説明

糸条解舒装置

【課題】糸条部材の繰出位置を簡単かつ確実に補正することができる糸条解舒装置を提供する。
【解決手段】糸条解舒装置1は、回転軸方向に往復移動しながら回転することにより、糸条Lが所定の範囲内で繰り出されるパッケージ11と、パッケージ11から繰り出された糸条Lの搬送経路の近傍に設けられ、糸条Lを数量的に検知する検知部40と、検知部40による糸条Lの検知量が所定の閾値を超えた場合、糸条Lの操出位置が所定の範囲D内となるようにパッケージ11の往復移動を制御する制御部50とを備える。この糸条解舒装置1によれば、糸条Lが所定の範囲を超えたことを一点で検知するのではなく数量的に検知するため、糸条Lの検知量に対する閾値を適宜設定するだけで、糸条Lの操出位置を簡単かつ確実に補正することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糸条部材をパッケージから繰り出す糸条解舒装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に巻糸装置は、糸条部材を繰出ボビンに巻回させてなるパッケージから糸条部材を繰り出して、複数のガイドローラを介して糸条部材を搬送した後、巻取ボビンに糸条部材を巻き取っていく。このような巻糸装置には、パッケージを回転させながら糸条部材を繰り出す糸条解舒装置が設けられており、該糸条解舒装置によって糸条部材が順次繰り出される。
【0003】
上記した糸条解舒装置において、パッケージを回転させて糸条部材を繰り出すとともに、パッケージを回転軸方向に往復移動させて糸条部材の繰り出される位置(繰出位置)を所定範囲内に補正するという技術が従来から知られており、例えば、下記特許文献1に開示されている。
【0004】
この特許文献1では、糸条部材の繰出位置の近傍にセンサが設けられており、該センサによって糸条部材の繰出位置が所定の範囲を超えたか否かが検知される。糸条部材の繰出位置が所定の範囲を超えた場合、パッケージの往復移動を制御して、糸条部材の繰出位置が所定の範囲内となるように補正している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−45538号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の技術では、糸条部材の繰出位置が所定の範囲を超えたか否かという一点を検知したことに基づいて補正しているため、糸条部材の繰出位置とセンサが正確な位置関係で配置されなければならない。このため、装置の設置に際してセンサの位置を完全に調整しなければならず、装置の設置に労力と時間がかかるという問題があった。しかも、装置を設置したあとも、装置の稼働の際の振動などにより糸条部材の繰出位置とセンサの位置とにずれが生じる場合があるが、そのような場合にはセンサの位置を完全に再調整しなければならず、装置の保守にも労力と時間がかかるものであった。
【0007】
また、糸条部材の繰出位置が所定の範囲を超えているか否かの検知について、糸条部材の繰出位置が偶発的に所定の範囲を超えたときのように誤差や無視すべきものである場合であっても、パッケージの往復移動をその都度制御してしまうという問題もあった。
【0008】
さらに、糸条部材の繰出位置が所定の範囲を超えた場合、パッケージの往復移動の加速や減速などをどの程度ですべきかまでは判断するのは難しい。このため、パッケージの往復移動の加速や減速などに過不足が生じて、糸条部材の繰出位置を戻し過ぎたりあるいは戻しきれなかったりするという問題もあった。
【0009】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであって、糸条部材の繰出位置を簡単かつ確実に補正することができる糸条解舒装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の糸条解舒装置は、上記目的を達成するために、回転軸方向に往復移動しながら回転することにより、糸条部材が所定の範囲内で繰り出されるパッケージと、パッケージから繰り出された糸条部材の搬送経路の近傍に設けられ、糸条部材を数量的に検知する検知手段と、検知手段による糸条部材の検知量が所定の閾値を超えた場合、糸条部材の繰出位置が所定の範囲内となるようにパッケージの往復移動を制御する制御手段とを備えることを特徴とする。
【0011】
これによれば、糸条部材が所定の範囲を超えたことを一点で検知するのではなく数量的に検知するため、糸条部材の検知量に対する閾値を適宜設定するだけで、糸条部材の繰出位置を簡単かつ確実に補正することができる。
【0012】
また、検知手段による糸条部材の検知量に対して複数段階の閾値が設定され、制御手段は、糸条部材の検知量が各閾値を超えるごとにパッケージの往復移動を段階的に制御するのが好ましい。これによれば、糸条部材の検知量に応じてパッケージの往復運動を段階的に制御するため、糸条部材の繰出位置を戻し過ぎたりあるいは戻しきれなかったりすることを防止して、糸条部材の繰出位置を速やかに補正することができる。
【0013】
また、制御手段は、パッケージの往復移動における速度を制御するのが好ましい。特に、制御手段は、パッケージが移動する側に設けられた検知手段に糸条部材が検知された場合、パッケージの当該移動における速度を減速する一方、パッケージが移動する側と反対側に設けられた検知手段に糸条部材が検知された場合、パッケージの当該移動における速度を加速するのがよい。これによれば、パッケージの往復移動における速度を制御するだけで、糸条部材の繰出位置を簡単かつ確実に補正することができる。
【0014】
また、検知手段による検知量は、糸条部材を検知している検知時間であるのが好ましい。これによれば、検知手段は糸条部材を検知している時間を計測することだけでよく、検知が簡単である。
【0015】
また、検知手段による検知量は、糸条部材を検知している検知幅であるのが好ましい。これによれば、検知手段は検知している糸条部材の幅を計測することだけでよく、検知が簡単である。
【0016】
また、検知手段による検知量は、糸条部材を検知している検知深さであるのが好ましい。これによれば、検知手段は糸条部材を検知している深さ(位置)を計測することだけでよく、検知が簡単である。
【0017】
また、検知手段は、糸条部材の両側に所定の範囲を空けて設けられるのが好ましい。これによれば、糸条部材の移動方向の両側から検知するため、糸条部材の繰出位置を所定の範囲内に補正し易くなる。
【0018】
また、検知手段は、光を利用して糸条部材を検知する光電センサからなるのが好ましい。これによれば、糸条部材を数量的に検知し易くなり、装置全体の製造コストも低くおさえることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、糸条部材が所定の範囲を超えたことを一点で検知するのではなく数量的に検知するため、糸条部材の検知量に対する閾値を適宜設定するだけで、糸条部材の繰出位置を簡単かつ確実に補正することができる。
【0020】
このため、装置の設置やその後の保守に際して、センサの位置を完全に調整する必要がなくなり、装置の設置や保守の労力や時間を軽減することができる。
【0021】
また、糸条部材の繰出位置が偶発的に所定の範囲を超えたときのように誤差や無視すべきものである場合、その検知量が所定の閾値内であれば誤差や無視すべきものとして判断することができ、無駄にパッケージの往復移動を制御することを防止できる。
【0022】
さらに、糸条部材の検知量に応じてパッケージの往復運動を段階的に制御する場合、糸条部材の繰出位置を戻し過ぎたりあるいは戻しきれなかったりすることを防止して、糸条部材の繰出位置を速やかに補正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】糸条解舒装置を備えた巻糸装置の要部を示す構成概略図である。
【図2】検知部の正面概略図である。
【図3】検知部の平面概略図である。
【図4】糸条解舒装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図5】パッケージの往復移動を状態別に示す側面図である。
【図6】第1の実施形態に係る第1光電センサの糸条の検知状況を示す平面概略図である。
【図7】第1の実施形態に係る第2光電センサの糸条の検知状況を示す平面概略図である。
