結合性リガンドが結合したツブリシンの薬剤送達結合体
本明細書に記載されるものは、病原細胞集団を治療するための化合物、薬学的組成物、および方法である。本明細書に記載される化合物は、ツブリシンとビタミン受容体結合性リガンドとの結合体を含む。この結合体はさらに、放出型二価リンカーを含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、標的化薬剤送達に使用するための組成物および方法に関する。より詳細には、本発明は、病原細胞集団によって引き起こされる病態の治療に使用される、細胞表面受容体結合性薬剤送達結合体、およびそのような結合体を使用する方法、およびそのような結合体を含む薬学的組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
哺乳類の免疫系は、腫瘍細胞、他の病原細胞、および、侵入する外来病原体を認識し、排除するための手段を提供する。この免疫系は、正常時は、強力な防衛線を提供するが、しばしば、癌細胞、他の病原細胞、または感染病原体が、宿主の免疫反応を免れ、増殖または生き延び、同時に宿主に対し病原性因子となる場合が起こる。化学療法剤および放射線療法が、例えば複製新生物を排除するために開発されている。しかしながら、現今利用可能な化学療法剤および放射線治療処方の多くは有害な副作用を持つ。なぜなら、それらの治療法は、病原細胞を破壊するために働くばかりでなく、正常な宿主細胞、例えば、造血系の細胞をも冒すからである。これらの抗癌剤にはこのように有害な副作用があるため、病原細胞集団に対して選択的で、宿主に対する毒性が抑えられた新規治療法の開発に対する要求はさらに高まっている。
【0003】
研究者たちは、病原細胞に対し細胞毒性化合物を標的化することによって、それらの細胞を破壊するための治療プロトコールを開発してきた。これらのプロトコールの多くは、正常細胞に対する毒素の送達を最小化する試みとして、病原細胞に特有であるか、または病原細胞によって過剰に発現される抗原に結合する抗体に結合される毒素を利用する。この方法を用い、病原細胞上の特異的抗原に対する抗体、すなわち、毒素、例えば、リシン、シュードモナス(Pseudomonas)エキソトキシン、ジフテリア(Diphtheria)トキシン、および腫瘍壊死因子などの毒素に結合される抗体から成る、いくつかの免疫トキシンが開発された。これらの免疫トキシンは、抗体によって認識される特異的抗原を担う病原細胞、例えば、腫瘍細胞を標的とする(非特許文献1、2および特許文献1)。
【0004】
宿主において病原細胞、例えば、癌細胞または外来病原体の集団を標的とするもう一つの方法は、該病原細胞に対する宿主の免疫反応を強化し、そうすることによって、独立に宿主毒性を示す可能性のある化合物の投与をしないでもよいようにすることである。報告された一つの免疫治療戦略は、抗体、例えば、遺伝子工学的に加工されたマルチマー抗体を、腫瘍細胞の表面に、該細胞表面において該抗体の定常領域が表示されるように結合させ、それによって、各種の免疫系介在過程による腫瘍細胞殺作用を誘発することである(非特許文献3、および特許文献2)。しかしながら、これらの方法は、腫瘍特異的抗原の特定上の困難のために複雑なものとなっていた。
【0005】
ツブリシン(tubulysin)は、チューブリン重合に対する、一群の強力な阻害剤である。ツブリシンは、病原細胞集団を含む病気および病状、例えば、癌の治療に有用である。特定の、2種のマイコバクテリアが、発酵時、ツブリシンを高い力価で合成する。一つの種、Archangium gephyraは、主要成分因子として、ツブリシンA、B、C、G、およびIを生産する。これらはそれぞれ、ツブチロシン(tubutyrosine、Tut、チロシンの類縁体)残基を含むことによって特徴づけられる。一方、もう一つの種、Angiococcus disciformisは、主要成分因子として、ツブリシンD、E、F、およびHを生産する。これらはそれぞれ、ツブフェニルアラニン(tubuphenylalanine、Tup、フェニルアラニンの類縁体)残基を含むことによって特徴づけられる。これらnの細菌発酵は、ツブリシンの、好適な供給源となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】1991年5月30日公刊、Better, M.D.によるPCT公開WO 91/07418
【特許文献2】Soulillou, J.P.による米国特許第5,672,486号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Olsnes, S., Immunol. Today, 10, pp.291-295, 1989
【非特許文献2】Melby, E.L., Cancer Res., 53(8), pp. 1755-1760, 1993
【非特許文献3】De Vita, V.T., Biologic Therapy of Cancer, 2d ed. Philadelphia, Lippincott, 1995
【発明の概要】
【0008】
本発明の一例示実施態様では、下式を有するツブリシン結合体が記載され:
B-L-D
式中、Bは、結合性または標的化リガンド、Lは、放出型リンカー、およびDは、ツブリシン、またはその誘導体である。本明細書で用いるツブリシン(tubulysin)という用語は、個別的に、および/または、集合的に、天然産のツブリシン、合成的に調製されたツブリシン、およびそれらの化合物の類縁体および誘導体を指すことを理解しなければならない。
【0009】
別の実施態様では、結合性または標的化リガンドB、多価の放出型リンカーL、および一つ以上の薬剤Dを含むツブリシン結合体が記載され、ここに、少なくとも一つの薬剤Dは第1のツブリシンであり、BおよびDは、それぞれ、Lに共有結合される。
【0010】
別の実施態様では、下式のツブリシンの結合体、およびそれらの薬学的塩が記載され:
【化1】
式中、Bは、結合性または標的化リガンド、Lは、放出型リンカーであり、
nは、1-3であり;
Vは、H、OR2、またはハロであり、Wは、H、OR2、またはアルキルであり、前式において、R2は、各場合において、H、アルキル、またはC(O)R3から独立に選ばれ、前式において、R3は、それぞれ必要に応じて置換される、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、またはアリールアルキルであり;ただし、VおよびWの両方がOR2である場合、R2はHではなく;または、VおよびWは、付属の炭素と共にカルボニルを形成し;
Xは、それぞれ必要に応じて置換されるH、C1-4アルキル、若しくはアルケニルか、またはCH2QR9であり;前式において、Qは、-N-、-O-、または-S-であり;R9は、H、C1-4アルキル、アルケニル、アリール、またはC(O)R10であり;R10は、それぞれ必要に応じて置換される、C1-6アルキル、アルケニル、アリール、またはヘテロアリールであり;
ZはアルキルであってYはOであるか;または、Zはアルキルか、またはC(O)R4であり;R4がアルキル、CF3、またはアリールである場合、Yは存在せず;
R1はHであるか、あるいはR1は、ハロ、ニトロ、カルボキシレートまたはその誘導体、シアノ、ヒドロキシル、アルキル、ハロアルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、フェノール保護基、プロドラッグ成分、および、OR6から選ばれる、1から3個の置換基を表し、前式において、R6は、必要に応じて置換されるアリール、C(O)R7、P(O)(OR8)2、またはSO3R8であり、前式において、R7およびR8は、各場合において、それぞれ必要に応じて置換される、H、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、および、アリールアルキルから独立に選ばれ、あるいは、R8は、金属陽イオンであり;かつ、
Rは、OH、または脱離基であるか、あるいは、Rは、カルボン酸誘導体を形成する。
【0011】
別の実施態様では、天然産ツブリシンの結合体が本明細書において記載される。この場合、ツブリシンは、必要に応じて放出型リンカーLを介して、結合性または標的化リガンドに結合される。
【0012】
別の実施態様では、本明細書に記載される結合体は、病原性細胞集団と関連する病気および病状を治療するために有効な量として、薬学的組成物の中に含まれる。
【0013】
別の実施態様では、本明細書に記載される結合体、またはそれらを含む薬学的組成物は、病原性細胞集団と関連する病気および病状を治療する方法において使用される。
【0014】
〔関連出願に対する相互参照〕
本出願は、米国特許法第119(e)条の下に、2007年4月13日出願の米国特許仮出願第60/911,551号、および、2007年3月14日出願の米国特許仮出願第60/894,910号の優先利益を主張する。なお、これらの出願の開示の全体を参照により本出願に含める。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、EC0305が、KB細胞に対する2時間のパルスおよび72時間のチェイスの後で、葉酸受容体に対し用量-反応行動および特異性を呈したことを示す:(●)EC0305(IC50〜1.5 nM);(○)EC305+過剰葉酸。
【図2】図2は、EC0305が、各種動物種において低い血清結合を呈したことを示す:(a)ヒト、(b)イヌ、(c)Balb/cマウス、(d)ラット、(e)ウサギ、および(f)ウシ胎児血清。ヒトの血清結合は67%であった。
【図3】図3は、EC0305の安定性についてヒトの血清において試験したところ、約20時間の半減期を呈したことを示す。
【図4】図4は、10%血清/FDRPMIにおけるEC0305の、相対的アフィニティーアッセイの結果を示す:(●)葉酸、相対的親和度=1;(■)EC0305、相対的親和度=0.96。
【図5】図5は、コントロールと比較した場合の、種々の用量でTIW、2週スケジュール投与によるEC305の、KB腫瘍に対する活性を示す:(●)PBS処置コントロール;(○)EC0305 2 μmol/kg TIW (5/5完全反応);(■)EC0305 1 μmol/kg TIW (5/5完全反応);(▲)EC0305 0.5 μmol/kg TIW (1/5完全反応);(□)EC0305 1 μmol/kg TIW + EC-20(レニウム) 40 μmol/kg TIW (0/5完全反応)。垂直点線は、投与最終日を示す。
【図6】図6は、コントロールと比較した場合の、処置動物における体重変化パーセントの測定を示す:(●)PBS処置コントロール;(○)EC0305 2 μmol/kg TIW;(■)EC0305 1 μmol/kg TIW;(▲)EC0305 0.5 μmol/kg TIW;(□)EC0305 1 μmol/kg TIW + EC-20(レニウム)40 μmol/kg TIW。垂直点線は投与最終日を示す。
【図7】図7は、コントロールと比較した場合の、2 μmol/kg TIW、2週間スケジュールで投与したEC305の、M109腫瘍に対する活性を示す:(●)PBS処置コントロール;(■)EC0305(5/5完全反応)。垂直点線は、投与最終日を示す。
【図8】図8は、コントロールと比較した場合の、処置動物における体重変化パーセントの測定を示す:(●)PBS処置コントロール;(■)EC0305。垂直点線は、投与最終日を示す。
【図9】図9は、コントロールと比較した場合の、耐容可能、および高毒性の両投与レベルにおける、非結合ツブリシンBの効力の欠如(0/5完全または部分反応)を示す:(●)PBS処置コントロール;(○)0.5 μmol/kg TIW;(▲)0.2 μmol/kg TIW;(■)0.1 μmol/kg TIW。
【図10】図10は、コントロールと比較した場合の、耐容可能、および高毒性の両投与レベルの非結合ツブリシンBで処置した動物の、体重変化パーセントを示す:(●)PBS処置コントロール;(○)0.5 μmol/kg TIW;(▲)0.2 μmol/kg TIW;(■)0.1 μmol/kg TIW。
【図11】図11は、コントロールと比較した場合の、それぞれ、2 μmol/kg、TIW、2週間スケジュールで投与した、ビンカアルカロイド結合体EC145に対する、ツブリシン結合体EC0305の相対的活性を示す:(●)PBS処置コントロール;(○)EC145(2/5完全反応);(■)EC0305 (5/5完全反応)。垂直点線は、投与最終日を示す。
【図12】図12は、コントロールと比較した場合の、それぞれ、2 μmol/kg TIW、2週間スケジュールで投与した、ツブリシン結合体EC0305およびEC0436の、M109腫瘍に対する、相対的活性を示す:(a)PBS処置コントロール;(b)EC0305(4/5完全反応);(c)EC0436 (5/5完全反応)。垂直点線は、投与最終日を示す。
【図13】図13は、コントロールと比較した場合の、処置動物における体重変化パーセントを示す:(●)PBS処置コントロール;(□)は、EC0305 (TIW 2 μmol/kg、2週);(■)は、EC0436 (TIW 2 μmol/kg、2週)である。垂直点線は、投与最終日を示す。
【図14】図14は、コントロールと比較した場合の、EC0305およびEC0436を、種々の用量で、週3回、1週間、静注投与したBalb/cマウスの、体重変化パーセントを示す:(●)PBS処置コントロール;(▲)2 μmol/kg TIW EC0436;(▼)2.5 μmol/kg TIW EC0436;(■)3 μmol/kg TIW EC0436;(△)2 μmol/kg TIW EC0305;(▽)2.5 μmol/kg TIW EC0305;(□)3 μmol/kg EC0305。垂直点線は、投与最終日を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
結合性リガンド(B)、二価リンカー(L)、および、ツブリシン(D)(その類縁体および誘導体を含む)から成る、薬剤送達結合体が、本明細書では記載される。結合性リガンド(B)は、二価リンカー(L)に共有結合し、ツブリシン、またはその類縁体または誘導体も、二価リンカー(L)に共有結合する。二価リンカー(L)は、一つ以上のスペーサーリンカー、および/または放出型リンカー、およびそれらの組み合わせを任意の順序で含む。一変異態様では、放出型リンカーおよび必要に応じて選ばれるスペーサーリンカーは、互いに共有結合してリンカーを形成する。別の変異態様では、放出型リンカーは、ツブリシン、またはその類縁体または誘導体に直接結合する。別の変異態様では、放出型リンカーは、結合性リガンドに直接結合する。別の変異態様では、結合性リガンドおよびツブリシンのどちらか、または両方が、一つ以上のスペーサーリンカーを介して放出型リンカーに結合する。別の変異態様では、結合性リガンド、およびツブリシンまたはその類縁体または誘導体は、それぞれ、放出型リンカーに結合し、これらは、それぞれ、互いに直接結合してもよいし、あるいは、一つ以上のスペーサーリンカーを介して共有結合してもよい。以上から、結合性リガンド、ツブリシンまたはその類縁体または誘導体、および各種の、放出型リンカーや必要に応じて選ばれるスペーサーリンカーの配置は、大きく変動することが可能であることを理解しなければならない。一態様では、結合性リガンド、ツブリシンまたはその類縁体または誘導体、および各種の放出型リンカーや必要に応じて選ばれるスペーサーリンカーは、窒素、酸素、硫黄、燐などのヘテロ原子や、シリコンなどを介して、互いに結合する。変異態様では、酸素を除くヘテロ原子は、種々の酸化状態にあってもよく、例えば、N(OH)、S(O)、S(O)2、P(O)、P(O)2、P(O)3などであってもよい。別の変異態様では、ヘテロ原子は、集合されて、二価ラジカル、例えば、ヒドロキシルアミン、ヒドラジン、ヒドラゾン、スルフォネート、フォスフィネート、フォスフォネートなどを形成してもよい。
【0017】
一態様では、受容体結合性リガンド(B)は、ビタミン、またはその類縁体または誘導体であるか、または、別の、ビタミン受容体結合性化合物である。
【0018】
本明細書で用いるツブリシンとは、一般に、下式のテトラペプチド化合物、および、それらの薬学的塩を指し:
【化2】
式中、
nは、1-3であり;
Vは、H、OR2、またはハロであり、Wは、H、OR2、またはアルキルであり、前式において、R2は、各場合において、H、アルキル、およびC(O)R3から独立に選ばれ、前式において、R3は、それぞれ必要に応じて置換される、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、またはアリールアルキルであり;ただし、VおよびWの両方がOR2である場合、R2はHではなく;または、VおよびWは、付属の炭素と共にカルボニルを形成し;
Xは、それぞれ必要に応じて置換されるH、C1-4アルキル、若しくはアルケニルか、またはCH2QR9であり;前式において、Qは、-N-、-O-、または-S-であり;R9は、H、C1-4アルキル、アルケニル、アリール、またはC(O)R10であり;R10は、それぞれ必要に応じて置換される、C1-6アルキル、アルケニル、アリール、またはヘテロアリールであり;
ZはアルキルであってYはOであるか;または、ZはアルキルまたはC(O)R4で、Yは存在せず;前式において、R4は、アルキル、CF3、またはアリールであり;
R1はHであるか、あるいはR1は、ハロ、ニトロ、カルボン酸塩またはその誘導体、シアノ、ヒドロキシル、アルキル、ハロアルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、フェノール保護基、プロドラッグ成分、および、OR6から選ばれる、1から3個の置換基を表し、前式において、R6は、必要に応じて置換されるアリール、C(O)R7、P(O)(OR8)2、またはSO3R8であり、前式において、R7およびR8は、各場合において、それぞれ必要に応じて置換される、H、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、および、アリールアルキルから独立に選ばれ、あるいは、R8は、金属陽イオンであり;かつ、
Rは、OH、または脱離基であるか、あるいは、Rは、カルボン酸誘導体を形成する。
【0019】
上記ツブリシンそれぞれの結合体が本明細書において記載される。一変異態様では、Zはメチルである。別の変異態様では、R1はHである。別の変異態様では、R1は、C(4)においてOR6であり、前式において、R6は、H、アルキル、またはCOR7である。別の変異態様では、VはHであり、WはOC(O)R3である。
【0020】
別の実施態様では、下記の一般式のツブリシンの結合体、およびそれらの薬学的塩が記載され:
【化3】
式中、
nは、1-3であり;
Vは、H、OR2、またはハロであり、Wは、H、OR2、またはアルキルであり、前式において、R2は、各場合において、H、アルキル、またはC(O)R3から独立に選ばれ、前式において、R3は、アルキル、アルケニル、アリール、またはアリールであり、ただし、VおよびWの両方がOR2である場合、R2はHではなく;または、VおよびWは、付属の炭素と共にカルボニルを形成し;
Xは、それぞれ必要に応じて置換されるH、C1-4アルキル、若しくはアルケニルか、またはCH2QR9であり;前式において、Qは、-N-、-O-、または-S-であり;R9は、H、C1-4アルキル、アルケニル、アリール、またはC(O)R10であり;R10は、それぞれ必要に応じて置換される、C1-6アルキル、アルケニル、アリール、またはヘテロアリールであり;
Zはアルキル、またはC(O)R4であり、前式において、R4は、アルキル、CF3、またはアリールであり;
Tは、H、またはOR6であり、前式において、R6は、H、アルキル、アリール、COR7、P(O)(OR8)2、またはSO3R8であり、前式において、R7およびR8は、各場合において、それぞれ必要に応じて置換される、H、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、および、アリールアルキルから独立に選ばれ、あるいは、R8は、金属陽イオンであり、あるいは、R6は、フェノール保護基、またはプロドラッグ成分であり;
SおよびUは、H、ハロ、ニトロ、シアノ、アルキル、ハロアルキル、アルコキシ、およびハロアルコキシから成る群からそれぞれ独立に選ばれ;かつ、
Rは、OH、または脱離基であるか、あるいは、Rは、カルボン酸誘導体を形成する。
【0021】
一変異態様では、Zは、メチル、またはC(O)R4である。
【0022】
天然ツブリシンは、全体として直鎖状のテトラペプチドであって、N-メチルピペコリン酸(Mep)、イソロイシン(Ile)、ツブバリンと呼ばれる非天然アミノ酸(Tuv)、および、ツブチロシン(Tut、チロシン類縁体)と呼ばれる非天然アミノ酸、またはツブフェニルアラニン(Tup、フェニルアラニン類縁体)と呼ばれる非天然アミノ酸のいずれか、から成る。別の実施態様では、下記の一般式の天然産ツブリシン、およびその類縁体および誘導体、およびそれらの薬学的塩が記載され:
【化4】
式中のR、R1、およびR10は、本明細書中の各種実施態様において記載される通りである。上記ツブリシンそれぞれの結合体が本明細書に記載される。
【0023】
別の実施態様では、下記の一般式の天然産ツブリシンの結合体、およびそれらの薬学的塩が記載される:
【化5】
【0024】
別の実施態様では、下式のツブリシンの結合体、およびそれらの薬学的塩が記載され:
【化6】
式中、nは、1-3であり;Tは、HまたはOR6であり、前式において、R6は、H、アルキル、アリール、COR7、P(O)(OR8)2、またはSO3R8であり、前式において、R7およびR8は、各場合において、それぞれ必要に応じて置換される、H、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、および、アリールアルキルから独立に選ばれ、あるいは、R8は、金属陽イオンであり、あるいは、R6は、フェノール保護基、またはプロドラッグ成分であり;Zは、アルキル、またはC(O)R4であり、前式において、R4は、アルキル、CF3、またはアリールであり;かつ、Rは、OH、または脱離基であるか、あるいは、Rは、カルボン酸誘導体を形成する。このような化合物の具体例、およびその調製が、J. Med. Chem. 10.1021/jm701321p(2008)に記載される。なお、この開示を引用により本明細書に含める。
【0025】
別の実施態様では、下式のツブリシン結合体、およびそれらの薬学的塩が記載され:
【化7】
上式のn、S、T、U、V、W、Z、R、およびR10は、本明細書の各種実施態様の中に記載される通りである。
【0026】
別の実施態様では、下式のツブリシン結合体、およびそれらの薬学的塩が記載され:
【化8】
上式のn、S、T、U、V、W、Z、QR9、およびRは、本明細書の各種実施態様の中に記載される通りである。一変異態様では、Qは、-N-、-O-、または-S-であり;R9は、それぞれ必要に応じて置換される、H、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、またはアリールアルキルである。別の変異態様では、QR9は一緒にされて、C(O)R10、S(O)2R10、P(O)(OR10a)2を形成し、前式において、R10およびOR10aは、各場合において、それぞれ必要に応じて置換される、H、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、およびアリールアルキルから独立に選ばれるか、あるいは、R10aは、金属陽イオンである。
【0027】
別の実施態様では、下式のツブリシン結合体、およびそれらの薬学的塩が記載され:
【化9】
式中、R12は、それぞれ必要に応じて置換される、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、およびアリールアルキルから選ばれる、一つ以上の置換基を表し;n、S、T、U、V、W、Z、およびRは、本明細書の各種実施態様の中で記載される通りである。反応条件、およびR1の化合物名に応じて、異性化によって他のオレフィン類も形成が可能であることを理解しなければならない。例えば、R1がアルキルの場合、反応条件下で、二重結合が、アルケニル鎖に沿って他の炭素原子に移動し、末端またはω-オレフィンを形成することが可能であることが認識される。
【0028】
別の実施態様では、下式のツブリシン結合体、およびそれらの薬学的塩が記載され:
【化10】
式中、R13は、C(O)R10、C(O)OR10、またはCNであり;n、S、T、U、V、W、Z、、R、およびR10は、本明細書の各種実施態様の中で記載される通りであり、前式において、R10は、各場合において独立に選ばれる。
【0029】
別の実施態様では、下式のツブリシン結合体、およびそれらの薬学的塩が記載され:
【化11】
上式のn、S、T、U、V、W、Z、およびRは、本明細書の各種実施態様の中で記載される通りである。
【0030】
別の実施態様では、下式のツブリシン結合体、およびそれらの薬学的塩が記載され:
【化12】
式中、X3は、ハロゲン、OS(O)2R10、OP(O)(OR10a)R10、またはOP(O)(OR10a)2であり;前式において、R10およびR10aは、各場合において、それぞれ必要に応じて置換される、H、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、およびアリールアルキルから成る群から独立に選ばれるか、あるいは、R10aは、金属陽イオンであり;かつ、n、S、T、U、V、W、Z、およびRは、本明細書の各種実施態様の中で記載される通りである。
【0031】
本明細書に記載される結合体の調製に有用な、さらに別のツブリシンが、米国特許出願公開第2006/0128754および2005/0239713号に記載される。なお、これらの開示を、引用により本明細書に含める。本明細書に記載される結合体の調製に有用な、さらに別のツブリシンが、同時係属出願の、米国特許仮出願第60/982,595および61/036,176号に記載される。なお、これらの開示を引用により本明細書に含める。ツブリシンは、Peltier et al., “The Total Synthesis of Tubulysin D(ツブリシンDの完全合成),“ J. Am. Chem. Soc. 128:16018-19 (2006)の記載の通りに調製してもよい。なお、この開示を引用により本明細書に含める。
【0032】
上記実施態様のそれぞれにおいて、一変異態様では、各種の式の化合物は、バックボーンの、表示の不斉炭素において、下記:
【化13】
の絶対構成を有することが理解される。
【0033】
ツブリシン、またはその類縁体または誘導体の結合体は、いずれの位置に形成されてもよいことを理解しなければならない。具体的には、二価リンカー(L)が、下記の位置のいずれかに結合されるツブリシン結合体が記載され:
【化14】
式中、(*)記号は、必要に応じて選ばれる結合部位を示す。
【0034】
別の実施態様では、結合体は、ツブリシンまたはその類縁体または誘導体の、カルボン酸誘導体から形成される。例示の、ツブリシンのカルボン酸結合体誘導体、およびそれらの薬学的塩は、下記の一般式によって表され:
【化15】
式中、
Bは、結合性リガンドであり;
Lは、リンカーであって、酸素、窒素、または硫黄へテロ原子などの、ツブリシンに共有結合するヘテロ原子リンカーを含み;
nは、1-3であり;
Vは、H、OR2、またはハロであり、Wは、H、OR2、またはアルキルであり、前式において、R2は、各場合において、H、アルキル、またはC(O)R3から独立に選ばれ、前式において、R3は、アルキル、アルケニル、またはアリールであり;ただし、VおよびWの両方がOR2である場合、R2はHではなく;または、VおよびWは、付属の炭素と共にカルボニルを形成し;
Xは、それぞれ必要に応じて置換されるH、C1-4アルキル、若しくはアルケニルか、またはCH2QR9であり;前式において、Qは、-N-、-O-、または-S-であり;R9は、H、C1-4アルキル、アルケニル、アリール、またはC(O)R10であり;R10は、それぞれ必要に応じて置換される、C1-6アルキル、アルケニル、アリール、またはヘテロアリールであり;
ZはアルキルであってYはOであるか;または、Zはアルキルか、またはC(O)R4であり、Yは存在せず;前式において、R4は、アルキル、CF3、またはアリールであり;
R1はHであるか、あるいはR1は、ハロ、ニトロ、カルボン酸塩またはその誘導体、シアノ、ヒドロキシル、アルキル、ハロアルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、フェノール保護基、プロドラッグ成分、および、OR6から選ばれる、1から3個の置換基を表し、前式において、R6は、必要に応じて置換されるアリール、C(O)R7、P(O)(OR8)2、またはSO3R8であり、前式において、R7およびR8は、各場合において、それぞれ必要に応じて置換される、H、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、および、アリールアルキルから独立に選ばれ、あるいは、R8は、金属陽イオンであり;かつ、
Rは、OH、または脱離基であるか、あるいは、Rは、カルボン酸誘導体を形成する。
【0035】
別の実施態様では、下記の一般式の、ツブリシンの、例示のカルボン酸結合体誘導体、およびそれらの薬学的塩が記載され:
【化16】
式中、
Bは、結合性リガンドであり;
Lは、リンカーであって、酸素、窒素、または硫黄へテロ原子などの、ツブリシンに共有結合するヘテロ原子リンカーを含み;
nは、1-3であり;
Vは、H、OR2、またはハロであり、Wは、H、OR2、またはアルキルであり、前式において、R2は、各場合において、H、アルキル、またはC(O)R3から独立に選ばれ、前式において、R3は、アルキル、アルケニル、またはアリールであり;ただし、VおよびWの両方がOR2である場合、R2はHではなく;または、VおよびWは、付属の炭素と共にカルボニルを形成し;
Xは、それぞれ必要に応じて置換されるH、C1-4アルキル、若しくはアルケニルか、またはCH2QR9であり;前式において、Qは、-N-、-O-、または-S-であり;R9は、H、C1-4アルキル、アルケニル、アリール、またはC(O)R10であり;R10は、それぞれ必要に応じて置換される、C1-6アルキル、アルケニル、アリール、またはヘテロアリールであり;
Zはアルキルか、またはC(O)R4であり、前式において、R4は、アルキル、CF3、またはアリールであり;
Tは、H、またはOR6であり、前式において、R6は、H、アルキル、アリール、COR7、P(O)(OR8)2、またはSO3R8であり、前式において、R7およびR8は、各場合において、それぞれ必要に応じて置換される、H、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、および、アリールアルキルから独立に選ばれるか、あるいは、R8は、金属陽イオンであり、あるいは、R6は、フェノール保護基、またはプロドラッグ成分であり;
SおよびUは、H、ハロ、ニトロ、シアノ、アルキル、ハロアルキル、アルコキシ、およびハロアルコキシからそれぞれ独立に選ばれ;かつ、
Rは、OH、または脱離基であるか、あるいは、Rは、カルボン酸誘導体を形成する。
【0036】
別の実施態様では、下記の一般式の、例示のカルボン酸結合体誘導体、およびそれらの薬学的塩が記載され:
【化17】
式中のB、L、n、S、T、U、V、W、X、Z、Q、R1、R9、R10、R12、R13、およびX3は、本明細書の各種実施態様および態様の中で記載される通りである。
【0037】
別の実施態様では、ツブリシンA、ツブリシンB、およびツブリシンIなどの天然産ツブリシンの、例示の、カルボン酸結合体誘導体、およびそれらの薬学的塩が記載される。
【0038】
別の実施態様では、下記のツブリシン類縁体および誘導体の、例示の、カルボン酸結合体誘導体が記載される。
【0039】
本明細書に記載される結合体において使用が可能な、追加のツブリシンとしては、KB細胞の72時間連続アッセイにおいて3Hチミジン抑制におけるIC50を含む、下記、およびそれらの薬学的塩が挙げられる:
【化18】
【0040】
本明細書で用いる場合、ツブリシン化合物は、チューブリン重合の阻害剤であってもよいし、また、DNAアルキル化剤であってもよい。したがって、癌などの病原性細胞集団を含む病気および病状の治療法が、本発明の考慮の対象とされる。
【0041】
別の実施態様では、二価リンカー(L)は、ツブリシン(D)に結合性リガンド(B)を共有結合させる、C、N、O、S、Si、およびPから選ばれる原子の鎖である。リンカーは、種々の長さ、例えば、約2から約100原子の範囲の長さを有してもよい。リンカーの形成に使用される原子は、化学的に妥当なあらゆる方式で結合されてよく、例えば、アルキレン、アルケニレン、およびアルキニレン基などを形成する炭素原子鎖;エーテル、ポリオキシアルキレン基を形成するか、または、カルボニル基と結合して、エステルおよび炭酸塩を形成する炭素および酸素原子鎖;アミン、イミン、ポリアミン、ヒドラジン、ヒドラゾンを形成するか、または、カルボニル基と結合して、アミド、尿素、セミカルバジド、カルバジドなどを形成する炭素および窒素原子鎖;アルコキシアミン、アルコキシルアミンを形成するか、または、カルボニル基と結合して、アミノ酸、アシルオキシルアミン、ヒドロキサム酸などを形成する、炭素、窒素、および酸素原子の鎖;およびその他多数が挙げられる。さらに、上記例示実施態様それぞれの鎖を形成する原子は、飽和であっても、不飽和であってもよく、そのため、例えば、アルカン、アルケン、アルキン、イミンなどは、リンカーの中に含まれるラジカルであってもよいことを理解しなければならない。さらに、リンカーを形成する原子は、互いに環化されて、リンカーの中に、二価の環状構造、例えば、シクロアルカン、環状エーテル、環状アミン、アリーレン、ヘテロアリーレンなどを形成してもよい。
【0042】
別の実施態様では、リンカーは、少なくとも一つの放出型リンカーを形成するラジカル、および必要に応じて一つ以上のスペーサーリンカーを含む。本明細書で用いる放出型リンカーという用語は、生理的条件下で破断することが可能な、少なくとも一つの結合、例えば、pH感受性、酸感受性、塩基感受性、酸化感受性、代謝感受性、生化学的感受性、または酵素感受性結合を含むリンカーを指す。結合破断をもたらすこのような生理的条件は、必ずしも生物学的または代謝過程を含む必要はなく、標準的化学反応、例えば、生理的pHにおける、または、細胞質pHよりも低いpHを有するエンドソームのような細胞小器官への分画の結果として起こる、加水分解反応を含んでもよい。
【0043】
切断可能な結合が、放出型リンカーの一端または両端において、該放出型リンカー内の二つの隣接原子を接続するか、および/または、本明細書に記載される他のリンカー、またはVおよび/またはDを接続することが可能であることが理解される。切断可能な結合が、放出型リンカー内の二つの隣接原子を接続する場合、該結合の破断後、該放出型リンカーは、二つ以上の断片に分解される。それとは別に、切断可能な結合が、放出型リンカーと、別の成分、例えば、別のヘテロ原子、スペーサーリンカー、別の放出型リンカー、ツブリシンまたはその類縁体または誘導体、または結合性リガンドとの間にある場合、該結合の破断後、該放出型リンカーは、該他方成分から分離される。したがってさらに、スペーサーおよび放出型リンカーは、それぞれ、多価である、例えば、二価であることが理解される。
【0044】
例示の、放出型リンカーとしては、メチレン、1-アルコキシアルキレン、1-アルコキシシクロアルキレン、1-アルコキシアルキレンカルボニル、1-アルコキシシクロアルキレンカルボニル、カルボニルアリールカルボニル、カルボニル(カルボキシアリール)カルボニル、カルボニル(ビスカルボキシアリール)カルボニル、ハロアルキレンカルボニル、アルキレン(ジアルキルシリル)、アルキレン(アルキルアリールシリル)、アルキレン(ジアリールシリル)、(ジアルキルシリル)アリール、(アルキルアリールシリル)アリール、(ジアリールシリル)アリール、オキシカルボニルオキシ、オキシカルボニルオキシアルキル、スルフォニルオキシ、オキシスルフォニルアルキル、イミノアルキリデニル、カルボニルアルキリデンイミニル、イミノシクロアルキリデニル、カルボニルシクロアルキルデンイミニル、アルキレンチオ、アルキレンアリールチオ、およびカルボニルアルキルチオが挙げられ、これらの放出型リンカーは、それぞれ、必要に応じて、後述のように置換基X2によって置換される。
【0045】
上記実施態様において、放出型リンカーは酸素を含んでもよく、該放出型リンカーは、メチレン、1-アルコキシアルキレン、1-アルコキシシクロアルキレン、1-アルコキシアルキレンカルボニル、および、1-アルコキシシクロアルキレンカルボニルであることが可能であり、これらの放出型リンカーは、それぞれ、必要に応じて、後述のように置換基X2によって置換されてもよく、該放出型リンカーは酸素に結合して、アセタールまたはケタールを形成する。それとは別に、放出型リンカーは酸素を含んでもよく、該放出型リンカーは、必要に応じて置換されるアリールによって置換されるメチレンであることが可能であり、該放出型リンカーは酸素に結合して、アセタールまたはケタールを形成する。さらに、放出型リンカーは酸素を含んでもよく、該放出型リンカーは、スルフォニルアルキルであることが可能であり、該放出型リンカーは酸素に結合して、アルキルスルフォネートを形成する。
【0046】
上記放出型リンカー実施態様の別の実施態様では、放出型リンカーは窒素を含んでもよく、該放出型リンカーは、イミノアルキリデニル、カルボニルアルキリデニミニル、イミノシクロアルキリデニル、およびカルボニルシクロアルキリデニミニルであることが可能であり、これらの放出型リンカーは、それぞれ、必要に応じて、後述のように置換基X2によって置換され、該放出型リンカーは酸素に結合して、ヒドラゾンを形成する。別の構成では、該ヒドラゾンは、カルボン酸誘導体、オルトフォルメート、またはカルバモイル誘導体によってアシル化され、各種アシルヒドラゾンの放出型リンカーを形成する。
【0047】
それとは別に、放出型リンカーは酸素を含んでもよく、該放出型リンカーは、アルキレン(ジアルキルシリル)、アルキレン(アルキルアリールシリル)、アルキレン(ジアリールシリル)、(ジアルキルシリル)アリール、(アルキルアリールシリル)アリール、および(ジアリールシリル)アリールであることが可能であり、これらの放出型リンカーは、それぞれ、必要に応じて、後述のように置換基X2によって置換され、該放出型リンカーは酸素に結合して、シラノールを形成する。別の変異態様では、薬剤は、酸素原子を含むことが可能であり、該放出型リンカーは、必要に応じて置換基X2によって置換されるハロアルキレンカルボニルであることが可能であり、該放出型リンカーは薬剤酸素に結合して、エステルを形成する。
【0048】
上記放出型リンカー実施態様において、薬剤は、窒素原子を含むことが可能で、放出型リンカーは窒素を含んでもよく、該放出型リンカーは、カルボニルアリールカルボニル、カルボニル(カルボキシアリール)カルボニル、カルボニル(ビスカルボキシアリール)カルボニルであることが可能であり、該放出型リンカーは、ヘテロ原子窒素に結合してアミドを形成し、さらに、薬剤窒素に結合してアミドを形成する。一変異態様では、薬剤は窒素原子を含むことが可能であり、放出型リンカーは、必要に応じて置換基X2によって置換されるハロアルキレンカルボニルであることが可能であり、該放出型リンカーは薬剤窒素に結合して、アミドを形成する。別の変異態様では、薬剤は、二重結合窒素原子を含むことが可能であり、この実施態様では、放出型リンカーは、アルキレンカルボニルアミノ、および1-(アルキレンカルボニルアミノ)スクシンイミド-3-イルであることが可能であり、該放出型リンカーは薬剤窒素に結合して、ヒドラゾンを形成することが可能である。
【0049】
別の変異態様では、薬剤は、硫黄原子を含むことが可能であり、この実施態様では、放出型リンカーは、アルキレンチオおよびカルボニルアルキルチオであることが可能であり、該放出型リンカーは、薬剤硫黄に結合してジスルフィドを形成することが可能である。それとは別に、薬剤は酸素原子を含むことが可能であり、放出型リンカーは窒素を含んでもよく、該放出型リンカーは、カルボニルアリールカルボニル、カルボニル(カルボキシアリール)カルボニル、カルボニル(ビスカルボキシアリール)カルボニルであることが可能であり、該放出型リンカーはアミドを形成することが可能であり、さらに、薬剤酸素に結合してエステルを形成することが可能である。
【0050】
置換基X2は、アルキル、アルコキシ、アルコキシアルキル、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル、アミノ、アミノアルキル、アルキルアミノアルキル、ジアルキルアミノアルキル、ハロ、ハロアルキル、スルフヒドリルアルキル、アルキルチオアルキル、アリール、置換アリール、アリールアルキル、置換アリールアルキル、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、カルボキシ、カルボキシアルキル、アルキルカルボキシレート、アルキルアルカノエート、グアニジノアルキル、R4-カルボニル、R5-カルボニルアルキル、R6-アシルアミノ、およびR7-アシルアミノアルキルであることが可能であり、上記においてR4およびR5は、それぞれ独立に、アミノ酸、アミノ酸誘導体、およびペプチドから選ばれ、R6およびR7は、それぞれ独立に、アミノ酸、アミノ酸誘導体、およびペプチドから選ばれる。この実施態様では、放出型リンカーは、窒素を含むことが可能であり、置換基X2および放出型リンカーは、ヘテロ環を形成することが可能である。
【0051】
ヘテロ環は、ピロリジン、ピペリジン、オキサゾリジン、イソキサゾリジン、チアゾリジン、イソチアゾリジン、ピロリジノン、ピペリジノン、オキサゾリジノン、イソキサゾリジノン、チアゾリジノン、イソチアゾリジノン、およびスクシンイミドであることが可能である。
【0052】
別の実施態様では、二価リンカー(L)は、ジスルフィドの放出型リンカーを含む。別の実施態様では、二価リンカー(L)は、ジスルフィド放出型リンカーではない、少なくとも一つの放出型リンカーを含む。
【0053】
一態様では、放出型リンカーおよびスペーサーリンカーは、該二価リンカーにおける結合の切断後、放出された官能基が、さらに別の基の破断または切断を化学的に支援する(これは隣接基支援切断または破断とも呼ばれる)ように、配置されてもよい。このような二価リンカー、またはその部分の例示実施態様は、下式の化合物を含み:
【化19】
式中、Xは、窒素、酸素、または硫黄などのヘテロ原子、またはカルボニル基であり;nは、0から4までから選ばれる整数であり;例としては2であり;Rは、水素、または、アリール環において誘電的にまたは共鳴によって陽性電荷を安定化することが可能な置換基を含む置換基、例えば、メトキシを含むアルコキシなどであり;符号(*)は、追加スペーサー、ヘテロ原子、または、二価リンカーを形成する放出型リンカーのための結合点、あるいはそれとは別に、薬剤、またはその類縁体または誘導体、または、ビタミンまたはその類縁体または誘導体の結合点を表示する。一実施態様では、nは2であり、Rはメトキシである。アリール環、ベンジル炭素、アルカノイン酸、またはメチレン架橋には、他の置換基、例えば、ただしこれらに限定されないが、ヒドロキシ、アルキル、アルコキシ、アルキルチオ、ハロなどが存在してもよいことが理解される。支援切断は、ベンジリウム中間体、ベンジン中間体、ラクトン環形成、オキソニウム中間体、ベータ-除去などを含む機構を含んでもよい。さらに、放出型リンカーの切断後における断片化だけでなく、放出型リンカーの初期切断も、隣接基支援機構によって促進されてもよいことが理解される。
【0054】
このようなリンカーを形成するのに有用な中間体の具体例として下式が挙げられ:
【化20】
式中、Xaは、求電子基、例えば、マレイミド、ビニールスルフォン、活性化カルボン酸誘導体などであり、Xbは、NH、O、またはSであり;mおよびnは、それぞれ独立に、0-4から選ばれる整数である。一変異態様では、mおよびnは、それぞれ独立に、0-2から選ばれる整数である。このような中間体は、求電子基Xaに対する求核攻撃を介して、および/または、エーテル、またはカルボン酸誘導体を形成することによって、薬剤、結合性リガンド、または他のリンカーに結合されてもよい。一実施態様では、ベンジルのヒドロキシル基は、フォスゲンまたはフォスゲン等価物によって、対応する活性化ベンジルオキシカルボニル化合物に変換される。この実施態様は、活性化カルボニル基に対する求核攻撃を介して薬剤、結合性リガンド、または他のリンカーに結合されてもよい。
【0055】
放出型リンカーは、生理的条件下で破断または切断することが可能な少なくとも一つの結合(例えば、pH感受性、酸感受性、酸化感受性、または酵素感受性結合)を含む。この切断可能な、一つまたは複数の結合は、切断可能リンカーの内部、および/または、切断可能リンカーの一端または両端に存在してもよい。切断可能な結合の感受性は、そのような結合破断を支援または促進すること(隣接基支援とも呼ばれる)が可能な、官能基または断片を、二価リンカーLの内部に含むことによって、調整してもよいことが理解される。さらに、放出型リンカーの結合破断後、ビタミン受容体結合性薬剤結合体の、後続断片化を支援または促進することが可能な、さらに別の官能基または断片を二価リンカーLの中に含めてもよいことが認識される。
【0056】
破断可能結合の感受性は、例えば、該破断可能結合またはその近傍における置換変化によって、調整することが可能である。例えば、破断性ジスルフィド結合に隣接してアルファ分枝を含めること、加水分解されてもよいシリコン酸素結合を有する成分のシリコンにおける置換基の疎水性を増大させること、加水分解されてもよいケタールまたはアセタールの一部を形成するアルコキシ基を同族体とすること、等が挙げられる。
【0057】
本明細書で記載される二価リンカー切断の、例示機構としては、下記の、1,4および1,6断片化機構が挙げられる。
【化21】
式中、Xは、外因性または内因性の、求核性グルタチオン、または生体還元剤などであり、Z、Z’のいずれかは、ビタミン、またはその類縁体または誘導体であるか、あるいは、薬剤、またはその類縁体または誘導体であるか、または、多価リンカーの他の部分と組み合わされたビタミンまたは薬剤成分である。上記断片化機構は、調和的機構として描かれているが、多価リンカーを図示の最終産物とするまで最終的断片化を実行するためには、任意の数の不連続ステップを実施してもよいことを理解しなければならない。例えば、結合切断はまた、カルバメート成分の酸触媒除去によって実行してもよく、これは、上例に示されるベータ硫黄のアリール基またはジスルフィドによって与えられる安定化によって、隣接支援されてもよいことが理解される。この実施態様のこれらの変異態様では、放出型リンカーは、カルバメート成分である。それとは別に、断片化は、ジスルフィド基に対する求核攻撃によって起動されてもよく、切断によってチオレートが形成される。チオレートは、分子間でカルボン酸またはカルバミン酸を移動させ、対応するチアシクロプロパンを形成してもよい。ベンジル含有多価リンカーの場合、ジスルフィド結合の例示の破断後、得られたフェニルチオレートはさらに断片化して、共鳴安定中間体を形成することによってカルボン酸またはカルバミン酸成分を放出してもよい。上記事例のいずれにおいても、本明細書に記載される、例示の多価リンカーの放出性は、化学的、代謝的、生理的、または生物学的な条件に関連するものであれば、いずれの機構によって実現されてもよい。
【0058】
放出型リンカーの結合切断の、他の例示機構としては、下記のオキソニウム支援切断が挙げられる:
【化22】
