説明

α−オキソカルボン酸の金属塩の製造方法

【課題】グリオキシル酸のカルシウム塩等のα−オキソカルボン酸の金属塩を効率良く製造すること。
【解決手段】α−オキソカルボン酸と酢酸金属塩とを水性媒体中で混合する工程を有することを特徴とするα−オキソカルボン酸の金属塩の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、α−オキソカルボン酸の金属塩、例えばグリオキシル酸のカルシウム塩、グリオキシル酸の銅塩、又はグリオキシル酸の亜鉛塩を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
α−オキソカルボン酸の塩類、例えばグリオキシル酸塩類は、アセトアセチル化ポリビニルアルコールの架橋剤や熱硬化性樹脂の架橋剤として有用な化合物である。α−オキソカルボン酸の塩類を製造する方法として、例えば特許文献1(特に実施例1〜4)には、α−オキソカルボン酸エステルを加水分解反応した反応液を水相と有機相に相分離させて、α−オキソカルボン酸及び/又はその塩を含有する水溶液を得ることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−300926号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、α−オキソカルボン酸塩類のなかでもα−オキソカルボン酸の金属塩を、上記加水分解反応を用いて、製造しようとした場合は、α−オキソカルボン酸の金属塩は水に対する溶解度が低いので、生成するα−オキソカルボン酸の金属塩を水相に溶解させるためには、反応液である水を大量に使用せねばならず、反応に用いる装置が巨大化してしまい、製造効率が低いものであった。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、α−オキソカルボン酸の金属塩を効率良く製造することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
しかるに本発明者は、かかる事情に鑑み鋭意研究を重ねた結果、酢酸金属塩を用いてα−オキソカルボン酸と水性媒体中で混合することによって、α−オキソカルボン酸の金属塩を製造効率良く、かつ高収率で得られることを見出した。
すなわち、本発明は、α−オキソカルボン酸と酢酸金属塩とを水性媒体中で混合する工程を有することを特徴とするα−オキソカルボン酸の金属塩の製造方法に関するものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明における製造方法では、反応の進行に伴いα−オキソカルボン酸の金属塩と共に酢酸が生じるものの、かかる酢酸は反応終了後にα−オキソカルボン酸の金属塩を濾取し、乾燥させる際に容易に除去することができるため、精製が容易で、精製時のロスも抑えられる。また、使用する酢酸金属塩は水に対する溶解度が高いため、少量の水性媒体に溶解させることができ、反応に用いる装置の巨大化も抑えることができる。
したがって、本発明の製造方法を用いると、α−オキソカルボン酸の金属塩を製造効率良く、かつ高収率で得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の実施形態を説明する。
本発明方法は、α−オキソカルボン酸の金属塩(D)を製造する方法であって、α−オキソカルボン酸(A)と酢酸金属塩(B)とを水性媒体(C)中で混合する工程を有する。以下、α−オキソカルボン酸(A)、酢酸金属塩(B)、水性媒体(C)を順次説明する。
【0008】
α−オキソカルボン酸(A)としては、グリオキシル酸、ピルビン酸、α−オキソグルタル酸などが挙げられるが、中でもグリオキシル酸が好ましい。α−オキソカルボン酸は、α−オキソカルボン酸エステルを加水分解する等の方法により調製することができる。
【0009】
