説明

βーフルオロメチルカルボニル誘導体の製造法

【課題】医農薬産業において重要な合成中間体であるβーフルオロメチルカルボニル誘導体とその光学活性体を工業的スケールで効率良く製造し得る製造法を提供する。
【解決手段】例えばクロトンアルデヒドとフルオロビススルホニルメタン類を、光学活性な相関移動触媒存在下で共役付加反応させることにより、下式で例示される光学活性な化合物が得られる。


生成物を還元剤の存在下で脱スルホニル化させると、光学活性β−フルオロメチルカルボニル化合物が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はβーフルオロメチルカルボニル誘導体の製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
β-フルオロメチルアミン誘導体は医農薬産業において重要な合成中間体である。
【0003】
一般的な製造法として,(1)γ−ブロモブチル酸エチルエステルをAgFで加熱条件下,置換反応する方法(非特許文献1)(2)γ−ブロモブチル酸エチルエステルをKFとヘキサデシルトリブチルホスホニウムブロミドの存在下,ブロミドをフッ素に置換する方法(非特許文献2)(3)ヒドロキシシクロブタノン類とDAST(ジエチルアミノサルファ−トリフルオリド)との反応によるヒドロキシ基をフッ素に置換する反応(非特許文献3)(4)4−フルオロ−フェニルクロトン酸エステル類をPd/C存在下,水素添加する方法(特許文献4)が挙げられる。光学活性体においては,(5)(R)-カンファ−グリシンエステルイミン類とフルオロアルキル類とのジアステレオ選択的アルキル化反応する方法(非特許文献5)(6)リパーゼを用いたフルオロメチルグルタリック酸無水物の不斉開環反応により,光学活性なβ−フルオロメチルδ−バレロラクタム類を得る方法(非特許文献6)が挙げられる。しかしながら,前記(5)の方法では化学量論量の光学活性不斉補助基が必要でありジアステレオ選択性は低い。さらに,前記(6)の方法は,高いエナンチオ選択的で得られるが基質適用範囲が狭い。従来法は,選択性および適用範囲において工業的に光学活性βーフルオロメチルカルボニル誘導体を供給するのに問題がある。従って,工業的スケールで効率良く製造し得る一般式(8)に示される光学活性βーフルオロメチルカルボニル誘導体の製造法が望まれていた。

【非特許文献1】J. Chem. Soc., 2745(1949)
【非特許文献2】J. Fluorine Chem.,99(1999)
【非特許文献3】J. Fluorine Chem.,126(2005)
【特許文献4】特開平18-6328009
【非特許文献5】Leibigs Analen/Reucil,6,1201(1997)
【非特許文献6】Agric. Biol. Chem.,54,3269(1990)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は,上記課題を解決するためになされたものであり,その目的は,溶媒中,塩基触媒用いて前記一般式(1)と(2)とを反応させて,工業的スケールで効率良く前記一般式(3)を製造し,(3)を簡便に変換し,前記一般式(8)に示されるβーフルオロメチルカルボニル誘導体の製造法を提供することである。本手法は,光学活性な相関移動触媒を用いることで光学活性な前記一般式(3)が得られる。さらに,前記一般式(4)もしくは(5)と(2)とのジアステレオ選択的反応によってそれぞれ得られる前記一般式(6),(7)の製造法と,脱スルホニル化後,前記一般式(9),(10)の製造法も提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは,上記課題を解決するため鋭意研究を行った結果,溶媒中,塩基触媒存在下,前記一般式(1)の共役カルボニル類と前記一般式(2)フルオロビススルホニルメタン類を反応させて,前記一般式(3)に示されるを得ることを見出した。さらに,塩基存在下,光学活性な相間移動触媒条件下,前記一般式(1)と(2)との反応により光学活性な前記一般式(3)が得られる。さらに,前記一般式(4),(5)を用いてそれぞれジアステレオ選択的に反応を行い,光学活性な前記一般式(6),(7)の製造に至った。前記一般式(3),(6),(7)は金属による簡便な脱スルホニル化反応により,前記一般式(8),(9),(10)をそれぞれ得ることを見出し,本発明を完成するに至った。
【0006】

すなわち,本発明は下記の(1)〜(9)に関するものである。

(1)溶媒中,塩基触媒存在下,一般式(1)
【0007】
【化6】



【0008】
(式中,Rは,水素,置換もしくは未置換のアルキル基,アルケニル基,アラルキル基,アルキニル基,アリール基,アルコキシ基またはアミノ基を示す。Rは,水素,置換もしくは未置換のアルキル基,アルケニル基,アラルキル基,アルキニル基またはアリール基を示す。)で表せる共役カルボニル化合物を一般式(2)
【0009】
【化7】

【0010】
(式中,R,Rはそれぞれ独立に,置換もしくは未置換のアルキル基,アルケニル基,アラルキル基,アルキニル基またはアリール基を示す。さらに,RおよびRが一体となって,環状構造の一部を形成してもよい。)で示されるフルオロビススルホニルメタン類との共役付加反応させることを特徴とする一般式(3)
【0011】
【化3】