式中、Zは、ビタミンまたはその類縁体または誘導体、または薬剤またはその類縁体または誘導体であるか、あるいは、それぞれが、多価のリンカーの他の部分と組み合わされたビタミンまたは薬剤成分、例えば、一つ以上のスペーサーリンカーおよび/または他の放出型リンカーを含む薬剤またはビタミン成分である。理論に拘束されるものではないが、この実施態様では、例えばエンドソーム内で見られるような酸触媒が、ウレタン基のプロトン化を介して切断を起動しているのかもしれない。さらに、カルバメートの酸触媒性除去によって、CO2の放出、Zに結合する窒素含有成分、および、ベンジル陽イオンの形成がもたらされ、これらは、水、または他の任意のルイス塩基によって捕捉される。
【0059】
他の例示のリンカーとしては、下式の化合物が挙げられる:
【化23】
式中、Xは、NH、CH2、またはOであり;Rは、水素、または、アリール環において誘電的にまたは共鳴によって陽性電荷を安定化することが可能な置換基を含む置換基、例えば、メトキシを含むアルコキシなどであり;符号(*)は、追加スペーサー、ヘテロ原子、または、二価リンカーを形成する放出型リンカーのための結合点、あるいはそれとは別に、薬剤、またはその類縁体または誘導体、または、ビタミンまたはその類縁体または誘導体の結合点を表示する。
【0060】
本明細書で記載される、このような二価リンカー切断の例示機構としては、下記の、1,4および1,6断片化機構、次いで、ヒドラジド基による環化を介して実現される、アシル化Z’の隣接支援切断が挙げられる。
【化24】
式中、Xは、外因性または内因性の、求核基、グルタチオン、または生体還元剤などであり、Z、Z’のどちらかが、ビタミン、またはその類縁体または誘導体であるか、あるいは、薬剤、またはその類縁体または誘導体であるか、または、多価リンカーの他の部分と組み合わされたビタミンまたは薬剤成分である。上記断片化機構は、調和的機構として描かれているが、多価リンカーを図示の最終産物とするまで最終的断片化を実行するためには、任意の数の不連続ステップを実施してもよいことを理解しなければならない。例えば、結合切断はまた、カルバメート成分の酸触媒除去によって実行してもよこれは、上例に示されるベータ硫黄のアリール基またはジスルフィドによって与えられる安定化によって、隣接支援されてもよいことが理解される。この実施態様のこれらの変異態様では、放出型リンカーは、カルバメート成分である。それとは別に、断片化は、ジスルフィド基に対する求核攻撃によって起動されてもよく、切断によってチオレートが形成される。チオレートは、分子間でカルボン酸またはカルバミン酸を移動させ、対応するチアシクロプロパンを形成してもよい。ベンジル含有多価リンカーの場合、ジスルフィド結合の例示の破断後、得られたフェニルチオレートはさらに断片化して、共鳴安定中間体を形成することによってカルボン酸またはカルバミン酸成分を放出してもよい。上記事例のいずれにおいても、本明細書に記載される、例示の多価リンカーの放出性は、化学的、代謝的、生理的、または生物学的な条件に関連するものであれば、いずれの機構によって実現されてもよい。理論に拘束されるものではないが、この実施態様では、例えばエンドソーム内で見られるような酸触媒が、ウレタン基のプロトン化を介して切断を起動しているのかもしれない。さらに、カルバメートの酸触媒性除去によって、CO2の放出、Zに結合する窒素含有成分、および、ベンジル陽イオンの形成がもたらされ、これらは、本明細書に同様に記載されるように、水、または他の任意のルイス塩基によって捕捉される。
【0061】
一実施態様では、本明細書に記載される多価リンカーは、下式の化合物であり:
【化25】
式中、nは、1から約4までから選ばれる整数であり;RaおよびRbは、水素、および、低級アルキルで、例えば、必要に応じて分枝するC1-C4アルキルを含むアルキルから成る群からそれぞれ独立に選ばれ;あるいは、RaおよびRbは、付属の炭素原子と一緒になって炭素環を形成し;Rは、必要に応じて置換されるアルキル基、必要に応じて置換されるアシル基、または適切に選ばれる窒素保護基であり;符号(*)は、薬剤、ビタミン、画像剤、診断剤、他の多価リンカー、または結合体の他の部分の結合点を表示する。
【0062】
別の実施態様では、本明細書に記載される多価リンカーは、下式の化合物を含む:
【化26】
式中、mは、1から約4までから選ばれる整数であり;Rは、必要に応じて置換されるアルキル基、必要に応じて置換されるアシル基、または適切に選ばれる窒素保護基であり、(*)は、薬剤、ビタミン、画像剤、診断剤、他の多価リンカー、または結合体の他の部分の結合点を表示する。
【0063】
別の実施態様では、本明細書に記載される多価リンカーは、下式の化合物を含む:
【化27】
式中、mは、1から約4までから選ばれる整数であり;Rは、必要に応じて置換されるアルキル基、必要に応じて置換されるアシル基、または適切に選ばれる窒素保護基であり、(*)は、薬剤、ビタミン、画像剤、診断剤、他の多価リンカー、または結合体の他の部分の結合点を表示する。
【0064】
別の例示機構は、放出型およびスペーサーリンカーの配置であって、該二価リンカーの結合の切断後、放出された官能基が、さらに別の結合の破断または切断を化学的に支援すること(隣接基支援切断または破断とも呼ばれる)を可能とする配置を含む。このような二価リンカーまたはその部分の例示実施態様は、下式を有する化合物を含む:
【化28】
式中、Xは、窒素、酸素、または硫黄などのヘテロ原子であり、nは、0、1、2、および3から選ばれる整数であり、Rは、水素、または、アリール環において誘電的にまたは共鳴によって陽性電荷を安定化することが可能な置換基を含む置換基、例えば、アルコキシなどであり、Z、Z’のどちらかは、ビタミン、またはその類縁体または誘導体であるか、あるいは、薬剤、またはその類縁体または誘導体であるか、または、二価リンカーの他の部分と組み合わされたビタミンまたは薬剤成分である。アリール環、ベンジル炭素、カルバメート窒素、アルカノイン酸、またはメチレン架橋には、他の置換基、例えば、ただしこれらに限定されないが、ヒドロキシ、アルキル、アルコキシ、アルキルチオ、ハロなども存在してよいことが理解される。支援切断は、ベンジリウム中間体、ベンジン中間体、ラクトン環形成、オキソニウム中間体、ベータ-除去などを含む機構を含んでもよい。さらに、放出型リンカーの切断後における断片化だけでなく、放出型リンカーの初期切断も、隣接基支援機構によって促進されてもよいことが理解される。
【0065】
この実施態様では、環形成してもよいヒドロキシアルカノイン酸が、例えばオキソニウムイオンによって、メチレン架橋の切断を促進し、該放出型リンカーの結合切断後の、結合切断または断片化を促進する。それとは別に、メチレン架橋の、酸触媒オキソニウムイオン支援切断は、この例示の二価リンカー、またはその断片の断片化のカスケードを開始させてもよい。それとは別に、カルバメートの酸触媒加水分解が、環形成してもよいヒドロキシアルカノイン酸のベータ除去を促進し、例えばオキソニウムイオンによって、メチレン架橋の切断を促進してもよい。本明細書において記載される、代謝的、生理的、または細胞条件下に起こる結合破断または切断の、他の化学的機構が、このような断片化カスケードを起動してもよいことが理解される。
【0066】
別の実施態様では、放出型およびスペーサーリンカーは、該多価リンカーにおける結合の切断後、放出された官能基が、さらに別の結合の破断または切断を化学的に支援する(これは隣接基支援切断または破断とも呼ばれる)ように、配置されてもよい。このような多価リンカー、またはその部分の例示実施態様は、下式を有する化合物を含む:
【化29】
式中、Xは、窒素、酸素、または硫黄などのヘテロ原子であり、nは、0、1、2、および3から選ばれる整数であり、Rは、水素、または、アリール環において誘電的にまたは共鳴によって陽性電荷を安定化することが可能な置換基を含む置換基、例えば、アルコキシなどであり、符号(*)は、追加スペーサー、ヘテロ原子、または、多価リンカーを形成する放出型リンカーのための結合点、あるいはそれとは別に、薬剤、またはその類縁体または誘導体、または、ビタミンまたはその類縁体または誘導体の結合点を表示する。アリール環、ベンジル炭素、アルカノイン酸、またはメチレン架橋には他の置換基、例えば、ただしこれらに限定されないが、ヒドロキシ、アルキル、アルコキシ、アルキルチオ、ハロなども存在してよいことが理解される。支援切断は、ベンジリウム中間体、ベンジン中間体、ラクトン環形成、オキソニウム中間体、ベータ-除去などを含む機構を含んでもよい。さらに、放出型リンカーの切断後における断片化だけでなく、放出型リンカーの初期切断も、隣接基支援機構によって促進されてもよいことが理解される。
【0067】
本明細書に記載されるリンカーの、別の例示実施態様としては、本明細書に記載される条件下に、ベータ除去を含む化学機構によって切れる放出型リンカーが挙げられる。一態様では、このような放出型リンカーとして、ベータ-チオ、ベータ-ヒドロキシ、およびベータ-アミノ置換カルボン酸、およびその誘導体、例えば、エステル、アミド、炭酸塩、カルバメート、および尿素が挙げられる。別の態様では、このような放出型リンカーとして、2-、および4-チオアリールエステル、カルバメート、および炭酸塩が挙げられる。
【0068】
別の例示実施態様では、リンカーは、一つ以上のアミノ酸を含む。一変異態様では、リンカーは、単一アミノ酸を含む。別の変異態様では、リンカーは、2から約50、2から約30、または2から約20個のアミノ酸を有するペプチドを含む。別の変異態様では、リンカーは、約4から約8個のアミノ酸を有するペプチドを含む。このようなアミノ酸は、例示として、天然アミノ酸、またはそれらの立体異性体から選ばれる。アミノ酸はまた、他の、任意のアミノ酸、例えば、下記の一般式を有する任意のアミノ酸であってもよい:
-N(R)-(CR’R”)q-C(O)-
式中、Rは、水素、アルキル、アシル、または適切な窒素保護基であり、R’およびR”は、水素、または、それぞれが各事例において独立に選ばれる置換基であり、qは、1、2、3、4、または5などの整数である。例示として、R’およびR”は、独立して、例えば、ただしこれらに限定されないが、水素、または、天然アミノ酸に存在する側鎖、例えば、メチル、ベンジル、ヒドロキシメチル、チオメチル、カルボキシル、カルボキシメチル、グアニジノプロピルなど、およびそれらの誘導体および保護誘導体に相当する。上式は、全ての立体異性変異体を含む。例えば、アミノ酸は、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、リシン、グルタミン、アルギニン、セリン、オルニチン、トレオニンなどから選ばれてもよい。一変異態様では、放出型リンカーは、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、リシン、グルタミン、アルギニン、セリン、オルニチン、およびトレオニンから選ばれる、少なくとも二つのアミノ酸を含む。別の変異態様では、放出型リンカーは、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、リシン、グルタミン、アルギニン、セリン、オルニチン、およびトレオニンから選ばれる2から約5個までのアミノ酸を含む。別の変異態様では、放出型リンカーは、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、リシン、アルギニン、およびオルニチン、およびそれらの組み合わせから選ばれるアミノ酸から成る、トリペプチド、テトラペプチド、ペンタペプチド、またはヘキサペプチドを含む。
【0069】
本明細書に記載される、ビタミン受容体結合性薬剤送達結合体中間体の、別の例示態様では、薬剤、またはその類縁体または誘導体は、アルキルチオール求核体を含む。
【0070】
別の実施態様では、スペーサーリンカーは、下記に定義される置換基X1によって必要に応じて置換される、1-アルキレンスクシンイミド-3-イルであることが可能であり、放出型リンカーは、メチレン、1-アルコキシアルキレン、1-アルコキシシクロアルキレン、1-アルコキシアルキレンカルボニル、1-アルコキシシクロアルキレンカルボニルであることが可能であり、これらの放出型リンカーは、それぞれ、下記に定義される置換基X2によって必要に応じて置換され、これらのスペーサーリンカーおよび放出型リンカーは、それぞれ、スペーサーリンカーに結合されて、スクシンイミド-1-イルアルキルアセタールまたはケタールを形成する。
【0071】
スペーサーリンカーは、カルボニル、チオノカルボニル、アルキレン、シクロアルキレン、アルキレンシクロアルキル、アルキレンカルボニル、シクロアルキレンカルボニル、カルボニルアルキルカルボニル、1-アルキレンスクシンイミド-3-イル、1-(カルボニルアルキル)スクシンイミド-3-イル、アルキレンスルフォキシル、スルフォニルアルキル、アルキレンスルフォキシルアルキル、アルキレンスルフォニルアルキル、カルボニルテトラヒドロ-2H-ピラニル、カルボニルテトラヒドロフラニル、1-(カルボニルテトラヒドロ-2H-ピラニル)スクシンイミド-3-イル、および1-(カルボニルテトラヒドロフラニル)スクシンイミド-3-イルであることが可能であり、これらのスペーサーリンカーは、それぞれ、下記に定義される置換基X1によって必要に応じて置換される。この実施態様では、スペーサーリンカーは、さらに付加される窒素を含んでもよく、スペーサーリンカーは、アルキレンカルボニル、シクロアルキレンカルボニル、カルボニルアルキルカルボニル、1-(カルボニルアルキル)スクシンイミド-3-イルであることが可能であり、これらのスペーサーリンカーは、それぞれ、下記に定義される置換基X1によって必要に応じて置換され、スペーサーリンカーは、該窒素に結合してアミドを形成する。それとは別に、スペーサーリンカーは、さらに付加される硫黄を含んでもよく、スペーサーリンカーは、アルキレン、およびシクロアルキレンであることが可能であり、これらのスペーサーリンカーは、それぞれ、カルボキシによって必要に応じて置換され、スペーサーリンカーは、該硫黄に結合してチオールを形成する。別の実施態様では、スペーサーリンカーは硫黄を含むことが可能であり、スペーサーリンカーは、1-アルキレンスクシンイミド-3-イル、および1-(カルボニルアルキル)スクシンイミド-3-イルであることが可能であり、スペーサーリンカーは、該硫黄に結合してスクシンイミド-3-イルチオールを形成する。
【0072】
前述の実施態様に対する別態様では、スペーサーリンカーは窒素を含むことが可能であり、放出型リンカーは、アルキレンアジリジン-1-イル、カルボニルアルキルアジリジン-1-イル、スルフォキシルアルキルアジリジン-1-イル、またはスルフォニルアルキルアジリジン-1-イルを含む、二価ラジカルであることが可能であり、これらの放出型リンカーは、それぞれ、下記に定義される置換基X2によって必要に応じて置換される。この別態様では、スペーサーリンカーは、カルボニル、チオノカルボニル、アルキレンカルボニル、シクロアルキレンカルボニル、カルボニルアルキルカルボニル、1-(カルボニルアルキル)スクシンイミド-3-イルであることが可能であり、これらのスペーサーリンカーは、それぞれ、下記に定義される置換基X1によって必要に応じて置換され、スペーサーリンカーは、放出型リンカーに結合されてアジリジンアミドを形成する。
【0073】
置換基X1は、アルキル、アルコキシ、アルコキシアルキル、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル、アミノ、アミノアルキル、アルキルアミノアルキル、ジアルキルアミノアルキル、ハロ、ハロアルキル、スルフヒドリルアルキル、アルキルチオアルキル、アリール、置換アリール、アリールアルキル、置換アリールアルキル、ヘトロアリール、置換ヘテロアリール、カルボキシ、カルボキシアルキル、アルキルカルボキシレート、アルキルアルカノエート、グアニジノアルキル、R4-カルボニル、R5-カルボニルアルキル、R6-アシルアミノ、およびR7-アシルアミノアルキルであることが可能であり、R4およびR5は、それぞれ、アミノ酸、アミノ酸誘導体、およびペプチドから独立に選ばれ、R6およびR7は、それぞれ、アミノ酸、アミノ酸誘導体、およびペプチドから独立に選ばれる。この実施態様では、スペーサーリンカーは窒素を含むことが可能であり、結合する置換基X1およびスペーサーリンカーと共にヘテロ環を形成する。
【0074】
本明細書に記載される、各種のビタミン受容体結合性薬剤送達結合体の一態様では、二価リンカーは、一緒にされて3-チオスクシンイミド-1-イルアルキルオキシメチルオキシを形成する、スペーサーリンカーおよび放出型リンカーを含み、該メチルは、必要に応じてアルキル、または置換アリールによって置換される。
【0075】
別態様では、二価リンカーは、一緒にされて3-チオスクシンイミド-1-イルアルキルカルボニルを形成する、スペーサーリンカーおよび放出型リンカーを含み、ここで、該カルボニルは、薬剤、またはその類縁体または誘導体とアシルアジリジンを形成する。
【0076】
別態様では、二価リンカーは、一緒にされて1-アルコキシシクロアルキレンオキシを形成する、スペーサーリンカーおよび放出型リンカーを含む。
【0077】
別態様では、二価リンカーは、一緒にされてアルキレンアミノカルボニル(ジカルボキシアリーレン)カルボキシレートを形成する、スペーサーリンカーおよび放出型リンカーを含む。
【0078】
別態様では、二価リンカーは、一緒にされて2-または3-ジチオアルキルカルボニルヒドラジドを形成する、放出型リンカー、スペーサーリンカー、および放出型リンカーを含み、該ヒドラジドは、薬剤、またはその類縁体または誘導体と共にヒドラゾンを形成する。
【0079】
別態様では、二価リンカーは、一緒にされて3-チオスクシンイミド-1-イルアルキルカルボニルヒドラジドを形成する、スペーサーリンカーおよび放出型リンカーを含み、該ヒドラジドは、薬剤、またはその類縁体または誘導体と共にヒドラゾンを形成する。
【0080】
別態様では、二価リンカーは、一緒にされて2-または3-チオアルキルスルフォニルアルキル(二置換シリル)オキシを形成する、スペーサーリンカーおよび放出型リンカーを含み、該二置換シリルは、アルキル、または必要に応じて置換されるアリールによって置換される。
【0081】
別態様では、二価リンカーは、天然アミノ酸およびそれらの立体異性体から成る群から選ばれる、複数のスペーサーリンカーを含む。
【0082】
別態様では、二価リンカーは、一緒にされて3-ジチオアルキルオキシカルボニルを形成する、放出型リンカー、スペーサーリンカー、および放出型リンカーを含み、該カルボニルは、薬剤、またはその類縁体または誘導体と共にカルボネートを形成する。
【0083】
別態様では、二価リンカーは、一緒にされて3-ジチオアリールアルキルカルボニルを形成する、放出型リンカー、スペーサーリンカー、および放出型リンカーを含み、該カルボニルは、薬剤、またはその類縁体または誘導体と共にカルボネートを形成し、該アリールは必要に応じて置換される。
【0084】
別態様では、二価リンカーは、一緒にされて3-チオスクシンイミド-1-イルアルキルオキシアルキリデンを形成する、スペーサーリンカーおよび放出型リンカーを含み、該アルキリデンは、薬剤、またはその類縁体または誘導体と共にヒドラゾンを形成し、各アルキルは独立に選ばれ、該オキシアルコキシは、必要に応じてアルキルによって置換されるか、または必要に応じてアリールによって置換される。
【0085】
別態様では、二価リンカーは、一緒にされて2-または3-ジチオアルキルオキシカルボニルヒドラジドを形成する、放出型リンカー、スペーサーリンカー、および放出型リンカーを含む。
【0086】
別態様では、二価リンカーは、一緒にされて2-または3-ジチオアルキルアミノを形成する、放出型リンカー、スペーサーリンカー、および放出型リンカーを含み、該アミノは、薬剤、またはその類縁体または誘導体と共にビニローグアミドを形成する。
【0087】
別態様では、二価リンカーは、一緒にされて2-または3-ジチオアルキルアミノを形成する、放出型リンカー、スペーサーリンカー、および放出型リンカーを含み、該アミノは、薬剤、またはその類縁体または誘導体と共にビニローグアミドを形成し、該アルキルはエチルである。
【0088】
別態様では、二価リンカーは、一緒にされて2-または3-ジチオアルキルアミノカルボニルを形成する、放出型リンカー、スペーサーリンカー、および放出型リンカーを含み、該カルボニルは、薬剤、またはその類縁体または誘導体と共にカルボニルを形成する。
【0089】
別態様では、二価リンカーは、一緒にされて2-または3-ジチオアルキルアミノカルボニルを形成する、放出型リンカー、スペーサーリンカー、および放出型リンカーを含み、該カルボニルは、薬剤、またはその類縁体または誘導体と共にカルバメートを形成し、該アルキルはエチルである。
【0090】
別態様では、二価リンカーは、一緒にされて2-または3-ジチオアリールアルキルオキシカルボニルを形成する、放出型リンカー、スペーサーリンカー、および放出型リンカーを含み、該カルボニルは、薬剤、またはその類縁体または誘導体と共にカルバメートまたはカルバモイルアジリジンを形成する。
【0091】
別態様では、多価リンカーは、スペーサーリンカーおよび放出型リンカーを含み、これらは接続されて、下式によって例示される、多価の、3-チオスクシンイミド-1-イルアルキルオキシメチルオキシ基を形成する:
【化30】
式中、nは1から6までの整数であり、アルキル基は必要に応じて置換され、メチルは、さらに別のアルキル、または必要に応じて置換されるアリール基によって必要に応じて置換され、それらは、それぞれ、独立に選ばれるRによって表される。(*)符号は、この多価リンカー断片の、本明細書に記載される結合体の他の部分に対する結合点を表示する。
【0092】
別態様では、多価リンカーは、スペーサーリンカーおよび放出型リンカーを含み、これらは接続されて、下式によって例示される、多価の、3-チオスクシンイミド-1-イルアルキルカルボニル基を形成する:
【化31】
式中、nは1から6までの整数であり、アルキル基は必要に応じて置換される。(*)符号は、この多価リンカー断片の、本明細書に記載される結合体の他の部分に対する結合点を表示する。別態様では、多価リンカーは、スペーサーリンカーおよび放出型リンカーを含み、これらは接続されて、多価の、3-チオアルキルスルフォニルアルキル(二置換シリル)オキシ基を形成し、該二置換シリルは、アルキル、および/または、必要に応じて置換されるアリール基によって置換される。
【0093】
別態様では、多価リンカーは、スペーサーリンカーおよび放出型リンカーを含み、これらは接続されて、下式によって例示される、多価の、ジチオアルキルカルボニルヒドラジド基、または、多価の、3-チオスクシンイミド-1-イルアルキルカルボニルヒドラジドを形成する:
【化32】
式中、nは1から6までの整数であり、該アルキル基は必要に応じて置換され、該ヒドラジドは、(B)、(D)、または、多価リンカー(L)の別部分と共にヒドラゾンを形成する。(*)符号は、この多価リンカー断片の、本明細書に記載される結合体の他の部分に対する結合点を表示する。
【0094】
別態様では、多価リンカーは、スペーサーリンカーおよび放出型リンカーを含み、これらは接続されて、下式によって例示される、多価の、3-チオスクシンイミド-1-イルアルキルオキシアルキルオキシアルキリデン基を形成する:
【化33】
式中、各nは、1から6までから独立に選ばれる整数であり、各アルキル基は、独立に選ばれ、必要に応じて、例えば、アルキル、または必要に応じて置換されるアリールによって置換され、該アルキリデンは、(B)、(D)、または、多価リンカー(L)の別部分と共にヒドラゾンを形成する。(*)符号は、この多価リンカー断片の、本明細書に記載される結合体の他の部分に対する結合点を表示する。
【0095】
さらに別の例示のスペーサーリンカーは、下式によってさらに示される、アルキレン-アミノ-アルキレンカルボニル、アルキレン-チオ-カルボニルアルキルスクシンイミド-3-イルなどを含み:
【化34】
式中、整数xおよびyは、1、2、3、4、または5である。
【0096】
本明細書で用いるシクロアルキレンという用語は、二価の炭素原子鎖であって、その一部が、例えば、シクロプロプ-1,1-ジイル、シクロプロプ-1,2-ジイル、シクロヘキシ-1,4-ジイル、3-エチルシクロペント-1,2-ジイル、1-メチレンシクロヘキシ-4-イルなどの環を形成する、二価の炭素原子鎖を指す。
【0097】
本明細書で用いるヘテロ環という用語は、炭素およびヘテロ原子から成る一価の鎖であって、少なくとも一つのヘテロ原子を含むその一部が、環、例えば、アジリジン、ピロリジン、オキサゾリジン、3-メトキシピロリジン、3-メチルピペラジンなどを形成し、該ヘテロ原子が、窒素、酸素、および硫黄から選ばる、一価の鎖を指す。
【0098】
本明細書で用いるアリールという用語は、炭素原子から成る、単環または多環の、芳香環、例えば、フェニル、ナフチルなどを指す。さらに、アリールは、ヘテロアリールを含んでもよい。
【0099】
本明細書で用いるヘテロアリールという用語は、炭素原子、および、窒素、酸素、および、硫黄から選ばれる少なくとも一つのヘテロ原子から成る、単環または多環の、芳香環、例えば、ピリジニル、ピリミジニル、インドリル、ベンゾキサゾリルなどを指す。
【0100】
本明細書で用いる必要に応じて置換されるという用語は、一般に炭素における、一つ以上の水素原子の、対応する数の置換基、例えば、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、アルキルまたはジアルキルアミノ、アルコキシ、アルキルスルフォニル、シアノ、ニトロなどによる置換を指す。さらに、同じ炭素における、隣接する二つの炭素における、または近傍にある二つの炭素における二つの水素が、二価置換基によって置換されて、対応する環構造を形成してもよい。
【0101】
本明細書で用いるイミノアルキリデニルという用語は、本明細書に定義されるアルキレンおよび窒素原子を含む、二価のラジカルを指し、該アルキレンの末端炭素は、該窒素原子に対して二重結合、例えば、式-(CH)=N-、-(CH2)2(CH)=N-、-CH2C(Me)=N-などを形成する。
【0102】
本明細書で用いるアミノ酸という用語は、一般に、アミノアルキルカルボキシレートを指し、該アルキルラジカルは、必要に応じて、例えば、アルキル、ヒドロキシ、アルキル、スルフヒドリルアルキル、アミノアルキル、カルボキシアルキルなどによって置換され、天然のアミノ酸、例えば、セリン、システイン、メチオニン、アスパラギン酸、グルタミン酸などに対応する基を含む。このようなアミノ酸は、単一の立体異性を有していてもよいし、あるいは、ラセミ混合物を含む、立体異性体の特定の混合物であってもよい。さらに、アミノ酸は、ベータ、ガンマ、およびさらに長いアミノ酸、例えば、下式のアミノ酸も指す:
-N(R)-(CR’R”)q-C(O)-
式中、Rは、水素、アルキル、アシル、または適切な窒素保護基であり、R’およびR”は、水素、または、それぞれが各事例において独立に選ばれる置換基であり、qは、1、2、3、4、または5などの整数である。例示として、R’およびR”は、独立して、例えば、ただしこれらに限定されないが、水素、または、天然アミノ酸に存在する側鎖、例えば、メチル、ベンジル、ヒドロキシメチル、チオメチル、カルボキシル、カルボキシメチル、グアニジノプロピルなど、およびそれらの誘導体および保護誘導体に相当する。上式は、全ての立体異性変異体を含む。例えば、アミノ酸は、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、リシン、グルタミン、アルギニン、セリン、オルニチン、トレオニンなどから選ばれてもよい。本明細書に記載される、ビタミン受容体結合性薬剤送達結合体中間体の、別の例示態様では、薬剤またはその類縁体または誘導体は、アルキルチオール求核体を含む。
【0103】
前述の用語は、組み合わせることによって、化学的関連基、例えば、メチルオキシメチル、エチルオキシエチルなどを指すアルコキシアルキルや、トリフルオロメチルオキシエチル、1,2-ジフルオロ-2-クロロエト-1-イルオキシプロピルなどを指すハロアルコキシアルキルや、ベンジル、フェネチル、α-メチルベンジルなどを指すアリールアルキルや、その他の基を生成することが可能である。
【0104】
本明細書で用いるアミノ酸誘導体という用語は、一般に、必要に応じて置換されるアミノアルキルカルボキシレートであって、該アミノ酸および/または該カルボキシレート基が、それぞれ必要に応じて、例えば、アルキル、カルボキシアルキル、アルキルアミノなどによって置換されるか、または必要に応じて保護される、アミノアルキルカルボキシレートを指す。さらに、必要に応じて置換される、二価の介在性アルキル断片は、さらに別の基、例えば、保護基などを含んでもよい。
【0105】
本明細書で用いるペプチドという用語は、一般に、互いにアミド結合によって共有結合される、一連のアミノ酸および/またはアミノ酸類縁体および誘導体を指す。
【0106】
さらに別のリンカーが、米国特許出願公開第2005/0002942号(その開示を引用により本明細書に含める)、および下記の表1および2に記載される。表中、(*)原子は、さらに付加されるスペーサーまたは放出型リンカー、薬剤、および/または結合性リガンドの結合点である。
【0107】
〔表1〕例示のスペーサーリンカー
【0108】
〔表2〕例示の放出型リンカー
【0109】
別の例示実施態様では、本結合体の水溶性、生物輸送、優先的腎クリアランス、取り込み、吸収、生体分布、および/またはバイオアベイラビリティーを実質的に高めるスペーサーリンカーを含む、二価リンカー(L)が、本明細書において記載される。親水基を含む、例示のスペーサーリンカー、例えば、下式の化合物が記載される:
【化35】
式中、mは、各事例において、1から約8までから独立に選ばれる整数であり;pは、1から約10までから選ばれる整数であり;nは、各事例において、1から約3までから独立に選ばれる整数である。一態様では、mは、各事例において、独立に1から約3までである。別の態様では、nは、各事例において1である。別の態様では、pは、各事例において、独立に約1から約6までである。例示として、前記に対応する、対応ポリプロピレンポリエーテルが、本発明において考慮の対象とされ、親水性スペーサーリンカーとして本結合体の中に含まれてもよい。さらに、ポリエチレンおよびポリプロピレンの混合ポリエーテルも、親水性スペーサーリンカーとして本結合体に含まれてよいことが理解される。さらに、前述のポリエーテル化合物の環状変異体、例えば、テトラヒドロフラニル、1,3-ジオキサン、1,4-ジオキサンなどを含むものも、本発明において考慮の対象とされる。
【0110】
別の例示実施態様では、本明細書に記載される親水性スペーサーリンカーは、複数のヒドロキシル官能基、例えば、モノサッカリド、オリゴサッカリド、ポリサッカリドなどを組み込むリンカーを含む。このポリヒドロキシル含有スペーサーリンカーは、Rが水素またはアルキルである、複数の-(CROH)-基を含むことを理解しなければならない。
【0111】
別の実施態様では、スペーサーリンカーは、下記の断片の一つ以上を含む:
【化36】
式中、Rは、H、アルキル、シクロアルキル、またはアリールアルキルであり;mは、1から約3までの整数であり;nは、1から約5までの整数であり、pは、1から約5までの整数であり、rは、1から約3までから選ばれる整数である。一態様では、整数nは、3または4である。別態様では、整数pは、3または4である。別態様では、整数rは1である。
【0112】
別の実施態様では、スペーサーリンカーは、下記の断片の一つ以上を含む:
【化37】
式中、Rは、H、アルキル、シクロアルキル、またはアリールアルキルであり;mは、1から約3までから独立に選ばれる整数であり;nは、1から約6までの整数であり、pは、1から約5までの整数であり、rは、1から約3までから選ばれる整数である。一変異態様では、整数nは、3または4である。別の変異態様では、整数pは、3または4である。別の変異態様では、整数rは1である。
【0113】
別の実施態様では、スペーサーリンカーは、下記の環状ポリヒドロキシル基の一つ以上を含む:
【化38】
式中、nは、2から約5までの整数であり、pは、1から約5までの整数であり、rは、1から約4までの整数である。一態様では、整数nは、3または4である。別態様では、整数pは、3または4である。別態様では、整数rは、2または3である。リンカーの上記セクションの全ての立体異性体も本発明の考慮の対象とされることが理解される。例えば、上記式において、本セクションは、リボース、キシロース、グルコース、マンノース、ガラクトース、または他の糖から誘導され、かつ、それらの分子上に存在するヒドロキシおよびアルキル側基の立体化学的配置を保持していてもよい。さらに、前述の式において、各種のデオキシ化合物も考慮の対象とされることを理解しなければならない。例示として、下式の化合物も考慮の対象とされる:
【化39】
式中、nは、r以下であり、例えば、rが2または3である場合、nは、それぞれ、1または2であるか、1、2、または3である。
【0114】
別の実施態様では、スペーサーリンカーは、下式のポリヒドロキシル化合物を含む:
【化40】
式中、nおよびrは、それぞれ、1から約3までから選ばれる整数である。一態様では、スペーサーリンカーは、下式の、一つ以上のポリヒドロキシル化合物を含む:
【化41】
本発明においては、リンカーのこのセクションの全ての立体異性形が考慮の対象とされることが理解される。例えば、上式において、本セクションは、リボース、キシロース、グルコース、マンノース、ガラクトース、または他の糖から誘導され、かつ、それらの分子上に存在するヒドロキシおよびアルキル側基の立体化学的配置を保持していてもよい。
【0115】
別構成では、本明細書に記載される親水性リンカーLは、リンカーのバックボーンから隔てられる、ポリヒドロキシル基を含む。例示として、このようなリンカーは、下式の断片を含む:
【化42】
式中、n、m、およりrは整数であり、それぞれ、各事例において、1から約5までから独立に選ばれる。例示の一態様では、mは、各事例において独立に2または3である。別態様では、rは、各事例において1である。別態様では、nは、各事例において1である。一変異態様では、リンカーのバックボーンにポリヒドロキシル基を接続する基は、異なるヘテロアリール基、例えば、ただしこれらに限定されないが、ピロール、ピラゾール、1,2,4-トリアゾール、フラン、オキサゾール、イソキサゾール、チエニル、チアゾール、イソチアゾール、オキサジアゾールなどの基である。同様に、二価の、6員環ヘテロアリール基も考慮の対象とされる。前述の例示的親水性スペーサーリンカーの他の変異態様としては、オキシアルキレン基、例えば、下式が挙げられる:
【化43】
式中、nおよびrは整数であり、それぞれ、各事例において、1から約5までから独立に選ばれ;pは、1から約4までから選ばれる整数である。
【0116】
別態様では、本明細書に記載される親水性リンカーLは、該リンカーのバックボーンから隔てられるポリヒドロキシル基を含む。例示として、このようなリンカーは、下式の断片を含む:
【化44】
式中、nは、1から約3までから選ばれる整数であり、mは、1から約22までから選ばれる整数である。例示の一態様では、nは1または2である。例示の別の一態様では、mは、約6から約10までから選ばれ、具体的には8である。一変異態様では、リンカーのバックボーンにポリヒドロキシル基を接続する基は、異なる官能基、例えば、ただしこれらに限定されないが、エステル、尿素、カルバメート、アシルヒドラゾンなどを含む。同様に環状変異態様も考慮の対象とされる。前述の例示的親水性スペーサーリンカーの他の変異態様としては、オキシアルキレン基、例えば、下式が挙げられる:
【化45】
式中、nおよびrは整数であり、それぞれ、各事例において、1から約5までから独立に選ばれ;pは、1から約4までから選ばれる整数である。
【0117】
別の実施態様では、本親水性スペーサーリンカーは、下式によって例示される、バックボーンモチーフと、分枝側鎖モチーフの組み合わせである:
【化46】
式中、nは、各事例において、0から約3までから独立に選ばれる整数である。上式は、4、5、6員、場合によってはさらに多数員の環状糖を表すことが意図される。さらに、上式は、デオキシ糖であって、式中に存在するヒドロキシ基の内の一つ以上が、水素、アルキル、またはアミノによって置換される糖を表すように修飾されてもよいことを理解しなければならない。さらに、対応するカルボニル化合物も、上式によって考慮の対象とされることを理解しなければならないが、この場合該ヒドロキシル基の内の一つ以上は酸化されて対応するカルボニルに変換される。さらに、この例示の実施態様では、ピラノースは、カルボキシルとアミノ官能基の両方を含み、(a)バックボーンに挿入することが可能であり、(b)この実施態様の変異態様では、分枝側鎖に対する合成上の手がかりを与えることが可能である。他の化学的断片を攻撃するために、これらのヒドロキシル側基のいずれを使用してもよく、例えば、対応するオリゴサッカリドを調製するため、追加の糖を使用してもよい。この実施態様の、他の変異態様、例えば、バックボーンへの、ピラノースまたは他の糖の、単一炭素における挿入、すなわち、ジェミナルな炭素のペアにおけるスピロ配置、または同様の配置も考慮の対象とされる。例えば、リンカー、または薬剤A、または結合性リガンドBの一端または両端は、バックボーンに挿入される糖に対し、1,1;1,2;1,3;1,4;2,3、または他の配置において接続されてよい。
【0118】
別の実施態様では、本明細書に記載される親水性スペーサーは、炭素、水素、および窒素から主に形成され、炭素/窒素比として約3:1以下、または約2:1以下の比を持つ。一態様では、本明細書に記載される親水性リンカーは、複数のアミノ官能基を含む。
【0119】
別の実施態様では、本スペーサーリンカーは、下式の一つ以上のアミノ基を含む:
【化47】
式中、nは、各事例において、1から約3までから独立に選ばれる整数である。一態様では、整数nは、各事例において独立に1または2である。別態様では、整数nは、各事例において1である。
【0120】
別の実施態様では、本親水性スペーサーリンカーは、硫酸エステル、例えば、硫酸のアルキルエステルである。例示として、本スペーサーリンカーは、下式を有する:
【化48】
式中、nは、各事例において、1から約3までから独立に選ばれる整数である。例示として、nは、各事例において独立に1または2である。
【0121】
ヘテロ原子に結合した遊離水素を含む、このようなポリヒドロキシル、ポリアミノ、カルボン酸、硫酸、および類似のリンカーにおいて、これらの遊離水素原子の一つ以上は、それぞれ、適切なヒドロキシル、アミノ、または酸保護基によって保護されてもよいし、あるいは、それとは別に、対応するプロドラッグとしてブロックされてもよい。後者は、特定の用途のため、例えば、一般的または特異的生理的条件下に母体ドラッグを放出するプロドラッグのために選ばれる。
【0122】
リンカーLの、上記例示の実例のそれぞれにおいて、ある場合には、さらに付加されるスペーサーリンカーLS、および/または、さらに付加される放出型リンカーLRが含まれる。これらのスペーサーリンカーおよび放出型リンカーはさらに、不斉炭素原子を含んでもよい。さらに、本明細書において示す立体化学的構成は、単に例示的なものであって、他の立体化学的構成も考慮の対象とされることを理解しなければならない。例えば、一変異態様では、対応する非天然アミノ酸構成が、下記のように、本明細書に記載される結合体の中に含まれてもよい:
【化49】
式中、前述のように、nは、2から約5までの整数であり、pは、1から約5までの整数であり、rは、1から約4までの整数である。
【0123】
本明細書に記載される結合体の調製に有用な親水基を含む、さらに別のリンカーが、同時係属出願の、米国特許仮出願第60/946,092および61/036,186号に記載される。なお、これらの開示を引用により本明細書に含める。
【0124】
別の実施態様では、マルチドラッグ結合体が本明細書において記載される。このようなマルチドラッグ結合体の、いくつかの例示的構成が、本発明において考慮の対象とされ、国際公開第WO 2007/022494号に記載される化合物および組成物を含む。なお、この開示を引用により本明細書に含める。例示として、多価リンカーは、二つ以上の薬剤Aに、受容体結合性リガンドBを接続してもよいが、ただしこの場合、薬剤のうちの一つはツブリシンである。このような多価結合体は、種々の構造的構成、例えば、ただしこれらに限定されないが、下記の、例示の一般式の構成において存在してもよい:
【化50】
式中、Bは受容体結合性リガンドであり、(L1)、(L2)、および(L3)は、それぞれ、親水性スペーサーリンカーを含む、本明細書に記載される多価リンカーであり、必要に応じて、一つ以上の放出型リンカーおよび/または追加のスペーサーリンカーを含み、(A1)、(A2)、および(A3)は、それぞれ、薬剤A、またはその類縁体または誘導体である。追加の薬剤A、またはその類縁体または誘導体、追加のリンカーを含む、他の変異態様、および、(B)、(L)、および(A)それぞれの、別の構成も、本発明の考慮の対象とされる。
【0125】
一変異態様では、本明細書に記載される送達結合体には、一つを超える受容体結合性リガンドBが含まれ、その例としては、下記の、ただしこれらに限定されないが、例示の一般式が含まれる:
【化51】
式中、Bは受容体結合性リガンドであり、(L1)、(L2)、および(L3)は、それぞれ、親水性スペーサーリンカーを含む、本明細書に記載される多価リンカーであり、必要に応じて、一つ以上の放出型リンカーおよび/または付加的スペーサーリンカーを含み、(A1)、(A2)、および(A3)は、それぞれ、薬剤A、またはその類縁体または誘導体である。追加の薬剤A、またはその類縁体または誘導体、追加のリンカーを含む、他の変異態様、および、(B)、(L)、および(A)それぞれの、別の構成も、本発明の考慮の対象とされる。一変異態様では、複数の受容体結合性リガンドBは、同じ受容体に対するリガンドであり、別の変異態様では、複数の受容体結合性リガンドBは、異なる受容体に対するリガンドである。
【0126】
別の例示実施態様では、追加の薬剤は、ある特定の作用機構によって、一つ以上の病原細胞集団に対抗する活性に基づいて選ばれる。例示の作用機構としては、アルキル化剤や、他の微小管阻害剤で、微小管形成を安定化、および/または不安定化する薬剤、例えば、ベータチューブリン剤、サイクリン依存性キナーゼ(CDK)阻害剤、トポイソメラーゼ阻害剤、タンパク合成阻害剤、Ras、Raf、PKC、PI3Kを含む、タンパクキナーゼ阻害剤、および類似の阻害剤、転写阻害剤、抗葉酸塩、熱ショックタンパク遮断剤などが挙げられる。
【0127】
例示のアルキル化剤としては、ただしこれらに限定されないが、マイトマイシンCBIなどが挙げられる。例示のサイクリン依存性キナーゼ(CDK)阻害剤としては、ただしこれらに限定されないが、CYC202、セリシクリブ、R-ロスコビチン、AGM-1470などが挙げられる。例示のトポイソメラーゼ阻害剤としては、ただしこれらに限定されないが、ドキソルビシン、他のアントラサイクリンなどが挙げられる。例示のタンパク合成阻害剤としては、ただしこれらに限定されないが、ブルセアンチンなどが挙げられる。Ras、Raf、PKC、PI3Kを含む、タンパクキナーゼ阻害剤、および類似の阻害剤としては、ただしこれらに限定されないが、L-779,450、R115777などが挙げられる。例示の転写阻害剤としては、ただしこれらに限定されないが、α-アマナチン、アクチノマイシンなどが挙げられる。例示の抗葉酸塩としては、ただしこれらに限定されないが、メトトレキセートなどが挙げられる。例示の熱ショックタンパク遮断剤としては、ただしこれらに限定されないが、ゲルダナマイシンなどが挙げられる。
【0128】
微小管形成を安定化、および/または不安定化するものを含む、例示の微小管阻害剤としては、βチューブリン剤、微小管毒素などが挙げられる。選ばれた受容体に結合する、例示の微小管毒素としては、ただしこれらに限定されないが、ビンカ結合部位に結合する阻害剤、例えば、アレナスタチン、ドラスタチン、ハリコンドリンB、マイスタンシン、フォモプシンA、リゾキシン、ウスチロキシン、ビンブラスチン、ビンクリスチンなど、タキソール結合部位に結合する安定剤、例えば、ジスコデルマリド、エポチロン、タキソール、パクリタキソールなど、コルヒチン結合部位に結合する阻害剤、例えば、コルヒチン、コンブレタスタチン、クラシンA、ポドフィロトキシン、ステガナシンなど、不定部位に結合する他のもの、例えば、クリプトフィシン、ツブリシンなどが挙げられる。
【0129】
一実施態様では、複数の薬剤のうちの一つは、ツブリシン、またはその類縁体または誘導体で、複数の薬剤のうちの他の少なくとも一つは、DNAアルキル化剤である。一変異態様では、複数の薬剤のうちの他の少なくとも一つは、P-糖タンパク(PGP)阻害剤である。別の変異態様では、複数の薬剤のうちの他の少なくとも一つは、ビンカアルカロイド、またはその類縁体または誘導体である。本明細書に記載されるビンカアルカロイドとしては、ただしこれらに限定されないが、ビンデシン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、カタランチン、ビンドリン、ロイロシン、ビノレルビン、イミドカルブ、シブトラミン、トルトラズリル、ビンブラスチン酸など、およびそれらの類縁体および誘導体が挙げられる。
【0130】
結合性リガンド(B)、例えば、ビタミンに対する結合部位は、受容体に特異的に結合することが可能な、任意の結合性リガンド(B)、またはその誘導体または類縁体に対する受容体を含むことが可能であるが、この場合、受容体、または他のタンパクは、病原性細胞集団によって一意に発現されるか、過剰に発現されるか、または優先的に発現される。病原性細胞によって一意に発現されるか、過剰発現されるか、または優先的に発現される表面提示タンパクは、通常、非病原性細胞の上には存在しないか、または低濃度で存在する受容体である。結合性リガンド薬剤送達結合体は、癌細胞、または他のタイプの病原性細胞上の受容体に対し、高い親和度をもって結合することが可能であってもよい。この高親和度結合は、結合性リガンドに内在するものであることも可能であるし、あるいは、結合親和度は、化学的に修飾されたリガンド(例えば、ビタミンの類縁体または誘導体)を用いることによって強化することも可能である。
【0131】
本明細書に記載される、結合性リガンド薬剤送達結合体は、例えば、広く多様なビタミン、または、受容体結合性ビタミン類縁体/誘導体と、リンカーと、薬剤とから形成することが可能である。本明細書に記載される、結合性リガンド薬剤送達結合体は、宿主動物において病原細胞集団に対し、ビタミンなどの結合性リガンドに対する受容体が、該病原細胞においてリガンド結合可能な形で優先的に発現されるために、選択的に標的化することが可能である。結合性リガンド(B)として使用することが可能な、例示のビタミン成分としては、カルニチン、イノシトール、リポ酸、ピリドキサル、アスコルビン酸、ニアシン、パントテン酸、葉酸、リボフラビン、チアミン、ビオチン、ビタミンB12、および脂溶性ビタミンA、D、E、およびKが挙げられる。これらのビタミン、およびその受容体結合性類縁体および誘導体は、二価リンカー(L)によって薬剤と結合されて、本明細書に記載される、結合性リガンド(B)薬剤送達結合体を形成することが可能である。ビタミンという用語は、別様に指示しない限り、ビタミン類縁体および/または誘導体を含むと理解される。例示として、葉酸塩の誘導体であるプテロイン酸、ビオチン類縁体、例えば、ビオシチン、ビオチンスルフォキシド、オキシビオチン、および、その他のビオチン受容体結合性化合物などは、ビタミン、ビタミン類縁体、およびビタミン誘導体と考えられる。本明細書に記載されるビタミン類縁体または誘導体は、それらを、二価リンカー(L)に対して共有結合させるヘテロ原子を組み込むビタミン類を指すことを認識しなければならない。
