mm未満5mm以上とすることによって、コンベアベルト自体の重量が、従来よりも軽くなる。よって、駆動モータ等への負荷が軽減し、また、フラットワイヤネット自体やベルトレール等への負荷も軽減する。これにより、駆動モータ等の消費電力が削減できたり、構成部品のコストダウンを図ったりすることができる。結果、省エネ化やコストダウンが図られる。
【0026】
金属帯板の高さを10mm未満5mm以上とすることによって、洗浄装置でフラットワイヤネットを用いる場合、フラットワイヤネットの表面積が少なくなった分、隣の洗浄タンクに洗浄液を持ち込む量を減らすことができる。結果、洗浄液のろ過や分離処理の負担が軽減され、コストダウンや環境保全につながる。
【0027】
金属帯板の高さを10mm未満5mm以上とすることによって、フラットワイヤネットに用いる金属材料(たとえば、ステンレス等)の量を、従来よりも減らすことができる。したがって、フラットワイヤネット自体のコストダウンも図られる。フラットワイヤネットは、好ましくは、定期的に交換するとよいが、低コストのフラットワイヤネットが提供されることによって、搬送装置や乾燥装置、洗浄装置のランニングコストも軽減することが可能となる。
【0028】
省エネ化やコストダウンは、結果として、環境保全につながる。
【0029】
フラットワイヤネットが使用される乾燥装置や洗浄装置、搬送装置の規模や要求される耐久性に応じて、金属帯板の高さは、10mm未満5mm以上の範囲内で適宜選択される。しかし、製品販売を展開するに際しては、製造者の手間や、使用者が選択する際の明瞭さなどを考慮して、最大の負荷状態でも耐え得るフラットワイヤネットを提供するのが、好ましい。そのため、金属帯板の高さの下限値を求め、下限値において、製品展開を図りたいと製造者は考える。そこで、本発明者は、フラットワイヤネットのネット幅が900mm以上3000mm以下である場合、金属帯板の高さは、10mm未満7mm以上であるとし、フラットワイヤネットのネット幅が900mm未満である場合、金属帯板の高さは、10mm未満5mm以上であるとした。このようなネット幅での場合分けによって、製品展開が容易となり、使用者が選択しやすいようにする。なお、使用者のニーズに応じて、フラットワイヤネットにかかる負荷は異なるので、たとえば、ネット幅が900mm以上3000mm以下であっても、金属帯板の高さを、10mm未満5mm以上としてもよい場合がある。また、ネット幅が3000mm以上の場合でも、金属帯板の高さを、10mm未満5mm以上としてもよい場合がある。あくまでも、本発明の第一義的特徴は、金属帯板の高さを、従来の10mmよりも低くして、10mm未満5mm以上とした点にある。ネット幅による高さの場合分けは、製品展開する際に、最大限の負荷を考慮して、使用者にフラットワイヤネットを選択しやすくするためのものである。なお、金属帯板の高さを、7mmとすることによって、従来の10mmのフラットワイヤネットとの比較が明確になり、得られる効果も明確に確認できるので、製品展開の際は、高さ7mmとするのが好ましいが、本発明を限定するものではない。
【0030】
本発明のようにジョイントピンを挿入するために金属帯板に設けられた穴の形状を特徴付けることによって、当該穴部分で折り曲げたとしても、金属帯板が破損しにくくなり、負荷に耐えうるフラットワイヤネットの破断強度を提供することができる。
【0031】
以上、本発明では、金属帯板の高さを従来よりも低くすることによって、省エネ化、コストダウン、環境保全が図られ、フラットワイヤネット自体のコストも下げ、かつ、ランニングコストも下げることができ、極めて有益な効果が得られる。
【0032】
なお、従来、フラットワイヤネットの製造業者(以下、ネット製造者)は、フラットワイヤネットのみを製造していた。一方、搬送装置や乾燥装置、洗浄装置は、別な業者(以下、設備製造業者)が製造していた。そのため、ネット製造者には、搬送装置や乾燥装置、洗浄装置の省エネ化等に、フラットワイヤネットが貢献するという発想が生まれることは決してなかった。一方、設備製造業者は、ネット製造者から購入したフラットワイヤネットを利用して、乾燥装置等を構築するため、フラットワイヤネットの高さを変えるだけで、省エネ化等が図られるという発想に決して至ることはなかった。本発明者は、このような盲点をついて、極めて柔軟な発想によって、フラットワイヤネットの高さを変えるという極めてシンプルな方法で、省エネ化等を図ることができることに気付き、本発明を完成させた。
