説明

αウイルス由来ベクターを含むウイルス粒子、ならびに前記ウイルス粒子の調製方法

【課題】
【解決手段】αウイルス非由来構造成分で構成され、構造遺伝子の少なくとも1つの遺伝子導入による欠失または置換により、複製欠損にされたαウイルス由来ベクターを含むウイルス粒子であって、前記粒子の構造成分がαウイルス由来ベクターのゲノムによってコードされないことを特徴とする粒子。αウイルス非由来構造成分およびαウイルス由来ベクターをコードする遺伝子を細胞株内でトランス発現し、次に、細胞培養の上清内に存在するウイルス粒子を回収することから成る前記粒子の産生方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自己増殖にしたがって複製のために不全化されたαウイルス由来ベクターを含む新しいウイルス粒子に関する。本発明はまた前記ウイルス粒子の調製方法にも関する。
【0002】
以下の記述においては、本発明は特に、αウイルスのカテゴリーに入るセムリキ森林熱ウイルス(SFV)との関係で記述する。もちろんこの特定の例は本発明の範囲を何ら限定するものではなく、たとえばシンドビスウイルス等あらゆるαウイルスを想定することができる。
【背景技術】
【0003】
αウイルスのゲノムは、二つの読み取りのためのフェーズ、すなわち酵素機能タンパク質をコードする第一フェーズと、構造タンパク質をコードする第二フェーズを含むプラス極性の一本鎖RNAの形状を有する。複製は細胞の細胞質内で行われる。感染サイクルの第一段階では、ゲノムRNAの5’末端が、ゲノムRNAの相補マイナス鎖を生成するRNA−ポリメラーゼ作用ポリタンパク質(nsP1−4)に翻訳される。第二段階では2つのRNA、すなわち
‐ 翻訳により他のnspタンパク質を生成しウイルスに対しゲノムとなる二次ウイルスゲノムに相当するプラスゲノムRNA
‐ 感染粒子を形成するウイルスの構造タンパク質をコードするサブゲノムRNA
の生成のための鋳型としてマイナス鎖が使用される。
【0004】
より詳細には、サブゲノムRNAは、nsp4タンパク質をコードするRNA配列の3’末端のレベルに存在するp26Sプロモーターから転写される。プラスゲノムRNA/サブゲノムRNA比は、タンパク質がタンパク質分解によりnsp1、nsp2、nsp3およびnsp4に自己切断することにより制御される。実際にはウイルス遺伝子の発現は2つの段階で行われる。第一段階ではプラスゲノム鎖とマイナス鎖の主合成がある。第二段階では、サブゲノムRNA合成がほぼ独占的になり、その結果、大量の構造タンパク質が生成される。
【0005】
αウイルスの複製様式が判明したことならびにそのゲノムが単純であることにより、これらのウイルスを使用し、標的細胞内で導入遺伝子の発現を得ることができる遺伝子導入システムが出現した。
【0006】
遺伝子治療においてαウイルス由来ベクターを使用できるようにする際に避けて通れない条件の1つは、このベクターが自己複製する能力をもたないということである。セムリキウイルスを複製に対し欠損がある状態にするために複数の方法が提案されている。
【0007】
第一の方法は、導入遺伝子をp26Sプロモーターに依存させた状態で、導入遺伝子のためにセムリキRNAの構造遺伝子を除去することを内容とする。そのようなベクターはRNAの形態またはDNAの形態で細胞に導入することができる。しかしながら、粒子がない状態で使用される遺伝因子を用いることにより、導入効率が低い限り、この方法は生体内への適用に関してはほとんど有利性はない。
【0008】
別の方法は、単体のDNAまたはRNAの形態ではなく組み換えウイルス粒子の形態のセムリキベクターで標的細胞を感染させるものである。これを行うために、少なくとも2つのプラスミド、すなわち構造遺伝子を欠くセムリキベクターのRNAを保有する第一プラスミドと、p26Sプロモーターに依存するセムリキ構造遺伝子を保有する第二プラスミドとで細胞株をトランスフェクトする。細胞の中心には、欠損RNA、すなわちそれだけが、nsP2の配列内に含まれているカプシド配列も含むため、導入遺伝子を保有するセムリキRNAが形成される。理論上はこの方法によって複製粒子は発生しないが、特に相補配列と組み換えウイルスが重畳すること、および産生細胞の細胞質内にウイルスRNAが豊富にあることにより、組み換えの発生は依然として頻繁である。
【0009】
Rollsの文献(1、2)(非特許文献1,2)は、構造遺伝子を、VSV−Gエンベロープをコードし、場合によっては導入遺伝子に関連付けられた遺伝子に置換することによりゲノムが変更されたSFVベクターについて記述している。したがって、このようにして得られた感染粒子はVSV−Gエンベロープで構成され、αウイルスを欠いたベクターを含む。しかしながら、記述されているシステムは、自立的に自己複製するその能力のため、きわめて危険である。また文献WO03/072771(特許文献1)には同等のシステムが記述されている。
【0010】
Lebedevaらの文献(3)(非特許文献3)は、
‐ 複製機能を確保するベクター(Srepβgal:セムリキベクター(SFV)レプリカーゼをコードする遺伝子、ならびに導入遺伝子としてのβ‐ガラクトシダーゼ)
‐ 構造遺伝子をコードするベクター:カプシドをコードするScapSenv、ならびに対照としてのSFVのエンベロープ、あるいはSFVのenvがMLV(Molney murine leukemia)レトロウイルスのenv配列に置換される由来ベクター
によるBHK細胞のコエレクトロポレーション、およびこのようにして生成されるウイルス粒子の分析について記述している。しかしながら、このシステムにおいては、導入遺伝子、ここではβ‐ガラクトシダーゼの導入遺伝子を運ぶSFVベクターの移動は、SFVカブシドのタンパク質によるこの組み換えゲノムRNAのカプシド化の従属下にある。
【0011】
【特許文献1】WO03/072771
【非特許文献1】Rolls, M.M., Webster, P., Balba, N.H.& Rose, J.K. 「自己複製RNAからの水疱性口内炎ウイルス糖タンパク質の発現により生成される新種の感染粒子」 Cell 79, 497-506 (1994).
