説明

β−石英および/またはβ−スポジュメンのガラスセラミック、前駆体ガラス、そのガラスセラミックから製造された物品、そのガラスセラミックおよび物品の調製

本発明は、β−石英および/またはβ−スポジュメンの新規のガラスセラミック、新規のガラスセラミックから製造された物品、新規のガラスセラミックの前駆体であるリチウムアルミノシリケートガラス、新規のガラスセラミックおよび新規のガラスセラミックから製造された物品を調製する方法に関する。本発明は、ガラスセラミックのガラス前駆体の清澄剤としてのSnO2およびBrの同時使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、
・主結晶相としてβ−石英のまたはβ−スポジュメンの固溶体(β−石英およびβ−スポジュメンの固溶体)を含有する新規なガラスセラミック、
・その新規のガラスセラミックから製造された物品、
・その新規のガラスセラミックの前駆体であるリチウムアルミノシリケートガラス、および
・その新規のガラスセラミックおよびその新規のガラスセラミックから製造された物品の調製方法、
に関する。
【0002】
本発明は、ガラスの清澄剤を確実に機能させるように独自の化合物を前記ガラスセラミックおよびガラスの組成内に含ませることに関する。
【背景技術】
【0003】
主結晶相としてβ−石英のまたはβ−スポジュメンの固溶体(β−石英およびβ−スポジュメンの固溶体)を含有するガラスセラミックは、それ自体公知であり、ガラスまたは無機充填剤の熱処理により得られる材料である。これらの材料は、様々な状況において、特にレンジ上面の基体としておよび暖房器具の窓として使用されている。
【0004】
透明、乳白色、またはさらには不透明のガラスセラミックが、様々な色で知られている。
【0005】
β−石英および/またはβ−スポジュメンのガラスセラミックから製造された物品の調製は慣習的に、3つの連続した主要工程を有してなる:
・無機ガラスまたはそのようなガラスの前駆体である充填剤を溶融する第1の工程であって、一般に、1,550および1,650℃の間で行われる工程、
・得られた溶融ガラスを冷却し、成形する第2の工程、および
・冷却され成形されたガラスの適切な熱処理による結晶化またはセラミック化の第3の工程。
【0006】
溶融の第1の工程が完了する際に、溶融ガラス塊からガス状含有物をできるだけ効率的に除去することが重要である。この目的のために、その中に少なくとも1種類の清澄剤が含まれる。
【0007】
酸化ヒ素(As23)が、一般に、0.1質量%より多く、1質量%未満で、ここに用いられる方法において一般に用いられる。酸化アンチモン(Sb23)も、より多い含有量で用いられる。
【0008】
これらの物質の毒性および最も抜本的な施行規則(安全性および環境の保護に関して)に鑑みて、これらの物質を含むことは、最小にする、さらには避けることが求められており、毒性が弱く、さらには非毒性であり、清澄剤として効果的な他の化合物が求められている。
【0009】
さらに、明白な経済性の理由のために、現在利用されている工業方法の動作条件を変えることは望ましくない。特に、より高温で動作させることは望ましくない。そうすると、より多くのエネルギーを消費し、腐食の問題を悪化させてしまうであろう。
【0010】
それゆえ、セラミック化されることになっているガラスの清澄剤として同じ動作条件下で効果的な酸化ヒ素および酸化アンチモン以外の化合物(前記酸化物を少なくともある程度、都合よくは全て置換する化合物)が求められている。
【0011】
特に、そのような研究の脈絡の中で、従来技術にしたがって、酸化スズ(SnO2)の使用が提案されてきた。
【0012】
このように、特許文献1および2には、以下の割合での、酸化スズ(SnO2)の単独でまたは塩素(Cl)との組合せでの使用が記載されている:
SnO2: 0.1〜2質量%
Cl: 0〜1質量%。
【0013】
特許文献3および4では、酸化スズ(SnO2)、酸化セリウム(CeO2)、および硫酸塩または塩素含有化合物の使用が述べられている。これらの文献ではより具体的に、1質量%未満で含まれる酸化スズの使用が示されている。これらの文献には、得られる清澄性能に関する詳述は見つからない。
【0014】
As23および/またはSb23を少なくともある程度置換する清澄剤を提供するこの技術的な問題に直面した本願の発明者は、SnO2の性能を研究し、この化合物は単独では完全には満足するものではないことを示した。
