説明

β−アレスチンエフェクターおよび組成物およびその使用方法

本出願は、β-アレスチンエフェクターとして作用する化合物のファミリーを記載する。かかる化合物は、慢性および急性心臓血管疾患の治療において顕著な治療的有効性を提供しうる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2008年12月29日出願の米国仮特許出願第 61/141,126号からの優先権を主張し、その全体を引用により本明細書に含める。
【0002】
発明の分野
本出願は、β-アレスチンエフェクターとして作用する化合物のファミリーに関する。かかる化合物は、心臓血管疾患、例えば、急性心不全または急性高血圧性クリーゼの治療において顕著な治療的有用性を提供しうる。
【背景技術】
【0003】
背景
GPCRを標的とする薬剤がシグナル伝達パラダイムに基づいて開発されてきており、ここで、受容体のアゴニスト (例えば、アンジオテンシン II型)による刺激はヘテロ三量体の「G タンパク質」の活性化を導き、次いでセカンドメッセンジャー/下流シグナル伝達 (例えば、ジアシルグリセロール、イノシトール-三リン酸、カルシウム等を介するもの)および生理的機能(例えば、血圧および体液の恒常性)における変化を導く。血圧および体液の恒常性に関連する病状の治療のためのGPCRを標的とするさらなる薬剤が望まれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
関連技術の上記記載は、係属中の米国特許出願を含むそこに記載の文献のいずれも本願の先行技術であると認めることを意図するものではない。さらに、記載された物、方法、および/または装置に関連するあらゆる欠点についての本明細書の記載は、本発明を制限する意図のものではない。実際、本発明の側面は、それら記載された欠点を有さない記載された物、方法、および/または装置の特定の特徴を含みうる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の概要
いくつかの態様によると、本発明は、以下の構造を有する新規なβ-アレスチンエフェクターを提供する:
Xx-Yy-Val-Ww-Zz-Aa-Bb-Cc、
上記構造において、可変部Aa、Bb、Cc、Ww、Xx、Yy、およびZzは、詳細な説明において後に記載する化学的または生物学的部分のそれぞれの群から選択されうる。β-アレスチンエフェクター誘導体および模倣体(mimetic)もまた提供される。本発明の化合物を調製する方法も提供される。
【0006】
いくつかの態様によると、本発明は、下記の構造を有する新規なβ-アレスチンエフェクターまたはその医薬上許容される塩、溶媒和物または水和物を提供する:
Xx-Arg-Val-Ww-Zz-His-Pro-Cc;
上記構造において、可変部Cc、Ww、Xx、およびZzは、詳細な説明において後に記載する化学的または生物学的部分のそれぞれの群から選択されうる。β-アレスチンエフェクター誘導体および模倣体もまた提供される。本発明の化合物を調製する方法も提供される。
【0007】
いくつかの態様によると、本発明の化合物は下記式を含むかまたはその医薬上許容される塩、溶媒和物または水和物である:
Sar-Arg-Val-Ww-Zz-His-Pro-Cc、
上記構造において、可変部Cc、Ww、およびZzは、詳細な説明において後に記載する化学的または生物学的部分のそれぞれの群から選択されうる。β-アレスチンエフェクター誘導体および模倣体も提供される。本発明の化合物を調製する方法も提供される。
【0008】
いくつかの態様によると、本発明の化合物は下記式を含むかまたはその医薬上許容される塩、溶媒和物または水和物である:
Sar-Arg-Val-Ww-OMTh-His-Pro-Cc、
上記構造において、可変部Cc、およびWwは、詳細な説明において後に記載する化学的または生物学的部分のそれぞれの群から選択されうる。β-アレスチンエフェクター誘導体および模倣体も提供される。本発明の化合物を調製する方法も提供される。
【0009】
いくつかの態様によると、本発明の組成物は、以下からなる群から選択されるペプチドまたはペプチド模倣体を含む:
a)以下の配列を含むペプチドまたはペプチド模倣体:
Xx-Yy-Val-Ww-Zz-Aa-Bb-Cc、
[式中、
Xxは、非存在(null)、サルコシン、N-メチル-L-アラニン、N-メチル-D-アラニン、N,N-ジメチルグリシン、L-アスパラギン酸、D-アスパラギン酸、L-グルタミン酸、D-グルタミン酸、N-メチル-L-アスパラギン酸、N-メチル-L-グルタミン酸、ピロリド(pyrrolid)-1-イル酢酸、およびモルホリン(morpholin)-4-イル酢酸からなる群から選択される;
Yy は、L-アルギニン、およびL-リジンからなる群から選択される;
Ww は、L-イソロイシン、グリシン、L-チロシン、O-メチル-L-チロシン、L-バリン、L-フェニルアラニン、3-ヒドロキシ-L-チロシン、2,6-ジメチル-L-チロシン、3-フルオロ-L-チロシン、4-フルオロフェニル-L-アラニン、2,6-ジフルオロ-L-チロシン、3-ニトロ-L-チロシン、3,5-ジニトロ-L-チロシン、3,5-ジブロモ-L-チロシン、3-クロロ-L-チロシン、O-アリル-L-チロシン、および3,5-ジヨード-L-チロシンからなる群から選択される;
Zz は、L-イソロイシン、L-バリン、L-チロシン、L-グルタミン酸、L-フェニルアラニン、L-ヒスチジン、L-リジン、L-アルギニン、O-メチル-L-トレオニン、D-アラニン、およびL-ノルバリンからなる群から選択される;
Aa は、L-ヒスチジン、L-ヒスチジン-アミド、およびL-リジンからなる群から選択される;
Bb は、L-プロリン、L-プロリン-アミド、D-プロリン、およびD-プロリン-アミドからなる群から選択される; および、
Cc は、非存在、L-イソロイシン、L-イソロイシン-アミド、グリシン、グリシン-アミド、L-アラニン、L-アラニン-アミド、D-アラニン、D-フェニルアラニン、L-ノルバリンからなる群から選択される;
ただし、XxがL-アスパラギン酸である場合、CcはL-フェニルアラニンではなく;Xxがサルコシンである場合、CcはL-イソロイシンではなく;Wwがグリシンである場合、Ccはグリシンではなく;Xxがサルコシンであり、ZzがL-バリンである場合、CcはL-アラニンではなく;Xxがサルコシンであり、WwがL-チロシンであり、ZzがL-イソロイシンである場合、CcはL-アラニンではない;]
b)ペプチドまたはペプチド模倣体の配列のメンバーが(a)に記載の配列において現れるそれらの相対的位置を維持しており、1から3 アミノ酸またはアミノ酸類似体(analogue)のスペーサーが(a)に記載の1以上のアミノ酸またはアミノ酸類似体の間に挿入されており、ペプチドまたはペプチド模倣体の全長が6〜25 アミノ酸および/またはアミノ酸類似体であるペプチドまたはペプチド模倣体;および
c) (a)に記載のペプチドまたはペプチド模倣体に対して少なくとも 70%同一であるペプチドまたはペプチド模倣体。
【0010】
別の態様によると、本発明の組成物は、以下からなる群から選択されるペプチドまたはペプチド模倣体を含む:
a)以下の配列を含むペプチドまたはペプチド模倣体:
Xx-Arg-Val-Ww-Zz-His-Pro-Cc、
[式中、
Xx は、サルコシン、N-メチル-L-アラニン、N-メチル-D-アラニン、N,N-ジメチルグリシン、L-アスパラギン酸、D-アスパラギン酸、L-グルタミン酸、D-グルタミン酸、N-メチル-L-アスパラギン酸、N-メチル-L-グルタミン酸、ピロリド-1-イル酢酸、およびモルホリン-4-イル酢酸からなる群から選択される;
Ww は、L-イソロイシン、グリシン、L-チロシン、O-メチル-L-チロシン、L-バリン、L-フェニルアラニン、3-ヒドロキシ-L-チロシン、2,6-ジメチル-L-チロシン、3-フルオロ-L-チロシン、4-フルオロフェニル-L-アラニン、2,6-ジフルオロ-L-チロシン、3-ニトロ-L-チロシン、3,5-ジニトロ-L-チロシン、3,5-ジブロモ-L-チロシン、3-クロロ-L-チロシン、O-アリル-L-チロシン、および3,5-ジヨード-L-チロシンからなる群から選択される;
Zz は、L-イソロイシン、L-バリン、L-チロシン、L-グルタミン酸、L-フェニルアラニン、L-ヒスチジン、L-リジン、L-アルギニン、O-メチル-L-トレオニン、D-アラニン、および L-ノルバリンからなる群から選択される;および、
Cc は、L-イソロイシン、L-イソロイシン-アミド、グリシン、グリシン-アミド、L-アラニン、L-アラニン-アミド、D-アラニン、D-フェニルアラニン、およびL-ノルバリンからなる群から選択される;
ただしXxがL-アスパラギン酸である場合、CcはL-フェニルアラニンではなく;Xxがサルコシンである場合、CcはL-イソロイシンではなく;Wwがグリシンである場合、Cc はグリシンではなく;Xxがサルコシンであり、ZzがL-バリンである場合、CcはL-アラニンではなく;Xxがサルコシンであり、WwがL-チロシンであり、ZzがL-イソロイシンである場合、CcはL-アラニンではない; ]
b)ペプチドまたはペプチド模倣体の配列のメンバーが(a)に記載の配列において現れるそれらの相対的位置を維持しており、1から3 アミノ酸またはアミノ酸類似体のスペーサーが(a)に記載の1以上のアミノ酸またはアミノ酸類似体の間に挿入されており、ペプチドまたはペプチド模倣体の全長が8〜25 アミノ酸および/またはアミノ酸類似体であるペプチドまたはペプチド模倣体;および
c) (a)に記載のペプチドまたはペプチド模倣体に対して少なくとも 70%同一であるペプチドまたはペプチド模倣体。
【0011】
別の態様によると、本発明の組成物は、以下からなる群から選択されるペプチドまたはペプチド模倣体を含む:
a)以下の配列を含むペプチドまたはペプチド模倣体:
Sar-Arg-Val-Ww-Zz-His-Pro-Cc、
[式中、
Ww は、L-チロシン、3-ヒドロキシ-L-チロシン、3-フルオロ-L-チロシン、2,6-ジフルオロ-L-チロシン、3-ニトロ-L-チロシン、3,5-ジニトロ-L-チロシン、および3-クロロ-L-チロシンからなる群から選択される;
Zz は、L- イソロイシン、L-リジン、およびO-メチル-L-トレオニンからなる群から選択される;および、
Cc は、D-アラニン、およびL-アラニンからなる群から選択される;
ただし、Xxがサルコシンであり、WwがL-チロシンであり、ZzがL-イソロイシンである場合、CcはL-アラニンではない; ]
b)ペプチドまたはペプチド模倣体の配列のメンバーが(a)に記載の配列において現れるそれらの相対的位置を維持しており、1から3 アミノ酸またはアミノ酸類似体のスペーサーが(a)に記載の1以上のアミノ酸またはアミノ酸類似体の間に挿入されており、ペプチドまたはペプチド模倣体の全長が8〜25 アミノ酸および/またはアミノ酸類似体であるペプチドまたはペプチド模倣体;および
c) (a)に記載のペプチドまたはペプチド模倣体に対して少なくとも 70%同一であるペプチドまたはペプチド模倣体。
【0012】
より具体的な態様において、Ww は、L-チロシンおよび3-ヒドロキシ-L-チロシンからなる群から選択され;Zz は、L- イソロイシンおよびL-リジンからなる群から選択される。所望により、ペプチドまたはペプチド模倣体は、配列番号23、27または67の配列を含む。
【0013】
別の態様によると、本発明の組成物は、以下からなる群から選択されるペプチドまたはペプチド模倣体を含む:
a)以下の配列を含むペプチドまたはペプチド模倣体:
Sar-Arg-Val-Ww-OMTh-His-Pro-Cc、
[式中、
Ww は、L-チロシン、3-ヒドロキシ-L-チロシン; 3-フルオロ-L-チロシン、および3-クロロ-L-チロシンからなる群から選択される;および、
Cc は、D-アラニンおよびL-アラニンからなる群から選択される; ]
b)ペプチドまたはペプチド模倣体の配列のメンバーが(a)に記載の配列において現れるそれらの相対的位置を維持しており、1から3 アミノ酸またはアミノ酸類似体のスペーサーが(a)に記載の1以上のアミノ酸またはアミノ酸類似体の間に挿入されており、ペプチドまたはペプチド模倣体の全長が8〜25 アミノ酸および/またはアミノ酸類似体であるペプチドまたはペプチド模倣体;および
c) (a)に記載のペプチドまたはペプチド模倣体に対して少なくとも 70%同一であるペプチドまたはペプチド模倣体。
【0014】
より具体的な態様において、Ww は、3-ヒドロキシ-L-チロシン; 3-フルオロ-L-チロシン、および3-クロロ-L-チロシンからなる群から選択され;CcはL-アラニンである。所望により、ペプチドまたはペプチド模倣体は配列番号77、78または79の配列を含む。
【0015】
別の態様によると、本発明の組成物は、以下からなる群から選択されるペプチドまたはペプチド模倣体を含む:
a)以下の配列を含むペプチドまたはペプチド模倣体:
Sar-Arg-Val-Ww-Tyr-His-Pro-NH2
[式中、
Ww は、L-チロシン、3-ヒドロキシ-L-チロシン、3-フルオロ-L-チロシン、2,6-ジフルオロ-L-チロシン、3-ニトロ-L-チロシン、3,5-ジニトロ-L-チロシン、および3-クロロ-L-チロシンからなる群から選択される; ]
b)ペプチドまたはペプチド模倣体の配列のメンバーが(a)に記載の配列において現れるそれらの相対的位置を維持しており、1から3 アミノ酸またはアミノ酸類似体のスペーサーが(a)に記載の1以上のアミノ酸またはアミノ酸類似体の間に挿入されており、ペプチドまたはペプチド模倣体の全長が7〜25 アミノ酸および/またはアミノ酸類似体であるペプチドまたはペプチド模倣体;および
c) (a)に記載のペプチドまたはペプチド模倣体に対して少なくとも 70%同一であるペプチドまたはペプチド模倣体。
【0016】
所望により、ペプチドまたはペプチド模倣体は、配列番号26の配列を含む。
【0017】
別の態様によると、本発明の組成物は、以下からなる群から選択されるペプチドまたはペプチド模倣体を含む:
a)以下の配列を含むペプチドまたはペプチド模倣体:
NMAla-Arg-Val-Ww-Zz-His-Pro-Cc、
[式中、
Ww は、L-チロシン、3-ヒドロキシ-L-チロシン、3-フルオロ-L-チロシン、2,6-ジフルオロ-L-チロシン、3-ニトロ-L-チロシン、3,5-ジニトロ-L-チロシン、および3-クロロ-L-チロシンからなる群から選択される;
Zz は、L- イソロイシン、L-リジン、およびO-メチル-L-トレオニンからなる群から選択される; および、
Cc は、D-アラニン、およびL-アラニンからなる群から選択される; ]
b)ペプチドまたはペプチド模倣体の配列のメンバーが(a)に記載の配列において現れるそれらの相対的位置を維持しており、1から3 アミノ酸またはアミノ酸類似体のスペーサーが(a)に記載の1以上のアミノ酸またはアミノ酸類似体の間に挿入されており、ペプチドまたはペプチド模倣体の全長が8〜25 アミノ酸および/またはアミノ酸類似体であるペプチドまたはペプチド模倣体;および
c) (a)に記載のペプチドまたはペプチド模倣体に対して少なくとも 70%同一であるペプチドまたはペプチド模倣体。
【0018】
より具体的な態様において、WwはL-チロシン、ZzはL-イソロイシン、および/または CcはL-アラニンである。所望により、ペプチドまたはペプチド模倣体は、配列番号34の配列を含む。
【0019】
所望により、本発明の上記組成物のいずれかは、環状、二量体化および/または三量体化している。
【0020】
別の態様によると、本発明の組成物は、アンジオテンシン 2型1型受容体 (AT1R) β-アレスチン偏性(biased)リガンドを含む。特定の態様において、リガンドは、β-アレスチン-2 をアンジオテンシン 2型1型受容体に動員することについて、IP1 蓄積についてよりもより低い半数効果濃度 (half maximal effective concentration)を有する。より具体的な態様において、リガンドの、β-アレスチン-2 をアンジオテンシン 2型1型受容体に動員することについての半数効果濃度は、リガンドのIP1 蓄積についてのものより10分の1低い。より具体的な態様において、リガンドは、以下からなる群から選択されるペプチドまたはペプチド模倣体を含む組成物である:
