説明

メタルラバー複合ガスケット

【課題】一方の相手部材にガスケット装着用の溝を形成する必要がなく、しかも相手部材に対する追随性を向上させてシール性に優れたガスケットを提供する。
【解決手段】開口部111aが設けられた金属板に前記開口部111aを取り囲むように延びるエンボス状のビード112を屈曲形成したガスケット基板11と、ビード112によるガスケット基板11の厚さ方向両面の相対的な凹部112a,112bにそれぞれゴム状弾性材料で前記凹部112a,112bの深さよりも高く突出形成され相手部材に密接可能なシールリップ12,13からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関のシリンダヘッドとシリンダブロックの間や、吸排気マニホールドの継手部など、互いに結合される部材の対向面間に介装されてシールを行うメタルラバー複合ガスケットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば図6に示すように、例えば内燃機関のシリンダヘッドとシリンダブロックの間など、互いに結合される部材101,102の対向面間に介装されるガスケットとして、下記の特許文献1に開示されているようなラバーガスケット(ゴムで成形されたガスケット)103がある。しかし、このようなラバーガスケット103を用いる場合は、一方の部材(ここでは部材101)にガスケット装着用の溝101aを形成するといった特殊な加工を要求する必要がある。
【0003】
一方、図7に示すように、金属板をエンボス加工することによってビード104aを形成し、このビード104aによる凹部にゴム104bを充填したメタルガスケット104が知られており、その典型的な例が、例えば下記の特許文献2〜3に開示されている。しかし、このようなメタルガスケット104は、部材101又は部材102にガスケット装着用の溝を形成する必要がないといった利点がある反面、密接相手である部材101,102に対する追随性が低いといった問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−329139号公報
【特許文献2】特開2001−173791号公報
【特許文献3】特開2005−290359号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上のような点に鑑みてなされたものであって、その技術的課題は、一方の相手部材にガスケット装着用の溝を形成する必要がなく、しかも相手部材に対する追随性を向上させてシール性に優れたガスケットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した技術的課題を有効に解決するための手段として、請求項1の発明に係るメタルラバー複合ガスケットは、開口部が設けられた金属板に前記開口部を取り囲むように延びるエンボス状のビードを屈曲形成したガスケット基板と、前記ビードによる前記ガスケット基板の厚さ方向両面の相対的な凹部にそれぞれゴム状弾性材料で前記凹部の深さよりも高く突出形成され相手部材に密接可能なシールリップからなることを特徴とするものである。
【0007】
また、請求項2の発明に係るメタルラバー複合ガスケットは、請求項1に記載の構成において、ガスケット基板の縁部に、ビードによる相対的な凹部と相手材との間でのシールリップの圧縮量を制限する増厚部が形成されたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の発明に係るメタルラバー複合ガスケットによれば、金属からなるガスケット基板に形成したエンボス状のビードによる相対的な凹部にそれぞれゴム状弾性材料からなるシールリップを設けたものであるため、相手部材にガスケット装着用の溝を形成する必要がなく、しかもゴム状弾性材料からなるシールリップによって相手部材に対する追随性及び密接性が向上して優れたシール性を奏することができる。
【0009】
請求項2の発明に係るメタルラバー複合ガスケットによれば、シールリップの過圧縮によるヘタリを抑制して、優れたシール性を長期間にわたって維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係るメタルラバー複合ガスケットの第一の実施の形態をその厚さ方向一側から見た図である。
【図2】図1におけるA−A線で切断して示す未装着状態の断面図である。
【図3】図1におけるA−A線で切断して示す装着状態の断面図である。
【図4】本発明に係るメタルラバー複合ガスケットの第二の実施の形態をその厚さ方向一側から見た図である。
【図5】図4におけるB−B線で切断して示す未装着状態の断面図である。
【図6】従来のラバーガスケットを示す装着状態の断面図である。
【図7】従来のメタルガスケットを示す装着状態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係るメタルラバー複合ガスケットの好ましい実施の形態について、図面を参照しながら説明する。まず図1は、本発明に係るメタルラバー複合ガスケットの第一の実施の形態をその厚さ方向一側から見た図、図2は、図1におけるA−A線で切断して示す未装着状態の断面図である。
【0012】
すなわち、図1及び図2に示すメタルラバー複合ガスケット1は、金属板を成形したガスケット基板11と、その厚さ方向両面に一体に設けられたゴム状弾性材料(ゴム材料又はゴム状弾性を有する合成樹脂材料)製のシールリップ12,13からなる。
【0013】
詳しくは、ガスケット基板11は、板状本体部111に円形の開口部111aが開設されると共に、この開口部111aを取り囲むように円周状に連続して延びるエンボス状のビード112が屈曲形成されており、ガスケット基板11の内周縁部(開口部111a側の縁部)には板状本体部111が外周側へ断面略U字形に折り返されることによって第一の増厚部113が形成され、ガスケット基板11の外周縁部には、板状本体部111が内周側へ断面略U字形に折り返されることによって前記ビード112を取り囲むように複数の第二の増厚部114が形成されている。また、図1における参照符号111bは、ボルト挿通孔である。なお、第一及び第二の増厚部113,114は、請求項2に記載された「増厚部」に相当するものである。
【0014】
図2に示すように、第一の増厚部113及び第二の増厚部114は、ビード112が突出した側へ板状本体部111を折り返したものであり、ビード112による溝状凹部の両肩とビード112の頂部との間の厚さ方向の寸法Laと、第一の増厚部113及び第二の増厚部114における厚さ方向の寸法Lbは略同等となっている。
