説明

α−不飽和アミン化合物の分離精製方法

【課題】殺虫、殺ダニ作用を有する農薬成分として有用なα-不飽和アミン化合物の精製方法を提供すること。
【解決手段】式(1)


(式中、R1は、水素原子、C1-4アルキル基等を表し、R2は、水素原子、C1-4アルキル基等を表し、R3は、水素原子、C1-5アルキル基等を表す。)で示されるα-不飽和アミン化合物の粗製物から式(1)の化合物を水で抽出する工程、および当該工程で得られた式(1)の化合物を含む水溶液から式(1)のα-不飽和アミン化合物をピリジン系溶媒で抽出して式(1)の化合物のピリジン系溶媒溶液を得る工程からなる式(1)のα-不飽和アミン化合物の精製方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農薬成分として有用な殺虫、殺ダニ作用を有するα-不飽和アミン化合物の分離精製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
α-不飽和アミン化合物は農薬成分として有用な化合物であり、例えば特許文献1にその殺虫活性が記載されている。
【0003】
有機合成的手法によってα-不飽和アミン化合物を合成する際には往々にして副生成物の生成や原料化合物の残存がみられる。例えば、特許文献2においては、α-不飽和アミン化合物を含む反応混合物を濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによる分離精製方法が開示されているが、工業的規模での製造に適した方法であるとは言い難い。特許文献3においては、反応マスを分液後、クロロホルムを用いてα-不飽和アミン化合物を抽出し、酢酸エチルを添加して晶析することによる分離精製方法が記載されている。しかしながら、クロロホルム等の塩素系有機溶媒は人体や環境に対する影響が懸念されている。このように従来の方法は、工業的規模での製造には不向きであったり、環境問題に対する配慮が十分ではないなど、必ずしも満足な分離精製方法であるとは言い難い。
【0004】
【特許文献1】特許第2551392号公報
【特許文献2】特許第2551393号公報
【特許文献3】特許第3048370号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これまでα-不飽和アミン化合物を分離精製する方法としてこのような手法に頼らざるを得なかった要因の一つには、α-不飽和アミン化合物が高水溶性であり、かつ一般的な有機溶媒に対する溶解度が極めて低いため、塩素系有機溶媒以外では十分な抽出効率が得られなかったことが挙げられる。
【0006】
そこで本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、溶媒としてピリジン誘導体を用いることにより、工業的規模での製造にも適したα-不飽和アミン化合物を分離精製する方法を見出し、本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明は、式(1)


