説明

β−アミノケトンの非対称水素化方法

本発明は、式
【化1】


の鏡像異性的に富化された、または鏡像異性的に純粋な(S)−または(R)−N−一置換β−アミノアルコール並びにその鏡像異性体およびプロトン酸付加塩の製造方法に関し、Xは、SまたはOを表し、Rは、C1-6アルキル、C3-8シクロアルキル、アリールまたはアラルキルを表す。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
本発明は、式
【化6】

【0002】
のβ-アミノケトンおよびそのプロトン酸付加塩の非対称水素化により得ることができる式
【化7】

【0003】
の鏡像異性的に富化された、または鏡像異性的に純粋な(S)−または(R)−N−一置換β−アミノアルコール並びにその鏡像異性体およびプロトン酸付加塩の製造方法に関する。
【0004】
(S)−(−)−3−N−メチルアミノ−1−(2−チオフェニル)−1−プロパノ−ル(I(X=S、R=メチル))のような式IのN−一置換β−アミノアルコールは、セロトニンとノルエフェドリンの吸収を強力に阻害する神経刺激性化合物として作用する(J.ディーターら(Deeter, J. et al.)、Tetrahedron Lett. 1990, 31, 7101-7104)ところの(S)−(+)−メチル−[3−(1−ナフチルオキシ)−3−(2−チオフェニル)−プロピル]−アミン((S)−デュロキセチン、例えばH.リューら(Liu, H. et al.)、Chirality 2000, 12,26-29を参照のこと)の製造のための有用な鋳中間体であり、構築ブロックである。
【化8】