a)以下の配列を含むペプチドまたはペプチド模倣体:
Xx-Yy-Val-Ww-Zz-Aa-Bb-Cc、
[式中、
Xx は、非存在、サルコシン、N-メチル-L-アラニン、N-メチル-D-アラニン、N,N-ジメチルグリシン、L-アスパラギン酸、D-アスパラギン酸、L-グルタミン酸、D-グルタミン酸、N-メチル-L-アスパラギン酸、N-メチル-L-グルタミン酸、ピロリド-1-イル酢酸、およびモルホリン-4-イル酢酸からなる群から選択される;
Yy は、L-アルギニン、および L-リジンからなる群から選択される;
Ww は、L-イソロイシン、グリシン、L-チロシン、O-メチル-L-チロシン、L-バリン、L-フェニルアラニン、3-ヒドロキシ-L-チロシン、2,6-ジメチル-L-チロシン、3-フルオロ-L-チロシン、4-フルオロフェニル-L-アラニン、2,6-ジフルオロ-L-チロシン、3-ニトロ-L-チロシン、3,5-ジニトロ-L-チロシン、3,5-ジブロモ-L-チロシン、3-クロロ-L-チロシン、O-アリル-L-チロシン、および3,5-ジヨード-L-チロシンからなる群から選択される;
Zz は、L-イソロイシン、L-バリン、L-チロシン、L-グルタミン酸、L-フェニルアラニン、L-ヒスチジン、L-リジン、L-アルギニン、O-メチル-L-トレオニン、D-アラニン、および L-ノルバリンからなる群から選択される;
Aa は、L-ヒスチジン、L-ヒスチジン-アミド、 およびL-リジンからなる群から選択される;
Bb は、L-プロリン、L-プロリン-アミド、D-プロリン、およびD-プロリン-アミドからなる群から選択される; および、
Cc は、非存在、L-イソロイシン、L-イソロイシン-アミド、グリシン、グリシン-アミド、L-アラニン、L-アラニン-アミド、D-アラニン、D-フェニルアラニン、L-ノルバリンからなる群から選択される;
ただし、XxがL-アスパラギン酸である場合、CcはL-フェニルアラニンではなく;Xxがサルコシンである場合、CcはL-イソロイシンではなく;Wwがグリシンである場合、Ccはグリシンではなく; Xxがサルコシンであり、Zzが L-バリンである場合、CcはL-アラニンではなく; Xxがサルコシンであり、WwがL-チロシンであり、ZzがL-イソロイシンである場合、CcはL-アラニンではない; ]
b)ペプチドまたはペプチド模倣体の配列のメンバーが(a)に記載の配列において現れるそれらの相対的位置を維持しており、1から3 アミノ酸またはアミノ酸類似体のスペーサーが(a)に記載の1以上のアミノ酸またはアミノ酸類似体の間に挿入されており、ペプチドまたはペプチド模倣体の全長が6〜25 アミノ酸および/またはアミノ酸類似体であるペプチドまたはペプチド模倣体;および
c) (a)に記載のペプチドまたはペプチド模倣体に対して少なくとも 70%同一であるペプチドまたはペプチド模倣体。
【0021】
より具体的な態様において、リガンドは、以下からなる群から選択されるペプチドまたはペプチド模倣体を含む組成物である:
a)以下の配列を含むペプチドまたはペプチド模倣体:
Xx-Arg-Val-Ww-Zz-His-Pro-Cc、
[式中、
Xx は、サルコシン、N-メチル-L-アラニン、N-メチル-D-アラニン、N,N-ジメチルグリシン、L-アスパラギン酸、D-アスパラギン酸、L-グルタミン酸、D-グルタミン酸、N-メチル-L-アスパラギン酸、N-メチル-L-グルタミン酸、ピロリド-1-イル酢酸、およびモルホリン-4-イル酢酸からなる群から選択される;
Ww は、L-イソロイシン、グリシン、L-チロシン、O-メチル-L-チロシン、L-バリン、L-フェニルアラニン、3-ヒドロキシ-L-チロシン、2,6-ジメチル-L-チロシン、3-フルオロ-L-チロシン、4-フルオロフェニル-L-アラニン、2,6-ジフルオロ-L-チロシン、3-ニトロ-L-チロシン、3,5-ジニトロ-L-チロシン、3,5-ジブロモ-L-チロシン、3-クロロ-L-チロシン、O-アリル-L-チロシン、および 3,5-ジヨード-L-チロシンからなる群から選択される;
Zz は、L-イソロイシン、L-バリン、L-チロシン、L-グルタミン酸、L-フェニルアラニン、L-ヒスチジン、L-リジン、L-アルギニン、O-メチル-L-トレオニン、D-アラニン、および L-ノルバリンからなる群から選択される;および、
Cc は、L-イソロイシン、L-イソロイシン-アミド、グリシン、グリシン-アミド、L-アラニン、L-アラニン-アミド、D-アラニン、D-フェニルアラニン、およびL-ノルバリンからなる群から選択される;
ただし、XxがL-アスパラギン酸である場合、CcはL-フェニルアラニンではなく;Xxがサルコシンである場合、CcはL-イソロイシンではなく;Wwがグリシンである場合、Ccはグリシンではなく;Xxがサルコシンであり、ZzがL-バリンである場合、Cc はL-アラニンではなく;Xxがサルコシンであり、WwがL-チロシンであり、ZzがL-イソロイシンである場合、CcはL-アラニンではない; ]
b)ペプチドまたはペプチド模倣体の配列のメンバーが(a)に記載の配列において現れるそれらの相対的位置を維持しており、1から3 アミノ酸またはアミノ酸類似体のスペーサーが(a)に記載の1以上のアミノ酸またはアミノ酸類似体の間に挿入されており、ペプチドまたはペプチド模倣体の全長が8〜25 アミノ酸および/またはアミノ酸類似体であるペプチドまたはペプチド模倣体;および
c) (a)に記載のペプチドまたはペプチド模倣体に対して少なくとも 70%同一であるペプチドまたはペプチド模倣体。
【0022】
別の態様によると、本発明は、1以上の上記ペプチドまたはペプチド模倣体および医薬上許容される担体を含む医薬組成物を提供する。特定の態様において、医薬上許容される担体は、純粋滅菌水、リン酸緩衝生理食塩水またはグルコース水溶液である。
【0023】
別の態様によると、本発明は、それを必要とする対象に治療上有効量の1以上の上記組成物を投与することを含む心臓血管疾患の治療方法を提供する。特定の態様において、心臓血管疾患は、慢性高血圧、高血圧性クリーゼ、急性鬱血性心不全、狭心症、急性心筋梗塞、左室不全、脳血管不全、頭蓋内出血、心不全、急性非代償性心不全、本態性高血圧、術後高血圧、高血圧性心疾患、高血圧性腎疾患、腎血管性高血圧、悪性高血圧、腎移植後患者安定化(post-renal transplant patient stabilization)、拡張型心筋症、心筋炎、心臓移植後患者安定化(post- cardiac transplant patient stabilization)、ステント後管理(post-stent management)に関連する障害、神経性高血圧、子癇前症、腹部大動脈瘤、および血行動態成分(hemodynamic component)を有するいずれかの心臓血管疾患からなる群から選択される。より具体的な態様において、心臓血管疾患は、急性心臓血管疾患である。別の特定の態様において、急性心臓血管疾患は、急性高血圧性クリーゼ、妊娠中毒症、急性心筋梗塞、急性鬱血性心不全、急性虚血性心疾患、肺高血圧、術後高血圧、片頭痛、網膜症および術後心臓弁手術(post-operative cardiac/valve surgery)である。
【0024】
別の態様によると、本発明はまた、治療上有効量の上記の1以上の組成物をそれを必要とする対象に投与することを含む、AT1Rに関連するウイルス感染症を治療する方法も提供する。特定の態様において、1以上の組成物は静脈注射により投与される。
【0025】
別の態様によると、本発明はまた、それを必要とする対象に、治療上有効量の以下の配列を含む1以上のペプチドまたはペプチド模倣体を投与することを含む、心臓血管疾患の治療方法も提供する:
Sar-Arg-Val-Ww-Zz-His-Pro-Cc、
[式中、
Ww は、L-イソロイシン、グリシン、およびL-チロシンからなる群から選択される;
Zz は、L-バリン、L-イソロイシンおよびL-グルタミン酸からなる群から選択される;および、
Cc は、L-イソロイシン、グリシン、およびL-アラニンからなる群から選択される]。
【0026】
特定の態様において、1以上のペプチドまたはペプチド模倣体は、配列番号3、5、7、9、11、14、および16からなる群から選択される。より具体的な態様において、心臓血管疾患は、慢性高血圧、高血圧性クリーゼ、急性鬱血性心不全、狭心症、急性心筋梗塞、左室不全、脳血管不全、頭蓋内出血、心不全、急性非代償性心不全、本態性高血圧、術後高血圧、高血圧性心疾患、高血圧性腎疾患、腎血管性高血圧、悪性高血圧、腎移植後患者安定化、拡張型心筋症、心筋炎、心臓移植後患者安定化、ステント後管理に関連する障害、神経性高血圧、子癇前症、腹部大動脈瘤、および血行動態成分を有するいずれかの心臓血管疾患からなる群から選択される。別の特定の態様において、心臓血管疾患は、急性心臓血管疾患である。別の特定の態様において、急性心臓血管疾患は、急性高血圧性クリーゼ、妊娠中毒症、急性心筋梗塞、急性鬱血性心不全、急性虚血性心疾患、肺高血圧、術後高血圧、片頭痛、網膜症および術後心臓弁手術である。
【0027】
別の態様によると、本発明はまた、それを必要とする対象に、治療上有効量の以下の配列を含む1以上のペプチドまたはペプチド模倣体を投与することを含む、 AT1Rに関連するウイルス感染症を治療する方法も提供する:
Sar-Arg-Val-Ww-Zz-His-Pro-Cc、
[式中、
Ww は、L-イソロイシン、グリシン、および L-チロシンからなる群から選択される;
Zz は、L-バリン、L-イソロイシンおよびL-グルタミン酸からなる群から選択される;および、
Cc は、L-イソロイシン、グリシン、およびL-アラニンからなる群から選択される]。
【0028】
特定の態様において、1以上のペプチドまたはペプチド模倣体は、配列番号3、5、7、9、11、14、および16からなる群から選択される。
【0029】
別の態様によると、本発明はまた、それを必要とする対象に有効量の1以上の上記組成物を投与することを含む、β-アレスチンをアゴナイズする方法も提供する。
【0030】
いくつかの態様によると、本発明は、本発明の化合物および医薬上許容される担体を含む医薬組成物にも及ぶ。通常、本発明の化合物はいずれの形態で用いてもよく、例えば以下にさらに説明するように固体または溶液(例えば、水溶液)で用いてもよい。化合物は、例えば、単独でまたは好適な添加剤とともに凍結乾燥形態において得ることおよび用いることができる。
【0031】
心臓血管疾患を治療する方法も提供される。かかる方法は、治療上有効量の1以上の本発明の化合物をそれを必要とする対象に投与することを含む。
【発明を実施するための形態】
【0032】
好適な態様の詳細な説明
本発明のタンパク質、ヌクレオチド配列、ペプチド等、および方法を説明する前に、本発明は記載された特定の方法、プロトコール、細胞株、ベクターおよび試薬に限定されず、変動しうることが理解されるべきである。本明細書において用いる用語は特定の態様を説明するのみの目的であって、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される本発明の範囲を限定する意図はないことも理解されるべきである。
【0033】
本出願は、特有のプロファイルを有する化合物のファミリーである、β-アレスチンエフェクターを記載する。本発明の化合物は、AT1 アンジオテンシン受容体を介してβ-アレスチン/GRK-媒介シグナル伝達のアゴニストとして作用する。したがって、これらの化合物は、心臓血管疾患、例えば、急性心不全または急性高血圧性クリーゼの治療において顕著な治療的有用性を提供するシグナル伝達経路を刺激する。
【0034】
いくつかの態様によると、本発明の化合物は下記式を含む:
Xx-Yy-Val-Ww-Zz-Aa-Bb-Cc、
[式中、
Xxは、非存在、サルコシン、N-メチル-L-アラニン、N-メチル-D-アラニン、N,N-ジメチルグリシン、L-アスパラギン酸、D-アスパラギン酸、L-グルタミン酸、D-グルタミン酸、N-メチル-L-アスパラギン酸、N-メチル-L-グルタミン酸、ピロリド-1-イル酢酸、またはモルホリン-4-イル酢酸; Yyは、L-アルギニン、またはL-リジン; Wwは、L-イソロイシン、グリシン、L-チロシン、O-メチル-L-チロシン、L-バリン、L-フェニルアラニン、3-ヒドロキシ-L-チロシン、2,6-ジメチル-L-チロシン、3-フルオロ-L-チロシン、4-フルオロフェニル-L-アラニン、2,6-ジフルオロ-L-チロシン、3-ニトロ-L-チロシン、3,5-ジニトロ-L-チロシン、3,5-ジブロモ-L-チロシン、3-クロロ-L-チロシン、O-アリル-L-チロシン、または3,5-ジヨード-L-チロシン; Zzは、L-イソロイシン、L-バリン、L-チロシン、L-グルタミン酸、L-フェニルアラニン、L-ヒスチジン、L-リジン、L-アルギニン、O-メチル-L-トレオニン、D-アラニン、またはL-ノルバリン; Aaは、L-ヒスチジン、L-ヒスチジン-アミド、またはL-リジン; Bbは、L-プロリン、L-プロリン-アミド、D-プロリン、D-プロリン-アミドおよび、Ccは、非存在、L-イソロイシン、L-イソロイシン-アミド、グリシン、グリシン-アミド、L-アラニン、L-アラニン-アミド、D-アラニン、D-フェニルアラニン、L-ノルバリン;
ただし、XxがL-アスパラギン酸の場合は、Ccは L-フェニルアラニンではなく;
ただし、Xxがサルコシンの場合は、CcはL-イソロイシンではなく;
ただし、Wwがグリシンの場合は、Ccはグリシンではなく;
ただし、Xxがサルコシンであり、ZzがL-バリンの場合は、CcはL-アラニンではなく;
ただし、Xxがサルコシンであり、WwがL-チロシンであり、ZzがL-イソロイシンの場合は、、CcはL-アラニンではない;]。
【0035】
いくつかの態様によると、本発明の化合物は下記式を含む:
Xx-Arg-Val-Ww-Zz-His-Pro-Cc、
[式中、
Xxは、サルコシン、N-メチル-L-アラニン、N-メチル-D-アラニン、N,N-ジメチルグリシン、L-アスパラギン酸、D-アスパラギン酸、L-グルタミン酸、D-グルタミン酸、N-メチル-L-アスパラギン酸、N-メチル-L-グルタミン酸、ピロリド-1-イル酢酸、またはモルホリン-4-イル酢酸;; Wwは、L-イソロイシン、グリシン、L-チロシン、O-メチル-L-チロシン、L-バリン、L-フェニルアラニン、3-ヒドロキシ-L-チロシン、2,6-ジメチル-L-チロシン、3-フルオロ-L-チロシン、4-フルオロフェニル-L-アラニン、2,6-ジフルオロ-L-チロシン、3-ニトロ-L-チロシン、3,5-ジニトロ-L-チロシン、3,5-ジブロモ-L-チロシン、3-クロロ-L-チロシン、O-アリル-L-チロシン、または3,5-ジヨード-L-チロシン; Zzは、L-イソロイシン、L-バリン、L-チロシン、L-グルタミン酸、L-フェニルアラニン、L-ヒスチジン、L-リジン、L-アルギニン、O-メチル-L-トレオニン、D-アラニン、またはL-ノルバリン;およびCcは、L-イソロイシン、L-イソロイシン-アミド、グリシン、グリシン-アミド、L-アラニン、L-アラニン-アミド、D-アラニン、D-フェニルアラニン、L-ノルバリン;
ただし、XxがL-アスパラギン酸の場合は、CcはL-フェニルアラニンではなく;
ただし、Xxがサルコシンの場合は、CcはL-イソロイシンではなく;
ただし、Wwがグリシンの場合は、Ccはグリシンではなく;
ただし、Xxがサルコシンであり、ZzがL-バリンの場合は、CcはL-アラニンではなく;
ただし、Xxがサルコシンであり、WwがL-チロシンであり、ZzがL-イソロイシンの場合は、CcはL-アラニンではない;]。
【0036】
いくつかの態様によると、本発明の化合物は下記式を含む:
Sar-Arg-Val-Ww-Zz-His-Pro-Cc、
[式中、
Wwは、L-チロシン、3-ヒドロキシ-L-チロシン、3-フルオロ-L-チロシン、2,6-ジフルオロ-L-チロシン、3-ニトロ-L-チロシン、3,5-ジニトロ-L-チロシン、3-クロロ-L-チロシン; Zzは、L-バリンまたはL-イソロイシン;およびCcはD-アラニン]。
【0037】
いくつかの態様によると、本発明の化合物は下記式を含む:
Sar-Arg-Val-Ww-OMTh-His-Pro-Cc、
[式中、
Wwは、L-チロシン、3-フルオロ-L-チロシン、3-クロロ-L-チロシン; およびCcは、D-アラニンまたはL-アラニン]。
【0038】
本発明において用いる略語のいくつかの定義を以下に示す:
【表1−1】

