説明

β模倣薬の製造方法

本発明は式(1)の模倣薬の製造方法に関する。


(式中nは1又は2を表し、R1が水素、ハロゲン、C1-4-アルキル又はO-C1-4-アルキルを表し、R2が水素、ハロゲン、C1-4-アルキル又はO-C1-4-アルキルを示し、及びR3が水素、C1-4-アルキル、OH、ハロゲン、O-C1-4-アルキル、O-C1-4-アルキレン-COOH又はO-C1-4-アルキレン-COO-C1-4-アルキルを表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は式1のβ模倣薬の調製方法に関する。
【化1】

1
(式中、
nは1又は2を表し、
R1は水素、ハロゲン、C1-4-アルキル又はO-C1-4-アルキルを表し、
R2は水素、ハロゲン、C1-4-アルキル又はO-C1-4-アルキルを表し、
R3は水素、C1-4-アルキル、OH、ハロゲン、O-C1-4-アルキル、O-C1-4-アルキレン-COOH、O-C1-4-アルキレン-COO-C1-4-アルキルを表す。)
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
β模倣薬(β-アドレナリン性物質)は、先行技術により知られている。この点で、例えば、広範な病気の治療のためのβ模倣薬を提案する、米国特許第4,460,581号の開示を参照することができる。
薬剤による疾病の治療のため、しばしば、より長く作用が継続する医薬品を調製することが望ましい。これにより、概して、薬剤投与を頻繁に繰り返す必要なく、治療的効果の達成に要する体内の有効成分の濃度を、より長い間維持することが確実となる。さらに、より長い時間間隔で有効成分を施すことは、患者の健康へ高く寄与する。日に一度の投与(単回投与)により治療上使用することができる医薬品組成物の調製が、特に望まれる。日に一度の薬剤の使用には、患者が、一日のうち決まった時間に規則正しく薬剤を服用することに、比較的早く慣れることができるという利点がある。
【発明の概要】
【0003】
従って、本発明の目的は、一方では慢性閉塞性肺疾患(COPD)又は喘息の処置において治療上の利益を提供し、また、より長い作用の継続時間が特徴であって、ゆえにより長い作用の継続時間を有する医薬品組成物の調製に使用できる、β模倣薬の調製方法を提供することである。本発明の特定の目的は、長時間の効果を利用した、日に一度の投与に向く、COPD又は喘息の治療用薬剤の調製に使用できるβ模倣薬を提供することである。これらの目的に加え、本発明のさらなる目的は、非常に効き目が強いだけでなく、β2-アドレナリン受容体に対する高い選択性によって同様に特徴づけられる、前記のβ模倣薬を提供することである。
(発明の詳細な説明)
本発明は式1の化合物の調製方法に関し、
【化2】

1
(式中、
nは1又は2を表し、
R1は水素、ハロゲン、C1-4-アルキル又はO-C1-4-アルキルを表し、
R2は水素、ハロゲン、C1-4-アルキル又はO-C1-4-アルキルを表し、
R3は水素、C1-4-アルキル、OH、ハロゲン、O-C1-4-アルキル、O-C1-4-アルキレン-COOH、O-C1-4-アルキレン-COO-C1-4-アルキルを表す。)
式中PGが保護基を表す式1aの化合物を、式1bの化合物と有機溶媒中で反応させ、
【化3】