【特許文献1】特開平11−100229号公報
【特許文献2】特開平11−100230号公報
【特許文献3】独国特許出願公開19939787.2号明細書
【特許文献4】国際公開第02/16279号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
ガラスセラミックのガラス前駆体の清澄剤としてのSnO2の有効性は、含まれるSnO2の量と共に増加する。それゆえ、適量のSnO2を使用することによって、特にAs23によりこれまで得られた結果にほぼ匹敵する、それらガラスの清澄に関する良好な結果を得ることができる。清澄の観点から効果的なこれらの適量の含有は有害である:
・第1に、ガラス中のSnO2の低い溶解度のため。溶融を実施することの難点および失透の問題が極めて瞬時に観察される。および
・第2に、SnO2の還元力のため。SnO2は、ガラス中に存在する遷移金属酸化物、特に、酸化バナジウムを還元し得、したがって、求められているセラミックの色に強烈に影響を与え得る。前駆体ガラスの清澄に効果的な量でSnO2が存在すると、最終的なガラスセラミックの色を調節するのが難しい。
【0016】
従来の清澄剤(As23および/またはSb23)の代わりの効果的な清澄剤としてのSnO2の使用を提案することは決して十分ではない。
【課題を解決するための手段】
【0017】
そのような脈絡において、「SnO2+Br」の組合せに関心を示し、意外なことに、そのような「SnO2+Br」の組合せが清澄剤として効果的であり、SnO2が、上述した問題が最小となる、さらには避けられるようにその組合せにおいて低含有量で含まれることを観察したことが本願の発明者の功績である。
【0018】
それゆえ、第1の目的によれば、本発明は、酸化スズ(SnO2)および臭素(Br)を共に含有する、主結晶相としてβ−石英またはβ−スポジュメンの固溶体(β−石英およびβ−スポジュメンの固溶体)を含有するガラスセラミックであって、酸化スズが、ガラスセラミックの総質量の0.7質量%以下の量で存在するガラスセラミックに関する。
【0019】
第2の目的によれば、本発明は、その組成中に過剰ではない量のSnO2、およびBrを共に含有するそのようなガラスセラミックから製造された物品に関する。
【0020】
第3の目的によれば、本発明は、本発明のガラスセラミックの前駆体である、リチウムアルミノシリケートガラスに関する。
【0021】
第4の目的によれば、本発明は、本発明のガラスセラミックを調製する方法に関する。
【0022】
第5の目的によれば、本発明は、本発明のガラスセラミックから製造された物品を調製する方法に関する。
【0023】
本発明のガラスセラミックは、上述した問題に関して過剰ではない量の酸化スズ、および臭素を特徴として含有する。このガラスセラミックは、独自かつ特徴的な様式で、上述した技術的問題、すなわち、そのガラスセラミックの前駆体であるガラスの清澄の問題に関して、これらの2種類の化合物を含有する。
【0024】
本発明のガラスセラミック内で、臭素は、ガラスセラミックの調製中に多量に加えられた場合でさえも、少量(一般に、ガラスセラミックの総質量の0.01〜1質量%)で存在する。最終的なガラスセラミック中の低含有量は、その揮発性で説明がつく。
【0025】
第1の目的によれば、本発明は、言い換えれば、β−石英および/またはβ−スポジュメンのガラスセラミックの前駆体ガラス内に、0.7質量%以下の量の酸化スズ、および臭素の同時使用に関し、この使用は、そのガラスの清澄剤としてである。
【0026】
その清澄剤としての性能が本発明の脈絡で示された「SnO2+Br」の組合せを、他の清澄剤の代わり、特に、従来の清澄剤As23および/またはSb23の代わりの全部のまたは一部の置換として含むことができる。
【0027】
したがって、本発明のガラスセラミックは、その組合せに加え、従来技術によるよりも少ない量で、As23および/またはSb23以外に、他の清澄剤を含有することが排除されるものではない。しかしながら、本発明のガラスセラミックは、避けられない微量を除いて、ヒ素もアンチモンも含有しないことが好ましい。本発明のガラスセラミックは、避けられない微量を除いて、ヒ素(酸化ヒ素)も、アンチモン(酸化アンチモン)も、ガラスを清澄するための他の清澄剤も含有しないことが特に好ましい。