【表1−2】

【表1−3】

【表1−4】

【表1−5】

【表1−6】

【0039】
上記式の化合物の環状形態、環状切断型(truncated)形態、環状切断型二量体化形態、および環状切断型三量体化形態は公知の方法を用いて調製することができる。切断型は表1に示すようにX1 および/または X2 残基からアミノ酸が除かれた類似体として定義される。いくつかの態様によると、上記式の化合物の環状形態は、遊離アミノおよび遊離カルボキシル基を架橋することによって調製することができる。いくつかの態様によると、環状化合物の設計(formulation)は、必要であれば好適な保護とともに当該技術分野で知られた手段により、脱水剤による処理により常套的に行うことが出来る。いくつかの態様によると、開いた鎖 (線状形態)から環状形態への反応は、プロリンのトランスからシスへの異性化を伴いうる。いくつかの態様によると、開いた鎖(線状形態)から環状形態への反応は分子内閉環を伴いうる。
【0040】
本発明の化合物の例としては、これらに限定されないが、以下の表1に列挙する化合物が挙げられる。
【0041】
表1
【表2−1】

【表2−2】

【表2−3】

【表2−4】

アミノ酸または類似体の定義については、略語の表を参照されたい。
【0042】
GPCR 活性の測定
好ましい態様の化合物は、AT1 アンジオテンシン受容体を介するβ-アレスチン/GRK-媒介シグナル伝達のアゴニストである。化合物がG タンパク質-媒介シグナル伝達に影響を与える能力は、G タンパク質-媒介シグナル伝達またはGPCR 活性、あるいはかかるシグナル伝達/活性の非存在を検出するために用いられているあらゆる当該技術分野において公知のアッセイを用いて測定することができる。「GPCR 活性」とは、GPCRがシグナルを伝達する能力をいう。かかる活性は、例えば、異種細胞において、GPCR (またはキメラGPCR)をG-タンパク質および下流のエフェクター、例えば、PLCまたはアデニル酸シクラーゼと共役させ、細胞内カルシウムの上昇を測定することによって測定することができる (例えば、Offermans & Simon、J. Biol. Chem. 270:15175 15180 (1995)参照)。受容体活性は蛍光 Ca2+-指示染料および蛍光イメージングを用いて[Ca2+]iにおけるリガンド-誘導性変化を記録することにより有効に測定することができる。本明細書において用いる「天然リガンド-誘導性活性」とは、GPCRの天然リガンドによるGPCRの活性化をいう。活性は、GPCR 活性を測定する任意の数の評価項目を用いて評価することができる。例えば、GPCRの活性は、例えば、カルシウム動員のアッセイ、例えば、エクオリン発光アッセイを用いて評価することができる。
【0043】
一般的に、GPCR-媒介シグナル伝達を調節する化合物を試験するためのアッセイとしては、間接的または直接的にGPCRの影響下にあるあらゆるパラメーターの測定が挙げられ、例えば、機能的、物理的、または化学的効果などがある。それには、インビトロ、インビボ、およびエキソビボでの、リガンド結合、イオン束(ion flux)の変化、膜電位、電流フロー、転写、G-タンパク質結合、遺伝子増幅、癌細胞における発現、GPCR リン酸化または脱リン酸化、シグナル伝達、受容体-リガンド相互作用、セカンドメッセンジャー濃度 (例えば、cAMP、cGMP、IP3、DAG、または細胞内Ca2+)が挙げられ、また、その他の生理的効果、例えば、神経伝達物質またはホルモン放出の上昇または低下;または特定の化合物、例えば、トリグリセリドの合成の上昇が挙げられる。かかるパラメーターは当業者に公知のあらゆる手段によって測定することができ、例えば、分光学的特徴 (例えば、蛍光、吸光度、屈折率)、水力学 (例えば、形状)、クロマトグラフィー、または溶解度特性、パッチクランピング、膜電位感受性色素、全細胞電流、放射性同位体流出、誘導性マーカー、GPCRの転写活性化における変化; リガンド結合アッセイ; 電圧、膜電位およびコンダクタンス変化; イオン束アッセイ; 細胞内セカンドメッセンジャー、例えば、cAMPおよびイノシトール三リン酸 (IP3)における変化;細胞内カルシウムレベルにおける変化; 神経伝達物質放出等が挙げられる。
【0044】
G タンパク質受容体が活性となれば、それはG タンパク質(例えば、Gq、Gs、Gi、Go)に結合し、GTPのG タンパク質との結合を刺激する。G タンパク質は次いでGTPaseとして作用し、GTPをGDPへとゆっくりと加水分解し、それにより、受容体は、正常条件下で、脱活性化される。G タンパク質-媒介シグナル伝達またはGPCR 活性は、GTP 結合および/またはGTPのGDPへの加水分解を検出および/または測定することができるアッセイ系を用いて測定されうる。
【0045】
Gsはアデニリル・シクラーゼという酵素を刺激する。Gi(およびGo)は、一方で、この酵素を阻害する。アデニリル・シクラーゼはATPからcAMPへの変換を触媒する。したがって、Gs タンパク質と共役する構成的に活性化された GPCRは、cAMPの細胞内レベルの上昇と関連する。一方で、Gi (またはGo) タンパク質と共役する活性化されたGPCRはcAMPの細胞内レベルの低下と関連する。したがって、cAMPを検出するアッセイは、候補化合物が、例えば、受容体に対するインバース(inverse)アゴニストであるかを判定するために利用することができる(即ち、かかる化合物であればcAMPのレベルを低下させるであろう)。cAMPを測定するための当該技術分野において公知の様々なアプローチを利用することができる; もっとも好ましいアプローチは、ELISAに基づくフォーマットにおける抗-cAMP 抗体の使用に依存するものである。利用可能な別のタイプのアッセイは全細胞セカンドメッセンジャーレポーター系アッセイである。遺伝子上のプロモーターは、特定の遺伝子がコードするタンパク質の発現を駆動する。環状 AMPはcAMP-応答性 DNA 結合タンパク質または転写因子 (CREB)の結合を促進することによって遺伝子発現を駆動し、それは次にcAMP 応答要素と称される特定の部位にてプロモーターに結合し、遺伝子の発現を駆動する。レポーター遺伝子、例えば、β-ガラクトシダーゼまたはルシフェラーゼの前に複数のcAMP 応答要素を含むプロモーターを有するレポーター系を構築することができる。したがって、構成的に活性化されたGs-結合(linked)受容体はcAMPの蓄積をもたらし、それが次いで遺伝子を活性化し、レポータータンパク質の発現をもたらす。レポータータンパク質、例えば、β-ガラクトシダーゼまたはルシフェラーゼは次いで、標準的生化学的アッセイを用いて検出することができる。
【0046】
GqおよびGoはホスホリパーゼ Cという酵素の活性化と関連しており、ホスホリパーゼ Cはリン脂質 PIP2を加水分解し、2種の細胞内メッセンジャー:ジアシクログリセロール (DAG)およびイノシトール(inistol)1,4,5-三リン酸 (IP3)、を放出する。IP3の蓄積の上昇はGq-およびGo-関連(associated)受容体の活性化と関連している。IP3 蓄積を検出するアッセイは、候補化合物が、例えば、Gq-またはGo-関連受容体に対するインバースアゴニストであるかを判定するために利用することができる (即ち、かかる化合物であれば、IP3のレベルを低下させるであろう)。 Gq-依存性受容体はAP1 レポーターアッセイを用いて調べることも出来、ここで、Gq-依存性ホスホリパーゼ CがAP1 要素を含む遺伝子の活性化をもたらす。
【0047】
潜在的(potential)活性化因子、阻害剤、または調節因子により処理されたGPCRを含むサンプルまたはアッセイが、阻害剤、活性化因子、または調節因子なしの対照サンプルと比較されて阻害の程度が調べられる。(阻害剤によって処理されていない)対照サンプルには相対的 GPCR 活性値として100%を割り当てる。GPCRの阻害は、対照と比較してのGPCR 活性値が約 80%、好ましくは 50%、より好ましくは 25%である場合に達成される。GPCRの活性化は、(活性化因子で処理されていない) 対照と比較してのGPCR 活性値が110%、より好ましくは 150%、より好ましくは 200-500% (即ち、対照と比較して2〜5倍高い)、より好ましくは 1000-3000% またはそれ以上である場合に達成される。
【0048】
GPCR ポリペプチドの機能に対する化合物の効果は、上記のパラメーターのいずれかを調べることによって測定することができる。GPCR 活性に影響を与えるあらゆる好適な生理的変化が、化合物のGPCRおよび天然リガンド-媒介GPCR 活性に対する影響を評価するために用いることが出来る。機能的影響がインタクトな細胞または動物を用いて測定される場合、様々な効果、例えば、伝達物質放出、ホルモン放出、既知および特徴未決定の両方の遺伝子マーカーに対する転写変化(例えば、ノザンブロット)、細胞代謝における変化、例えば、細胞成長またはpH 変化、および細胞内セカンドメッセンジャー、例えば Ca2+、IP3またはcAMPにおける変化を測定することもできる。
【0049】
GPCR シグナル伝達およびシグナル伝達のアッセイ方法についての一般的概説のために、例えば、Methods in Enzymology,vols. 237および238 (1994)およびvolume 96 (1983); Bourne et al.,Nature 10:349:117 27 (1991); Bourne et al.,Nature 348:125 32 (1990); Pitcher et al.,Annu. Rev. Biochem. 67:653 92 (1998)を参照されたい。
【0050】
GPCR 活性の調節因子は上記のように組換えまたは天然のGPCR ポリペプチドを用いて試験される。タンパク質は単離され、細胞において発現され、細胞由来の膜において発現され、組織または動物において発現されることが出来る。例えば、脂肪細胞、免疫系の細胞、形質転換細胞、または膜が上記のGPCR ポリペプチドを試験するために用いることが出来る。調節は本明細書に記載するインビトロまたはインビボアッセイの1つを用いて試験される。シグナル伝達もまた、インビトロで可溶性または固相反応により、キメラ分子、例えば、異種シグナル伝達ドメインと共有結合した受容体の細胞外ドメイン、または受容体の膜貫通および/または 細胞質ドメインと共有結合した異種細胞外ドメインを用いて調べることが出来る。さらに、目的のタンパク質のリガンド-結合ドメインは、インビトロにて可溶性または固相反応においてリガンド結合についてアッセイするために利用することができる。
【0051】
GPCR、ドメイン、またはキメラタンパク質へのリガンド結合は、多数のフォーマットにおいて試験することができる。結合は、溶液中、二分子膜中、固相に結合して、脂質単分子層中、または小胞(vesicle)中において行うことができる。典型的には、本発明のアッセイにおいて、天然リガンドのその受容体への結合が、候補調節因子の存在下で測定される。あるいは、候補調節因子の結合を天然リガンドの存在下で測定してもよい。しばしば、化合物が天然リガンドの受容体への結合と競合する能力を測定する競合アッセイが用いられる。結合は、例えば、分光学的特徴(例えば、蛍光、吸光度、屈折率)における変化、水力学 (例えば、形状) 変化、またはクロマトグラフィーまたは溶解度特性における変化を測定することにより試験することができる。
【0052】
受容体-G-タンパク質相互作用は、調節因子についてアッセイするためにも利用することができる。例えば、GTPの非存在下において、活性化因子、例えば、天然リガンドの結合は、G タンパク質 (3つのすべてのサブユニット)と受容体との緊密な複合体の形成を導く。この複合体は上記のように様々な方法にて検出することができる。かかるアッセイは、阻害剤の探索のために改変することが出来る。例えば、リガンドを、受容体およびG タンパク質にGTPの非存在下で添加することにより緊密な複合体を形成させることができる。阻害剤またはアンタゴニストは、受容体-G タンパク質複合体の解離をみることにより同定することができる。GTPの存在下では、G タンパク質のαサブユニットの他の2つのG タンパク質サブユニットからの遊離が活性化の尺度として役立つ。
【0053】
活性化または阻害されたG-タンパク質は次いで、下流エフェクター、例えば、タンパク質、酵素、およびチャンネルの特性を変化させる。古典的な例としては、視覚系におけるトランスデューシンによるcGMP ホスホジエステラーゼ、促進性 G-タンパク質によるアデニル酸シクラーゼ、Gqおよびその他の同族の(cognate)G タンパク質によるホスホリパーゼ Cの活性化、およびGi およびその他のG タンパク質による多様なチャンネルの調節が挙げられる。下流の結果、例えば、ホスホリパーゼ CによるジアシルグリセロールおよびIP3の生成、そして、例えば、IP3によるカルシウム動員(以下にさらに説明する)も調べることが出来る。したがって、調節因子は、リガンド-媒介下流効果を刺激または阻害するその能力について評価することができる。候補調節因子は、ニコチン酸または受容体を活性化する関連化合物によって誘導されるカルシウム動員を阻害する能力について評価されうる。
【0054】
別の例において、化合物がGPCR 活性を阻害する能力は、下流アッセイを用いて、例えば、脂肪細胞における脂肪分解、脂肪組織からの遊離アミノ酸の放出、およびリポタンパク質リパーゼ活性を測定することにより、判定することができる。これは例えば、様々な量の化合物がGPCRとともにインキュベートされる競合アッセイを用いて達成されうる。
【0055】
調節因子はそれゆえ、β-アレスチン動員(recruitment)を伴うアッセイを用いても同定することができる。β-アレスチンは、活性化されていない(unactivated)細胞において細胞質全体に分布している調節タンパク質として作用する。適切なGPCRへのリガンド結合は、β-アレスチンの細胞質から細胞表面への再分配と関連しており、細胞表面にてそれは GPCRと結合(associate)する。したがって、受容体活性化および候補調節因子のリガンド-誘導性受容体活性化に対する効果は、細胞表面へのβ-アレスチン動員をモニターすることによって評価することができる。これは、標識化されたβ-アレスチン融合タンパク質 (例えば、β-アレスチン-緑色蛍光タンパク質 (GFP))を細胞へとトランスフェクトし、その分布を共焦点顕微鏡法を用いてモニターすることによって頻繁に行われている (例えば、Groarke et al.、J. Biol. Chem. 274(33):23263 69 (1999)参照)。
【0056】
受容体内在化(internalization)アッセイもまた、受容体機能を評価するために用いることができる。リガンドが結合すると、G-タンパク質共役受容体--リガンド複合体は原形質膜からクラスリン被覆小胞エンドサイトーシス過程によって内在化される; 受容体上の内在化モチーフがアダプタータンパク質複合体に結合し、活性化された受容体のクラスリン被覆ピットおよび小胞への動員を媒介する。活性化された受容体のみが内在化されるので、内在化された受容体の量を決定することにより、リガンド-受容体結合を検出することが可能である。1つのアッセイフォーマットにおいて、細胞が放射性標識された受容体により一過性にトランスフェクトされ、リガンド結合および受容体内在化を可能とするために適当な時間インキュベートされる。その後、表面に結合している放射能が酸溶液による洗浄により除かれ、細胞が可溶化され、内在化された放射能の量がリガンド結合のパーセンテージとして算出される。例えば、Vrecl et al.,Mol. Endocrinol. 12:1818 29 (1988)およびConway et al.,J. Cell Physiol. 189(3):341 55 (2001)参照。さらに、受容体内在化アプローチは生細胞における別の細胞成分とのGPCR 相互作用のリアルタイムでの光学的測定を可能とした (例えば、Barak et al.、Mol. Pharmacol. 51(2)177 84 (1997)参照)。調節因子は、対照細胞および候補化合物と接触した細胞における受容体内在化レベルを比較することにより同定することができる。
【0057】
生細胞におけるGPCR-タンパク質相互作用を評価するために利用可能なもう一つの技術は、生物発光共鳴エネルギー移動 (BRET)を伴う。BRETに関する詳細な議論はKroeger et al.、J. Biol. Chem.、276(16):12736 43 (2001)にみることができる。
【0058】
受容体に刺激される、G-タンパク質へのグアノシン 5’-O-(γ-チオ)-三リン酸 ([35S]GTPγS) 結合もまた、GPCRの調節因子の評価のためのアッセイとして用いることができる。 [35S]GTPγSは放射性標識された GTP 類似体であって、全てのタイプのG-タンパク質に対する高い親和性を有し、高い比活性にて入手可能であり、非結合形態においては不安定であるが、G-タンパク質に結合している場合は加水分解されない。したがって、刺激対非刺激 [35S]GTPγS 結合を、例えば、液体シンチレーションカウンターを用いて比較することにより、リガンドが結合した受容体を定量的に評価することが可能である。受容体-リガンド相互作用の阻害剤であれば、[35S]GTPγS 結合の低下を導くであろう。 [35S]GTPγS 結合アッセイについての説明は、Traynor and Nahorski、Mol. Pharmacol. 47(4):848 54 (1995) およびBohn et al.、Nature 408:720 23 (2000)において提供されている。
【0059】
調節因子がリガンド-誘導性イオン束に影響を与える能力も判定することができる。イオン束は、GPCRを発現する細胞または膜の分極 (即ち、電位)における変化を決定することにより評価することができる。細胞の分極における変化を決定する1つの手段は、電圧固定法およびパッチクランプ法、例えば、「細胞-結合(attached)」モード、「インサイド-アウト」モードおよび「全細胞」モードにより電流における変化を測定すること(それにより分極における変化を測定すること)による(例えば、Ackerman et al.、New Engl. J. Med. 336:1575 1595 (1997)参照)。全細胞電流は標準的方法を用いて常套的に決定される (例えば、Hamil et al.、PFlugers. Archiv. 391:85 (1981)参照)。その他の公知のアッセイとしては以下が挙げられる:放射性標識イオン束アッセイおよび膜電位感受性色素を用いる蛍光アッセイ (例えば、Vestergarrd-Bogind et al.,J. Membrane Biol. 88:67 75 (1988); Gonzales & Tsien,Chem. Biol. 4:269 277 (1997); Daniel et al.,J. Pharmacol. Meth. 25:185 193 (1991); Holevinsky et al.,J. Membrane Biology 137:59 70 (1994)参照)。一般的に、試験すべき化合物は1 pMから100 mMの範囲にて存在する。
【0060】
G-タンパク質共役受容体についての好ましいアッセイには、受容体活性を報告するためにイオンまたは膜電位感受性色素が負荷された(loaded)細胞が含まれる。かかる受容体の活性を判定するためのアッセイはまた、その他のG-タンパク質共役受容体についての既知のアゴニストおよびアンタゴニストおよび被験化合物の活性を評価するための陰性または陽性対照として本明細書に開示する天然リガンドを用いることもできる。調節性化合物 (例えば、アゴニスト、アンタゴニスト)を同定するためのアッセイにおいて、細胞質におけるイオンのレベルまたは膜電圧の変化がイオン感受性または膜電圧蛍光指標をそれぞれ用いてモニターされる。使用されうるイオン感受性指標および電圧プローブのなかでも Molecular Probesの1997年のカタログに開示のものが挙げられる。G-タンパク質共役受容体について、混合された(promiscuous)G-タンパク質、例えば Gα15およびGα16 が選択したアッセイにおいて用いることができる (Wilkie et al.、Proc. Nat’l Acad. Sci. USA 88:10049 10053 (1991))。かかる混合されたG-タンパク質は広範な受容体と異種細胞におけるシグナル伝達経路との共役を可能とする。
【0061】
上記のように、リガンド結合による受容体活性化は典型的には次に起こる細胞内事象、例えば、カルシウムイオンの細胞内貯蔵を放出させる、セカンドメッセンジャー、例えば、IP3の上昇を開始させる。いくつかのG-タンパク質共役受容体の活性化は、ホスファチジルイノシトールのホスホリパーゼ C-媒介加水分解を介してイノシトール三リン酸 (IP3)の形成を刺激する(Berridge & Irvine、Nature 312:315 21 (1984))。IP3は次いで 、細胞内カルシウムイオン貯蔵の放出を刺激する。したがって、細胞質カルシウムイオンレベルにおける変化、またはセカンドメッセンジャーレベル、例えば、IP3における変化は、G-タンパク質共役受容体機能を評価するために用いることが出来る。かかるG-タンパク質共役受容体を発現する細胞は細胞内貯蔵からおよびイオンチャンネルの活性化を介する両方の寄与の結果として細胞質カルシウムレベルの上昇を示し得、この場合、内部貯蔵からのカルシウム放出に起因する蛍光応答を区別するためにキレート化剤、例えば、EGTAを所望により追加したカルシウム-非含有バッファーにおいてかかるアッセイを行うのが必須ではないが望ましいであろう。
【0062】
その他のアッセイは、リガンド結合により活性化された場合、下流エフェクター、例えば、アデニル酸シクラーゼの活性化または阻害により、細胞内環状ヌクレオチド、例えば、cAMPまたはcGMPのレベルの変化をもたらす、受容体の活性を測定することを含み得る。一つの態様において、細胞内 cAMPまたはcGMPの変化は、イムノアッセイを用いて測定することが出来る。Offermanns & Simon、J. Biol. Chem. 270:15175 15180 (1995)に記載の方法をcAMPのレベルの決定に用いることが出来る。また、Felley-Bosco et al.,Am. J. Resp. Cell and Mol. Biol. 11:159 164 (1994)に記載の方法をcGMPのレベルの決定に用いることができる。さらに、cAMP および/または cGMPを測定するためのアッセイキットが引用により本明細書に含める米国特許第4,115,538号に記載されている。
【0063】
別の態様において、ホスファチジルイノシトール (PI) 加水分解を引用により本明細書に含める米国特許第5,436,128号によって分析することが出来る。簡単に説明すると、アッセイは細胞を3H-ミオイノシトールにより48時間以上標識することを伴う。標識された細胞は化合物によって1時間処理される。処理された細胞が溶解され、クロロホルム-メタノール-水に抽出され、その後、イノシトールリン酸がイオン交換クロマトグラフィーによって分離され、シンチレーション計数によって定量される。刺激倍数(fold stimulation)が、アゴニストの存在下でのカウント毎分 (cpm)のバッファー対照の存在下でのcpmに対する比を算出することにより決定される。同様に、阻害倍数(fold inhibition)は、アンタゴニストの存在下でのcpmのバッファー対照 (アゴニストを含んでいても含まなくてもよい)の存在下でのcpmとの比を算出することにより決定される。
【0064】
別の態様において、転写レベルを、リガンド-誘導性シグナル伝達に対する被験化合物の効果を評価するために測定することが出来る。目的のタンパク質を含む宿主細胞が、相互作用が発揮されるために十分な時間、天然リガンドの存在下で被験化合物と接触され、次いで遺伝子発現のレベルが測定される。かかる相互作用を発揮するまでの時間の量は、例えば、経時変化を取り(running a time course)、時間の関数として転写レベルを測定することにより、経験的に決定することができる。転写の量は、当業者に好適であることが知られているあらゆる方法を用いることにより測定することができる。例えば、目的のタンパク質のmRNA 発現はノザンブロットを用いて検出することができるし、あるいはそれらのポリペプチド産物はイムノアッセイを用いて同定することができる。あるいは、レポーター遺伝子を用いる転写に基づくアッセイが、引用により本明細書に含める米国特許第5,436,128号に記載のようにして用いることができる。レポーター遺伝子は、例えば、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、ホタルルシフェラーゼ、細菌ルシフェラーゼ、β-ガラクトシダーゼおよびアルカリホスファターゼであり得る。さらに、目的のタンパク質は、第二のレポーター、例えば、緑色蛍光タンパク質との結合を介して間接的レポーターとして使用することが出来る(例えば、Mistili & Spector,Nature Biotechnology 15:961 964 (1997)参照)。
【0065】
転写の量は、次いで被験化合物の非存在下での同じ細胞における転写の量と比較されるか、あるいはそれは目的のタンパク質を有さない実質的に同一の細胞における転写の量と比較されてもよい。実質的に同一の細胞は、組換え細胞がそれから調製されたが異種 DNAの導入により改変されていない同一の細胞に由来しうる。転写の量におけるなんらかの相違は、被験化合物が目的のタンパク質の活性をなんらかの形で変化させたことを示す。
【0066】
GPCR アンタゴニストにより処理されるサンプルは、被験化合物なしで、天然リガンドを含む対照サンプルと比較され、調節の程度が調べられる。(活性化因子または阻害剤により処理されていない)対照サンプルには、相対的 GPCR 活性値として100が割り当てられる。GPCRの阻害は、対照と比較してのGPCR 活性値が約90%、所望により 50%、または所望により 25%の場合に達成される。GPCRの活性化は、対照と比較してのGPCR 活性値が110%、所望により 150%、200-500%、または1000-2000%の場合に達成される。
【0067】
β-アレスチン/GRK-媒介シグナル伝達の決定
AT1 アンジオテンシン受容体を介してβ-アレスチン/GRK-媒介シグナル伝達を活性化する本発明の化合物の能力は、AT1 アンジオテンシン受容体を介するβ-アレスチン/GRK-媒介シグナル伝達、あるいはかかるシグナル伝達の非存在を検出するために使用されることが当該技術分野において公知のあらゆるアッセイを用いて測定することができる。一般的に、活性化されたGPCRは受容体のC-末端尾部(およびおそらくはその他の部位もまた)をリン酸化するキナーゼのための基質となる。したがって、アンタゴニストは、32Pのガンマ-標識されたGTPから受容体への移動を阻害し、それはシンチレーションカウンターによりアッセイすることができる。C-末端尾部のリン酸化はアレスチン-様タンパク質の結合を促進し、G-タンパク質の結合に干渉する。キナーゼ/アレスチン経路は、多くのGPCR 受容体の脱感作において鍵となる役割を果たす。
【0068】
GPCRにより媒介されるβ-アレスチン機能における近接した事象(proximal event)は、リガンド結合およびGRKによる受容体リン酸化の後の受容体への動員である。したがって、β-アレスチン動員の測定は、β-アレスチン機能についてのリガンド有効性の判定に用いられた。
【0069】
ペプチド、誘導体および模倣体
本明細書および請求項にわたって用いられる用語、「ペプチジル」および「ペプチド性」は、本発明の態様によるペプチドの活性誘導体、変異体、および/または模倣体を含む意図である。ペプチド性化合物は本発明の態様によるペプチドの構造的に類似の生理活性同等物である。「構造的に類似の生理活性同等物」とは、実質的に同等の治療効果を生じるために同定された生理活性ペプチドと十分に類似の構造を有するペプチジル化合物を意味する。例えば、ペプチドのアミノ酸配列に由来する、またはペプチドのアミノ酸配列バックボーンを有するペプチド性化合物は、ペプチドの構造的に類似の生理活性同等物と考えられる。
【0070】
「変異体」という用語は、あるタンパク質またはペプチドのアミノ酸配列と比較して1以上のアミノ酸置換、欠失、および/または挿入が存在するタンパク質またはポリペプチドをいい、タンパク質またはペプチドの天然の対立遺伝子変異体または選択的スプライシング変異体を含む。「変異体」という用語は、ペプチド配列における1以上のアミノ酸の、類似または相同のアミノ酸または非類似のアミノ酸による交換を含む。好ましい変異体は、1以上のアミノ酸位置におけるアラニン置換を含む。その他の好ましい置換は、タンパク質の全体の正味の電荷、極性、または疎水性にほとんどまたは全く効果を有さない保存的置換を含む。保存的置換は以下の表に示す。いくつかの態様によると、CK ポリペプチドは、好ましい態様のアミノ酸またはアミノ酸類似体配列に対して少なくとも 60%、65%、70%、75%、80%、85%、88%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有する。
【0071】
保存的アミノ酸置換
【表3】