【0012】
(式中,R,R,R,Rは前記定義に同じ。)
で示される光学活性含フッ素カルボニル誘導体の製造法。β―フルオロ(フェニルスルホニル)メチル付加体(2)前記塩基存在下,光学活性な相間移動触媒を用いると,前記一般式(3)で表せるβ―フルオロ(フェニルスルホニル)メチル付加体が光学活性である請求項2の記載の製造法。

(3)前記一般式(4),(5)
【0013】
【化4】

【0014】
(式中,R,R,R,R,R,R10は,水素,置換もしくは未置換のアルキル基,アルケニル基,アラルキル基,アルキニル基またはアリール基を示す。)で表せる共役カルボニル化合物を前記一般式(2)で示されるフルオロビススルホニルメタン類との共役付加反応させることを特徴とする一般式(6)
【0015】
【化5】

【0016】
(式中,R,R,R,R,R,R,R,R10は前記定義に同じ。)で示される光学活性β―フルオロ(フェニルスルホニル)メチル付加体の製造法。

(4)前記一般式(3)で表せるβ―フルオロ(フェニルスルホニル)メチル付加体を溶媒中,還元剤として金属の存在下,脱スルホニル化させることを特徴とする一般式(8)
【0017】
【化6】

【0018】
(式中,R,Rは前記定義に同じ。)で示される光学活性βーフルオロメチルカルボニル誘導体の製造法。

(5)基質が前記一般式(6)または(7)で表せる含フッ素カルボニル誘導体である一般式(9),(10)
【0019】
【化7】

【0020】
(式中,R,R,R,R,R,R10は前記定義に同じ。)で示される光学活性βーフルオロメチルカルボニル誘導体の請求項4の記載の製造法。

(6)前記光学活性な相間移動触媒は,光学活性4級アンモニウム塩類から選ばれる少なくとも1種類の塩であることを特徴とする請求項2に記載の製造法。
光学活性な相間移動触媒としては,一般式(11),(12)
【0021】
【化10】

【0022】
(式中,Rは水素,置換もしくは未置換のアルキル基もしくはアルコキシ基を示す。もしくはOR10で表せるR10はアルキル基を示す。Rは,エチル基もしくはビニル基を示す。Rは,水素,アルキル基,アリール基またはアシル基を示す。Rは,水素,置換もしくは未置換のアルキル基またはトリフルオロメチル基を示す。mは0〜2の整数を表す。Xは,ハロゲン原子,IO,ClO,OTfまたはHSOを示す。)

(7)前記塩基は,一般に市販されているアミン類もしくは無機塩一般式(5)から選ばれる少なくとも1種類の塩基であることを特徴とする請求項1,2,3いずれか1項に記載の製造法。アミンとしては,トリエチルアミン,ジイソプロピルエチルアミン,ジメチルアミノピリジン,キヌクリジン,DBU,DABCOなどを用いることができる。無機塩は一般式(13)
(X)nM (13)
(式中,Mは,希土類を含む遷移金属,リチウム,ナトリウム,マグネシウム,アルミニウムから選ばれた元素,nは,Mの原子価と同数の整数を表す。Xはアルコシド,フルオリド,カルボネートなどのマイナスイオンを表す。)

(8)前記溶媒が,N,N−ジメチルホルムアミド,ジメチルスルホキシド,クロロホルム,ジクロロメタン,ジクロロエタン,トルエン,テトラヒドロフラン,ヘキサン,ベンゼンからなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1,2,3,4または5のいずれか1項に記載の製造法。

(9)前記還元剤としての金属は,希土類を含む遷移金属リチウム,ナトリウム,マグネシウム,アルミニウム,亜鉛,スズ,インジウム,サマリウムなどから選ばれる少なくとも1種類の元素であることを特徴とする請求項4,5いずれか1項に記載の製造法。

【発明の効果】
【0023】
従来,前記一般式(8)で示されるβ―フルオロメチルカルボニル誘導体の製造法は,一般的に,γ−ハロブタン酸エステル類のフッ化金属を用いたフッ素の置換反応の方法であるため,大量の廃棄物が生成する点が問題であった。また,γ−ヒドロキシブタン酸エステル類の求電子的フッ素化剤による置換反応は,フッ素化剤が高価であることや入手用意でない基質を製造する点も問題であった。光学活性体の製造法は,(R)-カンファ−グリシンエステルイミン類とフルオロアルキル類とのジアステレオ選択的アルキル化反応する方法と,リパーゼを用いたフルオロメチルグルタリック酸無水物の不斉開環反応により,光学活性なβ−フルオロメチルδ−バレロラクタム類を得る方法などが報告されている。しかしながら,前者は,化学量論量の光学活性不斉補助基が必要でありジアステレオ選択性は低い。後者は,高いエナンチオ選択的で得られるが基質適用範囲が狭い。従来法は,選択性および適用範囲において工業的に光学活性βーフルオロメチルカルボニル化合物を供給するのに問題がある。
【0024】
従来法と比較して,本発明における光学活性βーフルオロメチルカルボニル誘導体の製造法は,塩基触媒存在下,前記一般式(1)で示される共役アルデヒドと前記一般式(2)との共役付加反応を行えることから基質汎用性が広い。さらに,光学活性な相間移動触媒を用いることで光学活性前記一般式(3)を得ることができる。基質に不斉補助基をもつ一般式(4),(5)を用いることで,ジアステレオ選択的な共役付加反応を行い,光学活性な前記一般式(6),(7)を得ることが可能である。これらβ―フルオロ(フェニルスルホニル)メチル付加体(3),(6),(7)は簡便な脱スルホニル化により前記一般式(8),(9),(10)に示されるβーフルオロメチルカルボニル化合物へと誘導することが可能であり,本発明は工業的に利用価値が高い。