α−オキソカルボン酸(A)は、通常は、水溶液として調製される。水溶液中のα−オキソカルボン酸の濃度は、通常60質量%以下、好ましくは10〜40質量%、特に好ましくは20〜30質量%である。濃度が低すぎると、生成物であるα−オキソカルボン酸の金属塩(D)が析出し難くなるので収率が低下し、また生成物(D)の量に対する水の量が増えて体積が大きくなるので生産効率が低下する傾向がある。一方、濃度が高すぎると、生成物(D)の析出により反応液がスラリー化して、撹拌が困難になったり、濾過に時間がかかったりする傾向がある。
【0010】
酢酸金属塩(B)を構成する金属元素の種類としては、酢酸と共に塩を形成し、水性媒体中で金属カチオンとなり得る金属元素が用いられ、具体的には、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、遷移金属元素、第12族から第15族までの金属元素等が挙げられるが、これらの中でもアルカリ土類金属元素、第12族金属、遷移金属元素が好ましく、特に、水性媒体中で2価の陽イオンとなり得る金属元素が好ましい。
【0011】
上記アルカリ土類金属元素としては、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、ストロンチウム等が挙げられるが、これらの中でも生産性に優れる点でカルシウムを用いることが好ましい。
【0012】
上記第12族元素としては、亜鉛、カドミウム、水銀等が挙げられるが、これらの中でも生産性に優れる点で亜鉛を用いることが好ましい。
【0013】
上記遷移金属元素としては、第3族から第11族までの金属元素が挙げられ、これらの中でも生産性に優れる点で銅を用いることが好ましい。
【0014】
また、酢酸金属塩(B)は、無水物、水和物のいずれであっても良い。
【0015】
酢酸金属塩(B)は、結晶や粉末等の固体であり、α−オキソカルボン酸(A)との混合に際しては、水溶液にするのが作業や収率の点で好ましい。酢酸金属塩(B)、例えばアルカリ土類金属塩、第12族元素金属塩、遷移金属塩は、水に対する溶解度が高い。より具体的には、例えば酢酸カルシウムの溶解度(23℃水)は26.1質量%である。したがって、水溶液中の酢酸カルシウムの濃度は、25質量%以下、特に15〜20質量%に調整することが好ましい。また、酢酸亜鉛の溶解度(23℃水)は25.8質量%であるので、水溶液中の酢酸亜鉛の濃度は、25質量%以下、特に15〜20質量%に調整することが好ましい。さらに、酢酸銅の溶解度(23℃水)は、本発明者の測定によれば、6.6質量%であったので、水溶液中の酢酸銅の濃度は、6質量%以下、特に1〜5質量%に調整することが好ましい。ここで、水に対する溶解度は、(溶解した量(g)×100)/(水の量(g)+溶解した量(g)) で算出された値である。
【0016】
一方、金属の水酸化物や金属の炭酸塩は、酢酸金属塩(B)に比べて、水に対する溶解度が低い。例えば、水酸化カルシウムの溶解度(23℃水)は0.2質量%であり、無水水酸化亜鉛の溶解度(25℃水)は0.0012質量%であり、無水水酸化銅の溶解度(25℃水)は0.00029質量%である(参照:化学便覧基礎編改訂3版,日本化学会編,丸善出版)。
これら水酸化物や炭酸塩(以下、水酸化物等と表記する。)を用いた場合、これら水酸化物等を完全に溶解させるために大量の水が必要となり、反応に用いる装置が巨大化してしまい製造上非効率的である。
また、大量の水を用いてこれら水酸化物等を仮に完全溶解させたとしても、生成物(D)の水に対する溶解度の方がこれら水酸化物等の溶解度よりも高いので(例えばグリオキシル酸のカルシウム塩の溶解度(23℃水)は0.7質量%である)、生成物(D)が析出し難く、単離、精製が困難である。
さらに、これら水酸化物等の溶解が不十分のまま反応させた場合、未反応(未溶解)の水酸化物等と生成物(D)とが共に固体であるので、両者の分離が困難である。したがって、製造効率や収率が低くなる。
【0017】
α−オキソカルボン酸(A)と酢酸金属塩(B)との混合モル比は、理論的に算出される値を含む範囲で、すなわち酢酸金属塩を構成する金属元素のイオン価数/1を含む範囲であればよい。例えば、酢酸金属塩(B)を構成する金属元素のイオン価数が2価である場合には、理論的に算出される値(2/1)を含む範囲であればよく、好ましくはA/B=1.5/1〜2.5/1である。