1a
【化4】

1b
(式中、R1、R2、R3及びnは、上述の意味を持つ。)
式1cの化合物を形成し、
【化5】

1c
(式中、R1、R2、R3、n及びPGは上述の意味を持つ)
保護基PGを開裂させることにより式1の化合物を得ることによって特徴づけられる方法である。
【0004】
好ましくは、上述の方法は式1の化合物であって、
式中、nは1又は2を表し、
R1は水素、ハロゲン又はC1-4-アルキルを表し、
R2は水素、ハロゲン又はC1-4-アルキルを表し、
R3は水素、C1-4-アルキル、OH、ハロゲン、O-C1-4-アルキル、O-C1-4-アルキレン-COOH又はO-C1-4-アルキレン-COO-C1-4-アルキルを表す式1の化合物の調製に使用される。
好ましくは、上述の方法は式1の化合物であって、
式中、
nは1又は2を表し、
R1は水素、フッ素、塩素、メチル又はエチルを表し、
R2は水素、フッ素、塩素、メチル又はエチルを表し、
R3は水素、C1-4-アルキル、OH、フッ素、塩素、臭素、O-C1-4-アルキル、O-C1-4-アルキレン-COOH、O-C1-4-アルキレン-COO-C1-4-アルキルを表す式1の化合物の調製に使用される。
好ましくは、上述の方法は式1の化合物であって、の調製に使用され、
式中、
nは1又は2を表し、
R1は水素、メチル又はエチルを表し、
R2は水素、メチル又はエチルを表し、
R3は水素、メチル、エチル、OH、メトキシ、エトキシ、O-CH2-COOH、O-CH2-COO-メチル又はO-CH2-COO-エチルを表す式1の化合物の調製に使用される。
好ましくは、上述の方法は式1の化合物であって、
式中、
nは1又は2を表し、
R1は水素又はメチルを表し、
R2は水素又はメチルを表し、
R3は水素、メチル、OH、メトキシ、O-CH2-COOH又はO-CH2-COO-エチルを表す式1の化合物の調製に使用される。
【0005】
本発明の方法においては、式1aの化合物を、トルエン中で式1bの化合物と反応させる。式1bの化合物は塩基の形でよい。このため、対応する塩(例えば塩酸塩)を、有機溶媒、好ましくはトルエン中で過剰の強塩基(水酸化ナトリウム溶液、水酸化カリウム溶液等)で抽出する。
好ましくは、使用される化合物1aに基づき、化合物1bの少なくとも化学量論量を本発明に従って使用する。必要な場合、化合物1bはまた、使用される1a化合物に基づき、過剰量で、例えば3当量まで、好ましくは2.5当量まで、特に好ましくは約1〜2、任意に1〜1.5当量で使用してもよい。
反応は好ましくは高温で行いし、40℃を超える温度が好ましく、特に50℃を超える温度が好ましい。特に好ましくは、反応混合物を、使用する溶媒の沸点まで加熱する。
この温度で、反応をその後3〜9時間、好ましくは4〜7時間、好ましくは約6時間にわたって行う。
反応が完了した後、酢酸メチルを加え、得られた溶液を濾過する。濾液を50℃まで加熱し、好ましくは無機酸、特に好ましくは塩酸を用いて酸性化し、約10分間〜12時間、好ましくは20分間〜6時間、特に好ましくは30分間〜3時間経過後、生成物を濾別する。酸の添加中、例えば使用する酸の約5%の添加後、化合物1cの結晶を用いて接種を行ってもよい。
式1cの化合物からの保護基PGの開裂は、好ましくは好適な溶媒中での水素化により行う。好適な溶媒は有機溶媒、好ましくは有機、極性溶媒を含み、特に好ましい溶媒はテトラヒドロフラン、種々のC3-8エステル及びC1-8アルコールから選択される。本発明により、溶媒としてテトラヒドロフラン、エタノール及びメタノールの使用が好ましく、エタノール及びメタノールが特に重要である。
【0006】
本発明の方法における水素化には、水素の存在下での触媒の使用が好ましい。好ましい触媒は、好適な遷移金属触媒、好ましくは不均一系遷移金属触媒、最も好ましくはパラジウム含有触媒、特にパラジウム及び木炭の混合物である。
水素化は、好ましくは水素の超過の存在下で行う。本発明により、この水素の超過は、1バール〜10バール、好ましくは2〜7バール、特に好ましくは2.5〜4.5バールの水素圧で提供される。
好ましくは、水素化は60℃で行う。反応終了後、好ましくは濾過により触媒を除去する。
その後、溶液をイソプロピルアルコール(IPA)で希釈し、生成物を再結晶させる。好ましくは、溶液を部分的に留去させ、生成物を、溶液の冷却により晶出させる。
本発明の好ましい化合物において、式1aの化合物は式2aの化合物を反応させることにより調製する。
【化6】