【0132】
例示のビタミン成分としては、葉酸、ビオチン、リボフラビン、チアミン、ビタミンB12、および、これらのビタミン分子の受容体結合性類縁体および誘導体、および、その他の、関連する、ビタミン受容体結合性分子が挙げられる。
【0133】
一実施態様では、標的化リガンドBは、葉酸塩、葉酸塩の類縁体、または葉酸塩の誘導体である。葉酸塩(folate、フォレート)という用語は、個別的にも、集合的にも、葉酸そのもの、および/または、葉酸受容体に結合することが可能な、葉酸の類縁体および誘導体を指すのに用いられる。
【0134】
葉酸塩類縁体および/または誘導体の例示実施態様としては、フォリン酸、プテロポリグルタミン酸、および葉酸受容体結合性プテリジン、例えば、テトラヒドロプテリン、ジヒドロ葉酸、テトラヒドロ葉酸、およびそれらのデアザおよびジデアザ類縁体が挙げられる。この「デアザ」および「ジデアザ」類縁体という用語は、天然の葉酸構造、またはその類縁体または誘導体において、一つの炭素原子が、一つまたは二つの窒素原子に置換される、公知の類縁体を指す。例えば、デアザ類縁体としては、葉酸塩の、1-デアザ、3-デアザ、5-デアザ、8-デアザ、および10-デアザ類縁体が挙げられる。ジデアザ類縁体としては、例えば、葉酸塩の、1,5-ジデアザ、5,10-ジデアザ、8,10-ジデアザ、および5,8-ジデアザ類縁体が挙げられる。リガンドを形成する複合体として有用な、他の葉酸塩としては、葉酸受容体結合性類縁体アミノプテリン、アメトプテリン(メトトレキセート)、N10-メチル葉酸、2-デアミノ-ヒドロキシ葉酸、デアザ類縁体、例えば、1-デアザメトプテリン、または3-デアザメトプテリン、および3’5’-ジクロロ-4-アミノ-4-デオキシ-N10-メチルプテロイルグルタミン酸(ジクロロメトトレキセート)が挙げられる。上記葉酸類縁体および/または誘導体は、その葉酸受容体結合能力を反映して、慣習的に葉酸塩と命名されるが、このようなリガンドは、外来分子と結合されると、膜貫通輸送、例えば、本明細書に記載される葉酸介在エンドサイトーシスの強化に有効である。葉酸受容体に結合して、該複合体の、受容体介在エンドサイトーシス輸送を起動することが可能な、その他の、適切な結合性リガンドとしては、葉酸受容体に対する抗体が挙げられる。葉酸受容体に対する抗体と複合体を形成する外来分子は、該複合体の膜貫通輸送の誘発に用いられる。
【0135】
葉酸受容体に結合する、さらに別の葉酸類縁体が、米国特許出願第2005/0227985および2004/0242582号に記載される。これらの開示を引用により本明細書に含める。例示として、このような葉酸類縁体は、下記の一般式を有する:
【化52】
式中、XおよびYは、それぞれ独立に、ハロ、R2、OR2、SR3、およびNR4R5から成る群から選ばれ;
U、V、およびWは、-(R6a)C=、-N=、-(R6a)C(R7a)-、および-N(R4a)から成る群からそれぞれ独立に選ばれる二価成分を表し;Qは、CおよびCHから成る群から選ばれ;Tは、S、O、N、および-C=C-から成る群から選ばれ;
A1およびA2は、酸素、硫黄、-C(Z)-、-C(Z)O-、-OC(Z)-、-N(R4b)-、-C(Z)N(R4b)-、-N(R4b)C(Z)-、-OC(Z)N(R4b)-、-N(R4b)C(Z)O-、-N(R4b)C(Z)N(R5b)-、-S(O)-、-S(O)2-、-N(R4a)S(O)2-、-C(R6b)(R7b)-、-N(C≡CH)-、-N(CH2C≡CH)-、C1-C12アルキル、およびC1-C12アルキンオキシから成る群からそれぞれ独立に選ばれ、前式において、Zは酸素または硫黄であり;
R1は、水素、ハロ、C1-C12アルキル、およびC1-C12アルコキシから成る群から選ばれ;R2、R3、R4、R4a、R4b、R5、R5b、R6b、およびR7bは、それぞれ独立に、水素、ハロ、C1-C12アルキル、C1-C12アルコキシ、C1-C12アルカノイル、C1-C12アルケニル、C1-C12アルキニル、(C1-C12アルコキシ)カルボニル、および(C1-C12アルキルアミノ)カルボニルから成る群から選ばれ;
R6およびR7は、それぞれ独立に、水素、ハロ、C1-C12アルキル、およびC1-C12アルコキシから成る群から選ばれ;または、R6およびR7は一緒になってカルボニル基を形成し;R6aおよびR7aは、それぞれ独立に、水素、ハロ、C1-C12アルキル、およびC1-C12アルコキシから成る群から選ばれ;または、R6aおよびR7aは一緒になってカルボニル基を形成し;
Lは、本明細書に記載される二価リンカーであり;かつ、
n、p、r、s、およびtは、それぞれ独立に、0または1のいずれかである。
【0136】
本明細書で用いる場合、葉酸塩という用語は、個別に、結合体の形成に使用される葉酸を指すか、またはそれとは別に、葉酸塩または葉酸受容体に結合することが可能な、葉酸類縁体または誘導体の両方を指す。
【0137】
ビタミンは、窒素を含む葉酸塩であることが可能であり、本実施態様では、スペーサーリンカーは、アルキレンカルボニル、シクロアルキレンカルボニル、カルボニルアルキルカルボニル、1-アルキレンスシンイミド-3-イル、1-(カルボニルアルキル)スクシンイミド-3-イルであることが可能であり、これらのスペーサーリンカーはそれぞれ、必要に応じて置換基X1によって置換され、このスペーサーリンカーは、葉酸の窒素に結合して、イミドまたはアルキルアミドを形成する。本実施態様では、置換基X1は、アルキル、ヒドロキシアルキル、アミノ、アミノアルキル、アルキルアミノアルキル、ジアルキルアミノアルキル、スルフヒドリルアルキル、アルキルチオアルキル、アリール、置換アリール、アリールアルキル、置換アリールアルキル、カルボキシ、カルボキシアルキル、グアニジノアルキル、R4-カルボニル、R5-カルボニルアルキル、R6-アシルアミノ、およびR7-アシルアミノアルキルであることが可能である。上記において、R4およびR5は、アミノ酸、アミノ酸誘導体、およびペプチドからそれぞれ独立に選ばれ、R6およびR7は、アミノ酸、アミノ酸誘導体、およびペプチドからそれぞれ独立に選ばれる。
【0138】
ビタミン類縁体および/または誘導体の例示実施態様としては、ビオチンの類縁体および誘導体、例えば、ビオシチン、ビオチンスルフォキシド、オキシビオチン、およびその他のビオチン受容体結合性化合物などが挙げられる。本明細書に記載される他のビタミンの類縁体および誘導体も本発明の考慮の対象とされることが認識される。一実施態様では、本明細書に記載される薬剤送達結合体において結合性リガンド(B)として使用することが可能なビタミンとしては、活性化マクロファージ上に特異的に発現されるビタミン受容体、例えば、本明細書に記載される葉酸塩、またはその類縁体または誘導体に結合する葉酸受容体に結合するような、ビタミン類が挙げられる。
【0139】
本明細書に記載されるビタミンの外に、他の結合性リガンドも、本明細書に記載される薬剤およびリンカーに結合させてもよく、本発明では、所望の標的に対する薬剤の送達を促進することが可能な結合性リガンド−リンカー−薬剤結合体を形成するものとして考慮の対象とされることが認識される。、これら、その他の結合性リガンドも、ビタミンおよびその類縁体および誘導体に加えて、標的細胞に結合することが可能な薬剤送達結合体の形成に使用してよい。一般に、細胞表面受容体に結合するものであれば、いずれのリガンド(B)も、リンカー−薬剤結合体を結合させることが可能な標的化リガンドとして好適に使用されてよい。本発明において考慮の対象とされる、他の例示のリガンドとしては、ライブラリースクリーニングによって特定されるペプチドリガンド、腫瘍細胞特異的ペプチド、腫瘍細胞特異的アプタマー、腫瘍細胞特異的炭水化物、腫瘍細胞特異的モノクロナールまたはポリクロナール抗体、抗体のFabまたはscFv(すなわち、単一鎖可変域)断片、例えば、転移癌細胞において特異的に発現されるか、または一意に発現されるEphA2、またはその他のタンパクに対する抗体のFab断片、併合ライブラリーから得られる小型有機分子、増殖因子、例えば、EGF、FGF、インスリン、およびインスリン様増殖因子、および相同ポリペプチド、ソマトスタチンおよびその類縁体、トランスフェリン、リポタンパク複合体、胆汁塩、セレクチン、ステロイドホルモン、Arg-Gly-Asp含有ペプチド、レチノイド、各種ガレクチン、δ-オピオイド受容体リガンド、コレシストキニンA受容体リガンド、アンギオテンシンAT1またはAT2受容体に対する特異的リガンド、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体λリガンド、β-ラクタム抗生物質、例えば、ペニシリン、抗微生物剤を含む小型有機分子、および、腫瘍細胞表面または感染性生物上に優先的に発現される受容体に特異的に結合するその他の分子、ある特異的受容体の結合ポケット中に、該受容体またはその他の細胞表面タンパクの結晶構造に基づいて、ぴったりと納まるように設計される、抗菌剤および他の薬剤、腫瘍細胞の表面に優先的に発現される腫瘍抗原、またはその他の分子、またはこれらの分子のいずれかの断片に対する結合性リガンド、が挙げられる。結合性リガンド−薬剤結合体に対し結合部位として機能すると考えられる、腫瘍特異的抗原の例としては、エフリンファミリータンパクの一員、例えば、EphA2の細胞外エピトープが挙げられる。EphA2の発現は、正常細胞では細胞・細胞接合部に限定されるが、転移腫瘍細胞では全細胞表面に広がって分布する。したがって、転移細胞におけるEphA2は、例えば、薬剤に結合された抗体のFab断片との結合が可能であると考えられるが、一方、このタンパクは、正常細胞上のFab断片との結合は可能ではないと考えられ、したがって、転移癌細胞に対して特異的な、結合性リガンド−薬剤結合体が得られる。
【0140】
別の実施態様では、病原細胞集団によって、引き起こされるかまたはその存在が確認される病気の治療法が、本明細書において記載される。宿主における病原細胞集団の存在によって特徴づけられる病気を治療するために、結合性リガンド(B)薬剤送達結合体を使用することが可能であり、その際、該病原細胞集団のメンバーは、結合性リガンド(B)、またはその類縁体または誘導体に対し利用可能な結合部位を有し、該結合部位は、該病原細胞によって一意に発現されるか、過剰発現されるか、または優先的に発現される。この病原細胞の選択的除去は、結合性リガンド(B)、またはその類縁体または誘導体に特異的に結合し、該病原細胞によって一意に発現されるか、過剰発現されるか、または優先的に発現されるような、リガンド受容体、トランスポーター、またはその他の表面提示タンパクに対する、結合性リガンド(B)薬剤送達結合体のリガンド成分の結合によって仲介される。病原細胞によって一意に発現されるか、過剰に発現されるか、または優先的に発現される表面提示タンパクは、非病原細胞においては存在しないか、または低濃度でしか存在しない受容体であり、これが、該病原細胞の選択的除去のための手段を提供する。
【0141】
例えば、表面発現ビタミン受容体、例えば、高親和性葉酸受容体は、癌細胞において過剰に発現される。卵巣、乳腺、結腸、肺、鼻、咽喉、および脳の上皮癌は全て、高レベルの葉酸受容体を発現することが報告されている。実際、全てのヒト卵巣腫瘍の90%を超えるものが、大量のこの受容体を発現することが知られる。したがって、本明細書に記載される結合性リガンド(B)薬剤送達結合体は、様々の腫瘍細胞タイプを治療するのに使用が可能であるばかりでなく、他のタイプの病原細胞、例えば、リガンド受容体、例えば、ビタミン受容体を優先的に発現し、したがって、リガンド、例えば、ビタミン、またはビタミン類縁体または誘導体に対して利用可能な表面結合部位を有するような、感染病原体の治療にも使用することが可能である。一態様では、病原細胞の除去のために、それらに対する標的化を最大化するよう、結合性リガンド−リンカー−薬剤結合体を標的化するための方法が、本明細書において記載される。
【0142】
本明細書において記載される結合性リガンド(B)薬剤送達結合体は、ヒトの臨床医学および獣医学的応用の両方のために使用することが可能である。したがって、病原細胞集団を抱え、該結合性リガンド(例えば、ビタミン)薬剤送達結合体によって治療される宿主動物は、ヒトであることも可能であるし、あるいは、獣医学的応用の場合は、実験、家畜、ペット、または野生動物であることが可能である。本明細書に記載される方法は、宿主動物、例えば、ただしこれらに限定されないが、ヒト、実験動物、例えば、げっ歯類(例えば、マウス、ラット、ハムスターなど)、ウサギ、サル、チンパンジー、ペット動物、例えば、イヌ、ネコ、およびウサギ、家畜、例えば、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、および、檻で飼育される野生動物、例えば、クマ、パンダ、ライオン、トラ、ヒョウ、ゾウ、シマウマ、キリン、ゴリラ、イルカ、およびクジラなどに適用することが可能である。
【0143】
本方法は、これらの宿主動物において様々な病態を引き起こす病原細胞集団に適用することが可能である。病原細胞という用語は、例えば、癌細胞、感染病原体、例えば、細菌およびウィルス、細菌またはウィルス感染細胞、病態を誘発することが可能な活性化マクロファージ、および、リガンド結合性受容体、例えば、ビタミン受容体、または、ビタミンの類縁体または誘導体に結合する受容体を、一意に発現するか、優先的に発現するか、または過剰に発現する、他の、任意のタイプの病原細胞を指す。病原細胞は、病態を引き起こす細胞であって、それに対し、本明細書に記載される結合性リガンド薬剤送達結合体による治療が、該病気の症状の緩和をもたらす、任意の細胞を含むことが可能である。例えば、病原細胞は、ある状況下では病原性となるが、別の状況下では病原性とはならないような宿主細胞、例えば、対宿主性移植片病をもたらす、免疫系の細胞であってもよい。
【0144】
したがって、病原細胞集団は、腫瘍誘発性、すなわち、良性腫瘍および悪性腫瘍を誘発する癌細胞集団であることも可能であるし、あるいは、非腫瘍誘発性であることも可能である。この癌細胞集団は、自発的に発生することも可能であるし、あるいは、宿主の生殖系列に存在する突然変異、または体細胞突然変異のような過程によって発生することも可能であるし、あるいは、化学的、ウィルス、または放射線誘発性であることも可能である。本方法は、癌、例えば、上皮癌、肉腫、リンパ腫、ホジキン病、メラノーマ、中皮腫、バーキットリンパ腫、鼻咽頭癌、白血病、および骨髄腫の治療に利用することが可能である。癌細胞集団としては、ただしこれらに限定されないが、口腔、甲状腺、内分泌腺、皮膚、胃、食道、咽頭、すい臓、結腸、膀胱、骨、卵巣、子宮頸部、子宮、乳房、睾丸、前立腺、直腸、腎臓、肝臓、および肺癌を挙げることが可能である。
【0145】
病原細胞集団が癌細胞集団である実施態様では、結合体投与の効果は、腫瘍塊の縮小または除去、または腫瘍細胞増殖の抑制によって測定される治療反応である。腫瘍の場合、除去は、一次腫瘍細胞の除去、または転移した細胞の除去、あるいは、一次腫瘍から解離する過程にある細胞の除去であることが可能である。さらに、腫瘍の外科的除去、放射線治療、化学療法、または生物学的治療を含む、何らかの治療処置による腫瘍の除去後、該腫瘍の再発を阻止するための、結合性リガンド(B)薬剤送達結合体(例えば、結合性リガンドとしてビタミンが使用される)による予防治療も記載される。この予防治療は、結合性リガンド(B)薬剤送達結合体による初期治療、例えば、一日多数回投与処方による治療であることも可能であるし、および/または、この初期治療(単数または複数)後、数日または数ヶ月の間隔を置いて施される追加治療または一連の処置であることも可能である。したがって、本明細書に記載の方法によって治療される、何らかの病原細胞集団の除去は、病原細胞の数の低下、病原細胞増殖の抑制、病原細胞の再発を阻止する予防治療、または、病気の症状の緩和をもたらす病原細胞の治療を含む。
【0146】
癌細胞が除去される場合、本方法は、腫瘍の外科的切除、放射線療法、化学療法、または生物学的療法、例えば、他の免疫療法、例えば、ただしこれらに限定されないが、モノクロナール抗体療法、免疫変調剤による治療、免疫エフェクター細胞の養子移入(Adoptive transfer)、造血増殖因子、サイトカインによる治療、およびワクチン接種、などと組み合わせて用いることができる。
【0147】
さらに、本方法は、種々の感染症を引き起こす病原細胞集団にも適用が可能である。例えば、本方法は、病原細胞、例えば、細菌、酵母を含む真菌、ウィルス、ウィルス感染細胞、マイコプラスマ、および寄生虫などの集団に対して適用が可能である。本明細書において記載される結合性リガンド(B)薬剤送達結合体によって治療することが可能な感染生物は、動物において病原性となる、当該技術分野で公認済みの、任意の感染生物であって、例えば、グラム陰性、またはグラム陽性球菌または桿菌である細菌などである。例えば、Proteus(プロテウス)種、Klebsiella(クレブシエラ)種、Providencia(プロビデンシア)種、Yersinia(エルジニア)種、Erwinia(エルウィニア)種、Enterobacter(エンテロバクター)種、Salmonella(サルモネラ)種、Serratia(セラシア)種、Aerobacter(アエロバクター)種、Escherichia(エシェリキア)種、Pseudomonas(シュードモナス)種、Shigella(赤痢菌)種、Vibrio(ビブリオ)種、Aeromonas(アエロモナス)種、Campylobacter(キャンピロバクター)種、Streptococcus(連鎖球菌)種、Staphylococcus(ブドウ球菌)種、Lactobacillus(乳酸桿菌)種、Micrococcus(ミクロコッカス)種、Moraxella(モラクセラ)種、Bacillus(バシラス)種、Clostridium(クロストリジウム)種、Corynebacterium(コリネバクテリウム)種、Eberthella(腸チフス菌)種、Micrococcus(ミクロコッカス)種、Mycobacterium(マイコバクテリウム)種、Neisseria(ナイセリア)種、Haemophilus(ヘモフィラス)種、Bacteroides(バクテロイデス)種、Listeria(リステリア)種、Erysipelothrix(エリジペロスリックス)種、Acinetobacter(アシネトバクター)種、Brucella(ブルセラ)種、Pasteurella(パスツレラ)種、Vibrio(ビブリオ)種、Flavobacterium(フラボバクテリウム)種、Fusobacterium(フゾバクテリウム)種、Streptobacillus(ストレプトバチラス)種、Calymmatobacterium(カリマトバクテリウム)種、Legionella(レジオネラ)種、Treponema(トレポネーマ)種、Borrelia(ボレリア)種、Leptospira(レプトスピラ)種、Actinomyces(アクチノミセス)種、Nocardia(ノカルジア)種、Rickettsia(リケッチア)種、および、宿主において病気を引き起こす、その他の、任意の細菌種を、本明細書に記載される結合性リガンド薬剤送達結合体によって治療することが可能である。
【0148】
特に興味あるのは、抗生物質に対して耐性を有する細菌、例えば、抗生物質耐性連鎖球菌種およびブドウ球菌種、または、抗生物質に感受性を有するが、抗生物質で治療される感染の再発を引き起こし、そのため最終的に耐性菌を発生させるような細菌である。抗生物質に感受性を有するが、抗生物質で治療される感染の再発を引き起こし、そのため最終的に耐性菌を発生させるような細菌は、これら抗生物質耐性菌株の発達を回避するために、本明細書に記載される結合性リガンド(B)薬剤送達結合体を、抗生物質の不在下に、または、通常患者に投与されるよりも低いと考えられる用量の抗生物質と組み合わせて用いることによって、治療することが可能である。
【0149】
DNAおよびRNAウィルスなどのウィルスも、記載の方法によって治療することが可能である。このようなウィルスとしては、例えば、ただしこれらに限定されないが、DNAウィルス、例えば、パピローマウィルス、パルボウィルス、アデノウィルス、ヘルペスウィルス、およびワクシニアウィルス、および、RNAウィルス、例えば、アレナウィルス、コロナウィルス、ライノウィルス、呼吸器多核体ウィルス、インフルエンザウィルス、ピコルナウィルス、パラミクソウィルス、レオウィルス、レトロウィルス、レンチウィルス、およびラブドウィルスが挙げられる。
【0150】
本方法はさらに、任意の真菌、例えば、酵母、マイコプラスマ種、寄生虫、または、動物において病気を引き起こす、その他の感染性微生物などに対して適用が可能である。本方法および本組成物によって治療することが可能な真菌の例としては、かびとして成長するか、または酵母様である真菌が挙げられ、例えば、下記の疾病を引き起こす真菌が含まれる:白癬、ヒストプラスマ症、ブラストミセス症、アスペルギルス症、クリプトコックス症、スポロトリクス症、コクシジオイデス真菌症、パラコクシジオイドミコーシス、ムコール症、クロモブラストミコーシス、皮膚糸状菌症、プロトテコーシス、フザリウム症、ひこう疹、菌腫、パラコキシジオイドミコーシス、フェオフィホ真菌症、シュードアレシェリア症、スポロトリクス症、砂毛症、ニューモシスティス感染症、およびカンジダ症など。
【0151】
本方法はさらに、寄生虫感染症、例えば、ただしこれらに限定されないが、下記のものによって引き起こされる感染症を治療するために利用することが可能である:条虫類、例えば、Taenia(サナダムシ)、Hymenolepsis(膜様条虫)、Diphyllobothrium(裂頭条虫)、およびEchinococcus(エキノコックス)種、吸虫類、例えば、Fasciolopsis(肥大吸虫)、Heterophyes(異形吸虫)、Metagonimus(メタゴニムス)、Clonorchis(肝吸虫)、Fasciola(ファスキオラ)、Paragonimus(肺吸虫)、およびSchitosoma(住血吸虫)種、回虫類、例えば、Enterobius(ギョウ虫)、Trichuris(鞭虫)、Ascaris(回虫)、Ancylostoma(鉤虫)、Necator(アメリカ鉤虫)、Strongyloides(ストロンギロイデス)、Trichinella(旋毛虫)、Wuchereria(ブケレリア)、Brugia(ブルギア)、Loa Onchocerca(ロア・オンコセルカ)、およびDracunculus(ドラクンクルス)種、アメーバ類、例えば、Naegleria(ネグレリア)、およびAcanthamoeba(アカントアメーバ)種、および原生動物、例えば、Plasmodium(プラスモジウム)、Trypanosoma(トリパノソーマ)、Leishmania(リーシュマニア)、Toxoplasma(トキソプラスマ)、Entamoeba(エントアメーバ)、Giardia(ジアルジア)、Isospora(イソスポラ)、Cryptosporidium(クリプトスポリジウム)、およびEnterocytozoon(エンテロシトゾーン)種など。
【0152】
本明細書に記載される結合性リガンド薬剤送達結合体が振り向けられる病原細胞は、内因性病原体を抱える細胞、例えば、ウィルス、マイコプラスマ、寄生虫、または細菌に感染した細胞であることが可能であるが、これらの細胞がビタミン受容体などのリガンド受容体を優先的に発現することが条件となる。
【0153】
一実施態様では、結合性リガンド薬剤送達結合体は、該リガンドに特異的に結合し、病原細胞において優先的に発現されるような、受容体、トランスポーター、または、その他の、表面提示タンパクに対し、該結合性リガンド成分を結合させることによって、該標的病原細胞の内部へ移行させることができる。このような内部移行は、例えば、受容体介在エンドサイトーシスを通じて起こることが可能である。この結合性リガンド(B)薬剤送達結合体が放出型リンカーを含む場合、結合性リガンド成分と薬剤とは細胞内において解離し、薬剤は、その細胞内標的に対して作用することが可能となる。
【0154】
ある別態様では、薬剤送達結合体の結合性リガンド成分は、病原細胞に結合し、薬剤を、病原細胞表面にごく近接して配置することが可能である。次に、この薬剤は、放出型リンカーを切断することによって放出することが可能である。例えば、薬剤は、放出型リンカーがジスルフィド基である場合、タンパク、ジスルフィドイソメラーゼによって放出することが可能である。次に、薬剤は、該結合性リガンド(B)薬剤送達結合体が結合した病原細胞によって取り込まれるか、または、該細胞のごく近傍の別の病原細胞によって取り込まれる。それとは別に、放出型リンカーがジスルフィド基である場合、薬剤は、細胞内タンパク、ジスルフィドイソメラーゼによって放出させることが可能であると考えられる。薬剤はさらに、加水分解機構によって、例えば、ある種のベータ除去機構に関して上述した、酸触媒加水分解、または、隣接基支援切断によって放出させることが可能である。どのような放出型リンカー(一つまたは複数)を選択するかが、薬剤が結合体から放出される機構を決定する。このような選択は、薬剤結合体が使用される条件によって前もって定義できることが認識される。それとは別に、薬剤送達結合体は、結合後ただちに標的細胞の内部へ移行させることもでき、薬剤が、ビタミン成分から切り離されることなくその効果を示す状態において、細胞内で結合性リガンドと薬剤とを結合したままにすることも可能である。
【0155】
結合性リガンドがビタミンである、さらに別の実施態様では、このビタミン-薬剤送達結合体は、細胞のビタミン受容体とは独立の機構を通じて作用することが可能である。例えば、この薬剤送達結合体は、血清中に存在する可溶性ビタミン受容体、または、アルブミンなどの血清タンパクに結合してもよく、その結果、非結合薬剤に比べ、より長期の循環を実現したり、非結合薬剤に比べ、病原細胞集団に対する該結合体の活性の上昇を実現することが可能である。
【0156】
一実施態様では、本明細書に記載される方法において使用される薬剤は、少なくとも4時間血清中で安定状態を持続する。別の実施態様では、薬剤は、ナノモル範囲のIC50を有し、別の実施態様では、薬剤は水溶性である。薬剤が水溶性でない場合、二価リンカー(L)は、水溶性を強化するように誘導体形成させることが可能である。薬剤という用語は、上述の薬剤の類縁体または誘導体のいずれをも意味する。薬剤類縁体または誘導体とは、ヘテロ原子、すなわち、それを通じて該薬剤類縁体または誘導体が、二価リンカー(L)に共有結合されるヘテロ原子を組み込む薬剤を意味することが可能であることが認識される。
【0157】
結合性リガンド薬剤送達結合体は、結合性リガンド(B)、二価リンカー(L)、薬剤、および、必要に応じて、結合性リガンド(B)受容体結合成分および薬剤を二価リンカー(L)に結合する、ヘテロ原子リンカーを含むことが可能である。例示の一実施態様では、ビタミン類縁体または誘導体とは、ヘテロ原子、すなわち、それを通じて該ビタミン類縁体または誘導体が、二価リンカー(L)に対し共有結合されるヘテロ原子を組み込むビタミンを意味することが可能であることを認識しなければならない。したがって、この例示実施態様では、ビタミンは、ヘテロ原子リンカーを通じて、二価リンカー(L)に対し共有結合させることが可能であり、あるいは、ビタミン類縁体または誘導体(すなわち、ヘテロ原子を組み込んでいるもの)は、二価リンカー(L)に直接結合させることが可能である。同様の例示実施態様では、薬剤類縁体または誘導体は、薬剤であり、また、薬剤類縁体または誘導体とは、ヘテロ原子、すなわち、それを通じて、該薬剤類縁体または誘導体が、二価リンカー(L)に対し共有結合されるヘテロ原子を含む薬剤を意味してもよい。したがって、これらの例示態様では、薬剤は、ヘテロ原子リンカーを介して、二価リンカー(L)に共有結合させることが可能であり、あるいは、薬剤類縁体または誘導体(すなわち、ヘテロ原子を組み込むもの)は、二価リンカー(L)に直接結合させることが可能である。二価リンカー(L)は、スペーサーリンカー、放出型(すなわち切断可能な)リンカー、および、これら両タイプのリンカーを含む結合体においてスペーサーリンカーを放出型リンカーに結合するための、ヘテロ原子リンカーを含むことが可能である。
【0158】
一般に、二価リンカー(L)と、結合性リガンド(B)またはその類縁体または誘導体との間や、二価リンカー(L)と、薬剤またはその類縁体または誘導体との間における、任意の介在性ヘテロ原子を含む結合体の形成法は、いずれのものでも利用が可能である。さらに、スペーサーリンカー、放出型リンカー、およびヘテロ原子リンカーの間で結合体を形成して二価リンカー(L)を形成する方法に関しても、当該技術分野で公認のいずれのものも使用が可能である。結合体は、これらの分子のいずれかを、例えば、複合体形成、あるいは、水素、イオン、または共有結合を通じて、直接結合することによって形成することが可能である。共有結合は、例えば、酸、アルデヒド、ヒドロキシ、アミノ、スルフヒドリル、またはヒドラゾ基の間に、アミド、エステル、ジスルフィド、またはイミノ結合を形成することによって発生させることが可能である。
【0159】
別の実施態様では、単一または複数用量で投与された場合に宿主動物において病原細胞集団を除去するのに有効な量の、結合性リガンド(B)薬剤送達結合体を含む、薬学的組成物が記載される。本結合性リガンド薬剤送達結合体は、動物に対し、好ましくは、非経口的に、例えば、皮内、皮下、筋肉内、腹腔内、静脈内、または、硬膜下腔内に投与される。それとは別に、本結合性リガンド薬剤送達結合体は、他の医学的に有用なプロセスによって、例えば、経口的に宿主動物に投与することが可能であり、有効であれば、いずれの用量でも、また、適切であれば、徐放剤を含むいずれの治療剤形でも、使用が可能である。
【0160】
非経口剤形の例としては、等張生理的食塩水、5%グルコース、または他の周知の薬学的に受容可能な液体担体、例えば、アルコール液、グリコール類、エステル類、およびアミド類に溶解した、活性剤の水溶液が挙げられる。非経口投与剤形は、本薬剤送達結合体の用量を含む、再構成可能な凍結乾燥体の形状を取ることも可能である。本実施態様の一態様では、当該技術分野で公知の、いくつかの長期徐放剤形の内のいずれか、例えば、米国特許第4,713,249号、5,266,333号、および5,417,982号(これらの開示を引用により本明細書に含める)に記載される、生物分解性炭水化物基質剤形を投与することが可能であり、またはそれとは別に、徐放ポンプ(例えば、浸透圧ポンプ)を使用することも可能である。
【0161】
例示の一態様では、結合性リガンド薬剤送達結合体が介在する病原細胞集団の除去を強化するために、前述の方策と組み合わせて、あるいはその補助として、治療因子を含む、少なくとも一つの追加の組成物を、宿主に投与することが可能であり、あるいは、一つを超える治療因子を投与することが可能である。この治療因子は、化学療法剤、または、投与される結合性リガンド薬剤送達結合体の効力を補足することが可能な、別の治療因子から選ぶことが可能である。
【0162】
例示の一態様では、これらの因子の、治療的に有効な組み合わせを使用することが可能である。例えば、一実施態様では、病原細胞を抱える宿主動物において該病原細胞を除去、減少、または中和するために、結合性リガンド薬剤送達結合体と共に、治療的有効量の治療因子を、例えば、一日当たり複数回投与処方において、約0.1 MIU/m2/投与/日から約15 MIU/m2/投与/日の範囲の量として使用することが可能であり、または、例えば、一日当たり複数回投与処方において、約0.1 MIU/m2/投与/日から約7.5 MIU/m2/投与/日の範囲の量として使用することが可能である(MIU=百万国際単位;m2=平均的ヒトのおよその体表面積)。
【0163】
別態様では、例えば、それ自体細胞傷害性である化学療法剤や、腫瘍透過性を増強するよう作働しうる化学療法剤なども、結合性リガンド薬剤送達結合体と組み合わせて記載の方法において使用するのに好適である。このような化学療法剤としては、アデノコルチコイドおよびコルチコステロイド、アルキル化剤、抗アンドロゲン、抗エストロゲン、アンドロゲン、アクラマイシンおよびアクラマイシン誘導体、エストロゲン、シトシンアラビノシドなどの抗代謝剤、プリン類縁体、ピリミジン類縁体、およびメトトレキセート、ブスルファン、カルボプラチン、クロラムブシル、シスプラチン、および他の白金化合物、タモキシフェン、タキソール、パクリタキセル、パクリタキセル誘導体、Taxotere(登録商標)、シクロフォスファミド、ダウノマイシン、リゾキシン、T2トキシン、植物アルカロイド、プレドニソン、ヒドロキシウレア、テニポシド、マイトマイシン、ディスコデルモリド、微小管阻害剤、エポチロン、ツブリシン、シクロプロピルベンゾ[e]インドロン、seco-シクロプロピルベンゾ[e]インドロン、O-Ac-seco-シクロプロピルベンゾ[e]インドロン、ブレオマイシン、および他の任意の抗生物質、ナイトロジェンマスタード、ニトロソウレア、ビンクリスチン、ビンブラスチン、およびその類縁体および誘導体、例えば、デアセチルビンブラスチン、モノヒドラジド、コルヒチン、コルヒチン誘導体、アロコルヒチン、チオコルヒチン、トリチルシステイン、ハリコンドリンB、ドラスタチン10などのドラスタチン、αアマニチンなどのアマニチン、カンプトテシン、イリノテカン、およびその他のカンプトテシン誘導体、ゲルダマイシン、およびゲルダマイシン誘導体、エストラムスチン、ノコダゾール、MAP4、コルセミド、炎症およびプロ炎症剤、ペプチドおよびペプチド様シグナル伝達阻害剤、およびその他の、任意の、当該技術分野で公認の薬剤またはトキシンが挙げられる。使用が可能な、他の薬剤としては、ペニシリン、セファロスポリン、バンコマイシン、エリスロマイシン、クリンダマイシン、リファンピン、クロラムフェニコール、アミノグリコシド抗生物質、ゲンタマイシン、アンフォテリシンB、アシクロビル、トリフルリジン、ガンシクロビル、ジドブジン、アマンタジン、リバビリン、マイスタンシン、およびその類縁体および誘導体、ゲムシタビン、および、他の、任意の、当該技術分野で公認の抗微生物化合物が挙げられる。
【0164】
本治療因子は、結合性リガンド薬剤送達結合体の前に、後に、または、と同時に、宿主動物に投与することが可能であり、該治療因子は、結合性リガンド薬剤送達結合体を含む、同じ組成物の一部として投与することが可能であり、あるいは、結合性リガンド薬剤送達結合体とは異なる組成物の一部として投与することが可能である。治療因子を治療的に有効な用量として含む治療組成物であれば、いずれのものも使用することが可能である。
【0165】
さらに、結合性リガンド薬剤送達結合体については、一つを超えるタイプを使用することが可能である。例えば、例示として、同時投与プロトコールにおいて、同じ薬剤を有するが、異なるビタミンを持つ複数の結合体によって、宿主動物を治療することが可能である。別の実施態様では、異なる薬剤に結合する同じ結合性リガンドを含む結合体、または、種々の薬剤に結合する種々の結合性リガンドを含む結合体によって、宿主動物を治療することが可能である。別の例示の実施態様では、同じ薬剤送達結合体の一部として複数のビタミンおよび複数の薬剤を含む、同じかまたは種々の異なるビタミン、および、同じかまたは種々の異なる薬剤を含む、結合性リガンド薬剤送達結合体も、使用は可能と考えられる。
【0166】
本結合性リガンド薬剤送達結合体の、一日当たりの単位用量は、宿主の状態、治療される病態、該結合体の分子量、その投与ルートおよび組織分布、および、放射線治療などの他の治療の共時使用の可能性などに依存して、著明に変動する可能性がある。患者に対して投与される有効量は、体表面積、患者の体重、および患者の身体条件に関する医師の評価に基づく。例示の実施態様では、有効用量は、例えば、約1 ng/kgから約1 mg/kg、約1 μg/kgから約500 μg/kg、および、約1 μg/kgから約100 μg/kgの範囲にあることが可能である。
【0167】
別の例示態様では、結合性リガンド薬剤送達結合体を投与するのに有効であるならば、いずれの処方を使用することも可能である。例えば、本結合性リガンド薬剤送達結合体は、単一用量として投与することが可能であるし、あるいは、分割して、1日当たり複数回の投与処方として投与することも可能である。別の実施態様では、連日服用に対する代替として、変動型投与処方、例えば、週当たり1日から3日を使用することが可能であり、このような断続的または変動的連日投与処方も、毎日服用と等価的と見なされ、本明細書に記載される方法の範囲内にある。一実施態様では、病原細胞集団を除去するために、宿主は、結合性リガンド薬剤送達結合体の複数回注入によって治療される。別の実施態様では、宿主は、結合性リガンド薬剤送達結合体を、例えば、12-72時間間隔、または48-72時間間隔で、複数回(好ましくは、約2回から約50回まで)注入される。別の実施態様では、初回注入後、該結合性リガンド薬剤送達結合体の追加注入が、数日または数ヶ月の間隔を置いて該患者に投与することが可能であり、この追加注入は、該病原細胞によって引き起こされる病態の再発を阻止する。
【0168】
一実施態様では、本結合性リガンド薬剤送達結合体において使用することが可能な、ビタミン、またはその類縁体または誘導体としては、活性化マクロファージ上に特異的に発現される受容体、例えば、葉酸塩、またはその類縁体または誘導体に結合する葉酸受容体に結合するものが挙げられる。葉酸塩結合結合体は、例えば、宿主において病態を招く活性化マクロファージを殺すか、または該マクロファージの活性を抑制するのに使用することが可能である。このようなマクロファージ標的性結合体は、活性化マクロファージ介在性病態に苦しむ患者に対して投与されると、結合薬剤を、活性化マクロファージ集団中に濃縮し、それらに結合させ、活性化マクロファージを殺すか、または、マクロファージ機能を抑制する。活性化マクロファージ集団の除去、縮小、または非活性化は、治療される病態に特徴的な、活性化マクロファージ介在性の疾病発生を阻止または緩和するように働く。活性化マクロファージによって仲介されることが知られる、例示の疾患としては、慢性関節リューマチ、潰瘍性腸炎、クローン病、乾癬、骨髄炎、多発性硬化症、アテローム硬化症、肺線維症、サルコイドーシス、全身性硬化症、移植器官拒絶症(GVHD)、および慢性的炎症が挙げられる。本薬剤送達結合体の投与は、通常、病態の症状が緩和または除去されるまで続けられる。
【0169】
例示として、活性化マクロファージを殺すため、または、活性化マクロファージの機能を抑制するために投与される、結合性リガンド薬剤送達結合体は、該病態に苦しむ動物または患者に対し、非経口的に、例えば、皮内、皮下、筋肉内、または静脈内に、薬学的に受容可能な担体と組み合わせて投与することが可能である。別の実施態様では、該結合性リガンド薬剤送達結合体は、動物または患者に対し、他の、医学的に有用な手順を通じて投与することが可能であり、有効用量を、標準的な、または徐放型の剤形として投与することが可能である。別の態様では、本治療法は、単独で、あるいは、活性化マクロファージによって仲介される病態の治療用として公認される、他の治療法と組み合わせて、使用することが可能である。
【0170】
本明細書に記載される薬剤送達結合体は、当該技術分野で公認の合成法によって調製することが可能である。この合成法は、必要に応じて付加されるヘテロ原子、または、スペーサーリンカー、放出型リンカー、薬剤、および/または結合性リガンドの上に既に存在するヘテロ原子の選択に応じて選ばれる。一般に、関連結合形成反応は、Richard C. Larock, “Comprehensive Organic Transformations, a guide to functional group preparations (有機変換反応総覧−官能基調製の手引き)” VCH Publishers, Inc. New York (1989)、およびTheodora E. Greene & Peter G.M. Wuts, “Protective Groups in Organic Synthesis (有機合成における保護基)” 2d edition, John Wiley & Sons, Inc. New York (1991)に記載される。なお、これらの開示を引用により本明細書に含める。
【実施例】
【0171】
<化合物例>
本明細書に記載される化合物は、本明細書に記載されるプロセスおよび合成法による外、一般的な合成法によって調製してもよい。特に、本化合物を調製する方法は、米国特許出願第2005/0002942号に記載される。なお、この開示を引用により本明細書に含める。
【0172】
葉酸ペプチドの一般的形成。 葉酸塩含有ペプチジル断片Pte-Glu-(AA)n-NH(CHR2)CO2H (3)は、標準法によるポリマー支持連続法、例えば、下記のスキームに示すように、酸感受性Fmoc-AA-Wang樹脂(1)によるFmoc技法によって調製する:
【化53】
(a) 20%ピペリジン/DMF; (b) Fmoc-AA-OH, PyBop, DIPEA, DMF; (c) Fmoc-Glu(O-t-Bu)- OH, PyBop, DIPEA, DMF; (d) 1. N10(TFA)-Pte-OH; PyBop, DIPEA, DMSO; (e) TFAA, (CH2SH)2, /-Pr3SiH; (f) NH4OH, pH 10.3。
【0173】
本明細書に記載される手順に関する、この例示実施態様では、R1はFmocであり、R2は、所望の、適切に保護されるアミノ酸側鎖であり、DIPEAは、ジイソプロピルエチルアミンである。標準的結合手順、例えば、PyBOP、および、その他の、本明細書で記載されるか、または当該技術分野で公知の分子が、効率的結合を保証するための活性試薬として適用される。Fmoc保護基は、各結合ステップ後、標準条件下に、例えば、ピペリジン、テトラブチルアンモニウムフロリド(TBAF)などによる処理の際に取り除かれる。適切に保護されるアミノ酸のビルディングブロック、例えば、Fmoc-Glu-OtBu、N10-TFA-Pte-OHなどが、上記スキームに記載されるように使用され、ステップ(b)ではFmoc-AA-OHで表される。したがって、AAは、適切に保護される、任意のアミノ酸開始材料を指す。本明細書において用いるアミノ酸という用語は、一つ以上の炭素で隔てられた、アミンおよびカルボン酸官能基の両方を有する、任意の試薬を指し、天然のアルファおよびベータアミノ酸の外、これらのアミノ酸の誘導体および類縁体も含む。特に、保護された側鎖を有するアミノ酸、例えば、保護セリン、トレオニン、システイン、アスパラギン酸塩なども、本明細書に記載される葉酸塩-ペプチド合成において使用が可能である。さらに、ガンマ、デルタ、またはさらに長い相同アミノ酸も、本明細書に記載される葉酸塩-ペプチド合成法において開始材料として含めてよい。さらに、相同側鎖、または交互分枝構造を持つアミノ酸類縁体、例えば、ノルロイシン、イソバリン、β-メチルシステイン、β,β-ジメチルシステインなども、本明細書に記載される葉酸塩-ペプチド合成法において開始材料として含めてよい。
【0174】
Fmoc-AA-OHを含む結合順序(ステップ(a)および(b))は、固相支持ペプチド(2)を調製するために“n”回実行される。ここに、nは、整数であり、0から約100に等しくともよい。最後の結合ステップ後、残余のFmoc基は除かれ(ステップ(a))、ペプチドは、続いて、グルタミン酸塩誘導体に結合され(ステップ(c))、脱保護され、TFA-保護プテロイン酸に結合される(ステップ(d))。続いて、ペプチドは、トリフルオロ酢酸、エタンジオール、およびトリイソプロピルシラン処理によって、ポリマー支持体から切断される(ステップ(e))。上記反応条件から、t-Bu、t-Boc、およびTrt保護基の同時除去が実現されるが、これらの基は上記適切に保護されるアミノ酸側鎖の一部を形成してもよい。TFA保護基は、塩基処理によって取り除かれ(ステップ(f))、葉酸塩含有ペプチジル断片(3)が得られる。
【化54】
【0175】
本明細書に記載される一般的手順によれば、Wang樹脂に結合される4-メトキシトリチル(MTT)-保護Cys-NH2は、下記の順序で反応させられる:1) a. Fmoc-Asp(OtBu)-OH, PyBOP, DIPEA; b. 20% ピペリジン/DMF; 2) a. Fmoc-Asρ(OtBu)- OH, PyBOP, DIPEA; b. 20% ピペリジン/DMF; 3) a. Fmoc-Arg(Pbf)-OH, PyBOP, DIPEA; b. 20% ピペリジン/DMF; 4) a. Fmoc-Asp(OtBu)-OH, PyBOP, DIPEA; b. 20% ピペリジン/DMF; 5) a. Fmoc-Glu-OtBu, PyBOP, DIPEA; b. 20% ピペリジン/DMF; 6) N10-TFA-プテロイン酸, PyBOP, DIPEA。MTT、tBu、およびPbf保護基は、TFA/H2O/TIPS/EDT (92.5:2.5:2.5:2.5)によって取り除かれ、TFA保護基は、NH4OH水溶液によってpH=9.3において取り除かれた。選択1H NMR (D2O) δ (ppm) 8.68 (s, IH, FA H-7), 7.57 (d, 2H, J = 8.4 Hz, FA H-12 &16), 6.67 (d, 2H, J = 9 Hz, FA H-13 &15), 4.40-4.75 (m, 5H), 4.35 (m, 2H), 4.16 (m, IH), 3.02 (m, 2H), 2.55-2.95 (m, 8H), 2.42 (m, 2H), 2.00-2.30 (m, 2H), 1.55- 1.90 (m, 2H), 1.48 (m, 2H); MS (ESI, m+lT) 1046。
【化55】
【0176】
本明細書に記載される一般的手順にしたがって、Wang樹脂結合4-メトキシトリチル(MTT)-保護Cys-NH2を下記の順序にしたがって反応させた:1) a. Fmoc-β-アミノアラニン(NH-MTT)-OH, PyBOP, DIPEA; b. 20% ピペリジン/DMF; 2) a. Fmoc- Asp(OtBu)-OH, PyBOP, DIPEA; b. 20% ピペリジン/DMF; 3) a. Fmoc-Asp(OtBu)-OH, PyBOP, DIPEA; b. 20% ピペリジン/DMF; 4) a. Fmoc-Asp(OtBu)-OH, PyBOP, DIPEA; b. 20% ピペリジン/DMF; 5) a. Fmoc-Glu-OtBu, PyBOP, DIPEA; b. 20% ピペリジン/DMF; 6) N10-TFA-プテロイン酸, PyBOP, DIPEA。MTT、tBu、およびTFA保護基は、2% ヒドラジン/DMF; b. TFA/H2O/TIPS/EDT (92.5:2.5:2.5:2.5)によって除去した。
【0177】
調製には、下表に示す試薬を用いた:
【0178】
結合ステップは下記のように実行した:ペプチド合成容器の中に樹脂を加え、アミノ酸液、DIPEA、およびPyBOPを加える。アルゴンを1時間通気し、DMFおよびIPAで3回洗浄する。Fmoc脱保護のためにDMFに溶解した20%ピペリジンを用い、各アミノ酸結合前に3回洗浄(10分)する。続けて、全て6個の結合ステップを完了する。最後に、樹脂を、DMFに溶解した2%ピペリジンにて3回洗浄し(5分)、プテロイン酸上のTFA保護基を切断する。
【0179】
下記の試薬、92.5% (50 ml) TFA、2.5% (1.34 ml) H2O、2.5% (1.34 ml)トリイソプロピルシラン、2.5% (1.34 mol)エタンジチオール、を用いて、ペプチド類縁体を樹脂から切り離す。この切断ステップは下記のように実行した。25 mlの切断試薬を加え、1.5時間通気し、液相を採取し、残余の試薬で3回洗浄する。約5 mLとなるまで蒸発させ、エチルエーテルにて沈殿させる。遠心し、乾燥する。精製は下記のように実行した:カラム-Waters NovaPak C18 300x19 mm;バッファーA=10 mM酢酸アンモニウム;B=CAN;1%Bから20%Bまで40分、15 ml/分、350 mg(64%)まで;HPLC-RT 10.307分、純度100%、1H HMRスペクトラムは、割り当てられた構造と一致し、MS (ES-): 1624.8, 1463.2, 1462.3, 977.1, 976.2, 975.1, 974.1, 486.8, 477.8。