【非特許文献2】Rolls, M.M., Haglund, K. & Rose, J.K. 「最小RNAウイルス由来ベクターにおける付加遺伝子の発現」 Virology 218, 406-411 (1996).
【非特許文献3】Lebedeva, L., Fujita, K., Nihrane, A. & Silver, J. 「マウス白血病ウイルスエンベロープをコードするセムリキ森林熱ウイルスベクター由来感染粒子」 Journal of Virology 71(9), 7061-7067. (1997).
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
言い換えれば、本発明が解決しようとする課題は、αウイルス、特にセムリキ森林熱ウイルス(SFV)由来ベクターの移動方法を改善し、その結果、複製粒子を生成することができる産生株内におけるあらゆる組み換えのリスクを防止することである。
【0013】
本発明が解決しようとする別の課題は、指向性が天然ウイルスの標的細胞に限定されないαウイルス由来ベクターを含むウイルス粒子を調製することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
出願人は、αウイルス非由来構造成分をコードする遺伝子、ならびに複製欠損にされたαウイルス由来ベクターを細胞株内でトランス発現させることにより、上の2つの目的を同時に満たすウイルス粒子を生成することに成功した。
【0015】
一実施形態によれば、αウイルス非由来構造成分は、VSV−Gエンベロープタンパク質をコードする水泡性口内炎のウイルスの単体ENV遺伝子に相当する。
【0016】
VSV−Gエンベロープを使用するといくつもの長所がある。まず、水泡性口内炎のウイルスのエンベロープタンパク質により、αウイルスに重畳可能なエンドサイトーシスによる細胞侵入法を行うことができる。またVSV−Gはきわめて安定で、超遠心分離法により濃縮することができ、非経口的投与を行うことが可能になる。またこのタンパク質により、このタンパク質を含む粒子に対しきわめて強い指向性が付与され、その結果、本発明のウイルス粒子の使用範囲がショウジョウバエからほ乳類まで様々な生物に拡大される。
【0017】
この第一の実施形態によれば、トランス発現は、有利な点は異なる2つの段階でおこなわれる共トランスフェクション、すなわちVSV−Gエンベロープの遺伝子を発現するプラスミドによる株のトランスフェクション、ついで、αウイルス由来ベクターによる第二トランスフェクション、により得られる。実際には、共トランスフェクションは293T細胞上で行われる。
【0018】
第二の実施形態によれば、αウイルス非由来構造成分をコードする遺伝子はレトロウイルスの構造タンパク質をコードする遺伝子に相当する。
【0019】
この場合、トランス発現が、αウイルス由来ベクターによる、複製欠陥レトロウイルスを生産するカプシド化細胞株のトランスフェクションにより得られる。この種の株は、たとえばPhenix(登録商標)システム(http://www.stanford.edu/group/nolan/retroviral_systems/phx.html)など、当業者にとっては既知のものである。特にMLV(murine leukermia virus)の構造遺伝子を使用するカプシド化株を使用することができる。
【0020】
既知のように、これらの株はGAGおよびPOL遺伝子を発現する第一プラスミドと、レトロウイルスまたは別のエンベロープをもったウイルス(4)のENV遺伝子を発現する第二プラスミドによる安定トランスフェクションにより得られる。
【0021】
しかしながら、レトロウイルスのGAGおよびPOL遺伝子を発現する第一ウイルス要素と、レトロウイルスのENV遺伝子を発現する第二ウイルス要素およびαウイルス由来ベクターの導入による、たとえば293T細胞などの細胞株の三重トランスフェクションにより、ウイルス粒子を調製することも可能である。
【0022】
特に、インテグラーゼ(IN)および逆転写酵素(RT)をコードするPOL遺伝子の核酸配列の欠失により、突然変異によるトランス相補レトロウイルス配列の欠損的特徴をさらに強調することが可能である。
【0023】
上で記述したような本発明の2つの実施形態においては、αウイルス由来ベクターは複製欠陥にされている。実際にはこの特性は、構造遺伝子の欠失、あるいは構造遺伝子をベクターのゲノムにおいて意味がある導入遺伝子に置換されることにより得られる。
【0024】
別の特徴によれば、αウイルス由来ベクターのゲノムはpsi配列と呼ばれるウイルス粒子によりカプシド化が可能な信号を含む。
【0025】
第一の実施形態によれば、psi配列は、
‐ 5’プライマー: LNCXPsi2a:5’−GGGACCACCGACCCACCACC−3’ および
‐ 3’プライマー: LNCXPsi2b:5’−GATCCTCATCCTGTCTCTTG−3’
というプライマーを基にしたPLNCXベクター(Clontech(登録商標))のPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)法による増幅により得られるMLVベクターの拡大カプシド配列に相当する。