【図8】第1の実施形態に係る制御部の動作を示す第1のフローチャートである。
【図9】第1の実施形態に係る制御部の動作を示す第2のフローチャートである。
【図10】第1の実施形態に係る制御部の動作を示す第3のフローチャートである。
【図11】第1の実施形態に係る制御部の動作を示す第4のフローチャートである。
【図12】第2の実施形態に係る第1光電センサの糸条の検知状況を示す平面概略図である。
【図13】第2の実施形態に係る第2光電センサの糸条の検知状況を示す平面概略図である。
【図14】第2の実施形態に係る制御部の動作を示す第1のフローチャートである。
【図15】第2の実施形態に係る制御部の動作を示す第2のフローチャートである。
【図16】第2の実施形態に係る制御部の動作を示す第3のフローチャートである。
【図17】第2の実施形態に係る制御部の動作を示す第4のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(第1の実施形態)
次に、本発明に係る糸条解舒装置(以下「本装置1」という)を備えた巻糸装置100の一実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0025】
巻糸装置100は、図1に示すように、パッケージ11から糸条部材(以下「糸条L」という)を繰り出す繰出部10と、パッケージ11を回転の軸方向に往復移動させるトラバース部20と、繰出部10により繰り出された糸条Lを搬送する搬送部30と、パッケージ11から繰り出された糸条Lの搬送経路の近傍に設けられた検知部40と、本装置1全体の動作を制御する制御部50とを備える。ここにおいて、本装置1は、繰出部10、トラバース部20、検知部40、および制御部50により構成される。なお、本実施形態の糸条Lは、扁平な断面形状を有するテープ状の繊維束であり、図1中の矢印で示す方向に繰り出され、搬送される。
【0026】
前記繰出部10は、図1に示すように、糸条Lが巻回されてなるパッケージ11と、パッケージ11を保持するパッケージホルダ12と、パッケージホルダ12を介してパッケージ11を回転させるパッケージ回転軸13と、パッケージ回転軸13を回転させる回転用駆動部14とを備えており、これらの構成によってパッケージ11を回転させて糸条Lを繰り出す。
【0027】
前記パッケージ11は、ボビンに糸条Lをらせん状に巻回されてなり、パッケージホルダ12を挿入させる中空部を有している。
【0028】
前記パッケージホルダ12は、パッケージ11の中空部に挿入されて固定される略円筒部材であり、パッケージ11と固定されることにより一体的に動作することが可能となる。このパッケージホルダ12は、パッケージ回転軸13に固定され、該パッケージ回転軸13の回転に伴ってパッケージ11とともに回転する。また、パッケージホルダ12は、後述のトラバース部20によってパッケージ回転軸13の軸方向(以下「回転軸方向」という)に往復移動するため、パッケージホルダ12と一体化されたパッケージ11もこれに伴って往復移動する。
【0029】
前記パッケージ回転軸13は、水平方向に設けられ、一方端側にパッケージホルダ12を固定させ、他方端側に回転用駆動部14の伝達ベルト142と接続されている。従って、パッケージ回転軸13は、伝達ベルト142を介して伝達された回転用駆動部14の駆動力によって自軸回転することにより、パッケージホルダ12およびパッケージ11を回転させる。
【0030】
前記回転用駆動部14は、パッケージ回転軸13を回転させる駆動力を発生させる回転用駆動モータ141と、回転用駆動モータ141の駆動力をパッケージ回転軸13に伝達する伝達ベルト142とを備えている。この回転用駆動部14の駆動力によってパッケージ回転軸13が回転し、該パッケージ回転軸13の回転に伴ってパッケージホルダ12およびパッケージ11が回転する。これにより、パッケージ11から糸条Lが繰り出される。なお、回転用駆動モータ141は、後述の制御部50によって制御される。
【0031】
前記トラバース部20は、ボールねじ機構のナットとして作用する第1連結部211を有し、パッケージホルダ12を連動させる態様で設けられた連結部材21と、第1連結部211とボールねじ機構を構成するねじ軸部22と、ねじ軸部22を回転させるトラバース用駆動部23とを備えており、これらの構成によって繰出部10のパッケージ11を回転軸方向に速度Vで往復移動させる。
【0032】
前記連結部材21は、ボールねじ機構のねじ軸部22に対するナットとして作用する第1連結部211と、パッケージ回転軸13の近傍に設けられ、回転軸方向に移動可能な円盤状の第2連結部212と、パッケージ11の回転軸方向に平行に設けられ、第1連結部211および第2連結部212を固定させる第3連結部213とを備えており、パッケージ11の回転軸方向に往復移動可能である。
【0033】
連結部材21は、自らが回転軸方向に往復移動することによってパッケージホルダ12が回転軸方向に往復移動する態様で設けられている。ここにおける連結部材21の往復移動は、パッケージ回転軸13の回転とは無関係になされるように構成されている。すなわち、パッケージホルダ12に対して、パッケージ回転軸13および第2連結部212を2軸構造で連結してパッケージ11に水平移動および回転運動させるように構成されている。
【0034】
前記ねじ軸部22は、パッケージ回転軸13と平行に設けられ、自軸回転可能に構成されている。また、このねじ軸部22は、第1連結部211と連結されてボールねじ機構のねじ軸として作用する。ここにおいては、図1に示すように、第1連結部211を貫通し、ねじ軸部22に平行に設けられた棒状のガイドバー24が設けられている。このガイドバー24は、第1連結部211およびねじ軸部22がボールねじ機構として正常に作用するように、ねじ軸部22に対して第1連結部211を回転させることなく第1連結部211を回転軸方向に往復移動可能に支持している。このことより、ねじ軸部22が一方向に自軸回転すると連結材部21が回転軸方向の一方側に移動して、また、ねじ軸部22が他方向に自軸回転すると連結部材21が回転軸方向の他方側に移動する。
【0035】
前記トラバース用駆動部23は、ねじ軸部22を自軸回転させる駆動力を発生させるトラバース用駆動モータ231と、トラバース用駆動モータ231の駆動力をねじ軸部22に伝達する伝達ベルト232とを備えている。このトラバース用駆動部23によるねじ軸部22の回転によって連結部材21が往復移動するため、パッケージホルダ12と一体のパッケージ11が回転軸方向に往復移動可能になる。また、トラバース用駆動部23は、制御部50によって動作が制御され、通常、パッケージ11を速度Vで往復移動させる。
【0036】
パッケージ11の往復移動について具体的に説明すると、巻糸装置100が初期状態にあるなどのように糸条Lが繰り出されていない場合、トラバース用駆動部23は、図5(a)に示すように、トラバース用駆動部23側にパッケージ11を配置させている。また、糸条Lが繰り出される場合、トラバース用駆動部23は、図5(b)に示すように、後述の第2光電センサ43側から第1光電センサ42側に向かう方向(以下「往路方向」という)にパッケージ11を移動させるとともに、図5(c)に示すように、第1光電センサ42から第2光電センサ43に向かう方向(以下「復路方向」という)にパッケージ11を移動させることによってパッケージ11を往復移動させる。
【0037】
前記搬送部30は、繰出部10のパッケージ11から繰り出された糸条Lを搬送するガイドローラ群31と、パッケージ11から糸条Lを繰り出す繰出速度を検出する繰出速度検出部32とを備えている。
【0038】
ガイドローラ群31は、位置が固定された2つのガイドローラ31a、31bを有する。一方、繰出速度検出部32は、一方端が固定端とされ、他方端が自由端とされた棒状のダンサアーム321と、ダンサアーム321の自由端側に設けられたダンサローラ322と、固定端側に設けられたダンサアーム位置検知器323とを備えている。
【0039】
この搬送部30において、パッケージ11から繰り出された糸条Lは、まずガイドローラ31aの上方から下方へ巻架され、ダンサローラ322の下方から上方へ巻架され、ガイドローラ31bの上方から下方に巻架される態様で次工程に搬送される。ここにおいて、糸条Lの繰出速度が正常でない速度で搬送されている場合、ダンサアーム321の自由端側の位置が上下方向に変位する。この変位をダンサアーム位置検知器323が検知して、後述の制御部50にその旨の信号(以下「ダンサアーム位置信号」という)を送信する。なお、このダンサアーム位置信号によって、制御部50は糸条Lの繰出速度が正常となるように回転用駆動モータ141を制御することが可能である。