【0015】
シールリップ12,13は、上述のようにゴム状弾性材料(ゴム材料又はゴム状弾性を有する合成樹脂材料)で成形されたものであって、その延長方向と直交する断面が山形をなしている。また、このシールリップ12,13は、ガスケット基板11に加硫接着等により一体成形したものであっても良く、あるいは成形後にガスケット基板11に粘着又は接着により一体化したものであっても良い。
【0016】
そしてシールリップ12,13のうち、一方のシールリップ12は、ビード112によるガスケット基板11の相対的な溝状凹部112aの底面に一体的に接着されており、他方のシールリップ13は、前記一方のシールリップ12が接着された面の反対側で、前記ビード112による内周側(開口部111a側)の相対的な段差状凹部112bの底面に一体的に接着されている。また、シールリップ12,13は、その高さhがビード112による溝状凹部112a及び段差状凹部112bの深さよりも高く、したがって、前記凹部112a,112bよりΔhだけ突出している。なお、溝状凹部112a及び段差状凹部112bは、請求項1における「相対的な凹部」に相当するものである。
【0017】
図3は、上述の構成を備える第一の実施の形態のメタルラバー複合ガスケット1を、互いに対向する二部材101,102間に装着した状態を示す断面図で、一方の部材101は例えば内燃機関100のシリンダヘッドであり、他方の部材102は例えば内燃機関100のシリンダブロックであり、いずれもアルミニウム合金の鋳造物等からなり、互いの対向面間にメタルラバー複合ガスケット1を挟んだ状態で、ボルト締結によって互いに結合されている。
【0018】
また、参照符号100aは内燃機関100におけるシリンダボアであり、メタルラバー複合ガスケット1のガスケット基板11に開設された円形の開口部111aは、前記シリンダボア100aに対応するものである。
【0019】
図示の装着状態においては、ガスケット基板11における板状本体部111及びその内周縁の第一の増厚部113と外周縁の第二の増厚部114とビード112の頂部が、部材101,102に当接されると共に、一方のシールリップ12が、一方の部材101に密接することによって、ビード112による相対的な溝状凹部112aの底面との間で図2におけるΔhに相当する高さだけ圧縮され、他方のシールリップ13が、他方の部材102に密接することによって、ビード112による相対的な段差状凹部112bの底面との間で、図2におけるΔhに相当する高さだけ圧縮されている。
【0020】
すなわちこの状態では、ガスケット基板11における第一の増厚部113及び第二の増厚部114が、不図示のボルト等による部材101,102間の締結力を受け、シールリップ12,13の圧縮量をΔhに制限すると共に、ビード112の変形を防止するストッパ機能を奏する。このためシールリップ12,13は過圧縮によるヘタリが抑制され、適度な圧縮による自己シール機能によって、振動などによる部材101,102の変位にも良好に追随して、双方の部材101,102に対する良好な密接状態を維持してシリンダボア100a側からの内圧を確実にシールし、そのシール性を長期間にわたって維持することができる。
【0021】
また、このメタルラバー複合ガスケット1は、金属からなるガスケット基板11のエンボス状のビード112による溝状凹部112a及び段差状凹部112bに、ゴム状弾性材料からなるシールリップ12,13を一体化したものであって、ビード112による相対的な凹部112a,112bがシールリップ12,13を保持しているため、ラバーガスケットを用いる場合のように、部材101,102のうちの一方にガスケット装着用の溝を形成する必要がない。
【0022】
次に図4は、本発明に係るメタルラバー複合ガスケットの第二の実施の形態をその厚さ方向一側から見た図、図5は、図4におけるB−B線で切断して示す未装着状態の断面図である。
【0023】
この第二の実施の形態において、上述した第一の実施の形態と異なるところは、ガスケット基板11に、ビード112のほかに、その内周側に位置して、このビード112とは厚さ方向反対側へ屈曲したビード115がビード112と同心の円周状に形成され、一方のシールリップ12が、ビード112による相対的な溝状凹部112aの底面に一体的に接着され、他方のシールリップ13が、前記一方のシールリップ12が接着された面の反対側で、前記ビード115による相対的な溝状凹部115aの底面に一体的に接着された点にある。なお、溝状凹部115aは、請求項1における「相対的な凹部」に相当するものである。
【0024】
また、ビード115の形成に伴い、ガスケット基板11における板状本体部111の内径部はビード112と面一になっているため、第一の増厚部113は図2に示す第一の実施の形態とは逆側へ折り返されている。
【0025】
その他の部分の構成は第一の実施の形態と基本的に同様であり、第一の実施の形態と同様の効果を実現することができる。
【0026】
なお、本発明は上述した実施の形態に限定されるものではない。例えばガスケット基板11は、その表面がシールリップ12,13から延びるゴム状弾性材料の薄膜で被覆された構成としても良いし、第一の増厚部113及び第二の増厚部114は、板状本体部111を折り返す代わりに、金属製のシム板を接合したものであっても良い。
【符号の説明】
【0027】
1 メタルラバー複合ガスケット
11 ガスケット基板
111 板状本体部
112,115 ビード
112a,115a 溝状凹部(凹部)
112b 段差状凹部(凹部)
113 第一の増厚部(増厚部)
114 第二の増厚部(増厚部)
12,13 シールリップ
101 一方の部材
102 他方の部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部が設けられた金属板に前記開口部を取り囲むように延びるエンボス状のビードを屈曲形成したガスケット基板と、前記ビードによる前記ガスケット基板の厚さ方向両面の相対的な凹部にそれぞれゴム状弾性材料で前記凹部の深さよりも高く突出形成され相手部材に密接可能なシールリップからなることを特徴とするメタルラバー複合ガスケット。
【請求項2】
ガスケット基板の縁部に、ビードによる相対的な凹部と相手材との間でのシールリップの圧縮量を制限する増厚部が形成されたことを特徴とする請求項1に記載のメタルラバー複合ガスケット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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