【化56】
【0180】
本明細書に記載される一般的手順にしたがって、Wang樹脂結合MTT-保護Cys-NH2を下記の順序にしたがって反応させた:1) a. Fmoc-ASP(OtBu)-OH, PyBOP, DIPEA; b. 20% ピペリジン/DMF; 2) a. Fmoc- Asp(OtBu)-OH, PyBOP, DIPEA; b. 20% ピペリジン/DMF; 3) a. Fmoc-Arg(Pbf)-OH, PyBOP, DIPEA; b. 20% ピペリジン/DMF; 4) a. Fmoc-Asp(OtBu)-OH, PyBOP, DIPEA; b. 20% ピペリジン/DMF; 5) a. Fmoc-Glu(γ-OtBu)-OH, PyBOP, DIPEA; b. 20% ピペリジン/DMF; 6) N10-TFA-プテロイン酸, PyBOP, DIPEA。MTT、tBu、およびTFA保護基は、TFA/H2O/TIPS/EDT (92.5:2.5:2.5:2.5)によって除去し、TFA保護基は、NH4OH水溶液をpH=9.3で用いて除去した。1H HMRスペクトラムは、割り当てられた構造と一致した。
【化57】
【0181】
本明細書に記載される一般的手順にしたがって、Wang樹脂結合MTT-保護D-Cys-NH2を下記の順序にしたがって反応させた:1) a. Fmoc-D-ASP(OtBu)-OH, PyBOP, DIPEA; b. 20% ピペリジン/DMF; 2) a. Fmoc- Asp(OtBu)-OH, PyBOP, DIPEA; b. 20% ピペリジン/DMF; 3) a. Fmoc-D-Arg(Pbf)-OH, PyBOP, DIPEA; b. 20% ピペリジン/DMF; 4) a. Fmoc-D-Asp(OtBu)-OH, PyBOP, DIPEA; b. 20% ピペリジン/DMF; 5) a. Fmoc-D-Glu-OtBu, PyBOP, DIPEA; b. 20% ピペリジン/DMF; 6) N10-TFA-プテロイン酸, PyBOP, DIPEA。MTT、tBu、およびPbf保護基は、TFA/H2O/TIPS/EDT (92.5:2.5:2.5:2.5)によって除去し、TFA保護基は、NH4OH水溶液をpH=9.3で用いて除去した。1H HMRスペクトラムは、割り当てられた構造と一致した。
【化58】
【0182】
同様にEC089も、本明細書に記載する通りに調製した。
【化59】
【0183】
ツブリシンヒドラジドの調製。EC0347の調製によって例示する。N,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA、6.1 μL)、およびイソブチルクロロフォルメート(3.0 μL)を、-15℃において、無水EtOAc(2.0 mL)に溶解したツブリシンB(0.15 mg)の溶液に、シリンジを用いて順次加えた。アルゴン下-15℃で45分攪拌した後、この反応混合物を-20℃に冷却し、それに、無水ヒドラジン(5.0 μL)を加えた。この反応混合物を、アルゴン下、-20℃で3時間攪拌し、1.0 mMリン酸バッファー(pH7.0, 1.0 mL)で反応停止させ、精製のために分取用HPLCに注入した。カラム:Waters XTerra Prep MS C18 10 μm, 19x250 mm;移動相A=1.0 mMリン酸ナトリウムバッファー、pH7.0;移動相B:アセトニトリル;方法:1%Bから80%Bまで20分、流速=25 mL/分。15.14-15.54分において得られた分画を収集し、凍結乾燥したところ、EC0347が、白色固体(2.7 mg)として生成された。上述の方法は、ツブリシン開始化合物を適切に選択することにより、他のツブリシンヒドラジドの調製にも同様に適用が可能である。
【化60】
【0184】
結合試薬EC0311の合成。DIPEA (0.60 mL)を、無水DCM(5.0 mL)に溶解した、HOBt-OCO2-(CH2)2-SS-2-ピリジンHCl (685 mg, 91%)の縣濁液に、0℃において加え、アルゴン下に2分間攪拌し、それに、無水ヒドラジン(0.10 mL)を加えた。この反応混合物を、アルゴン下に0℃で10分、室温でさらに30分攪拌し、ろ過し、ろ液を、フラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル、DCMに溶解した2%MeOH)にて精製したところ、EC0311が、透明粘ちょうな油状物として得られ(371 mg)、これは放置すると固化した。
【化61】
【0185】
ツブリシンジスルフィドの調製(段階的プロセス)。EC0312について例示する。DIPEA(36 μL)、およびイソブチルクロロフォルメート(13 μL)を、-15℃において、無水EtOAc(2.0 mL)に溶解したツブリシンB(82 mg)の溶液に、シリンジを用いて順次加えた。アルゴン下-15℃で45分攪拌した後、この反応混合物に、無水EtOAc (1.0 mL)に溶解したEC0311の溶液を加えた。得られた溶液を、アルゴン下、-15℃で15分、室温でさらに45分攪拌し、濃縮し、残留物を、フラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル、DCMに溶解した2から8%MeOH)にて精製したところ、EC0312が、白色固体として得られた(98 mg)。上述の方法は、ツブリシン開始化合物を適切に選択することにより、他のツブリシンヒドラジドの調製にも同様に適用が可能である。
【化62】
【0186】
ヒドロキシダウノルビシンピリジルジスルフィド。同様に、この化合物も本明細書に記載されるとおり、上述のスキームにしたがって調製し、65%の収率で得られた。
【化63】
【0187】
ツブリシンBピリジルジスルフィド。同様に、この化合物も本明細書に記載されるとおりに調製した。
【化64】
【0188】
EC0488。この化合物は、本明細書に記載される一般的ペプチド合成法によるSPPSによって調製したが、この方法では、H-Cys(4-メトキシトリチル)-2-クロロトリチル-樹脂から開始して、下記のSPPS試薬を用いる:
【0189】
結合ステップ。ペプチド合成容器に樹脂を加え、アミノ酸液、DIPEA、およびPyBOPを加える。アルゴンを1時間通気し、DMFおよびIPAで3回洗浄する。Fmoc脱保護のためにDMFに溶解した20%ピペリジンを用い、各アミノ酸結合前に3回洗浄(10分)する。続けて、9個の結合ステップを全て完了する。最後に、樹脂を、DMFに溶解した2%ヒドラジンで処理し、プテロイン酸上のTFA保護基を切断し、樹脂をDMF(3回)、MeOH(3回)にて洗浄し、樹脂をアルゴンで30分通気する。
【0190】
切断ステップ。試薬:92.5% TFA、2.5% H2O、2.5%トリイソプロピルシラン、2.5%エタンジチオール。樹脂を、アルゴン通気下、切断試薬で3回(10分、5分、5分)処理し、液相を採取し、樹脂を一度切断試薬で洗浄し、溶液を合わせる。5 mLが残留するまで回転蒸発させ、ジエチルエーテル(35 mL)にて沈殿させる。遠心し、ジエチルエーテルで洗浄し、乾燥する。未精製固体(約100 mg)の約半分をHPLCで精製した。
【0191】
HPLC精製ステップ。カラム:Waters XTerra Prep MS C18 10 μm, 19x250 mm;溶媒A=10 mM酢酸アンモニウム;溶媒B=ACN;方法:5分0%Bから25分20%Bまで、26 ml/分。産物を含む分画を収集し、凍結乾燥したところ、43 mgのEC0488が得られた(51%収率)。1H HMRおよびLC/MS(精密質量 1678.62)は、産物と一致した。
【化65】
【0192】
EC0351。同様に、この化合物も本明細書に記載するとおりに調製した。
【化66】
【0193】
ジスルフィド含有ツブリシン結合体の一般的合成。いくつかの天然産ツブリシンのピリジニルジスルフィド誘導体のうち、R1がH、またはOHであり、R10がアルキル、またはアルケニルであるものについて例示する。チオール基を含む、結合性リガンド−リンカー中間体を、脱イオン水(約20 mg/mL、使用前にアルゴンにて10分通気)に採取し、この縣濁液のpHを、飽和NaHCO3(使用前にアルゴンで10分通気)で約6.9に調整した(pHが上昇したとき、縣濁液は溶液となる場合がある)。この溶液に適宜追加の脱イオン水を加え(約20-25%)、この水溶液に直ちに、THFに溶解したEC0312(約20 mg/mL)を加える。この反応混合液は速やかに均一となる。アルゴン下に、例えば、45分攪拌した後、この反応混合液を、2.0 mMリン酸ナトリウムバッファー(pH7.0、約150容量パーセント)で希釈し、THFを減圧除去する。得られた縣濁液はろ過されるが、ろ液は、分取用HPLC(本明細書で記載される)で精製してもよい。分画を凍結乾燥し、結合体を単離する。上述の方法は、ツブリシン開始化合物を適切に選択することにより、他のツブリシン結合体の調製にも同様に適用が可能である。
【化67】
【0194】
結合体調製のための一般法(1ポット)。EC0543の調製について例示する。DIPEA(7.8 μL)、およびイソブチルクロロフォルメート(3.1 μL)を、-15℃において、無水EtOAc(0.50 mL)に溶解したツブリシンA(18 mg)の溶液に、シリンジを用いて順次加えた。アルゴン下-15℃で35分攪拌した後、この反応混合物に、無水EtOAc (0.50 mL)に溶解したEC0311(5.8 mg)の溶液を加えた。冷却を解除し、反応混合物を、アルゴン下さらに45分攪拌し、濃縮し、減圧し、残留物を、THF(2.0 mL)に溶解した。一方、EC0488 (40 mg)を、脱イオン水(使用前にアルゴンにて10分通気)に溶解し、この溶液のpHを、飽和NaHCO3で約6.9に調整した。このEC0488溶液にさらに脱イオン水を加え、全体容量を2.0 mLとして、この液に直ちに、活性化ツブリシンを含むTHF液を加えた。速やかに均一となったこの反応混合液をアルゴン下50分攪拌し、2.0 mMリン酸ナトリウムバッファー(pH7.0、15 mL)で反応停止させた。得られた白濁液をろ過し、ろ液を、精製のために、分取用HPLCに注入した。カラム:Waters XTerra Prep MS C18 10 μm, 19x250 mm;移動相A=2.0 mMリン酸ナトリウムバッファー、pH7.0;移動相B:アセトニトリル;方法:1%Bが5分、次いで1%Bから60%Bまで次の30分、流速=26 mL/分。20.75-24.50分において得られた分画を収集し凍結乾燥したところ、EC0543が、黄白色の綿毛状固体(26 mg)として得られた。上述の方法は、ツブリシン開始化合物を適切に選択することにより、他のツブリシン結合体の調製にも同様に適用が可能である。
【化68】
【0195】
EC305。EC089 (86 mg)を、脱イオン水(4.0 mL、使用前にアルゴンにて10分通気)に縣濁し、この縣濁液のpHを、飽和NaHCO3(使用前にアルゴンにて10分通気)で約6.9に調整した(pHが上昇すると、縣濁液は溶液になった)。この溶液にさらに脱イオン水を加え、全体容量を5.0 mLとして、この水溶液に直ちに、THF(5.0 mL)に溶解したEC0312 (97 mg)の溶液を加えた。この反応混合液は速やかに均一となった。この反応混合液を、アルゴン下45分攪拌した後、2.0 mMリン酸ナトリウムバッファー(pH7.0、15 mL)で希釈し、THFをRotavaporにおいて除去した。得られた縣濁液をろ過し、ろ液を、精製のために、分取用HPLCに注入した(カラム:Waters XTerra Prep MS C18 10 μm, 19x250 mm;移動相A=2.0 mMリン酸ナトリウムバッファー、pH7.0;移動相B:アセトニトリル;方法:5%Bから80%Bまで25分、流速=25 mL/分)。10.04-11.90分において得られた分画を収集し凍結乾燥したところ、EC0305が、黄白色の綿毛状固体(117 mg)として得られた。
【0196】
【化69】
【0197】
EC0352。同様に、この化合物も本明細書に記載される通りに調製した。EC0352は、ヒドロキシダウノルビシンピリジルジスルフィドと、EC0351との間にジスルフィド結合を形成することによって調製し、55%収率であった。
【化70】
【0198】
EC0358。同様に、この化合物も本明細書に記載される通りに調製した。EC0358は、DMF/DBUにおいて、EC0352と、ツブリシンBピリジルジスルフィドの間にジスルフィド結合を形成することによって調製し、40%収率であった。
【0199】
下記の例示の実施例も、本明細書に記載されるプロセス、合成法、およびツブリシンを用いて調製した。
【化71】
【化72】
【化73】
【0200】
<方法実施例>
方法:相対的アフィニティーアッセイ。葉酸塩と比較した場合の、葉酸受容体(FR)に対する相対的親和度は、以前に記載した方法(Westerhof, G.R., J.H. Schornagel, et al. (1995) Mol. Pharm. 48:459-471)に若干の修正を加えて求めた。簡単に言うと、FR陽性KB細胞を、24ウェル培養プレートに高密度に撒き、18時間放置してプラスチックに接着させた。指定のウェルにおいて、消費された培地は、100 nM 3H-葉酸を添加した、葉酸塩無添加RPMI(FFRPMI)と、漸増濃度の試験品または葉酸の存在下に、または不在下に交換した。細胞は、37℃で60分インキュベートし、次いで、PBS, pH7.4で3回潅水した。PBS, pH7.4に溶解した1% SDSを、ウェル当たり、500マイクロリットル加えた。次に、細胞分解物を収集し、5 mLのシンチレーションカクテルを入れたバイアルのそれぞれに加え、次に放射能についてカウントした。陰性コントロールチューブは、FERPMIに溶解した3H-葉酸のみを含んでいた(競合因子無し)。陽性コントロールチューブは、最終濃度の1 mM葉酸を含むが、これらのサンプルにおいて測定したCPM(標識の非特異的結合を表す)を、全てのサンプルから差し引いた。注意すべきこととして、相対的親和度は、KB細胞上のFRに結合した3H-葉酸の50%に取って代わるのに必要な化合物のモル比の逆数と定義され、FRに対する葉酸の相対的親和度は1に設定された。
【0201】
10%血清/FDRPMIにおけるEC0305の、相対的アフィニティーアッセイ結果を図4に示す。葉酸に比べると、EC0305は、葉酸受容体に対し96%の相対親和度を示した。
【0202】
方法:細胞のDNA合成の抑制。本明細書に記載される化合物は、その薬剤が、葉酸受容体陽性KB細胞の成育を抑制する能力について予測する、インビトロ細胞傷害性アッセイを用いて評価した。化合物は、本明細書に記載されるプロトコールにしたがって調製された、それぞれの化学療法剤に結合された葉酸塩から構成される。KB細胞は、少なくとも100倍過剰な葉酸の存在下または不在下に、表示濃度の葉酸塩-薬剤結合体に、37℃で最大7時間暴露した。次に、細胞を、新鮮な培地で1回潅水し、新鮮な培地において、37℃で72時間インキュベートした。細胞生存率は、3H-チミジン取り込みアッセイを用いて評価した。本明細書に記載される化合物については、用量依存性細胞傷害性が一般に測定可能であり、多くの場合、IC50値(新規合成DNAへの3H-チミジン取り込みを50%低下させるのに必要な、薬剤結合体の濃度)は、低ナノモル範囲にあった。さらに、結合体の細胞傷害性は、過剰な遊離葉酸の存在下に低下した。これは、観察された細胞殺作用は、葉酸受容体に対する結合によって仲介されることを示す。
【0203】
例えば、EC0305は、図1に示すように、KB細胞に対する2時間のパルスおよび72時間のチェイスの後で、葉酸受容体に対し用量反応性の挙動および特異性を示した。EC0305のIC50は、約1.5 nMであった。さらに、図1に示すように、EC0305の細胞傷害活性は、過剰な葉酸の存在下に阻止された。最後に、EC0305は、FR陰性細胞に対しては活性をまったく示さなかった。これらの結果は、EC0305が、葉酸塩選択性の、または葉酸塩特異的な機構を通じて作用することを示唆する。
【0204】
方法:各種癌細胞系統に対するインビトロ試験。各種癌細胞系統について、IC50値を求めたが、その結果を下表に示す。細胞を、24ウェルFalconプレートに高密度に撒き、一晩放置してほぼ集密な単層を形成させた。試験化合物添加の30分前に、全てのウェルから消費された培地を吸引し、新鮮な、葉酸塩欠乏RPMI培地(FFRPMI)と交換した。ウェルのサブセットを、100 μM葉酸を含む培地を受容するように指定した。指定されたウェルの中にある細胞は、標的特異性を決定するために使用される。理論に拘束されるものではないが、過剰な葉酸の存在下に、すなわち、FR結合に対する競合が存在する条件下に、試験化合物によって産み出される細胞傷害活性は、全活性のうちの、FR特異的送達とは無関係の部分に相当することが示唆される。各ウェルに、10%の、熱不活性化ウシ胎児血清を含む、1 mLの新鮮FFRPMIで1回潅水した後、表示のように、100 μM遊離葉酸の存在下または不在下に、漸増濃度の試験化合物(サンプル当たり4ウェル)を含む、1 mLの培地を加えた。処理した細胞を、37℃で2時間パルスし、0.5 mLの培地で4回潅水し、次いで、1 mLの新鮮培地中で最大70時間チェイスした。全てのウェルから消費された培地を吸引し、5 μCi/mL 3H-チミジンを含む、新鮮な培地と交換した。さらに、37℃で2時間のインキュベーション後、細胞を、0.5 mL PBSで3回洗浄し、次いで、ウェル当たり、0.5 mLの5%氷冷トリクロ酢酸で処理した。15分後、このトリクロロ酢酸を吸引し、0.5 mLの0.25N水酸化ナトリウムを添加して15分間細胞物質を可溶化した。各可溶化サンプルの、450 μL分液を、3 mLのEcolumeシンチレーションカクテルを含むシンチレーションバイアルに移し、次いで、液体シンチレーションカウンターにおいてカウントした。表にまとめた最終結果は、未処理コントロールに対する3H-チミジン取り込みパーセントで表した。
【0205】
EC305の結果を下表に示す:
【0206】
上記の各細胞系統は、4T-1母体および4T-1-FRを除いて、市販されており、Rhone Poulenc Rorerから入手した。
【0207】
方法:種々の動物種に対する血清結合。化合物は、30K NMWLについて試験し、Microconろ過(10,000gで30分)を行い、HPLCによって検出した。EC0305を各種動物血清に対して試験したところ、図2に示すように各種動物種において低い血清結合を示した。特に、EC0305は、ヒトの血清では67%という低い結合を示した。
【0208】
方法:ヒト血清の安定性。EC0305は、ヒトの血清中での安定性を試験したところ、図3に示すように約20時間の半減期を示した。
【0209】
方法:マウスにおける腫瘍増殖の抑制。4から7週齢のマウス(Balb/cまたはnu/nu株)を、Harlan Sprague Dawley, Inc. (Indianapolis, IN)から購入した。通常のげっ歯類飼料は、高濃度の葉酸を含む(kg飼料当たり6 mg)。したがって、使用したマウスは、腫瘍移植前の1週間、葉酸無添加食餌(Harlan食餌#TD00434)で飼育し、正常なヒト血清の範囲に近い血清葉酸塩濃度を実現した。腫瘍細胞接種のために、100 μLに縣濁させた1x106 M109細胞(Balb/c株)、または1x106 KB細胞(nu/nu株)を、背部内側域の皮下に注入した。腫瘍は、2-3日置きに、キャリパーにて二つの垂直方向に測定し、その体積は、0.5 x L x W2として計算した。式中、Lは最大長軸の測定値(単位mm)、WはLに垂直な軸の測定値(単位mm)である。次に、殺細胞数対数(LCK)の、コントロールに対する相対値(T/C)は、公表ずみの手順にしたがって計算した(例えば、Lee et al., “BMS-247550: a novel epothilone analog with a mode of action similar to paclitaxel but possessing superior antitumor efficacy (BMS-247550:パクリタキセルと類似の作用方式を有するが、より優れた抗腫瘍効力を発揮する、新規エポチロン類縁体)” Clin Cancer Res 7:1429-1437(2001); Rose, “Taxol-based combination therapy and other in vivo preclinical antitumor studies (前臨床抗腫瘍インビボ試験におけるタキソール含有併用治療およびその他)” J Natl Cancer Inst Monogr 47-53 (1993)を参照されたい)。投与液は、その日毎に、PBSにおいて新鮮に調製し、マウスの尾部側部静脈を通じて投与した。、投与は、皮下腫瘍が50-100 mm3の平均体積となった時点(t0)で開始したが、これは、通常、KB腫瘍では、腫瘍接種後(PTI)8日であり、M109腫瘍では、11日PTIであった。
【0210】
方法:薬剤の毒性の定量。心臓穿刺によって血液を収集し、その血清に対し、血液尿素窒素(BUN)、クレアニチン、総タンパク、AST-SGOT、ALT-SGPTについて、さらに、Ani-Lytics, Inc. (Gaithersburg, MD)の標準的血清細胞パネルで独立に分析することによって、持続性の薬剤毒性を評価した。さらに、フォルマリンで固定した心臓、肺、肝臓、脾臓、腎臓、小腸、骨格筋、および骨(脛骨/腓骨)の組織病理学的評価が、Animal Reference Pathology Laboratories (ARUP; Salt Lake City, Utah)の、委員会保証済み病理学者によって行われた。
【0211】
方法:一般的KB腫瘍アッセイ。腫瘍担持動物に静脈内(i.v.)投与された場合の、本明細書に記載される化合物の抗腫瘍活性を、皮下にKB腫瘍を抱えるnu/nuマウスにおいて評価した。マウスにおいて(1群当たり5匹)、右腋窩の皮下に1x106 KB細胞を接種して約8日後(t0における平均腫瘍体積=50〜100 mm3)、5 μmol/kgの薬剤送達結合体、または、等価の投与容量のPBS(コントロール)を、別様に指示しない限り、週に3回(TIW)、3週間、静脈内注入した。各処置群において、腫瘍の成長を、2日または3日間隔でキャリパーを用いて測定した。腫瘍体積は、方程式 V= a x b2/2を用いて計算した。式中、“a”は、腫瘍の、ミリメートルで表した長さであり、“b”は、幅である。
【0212】
方法:一般的M109腫瘍アッセイ。腫瘍担持動物に静脈内(i.v.)投与された場合の、本明細書に記載される化合物の抗腫瘍活性を、皮下にM109腫瘍(同系肺癌)を抱えるBalb/cマウスにおいて評価した。右腋窩の皮下に1x106 M109細胞を接種して約11日後(t0における平均腫瘍体積=60 mm3)、マウスに対し(5匹/群)、1500 nmol/kgの薬剤送達結合体、または、等価の投与容量のPBS(コントロール)を、週に3回(TIW)、3週間、静脈内注入した。各処置群において、腫瘍の成長を、2日または3日間隔でキャリパーを用いて測定した。腫瘍体積は、方程式 V= a x b2/2を用いて計算した。式中、“a”は、腫瘍の、ミリメートルで表した長さであり、“b”は、幅である。
【0213】
方法:一般的4T-1腫瘍アッセイ。6から7週齢のマウス(雌性Balb/c株)を、Harlan, Inc. (Indianapolis, IN)から購入した。マウスは、本実験の開始前および最中、合計3週間、葉酸無添加食餌で飼育した。葉酸受容体陰性4T-1腫瘍細胞(1匹の動物当たり1x106 細胞)を、右腋窩の皮下に接種した。腫瘍接種の約5日後、4T-1腫瘍の平均体積が約100 mm3となった時点で、マウスに対し(5匹/群)、3 μmol/kgの薬剤送達結合体、または、等価の投与容量のPBS(コントロール)を、別様に指示しない限り、週に3回(TIW)、3週間、静脈内注入した。各処置群において、腫瘍の成長を、2日または3日間隔でキャリパーを用いて測定した。腫瘍体積は、方程式 V= a x b2/2を用いて計算した。式中、“a”は、腫瘍の、ミリメートルで表した長さであり、“b”は、幅である。
【0214】
方法:体重減少として測定される毒性。マウス(5匹/群)において、腫瘍接種後(PTI)の選ばれた日において、該マウスの体重変化パーセントを定量し、グラフに表した。
【0215】
方法:別の投与スケジュール。前記アッセイは、それぞれ、下記のように変更してもよい:右腋窩の皮下に1x106 KB細胞を接種して約8日後(t0における平均腫瘍体積=50〜100 mm3)、マウスに対し(5匹/群)、本明細書に記載される薬剤送達結合体、または、コントロールとして等価の投与容量のPBSを、週に3回(TIW)、3週間、静脈内注入する。各処置群において、腫瘍の成長を、2日または3日間隔でキャリパーを用いて測定する。腫瘍体積は、方程式 V= a x b2/2を用いて計算した。式中、“a”は、腫瘍の、ミリメートルで表した長さであり、“b”は、幅である。
【0216】
方法:別の投与スケジュール。前記アッセイは、それぞれ、下記のように変更してもよい:右腋窩の皮下に1x106 KB細胞を接種して約8日後(t0における平均腫瘍体積=50〜100 mm3)、マウスに対し(5匹/群)、本明細書に記載される薬剤送達結合体、または、コントロールとして等価の投与容量のPBSを、月曜から金曜まで週に5回、2から3週間、静脈内注入する。各処置群において、腫瘍の成長を、2日または3日間隔でキャリパーを用いて測定する。腫瘍体積は、方程式 V= a x b2/2を用いて計算した。式中、“a”は、腫瘍の、ミリメートルで表した長さであり、“b”は、幅である。
【0217】
EC305を、各種用量において、TIWで2週スケジュールで試験したところ、図5に示すように、1 μmol/kg以上の用量で試験した5匹の動物の内5匹が完全反応を示した。図5において、垂直点線は投与最終日を示す。さらに、これらの用量では、これも図5に示されるように、結合体の最終投与は、70日以上も前に行われたにも拘わらず、5匹の動物の内5匹において、全観察期間を通じて、腫瘍の再発または再成長は認められなかった。一方、これも図5に示されるように、EC0305と競合的ではあるが、腫瘍不活性な葉酸塩含有類縁体EC20(レニウム複合体)と同時投与された、EC0305処置動物では、EC0305の抗腫瘍活性は完全に遮断された(0/5反応)。EC20(レニウム複合体)は、レニウムに対してキレート結合した、下式の化合物である:
【化74】
EC20の調製は、米国特許出願公開US 2004/0033195 A1に記載される。この、合成過程の記載を引用により本明細書に含める。EC20は、葉酸受容体に対し、EC0305などの葉酸塩標的化結合体の競合因子として作用すると考えられ、したがって、この結果は、葉酸受容体に対する標的化におけるEC0305の作用の特異性を示すものと考えられる。
【0218】
さらに、観察された活性は、図6に示すように、外見上、体重の減少または主要臓器の変性なしに現れていた。同図において、垂直点線は投与最終日を示す。
【0219】
EC305は、2 μmol/kg TIW、2週間スケジュールで反復試験を行ったところ、再び、試験した5匹の動物の内5匹において完全反応を示した。さらに、図7に示すように、90日を超える全観察期間を通じて、5匹の動物の内5匹において腫瘍の再発または再成長は認められなかった。さらに、観察された活性は、図8に示すように、外見上、体重の減少または主要器官組織の変性なしに現れていた。
【0220】
EC0305活性を、マウスにおいてFR-陽性腫瘍に対して評価した。M109皮下腫瘍を抱えるBalb/cマウスを、EC0305静注によって処置したところ、この処置において、5匹の試験動物の内の5匹に完全反応が観察された。さらに、腫瘍接種の90日を超える日数後、処置停止の70日を超える日数後も、5匹の試験動物の内5匹は、測定可能な量の腫瘍を全く有していなかった。5匹の動物の内5匹において腫瘍の再発または再成長は観察されなかった。さらに、完全反応および病気の再発無しとして観察されたこの活性は、外見上、体重の減少または主要器官組織の変性なしに現れていた。各種腫瘍タイプに対するEC0305の効力は、本明細書に記載される通り、ヒトKB異種移植片-nu/nuマウス癌モデルにおいて確認された。この場合も、EC0305は、外見上体重の減少または主要器官組織の変性なしに、目覚しい抗腫瘍活性(5/5完全反応)を示した。
【0221】
本明細書において記載される結合体について観察される結果とは対照的に、非結合ツブリシンBの遊離薬剤:
【化75】
は、図9に示すように(非結合薬剤の過剰な毒性のため、各群において早期に投与を中断した)、耐容可能な用量、および高い毒性用量の両レベルにおいて、完全に不活性である(0/5反応)ことが認められた。図10は、コントロールと比べた場合、非結合ツブリシンBで処置した動物では、体重変化パーセントに急激な変化のあることを示す。図9および10に示すように、非結合薬剤の過剰な毒性のため、各群において早期に投与を中断した。
【0222】
さらに、ツブリシン結合体EC0305は、下記の構造を有する、別の、葉酸塩標的化化合物、EC145よりも効力が高いことが認められた:
【0223】
【化76】
後者の化合物において薬剤活性成分は、ビンカアルカロイドである。図11に示すように、それぞれ、2 μmol/kg TIW、2週間スケジュールで投与した。同図において、垂直線は、最終投与日を示す。ビンカ結合体EC145は、処置動物の、5匹の内2匹において完全反応を示したが、一方、ツブリシン結合体EC0305は、5匹の内5匹において完全反応を示した。さらに、90日以上の全観察期間を通じて、EC0305で処置された5匹の動物の内5匹において腫瘍の再発または再成長は観察されなかった。
【0224】
図12は、コントロールと比較した場合の、二つの異なるツブリシン結合体、EC0305およびEC0436の、M109腫瘍に対する相対的活性を示す。投薬は、腫瘍移植の約11日後に開始し、各試験動物には、2 μmol/kgのEC0305またはEC0436を、週3回、2週間与えた。図12の垂直点線は、投与最終日が20日目であることを示す。図12に示すように、EC0305およびEC0436の両方とも、全ての動物において完全反応を示した。しかしながら、ほぼ35日PTIに、EC0305処置動物が、腫瘍再成長を示し始めた。一方、EC0436処置動物は、5匹の処置動物の内5匹に完全反応を示したばかりでなく、60日以上の全観察期間を通じて腫瘍の再発または再成長はまったく観察されなかった。図13は、コントロールと比較した場合の、処置動物における体重変化パーセントを示す。全ての処置動物において、観察される効力は、試験動物の体重変化で判断される限り、観察されるほどの肉眼的な毒性を全く伴っていなかった。
【0225】
図14は、PBS処置コントロール(●)と比較した場合の、二つの異なるツブリシン結合体EC0305およびEC0436の、治療用量を超える用量で与えた場合の、相対的毒性を示す。各用量は、矢印で示すように、一日置きに3回投与した。EC0305は、(△)2 μmol/kg TIW;(▽)2.5 μmol/kg TIW;および(□)3 μmol/kgで投与した。EC0436は、(▲)2 μmol/kg TIW;(▼)2.5 μmol/kg TIW;および(■)3 μmol/kg TIWで投与した。データから、EC0436の方が、EC0305よりも高い治療示数を持つ可能性が示唆される。図12に示すように、EC0305では、2 μmol/kgにおいて、5匹の内4匹に完全反応が得られるが、一方、EC0436では、同じ用量で、5匹の内5匹で完全反応が得られる。しかしながら、EC0305は、試験動物の体重変化で判断すると、図14に示すように、約2.5 μmol/kg以上の用量で毒性を示し始める。対照的に、EC0436では、試験動物の体重変化で判断すると、3 μmol/kgの最大用量においても毒性は観察されなかった。
【0226】
前記の実施態様は、本明細書に記載される本発明のいくつかの態様についてさらに詳細な説明を与えるために記載される。しかしながら、上記は、例示的であることを意図するものであり、したがって、いかなる意味でも本発明を限定するものと思量してはならない。
【技術分野】
【0001】
本発明は、標的化薬剤送達に使用するための組成物および方法に関する。より詳細には、本発明は、病原細胞集団によって引き起こされる病態の治療に使用される、細胞表面受容体結合性薬剤送達結合体、およびそのような結合体を使用する方法、およびそのような結合体を含む薬学的組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
哺乳類の免疫系は、腫瘍細胞、他の病原細胞、および、侵入する外来病原体を認識し、排除するための手段を提供する。この免疫系は、正常時は、強力な防衛線を提供するが、しばしば、癌細胞、他の病原細胞、または感染病原体が、宿主の免疫反応を免れ、増殖または生き延び、同時に宿主に対し病原性因子となる場合が起こる。化学療法剤および放射線療法が、例えば複製新生物を排除するために開発されている。しかしながら、現今利用可能な化学療法剤および放射線治療処方の多くは有害な副作用を持つ。なぜなら、それらの治療法は、病原細胞を破壊するために働くばかりでなく、正常な宿主細胞、例えば、造血系の細胞をも冒すからである。これらの抗癌剤にはこのように有害な副作用があるため、病原細胞集団に対して選択的で、宿主に対する毒性が抑えられた新規治療法の開発に対する要求はさらに高まっている。
【0003】
研究者たちは、病原細胞に対し細胞毒性化合物を標的化することによって、それらの細胞を破壊するための治療プロトコールを開発してきた。これらのプロトコールの多くは、正常細胞に対する毒素の送達を最小化する試みとして、病原細胞に特有であるか、または病原細胞によって過剰に発現される抗原に結合する抗体に結合される毒素を利用する。この方法を用い、病原細胞上の特異的抗原に対する抗体、すなわち、毒素、例えば、リシン、シュードモナス(Pseudomonas)エキソトキシン、ジフテリア(Diphtheria)トキシン、および腫瘍壊死因子などの毒素に結合される抗体から成る、いくつかの免疫トキシンが開発された。これらの免疫トキシンは、抗体によって認識される特異的抗原を担う病原細胞、例えば、腫瘍細胞を標的とする(非特許文献1、2および特許文献1)。
【0004】
宿主において病原細胞、例えば、癌細胞または外来病原体の集団を標的とするもう一つの方法は、該病原細胞に対する宿主の免疫反応を強化し、そうすることによって、独立に宿主毒性を示す可能性のある化合物の投与をしないでもよいようにすることである。報告された一つの免疫治療戦略は、抗体、例えば、遺伝子工学的に加工されたマルチマー抗体を、腫瘍細胞の表面に、該細胞表面において該抗体の定常領域が表示されるように結合させ、それによって、各種の免疫系介在過程による腫瘍細胞殺作用を誘発することである(非特許文献3、および特許文献2)。しかしながら、これらの方法は、腫瘍特異的抗原の特定上の困難のために複雑なものとなっていた。
【0005】
ツブリシン(tubulysin)は、チューブリン重合に対する、一群の強力な阻害剤である。ツブリシンは、病原細胞集団を含む病気および病状、例えば、癌の治療に有用である。特定の、2種のマイコバクテリアが、発酵時、ツブリシンを高い力価で合成する。一つの種、Archangium gephyraは、主要成分因子として、ツブリシンA、B、C、G、およびIを生産する。これらはそれぞれ、ツブチロシン(tubutyrosine、Tut、チロシンの類縁体)残基を含むことによって特徴づけられる。一方、もう一つの種、Angiococcus disciformisは、主要成分因子として、ツブリシンD、E、F、およびHを生産する。これらはそれぞれ、ツブフェニルアラニン(tubuphenylalanine、Tup、フェニルアラニンの類縁体)残基を含むことによって特徴づけられる。これらnの細菌発酵は、ツブリシンの、好適な供給源となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】1991年5月30日公刊、Better, M.D.によるPCT公開WO 91/07418
【特許文献2】Soulillou, J.P.による米国特許第5,672,486号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Olsnes, S., Immunol. Today, 10, pp.291-295, 1989
【非特許文献2】Melby, E.L., Cancer Res., 53(8), pp. 1755-1760, 1993
【非特許文献3】De Vita, V.T., Biologic Therapy of Cancer, 2d ed. Philadelphia, Lippincott, 1995
【発明の概要】
【0008】
本発明の一例示実施態様では、下式を有するツブリシン結合体が記載され:
B-L-D
式中、Bは、結合性または標的化リガンド、Lは、放出型リンカー、およびDは、ツブリシン、またはその誘導体である。本明細書で用いるツブリシン(tubulysin)という用語は、個別的に、および/または、集合的に、天然産のツブリシン、合成的に調製されたツブリシン、およびそれらの化合物の類縁体および誘導体を指すことを理解しなければならない。
【0009】
別の実施態様では、結合性または標的化リガンドB、多価の放出型リンカーL、および一つ以上の薬剤Dを含むツブリシン結合体が記載され、ここに、少なくとも一つの薬剤Dは第1のツブリシンであり、BおよびDは、それぞれ、Lに共有結合される。
【0010】
別の実施態様では、下式のツブリシンの結合体、およびそれらの薬学的塩が記載され:
【化1】
式中、Bは、結合性または標的化リガンド、Lは、放出型リンカーであり、
nは、1-3であり;
Vは、H、OR2、またはハロであり、Wは、H、OR2、またはアルキルであり、前式において、R2は、各場合において、H、アルキル、またはC(O)R3から独立に選ばれ、前式において、R3は、それぞれ必要に応じて置換される、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、またはアリールアルキルであり;ただし、VおよびWの両方がOR2である場合、R2はHではなく;または、VおよびWは、付属の炭素と共にカルボニルを形成し;
Xは、それぞれ必要に応じて置換されるH、C1-4アルキル、若しくはアルケニルか、またはCH2QR9であり;前式において、Qは、-N-、-O-、または-S-であり;R9は、H、C1-4アルキル、アルケニル、アリール、またはC(O)R10であり;R10は、それぞれ必要に応じて置換される、C1-6アルキル、アルケニル、アリール、またはヘテロアリールであり;
ZはアルキルであってYはOであるか;または、Zはアルキルか、またはC(O)R4であり;R4がアルキル、CF3、またはアリールである場合、Yは存在せず;
R1はHであるか、あるいはR1は、ハロ、ニトロ、カルボキシレートまたはその誘導体、シアノ、ヒドロキシル、アルキル、ハロアルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、フェノール保護基、プロドラッグ成分、および、OR6から選ばれる、1から3個の置換基を表し、前式において、R6は、必要に応じて置換されるアリール、C(O)R7、P(O)(OR8)2、またはSO3R8であり、前式において、R7およびR8は、各場合において、それぞれ必要に応じて置換される、H、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、および、アリールアルキルから独立に選ばれ、あるいは、R8は、金属陽イオンであり;かつ、
Rは、OH、または脱離基であるか、あるいは、Rは、カルボン酸誘導体を形成する。
【0011】
別の実施態様では、天然産ツブリシンの結合体が本明細書において記載される。この場合、ツブリシンは、必要に応じて放出型リンカーLを介して、結合性または標的化リガンドに結合される。
【0012】
別の実施態様では、本明細書に記載される結合体は、病原性細胞集団と関連する病気および病状を治療するために有効な量として、薬学的組成物の中に含まれる。
【0013】
別の実施態様では、本明細書に記載される結合体、またはそれらを含む薬学的組成物は、病原性細胞集団と関連する病気および病状を治療する方法において使用される。
【0014】
〔関連出願に対する相互参照〕
本出願は、米国特許法第119(e)条の下に、2007年4月13日出願の米国特許仮出願第60/911,551号、および、2007年3月14日出願の米国特許仮出願第60/894,910号の優先利益を主張する。なお、これらの出願の開示の全体を参照により本出願に含める。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、EC0305が、KB細胞に対する2時間のパルスおよび72時間のチェイスの後で、葉酸受容体に対し用量-反応行動および特異性を呈したことを示す:(●)EC0305(IC50〜1.5 nM);(○)EC305+過剰葉酸。
【図2】図2は、EC0305が、各種動物種において低い血清結合を呈したことを示す:(a)ヒト、(b)イヌ、(c)Balb/cマウス、(d)ラット、(e)ウサギ、および(f)ウシ胎児血清。ヒトの血清結合は67%であった。
【図3】図3は、EC0305の安定性についてヒトの血清において試験したところ、約20時間の半減期を呈したことを示す。
【図4】図4は、10%血清/FDRPMIにおけるEC0305の、相対的アフィニティーアッセイの結果を示す:(●)葉酸、相対的親和度=1;(■)EC0305、相対的親和度=0.96。
【図5】図5は、コントロールと比較した場合の、種々の用量でTIW、2週スケジュール投与によるEC305の、KB腫瘍に対する活性を示す:(●)PBS処置コントロール;(○)EC0305 2 μmol/kg TIW (5/5完全反応);(■)EC0305 1 μmol/kg TIW (5/5完全反応);(▲)EC0305 0.5 μmol/kg TIW (1/5完全反応);(□)EC0305 1 μmol/kg TIW + EC-20(レニウム) 40 μmol/kg TIW (0/5完全反応)。垂直点線は、投与最終日を示す。
【図6】図6は、コントロールと比較した場合の、処置動物における体重変化パーセントの測定を示す:(●)PBS処置コントロール;(○)EC0305 2 μmol/kg TIW;(■)EC0305 1 μmol/kg TIW;(▲)EC0305 0.5 μmol/kg TIW;(□)EC0305 1 μmol/kg TIW + EC-20(レニウム)40 μmol/kg TIW。垂直点線は投与最終日を示す。
【図7】図7は、コントロールと比較した場合の、2 μmol/kg TIW、2週間スケジュールで投与したEC305の、M109腫瘍に対する活性を示す:(●)PBS処置コントロール;(■)EC0305(5/5完全反応)。垂直点線は、投与最終日を示す。
【図8】図8は、コントロールと比較した場合の、処置動物における体重変化パーセントの測定を示す:(●)PBS処置コントロール;(■)EC0305。垂直点線は、投与最終日を示す。
【図9】図9は、コントロールと比較した場合の、耐容可能、および高毒性の両投与レベルにおける、非結合ツブリシンBの効力の欠如(0/5完全または部分反応)を示す:(●)PBS処置コントロール;(○)0.5 μmol/kg TIW;(▲)0.2 μmol/kg TIW;(■)0.1 μmol/kg TIW。
【図10】図10は、コントロールと比較した場合の、耐容可能、および高毒性の両投与レベルの非結合ツブリシンBで処置した動物の、体重変化パーセントを示す:(●)PBS処置コントロール;(○)0.5 μmol/kg TIW;(▲)0.2 μmol/kg TIW;(■)0.1 μmol/kg TIW。
【図11】図11は、コントロールと比較した場合の、それぞれ、2 μmol/kg、TIW、2週間スケジュールで投与した、ビンカアルカロイド結合体EC145に対する、ツブリシン結合体EC0305の相対的活性を示す:(●)PBS処置コントロール;(○)EC145(2/5完全反応);(■)EC0305 (5/5完全反応)。垂直点線は、投与最終日を示す。
【図12】図12は、コントロールと比較した場合の、それぞれ、2 μmol/kg TIW、2週間スケジュールで投与した、ツブリシン結合体EC0305およびEC0436の、M109腫瘍に対する、相対的活性を示す:(a)PBS処置コントロール;(b)EC0305(4/5完全反応);(c)EC0436 (5/5完全反応)。垂直点線は、投与最終日を示す。
【図13】図13は、コントロールと比較した場合の、処置動物における体重変化パーセントを示す:(●)PBS処置コントロール;(□)は、EC0305 (TIW 2 μmol/kg、2週);(■)は、EC0436 (TIW 2 μmol/kg、2週)である。垂直点線は、投与最終日を示す。
【図14】図14は、コントロールと比較した場合の、EC0305およびEC0436を、種々の用量で、週3回、1週間、静注投与したBalb/cマウスの、体重変化パーセントを示す:(●)PBS処置コントロール;(▲)2 μmol/kg TIW EC0436;(▼)2.5 μmol/kg TIW EC0436;(■)3 μmol/kg TIW EC0436;(△)2 μmol/kg TIW EC0305;(▽)2.5 μmol/kg TIW EC0305;(□)3 μmol/kg EC0305。垂直点線は、投与最終日を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
結合性リガンド(B)、二価リンカー(L)、および、ツブリシン(D)(その類縁体および誘導体を含む)から成る、薬剤送達結合体が、本明細書では記載される。結合性リガンド(B)は、二価リンカー(L)に共有結合し、ツブリシン、またはその類縁体または誘導体も、二価リンカー(L)に共有結合する。二価リンカー(L)は、一つ以上のスペーサーリンカー、および/または放出型リンカー、およびそれらの組み合わせを任意の順序で含む。一変異態様では、放出型リンカーおよび必要に応じて選ばれるスペーサーリンカーは、互いに共有結合してリンカーを形成する。別の変異態様では、放出型リンカーは、ツブリシン、またはその類縁体または誘導体に直接結合する。別の変異態様では、放出型リンカーは、結合性リガンドに直接結合する。別の変異態様では、結合性リガンドおよびツブリシンのどちらか、または両方が、一つ以上のスペーサーリンカーを介して放出型リンカーに結合する。別の変異態様では、結合性リガンド、およびツブリシンまたはその類縁体または誘導体は、それぞれ、放出型リンカーに結合し、これらは、それぞれ、互いに直接結合してもよいし、あるいは、一つ以上のスペーサーリンカーを介して共有結合してもよい。以上から、結合性リガンド、ツブリシンまたはその類縁体または誘導体、および各種の、放出型リンカーや必要に応じて選ばれるスペーサーリンカーの配置は、大きく変動することが可能であることを理解しなければならない。一態様では、結合性リガンド、ツブリシンまたはその類縁体または誘導体、および各種の放出型リンカーや必要に応じて選ばれるスペーサーリンカーは、窒素、酸素、硫黄、燐などのヘテロ原子や、シリコンなどを介して、互いに結合する。変異態様では、酸素を除くヘテロ原子は、種々の酸化状態にあってもよく、例えば、N(OH)、S(O)、S(O)2、P(O)、P(O)2、P(O)3などであってもよい。別の変異態様では、ヘテロ原子は、集合されて、二価ラジカル、例えば、ヒドロキシルアミン、ヒドラジン、ヒドラゾン、スルフォネート、フォスフィネート、フォスフォネートなどを形成してもよい。