【0028】
本発明のガラスセラミックは一般に、酸化物および臭素の質量パーセントで表して、
0.1から0.7%、好ましくは0.1から0.5%のSnO2、および
0.01から1%、好ましくは0.01から0.1%のBr、
を含有する組成を有する。
【0029】
本発明のガラスセラミック(およびその前駆体ガラス)の臭素含有量は少ない。加えられる臭素は実際に、多かれ少なかれ揮発する。少ないその含有量は、いずれにせよ、臭素を加えずに得られるガラスセラミック(およびそのガラス前駆体)の含有量よりも、著しく多いままである。
【0030】
全く非限定的な様式で、以後、本発明の第1の目的は、ガラスセラミックであって、その組成が、酸化物および臭素の質量パーセントで表して、
50〜75%、好ましくは65〜70% のSiO2
17〜27%、好ましくは18〜22% のAl23
2〜6%、好ましくは2.5〜4% のLi2O、
0〜5%、好ましくは0.5〜2% のMgO、
0〜5%、好ましくは1〜3% のZnO、
0〜5%、好ましくは1.5〜3.5% のTiO2
0〜5%、好ましくは0〜2.5% のZrO2
0〜3%、好ましくは0〜2% のBaO、
0〜3%、好ましくは0〜2% のSrO、
0〜3%、好ましくは0〜2% のCaO、
0〜3%、好ましくは0〜1% のNa2O、
0〜3%、好ましくは0〜1.5% のK2O、
0〜8%、好ましくは0〜3% のP25
0〜3% のB23
0.1〜0.7%、好ましくは0.1〜0.5%のSnO2、および
0.01〜1%、好ましくは0.01〜0.1%のBr
から実質的になるガラスセラミックを包含することを述べる。
【0031】
上述した好ましい範囲は、互いから独立しており、互いとの組合せとして考えるべきものである。それゆえ、本発明のガラスセラミックは、右側の列に示した質量の組成を有することが好ましい。
【0032】
表示は、問題の組成が、酸化物および臭素の所定のリスト「から実質的になる」ものとして与えられている。これは、その組成内で、リストに挙げられた酸素と臭素の合計が、少なくとも95質量%、一般に、少なくとも98質量%を示すことを表す。実際に、ランタン、イットリウム、着色剤(下記参照)などの他の化合物がその組成内に少量見つかることが排除されるものではない。
【0033】
欧州特許出願公開第437228号明細書において、出願人は、特に、急速にセラミック化することのできる、興味深い性質を持つガラスセラミックを記載している。そのようなガラスセラミックは、本発明に特に関連する。それゆえ、ガラスセラミックは本発明の第1の目的の一部を構成し、その組成は、酸化物および臭素の質量パーセントで表して、65〜70%のSiO2、18〜19.8%のAl23、2.5〜3.8%のLi2O、0.55〜1.5%のMgO、1.2〜2.8%のZnO、1.8〜3.2%のTiO2、0〜1.4%のBaO、0〜1.4%のSrO、1.0〜2.5%のZrO2、0〜<1%のNa2O、0〜<1.0%のK2O、0.1〜0.7%のSnO2、および0.01〜1%のBrから実質的になり、BaO+SrOが0.4〜1.4%であり、MgO+BaO+SrOが1.1〜2.3%であり、Na2O+K2Oが0〜<1.0%であり、(2.8Li2O+1.2ZnO)/5.2MgOが>1.8である。
【0034】
欧州特許出願公開第1398303号明細書において、出願人は、失透の問題が改善された、同じタイプのガラスセラミックを記載している。そのようなガラスセラミックも本発明に関連する。それゆえ、ガラスセラミックは本発明の第1の目的の一部を構成し、その組成は、酸化物および臭素の質量パーセントで表して、65〜70%のSiO2、18〜20.5%のAl23、2.5〜3.8%のLi2O、0.55〜1.5%のMgO、1.2〜2.8%のZnO、0〜1.4%のBaO、0〜1.4%のSrO、0〜<1%のNa2O、0〜<1.0%のK2O、1.8〜3.5%のTiO2、0.8〜1.6%のZrO2、0.1〜0.7%のSnO2、および0.01〜1%のBrから実質的になり、BaO+SrOが0.4〜1.4%であり、MgO+BaO+SrOが1.1〜2.3%であり、Na2O+K2Oが0〜<1.0%であり、(2.8Li2O+1.2ZnO)/5.2MgOが>1.8であり、TiO2/ZrO2が>2.2である。