【0026】
有利な点は、psi配列はサイズが縮小され最小配列に相当する。この変更は、psi配列が内部リボソーム侵入部位(IRES)機能をもつことができる場合には有利である。このようにIRES機能によりSFVのp26Sプロモーターをなくすことができ、その結果、ゲノムRNAから導入遺伝子の翻訳が得られる。
【0027】
逆説的だが、出願人は、レトロウイルスのカプシド化信号は必ずしも必要であるとは限らなかったことも証明した。実際、トランスフェクト細胞の細胞質内に見られるセムリキベクターの組み換えRNAの量は、トランスフェクト細胞がレトロウイルス粒子内に優先的にカプシド化されるような量である。この現象は、セムリキウイルスの非構造的タンパク質の発現により誘導される細胞遺伝子消失により際立つ。SFVウイルス複製複合体の細胞内局在性も重要な役割を果たすことがある(5)。その場合、好ましい実施形態においては、ベクターのゲノムはpsi配列を欠く。
【0028】
出願人はまた、セムリキ森林熱ウイルス由来ベクターに基く相補作用システムを用いて生成したレトロウイルス粒子により、上で記述したようなカプシド化レトロウイルス配列を含むベクターを移動させることが可能であることも証明した(11)。このシステムにおいては、1ミリリットルあたり10個程度の粒子の力価が得られることが示されている。また、レトロウイルスカプシド化信号が存在することにより、粒子の力価が1対数分程度改善されることも示されている。これらの粒子は、レセプターを発現する細胞を、使用するレトロウイルスのエンベロープに相当する両種性ウイルス(Pit2)に形質導入するのに有効に使用される。このような所見は、LiおよびGaroff法(11)により生成されるレトロウイルス粒子の生体安全性に直接の影響を及ぼす。この一環として、LiおよびGaroff法により生成された粒子は、10部/mlに近い力価において、レトロウイルスのGAP/POLまたはENV配列を発現する組み換えSFVゲノムを含むことが示されている。
【0029】
出願人はまた、たとえばエレクトロポレーション等、セムリキベクターの組み換えRNA用に通常使用されるトランスフェクション方法は、大きな細胞障害をきたしたことも確認した。エレクトロポレーションよりも穏やかな方法による産生細胞のトランスフェクションが行えるよう、αウイルス由来ベクターが変えられ、たとえばベクターの配列の5’に配置されたCMVプロモーター等、真核生物プロモーターから発現できるようになった。
【0030】
最後に、有利な点は、αウイルスのベクターのp26Sプロモーターは消失される。SFV 26Sm2ベクター、ならびにより少なくはSFV 26Sm1ベクターは、競争によるゲノムRNAのカプシド化を低減することができる検出可能なサブゲノムRNAをもはや発現しなくなる。
【0031】
したがって本発明による粒子は、αウイルス非由来構造成分で構成され、構造遺伝子の少なくとも1つの遺伝子導入による欠失または置換により、複製欠損にされたαウイルス由来ベクターを含むウイルス粒子に相当し、前記粒子の構造成分はαウイルス由来ベクターのゲノムによってコードされることはない。
【0032】
また本発明は生体外で細胞を感染させるためのウイルス粒子の使用にも関する。出願人は、このようにして製造した粒子は、きわめて多種類のヒトおよびヒト以外の真核生物に感染することができたことを示した。
【0033】
本発明は、本発明のウイルス粒子を含む医薬品組成にも関する。
【0034】
同様に、本発明は癌治療用医薬品の製造のためのウイルス粒子の使用にも関する。
【0035】
本発明および本発明によりもたらされる長所は、以下の例から明らかになろう。
【実施例1】
【0036】
例1:VSV−Gエンベロープを発現する細胞株からのウイルス粒子の産生
【0037】
I:方法
【0038】
1:細胞株および細胞培養
‐ 293T/17:ヒトの胚期の腎臓由来の一次株(ATCC CRL−11268)、
‐ Hela:ヒトの細胞株(ATCC CCL−2)、
‐ QM7:ウズラの筋肉由来の株(ATCC CRL−1962)、
‐ LMH:ニワトリの肝臓由来の株(ATCC CRL−2117)、
上の4つの細胞株は10%のウシ胎仔血清(FCS)を含むDMEM(Invitrogen)内で培養される。(Biowest)
‐ HepG2:10%のFCSを含むEM内で培養されるヒト肝癌細胞株(ATCC HB−8065)、
‐ BHK21:5%のFCSおよび8%のトリプトースリン酸水溶液を含むGMEM内で培養されるハムスターの腎臓由来の株(ATCC CCL−10)、
‐ CESC:リファレンス26により得られ培養されるニワトリの胚、
‐ 10%のFCSを含むグレース昆虫細胞用培地(カタログ番号 Invitrogen B85502)内で27℃で培養されるHigh Five細胞、
‐ Sp2/O:10%のFCSを含むRPMI 1640内で培養されるマウスリンパ芽球様細胞株(ATCC CRL1581)
【0039】
2/SFVベクターの作製