【0033】
本発明のこれら、及び他の目的、特徴、局面、効果は、添付図面と照合して、以下の詳細な説明から一層明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】図1(a)は、フラットワイヤネット10の平面図である。図1(b)は、フラットワイヤネット10の左側面図である。図1(c)は、屈曲させる前の金属帯板11の穴13近傍の拡大図である。図1(d)は、穴13部分を中心とした斜視図である。
【図2】図2は、フラットワイヤネット10を用いたときの乾燥装置20の概略構成を示す図である。
【図3】図3(a)は、従来の高さを10mmとしたフラットワイヤネット、整流板、ワーク、及び熱風との関係を示す図である。図3(b)は、フラットワイヤネット10(コンベアベルト27)、第2の整流板28、ワーク、及び熱風との関係を示す図である。
【図4】図4は、ワークが加熱する早さをフラットワイヤネットの高さを10mmとした場合と7mmとした場合で比較した実験結果を示すグラフである。
【図5】図5は、フラットワイヤネット10を用いたときの洗浄装置40の概略構成を示す図である。
【図6】図6は、従来のフラットワイヤネット90の構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1は、本発明の一実施形態に係るフラットワイヤネット10の構造を示す図である。図1(a)は、フラットワイヤネット10の平面図である。図1(b)は、フラットワイヤネット10の左側面図である。図1(c)は、屈曲させる前の金属帯板11の穴13近傍の拡大図である。図1(d)は、穴13部分を中心とした斜視図である。なお、図1(d)において、構造を分かりやすくするために、手前の穴13部分には、金属帯板11を連結していない。近傍図上の矢印は、進行方向(搬送方向)を示す。
【0036】
フラットワイヤネット10は、複数の金属帯板11と、ジョイントピン12とを備える。金属帯板11には、一定間隔毎に、プレスなどによって、穴13が穿孔されている。穴13の略中心部分で、金属帯板11は、プレスなどによって、屈曲される。このような屈曲が全ての穴13において行われ、穴13の略中心部分でジグザグに屈曲した金属帯板11が提供される。このようにして、複数の金属帯板11が得られる。二つの金属帯板11に、ジョイントピン12が挿入される。ジョイントピン12の端部は、折り曲げられて、抜けないようにしてある。これを繰り返すことによって、複数の金属帯板11がチェーン状に連結して、フラットワイヤネット10が得られる。ジョイントピン12の部分で、フラットワイヤネット10は、折り曲げることができる。よって、フラットワイヤネット10をエンドレスに連結して、駆動プーリーに掛けることによって、コンベアベルトを構成することができる。
【0037】
図1(b)及び(c)に示すように、本実施形態では、金属帯板11の高さを7mmとしている。金属帯板11の高さを7mmとしたフラットワイヤネット10を用いることによって、洗浄装置や乾燥装置、搬送装置において、省エネ化や環境保全を図ることができ、また、製缶のコストダウンを図ることができる。以下、フラットワイヤネット10を洗浄装置や乾燥装置に用いたときの利点を説明する。
【0038】
図2は、フラットワイヤネット10を用いたときの乾燥装置20の概略構成を示す図である。図2において、乾燥装置20は、燃焼ブロア21と、バーナー22と、第1の循環ファン23と、第2の循環ファン24と、複数の第1の整流板25と、ハニカム板26と、コンベアベルト27と、複数の第2の整流板28と、入口吸い込み部29と、中間吸い込み部30と、出口吸い込み部31と、複数の駆動プーリー32と、排気ファン33とを備える。コンベアベルト27は、フラットワイヤネット10をエンドレスに連結することによって、構成される。
【0039】