【0072】
以下の表は、アミノ酸置換の別のスキームを示す:
【表4】

【0073】
その他の変異体は、より保存的ではないアミノ酸置換からなり得、例えば、(a)置換領域におけるポリペプチドバックボーンの構造、例えば、シートまたはヘリックスコンフォメーション、(b)標的部位での分子の電荷または疎水性、あるいは(c)側鎖の嵩高さの維持に対するそれらの効果においてより顕著に異なる残基を選択する。一般的に機能に対してより顕著な効果を有すると予測される置換は、(a)グリシンおよび/またはプロリンが別のアミノ酸により置換されるか、または欠失または挿入されたもの; (b)親水性残基、例えば、セリルまたはトレオニルが、疎水性残基、例えば、ロイシル、イソロイシル、フェニルアラニル、バリル、またはアラニルのために(またはによって)置換されたもの; (c) システイン残基が別の残基のために(またはによって)置換されたもの; (d)陽性の側鎖を有する残基、例えば、リジル、アルギニル、またはヒスチジルが、陰性の電荷を有する残基、例えば、グルタミルまたはアスパルチルのために(またはによって)置換されたもの;あるいは(e)嵩高い側鎖を有する残基、例えば、フェニルアラニンが、かかる側鎖を有さない残基、例えば、グリシンのために(またはによって)置換されたもの、である。その他の変異体としては、新規なグリコシル化および/またはリン酸化部位を生じるよう設計されたもの、または、既存のグリコシル化および/またはリン酸化部位を除去するように設計されたものが挙げられる。変異体は、グリコシル化部位、タンパク分解切断部位および/またはシステイン残基での少なくとも1つのアミノ酸置換を含む。変異体はまた、タンパク質またはペプチドアミノ酸配列の前または後にリンカーペプチド上で追加のアミノ酸残基を有するタンパク質およびペプチドも含む。「変異体」という用語はまた、アミノ酸配列の3’または5’末端または両方に隣接する少なくとも1から25まで(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20)の追加のアミノ酸を有する本発明のタンパク質/ペプチドのアミノ酸配列を有するポリペプチドも含む。
【0074】
「変異体」という用語はまた、2つのポリペプチドのアミノ酸の位置における類似性を比較するために一般的に用いられている標準的方法によって決定して、本発明のタンパク質のそのアミノ酸配列において少なくとも 60から 99 パーセント同一な (例えば、60、65、70、75、80、85、90、95、98、99、または100%、すべて含む) タンパク質もいう。2つのタンパク質の間の類似性または同一性の程度は、公知の方法によって容易に算出することができる。同一性を決定する好ましい方法は、試験される配列の間にもっとも多くの一致(match)を与えるよう設計されたものである。同一性および類似性を決定する方法は、公的に入手可能なコンピュータープログラムにおいて体系化されている。変異体は場合によっては、比較タンパク質またはペプチドと比べて典型的には1以上の(例えば、2、3、4、5等) アミノ酸置換、欠失、および/または挿入を有する。
【0075】
本発明の化合物は、その誘導体および/または模倣体に加えて、本明細書に記載する一般式の一つを有する化合物を含む。
【0076】
「誘導体」という用語は、天然プロセスによって、例えば、プロセッシングおよびその他の翻訳後修飾によって化学修飾されたもののみならず、化学修飾技術、例えば、1以上のポリエチレングリコール分子、糖、リン酸、および/またはその他のかかる分子の付加によって化学修飾されたものも含み、ここで該1または複数の分子は野生型タンパク質に天然には結合していないものである、化学修飾されたタンパク質またはポリペプチドをいう。誘導体には塩が含まれる。かかる化学修飾は基本テキストおよびより詳細な論文ならびに膨大な研究文献によく記載されており、それらは当業者に周知である。同じタイプの修飾が所与のタンパク質またはポリペプチドにおける数個の部位にて同じまたは異なる程度にて存在しうることが期待される。また、所与のタンパク質またはポリペプチドは、多くのタイプの修飾を含みうる。修飾はタンパク質またはポリペプチドのどこにおいても起こり得、例えば、ペプチドバックボーン、アミノ酸側鎖、およびアミノまたはカルボキシル末端が挙げられる。修飾としては、例えば、アセチル化、アシル化、ADP-リボシル化、アミド化、フラビンの共有結合付加、ヘム部分の共有結合付加、ヌクレオチドまたはヌクレオチド誘導体の共有結合付加、脂質または脂質誘導体の共有結合付加、ホスファチジルイノシトールの共有結合付加、架橋、閉環、ジスルフィド結合形成、脱メチル化、共有結合架橋の形成、システインの形成、ピログルタミン酸の形成、ホルミル化、ガンマ-カルボキシル化、グリコシル化、GPI アンカー形成、ヒドロキシル化、ヨウ素化、メチル化、ミリストイル化、酸化、タンパク分解プロセッシング、リン酸化、プレニル化、ラセミ化、グリコシル化、脂質付加、硫酸化、グルタミン酸残基のガンマ-カルボキシル化、ヒドロキシル化およびADP-リボシル化、セレノイル化、硫酸化、アミノ酸のタンパク質へのトランスファー-RNA媒介付加、例えば、アルギニル化、およびユビキチン化が挙げられる。例えば、Proteins--Structure And Molecular Properties,2nd Ed.,T. E. Creighton,W. H. Freeman and Company,New York (1993) およびWold,F.,”Posttranslational Protein Modifications:Perspectives and Prospects,” pgs. 1-12 in Posttranslational Covalent Modification Of Proteins,B. C. Johnson,Ed.,Academic Press,New York (1983); Seifter et al.,Meth. Enzymol. 182:626-646 (1990)および Rattan et al.,”Protein Synthesis:Posttranslational Modifications and Aging,” Ann. N.Y. Acad. Sci. 663:48-62 (1992)参照。「誘導体」という用語は、タンパク質またはポリペプチドが結果として分枝または、分枝を有するまたは有さない環状になる、化学修飾を含む。環状、分枝および分枝環状タンパク質またはポリペプチドは翻訳後天然プロセスに起因し得うるし、完全に合成方法によっても作られうる。
【0077】
いくつかの態様によると、本発明の化合物は所望により、N-末端が誘導体化されて、-NRR1 基;-NRC(O)R 基;-NRC(O)OR 基;-NRS(O)2 R 基;-NHC(O)NHR 基、ここで、RおよびR1 は水素または低級アルキル、ただし、RおよびR1は両方が水素ではない; スクシンイミド基;ベンジルオキシカルボニル-NH-(CBZ-CH-) 基;またはフェニル環に低級アルキル、低級アルコキシ、クロロ、およびブロモからなる群から選択される1から3の置換基を有するベンジルオキシカルボニル-NE- 基となった化合物を含んでもよい。
【0078】
いくつかの態様によると、本発明の化合物は、所望によりC 末端が-C(O)R2 へと誘導体化されている化合物も含み得、ここで、R2 は、低級アルコキシ、および-NR3 R4からなる群から選択され、R3およびR4は、独立に水素および低級アルキルからなる群から選択される。
【0079】
「ペプチド模倣体」または「模倣体」という用語は、ペプチドまたはタンパク質の生物学的活性を模倣しているが、化学的性質においてもはやペプチド性(peptidic)ではない生物学的に活性の化合物をいい、即ち、それらはもはやペプチド結合(即ち、アミノ酸の間のアミド結合)を含まない。ここで、ペプチド模倣体という用語は、性質において完全にはペプチド性ではない分子を広い意味で含むために用いられ、例えば、偽-ペプチド、セミ(semi)-ペプチドおよびペプトイド(peptoid)を含む。この広義のペプチド模倣体 (ペプチドの部分がペプチド結合を有さない構造によって置換されているもの)の例を以下に記載する。完全にまたは部分的に非-ペプチドである、本態様によるペプチド模倣体は、ペプチド模倣体が基づくペプチドにおける活性の基の三次元配置と密接に類似する反応性化学部分の空間的配置を提供する。この類似の活性部位幾何学の結果、ペプチド模倣体は、ペプチドの生物学的活性と類似の生物学的系に対する効果を有する。
【0080】
本発明の組成物に含まれるペプチドおよびペプチド模倣体は、6〜25、6〜20、6〜15、6〜10、6〜9、6〜8、7〜25、7〜20、7〜15、7〜12、7〜10、7〜9、7〜8、8〜25、8〜20、8〜15、8〜12、8〜10、8〜9、9〜25、9〜20、9〜18、9〜15、9〜14、9〜12、10〜25、10〜20、10〜15、10〜14、10〜12、12〜25または12〜20 アミノ酸またはアミノ酸類似体の長さである。
【0081】
本態様のペプチド模倣体は好ましくは、三次元形状と生物学的活性との両方において本明細書に記載するペプチドと実質的に類似する。いくつかの態様によると、本発明のペプチド模倣体は、本発明の化合物の一方または両方の末端に保護基、および/または、1以上のペプチド結合の非-ペプチド結合による置換、を有する。かかる修飾は、化合物を化合物それ自体よりもタンパク分解切断を受けにくくしうる。例えば、1以上のペプチド結合は、別のタイプの共有結合(例えば、炭素-炭素結合またはアシル結合)により置換されうる。ペプチド模倣体はまた、アミノ末端またはカルボキシル末端保護基、例えば t-ブチルオキシカルボニル、アセチル、アルキル、スクシニル、メトキシスクシニル、スベリル、アジピル、アゼライル、ダンシル、ベンジルオキシカルボニル、フルオレニルメトキシカルボニル、メトキシアゼライル、メトキシアジピル、メトキシスベリル、および2,4,-ジニトロフェニルを組み込んでいてもよく、それにより模倣体をタンパク分解を受けにくいものとすることができる。非-ペプチド結合およびカルボキシル-またはアミノ末端保護基は、単独でまたは組み合わせて用いることにより、模倣体を、対応するペプチド/化合物よりもタンパク分解を受けにくくすることができる。さらに、D-アミノ酸による通常のL-立体異性体の置換を行うことが出来、例えば、それによって分子の半減期を上昇させることが出来る。
【0082】
したがって、いくつかの態様によると、本発明の化合物は所望により偽ペプチド結合を含んでいてもよく、そこでは、1以上のペプチジル [-C(O)NR-] 連結(結合)が非-ペプチジル連結、例えば、-CH2 -NH-、-CH2 -S-、-CH2 -SO-、-CH2 -SO 2 -、-NH-CO-、または-CH=CH-により置換されており、ペプチド結合 (-CO-NH-)を置換している。いくつかの態様によると、本発明の化合物は、所望により偽ペプチド結合を含んでいてもよく、そこでは1以上のペプチジル [-C(O)NR-] 連結(結合)が、非-ペプチジル連結、例えば、-CH2-カルバメート連結[-CH2-OC(O)NR-]; ホスホン酸連結; -CH2 -スルホンアミド [-CH2 -S(O)2 NR-]連結; 尿素[-NHC(O)NH-] 連結;-CH2 -二級アミン連結;またはアルキル化ペプチジル連結 [-C(O)NR6 -ここでR6は低級アルキル]により置換されている。好ましい模倣体は、本発明の-C(O)NH- 連結のゼロからすべてが偽ペプチドにより置換されている。
【0083】
ペプチド模倣体を作るために当該技術分野において公知のペプチドを構造的に修飾する方法の例としては、D-アミノ酸残基構造をもたらすバックボーン不斉中心の反転が挙げられ、それは、特にN-末端において、活性に悪影響を与えずにタンパク分解性分解についての安定性の上昇をもたらしうる。一例が論文、” Tritriated D-ala1-Peptide T Binding”,Smith C. S. et al.,Drug Development Res.,15,pp. 371-379 (1988)に挙げられている。第二の方法は、安定性のために環状構造を変化させることであり、例えばNからCの鎖間イミドおよびラクタムである(Ede et al. in Smith and Rivier (Eds.) ”Peptides:Chemistry and Biology”,Escom,Leiden (1991),pp. 268-270)。この例は、立体配座的に拘束されたチモペンチン-様化合物において与えられ、例えば米国特許第4,457,489号(1985)、Goldstein、G. et al.に開示されているものが挙げられ、その開示内容はその全体を引用により本明細書に含める。第3の方法はペプチドにおけるペプチド結合を偽ペプチド結合によって置換することであり、それによってタンパク分解に対する耐性が与えられる。偽ペプチド結合、例えば、-CH 2 -NH-、-CH2 -S-、-CH2 -SO-、-CH2 -SO2 -、-NH-CO-または-CH=CH-を含むペプチドの合成は、溶液方法または有機化学の標準的方法を用いる固相合成との組み合わせ手順において行われる。したがって、例えば、-CH2-NH-結合の導入はFEHRENTZおよびCASTRO (Synthesis,676-678,1983)により記載の技術にしたがって溶液中でアルデヒド Fmoc-NH-CHR-CHOを調製し、SASAKIおよびCOY (Peptides,8,119-121,1988)に記載の技術によって固相上で、または溶液中で、成長しつつあるペプチド鎖とそれとを縮合することによって達成される。
【0084】
医薬組成物/製剤
本発明において使用するための医薬組成物は、1以上の生理的に許容される担体または賦形剤を用いて標準的技術によって製剤されうる。本発明の好ましい態様において、製剤はバッファーおよび/または保存料を含みうる。化合物およびその生理的に許容される塩および溶媒和物は、あらゆる好適な経路、例えば、吸入を介して、局所に、経鼻的に、経口的に、非経口的に(例えば、静脈内に、腹腔内に、膀胱内にまたは髄腔内に)または直腸内による投与のために、1以上の医薬上許容される担体を含む媒体中に製剤することができ、その割合はペプチドの溶解度および化学的性質、選択された投与経路および標準的生物学的慣行によって決定される。
【0085】
いくつかの態様によると、有効量の1以上の本発明の化合物を、例えば、医薬上許容される希釈剤、保存料、可溶化剤、乳化剤、アジュバントおよび/またはその他の担体とともに含む医薬組成物が提供される。かかる組成物は、様々なバッファー成分(例えば、TRIS またはその他のアミン、炭酸塩、リン酸塩、アミノ酸、例えば、グリシンアミド塩酸塩 (特に生理的pH範囲内)、N-グリシルグリシン、リン酸 (二塩基性、三塩基性)ナトリウムまたはカリウム等またはTRIS-HClまたは酢酸塩)、pHおよびイオン強度の希釈剤; 添加剤、例えば、洗浄剤および可溶化剤(例えば、界面活性剤、例えば、Pluronics、Tween 20、Tween 80 (Polysorbate 80)、Cremophor、ポリオール、例えば、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール等)、抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸、メタ重亜硫酸ナトリウム)、保存料 (例えば、Thimersol、ベンジルアルコール、パラベン等)および増量物質(例えば、糖類、例えば、スクロース、ラクトース、マンニトール、ポリマー、例えば、ポリビニルピロリドンまたはデキストラン等); および/または材料のポリマー性化合物、例えば、ポリ乳酸、ポリグリコール酸等の粒子状調製物またはリポソームへの組込みを含む。ヒアルロン酸を用いることも出来る。かかる組成物は、本発明の化合物の物理的状態、安定性、インビボ放出速度、およびインビボクリアランス速度に影響を与えるために用いられ得る。例えば、引用により本明細書に含めるRemington’s Pharmaceutical Sciences、18th Ed. (1990、Mack Publishing Co.、Easton、Pa. 18042) page 1435-1712を参照。組成物は、例えば、液体形態で調製することができ、あるいは、乾燥粉末、例えば、凍結乾燥形態にて調製することができる。かかる組成物を投与する特定の方法を以下に記載する。
【0086】