【0035】
上述したように、本発明のガラスセラミックは着色剤を含有して差し支えない。したがって、その組成は、少なくとも1種類の着色剤を効果的な量(求められる着色の効果に関して)で含有して差し支えない。その少なくとも1種類の着色剤は、CoO、Cr23、Fe23、MnO2、NiO、V25およびCeO2から選択されることが好ましい(それゆえ、単独または組合せで含まれる)。当業者には、濃い色のガラスセラミックを得るのにV25が通常用いられることが当然分かっている。
【0036】
第2の目的によれば、本発明は、その組成に過剰ではない量のSnO2、およびBrを共に含有する上述したガラスセラミックから製造された物品に関する。そのような物品としては、特に、レンジ台の上面、調理器具、電子レンジのプレート、暖房器具の窓、防火扉、防火窓、熱分解または触媒炉の窓が挙げられる。このようなリストは網羅的ではない。
【0037】
第3の目的によれば、本発明は、上述した本発明のガラスセラミックの前駆体であるリチウムアルミノシリケートガラスに関する。先に指定した過剰ではない量のSnO2、およびBrを共に含有し、本発明のガラスセラミックの前駆体である、リチウムアルミノシリケートガラスは、実際に新規であり、したがって、本発明の第3の目的を構成する。その新規のガラスは、本発明のガラスセラミックに関して先に指定したものに相当する組成を有することが有利である。
【0038】
この新規のガラスは、避けられない微量を除いて、ヒ素もアンチモンも含有しない組成を有することが有利である。この新規のガラスは、清澄剤として、本発明の意味で「SnO2+Br」の組合せのみを含有することが非常に有利である。
【0039】
第4の目的によれば、本発明は、上述した本発明のガラスセラミックを調製する方法に関する。慣習的に、その方法は、そのようなガラスセラミックの前駆体であるリチウムアルミノシリケートガラスを、それがセラミック化するのを確実にする条件下で熱処理する工程を有してなる。そのようなセラミック化処理はそれ自体知られている。
【0040】
本発明によれば、この方法は、0.7質量%以下の量の酸化スズ(SnO2)、および臭素(Br)を共に含有するガラスについて実施される。
【0041】
調製されたガラスセラミックは、本発明のガラスセラミックに関して先に指定した量でSnO2およびBrを含有することが有利であり、本発明のガラスセラミックについて先に指定した組成の内の1つに対応する組成を有することが有利である。
【0042】
第5の目的によれば、本発明は、本発明のガラスセラミックから製造される物品を調製する方法に関する。その方法は、慣習的に、以下の3つの連続工程を有してなる:
・リチウムアルミノシリケートガラスまたはそのようなガラスの前駆体である無機充填剤であって、少なくとも1種類の清澄剤を効果的であり過剰ではない量で含有するガラスまたは充填剤を溶融し、その後、得られた溶融ガラスを清澄する工程、
・得られた清澄された溶融ガラスを冷却すると同時に、求められている物品に所望の形状に成形する工程、および
・その成形されたガラスをセラミック化する工程。
【0043】
本発明によれば、問題のガラスまたは充填剤は、0.7質量%以下の量の酸化スズ(SnO2)、および臭素(Br)を共に含有する組成を有することが特徴的である。
【0044】
調製された物品を構成するガラスセラミックは、本発明のガラスセラミックに関して先に指定した量でSnO2およびBrを含有することが有利であり、本発明のガラスセラミックについて先に指定した組成の内の1つに対応する組成を有することが有利である。
【0045】
上述した方法の文脈において、全く非限定的な様式で、臭素は一般に、問題のガラスまたは充填剤の質量の0.5から2%、好ましくは0.5から1.5%の比率で加えられ(加えられる臭素の一部は、溶融および清澄の最中に揮発する)、その臭素は特に、臭化カリウム(KBr)および/または臭化マグネシウム(MgBr2)の形態で提供できることが述べられる。
【0046】
本発明は、全ての態様において、リチウムアルミノシリケートガラスのセラミック化可能な組成に、清澄剤として、制御された量のSnO2、および臭素を共に使用することに関するのが理解されるであろう。
【実施例】
【0047】
ここで、以下の実施例により本発明を詳しく説明する。
【0048】