【0005】
EP−A−457559およびEP−A−650965は、メチルケトンとパラホルムアルデヒドおよびジメチルアミンとのマンニッヒ型反応とその後のカルボニル基の還元によるN,N−ジメチルβ−アミノアルコールの製造を開示している。アルキルまたはアリールエーテル誘導体を与えるヒドロキシル基の反応後、1つのN−メチル基を除去してN−一置換化合物が得られる。
【0006】
WO−A−03/062219、JP−A−2003−192681およびソルベラL.A.ら(Sorbera L.A. et al)(Drug Future 2000, 25, 907-916)において、デュロキセチンの合成についていくつかの方策が提示され、この数年の間に公表された。そこに述べられている方法における共通の合成原理は、カルボニル基の水素化によるヒドロキシ基の生成である。キラルアルコールまたはその誘導体の調製には2つの主な方策がある。その第1のものは、対応するN,N−ジアルキル−β−アミノケトンのアキラル水素化により得られるラセミアルコールのキラル分割を利用するものである。2つめのルートは、水素化触媒としてキラル金属配位子錯体またはアキラル錯体のいずれかを光学活性な助剤とともに用いるN,N−ジアルキル−β−アミノケトンの非対称水素化である。共通の特徴は、後のアミノ保護基の使用であり、これは、最終の活性化合物を得る前に最終工程の1つとして除去された。アミノ基を保護するために、好ましくはメチルおよびベンジル基が用いられた。
【0007】
EP−A−1254885に、ルテニウム−ホスフィン錯体からなる触媒系の存在下でのいくつかのN,N−二置換α−、β−およびγ−アミノケトンの非対称水素化が開示されている。この触媒系は、ルテニウム(Ru)イオンを錯化する2座アミノおよび2座ホスフィン配位子を含む。少なくとも1つの−CH2−NR23基(ここで、R2はアシルまたはアルコキシカルボニルであり、R3は水素である)を含有するこのアミノケトンの非対称水素化は、第4頁14行以降に開示されている。R3が水素で、R2がアルキル、シクロアルキル、アリールまたはアラルキルである特定の組み合わせは開示されていない。
【0008】
(S)−デュロキセチンの光学活性前駆体を調製するための既知の方法において、3−N−ジメチルアミノ−1−(2−チオフェニル)−1−プロパノンの非対称水素化のための触媒系が、T.オオクマら(Ohkuma, T. et al.)(Org. Lett. 2000, 2, 1749-1751)に開示されている。N,N−二置換β−アミノケトンのためのいくつかの例があるものの、N−一置換βアミノケトンの非対称水素化は開示されていない。
【0009】
S.サクラバら(Sakuraba S. et al.)(Chem. Pharm. Bull. 1995, 43, 748-753)は、<80%という鏡像異性的過剰をもたらす3−N−メチルアミノ−1−フェニル−1−プロパノンの直接非対称水素化を開示している。ベンジル保護基を含有するアミノケトンの非対称的水素化法およびその後の脱ベンジル化が主要な特徴であり、スキーム2に提示されている。ヘテロ芳香族残基を含有するアミノケトンの水素化は開示されていない。
【0010】
アミノケトンの選択的および非対称的水素化の双方のためのさらなる方法が、WO−A−02/055477に開示されている。中心の窒素原子が、同じ分子内でα−およびβ−アミノケトン部位を形成している。この窒素原子は、メチル基によりさらに置換されており、N−H基は存在していない。
【0011】
アミノケトンの水素化により(S)−デュロキセチンのような薬学的活性化合物の前駆体を合成する際に使用される全ての既知の方法は、アミノ基が活性水素原子を含まないことを特徴としている。
【0012】
式IIのN−一置換β−ケトアミンの調製およびカルボニル基の非対称水素化は、(S)−デュロキセチンのような式IのN−一置換β−アミノアルコールの光学活性誘導体の工業的製造のための代替の経済的に有利なルートを確立している。
【0013】
式Iの化合物の鏡像異性体のラセミ混合物は、国際出願第PCT/EP03/07411に記載された方法に従って製造することができる。現在のところ、主な欠点は、対応するアルコールがラセミ混合物としてだけしか入手できないことである。N−一置換β−ケトアミンの効率的な鏡像異性選択的還元方法に関する方法は開示されていない。
【0014】
以下において、用語「β−アミノケトン」および「β−アミノアルコール」、より特定的には「(S)−N−一置換β-アミノアルコール」は、純粋化合物およびそれらの生理学的に許容され得るプロトン酸付加塩を含む。
【0015】
用語「鏡像異性的に富化された化合物」は、少なくとも70%の鏡像異性的過剰(ee)を有する光学活性化合物を含む。
【0016】
用語「鏡像異性的に純粋な化合物」は少なくとも90%の鏡像異性的過剰を有する光学活性化合物を含む。
【0017】
用語「C1-6アルキル」は、1個から6個までの炭素原子を持つ線状または分枝アルキル基を表し、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチルおよびヘキシルである。
【0018】
用語「C3-8シクロアルキル」は、3個から8個までの炭素原子を持つシクロ脂肪族基を表し、すなわちシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンテル、シクロヘキシル、シクロヘプチルおよびシクロオクチルである。
【0019】
用語「アリール」は、任意的に置換された芳香族基、好ましくはフェニルまたはナフチルを表し、置換基は、任意に、1またはそれ以上のC1-4アルキル基および/またはハロゲン原子でさらに置換されている。
【0020】
用語「アラルキル」は、当該分子に、ハロゲン原子によりさらに置換されていてもよい線状C1-4アルキル基により結合されたフェニルまたはナフチルからなる、任意にさらに置換されたアリール基を表す。アリール基の置換基は、1またはそれ以上のC1-4アルキル基および/またはハロゲン原子であり得る。
【0021】
本発明により解決されるべき技術的課題は、第2アミノ基のための保護基を用いることなく、鏡像異性的に富化された、または鏡像異性的に純粋な(S)−または(R)−N−一置換β−アミノアルコールを得るためのN−一置換β−ケトアミンの非対称水素化のための選択的で高収率の方法を提供することであった。
【0022】
本発明の他の目的は、N−一置換β−アミノアルコールを提供することであった。
【0023】
上記課題は、請求項1の方法により解決することができた。
【0024】
本発明は、式
【化9】

【0025】
(ここで、Xは、SまたはOを表し、Rは、C1-6アルキル、C3-8シクロアルキル、アリールまたはアラルキルを表し、各アリールまたはアラルキルは、任意に、1またはそれ以上のC1-4アルキルおよび/またはハロゲン原子でさらに置換されていてもよい)のキラル化合物およびその鏡像異性体の製造方法であって、
キラル2座ホスフィン配位子の遷移金属錯体と任意に塩基との存在下での式
【化10】

【0026】
(ここで、XおよびRは、上に定義した通り)の化合物の非対称水素化を含む方法を提供する。
【0027】
好ましい態様において、キラル2座ホスフィン配位子は、式
【化11】