バーナー22で温められた空気は、燃焼ブロア21からの風圧によって、第1及び第2の循環ファン23,24に送り込まれる。第1及び第2の循環ファン23,24から、熱風が吹き出される。複数の第1の整流板25は、多数の穴が開いた板状部材である。当該多数の穴を熱風が通ることによって、熱風の流れが整い、熱風をワークに対して、均一に吹き付けることができる。ハニカム板26は、ハニカム構造の多数の穴を有する部材であり、複数の第1の整流板25で整流された熱風を、ワークに均一に吹き付ける。このように、上方からの熱風によって、ワークが温められて乾燥する。
【0040】
コンベアベルト27の上に、ワークが載置される。駆動プーリー32が回転することによって、コンベアベルト27が進行方向に動き、ワークを搬送する。このようにして、ワークの搬送装置が構築されている。
【0041】
コンベアベルト27の下部には、複数の第2の整流板28が設けられている。複数の第2の整流板28は、多数の穴が開いた板状部材である。当該多数の穴を熱風が通ることによって、熱風の流れが整い、吸い込み側でも整流される。さらに、複数の第2の整流板25にあたった熱風は、上方に反射される。この反射による熱風によっても、ワークが温められる。
【0042】
入口吸い込み部29及び出口吸い込み部31には、排気ファン33が連通している。中間吸い込み部30には、第1及び第2の循環ファン23,24が連通している。入口吸い込み部29と中間吸い込み部30との間には、仕切りが設けられている。出口吸い込み部31と中間吸い込み部30との間にも、仕切りが設けられている。入口部及び出口部では、乱流が発生して、ワークが転倒する可能性がある。そこで、入口吸い込み部29及び出口吸い込み部31と中間吸い込み部30とを仕切りで区切り、入口吸い込み部29及び出口吸い込み部31での吸い込みバキューム圧を排気ファン33によって、調整して、バキューム圧を強くすることによって、ワークの転倒を防止することができる。中間吸い込み部30で吸い込まれた熱風は、第1及び第2の循環ファン23,24に送り込まれるので、熱風が再利用される。
【0043】
図3(a)は、従来の高さを10mmとしたフラットワイヤネット、整流板、ワーク、及び熱風との関係を示す図である。図3(b)は、フラットワイヤネット10(コンベアベルト27)、第2の整流板28、ワーク、及び熱風との関係を示す図である。コンベアベルトの高さを7mmとすることによって、高さを10mmとした場合と比べて、ワークを早く加熱することができる。以下、その根拠について説明する。
【0044】
まず、コンベアベルト27自体が温まらなければ、ワーク自体も温まらない。高さを7mmとすることによって、コンベアベルト27の表面積が、高さを10mmにした場合と比べて、約30%削減することとなる。したがって、コンベアベルト27が従来よりも早く温まることとなる。また、コンベアベルト27の表面積が削減されれば、コンベアベルト27に取られる熱量が従来よりも少なくなると考えられる。よって、ワーク自体の加熱が、従来よりも早くなる。
【0045】
さらに、ワークは、熱風が直接ワークに上方から当たることによって温められるのに加え、コンベアベルトの下の整流板で熱風が反射されて、反射された熱風がワークに下方から当たることによって温められる。高さを7mmとすれば、第2の整流板28とワークとの距離が約30%削減されることとなる。よって、反射した熱風がワークに当たるまでの時間が短くなると共に、反射した熱風の下がる温度を少なくすることができる。したがって、反射した熱風によるワーク自体の温めが、従来よりも早くなる。
【0046】
図4は、ワークが加熱する早さをフラットワイヤネットの高さを10mmとした場合と7mmとした場合で比較した実験結果を示すグラフである。図4において、横軸は、搬送路の通過時間、縦軸は、ワークの温度を示す。図4に示すように、ワークは、高さ10mmの場合、約80秒弱で200度に達したのに対して、高さ7mmの場合、約60秒で200度に達している。したがって、高さを7mmとした場合、高さを10mmとした場合に比べて、約25%程度早くワークが加熱されることが確認できた。
【0047】
ワークの加熱が早くなると以下のようなメリットが生まれる。乾燥装置内でのワークの搬送路の長さを従来と同様にした場合を考える。従来、たとえば、210度の熱風を吹き付けないと、乾燥しきれなかったとする。一方、本実施形態によって、ワークの加熱が従来よりも早くなると、搬送路の長さが従来と同様であったとしても、210度の熱風を吹き付けなくても、ワークが十分に乾燥することとなる。たとえば、205度の熱風を吹き付けることによって、ワークが十分に乾燥すると期待できる。よって、高さを7mmにするだけで、吹き付ける熱風の温度を下げることができる。すなわち、バーナー22で使用するガスの消費量を減らすことができる。よって、省エネ化、コストダウン、及び環境保全につながることとなる。