【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下,本発明を詳細に説明する。本発明は塩基触媒存在下,前記一般式(1),(4),(5)のいずれか1つに対して,前記一般式(2)と反応させて前記一般式(3),(6),(7)をそれぞれ得た後,脱スルホニル化することにより前記一般式(8),(9),(10)に示されるβーフルオロメチルカルボニル誘導体を得ることを特徴とする製造法である。

前記一般式(1)中のアルキル基は,前記一般式(1)中のアルキル基は炭素数が1〜20の枝分かれがあっても良いアルキル基または炭素数が3〜20のシクロアルキル基が好ましく,炭素数が1〜10のアルキル基または炭素数が3〜10のシクロアルキル基がさらに好ましい。アルキル基はハロゲン原子,シアノ基,ニトロ基,アリール基,アシル基,アルコキシ基,アリールオキシ基,アシルオキシ基などの置換基で置換されていてもよい。

前記一般式(1)中のアルケニル基は炭素数が1〜20の枝分かれがあっても良いアルケニル基または炭素数が3〜20のシクロアルケニル基が好ましく,炭素数が1〜10のアルケニル基または炭素数が3〜10のシクロアルケニル基がさらに好ましい。アルケニル基の例としては,ビニル基,1−プロペニル基,1−ブテニル基,1−ヘキセニル基,シクロヘキセニル基,アリル基などが挙げられる。アルケニル基はハロゲン原子,シアノ基,ニトロ基,アリール基,アシル基,アルコキシ基,アリールオキシ基,アシルオキシ基などの置換基で置換されていてもよい。

前記一般式(1)中のアラルキル基は,例としてベンジル基,ペンタフルオロベンジル基,o−メチルベンジル基,m−メチルベンジル基,p−メチルベンジル基,p−ニトロベンジル基,ナフチルメチル基,フルフリル基,α−フェネチル基等が挙げられる。

前記一般式(1)中のアルキニル基は,例としてエチニル基,フェニルエチニル基,2−プロピニル基等が挙げられる。

前記一般式(1)中のアリール基は炭素数が6〜20のアリール基が好ましく,炭素数が6〜10のアリール基がさらに好ましい。アリール基はアルキル基,ハロゲン原子,シアノ基,ニトロ基,アシル基,アルコキシ基,アシルオキシ基などの置換基で置換されていてもよい。

前記一般式(1)中のアルコキシ基は炭素数が1〜20のアルコキシ基が好ましく,炭素数が1〜10のアルコキシ基がさらに好ましい。アルコキシ基の場合も上記のアルキル基の場合と同様の置換基により置換されていてもよい。

前記一般式(1)中のアミノ基は,N上に水素,置換もしくは未置換のアルキル基,アルケニル基,アラルキル基,アルキニル基,アリール基の置換基が1つか2つ置換しているものが挙げられる。置換基はそれぞれ独立しており,同一である必要はない。
(アルキル基,アルケニル基,アラルキル基,アルキニル基,アリール基は前記定義に同じ。)前記一般式(1)中のアミノ基は,置換基を組み合わせて形成されうる環状構造を形成することができる。特に3員環から20員環でなる単環,双環,またはそれ以上の多環の構造を示すことができる。また,ヘテロ原子の介在もしくは非介在で環状構造の一部を形成してもよい。

前記一般式(2)中のアルキル基は,置換基を有していても良く,直鎖または分岐した炭素数が1〜20のアルキル基または炭素数が3〜20のシクロアルキル基が好ましく,炭素数が1〜10のアルキル基または炭素数が3〜10のシクロアルキル基がさらに好ましい。

前記一般式(2)中のアリール基は炭素数が6〜20の置換または無置換のアリール基が好ましく,炭素数が6〜10のアリール基がさらに好ましい。

前記一般式(2)中のRおよびRを組み合わせて形成されうる前記環状構造の例としては,3員環から20員環でなる単環,双環,またはそれ以上の多環の構造を示すことができる。

前記金属は,特に制限するわけではないが,希土類を含む遷移金属リチウム,ナトリウム,マグネシウム,アルミニウム,亜鉛,スズ,インジウム,サマリウムなどから選ばれる少なくとも1種類の元素が挙げられる。これらは単独で使用し得るのみならず,2種類以上を混合して用いることも可能である。