【0028】
(ここで、R2およびR3は、メチル、エチルまたはイソプロピルであり、R4およびR5は、水素であるか、またはR4およびR5は、一緒に、イソプロピリデンジオキシ基を形成する)の化合物およびその鏡像異性体である。特に好ましくは、R2およびR3が、メチル、エチルまたはイソプロピルであり、R4およびR5が、水素であり、またはR2およびR3が、メチルであり、R4およびR5が、一緒に、イソプロピリデンジオキシ基を形成する。
【0029】
2およびR3がメチル、エチルまたはイソプロピルであり、R4およびR5が水素である式IIIのDuPhos配位子のファミリーの配位子は、キロテク・テクノロジー社により販売されている。
【0030】
2およびR3がメチルであり、R4およびR5が一緒にイソプロピリデンジオキシ基を形成する式IIIのKetalPhos配位子のファミリーの配位子は、キラル・クウェスト社から入手できる。
【0031】
好ましくは、遷移金属は、ルテニウム(Ru)またはロジウム(Rh)である。特に好ましくは、遷移金属は、Rhである。
【0032】
さらなる好ましい態様において、キラル2座ホスフィン配位子は、式
【化12】

【0033】
(ここで、R6およびR7は、メトキシまたはエトキシであるか、またはR6およびR7は、一緒に、1,3−プロピリデンジオキシまたは1,4−ブチリデンジオキシ基を形成する)の化合物およびその鏡像異性体である。
【0034】
特に好ましくは、キラル2座ホスフィン配位子は、(S,S)−または(R,R)−Me−DuPhos、(S,S)−または(R,R)−Et−DuPhos、(S,S,S,S)−または(R,R,R,R)−Me−KetalPhos、(S)−または(R)−C4−TunaPhosおよび(S)−または(R)−MeOBiPhepからなる群の中から選ばれる。より特に好ましくは、キラル2座ホスフィン配位子は、下記式の(S,S)−Me−DuPhos、(S,S)−Et−DuPhos、(S,S,S,S)−Me−KetalPhos、(S)−C4−TunaPhosおよび(S)−MeOBiPhepからなる群の中から選ばれる。
【化13】

【0035】
触媒前駆体錯体は、任意に、ジエン、アルケンまたはアレーンのような少なくとも1のさらなる安定化配位子を含む。好ましい態様において、安定化配位子は、1,5−シクロオクタジエン(cod)またはp−シメン(cym)である。特に好ましくは、安定化配位子は、1,5−シクロオクタジエンである。
【0036】
水素化は、極性溶媒中の触媒溶液を用いて行われる。好ましくは、極性溶媒は、メタノール、エタノールもしくはイソプロピルアルコールまたはそれらの混合物である。この溶液は、アセト酢酸エチル(AAEt)のようなさらなる添加剤を含むことができる。
【0037】
触媒溶液は、遷移金属塩MY(ここで、Mは、RuまたはRhであり、Yは、Cl-、BF4-、AsF6-、SbF6-もしくはOTf-(トリフルオロメタンスルホネートまたはトリフラート)または他の好適な対イオン)を極性溶媒に溶解し、好適な量のキラル配位子と、任意にさらには安定化配位子とさらに、混合することによってその場で調製することができる。あるいは、触媒溶液は、既に安定化配位子を含有する遷移金属錯体を好適な量のキラル配位子と混合することにより調製することができる。さらに、触媒溶液は、既に安定化配位子をさらに含んでいる予め生成されたキラル遷移金属−配位子錯体を溶解することによって得ることができる。
【0038】
好ましい態様において、触媒前駆体錯体は、式[Rh(cod)2+BF4-または[Ru2l4(cym)2]の遷移金属錯体を、Me−DuPhos、Et−DuPhosおよびMe−KetalPhosからなる群の中から選ばれるキラル2座ホスフィン配位子と混合することにより調製される。より好ましくは、キラル2座ホスフィン配位子は、(S,S)−Me−DuPhos、(S,S)−Et−DuPhosおよび(S,S,S,S)−Me−KetalPhosからなる群の中から選ばれる。好ましくは、金属塩MYまたは遷移金属錯体は、キラル2座ホスフィン配位子と、1:5〜5:1の比で混合される。より好ましくは、前駆体/ホスフィン比は、1:2〜2:1の範囲内にある。最も好ましくは、前駆体/ホスフィン比は、1:1である。
【0039】
1つの具体的な態様において、遷移金属塩、触媒前駆体錯体およびキラル2座ホスフィン配位子の遷移金属錯体の対イオンは、Cl-またはBF4-である。
【0040】
任意に、水素化溶液は、基質−触媒錯体の生成を促進するため、および出発化合物の部分であり得る酸を中和するため、塩基を含有することができる。好ましい態様において、塩基は、リチウム、ナトリウムまたはカリウムの水酸化物、メタノラートまたはエタノラート、または該塩基の混合物である。好ましくは、添加する塩基は、出発化合物の量に対し、0.6〜1.2当量の量にある。より好ましくは、添加する塩基の量は、0.7〜1.0当量の範囲内にある。塩基は、出発化合物の添加の前、間または後に、触媒溶液に添加することができる。塩基は、一度に、連続的に、または部分毎に添加することができる。
【0041】
好ましい態様において、反応中の水素圧は、1〜60バールの範囲内にあり、より好ましくは10〜30バールの範囲内にある。
【0042】
水素化は、20〜80℃の範囲内の温度で行うことができる。好ましくは、温度は、30〜50℃の範囲内にある。
【0043】
本発明は、また、式
【化14】