2a
(式中、PGは請求項1に示された意味を持ち、R4はハロゲン、好ましくは臭素又は塩素を表す。)
本発明の方法において、好適な溶媒中で、式2aの化合物を(-)-DIP-塩化物(ジイソピノカンフェイルクロロボラン)と反応させる。好ましくは、有機溶媒が好適な溶媒と考えられる。好ましい溶媒はジエチルエーテル、t-ブチル-メチルエーテル、2-メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロフラン、トルエン及びジオキサンから選択される。本発明によると、溶媒としてt-ブチル-メチルエーテル、テトラヒドロフラン及びジオキサンを使用することが特に好ましく、中でもジオキサン及びテトラヒドロフランが特に重要である。
【0007】
(-)-DIP-塩化物は純粋な形又は溶液の形態で使用してもよく、好ましくは不活性の、有機溶媒中、特に好ましくは脂肪族溶媒、特にペンタン、ヘキサン、ヘプタン又はオクタン、特にヘプタンで使用できる。
(-)-DIP-塩化物を低温で反応媒体へ加える。温度は好ましくは0℃より低く、特に好ましくは-10℃より低く、とりわけ-20〜-40℃で添加する。
(-)-DIP-塩化物を、10分間〜6時間、好ましくは30分間〜4時間、特に好ましくは1〜3時間にわたって添加する。とりわけ、70〜110分間にわたって添加する。
好ましくは、使用する化合物2aに基づき、(-)-DIP-塩化物を少なくとも化学量論量使用する。必要な場合、使用する化合物2aに基づき、(-)-DIP-塩化物は、過剰量で、例えば3当量まで、好ましくは2.5当量まで、特に好ましくは約1.5〜2.5、特に約1.8当量で使用してもよい。
(-)-DIP-塩化物の添加後、反応混合物を10分間〜4時間、好ましくは30分間〜3時間、特に好ましくは40〜80分間にわたり攪拌し、特に添加の終了後、反応混合物をさらに50〜70分間攪拌する。この間、反応混合物を0℃より低い、特に好ましくは-10℃より低い、特に-20〜-40℃の温度へ調整する。
【0008】
次に、使用する(-)-DIP-塩化物の量に基づき、水に溶解した、水酸化ナトリウム(NaOH)を少なくとも化学量論量添加する。NaOHは任意に過剰量使用してもよく、使用するDIP-塩化物の量に基づき、過剰量、例えば3当量まで、好ましくは2.5当量まで、特に好ましくは約1.5〜2.5、特に約1.8当量で使用してもよい。NaOHの添加後、反応混合物中でpHが12〜14、特に好ましくは12.5〜13.5、特に12.7〜13.3と測定されることが好ましい。
望ましいpHが得られたら、反応混合物を10分間〜4時間、好ましくは30分間〜3時間、特に好ましくは40〜80分間にわたって攪拌し、とりわけ、反応混合物をさらに50〜70分間攪拌する。この間、反応混合物の温度を0〜40℃、特に好ましくは10〜30℃、特に15〜25℃へ調整する。次に、酸、好ましくは有機酸、特に好ましくは塩酸を用いて、反応混合物をpH7〜10、特に好ましくは8〜9、特に8.2〜8.8へ調整する。
【0009】
最後に、生成物を、有機溶媒(好ましくは酢酸エチル)を用いる抽出によって反応混合物から分離してもよく、及び他の有機溶媒(好ましくはメチル-t-ブチルエーテル)を用いる沈殿によって固体として得ることができる。沈殿前に、溶媒混合物を部分的に蒸留して除いてもよい。
本発明により、式2bの化合物を反応させることにより式1bの化合物を調製する方法が好ましい。
【化7】