【0040】
前記検知部40は、パッケージ11から繰り出された糸条Lの搬送経路の近傍に設けられ、糸条Lを検知する。この検知部40は、図2に示すように、平板状の保持プレート41と、糸条Lを検知する第1光電センサ42および第2光電センサ43とを備えている。
【0041】
前記保持プレート41は、図3に示すように、回転軸方向(図3中の矢印の示す方向)の右側が開放されたコの字形状のプレート部材であり、該コの字形状の開放部分44においてパッケージ11から繰り出された糸条Lを通過させる態様で設けられている。また、保持プレート41は回転軸方向に平行な回動軸411を前方側端部(図3においては右側)に備えており、該回動軸411により図2中の矢印で示す方向に回動可能である。このことにより、パッケージ11を取り換える作業が容易になる。
【0042】
前記第1および第2光電センサ42、43は、光を利用して糸条Lを数量的に検知する。第1光電センサ42が糸条Lの左側に配置されるとともに、第2光電センサ43が糸条Lの右側に配置されていることにより、第1および第2光電センサ42、43が所定の範囲を空けて設けられることとなる。従って、パッケージ11から繰り出された糸条Lを両側から検知することが可能になる。なお、以下ではここにいう所定の範囲を「正常繰出範囲D」といい、また、この正常繰出範囲Dと第1および第2光電センサ42、43によって検知される範囲において糸条Lが通過する位置を「糸条の繰出位置」という。
【0043】
ここで、第1光電センサ42に着目すると、第1光電センサ42は、保持プレート41において回動軸411が位置する側とは反対側に設けられた光を発する第1投光部42aと、保持プレート41において回動軸411が位置する側に設けられ、第1投光部42aの発した光を受ける第1受光部42bとを備えている。具体的に、第1投光部42aは、正面方向から見ると厚みを有さず、平面方向から見ると幅を有する帯状の光を発する。また、第1受光部42bは、保持プレート41の開放部分44を跨いできた第1投光部42aの発した該光を受ける。ここにおいて、第1投光部42aおよび第1受光部42bの間に糸条Lが位置することにより第1光電センサ42の発した光が遮られ、第1投光部42aの発した光のうちで第1受光部42bにおいて受けられない光が生じる。このことを利用して、第1光電センサ42は、第1投光部42aおよび第1受光部42bの間に糸条Lの位置している時間がどれだけかを検知することが可能になる。また、第1光電センサ42は、糸条Lを検知している間、糸条Lを検知している旨の信号(以下「検知信号」という)を後述の制御部50に連続的に送信し続ける。
【0044】
また、第2光電センサ43は、保持プレート41において回動軸411が位置する側とは反対側に設けられた光を発する第2投光部43aと、保持プレート41において回動軸411が位置する側に設けられ、第2投光部43aの発した光を受ける第2受光部43bとを備えている。この第2光電センサ43は、第1光電センサ42と基本構成が同一のため、詳細な説明を省略する。
【0045】
ここにおいて、図3に示すように、第2光電センサ43の第2投光部43aと第2受光部43bの間隔よりも、第1光電センサ42の第1投光部42aと第1受光部42bの間隔の方が狭い。また、第1光電センサ42の第1投光部42aと第1受光部42bにおける右端部が第2光電センサ43の第2投光部43aと第2受光部43bが対向している位置にわずかにかかるように配置されている。こうすることにより、正常繰出範囲Dを狭くすることができる。
【0046】
前記制御部50は、図4に示すように、糸条Lの検知量を算出する検知量算出部51と、検知量に対して設定された複数段階の閾値を超えたか否かを判断する検知量判断部52と、各駆動モータの動作を制御するモータ駆動制御部53とを備えている。この制御部50は、搬送部30のダンサアーム位置検知器323、検知部40の第1および第2光電センサ42、43、繰出部10の回転用駆動モータ141およびトラバース部20のトラバース用駆動モータ231と電気的に接続されている。なお、図4中の矢印は各種信号の送受信を示している。
【0047】
制御部50は、通常、ダンサアーム位置検知器323から送信されたダンサアーム位置信号に基づいて、適切な繰出速度で糸条Lを繰り出させるように回転用駆動モータ141の駆動を制御する。
【0048】
前記検知量算出部51は、検知部40の第1および第2光電センサ42、43から送信された検知信号に基づいて糸条Lの検知量を算出する。ここにおいて算出される検知量は、検知部40が糸条Lを検知している時間(以下「検知時間」という)である。検知量算出部51は、第1および第2光電センサ42、43が糸条Lを検知し始めたとき(検知信号を受信し始めたとき)からどれだけの時間が経過したかを図示略のタイマにより計測することによって検知時間を算出する。
【0049】
前記検知量判断部52は、検知量算出部51により算出された検知時間が複数段階に設定された各閾値を超えたか否かを判断する。ここにいう複数段階の各閾値は予め設定されており、本実施形態においては、糸条Lを検知し始めたときから2秒後が「第1検知時間」の閾値に設定され、糸条Lを検知し始めたときから4秒後が「第2検知時間」の閾値に設定されている。従って、検知量判断部52は、検知量算出部51により算出された検知時間が2秒を経過した場合、「第1検知時間を超えた」と判断し、検知量算出部51により算出された検知時間が4秒を経過した場合、「第2検知時間を超えた」と判断する。
【0050】
前記モータ駆動制御部53は、検知量判断部52の判断に基づいて、トラバース部20のトラバース用駆動モータ231を駆動制御する。このことによって、モータ駆動制御部53は、糸条Lの繰出位置が第1および第2光電センサ42、43の間の正常繰出範囲D内となるようにパッケージ11の往復移動の速度を制御する。また、モータ駆動制御部53は、糸条Lの検知時間が各閾値を超えるごとに、トラバース用駆動モータ231の駆動を段階的に制御して、糸条Lの繰出位置が正常繰出範囲D内となるようにパッケージ11の往復移動の速度を段階的に制御する。
【0051】
このモータ駆動制御部53の制御内容を具体的に説明する。以下の説明においては、パッケージ11が往路方向に移動している際に検知部40の第1光電センサ42または第2光電センサ43が糸条Lを検知する場合のモータ駆動制御部53の制御内容について説明する。
【0052】
モータ駆動制御部53は、まず、第1光電センサ42または第2光電センサ43から送信された糸条Lを検知している旨の検知信号が制御部50において受信されると、通常における糸条Lの繰出位置の補正として、トラバース用駆動モータ231を駆動制御して、糸条Lの繰出位置が正常繰出範囲D内となるように、パッケージ11の移動速度を速度Vから速度V0に減速または速度Vから速度V0’に加速させる。なお、速度V0は速度Vよりわずかに遅く、速度V0’は速度Vよりわずかに速い。
【0053】
また、モータ駆動制御部53は、検知量判断部52が第1検知時間(2秒)を超えたと判断した場合、このことに基づいて、第1検知時間(2秒)を超えたことに応じてトラバース用駆動モータ231を駆動制御して、糸条Lの繰出位置が正常繰出範囲D内となるように、パッケージ11の移動速度を速度V0から速度V1に減速または速度V0’から速度V1’に加速させる。なお、速度V1は速度V0より遅く、速度V1’は速度V0’より速い。
【0054】
また、モータ駆動制御部53は、検知量判断部52が第2検知時間(4秒)を超えたと判断した場合、このことに基づいて、第2検知時間(4秒)を超えたことに応じてトラバース用駆動モータ231を駆動制御して、糸条Lの繰出位置が正常繰出範囲D内となるように、パッケージ11の移動速度を速度V1から速度V2に減速または速度V1’から速度V2’に加速させる。なお、速度V2は速度V1より遅く、速度V2’は速度V1’より速い。
【0055】