SFVベクターの構造を図1に示す。
【0040】
a/26Sm1ベクター
SFVの26S内部プロモーターはpSFV1ベクター(Invitrogen)からPCRにより変異され、このベクターは構造遺伝子を欠き、2つのプライマー、すなわち
‐ 5’‐ATCCTCGA“AGATCT”AGGG‐3’の配列において「“ ”」で表すBglII制限酵素認識部位を含む26Sm1Fプライマー
‐ 5’‐CAAT“ATCGAT”TACTAGCGAACTAATCTAGGA‐3’の配列において「“ ”」で表すClaI制限酵素認識部位を含む26Sm1Rプライマー
が存在すると鋳型として使用される。
【0041】
次に、図2に示すようなp26m1プロモーターに導くためにp26Sプロモーター内にサイレント変異を導入する。次に、このようにして増幅された物質はpIRES2−EGFPプラスミド内でクローン化される(Invitron)(図1)。すると、MLVウイルス由来RSというレトロウイルス配列が突然変異プロモーター26SとIRES配列の間に挿入される。次に、突然変異26S配列、MLVのレトロウイルス配列、およびEGFP遺伝子を含む断片がBglIIおよびHPaIにより切除され、BglIIおよびSmaI制限酵素認識部位間のpSFV1ベクター内にクローン化される。最後に、変質SFVレプリコンを含む10.5kpbの断片が、IE CMVプロモーターと、IRES GFP配列が欠失したpIRES2−EGFPベクター内のSV40pAポリアデニル化信号の間でクローン化される。
【0042】
b/SFV26m2ベクター
内部プロモーターは、2つのプライマー、すなわち第一の26Sm1Fプライマーと、5’‐AT“ATCGAT”TACTAGCGAACTAATCTAATCTACGACCCCCGTAAAGGTGT‐3’の配列において「“ ”」で表す制限酵素認識部位を含む26Sm2Rプライマーが存在すると鋳型として使用されるSFV1プラスミドからPCRにより突然変異される。
26Sm2Rプライマーにより、図2に示すようなp26Sプロモーターの変性が生じる。次に、増幅された物質はBglIIおよびClaIにより消化され、対応する断片をなくすために同じくBglIIおよびClaIにより消化される26Sm1ベクター内でホスホジエステル結合される。
【0043】
3/SFV26Sm1または26Sm2ベクターによる293T細胞株のトランスフェクションならびにウイルス粒子の回収
カルシウム/リン酸塩(Invitrogen)トランスフェクションキットを使用する293T細胞の一時的トランスフェクションが行われる。293T細胞は、1ウェルあたり8・10の割合で6ウェルプレートに移され、37℃で一晩培養された後、トランスフェクトされる。トランスフェクションは2つの段階で行われる。初日は、IE CMVプロモーターの影響下で、VSV−Gエンベロープをコードする遺伝子を含む5μgのpMDGプラスミドによりトランスフェクトされる(6)。二日目の第二段階では、細胞が5μgのSFV 26Sm1または26Sm2ベクターによりトランスフェクトされる。第二のトランスフェクト培地は13時間から17時間、細胞に接触した状態で放置する。三日目に培地を回収し、感染粒子の放出が可能な新鮮培地に換える。ウイルス粒子を含む培地は5、6時間後に回収する。
【0044】
4/SFV26Sm1または26Sm2ベクターおよびSFV GAGPOLおよびSFV ENVベクターによるBHK21細胞株のトランスフェクションならびにウイルス粒子の回収
BHK21細胞を電圧350V、キャパシタンス750μmにて5・10/ml(すなわち4・10個の細胞)エレクトロポレーションする。エレクトロポレーション用に使用されるRNAは種々のベクター(26Sm1またはm2、SFV GAGPOLおよびSFV ENV)に対応し、SP6ポリメラーゼInvitrogenキットを用いて線状化された1.5μgのDNAを使用することにより転写される。エレクトロポレーションに際しては、22μlの転写産物がエレクトロポレーションされる。組み換え粒子の回収は14時間から16時間後に行われる。上清はろ過され、2μg/mlのポリブレン下で標的細胞に付着される。
【0045】
5/ウイルス粒子による細胞株の感染
トランスフェクションされた293T細胞株の上清が回収され、次に0.45μmフィルター(HA Millex(登録商標)、Millipore)でろ過され、次に、mlあたり5μgの割合で使用されるポリブレン(Sigma)を含む新鮮培地にて種々の細胞株とともに培養される。感染細胞内のGFPの発現の検査はオリンパスIX50蛍光顕微鏡を使用して行われる。トランスフェクションの定量化はBecton DickinsonのフローサイトメトリーFACScalibur(登録商標)を使用して行われる。試験検査用としては種々の試薬中で上清が使用される。
‐ RNAseA 1mlあたり10μg(Sigma)
‐ アクチノマイシンD 1ミリリットルあたり1μg(Sigma)
‐ DNAseI 1ミリリットルあたり100単位(Invitrogen)
‐ ジェネティシン 1ミリリットルあたり1mg(Sigma)
