説明

花粉脱落性能の試験方法

【課題】本発明は、付着した花粉の脱落性能の試験方法を提供せんとするものである。
【解決手段】本発明の脱落性能の試験方法は、花粉または疑似花粉を付着させた繊維布帛を落下させた衝撃により花粉または疑似花粉を脱落させ、その脱落状態を単位面積当たりの個数または繊維布帛の色の変化で判定する花粉脱落性能の試験方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、付着した花粉の脱落しやすい布帛と脱落しにくい布帛を見分ける花粉脱落性能の試験方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、花粉付着防止性能の試験方法には、特開平6−126093号公報に記載された方法のように、花粉が飛散する季節に屋外に繊維布帛を暴露させた後、屋内に取り込み24時間後に屋内の空気中に浮遊する花粉を花粉捕獲器で捕獲した後、花粉数を数える方法がある。この方法では試験ができる時期が限定され、また非常に時間がかかる試験方法であった。一方、特開2003−213541号公報や特開2003−227070号公報のように、疑似花粉を使用する花粉付着防止性能の試験方法は、試験時期を選ばない手軽な試験方法であるが、これらの特許文献に記載された方法は、繊維布帛と疑似花粉を入れた袋を振って繊維布帛に疑似花粉を付着させる方法であるため、柔らかい袋(ビニール袋等)の縛り口付近にシワが発生し、そのシワ部に繊維布帛や疑似花粉が挟まってしまい疑似花粉の付着にバラツキが発生するという問題があった。また、一つの袋の中へ30枚の繊維布帛を混合させて入れる試験方法のため、あくまでもその時のみの相対的評価にすぎず、また、袋の中へ同時に入れた繊維布帛から影響を受けるため、袋の中へ同時に入れる繊維布帛を変えると同じ繊維布帛であっても付着傾向が異なる可能性があった。従って、従来の試験方法では絶対的な花粉付着防止性能試験はできなかった。また、繊維布帛が7cm×7cmと大きいため、同一布帛の中でのバラツキも大きいという問題もあった。
【0003】
また、別の試験方法として、単位面積当たり一定個数の花粉を付着させた後、衝撃を与え花粉を脱落させた後、残留する花粉の個数を測定し、リリース率を算出する試験方法があるが、脱落性能のみの試験で付着防止性能は試験できないものである。このようなことからバラツキの少ない付着防止性能と脱落性能の評価が望まれているが、いまだ提供されていないのが現状である。
【特許文献1】特開平6−126093号公報(第3頁)
【特許文献2】特開2003−213541号公報(第4頁)
【特許文献3】特開2003−227070号公報(第3〜5頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、かかる課題を解決するために、付着した花粉が脱落しやすい布帛と脱落しにくい布帛を容易に見分ける花粉脱落性能の試験方法を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、かかる課題を解決するために、次のような手段を採用するものである。すなわち、花粉または疑似花粉を付着させた繊維布帛を落下させた衝撃により花粉または疑似花粉を脱落させ、その脱落状態を単位面積当たりの個数または繊維布帛の色の変化で判定する花粉脱落性能の試験方法である。
【発明の効果】
【0006】
本発明の花粉脱落性能の試験方法によれば、付着した花粉が脱落しやすい布帛と脱落しにくい布帛を容易に見分けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明は、前記課題、つまり脱落性能試験方法を鋭意検討し、付着した繊維布帛の表面を下にして固定枠に取り付け、その枠と共に落下させた衝撃により、花粉または疑似花粉を脱落させる花粉脱落性能試験によりかかる課題を一挙に解決することを究明したものである。
【0008】
まず、花粉付着防止性能の試験方法について説明する。
【0009】