【0017】
一態様では、受容体結合性リガンド(B)は、ビタミン、またはその類縁体または誘導体であるか、または、別の、ビタミン受容体結合性化合物である。
【0018】
本明細書で用いるツブリシンとは、一般に、下式のテトラペプチド化合物、および、それらの薬学的塩を指し:
【化2】
式中、
nは、1-3であり;
Vは、H、OR2、またはハロであり、Wは、H、OR2、またはアルキルであり、前式において、R2は、各場合において、H、アルキル、およびC(O)R3から独立に選ばれ、前式において、R3は、それぞれ必要に応じて置換される、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、またはアリールアルキルであり;ただし、VおよびWの両方がOR2である場合、R2はHではなく;または、VおよびWは、付属の炭素と共にカルボニルを形成し;
Xは、それぞれ必要に応じて置換されるH、C1-4アルキル、若しくはアルケニルか、またはCH2QR9であり;前式において、Qは、-N-、-O-、または-S-であり;R9は、H、C1-4アルキル、アルケニル、アリール、またはC(O)R10であり;R10は、それぞれ必要に応じて置換される、C1-6アルキル、アルケニル、アリール、またはヘテロアリールであり;
ZはアルキルであってYはOであるか;または、ZはアルキルまたはC(O)R4で、Yは存在せず;前式において、R4は、アルキル、CF3、またはアリールであり;
R1はHであるか、あるいはR1は、ハロ、ニトロ、カルボン酸塩またはその誘導体、シアノ、ヒドロキシル、アルキル、ハロアルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、フェノール保護基、プロドラッグ成分、および、OR6から選ばれる、1から3個の置換基を表し、前式において、R6は、必要に応じて置換されるアリール、C(O)R7、P(O)(OR8)2、またはSO3R8であり、前式において、R7およびR8は、各場合において、それぞれ必要に応じて置換される、H、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、および、アリールアルキルから独立に選ばれ、あるいは、R8は、金属陽イオンであり;かつ、
Rは、OH、または脱離基であるか、あるいは、Rは、カルボン酸誘導体を形成する。
【0019】
上記ツブリシンそれぞれの結合体が本明細書において記載される。一変異態様では、Zはメチルである。別の変異態様では、R1はHである。別の変異態様では、R1は、C(4)においてOR6であり、前式において、R6は、H、アルキル、またはCOR7である。別の変異態様では、VはHであり、WはOC(O)R3である。
【0020】
別の実施態様では、下記の一般式のツブリシンの結合体、およびそれらの薬学的塩が記載され:
【化3】
式中、
nは、1-3であり;
Vは、H、OR2、またはハロであり、Wは、H、OR2、またはアルキルであり、前式において、R2は、各場合において、H、アルキル、またはC(O)R3から独立に選ばれ、前式において、R3は、アルキル、アルケニル、アリール、またはアリールであり、ただし、VおよびWの両方がOR2である場合、R2はHではなく;または、VおよびWは、付属の炭素と共にカルボニルを形成し;
Xは、それぞれ必要に応じて置換されるH、C1-4アルキル、若しくはアルケニルか、またはCH2QR9であり;前式において、Qは、-N-、-O-、または-S-であり;R9は、H、C1-4アルキル、アルケニル、アリール、またはC(O)R10であり;R10は、それぞれ必要に応じて置換される、C1-6アルキル、アルケニル、アリール、またはヘテロアリールであり;
Zはアルキル、またはC(O)R4であり、前式において、R4は、アルキル、CF3、またはアリールであり;
Tは、H、またはOR6であり、前式において、R6は、H、アルキル、アリール、COR7、P(O)(OR8)2、またはSO3R8であり、前式において、R7およびR8は、各場合において、それぞれ必要に応じて置換される、H、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、および、アリールアルキルから独立に選ばれ、あるいは、R8は、金属陽イオンであり、あるいは、R6は、フェノール保護基、またはプロドラッグ成分であり;
SおよびUは、H、ハロ、ニトロ、シアノ、アルキル、ハロアルキル、アルコキシ、およびハロアルコキシから成る群からそれぞれ独立に選ばれ;かつ、
Rは、OH、または脱離基であるか、あるいは、Rは、カルボン酸誘導体を形成する。
【0021】
一変異態様では、Zは、メチル、またはC(O)R4である。
【0022】
天然ツブリシンは、全体として直鎖状のテトラペプチドであって、N-メチルピペコリン酸(Mep)、イソロイシン(Ile)、ツブバリンと呼ばれる非天然アミノ酸(Tuv)、および、ツブチロシン(Tut、チロシン類縁体)と呼ばれる非天然アミノ酸、またはツブフェニルアラニン(Tup、フェニルアラニン類縁体)と呼ばれる非天然アミノ酸のいずれか、から成る。別の実施態様では、下記の一般式の天然産ツブリシン、およびその類縁体および誘導体、およびそれらの薬学的塩が記載され:
【化4】
式中のR、R1、およびR10は、本明細書中の各種実施態様において記載される通りである。上記ツブリシンそれぞれの結合体が本明細書に記載される。
【0023】
別の実施態様では、下記の一般式の天然産ツブリシンの結合体、およびそれらの薬学的塩が記載される:
【化5】
【0024】
別の実施態様では、下式のツブリシンの結合体、およびそれらの薬学的塩が記載され:
【化6】
式中、nは、1-3であり;Tは、HまたはOR6であり、前式において、R6は、H、アルキル、アリール、COR7、P(O)(OR8)2、またはSO3R8であり、前式において、R7およびR8は、各場合において、それぞれ必要に応じて置換される、H、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、および、アリールアルキルから独立に選ばれ、あるいは、R8は、金属陽イオンであり、あるいは、R6は、フェノール保護基、またはプロドラッグ成分であり;Zは、アルキル、またはC(O)R4であり、前式において、R4は、アルキル、CF3、またはアリールであり;かつ、Rは、OH、または脱離基であるか、あるいは、Rは、カルボン酸誘導体を形成する。このような化合物の具体例、およびその調製が、J. Med. Chem. 10.1021/jm701321p(2008)に記載される。なお、この開示を引用により本明細書に含める。
【0025】
別の実施態様では、下式のツブリシン結合体、およびそれらの薬学的塩が記載され:
【化7】
上式のn、S、T、U、V、W、Z、R、およびR10は、本明細書の各種実施態様の中に記載される通りである。
【0026】
別の実施態様では、下式のツブリシン結合体、およびそれらの薬学的塩が記載され:
【化8】
上式のn、S、T、U、V、W、Z、QR9、およびRは、本明細書の各種実施態様の中に記載される通りである。一変異態様では、Qは、-N-、-O-、または-S-であり;R9は、それぞれ必要に応じて置換される、H、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、またはアリールアルキルである。別の変異態様では、QR9は一緒にされて、C(O)R10、S(O)2R10、P(O)(OR10a)2を形成し、前式において、R10およびOR10aは、各場合において、それぞれ必要に応じて置換される、H、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、およびアリールアルキルから独立に選ばれるか、あるいは、R10aは、金属陽イオンである。
【0027】
別の実施態様では、下式のツブリシン結合体、およびそれらの薬学的塩が記載され:
【化9】
式中、R12は、それぞれ必要に応じて置換される、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、およびアリールアルキルから選ばれる、一つ以上の置換基を表し;n、S、T、U、V、W、Z、およびRは、本明細書の各種実施態様の中で記載される通りである。反応条件、およびR1の化合物名に応じて、異性化によって他のオレフィン類も形成が可能であることを理解しなければならない。例えば、R1がアルキルの場合、反応条件下で、二重結合が、アルケニル鎖に沿って他の炭素原子に移動し、末端またはω-オレフィンを形成することが可能であることが認識される。
【0028】
別の実施態様では、下式のツブリシン結合体、およびそれらの薬学的塩が記載され:
【化10】
式中、R13は、C(O)R10、C(O)OR10、またはCNであり;n、S、T、U、V、W、Z、、R、およびR10は、本明細書の各種実施態様の中で記載される通りであり、前式において、R10は、各場合において独立に選ばれる。
【0029】
別の実施態様では、下式のツブリシン結合体、およびそれらの薬学的塩が記載され:
【化11】
上式のn、S、T、U、V、W、Z、およびRは、本明細書の各種実施態様の中で記載される通りである。
【0030】
別の実施態様では、下式のツブリシン結合体、およびそれらの薬学的塩が記載され:
【化12】
式中、X3は、ハロゲン、OS(O)2R10、OP(O)(OR10a)R10、またはOP(O)(OR10a)2であり;前式において、R10およびR10aは、各場合において、それぞれ必要に応じて置換される、H、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、およびアリールアルキルから成る群から独立に選ばれるか、あるいは、R10aは、金属陽イオンであり;かつ、n、S、T、U、V、W、Z、およびRは、本明細書の各種実施態様の中で記載される通りである。
【0031】
本明細書に記載される結合体の調製に有用な、さらに別のツブリシンが、米国特許出願公開第2006/0128754および2005/0239713号に記載される。なお、これらの開示を、引用により本明細書に含める。本明細書に記載される結合体の調製に有用な、さらに別のツブリシンが、同時係属出願の、米国特許仮出願第60/982,595および61/036,176号に記載される。なお、これらの開示を引用により本明細書に含める。ツブリシンは、Peltier et al., “The Total Synthesis of Tubulysin D(ツブリシンDの完全合成),“ J. Am. Chem. Soc. 128:16018-19 (2006)の記載の通りに調製してもよい。なお、この開示を引用により本明細書に含める。
【0032】
上記実施態様のそれぞれにおいて、一変異態様では、各種の式の化合物は、バックボーンの、表示の不斉炭素において、下記:
【化13】
の絶対構成を有することが理解される。
【0033】
ツブリシン、またはその類縁体または誘導体の結合体は、いずれの位置に形成されてもよいことを理解しなければならない。具体的には、二価リンカー(L)が、下記の位置のいずれかに結合されるツブリシン結合体が記載され:
【化14】
式中、(*)記号は、必要に応じて選ばれる結合部位を示す。
【0034】
別の実施態様では、結合体は、ツブリシンまたはその類縁体または誘導体の、カルボン酸誘導体から形成される。例示の、ツブリシンのカルボン酸結合体誘導体、およびそれらの薬学的塩は、下記の一般式によって表され:
【化15】
式中、
Bは、結合性リガンドであり;
Lは、リンカーであって、酸素、窒素、または硫黄へテロ原子などの、ツブリシンに共有結合するヘテロ原子リンカーを含み;
nは、1-3であり;
Vは、H、OR2、またはハロであり、Wは、H、OR2、またはアルキルであり、前式において、R2は、各場合において、H、アルキル、またはC(O)R3から独立に選ばれ、前式において、R3は、アルキル、アルケニル、またはアリールであり;ただし、VおよびWの両方がOR2である場合、R2はHではなく;または、VおよびWは、付属の炭素と共にカルボニルを形成し;
Xは、それぞれ必要に応じて置換されるH、C1-4アルキル、若しくはアルケニルか、またはCH2QR9であり;前式において、Qは、-N-、-O-、または-S-であり;R9は、H、C1-4アルキル、アルケニル、アリール、またはC(O)R10であり;R10は、それぞれ必要に応じて置換される、C1-6アルキル、アルケニル、アリール、またはヘテロアリールであり;
ZはアルキルであってYはOであるか;または、Zはアルキルか、またはC(O)R4であり、Yは存在せず;前式において、R4は、アルキル、CF3、またはアリールであり;
R1はHであるか、あるいはR1は、ハロ、ニトロ、カルボン酸塩またはその誘導体、シアノ、ヒドロキシル、アルキル、ハロアルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、フェノール保護基、プロドラッグ成分、および、OR6から選ばれる、1から3個の置換基を表し、前式において、R6は、必要に応じて置換されるアリール、C(O)R7、P(O)(OR8)2、またはSO3R8であり、前式において、R7およびR8は、各場合において、それぞれ必要に応じて置換される、H、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、および、アリールアルキルから独立に選ばれ、あるいは、R8は、金属陽イオンであり;かつ、
Rは、OH、または脱離基であるか、あるいは、Rは、カルボン酸誘導体を形成する。
【0035】
別の実施態様では、下記の一般式の、ツブリシンの、例示のカルボン酸結合体誘導体、およびそれらの薬学的塩が記載され:
【化16】
式中、
Bは、結合性リガンドであり;
Lは、リンカーであって、酸素、窒素、または硫黄へテロ原子などの、ツブリシンに共有結合するヘテロ原子リンカーを含み;
nは、1-3であり;
Vは、H、OR2、またはハロであり、Wは、H、OR2、またはアルキルであり、前式において、R2は、各場合において、H、アルキル、またはC(O)R3から独立に選ばれ、前式において、R3は、アルキル、アルケニル、またはアリールであり;ただし、VおよびWの両方がOR2である場合、R2はHではなく;または、VおよびWは、付属の炭素と共にカルボニルを形成し;
Xは、それぞれ必要に応じて置換されるH、C1-4アルキル、若しくはアルケニルか、またはCH2QR9であり;前式において、Qは、-N-、-O-、または-S-であり;R9は、H、C1-4アルキル、アルケニル、アリール、またはC(O)R10であり;R10は、それぞれ必要に応じて置換される、C1-6アルキル、アルケニル、アリール、またはヘテロアリールであり;
Zはアルキルか、またはC(O)R4であり、前式において、R4は、アルキル、CF3、またはアリールであり;
Tは、H、またはOR6であり、前式において、R6は、H、アルキル、アリール、COR7、P(O)(OR8)2、またはSO3R8であり、前式において、R7およびR8は、各場合において、それぞれ必要に応じて置換される、H、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、および、アリールアルキルから独立に選ばれるか、あるいは、R8は、金属陽イオンであり、あるいは、R6は、フェノール保護基、またはプロドラッグ成分であり;
SおよびUは、H、ハロ、ニトロ、シアノ、アルキル、ハロアルキル、アルコキシ、およびハロアルコキシからそれぞれ独立に選ばれ;かつ、
Rは、OH、または脱離基であるか、あるいは、Rは、カルボン酸誘導体を形成する。
【0036】
別の実施態様では、下記の一般式の、例示のカルボン酸結合体誘導体、およびそれらの薬学的塩が記載され:
【化17】
式中のB、L、n、S、T、U、V、W、X、Z、Q、R1、R9、R10、R12、R13、およびX3は、本明細書の各種実施態様および態様の中で記載される通りである。
【0037】
別の実施態様では、ツブリシンA、ツブリシンB、およびツブリシンIなどの天然産ツブリシンの、例示の、カルボン酸結合体誘導体、およびそれらの薬学的塩が記載される。
【0038】
別の実施態様では、下記のツブリシン類縁体および誘導体の、例示の、カルボン酸結合体誘導体が記載される。
【0039】
本明細書に記載される結合体において使用が可能な、追加のツブリシンとしては、KB細胞の72時間連続アッセイにおいて3Hチミジン抑制におけるIC50を含む、下記、およびそれらの薬学的塩が挙げられる:
【化18】
【0040】
本明細書で用いる場合、ツブリシン化合物は、チューブリン重合の阻害剤であってもよいし、また、DNAアルキル化剤であってもよい。したがって、癌などの病原性細胞集団を含む病気および病状の治療法が、本発明の考慮の対象とされる。
【0041】
別の実施態様では、二価リンカー(L)は、ツブリシン(D)に結合性リガンド(B)を共有結合させる、C、N、O、S、Si、およびPから選ばれる原子の鎖である。リンカーは、種々の長さ、例えば、約2から約100原子の範囲の長さを有してもよい。リンカーの形成に使用される原子は、化学的に妥当なあらゆる方式で結合されてよく、例えば、アルキレン、アルケニレン、およびアルキニレン基などを形成する炭素原子鎖;エーテル、ポリオキシアルキレン基を形成するか、または、カルボニル基と結合して、エステルおよび炭酸塩を形成する炭素および酸素原子鎖;アミン、イミン、ポリアミン、ヒドラジン、ヒドラゾンを形成するか、または、カルボニル基と結合して、アミド、尿素、セミカルバジド、カルバジドなどを形成する炭素および窒素原子鎖;アルコキシアミン、アルコキシルアミンを形成するか、または、カルボニル基と結合して、アミノ酸、アシルオキシルアミン、ヒドロキサム酸などを形成する、炭素、窒素、および酸素原子の鎖;およびその他多数が挙げられる。さらに、上記例示実施態様それぞれの鎖を形成する原子は、飽和であっても、不飽和であってもよく、そのため、例えば、アルカン、アルケン、アルキン、イミンなどは、リンカーの中に含まれるラジカルであってもよいことを理解しなければならない。さらに、リンカーを形成する原子は、互いに環化されて、リンカーの中に、二価の環状構造、例えば、シクロアルカン、環状エーテル、環状アミン、アリーレン、ヘテロアリーレンなどを形成してもよい。
【0042】
別の実施態様では、リンカーは、少なくとも一つの放出型リンカーを形成するラジカル、および必要に応じて一つ以上のスペーサーリンカーを含む。本明細書で用いる放出型リンカーという用語は、生理的条件下で破断することが可能な、少なくとも一つの結合、例えば、pH感受性、酸感受性、塩基感受性、酸化感受性、代謝感受性、生化学的感受性、または酵素感受性結合を含むリンカーを指す。結合破断をもたらすこのような生理的条件は、必ずしも生物学的または代謝過程を含む必要はなく、標準的化学反応、例えば、生理的pHにおける、または、細胞質pHよりも低いpHを有するエンドソームのような細胞小器官への分画の結果として起こる、加水分解反応を含んでもよい。
【0043】
切断可能な結合が、放出型リンカーの一端または両端において、該放出型リンカー内の二つの隣接原子を接続するか、および/または、本明細書に記載される他のリンカー、またはVおよび/またはDを接続することが可能であることが理解される。切断可能な結合が、放出型リンカー内の二つの隣接原子を接続する場合、該結合の破断後、該放出型リンカーは、二つ以上の断片に分解される。それとは別に、切断可能な結合が、放出型リンカーと、別の成分、例えば、別のヘテロ原子、スペーサーリンカー、別の放出型リンカー、ツブリシンまたはその類縁体または誘導体、または結合性リガンドとの間にある場合、該結合の破断後、該放出型リンカーは、該他方成分から分離される。したがってさらに、スペーサーおよび放出型リンカーは、それぞれ、多価である、例えば、二価であることが理解される。
【0044】
例示の、放出型リンカーとしては、メチレン、1-アルコキシアルキレン、1-アルコキシシクロアルキレン、1-アルコキシアルキレンカルボニル、1-アルコキシシクロアルキレンカルボニル、カルボニルアリールカルボニル、カルボニル(カルボキシアリール)カルボニル、カルボニル(ビスカルボキシアリール)カルボニル、ハロアルキレンカルボニル、アルキレン(ジアルキルシリル)、アルキレン(アルキルアリールシリル)、アルキレン(ジアリールシリル)、(ジアルキルシリル)アリール、(アルキルアリールシリル)アリール、(ジアリールシリル)アリール、オキシカルボニルオキシ、オキシカルボニルオキシアルキル、スルフォニルオキシ、オキシスルフォニルアルキル、イミノアルキリデニル、カルボニルアルキリデンイミニル、イミノシクロアルキリデニル、カルボニルシクロアルキルデンイミニル、アルキレンチオ、アルキレンアリールチオ、およびカルボニルアルキルチオが挙げられ、これらの放出型リンカーは、それぞれ、必要に応じて、後述のように置換基X2によって置換される。
【0045】
上記実施態様において、放出型リンカーは酸素を含んでもよく、該放出型リンカーは、メチレン、1-アルコキシアルキレン、1-アルコキシシクロアルキレン、1-アルコキシアルキレンカルボニル、および、1-アルコキシシクロアルキレンカルボニルであることが可能であり、これらの放出型リンカーは、それぞれ、必要に応じて、後述のように置換基X2によって置換されてもよく、該放出型リンカーは酸素に結合して、アセタールまたはケタールを形成する。それとは別に、放出型リンカーは酸素を含んでもよく、該放出型リンカーは、必要に応じて置換されるアリールによって置換されるメチレンであることが可能であり、該放出型リンカーは酸素に結合して、アセタールまたはケタールを形成する。さらに、放出型リンカーは酸素を含んでもよく、該放出型リンカーは、スルフォニルアルキルであることが可能であり、該放出型リンカーは酸素に結合して、アルキルスルフォネートを形成する。
【0046】
上記放出型リンカー実施態様の別の実施態様では、放出型リンカーは窒素を含んでもよく、該放出型リンカーは、イミノアルキリデニル、カルボニルアルキリデニミニル、イミノシクロアルキリデニル、およびカルボニルシクロアルキリデニミニルであることが可能であり、これらの放出型リンカーは、それぞれ、必要に応じて、後述のように置換基X2によって置換され、該放出型リンカーは酸素に結合して、ヒドラゾンを形成する。別の構成では、該ヒドラゾンは、カルボン酸誘導体、オルトフォルメート、またはカルバモイル誘導体によってアシル化され、各種アシルヒドラゾンの放出型リンカーを形成する。
【0047】
それとは別に、放出型リンカーは酸素を含んでもよく、該放出型リンカーは、アルキレン(ジアルキルシリル)、アルキレン(アルキルアリールシリル)、アルキレン(ジアリールシリル)、(ジアルキルシリル)アリール、(アルキルアリールシリル)アリール、および(ジアリールシリル)アリールであることが可能であり、これらの放出型リンカーは、それぞれ、必要に応じて、後述のように置換基X2によって置換され、該放出型リンカーは酸素に結合して、シラノールを形成する。別の変異態様では、薬剤は、酸素原子を含むことが可能であり、該放出型リンカーは、必要に応じて置換基X2によって置換されるハロアルキレンカルボニルであることが可能であり、該放出型リンカーは薬剤酸素に結合して、エステルを形成する。
【0048】
上記放出型リンカー実施態様において、薬剤は、窒素原子を含むことが可能で、放出型リンカーは窒素を含んでもよく、該放出型リンカーは、カルボニルアリールカルボニル、カルボニル(カルボキシアリール)カルボニル、カルボニル(ビスカルボキシアリール)カルボニルであることが可能であり、該放出型リンカーは、ヘテロ原子窒素に結合してアミドを形成し、さらに、薬剤窒素に結合してアミドを形成する。一変異態様では、薬剤は窒素原子を含むことが可能であり、放出型リンカーは、必要に応じて置換基X2によって置換されるハロアルキレンカルボニルであることが可能であり、該放出型リンカーは薬剤窒素に結合して、アミドを形成する。別の変異態様では、薬剤は、二重結合窒素原子を含むことが可能であり、この実施態様では、放出型リンカーは、アルキレンカルボニルアミノ、および1-(アルキレンカルボニルアミノ)スクシンイミド-3-イルであることが可能であり、該放出型リンカーは薬剤窒素に結合して、ヒドラゾンを形成することが可能である。
【0049】
別の変異態様では、薬剤は、硫黄原子を含むことが可能であり、この実施態様では、放出型リンカーは、アルキレンチオおよびカルボニルアルキルチオであることが可能であり、該放出型リンカーは、薬剤硫黄に結合してジスルフィドを形成することが可能である。それとは別に、薬剤は酸素原子を含むことが可能であり、放出型リンカーは窒素を含んでもよく、該放出型リンカーは、カルボニルアリールカルボニル、カルボニル(カルボキシアリール)カルボニル、カルボニル(ビスカルボキシアリール)カルボニルであることが可能であり、該放出型リンカーはアミドを形成することが可能であり、さらに、薬剤酸素に結合してエステルを形成することが可能である。
【0050】
置換基X2は、アルキル、アルコキシ、アルコキシアルキル、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル、アミノ、アミノアルキル、アルキルアミノアルキル、ジアルキルアミノアルキル、ハロ、ハロアルキル、スルフヒドリルアルキル、アルキルチオアルキル、アリール、置換アリール、アリールアルキル、置換アリールアルキル、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、カルボキシ、カルボキシアルキル、アルキルカルボキシレート、アルキルアルカノエート、グアニジノアルキル、R4-カルボニル、R5-カルボニルアルキル、R6-アシルアミノ、およびR7-アシルアミノアルキルであることが可能であり、上記においてR4およびR5は、それぞれ独立に、アミノ酸、アミノ酸誘導体、およびペプチドから選ばれ、R6およびR7は、それぞれ独立に、アミノ酸、アミノ酸誘導体、およびペプチドから選ばれる。この実施態様では、放出型リンカーは、窒素を含むことが可能であり、置換基X2および放出型リンカーは、ヘテロ環を形成することが可能である。
【0051】
ヘテロ環は、ピロリジン、ピペリジン、オキサゾリジン、イソキサゾリジン、チアゾリジン、イソチアゾリジン、ピロリジノン、ピペリジノン、オキサゾリジノン、イソキサゾリジノン、チアゾリジノン、イソチアゾリジノン、およびスクシンイミドであることが可能である。
【0052】
別の実施態様では、二価リンカー(L)は、ジスルフィドの放出型リンカーを含む。別の実施態様では、二価リンカー(L)は、ジスルフィド放出型リンカーではない、少なくとも一つの放出型リンカーを含む。
【0053】
一態様では、放出型リンカーおよびスペーサーリンカーは、該二価リンカーにおける結合の切断後、放出された官能基が、さらに別の基の破断または切断を化学的に支援する(これは隣接基支援切断または破断とも呼ばれる)ように、配置されてもよい。このような二価リンカー、またはその部分の例示実施態様は、下式の化合物を含み:
【化19】
式中、Xは、窒素、酸素、または硫黄などのヘテロ原子、またはカルボニル基であり;nは、0から4までから選ばれる整数であり;例としては2であり;Rは、水素、または、アリール環において誘電的にまたは共鳴によって陽性電荷を安定化することが可能な置換基を含む置換基、例えば、メトキシを含むアルコキシなどであり;符号(*)は、追加スペーサー、ヘテロ原子、または、二価リンカーを形成する放出型リンカーのための結合点、あるいはそれとは別に、薬剤、またはその類縁体または誘導体、または、ビタミンまたはその類縁体または誘導体の結合点を表示する。一実施態様では、nは2であり、Rはメトキシである。アリール環、ベンジル炭素、アルカノイン酸、またはメチレン架橋には、他の置換基、例えば、ただしこれらに限定されないが、ヒドロキシ、アルキル、アルコキシ、アルキルチオ、ハロなどが存在してもよいことが理解される。支援切断は、ベンジリウム中間体、ベンジン中間体、ラクトン環形成、オキソニウム中間体、ベータ-除去などを含む機構を含んでもよい。さらに、放出型リンカーの切断後における断片化だけでなく、放出型リンカーの初期切断も、隣接基支援機構によって促進されてもよいことが理解される。
【0054】
このようなリンカーを形成するのに有用な中間体の具体例として下式が挙げられ:
【化20】
式中、Xaは、求電子基、例えば、マレイミド、ビニールスルフォン、活性化カルボン酸誘導体などであり、Xbは、NH、O、またはSであり;mおよびnは、それぞれ独立に、0-4から選ばれる整数である。一変異態様では、mおよびnは、それぞれ独立に、0-2から選ばれる整数である。このような中間体は、求電子基Xaに対する求核攻撃を介して、および/または、エーテル、またはカルボン酸誘導体を形成することによって、薬剤、結合性リガンド、または他のリンカーに結合されてもよい。一実施態様では、ベンジルのヒドロキシル基は、フォスゲンまたはフォスゲン等価物によって、対応する活性化ベンジルオキシカルボニル化合物に変換される。この実施態様は、活性化カルボニル基に対する求核攻撃を介して薬剤、結合性リガンド、または他のリンカーに結合されてもよい。
【0055】
放出型リンカーは、生理的条件下で破断または切断することが可能な少なくとも一つの結合(例えば、pH感受性、酸感受性、酸化感受性、または酵素感受性結合)を含む。この切断可能な、一つまたは複数の結合は、切断可能リンカーの内部、および/または、切断可能リンカーの一端または両端に存在してもよい。切断可能な結合の感受性は、そのような結合破断を支援または促進すること(隣接基支援とも呼ばれる)が可能な、官能基または断片を、二価リンカーLの内部に含むことによって、調整してもよいことが理解される。さらに、放出型リンカーの結合破断後、ビタミン受容体結合性薬剤結合体の、後続断片化を支援または促進することが可能な、さらに別の官能基または断片を二価リンカーLの中に含めてもよいことが認識される。
【0056】
破断可能結合の感受性は、例えば、該破断可能結合またはその近傍における置換変化によって、調整することが可能である。例えば、破断性ジスルフィド結合に隣接してアルファ分枝を含めること、加水分解されてもよいシリコン酸素結合を有する成分のシリコンにおける置換基の疎水性を増大させること、加水分解されてもよいケタールまたはアセタールの一部を形成するアルコキシ基を同族体とすること、等が挙げられる。
【0057】
本明細書で記載される二価リンカー切断の、例示機構としては、下記の、1,4および1,6断片化機構が挙げられる。
【化21】
式中、Xは、外因性または内因性の、求核性グルタチオン、または生体還元剤などであり、Z、Z’のいずれかは、ビタミン、またはその類縁体または誘導体であるか、あるいは、薬剤、またはその類縁体または誘導体であるか、または、多価リンカーの他の部分と組み合わされたビタミンまたは薬剤成分である。上記断片化機構は、調和的機構として描かれているが、多価リンカーを図示の最終産物とするまで最終的断片化を実行するためには、任意の数の不連続ステップを実施してもよいことを理解しなければならない。例えば、結合切断はまた、カルバメート成分の酸触媒除去によって実行してもよく、これは、上例に示されるベータ硫黄のアリール基またはジスルフィドによって与えられる安定化によって、隣接支援されてもよいことが理解される。この実施態様のこれらの変異態様では、放出型リンカーは、カルバメート成分である。それとは別に、断片化は、ジスルフィド基に対する求核攻撃によって起動されてもよく、切断によってチオレートが形成される。チオレートは、分子間でカルボン酸またはカルバミン酸を移動させ、対応するチアシクロプロパンを形成してもよい。ベンジル含有多価リンカーの場合、ジスルフィド結合の例示の破断後、得られたフェニルチオレートはさらに断片化して、共鳴安定中間体を形成することによってカルボン酸またはカルバミン酸成分を放出してもよい。上記事例のいずれにおいても、本明細書に記載される、例示の多価リンカーの放出性は、化学的、代謝的、生理的、または生物学的な条件に関連するものであれば、いずれの機構によって実現されてもよい。
【0058】
放出型リンカーの結合切断の、他の例示機構としては、下記のオキソニウム支援切断が挙げられる:
【化22】
式中、Zは、ビタミンまたはその類縁体または誘導体、または薬剤またはその類縁体または誘導体であるか、あるいは、それぞれが、多価のリンカーの他の部分と組み合わされたビタミンまたは薬剤成分、例えば、一つ以上のスペーサーリンカーおよび/または他の放出型リンカーを含む薬剤またはビタミン成分である。理論に拘束されるものではないが、この実施態様では、例えばエンドソーム内で見られるような酸触媒が、ウレタン基のプロトン化を介して切断を起動しているのかもしれない。さらに、カルバメートの酸触媒性除去によって、CO2の放出、Zに結合する窒素含有成分、および、ベンジル陽イオンの形成がもたらされ、これらは、水、または他の任意のルイス塩基によって捕捉される。
【0059】
他の例示のリンカーとしては、下式の化合物が挙げられる:
【化23】
式中、Xは、NH、CH2、またはOであり;Rは、水素、または、アリール環において誘電的にまたは共鳴によって陽性電荷を安定化することが可能な置換基を含む置換基、例えば、メトキシを含むアルコキシなどであり;符号(*)は、追加スペーサー、ヘテロ原子、または、二価リンカーを形成する放出型リンカーのための結合点、あるいはそれとは別に、薬剤、またはその類縁体または誘導体、または、ビタミンまたはその類縁体または誘導体の結合点を表示する。
【0060】
本明細書で記載される、このような二価リンカー切断の例示機構としては、下記の、1,4および1,6断片化機構、次いで、ヒドラジド基による環化を介して実現される、アシル化Z’の隣接支援切断が挙げられる。
【化24】
式中、Xは、外因性または内因性の、求核基、グルタチオン、または生体還元剤などであり、Z、Z’のどちらかが、ビタミン、またはその類縁体または誘導体であるか、あるいは、薬剤、またはその類縁体または誘導体であるか、または、多価リンカーの他の部分と組み合わされたビタミンまたは薬剤成分である。上記断片化機構は、調和的機構として描かれているが、多価リンカーを図示の最終産物とするまで最終的断片化を実行するためには、任意の数の不連続ステップを実施してもよいことを理解しなければならない。例えば、結合切断はまた、カルバメート成分の酸触媒除去によって実行してもよこれは、上例に示されるベータ硫黄のアリール基またはジスルフィドによって与えられる安定化によって、隣接支援されてもよいことが理解される。この実施態様のこれらの変異態様では、放出型リンカーは、カルバメート成分である。それとは別に、断片化は、ジスルフィド基に対する求核攻撃によって起動されてもよく、切断によってチオレートが形成される。チオレートは、分子間でカルボン酸またはカルバミン酸を移動させ、対応するチアシクロプロパンを形成してもよい。ベンジル含有多価リンカーの場合、ジスルフィド結合の例示の破断後、得られたフェニルチオレートはさらに断片化して、共鳴安定中間体を形成することによってカルボン酸またはカルバミン酸成分を放出してもよい。上記事例のいずれにおいても、本明細書に記載される、例示の多価リンカーの放出性は、化学的、代謝的、生理的、または生物学的な条件に関連するものであれば、いずれの機構によって実現されてもよい。理論に拘束されるものではないが、この実施態様では、例えばエンドソーム内で見られるような酸触媒が、ウレタン基のプロトン化を介して切断を起動しているのかもしれない。さらに、カルバメートの酸触媒性除去によって、CO2の放出、Zに結合する窒素含有成分、および、ベンジル陽イオンの形成がもたらされ、これらは、本明細書に同様に記載されるように、水、または他の任意のルイス塩基によって捕捉される。
【0061】
一実施態様では、本明細書に記載される多価リンカーは、下式の化合物であり:
【化25】
式中、nは、1から約4までから選ばれる整数であり;RaおよびRbは、水素、および、低級アルキルで、例えば、必要に応じて分枝するC1-C4アルキルを含むアルキルから成る群からそれぞれ独立に選ばれ;あるいは、RaおよびRbは、付属の炭素原子と一緒になって炭素環を形成し;Rは、必要に応じて置換されるアルキル基、必要に応じて置換されるアシル基、または適切に選ばれる窒素保護基であり;符号(*)は、薬剤、ビタミン、画像剤、診断剤、他の多価リンカー、または結合体の他の部分の結合点を表示する。
【0062】
別の実施態様では、本明細書に記載される多価リンカーは、下式の化合物を含む:
【化26】
式中、mは、1から約4までから選ばれる整数であり;Rは、必要に応じて置換されるアルキル基、必要に応じて置換されるアシル基、または適切に選ばれる窒素保護基であり、(*)は、薬剤、ビタミン、画像剤、診断剤、他の多価リンカー、または結合体の他の部分の結合点を表示する。
【0063】
別の実施態様では、本明細書に記載される多価リンカーは、下式の化合物を含む:
【化27】
式中、mは、1から約4までから選ばれる整数であり;Rは、必要に応じて置換されるアルキル基、必要に応じて置換されるアシル基、または適切に選ばれる窒素保護基であり、(*)は、薬剤、ビタミン、画像剤、診断剤、他の多価リンカー、または結合体の他の部分の結合点を表示する。
【0064】
別の例示機構は、放出型およびスペーサーリンカーの配置であって、該二価リンカーの結合の切断後、放出された官能基が、さらに別の結合の破断または切断を化学的に支援すること(隣接基支援切断または破断とも呼ばれる)を可能とする配置を含む。このような二価リンカーまたはその部分の例示実施態様は、下式を有する化合物を含む:
【化28】
式中、Xは、窒素、酸素、または硫黄などのヘテロ原子であり、nは、0、1、2、および3から選ばれる整数であり、Rは、水素、または、アリール環において誘電的にまたは共鳴によって陽性電荷を安定化することが可能な置換基を含む置換基、例えば、アルコキシなどであり、Z、Z’のどちらかは、ビタミン、またはその類縁体または誘導体であるか、あるいは、薬剤、またはその類縁体または誘導体であるか、または、二価リンカーの他の部分と組み合わされたビタミンまたは薬剤成分である。アリール環、ベンジル炭素、カルバメート窒素、アルカノイン酸、またはメチレン架橋には、他の置換基、例えば、ただしこれらに限定されないが、ヒドロキシ、アルキル、アルコキシ、アルキルチオ、ハロなども存在してよいことが理解される。支援切断は、ベンジリウム中間体、ベンジン中間体、ラクトン環形成、オキソニウム中間体、ベータ-除去などを含む機構を含んでもよい。さらに、放出型リンカーの切断後における断片化だけでなく、放出型リンカーの初期切断も、隣接基支援機構によって促進されてもよいことが理解される。
【0065】
この実施態様では、環形成してもよいヒドロキシアルカノイン酸が、例えばオキソニウムイオンによって、メチレン架橋の切断を促進し、該放出型リンカーの結合切断後の、結合切断または断片化を促進する。それとは別に、メチレン架橋の、酸触媒オキソニウムイオン支援切断は、この例示の二価リンカー、またはその断片の断片化のカスケードを開始させてもよい。それとは別に、カルバメートの酸触媒加水分解が、環形成してもよいヒドロキシアルカノイン酸のベータ除去を促進し、例えばオキソニウムイオンによって、メチレン架橋の切断を促進してもよい。本明細書において記載される、代謝的、生理的、または細胞条件下に起こる結合破断または切断の、他の化学的機構が、このような断片化カスケードを起動してもよいことが理解される。
【0066】
別の実施態様では、放出型およびスペーサーリンカーは、該多価リンカーにおける結合の切断後、放出された官能基が、さらに別の結合の破断または切断を化学的に支援する(これは隣接基支援切断または破断とも呼ばれる)ように、配置されてもよい。このような多価リンカー、またはその部分の例示実施態様は、下式を有する化合物を含む:
【化29】
式中、Xは、窒素、酸素、または硫黄などのヘテロ原子であり、nは、0、1、2、および3から選ばれる整数であり、Rは、水素、または、アリール環において誘電的にまたは共鳴によって陽性電荷を安定化することが可能な置換基を含む置換基、例えば、アルコキシなどであり、符号(*)は、追加スペーサー、ヘテロ原子、または、多価リンカーを形成する放出型リンカーのための結合点、あるいはそれとは別に、薬剤、またはその類縁体または誘導体、または、ビタミンまたはその類縁体または誘導体の結合点を表示する。アリール環、ベンジル炭素、アルカノイン酸、またはメチレン架橋には他の置換基、例えば、ただしこれらに限定されないが、ヒドロキシ、アルキル、アルコキシ、アルキルチオ、ハロなども存在してよいことが理解される。支援切断は、ベンジリウム中間体、ベンジン中間体、ラクトン環形成、オキソニウム中間体、ベータ-除去などを含む機構を含んでもよい。さらに、放出型リンカーの切断後における断片化だけでなく、放出型リンカーの初期切断も、隣接基支援機構によって促進されてもよいことが理解される。
【0067】
本明細書に記載されるリンカーの、別の例示実施態様としては、本明細書に記載される条件下に、ベータ除去を含む化学機構によって切れる放出型リンカーが挙げられる。一態様では、このような放出型リンカーとして、ベータ-チオ、ベータ-ヒドロキシ、およびベータ-アミノ置換カルボン酸、およびその誘導体、例えば、エステル、アミド、炭酸塩、カルバメート、および尿素が挙げられる。別の態様では、このような放出型リンカーとして、2-、および4-チオアリールエステル、カルバメート、および炭酸塩が挙げられる。
【0068】
別の例示実施態様では、リンカーは、一つ以上のアミノ酸を含む。一変異態様では、リンカーは、単一アミノ酸を含む。別の変異態様では、リンカーは、2から約50、2から約30、または2から約20個のアミノ酸を有するペプチドを含む。別の変異態様では、リンカーは、約4から約8個のアミノ酸を有するペプチドを含む。このようなアミノ酸は、例示として、天然アミノ酸、またはそれらの立体異性体から選ばれる。アミノ酸はまた、他の、任意のアミノ酸、例えば、下記の一般式を有する任意のアミノ酸であってもよい:
-N(R)-(CR’R”)q-C(O)-
式中、Rは、水素、アルキル、アシル、または適切な窒素保護基であり、R’およびR”は、水素、または、それぞれが各事例において独立に選ばれる置換基であり、qは、1、2、3、4、または5などの整数である。例示として、R’およびR”は、独立して、例えば、ただしこれらに限定されないが、水素、または、天然アミノ酸に存在する側鎖、例えば、メチル、ベンジル、ヒドロキシメチル、チオメチル、カルボキシル、カルボキシメチル、グアニジノプロピルなど、およびそれらの誘導体および保護誘導体に相当する。上式は、全ての立体異性変異体を含む。例えば、アミノ酸は、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、リシン、グルタミン、アルギニン、セリン、オルニチン、トレオニンなどから選ばれてもよい。一変異態様では、放出型リンカーは、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、リシン、グルタミン、アルギニン、セリン、オルニチン、およびトレオニンから選ばれる、少なくとも二つのアミノ酸を含む。別の変異態様では、放出型リンカーは、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、リシン、グルタミン、アルギニン、セリン、オルニチン、およびトレオニンから選ばれる2から約5個までのアミノ酸を含む。別の変異態様では、放出型リンカーは、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、リシン、アルギニン、およびオルニチン、およびそれらの組み合わせから選ばれるアミノ酸から成る、トリペプチド、テトラペプチド、ペンタペプチド、またはヘキサペプチドを含む。
【0069】
本明細書に記載される、ビタミン受容体結合性薬剤送達結合体中間体の、別の例示態様では、薬剤、またはその類縁体または誘導体は、アルキルチオール求核体を含む。
【0070】
別の実施態様では、スペーサーリンカーは、下記に定義される置換基X1によって必要に応じて置換される、1-アルキレンスクシンイミド-3-イルであることが可能であり、放出型リンカーは、メチレン、1-アルコキシアルキレン、1-アルコキシシクロアルキレン、1-アルコキシアルキレンカルボニル、1-アルコキシシクロアルキレンカルボニルであることが可能であり、これらの放出型リンカーは、それぞれ、下記に定義される置換基X2によって必要に応じて置換され、これらのスペーサーリンカーおよび放出型リンカーは、それぞれ、スペーサーリンカーに結合されて、スクシンイミド-1-イルアルキルアセタールまたはケタールを形成する。
【0071】
スペーサーリンカーは、カルボニル、チオノカルボニル、アルキレン、シクロアルキレン、アルキレンシクロアルキル、アルキレンカルボニル、シクロアルキレンカルボニル、カルボニルアルキルカルボニル、1-アルキレンスクシンイミド-3-イル、1-(カルボニルアルキル)スクシンイミド-3-イル、アルキレンスルフォキシル、スルフォニルアルキル、アルキレンスルフォキシルアルキル、アルキレンスルフォニルアルキル、カルボニルテトラヒドロ-2H-ピラニル、カルボニルテトラヒドロフラニル、1-(カルボニルテトラヒドロ-2H-ピラニル)スクシンイミド-3-イル、および1-(カルボニルテトラヒドロフラニル)スクシンイミド-3-イルであることが可能であり、これらのスペーサーリンカーは、それぞれ、下記に定義される置換基X1によって必要に応じて置換される。この実施態様では、スペーサーリンカーは、さらに付加される窒素を含んでもよく、スペーサーリンカーは、アルキレンカルボニル、シクロアルキレンカルボニル、カルボニルアルキルカルボニル、1-(カルボニルアルキル)スクシンイミド-3-イルであることが可能であり、これらのスペーサーリンカーは、それぞれ、下記に定義される置換基X1によって必要に応じて置換され、スペーサーリンカーは、該窒素に結合してアミドを形成する。それとは別に、スペーサーリンカーは、さらに付加される硫黄を含んでもよく、スペーサーリンカーは、アルキレン、およびシクロアルキレンであることが可能であり、これらのスペーサーリンカーは、それぞれ、カルボキシによって必要に応じて置換され、スペーサーリンカーは、該硫黄に結合してチオールを形成する。別の実施態様では、スペーサーリンカーは硫黄を含むことが可能であり、スペーサーリンカーは、1-アルキレンスクシンイミド-3-イル、および1-(カルボニルアルキル)スクシンイミド-3-イルであることが可能であり、スペーサーリンカーは、該硫黄に結合してスクシンイミド-3-イルチオールを形成する。
【0072】
前述の実施態様に対する別態様では、スペーサーリンカーは窒素を含むことが可能であり、放出型リンカーは、アルキレンアジリジン-1-イル、カルボニルアルキルアジリジン-1-イル、スルフォキシルアルキルアジリジン-1-イル、またはスルフォニルアルキルアジリジン-1-イルを含む、二価ラジカルであることが可能であり、これらの放出型リンカーは、それぞれ、下記に定義される置換基X2によって必要に応じて置換される。この別態様では、スペーサーリンカーは、カルボニル、チオノカルボニル、アルキレンカルボニル、シクロアルキレンカルボニル、カルボニルアルキルカルボニル、1-(カルボニルアルキル)スクシンイミド-3-イルであることが可能であり、これらのスペーサーリンカーは、それぞれ、下記に定義される置換基X1によって必要に応じて置換され、スペーサーリンカーは、放出型リンカーに結合されてアジリジンアミドを形成する。
【0073】