【0048】
また、次のようなメリットも生まれる。ワークの加熱が従来よりも早くなると、従来の搬送路よりも短い搬送路を用いて、乾燥装置内でワークを通過させるだけで、ワークが乾燥することとなる。したがって、単位時間当たりのワークの乾燥数量が増加することとなるので、結果、生産量がアップすることとなる。生産量がアップすれば、コストダウンにつながるし、ガスの消費量もトータルでは削減されることとなる。よって、省エネ化、コストダウン、及び環境保全につながることとなる。
【0049】
さらに、高さを7mmとした場合、コンベアベルト27自体の重さが軽くなる。よって、駆動プーリー32を駆動するためのモータへの負荷を軽減することができる。モータへの負荷が軽減されれば、電気代を下げることができたり、低ランクのモータを利用できたりする。よって、省エネ化、コストダウン、及び環境保全につながることとなる。
【0050】
図5は、フラットワイヤネット10を用いたときの洗浄装置40の概略構成を示す図である。図5において、洗浄装置40は、複数の洗浄スプレー41a,41b,41c,41dと、コンベアベルト42と、複数の駆動プーリー43と、複数の洗浄層44a,44b,44c,44dと、複数のタンク45a,45b,45c,45dと、複数の循環ポンプ46a,46b,46c,46dとを備える。コンベアベルト42は、フラットワイヤネット10をエンドレスに連結することによって、構成される。
【0051】
複数の洗浄スプレー41a,41b,41c,41dは、各層に応じた洗浄液を噴出する。複数の洗浄層44a,44b,44c,44dは、図示するように仕切られており、隣の洗浄層の洗浄液が混入するのを防止している。コンベアベルト42に載置されたワークは、各洗浄スプレー41a,41b,41c,41dからの洗浄液によって洗浄されて、搬送される。洗浄後の洗浄液は、各タンク45a,45b,45c,45dに溜められる。
【0052】
各循環ポンプ46a,46b,46c,46dは、各タンク45a,45b,45c,45dに溜められた洗浄液を洗浄スプレーに循環させる。これにより、洗浄液が再利用される。ただし、厳密には、洗浄液を単純に再循環させるわけではない。ワークに付着した洗浄液やコンベアベルト42に付着した洗浄液が、隣の洗浄層に移動したときに、隣の洗浄液によって落とされて、隣のタンク内に混入することとなる。各洗浄層44a,44b,44c,44dは仕切られているが、実際は、隣の洗浄液が隣のタンクに混入する。そのため、循環ポンプは、ろ過や分離処理の後に、洗浄液を循環させることとなる。一部、ろ過や分離処理によって得られた廃棄物は、排水されることとなる。このろ過や分離処理のために、様々な工夫が施されており、また、隣の洗浄水が出来る限り隣のタンクに混入しないように様々な工夫が施されている。このような工夫は、コストアップの要因となる。場合によっては、環境への悪影響も懸念される。
【0053】
そこで、本実施形態のフラットワイヤネット10を用いると、以下のようなメリットが得られる。金属帯板11の高さを7mmとすることによって、フラットワイヤネット10の表面積を約30%削減することができる。したがって、各洗浄層で吹き付けられた洗浄液が、フラットワイヤネット10に付着している量を、単純計算でいけば、約30%削減することができる。よって、隣のタンクに持ち込む洗浄液を、大幅に減らすことができる。結果、コストダウン及び環境保全に貢献する洗浄装置が提供されることとなる。
【0054】
このように、本実施形態によれば、金属帯板11の高さを10mmから7mmに変更することによって、省エネ化、コストダウン、及び環境保全に貢献する、搬送装置、乾燥装置、及び洗浄装置を提供することができる。
【0055】