【0044】
(ここで、Xは、SまたはOを表し、Rは、C1-6アルキル、C3-8シクロアルキル、またはベンジルを表す)の化合物(但し、XがSであり、Rがメチルである化合物を除く)およびそのプロトン酸付加塩を提供する。好ましい態様において、ベンジルは、独立に、C1-4アルキルまたはハロゲン原子でさらに置換されていてもよい。
【0045】
本発明を以下の非限定的な例により説明する。
【0046】
例1〜6についての一般的な手順:
メチルケトン、第1アルキルアミンおよび/またはその付加塩(1.1〜1.5当量(eq))、ホルムアルデヒド(1.4〜1.5eq)、溶媒の混合物を、任意にプロトン酸の存在下、オートクレーブ中、1.5バール以上の総圧力で、5〜24時間加熱する。その後、反応溶液を20℃に冷却する。ついで、任意に、反応溶媒を一部または全部除去することができ、酢酸エチルまたはイソプロパノールの溶媒を添加することができる。この懸濁液を冷却し(0〜20℃)、析出(0.5〜10時間)後、生成物をろ過し、任意に洗浄し、乾燥して淡黄色ないし白色の粉末を50〜75%の収率で得ることができる。生成物は、必要なら、イソプロパノールおよび/または酢酸エチルから再結晶させることができる。遊離塩基の安定性が周囲温度で十分であるならば、有機溶媒および水性塩基での抽出は、遊離塩基を与える。
【0047】
例1:
3−(メチルアミノ)−1−(チオフェン−2−イル)プロパン−1−オン・HCl(II、X=S、R=メチル)
2−アセチルチオフェン(25.5g、200mmol);メチルアミン塩酸塩(14.9g、220mmol、1.1eq);パラホルムアルデヒド(8.2g、280mmol、1.4eq);濃HCl(1.0g);エタノール(100mL);110℃、9時間;約2〜2.5バール;真空中、エタノール(50mL)の除去;酢酸エチル(200mL)の添加;収率約71%。
【0048】
1H-NMR δ (DMSO-d6, 400 MHz): 9.16 (2 H, s, br), 8.07 (1 H, dd, J = 5.0, 1.0), 8.01 (1 H, dd, J = 3.8, 1.0), 7.29 (1 H, dd, J = 5.0, 3.8), 3.49 (2 H, t), 3.20 (2 H, t), 2.56 (3 H, s); 13C-NMR δ (DMSO-d6, 100 MHz): 189.9, 142.7, 135.4, 133.8, 128.8, 43.1, 34.6, 32.4。
【0049】
例2:
3−(メチルアミノ)−1−(チオフェン−2−イル)プロパン−1−オン・HCl(II、X=S、R=メチル)
2−アセチルチオフェン(24.9g、197mmol);メチルアミン塩酸塩(14.8g、219mmol、1.1eq);パラホルムアルデヒド(8.3g、276mmol、1.4eq);濃HCl(1.1g);イソプロパノール(100mL);110℃、8時間;約2〜2.5バール;イソプロパノール(50mL)の添加;収率約65%。
【0050】
例3:
3−(エチルアミノ)−1−(チオフェン−2−イル)プロパン−1−オン・HCl(II、X=S、R=エチル)
2−アセチルチオフェン(6.3g、50mmol);エチルアミン塩酸塩(6.1g、75mmol、1.5eq);パラホルムアルデヒド(2.1g、75mmol、1.5eq);濃HCl(0.3g);エタノール(35mL);110℃、9時間;約2〜2.5バール;真空中、エタノール(25mL)の除去;酢酸エチル(50mL)の添加;収率約73%。
【0051】
1H-NMR δ (DMSO-d6, 400 MHz): 9.3 (2 H, s, br), 8.08 (1 H, dd), 8.00 (1 H, dd), 7.28 (1 H, dd), 3.51 (2 H, t), 3.20 (2 H, t), 2.96 (2 H, q), 1.23 (3 H, t)。
【0052】
例4:
3−(イソブチルアミノ)−1−(チオフェン−2−イル)プロパン−1−オン・HCl(II、X=S、R=イソブチル)
2−アセチルチオフェン(6.3g、50mmol);イソブチルアミン塩酸塩(8.3g、75mmol、1.5eq);パラホルムアルデヒド(2.1g、75mmol、1.5eq);濃HCl(0.3g);エタノール(35mL);110℃、9時間;約2〜2.5バール;真空中、エタノール(35mL)の除去;酢酸エチル(50mL)の添加;収率約56%。