【0018】
水性媒体(C)は、水を主成分とするものであり、水性媒体(C)中の水の含有量は、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、100質量%がさらに好ましい。ただし、本発明では、原料や生成物の溶解性に影響を与えない範囲で、アセトンやアルコール等の水系の有機溶媒を含んでもよい。例えば、α−オキソカルボン酸(A)をα−オキソカルボン酸エステルの加水分解により調製した場合、水性媒体(C)中にエステルの加水分解により生じるアルコールを含んでいても良い。また、特にα−オキソカルボン酸の亜鉛塩を製造する際には、収率の向上や乾燥時間の短縮を行なうために、アセトンやアルコール等の水系の有機溶媒を水性媒体(C)中の水の量の0.1〜2倍程度、添加することが好ましい。
【0019】
α−オキソカルボン酸(A)と酢酸金属塩(B)を水性媒体(C)中で混合するに際しては、α−オキソカルボン酸(A)の水溶液に酢酸金属塩(B)の水溶液を添加する、あるいは酢酸金属塩(B)の水溶液にα−オキソカルボン酸(A)の水溶液を添加するなど、混合する方法は何ら限定されないが、α−オキソカルボン酸(A)の水溶液に酢酸金属塩(B)の水溶液を滴下するのが好ましい。
【0020】
添加に際しては、一方の水溶液を撹拌しながら他方の水溶液を滴下するのが好ましい。滴下に要する時間は、酢酸金属塩(B)の金属の種類等により異なり一概には言えないが、例えば酢酸カルシウム塩の水溶液を滴下する場合には、通常1時間以上、好ましくは1.5時間以上をかけて滴下が行われる。滴下に要する時間が短すぎると、撹拌が不十分となり、夾雑物を含んで生成物(D)が急激に析出し、生成物(D)の純度が低下する傾向がある。両者を混合した後、静置した状態で又は撹拌しながら反応を進行させる。混合後の反応時間は、一概には言えないが、例えばα−オキソカルボン酸のカルシウム塩(D)を製造する場合には、通常1時間以上、好ましくは2時間程度、反応を行う。
【0021】
α−オキソカルボン酸(A)と酢酸金属塩(B)との反応に用いる反応装置は、特に限定されず、例えば、実験室レベルのスケールでは、温度計と滴下ロートを挿すための2つ口を有する反応管を用いて行うことができる。反応装置の材質は、特に制限されず、ステンレス鋼(SUS)やガラス等が挙げられる。撹拌方法としては、特に限定されないが、攪拌機としてスリーワンモーター、攪拌翼として半月板を用いた撹拌が挙げられる。攪拌速度は、通常10〜1000rpmであり、好ましくは100〜500rpmである。
【0022】
反応を行う際の温度は、反応の進行を妨げない温度であれば特に限定されないが、温度が高すぎると、生成物(D)の溶解度が上昇し、収率が低下する傾向があるので、通常は室温で反応を行う。なお、通常、常圧下で反応を行う。
【0023】
反応が完了した後、生成物(D)の単離、精製、乾燥を行う。生成物(D)の単離に際しては、ヌッチェ濾過や遠心分離濾過等の濾過による生成物(D)を濾取する。濾過を行う際に、支障のない範囲で反応液を冷却しても良い。濾取された生成物(D)には、副生成物の酢酸や夾雑物が含まれているので、生成物(D)を水や含水アルコールで洗浄することが好ましい。洗浄された生成物(D)は、常圧または減圧下で乾燥させる。製造効率の点では、真空乾燥を行うのが好ましい。乾燥は静置乾燥、コニカル乾燥、ナウター乾燥のいずれで行っても良い。
【実施例】
【0024】
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。なお、例中に断りのない限り、「%」とあるのは、質量基準を示す。
【0025】
〔実施例1:グリオキシル酸カルシウムの製造方法〕
2Lの2口反応管に25%グリオキシル酸水溶液(グリオキシル酸162.1g 、2.19mol)647gを入れた後、20%酢酸カルシウム水溶液(酢酸カルシウム173.2g, 1.09mol) 866gを、室温、攪拌下、1.5時間かけて滴下し、滴下終了後2時間攪拌した。反応液を濾過して白色粉末を濾取した後、得られた粉末を50℃で3時間真空乾燥させることにより、グリオキシル酸カルシウムの白色粉末224g(1.01mol、収率92.5%、純度100%)を得た。