‐ プロマイシン 1ミリリットルあたり3μg(Cayla)
【0046】
6/ウイルス粒子の濃縮
トランスフェクションされた293細胞の上清はSW41ローター内で4℃にて1時間、150000gで遠心分離される。濃縮されたウイルスは300μlのPBSおよび25μlの溶液内で懸濁状態に戻され、この溶液は5・10個の細胞を感染するのに使用される(293T、BHK−21、Hela、HepG2、Sp2/O、LMH、QM7)。
【0047】
7/ノーザン・ブロット
トータルRNA単離システム(Promega(登録商標))を使用してトランスフェクションまたは感染された10個の細胞のRNAを抽出する。非トランスフェクション293T細胞のRNAは対照として抽出される。2μgの各RNAはホルムアルデヒド 変性ゲル上で電気泳動をうけ、RNAはプラスに帯電したナイロン膜に転送される(Hybond−XL;Amersham)。ノーザン・ブロットのハイブリダイゼーションは標準手順に従い行う。センサーはpEGFPC1(Clontech)の790 bp Age I−BamH I GEP断片に対応し、断片はマーキングされ(Rediprime(登録商標)IIDNAlabelling system;Amersham)、使用前に、カラム上で純化される(ProbeQuant(登録商標)G50 Micro Columns;Amersham)。
【0048】
II/結果
【0049】
1/ベクターの機能
SFV 26Sm1および26Sm2ベクターはSFVベクターに相当し、その26Sプロモーターは、SFVのゲノムRNAのパッケージングと、26Sプロモーターの影響下で転写により発生するサブゲノムRNAの間の競争関係を防止するために突然変異されている。2つのベクターの機能は293T細胞のトランスフェクションによりチェックされている。GFPの強力な発現が観察されたことは、変性SFVベクターの転写および翻訳が正しいことを示唆している。次にこの第一の結果は、SFV26Sm1ベクターによりトランスフェクションされた293細胞から抽出されたRNAを基にしたノーザン・ブロット上の分析により確認された。
【0050】
図3の二行目が示すように、GFPセンサーにより、ゲノムRNAおよびサブゲノムRNAに対応する2つのバンドが存在することがわかり、後者は26Sプロモーターがまだ機能していることを示唆している。
【0051】
追加の突然変異を含む第二のSFV 26Sm2ベクター上で同じ試験が実施される。GFPの検出およびノーザン・ブロットによる分析により、26Sm2内にもたらされた突然変異により、転写によるサブゲノムRNAの産生が禁止されることが確認された(図3の三行目を参照のこと)。
【0052】
2/ウイルス粒子の産生
293T細胞はpMDGプラスミド、次に上に示したようにSFV 26Sm1またはSFV 26Sm2ベクターにより、共トランスフェクションされる。トランスフェクションされた細胞の上清は293T新鮮細胞またはBHK21細胞上に移動される。得られたGFPが強くかつ急速に発現したことは、VSV−Gエンベロープを発現する細胞を用いてSFVベクターを移動することが可能であることを示している(図4)。
【0053】
3/得られたウイルスのBHK21、293TおよびQM7細胞株への感染力
結果を下表に示す。
感染から24時間後、FACS分析によりウイルス力価が検出される。感染日における細胞数に対する、GFPを発現する細胞の百分率割合により、組み換え粒子の力価(IP/ml)を計算することが可能である。
【0054】
【表1】

【0055】
この表が示すように、293TおよびQM7細胞と比べ、BHK21細胞で最も高い力価が得られる。
【0056】
4/標的細胞を含むGFPの発現はSFVウイルス粒子による真の形質導入によるものである。
GFPの発現が、自由GFPの初期トランスフェクションまたは擬似形質導入により生じたプラスミドの移動によるものではなく、SFVベクターの発現によるものであることを確認するために以下の検査を実施する。
【0057】
まず、感染細胞から抽出したRNAからノーザン・ブロットによりSFVのRNAが検出される(図5)。産生細胞の場合と同様、SFV 26Sm1ベクターにより感染された細胞内には、ゲノムRNAおよびサブゲノムRNAの双方が見られる。反対に、SFV 26Sm2ベクターにより感染された細胞内にはゲノムRNAしか見られない。信号の強度はSFVベクターが強力に複製されることを示唆している。しかしながら、標的細胞内のGFPの強い発現がSFVのRNAの移動に対応していること、したがって標的細胞、ここでは293T細胞にプラスミドが確かに移動したことを確認するために、高濃度DNaseI(1000UI/ml)を形質導入上清に加える。SFVウイルス粒子の力価はDNaseIがない場合に得られる力価と同様であるが、そのことは第二トランスフェクションというよりも形質導入であることを示唆している。しかしながらこのような結果は、プラスミドがその導入後、トランスフェクションされ次に形質導入細胞内に送られた細胞内でカプセル化されるという仮定において得られる。場合によっては発生するこのような現象を検査するために、標的細胞を1ミリリットルあたり1マイクログラムの割合のアクチノマイシンDで前処理し、次に感染性上清で培養する。アクチノマイシンDは、pSFV26Sm1またはm2プラスミド内のSFVベクターのゲノムと同様に、RNA POL IIによって阻止される遺伝子の発現を抑制するが、SFVのレプリカーゼに対しては何ら作用しない。アクチノマイシンDが存在する場合でもしない場合でもGFPの同様の発現が見られることから、転写されるのはRNAであることが確認される(表2を参照のこと)。