置換基X1は、アルキル、アルコキシ、アルコキシアルキル、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル、アミノ、アミノアルキル、アルキルアミノアルキル、ジアルキルアミノアルキル、ハロ、ハロアルキル、スルフヒドリルアルキル、アルキルチオアルキル、アリール、置換アリール、アリールアルキル、置換アリールアルキル、ヘトロアリール、置換ヘテロアリール、カルボキシ、カルボキシアルキル、アルキルカルボキシレート、アルキルアルカノエート、グアニジノアルキル、R4-カルボニル、R5-カルボニルアルキル、R6-アシルアミノ、およびR7-アシルアミノアルキルであることが可能であり、R4およびR5は、それぞれ、アミノ酸、アミノ酸誘導体、およびペプチドから独立に選ばれ、R6およびR7は、それぞれ、アミノ酸、アミノ酸誘導体、およびペプチドから独立に選ばれる。この実施態様では、スペーサーリンカーは窒素を含むことが可能であり、結合する置換基X1およびスペーサーリンカーと共にヘテロ環を形成する。
【0074】
本明細書に記載される、各種のビタミン受容体結合性薬剤送達結合体の一態様では、二価リンカーは、一緒にされて3-チオスクシンイミド-1-イルアルキルオキシメチルオキシを形成する、スペーサーリンカーおよび放出型リンカーを含み、該メチルは、必要に応じてアルキル、または置換アリールによって置換される。
【0075】
別態様では、二価リンカーは、一緒にされて3-チオスクシンイミド-1-イルアルキルカルボニルを形成する、スペーサーリンカーおよび放出型リンカーを含み、ここで、該カルボニルは、薬剤、またはその類縁体または誘導体とアシルアジリジンを形成する。
【0076】
別態様では、二価リンカーは、一緒にされて1-アルコキシシクロアルキレンオキシを形成する、スペーサーリンカーおよび放出型リンカーを含む。
【0077】
別態様では、二価リンカーは、一緒にされてアルキレンアミノカルボニル(ジカルボキシアリーレン)カルボキシレートを形成する、スペーサーリンカーおよび放出型リンカーを含む。
【0078】
別態様では、二価リンカーは、一緒にされて2-または3-ジチオアルキルカルボニルヒドラジドを形成する、放出型リンカー、スペーサーリンカー、および放出型リンカーを含み、該ヒドラジドは、薬剤、またはその類縁体または誘導体と共にヒドラゾンを形成する。
【0079】
別態様では、二価リンカーは、一緒にされて3-チオスクシンイミド-1-イルアルキルカルボニルヒドラジドを形成する、スペーサーリンカーおよび放出型リンカーを含み、該ヒドラジドは、薬剤、またはその類縁体または誘導体と共にヒドラゾンを形成する。
【0080】
別態様では、二価リンカーは、一緒にされて2-または3-チオアルキルスルフォニルアルキル(二置換シリル)オキシを形成する、スペーサーリンカーおよび放出型リンカーを含み、該二置換シリルは、アルキル、または必要に応じて置換されるアリールによって置換される。
【0081】
別態様では、二価リンカーは、天然アミノ酸およびそれらの立体異性体から成る群から選ばれる、複数のスペーサーリンカーを含む。
【0082】
別態様では、二価リンカーは、一緒にされて3-ジチオアルキルオキシカルボニルを形成する、放出型リンカー、スペーサーリンカー、および放出型リンカーを含み、該カルボニルは、薬剤、またはその類縁体または誘導体と共にカルボネートを形成する。
【0083】
別態様では、二価リンカーは、一緒にされて3-ジチオアリールアルキルカルボニルを形成する、放出型リンカー、スペーサーリンカー、および放出型リンカーを含み、該カルボニルは、薬剤、またはその類縁体または誘導体と共にカルボネートを形成し、該アリールは必要に応じて置換される。
【0084】
別態様では、二価リンカーは、一緒にされて3-チオスクシンイミド-1-イルアルキルオキシアルキリデンを形成する、スペーサーリンカーおよび放出型リンカーを含み、該アルキリデンは、薬剤、またはその類縁体または誘導体と共にヒドラゾンを形成し、各アルキルは独立に選ばれ、該オキシアルコキシは、必要に応じてアルキルによって置換されるか、または必要に応じてアリールによって置換される。
【0085】
別態様では、二価リンカーは、一緒にされて2-または3-ジチオアルキルオキシカルボニルヒドラジドを形成する、放出型リンカー、スペーサーリンカー、および放出型リンカーを含む。
【0086】
別態様では、二価リンカーは、一緒にされて2-または3-ジチオアルキルアミノを形成する、放出型リンカー、スペーサーリンカー、および放出型リンカーを含み、該アミノは、薬剤、またはその類縁体または誘導体と共にビニローグアミドを形成する。
【0087】
別態様では、二価リンカーは、一緒にされて2-または3-ジチオアルキルアミノを形成する、放出型リンカー、スペーサーリンカー、および放出型リンカーを含み、該アミノは、薬剤、またはその類縁体または誘導体と共にビニローグアミドを形成し、該アルキルはエチルである。
【0088】
別態様では、二価リンカーは、一緒にされて2-または3-ジチオアルキルアミノカルボニルを形成する、放出型リンカー、スペーサーリンカー、および放出型リンカーを含み、該カルボニルは、薬剤、またはその類縁体または誘導体と共にカルボニルを形成する。
【0089】
別態様では、二価リンカーは、一緒にされて2-または3-ジチオアルキルアミノカルボニルを形成する、放出型リンカー、スペーサーリンカー、および放出型リンカーを含み、該カルボニルは、薬剤、またはその類縁体または誘導体と共にカルバメートを形成し、該アルキルはエチルである。
【0090】
別態様では、二価リンカーは、一緒にされて2-または3-ジチオアリールアルキルオキシカルボニルを形成する、放出型リンカー、スペーサーリンカー、および放出型リンカーを含み、該カルボニルは、薬剤、またはその類縁体または誘導体と共にカルバメートまたはカルバモイルアジリジンを形成する。
【0091】
別態様では、多価リンカーは、スペーサーリンカーおよび放出型リンカーを含み、これらは接続されて、下式によって例示される、多価の、3-チオスクシンイミド-1-イルアルキルオキシメチルオキシ基を形成する:
【化30】
式中、nは1から6までの整数であり、アルキル基は必要に応じて置換され、メチルは、さらに別のアルキル、または必要に応じて置換されるアリール基によって必要に応じて置換され、それらは、それぞれ、独立に選ばれるRによって表される。(*)符号は、この多価リンカー断片の、本明細書に記載される結合体の他の部分に対する結合点を表示する。
【0092】
別態様では、多価リンカーは、スペーサーリンカーおよび放出型リンカーを含み、これらは接続されて、下式によって例示される、多価の、3-チオスクシンイミド-1-イルアルキルカルボニル基を形成する:
【化31】
式中、nは1から6までの整数であり、アルキル基は必要に応じて置換される。(*)符号は、この多価リンカー断片の、本明細書に記載される結合体の他の部分に対する結合点を表示する。別態様では、多価リンカーは、スペーサーリンカーおよび放出型リンカーを含み、これらは接続されて、多価の、3-チオアルキルスルフォニルアルキル(二置換シリル)オキシ基を形成し、該二置換シリルは、アルキル、および/または、必要に応じて置換されるアリール基によって置換される。
【0093】
別態様では、多価リンカーは、スペーサーリンカーおよび放出型リンカーを含み、これらは接続されて、下式によって例示される、多価の、ジチオアルキルカルボニルヒドラジド基、または、多価の、3-チオスクシンイミド-1-イルアルキルカルボニルヒドラジドを形成する:
【化32】
式中、nは1から6までの整数であり、該アルキル基は必要に応じて置換され、該ヒドラジドは、(B)、(D)、または、多価リンカー(L)の別部分と共にヒドラゾンを形成する。(*)符号は、この多価リンカー断片の、本明細書に記載される結合体の他の部分に対する結合点を表示する。
【0094】
別態様では、多価リンカーは、スペーサーリンカーおよび放出型リンカーを含み、これらは接続されて、下式によって例示される、多価の、3-チオスクシンイミド-1-イルアルキルオキシアルキルオキシアルキリデン基を形成する:
【化33】
式中、各nは、1から6までから独立に選ばれる整数であり、各アルキル基は、独立に選ばれ、必要に応じて、例えば、アルキル、または必要に応じて置換されるアリールによって置換され、該アルキリデンは、(B)、(D)、または、多価リンカー(L)の別部分と共にヒドラゾンを形成する。(*)符号は、この多価リンカー断片の、本明細書に記載される結合体の他の部分に対する結合点を表示する。
【0095】
さらに別の例示のスペーサーリンカーは、下式によってさらに示される、アルキレン-アミノ-アルキレンカルボニル、アルキレン-チオ-カルボニルアルキルスクシンイミド-3-イルなどを含み:
【化34】
式中、整数xおよびyは、1、2、3、4、または5である。
【0096】
本明細書で用いるシクロアルキレンという用語は、二価の炭素原子鎖であって、その一部が、例えば、シクロプロプ-1,1-ジイル、シクロプロプ-1,2-ジイル、シクロヘキシ-1,4-ジイル、3-エチルシクロペント-1,2-ジイル、1-メチレンシクロヘキシ-4-イルなどの環を形成する、二価の炭素原子鎖を指す。
【0097】
本明細書で用いるヘテロ環という用語は、炭素およびヘテロ原子から成る一価の鎖であって、少なくとも一つのヘテロ原子を含むその一部が、環、例えば、アジリジン、ピロリジン、オキサゾリジン、3-メトキシピロリジン、3-メチルピペラジンなどを形成し、該ヘテロ原子が、窒素、酸素、および硫黄から選ばる、一価の鎖を指す。
【0098】
本明細書で用いるアリールという用語は、炭素原子から成る、単環または多環の、芳香環、例えば、フェニル、ナフチルなどを指す。さらに、アリールは、ヘテロアリールを含んでもよい。
【0099】
本明細書で用いるヘテロアリールという用語は、炭素原子、および、窒素、酸素、および、硫黄から選ばれる少なくとも一つのヘテロ原子から成る、単環または多環の、芳香環、例えば、ピリジニル、ピリミジニル、インドリル、ベンゾキサゾリルなどを指す。
【0100】
本明細書で用いる必要に応じて置換されるという用語は、一般に炭素における、一つ以上の水素原子の、対応する数の置換基、例えば、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、アルキルまたはジアルキルアミノ、アルコキシ、アルキルスルフォニル、シアノ、ニトロなどによる置換を指す。さらに、同じ炭素における、隣接する二つの炭素における、または近傍にある二つの炭素における二つの水素が、二価置換基によって置換されて、対応する環構造を形成してもよい。
【0101】
本明細書で用いるイミノアルキリデニルという用語は、本明細書に定義されるアルキレンおよび窒素原子を含む、二価のラジカルを指し、該アルキレンの末端炭素は、該窒素原子に対して二重結合、例えば、式-(CH)=N-、-(CH2)2(CH)=N-、-CH2C(Me)=N-などを形成する。
【0102】
本明細書で用いるアミノ酸という用語は、一般に、アミノアルキルカルボキシレートを指し、該アルキルラジカルは、必要に応じて、例えば、アルキル、ヒドロキシ、アルキル、スルフヒドリルアルキル、アミノアルキル、カルボキシアルキルなどによって置換され、天然のアミノ酸、例えば、セリン、システイン、メチオニン、アスパラギン酸、グルタミン酸などに対応する基を含む。このようなアミノ酸は、単一の立体異性を有していてもよいし、あるいは、ラセミ混合物を含む、立体異性体の特定の混合物であってもよい。さらに、アミノ酸は、ベータ、ガンマ、およびさらに長いアミノ酸、例えば、下式のアミノ酸も指す:
-N(R)-(CR’R”)q-C(O)-
式中、Rは、水素、アルキル、アシル、または適切な窒素保護基であり、R’およびR”は、水素、または、それぞれが各事例において独立に選ばれる置換基であり、qは、1、2、3、4、または5などの整数である。例示として、R’およびR”は、独立して、例えば、ただしこれらに限定されないが、水素、または、天然アミノ酸に存在する側鎖、例えば、メチル、ベンジル、ヒドロキシメチル、チオメチル、カルボキシル、カルボキシメチル、グアニジノプロピルなど、およびそれらの誘導体および保護誘導体に相当する。上式は、全ての立体異性変異体を含む。例えば、アミノ酸は、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、リシン、グルタミン、アルギニン、セリン、オルニチン、トレオニンなどから選ばれてもよい。本明細書に記載される、ビタミン受容体結合性薬剤送達結合体中間体の、別の例示態様では、薬剤またはその類縁体または誘導体は、アルキルチオール求核体を含む。
【0103】
前述の用語は、組み合わせることによって、化学的関連基、例えば、メチルオキシメチル、エチルオキシエチルなどを指すアルコキシアルキルや、トリフルオロメチルオキシエチル、1,2-ジフルオロ-2-クロロエト-1-イルオキシプロピルなどを指すハロアルコキシアルキルや、ベンジル、フェネチル、α-メチルベンジルなどを指すアリールアルキルや、その他の基を生成することが可能である。
【0104】
本明細書で用いるアミノ酸誘導体という用語は、一般に、必要に応じて置換されるアミノアルキルカルボキシレートであって、該アミノ酸および/または該カルボキシレート基が、それぞれ必要に応じて、例えば、アルキル、カルボキシアルキル、アルキルアミノなどによって置換されるか、または必要に応じて保護される、アミノアルキルカルボキシレートを指す。さらに、必要に応じて置換される、二価の介在性アルキル断片は、さらに別の基、例えば、保護基などを含んでもよい。
【0105】
本明細書で用いるペプチドという用語は、一般に、互いにアミド結合によって共有結合される、一連のアミノ酸および/またはアミノ酸類縁体および誘導体を指す。
【0106】
さらに別のリンカーが、米国特許出願公開第2005/0002942号(その開示を引用により本明細書に含める)、および下記の表1および2に記載される。表中、(*)原子は、さらに付加されるスペーサーまたは放出型リンカー、薬剤、および/または結合性リガンドの結合点である。
【0107】
〔表1〕例示のスペーサーリンカー
【0108】
〔表2〕例示の放出型リンカー
【0109】
別の例示実施態様では、本結合体の水溶性、生物輸送、優先的腎クリアランス、取り込み、吸収、生体分布、および/またはバイオアベイラビリティーを実質的に高めるスペーサーリンカーを含む、二価リンカー(L)が、本明細書において記載される。親水基を含む、例示のスペーサーリンカー、例えば、下式の化合物が記載される:
【化35】
式中、mは、各事例において、1から約8までから独立に選ばれる整数であり;pは、1から約10までから選ばれる整数であり;nは、各事例において、1から約3までから独立に選ばれる整数である。一態様では、mは、各事例において、独立に1から約3までである。別の態様では、nは、各事例において1である。別の態様では、pは、各事例において、独立に約1から約6までである。例示として、前記に対応する、対応ポリプロピレンポリエーテルが、本発明において考慮の対象とされ、親水性スペーサーリンカーとして本結合体の中に含まれてもよい。さらに、ポリエチレンおよびポリプロピレンの混合ポリエーテルも、親水性スペーサーリンカーとして本結合体に含まれてよいことが理解される。さらに、前述のポリエーテル化合物の環状変異体、例えば、テトラヒドロフラニル、1,3-ジオキサン、1,4-ジオキサンなどを含むものも、本発明において考慮の対象とされる。
【0110】
別の例示実施態様では、本明細書に記載される親水性スペーサーリンカーは、複数のヒドロキシル官能基、例えば、モノサッカリド、オリゴサッカリド、ポリサッカリドなどを組み込むリンカーを含む。このポリヒドロキシル含有スペーサーリンカーは、Rが水素またはアルキルである、複数の-(CROH)-基を含むことを理解しなければならない。
【0111】
別の実施態様では、スペーサーリンカーは、下記の断片の一つ以上を含む:
【化36】
式中、Rは、H、アルキル、シクロアルキル、またはアリールアルキルであり;mは、1から約3までの整数であり;nは、1から約5までの整数であり、pは、1から約5までの整数であり、rは、1から約3までから選ばれる整数である。一態様では、整数nは、3または4である。別態様では、整数pは、3または4である。別態様では、整数rは1である。
【0112】
別の実施態様では、スペーサーリンカーは、下記の断片の一つ以上を含む:
【化37】
式中、Rは、H、アルキル、シクロアルキル、またはアリールアルキルであり;mは、1から約3までから独立に選ばれる整数であり;nは、1から約6までの整数であり、pは、1から約5までの整数であり、rは、1から約3までから選ばれる整数である。一変異態様では、整数nは、3または4である。別の変異態様では、整数pは、3または4である。別の変異態様では、整数rは1である。
【0113】
別の実施態様では、スペーサーリンカーは、下記の環状ポリヒドロキシル基の一つ以上を含む:
【化38】
式中、nは、2から約5までの整数であり、pは、1から約5までの整数であり、rは、1から約4までの整数である。一態様では、整数nは、3または4である。別態様では、整数pは、3または4である。別態様では、整数rは、2または3である。リンカーの上記セクションの全ての立体異性体も本発明の考慮の対象とされることが理解される。例えば、上記式において、本セクションは、リボース、キシロース、グルコース、マンノース、ガラクトース、または他の糖から誘導され、かつ、それらの分子上に存在するヒドロキシおよびアルキル側基の立体化学的配置を保持していてもよい。さらに、前述の式において、各種のデオキシ化合物も考慮の対象とされることを理解しなければならない。例示として、下式の化合物も考慮の対象とされる:
【化39】
式中、nは、r以下であり、例えば、rが2または3である場合、nは、それぞれ、1または2であるか、1、2、または3である。
【0114】
別の実施態様では、スペーサーリンカーは、下式のポリヒドロキシル化合物を含む:
【化40】
式中、nおよびrは、それぞれ、1から約3までから選ばれる整数である。一態様では、スペーサーリンカーは、下式の、一つ以上のポリヒドロキシル化合物を含む:
【化41】
本発明においては、リンカーのこのセクションの全ての立体異性形が考慮の対象とされることが理解される。例えば、上式において、本セクションは、リボース、キシロース、グルコース、マンノース、ガラクトース、または他の糖から誘導され、かつ、それらの分子上に存在するヒドロキシおよびアルキル側基の立体化学的配置を保持していてもよい。
【0115】
別構成では、本明細書に記載される親水性リンカーLは、リンカーのバックボーンから隔てられる、ポリヒドロキシル基を含む。例示として、このようなリンカーは、下式の断片を含む:
【化42】
式中、n、m、およりrは整数であり、それぞれ、各事例において、1から約5までから独立に選ばれる。例示の一態様では、mは、各事例において独立に2または3である。別態様では、rは、各事例において1である。別態様では、nは、各事例において1である。一変異態様では、リンカーのバックボーンにポリヒドロキシル基を接続する基は、異なるヘテロアリール基、例えば、ただしこれらに限定されないが、ピロール、ピラゾール、1,2,4-トリアゾール、フラン、オキサゾール、イソキサゾール、チエニル、チアゾール、イソチアゾール、オキサジアゾールなどの基である。同様に、二価の、6員環ヘテロアリール基も考慮の対象とされる。前述の例示的親水性スペーサーリンカーの他の変異態様としては、オキシアルキレン基、例えば、下式が挙げられる:
【化43】
式中、nおよびrは整数であり、それぞれ、各事例において、1から約5までから独立に選ばれ;pは、1から約4までから選ばれる整数である。
【0116】
別態様では、本明細書に記載される親水性リンカーLは、該リンカーのバックボーンから隔てられるポリヒドロキシル基を含む。例示として、このようなリンカーは、下式の断片を含む:
【化44】
式中、nは、1から約3までから選ばれる整数であり、mは、1から約22までから選ばれる整数である。例示の一態様では、nは1または2である。例示の別の一態様では、mは、約6から約10までから選ばれ、具体的には8である。一変異態様では、リンカーのバックボーンにポリヒドロキシル基を接続する基は、異なる官能基、例えば、ただしこれらに限定されないが、エステル、尿素、カルバメート、アシルヒドラゾンなどを含む。同様に環状変異態様も考慮の対象とされる。前述の例示的親水性スペーサーリンカーの他の変異態様としては、オキシアルキレン基、例えば、下式が挙げられる:
【化45】
式中、nおよびrは整数であり、それぞれ、各事例において、1から約5までから独立に選ばれ;pは、1から約4までから選ばれる整数である。
【0117】
別の実施態様では、本親水性スペーサーリンカーは、下式によって例示される、バックボーンモチーフと、分枝側鎖モチーフの組み合わせである:
【化46】
式中、nは、各事例において、0から約3までから独立に選ばれる整数である。上式は、4、5、6員、場合によってはさらに多数員の環状糖を表すことが意図される。さらに、上式は、デオキシ糖であって、式中に存在するヒドロキシ基の内の一つ以上が、水素、アルキル、またはアミノによって置換される糖を表すように修飾されてもよいことを理解しなければならない。さらに、対応するカルボニル化合物も、上式によって考慮の対象とされることを理解しなければならないが、この場合該ヒドロキシル基の内の一つ以上は酸化されて対応するカルボニルに変換される。さらに、この例示の実施態様では、ピラノースは、カルボキシルとアミノ官能基の両方を含み、(a)バックボーンに挿入することが可能であり、(b)この実施態様の変異態様では、分枝側鎖に対する合成上の手がかりを与えることが可能である。他の化学的断片を攻撃するために、これらのヒドロキシル側基のいずれを使用してもよく、例えば、対応するオリゴサッカリドを調製するため、追加の糖を使用してもよい。この実施態様の、他の変異態様、例えば、バックボーンへの、ピラノースまたは他の糖の、単一炭素における挿入、すなわち、ジェミナルな炭素のペアにおけるスピロ配置、または同様の配置も考慮の対象とされる。例えば、リンカー、または薬剤A、または結合性リガンドBの一端または両端は、バックボーンに挿入される糖に対し、1,1;1,2;1,3;1,4;2,3、または他の配置において接続されてよい。
【0118】
別の実施態様では、本明細書に記載される親水性スペーサーは、炭素、水素、および窒素から主に形成され、炭素/窒素比として約3:1以下、または約2:1以下の比を持つ。一態様では、本明細書に記載される親水性リンカーは、複数のアミノ官能基を含む。
【0119】
別の実施態様では、本スペーサーリンカーは、下式の一つ以上のアミノ基を含む:
【化47】
式中、nは、各事例において、1から約3までから独立に選ばれる整数である。一態様では、整数nは、各事例において独立に1または2である。別態様では、整数nは、各事例において1である。
【0120】
別の実施態様では、本親水性スペーサーリンカーは、硫酸エステル、例えば、硫酸のアルキルエステルである。例示として、本スペーサーリンカーは、下式を有する:
【化48】
式中、nは、各事例において、1から約3までから独立に選ばれる整数である。例示として、nは、各事例において独立に1または2である。
【0121】
ヘテロ原子に結合した遊離水素を含む、このようなポリヒドロキシル、ポリアミノ、カルボン酸、硫酸、および類似のリンカーにおいて、これらの遊離水素原子の一つ以上は、それぞれ、適切なヒドロキシル、アミノ、または酸保護基によって保護されてもよいし、あるいは、それとは別に、対応するプロドラッグとしてブロックされてもよい。後者は、特定の用途のため、例えば、一般的または特異的生理的条件下に母体ドラッグを放出するプロドラッグのために選ばれる。
【0122】
リンカーLの、上記例示の実例のそれぞれにおいて、ある場合には、さらに付加されるスペーサーリンカーLS、および/または、さらに付加される放出型リンカーLRが含まれる。これらのスペーサーリンカーおよび放出型リンカーはさらに、不斉炭素原子を含んでもよい。さらに、本明細書において示す立体化学的構成は、単に例示的なものであって、他の立体化学的構成も考慮の対象とされることを理解しなければならない。例えば、一変異態様では、対応する非天然アミノ酸構成が、下記のように、本明細書に記載される結合体の中に含まれてもよい:
【化49】
式中、前述のように、nは、2から約5までの整数であり、pは、1から約5までの整数であり、rは、1から約4までの整数である。
【0123】
本明細書に記載される結合体の調製に有用な親水基を含む、さらに別のリンカーが、同時係属出願の、米国特許仮出願第60/946,092および61/036,186号に記載される。なお、これらの開示を引用により本明細書に含める。
【0124】
別の実施態様では、マルチドラッグ結合体が本明細書において記載される。このようなマルチドラッグ結合体の、いくつかの例示的構成が、本発明において考慮の対象とされ、国際公開第WO 2007/022494号に記載される化合物および組成物を含む。なお、この開示を引用により本明細書に含める。例示として、多価リンカーは、二つ以上の薬剤Aに、受容体結合性リガンドBを接続してもよいが、ただしこの場合、薬剤のうちの一つはツブリシンである。このような多価結合体は、種々の構造的構成、例えば、ただしこれらに限定されないが、下記の、例示の一般式の構成において存在してもよい:
【化50】
式中、Bは受容体結合性リガンドであり、(L1)、(L2)、および(L3)は、それぞれ、親水性スペーサーリンカーを含む、本明細書に記載される多価リンカーであり、必要に応じて、一つ以上の放出型リンカーおよび/または追加のスペーサーリンカーを含み、(A1)、(A2)、および(A3)は、それぞれ、薬剤A、またはその類縁体または誘導体である。追加の薬剤A、またはその類縁体または誘導体、追加のリンカーを含む、他の変異態様、および、(B)、(L)、および(A)それぞれの、別の構成も、本発明の考慮の対象とされる。
【0125】
一変異態様では、本明細書に記載される送達結合体には、一つを超える受容体結合性リガンドBが含まれ、その例としては、下記の、ただしこれらに限定されないが、例示の一般式が含まれる:
【化51】
式中、Bは受容体結合性リガンドであり、(L1)、(L2)、および(L3)は、それぞれ、親水性スペーサーリンカーを含む、本明細書に記載される多価リンカーであり、必要に応じて、一つ以上の放出型リンカーおよび/または付加的スペーサーリンカーを含み、(A1)、(A2)、および(A3)は、それぞれ、薬剤A、またはその類縁体または誘導体である。追加の薬剤A、またはその類縁体または誘導体、追加のリンカーを含む、他の変異態様、および、(B)、(L)、および(A)それぞれの、別の構成も、本発明の考慮の対象とされる。一変異態様では、複数の受容体結合性リガンドBは、同じ受容体に対するリガンドであり、別の変異態様では、複数の受容体結合性リガンドBは、異なる受容体に対するリガンドである。
【0126】
別の例示実施態様では、追加の薬剤は、ある特定の作用機構によって、一つ以上の病原細胞集団に対抗する活性に基づいて選ばれる。例示の作用機構としては、アルキル化剤や、他の微小管阻害剤で、微小管形成を安定化、および/または不安定化する薬剤、例えば、ベータチューブリン剤、サイクリン依存性キナーゼ(CDK)阻害剤、トポイソメラーゼ阻害剤、タンパク合成阻害剤、Ras、Raf、PKC、PI3Kを含む、タンパクキナーゼ阻害剤、および類似の阻害剤、転写阻害剤、抗葉酸塩、熱ショックタンパク遮断剤などが挙げられる。
【0127】
例示のアルキル化剤としては、ただしこれらに限定されないが、マイトマイシンCBIなどが挙げられる。例示のサイクリン依存性キナーゼ(CDK)阻害剤としては、ただしこれらに限定されないが、CYC202、セリシクリブ、R-ロスコビチン、AGM-1470などが挙げられる。例示のトポイソメラーゼ阻害剤としては、ただしこれらに限定されないが、ドキソルビシン、他のアントラサイクリンなどが挙げられる。例示のタンパク合成阻害剤としては、ただしこれらに限定されないが、ブルセアンチンなどが挙げられる。Ras、Raf、PKC、PI3Kを含む、タンパクキナーゼ阻害剤、および類似の阻害剤としては、ただしこれらに限定されないが、L-779,450、R115777などが挙げられる。例示の転写阻害剤としては、ただしこれらに限定されないが、α-アマナチン、アクチノマイシンなどが挙げられる。例示の抗葉酸塩としては、ただしこれらに限定されないが、メトトレキセートなどが挙げられる。例示の熱ショックタンパク遮断剤としては、ただしこれらに限定されないが、ゲルダナマイシンなどが挙げられる。
【0128】
微小管形成を安定化、および/または不安定化するものを含む、例示の微小管阻害剤としては、βチューブリン剤、微小管毒素などが挙げられる。選ばれた受容体に結合する、例示の微小管毒素としては、ただしこれらに限定されないが、ビンカ結合部位に結合する阻害剤、例えば、アレナスタチン、ドラスタチン、ハリコンドリンB、マイスタンシン、フォモプシンA、リゾキシン、ウスチロキシン、ビンブラスチン、ビンクリスチンなど、タキソール結合部位に結合する安定剤、例えば、ジスコデルマリド、エポチロン、タキソール、パクリタキソールなど、コルヒチン結合部位に結合する阻害剤、例えば、コルヒチン、コンブレタスタチン、クラシンA、ポドフィロトキシン、ステガナシンなど、不定部位に結合する他のもの、例えば、クリプトフィシン、ツブリシンなどが挙げられる。
【0129】
一実施態様では、複数の薬剤のうちの一つは、ツブリシン、またはその類縁体または誘導体で、複数の薬剤のうちの他の少なくとも一つは、DNAアルキル化剤である。一変異態様では、複数の薬剤のうちの他の少なくとも一つは、P-糖タンパク(PGP)阻害剤である。別の変異態様では、複数の薬剤のうちの他の少なくとも一つは、ビンカアルカロイド、またはその類縁体または誘導体である。本明細書に記載されるビンカアルカロイドとしては、ただしこれらに限定されないが、ビンデシン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、カタランチン、ビンドリン、ロイロシン、ビノレルビン、イミドカルブ、シブトラミン、トルトラズリル、ビンブラスチン酸など、およびそれらの類縁体および誘導体が挙げられる。
【0130】
結合性リガンド(B)、例えば、ビタミンに対する結合部位は、受容体に特異的に結合することが可能な、任意の結合性リガンド(B)、またはその誘導体または類縁体に対する受容体を含むことが可能であるが、この場合、受容体、または他のタンパクは、病原性細胞集団によって一意に発現されるか、過剰に発現されるか、または優先的に発現される。病原性細胞によって一意に発現されるか、過剰発現されるか、または優先的に発現される表面提示タンパクは、通常、非病原性細胞の上には存在しないか、または低濃度で存在する受容体である。結合性リガンド薬剤送達結合体は、癌細胞、または他のタイプの病原性細胞上の受容体に対し、高い親和度をもって結合することが可能であってもよい。この高親和度結合は、結合性リガンドに内在するものであることも可能であるし、あるいは、結合親和度は、化学的に修飾されたリガンド(例えば、ビタミンの類縁体または誘導体)を用いることによって強化することも可能である。
【0131】
本明細書に記載される、結合性リガンド薬剤送達結合体は、例えば、広く多様なビタミン、または、受容体結合性ビタミン類縁体/誘導体と、リンカーと、薬剤とから形成することが可能である。本明細書に記載される、結合性リガンド薬剤送達結合体は、宿主動物において病原細胞集団に対し、ビタミンなどの結合性リガンドに対する受容体が、該病原細胞においてリガンド結合可能な形で優先的に発現されるために、選択的に標的化することが可能である。結合性リガンド(B)として使用することが可能な、例示のビタミン成分としては、カルニチン、イノシトール、リポ酸、ピリドキサル、アスコルビン酸、ニアシン、パントテン酸、葉酸、リボフラビン、チアミン、ビオチン、ビタミンB12、および脂溶性ビタミンA、D、E、およびKが挙げられる。これらのビタミン、およびその受容体結合性類縁体および誘導体は、二価リンカー(L)によって薬剤と結合されて、本明細書に記載される、結合性リガンド(B)薬剤送達結合体を形成することが可能である。ビタミンという用語は、別様に指示しない限り、ビタミン類縁体および/または誘導体を含むと理解される。例示として、葉酸塩の誘導体であるプテロイン酸、ビオチン類縁体、例えば、ビオシチン、ビオチンスルフォキシド、オキシビオチン、および、その他のビオチン受容体結合性化合物などは、ビタミン、ビタミン類縁体、およびビタミン誘導体と考えられる。本明細書に記載されるビタミン類縁体または誘導体は、それらを、二価リンカー(L)に対して共有結合させるヘテロ原子を組み込むビタミン類を指すことを認識しなければならない。
【0132】
例示のビタミン成分としては、葉酸、ビオチン、リボフラビン、チアミン、ビタミンB12、および、これらのビタミン分子の受容体結合性類縁体および誘導体、および、その他の、関連する、ビタミン受容体結合性分子が挙げられる。
【0133】
一実施態様では、標的化リガンドBは、葉酸塩、葉酸塩の類縁体、または葉酸塩の誘導体である。葉酸塩(folate、フォレート)という用語は、個別的にも、集合的にも、葉酸そのもの、および/または、葉酸受容体に結合することが可能な、葉酸の類縁体および誘導体を指すのに用いられる。
【0134】
葉酸塩類縁体および/または誘導体の例示実施態様としては、フォリン酸、プテロポリグルタミン酸、および葉酸受容体結合性プテリジン、例えば、テトラヒドロプテリン、ジヒドロ葉酸、テトラヒドロ葉酸、およびそれらのデアザおよびジデアザ類縁体が挙げられる。この「デアザ」および「ジデアザ」類縁体という用語は、天然の葉酸構造、またはその類縁体または誘導体において、一つの炭素原子が、一つまたは二つの窒素原子に置換される、公知の類縁体を指す。例えば、デアザ類縁体としては、葉酸塩の、1-デアザ、3-デアザ、5-デアザ、8-デアザ、および10-デアザ類縁体が挙げられる。ジデアザ類縁体としては、例えば、葉酸塩の、1,5-ジデアザ、5,10-ジデアザ、8,10-ジデアザ、および5,8-ジデアザ類縁体が挙げられる。リガンドを形成する複合体として有用な、他の葉酸塩としては、葉酸受容体結合性類縁体アミノプテリン、アメトプテリン(メトトレキセート)、N10-メチル葉酸、2-デアミノ-ヒドロキシ葉酸、デアザ類縁体、例えば、1-デアザメトプテリン、または3-デアザメトプテリン、および3’5’-ジクロロ-4-アミノ-4-デオキシ-N10-メチルプテロイルグルタミン酸(ジクロロメトトレキセート)が挙げられる。上記葉酸類縁体および/または誘導体は、その葉酸受容体結合能力を反映して、慣習的に葉酸塩と命名されるが、このようなリガンドは、外来分子と結合されると、膜貫通輸送、例えば、本明細書に記載される葉酸介在エンドサイトーシスの強化に有効である。葉酸受容体に結合して、該複合体の、受容体介在エンドサイトーシス輸送を起動することが可能な、その他の、適切な結合性リガンドとしては、葉酸受容体に対する抗体が挙げられる。葉酸受容体に対する抗体と複合体を形成する外来分子は、該複合体の膜貫通輸送の誘発に用いられる。
【0135】
葉酸受容体に結合する、さらに別の葉酸類縁体が、米国特許出願第2005/0227985および2004/0242582号に記載される。これらの開示を引用により本明細書に含める。例示として、このような葉酸類縁体は、下記の一般式を有する:
【化52】
式中、XおよびYは、それぞれ独立に、ハロ、R2、OR2、SR3、およびNR4R5から成る群から選ばれ;
U、V、およびWは、-(R6a)C=、-N=、-(R6a)C(R7a)-、および-N(R4a)から成る群からそれぞれ独立に選ばれる二価成分を表し;Qは、CおよびCHから成る群から選ばれ;Tは、S、O、N、および-C=C-から成る群から選ばれ;
A1およびA2は、酸素、硫黄、-C(Z)-、-C(Z)O-、-OC(Z)-、-N(R4b)-、-C(Z)N(R4b)-、-N(R4b)C(Z)-、-OC(Z)N(R4b)-、-N(R4b)C(Z)O-、-N(R4b)C(Z)N(R5b)-、-S(O)-、-S(O)2-、-N(R4a)S(O)2-、-C(R6b)(R7b)-、-N(C≡CH)-、-N(CH2C≡CH)-、C1-C12アルキル、およびC1-C12アルキンオキシから成る群からそれぞれ独立に選ばれ、前式において、Zは酸素または硫黄であり;
R1は、水素、ハロ、C1-C12アルキル、およびC1-C12アルコキシから成る群から選ばれ;R2、R3、R4、R4a、R4b、R5、R5b、R6b、およびR7bは、それぞれ独立に、水素、ハロ、C1-C12アルキル、C1-C12アルコキシ、C1-C12アルカノイル、C1-C12アルケニル、C1-C12アルキニル、(C1-C12アルコキシ)カルボニル、および(C1-C12アルキルアミノ)カルボニルから成る群から選ばれ;
R6およびR7は、それぞれ独立に、水素、ハロ、C1-C12アルキル、およびC1-C12アルコキシから成る群から選ばれ;または、R6およびR7は一緒になってカルボニル基を形成し;R6aおよびR7aは、それぞれ独立に、水素、ハロ、C1-C12アルキル、およびC1-C12アルコキシから成る群から選ばれ;または、R6aおよびR7aは一緒になってカルボニル基を形成し;
Lは、本明細書に記載される二価リンカーであり;かつ、
n、p、r、s、およびtは、それぞれ独立に、0または1のいずれかである。
【0136】
本明細書で用いる場合、葉酸塩という用語は、個別に、結合体の形成に使用される葉酸を指すか、またはそれとは別に、葉酸塩または葉酸受容体に結合することが可能な、葉酸類縁体または誘導体の両方を指す。
【0137】
ビタミンは、窒素を含む葉酸塩であることが可能であり、本実施態様では、スペーサーリンカーは、アルキレンカルボニル、シクロアルキレンカルボニル、カルボニルアルキルカルボニル、1-アルキレンスシンイミド-3-イル、1-(カルボニルアルキル)スクシンイミド-3-イルであることが可能であり、これらのスペーサーリンカーはそれぞれ、必要に応じて置換基X1によって置換され、このスペーサーリンカーは、葉酸の窒素に結合して、イミドまたはアルキルアミドを形成する。本実施態様では、置換基X1は、アルキル、ヒドロキシアルキル、アミノ、アミノアルキル、アルキルアミノアルキル、ジアルキルアミノアルキル、スルフヒドリルアルキル、アルキルチオアルキル、アリール、置換アリール、アリールアルキル、置換アリールアルキル、カルボキシ、カルボキシアルキル、グアニジノアルキル、R4-カルボニル、R5-カルボニルアルキル、R6-アシルアミノ、およびR7-アシルアミノアルキルであることが可能である。上記において、R4およびR5は、アミノ酸、アミノ酸誘導体、およびペプチドからそれぞれ独立に選ばれ、R6およびR7は、アミノ酸、アミノ酸誘導体、およびペプチドからそれぞれ独立に選ばれる。
【0138】
ビタミン類縁体および/または誘導体の例示実施態様としては、ビオチンの類縁体および誘導体、例えば、ビオシチン、ビオチンスルフォキシド、オキシビオチン、およびその他のビオチン受容体結合性化合物などが挙げられる。本明細書に記載される他のビタミンの類縁体および誘導体も本発明の考慮の対象とされることが認識される。一実施態様では、本明細書に記載される薬剤送達結合体において結合性リガンド(B)として使用することが可能なビタミンとしては、活性化マクロファージ上に特異的に発現されるビタミン受容体、例えば、本明細書に記載される葉酸塩、またはその類縁体または誘導体に結合する葉酸受容体に結合するような、ビタミン類が挙げられる。
【0139】
本明細書に記載されるビタミンの外に、他の結合性リガンドも、本明細書に記載される薬剤およびリンカーに結合させてもよく、本発明では、所望の標的に対する薬剤の送達を促進することが可能な結合性リガンド−リンカー−薬剤結合体を形成するものとして考慮の対象とされることが認識される。、これら、その他の結合性リガンドも、ビタミンおよびその類縁体および誘導体に加えて、標的細胞に結合することが可能な薬剤送達結合体の形成に使用してよい。一般に、細胞表面受容体に結合するものであれば、いずれのリガンド(B)も、リンカー−薬剤結合体を結合させることが可能な標的化リガンドとして好適に使用されてよい。本発明において考慮の対象とされる、他の例示のリガンドとしては、ライブラリースクリーニングによって特定されるペプチドリガンド、腫瘍細胞特異的ペプチド、腫瘍細胞特異的アプタマー、腫瘍細胞特異的炭水化物、腫瘍細胞特異的モノクロナールまたはポリクロナール抗体、抗体のFabまたはscFv(すなわち、単一鎖可変域)断片、例えば、転移癌細胞において特異的に発現されるか、または一意に発現されるEphA2、またはその他のタンパクに対する抗体のFab断片、併合ライブラリーから得られる小型有機分子、増殖因子、例えば、EGF、FGF、インスリン、およびインスリン様増殖因子、および相同ポリペプチド、ソマトスタチンおよびその類縁体、トランスフェリン、リポタンパク複合体、胆汁塩、セレクチン、ステロイドホルモン、Arg-Gly-Asp含有ペプチド、レチノイド、各種ガレクチン、δ-オピオイド受容体リガンド、コレシストキニンA受容体リガンド、アンギオテンシンAT1またはAT2受容体に対する特異的リガンド、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体λリガンド、β-ラクタム抗生物質、例えば、ペニシリン、抗微生物剤を含む小型有機分子、および、腫瘍細胞表面または感染性生物上に優先的に発現される受容体に特異的に結合するその他の分子、ある特異的受容体の結合ポケット中に、該受容体またはその他の細胞表面タンパクの結晶構造に基づいて、ぴったりと納まるように設計される、抗菌剤および他の薬剤、腫瘍細胞の表面に優先的に発現される腫瘍抗原、またはその他の分子、またはこれらの分子のいずれかの断片に対する結合性リガンド、が挙げられる。結合性リガンド−薬剤結合体に対し結合部位として機能すると考えられる、腫瘍特異的抗原の例としては、エフリンファミリータンパクの一員、例えば、EphA2の細胞外エピトープが挙げられる。EphA2の発現は、正常細胞では細胞・細胞接合部に限定されるが、転移腫瘍細胞では全細胞表面に広がって分布する。したがって、転移細胞におけるEphA2は、例えば、薬剤に結合された抗体のFab断片との結合が可能であると考えられるが、一方、このタンパクは、正常細胞上のFab断片との結合は可能ではないと考えられ、したがって、転移癌細胞に対して特異的な、結合性リガンド−薬剤結合体が得られる。
【0140】
別の実施態様では、病原細胞集団によって、引き起こされるかまたはその存在が確認される病気の治療法が、本明細書において記載される。宿主における病原細胞集団の存在によって特徴づけられる病気を治療するために、結合性リガンド(B)薬剤送達結合体を使用することが可能であり、その際、該病原細胞集団のメンバーは、結合性リガンド(B)、またはその類縁体または誘導体に対し利用可能な結合部位を有し、該結合部位は、該病原細胞によって一意に発現されるか、過剰発現されるか、または優先的に発現される。この病原細胞の選択的除去は、結合性リガンド(B)、またはその類縁体または誘導体に特異的に結合し、該病原細胞によって一意に発現されるか、過剰発現されるか、または優先的に発現されるような、リガンド受容体、トランスポーター、またはその他の表面提示タンパクに対する、結合性リガンド(B)薬剤送達結合体のリガンド成分の結合によって仲介される。病原細胞によって一意に発現されるか、過剰に発現されるか、または優先的に発現される表面提示タンパクは、非病原細胞においては存在しないか、または低濃度でしか存在しない受容体であり、これが、該病原細胞の選択的除去のための手段を提供する。
【0141】
例えば、表面発現ビタミン受容体、例えば、高親和性葉酸受容体は、癌細胞において過剰に発現される。卵巣、乳腺、結腸、肺、鼻、咽喉、および脳の上皮癌は全て、高レベルの葉酸受容体を発現することが報告されている。実際、全てのヒト卵巣腫瘍の90%を超えるものが、大量のこの受容体を発現することが知られる。したがって、本明細書に記載される結合性リガンド(B)薬剤送達結合体は、様々の腫瘍細胞タイプを治療するのに使用が可能であるばかりでなく、他のタイプの病原細胞、例えば、リガンド受容体、例えば、ビタミン受容体を優先的に発現し、したがって、リガンド、例えば、ビタミン、またはビタミン類縁体または誘導体に対して利用可能な表面結合部位を有するような、感染病原体の治療にも使用することが可能である。一態様では、病原細胞の除去のために、それらに対する標的化を最大化するよう、結合性リガンド−リンカー−薬剤結合体を標的化するための方法が、本明細書において記載される。
【0142】
本明細書において記載される結合性リガンド(B)薬剤送達結合体は、ヒトの臨床医学および獣医学的応用の両方のために使用することが可能である。したがって、病原細胞集団を抱え、該結合性リガンド(例えば、ビタミン)薬剤送達結合体によって治療される宿主動物は、ヒトであることも可能であるし、あるいは、獣医学的応用の場合は、実験、家畜、ペット、または野生動物であることが可能である。本明細書に記載される方法は、宿主動物、例えば、ただしこれらに限定されないが、ヒト、実験動物、例えば、げっ歯類(例えば、マウス、ラット、ハムスターなど)、ウサギ、サル、チンパンジー、ペット動物、例えば、イヌ、ネコ、およびウサギ、家畜、例えば、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、および、檻で飼育される野生動物、例えば、クマ、パンダ、ライオン、トラ、ヒョウ、ゾウ、シマウマ、キリン、ゴリラ、イルカ、およびクジラなどに適用することが可能である。
【0143】
本方法は、これらの宿主動物において様々な病態を引き起こす病原細胞集団に適用することが可能である。病原細胞という用語は、例えば、癌細胞、感染病原体、例えば、細菌およびウィルス、細菌またはウィルス感染細胞、病態を誘発することが可能な活性化マクロファージ、および、リガンド結合性受容体、例えば、ビタミン受容体、または、ビタミンの類縁体または誘導体に結合する受容体を、一意に発現するか、優先的に発現するか、または過剰に発現する、他の、任意のタイプの病原細胞を指す。病原細胞は、病態を引き起こす細胞であって、それに対し、本明細書に記載される結合性リガンド薬剤送達結合体による治療が、該病気の症状の緩和をもたらす、任意の細胞を含むことが可能である。例えば、病原細胞は、ある状況下では病原性となるが、別の状況下では病原性とはならないような宿主細胞、例えば、対宿主性移植片病をもたらす、免疫系の細胞であってもよい。
【0144】
したがって、病原細胞集団は、腫瘍誘発性、すなわち、良性腫瘍および悪性腫瘍を誘発する癌細胞集団であることも可能であるし、あるいは、非腫瘍誘発性であることも可能である。この癌細胞集団は、自発的に発生することも可能であるし、あるいは、宿主の生殖系列に存在する突然変異、または体細胞突然変異のような過程によって発生することも可能であるし、あるいは、化学的、ウィルス、または放射線誘発性であることも可能である。本方法は、癌、例えば、上皮癌、肉腫、リンパ腫、ホジキン病、メラノーマ、中皮腫、バーキットリンパ腫、鼻咽頭癌、白血病、および骨髄腫の治療に利用することが可能である。癌細胞集団としては、ただしこれらに限定されないが、口腔、甲状腺、内分泌腺、皮膚、胃、食道、咽頭、すい臓、結腸、膀胱、骨、卵巣、子宮頸部、子宮、乳房、睾丸、前立腺、直腸、腎臓、肝臓、および肺癌を挙げることが可能である。
【0145】
病原細胞集団が癌細胞集団である実施態様では、結合体投与の効果は、腫瘍塊の縮小または除去、または腫瘍細胞増殖の抑制によって測定される治療反応である。腫瘍の場合、除去は、一次腫瘍細胞の除去、または転移した細胞の除去、あるいは、一次腫瘍から解離する過程にある細胞の除去であることが可能である。さらに、腫瘍の外科的除去、放射線治療、化学療法、または生物学的治療を含む、何らかの治療処置による腫瘍の除去後、該腫瘍の再発を阻止するための、結合性リガンド(B)薬剤送達結合体(例えば、結合性リガンドとしてビタミンが使用される)による予防治療も記載される。この予防治療は、結合性リガンド(B)薬剤送達結合体による初期治療、例えば、一日多数回投与処方による治療であることも可能であるし、および/または、この初期治療(単数または複数)後、数日または数ヶ月の間隔を置いて施される追加治療または一連の処置であることも可能である。したがって、本明細書に記載の方法によって治療される、何らかの病原細胞集団の除去は、病原細胞の数の低下、病原細胞増殖の抑制、病原細胞の再発を阻止する予防治療、または、病気の症状の緩和をもたらす病原細胞の治療を含む。