花粉症の原因となる花粉は約60種類あり、その発生源は風で花粉を運ぶ風媒花がほとんどである。繊維布帛に花粉が付着するのは、人が屋外を歩行等している間に、着用している衣類等に空気中を浮遊している花粉が衝突して付着するものが主な経路であると考えられる。よって、花粉または疑似花粉と繊維布帛とを硬質の容器に入れて攪拌し、繊維布帛に花粉または疑似花粉を衝突させることにより、花粉付着防止性能を評価する試験方法とした。
【0010】
本発明において用いる花粉は特に限定されないが、試験を行う目的からすればスギ花粉、ヒノキ花粉、ブタクサ花粉、ヨモギ花粉、スズメノテッポウ花粉、カモガヤ花粉、イネ花粉、カナムグラ花粉などの花粉症の原因となる花粉が用いられる。しかし、天然の花粉は同じ種類の花粉であっても、採取する年、地方などにより大きさや形状などに違いがあり、試験用に常時、安定した花粉を入手することは困難である。また、天然の花粉を使用して試験を行う時、試験を実施する人が花粉症患者の場合は試験を行うことが困難であり、花粉症患者でない場合は花粉症を誘発する危険性もある。よって、アレルギー性のない疑似花粉を使用することが試験実施者の健康管理の面からも好ましい。
【0011】
花粉症の原因となる風媒花の花粉の大きさは10〜60ミクロンであり、特に25〜45ミクロンのものが多いと言われている。また、花粉症患者の約80%を占めると言われるスギ花粉の平均の大きさは約30ミクロンである。よって、疑似花粉としては10〜60ミクロンの粉体であれば特に限定されるものはないが、花粉の増量剤として使用されているもの、具体的にはシダ科のヒカゲノカズラの胞子である石松子や澱粉、脱脂粉乳、ベントナイト、シリカゲルなどが好ましい。石松子は、大きさが30ミクロン〜40ミクロンであり、比重も2以下であり花粉に近く、受粉作業で花粉の増量剤として一般的に使用されており、安定して入手が可能で、天然物質であるがアレルギー性がないので疑似花粉としてより好ましい。なお、天然の石松子の色は黄色であるので、繊維布帛が濃色の場合は付着の傾向がわかりやすいが、繊維布帛が淡色の場合は、天然の石松子では付着の傾向がわかりにくいので、赤色などに着色された石松子を使用することが好ましい。
【0012】
花粉または疑似花粉の投入量は0.01g/L〜0.3g/Lが好ましい。0.01g/Lよりも花粉または疑似花粉の量が少ないと、付着しやすい繊維布帛と付着しにくい繊維布帛のいずれにも付着が少なくその差が検証しにくい。また、0.3g/L以上投入すると、付着しやすい繊維布帛と付着しにくい繊維布帛のいずれにも付着が多くなりその差が検証しにくくなる。
【0013】
用いる硬質容器は、壁面が平滑であれば材質は特に限定されるものではない。金属、ガラス、プラスチックなどいずれでもよいが、取り扱いやすさからプラスチックが好ましい。プラスチックであれば、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレンなどいずれでもよい。ここでいう硬質とは、前述の柔らかい袋(ビニール袋等)は排除されるという意味であり、形態が安定していて、かつ容易に破損しないものであればよい。硬質容器の形は球、多角柱、円柱、多角錐、円錐などいずれの形でもよいが、回転させた時に壁面に繊維布帛が張り付かず、花粉または疑似花粉や繊維布帛が偏らないためには円柱が最も好ましい。容器の蓋は、胴体部分と比べて蓋の箇所が小さいと壁面に凹凸ができ繊維布帛や花粉または疑似花粉が引っかかる可能性があり、蓋は胴体部分と同寸もしくはそれに近い大きさの広口が好ましい。
【0014】
花粉付着防止性能の試験方法においては、試験サンプルとする繊維布帛と花粉または疑似花粉を硬質容器に投入した後、容器を撹拌する。撹拌の方法としては容器を振る方法、容器を回転させる方法等、特に限定されないが、なかでも容器を回転させる方法が好ましい。
【0015】
例えば、円柱状の容器であれば容器の回転方法は、容器を立てて蓋と底を上下に回転させる方法が、容器の胴体部分をヨコにして回転させる方法よりも好ましい。容器の胴体部をヨコにして回転させると、繊維布帛は容器の中で胴体部分の壁面のみを滑り、運動距離が小さくなり花粉または疑似花粉の付着のバラツキが大きくなる。容器を立てて回転させると、繊維布帛の容器の中での運動距離が大きくなり、花粉または疑似花粉の付着が均一になる。硬質容器の回転方法を図2に示す。回転方向は1方向でも、周期的に回転方向を変化させることでもかまわない。