【0058】
次に、GFPの発現がSFVベクターの発現または標的細胞内の擬似形質導入によるものであるかどうかを確認する。実際、GFPは、あらゆる発現とは無関係に、レトロウイルス粒子を介して受動的に転写されうること示した文献もいくつかある(7)。反対の命題を確認するために、ジェネティシンおよびプロマイシンという2つの翻訳阻止剤で標的細胞を前処理する。処理後、標的細胞が示すGFPの発現はほとんど検出不可能であり、そのことは、観察されるGFPは受動的な転写ではなく形質導入によるものであることを示している(表2)。さらに、GFPを強く発現するpEGFPC1プラスミドとVSV−Gをコードするプラスミドの共トランスフェクションではGFPの擬似形質導入は生じない。同様に、SFVベクター単体でトランスフェクションされた細胞由来上清ではGFPの発現は誘導されず、そのことは、擬似粒子の形成を促進するにはVSV−Gが存在しなければならないことを証明している。VSV−G小胞内でSFVのRNAが保護されていることを確認するために、形質導入の前にRNaseAで上清を処理する。RNaseAによる処理は感染力価には作用しないことから、SFVのRNAが確かに保護されていることが確認される(表2)。これらの結果を全てを考慮すると、標的細胞内のGFPの発現はSFVウイルス粒子による真の形質導入によるものであると結論される。
【0059】
【表2】

【実施例2】
【0060】
I/方法
【0061】
1/構造:
例1において記述した構造を使用した。
CMVプロモーターをSP6原核生物プロモーターに置換した別の2つの派生構造も使用した。
‐ 第一の構造spSFV26Sm1はSFV26Sm1から直接派生したものである。
‐ 第二の構造spSFV26Sm1ΨはpSFV1プラスミド(Invitrogen(登録商標))のBgl II−Sma I消化により得られるもので、プラスミドの内部では、pIRES2 GFP(Clontech(登録商標))のBgl II−Hpa断片がクローン化され、nsp4遺伝子の末端3’を含み26Sm1Fおよび26Sm1Rプライマーを使用して生成されたPCR断片の導入により変性される(例1の2a項を参照のこと)。
【0062】
これらの構造は生体外で転写され、次にRNAがエレクトロポレーションにより産生細胞内に導入される。生体外転写はBstB I切断によるプラスミドの線状化後に行われる。転写は、キャップ類似体(Invitrogen(登録商標))、SP6ポリメラーゼ(Invitrogen(登録商標))、リボヌクレオチド(Promega(登録商標))がある状態で行われる。
【0063】
2/細胞:
293、Phoenix(http://www.stanford.edu/group/nolan/retroviral_systems/phx.html)由来組み換えレトロウイルスの産生細胞を、相補体除去ウシ胎仔血清(Abcys)が存在するDMEM(GIBCO)内で培養する。
【0064】
産生細胞はSFV26Sm1または26Sm2プラスミドを用いて5・10個の細胞に対し4μgのDNAの割合で、6ウェルプレートのウェル内にトランスフェクションされる。トランスフェクションはリン酸カルシウム(Calcium Phosphate transfection kit、Invitroen(登録商標))を使用して行われる。
【0065】
RNAの形態でSFVベクターを発現する2つの構造の場合、トランスフェクションはエレクトロポレーションにより行われる。すなわち生体外で生成されたレプリコン40μlを40・10個の細胞に接触させ、EasyjecT Plusシステム(Equibio(登録商標))を使用してエレクトロポレーションする。
【0066】
用いるトランスフェクション方法がどうであっても、トランスフェクションから20時間後に培地を交換する。この交換から16時間後、培地を回収し、感染を実施する。回収の際、培地を0.45μmフィルター(Millipore(登録商標))でろ過する。
【0067】
3/感染:
12ウェルプレートで培養される293T細胞の感染には、ろ過された上清を用いる。感染は、ウイルス/細胞の相互作用に必要なポリカチオン、すなわち5μg/mlのポリブレン(Sigma(登録商標))が存在する状態で行われる。感染当日は、計数のために293T標的細胞のウェルがトリプシン処理される。
感染から24時間後、フローサイトメトリー(FACScalibur、Becton−Dickinson(登録商標))を行うために細胞がトリプシン処理される。感染日における細胞数に対する、GFPを発現する細胞の百分率割合により、組み換え粒子の力価(IP/ml)を計算することが可能である(表3)。