【0146】
癌細胞が除去される場合、本方法は、腫瘍の外科的切除、放射線療法、化学療法、または生物学的療法、例えば、他の免疫療法、例えば、ただしこれらに限定されないが、モノクロナール抗体療法、免疫変調剤による治療、免疫エフェクター細胞の養子移入(Adoptive transfer)、造血増殖因子、サイトカインによる治療、およびワクチン接種、などと組み合わせて用いることができる。
【0147】
さらに、本方法は、種々の感染症を引き起こす病原細胞集団にも適用が可能である。例えば、本方法は、病原細胞、例えば、細菌、酵母を含む真菌、ウィルス、ウィルス感染細胞、マイコプラスマ、および寄生虫などの集団に対して適用が可能である。本明細書において記載される結合性リガンド(B)薬剤送達結合体によって治療することが可能な感染生物は、動物において病原性となる、当該技術分野で公認済みの、任意の感染生物であって、例えば、グラム陰性、またはグラム陽性球菌または桿菌である細菌などである。例えば、Proteus(プロテウス)種、Klebsiella(クレブシエラ)種、Providencia(プロビデンシア)種、Yersinia(エルジニア)種、Erwinia(エルウィニア)種、Enterobacter(エンテロバクター)種、Salmonella(サルモネラ)種、Serratia(セラシア)種、Aerobacter(アエロバクター)種、Escherichia(エシェリキア)種、Pseudomonas(シュードモナス)種、Shigella(赤痢菌)種、Vibrio(ビブリオ)種、Aeromonas(アエロモナス)種、Campylobacter(キャンピロバクター)種、Streptococcus(連鎖球菌)種、Staphylococcus(ブドウ球菌)種、Lactobacillus(乳酸桿菌)種、Micrococcus(ミクロコッカス)種、Moraxella(モラクセラ)種、Bacillus(バシラス)種、Clostridium(クロストリジウム)種、Corynebacterium(コリネバクテリウム)種、Eberthella(腸チフス菌)種、Micrococcus(ミクロコッカス)種、Mycobacterium(マイコバクテリウム)種、Neisseria(ナイセリア)種、Haemophilus(ヘモフィラス)種、Bacteroides(バクテロイデス)種、Listeria(リステリア)種、Erysipelothrix(エリジペロスリックス)種、Acinetobacter(アシネトバクター)種、Brucella(ブルセラ)種、Pasteurella(パスツレラ)種、Vibrio(ビブリオ)種、Flavobacterium(フラボバクテリウム)種、Fusobacterium(フゾバクテリウム)種、Streptobacillus(ストレプトバチラス)種、Calymmatobacterium(カリマトバクテリウム)種、Legionella(レジオネラ)種、Treponema(トレポネーマ)種、Borrelia(ボレリア)種、Leptospira(レプトスピラ)種、Actinomyces(アクチノミセス)種、Nocardia(ノカルジア)種、Rickettsia(リケッチア)種、および、宿主において病気を引き起こす、その他の、任意の細菌種を、本明細書に記載される結合性リガンド薬剤送達結合体によって治療することが可能である。
【0148】
特に興味あるのは、抗生物質に対して耐性を有する細菌、例えば、抗生物質耐性連鎖球菌種およびブドウ球菌種、または、抗生物質に感受性を有するが、抗生物質で治療される感染の再発を引き起こし、そのため最終的に耐性菌を発生させるような細菌である。抗生物質に感受性を有するが、抗生物質で治療される感染の再発を引き起こし、そのため最終的に耐性菌を発生させるような細菌は、これら抗生物質耐性菌株の発達を回避するために、本明細書に記載される結合性リガンド(B)薬剤送達結合体を、抗生物質の不在下に、または、通常患者に投与されるよりも低いと考えられる用量の抗生物質と組み合わせて用いることによって、治療することが可能である。
【0149】
DNAおよびRNAウィルスなどのウィルスも、記載の方法によって治療することが可能である。このようなウィルスとしては、例えば、ただしこれらに限定されないが、DNAウィルス、例えば、パピローマウィルス、パルボウィルス、アデノウィルス、ヘルペスウィルス、およびワクシニアウィルス、および、RNAウィルス、例えば、アレナウィルス、コロナウィルス、ライノウィルス、呼吸器多核体ウィルス、インフルエンザウィルス、ピコルナウィルス、パラミクソウィルス、レオウィルス、レトロウィルス、レンチウィルス、およびラブドウィルスが挙げられる。
【0150】
本方法はさらに、任意の真菌、例えば、酵母、マイコプラスマ種、寄生虫、または、動物において病気を引き起こす、その他の感染性微生物などに対して適用が可能である。本方法および本組成物によって治療することが可能な真菌の例としては、かびとして成長するか、または酵母様である真菌が挙げられ、例えば、下記の疾病を引き起こす真菌が含まれる:白癬、ヒストプラスマ症、ブラストミセス症、アスペルギルス症、クリプトコックス症、スポロトリクス症、コクシジオイデス真菌症、パラコクシジオイドミコーシス、ムコール症、クロモブラストミコーシス、皮膚糸状菌症、プロトテコーシス、フザリウム症、ひこう疹、菌腫、パラコキシジオイドミコーシス、フェオフィホ真菌症、シュードアレシェリア症、スポロトリクス症、砂毛症、ニューモシスティス感染症、およびカンジダ症など。
【0151】
本方法はさらに、寄生虫感染症、例えば、ただしこれらに限定されないが、下記のものによって引き起こされる感染症を治療するために利用することが可能である:条虫類、例えば、Taenia(サナダムシ)、Hymenolepsis(膜様条虫)、Diphyllobothrium(裂頭条虫)、およびEchinococcus(エキノコックス)種、吸虫類、例えば、Fasciolopsis(肥大吸虫)、Heterophyes(異形吸虫)、Metagonimus(メタゴニムス)、Clonorchis(肝吸虫)、Fasciola(ファスキオラ)、Paragonimus(肺吸虫)、およびSchitosoma(住血吸虫)種、回虫類、例えば、Enterobius(ギョウ虫)、Trichuris(鞭虫)、Ascaris(回虫)、Ancylostoma(鉤虫)、Necator(アメリカ鉤虫)、Strongyloides(ストロンギロイデス)、Trichinella(旋毛虫)、Wuchereria(ブケレリア)、Brugia(ブルギア)、Loa Onchocerca(ロア・オンコセルカ)、およびDracunculus(ドラクンクルス)種、アメーバ類、例えば、Naegleria(ネグレリア)、およびAcanthamoeba(アカントアメーバ)種、および原生動物、例えば、Plasmodium(プラスモジウム)、Trypanosoma(トリパノソーマ)、Leishmania(リーシュマニア)、Toxoplasma(トキソプラスマ)、Entamoeba(エントアメーバ)、Giardia(ジアルジア)、Isospora(イソスポラ)、Cryptosporidium(クリプトスポリジウム)、およびEnterocytozoon(エンテロシトゾーン)種など。
【0152】
本明細書に記載される結合性リガンド薬剤送達結合体が振り向けられる病原細胞は、内因性病原体を抱える細胞、例えば、ウィルス、マイコプラスマ、寄生虫、または細菌に感染した細胞であることが可能であるが、これらの細胞がビタミン受容体などのリガンド受容体を優先的に発現することが条件となる。
【0153】
一実施態様では、結合性リガンド薬剤送達結合体は、該リガンドに特異的に結合し、病原細胞において優先的に発現されるような、受容体、トランスポーター、または、その他の、表面提示タンパクに対し、該結合性リガンド成分を結合させることによって、該標的病原細胞の内部へ移行させることができる。このような内部移行は、例えば、受容体介在エンドサイトーシスを通じて起こることが可能である。この結合性リガンド(B)薬剤送達結合体が放出型リンカーを含む場合、結合性リガンド成分と薬剤とは細胞内において解離し、薬剤は、その細胞内標的に対して作用することが可能となる。
【0154】
ある別態様では、薬剤送達結合体の結合性リガンド成分は、病原細胞に結合し、薬剤を、病原細胞表面にごく近接して配置することが可能である。次に、この薬剤は、放出型リンカーを切断することによって放出することが可能である。例えば、薬剤は、放出型リンカーがジスルフィド基である場合、タンパク、ジスルフィドイソメラーゼによって放出することが可能である。次に、薬剤は、該結合性リガンド(B)薬剤送達結合体が結合した病原細胞によって取り込まれるか、または、該細胞のごく近傍の別の病原細胞によって取り込まれる。それとは別に、放出型リンカーがジスルフィド基である場合、薬剤は、細胞内タンパク、ジスルフィドイソメラーゼによって放出させることが可能であると考えられる。薬剤はさらに、加水分解機構によって、例えば、ある種のベータ除去機構に関して上述した、酸触媒加水分解、または、隣接基支援切断によって放出させることが可能である。どのような放出型リンカー(一つまたは複数)を選択するかが、薬剤が結合体から放出される機構を決定する。このような選択は、薬剤結合体が使用される条件によって前もって定義できることが認識される。それとは別に、薬剤送達結合体は、結合後ただちに標的細胞の内部へ移行させることもでき、薬剤が、ビタミン成分から切り離されることなくその効果を示す状態において、細胞内で結合性リガンドと薬剤とを結合したままにすることも可能である。
【0155】
結合性リガンドがビタミンである、さらに別の実施態様では、このビタミン-薬剤送達結合体は、細胞のビタミン受容体とは独立の機構を通じて作用することが可能である。例えば、この薬剤送達結合体は、血清中に存在する可溶性ビタミン受容体、または、アルブミンなどの血清タンパクに結合してもよく、その結果、非結合薬剤に比べ、より長期の循環を実現したり、非結合薬剤に比べ、病原細胞集団に対する該結合体の活性の上昇を実現することが可能である。
【0156】
一実施態様では、本明細書に記載される方法において使用される薬剤は、少なくとも4時間血清中で安定状態を持続する。別の実施態様では、薬剤は、ナノモル範囲のIC50を有し、別の実施態様では、薬剤は水溶性である。薬剤が水溶性でない場合、二価リンカー(L)は、水溶性を強化するように誘導体形成させることが可能である。薬剤という用語は、上述の薬剤の類縁体または誘導体のいずれをも意味する。薬剤類縁体または誘導体とは、ヘテロ原子、すなわち、それを通じて該薬剤類縁体または誘導体が、二価リンカー(L)に共有結合されるヘテロ原子を組み込む薬剤を意味することが可能であることが認識される。
【0157】
結合性リガンド薬剤送達結合体は、結合性リガンド(B)、二価リンカー(L)、薬剤、および、必要に応じて、結合性リガンド(B)受容体結合成分および薬剤を二価リンカー(L)に結合する、ヘテロ原子リンカーを含むことが可能である。例示の一実施態様では、ビタミン類縁体または誘導体とは、ヘテロ原子、すなわち、それを通じて該ビタミン類縁体または誘導体が、二価リンカー(L)に対し共有結合されるヘテロ原子を組み込むビタミンを意味することが可能であることを認識しなければならない。したがって、この例示実施態様では、ビタミンは、ヘテロ原子リンカーを通じて、二価リンカー(L)に対し共有結合させることが可能であり、あるいは、ビタミン類縁体または誘導体(すなわち、ヘテロ原子を組み込んでいるもの)は、二価リンカー(L)に直接結合させることが可能である。同様の例示実施態様では、薬剤類縁体または誘導体は、薬剤であり、また、薬剤類縁体または誘導体とは、ヘテロ原子、すなわち、それを通じて、該薬剤類縁体または誘導体が、二価リンカー(L)に対し共有結合されるヘテロ原子を含む薬剤を意味してもよい。したがって、これらの例示態様では、薬剤は、ヘテロ原子リンカーを介して、二価リンカー(L)に共有結合させることが可能であり、あるいは、薬剤類縁体または誘導体(すなわち、ヘテロ原子を組み込むもの)は、二価リンカー(L)に直接結合させることが可能である。二価リンカー(L)は、スペーサーリンカー、放出型(すなわち切断可能な)リンカー、および、これら両タイプのリンカーを含む結合体においてスペーサーリンカーを放出型リンカーに結合するための、ヘテロ原子リンカーを含むことが可能である。
【0158】
一般に、二価リンカー(L)と、結合性リガンド(B)またはその類縁体または誘導体との間や、二価リンカー(L)と、薬剤またはその類縁体または誘導体との間における、任意の介在性ヘテロ原子を含む結合体の形成法は、いずれのものでも利用が可能である。さらに、スペーサーリンカー、放出型リンカー、およびヘテロ原子リンカーの間で結合体を形成して二価リンカー(L)を形成する方法に関しても、当該技術分野で公認のいずれのものも使用が可能である。結合体は、これらの分子のいずれかを、例えば、複合体形成、あるいは、水素、イオン、または共有結合を通じて、直接結合することによって形成することが可能である。共有結合は、例えば、酸、アルデヒド、ヒドロキシ、アミノ、スルフヒドリル、またはヒドラゾ基の間に、アミド、エステル、ジスルフィド、またはイミノ結合を形成することによって発生させることが可能である。
【0159】
別の実施態様では、単一または複数用量で投与された場合に宿主動物において病原細胞集団を除去するのに有効な量の、結合性リガンド(B)薬剤送達結合体を含む、薬学的組成物が記載される。本結合性リガンド薬剤送達結合体は、動物に対し、好ましくは、非経口的に、例えば、皮内、皮下、筋肉内、腹腔内、静脈内、または、硬膜下腔内に投与される。それとは別に、本結合性リガンド薬剤送達結合体は、他の医学的に有用なプロセスによって、例えば、経口的に宿主動物に投与することが可能であり、有効であれば、いずれの用量でも、また、適切であれば、徐放剤を含むいずれの治療剤形でも、使用が可能である。
【0160】
非経口剤形の例としては、等張生理的食塩水、5%グルコース、または他の周知の薬学的に受容可能な液体担体、例えば、アルコール液、グリコール類、エステル類、およびアミド類に溶解した、活性剤の水溶液が挙げられる。非経口投与剤形は、本薬剤送達結合体の用量を含む、再構成可能な凍結乾燥体の形状を取ることも可能である。本実施態様の一態様では、当該技術分野で公知の、いくつかの長期徐放剤形の内のいずれか、例えば、米国特許第4,713,249号、5,266,333号、および5,417,982号(これらの開示を引用により本明細書に含める)に記載される、生物分解性炭水化物基質剤形を投与することが可能であり、またはそれとは別に、徐放ポンプ(例えば、浸透圧ポンプ)を使用することも可能である。
【0161】
例示の一態様では、結合性リガンド薬剤送達結合体が介在する病原細胞集団の除去を強化するために、前述の方策と組み合わせて、あるいはその補助として、治療因子を含む、少なくとも一つの追加の組成物を、宿主に投与することが可能であり、あるいは、一つを超える治療因子を投与することが可能である。この治療因子は、化学療法剤、または、投与される結合性リガンド薬剤送達結合体の効力を補足することが可能な、別の治療因子から選ぶことが可能である。
【0162】
例示の一態様では、これらの因子の、治療的に有効な組み合わせを使用することが可能である。例えば、一実施態様では、病原細胞を抱える宿主動物において該病原細胞を除去、減少、または中和するために、結合性リガンド薬剤送達結合体と共に、治療的有効量の治療因子を、例えば、一日当たり複数回投与処方において、約0.1 MIU/m2/投与/日から約15 MIU/m2/投与/日の範囲の量として使用することが可能であり、または、例えば、一日当たり複数回投与処方において、約0.1 MIU/m2/投与/日から約7.5 MIU/m2/投与/日の範囲の量として使用することが可能である(MIU=百万国際単位;m2=平均的ヒトのおよその体表面積)。
【0163】
別態様では、例えば、それ自体細胞傷害性である化学療法剤や、腫瘍透過性を増強するよう作働しうる化学療法剤なども、結合性リガンド薬剤送達結合体と組み合わせて記載の方法において使用するのに好適である。このような化学療法剤としては、アデノコルチコイドおよびコルチコステロイド、アルキル化剤、抗アンドロゲン、抗エストロゲン、アンドロゲン、アクラマイシンおよびアクラマイシン誘導体、エストロゲン、シトシンアラビノシドなどの抗代謝剤、プリン類縁体、ピリミジン類縁体、およびメトトレキセート、ブスルファン、カルボプラチン、クロラムブシル、シスプラチン、および他の白金化合物、タモキシフェン、タキソール、パクリタキセル、パクリタキセル誘導体、Taxotere(登録商標)、シクロフォスファミド、ダウノマイシン、リゾキシン、T2トキシン、植物アルカロイド、プレドニソン、ヒドロキシウレア、テニポシド、マイトマイシン、ディスコデルモリド、微小管阻害剤、エポチロン、ツブリシン、シクロプロピルベンゾ[e]インドロン、seco-シクロプロピルベンゾ[e]インドロン、O-Ac-seco-シクロプロピルベンゾ[e]インドロン、ブレオマイシン、および他の任意の抗生物質、ナイトロジェンマスタード、ニトロソウレア、ビンクリスチン、ビンブラスチン、およびその類縁体および誘導体、例えば、デアセチルビンブラスチン、モノヒドラジド、コルヒチン、コルヒチン誘導体、アロコルヒチン、チオコルヒチン、トリチルシステイン、ハリコンドリンB、ドラスタチン10などのドラスタチン、αアマニチンなどのアマニチン、カンプトテシン、イリノテカン、およびその他のカンプトテシン誘導体、ゲルダマイシン、およびゲルダマイシン誘導体、エストラムスチン、ノコダゾール、MAP4、コルセミド、炎症およびプロ炎症剤、ペプチドおよびペプチド様シグナル伝達阻害剤、およびその他の、任意の、当該技術分野で公認の薬剤またはトキシンが挙げられる。使用が可能な、他の薬剤としては、ペニシリン、セファロスポリン、バンコマイシン、エリスロマイシン、クリンダマイシン、リファンピン、クロラムフェニコール、アミノグリコシド抗生物質、ゲンタマイシン、アンフォテリシンB、アシクロビル、トリフルリジン、ガンシクロビル、ジドブジン、アマンタジン、リバビリン、マイスタンシン、およびその類縁体および誘導体、ゲムシタビン、および、他の、任意の、当該技術分野で公認の抗微生物化合物が挙げられる。
【0164】
本治療因子は、結合性リガンド薬剤送達結合体の前に、後に、または、と同時に、宿主動物に投与することが可能であり、該治療因子は、結合性リガンド薬剤送達結合体を含む、同じ組成物の一部として投与することが可能であり、あるいは、結合性リガンド薬剤送達結合体とは異なる組成物の一部として投与することが可能である。治療因子を治療的に有効な用量として含む治療組成物であれば、いずれのものも使用することが可能である。
【0165】
さらに、結合性リガンド薬剤送達結合体については、一つを超えるタイプを使用することが可能である。例えば、例示として、同時投与プロトコールにおいて、同じ薬剤を有するが、異なるビタミンを持つ複数の結合体によって、宿主動物を治療することが可能である。別の実施態様では、異なる薬剤に結合する同じ結合性リガンドを含む結合体、または、種々の薬剤に結合する種々の結合性リガンドを含む結合体によって、宿主動物を治療することが可能である。別の例示の実施態様では、同じ薬剤送達結合体の一部として複数のビタミンおよび複数の薬剤を含む、同じかまたは種々の異なるビタミン、および、同じかまたは種々の異なる薬剤を含む、結合性リガンド薬剤送達結合体も、使用は可能と考えられる。
【0166】
本結合性リガンド薬剤送達結合体の、一日当たりの単位用量は、宿主の状態、治療される病態、該結合体の分子量、その投与ルートおよび組織分布、および、放射線治療などの他の治療の共時使用の可能性などに依存して、著明に変動する可能性がある。患者に対して投与される有効量は、体表面積、患者の体重、および患者の身体条件に関する医師の評価に基づく。例示の実施態様では、有効用量は、例えば、約1 ng/kgから約1 mg/kg、約1 μg/kgから約500 μg/kg、および、約1 μg/kgから約100 μg/kgの範囲にあることが可能である。
【0167】
別の例示態様では、結合性リガンド薬剤送達結合体を投与するのに有効であるならば、いずれの処方を使用することも可能である。例えば、本結合性リガンド薬剤送達結合体は、単一用量として投与することが可能であるし、あるいは、分割して、1日当たり複数回の投与処方として投与することも可能である。別の実施態様では、連日服用に対する代替として、変動型投与処方、例えば、週当たり1日から3日を使用することが可能であり、このような断続的または変動的連日投与処方も、毎日服用と等価的と見なされ、本明細書に記載される方法の範囲内にある。一実施態様では、病原細胞集団を除去するために、宿主は、結合性リガンド薬剤送達結合体の複数回注入によって治療される。別の実施態様では、宿主は、結合性リガンド薬剤送達結合体を、例えば、12-72時間間隔、または48-72時間間隔で、複数回(好ましくは、約2回から約50回まで)注入される。別の実施態様では、初回注入後、該結合性リガンド薬剤送達結合体の追加注入が、数日または数ヶ月の間隔を置いて該患者に投与することが可能であり、この追加注入は、該病原細胞によって引き起こされる病態の再発を阻止する。
【0168】
一実施態様では、本結合性リガンド薬剤送達結合体において使用することが可能な、ビタミン、またはその類縁体または誘導体としては、活性化マクロファージ上に特異的に発現される受容体、例えば、葉酸塩、またはその類縁体または誘導体に結合する葉酸受容体に結合するものが挙げられる。葉酸塩結合結合体は、例えば、宿主において病態を招く活性化マクロファージを殺すか、または該マクロファージの活性を抑制するのに使用することが可能である。このようなマクロファージ標的性結合体は、活性化マクロファージ介在性病態に苦しむ患者に対して投与されると、結合薬剤を、活性化マクロファージ集団中に濃縮し、それらに結合させ、活性化マクロファージを殺すか、または、マクロファージ機能を抑制する。活性化マクロファージ集団の除去、縮小、または非活性化は、治療される病態に特徴的な、活性化マクロファージ介在性の疾病発生を阻止または緩和するように働く。活性化マクロファージによって仲介されることが知られる、例示の疾患としては、慢性関節リューマチ、潰瘍性腸炎、クローン病、乾癬、骨髄炎、多発性硬化症、アテローム硬化症、肺線維症、サルコイドーシス、全身性硬化症、移植器官拒絶症(GVHD)、および慢性的炎症が挙げられる。本薬剤送達結合体の投与は、通常、病態の症状が緩和または除去されるまで続けられる。
【0169】
例示として、活性化マクロファージを殺すため、または、活性化マクロファージの機能を抑制するために投与される、結合性リガンド薬剤送達結合体は、該病態に苦しむ動物または患者に対し、非経口的に、例えば、皮内、皮下、筋肉内、または静脈内に、薬学的に受容可能な担体と組み合わせて投与することが可能である。別の実施態様では、該結合性リガンド薬剤送達結合体は、動物または患者に対し、他の、医学的に有用な手順を通じて投与することが可能であり、有効用量を、標準的な、または徐放型の剤形として投与することが可能である。別の態様では、本治療法は、単独で、あるいは、活性化マクロファージによって仲介される病態の治療用として公認される、他の治療法と組み合わせて、使用することが可能である。
【0170】
本明細書に記載される薬剤送達結合体は、当該技術分野で公認の合成法によって調製することが可能である。この合成法は、必要に応じて付加されるヘテロ原子、または、スペーサーリンカー、放出型リンカー、薬剤、および/または結合性リガンドの上に既に存在するヘテロ原子の選択に応じて選ばれる。一般に、関連結合形成反応は、Richard C. Larock, “Comprehensive Organic Transformations, a guide to functional group preparations (有機変換反応総覧−官能基調製の手引き)” VCH Publishers, Inc. New York (1989)、およびTheodora E. Greene & Peter G.M. Wuts, “Protective Groups in Organic Synthesis (有機合成における保護基)” 2d edition, John Wiley & Sons, Inc. New York (1991)に記載される。なお、これらの開示を引用により本明細書に含める。
【実施例】
【0171】
<化合物例>
本明細書に記載される化合物は、本明細書に記載されるプロセスおよび合成法による外、一般的な合成法によって調製してもよい。特に、本化合物を調製する方法は、米国特許出願第2005/0002942号に記載される。なお、この開示を引用により本明細書に含める。
【0172】
葉酸ペプチドの一般的形成。 葉酸塩含有ペプチジル断片Pte-Glu-(AA)n-NH(CHR2)CO2H (3)は、標準法によるポリマー支持連続法、例えば、下記のスキームに示すように、酸感受性Fmoc-AA-Wang樹脂(1)によるFmoc技法によって調製する:
【化53】
(a) 20%ピペリジン/DMF; (b) Fmoc-AA-OH, PyBop, DIPEA, DMF; (c) Fmoc-Glu(O-t-Bu)- OH, PyBop, DIPEA, DMF; (d) 1. N10(TFA)-Pte-OH; PyBop, DIPEA, DMSO; (e) TFAA, (CH2SH)2, /-Pr3SiH; (f) NH4OH, pH 10.3。
【0173】
本明細書に記載される手順に関する、この例示実施態様では、R1はFmocであり、R2は、所望の、適切に保護されるアミノ酸側鎖であり、DIPEAは、ジイソプロピルエチルアミンである。標準的結合手順、例えば、PyBOP、および、その他の、本明細書で記載されるか、または当該技術分野で公知の分子が、効率的結合を保証するための活性試薬として適用される。Fmoc保護基は、各結合ステップ後、標準条件下に、例えば、ピペリジン、テトラブチルアンモニウムフロリド(TBAF)などによる処理の際に取り除かれる。適切に保護されるアミノ酸のビルディングブロック、例えば、Fmoc-Glu-OtBu、N10-TFA-Pte-OHなどが、上記スキームに記載されるように使用され、ステップ(b)ではFmoc-AA-OHで表される。したがって、AAは、適切に保護される、任意のアミノ酸開始材料を指す。本明細書において用いるアミノ酸という用語は、一つ以上の炭素で隔てられた、アミンおよびカルボン酸官能基の両方を有する、任意の試薬を指し、天然のアルファおよびベータアミノ酸の外、これらのアミノ酸の誘導体および類縁体も含む。特に、保護された側鎖を有するアミノ酸、例えば、保護セリン、トレオニン、システイン、アスパラギン酸塩なども、本明細書に記載される葉酸塩-ペプチド合成において使用が可能である。さらに、ガンマ、デルタ、またはさらに長い相同アミノ酸も、本明細書に記載される葉酸塩-ペプチド合成法において開始材料として含めてよい。さらに、相同側鎖、または交互分枝構造を持つアミノ酸類縁体、例えば、ノルロイシン、イソバリン、β-メチルシステイン、β,β-ジメチルシステインなども、本明細書に記載される葉酸塩-ペプチド合成法において開始材料として含めてよい。
【0174】
Fmoc-AA-OHを含む結合順序(ステップ(a)および(b))は、固相支持ペプチド(2)を調製するために“n”回実行される。ここに、nは、整数であり、0から約100に等しくともよい。最後の結合ステップ後、残余のFmoc基は除かれ(ステップ(a))、ペプチドは、続いて、グルタミン酸塩誘導体に結合され(ステップ(c))、脱保護され、TFA-保護プテロイン酸に結合される(ステップ(d))。続いて、ペプチドは、トリフルオロ酢酸、エタンジオール、およびトリイソプロピルシラン処理によって、ポリマー支持体から切断される(ステップ(e))。上記反応条件から、t-Bu、t-Boc、およびTrt保護基の同時除去が実現されるが、これらの基は上記適切に保護されるアミノ酸側鎖の一部を形成してもよい。TFA保護基は、塩基処理によって取り除かれ(ステップ(f))、葉酸塩含有ペプチジル断片(3)が得られる。
【化54】
【0175】
本明細書に記載される一般的手順によれば、Wang樹脂に結合される4-メトキシトリチル(MTT)-保護Cys-NH2は、下記の順序で反応させられる:1) a. Fmoc-Asp(OtBu)-OH, PyBOP, DIPEA; b. 20% ピペリジン/DMF; 2) a. Fmoc-Asρ(OtBu)- OH, PyBOP, DIPEA; b. 20% ピペリジン/DMF; 3) a. Fmoc-Arg(Pbf)-OH, PyBOP, DIPEA; b. 20% ピペリジン/DMF; 4) a. Fmoc-Asp(OtBu)-OH, PyBOP, DIPEA; b. 20% ピペリジン/DMF; 5) a. Fmoc-Glu-OtBu, PyBOP, DIPEA; b. 20% ピペリジン/DMF; 6) N10-TFA-プテロイン酸, PyBOP, DIPEA。MTT、tBu、およびPbf保護基は、TFA/H2O/TIPS/EDT (92.5:2.5:2.5:2.5)によって取り除かれ、TFA保護基は、NH4OH水溶液によってpH=9.3において取り除かれた。選択1H NMR (D2O) δ (ppm) 8.68 (s, IH, FA H-7), 7.57 (d, 2H, J = 8.4 Hz, FA H-12 &16), 6.67 (d, 2H, J = 9 Hz, FA H-13 &15), 4.40-4.75 (m, 5H), 4.35 (m, 2H), 4.16 (m, IH), 3.02 (m, 2H), 2.55-2.95 (m, 8H), 2.42 (m, 2H), 2.00-2.30 (m, 2H), 1.55- 1.90 (m, 2H), 1.48 (m, 2H); MS (ESI, m+lT) 1046。
【化55】
【0176】
本明細書に記載される一般的手順にしたがって、Wang樹脂結合4-メトキシトリチル(MTT)-保護Cys-NH2を下記の順序にしたがって反応させた:1) a. Fmoc-β-アミノアラニン(NH-MTT)-OH, PyBOP, DIPEA; b. 20% ピペリジン/DMF; 2) a. Fmoc- Asp(OtBu)-OH, PyBOP, DIPEA; b. 20% ピペリジン/DMF; 3) a. Fmoc-Asp(OtBu)-OH, PyBOP, DIPEA; b. 20% ピペリジン/DMF; 4) a. Fmoc-Asp(OtBu)-OH, PyBOP, DIPEA; b. 20% ピペリジン/DMF; 5) a. Fmoc-Glu-OtBu, PyBOP, DIPEA; b. 20% ピペリジン/DMF; 6) N10-TFA-プテロイン酸, PyBOP, DIPEA。MTT、tBu、およびTFA保護基は、2% ヒドラジン/DMF; b. TFA/H2O/TIPS/EDT (92.5:2.5:2.5:2.5)によって除去した。
【0177】
調製には、下表に示す試薬を用いた:
【0178】
結合ステップは下記のように実行した:ペプチド合成容器の中に樹脂を加え、アミノ酸液、DIPEA、およびPyBOPを加える。アルゴンを1時間通気し、DMFおよびIPAで3回洗浄する。Fmoc脱保護のためにDMFに溶解した20%ピペリジンを用い、各アミノ酸結合前に3回洗浄(10分)する。続けて、全て6個の結合ステップを完了する。最後に、樹脂を、DMFに溶解した2%ピペリジンにて3回洗浄し(5分)、プテロイン酸上のTFA保護基を切断する。
【0179】
下記の試薬、92.5% (50 ml) TFA、2.5% (1.34 ml) H2O、2.5% (1.34 ml)トリイソプロピルシラン、2.5% (1.34 mol)エタンジチオール、を用いて、ペプチド類縁体を樹脂から切り離す。この切断ステップは下記のように実行した。25 mlの切断試薬を加え、1.5時間通気し、液相を採取し、残余の試薬で3回洗浄する。約5 mLとなるまで蒸発させ、エチルエーテルにて沈殿させる。遠心し、乾燥する。精製は下記のように実行した:カラム-Waters NovaPak C18 300x19 mm;バッファーA=10 mM酢酸アンモニウム;B=CAN;1%Bから20%Bまで40分、15 ml/分、350 mg(64%)まで;HPLC-RT 10.307分、純度100%、1H HMRスペクトラムは、割り当てられた構造と一致し、MS (ES-): 1624.8, 1463.2, 1462.3, 977.1, 976.2, 975.1, 974.1, 486.8, 477.8。
【化56】
【0180】
本明細書に記載される一般的手順にしたがって、Wang樹脂結合MTT-保護Cys-NH2を下記の順序にしたがって反応させた:1) a. Fmoc-ASP(OtBu)-OH, PyBOP, DIPEA; b. 20% ピペリジン/DMF; 2) a. Fmoc- Asp(OtBu)-OH, PyBOP, DIPEA; b. 20% ピペリジン/DMF; 3) a. Fmoc-Arg(Pbf)-OH, PyBOP, DIPEA; b. 20% ピペリジン/DMF; 4) a. Fmoc-Asp(OtBu)-OH, PyBOP, DIPEA; b. 20% ピペリジン/DMF; 5) a. Fmoc-Glu(γ-OtBu)-OH, PyBOP, DIPEA; b. 20% ピペリジン/DMF; 6) N10-TFA-プテロイン酸, PyBOP, DIPEA。MTT、tBu、およびTFA保護基は、TFA/H2O/TIPS/EDT (92.5:2.5:2.5:2.5)によって除去し、TFA保護基は、NH4OH水溶液をpH=9.3で用いて除去した。1H HMRスペクトラムは、割り当てられた構造と一致した。
【化57】
【0181】
本明細書に記載される一般的手順にしたがって、Wang樹脂結合MTT-保護D-Cys-NH2を下記の順序にしたがって反応させた:1) a. Fmoc-D-ASP(OtBu)-OH, PyBOP, DIPEA; b. 20% ピペリジン/DMF; 2) a. Fmoc- Asp(OtBu)-OH, PyBOP, DIPEA; b. 20% ピペリジン/DMF; 3) a. Fmoc-D-Arg(Pbf)-OH, PyBOP, DIPEA; b. 20% ピペリジン/DMF; 4) a. Fmoc-D-Asp(OtBu)-OH, PyBOP, DIPEA; b. 20% ピペリジン/DMF; 5) a. Fmoc-D-Glu-OtBu, PyBOP, DIPEA; b. 20% ピペリジン/DMF; 6) N10-TFA-プテロイン酸, PyBOP, DIPEA。MTT、tBu、およびPbf保護基は、TFA/H2O/TIPS/EDT (92.5:2.5:2.5:2.5)によって除去し、TFA保護基は、NH4OH水溶液をpH=9.3で用いて除去した。1H HMRスペクトラムは、割り当てられた構造と一致した。
【化58】
【0182】
同様にEC089も、本明細書に記載する通りに調製した。
【化59】
【0183】
ツブリシンヒドラジドの調製。EC0347の調製によって例示する。N,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA、6.1 μL)、およびイソブチルクロロフォルメート(3.0 μL)を、-15℃において、無水EtOAc(2.0 mL)に溶解したツブリシンB(0.15 mg)の溶液に、シリンジを用いて順次加えた。アルゴン下-15℃で45分攪拌した後、この反応混合物を-20℃に冷却し、それに、無水ヒドラジン(5.0 μL)を加えた。この反応混合物を、アルゴン下、-20℃で3時間攪拌し、1.0 mMリン酸バッファー(pH7.0, 1.0 mL)で反応停止させ、精製のために分取用HPLCに注入した。カラム:Waters XTerra Prep MS C18 10 μm, 19x250 mm;移動相A=1.0 mMリン酸ナトリウムバッファー、pH7.0;移動相B:アセトニトリル;方法:1%Bから80%Bまで20分、流速=25 mL/分。15.14-15.54分において得られた分画を収集し、凍結乾燥したところ、EC0347が、白色固体(2.7 mg)として生成された。上述の方法は、ツブリシン開始化合物を適切に選択することにより、他のツブリシンヒドラジドの調製にも同様に適用が可能である。
【化60】
【0184】
結合試薬EC0311の合成。DIPEA (0.60 mL)を、無水DCM(5.0 mL)に溶解した、HOBt-OCO2-(CH2)2-SS-2-ピリジンHCl (685 mg, 91%)の縣濁液に、0℃において加え、アルゴン下に2分間攪拌し、それに、無水ヒドラジン(0.10 mL)を加えた。この反応混合物を、アルゴン下に0℃で10分、室温でさらに30分攪拌し、ろ過し、ろ液を、フラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル、DCMに溶解した2%MeOH)にて精製したところ、EC0311が、透明粘ちょうな油状物として得られ(371 mg)、これは放置すると固化した。
【化61】
【0185】
ツブリシンジスルフィドの調製(段階的プロセス)。EC0312について例示する。DIPEA(36 μL)、およびイソブチルクロロフォルメート(13 μL)を、-15℃において、無水EtOAc(2.0 mL)に溶解したツブリシンB(82 mg)の溶液に、シリンジを用いて順次加えた。アルゴン下-15℃で45分攪拌した後、この反応混合物に、無水EtOAc (1.0 mL)に溶解したEC0311の溶液を加えた。得られた溶液を、アルゴン下、-15℃で15分、室温でさらに45分攪拌し、濃縮し、残留物を、フラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル、DCMに溶解した2から8%MeOH)にて精製したところ、EC0312が、白色固体として得られた(98 mg)。上述の方法は、ツブリシン開始化合物を適切に選択することにより、他のツブリシンヒドラジドの調製にも同様に適用が可能である。
【化62】
【0186】
ヒドロキシダウノルビシンピリジルジスルフィド。同様に、この化合物も本明細書に記載されるとおり、上述のスキームにしたがって調製し、65%の収率で得られた。
【化63】
【0187】
ツブリシンBピリジルジスルフィド。同様に、この化合物も本明細書に記載されるとおりに調製した。
【化64】
【0188】
EC0488。この化合物は、本明細書に記載される一般的ペプチド合成法によるSPPSによって調製したが、この方法では、H-Cys(4-メトキシトリチル)-2-クロロトリチル-樹脂から開始して、下記のSPPS試薬を用いる:
【0189】
結合ステップ。ペプチド合成容器に樹脂を加え、アミノ酸液、DIPEA、およびPyBOPを加える。アルゴンを1時間通気し、DMFおよびIPAで3回洗浄する。Fmoc脱保護のためにDMFに溶解した20%ピペリジンを用い、各アミノ酸結合前に3回洗浄(10分)する。続けて、9個の結合ステップを全て完了する。最後に、樹脂を、DMFに溶解した2%ヒドラジンで処理し、プテロイン酸上のTFA保護基を切断し、樹脂をDMF(3回)、MeOH(3回)にて洗浄し、樹脂をアルゴンで30分通気する。
【0190】
切断ステップ。試薬:92.5% TFA、2.5% H2O、2.5%トリイソプロピルシラン、2.5%エタンジチオール。樹脂を、アルゴン通気下、切断試薬で3回(10分、5分、5分)処理し、液相を採取し、樹脂を一度切断試薬で洗浄し、溶液を合わせる。5 mLが残留するまで回転蒸発させ、ジエチルエーテル(35 mL)にて沈殿させる。遠心し、ジエチルエーテルで洗浄し、乾燥する。未精製固体(約100 mg)の約半分をHPLCで精製した。
【0191】
HPLC精製ステップ。カラム:Waters XTerra Prep MS C18 10 μm, 19x250 mm;溶媒A=10 mM酢酸アンモニウム;溶媒B=ACN;方法:5分0%Bから25分20%Bまで、26 ml/分。産物を含む分画を収集し、凍結乾燥したところ、43 mgのEC0488が得られた(51%収率)。1H HMRおよびLC/MS(精密質量 1678.62)は、産物と一致した。
【化65】
【0192】
EC0351。同様に、この化合物も本明細書に記載するとおりに調製した。
【化66】
【0193】
ジスルフィド含有ツブリシン結合体の一般的合成。いくつかの天然産ツブリシンのピリジニルジスルフィド誘導体のうち、R1がH、またはOHであり、R10がアルキル、またはアルケニルであるものについて例示する。チオール基を含む、結合性リガンド−リンカー中間体を、脱イオン水(約20 mg/mL、使用前にアルゴンにて10分通気)に採取し、この縣濁液のpHを、飽和NaHCO3(使用前にアルゴンで10分通気)で約6.9に調整した(pHが上昇したとき、縣濁液は溶液となる場合がある)。この溶液に適宜追加の脱イオン水を加え(約20-25%)、この水溶液に直ちに、THFに溶解したEC0312(約20 mg/mL)を加える。この反応混合液は速やかに均一となる。アルゴン下に、例えば、45分攪拌した後、この反応混合液を、2.0 mMリン酸ナトリウムバッファー(pH7.0、約150容量パーセント)で希釈し、THFを減圧除去する。得られた縣濁液はろ過されるが、ろ液は、分取用HPLC(本明細書で記載される)で精製してもよい。分画を凍結乾燥し、結合体を単離する。上述の方法は、ツブリシン開始化合物を適切に選択することにより、他のツブリシン結合体の調製にも同様に適用が可能である。
【化67】
【0194】
結合体調製のための一般法(1ポット)。EC0543の調製について例示する。DIPEA(7.8 μL)、およびイソブチルクロロフォルメート(3.1 μL)を、-15℃において、無水EtOAc(0.50 mL)に溶解したツブリシンA(18 mg)の溶液に、シリンジを用いて順次加えた。アルゴン下-15℃で35分攪拌した後、この反応混合物に、無水EtOAc (0.50 mL)に溶解したEC0311(5.8 mg)の溶液を加えた。冷却を解除し、反応混合物を、アルゴン下さらに45分攪拌し、濃縮し、減圧し、残留物を、THF(2.0 mL)に溶解した。一方、EC0488 (40 mg)を、脱イオン水(使用前にアルゴンにて10分通気)に溶解し、この溶液のpHを、飽和NaHCO3で約6.9に調整した。このEC0488溶液にさらに脱イオン水を加え、全体容量を2.0 mLとして、この液に直ちに、活性化ツブリシンを含むTHF液を加えた。速やかに均一となったこの反応混合液をアルゴン下50分攪拌し、2.0 mMリン酸ナトリウムバッファー(pH7.0、15 mL)で反応停止させた。得られた白濁液をろ過し、ろ液を、精製のために、分取用HPLCに注入した。カラム:Waters XTerra Prep MS C18 10 μm, 19x250 mm;移動相A=2.0 mMリン酸ナトリウムバッファー、pH7.0;移動相B:アセトニトリル;方法:1%Bが5分、次いで1%Bから60%Bまで次の30分、流速=26 mL/分。20.75-24.50分において得られた分画を収集し凍結乾燥したところ、EC0543が、黄白色の綿毛状固体(26 mg)として得られた。上述の方法は、ツブリシン開始化合物を適切に選択することにより、他のツブリシン結合体の調製にも同様に適用が可能である。
【化68】
【0195】
EC305。EC089 (86 mg)を、脱イオン水(4.0 mL、使用前にアルゴンにて10分通気)に縣濁し、この縣濁液のpHを、飽和NaHCO3(使用前にアルゴンにて10分通気)で約6.9に調整した(pHが上昇すると、縣濁液は溶液になった)。この溶液にさらに脱イオン水を加え、全体容量を5.0 mLとして、この水溶液に直ちに、THF(5.0 mL)に溶解したEC0312 (97 mg)の溶液を加えた。この反応混合液は速やかに均一となった。この反応混合液を、アルゴン下45分攪拌した後、2.0 mMリン酸ナトリウムバッファー(pH7.0、15 mL)で希釈し、THFをRotavaporにおいて除去した。得られた縣濁液をろ過し、ろ液を、精製のために、分取用HPLCに注入した(カラム:Waters XTerra Prep MS C18 10 μm, 19x250 mm;移動相A=2.0 mMリン酸ナトリウムバッファー、pH7.0;移動相B:アセトニトリル;方法:5%Bから80%Bまで25分、流速=25 mL/分)。10.04-11.90分において得られた分画を収集し凍結乾燥したところ、EC0305が、黄白色の綿毛状固体(117 mg)として得られた。
【0196】
【化69】
【0197】
EC0352。同様に、この化合物も本明細書に記載される通りに調製した。EC0352は、ヒドロキシダウノルビシンピリジルジスルフィドと、EC0351との間にジスルフィド結合を形成することによって調製し、55%収率であった。
【化70】
【0198】
EC0358。同様に、この化合物も本明細書に記載される通りに調製した。EC0358は、DMF/DBUにおいて、EC0352と、ツブリシンBピリジルジスルフィドの間にジスルフィド結合を形成することによって調製し、40%収率であった。
【0199】
下記の例示の実施例も、本明細書に記載されるプロセス、合成法、およびツブリシンを用いて調製した。
【化71】
【化72】
【化73】
【0200】
<方法実施例>
方法:相対的アフィニティーアッセイ。葉酸塩と比較した場合の、葉酸受容体(FR)に対する相対的親和度は、以前に記載した方法(Westerhof, G.R., J.H. Schornagel, et al. (1995) Mol. Pharm. 48:459-471)に若干の修正を加えて求めた。簡単に言うと、FR陽性KB細胞を、24ウェル培養プレートに高密度に撒き、18時間放置してプラスチックに接着させた。指定のウェルにおいて、消費された培地は、100 nM 3H-葉酸を添加した、葉酸塩無添加RPMI(FFRPMI)と、漸増濃度の試験品または葉酸の存在下に、または不在下に交換した。細胞は、37℃で60分インキュベートし、次いで、PBS, pH7.4で3回潅水した。PBS, pH7.4に溶解した1% SDSを、ウェル当たり、500マイクロリットル加えた。次に、細胞分解物を収集し、5 mLのシンチレーションカクテルを入れたバイアルのそれぞれに加え、次に放射能についてカウントした。陰性コントロールチューブは、FERPMIに溶解した3H-葉酸のみを含んでいた(競合因子無し)。陽性コントロールチューブは、最終濃度の1 mM葉酸を含むが、これらのサンプルにおいて測定したCPM(標識の非特異的結合を表す)を、全てのサンプルから差し引いた。注意すべきこととして、相対的親和度は、KB細胞上のFRに結合した3H-葉酸の50%に取って代わるのに必要な化合物のモル比の逆数と定義され、FRに対する葉酸の相対的親和度は1に設定された。
【0201】
10%血清/FDRPMIにおけるEC0305の、相対的アフィニティーアッセイ結果を図4に示す。葉酸に比べると、EC0305は、葉酸受容体に対し96%の相対親和度を示した。
【0202】
方法:細胞のDNA合成の抑制。本明細書に記載される化合物は、その薬剤が、葉酸受容体陽性KB細胞の成育を抑制する能力について予測する、インビトロ細胞傷害性アッセイを用いて評価した。化合物は、本明細書に記載されるプロトコールにしたがって調製された、それぞれの化学療法剤に結合された葉酸塩から構成される。KB細胞は、少なくとも100倍過剰な葉酸の存在下または不在下に、表示濃度の葉酸塩-薬剤結合体に、37℃で最大7時間暴露した。次に、細胞を、新鮮な培地で1回潅水し、新鮮な培地において、37℃で72時間インキュベートした。細胞生存率は、3H-チミジン取り込みアッセイを用いて評価した。本明細書に記載される化合物については、用量依存性細胞傷害性が一般に測定可能であり、多くの場合、IC50値(新規合成DNAへの3H-チミジン取り込みを50%低下させるのに必要な、薬剤結合体の濃度)は、低ナノモル範囲にあった。さらに、結合体の細胞傷害性は、過剰な遊離葉酸の存在下に低下した。これは、観察された細胞殺作用は、葉酸受容体に対する結合によって仲介されることを示す。