(式中、R1は、水素原子、C1-4アルキル基、ハロC1-4アルキル基、C1-4アルコキシ−C1-4アルキル基、C7-9アラルキル基、または置換していてもよいフェニル基を表し、R2は、水素原子、C1-4アルキル基またはC7-9アラルキル基を表し、R3は、水素原子、C1-5アルキル基、ハロC1-4アルキル基、ヒドロキシC1-4アルキル基、C1-4アルコキシ−C1-4アルキル基、C2-4アルケニル基、またはC7-9アラルキル基を表す。)
で示されるα-不飽和アミン化合物の粗製物から式(1)の化合物を水で抽出する工程、および当該工程で得られた式(1)の化合物を含む水溶液から式(1)のα-不飽和アミン化合物をピリジン系溶媒で抽出して式(1)の化合物のピリジン系溶媒溶液を得る工程からなる式(1)のα-不飽和アミン化合物の精製方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の製造方法によれば、殺虫剤有効成分として有用な式(1)で示されるα-不飽和アミン化合物を、塩素系溶媒を必要とせず、かつ工業的規模での製造にも適した方法で分離精製することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明について説明する。
式(1)において、R1で表されるC1-4アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基などが挙げられる。
【0010】
ハロC1-4アルキルとしてはたとえばモノクロロメチル基、ジクロロメチル基、トリクロロメチル基、モノフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、2−クロロエチル基、2,2,2−トリクロロエチル基、2−フルオロエチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、1,1,2,2−テトラフルオロエチル基などのフッ素、塩素もしくは臭素等で置換されたC1-4アルキル基が例示される。
C1-4アルコキシ−C1-4アルキル基としては例えばメトキシメチル基、エトキシメチル基、1−又は2−メトキシエチル基、3−メトキシプロピル基などが挙げられる。
C7-9アラルキルとしてはベンジル基、4−メチルベンジル基、フエネチル基、4−メチルフエネチル基などが挙げられる。
【0011】
置換されていてもよいフェニル基としては例えばフェニル基、又は1〜4個のハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素またはヨウ素)、C1-3アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基等)、C1-3アルコキシ(メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等)、アミノ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基等で置換されたフェニル基などが挙げられる。
【0012】
式(1)において、R2で表されるC1-4アルキル基およびC7-9アラルキル基としては、R1で例示したものと同様のものが挙げられる。
【0013】
式(1)において、R3で表されるC1-5アルキル基としては、例えば、R1で例示されたC1-4アルキル基のほかアミル基などが挙げられる。ハロC1-4アルキル基、C1-4アルコキシ−C1-4アルキル基、およびC7-9アラルキル基としては、たとえばR1で例示されたものと同様のものが挙げられる。ヒドロキシC1-4アルキル基としては、例えば、ヒドロキシメチル基、1−または2−ヒドロキシエチル基、あるいは3−ヒドロキシプロピル基などが挙げられる。C2-4アルケニル基としてはたとえばビニル基、アリル基、あるいはイソプロペニル基などが挙げられる。本発明の方法においては、式(1)において、R1が、水素原子、C1−4アルキル基、またはハロC1−4アルキル基であり、R2が、水素原子またはC1−4アルキル基であり、R3が、水素原子、C1−4アルキル基、またはハロC1−4アルキル基である化合物が好ましく、R1およびR2が、C 1-4アルキル基であり、R3が、水素原子である化合物がさらに好ましい。
【0014】
式(1)のα-不飽和アミン化合物の粗製物は、通常は、例えば、特許文献3に記載された下記スキーム1の方法により得られる。


(スキーム1)
スキーム1の反応において、式(2)で表される1,1-ジクロロ-2-ニトロエテンに対し、式(3)のピリジルメチルアミン化合物を先に反応させてもよいし、式(4)のアミン化合物を先に反応させてもよい。すなわち、式(1)のα-不飽和アミン化合物の粗製物は、通常、式(2)で表される1,1-ジクロロ-2-ニトロエテンに式(3)で表されるピリジルメチルアミン化合物を反応させ、次いで、得られる生成物に式(4)で表されるアミン化合物を反応させるか、または、式(2)の1,1-ジクロロ-2-ニトロエテンに式(4)のアミン化合物を反応させ、次いで得られる生成物に式(3)のピリジルメチルアミン化合物を反応させて得られる。ピリジルメチルアミン化合物(3)およびアミン化合物(4)の反応順序は、どちらからでも差し仕えないが、一級アミンと二級アミンの組合せの場合、二級アミンを先に反応させる方が好ましい。
【0015】
当該反応は、有機溶媒中で行うことが好ましく、用いられる有機溶媒としてはたとえばヘキサン、ヘプタン、石油エーテル、リグロイン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロルベンゼン等の芳香族炭化水素類、イソプロパノール、tert−ブタノール等のアルコール類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、2−メチルテトラヒドロフラン等のエーテル類、ジ−n−ブチルケトン等のケトン類、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル類を用いることが出来る。好ましくは酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル類である。
【0016】
本反応は塩基の存在下行うのが好ましく、この様な塩基としてはたとえばトリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、ピリジン、コリジン、キノリン、ジメチルアニリン、メチルジシクロヘキシルアミン、1,5−ジアザビシクロ〔4,3,0〕ノン−5−エン、1,4−ジアザビシクロ〔2,2,2〕オクタン、1,8−ジアザビシクロ〔5,4,0〕−7−ウンデセン、3,4−ジヒドロ−2H−ピリド〔1,2−a〕ピリミジン−2−オンなどの有機塩基、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウムなどの無機塩基、酢酸ナトリウム、酢酸カリウムなどのカルボン酸塩などが用いられる。好ましくは炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの無機塩基である。塩基の使用量は式(2)の化合物に対し2〜5当量、好ましくは2〜3当量である。又反応に用いる式(4)のアミノ化合物自体を塩基として用いてもよい。塩基の反応系への添加時期は反応に支障のないかぎり特に限定されない
【0017】
反応は一般には−80℃から120℃の範囲で選びうるが、好ましくは−40℃以上であり、特に−20から50℃が適当である。反応時間は特に限定されないが、一般には5分間ないし5時間程度で終了する。
【0018】
かかる反応により得られる粗製物には、通常、反応で使用された溶媒と式(1)で示されるα-不飽和アミン化合物のほかに、親油性副生物(式(3)もしくは式(5)の化合物もしくは両者の混合物等)、または親水性副生物(式(4)もしくは(6)の化合物もしくは両者の混合物等)が含まれる。かかる反応粗製物から目的とするα-不飽和アミン化合物を高純度かつ選択的に取得する方法としては、例えば以下に示す1)、2)および3)の工程からなる方法が挙げられる。