【0068】
4/検査:
例1において実施した検査と同一の検査を実施した:
‐ RNAseA 1mlあたり10μg(Sigma(登録商標))
‐ アクチノマイシンD 1ミリリットルあたり1μg(Sigma(登録商標))
‐ DNAseI 1ミリリットルあたり100単位(Invitrogen(登録商標))
‐ ジェネティシン 1ミリリットルあたり1mg(Sigma(登録商標))
【0069】
II/結果:
【0070】
1/感染:
感染の結果を表3にまとめた。
IP/ml:mlあたりの感染粒子数; NR:実施せず
【0071】
【表3】

【0072】
GFPを発現する細胞が存在することから、レトロウイルス粒子の翻訳によるSFV組み換えRNAを移動することが可能であることが確認される。しかしながら、観察される力価が低いことは、より高い力価を得るにはSFVベクターの細胞毒性を検査することが必要であることを示している。実際、SFVのRNAの産生とレトロウイルスタンパク質の産生の間には拮抗作用が存在する。SFVのプロテインの産生が増加するとレトロウイルスタンパク質の産生は減少する。現在までにSFVの複数の突然変異体が記述されており、有効に使用することができるだろう(8)。
【0073】
レトロウイルスのカプシド化配列の有無はカプシド化の効果に大きな影響を及ぼしているようには思えない。ここでは、Muriauxら(9)の所見のように、カプシド化を促進するにあたってはRNAの細胞間濃度が高いことが決定的な役割を果たしているように思われる。psiレトロウイルス配列の影響は低毒性ベクターという状況下で再度評価しなければならない。
【0074】
また、これらの結果は、SFVベクターに基づいた「ヘルパー」システムを使用する時、おそらく組み換えレトロウイルスの産生の汚染が存在することを示唆しているように思われる(10、11)。これらの汚染物質は、レトロウイルスのトランス相補性配列の発現に用いられるSFVベクター、あるいは組み換えレトロウイルスの配列を含むSFVベクターのいずれかを含むレトロウイルス粒子で形成される。この所見は、本発明のウイルス粒子とは反対に、臨床目的でのレトロウイルスベクター産生についてのこれらの態様の使用に疑問を投げかけるものである。
【0075】
参考文献
1. Rolls, M.M., Webster, P., Balba, N.H.& Rose, J.K. 「自己複製RNAからの水疱性口内炎ウイルス糖タンパク質の発現により生成される新種の感染粒子」 Cell 79, 497-506 (1994).
2. Rolls, M.M., Haglund, K. & Rose, J.K. 「最小RNAウイルス由来ベクターにおける付加遺伝子の発現」 Virology 218, 406-411 (1996).
3. Lebedeva, L., Fujita, K., Nihrane, A. & Silver, J. 「マウス白血病ウイルスエンベロープをコードするセムリキ森林熱ウイルスベクター由来感染粒子」 Journal of Virology 71(9), 7061-7067. (1997).
4. Russell SJ, Cosset FL. 「レトロウイルスベクターの宿主域の変更」 J Gene Med 1, 300-11. (1999).
5. Salonen A, Vasiljeva. L, Merits A. Magden J, Jokitalo E, Kaariainen L., 「セムリキ森林熱ウイルス複製複合体をエンドソーム区画に向ける、適切に折り畳まれた非構造タンパク質」 J Virol. 77, 1691-702. (2003).
6. Naldini, L.ら 「生体内遺伝子導入およびレンチウイルスベクターによる非分割細胞の安定形質導入」 Science 272, 263-267 (1996).
7. Liu, M.L., Winther, B.L, & Kay, M.A. 「濃縮擬似水疱性口内炎ウイルスG糖タンパク質(VSV−G)‐モロニーマウス白血病ウイルス由来レトロウイルスベクターを使用することによる肝細胞の擬似形質導入:肝臓遺伝子導入用VSV−Gおよび両種性ベクターの比較」 J Virol. 70, 2497-2502. (1996).
8. Lundstrom K, Abenavoli A, Malgaroli A, Ehrengruber MU. 「導入遺伝子発現の長期間の強化により細胞毒性および温度感受性が低下した新種のセムリキ森林熱ウイルスベクター」 Mol Ther.2, 7202-9. (2003).
9. Muriaux, D., J. Mirroら 「RNAはレトロウイルス粒子の構造成分である。」 Proc Natl Acad Sci USA 98, 5246-51. (2001).
10. Whalfors JJ, Xanthopoulos KG, Morgan RA. 「レトロウイルスパッケージング細胞内のレトロウイルスベクターRNAのセムリキ森林熱ウイルス介在産生」 Hum Gene Ther 8, 2031-41. (1997).