バッファーを本発明の製剤に含める場合、バッファーは、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、クエン酸塩、グリシルグリシン、ヒスチジン、グリシン、リジン、アルギニン、リン酸二水素ナトリウム、リン酸1水素2ナトリウム、リン酸ナトリウム、およびトリス(ヒドロキシメチル)-アミノメタン、またはそれらの混合物からなる群から選択される。これらの特定のバッファーのそれぞれ1つは本発明の代替の態様を構成する。本発明の好ましい態様において、バッファーは、グリシルグリシン、リン酸二水素ナトリウム、リン酸1水素2ナトリウム、リン酸ナトリウムまたはそれらの混合物である。
【0087】
医薬上許容される保存料を本発明の製剤に含める場合、保存料は、フェノール、m-クレゾール、p-ヒドロキシ安息香酸メチル、p-ヒドロキシ安息香酸プロピル、2-フェノキシエタノール、p-ヒドロキシ安息香酸ブチル、2-フェニルエタノール、ベンジルアルコール、クロロブタノール、およびチオメロサール、またはそれらの混合物からなる群から選択される。これらの特定の保存料のそれぞれ1つは本発明の代替の態様を構成する。本発明の好ましい態様において、保存料は、フェノールまたはm-クレゾールである。
【0088】
本発明のさらなる態様において、保存料は、約 0.1 mg/ml から約 50 mg/mlの濃度にて、より好ましくは約 0.1 mg/mlから約 25 mg/mlの濃度、およびもっとも好ましくは約 0.1 mg/mlから約 10 mg/mlの濃度にて存在する。
【0089】
医薬組成物における保存料の使用は当業者に周知である。便宜のために、Remington:The Science and Practice of Pharmacy、19th edition、1995が参照される。
【0090】
本発明のさらなる態様において、製剤はさらにキレート化剤を含んでいてもよく、ここで、キレート化剤は、エチレンジアミンテトラ酢酸 (EDTA)、クエン酸、およびアスパラギン酸、およびそれらの混合物の塩から選択されうる。これら特定のキレート化剤のそれぞれ1つは、本発明の代替の態様を構成する。
【0091】
本発明のさらなる態様において、キレート化剤は、0.1 mg/mlから5 mg/mlの濃度にて存在する。本発明のさらなる態様において、キレート化剤は、0.1 mg/mlから2 mg/mlの濃度にて存在する。本発明のさらなる態様において、キレート化剤は2 mg/mlから5 mg/mlの濃度にて存在する。
【0092】
医薬組成物におけるキレート化剤の使用は当業者に周知である。便宜のために、Remington:The Science and Practice of Pharmacy、19th edition、1995が参照される。
【0093】
本発明のさらなる態様において、製剤はさらに高分子量ポリマーまたは低分子量化合物の群から選択される安定化剤を含んでもよく、ここでかかる安定化剤としては、これらに限定されないが、ポリエチレングリコール (例えば、PEG 3350)、ポリビニルアルコール (PVA)、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、様々な塩(例えば、塩化ナトリウム)、L-グリシン、L-ヒスチジン、イミダゾール、アルギニン、リジン、イソロイシン、アスパラギン酸、トリプトファン、トレオニン およびそれらの混合物が挙げられる。これらの特定の安定化剤のそれぞれ1つは、本発明の代替の態様を構成する。本発明の好ましい態様において、安定化剤は、L-ヒスチジン、イミダゾールおよびアルギニンからなる群から選択される。
【0094】
本発明のさらなる態様において、高分子量ポリマーは、0.1 mg/mlから50 mg/mlの濃度にて存在する。本発明のさらなる態様において、高分子量ポリマーは、0.1 mg/mlから5 mg/mlの濃度にて存在する。本発明のさらなる態様において、高分子量ポリマーは、5 mg/mlから10 mg/mlの濃度にて存在する。本発明のさらなる態様において、高分子量ポリマーは、10 mg/mlから20 mg/mlの濃度にて存在する。本発明のさらなる態様において、高分子量ポリマーは、20 mg/mlから30 mg/mlの濃度にて存在する。本発明のさらなる態様において、高分子量 ポリマーは、30 mg/mlから50 mg/mlの濃度にて存在する。
【0095】
本発明のさらなる態様において、低分子量化合物は、0.1 mg/mlから50 mg/mlの濃度にて存在する。本発明のさらなる態様において、低分子量化合物は、0.1 mg/mlから5 mg/mlの濃度にて存在する。本発明のさらなる態様において、低分子量化合物は、5 mg/mlから10 mg/mlの濃度にて存在する。本発明のさらなる態様において、低分子量化合物は、10 mg/mlから20 mg/mlの濃度にて存在する。本発明のさらなる態様において、低分子量化合物は、20 mg/mlから30 mg/mlの濃度にて存在する。本発明のさらなる態様において、低分子量化合物は、30 mg/mlから50 mg/mlの濃度にて存在する。
【0096】
医薬組成物における安定化剤の使用は、当業者に周知である。便宜のために、Remington:The Science and Practice of Pharmacy、19th edition、1995が参照される。
【0097】
本発明のさらなる態様において、本発明の製剤はさらに界面活性剤を含んでいてもよく、ここで界面活性剤は、洗浄剤、エトキシ化ヒマシ油、多解糖(polyglycolyzed)グリセリド、アセチル化モノグリセリド、ソルビタン脂肪酸エステル、ポロキサマー、例えば、188および407、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン誘導体、例えば、アルキル化およびアルコキシル化誘導体(tween類、例えば、Tween-20、またはTween-80)、モノグリセリドまたはそのエトキシ化誘導体、ジグリセリドまたはそのポリオキシエチレン誘導体、グリセロール、コール酸またはその誘導体、レシチン、アルコールおよびリン脂質、グリセロリン脂質 (レシチン、ケファリン、ホスファチジルセリン)、グリセロ糖脂質(ガラクトピラノシド)、スフィンゴリン脂質 (スフィンゴミエリン)、およびスフィンゴ糖脂質 (セラミド、ガングリオシド)、DSS (ドキュセート・ナトリウム、ドキュセート・カルシウム、ドキュセート・カリウム、SDS (ドデシル硫酸ナトリウムまたはラウリル硫酸ナトリウム)、ジパルミトイルホスファチジン酸、カプリル酸ナトリウム、胆汁酸およびその塩およびグリシンまたはタウリン複合体(conjugate)、ウルソデオキシコール酸、コール酸ナトリウム、デオキシコール酸ナトリウム、タウロコール酸ナトリウム、グリココール酸ナトリウム、N-ヘキサデシル-N,N-ジメチル-3-アンモニオ-1-プロパンスルホン酸塩(propanesulfonate)、アニオン性(アルキル-アリール-スルホネート(sulphonate)) 一価界面活性剤、パルミトイルリゾホスファチジル-L-セリン、リゾリン脂質 (例えば、エタノールアミン、コリン、セリンまたはトレオニンの1-アシル-sn-グリセロ-3-リン酸エステル)、リゾホスファチジルおよびホスファチジルコリンのアルキル、アルコキシル (アルキルエステル)、アルコキシ (アルキルエーテル)-誘導体、例えば、リゾホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリンのラウロイルおよびミリストイル 誘導体、および、極性頭部基の修飾、即ち、コリン、エタノールアミン、ホスファチジン酸、セリン、トレオニン、グリセロール、イノシトール、および正に荷電したDODAC、DOTMA、DCP、BISHOP、リゾホスファチジルセリンおよびリゾホスファチジルトレオニン、両性イオン界面活性剤 (例えば、N-アルキル-N,N-ジメチルアンモニオ-1-プロパンスルホネート、3-コーラミド(cholamido)-1-プロピルジメチルアンモニオ-1-プロパンスルホネート、ドデシルホスホコリン、ミリストイル リゾホスファチジルコリン、鶏卵リゾレシチン)、カチオン性界面活性剤(四級アンモニウム塩基) (例えば、セチル-トリメチルアンモニウムブロミド、セチルピリジニウムクロリド)、非イオン性界面活性剤、ポリエチレンオキシド/ポリプロピレンオキシドブロックコポリマー (Pluronic/Tetronic、Triton X-100、ドデシル β-D-グルコピラノシド)またはポリマー性界面活性剤(Tween-40、Tween-80、Brij-35)、フシジン酸誘導体--(例えば、タウロ-ジヒドロフシド酸(dihydrofusidate) ナトリウム等)、長鎖脂肪酸およびそのC6-C12塩 (例えば、オレイン酸およびカプリル酸)、アシルカルニチンおよび誘導体、リジン、アルギニンまたはヒスチジンのNα -アシル化誘導体、またはリジンまたはアルギニンの側鎖アシル化誘導体、リジン、アルギニンまたはヒスチジンおよび中性または酸性アミノ酸のいずれかの組合せを含むジペプチドのNα-アシル化 誘導体、中性アミノ酸および2つの荷電アミノ酸のいずれかの組合せを含むトリペプチドのNα-アシル化誘導体から選択され得、あるいは界面活性剤は、イミダゾリン誘導体の群、またはそれらの混合物から選択されうる。これらの特定の界面活性剤のそれぞれ1つは本発明の代替の態様を構成する。
【0098】
医薬組成物における界面活性剤の使用は当業者に周知である。便宜のために、Remington:The Science and Practice of Pharmacy、19th edition、1995が参照される。
【0099】
医薬上許容される甘味料は、好ましくは 少なくとも1つの強い(intense)甘味料、例えば。サッカリン、サッカリンナトリウムまたはカルシウム、アスパルテーム、アセサルフェーム・カリウム、シクラミン酸ナトリウム、アリターム、ジヒドロカルコン甘味料、モネリン、ステビオシドまたはスクラロース (4,1’,6’-トリクロロ-4,1’,6’-トリデオキシガラクトスクロース)、好ましくは、サッカリン、サッカリンナトリウムまたはカルシウムを含み、そして所望により嵩高い(bulk)甘味料、例えば、ソルビトール、マンニトール、フルクトース、スクロース、マルトース、イソマルト、グルコース、水素化グルコースシロップ、キシリトール、キャラメルまたははち蜜を含む。
【0100】
強い(intense)甘味料は低濃度にて常套的に用いられる。例えば、サッカリンナトリウムの場合、濃度は最終製剤の総体積に基づいて0.04%から 0.1% (w/v)と変動し得、好ましくは低用量製剤において約 0.06%であり、高用量製剤において約 0.08%である。嵩高い(bulk)甘味料は、約 10% から約 35%、好ましくは約 10%から15% (w/v)の範囲のより多量にて有効に用いられ得る。
【0101】
本発明の製剤は常套技術により調製することができ、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、1985 またはRemington:The Science and Practice of Pharmacy、19th edition、1995に記載されているようにして調製でき、ここでかかる製薬産業の常套技術は、所望の最終製品を与えるのに適当な成分を溶解および混合することを含む。
【0102】
「医薬上許容される」または「治療上許容される」という語は生理学的に耐容性であり、好ましくは典型的にはヒトに投与した場合にアレルギーまたは類似の有害反応、例えば、異常亢進、目まい等を生じさせない分子実体および組成物をいう。好ましくは、本明細書において用いる場合、「医薬上許容される」という用語は、動物、より具体的にはヒトにおける使用のために連邦政府または州政府の規制当局により認可されているかまたは米国薬局方またはその他の一般的に認識されている薬局方 (例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing Co. (A. R. Gennaro edit. 1985))に列挙されていることをいう。
【0103】
本発明の化合物の投与は、当該技術分野において公知のいずれの方法を用いて行ってもよい。例えば、投与は、経皮的、非経口、静脈内、動脈内、皮下、筋肉内、頭蓋内、眼窩内、点眼、心室内、関節包内、髄腔内、嚢内、腹腔内、脳室内、くも膜下、鼻腔内、エアロゾール、坐薬による、または経口投与でありうる。好ましくは、本発明の医薬組成物は、注射投与のためのものであり得、あるいは、経口、肺、経鼻、経皮、眼内投与のためのものであり得る。
【0104】
経口投与について、ペプチドまたはその治療上許容される塩は、単位用量形態、例えば、カプセルまたは錠剤中に製剤されうる。錠剤またはカプセルは、医薬上許容される賦形剤、例えば、結合剤、例えば、プレゼラチン化(pregelatinised)トウモロコシでんぷん、ポリビニルピロリドン、またはヒドロキシプロピルメチルセルロース; 充填剤、例えば、ラクトース、微晶質セルロース、またはリン酸水素カルシウム; 潤滑剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク、またはシリカ; 崩壊剤、例えば、ジャガイモでんぷんまたはカルボキシメチルスターチナトリウム;または湿潤剤、例えば、ラウリル硫酸ナトリウムとともに常套の方法によって調製されうる。錠剤は当該技術分野において周知の方法によって被覆することができる。経口投与のための液体調製物は、例えば、溶液、シロップ、または懸濁液の形態をとることができ、またはそれらは使用前に水またはその他の好適な媒体により構成するための乾燥製品として提示されてもよい。かかる液体調製物は、医薬上許容される添加剤、例えば、懸濁化剤、例えば、ソルビトールシロップ、セルロース誘導体、または水素化食用脂; 乳化剤、例えば、レシチンまたはアカシア; 非水性媒体、例えば、アーモンドオイル、油性エステル、エチルアルコール、または分画植物油;および保存料、例えば、p-ヒドロキシ安息香酸メチルまたはプロピルまたはソルビン酸とともに常套方法により調製することができる。調製物はまた適宜、バッファー塩、香味剤、着色剤、および/または甘味剤を含んでいてもよい。所望の場合、経口投与のための調製物は、活性化合物の制御放出を与えるよう好適に製剤してもよい。
【0105】
局所投与のために、ペプチドは、0.1から10 パーセント、好ましくは 0.5から5 パーセントの活性化合物を含む医薬上許容される媒体中に製剤されうる。かかる製剤は、クリーム、ローション、舌下錠、エアロゾルおよび/または乳液の形態におけるものであり得、この目的のために当該技術分野において常套的なように、マトリックスの経皮または頬側パッチに含まれていてもよく、容器タイプであってもよい。
【0106】
非経口投与のために、本発明の化合物は、医薬上許容される媒体または担体との組成物中にて静脈内、皮下、または筋肉内注射により投与される。化合物は、注射、例えば、ボーラス注射または持続注入による非経口投与のために製剤されうる。注射のための製剤は、単位用量形態、例えば、添加された保存料とともにアンプルまたは複数用量容器中にて提示されうる。組成物は、油性または水性媒体中にて懸濁液、溶液、または乳液などの形態をとり得、製剤化剤(formulatory agent)、例えば、懸濁化剤、安定化剤、および/または分散剤を含みうる。あるいは、活性成分は、好適な媒体、例えば、無菌発熱物質-非含有水により使用前に構成するための粉末形態におけるものでありうる。
【0107】
注射による投与のためには、その他の溶質、例えば、バッファーまたは保存料ならびに溶液を等張にするために十分な量の医薬上許容される塩またはグルコースを含んでいてもよい無菌水性媒体中の溶液中にて化合物を使用することが好ましい。いくつかの態様において、本発明の医薬組成物は、医薬上許容される担体とともに製剤して注射物質(injectable)投与のための無菌溶液または懸濁液を提供してもよい。特に、注射物質は、常套の形態にて、液体溶液または懸濁液として、注射の前に液体中の溶液または懸濁液とするのに好適な固体形態としてまたは乳液として調製することができる。好適な賦形剤は、例えば、水、生理食塩水、デキストロース、マンニトール、ラクトース、レシチン、アルブミン、グルタミン酸ナトリウム、システイン塩酸塩等である。さらに、所望の場合、注射用(injectable)医薬組成物は、少量の非毒性補助物質、例えば、湿潤剤、pH 緩衝剤等を含んでいてもよい。所望の場合、吸収促進調製物(例えば、リポソーム)を利用してもよい。好適な医薬用担体は、E. W. Martin による”Remington’s pharmaceutical Sciences” に記載されている。
【0108】