【0019】
1)式(1)のα-不飽和アミン化合物の粗製物からα-不飽和アミン化合物および親水性副生物(式(4)もしくは(6)の化合物もしくは両者の混合物等)を水で抽出し、有機層側に親油性副生物(式(3)もしくは式(5)の化合物もしくは両者の混合物等)を除去する工程、
2)水層からα-不飽和アミン化合物をピリジン系溶媒で抽出し、水層側に親水性副生(式(4)もしくは(6)の化合物もしくは両者の混合物等)を除去する工程、および
3)得られたピリジン系溶媒の層からα-不飽和アミン化合物を晶析し、濾別して目的のα-不飽和アミン化合物を取得する、あるいはピリジン系溶媒を蒸留等の手法を用いて分離除去し、目的のα-不飽和アミン化合物を取得する工程。
【0020】
1)の工程において、抽出の際に使用する水の量は、式(1)のα-不飽和アミン化合物に対し、通常、0.5〜10重量倍、好ましくは1〜5重量倍である。
2)の工程において使用するピリジン系溶媒としては、たとえばピリジン、2-アセチルピリジン、2-アミノピリジン、2-ブロモピリジン、4-t-ブチルピリジン、2,4,6-コリジン、2-シアノピリジン、4-ジメチルアミノピリジン、2-ジフェニルホスフィノ-6-メチルピリジン、2,3-ジメチルピリジン、2,4-ジメチルピリジン、2,6-ジメチルピリジン、3,4-ジメチルピリジン、3,5-ジメチルピリジン、2,6-ジメトキシピリジン、2-フェニルピリジン、2-ピコリン、2-ビニルピリジン、4-ビニルピリジン、2-エチルピリジン、4-エチルピリジン、2,6-ジフェニルピリジン、2−(p−トリル)ピリジン、5−エチル−2−メチルピリジンなどが挙げられる。好ましくは水と不混和性の2,4,6-コリジン、2,6-ジメチルピリジン、2,6-ジフェニルピリジン、5−エチル−2−メチルピリジンである。
【0021】
ピリジン系溶媒の使用量は式(1)のα-不飽和アミン化合物に対し0.5〜50重量倍、好ましくは1〜20重量倍、より好ましくは2〜10重量倍である。
【0022】
1)の工程及び2)の工程における抽出は、通常、−10℃から120℃の範囲の温度にで、使用する溶媒の沸点以下の温度で実施され、特に−5℃から60℃が好ましい。抽出回数は特に限定されないが、抽出回数が多いほど目的のα-不飽和アミン化合物の回収率は高くなる。一般には2ないし5回程度である。また、ミキサーセトラ等の多段階抽出、連続抽出の手法を用いることもできる。
【0023】
ピリジン系溶媒で抽出したα-不飽和アミン化合物はピリジン溶媒を蒸留等によって留去することによって溶媒から分離することもできるが、α-不飽和アミン化合物が固体の場合は晶析濾過により分離することもできる。通常は、晶析濾過により分離する方が、より高純度のα-不飽和アミン化合物を得ることができる。
【0024】
晶析方法としては、温度を下げることによりα-不飽和アミン化合物の溶解度を低下させて結晶を析出させる冷却晶析、溶媒を留去してα-不飽和アミン化合物の濃度を過飽和状態にして結晶を析出させる濃縮晶析、α-不飽和アミン化合物の溶解度が低い溶媒を加えることによりα-不飽和アミン化合物を過飽和状態にして結晶を析出させる貧溶媒添加晶析などがあり、さらに連続式、バッチ式の晶析方法があるが、いずれを用いてもよい。また、これらを組み合わせて晶析を行なってもよい。
【0025】
上記晶析方法において種晶を添加してもよい。種晶添加のタイミングはα-不飽和アミン化合物の溶解度が飽和点に達した時点、もしくはやや過飽和になった時点が好ましく、大きな過飽和状態が崩れて急激な析出が起こることによる結晶粒径のばらつきや品質の低下を防ぐ効果が期待できる。種晶の添加量は特に限定されないが最終的に得られる結晶量の0.01〜10重量%が望ましく、さらには0.05〜2重量%が望ましい。
【0026】
晶析の温度は特に制限されないが、通常使用する溶媒の融点以上沸点以下であり、−40℃から180℃、好ましくは−20℃から120℃、より好ましくは−10℃から60℃で実施できる。
【0027】
貧溶媒添加晶析に用いられる貧溶媒としてはたとえばヘキサン、石油エーテル、リグロイン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロルベンゼン等の芳香族炭化水素類、イソプロパノール、tert−ブタノール等のアルコール類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類、メチルエチルケトン等のケトン類、アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類を用いることが出来る。好ましくはヘキサン、ヘプタン、石油エーテル、リグロイン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類である。
【0028】
得られたα-不飽和アミン化合物の結晶スラリーの濾過は、バッチ式、連続式のいずれでもよく、遠心分離機、フィルタープレス、ベルトフィルター、ドラムフィルター等、通常工業的に使用されている濾過機であればいずれでも適用できる。また、必要に応じて結晶をピリジン誘導体あるいは上記に例示した溶媒で洗浄してもよい。
【0029】
濾液中に含まれるα-不飽和アミン化合物は次回以降の晶析にリサイクルすることが出来る。リサイクルの方法としては晶析マスにそのまま添加してもよいし、溶媒を留去して濃縮後に添加してもよい。また、水や他の有機溶媒でα-不飽和アミン化合物を抽出して次バッチにリサイクルしてもよい。
【0030】
得られた湿潤ケークは造粒後乾燥しても、そのまま乾燥してもよい。乾燥機は気流乾燥機、流動相乾燥機、回転乾燥機等を用いることが出来る。
【実施例】
【0031】
次に、参考例、実施例および応用例を挙げて、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるべきものではない。
【0032】
参考例1
1,1,1-トリクロロ-2-ニトロエタンの合成