上記したように、制御部50は、パッケージ11が往路方向に移動している際、検知量算出部51により糸条Lの検知時間を算出し、検知量判断部52により糸条Lの検知時間が複数段階に設定された各閾値を超えたか否かを判断し、モータ駆動制御部53によりトラバース用駆動モータ231を駆動制御することにより、糸条Lの繰出位置が正常繰出範囲D内となるように、第1光電センサ42または第2光電センサ43のいずれが糸条Lを検知しているかということに応じてパッケージ11の移動速度を段階的に減速または加速させる。これにより、パッケージ11から繰り出された糸条Lの繰出位置を簡単かつ確実に補正することができる。
【0056】
また、上記の説明においては、パッケージ11が往路方向に移動している場合について説明したが、逆にパッケージ11が復路方向に移動している場合、制御部50は、検知量算出部51により糸条Lの検知時間を算出し、検知量判断部52により糸条Lの検知時間が複数段階に設定された各閾値を超えたか否かを判断し、モータ駆動制御部53によりトラバース用駆動モータ231を駆動制御することにより、糸条Lの繰出位置が正常繰出範囲D内となるように、第1光電センサ42または第2光電センサ43のいずれが検知しているかということに応じてパッケージ11の移動速度を段階的に加速または減速させる。これにより、回転軸方向の両側において糸条Lの繰出位置を補正することができる。
【0057】
次に、本装置1の動作の例を図6〜図11を参照しつつ説明する。以下においては、(1)パッケージ11が往路方向に移動している際に第1光電センサ42が糸条Lを検知する場合と、(2)パッケージ11が往路方向に移動している際に第2光電センサ43が糸条Lを検知する場合と、(3)パッケージ11が復路方向に移動している際に第1光電センサ42が糸条Lを検知する場合と、(4)パッケージ11が復路方向に移動している際に第2光電センサ43が糸条Lを検知する場合との4つの場合について説明する。
【0058】
なお、以下の説明に用いる図6(a)〜(d)および図7(a)〜(d)においては、第1光電センサ42の第1投光部42aと第1受光部42bの間隔および第2光電センサ43の第2投光部43aと第2受光部43bの間隔は、説明の都合上、同一間隔に図示して説明する。
【0059】
(1)パッケージ11が往路方向に移動している際に第1光電センサ42が糸条Lを検知する場合について図6および図8を参照しつつ説明する。
【0060】
まず、図6(a)に示すように、糸条Lの繰出位置が正常繰出範囲Dに位置している状態でパッケージ11から糸条Lが繰り出されている。この状態から、図6(b)に示すように、糸条Lの繰出位置が正常繰出範囲Dを外れて、糸条Lが検知部40の第1光電センサ42に検知される状態になる。すると、第1光電センサ42が糸条Lを検知して、検知信号を制御部50に送信する。これにより、制御部50は検知信号を受信し始めることとなる(ステップS111。以下「ステップ」省略)。
【0061】
S111において検知信号を受信し始めたことにより、検知量算出部51は検知時間の計測を開始して検知時間を算出する(S112)。
【0062】
また、これとともに、モータ駆動制御部53は、トラバース用駆動モータ231を駆動制御して、糸条Lの繰出位置が正常繰出範囲D内となるように、パッケージ11の移動速度を速度Vから速度V0に減速させる(S113)。
【0063】
S113においてパッケージ11の移動速度を速度Vから速度V0に減速させたにも拘わらず、図6(c)に示すように、検知部40が糸条Lを検知している場合、検知量判断部52は、検知量算出部51により算出された検知時間が第1検知時間(2秒)を超えたか否かを判断する(S114)。
【0064】
検知量判断部52が第1検知時間(2秒)を超えたと判断した場合(S114においてYES)、該判断に基づいて、モータ駆動制御部53は、第1検知時間(2秒)を超えたことに応じてトラバース用駆動モータ231を駆動制御して、糸条Lの繰出位置が正常繰出範囲D内となるように、パッケージ11の移動速度を速度V0から速度V1に減速させる(S115)。一方、検知量判断部52が第1検知時間(2秒)を超えていないと判断した場合(S114においてNO)、糸条Lの繰出位置が正常繰出範囲D内に補正されたものとして制御を終了する。
【0065】
S115においてパッケージ11の移動速度を速度V0から速度V1に減速させたにも拘わらず、図6(d)に示すように、検知部40が糸条Lを検知している場合、検知量判断部52は、検知量算出部51により算出された検知時間が第2検知時間(4秒)を超えたか否かを判断する(S116)。
【0066】
検知量判断部52が第2検知時間(4秒)を超えたと判断した場合(S116においてYES)、該判断に基づいて、モータ駆動制御部53は、第2検知時間(4秒)を超えたことに応じてトラバース用駆動モータ231を駆動制御して、糸条Lの繰出位置が正常繰出範囲D内となるように、パッケージ11の移動速度を速度V1から速度V2に減速させる(S117)。一方、検知量判断部52が第2検知時間(4秒)を超えていないと判断した場合(S116においてNO)、糸条Lの繰出位置が正常繰出範囲D内に補正されたものとして制御を終了する。
【0067】
(2)パッケージ11が往路方向に移動している際に第2光電センサ43が糸条Lを検知する場合について図7および図9を参照しつつ説明する。
【0068】
まず、図7(a)に示すように、糸条Lの繰出位置が正常繰出範囲Dに位置している状態でパッケージ11から糸条Lが繰り出されている。この状態から、図7(b)に示すように、糸条Lの繰出位置が正常繰出範囲Dを外れて、糸条Lが検知部40の第2光電センサ43に検知される状態になる。すると、第2光電センサ43が糸条Lを検知して、検知信号を制御部50に送信する。これにより、制御部50は検知信号を受信し始めることとなる(S121)。
【0069】
S121において検知信号を受信し始めたことにより、検知量算出部51は検知時間の計測を開始して検知時間を算出する(S122)。
【0070】
また、これとともに、モータ駆動制御部53は、トラバース用駆動モータ231を駆動制御して、糸条Lの繰出位置が正常繰出範囲D内となるように、パッケージ11の移動速度を速度Vから速度V0’に加速させる(S123)。
【0071】
S123においてパッケージ11の移動速度を速度Vから速度V0’に加速させたにも拘わらず、図7(c)に示すように、検知部40が糸条Lを検知している場合、検知量判断部52は、検知量算出部51により算出された検知時間が第1検知時間(2秒)を超えたか否かを判断する(S124)。
【0072】
検知量判断部52が第1検知時間(2秒)を超えたと判断した場合(S124においてYES)、該判断に基づいて、モータ駆動制御部53は、第1検知時間(2秒)を超えたことに応じてトラバース用駆動モータ231を駆動制御して、糸条Lの繰出位置が正常繰出範囲D内となるように、パッケージ11の移動速度を速度V0’から速度V1’に加速させる(S125)。一方、検知量判断部52が第1検知時間(2秒)を超えていないと判断した場合(S124においてNO)、糸条Lの繰出位置が正常繰出範囲D内に補正されたものとして制御を終了する。
【0073】
S125においてパッケージ11の移動速度を速度V0’から速度V1’に加速させたにも拘わらず、図7(d)に示すように、検知部40が糸条Lを検知している場合、検知量判断部52は、検知量算出部51により算出された検知時間が第2検知時間(4秒)を超えたか否かを判断する(S126)。
【0074】
検知量判断部52が第2検知時間(4秒)を超えたと判断した場合(S126においてYES)、該判断に基づいて、モータ駆動制御部53は、第2検知時間(4秒)を超えたことに応じてトラバース用駆動モータ231を駆動制御して、糸条Lの繰出位置が正常繰出範囲D内となるように、パッケージ11の移動速度を速度V1’から速度V2’に加速させる(S127)。一方、検知量判断部52が第2検知時間(4秒)を超えていないと判断した場合(S126においてNO)、糸条Lの繰出位置が正常繰出範囲D内に補正されたものとして制御を終了する。
【0075】
(3)パッケージ11が復路方向に移動している際に第1光電センサ42が糸条Lを検知する場合について図6および図10を参照しつつ説明する。
【0076】