吸入による投与のために、化合物は便宜に、好適な推進剤、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素、またはその他の好適なガスの使用により、加圧パックまたは噴霧器からのエアロゾールスプレー提示(presentation)の形態にて送達してもよい。加圧エアロゾールの場合、用量単位は、計量された量を送達するバルブを提供することにより決定することができる。吸入器(inhaler or insufflator)において使用するための、化合物および好適な粉末基剤、例えば、ラクトースまたはデンプンの粉末を含むカプセルおよびカートリッジ、例えば、ゼラチンを製剤することができる。鼻腔内投与のために、本発明の化合物は、例えば、液体スプレーとして、粉末としてまたは点滴剤の形態において用いることが出来る。
【0109】
化合物は直腸用組成物、例えば、常套の坐薬基剤、例えば、ココアバターまたはその他のグリセリドを含む、例えば、坐薬または停留かん腸中にて製剤することもできる。
【0110】
さらに、化合物は持効性製剤として製剤してもよい。かかる長期作用製剤は、植え込み (例えば、皮下または筋肉内)または筋肉内注射によって投与することができる。したがって、例えば、化合物は好適なポリマー性または親水性材料(例えば、許容される油中の乳液として) またはイオン交換樹脂とともに、または難溶性誘導体として、例えば、難溶性塩として製剤することもできる。
【0111】
組成物は、所望の場合、活性成分を含む1以上の単位用量形態を含みうるパックまたはディスペンサー装置において提示されうる。パックは、例えば、金属またはプラスチック箔を含み得、例えば、ブリスター包装でありうる。パックまたはディスペンサー装置は投与のための指示書を伴いうる。
【0112】
用量
本発明の化合物は、全体または部分的に、本発明のGPCR-リガンド相互作用によって媒介される疾患および障害を予防、治療または管理するために治療上有効用量にて患者に投与されうる。1以上の本発明の化合物を含む医薬組成物は、患者において効果的な保護または治療応答を誘発するのに十分な量にて患者に投与されうる。これを達成するのに適切な量は「治療上有効用量」と定義される。用量は用いる特定の化合物の有効性および対象の症状、ならびに体重または治療すべき領域の表面積によって決定される。用量のサイズはまた、特定の対象における特定の化合物またはベクターの投与に付随する有害効果の存在、性質および程度によっても決定される。
【0113】
かかる化合物の毒性および治療有効性は、細胞培養または実験動物における標準的な薬学上の手順によって、例えば、LD50 (集団の50%に致死的な用量) およびED50 (集団の50%において治療的に効果的な用量)の決定により決定され得る。毒性効果および治療効果の間の用量比は治療指数であり、LD50/ED50の比として表されうる。大きな治療指数を示す化合物が好ましい。毒性の副作用を示す化合物を使用することができるが、かかる化合物を罹患組織の部位に標的化する送達システムを設計し、正常細胞に対する可能性のある傷害を最小化し、それにより副作用を低減するよう注意を払うべきである。
【0114】
細胞培養アッセイおよび動物研究から得られたデータは、ヒトにおける使用のための用量範囲を処方するために用いることが出来る。かかる化合物の用量は好ましくは毒性をほとんどまたはまったく示さないED50を含む循環濃度の範囲内にある。用量は、用いる用量形態および投与経路に依存してこの範囲内で変動しうる。本発明の方法において使用するいずれの化合物についても、治療上有効用量は細胞培養アッセイからまずは見積もることができる。用量は、細胞培養にて決定したIC50 (症状の最大阻害の半分を達成する被験化合物の濃度)を含む循環血漿濃度範囲を達成するように動物モデルにおいて処方されうる。かかる情報はヒトにおいて有用な用量をより正確に決定するために用いることが出来る。血漿中のレベルは、例えば、高速液体クロマトグラフィー (HPLC)によって測定することができる。一般に、典型的な対象について調節因子の線量当量(dose equivalent)は約 1 ng/kgから10 mg/kgである。
【0115】
本発明の化合物および/またはその医薬上許容される塩の投与の量および頻度は、患者の年齢、状態および大きさならびに治療すべき症状の重篤度といった因子を考慮して主治医の判断にしたがって調節される。通常の能力のある医師または獣医師であれば、症状の予防または症状の進行の反対または停止に必要とされる薬剤の有効量を容易に決定および処方することができる。一般に、有効量は0.001 mg/kg から10 mg/kg 体重、特に0.01 mg/kgから1 mg/kg 体重であると考えられる。より具体的には、有効量は12時間から14日間の期間につき0.01μg/kg 体重/分から100μg/kg 体重/分の静脈内投与により連続的に注入されるであろうと考えられる。1日にわたって適当な間隔にて2、3、4またはそれを超える分割(sub-)用量として必要な用量を投与することが適当であり得る。該分割用量は、例えば、単位用量形態あたり0.01から500 mg、および特に 0.1 mgから200 mgの活性成分を含む単位用量形態として製剤されうる。
【0116】
好ましくは、医薬調製物は単位用量形態におけるものである。かかる形態において、調製物は適当な量の活性成分、例えば、所望の目的を達成する有効量を含む好適なサイズの単位用量にさらに分割される。調製物の単位用量における活性化合物の量は、特定の適用に応じて、約 0.01 mgから約 1000 mg、好ましくは約 0.01 mgから約 750 mg、より好ましくは約 0.01 mgから約 500 mg、およびもっとも好ましくは約 0.01 mg から約 250 mgにて変動または調整されうる。用いられる実際の用量は患者の要求および治療すべき症状の重篤度に応じて変動しうる。特定の状況のための適切な投薬計画の決定は当業者の能力の範囲内である。便宜のために、総用量は必要な場合1日にわたって少しずつ分割されて投与されうる。
【0117】
医薬用途
本発明の組成物は血圧における低下に好ましいように応答する心臓血管疾患の治療のために有用である。これらの障害としては、慢性高血圧、高血圧性クリーゼ (急性高血圧性緊急症)、急性鬱血性心不全、狭心症、急性心筋梗塞、左室不全、脳血管不全、および頭蓋内出血が挙げられる。静脈注射が急性心臓血管疾患の治療のための好ましい方法である。かかる方法は治療上有効量の1以上の本発明の化合物をそれを必要とする対象に投与することを含むであろう。急性心臓血管疾患の例としては、これらに限定されないが、高血圧性クリーゼ、妊娠中毒症、および急性鬱血性心不全が挙げられる。
【0118】
組み合わせ治療
本発明はまた、心臓血管または心腎臓障害の治療方法も提供し、これは心臓血管および/または心腎臓障害の治療のためのその他の薬剤と組み合わせて上記の本発明の1以上の組成物を投与することによる。これらのその他の薬剤としては、利尿薬、例えば、フロセミド; 血管拡張剤、例えば、ニトログリセリン、ニトロプルシド、脳性ナトリウム利尿ペプチド (BNP)、またはその類似体; 変力物質、例えば、ドブタミン; アンジオテンシン変換酵素 (ACE) 阻害剤、例えば、カプトプリルおよびエナラプリル; β遮断薬、例えば、カルベジロールおよびプロプラノロール; アンジオテンシン受容体遮断薬(ARB)、例えば、バルサルタンおよびカンデサルタン; および/またはアルドステロンアンタゴニスト、例えば、スピロノラクトンが挙げられる。
【0119】
本発明の組み合わせ治療において、1以上の本発明の組成物が心臓血管および/または心腎臓障害の治療のための1以上の薬剤と共投与されることにより、心臓血管および/または心腎臓障害の治療の有効性が向上し、高用量のこれら治療薬に伴う副作用が低減される。
【0120】
上記の本発明の組み合わせ治療は相乗的および相加的治療効果を有する。相乗効果は2以上の物質の相互作用であってそれらの併用効果がそれら個々の効果の和よりも大きい相互作用として定義される。例えば、薬剤A単独の疾患の治療における効果が25%であり、薬剤 B単独の疾患の治療における効果が25%であるが、それら2つの薬剤が組み合わされた場合、その疾患の治療における効果が75%である場合、AおよびBの効果は相乗的である。
【0121】
相加効果は2以上の物質の相互作用であってそれらの併用効果がそれら個々の効果の和と同じである相互作用として定義される。例えば、薬剤 A単独の疾患の治療における効果が25%であり、薬剤 B単独の疾患の治療における効果が25%であるが、それら2つの薬剤が組み合わされた場合、その疾患の治療における効果が50%である場合、AおよびBの効果は相加的である。
【0122】
薬剤治療法における向上は、2以上の薬剤の相互作用であって、それらの併用効果がそれぞれのまたは併用療法において用いた両方の薬剤の有害事象 (AE)の発生を低下させるものとして記載することができる。この有害効果の発生の低下は、例えば、併用療法に用いられるどちらかまたは両方の薬剤のより低い用量の投与の結果であり得る。例えば、薬剤 A 単独の効果が25%であり、表示された用量での有害事象発生率が45%であって;薬剤 B 単独の効果が25%であり、表示された用量での有害事象発生率が30%であるが、2つの薬剤をそれぞれの表示された用量も低い用量で組み合わせた場合、全体の効果が35%であり (相乗的または相加的ではないが、向上)、有害事象発生率が20%である場合、薬剤治療法における向上があるといえる。
【0123】
定義
特に断りのない限り、本明細書において用いるすべての技術的および科学的用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般に理解されているものと同じ意味を有する。本明細書に記載するものと同様または同等の方法および材料が本発明の実施または試験において用いることが出来るが、好適な方法および材料は以下に記載する。本明細書において言及するすべての刊行物、特許出願、特許、およびその他の文献は引用によりそれら全体を本明細書に含める。矛盾がある場合、定義を含めて本願明細書が優先する。さらに、材料、方法、および実施例は例示的なものであって、限定を意図するものではない。本発明のその他の特徴および利点は以下の詳細な説明および請求項から明らかであろう。
【0124】
本明細書に記載する態様の理解を促す目的で、好ましい態様に関して言及がなされ、特定の用語がそれを説明するために用いられるであろう。本明細書において用いる用語は特定の態様を説明するだけの目的のものであり、本発明の範囲を限定する意図のものではない。本開示全体にわたって使用される、単数形、「ある」、「1つの」および「その」は文脈が明白に別のことを示さない限り、複数形も含む。したがって、例えば、「ある組成物」に関する言及は、複数のかかる組成物、ならびに単数の組成物を含み、「ある治療薬」に関する言及は1以上の治療および/または医薬および当業者に知られたその同等物等についての言及である。したがって、例えば「ある宿主細胞」に関する言及は、複数のかかる宿主細胞を含み、「ある抗体」に関する言及は、1以上の抗体および当業者に知られたその同等物などに対する言及である。
【実施例】
【0125】
以下の実施例は本発明の方法および組成物を例示するものであって限定するものではない。治療において通常遭遇され、当業者に明白なその他の好適な修飾および様々な条件およびパラメーターの適用は該態様の精神および範囲内である。
【0126】
実施例 1:化合物の合成
本明細書に記載するペプチドおよび中間体は、ペプチド合成の固相方法によって調製された(R. Merrifield J. Am. Chem. Soc. 1964,85,2149; M. Bodansky,”Principles of Peptide Synthesis.” Springer-Verlag,1984参照)。用いたペプチド合成および精製手順は、当該技術分野においてよく説明されている標準的方法であって、アミノ酸カップリング手順、洗浄工程、脱保護手順、樹脂切断手順、および市販の自動ペプチド合成機および市販の樹脂および保護アミノ酸を用いたイオン交換およびHPLC 精製方法を含むがこれらに限定されない。より具体的には、ペプチドをそれらのC-末端から (前もって活性化されたまたは原位置で(in situ)活性化された)Fmoc-保護アミノ酸の段階的付加およびピペリジンによるFmoc 基の不溶性支持樹脂に結合した酸に不安定なリンカーへの脱保護によって合成した。合成の後、樹脂に結合したペプチドを側鎖-脱保護に供し、トリフルオロ酢酸およびカチオンスカベンジャーにより樹脂から脱着した。ペプチドを水抽出または有機溶媒、例えば、エーテルまたはt-ブチルメチルエーテルからの沈降により、次いで、遠心分離およびデカンテーションおよび/またはHPLCおよび凍結乾燥により精製した。
【0127】
実施例 2:β-アレスチン 動員 アッセイ
GPCRにより媒介されるβ-アレスチン機能における近接した事象(proximal event)は、受容体への動員、次いで、リガンド結合およびGRKによる受容体リン酸化である。したがって、β-アレスチン動員の測定を、β-アレスチン機能についてのリガンド有効性を判定するために用いた。
【0128】
ヒトおよびラットアンジオテンシン 2型1型受容体 (それぞれ、ヒト AT1R およびラットAT1aR) に対するβ-アレスチン-2 動員は、 PathHunter(商標) β-アレスチン アッセイ (DiscoveRx Corporation,Fremont CA)を用いて測定した。細胞、プラスミド、および検出試薬はDiscoveRxから購入し、アッセイは製造業者の指示に従って行った。ヒト AT1R およびラット AT1aRをpCMV-ProLink ベクターにクローニングし、配列決定により確証し、PathHunter β-アレスチン HEK293 細胞へとトランスフェクトした。安定にトランスフェクトされたクローン性細胞株をHygromycin およびG418により選択した。これらのクローン性細胞株をすべての実験のために用いた。
【0129】
アッセイのために、96-ウェルマイクロプレートにウェル当たり25,000 細胞を90μLの体積にて播き、一晩37℃にて5% CO2中で成育させた。本発明のペプチドを脱イオン水に濃度1mMとなるように溶解した。ペプチドを次いでさらにアッセイバッファー (20 mM HEPESを含むハンクス液)に希釈してペプチドを細胞に最終濃度範囲10 μMから1 pMに達するように添加した。細胞を次いで60 分間37℃で5% CO2中でインキュベートし、次いで、50 μLのPathHunter 検出試薬を各ウェルに添加した。マイクロプレートを次いで室温で60 分間インキュベートし、次いで発光をBMG Labtech から購入したNOVOstar マイクロプレートリーダーを用いて測定した。受容体へのβ-アレスチン-2 動員は、任意単位にて表した相対発光強度として測定した。結果を以下の表2に示す。
【0130】
実施例 3:IP1 蓄積アッセイ
G タンパク質共役(coupling)有効性の二次的な測定も行った。IP3はホスホリパーゼ CのGα-qによる活性化によって生じる。IP3は分解されてIP1となり、これが塩化リチウムによる保護基分解によって細胞に蓄積されることになりうる。したがって本発明者らはG タンパク質活性化についてのリガンド有効性を判定するためにIP1の蓄積を測定した。
【0131】
ヒト およびラット アンジオテンシン 2型1型受容体 (それぞれ、ヒトAT1R およびラット AT1aR)によって生成されるIP1 蓄積をCisbioから購入したIP-One Tbキットにより製造業者の指示にしたがって用いて測定した。クローン的に安定なトランスフェクトされたヒト AT1TR またはラット AT1aRを発現する細胞株をすべての実験のために用いた。
【0132】
アッセイのために、384-ウェルの小容積マイクロプレート中にウェル当たり4,000の細胞を容積20 uLにて播き、一晩37℃で5% CO2中で成育させた。細胞成長培地を次いで 50 mM 塩化リチウムを含むCisbioから供給された刺激バッファーと交換した。ペプチドTRV-120,001からTRV-120,035を脱イオン水に溶解して濃度1mMとした。アゴニスト検出のために、ペプチドを次いでさらに刺激バッファーで希釈し、ペプチドを細胞に添加して最終濃度が10 uMから1 pMの範囲に達するようにした。アンタゴニスト検出のために、ペプチドを次いでさらに刺激バッファーで希釈し、ペプチドを細胞に添加して最終濃度範囲が10 uMから1 pMに達するようにし、次いで10nM AngIIを添加した。ペプチドの添加の後、細胞を37℃で5% CO2中で30 分間インキュベートし、次いで製造業者の指示にしたがって添加した検出試薬を用いて溶解した。マイクロプレートを60-90分間インキュベートし、次いで時間分解蛍光強度をBMG LabtechからのPHERAstar Plus マイクロプレートリーダーを用いて測定した。IP1 蓄積を665 nmおよび620 nmにて測定した時間分解蛍光強度の比における変化として測定した。結果を以下の表2に示す。
【0133】
表2:生物学的活性.
【表5−1】