本実施形態の特徴として、さらに、高さを10mmから7mmに変更しただけではなく、穴13の形状にも工夫が施されている。図6(a)に示されているように、高さを10mmとした場合、ジョイントピン92の直径は、3mmとしていた。そして、穴93の幅を7mmとし、穴93の高さを3.5mm以上4mm以下としていた。高さを7mmに変更した場合、従来の穴93と同じ大きさの穴を穴13に適用した場合、フラットワイヤネット10の破断強度が低下することが分かった。また、従来の穴93と同じ大きさの穴を穴13に適用した場合、金属帯板11の折り曲げ工程において、折り曲げ時に、金属帯板11が破損する危険もある。もちろん、破断強度が低下するが、コンベアベルトの長さ及び幅やワークの重さなどによっては、十分に耐え得るフラットワイヤネット10を提供することができる。しかし、コンベアベルトの長さ及び幅やワークの重さを想定し得る最大限にした場合、不十分な破断強度となる。そのため、穴13にも工夫が必要となる。
【0056】
図6(c)に示されているように、従来の構成では、金属帯板91の高さ(10mm)に対する穴93の高さ(3.5mm以上4mm以下)は、0.35倍以上0.4倍以下であり、かつ、穴93の高さ(3.5mm以上4mm以下)に対する穴93の幅(7mm)は、1.75倍以上2倍以下である。
【0057】
一方、本実施形態では、従来の穴93よりも少し横長の穴13を得ることによって、破断強度の低下を防止している。具体的には、金属帯板11の高さ(7mm)に対する穴13の高さ(3mm以上3.5mm以下)は、0.42倍以上0.5倍以下であり、かつ、穴13の高さ(3mm以上3.5mm以下)に対する穴13の幅(7mm)は、2倍以上2.33倍以下である。この場合、ジョイントピン12の直径を2.5mmにすることによって、穴13へのジョイントピンの挿入を可能とする。このような構成によって、コンベアベルトの長さ及び幅やワークの重さを想定し得る最大限にしたとしても、破断強度を得ることができる。また、金属帯板11の折り曲げ時に、金属帯板11が破損するのを防止できる。なお、金属帯板11の高さが7mm以外となったり、金属帯板11の厚みが変わったりすれば、穴13の形状も変わる可能性がある。したがって、穴13の形状は、穴の略中心部分で屈曲した際に所定の破断強度以上の破断強度を金属帯板11が有するように、設計されているとよい。ここで所定の破断強度は、フラットワイヤネット10に負荷する強度に基づいて、金属帯板11にかかる負荷に基づいて、予め決められる。
【0058】
さて、上記のように金属帯板11の高さを7mmとすることを好ましい実施形態として提案するが、本発明において、高さは7mmに限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱することなく種々に変形することができる。
【0059】
コンベアベルトの横幅(以下、ネット幅という)は、実際の乾燥装置及び洗浄装置の幅に応じて、決定される。ネット幅が900mm以上3000mm以下の場合と、900mm未満の場合とで、金属帯板11の高さを分けることができる。フラットワイヤネット10のネット幅が900mm以上3000mm以下である場合、金属帯板11の高さは、10mm未満7mm以上であるとよい。フラットワイヤネット10のネット幅が900mm未満である場合、金属帯板11の高さは、10mm未満5mm以上であるとよい。以下、その根拠を説明する。
【0060】
ネット幅が900mm以上3000mm以下の場合、最大のネット負荷は以下のようになる。
ネット最大寸法:W×L=3000mm×36000mm
ネット最大重量:約700kg
最大ワーク重量:約1000kg
最大荷重:ネット重量+最大ワーク重量=約1.7Ton
運転張度:約1.7Ton
よって、最大ネット負荷は、1.7Tonとなる。
【0061】
次に、フラットワイヤネット10の張力を計算する。
T1(金属帯板11の穴13部分の張力)
=金属帯板11の断面積×σ
=1.2(7−3.5)×55
=231kg/1ヶ所
なお、ステンレス材の引張強さσを55kg/mm2として計算している。
T2(ジョイントピン12の張力)
=ジョイントピン12の断面積×τ
=π(2.5/2)2×44
≒216kg
なお、ステンレス材のせん弾力τを44kg/mm2として計算している。
【0062】
よって、T1>T2となるので、応力の弱いT2を採用して、フラットワイヤネット10の張力Tを計算する。
T=張力×(1m範囲内の穴13の数)