なお、攪拌機としてスリーワンモーター、攪拌翼として半月板を用い、攪拌速度300rpm程度で撹拌を行った。
【0026】
〔実施例2:グリオキシル酸銅の製造方法〕
3Lの2口反応管に50%グリオキシル酸水溶液(グリオキシル酸101.8g 、1.37mol)203.2gを入れた後、5%酢酸銅水溶液(酢酸銅125g, 0.69mol)2500gを、室温、攪拌下で滴下し、滴下終了後2時間攪拌した。反応液を濾過して青色粉末を濾取した後、得られた粉末を50℃で4時間真空乾燥させることにより、グリオキシル酸銅の青色粉末73.7g(0.3mol、収率43.4%、純度100%)を得た。
なお、攪拌機としてスリーワンモーター、攪拌翼として半月板を用い、攪拌速度300rpm程度で撹拌を行った
【0027】
〔実施例3:グリオキシル酸亜鉛の製造方法〕
1Lの2口反応管に水285g、酢酸亜鉛(75g、0.34mol)を加え、室温、攪拌下、20%酢酸亜鉛水溶液を調製した。この中に50%グリオキシル酸水溶液(グリオキシル酸50.1g 、0.68mol)100gを加えて、滴下終了後1時間攪拌した。さらにアセトン460gを加えて、滴下終了後6時間攪拌した。反応液を濾過して白色粉末を濾取した後、得られた粉末を50℃で3時間真空乾燥させることにより、グリオキシル酸亜鉛の白色粉末58.1g(0.24mol、収率69.0%、純度100%)を得た。
なお、攪拌機としてスリーワンモーター、攪拌翼として半月板を用い、攪拌速度300rpm程度で撹拌を行った。
【0028】
〔比較例1〕
本比較例では、酢酸カルシウム水溶液に代えて、飽和に近い水酸化カルシウム水溶液を用いた。具体的には、3Lの2口反応管に25%グリオキシル酸水溶液(グリオキシル酸10g、0.14mol)40gを入れた後、0.2%水酸化カルシウム水溶液(水酸化カルシウム5.01g, 0.07mol) 2501.7gを、室温、攪拌下、1.5時間かけて滴下し、滴下終了後2時間攪拌した。反応液を濾過して白色粉末を濾取した後、得られた粉末を50℃で3時間真空乾燥させることにより、グリオキシル酸カルシウムの白色粉末8.12g(0.04mol、収率57.1%、純度100%) を得た。
【0029】
本比較例で用いた水酸化カルシウムは水に対する溶解度が低いので、原料のグリオキシル酸1モルに対する反応液の容量が膨大となる(実施例1の約26倍)。したがって、実施例1の反応管よりも巨大な反応管を使わなければならないだけでなく、生成物であるグリオキシル酸カルシウムが析出し難くなり、収率が低下した。
【0030】
〔比較例2〕
本比較例では、比較例1と同じ濃度の水酸化カルシウム水溶液を用い、反応液中の水性媒体(水)の量を実施例1と同じ量に設定した。具体的には、2Lの2口反応管に25%グリオキシル酸水溶液(グリオキシル酸162.1g、2.19mol)647gを入れた後、0.2%水酸化カルシウム水溶液(水酸化カルシウム1.73g、0.02mol)866gを、室温、攪拌下、1.5時間かけて滴下し、滴下終了後2時間攪拌したが、グリオキシル酸カルシウム粉末を含む白色溶液は得られなかった。
【0031】
本比較例では、反応液の量が実施例1と同じであるが、反応液中の水酸化カルシウムのモル濃度が低いので(実施例1の酢酸カルシウムのモル濃度の約0.02倍)、生成物であるグリオキシル酸カルシウムの飽和濃度を越える程には生成物が得られなかった。
【0032】
〔比較例3〕
実施例2において、酢酸銅水溶液に代えて、飽和に近い水酸化銅水溶液を用いたとすると、25℃温度下において飽和水溶液1L中に含まれる無水水酸化銅の質量が0.0029gであるため(参照:化学便覧基礎編改訂3版,日本化学会編,丸善出版)、飽和水溶液中の水酸化銅の濃度は0.00029%である。仮に、飽和に近い水酸化銅水溶液を用いたとすると、原料のグリオキシル酸1モルとの反応に要する0.00029%水酸化銅水溶液の容量が膨大となり、実施例2の5%酢酸銅水溶液と比較して、0.00029%水酸化銅水溶液の量が約93倍となる。したがって、実施例2の反応管よりも巨大な反応管を使わなければならず、製造効率が低くなる。