前記一般式(3)で示されるβ―フルオロ(フェニルスルホニル)メチル付加体としては,例えば,3−(フルオロビス(フェニルスルホニル)メチル)ブタナール,エチル−3−(フルオロビス(フェニルスルホニル)メチル)ペンタノエート,フルオロ4−フルオロ−4,4−ビス(フェニルスルホニル)ブタナール,4−フルオロ−3−メチル−4,4−ビス(フェニルスルホニル)ブタナール,3−[フルオロビス(フェニルスルホニル)メチル]ペンタナール,3−[フルオロビス(フェニルスルホニル)メチル]ヘプタナール等が挙げられる。

前記一般式(4),(5)中のアルキル基は,置換基を有していても良く,直鎖または分岐した炭素数が1〜20のアルキル基または炭素数が3〜20のシクロアルキル基が好ましく,炭素数が1〜10のアルキル基または炭素数が3〜10のシクロアルキル基がさらに好ましい。

前記一般式(4),(5)中のアラルキル基は,例としてベンジル基,ペンタフルオロベンジル基,o−メチルベンジル基,m−メチルベンジル基,p−メチルベンジル基,p−ニトロベンジル基,ナフチルメチル基,フルフリル基,α−フェネチル基等が挙げられる。

前記一般式(4),(5)中のアルキニル基は,例としてエチニル基,フェニルエチニル基,2−プロピニル基等が挙げられる。

前記一般式(4),(5)中のアリール基は炭素数が6〜20の置換または無置換のアリール基が好ましく,炭素数が6〜10のアリール基がさらに好ましい。

前記一般式(6),(7)で示される
3−(3−(フルオロビス(フェニルスルホニル)メチル)ブタノイル)オキサゾリジン−2−オン,3−(3−(フルオロビス(フェニルスルホニル)メチル)ペンタノイル)オキサゾリジン−2−オン,3−(3−(フルオロビス(フェニルスルホニル)メチル)ヘキサノイル)オキサゾリジン−2−オン,(4S)−3−(4−フルオロ−3−メチル−4,4−ビス(フェニルスルホニル)ブタノイル−4−イソプロピルオキサゾキジン−2−オンなどが挙げられる。

前記一般式(8)で示される
4−フルオロ−3−メチルブタナール,3−(フルオロメチル)ペンタナール,3−(フルオロメチル)ヘキサナール,エチル 4−フルオロ−3−メチルブタノエート,エチル 4−フルオロ−3−メチルペンタノエート,エチル 4−フルオロ−3−メチルヘキサノエートなどが挙げられる。

前記一般式(9),(10)で示される
3−(3−(フルオロメチル)ブタノイル)オキサゾリジン−2−オン,3−(3−(フルオロメチル)ペンタノイル)オキサゾリジン−2−オン,3−(3−(フルオロメチル)ヘキサノイル)オキサゾリジン−2−オンなどが挙げられる。

前記塩基触媒として特に制限するわけではないが,トリエチルアミン,ジイソプロピルエチルアミン,ジメチルアミノピリジン,キヌクリジン,DBU,DABCOなどを用いることができる。なお,前記一般式(5)塩基も,特に制限するわけではないが,水酸化ナトリウム,炭酸ナトリム,水酸化セシウム等が挙げられる。これらは単独で使用し得るのみならず,2種類以上を混合して用いることも可能である。

前記光学活性な相間移動触媒として,特に制限するわけではないが,光学活性4級アンモニウム塩,光学活性チオニウム塩,光学活性オキソニオウム塩,光学活性ホスホニウム塩などが挙げられる。好ましくは,キナアルカロイドの4級アンモニウム塩が挙げられる。これらは単独で使用し得るのみならず,2種類以上を混合して用いることも可能である。

前記一般式(11),(12)中のアルキル基は炭素数が1〜20の枝分かれがあっても良いアルキル基が好ましく,炭素数が1〜8の枝分かれがあっても良いアルキル基がさらに好ましい。
前記一般式(11),(12)中のアリール基は炭素数が6〜20の置換または無置換のアリール基が好ましく,炭素数が6〜10のアリール基がさらに好ましい。

前記一般式(11),(12)中のアシル基は炭素数が1〜20のアシル基が好ましく,炭素数が1〜10のアシル基がさらに好ましい。特に制限するわけではないが,例としてホルミル基,アセチル基,マロニル基,ベンゾイル基,シンナモイル基等が挙げられる。

本発明の反応は,溶媒として低極性有機溶媒としては,ヘプタン,ヘキサン,キシレン,トルエン,クロロホルム,ジクロロメタン,ジイソプロピルエーテルが好ましく,クロロホルム,ジクロロメタン,トルエン,ベンゼンが好ましい。非プロトン性溶媒としては,N,N−ジメチルホルムアミド,ジメチルスルホキシド,テトラヒドロフラン,ジメトキシエタン,ジエチレングリコールジメチルエーテル,ヘキサメチルリン酸トリアミドが好ましく,N,N−ジメチルホルムアミド,N−メチル−2−ピロリドン,1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン,ジメチルスルホキシド,テトラヒドロフランがさらに好ましい。これらは単独で使用し得るのみならず,2種類以上を混合して用いることも可能である。