500ml丸底フラスコに35%塩酸を241.6g仕込み、15℃に冷却後、69%硝酸216.5gを1時間かけて滴下した。この反応混合液を15℃で2時間攪拌した後に反応容器の気相部分を窒素で置換して副生したNOxガスを排出した。反応混合液の温度を10℃に下げ、1,1-ジクロロエテン173.0gを3時間かけて滴下した。この反応混合液を10℃で2時間攪拌した後、15℃に昇温してさらに1.5時間攪拌してから水層を分液して除いた。
得られた緑色の有機層を80℃に昇温して4時間攪拌することにより、噛み込んでいるNOxガス、HClガスを除去し、304.3gの青色溶液を得た。この溶液をガスクロマトグラフィーで分析したところ、1,1,1-トリクロロ-2-ニトロエタンが208.5g含まれていた。収率63.6%(1,1-ジクロロエテン基準)。
【0033】
参考例2
1,1-ジクロロ-2-ニトロエテンの合成


参考例1で得た1,1,1-トリクロロ-2-ニトロエタン溶液245.7g(1,1,1-トリクロロ-2-ニトロエタン純分168.3g)と水687.9gを1L丸底フラスコに仕込み、73℃に昇温して8時間攪拌した。この反応混合液を30℃に冷却後、水層を分液して除いて136.2gの黄色溶液を得た。この溶液をガスクロマトグラフィーで分析したところ、1,1-ジクロロ-2-ニトロエテンが121.0g含まれていた。収率90.4%(1,1,1-トリクロロ-2-ニトロエタン基準)。
【0034】
実施例1
(1E)-N-[(6-クロロ-3-ピリジニル)メチル]-N-エチル-N'-メチル-2-ニトロ-1,1-エテンジアミンの合成(1バッチ目)
1Lセパラブルフラスコに酢酸n−ブチル352.0gと35%炭酸カリウム水溶液102.9gを仕込んだ。この溶液を−4℃に冷却し、攪拌下に1,1-ジクロロ-2-ニトロエテン48.8g(純分40.6g)を30分かけて滴下し、続いて2-クロロ-5-(エチルアミノメチル)ピリジン44.8g(純分44.4g)を3時間かけて滴下した。この反応混合液を−4℃で15分攪拌した後に40%メチルアミン水溶液60.6gを3時間かけて滴下し、さらに4時間攪拌した。
得られた反応混合液を15℃に昇温して、水51.5g、40.3g、30.0g、30.0gで計4回抽出し、得られた4つの抽出水層を合一した。この合一水層を5-エチル-2-メチルピリジン75.0gで4回、15℃で抽出し、得られた4つの抽出5-エチル-2-メチルピリジン層を合一した(回収水層1量247.8g)。この合一5-エチル-2-メチルピリジン層を飽和硫酸ナトリウム水50.0gで洗浄後(回収水層2量66.0g)、n−ヘプタン800gを加え、4.5kPa、25〜35℃で残液量が345gになるまで濃縮した。この濃縮マスに20.0gの5-エチル-2-メチルピリジンを加えて40℃で1時間保温してから濾過し、不溶物を除去した。
得られた濾液を10.0gの5-エチル-2-メチルピリジンで500mlセパラブルフラスコに洗いこみ、35℃に調温後、(1E)-N-[(6-クロロ-3-ピリジニル)メチル]-N-エチル-N'-メチル-2-ニトロ-1,1-エテンジアミンの種晶0.01gを加え、5時間かけて15℃まで冷却、つづいて10時間かけて−10℃間で冷却して晶析した。この晶析マスを−10℃でさらに3時間攪拌してから濾過した(回収濾液量304.1g)。得られた結晶を−10℃に冷却した酢酸n−ブチル300.0gで洗浄した(回収洗液量305.9g)。洗浄後の結晶を2.7kPa、40℃で4時間乾燥し、45.3g、含量98.9%の(1E)-N-[(6-クロロ-3-ピリジニル)メチル]-N-エチル-N'-メチル-2-ニトロ-1,1-エテンジアミンを得た。