【0016】
また、硬質容器自身を回転させてもよいが、硬質容器を回転する装置の中へ入れて回転させてもよい。その場合、装置の回転軸が硬質容器から離れすぎていると遠心力により繊維布帛や花粉等が一箇所に集中してしまい撹拌にならないので、装置の回転軸が硬質容器を貫いているか、容器の近傍にあることが好ましい。また、回転する装置の大きさは、硬質容器を立てて入れることができ、回転中に硬質容器が横向きにならないような大きさであることが好ましい。回転する装置の中へ入れる容器の個数は特に限定されるものではない。硬質容器を回転する装置の中へ入れて回転させると、硬質容器の壁面に付着した花粉または疑似花粉が振動により壁面から落下することがあり好ましい。回転する装置の中へ硬質容器を入れて回転させる方法の例を図3に示す。
【0017】
硬質容器を回転させる回転速度、回転時間は特に限定されないが、1回/秒で、1分〜20分間回転させることが好ましい。回転時間を1分間以上とすれば繊維布帛に付着する花粉や疑似花粉の付着量のバラツキが少なくなる。また、20分間以下とすれば静電気が発生して繊維布帛本来の花粉付着防止性能が損なわれる可能性も排除できる。回転時間は20分間以下にすることが好ましく、10分間以下がより好ましい。
【0018】
また、硬質容器に花粉または疑似花粉と複数の繊維布帛を入れて攪拌させると繊維布帛同士が張り付く可能性があり、特にこのような場合、緩衝材として第三物資を投入することが効果的で好ましい。また、第三物質を投入することにより、硬質容器の壁面に付着している花粉または疑似花粉を落下させる効果もある。緩衝材としての第三物質の材質、形状など限定されるものではないが、静電気が発生しにくく、硬質容器や繊維布帛に衝突した時、損傷しないよう突起がないものが好ましい。また、大きさ、重量等も特に限定はされないが、これらは硬質容器の大きさ、強度等によってある程度は制限される。以上の点から鋭意検討した結果、直径5〜15mmの木製の球がより好ましい。
【0019】
硬質容器に花粉または疑似花粉と繊維布帛とを投入して攪拌すると静電気が発生する可能性があるので、硬質容器にアース線を取り付けておくことも好ましい。また、静電気対策として、硬質容器に投入する繊維布帛や空気などを静電気の発生しにくい温湿度で調湿することも好ましい。温度が20℃の時、静電気の発生にしくい湿度は、50%RH以上である。また、65%RH以上であると、静電気の発生はないが、繊維布帛の水分量が多くなり、本来の花粉または疑似花粉の付着傾向が変化してしまう可能性の否定できないので65%RH未満であることが好ましい。
【0020】
以上の方法により繊維布帛に花粉または疑似花粉を付着させた後、繊維布帛を硬質容器から取り出し、花粉または疑似花粉の付着状況を観察する。
【0021】
花粉または疑似花粉を付着させた繊維布帛の付着状態は、繊維布帛を着用および使用時に外気に触れる面を表面として単位面積当たりの付着個数または、繊維布帛の色の変化で判定する。
【0022】
単位面積当たりの付着個数を測定する場合、繊維布帛表面を高倍率、例えば150倍のレンズで拡大して観察すると、花粉または疑似花粉の1個の粒径の測定が可能になり好ましい。花粉または疑似花粉の付着数を拡大観察し、単位面積あたりの個数を測定するが、付着数が多くなると測定するのに非常に時間がかかる。また、150倍のレンズで拡大観察した面積は実際の面積では、タテ1.5mm、ヨコ2mmと非常に小さい面積のため、場所によるバラツキが発生する。バラツキについては観察部位を多数とり平均することによって解決可能であるが、より短時間で判定したい場合は色の変化によって判定するのが有効である。
【0023】