より詳しくは、具体例1、2および3は本発明を示しているが、具体例A、BおよびCは従来技術を示している。
【0049】
具体例A、B、C;1および2:ガラス
以下の表1は:
第1部において、炉内に配置された問題のガラスの質量で表された組成、および
第2部において、そのガラスのcm3当たりの種の数、
を示している。
【0050】
前記ガラスは、硝酸塩または炭酸塩などの容易に分解できる化合物からおよび/または酸化物から通常の様式で調製される。出発材料を混合して、均質な混合物を得る。
【0051】
約1,000gの出発材料を白金坩堝内に配置する。次いで、坩堝を、1,400℃に予熱した炉内に導入する。それらのガラスは、以下の溶融サイクルを経る:
・1,400から1,600℃に160分、
・1,600から1,650℃に100分、
・1,650℃で110分、および
・1,650から1,450℃に60分。
【0052】
次いで、それらを炉から取り出す。
【0053】
次いで、その炉内でガラスを600℃で再加熱する。
【0054】
次いで、ガラス表面の下、それぞれ、10mmおよび30mmで切断した2つのサンプル(3mm厚)について、40μmより大きい直径を持つ種の数を観察する。以下の表1に示した値は、cm3当たりの種の数の平均である。
【0055】
5つのバッチを試験した。それらは、清澄剤として含まれている化合物の性質が異なる:
・具体例Aに相当するものは、ヒ素(As23)を含有する、
・具体例Bに相当するものは、酸化スズ(SnO2)および塩素(Cl)を含有する、
・具体例Cに相当するものは、酸化スズ(SnO2)のみを含有する、
・本発明の具体例1および2に相当するものでは、酸化スズ(SnO2)および臭素(Br)を含有する。この臭素は、臭化カリウム(KBr)の形態で導入される。
【表1】

【0056】
本発明によるガラス、並びに従来技術のガラスAは、100/cm3未満の数の種を含有する。具体例BおよびCによるガラスは、より多くの種を含有する。
【0057】
具体例Cのガラス(酸化スズのみを含有する)よりも、具体例Bのガラス(酸化スズに加え、塩素を含有する)のほうが結果が良好である。しかしながら、塩素による結果(SnO2+Cl:具体例B)は、臭素による結果(SnO2+Br:本発明の具体例1および2)よりも、興味深くない。
【0058】
具体例3:ガラスセラミック
この具体例は、本発明のガラス内の臭素の存在により、そのようなガラスから得られたガラスセラミック(本発明の)の性質(熱膨張および色)が著しく変わらないことを示している。
【0059】
本発明のガラスを調製した。このガラスをセラミック化し、得られたセラミックの熱膨張および色を測定した。
【0060】
以下の表2は:
第1部において、ガラスの(およびガラスセラミックの)質量で表した組成、および
第2部において、ガラスセラミックの性質(熱膨張係数、3mm厚のサンプルについての分光光度計(光源D65/2°での観察者)を用いた透過測定からのスペクトル分析から導いた積分透過率(integrated transmission)Yおよびカラーポイントx,y)。
【0061】
このガラスは通常の様式で調製した。約2,000gの出発材料を1,650℃で6時間に亘り溶融した。次いで、溶融ガラスをテーブル上に注ぎ、6mmの厚さに圧延した。このガラスのサンプルを以下のプログラムにしたがってセラミック化した:
・周囲温度から600℃まで20分、
・600から930℃まで65分、および
・930℃で15分。
【表2】

【0062】
レンジ台の上面として適するために、ガラスセラミック(この厚さの)は、12×10-7/K未満(好ましくは5×10-7/K未満)の熱膨張係数および4.5未満のYを有さなければならないことが知られている。
【0063】
それゆえ、上記結果は、十分に満足のいくものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主結晶相としてβ−石英および/またはβ−スポジュメンの固溶体を含有するガラスセラミックであって、該ガラスセラミックの組成が、該ガラスセラミックの総質量の0.7質量%以下の量の酸化スズ(SnO2)、および臭素(Br)を共に含有することを特徴とするガラスセラミック。
【請求項2】
前記組成が、避けられない微量を除いて、ヒ素もアンチモンも含有しないことを特徴とする請求項1記載のガラスセラミック。
【請求項3】