【0053】
1H-NMR δ (DMSO-d6, 400 MHz): 9.0 (2 H, s, br), 8.08 (1 H, dd), 7.99 (1 H, dd), 7.29 (1 H, dd), 3.55 (2 H, t), 3.22 (2 H, t), 2.78 (2 H, d), 2.03 (1 H, m), 0.96 (6 H, d)。
【0054】
例5:
3−(tert−ブチルアミノ)−1−(チオフェン−2−イル)プロパン−1−オン・HCl(II、X=S、R=tert−ブチル)
2−アセチルチオフェン(6.3g、50mmol);tert−ブチルアミン塩酸塩(8.3g、75mmol、1.5eq);パラホルムアルデヒド(2.1g、75mmol、1.5eq);濃HCl(0.3g);ブタノール(35mL);117℃、9時間;約2〜2.5バール;酢酸エチル(50mL)の添加;収率約52%。
【0055】
1H-NMR δ (DMSO-d6, 400 MHz): 9.2 (2 H, s, br), 8.08 (1 H, dd), 7.98 (1 H, dd), 7.30 (1 H, dd), 3.54 (2 H, t), 3.19 (2 H, t), 1.34 (9 H, s)。
【0056】
例6:
3−(メチルアミノ)−1−(フラン−2−イル)プロパン−1−オン・HCl(II、X=O、R=メチル)
2−アセチルフラン(7.5g、68mmol);メチルアミン塩酸塩(6.9g、102mmol、1.5eq);パラホルムアルデヒド(3.1g、102mmol、1.5eq);濃HCl(1.15g);エタノール(35mL);110℃、8時間;約2〜2.5バール;真空中、エタノール(30mL)の除去;酢酸エチル(50mL)の添加;収率約64%。
【0057】
1H-NMR δ (DMSO-d6, 400 MHz): 9.0 (2 H, s, br), 8.05 (1 H, m), 7.53 (1 H, m), 6.77 (1 H, m), 3.34 (2 H, t), 3.2 (2 H, m), 2.57 (3 H, s, br)。
【0058】
例7〜16:
一般的手順
(S)−3−N−メチルアミノ−1−(2−チオフェニル)−1−プロパノール(I、X=S、R=メチル)
水素化を、ケムスキャン−スクリーニング(Chemscan-Screening)装置内で行い(10mLスケール、1回に8の反応)、触媒前駆体(0.02mmol)とキラルホスフィン配位子(0.02mmol)の組合せを試験した。全ての反応は、6mLのMeOH中0.4gの3−(メチルアミノ)−1−(チオフェン−2−イル)プロパン−1−オン・HCl(II、X=S、R2=メチル)90%について、30バールのH2で少なくとも24時間、基質対触媒比(S/C比)100を用いて行った。出発化合物中のHCl含有量のために、0.36gの24%(ケトンのほぼ0.8eq)または30%NaOMe(ケトンのほぼ1.0eq)溶液を添加した。反応は、30〜70℃の温度で行った。生成物を、変換率についてはHPLC面積%により、eeについてはHPLCにより分析した。条件と結果は、下記表1にまとめてある。
【0059】
例17:(S)−3−N−メチルアミノ−1−(2−チオフェニル)−1−プロパノール(I、X=S、R=メチル)
例13の優れた分析結果を確認するために、本実験は、次の条件を用いて、50mLまでスケールアップした。22mgの(S,S)−Me−DuPhos(0.07mmol)および28mgの[Rh(cod)2]+BF4-(0.07mmol)を、アルゴン下、12mLの脱ガスメタノールに溶解し、ステンレ鋼オートクレーブ中で、12mLのメタノール中の1.60gの3−(メチルアミノ)−1−(チオフェン−2−イル)プロパン−1−オン・HCl(7.8mmol)の溶液に添加した。この溶液に、1.44gの24%NaOMe(6.4mmol)を添加した。この基質を30〜34℃および30バールの水素で5時間水素化した。生成物溶液をろ過し、ろ液を蒸発に供し、残渣をMTBE/水に溶解した。有機相を蒸発に供して0.89gの(S)−3−N−メチル−アミノ−1−(2−チオフェニル)−1−プロパノール(5.2mmol、収率67%)を得た。キラルHPLCによると、生成物のeeは、>99%である。
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】