【0035】
(1E)-N-[(6-クロロ-3-ピリジニル)メチル]-N-エチル-N'-メチル-2-ニトロ-1,1-エテンジアミンの回収
247.8gの回収水層1を5-エチル-2-メチルピリジン75.0gで2回抽出し、抽出5-エチル-2-メチルピリジン層1と2を各86.7g、85.7g得た。
66.0gの回収水層2を5-エチル-2-メチルピリジン75.0gで抽出し、抽出5-エチル-2-メチルピリジン層3を84.0g得た。
302.8gの回収洗液を51.0g、40.0g、30.0gの水で3回抽出し、抽出水層1、2、3を各47.3g、41.0g、30.5g得た。
【0036】
実施例2
(1E)-N-[(6-クロロ-3-ピリジニル)メチル]-N-エチル-N'-メチル-2-ニトロ-1,1-エテンジアミンの合成(2バッチ目)
1Lセパラブルフラスコに酢酸n−ブチル351.9gと35%炭酸カリウム水溶液102.7gを仕込んだ。この溶液を−4℃に冷却し、攪拌下に1,1-ジクロロ-2-ニトロエテン48.8g(純分40.6g)を30分かけて滴下し、続いて2-クロロ-5-(エチルアミノメチル)ピリジン44.8g(純分44.4g)を3時間かけて滴下した。この反応混合液を−4℃で15分攪拌した後に40%メチルアミン水溶液60.6gを3時間かけて滴下し、さらに4時間攪拌した。
得られた反応混合液を15℃に昇温して、実施例1で得た抽出水層1、2、3(各46.0g、39.8g、30.0g)および水30.0gで計4回抽出し、得られた4つの抽出水層を合一した。この合一水層を実施例1で得た抽出5-エチル-2-メチルピリジン層1、2、3(各84.5g、83.9g、82.4g)および5-エチル-2-メチルピリジン75.0gで4回、15℃で抽出し、得られた4つの抽出5-エチル-2-メチルピリジン層を合一した(回収水層1量269.8g)。この合一5-エチル-2-メチルピリジン層を飽和硫酸ナトリウム水50.0gで洗浄後(回収水層2量72.4g)、n−ヘプタン800gを加え、4.5kPa、25〜35℃で残液量が321gになるまで濃縮した。この濃縮マスに51.2gの5-エチル-2-メチルピリジンを加えて40℃で1時間保温してから濾過し、不溶物を除去した。
得られた濾液を10.0gの5-エチル-2-メチルピリジンで500mlセパラブルフラスコに洗いこみ、35℃に調温後、n−ヘプタン20.0gを10分かけて滴下した。このマスに(1E)-N-[(6-クロロ-3-ピリジニル)メチル]-N-エチル-N'-メチル-2-ニトロ-1,1-エテンジアミンの種晶0.01gを加え、5時間かけて15℃まで冷却、つづいて10時間かけて−10℃間で冷却して晶析した。この晶析マスを−10℃でさらに3時間攪拌してから濾過した(回収濾液量332.06g)。得られた結晶を−10℃に冷却した5-エチル-2-メチルピリジン/n−ヘプタン(9/1重量比)60.0gで洗浄し、続いて−10℃に冷却したn−ヘプタン200.0gで洗浄した(回収洗液量264.87g)。洗浄後の結晶を2.7kPa、40℃で4時間乾燥し、53.54g、含量99.0%の(1E)-N-[(6-クロロ-3-ピリジニル)メチル]-N-エチル-N'-メチル-2-ニトロ-1,1-エテンジアミンを得た。