まず、図6(a)に示すように、糸条Lの繰出位置が正常繰出範囲Dに位置している状態でパッケージ11から糸条Lが繰り出されている。この状態から、図6(b)に示すように、糸条Lの繰出位置が正常繰出範囲Dを外れて、糸条Lが検知部40の第1光電センサ42に検知される状態になる。すると、第1光電センサ42が糸条Lを検知して、検知信号を制御部50に送信する。これにより、制御部50は検知信号を受信し始めることとなる(S131)。
【0077】
S131において検知信号を受信し始めたことにより、検知量算出部51は検知時間の計測を開始して検知時間を算出する(S132)。
【0078】
また、これとともに、モータ駆動制御部53は、トラバース用駆動モータ231を駆動制御して、糸条Lの繰出位置が正常繰出範囲D内となるように、パッケージ11の移動速度を速度Vから速度V0’に加速させる(S133)。
【0079】
S133においてパッケージ11の移動速度を速度Vから速度V0’に加速させたにも拘わらず、図6(c)に示すように、検知部40が糸条Lを検知している場合、検知量判断部52は、検知量算出部51により算出された検知時間が第1検知時間(2秒)を超えたか否かを判断する(S134)。
【0080】
検知量判断部52が第1検知時間(2秒)を超えたと判断した場合(S134においてYES)、該判断に基づいて、モータ駆動制御部53は、第1検知時間(2秒)を超えたことに応じてトラバース用駆動モータ231を駆動制御して、糸条Lの繰出位置が正常繰出範囲D内となるように、パッケージ11の移動速度を速度V0’から速度V1’に加速させる(S135)。一方、検知量判断部52が第1検知時間(2秒)を超えていないと判断した場合(S134においてNO)、糸条Lの繰出位置が正常繰出範囲D内に補正されたものとして制御を終了する。
【0081】
S135においてパッケージ11の移動速度を速度V0’から速度V1’に加速させたにも拘わらず、図6(d)に示すように、検知部40が糸条Lを検知している場合、検知量判断部52は、検知量算出部51により算出された検知時間が第2検知時間(4秒)を超えたか否かを判断する(S136)。
【0082】
検知量判断部52が第2検知時間(4秒)を超えたと判断した場合(S136においてYES)、該判断に基づいて、モータ駆動制御部53は、第2検知時間(4秒)を超えたことに応じてトラバース用駆動モータ231を駆動制御して、糸条Lの繰出位置が正常繰出範囲D内となるように、パッケージ11の移動速度を速度V1’から速度V2’に加速させる(S137)。一方、検知量判断部52が第2検知時間(4秒)を超えていないと判断した場合(S136においてNO)、糸条Lの繰出位置が正常繰出範囲D内に補正されたものとして制御を終了する。
【0083】
(4)パッケージ11が復路方向に移動している際に第2光電センサ43が糸条Lを検知する場合について図7および図11を参照しつつ説明する。
【0084】
まず、図7(a)に示すように、糸条Lの繰出位置が正常繰出範囲Dに位置している状態でパッケージ11から糸条Lが繰り出されている。この状態から、図7(b)に示すように、糸条Lの繰出位置が正常繰出範囲Dを外れて、糸条Lが検知部40の第2光電センサ43に検知される状態になる。すると、第2光電センサ43が糸条Lを検知して、検知信号を制御部50に送信する。これにより、制御部50は検知信号を受信し始めることとなる(S141)。
【0085】
S141において検知信号を受信し始めたことにより、検知量算出部51は検知時間の計測を開始して検知時間を算出する(S142)。
【0086】
また、これとともに、モータ駆動制御部53は、トラバース用駆動モータ231を駆動制御して、糸条Lの繰出位置が正常繰出範囲D内となるように、パッケージ11の移動速度を速度Vから速度V0に減速させる(S143)。
【0087】
S143においてパッケージ11の移動速度を速度Vから速度V0に減速させたにも拘わらず、図7(c)に示すように、検知部40が糸条Lを検知している場合、検知量判断部52は、検知量算出部51により算出された検知時間が第1検知時間(2秒)を超えたか否かを判断する(S144)。
【0088】
検知量判断部52が第1検知時間(2秒)を超えたと判断した場合(S144においてYES)、該判断に基づいて、モータ駆動制御部53は、第1検知時間(2秒)を超えたことに応じてトラバース用駆動モータ231を駆動制御して、糸条Lの繰出位置が正常繰出範囲D内となるように、パッケージ11の移動速度を速度V0から速度V1に減速させる(S145)。一方、検知量判断部52が第1検知時間(2秒)を超えていないと判断した場合(S144においてNO)、糸条Lの繰出位置が正常繰出範囲D内に補正されたものとして制御を終了する。
【0089】
S145においてパッケージ11の移動速度を速度V0から速度V1に減速させたにも拘わらず、図7(d)に示すように、検知部40が糸条Lを検知している場合、検知量判断部52は、検知量算出部51により算出された検知時間が第2検知時間(4秒)を超えたか否かを判断する(S146)。
【0090】
検知量判断部52が第2検知時間(4秒)を超えたと判断した場合(S146においてYES)、該判断に基づいて、モータ駆動制御部53は、第2検知時間(4秒)を超えたことに応じてトラバース用駆動モータ231を駆動制御して、糸条Lの繰出位置が正常繰出範囲D内となるように、パッケージ11の移動速度を速度V1から速度V2に減速させる(S147)。一方、検知量判断部52が第2検知時間(4秒)を超えていないと判断した場合(S146においてNO)、糸条Lの繰出位置が正常繰出範囲D内に補正されたものとして制御を終了する。
【0091】
以上により、糸条Lの繰出位置が正常繰出範囲Dを外れたことを検知部40が数量的に検知するようにしたため、糸条Lの検知時間に対する複数段階の閾値を設定して、検知時間が各閾値を超えた場合、糸条Lの繰出位置が正常繰出範囲D内となるように、パッケージ11がいずれの方向に移動しているかということおよび第1光電センサ42または第2光電センサ43のいずれが糸条Lを検知したかということに応じて、パッケージ11の移動速度を段階的に加速または減速させることにより、糸条Lの繰出位置を簡単かつ確実に補正することができる。
【0092】
(第2の実施形態)
次に、本発明に係る糸条解舒装置(以下「本装置」という)の他の実施形態について図12〜図17を参照しつつ説明する。本実施形態においては、検知量算出部51の算出する検知量が、糸条Lを検知している「検知幅」であり、該検知幅に基づいてパッケージ11の往復移動の速度を制御する場合について説明する。以下においては、本実施形態と第1の実施形態とにおける相違点について説明し、同様の構成については同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0093】
本実施形態の検知部40の第1および第2光電センサ42、43においては、各投光部42a、43aおよび各受光部42b、43bの間に糸条Lが位置すると、糸条Lの有する幅によって光が遮られ、第1投光部42aまたは第2投光部43aが発した光のうちで第1受光部42bまたは第2受光部43bにおいて受けられない光が生じる。このことを利用して、第1および第2光電センサ42、43は、各投光部42a、43aおよび各受光部42b、43bの間において遮光する糸条Lの幅がどれだけかを検知することが可能となる。また、第1および第2光電センサ42、43は、糸条Lを検知している間、糸条Lを検知している旨の信号(検知信号)を後述の制御部50に連続的に送信し続ける。
【0094】
前記検知量算出部51は、検知部40の第1および第2光電センサ42、43から送信された検知信号に基づいて糸条Lの検知量を算出する。ここにおいて算出される検知量は「検知幅」であり、この検知幅とは検知部40の第1および第2光電センサ42、43における光を遮った糸条Lの幅である。従って、検知量算出部51は、第1および第2光電センサ42、43において発せられた帯状の光が糸条Lに幅によってどれだけ遮光されたかの遮光量を計測することにより検知幅を算出する。
【0095】
前記検知量判断部52は、検知量算出部51により算出された検知幅が複数段階で設定された各閾値を超えたか否かを判断する。ここにいう複数段階の各閾値は予め設定されており、本実施形態においては、検知を始めた位置から糸条Lの幅の3分の1にあたる幅が「第1検知幅」の閾値に設定され、検知を始めた位置から糸条Lの幅の3分の2にあたる幅が「第2検知幅」の閾値に設定されている。従って、検知量判断部52は、検知量算出部51により算出された検知幅が糸条Lの幅の3分の1の幅を超えた場合、「第1検知幅を超えた」と判断し、検知量算出部51により算出された検知幅が糸条Lの幅の3分の2の幅を超えた場合、「第2検知幅を超えた」と判断する。