【0033】
〔比較例4〕
本比較例では、比較例3と同じ濃度の水酸化銅水溶液を用い、反応液中の水性媒体(水)の量を実施例2と同じ量に設定した。本比較例では、反応液の量が実施例2と同じであるが、反応液中の水酸化銅のモル濃度が低いので(実施例2の酢酸銅のモル濃度の約0.01倍)、生成物であるグリオキシル酸銅の飽和濃度を越える程には生成物が得られなかった。
【0034】
〔比較例5〕
実施例3において、酢酸亜鉛水溶液に代えて、飽和に近い水酸化亜鉛水溶液を用いたとすると、25℃温度下において飽和水溶液1L中に含まれる無水水酸化亜鉛の質量が0.012gであるため(参照:化学便覧基礎編改訂3版,日本化学会編,丸善出版)、飽和水溶液中の水酸化亜鉛の濃度は0.0012%である。仮に、飽和に近い水酸化亜鉛水溶液を用いたとすると、原料のグリオキシル酸1モルとの反応に要する0.0012%水酸化亜鉛水溶液の容量が膨大となり、実施例3の20%酢酸亜鉛水溶液と比較して、0.0012%水酸化亜鉛水溶液の量が約78倍となる。したがって、実施例3の反応管よりも巨大な反応管を使わなければならず、製造効率が低くなる。
【0035】
〔比較例6〕
本比較例では、比較例5と同じ濃度の水酸化亜鉛水溶液を用い、反応液中の水性媒体(水)の量を実施例3と同じ量に設定した。本比較例では、反応液の量が実施例3と同じであるが、反応液中の水酸化亜鉛のモル濃度が低いので(実施例3の酢酸亜鉛のモル濃度の約0.01倍)、生成物であるグリオキシル酸亜鉛の飽和濃度を越える程には生成物が得られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明における製造方法では、反応の進行に伴いα−オキソカルボン酸の金属塩と共に酢酸が生じるものの、かかる酢酸は反応終了後にα−オキソカルボン酸の金属塩を濾取し、乾燥させる際に容易に除去することができるため、精製が容易で、精製時のロスも抑えられる。また、使用する酢酸金属塩は水に対する溶解度が高いため、少量の水性媒体に溶解させることができ、反応に用いる装置の巨大化も抑えることができる。
したがって、本発明の製造方法を用いると、α−オキソカルボン酸の金属塩を製造効率良く、かつ高収率で得ることができる。すなわち、本発明のα−オキソカルボン酸の金属塩の製造方法は、工業的にとても有用な製造方法である。
【0037】
さらに、本発明の製造方法により得られたα−オキソカルボン酸の金属塩は、アセトアセチル化ポリビニルアルコールの架橋剤や熱硬化性樹脂の架橋剤として有効に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
α−オキソカルボン酸と酢酸金属塩とを水性媒体中で混合する工程を有することを特徴とするα−オキソカルボン酸の金属塩の製造方法。
【請求項2】
α−オキソカルボン酸がグリオキシル酸であることを特徴とする請求項1記載のα−オキソカルボン酸の金属塩の製造方法。
【請求項3】
酢酸金属塩を構成する金属元素がアルカリ土類金属元素、第12族元素、又は遷移金属元素であることを特徴とする請求項1又は2記載のα−オキソカルボン酸の金属塩の製造方法。
【請求項4】
アルカリ土類金属元素がカルシウムあることを特徴とする請求項3記載のα−オキソカルボン酸の金属塩の製造方法。
【請求項5】
第12族元素が亜鉛であることを特徴とする請求項3記載のα−オキソカルボン酸の金属塩の製造方法。
【請求項6】
遷移金属元素が銅であることを特徴とする請求項3記載のα−オキソカルボン酸の金属塩の製造方法。

【公開番号】特開2010−95516(P2010−95516A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−209497(P2009−209497)
【出願日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【出願人】(000004101)日本合成化学工業株式会社 (572)
【Fターム(参考)】