【表5−2】

注:不活性は、EC50が10 uMよりも大きかったことを意味する。
【0134】
実施例 4:カルシウム動員アッセイ
G タンパク質有効性は多くの方法にて測定することができる。Gq サブクラスのヘテロ三量体のgタンパク質と共役するGPCRはアゴニストにより活性化されると多様なシグナル伝達を活性化する。もっとも一般的に測定される経路の一つはGalpha-qによるホスホリパーゼ Cの活性化であり、これはホスファチジルイノシトール二リン酸を切断してIP3を放出させる; IP3は次いでカルシウムを細胞内貯蔵から細胞質ゾルへと IP3 受容体を介して放出させる。したがって本発明者らはG タンパク質活性化についてのリガンド有効性を決定するために細胞内遊離カルシウムを測定した。
【0135】
ヒトおよびラットアンジオテンシン2型1型受容体 (それぞれ、ヒト AT1R およびラット AT1aR)によって生成される細胞内遊離カルシウムをInvitrogenから購入したFluo-4 NWキットにより製造業者の指示に従って用いて測定した。ヒト AT1TR またはラット AT1aRを発現するクローン的に安定なトランスフェクトされた細胞株をすべての実験に用いた。
【0136】
アッセイのために、96-ウェルマイクロプレートにウェル当たり25,000の細胞を90 uLの容積にて播き、一晩37℃で5% CO2中で成育させた。Fluo-4 NW色素をプロベネシドおよびアッセイバッファー (20 mM HEPESを含むハンクス液)と混合し、細胞成長培地をこの混合物と交換し、次いで30-45 分間37℃で5% CO2中でインキュベーションした。ペプチドTRV-120,001からTRV-120,035を脱イオン水に溶解して濃度1mMとした。ペプチドを次いでさらにアッセイ バッファー (20 mM HEPESを含むハンクス液)で希釈し、ペプチドを細胞に添加して、最終濃度範囲が10 uMから1 pMに達するようにした。ペプチドを細胞に添加し、一方、蛍光強度をBMG Labtech から購入したNOVOstar マイクロプレートリーダーを用いて測定した。カルシウム動員は、リガンド添加の5秒後および20秒後の基底に比べての倍数(fold)として表した相対蛍光強度として測定した。
【0137】
実施例 5:正常ラットにおける配列番号27の評価
血管および心臓機能に対する配列番号27の効果を、麻酔をかけた正常ラットにおける予備投薬実験において0.1 - 10 μg/kg/分の範囲の用量での静脈内注入によって試験した。様々な血行動態計測を行い、平均動脈圧、心拍および圧力-体積関係が含まれた。配列番号27は平均動脈圧において用量-依存性の低下をもたらし、HRに対してはほとんどまたはまったく効果を有さなかった。さらに、配列番号27は収縮終期圧-体積関係の勾配を上昇させ、あらかじめ補充可能な(pre-recruitable) 一回仕事量を保ち、その結果、血管収縮における低下の背景における1回拍出量が保持された。
【0138】
実施例 6:急性心不全のペースメーカーで調整された(Paced)イヌモデルにおける配列番号27の評価
配列番号27 (0.01、0.1、1、10および100 mcg/kg/分にて用量を高め、各用量は30 分間)をペースメーカーで調整された(paced)心不全モデルにおいても投薬した。ペースメーカーで調整されたイヌモデルにおいて、ペースメーカーが埋め込まれ、イヌの心臓は1分あたり240拍動の速度に10日間ペースを調整され、その結果、左心室収縮機能が低下し、右側鬱血、レニン-アンジオテンシン系活性における上昇が起こった。心不全のイヌにおいて、配列番号27は平均動脈圧、全身血管抵抗、肺毛細血管楔入圧、および右動脈圧における用量-依存性の低下をもたらし、心拍出量はこれら動物において保たれていた。腎臓のレベルにおいて、腎血流の用量-依存性な上昇がみられ、その結果、腎臓血管抵抗に顕著な低下が起こった。尿中ナトリウム排せつは穏やかに上昇し、尿排出量、尿中カリウム、および糸球体ろ過量は維持された。
【0139】
本発明を特定の好ましい態様および実施例に言及して記載してきたが、当業者であれば、本発明の精神と範囲とから逸脱することなく様々な修飾が本発明に対してなされうることを認識している。
【0140】
本明細書において言及されたおよび/または出願データシートに列挙された上記米国特許、米国特許出願公開、米国特許出願、外国特許、外国特許出願および非特許文献のすべては、それらの全体を引用により本明細書に含める。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下からなる群から選択されるペプチドまたはペプチド模倣体を含む組成物:
a)以下の配列を含むペプチドまたはペプチド模倣体:
Xx-Yy-Val-Ww-Zz-Aa-Bb-Cc、
[式中、
Xx は、非存在、サルコシン、N-メチル-L-アラニン、N-メチル-D-アラニン、N,N-ジメチルグリシン、L-アスパラギン酸、D-アスパラギン酸、L-グルタミン酸、D-グルタミン酸、N-メチル-L-アスパラギン酸、N-メチル-L-グルタミン酸、ピロリド-1-イル酢酸、およびモルホリン-4-イル酢酸からなる群から選択される;
Yy は、L-アルギニン、およびL-リジンからなる群から選択される;
Ww は、L-イソロイシン、グリシン、L-チロシン、O-メチル-L-チロシン、L-バリン、L-フェニルアラニン、3-ヒドロキシ-L-チロシン、2,6-ジメチル-L-チロシン、3-フルオロ-L-チロシン、4-フルオロフェニル-L-アラニン、2,6-ジフルオロ-L-チロシン、3-ニトロ-L-チロシン、3,5-ジニトロ-L-チロシン、3,5-ジブロモ-L-チロシン、3-クロロ-L-チロシン、O-アリル-L-チロシン、および3,5-ジヨード-L-チロシンからなる群から選択される;
Zz は、L-イソロイシン、L-バリン、L-チロシン、L-グルタミン酸、L-フェニルアラニン、L-ヒスチジン、L-リジン、L-アルギニン、O-メチル-L-トレオニン、D-アラニン、およびL-ノルバリンからなる群から選択される;
Aa は、L-ヒスチジン、L-ヒスチジン-アミド、およびL-リジンからなる群から選択される;
Bb は、L-プロリン、L-プロリン-アミド、D-プロリン、およびD-プロリン-アミドからなる群から選択される;および、
Cc は、非存在、L-イソロイシン、L-イソロイシン-アミド、グリシン、グリシン-アミド、L-アラニン、L-アラニン-アミド、D-アラニン、D-フェニルアラニン、L-ノルバリンからなる群から選択される;
ただし、XxがL-アスパラギン酸の場合は、CcはL-フェニルアラニンではなく;Xxがサルコシンの場合は、CcはL-イソロイシンではなく;Wwがグリシンの場合は、Ccはグリシンではなく;Xxがサルコシンであり、ZzがL-バリンである場合は、CcはL-アラニンではなく;そして、Xxがサルコシンであり、WwがL-チロシンであり、ZzがL-イソロイシンである場合は、CcはL-アラニンではない; ]
b)ペプチドまたはペプチド模倣体の配列のメンバーが(a)に記載の配列において現れるそれらの相対的位置を維持しており、1から3 アミノ酸またはアミノ酸類似体のスペーサーが(a)に記載の1以上のアミノ酸またはアミノ酸類似体の間に挿入されており、ペプチドまたはペプチド模倣体の全長が6〜25 アミノ酸および/またはアミノ酸類似体であるペプチドまたはペプチド模倣体;および
c) (a)に記載のペプチドまたはペプチド模倣体に対して少なくとも 70%同一であるペプチドまたはペプチド模倣体。
【請求項2】
以下からなる群から選択されるペプチドまたはペプチド模倣体を含む組成物:
a)以下の配列を含むペプチドまたはペプチド模倣体:
Xx-Arg-Val-Ww-Zz-His-Pro-Cc、
[式中、
Xx は、サルコシン、N-メチル-L-アラニン、N-メチル-D-アラニン、N,N-ジメチルグリシン、L-アスパラギン酸、D-アスパラギン酸、L-グルタミン酸、D-グルタミン酸、N-メチル-L-アスパラギン酸、N-メチル-L-グルタミン酸、ピロリド-1-イル酢酸、およびモルホリン-4-イル酢酸からなる群から選択される;
Ww は、L-イソロイシン、グリシン、L-チロシン、O-メチル-L-チロシン、L-バリン、L-フェニルアラニン、3-ヒドロキシ-L-チロシン、2,6-ジメチル-L-チロシン、3-フルオロ-L-チロシン、4-フルオロフェニル-L-アラニン、2,6-ジフルオロ-L-チロシン、3-ニトロ-L-チロシン、3,5-ジニトロ-L-チロシン、3,5-ジブロモ-L-チロシン、3-クロロ-L-チロシン、O-アリル-L-チロシン、および3,5-ジヨード-L-チロシンからなる群から選択される;
Zz は、L-イソロイシン、L-バリン、L-チロシン、L-グルタミン酸、L-フェニルアラニン、L-ヒスチジン、L-リジン、L-アルギニン、O-メチル-L-トレオニン、D-アラニン、およびL-ノルバリンからなる群から選択される;および、
Cc は、L-イソロイシン、L-イソロイシン-アミド、グリシン、グリシン-アミド、L-アラニン、L-アラニン-アミド、D-アラニン、D-フェニルアラニン、およびL-ノルバリンからなる群から選択される;
ただし、XxがL-アスパラギン酸である場合は、CcはL-フェニルアラニンではなく;Xxが サルコシンである場合は、CcはL-イソロイシンではなく; Wwがグリシンである場合は、Ccはグリシンではなく; Xxがサルコシンであり、ZzがL-バリンである場合は、CcはL-アラニンではなく;そして、Xxがサルコシンであり、WwがL-チロシンであり、ZzがL-イソロイシンである場合は、CcはL-アラニンではない;]
b)ペプチドまたはペプチド模倣体の配列のメンバーが(a)に記載の配列において現れるそれらの相対的位置を維持しており、1から3 アミノ酸またはアミノ酸類似体のスペーサーが(a)に記載の1以上のアミノ酸またはアミノ酸類似体の間に挿入されており、ペプチドまたはペプチド模倣体の全長が8〜25 アミノ酸および/またはアミノ酸類似体であるペプチドまたはペプチド模倣体;および
c) (a)に記載のペプチドまたはペプチド模倣体に対して少なくとも 70%同一であるペプチドまたはペプチド模倣体。
【請求項3】
以下からなる群から選択されるペプチドまたはペプチド模倣体を含む組成物:
a)以下の配列を含むペプチドまたはペプチド模倣体:
Sar-Arg-Val-Ww-Zz-His-Pro-Cc、
[式中、
Ww は、L-チロシン、3-ヒドロキシ-L-チロシン、3-フルオロ-L-チロシン、2,6-ジフルオロ-L-チロシン、3-ニトロ-L-チロシン、3,5-ジニトロ-L-チロシン、および3-クロロ-L-チロシンからなる群から選択される;
Zz は、L- イソロイシン、L-リジン、およびO-メチル-L-トレオニンからなる群から選択される; および、
Cc は、D-アラニン、およびL-アラニンからなる群から選択される、
ただし、Xxがサルコシンであり、WwがL-チロシンであり、ZzがL-イソロイシンである場合は、CcはL-アラニンではない; ]
b)ペプチドまたはペプチド模倣体の配列のメンバーが(a)に記載の配列において現れるそれらの相対的位置を維持しており、1から3 アミノ酸またはアミノ酸類似体のスペーサーが(a)に記載の1以上のアミノ酸またはアミノ酸類似体の間に挿入されており、ペプチドまたはペプチド模倣体の全長が8〜25 アミノ酸および/またはアミノ酸類似体であるペプチドまたはペプチド模倣体;および
c) (a)に記載のペプチドまたはペプチド模倣体に対して少なくとも 70%同一であるペプチドまたはペプチド模倣体。
【請求項4】
Wwが、L-チロシンおよび3-ヒドロキシ-L-チロシンからなる群から選択され;Zzが、L- イソロイシンおよびL-リジンからなる群から選択される、請求項 3の組成物。
【請求項5】
ペプチドまたはペプチド模倣体が配列番号23の配列を含む、請求項 4の組成物。
【請求項6】
ペプチドまたはペプチド模倣体が配列番号27の配列を含む、請求項 4の組成物。
【請求項7】
ペプチドまたはペプチド模倣体が配列番号67の配列を含む、請求項 4の組成物。
【請求項8】
以下からなる群から選択されるペプチドまたはペプチド模倣体を含む組成物:
a)以下の配列を含むペプチドまたはペプチド模倣体:
Sar-Arg-Val-Ww-OMTh-His-Pro-Cc、
[式中、
Ww は、L-チロシン、3-ヒドロキシ-L-チロシン; 3-フルオロ-L-チロシン、および3-クロロ-L-チロシンからなる群から選択される;および、
Cc は、D-アラニンおよびL-アラニンからなる群から選択される;]
b)ペプチドまたはペプチド模倣体の配列のメンバーが(a)に記載の配列において現れるそれらの相対的位置を維持しており、1から3 アミノ酸またはアミノ酸類似体のスペーサーが(a)に記載の1以上のアミノ酸またはアミノ酸類似体の間に挿入されており、ペプチドまたはペプチド模倣体の全長が8〜25 アミノ酸および/またはアミノ酸類似体であるペプチドまたはペプチド模倣体;および
c) (a)に記載のペプチドまたはペプチド模倣体に対して少なくとも 70%同一であるペプチドまたはペプチド模倣体。
【請求項9】
Wwが、3-ヒドロキシ-L-チロシン; 3-フルオロ-L-チロシン、および3-クロロ-L-チロシンからなる群から選択され;CcがL-アラニンである、請求項 8の組成物。
【請求項10】
ペプチドまたはペプチド模倣体が配列番号77の配列を含む、請求項 9の組成物。
【請求項11】
ペプチドまたはペプチド模倣体が配列番号78の配列を含む、請求項 9の組成物。
【請求項12】
ペプチドまたはペプチド模倣体が配列番号79の配列を含む、請求項 9の組成物。
【請求項13】
以下からなる群から選択されるペプチドまたはペプチド模倣体を含む組成物:
a)以下の配列を含むペプチドまたはペプチド模倣体:
Sar-Arg-Val-Ww-Tyr-His-Pro-NH2
[式中、