【0037】
(1E)-N-[(6-クロロ-3-ピリジニル)メチル]-N-エチル-N'-メチル-2-ニトロ-1,1-エテンジアミンの回収
269.8gの回収水層1を5-エチル-2-メチルピリジン75.0gで2回抽出し、抽出5-エチル-2-メチルピリジン層1と2を各87.6g、87.6g得た。
72.4gの回収水層2を5-エチル-2-メチルピリジン75.0gで抽出し、抽出5-エチル-2-メチルピリジン層3を87.3g得た。
328.6gの回収濾液と260.5gの回収洗液を混合した後に71.3g、40.1g、30.1gの水で3回抽出し、抽出水層1、2、3を各52.0g、46.7g、33.4g得た。
【0038】
実施例3
(1E)-N-[(6-クロロ-3-ピリジニル)メチル]-N-エチル-N'-メチル-2-ニトロ-1,1-エテンジアミンの合成(3バッチ目)
1Lセパラブルフラスコに酢酸n−ブチル351.9gと35%炭酸カリウム水溶液102.7gを仕込んだ。この溶液を−4℃に冷却し、攪拌下に1,1-ジクロロ-2-ニトロエテン48.8g(純分40.6g)を30分かけて滴下し、続いて2-クロロ-5-(エチルアミノメチル)ピリジン44.8g(純分44.4g)を3時間かけて滴下した。この反応混合液を−4℃で15分攪拌した後に40%メチルアミン水溶液60.6gを3時間かけて滴下し、さらに4時間攪拌した。
得られた反応混合液を15℃に昇温して、実施例2で得た抽出水層1、2、3(各50.3g、45.2g、31.9g)および水30.0gで計4回抽出し、得られた4つの抽出水層を合一した。この合一水層を実施例2で得た抽出5-エチル-2-メチルピリジン層1、2、3(各85.5g、85.6g、90.4g)および5-エチル-2-メチルピリジン75.0gで4回、15℃で抽出し、得られた4つの抽出5-エチル-2-メチルピリジン層を合一した。この合一5-エチル-2-メチルピリジン層を飽和硫酸ナトリウム水50.0gで洗浄後、n−ヘプタン800gを加え、4.5kPa、25〜35℃で残液量が350.6gになるまで濃縮した。この濃縮マスに20.0gの5-エチル-2-メチルピリジンを加えて40℃で1時間保温してから濾過し、不溶物を除去した。
得られた濾液を10.0gの5-エチル-2-メチルピリジンで500mlセパラブルフラスコに洗いこみ、35℃に調温後、n−ヘプタン20.0gを10分かけて滴下した。このマスに(1E)-N-[(6-クロロ-3-ピリジニル)メチル]-N-エチル-N'-メチル-2-ニトロ-1,1-エテンジアミンの種晶0.01gを加え、5時間かけて15℃まで冷却、つづいて10時間かけて−10℃間で冷却して晶析した。この晶析マスを−10℃でさらに3時間攪拌してから濾過した。得られた結晶を−10℃に冷却した5-エチル-2-メチルピリジン/n−ヘプタン(9/1重量比)60.0gで洗浄し、続いて−10℃に冷却したn−ヘプタン200.0gで洗浄した。洗浄後の結晶を2.7kPa、40℃で4時間乾燥し、61.42g、含量99.2%の(1E)-N-[(6-クロロ-3-ピリジニル)メチル]-N-エチル-N'-メチル-2-ニトロ-1,1-エテンジアミンを得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)