【0096】
前記モータ駆動制御部53は、検知量判断部52の判断に基づいて、トラバース部20のトラバース用駆動モータ231を駆動制御する。このことによって、モータ駆動制御部53は、糸条Lの繰出位置が正常繰出範囲D内となるように、パッケージ11の往復移動の速度を制御する。また、モータ駆動制御部53は、糸条Lの検知幅が各閾値を超えるごとに、トラバース用駆動モータ231の駆動を段階的に制御して、糸条Lの繰出位置が正常繰出範囲D内となるようにパッケージ11の往復移動の速度を段階的に制御する。
【0097】
このモータ駆動制御部53の制御内容を具体的に説明する。以下の説明においては、パッケージ11が往路方向に移動している際に検知部40の第1光電センサ42または第2光電センサ43が糸条Lを検知する場合のモータ駆動制御部53の制御内容について説明する。
【0098】
モータ駆動制御部53は、まず、第1光電センサ42または第2光電センサ43から送信された糸条Lを検知している旨の検知信号が制御部50において受信されると、通常における糸条Lの繰出位置の補正として、トラバース用駆動モータ231を駆動制御して、糸条Lの繰出位置が正常繰出範囲D内となるように、パッケージ11の移動速度を速度Vから速度V0に減速または速度Vから速度V0’に加速させる。
【0099】
また、モータ駆動制御部53は、検知量判断部52が第1検知幅(糸条Lの幅の3分の1)を超えたと判断した場合、このことに基づいて、第1検知幅(糸条Lの幅の3分の1)を超えたことに応じてトラバース用駆動モータ231を駆動制御して、糸条Lの繰出位置が正常繰出範囲D内となるように、パッケージ11の移動速度を速度V0から速度V1に減速または速度V0’から速度V1’に加速させる。
【0100】
また、モータ駆動制御部53は、検知量判断部52が第2検知幅(糸条Lの幅の3分の2)を超えたと判断した場合、このことに基づいて、第2検知幅(糸条Lの幅の3分の2)を超えたことに応じてトラバース用駆動モータ231を駆動制御して、糸条Lの繰出位置が正常繰出範囲D内となるように、パッケージ11の移動速度を速度V1から速度V2に減速または速度V1’から速度V2’に加速させる。
【0101】
上記したように、制御部50は、パッケージ11が往路方向に移動している際、検知量算出部51により糸条Lの検知幅を算出し、検知量判断部52により糸条Lの検知幅が複数段階に設定された各閾値を超えたか否かを判断し、モータ駆動制御部53によりトラバース用駆動モータ231を駆動制御することにより、糸条Lの繰出位置が正常繰出範囲D内となるように、第1光電センサ42または第2光電センサ43のいずれが糸条Lを検知しているかということに応じて、パッケージ11の移動速度を段階的に減速または加速させる。これにより、パッケージ11から繰り出された糸条Lの繰出位置を簡単かつ確実に補正することができる。
【0102】
また、上記の説明においては、パッケージ11が往路方向に移動している場合について説明したが、逆にパッケージ11が復路方向に移動している場合、制御部50は、検知量算出部51により糸条Lの検知幅を算出し、検知量判断部52により糸条Lの検知幅が複数段階に設定された各閾値を超えたか否かを判断し、モータ駆動制御部53によりトラバース用駆動モータ231を駆動制御することにより、糸条Lの繰出位置が正常繰出範囲D内となるように、第1光電センサ42または第2光電センサ43のいずれが検知しているかということに応じてパッケージ11の移動速度を段階的に加速または減速させる。これにより、回転軸方向の両側において糸条Lの繰出位置を補正することができる。
【0103】
次に、本装置1の動作の例を図12〜図17を参照しつつ説明する。以下においては、(1)パッケージ11が往路方向に移動している際に第1光電センサ42が糸条Lを検知する場合と、(2)パッケージ11が往路方向に移動している際に第2光電センサ43が糸条Lを検知する場合と、(3)パッケージ11が復路方向に移動している際に第1光電センサ42が糸条Lを検知する場合と、(4)パッケージ11が復路方向に移動している際に第2光電センサ43が糸条Lを検知する場合との4つの場合について説明する。
【0104】
なお、以下の説明に用いる図12(a)〜(d)および図13(a)〜(d)においては、第1光電センサ42の第1投光部42aと第1受光部42bの間隔および第2光電センサ43の第2投光部43aと第2受光部43bの間隔は、説明の都合上、同一間隔に図示して説明する。
【0105】
(1)パッケージ11が往路方向に移動している際に第1光電センサ42が糸条Lを検知する場合について図12および図14を参照しつつ説明する。
【0106】
まず、図12(a)に示すように、糸条Lの繰出位置が正常繰出範囲Dに位置している状態でパッケージ11から糸条Lが繰り出されている。この状態から、図12(b)に示すように、糸条Lの繰出位置が正常繰出範囲Dを外れて、糸条Lが検知部40の第1光電センサ42に検知される状態になる。すると、第1光電センサ42が糸条Lを検知して、検知信号を制御部50に送信する。これにより、制御部50は検知信号を受信し始めることとなる(S211)。
【0107】
S211において検知信号を受信し始めたことにより、検知量算出部51は検知幅を算出する(S212)。
【0108】
また、これとともに、モータ駆動制御部53は、トラバース用駆動モータ231を駆動制御して、糸条Lの繰出位置が正常繰出範囲D内となるように、パッケージ11の移動速度を速度Vから速度V0に減速させる(S213)。
【0109】
S213においてパッケージ11の移動速度を速度Vから速度V0に減速させたにも拘わらず、図12(c)に示すように、検知部40が糸条Lを検知している場合、検知量判断部52は、検知量算出部51により算出された検知幅が第1検知幅(糸条Lの幅の3分の1)を超えたか否かを判断する(S214)。
【0110】
検知量判断部52が第1検知幅(糸条Lの幅の3分の1)を超えたと判断した場合(S214においてYES)、該判断に基づいて、モータ駆動制御部53は、第1検知幅(糸条Lの幅の3分の1)を超えたことに応じてトラバース用駆動モータ231を駆動制御して、糸条Lの繰出位置が正常繰出範囲D内となるように、パッケージ11の移動速度を速度V0から速度V1に減速させる(S215)。一方、検知量判断部52が第1検知幅(糸条Lの幅の3分の1)を超えていないと判断した場合(S214においてNO)、糸条Lの繰出位置が正常繰出範囲D内に補正されたものとして制御を終了する。
【0111】
S215においてパッケージ11の移動速度を速度V0から速度V1に減速させたにも拘わらず、図12(d)に示すように、検知部40が糸条Lを検知している場合、検知量判断部52は、検知量算出部51により算出された検知幅が第2検知幅(糸条Lの幅の3分の2)を超えたか否かを判断する(S216)。
【0112】
検知量判断部52が第2検知幅(糸条Lの幅の3分の2)を超えたと判断した場合(S216においてYES)、該判断に基づいて、モータ駆動制御部53は、第2検知幅(糸条Lの幅の3分の2)を超えたことに応じてトラバース用駆動モータ231を駆動制御して、糸条Lの繰出位置が正常繰出範囲D内となるように、パッケージ11の移動速度を速度V1から速度V2に減速させる(S217)。一方、検知量判断部52が第2検知幅(糸条Lの幅の3分の2)を超えていないと判断した場合(S216においてNO)、糸条Lの繰出位置が正常繰出範囲D内に補正されたものとして制御を終了する。
【0113】
(2)パッケージ11が往路方向に移動している際に第2光電センサ43が糸条Lを検知する場合について図13および図15を参照しつつ説明する。
【0114】
まず、図13(a)に示すように、糸条Lの繰出位置が正常繰出範囲Dに位置している状態でパッケージ11から糸条Lが繰り出されている。この状態から、図13(b)に示すように、糸条Lの繰出位置が正常繰出範囲Dを外れて、糸条Lが検知部40の第2光電センサ43に検知される状態になる。すると、第2光電センサ43が糸条Lを検知して、検知信号を制御部50に送信する。これにより、制御部50は検知信号を受信し始めることとなる(S221)。
【0115】