反応温度は特に限定されるものではないが,通常−80℃〜120℃であり,より好ましくは室温付近である。反応器は大気開放型の反応器,またはオートクレーブ等の密閉型の反応器のいずれも可能である。反応圧力は大気圧下,または加圧下のいずれも可能である。反応時間は特に限定されるものではないが,通常1日〜7日で反応は完結する。

反応後,前記一般式(3),(6),(7)で示されるβ―フルオロ(フェニルスルホニル)メチル付加体は一般的な手法によって反応液から単離および精製することができ,例えば反応液を濃縮した後,蒸留精製またはシリカゲル,アルミナ等の吸着剤を用いたカラムクロマトグラフ法での精製,塩析,再結晶等が挙げられる。
【0026】

前記一般式(8),(9),(10)で示されるβ−フルオロメチルカルボニル誘導体は,一般的な手法によって反応液から単離および精製することができ,例えば反応液を濃縮した後,蒸留精製またはシリカゲル,アルミナ等の吸着剤を用いたカラムクロマトグラフ法での精製,塩析,再結晶等が挙げられる。

以下,実施例により本発明をさらに具体的に説明するが,本発明の範囲は下記の実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0027】
一般的な製造法
α,β−不飽和カルボニル化合物1a(23.3 mg, 0.150 mmol),フルオロビス(フェニルスルホニル)メタン2(49.5 mg,0.158 mmol)をDMF(0.3 mL)に溶かし,室温で,DBU (4.5 μL, 0.030 mmol)を加えた。5時間撹拌した後,減圧下,溶媒を留去した。残渣をカラムクロマトグラフィーにて精製し,生成物3a(無色結晶)を得た。
【0028】


【0029】
Compound 3a: 3−(3−(フルオロビス(フェニルスルホニル)メチル)ブタノイル)オキサゾリジン−2−オン
White solid; 1H NMR (200 MHz, CDCl3):δ = 1.47 (d, J = 5.2 Hz, 3H), 3.36-3.42 (m, 2H), 3.67-3.76 (m, 1H), 3.97 (t, J = 8.2 Hz , 2H), 4.40 (t, J = 8.2 Hz , 2H), 7.49-7.57 (m, 4H), 7.66-7.70 (m, 2H), 7.89-7.92 (m, 4H). 19F NMR (188 MHz, CDCl3):δ = -133.1 (s, 1F). IR (KBr):3099, 2912, 1786, 1694, 1397, 1336, 1225, 1173, 1146, 1124, 726, 686, 585, 566, 514 cm-1. MS (EI): m/z = 469 (M+)



【0030】
Compound 3b: 3−(3−(フルオロビス(フェニルスルホニル)メチル)ペンタノイル)オキサゾリジン−2−オン
White solid; 1H NMR (200 MHz, CDCl3):δ = 0.86 (t, J = 7.4 Hz, 3H), 1.67-1.83 (m, 2H), 2.08-2.21 (m, 1H), 3.15 (dd, J = 2.4, 5.8 Hz, 2H), 3.20-3.35 (m, 2H), 3.94 (t, J= 7.8 Hz, 2H), 3.99 (dd, J = 2.4, 5.8 Hz, 1H), 4.38 (t, J = 7.8 Hz, 2H), 7.49-7.57 (m, 4H), 7.66-7.74 (m, 2H), 7.88-7.95 (m, 4H). 19F NMR (188 MHz, CDCl3): δ = -133.0 (s, 1F). 13C NMR (50.3 MHz, CDCl3): δ = 12.8, 22.8, 34.6, 42.5, 62.3, 116.1 (d, J = 265.0 Hz), 129.0, 130.2, 134.2, 135.4. IR (KBr): 3392, 2918, 1772, 1672, 1389, 1337, 1277, 685, 601, 580, 564, 533, 471, 437 cm-1. MS (EI): m/z = 342 (M+−SO2Ph)



【0031】
Compound 3c: 3−(3−(フルオロビス(フェニルスルホニル)メチル)ヘキサノイル)オキサゾリジン−2−オン
White solid; 1H NMR (200 MHz, CDCl3): δ = 0.83 (t, J = 7.2 Hz, 3H), 1.02-1.42 (m, 2H), 1.59-1.78 (m, 1H), 2.02-2.22 (m, 1H), 3.21 (dd, J = 4.0, 15 Hz, 1H), 3.30- 3.48 (m, 1H), 3.94 (t, J = 8.0 Hz, 2H), 4.01 (dd, J = 4.0, 15 Hz, 1H), 4.40 (t, J = 8.0 Hz, 2H), 7.49-7.56 (m, 4H), 7.66-7.74 (m, 2H), 7.86-7.92 (m, 4H). 19F NMR (188 MHz, CDCl3): δ = -132.6 (s, 1F). 13C NMR (50.3 MHz, CDCl3): δ = 13.8, 21.4, 31.8, 35.4, 37.5, 42.7, 62.1, 77.0, 116.3 (d, J= 265.3 Hz), 128.5, 130.7, 134.9, 152.9, 170.7. IR (KBr): 2967, 2928, 1782, 1700, 1448, 1392, 1336, 1300, 1224, 1169, 1148, 756, 731, 688, 603, 580, 563, 534 cm-1. MS (EI): m/z = 356 (M+−SO2Ph)