Ww は、L-チロシン、3-ヒドロキシ-L-チロシン、3-フルオロ-L-チロシン、2,6-ジフルオロ-L-チロシン、3-ニトロ-L-チロシン、3,5-ジニトロ-L-チロシン、および3-クロロ-L-チロシンからなる群から選択される;]
b)ペプチドまたはペプチド模倣体の配列のメンバーが(a)に記載の配列において現れるそれらの相対的位置を維持しており、1から3 アミノ酸またはアミノ酸類似体のスペーサーが(a)に記載の1以上のアミノ酸またはアミノ酸類似体の間に挿入されており、ペプチドまたはペプチド模倣体の全長が7〜25 アミノ酸および/またはアミノ酸類似体であるペプチドまたはペプチド模倣体;および
c) (a)に記載のペプチドまたはペプチド模倣体に対して少なくとも 70%同一であるペプチドまたはペプチド模倣体。
【請求項14】
ペプチドまたはペプチド模倣体が配列番号26の配列を含む請求項 13の組成物。
【請求項15】
以下からなる群から選択されるペプチドまたはペプチド模倣体を含む組成物:
a)以下の配列を含むペプチドまたはペプチド模倣体:
NMAla-Arg-Val-Ww-Zz-His-Pro-Cc、
[式中、
Ww は、L-チロシン、3-ヒドロキシ-L-チロシン、3-フルオロ-L-チロシン、2,6-ジフルオロ-L-チロシン、3-ニトロ-L-チロシン、3,5-ジニトロ-L-チロシン、および3-クロロ-L-チロシンからなる群から選択される;
Zz は、L- イソロイシン、L-リジン、およびO-メチル-L-トレオニンからなる群から選択される; そして、
Cc は、D-アラニン、およびL-アラニンからなる群から選択される; ]
b)ペプチドまたはペプチド模倣体の配列のメンバーが(a)に記載の配列において現れるそれらの相対的位置を維持しており、1から3 アミノ酸またはアミノ酸類似体のスペーサーが(a)に記載の1以上のアミノ酸またはアミノ酸類似体の間に挿入されており、ペプチドまたはペプチド模倣体の全長が8〜25 アミノ酸および/またはアミノ酸類似体であるペプチドまたはペプチド模倣体;および
c) (a)に記載のペプチドまたはペプチド模倣体に対して少なくとも 70%同一であるペプチドまたはペプチド模倣体。
【請求項16】
WwがL-チロシンである請求項 15の組成物。
【請求項17】
ZzがL-イソロイシンである請求項 15の組成物。
【請求項18】
CcがL-アラニンである請求項 15の組成物。
【請求項19】
ペプチドまたはペプチド模倣体が配列番号34の配列を含む請求項 15の組成物。
【請求項20】
組成物が環状である請求項 1の組成物。
【請求項21】
組成物が二量体化している請求項 1の組成物。
【請求項22】
組成物が三量体化している請求項 1の組成物。
【請求項23】
アンジオテンシン2型1型受容体 (AT1R) β-アレスチン偏性リガンド。
【請求項24】
リガンドが、β-アレスチン-2のアンジオテンシン2型1型受容体への動員について、IP1 蓄積についてよりも低い半数効果濃度を有する請求項 23のAT1R β-アレスチン偏性リガンド。
【請求項25】
β-アレスチン-2のアンジオテンシン2型1型受容体への動員についてのリガンドの半数効果濃度が、IP1 蓄積についてのリガンドの半数効果濃度よりも10倍低い、請求項 24のAT1R β-アレスチン偏性リガンド。
【請求項26】
リガンドが以下からなる群から選択されるペプチドまたはペプチド模倣体を含む組成物である請求項 23のAT1R β-アレスチン偏性リガンド:
a)以下の配列を含むペプチドまたはペプチド模倣体:
Xx-Yy-Val-Ww-Zz-Aa-Bb-Cc、
[式中、
Xx は、非存在、サルコシン、N-メチル-L-アラニン、N-メチル-D-アラニン、N,N-ジメチルグリシン、L-アスパラギン酸、D-アスパラギン酸、L-グルタミン酸、D-グルタミン酸、N-メチル-L-アスパラギン酸、N-メチル-L-グルタミン酸、ピロリド-1-イル酢酸、およびモルホリン-4-イル酢酸からなる群から選択される;
Yy は、L-アルギニン、およびL-リジンからなる群から選択される;
Ww は、L-イソロイシン、グリシン、L-チロシン、O-メチル-L-チロシン、L-バリン、L-フェニルアラニン、3-ヒドロキシ-L-チロシン、2,6-ジメチル-L-チロシン、3-フルオロ-L-チロシン、4-フルオロフェニル-L-アラニン、2,6-ジフルオロ-L-チロシン、3-ニトロ-L-チロシン、3,5-ジニトロ-L-チロシン、3,5-ジブロモ-L-チロシン、3-クロロ-L-チロシン、O-アリル-L-チロシン、および3,5-ジヨード-L-チロシンからなる群から選択される;
Zz は、L-イソロイシン、L-バリン、L-チロシン、L-グルタミン酸、L-フェニルアラニン、L-ヒスチジン、L-リジン、L-アルギニン、O-メチル-L-トレオニン、D-アラニン、およびL-ノルバリンからなる群から選択される;
Aa は、L-ヒスチジン、L-ヒスチジン-アミド、およびL-リジンからなる群から選択される;
Bb は、L-プロリン、L-プロリン-アミド、D-プロリン、およびD-プロリン-アミドからなる群から選択される;および、
Cc は、非存在、L-イソロイシン、L-イソロイシン-アミド、グリシン、グリシン-アミド、L-アラニン、L-アラニン-アミド、D-アラニン、D-フェニルアラニン、L-ノルバリンからなる群から選択される;
ただし、XxがL-アスパラギン酸である場合は、CcはL-フェニルアラニンではなく;Xxがサルコシンである場合は、CcはL-イソロイシンではなく; Wwがグリシンである場合は、Cc はグリシンではなく;Xxがサルコシンであり、ZzがL-バリンである場合は、CcはL-アラニンではなく; Xxがサルコシンであり、WwがL-チロシンであり、ZzがL-イソロイシンである場合は、CcはL-アラニンではない; ]
b)ペプチドまたはペプチド模倣体の配列のメンバーが(a)に記載の配列において現れるそれらの相対的位置を維持しており、1から3 アミノ酸またはアミノ酸類似体のスペーサーが(a)に記載の1以上のアミノ酸またはアミノ酸類似体の間に挿入されており、ペプチドまたはペプチド模倣体の全長が6〜25 アミノ酸および/またはアミノ酸類似体であるペプチドまたはペプチド模倣体;および
c) (a)に記載のペプチドまたはペプチド模倣体に対して少なくとも 70%同一であるペプチドまたはペプチド模倣体。
【請求項27】
リガンドが以下からなる群から選択されるペプチドまたはペプチド模倣体を含む組成物である請求項 23のAT1R β-アレスチン偏性リガンド:
a)以下の配列を含むペプチドまたはペプチド模倣体:
Xx-Arg-Val-Ww-Zz-His-Pro-Cc、
[式中、
Xx は、サルコシン、N-メチル-L-アラニン、N-メチル-D-アラニン、N,N-ジメチルグリシン、L-アスパラギン酸、D-アスパラギン酸、L-グルタミン酸、D-グルタミン酸、N-メチル-L-アスパラギン酸、N-メチル-L-グルタミン酸、ピロリド-1-イル酢酸、およびモルホリン-4-イル酢酸からなる群から選択される;
Ww は、L-イソロイシン、グリシン、L-チロシン、O-メチル-L-チロシン、L-バリン、L-フェニルアラニン、3-ヒドロキシ-L-チロシン、2,6-ジメチル-L-チロシン、3-フルオロ-L-チロシン、4-フルオロフェニル-L-アラニン、2,6-ジフルオロ-L-チロシン、3-ニトロ-L-チロシン、3,5-ジニトロ-L-チロシン、3,5-ジブロモ-L-チロシン、3-クロロ-L-チロシン、O-アリル-L-チロシン、および3,5-ジヨード-L-チロシンからなる群から選択される;
Zz は、L-イソロイシン、L-バリン、L-チロシン、L-グルタミン酸、L-フェニルアラニン、L-ヒスチジン、L-リジン、L-アルギニン、O-メチル-L-トレオニン、D-アラニン、およびL-ノルバリンからなる群から選択される;および、
Cc は、L-イソロイシン、L-イソロイシン-アミド、グリシン、グリシン-アミド、L-アラニン、L-アラニン-アミド、D-アラニン、D-フェニルアラニン、およびL-ノルバリンからなる群から選択される;
ただし、XxがL-アスパラギン酸である場合は、CcはL-フェニルアラニンではなく;Xxがサルコシンである場合は、CcはL-イソロイシンではなく; Wwがグリシンである場合は、Ccはグリシンではなく;Xxがサルコシンであり、ZzがL-バリンである場合は、CcはL-アラニンではなく; そして、Xxがサルコシンであり、WwがL-チロシンであり、ZzがL-イソロイシンである場合は、CcはL-アラニンではない;]
b)ペプチドまたはペプチド模倣体の配列のメンバーが(a)に記載の配列において現れるそれらの相対的位置を維持しており、1から3 アミノ酸またはアミノ酸類似体のスペーサーが(a)に記載の1以上のアミノ酸またはアミノ酸類似体の間に挿入されており、ペプチドまたはペプチド模倣体の全長が8〜25 アミノ酸および/またはアミノ酸類似体であるペプチドまたはペプチド模倣体;および
c) (a)に記載のペプチドまたはペプチド模倣体に対して少なくとも 70%同一であるペプチドまたはペプチド模倣体。
【請求項28】
1以上の請求項 1のペプチドまたはペプチド模倣体および医薬上許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項29】
医薬上許容される担体が、純粋滅菌水、リン酸緩衝生理食塩水またはグルコース水溶液である請求項 28の医薬組成物。
【請求項30】
必要とする対象に治療上有効量の1以上の請求項 1の組成物を投与することを含む、心臓血管疾患の治療方法。
【請求項31】
心臓血管疾患が、慢性高血圧、高血圧性クリーゼ、急性鬱血性心不全、狭心症、急性心筋梗塞、左室不全、脳血管不全、頭蓋内出血、心不全、急性非代償性心不全、本態性高血圧、術後高血圧、高血圧性心疾患、高血圧性腎疾患、腎血管性高血圧、悪性高血圧、腎移植後患者安定化、拡張型心筋症、心筋炎、心臓移植後患者安定化、ステント後管理に関連する障害、神経性高血圧、子癇前症、腹部大動脈瘤、および血行動態成分を伴ういずれかの心臓血管疾患からなる群から選択される、請求項 30の方法。
【請求項32】
心臓血管疾患が急性心臓血管疾患である請求項 30の方法。
【請求項33】
急性心臓血管疾患が、急性高血圧性クリーゼ、妊娠中毒症、急性心筋梗塞、急性鬱血性心不全、急性虚血性心疾患、肺高血圧、術後高血圧、片頭痛、網膜症および術後心臓弁手術である請求項 30の方法。
【請求項34】
必要とする対象に治療上有効量の1以上の請求項 1の組成物を投与することを含む、AT1Rに関連するウイルス感染症の治療方法。
【請求項35】
1以上の組成物が静脈注射により投与される請求項 34の方法。
【請求項36】
必要とする対象に、以下の配列を含む治療上有効量の1以上のペプチドまたはペプチド模倣体を投与することを含む心臓血管疾患の治療方法:
Sar-Arg-Val-Ww-Zz-His-Pro-Cc、
[式中、
Ww は、L-イソロイシン、グリシン、およびL-チロシンからなる群から選択される;
Zz は、L-バリン、L-イソロイシンおよびL-グルタミン酸からなる群から選択される;および、
Cc は、L-イソロイシン、グリシン、およびL-アラニンからなる群から選択される]。
【請求項37】
1以上のペプチドまたはペプチド模倣体が、配列番号3、5、7、9、11、14、および16からなる群から選択される請求項 36の方法。
【請求項38】
心臓血管疾患が、慢性高血圧、高血圧性クリーゼ、急性鬱血性心不全、狭心症、急性心筋梗塞、左室不全、脳血管不全、頭蓋内出血、心不全、急性非代償性心不全、本態性高血圧、術後高血圧、高血圧性心疾患、高血圧性腎疾患、腎血管性高血圧、悪性高血圧、腎移植後患者安定化、拡張型心筋症、心筋炎、心臓移植後患者安定化、ステント後管理に関連する障害、神経性高血圧、子癇前症、腹部大動脈瘤、および血行動態成分を伴ういずれかの心臓血管疾患からなる群から選択される、請求項 36の方法。
【請求項39】
心臓血管疾患が急性心臓血管疾患である請求項 36の方法。
【請求項40】
急性心臓血管疾患が、急性高血圧性クリーゼ、妊娠中毒症、急性心筋梗塞、急性鬱血性心不全、急性虚血性心疾患、肺高血圧、術後高血圧、片頭痛、網膜症および術後心臓弁手術である請求項 39の方法。
【請求項41】
必要とする対象に治療上有効量の以下の配列を含む1以上のペプチドまたはペプチド模倣体を投与することを含む、AT1Rに関連するウイルス感染症の治療方法:
Sar-Arg-Val-Ww-Zz-His-Pro-Cc、
[式中、
Ww は、L-イソロイシン、グリシン、およびL-チロシンからなる群から選択される;
Zz は、L-バリン、L-イソロイシンおよびL-グルタミン酸からなる群から選択される;および、
Cc は、L-イソロイシン、グリシン、およびL-アラニンからなる群から選択される]。
【請求項42】
1以上のペプチドまたはペプチド模倣体が、配列番号3、5、7、9、11、14、および16からなる群から選択される、請求項 41の方法。
【請求項43】
必要とする対象に有効量の1以上の請求項 1の組成物を投与することを含むβ-アレスチンをアゴナイズする方法。

【公表番号】特表2012−514033(P2012−514033A)
【公表日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−544408(P2011−544408)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【国際出願番号】PCT/US2009/006719
【国際公開番号】WO2010/077339
【国際公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【出願人】(511158580)トレベナ・インコーポレイテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】TREVENA, INC.
【Fターム(参考)】