前記組成が、酸化物および臭素の質量パーセントで表して、0.1から0.7%のSnO2および0.01から1%のBrを含有することを特徴とする請求項1または2記載のガラスセラミック。
【請求項4】
前記組成が、酸化物および臭素の質量パーセントで表して、50〜75%のSiO2、17〜27%のAl23、2〜6%のLi2O、0〜5%のMgO、0〜5%のZnO、0〜5%のTiO2、0〜5%のZrO2、0〜3%のBaO、0〜3%のSrO、0〜3%のCaO、0〜3%のNa2O、0〜3%のK2O、0〜8%のP25、0〜3%のB23、0.1〜0.7%のSnO2、および0.01〜1%のBrから実質的になることを特徴とする請求項2記載のガラスセラミック。
【請求項5】
前記組成が、酸化物および臭素の質量パーセントで表して、65〜70%のSiO2、18〜22%のAl23、2.5〜4%のLi2O、0.5〜2%のMgO、1〜3%のZnO、1.5〜3.5%のTiO2、0〜2.5%のZrO2、0〜2%のBaO、0〜2%のSrO、0〜2%のCaO、0〜1%のNa2O、0〜1.5%のK2O、0〜3%のP25、0.1〜0.5%のSnO2、および0.01〜0.1%のBrから実質的になることを特徴とする請求項2記載のガラスセラミック。
【請求項6】
前記組成が、酸化物および臭素の質量パーセントで表して、65〜70%のSiO2、18〜19.8%のAl23、2.5〜3.8%のLi2O、0.55〜1.5%のMgO、1.2〜2.8%のZnO、1.8〜3.2%のTiO2、0〜1.4%のBaO、0〜1.4%のSrO、1.0〜2.5%のZrO2、0〜<1%のNa2O、0〜<1.0%のK2O、0.1〜0.7%のSnO2、および0.01〜1%のBrから実質的になり、BaO+SrOが0.4〜1.4%であり、MgO+BaO+SrOが1.1〜2.3%であり、Na2O+K2Oが0〜<1.0%であり、(2.8Li2O+1.2ZnO)/5.2MgOが>1.8であることを特徴とする請求項2記載のガラスセラミック。
【請求項7】
前記組成が、酸化物および臭素の質量パーセントで表して、65〜70%のSiO2、18〜20.5%のAl23、2.5〜3.8%のLi2O、0.55〜1.5%のMgO、1.2〜2.8%のZnO、0〜1.4%のBaO、0〜1.4%のSrO、0〜<1%のNa2O、0〜<1.0%のK2O、1.8〜3.5%のTiO2、0.8〜1.6%のZrO2、0.1〜0.7%のSnO2、および0.01〜1%のBrから実質的になり、BaO+SrOが0.4〜1.4%であり、MgO+BaO+SrOが1.1〜2.3%であり、Na2O+K2Oが0〜<1.0%であり、(2.8Li2O+1.2ZnO)/5.2MgOが>1.8であり、TiO2/ZrO2が>2.2であることを特徴とする請求項2記載のガラスセラミック。
【請求項8】
前記組成が少なくとも1種類の着色剤を効果的な量でさらに含有することを特徴とする請求項1記載のガラスセラミック。
【請求項9】
請求項1から8いずれか1項記載のガラスセラミックから製造された物品。
【請求項10】
請求項1から8いずれか1項記載のガラスセラミックの前駆体であるリチウムアルミノシリケートガラスであって、該ガラスの組成が、請求項1から8いずれか1項記載のガラスセラミックの組成に対応することを特徴とするリチウムアルミノシリケートガラス。

【公表番号】特表2009−500283(P2009−500283A)
【公表日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−519907(P2008−519907)
【出願日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際出願番号】PCT/EP2006/063667
【国際公開番号】WO2007/003567
【国際公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【出願人】(501059442)
【復代理人】
【識別番号】100116540
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 香
【復代理人】
【識別番号】100139723
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 洋
【Fターム(参考)】