【0032】
Compound 3d:3−(フルオロビス(フェニルスルホニル)メチル)ブタナール
White solid; 1H NMR (200 MHz, CDCl3): δ = 1.38 (d, J = 6.8 Hz, 3H), 3.02 (dd, J = 9.0, 18.8 Hz, 1H), 3.20-3.35 (m, 1H), 3.57 (dd, J = 9.0, 18.8 Hz, 2H), 7.49-7.56 (m, 4H), 7.66-7.74 (m, 2H), 7.79-7.91 (m, 4H), 9.70 (d, J = 2.2 Hz, 1H). 19F NMR (188 MHz, CDCl3):δ = -133.9 (s, 1F). 13C NMR (50.3 MHz, CDCl3): δ = 15.1, 31.5, 45.3, 115.9 (d, J = 265.0 Hz), 128.7, 130.6, 135.0. IR (KBr):2869, 1716, 1581, 1447, 1337, 1312, 1169, 1147, 1076, 754, 683, 625 cm-1. MS (EI): m/z = 167 (M-+SO2Ph-Ph)



【0033】
Compound 3e:エチル−3−(フルオロビス(フェニルスルホニル)メチル)ペンタノエート
White solid; 1H NMR (200 MHz, CDCl3): δ = 0.84 (t, J = 7.4 Hz, 3H), 1.22 (t, J = 7.0 Hz, 3H), 1.64-1.87 (m, 1H), 2.15-2.33 (m, 1H), 2.64 (dd, J = 4.0, 17.2 Hz, 1H), 2.89-3.02 (m, 1H), 3.39 (dd, J = 4.0 , 17.2Hz, 1H), 4.08 (dq, J = 2.4, 7.2 Hz, 2H), 7.50-7.58 (m, 4H), 7.65-7.74 (m, 2H), 7.87-7.94 (m,4H). 19F NMR (188 MHz, CDCl3): δ = 132.9 (s, 1F). IR (KBr): 2967, 2928, 1782, 1700, 1448, 1392, 1336, 1300, 1224, 1169, 1148, 756, 731, 688, 603, 580, 563, 534 cm-1. MS (EI): m/z = 167 (M+−SO2Ph−Ph−OEt)




モノフルオロメチル化体の一般的な製造法
:3−(3−(フルオロメチル)ブタノイル)オキサゾリジン−2−オン
フルオロビス(フェニルスルホニル)メチル化体3a(50mg, 0.106 mmol)をDMF 0.8 mlに溶かし,酢酸 0.3 ml,酢酸ナトリウム(403mg, 4.93 mmol)を加えた。さらに室温で撹拌しながら,マグネシウム(77.7mg, 3.19 mmol)を加えた。16時間後,水を加え,ジエチルエーテルで抽出した。抽出液を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液と飽和塩化ナトリウム水溶液で洗った。その後,硫酸マグネシウムで乾燥し,溶媒を留去した。残渣をカラムクロマトグラフィーにて精製し,生成物5a(無色液体)を得た。
【0034】


【0035】
Compound 5a: 3−(3−(フルオロメチル)ブタノイル)オキサゾリジン−2−オン
Colorless oil; 1H NMR (200 MHz, CDCl3): δ = 1.04 (d, J = 6.8 Hz, 3H), 2.38-2.57 (m, 1H), 2.85 (dd, J = 7.0, 17.0 Hz, 1H), 3.08 (dd, J = 6.8, 17.0 Hz, 1H), 4.02 (t, J= 8.2 Hz, 2H), 4.22 (dd, J = 2.8, 6.0 Hz, 1H), 4.41 (t, J = 8.2 Hz, 2H), 4.46 (dd, J = 2.8, 6.0 Hz, 1H) . 19F NMR (188 MHz, CDCl3): δ = -221.9 (dt, J = 19.4, 47.0 Hz, 1F). IR (NaCl): 2967, 2918, 1779, 1697, 1479, 1388, 1222, 1039, 760, 703 cm-1. MS (EI): m/z = 156 (M+−CH2F)



【0036】
Compound 5b: 3−(3−(フルオロメチル)ペンタノイル)オキサゾリジン−2−オン
Colorless oil; 1H NMR (200 MHz, CDCl3): δ = 0.96 (t, J= 7.4 Hz, 3H), 1.39-1.52 (m, 2H), 2.09-2.20 (m, 1H), 2.93 (dd, J = 5.8 Hz, 17.0 Hz, 1H), 3.06 (dd, J = 5.8 Hz, 17.0 Hz, 1H), 4.02 (t, J = 7.4 Hz, 2H), 4.31 (dd, J = 2.4, 5.2 Hz, 2H), 4.41 (t, J = 7.4 Hz, 2H), 4.55 (dd, J = 2.4, 5.2 Hz, 1H). 19F NMR (188 MHz, CDCl3): δ = -225.2 (dt, J = 24.1, 47.0 Hz, 1F). IR (NaCl): 2962, 2925, 1778, 1697, 1479, 1386, 1224, 1103, 1039, 968, 761, 704 cm-1. MS (EI): m/z = 170 (M+−CH2F)