S221において検知信号を受信し始めたことにより、検知量算出部51は検知幅を算出する(S222)。
【0116】
また、これとともに、モータ駆動制御部53は、トラバース用駆動モータ231を駆動制御して、糸条Lの繰出位置が正常繰出範囲D内となるように、パッケージ11の移動速度を速度Vから速度V0’に加速させる(S223)。
【0117】
S223においてパッケージ11の移動速度を速度Vから速度V0’に加速させたにも拘わらず、図13(c)に示すように、検知部40が糸条Lを検知している場合、検知量判断部52は、検知量算出部51により算出された検知幅が第1検知幅(糸条Lの幅の3分の1)を超えたか否かを判断する(S224)。
【0118】
検知量判断部52が第1検知幅(糸条Lの幅の3分の1)を超えたと判断した場合(S224においてYES)、該判断に基づいて、モータ駆動制御部53は、第1検知幅(糸条Lの幅の3分の1)を超えたことに応じてトラバース用駆動モータ231を駆動制御して、糸条Lの繰出位置が正常繰出範囲D内となるように、パッケージ11の移動速度を速度V0’から速度V1’に加速させる(S225)。一方、検知量判断部52が第1検知幅(糸条Lの幅の3分の1)を超えていないと判断した場合(S224においてNO)、糸条Lの繰出位置が正常繰出範囲D内に補正されたものとして制御を終了する。
【0119】
S225においてパッケージ11の移動速度を速度V0’から速度V1’に加速させたにも拘わらず、図13(d)に示すように、検知部40が糸条Lを検知している場合、検知量判断部52は、検知量算出部51により算出された検知幅が第2検知幅(糸条Lの幅の3分の2)を超えたか否かを判断する(S226)。
【0120】
検知量判断部52が第2検知幅(糸条Lの幅の3分の2)を超えたと判断した場合(S226においてYES)、該判断に基づいて、モータ駆動制御部53は、第2検知幅(糸条Lの幅の3分の2)を超えたことに応じてトラバース用駆動モータ231を駆動制御して、糸条Lの繰出位置が正常繰出範囲D内となるように、パッケージ11の移動速度を速度V1’から速度V2’に加速させる(S227)。一方、検知量判断部52が第2検知幅(糸条Lの幅の3分の2)を超えていないと判断した場合(S226においてNO)、糸条Lの繰出位置が正常繰出範囲D内に補正されたものとして制御を終了する。
【0121】
(3)パッケージ11が復路方向に移動している際に第1光電センサ42が糸条Lを検知する場合について図12および図16を参照しつつ説明する。
【0122】
まず、図12(a)に示すように、糸条Lの繰出位置が正常繰出範囲Dに位置している状態でパッケージ11から糸条Lが繰り出されている。この状態から、図12(b)に示すように、糸条Lの繰出位置が正常繰出範囲Dを外れて、糸条Lが検知部40の第1光電センサ42に検知される状態になる。すると、第1光電センサ42が糸条Lを検知して、検知信号を制御部50に送信する。これにより、制御部50は検知信号を受信し始めることとなる(S231)。
【0123】
S231において検知信号を受信し始めたことにより、検知量算出部51は検知幅を算出する(S232)。
【0124】
また、これとともに、モータ駆動制御部53は、トラバース用駆動モータ231を駆動制御して、糸条Lの繰出位置が正常繰出範囲D内となるように、パッケージ11の移動速度を速度Vから速度V0’に加速させる(S233)。
【0125】
S233においてパッケージ11の移動速度を速度Vから速度V0’に加速させたにも拘わらず、図12(c)に示すように、検知部40が糸条Lを検知している場合、検知量判断部52は、検知量算出部51により算出された検知幅が第1検知幅(糸条Lの幅の3分の1)を超えたか否かを判断する(S234)。
【0126】
検知量判断部52が第1検知幅(糸条Lの幅の3分の1)を超えたと判断した場合(S234においてYES)、該判断に基づいて、モータ駆動制御部53は、第1検知幅(糸条Lの幅の3分の1)を超えたことに応じてトラバース用駆動モータ231を駆動制御して、糸条Lの繰出位置が正常繰出範囲D内となるように、パッケージ11の移動速度を速度V0’から速度V1’に加速させる(S235)。一方、検知量判断部52が第1検知幅(糸条Lの幅の3分の1)を超えていないと判断した場合(S234においてNO)、糸条Lの繰出位置が正常繰出範囲D内に補正されたものとして制御を終了する。
【0127】
S235においてパッケージ11の移動速度を速度V0’から速度V1’に加速させたにも拘わらず、図12(d)に示すように、検知部40が糸条Lを検知している場合、検知量判断部52は、検知量算出部51により算出された検知幅が第2検知幅(糸条Lの幅の3分の2)を超えたか否かを判断する(S236)。
【0128】
検知量判断部52が第2検知幅(糸条Lの幅の3分の2)を超えたと判断した場合(S236においてYES)、該判断に基づいて、モータ駆動制御部53は、第2検知幅(糸条Lの幅の3分の2)を超えたことに応じてトラバース用駆動モータ231を駆動制御して、糸条Lの繰出位置が正常繰出範囲D内となるように、パッケージ11の移動速度を速度V1’から速度V2’に加速させる(S237)。一方、検知量判断部52が第2検知幅(糸条Lの幅の3分の2)を超えていないと判断した場合(S236においてNO)、糸条Lの繰出位置が正常繰出範囲D内に補正されたものとして制御を終了する。
【0129】
(4)パッケージ11が復路方向に移動している際に第2光電センサ43が糸条Lを検知する場合について図13および図17を参照しつつ説明する。
【0130】
まず、図13(a)に示すように、糸条Lの繰出位置が正常繰出範囲Dに位置している状態でパッケージ11から糸条Lが繰り出されている。この状態から、図13(b)に示すように、糸条Lの繰出位置が正常繰出範囲Dを外れて、糸条Lが検知部40の第2光電センサ43に検知される状態になる。すると、第2光電センサ43が糸条Lを検知して、検知信号を制御部50に送信する。これにより、制御部50は検知信号を受信し始めることとなる(S241)。
【0131】
S241において検知信号を受信し始めたことにより、検知量算出部51は検知幅を算出する(S242)。
【0132】
また、これとともに、モータ駆動制御部53は、トラバース用駆動モータ231を駆動制御して、糸条Lの繰出位置が正常繰出範囲D内となるように、パッケージ11の移動速度を速度Vから速度V0に減速させる(S243)。
【0133】
S243においてパッケージ11の移動速度を速度Vから速度V0に減速させたにも拘わらず、図13(c)に示すように、検知部40が糸条Lを検知している場合、検知量判断部52は、検知量算出部51により算出された検知幅が第1検知幅(糸条Lの幅の3分の1)を超えたか否かを判断する(S244)。
【0134】
検知量判断部52が第1検知幅(糸条Lの幅の3分の1)を超えたと判断した場合(S244においてYES)、該判断に基づいて、モータ駆動制御部53は、第1検知幅(糸条Lの幅の3分の1)を超えたことに応じてトラバース用駆動モータ231を駆動制御して、糸条Lの繰出位置が正常繰出範囲D内となるように、パッケージ11の移動速度を速度V0から速度V1に減速させる(S245)。一方、検知量判断部52が第1検知幅(糸条Lの幅の3分の1)を超えていないと判断した場合(S244においてNO)、糸条Lの繰出位置が正常繰出範囲D内に補正されたものとして制御を終了する。
【0135】
S245においてパッケージ11の移動速度を速度V0から速度V1に減速させたにも拘わらず、図13(d)に示すように、検知部40が糸条Lを検知している場合、検知量判断部52は、検知量算出部51により算出された検知幅が第2検知幅(糸条Lの幅の3分の2)を超えたか否かを判断する(S246)。
【0136】
検知量判断部52が第2検知幅(糸条Lの幅の3分の2)を超えたと判断した場合(S246においてYES)、該判断に基づいて、モータ駆動制御部53は、第2検知幅(糸条Lの幅の3分の2)を超えたことに応じてトラバース用駆動モータ231を駆動制御して、糸条Lの繰出位置が正常繰出範囲D内となるように、パッケージ11の移動速度を速度V1から速度V2に減速させる(S247)。一方、検知量判断部52が第2検知幅(糸条Lの幅の3分の2)を超えていないと判断した場合(S246においてNO)、糸条Lの繰出位置が正常繰出範囲D内に補正されたものとして制御を終了する。