(式中、R1は、水素原子、C1-4アルキル基、ハロC1-4アルキル基、C1-4アルコキシ−C1-4アルキル基、C7-9アラルキル基、または置換していてもよいフェニル基を表し、R2は、水素原子、C1-4アルキル基またはC7-9アラルキル基を表し、R3は、水素原子、C1-5アルキル基、ハロC1-4アルキル基、ヒドロキシC1-4アルキル基、C1-4アルコキシ−C1-4アルキル基、C2-4アルケニル基、またはC7-9アラルキル基を表す。)
で示されるα-不飽和アミン化合物の粗製物から式(1)の化合物を水で抽出する工程、および当該工程で得られた式(1)の化合物を含む水溶液から式(1)のα-不飽和アミン化合物をピリジン系溶媒で抽出して式(1)の化合物のピリジン系溶媒溶液を得る工程からなる式(1)のα-不飽和アミン化合物の精製方法。
【請求項2】
式(1)の化合物のピリジン系溶媒溶液から式(1)のα-不飽和アミン化合物を結晶として単離する、さらなる工程を含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
式(1)のα-不飽和アミン化合物の粗製物が、式(2)


で表される1,1-ジクロロ-2-ニトロエテンに式(3)



(式中、R1は、前記のとおり。)
で表されるピリジルメチルアミン化合物を反応させ、次いで、得られる生成物に式(4)

(式中、RおよびR3は前記のとおり。)
で表されるアミン化合物を反応させるか、または、式(2)の1,1-ジクロロ-2-ニトロエテンに式(4)のアミン化合物を反応させ、次いで得られる生成物に式(3)のピリジルメチルアミン化合物を反応させて得られる粗製物である請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
R1が、水素原子、C1−4アルキル基、またはハロC1−4アルキル基であり、R2が水素原子またはC1−4アルキル基であり、R3が、水素原子、C1−4アルキル基、またはハロC1−4アルキル基である、請求項1、2または3に記載の方法。
【請求項5】
R1およびR2がC 1-4アルキル基であり、R3が水素原子である、請求項1、2、3または4に記載の方法。
【請求項6】
ピリジン系溶媒が5−エチル−2−メチルピリジンである、請求項1から5の何れかに記載の方法。

【公開番号】特開2009−57378(P2009−57378A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−203963(P2008−203963)
【出願日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】