2b
(式中、R1、R2、R3及びnは請求項1〜5に定義されたとおりであり、及び
R5はC1-6-アルキル、好ましくはMeを表す。)
本発明の方法において、式2bの化合物を好適な溶媒中で水酸化ナトリウムと反応させる。好適な溶媒としては、有機溶媒があげられ、特に好ましい溶媒はエタノール、2-エトキシエタノール、エチレングリコール、ブトキシエタノール、メトキシプロパノール、プロピレングリコール又はこれらの混合物から選択される。特に好ましくは、本発明により、2-エトキシエタノール又はエチレングリコール又はその混合物を溶媒として使用する。好ましくは、当該混合物は2-エトキシエタノール及びエチレングリコール(2:1)から成る。
【0010】
使用する化合物2bに基づき、好ましくは本発明により強塩基を少なくとも化学量論量使用する。強塩基は使用する化合物2bに基づき、過剰量、例えば8当量まで、好ましくは6当量まで、好ましくは約2〜6、特に好ましくは4.5〜5.5当量で、任意に使用してもよい。
反応は高温で、好ましくは100℃を超える温度で、特に好ましくは溶媒を2〜3時間にわたり還流させながら行うのが好ましい。
次に、抽出のため、反応混合物を溶媒及び水で希釈する。溶媒として、トルエン、キシレン、ヘプタン、メチルシクロヘキサン又はt-ブチル-メチルエーテル、好ましくはトルエン又はキシレンが特に重要である。水性相を除去し、さらなる精製工程において、有機相を水で抽出する。水は、一般的な添加剤を使用することにより、酸性、中性又はアルカリ性の状態にしてもよい。好ましくは、有機相を塩基性又は中性の水で抽出する。生成物を、少なくとも60℃にて、好ましくはおよそ80℃で、好適な量の塩酸を添加し、続いて共沸蒸留した後室温へ冷却することにより、有機相から塩酸塩として分離する。
【0011】
使用する用語及び定義
本発明の範囲内で、「有機溶媒」とは、物理的な方法により他の有機物質を溶解できる、有機の低分子物質を意味する。好適であるために、溶媒の必要条件は、溶解する物質又は溶解された物質いずれも、溶解工程中に化学的に変化するべきではなく、すなわち、溶液の成分は、蒸留、結晶化、昇華、蒸発又は吸着のような物理的分離方法により、もとの形で回収可能であるべきである。種々の理由により、純溶媒だけでなく、溶解特性を併せ持つ混合物をも使用できる。
例えば、
・アルコール、好ましくはメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、オクタノール、シクロヘキサノール、
・グリコール、好ましくはエチレングリコール、ジエチレングリコール、
・エーテル/グリコールエーテル、好ましくはジエチルエーテル、t-ブチル-メチルエーテル、ジブチルエーテル、アニソール、ジオキサン、テトラヒドロフラン、モノ-、ジ-、トリ-、ポリエチレングリコールエーテル、
・ケトン、好ましくはアセトン、ブタノン、シクロヘキサノン、
・エステル、好ましくは酢酸エステル、グリコールエステル、
・アミド及び他の窒素化合物、好ましくはジメチルホルムアミド、ピリジン、N-メチルピロリドン、アセトニトリル、
・硫黄化合物、好ましくは二硫化炭素、ジメチルスルホキシド、スルホラン、
・窒素化合物、好ましくはニトロベンゼン、
・ハロゲン化炭化水素、好ましくはジクロロメタン、クロロホルム、テトラクロロメタン、トリ及びテトラクロロエテン、1,2-ジクロロエタン、クロロフルオロカーボン、
・脂肪族又は脂環式炭化水素、好ましくはベンジン、石油エーテル、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、デカリン、テルペン-L、又は
・芳香族炭化水素、好ましくはベンゼン、トルエン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、
又はその対応する混合物があげられる。
【0012】