色の変化による判定方法は以下の通りである。例えば、疑似花粉の石松子は黄色であるので黒などの濃色の繊維布帛に付着すると付着個数に比例して繊維布帛の色が変化する。その色の変化を利用し単位面積当たりの付着数と相関のある級判定標準写真を予め作成する。花粉または疑似花粉の付着した繊維布帛を、この標準写真より級判定を行うとその都度個数を測定することなく、花粉が付着しやすい布帛と付着しにくい布帛を容易に見分けることができる。また、繊維布帛全体の付着傾向を判定するため、小さい単位面積当たりの個数を測定する場合よりもバラツキが少ない。尚、石松子の付着数が250個/3mm以下の繊維布帛は、スギ花粉による着用テストの結果でも付着数が少ないものであった。付着個数と級判定の関係は、例えば実施例においては次の通りである。
1級(非常に多くの付着が認められる。501個以上/実面積3mmに相当)
2級(多くの付着が認められる。 251個〜500個/同上)
3級(付着が認められる。 151個〜250個/同上)
4級(少し付着が認められる。 51個〜150個/同上)
5級(わずかに付着が認められる。 0個〜 50個/同上)
実施例で用いた級判定標準写真と3mmに付着している拡大観察例を図1に示す。
【0024】
繊維布帛が淡色の場合、天然の石松子が黄色であるので、付着の傾向がわかりにくい。その場合は赤色などに着色された石松子を使用することが好ましい。
【0025】
硬質容器の大きさと繊維布帛の大きさは特に限定されるものではないが、繊維布帛がタテ5cm、ヨコ5cmよりも大きいと付着状態のバラツキが大きくなり、タテ2cm、ヨコ2cmよりも小さいと脱落性能の試験が行いにくい。よって、タテ2cm、ヨコ2cmよりも大きく、タテ5cm、ヨコ5cmよりも小さいことが好ましい。この程度の繊維布帛の大きさであれば、硬質容器の大きさは、0.5L〜20Lが好ましい。
【0026】
次に、本発明の花粉脱落性能の試験方法について説明する。
【0027】
花粉が飛散する時期に屋外で衣類等に付着した花粉を、屋内に入る前に払って入る。また、屋外に干した洗濯物を屋内に取り込む時、花粉を払って入れる。それらの動作は、繊維布帛自体に衝撃を与えて花粉を落下させているのである。よって、花粉または疑似花粉を付着させた繊維布帛を、着用および使用時に外気に触れる面を表面として、この表面を下にして固定枠に取り付け固定枠と共に落下させた衝撃により花粉または疑似花粉の脱落性能の試験を行う。
【0028】
固定枠の材質は、金属、木、プラスチック、紙、ゴム等、特に限定されるものではないが、落下の振動によりバウンドしない材質であるゴムが好ましい。固定枠の重量は、30g〜1kgが好ましい。30gよりも軽いと安定した落下条件が得られず、1kgよりも重いと落下時の衝撃が大きく花粉の脱落状態に差が認められにくくなる。
【0029】
固定枠の大きさ、形状は、用いる繊維布帛に合わせ適宜選択すればよい。例えばタテ4cm、ヨコ4cmの繊維布帛に対し、例えば大きさタテ5〜10cm、ヨコ5〜10cmの固定枠のものを使用できる。形状は固定枠の中央部分に繊維布帛を固定する窓があり、落下面が平滑であれば、丸形、四角形、多角形など特に限定されるものはない。固定枠の中央部分の窓は、固定枠に取り付けた繊維布帛を落下させた時、繊維布帛と落下床面との間に一定の距離を保ち、花粉または疑似花粉の付着した繊維布帛が床面に接触することを防ぐものである。落下の衝撃により繊維布帛が落下床面に接触すると花粉または疑似花粉の脱落にバラツキが発生する。また、固定枠の落下面が平滑であれば凹凸のあるものと比べて落下による衝撃のバラツキが少なく好ましい。
【0030】
落下距離は特に限定されるものではないが、5cm〜30cmが好ましい。落下距離が5cmよりも小さいと衝撃が小さく、花粉または疑似花粉の脱落が少なく、30cmよりも大きいと落下距離が大きく安定した落下条件が得られない。
【0031】
固定枠を落下させる床面の材質は、金属、木、プラスチック、紙、ゴム等、特に限定されるものではないが、固定枠と同様に固定枠の落下の振動によるバウンドがしにくい材質であるゴムが好ましい。
【0032】
固定枠に繊維布帛を固定する方法は、花粉または疑似花粉の付着した面が落下させた時、床面に接触せず、繊維布帛に張力をかけず平らに固定され、落下の衝撃ではがれなければ、1枚の固定枠への貼り付け、2枚の固定枠の間に挟み込む方法等、特に限定されるものではないが、落下させた後固定枠から外す時に衝撃が加わらないよう両面テープ等で固定することが好ましい。固定枠の形状、繊維布帛の固定方法等を図4に示す。