【0137】
以上により、糸条Lの繰出位置が正常繰出範囲Dを外れたことを検知部40が数量的に検知するようにしたため、糸条Lの検知幅に対する複数段階の閾値を設定して、検知幅が各閾値を超えた場合、糸条Lの繰出位置が正常繰出範囲D内となるように、パッケージ11がいずれの方向に移動しているかということおよび第1光電センサ42または第2光電センサ43のいずれが糸条Lを検知したかということに応じて、パッケージ11の移動速度を段階的に加速または減速させることにより、糸条Lの繰出位置を簡単かつ確実に補正することができる。
【0138】
なお、上記した第1の実施形態においては検知量を「検知時間」として、また、第2の実施形態においては検知量を「検知幅」として、糸条Lが正常繰出範囲Dから外れたことを数量的に検知し、該検知時間または該検知幅に基づいてパッケージ11の往復移動を制御する場合について説明したが、検知量を「検知深さ」としてもよい。ここにいう検知深さとは、糸条が第1または第2光電センサ42、43の回転軸方向外側に位置した正常繰出範囲Dからの深さのことである。すなわち、検知部40において、糸条が第1または第2光電センサ42、43の回転軸方向外側にどれだけの深さに位置したかを数量的に検知する。この場合も第1および第2の実施形態と同様、検知量算出部51は検知部40からの検知信号に基づいて該検知深さを算出し、検知量判断部52は検知深さが複数段階で設定された各閾値を超えたか否かを判断し、モータ駆動制御部53は検知量判断部52の判断に基づいてトラバース用駆動モータ231を駆動制御する。従って、第1および第2の実施形態と同様、検知深さが各閾値を超えた場合、糸条の繰出位置が正常繰出範囲D内となるようにパッケージ11の移動速度が段階的に加速または減速されることにより、糸条Lの繰出位置を簡単かつ確実に補正することができる。
【0139】
また、検知部40がパッケージ11から繰り出された糸条Lの搬送経路の近傍に設けられる場合について説明したが、パッケージ11の往復移動によって糸条Lを検知することができれば任意の位置に設けられてもよい。
【0140】
また、制御部50がパッケージ11の移動速度を制御する場合について説明したが、速度以外の要素でパッケージ11の往復移動を制御するようにしてもよい。
【0141】
また、検知部40による糸条Lの検知時間、検知幅または検知深さに対して2段階の閾値が設定されている場合について説明したが、単段階または3段階以上の閾値が設定されているようにしてもよい。あるいは、検知時間、検知幅または検知深さに対して設定される複数段階の閾値を多数設定しかつ各閾値間を微細に設定するようにしてもよい。これにより、トラバース用駆動モータ231を繊細に駆動制御することができるため、パッケージ11の移動速度を無段階的に制御することが可能になる。
【0142】
また、糸条Lが第1検知時間または第1検知幅などを超えるまではパッケージ11の移動速度を速度Vから速度V0’に加速または速度Vから速度V0に減速させる場合について説明したが、糸条Lが第1検知時間または第1検知幅などを超えるまでは糸条Lの繰出位置が偶発的に所定の範囲を超えたときのような誤差や無視すべきものであるものと検知量判断部52に判断させて、パッケージ11の移動速度をそのまま速度Vで維持させるようにしてもよい。
【0143】
また、検知部40の第1および第2光電センサ42、43は、第1光電センサ42が糸条Lの左側に配置されるとともに第2光電センサ43が糸条Lの右側に配置される場合について説明したが、いずれか一方のみで所定の範囲(正常繰出範囲D)を形成させるようにしてもよい。
【0144】
また、検知部40の第1および第2光電センサ42、43においては厚みがなく幅を有する帯状の光で糸条Lを検知する場合について説明したが、光の形状は任意でよい。要は、検知時間または検知幅などのように糸条Lを数量的に検知できれば任意の光でよい。
【0145】
また、検知部40の第1および第2光電センサ42、43が光を利用して糸条Lを検知するセンサである場合について説明したが、その他の方法で糸条Lを検知するセンサであってもよい。
【0146】
また、検知部40は、制御部50に検知信号を連続的に送信し続ける場合について説明したが、検知信号を所定時間ごとに送信するようにしてもよい。
【0147】
以上、図面を参照して本発明の実施形態を説明したが、本発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示された実施形態に対して、本発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0148】
1…糸条解舒装置(本装置)
10…繰出部
11…パッケージ
12…パッケージホルダ
13…パッケージ回転軸
14…回転用駆動部
141…回転用駆動モータ
142…伝達ベルト
20…トラバース部
21…連結部材
211…第1連結部
212…第2連結部
213…第3連結部
22…ねじ軸部
23…トラバース用駆動部
231…トラバース用駆動モータ
232…伝達ベルト
24…ガイドバー
30…搬送部
31…ガイドローラ群
31a,31b…ガイドローラ
32…繰出速度検出部
321…ダンサアーム
322…ダンサローラ
323…ダンサアーム位置検知器
40…検出部
41…保持プレート
411…回動軸
42…第1光電センサ
42a…第1投光部
42b…第1受光部
43…第2光電センサ
43a…第2投光部
42b…第2受光部
44…開放部分
50…制御部
51…検知量算出部
52…検知量判断部
53…モータ駆動制御部
100…巻糸装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸方向に往復移動しながら回転することにより、糸条部材が所定の範囲内で繰り出されるパッケージと、
前記パッケージから繰り出された糸条部材の搬送経路の近傍に設けられ、糸条部材を数量的に検知する検知手段と、
前記検知手段による糸条部材の検知量が所定の閾値を超えた場合、糸条部材の操出位置が所定の範囲内となるように前記パッケージの往復移動を制御する制御手段とを備えることを特徴とする糸条解舒装置。
【請求項2】
前記検知手段による糸条部材の検知量に対して複数段階の閾値が設定され、
前記制御手段は、糸条部材の検知量が各閾値を超えるごとに前記パッケージの往復移動を段階的に制御する請求項1に記載の糸条解舒装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記パッケージ往復移動における速度を制御する請求項1または請求項2に記載の糸条解舒装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記パッケージが移動する側に設けられた検知手段に糸条部材が検知された場合、前記パッケージの当該移動における速度を減速する一方、前記パッケージが移動する側と反対側に設けられた検知手段に糸条部材が検知された場合、前記パッケージの当該移動における速度を加速する請求項3に記載の糸条解舒装置。
【請求項5】
前記検知手段による検知量は、糸条部材を検知している検知時間、検知幅あるいは検知深さである請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の糸条解舒装置。
【請求項6】
前記検知手段は、糸条部材の両側に所定の範囲を空けて設けられる請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の糸条解舒装置。
【請求項7】
前記検知手段は、光を利用して糸条部材を検知する光電センサからなる請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の糸条解舒装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−232808(P2012−232808A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−100506(P2011−100506)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(000146984)株式会社神津製作所 (8)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】