「C1-4-アルキル」という用語は(他の基の部分であるものを含む)、1〜4の炭素原子を有する分枝及び未分枝のアルキル基を意味する。例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、又はt-ブチルがあげられる。場合により、略号Me、Et、n-Pr、i-Pr、n-Bu、i-Bu、t-Bu等は、上述の基に同様に使用される。特に言及のない限り、プロピル及びブチルの定義は、当該基の可能な異性体をすべて含む。従って、例えば、プロピルはn-プロピル及びイソプロピルを含み、ブチルはイソブチル、sec-ブチル及びt-ブチル等を含む。
「C1-4-アルキレン」という用語は(他の基の部分であるものを含む)、1〜4の炭素原子を有する分枝及び未分枝のアルキレン基を意味する。例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、1-メチルエチレン、ブチレン、1-メチルプロピレン、1,1-ジメチルエチレン又は1,2-ジメチルエチレンがあげられる。特に言及のない限り、プロピレン及びブチレンの定義は、同じ炭素数の当該基の可能な異性体をすべて含む。従って、例えば、プロピルは同様に1-メチルエチレンを含み、ブチレンは1-メチルプロピレン、1,1-ジメチルエチレン、1,2-ジメチルエチレンを含む。
【0013】
「C1-8-アルコール」という用語は、1〜8の炭素原子及び1又は2のヒドロキシ基を有する分枝及び未分枝のアルコールを意味する。1〜4の炭素原子を有するアルコールが好ましい。例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、sec-ブタノール又はt-ブタノールがあられる。場合によっては、略号MeOH、EtOH、n-PrOH、i-PrOH、n-BuOH、i-BuOH、t-BuOH等は、上述の分子に任意に、同様に使用できる。特に言及のない限り、プロパノール、ブタノール、ペンタノール及びヘキサノールの定義は、当該基の可能な異性体をすべて含む。従って、例えば、プロパノールはn-プロパノール及びiso-プロパノールを含み、ブタノールはイソブタノール、sec-ブタノール及びt-ブタノール等を含む。
「C3-8-エステル」という用語は、合計3〜8の炭素原子を有する分枝及び未分枝のエステルを意味する。3〜6の炭素原子を有する酢酸のエステルが好ましい。例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸i-プロピル又は酢酸n-ブチルがあげられ、酢酸エチルが好ましい。
本発明の範囲内で、「ハロゲン」はフッ素、塩素、臭素又はヨウ素を表す。異なる言及のない限り、フッ素、塩素及び臭素が好ましいハロゲンとしてみなされる。
【0014】
本発明の目的に合った「保護基」は、多数の活性中心を含む分子の特定の官能基を、望ましい(保護されていない)部位においてのみ反応が起こるように、試薬による攻撃から一時的に保護できる有機基のための集合名である。保護基は選択的にゆるやかな条件下で導入すべきである。それらは保護の継続時間中、実行される全ての反応及び精製工程の条件下で安定していなければならない。ラセミ化及びエピマー化は抑えなければならない。保護基は、ゆるやかな条件下で、選択的に及び理想的に高い収率で、再び開裂可能であるべきである。好適な保護基の選択、反応条件(溶媒、温度、継続時間等)及び保護基を除く選択肢は当業界で公知である(例えばPhilip Kocienski、Protecting Groups、第3版、2004年、 THIEME、シュトゥットガルト、ISBN:3131370033)。好ましい保護基は置換されていてもよいベンジル、ジフェニルメチル、トリチル、トシル(tosyl)、メシル又はトリフレート(triflate)であり、置換されていてもよいベンジルが特に好ましい。
【発明を実施するための形態】
【0015】
実験セクション