11. Li KJ. Garoff H. 「αウイルスベクターによるレトロウイルスベクターへのイントロン含有遺伝子のパッケージング」 Proc Natl Acad Sci USA95, 3650-4. (1998).
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】図1はセムリキ森林熱ウイルス(SFV)由来ベクターの構造の略図である。
【図2】図2はp26Sプロモーター内で行われる突然変異を示す図である。天然配列(Wt)に対するp26Sm1およびp25Sm2突然変異体内に導入された突然変異を囲んである。
【図3】図3は、pEGFPC1のGFPセンサーによる、変性SFVベクター(1:pEGFPXC1;、2:p26Sm1;、3:p26Sm2;、4:導入遺伝子なしのSFV)を発現する、産生細胞を基にして行われたノーザン・ブロットの結果である。
【図4】図4は、SFV(p26Sm1およびp26Sm2)由来であってVSV−G擬似粒子によって移動されるベクターを発現するための細胞293TおよびBHK21の能力を示す図である。
【図5】図5は、pEGFPC1のGFPセンサーによる、pMDGプラスミドによりトランスフェクトされた細胞の上清に感染された細胞、ならびに変性SFVベクター(1:pEGFPXC1;、2:p26Sm1;、3:p26Sm2)を基にして行われたノーザン・ブロットの結果である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
αウイルス非由来構造成分で構成され、構造遺伝子の少なくとも1つの遺伝子導入による欠失または置換により、複製欠損にされたαウイルス由来ベクターを含むウイルス粒子であって、前記粒子の構造成分がαウイルス由来ベクターのゲノムによってコードされないことを特徴とする粒子。
【請求項2】
構造成分が単体VSV−Gエンベロープタンパク質に相当することを特徴とする、請求項1に記載の粒子。
【請求項3】
構造成分がレトロウイルスの構造タンパク質に相当することを特徴とする、請求項1に記載の粒子。
【請求項4】
αウイルスがセムリキ森林熱ウイルスであることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の粒子。
【請求項5】
αウイルス由来ベクターのゲノムがMLVベクターの拡大カプシド配列を含むことを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の粒子。
【請求項6】
αウイルス由来ベクターのゲノムがpsi配列を欠いていることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の粒子。
【請求項7】
αウイルス由来ベクターのゲノムが5’に配置された真核生物プロモーターを含むことを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の粒子。
【請求項8】
αウイルス由来ベクターが突然変異p26Sプロモーターを含むことを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の粒子。
【請求項9】
生体外で真核生物細胞を感染させるための請求項1から8のいずれか一項に記載のウイルス粒子の使用。
【請求項10】
請求項1から8のいずれか一項に記載のウイルス粒子を含む薬剤組成。
【請求項11】
癌治療用医薬品の製造のための請求項1から8のいずれか一項に記載のウイルス粒子の使用。
【請求項12】
αウイルス非由来構造成分で構成され、少なくとも1つの遺伝子導入による欠失または置換により、複製欠損にされたαウイルス由来ベクターを含むウイルス粒子の取得方法であって、構造遺伝子が、
‐ αウイルス非由来構造成分およびαウイルス由来ベクターをコードする遺伝子を細胞株内でトランス発現し、
‐ 細胞培養の上清内に存在するウイルス粒子を回収する
ことから成ること特徴とする方法。
【請求項13】
構造成分がVSV−Gエンベロープタンパク質に相当することを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
トランス発現がVSV−Gエンベロープ発現ベクターおよびαウイルス由来ベクターによる細胞株の共トランスフェクションにより得られ、共トランスフェクションが、それぞれ異なる2つの段階、すなわちVSV−Gエンベロープの遺伝子を発現するベクターによる株のトランスフェクション、ついで、αウイルス由来ベクターによる第二トランスフェクション、で実行されることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
トランスフェクションされた細胞株が293T細胞株であることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
構造成分がレトロウイルスの構造タンパク質に相当することを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
トランス発現が、αウイルス由来ベクターによる、複製欠損レトロウイルスを生産するカプシド化細胞株のトランスフェクションにより得られることを特徴とする、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
カプシド化細胞株が、レトロウイルスのGAGおよびPOL遺伝子を発現する第一ウイルス要素と、レトロウイルスのENV遺伝子を発現する第二ウイルス要素による細胞株の安定トランスフェクションにより得られることを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
トランス発現が、レトロウイルスのGAGおよびPOL遺伝子を発現する第一ウイルス要素と、レトロウイルスのENV遺伝子を発現する第二ウイルス要素およびαウイルス由来ベクターの導入による293T細胞株の三重トランスフェクションにより得られることを特徴とする、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
αウイルスがセムリキ森林熱ウイルスであることを特徴とする、請求項12から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
αウイルス由来ベクターのゲノムがMLVベクターの拡大カプシド配列を含むことを特徴とする、請求項12から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
αウイルス由来ベクターのゲノムがpsi配列を欠いていることを特徴とする、請求項12から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
αウイルス由来ベクターのゲノムが5’に配置された真核生物プロモーターを含むことを特徴とする、請求項12から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
αウイルス由来ベクターが突然変異p26Sプロモーターを含むことを特徴とする、請求項12から23のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2007−512827(P2007−512827A)
【公表日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−541991(P2006−541991)
【出願日】平成16年11月30日(2004.11.30)
【国際出願番号】PCT/FR2004/050631
【国際公開番号】WO2005/056805
【国際公開日】平成17年6月23日(2005.6.23)
【出願人】(506189113)ユニヴェルシテ フランソワ ラブレ (2)
【Fターム(参考)】