【0037】
Compound 5c: 3−(3−(フルオロメチル)ヘキサノイル)オキサゾリジン−2−オン
Colorless oil; 1H NMR (200 MHz, CDCl3): δ = 0.92 (t, J = 7.2 Hz, 3H), 1.30-1.46 (m, 4H), 2.24-2.47 (m, 1H), 2.93 (dd, J = 7.6, 16.8 Hz, 1H), 3.07 (dd, J = 7.6 Hz, 16.8 Hz, 1H), 3.97(dd, J = , 2H), 4.02 (t, J = 7.8 Hz, 2H), 4.30 (dd, J= 0.6, 4.6 Hz, 1H), 4.41 (t, J = 7.8 Hz, 2H), 4.54 (dd, J = 0.6, 4.6 Hz, 1H). 19F NMR (188 MHz, CDCl3):δ= -224.5 (dt, J = 22.9, 47.0 Hz, 1F). IR (NaCl): 2960, 2928, 1779, 1697, 1480, 1391, 1225, 1102, 1040, 761, 705 cm-1. MS (EI): m/z = 184 (M+−CH2F)

ジアステレオ選択的共役付加反応の一般的な製造法
α,β−不飽和カルボニル化合物1a(19.7mg,0.1mmol),フルオロビス(フェニルスルホニル)メタン2(33.0mg,0.105mmol)をキシレン(0.2 mL)に溶かし,室温で,DBU (3.0 μL, 0.020 mmol)を加えた。18時間撹拌した後,減圧下,溶媒を留去した。残渣をカラムクロマトグラフィーにて精製し,生成物3a(無色結晶,30mg, 59%, 44% de)を得た。ジアステレオマー比は19F NMRから決定した。





【0038】
Compound 5f: (4S)−3−(4−フルオロ−3−メチル−4,4−ビス(フェニルスルホニル)ブタノイル−4−イソプロピルオキサゾキジン−2−オン
White solid; 1H NMR (200 MHz, CDCl3 ,diasteromer mixture):δ = 0.81-0.92 (m, 6H), 1.47 (t, J = 6.2 Hz, 3H), 2.15-2.42 (m, 1H), 3.18-3.82 (m, 3H), 4.13-4.48 (m, 3H), 7.52 (t, J = 7.4 Hz, 4H), 7.69 (t, J = 7.6 Hz, 2H), 7.84-7.96 (m, 4H); 19F NMR (188 MHz, CDCl3):δ = -132.9 (s,
1/3F), 133.2 (s, 2/3F).

エナンチオ選択的共役付加反応の一般的な製造法
フルオロビス(フェニルスルホニル)メタン2(47.0 mg,0.150 mmol),N−ベンジル キニジニウムクロリド(6.8 mg,0.015 mmol),炭酸カリウム(207.3mg, 1.50 mmol)をCH2Cl2 0.3mLに溶かし,―40℃で,クロトンアルデヒド(13.0 μL, 0.158 mmol)を加えた。2時間撹拌した後,飽和塩化アンモニウム水溶液を加え,ジエチルエーテルで抽出した。抽出液を飽和食塩水で洗い,硫酸ナトリウムで乾燥させた。減圧下で溶媒を留去した。これをMeOH (0.3 mL)に溶かし,水素化ホウ素ナトリウム(6.8 mg, 0.180 mmol)を撹拌しながら加えた。30分後,飽和塩化アンモニウム水溶液を加え,酢酸エチルで抽出した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し,溶媒を留去した。残渣をカラムクロマトグラフィーにて精製し,生成物4a’(無色結晶 18 mg, 30%, 22% ee)を得た。光学収率はHPLCにて決定し。



【0039】
3−(フルオロビス(フェニルスルホニル)メチル)ブタン−1−オール
1H NMR (CDCl3, 200MHz) δ 1.39 (d, J = 5.6 Hz, 3H), 1.60-2.03 (m, 2H), 2.40-2.66 (m, 1H), 2.72-2.98 (m, 1H), 3.58 (dt, J = 4.2 Hz, J = 10.2 Hz, 1H), 3.67 (m, 1H), 7.49 (t, J = 6.8 Hz, 4H), 7.66 (t, J = 6.2 Hz, 2H), 7.85 (t, J = 6.8 Hz, 4H); 19F NMR (CDCl3, 188 MHz) δ -131.8 (s, 1F);13C NMR (CDCl3, 50.3 MHz) δ 13.8 (d, J = 8.0 Hz), 33.2, 33.3, 34.6 (d, J = 16.8Hz), 60.0, 117.1 (d, J = 264.6 Hz), 128.5, 128.6, 130.6, 134.7, 135.3, 135.8; IR (KBr), 2960, 2928, 1779, 1697, 1480, 1391, 1225, 1102, 1040, 761, 705 cm-1; The ee of the product was determined by HPLC using an OD-H column (n-hexane/i-PrOH = 70:30, flow rate 0.5 mL/min, λ = 254 nm, τmaj = 18.5 min, τmin = 23.6 min); 22% ee.