=216kg×(39+1)/1000
≒8.6Ton/m(幅)
【0063】
したがって、Tに対して、安全率を5倍として、最大の運転強度を計算すると、
8.6Ton/m÷5≒1.7Ton/m
となる。
ネット最大寸法を3000mm×36000mmとした場合の最大ネット負荷は、1.7Tonとなり、ネット高さを7mmとした場合の運転強度Tは、1.7Tonとなるので、1.7Ton=1.7Ton(=T)となり、ネット高さを7mmとしても、最大ネット負荷に耐えることができる。
【0064】
ネット幅が900mm未満の場合、最大ネット負荷は以下のようになる。
ネット最大寸法:W×L=900mm×20000mm
ネット最大重量:約83kg
最大ワーク重量:約1000kg
最大荷重:ネット重量+最大ワーク重量=約1.1Ton
運転張度:約1.1Ton
よって、最大ネット負荷は、1.1Tonとなる。
【0065】
次に、フラットワイヤネット10の張力を計算する。
T1(金属帯板11の穴13部分の張力)
=金属帯板11の断面積×σ
=1.2(5−2.5)×55
=165kg/1ヶ所
なお、ステンレス材の引張強さσを55kg/mm2として計算している。
なお、金属帯板11の高さが5mmとしているので、ジョイントピン12の径(2mm)が小さくなるので、穴13の幅を2.5mmとしている。
T2(ジョイントピン12の張力)
=ジョイントピン12の断面積×τ
=π(2/2)2×44
≒138kg
なお、ステンレス材のせん弾力τを44kg/mm2として計算している。
【0066】
よって、T1>T2となるので、応力の弱いT2を採用して、フラットワイヤネット10の張力Tを計算する。
T=張力×(1m範囲内の穴13の数)
=138kg×(39+1)/1000
≒5.5Ton/m(幅)
【0067】
したがって、Tに対して、安全率を5倍として、最大の運転強度を計算すると、
5.5Ton/m÷5≒1.1Ton/m
となる。
ネット最大寸法を900mm×20000mmとした場合の最大ネット負荷は、1.1Tonとなり、ネット高さを5mmとした場合の運転強度Tは、1.1Tonとなるので、1.1Ton=1.1Ton(=T)となり、ネット高さを5mmとしても、最大ネット負荷に耐えることができる。
【0068】
よって、フラットワイヤネット10のネット幅が900mm以上3000mm以下である場合、金属帯板11の高さは、10mm未満7mm以上であるとよく、フラットワイヤネット10のネット幅が900mm未満である場合、金属帯板11の高さは、10mm未満5mm以上であるとよいことが分かる。このような金属帯板11の高さにすることによって、図1に示した実施形態と同様の効果が得られることとなる。
【0069】
なお、図1では、縦横のピッチ幅を25.4mm(A寸法)×25.4mm(B寸法)としたが、これは、あくまでも一例に過ぎず、本発明において、特に限定されない。たとえば、A寸法及びB寸法の組み合わせとして、25.0mm×25.0mm、25.0mm×15.0mm、28.0mm×16.0mm、15.0mm×27.0mm、12.5mm×25.4mm、23.6mm×27.3mm、24.25mm×27.3mmなどがある。ただし、これらの例も一例に過ぎず、本発明において、特に限定されない。
【0070】
なお、本実施形態では、ワークを金属缶や缶蓋としたが、搬送、洗浄又は乾燥対象のワークは、金属缶や缶蓋に限定されるものでなく、搬送、洗浄又は乾燥の対象となりうるあらゆるワークを本発明の対象とする。
【0071】
以上、本発明を詳細に説明してきたが、前述の説明はあらゆる点において本発明の例示にすぎず、その範囲を限定しようとするものではない。本発明の範囲を逸脱することなく種々の改良や変形を行うことができることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、フラットワイヤネットであり、搬送装置や乾燥装置、洗浄装置などに利用され、産業上利用可能である。
【符号の説明】
【0073】
10 フラットワイヤネット
11 金属帯板
12 ジョイントピン
13 穴
20 乾燥装置
21 燃焼ブロア
22 バーナー
23 第1の循環ファン
24 第2の循環ファン
25 第1の整流板
26 ハニカム板
27 コンベアベルト