【0203】
例えば、EC0305は、図1に示すように、KB細胞に対する2時間のパルスおよび72時間のチェイスの後で、葉酸受容体に対し用量反応性の挙動および特異性を示した。EC0305のIC50は、約1.5 nMであった。さらに、図1に示すように、EC0305の細胞傷害活性は、過剰な葉酸の存在下に阻止された。最後に、EC0305は、FR陰性細胞に対しては活性をまったく示さなかった。これらの結果は、EC0305が、葉酸塩選択性の、または葉酸塩特異的な機構を通じて作用することを示唆する。
【0204】
方法:各種癌細胞系統に対するインビトロ試験。各種癌細胞系統について、IC50値を求めたが、その結果を下表に示す。細胞を、24ウェルFalconプレートに高密度に撒き、一晩放置してほぼ集密な単層を形成させた。試験化合物添加の30分前に、全てのウェルから消費された培地を吸引し、新鮮な、葉酸塩欠乏RPMI培地(FFRPMI)と交換した。ウェルのサブセットを、100 μM葉酸を含む培地を受容するように指定した。指定されたウェルの中にある細胞は、標的特異性を決定するために使用される。理論に拘束されるものではないが、過剰な葉酸の存在下に、すなわち、FR結合に対する競合が存在する条件下に、試験化合物によって産み出される細胞傷害活性は、全活性のうちの、FR特異的送達とは無関係の部分に相当することが示唆される。各ウェルに、10%の、熱不活性化ウシ胎児血清を含む、1 mLの新鮮FFRPMIで1回潅水した後、表示のように、100 μM遊離葉酸の存在下または不在下に、漸増濃度の試験化合物(サンプル当たり4ウェル)を含む、1 mLの培地を加えた。処理した細胞を、37℃で2時間パルスし、0.5 mLの培地で4回潅水し、次いで、1 mLの新鮮培地中で最大70時間チェイスした。全てのウェルから消費された培地を吸引し、5 μCi/mL 3H-チミジンを含む、新鮮な培地と交換した。さらに、37℃で2時間のインキュベーション後、細胞を、0.5 mL PBSで3回洗浄し、次いで、ウェル当たり、0.5 mLの5%氷冷トリクロ酢酸で処理した。15分後、このトリクロロ酢酸を吸引し、0.5 mLの0.25N水酸化ナトリウムを添加して15分間細胞物質を可溶化した。各可溶化サンプルの、450 μL分液を、3 mLのEcolumeシンチレーションカクテルを含むシンチレーションバイアルに移し、次いで、液体シンチレーションカウンターにおいてカウントした。表にまとめた最終結果は、未処理コントロールに対する3H-チミジン取り込みパーセントで表した。
【0205】
EC305の結果を下表に示す:
【0206】
上記の各細胞系統は、4T-1母体および4T-1-FRを除いて、市販されており、Rhone Poulenc Rorerから入手した。
【0207】
方法:種々の動物種に対する血清結合。化合物は、30K NMWLについて試験し、Microconろ過(10,000gで30分)を行い、HPLCによって検出した。EC0305を各種動物血清に対して試験したところ、図2に示すように各種動物種において低い血清結合を示した。特に、EC0305は、ヒトの血清では67%という低い結合を示した。
【0208】
方法:ヒト血清の安定性。EC0305は、ヒトの血清中での安定性を試験したところ、図3に示すように約20時間の半減期を示した。
【0209】
方法:マウスにおける腫瘍増殖の抑制。4から7週齢のマウス(Balb/cまたはnu/nu株)を、Harlan Sprague Dawley, Inc. (Indianapolis, IN)から購入した。通常のげっ歯類飼料は、高濃度の葉酸を含む(kg飼料当たり6 mg)。したがって、使用したマウスは、腫瘍移植前の1週間、葉酸無添加食餌(Harlan食餌#TD00434)で飼育し、正常なヒト血清の範囲に近い血清葉酸塩濃度を実現した。腫瘍細胞接種のために、100 μLに縣濁させた1x106 M109細胞(Balb/c株)、または1x106 KB細胞(nu/nu株)を、背部内側域の皮下に注入した。腫瘍は、2-3日置きに、キャリパーにて二つの垂直方向に測定し、その体積は、0.5 x L x W2として計算した。式中、Lは最大長軸の測定値(単位mm)、WはLに垂直な軸の測定値(単位mm)である。次に、殺細胞数対数(LCK)の、コントロールに対する相対値(T/C)は、公表ずみの手順にしたがって計算した(例えば、Lee et al., “BMS-247550: a novel epothilone analog with a mode of action similar to paclitaxel but possessing superior antitumor efficacy (BMS-247550:パクリタキセルと類似の作用方式を有するが、より優れた抗腫瘍効力を発揮する、新規エポチロン類縁体)” Clin Cancer Res 7:1429-1437(2001); Rose, “Taxol-based combination therapy and other in vivo preclinical antitumor studies (前臨床抗腫瘍インビボ試験におけるタキソール含有併用治療およびその他)” J Natl Cancer Inst Monogr 47-53 (1993)を参照されたい)。投与液は、その日毎に、PBSにおいて新鮮に調製し、マウスの尾部側部静脈を通じて投与した。、投与は、皮下腫瘍が50-100 mm3の平均体積となった時点(t0)で開始したが、これは、通常、KB腫瘍では、腫瘍接種後(PTI)8日であり、M109腫瘍では、11日PTIであった。
【0210】
方法:薬剤の毒性の定量。心臓穿刺によって血液を収集し、その血清に対し、血液尿素窒素(BUN)、クレアニチン、総タンパク、AST-SGOT、ALT-SGPTについて、さらに、Ani-Lytics, Inc. (Gaithersburg, MD)の標準的血清細胞パネルで独立に分析することによって、持続性の薬剤毒性を評価した。さらに、フォルマリンで固定した心臓、肺、肝臓、脾臓、腎臓、小腸、骨格筋、および骨(脛骨/腓骨)の組織病理学的評価が、Animal Reference Pathology Laboratories (ARUP; Salt Lake City, Utah)の、委員会保証済み病理学者によって行われた。
【0211】
方法:一般的KB腫瘍アッセイ。腫瘍担持動物に静脈内(i.v.)投与された場合の、本明細書に記載される化合物の抗腫瘍活性を、皮下にKB腫瘍を抱えるnu/nuマウスにおいて評価した。マウスにおいて(1群当たり5匹)、右腋窩の皮下に1x106 KB細胞を接種して約8日後(t0における平均腫瘍体積=50〜100 mm3)、5 μmol/kgの薬剤送達結合体、または、等価の投与容量のPBS(コントロール)を、別様に指示しない限り、週に3回(TIW)、3週間、静脈内注入した。各処置群において、腫瘍の成長を、2日または3日間隔でキャリパーを用いて測定した。腫瘍体積は、方程式 V= a x b2/2を用いて計算した。式中、“a”は、腫瘍の、ミリメートルで表した長さであり、“b”は、幅である。
【0212】
方法:一般的M109腫瘍アッセイ。腫瘍担持動物に静脈内(i.v.)投与された場合の、本明細書に記載される化合物の抗腫瘍活性を、皮下にM109腫瘍(同系肺癌)を抱えるBalb/cマウスにおいて評価した。右腋窩の皮下に1x106 M109細胞を接種して約11日後(t0における平均腫瘍体積=60 mm3)、マウスに対し(5匹/群)、1500 nmol/kgの薬剤送達結合体、または、等価の投与容量のPBS(コントロール)を、週に3回(TIW)、3週間、静脈内注入した。各処置群において、腫瘍の成長を、2日または3日間隔でキャリパーを用いて測定した。腫瘍体積は、方程式 V= a x b2/2を用いて計算した。式中、“a”は、腫瘍の、ミリメートルで表した長さであり、“b”は、幅である。
【0213】
方法:一般的4T-1腫瘍アッセイ。6から7週齢のマウス(雌性Balb/c株)を、Harlan, Inc. (Indianapolis, IN)から購入した。マウスは、本実験の開始前および最中、合計3週間、葉酸無添加食餌で飼育した。葉酸受容体陰性4T-1腫瘍細胞(1匹の動物当たり1x106 細胞)を、右腋窩の皮下に接種した。腫瘍接種の約5日後、4T-1腫瘍の平均体積が約100 mm3となった時点で、マウスに対し(5匹/群)、3 μmol/kgの薬剤送達結合体、または、等価の投与容量のPBS(コントロール)を、別様に指示しない限り、週に3回(TIW)、3週間、静脈内注入した。各処置群において、腫瘍の成長を、2日または3日間隔でキャリパーを用いて測定した。腫瘍体積は、方程式 V= a x b2/2を用いて計算した。式中、“a”は、腫瘍の、ミリメートルで表した長さであり、“b”は、幅である。
【0214】
方法:体重減少として測定される毒性。マウス(5匹/群)において、腫瘍接種後(PTI)の選ばれた日において、該マウスの体重変化パーセントを定量し、グラフに表した。
【0215】
方法:別の投与スケジュール。前記アッセイは、それぞれ、下記のように変更してもよい:右腋窩の皮下に1x106 KB細胞を接種して約8日後(t0における平均腫瘍体積=50〜100 mm3)、マウスに対し(5匹/群)、本明細書に記載される薬剤送達結合体、または、コントロールとして等価の投与容量のPBSを、週に3回(TIW)、3週間、静脈内注入する。各処置群において、腫瘍の成長を、2日または3日間隔でキャリパーを用いて測定する。腫瘍体積は、方程式 V= a x b2/2を用いて計算した。式中、“a”は、腫瘍の、ミリメートルで表した長さであり、“b”は、幅である。
【0216】
方法:別の投与スケジュール。前記アッセイは、それぞれ、下記のように変更してもよい:右腋窩の皮下に1x106 KB細胞を接種して約8日後(t0における平均腫瘍体積=50〜100 mm3)、マウスに対し(5匹/群)、本明細書に記載される薬剤送達結合体、または、コントロールとして等価の投与容量のPBSを、月曜から金曜まで週に5回、2から3週間、静脈内注入する。各処置群において、腫瘍の成長を、2日または3日間隔でキャリパーを用いて測定する。腫瘍体積は、方程式 V= a x b2/2を用いて計算した。式中、“a”は、腫瘍の、ミリメートルで表した長さであり、“b”は、幅である。
【0217】
EC305を、各種用量において、TIWで2週スケジュールで試験したところ、図5に示すように、1 μmol/kg以上の用量で試験した5匹の動物の内5匹が完全反応を示した。図5において、垂直点線は投与最終日を示す。さらに、これらの用量では、これも図5に示されるように、結合体の最終投与は、70日以上も前に行われたにも拘わらず、5匹の動物の内5匹において、全観察期間を通じて、腫瘍の再発または再成長は認められなかった。一方、これも図5に示されるように、EC0305と競合的ではあるが、腫瘍不活性な葉酸塩含有類縁体EC20(レニウム複合体)と同時投与された、EC0305処置動物では、EC0305の抗腫瘍活性は完全に遮断された(0/5反応)。EC20(レニウム複合体)は、レニウムに対してキレート結合した、下式の化合物である:
【化74】
EC20の調製は、米国特許出願公開US 2004/0033195 A1に記載される。この、合成過程の記載を引用により本明細書に含める。EC20は、葉酸受容体に対し、EC0305などの葉酸塩標的化結合体の競合因子として作用すると考えられ、したがって、この結果は、葉酸受容体に対する標的化におけるEC0305の作用の特異性を示すものと考えられる。
【0218】
さらに、観察された活性は、図6に示すように、外見上、体重の減少または主要臓器の変性なしに現れていた。同図において、垂直点線は投与最終日を示す。
【0219】
EC305は、2 μmol/kg TIW、2週間スケジュールで反復試験を行ったところ、再び、試験した5匹の動物の内5匹において完全反応を示した。さらに、図7に示すように、90日を超える全観察期間を通じて、5匹の動物の内5匹において腫瘍の再発または再成長は認められなかった。さらに、観察された活性は、図8に示すように、外見上、体重の減少または主要器官組織の変性なしに現れていた。
【0220】
EC0305活性を、マウスにおいてFR-陽性腫瘍に対して評価した。M109皮下腫瘍を抱えるBalb/cマウスを、EC0305静注によって処置したところ、この処置において、5匹の試験動物の内の5匹に完全反応が観察された。さらに、腫瘍接種の90日を超える日数後、処置停止の70日を超える日数後も、5匹の試験動物の内5匹は、測定可能な量の腫瘍を全く有していなかった。5匹の動物の内5匹において腫瘍の再発または再成長は観察されなかった。さらに、完全反応および病気の再発無しとして観察されたこの活性は、外見上、体重の減少または主要器官組織の変性なしに現れていた。各種腫瘍タイプに対するEC0305の効力は、本明細書に記載される通り、ヒトKB異種移植片-nu/nuマウス癌モデルにおいて確認された。この場合も、EC0305は、外見上体重の減少または主要器官組織の変性なしに、目覚しい抗腫瘍活性(5/5完全反応)を示した。
【0221】
本明細書において記載される結合体について観察される結果とは対照的に、非結合ツブリシンBの遊離薬剤:
【化75】
は、図9に示すように(非結合薬剤の過剰な毒性のため、各群において早期に投与を中断した)、耐容可能な用量、および高い毒性用量の両レベルにおいて、完全に不活性である(0/5反応)ことが認められた。図10は、コントロールと比べた場合、非結合ツブリシンBで処置した動物では、体重変化パーセントに急激な変化のあることを示す。図9および10に示すように、非結合薬剤の過剰な毒性のため、各群において早期に投与を中断した。
【0222】
さらに、ツブリシン結合体EC0305は、下記の構造を有する、別の、葉酸塩標的化化合物、EC145よりも効力が高いことが認められた:
【0223】
【化76】
後者の化合物において薬剤活性成分は、ビンカアルカロイドである。図11に示すように、それぞれ、2 μmol/kg TIW、2週間スケジュールで投与した。同図において、垂直線は、最終投与日を示す。ビンカ結合体EC145は、処置動物の、5匹の内2匹において完全反応を示したが、一方、ツブリシン結合体EC0305は、5匹の内5匹において完全反応を示した。さらに、90日以上の全観察期間を通じて、EC0305で処置された5匹の動物の内5匹において腫瘍の再発または再成長は観察されなかった。
【0224】
図12は、コントロールと比較した場合の、二つの異なるツブリシン結合体、EC0305およびEC0436の、M109腫瘍に対する相対的活性を示す。投薬は、腫瘍移植の約11日後に開始し、各試験動物には、2 μmol/kgのEC0305またはEC0436を、週3回、2週間与えた。図12の垂直点線は、投与最終日が20日目であることを示す。図12に示すように、EC0305およびEC0436の両方とも、全ての動物において完全反応を示した。しかしながら、ほぼ35日PTIに、EC0305処置動物が、腫瘍再成長を示し始めた。一方、EC0436処置動物は、5匹の処置動物の内5匹に完全反応を示したばかりでなく、60日以上の全観察期間を通じて腫瘍の再発または再成長はまったく観察されなかった。図13は、コントロールと比較した場合の、処置動物における体重変化パーセントを示す。全ての処置動物において、観察される効力は、試験動物の体重変化で判断される限り、観察されるほどの肉眼的な毒性を全く伴っていなかった。
【0225】
図14は、PBS処置コントロール(●)と比較した場合の、二つの異なるツブリシン結合体EC0305およびEC0436の、治療用量を超える用量で与えた場合の、相対的毒性を示す。各用量は、矢印で示すように、一日置きに3回投与した。EC0305は、(△)2 μmol/kg TIW;(▽)2.5 μmol/kg TIW;および(□)3 μmol/kgで投与した。EC0436は、(▲)2 μmol/kg TIW;(▼)2.5 μmol/kg TIW;および(■)3 μmol/kg TIWで投与した。データから、EC0436の方が、EC0305よりも高い治療示数を持つ可能性が示唆される。図12に示すように、EC0305では、2 μmol/kgにおいて、5匹の内4匹に完全反応が得られるが、一方、EC0436では、同じ用量で、5匹の内5匹で完全反応が得られる。しかしながら、EC0305は、試験動物の体重変化で判断すると、図14に示すように、約2.5 μmol/kg以上の用量で毒性を示し始める。対照的に、EC0436では、試験動物の体重変化で判断すると、3 μmol/kgの最大用量においても毒性は観察されなかった。
【0226】
前記の実施態様は、本明細書に記載される本発明のいくつかの態様についてさらに詳細な説明を与えるために記載される。しかしながら、上記は、例示的であることを意図するものであり、したがって、いかなる意味でも本発明を限定するものと思量してはならない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下式の薬剤送達結合体:
B-L-D
(式中、Bは、結合性または標的化リガンド、Lは、放出型リンカー、Dは、ツブリシンである)。
【請求項2】
下式を有することを特徴とする、請求項1に記載の薬剤送達結合体、またはその薬学的塩:
【化1】
(式中
nは、1-3であり;
Vは、H、OR2、またはハロであり、Wは、H、OR2、またはアルキルであり、前式において、R2は、各場合において、H、アルキル、およびC(O)R3から独立に選ばれ、前式において、R3は、それぞれ必要に応じて置換される、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、またはアリールアルキルであり;ただし、VおよびWの両方がOR2である場合、R2はHではなく;または、VおよびWは、付属の炭素と共にカルボニルを形成し;
Xは、それぞれ必要に応じて置換されるH、C1-4アルキル、若しくはアルケニルか、またはCH2QR9であり;前式において、Qは、-N-、-O-、または-S-であり;R9は、H、C1-4アルキル、アルケニル、アリール、またはC(O)R10であり;R10は、それぞれ必要に応じて置換される、C1-6アルキル、アルケニル、アリール、またはヘテロアリールであり;
ZはアルキルであってYはOであるか;または、Zはアルキルか、またはC(O)R4であって、Yは存在せず、前式において、R4は、アルキル、CF3、またはアリールであり;
R1はHであるか、あるいはR1は、ハロ、ニトロ、カルボキシレートまたはその誘導体、シアノ、ヒドロキシル、アルキル、ハロアルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、フェノール保護基、プロドラッグ成分、および、OR6から選ばれる、1から3個の置換基を表し、前式において、R6は、必要に応じて置換されるアリール、C(O)R7、P(O)(OR8)2、またはSO3R8であり、前式において、R7およびR8は、各場合において、それぞれ必要に応じて置換される、H、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、および、アリールアルキルから独立に選ばれ、あるいは、R8は、金属陽イオンであり;かつ、
Rは、OH、または脱離基であるか、あるいは、Rは、カルボン酸誘導体を形成する)。
【請求項3】
下式を有することを特徴とする、請求項1に記載の薬剤送達結合体、またはその薬学的塩:
【化2】
(式中、
nは、1-3であり;
Vは、H、OR2、またはハロであり、Wは、H、OR2、またはアルキルであり、前式において、R2は、各場合において、H、アルキル、またはC(O)R3から独立に選ばれ、前式において、R3は、アルキル、アルケニル、またはアリールであり、ただし、VおよびWの両方がOR2である場合、R2はHではなく;または、VおよびWは、付属の炭素と共にカルボニルを形成し;
Xは、それぞれ必要に応じて置換されるH、C1-4アルキル、若しくはアルケニルか、またはCH2QR9であり;前式において、Qは、-N-、-O-、または-S-であり;R9は、H、C1-4アルキル、アルケニル、アリール、またはC(O)R10であり;R10は、それぞれ必要に応じて置換される、C1-6アルキル、アルケニル、アリール、またはヘテロアリールであり;
Zはアルキル、またはC(O)R4であり、前式において、R4は、アルキル、CF3、またはアリールであり;
Tは、H、またはOR6であり、前式において、R6は、H、アルキル、アリール、COR7、P(O)(OR8)2、またはSO3R8であり、前式において、R7およびR8は、各場合において、それぞれ必要に応じて置換される、H、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、および、アリールアルキルから独立に選ばれ、あるいは、R8は、金属陽イオンであり、あるいは、R6は、フェノール保護基、またはプロドラッグ成分であり;
SおよびUは、H、ハロ、ニトロ、シアノ、アルキル、ハロアルキル、アルコキシ、およびハロアルコキシから成る群からそれぞれ独立に選ばれ;かつ、
Rは、OH、または脱離基であるか、あるいは、Rは、カルボン酸誘導体を形成する)。
【請求項4】
下式を有することを特徴とする、請求項1に記載の薬剤送達結合体、またはその薬学的塩:
【化3】
(式中、
R12は、それぞれ必要に応じて置換される、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、およびアリールアルキルから選ばれる、一つ以上の置換基を表し;R13は、C(O)R10、C(O)OR10、またはCNである)。
【請求項5】
下式を有することを特徴とする、請求項1に記載の薬剤送達結合体、またはその薬学的塩:
【化4】
(式中、
X3は、ハロゲン、OS(O)2R10、OP(O)(OR10a)R10、またはOP(O)(OR10a)2であり;前式において、R10およびR10aは、各場合において、それぞれ必要に応じて置換される、H、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、およびアリールアルキルから成る群から独立に選ばれるか、あるいは、R10aは、金属陽イオンである)。
【請求項6】
Dが、天然産ツブリシン、またはその類縁体または誘導体であることを特徴とする、請求項1に記載の薬剤送達結合体。
【請求項7】
下式を有することを特徴とする、請求項1に記載の薬剤送達結合体、またはその薬学的塩:
【化5】
(式中、
Rは、OH、または脱離基であるか、あるいは、Rは、カルボン酸誘導体を形成し;
R1はHであるか、あるいはR1は、ハロ、ニトロ、カルボキシレートまたはその誘導体、シアノ、ヒドロキシル、アルキル、ハロアルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、フェノール保護基、プロドラッグ成分、および、OR6から選ばれる、1から3個の置換基を表し、前式において、R6は、必要に応じて置換されるアリール、C(O)R7、P(O)(OR8)2、またはSO3R8であり、前式において、R7およびR8は、各場合において、それぞれ必要に応じて置換される、H、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、および、アリールアルキルから独立に選ばれるか、あるいは、R8は、金属陽イオンであり;かつ、
R10は、それぞれ必要に応じて置換される、C1-6アルキル、アルケニル、アリール、またはヘテロアリールである)。
【請求項8】
Zがメチルであることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の薬剤送達結合体。
【請求項9】
R1がHであることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の薬剤送達結合体。
【請求項10】
R1は、C(4)においてOR6であり、前式において、R6は、H、アルキル、またはCOR7であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の薬剤送達結合体。
【請求項11】
VがHであり、WがOC(O)R3であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の薬剤送達結合体。
【請求項12】
XがCH2OC(O)R10であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の薬剤送達結合体。
【請求項13】
前記放出型リンカーが、ジスルフィドを含むことを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の薬剤送達結合体。
【請求項14】
前記放出型リンカーが、炭酸塩を含むことを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の薬剤送達結合体。
【請求項15】
前記放出型リンカーが、アシルヒドラジドを含むことを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の薬剤送達結合体。
【請求項16】
前記放出型リンカーが、下記の二価式のうちの一つ以上を含むことを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の薬剤送達結合体:
【化6】
(式中、Xは、ヘテロ原子、またはカルボニル基であり;nは、0から4の整数であり;Rは、水素、またはアルコキシであり;かつ、*は、開放原子価を示す)。
【請求項17】
前記放出型リンカーが、下記の二価式のうちの一つ以上を含むことを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の薬剤送達結合体:
【化7】
(式中、Xは、NH、CH2、またはOであり;Rは、水素、またはアルコキシであり;*は、開放原子価を示す)。
【化8】
【請求項18】
前記放出型リンカーが、下記の二価式のうちの一つ以上を含むことを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の薬剤送達結合体:
【化9】
(式中、mおよびnは、1から約4までの整数から独立して選ばれ;RaおよびRbは、水素、およびアルキルから成る群からそれぞれ独立に選ばれ;あるいは、RaおよびRbは、付属の炭素原子と共に炭素環を形成し;Rは、必要に応じて置換されるアルキル基、必要に応じて置換されるアシル基、または窒素保護基であり; *は、開放原子価を示す)。
【請求項19】
前記放出型リンカーが、2から約20個のアミノ酸を含むペプチドを含むことを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の薬剤送達結合体。
【請求項20】
前記放出型リンカーが、4から約8個のアミノ酸を含むペプチドを含むことを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の薬剤送達結合体。
【請求項21】
前記放出型リンカーが、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、リシン、グルタミン、アルギニン、セリン、オルニチン、およびトレオニンから成る群から選ばれる、少なくとも二つのアミノ酸を含むことを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の薬剤送達結合体。
【請求項22】
前記放出型リンカーが、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、リシン、グルタミン、アルギニン、セリン、オルニチン、およびトレオニンから成る群から選ばれる2から約5個までのアミノ酸を含むことを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の薬剤送達結合体。
【請求項23】
前記放出型リンカーが、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、リシン、アルギニン、およびオルニチン、およびそれらの組み合わせから成る群から選ばれるアミノ酸から成る、トリペプチド、テトラペプチド、ペンタペプチド、またはヘキサペプチドを含むことを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の薬剤送達結合体。
【請求項24】
前記放出型リンカーが、親水性スペーサーリンカーを含むことを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の薬剤送達結合体。
【請求項25】
前記スペーサーリンカーが、下式のいずれか一つの親水性スペーサーリンカーを含むことを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の薬剤送達結合体:
【化10】
(式中、Rは、H、アルキル、シクロアルキル、またはアリールアルキルであり;mは、1から約3までの整数であり;nは、1から約5までの整数であり、pは、1から約5までの整数であり、rは、1から約3までの整数である)。
【請求項26】
前記放出型リンカーが、下式のいずれか一つの親水性スペーサーリンカーを含むことを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の薬剤送達結合体:
【化11】
(式中、Rは、H、アルキル、シクロアルキル、またはアリールアルキルであり;mは、1から約3までから独立に選ばれる整数であり;nは、1から約6までの整数であり、pは、1から約5までの整数であり、rは、1から約3までの整数である)。
【請求項27】
nが、3または4であることを特徴とする、請求項26に記載の薬剤送達結合体。
【請求項28】
pが、3または4であることを特徴とする、請求項26に記載の薬剤送達結合体。
【請求項29】
rが1であることを特徴とする、請求項26に記載の薬剤送達結合体。
【請求項30】
前記結合性リガンドBが、ビタミン、または、その、ビタミン受容体結合性類縁体または誘導体であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の薬剤送達結合体。
【請求項31】
前記結合性リガンドBが、葉酸塩、または、その、葉酸受容体結合性類縁体または誘導体であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の薬剤送達結合体。
【請求項32】
治療有効量の、請求項1〜7のいずれか1項に記載の薬剤送達結合体と、その薬学的に受容可能な担体、希釈剤、または賦形剤、またはそれらの組み合わせとを含む、薬学的組成物。
【請求項33】
病原細胞集団を抱える宿主動物において該病原細胞集団を除去する方法であって、治療有効量の、請求項1〜7のいずれか1項に記載の薬剤送達結合体、または、その薬学的組成物を、該宿主に投与する工程を含み、該病原細胞集団のメンバーは、ビタミン、または、そのビタミン受容体結合性類縁体または誘導体に対し、アクセス可能な結合部位を有し、該結合部位は、該病原細胞によって一意に発現されるか、過剰に発現されるか、または優先的に発現されることを特徴とする、方法。
【請求項34】
結合性または標的化リガンドB、多価の放出型リンカーL、および一つ以上の薬剤Dを含む薬剤送達結合体であって、少なくとも一つの薬剤Dは第1のツブリシンであり、BおよびDは、それぞれ、Lに共有結合されることを特徴とする、薬剤送達結合体。
【請求項35】
二つ以上の薬剤Dを有するが、少なくとも一つの薬剤Dは第2のツブリシンではないことを特徴とする、請求項34に記載の薬剤送達結合体。
【請求項36】
二つ以上の薬剤Dを有するが、少なくとも一つの薬剤Dは、前記第1のツブリシンとは異なる作用方式を有することを特徴とする、請求項34に記載の薬剤送達結合体。
【請求項1】
下式の薬剤送達結合体:
B-L-D
(式中、Bは、結合性または標的化リガンド、Lは、放出型リンカー、Dは、ツブリシンである)。
【請求項2】
下式を有することを特徴とする、請求項1に記載の薬剤送達結合体、またはその薬学的塩:
【化1】
(式中
nは、1-3であり;
Vは、H、OR2、またはハロであり、Wは、H、OR2、またはアルキルであり、前式において、R2は、各場合において、H、アルキル、およびC(O)R3から独立に選ばれ、前式において、R3は、それぞれ必要に応じて置換される、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、またはアリールアルキルであり;ただし、VおよびWの両方がOR2である場合、R2はHではなく;または、VおよびWは、付属の炭素と共にカルボニルを形成し;
Xは、それぞれ必要に応じて置換されるH、C1-4アルキル、若しくはアルケニルか、またはCH2QR9であり;前式において、Qは、-N-、-O-、または-S-であり;R9は、H、C1-4アルキル、アルケニル、アリール、またはC(O)R10であり;R10は、それぞれ必要に応じて置換される、C1-6アルキル、アルケニル、アリール、またはヘテロアリールであり;
ZはアルキルであってYはOであるか;または、Zはアルキルか、またはC(O)R4であって、Yは存在せず、前式において、R4は、アルキル、CF3、またはアリールであり;
R1はHであるか、あるいはR1は、ハロ、ニトロ、カルボキシレートまたはその誘導体、シアノ、ヒドロキシル、アルキル、ハロアルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、フェノール保護基、プロドラッグ成分、および、OR6から選ばれる、1から3個の置換基を表し、前式において、R6は、必要に応じて置換されるアリール、C(O)R7、P(O)(OR8)2、またはSO3R8であり、前式において、R7およびR8は、各場合において、それぞれ必要に応じて置換される、H、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、および、アリールアルキルから独立に選ばれ、あるいは、R8は、金属陽イオンであり;かつ、
Rは、OH、または脱離基であるか、あるいは、Rは、カルボン酸誘導体を形成する)。
【請求項3】
下式を有することを特徴とする、請求項1に記載の薬剤送達結合体、またはその薬学的塩:
【化2】
(式中、
nは、1-3であり;
Vは、H、OR2、またはハロであり、Wは、H、OR2、またはアルキルであり、前式において、R2は、各場合において、H、アルキル、またはC(O)R3から独立に選ばれ、前式において、R3は、アルキル、アルケニル、またはアリールであり、ただし、VおよびWの両方がOR2である場合、R2はHではなく;または、VおよびWは、付属の炭素と共にカルボニルを形成し;
Xは、それぞれ必要に応じて置換されるH、C1-4アルキル、若しくはアルケニルか、またはCH2QR9であり;前式において、Qは、-N-、-O-、または-S-であり;R9は、H、C1-4アルキル、アルケニル、アリール、またはC(O)R10であり;R10は、それぞれ必要に応じて置換される、C1-6アルキル、アルケニル、アリール、またはヘテロアリールであり;
Zはアルキル、またはC(O)R4であり、前式において、R4は、アルキル、CF3、またはアリールであり;
Tは、H、またはOR6であり、前式において、R6は、H、アルキル、アリール、COR7、P(O)(OR8)2、またはSO3R8であり、前式において、R7およびR8は、各場合において、それぞれ必要に応じて置換される、H、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、および、アリールアルキルから独立に選ばれ、あるいは、R8は、金属陽イオンであり、あるいは、R6は、フェノール保護基、またはプロドラッグ成分であり;
SおよびUは、H、ハロ、ニトロ、シアノ、アルキル、ハロアルキル、アルコキシ、およびハロアルコキシから成る群からそれぞれ独立に選ばれ;かつ、
Rは、OH、または脱離基であるか、あるいは、Rは、カルボン酸誘導体を形成する)。
【請求項4】
下式を有することを特徴とする、請求項1に記載の薬剤送達結合体、またはその薬学的塩:
【化3】
(式中、
R12は、それぞれ必要に応じて置換される、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、およびアリールアルキルから選ばれる、一つ以上の置換基を表し;R13は、C(O)R10、C(O)OR10、またはCNである)。
【請求項5】
下式を有することを特徴とする、請求項1に記載の薬剤送達結合体、またはその薬学的塩:
【化4】
(式中、
X3は、ハロゲン、OS(O)2R10、OP(O)(OR10a)R10、またはOP(O)(OR10a)2であり;前式において、R10およびR10aは、各場合において、それぞれ必要に応じて置換される、H、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、およびアリールアルキルから成る群から独立に選ばれるか、あるいは、R10aは、金属陽イオンである)。
【請求項6】
Dが、天然産ツブリシン、またはその類縁体または誘導体であることを特徴とする、請求項1に記載の薬剤送達結合体。
【請求項7】
下式を有することを特徴とする、請求項1に記載の薬剤送達結合体、またはその薬学的塩:
【化5】
(式中、
Rは、OH、または脱離基であるか、あるいは、Rは、カルボン酸誘導体を形成し;
R1はHであるか、あるいはR1は、ハロ、ニトロ、カルボキシレートまたはその誘導体、シアノ、ヒドロキシル、アルキル、ハロアルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、フェノール保護基、プロドラッグ成分、および、OR6から選ばれる、1から3個の置換基を表し、前式において、R6は、必要に応じて置換されるアリール、C(O)R7、P(O)(OR8)2、またはSO3R8であり、前式において、R7およびR8は、各場合において、それぞれ必要に応じて置換される、H、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、および、アリールアルキルから独立に選ばれるか、あるいは、R8は、金属陽イオンであり;かつ、
R10は、それぞれ必要に応じて置換される、C1-6アルキル、アルケニル、アリール、またはヘテロアリールである)。
【請求項8】
Zがメチルであることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の薬剤送達結合体。
【請求項9】
R1がHであることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の薬剤送達結合体。
【請求項10】
R1は、C(4)においてOR6であり、前式において、R6は、H、アルキル、またはCOR7であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の薬剤送達結合体。
【請求項11】
VがHであり、WがOC(O)R3であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の薬剤送達結合体。
【請求項12】
XがCH2OC(O)R10であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の薬剤送達結合体。
【請求項13】
前記放出型リンカーが、ジスルフィドを含むことを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の薬剤送達結合体。
【請求項14】
前記放出型リンカーが、炭酸塩を含むことを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の薬剤送達結合体。
【請求項15】
前記放出型リンカーが、アシルヒドラジドを含むことを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の薬剤送達結合体。
【請求項16】
前記放出型リンカーが、下記の二価式のうちの一つ以上を含むことを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の薬剤送達結合体:
【化6】
(式中、Xは、ヘテロ原子、またはカルボニル基であり;nは、0から4の整数であり;Rは、水素、またはアルコキシであり;かつ、*は、開放原子価を示す)。
【請求項17】
前記放出型リンカーが、下記の二価式のうちの一つ以上を含むことを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の薬剤送達結合体:
【化7】
(式中、Xは、NH、CH2、またはOであり;Rは、水素、またはアルコキシであり;*は、開放原子価を示す)。
【化8】
【請求項18】
前記放出型リンカーが、下記の二価式のうちの一つ以上を含むことを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の薬剤送達結合体:
【化9】
(式中、mおよびnは、1から約4までの整数から独立して選ばれ;RaおよびRbは、水素、およびアルキルから成る群からそれぞれ独立に選ばれ;あるいは、RaおよびRbは、付属の炭素原子と共に炭素環を形成し;Rは、必要に応じて置換されるアルキル基、必要に応じて置換されるアシル基、または窒素保護基であり; *は、開放原子価を示す)。
【請求項19】
前記放出型リンカーが、2から約20個のアミノ酸を含むペプチドを含むことを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の薬剤送達結合体。
【請求項20】
前記放出型リンカーが、4から約8個のアミノ酸を含むペプチドを含むことを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の薬剤送達結合体。
【請求項21】
前記放出型リンカーが、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、リシン、グルタミン、アルギニン、セリン、オルニチン、およびトレオニンから成る群から選ばれる、少なくとも二つのアミノ酸を含むことを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の薬剤送達結合体。
【請求項22】
前記放出型リンカーが、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、リシン、グルタミン、アルギニン、セリン、オルニチン、およびトレオニンから成る群から選ばれる2から約5個までのアミノ酸を含むことを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の薬剤送達結合体。
【請求項23】
前記放出型リンカーが、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、リシン、アルギニン、およびオルニチン、およびそれらの組み合わせから成る群から選ばれるアミノ酸から成る、トリペプチド、テトラペプチド、ペンタペプチド、またはヘキサペプチドを含むことを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の薬剤送達結合体。
【請求項24】
前記放出型リンカーが、親水性スペーサーリンカーを含むことを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の薬剤送達結合体。
【請求項25】
前記スペーサーリンカーが、下式のいずれか一つの親水性スペーサーリンカーを含むことを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の薬剤送達結合体:
【化10】
(式中、Rは、H、アルキル、シクロアルキル、またはアリールアルキルであり;mは、1から約3までの整数であり;nは、1から約5までの整数であり、pは、1から約5までの整数であり、rは、1から約3までの整数である)。
【請求項26】
前記放出型リンカーが、下式のいずれか一つの親水性スペーサーリンカーを含むことを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の薬剤送達結合体:
【化11】
(式中、Rは、H、アルキル、シクロアルキル、またはアリールアルキルであり;mは、1から約3までから独立に選ばれる整数であり;nは、1から約6までの整数であり、pは、1から約5までの整数であり、rは、1から約3までの整数である)。
【請求項27】
nが、3または4であることを特徴とする、請求項26に記載の薬剤送達結合体。
【請求項28】
pが、3または4であることを特徴とする、請求項26に記載の薬剤送達結合体。
【請求項29】
rが1であることを特徴とする、請求項26に記載の薬剤送達結合体。
【請求項30】
前記結合性リガンドBが、ビタミン、または、その、ビタミン受容体結合性類縁体または誘導体であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の薬剤送達結合体。
【請求項31】
前記結合性リガンドBが、葉酸塩、または、その、葉酸受容体結合性類縁体または誘導体であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の薬剤送達結合体。
【請求項32】
治療有効量の、請求項1〜7のいずれか1項に記載の薬剤送達結合体と、その薬学的に受容可能な担体、希釈剤、または賦形剤、またはそれらの組み合わせとを含む、薬学的組成物。
【請求項33】
病原細胞集団を抱える宿主動物において該病原細胞集団を除去する方法であって、治療有効量の、請求項1〜7のいずれか1項に記載の薬剤送達結合体、または、その薬学的組成物を、該宿主に投与する工程を含み、該病原細胞集団のメンバーは、ビタミン、または、そのビタミン受容体結合性類縁体または誘導体に対し、アクセス可能な結合部位を有し、該結合部位は、該病原細胞によって一意に発現されるか、過剰に発現されるか、または優先的に発現されることを特徴とする、方法。
【請求項34】
結合性または標的化リガンドB、多価の放出型リンカーL、および一つ以上の薬剤Dを含む薬剤送達結合体であって、少なくとも一つの薬剤Dは第1のツブリシンであり、BおよびDは、それぞれ、Lに共有結合されることを特徴とする、薬剤送達結合体。
【請求項35】
二つ以上の薬剤Dを有するが、少なくとも一つの薬剤Dは第2のツブリシンではないことを特徴とする、請求項34に記載の薬剤送達結合体。
【請求項36】
二つ以上の薬剤Dを有するが、少なくとも一つの薬剤Dは、前記第1のツブリシンとは異なる作用方式を有することを特徴とする、請求項34に記載の薬剤送達結合体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公表番号】特表2010−521485(P2010−521485A)
【公表日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−553774(P2009−553774)
【出願日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際出願番号】PCT/US2008/056824
【国際公開番号】WO2008/112873
【国際公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【出願人】(504389588)エンドサイト,インコーポレイテッド (16)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際出願番号】PCT/US2008/056824
【国際公開番号】WO2008/112873
【国際公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【出願人】(504389588)エンドサイト,インコーポレイテッド (16)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]