【0033】
落下方法、落下回数は、固定枠の自重で落下床面に平行に落下させれば特に限定されるものはない。固定枠と共に落下させた後に、繊維布帛を固定枠より外し、花粉付着防止性能試験と同様に、単位面積当たりの個数を測定するか、繊維布帛の色の変化を標準写真より級判定を行う。
【0034】
石松子による付着防止性能と脱落性能の傾向は、天然のスギ花粉による付着防止性能と脱落性能の傾向と正の相関が認められた。
【0035】
なお、花粉付着防止性能試験および本発明の花粉脱落性能試験においては、安定した試験を行うために、また、静電気対策のために、事前に繊維布帛を恒温恒湿の条件で一定時間処理し、硬質容器内の空気も一定条件に調整することが好ましい、具体的には、例えば繊維布帛を事前に20℃65%RHの温調室で24時間以上調湿し、硬質容器に入れる空気も20℃65%RHのものを使用することが好ましい。
【実施例】
【0036】

以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0037】
[実施例1]
タテ糸、ヨコ糸共に、56デシテックス、40フィラメントのナイロン生糸を使用し、平織を製織後、通常の染色方法で、リラックス・精練、黒色に染色し、仕上げセットを行い、タテ密度175本/2.54cm、ヨコ密度107本/2.54cmの織物を作製した。その織物のシワのない個所でタテ4cm、ヨコ4cmにカットした試料を5枚、20℃65%RHの温調室で24時間調湿後、20℃65%RHの温調室で、この試料5枚と共に疑似花粉である石松子を0.05g、直径12mmの木製の球5個を直径97mm、高さ166mmのポリエチレン製の1Lの円柱型のボトルの中に入れた。そのボトル1個と同じ大きさのボトル3個、計4個のボトルをタテ23cm、ヨコ23cm、深さ23cmのコルクが内張りしている箱型の装置の中に、ボトルの蓋を上に立てて入れ、箱型の装置の蓋をし、1回/秒の回転速度で2分間回転させ花粉付着防止性能試験を行った(図3)。なお、石松子の平均の大きさは31ミクロンであった。
【0038】
石松子が付着した試料をボトルから取り出し、試料の表面を150倍のレンズで拡大観察を行い、平均的に付着している箇所を選びタテ1.5mm、ヨコ2mmの3mmに付着している石松子の個数を測定した。5枚の試料に付着している石松子の個数はそれぞれ95個、86個、121個、92個、99個であった。図1の級判定標準写真に従い級判定を行ったところ、5枚の試料とも4級で花粉付着防止性能に優れた布帛であった。なお、級判定は、
1級(非常に多くの付着が認められる。501個以上/実面積3mmに相当)
2級(多くの付着が認められる。 251個〜500個/同上)
3級(付着が認められる。 151個〜250個/同上)
4級(少し付着が認められる。 51個〜150個/同上)
5級(わずかに付着が認められる。 0個〜 50個/同上)
である。
【0039】
次に、5枚の試料の内、平均的に付着している3枚について、脱落性能試験を行った。タテ10cm、ヨコ10cm、厚さ5mm、中央部分のタテ3cm、ヨコ3cmをくり貫いた重さ60gの天然ゴムシート製の固定枠に、くり貫かれた周辺に幅5mmの両面テープを貼り付け、その上に石松子が付着した試料を表面を下にして貼り付けた(図4)。試料を貼り付けた固定枠を20cmの高さから水平に、タテ20cm、ヨコ20cm、厚さ5mmの天然ゴムシートの床面上に固定枠の自重で落下させる。計5回落下させた後、試料を固定枠から外し、付着試験と同様に150倍に拡大して、残留している石松子の個数を測定した結果、3枚の試料に付着していた石松子の個数は、23個、18個、13個であった。級判定標準写真に従い級判定を行ったところ、3枚とも5級で花粉脱落性能に優れた布帛であった。花粉結果を表2に示す。
【0040】
[実施例2]