28 第2の整流板
29 入口吸い込み部
30 中間吸い込み部
31 出口吸い込み部
32 駆動プーリー
33 排気ファン
40 洗浄装置
41a,41b,41c,41d 洗浄スプレー
42 コンベアベルト
43 駆動プーリー
44a,44b,44c,44d 洗浄層
45a,45b,45c,45d タンク
46a,46b,46c,46d 循環ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジグザグに屈曲した複数の金属帯板を複数のジョイントピンを挿入することでチェーン状に連結したフラットワイヤネットであって、前記金属帯板の高さは、10mm未満5mm以上であることを特徴とする、フラットワイヤネット。
【請求項2】
前記フラットワイヤネットのネット幅が900mm以上3000mm以下である場合、前記金属帯板の高さは、10mm未満7mm以上であることを特徴とする、請求項1に記載のフラットワイヤネット。
【請求項3】
前記フラットワイヤネットのネット幅が900mm未満である場合、前記金属帯板の高さは、10mm未満5mm以上であることを特徴とする、請求項1に記載のフラットワイヤネット。
【請求項4】
前記ジョイントピンを挿入するために前記金属帯板に設けられた穴の形状は、前記穴の略中心部分で屈曲した際に所定の破断強度以上の破断強度を前記金属帯板が有するように、設計されていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のフラットワイヤネット。
【請求項5】
コンベアベルト用いてワークを搬送しながら、上方から熱風を吹き付けて前記ワークを乾燥させる乾燥装置であって、
前記コンベアベルトの下部に設けられた整流板を備え、
前記コンベアベルトは、請求項1〜4のいずれかに記載のフラットワイヤネットをエンドレスに連結してなることを特徴とする、乾燥装置。
【請求項6】
コンベアベルトを用いてワークを搬送しながら、上方から洗浄液を吹き付けて前記ワークを洗浄する洗浄装置であって、
搬送方向に複数の洗浄層を備え、
前記コンベアベルトは、請求項1〜4のいずれかに記載のフラットワイヤネットをエンドレスに連結してなることを特徴とする、洗浄装置。
【請求項7】
コンベアベルトを用いてワークを搬送する搬送装置であって、
前記コンベアベルトは、請求項1〜4のいずれかに記載のフラットワイヤネットをエンドレスに連結してなることを特徴とする、搬送装置。
【請求項8】
コンベアベルト用いてワークを搬送しながら、上方から熱風を吹き付けて前記ワークを乾燥させる乾燥方法であって、
前記コンベアベルトの下部に、整流板を設け、
前記コンベアベルトとして、エンドレスに連結した請求項1〜4のいずれかに記載のフラットワイヤネットを用いることを特徴とする、乾燥方法。
【請求項9】
コンベアベルトを用いてワークを搬送しながら、上方から洗浄液を吹き付けて前記ワークを洗浄する洗浄方法であって、
搬送方向に、複数の洗浄層を設け、
前記コンベアベルトとして、エンドレスに連結した請求項1〜4のいずれかに記載のフラットワイヤネットを用いることを特徴とする、洗浄方法。
【請求項10】
コンベアベルトを用いてワークを搬送する搬送方法であって、前記コンベアベルトとして、エンドレスに連結した請求項1〜4のいずれかに記載のフラットワイヤネットを用いることを特徴とする、搬送方法。
【請求項11】
前記金属帯板の高さは、7mmであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のフラットワイヤネット、請求項5に記載の乾燥装置、請求項6に記載の洗浄装置、請求項7に記載の搬送装置、請求項8に記載の乾燥方法、請求項9に記載の洗浄方法、又は、請求項10に記載の搬送方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−188217(P2012−188217A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−52776(P2011−52776)
【出願日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(593137783)フジワイヤーネット株式会社 (1)
【Fターム(参考)】