【化1】

(ここで、Xは、SまたはOを表し、Rは、C1-6アルキル、C3-8シクロアルキル、アリールまたはアラルキルを表し、各アリールまたはアラルキルは、任意に、1またはそれ以上のC1-4アルキルおよび/またはハロゲン原子でさらに置換されていてもよい)のキラル化合物およびその鏡像異性体の製造方法であって、
キラル2座ホスフィン配位子の遷移金属錯体と任意に塩基との存在下での式
【化2】

(ここで、XおよびRは、上に定義した通り)の化合物の非対称水素化を含む
方法。
【請求項2】
前記キラル2座ホスフィン配位子が、式
【化3】

(ここで、R2およびR3は、メチル、エチルまたはイソプロピルであり、R4およびR5は、水素であるか、またはR4およびR5は、一緒に、イソプロピリデンジオキシ基を形成する)の化合物またはその鏡像異性体である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記キラル2座ホスフィン配位子が、式
【化4】

(ここで、R6およびR7は、メトキシまたはエトキシであるか、またはR6およびR7は、一緒に、1,3−プロピリデンジオキシまたは1,4−ブチリデンジオキシ基を形成する)の化合物またはその鏡像異性体である請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記キラル2座ホスフィン配位子が、(S,S)−Me−DuPhos、(S,S)−Et−DuPhos、(S,S,S,S)−Me−KetalPhosおよび(S)−C4−TunaPhosからなる群の中から選ばれる請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記遷移金属が、RuまたはRhである請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記キラル2座ホスフィン配位子の遷移金属錯体が、安定化配位子として、少なくとも1種のジエン、アルケン、またはアレーンを含む請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記キラル2座ホスフィン配位子の遷移金属錯体が、1,5−シクロオクタジエンおよびp−シメンからなる群の中から選ばれる少なくとも1種の安定化配位子を含む請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記キラル2座ホスフィン配位子の遷移金属錯体の対イオンが、Cl-、BF4-、AsF6-、SbF6-およびトリフラートからなる群の中から選ばれる請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記触媒が、式[Rh(cod)2+BF4-の遷移金属錯体を(S,S)−Me−DuPhos、(S,S)−Et−DuPhos、(S,S,S,S)−Me−KetalPhosからなる群の中から選ばれるキラル2座ホスフィン配位子と混合することにより調製される請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記塩基が、リチウム、ナトリウムまたはカリウムの水酸化物、メタノラートまたはエタノラート、または該塩基の混合物である請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記反応中の水素圧が、1〜60バールの範囲内にあり、より好ましくは10〜30バールの範囲内にある請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】

【化5】

(ここで、Xは、SまたはOを表し、Rは、C1-6アルキル、C3-8シクロアルキル、またはベンジルを表す)の化合物(但し、XがSであり、Rがメチルである化合物を除く)並びにその鏡像異性体およびプロトン酸付加塩。

【公表番号】特表2007−504192(P2007−504192A)
【公表日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−525092(P2006−525092)
【出願日】平成16年8月31日(2004.8.31)
【国際出願番号】PCT/EP2004/009690
【国際公開番号】WO2005/021527
【国際公開日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【出願人】(398075600)ロンザ ア−ゲ− (58)
【Fターム(参考)】