タテ糸にポリエステル100%使いの80番手双糸の紡績糸を、ヨコ糸に84デシテックス、72フィラメントのポリエステルの加工糸を双糸にして使用し綾織物を製織後、通常の染色方法で、リラックス・精練、黒色に染色、乾燥を行った。次いで、リン酸エステル系帯電防止剤であるエレナスタットEA−7(京浜化成(株)製)20g/Lからなる処理液に浸漬した後、絞り率80%で絞り、170℃で乾燥セットを行いタテ密度195本/2.54cm、ヨコ密度93本/2.54cmの織物を作製した。その織物を実施例1と同様にして花粉付着防止性能試験を行った結果、5枚の試料に付着している石松子の個数は259個、268個、312個、273個、337個であった。図1の級判定標準写真に従い級判定を行ったところ、5枚の試料とも2級で花粉付着防止性能が劣っていた。花粉脱落性能試験を実施例1と同様に行い、残留している石松子の個数を測定した結果、158個、220個、181個であった。級判定標準写真に従い級判定を行った結果、3枚とも3級であり、バラツキなく花粉付着性能および脱落性能を評価することができた。結果を表2に示す。
【0041】
[比較例1]
実施例1で作製したナイロン100%使いの平織物の、シワのない個所でタテ7cm、ヨコ7cmにカットした試料を5枚、20℃65%RHの温調室で24時間調湿後、その他の試料と共に合計30枚の試料と1gの石松子をポリエチレン製袋に入れて、20℃65%RHの空気で20Lに膨らませ、口を縛り、その袋を1回の上下に約1秒かけて100回上下に振った。試料を取り出し実施例1と同様に5枚の試料に付着している石松子の個数を測定した結果、92個、205個、120個、95個、264個とバラツキは大きく、花粉付着防止性能を正確に評価できなかった。結果を表2に示す。
【0042】
[比較例2]
実施例2で作製したポリエステル100%使いの綾織物の、シワのない個所で比較例1と同じく袋を手動で攪拌させる花粉付着防止性能試験を行った。試料を取り出し実施例1と同様に5枚の試料に付着している石松子の個数を測定した結果、284個、303個、521個、231個、580個とバラツキは大きく、花粉付着防止性能を正確に評価できなかった。結果を表2に示す。
【0043】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】実施例で用いた級判定標準写真である。
【図2】花粉付着防止性能試験方法におけるボトルの回転方法の一例を示す図である。
【図3】花粉付着防止性能試験方法において使用し得る回転装置の一例(実施例において使用)を示す図である。
【図4】本発明の花粉脱落性能試験方法における固定枠および固定枠への固定方法の一例(実施例において使用)を示す図である。
【符号の説明】
【0045】
1 :硬質容器
1a:蓋
1b:胴体部分
2 :回転方向
3 :回転軸
4 :蓋
5 :箱型装置
6 :繊維布帛(試料)
7 :固定枠
8 :両面テープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
花粉または疑似花粉を付着させた繊維布帛を落下させた衝撃により花粉または疑似花粉を脱落させた後、脱落状態を単位面積当たりの個数または繊維布帛の色の変化で判定する花粉脱落性能の試験方法。
【請求項2】
花粉または疑似花粉を付着させた面を下にして30g〜1kg重量の固定枠に取り付け、固定枠と共に5cm〜30cmの高さから落下させることを特徴とする請求項2に記載の花粉脱落性能の試験方法。
【請求項3】
花粉または疑似花粉、繊維布帛および緩衝材としての第三物質を硬質容器の中へ入れて攪拌することにより花粉または疑似花粉を付着させた繊維布帛を用いることを特徴とする請求項1または2に記載の花粉脱落性能の試験方法。

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2006−249654(P2006−249654A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−137336(P2006−137336)
【出願日】平成18年5月17日(2006.5.17)
【分割の表示】特願2003−382094(P2003−382094)の分割
【原出願日】平成15年11月12日(2003.11.12)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】