【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明のβーフルオロメチルカルボニル誘導体の製造法は医農薬産業に利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶媒中,塩基触媒の存在下,一般式(1)
【化1】


(式中,Rは,水素,置換もしくは未置換のアルキル基,アルケニル基,アラルキル基,アルキニル基,アリール基,アルコキシ基またはアミノ基を示す。Rは,水素,置換もしくは未置換のアルキル基,アルケニル基,アラルキル基,アルキニル基またはアリール基を示す。)で表せる共役カルボニル化合物を一般式(2)
【化2】


(式中,R,Rはそれぞれ独立に,置換もしくは未置換のアルキル基,アルケニル基,アラルキル基,アルキニル基またはアリール基を示す。さらに,RおよびRが一体となって,環状構造の一部を形成してもよい。)で示されるフルオロビススルホニルメタン類との共役付加反応させることを特徴とする一般式(3)
【化3】


式中,R,R,R,Rは前記定義に同じ。)
で示される光学活性β―フルオロ(フェニルスルホニル)メチル付加体の製造法。
【請求項2】
溶媒中,光学活性な相間移動触媒存在下,前記一般式(1)で表せる共役カルボニル類と前記一般式(2)との不斉反応による前記一般式(3)で表せるβ―フルオロ(フェニルスルホニル)メチル付加体の製造法。
【請求項3】
前記一般式(4),(5)
【化4】


(式中,R,R,R,R,R,R10は,水素,置換もしくは未置換のアルキル基,アルケニル基,アラルキル基,アルキニル基またはアリール基を示す。)で表せる共役カルボニル化合物を前記一般式(2)で示されるフルオロビススルホニルメタン類との共役付加反応させることを特徴とする一般式(6)
【化5】


(式中,R,R,R,R,R,R,R,R10は前記定義に同じ。)で示される光学活性β―フルオロ(フェニルスルホニル)メチル付加体の製造法。
【請求項4】
前記一般式(3)で表せるβ―フルオロ(フェニルスルホニル)メタン付加体を溶媒中,還元剤として金属の存在下,脱スルホニル化させることを特徴とする一般式(8)
【化6】


(式中,R,Rは前記定義に同じ。)で示される光学活性βーフルオロメチルカルボニル誘導体の製造法。
【請求項5】
基質が前記一般式(6)または(7)で表せるβ―フルオロ(フェニルスルホニル)メチル付加体である一般式(9),(10)
【化7】


(式中,R,R,R,R,R,R10は前記定義に同じ。)で示される光学活性βーフルオロメチルカルボニル誘導体の請求項4の記載の製造法。
【請求項6】
前記塩基は,一般に市販されているアミン類もしくは無機塩一般式(11)から選ばれる少なくとも1種類の塩基であることを特徴とする請求項1,2,3いずれか1項に記載の製造法。アミンとしては,トリエチルアミン,ジイソプロピルエチルアミン,ジメチルアミノピリジン,キヌクリジン,DBU,DABCOなどを用いることができる。無機塩は一般式(11)
(X)nM (11)
(式中,Mは,希土類を含む遷移金属,リチウム,ナトリウム,マグネシウム,アルミニウムから選ばれた元素,nは,Mの原子価と同数の整数を表す。Xはアルコシド,フルオリド,カルボネートなどのマイナスイオンを表す。)
【請求項7】
前記記載の光学活性な相間移動触媒は,光学活性4級アンモニウム塩類から選ばれる少なくとも1種類の塩であることを特徴とする請求項2に記載の製造法。
光学活性な相間移動触媒としては,一般式(12),(13)
【化5】


(式中,Rは水素,置換もしくは未置換のアルキル基もしくはアルコキシ基を示す。もしくはOR10で表せるR10はアルキル基を示す。Rは,エチル基もしくはビニル基を示す。Rは,水素,アルキル基,アリール基またはアシル基を示す。Rは,水素,置換もしくは未置換のアルキル基またはトリフルオロメチル基を示す。mは0〜2の整数を表す。Xは,ハロゲン原子,IO,ClO,OTfまたはHSOを示す。)
【請求項8】
前記溶媒が,N,N−ジメチルホルムアミド,ジメチルスルホキシド,クロロホルム,ジクロロメタン,ジクロロエタン,トルエン,テトラヒドロフラン,ヘキサン,ベンゼンからなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1,2,3,4,5のいずれか1項に記載の製造法。
【請求項9】
前記金属は,希土類を含む遷移金属リチウム,ナトリウム,マグネシウム,アルミニウム,亜鉛,スズ,インジウム,サマリウムなどから選ばれる少なくとも1種類の元素であることを特徴とする請求項4,5いずれか1項に記載の製造法。

【公開番号】特開2008−222597(P2008−222597A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−60391(P2007−60391)
【出願日】平成19年3月9日(2007.3.9)
【出願人】(304021277)国立大学法人 名古屋工業大学 (784)
【Fターム(参考)】