(式中、Bnはベンジルを表し、及び
nは1又は2を表してもよく、
R1は水素、ハロゲン、C1-4-アルキル又はO-C1-4-アルキルを表してもよく、
R2は水素、ハロゲン、C1-4-アルキル又はO-C1-4-アルキルを表してもよく、
R3は水素、C1-4-アルキル、OH、ハロゲン、O-C1-4-アルキル、O-C1-4-アルキレン-COOH、O-C1-4-アルキレン-COO-C1-4-アルキルを表してもよい。)
【0016】
式1cの8-[(1R)-1-ヒドロキシ-2-[[2-アリール-1,1-ジメチル-エチル]-アミノ]エチル]-6-(フェニルメトキシ)-2H-1,4-ベンゾオキサジン-3(4H)-オン-塩酸塩:
アリール-1,1-ジメチル-エチルアミン塩酸塩1b 45molを水12Lに懸濁させ、トルエン60Lを加える。水酸化ナトリウム溶液(45%)4.3kgを攪拌しながら加え、相を分離する。8-(2R)-オキシラニル-6-(フェニルメトキシ)-2H-1,4-ベンゾオキサジン-3(4H)-オン 1a 12kgを有機溶液へ加え、還流温度まで加熱し(その間、トルエンおよそ24Lを同時に蒸留して除く)、この温度で6時間攪拌する。次に、混合物を55℃まで冷却し、酢酸メチル96Lを加え、この温度で塩酸(30%)3.8kg(39mol)を15分間以内に加える。塩酸約5%を添加した後、混合物に1cの結晶を接種する。得られた懸濁液を20℃まで冷却し、さらに2時間攪拌する。生成物を遠心分離し、酢酸メチル24Lで洗浄し、真空中で50℃にて乾燥させる。
収率(1c):80〜90%、HPLCによる鏡像体純度:95.0-99.5%
【0017】
式1の6-ヒドロキシ-8-[(1R)-1-ヒドロキシ-2-[[2-アリール-1,1-ジメチル-エチル]-アミノ]エチル]-2H-1,4-ベンゾオキサジン-3(4H)-オン-塩酸塩:
式1cの8-[(1R)-1-ヒドロキシ-2-[[2-(4-メトキシフェニル)-1,1-ジメチル-エチル]-アミノ]エチル]-6-(フェニルメトキシ)-2H-1,4-ベンゾオキサジン-3(4H)-オン-塩酸塩19.49molを水素化反応器に入れ、メタノール50Lで懸濁させる。木炭10%(水50%)に担持させたパラジウム125gをメタノール20Lで懸濁させ、水素化反応器へ入れる。混合物を、60℃の内部温度及び水素圧力3バールで水素の摂取が検知できなくなるまで水素化する(約1.5時間)。触媒を濾別し、メタノール20Lですすぐ。i-プロパノール165Lを計量して加え、混合物を50℃まで加熱し180Lを弱い真空下で蒸留して除く。結晶形成が起こらない場合、蒸留残液に接種する。次に、1時間以内に0℃まで冷却し、さらに0℃にて1時間攪拌し、吸引濾過及び冷たいi-プロパノール30Lで洗浄し、真空中で45℃にて乾燥させる。
生成物(およそ15.6mol)をメタノール26リットルへ溶解させる。得られた溶液を50℃まで加熱し、完全に濾過し、圧力濾過器をメタノール6.6リットルですすぐ。i-プロパノール53Lを計量して加え、混合物に接種し、およそ50Lを50℃にて弱い真空下で蒸留して除く。次に、1時間以内に、混合物を0℃まで冷却し、さらに0℃にて1時間攪拌し、吸引濾過及び冷たいi-プロパノール30Lで洗浄し、真空中で45℃にて乾燥させる。収率(1):65〜80%
【0018】
1-[2-ヒドロキシ-5-(フェニルメトキシ)-フェニル]-エタノン:
2-アセチル-ヒドロキノン6a 20 kg (131.4mol)を、メチルイソブチルケトン150Lへ溶解させ、炭酸カリウム19.98kg(144.6mol)を加えた。60℃にて、臭化ベンジル22.48kg(131.5mol)を加える。反応混合物を、60℃にて20時間攪拌する。反応混合物を25℃まで冷却し、固体を濾別する。濾液を、水酸化ナトリウム溶液(50%)0.96g(11.8mol)及び水60Lの溶液で25℃にて二度洗浄する。メチルイソブチルケトンを真空中で実質的に蒸留して除き、残留物をメタノール80Lへ60℃にて溶解させる。溶液を0℃まで冷却し、この温度で1時間攪拌し、結晶化を完了させる。
収率(5a):24.07kg(75.6%)、HPLCによる化学的純度:99.2%
【0019】
1-[2-ヒドロキシ-3-ニトロ-5-(フェニルメトキシ)-フェニル]-エタノン:
1-[2-ヒドロキシ-5-(フェニルメトキシ)-フェニル]-エタノン 5a 10.00kg(41.27mol)を酢酸50Lへ溶解させる。硝酸65%4.40kg(45.40mol)を、15〜20℃にてこの溶液へ計量して加える。供給容器を酢酸4Lですすぐ。反応混合物を、さらに1時間攪拌する。接種の後、水50Lを加える。得られた懸濁液を10℃にて1時間攪拌し、結晶化を完了させる。生成物を遠心分離し、50℃にて乾燥させる。
収率(4a):10.34kg(87.2%)、HPLCによる化学的純度:99.0%
【0020】
8-アセチル-6-(フェニルメトキシ)-2H-1,4-ベンゾオキサジン-3(4H)-オン:
1-[2-ヒドロキシ-3-ニトロ-5-(フェニルメトキシ)-フェニル]-エタノン 4a 15.00kg(52.22mol)、酸化白金(IV)0.165kg及び2-メチルテトラヒドロフラン45Lを、水素の摂取が検知できなくなるまで、水素圧3バール及び内部温度25℃にて水素化する。触媒を濾別し、2-メチルテトラヒドロフラン20Lで洗浄する。炭酸カリウム23.09kg(167.09mol)を別の反応器へ入れ、最初の反応器から得た反応混合物を加える。混合物を2-メチルテトラヒドロフラン22Lですすぐ。次に、30分間以内に、塩化クロロアセチル9.44kg(83.55mol)を懸濁液へ計量して加える。反応時間2.5時間後、65℃にて、水101Lを加える。水性相を55℃にて分離する。次に、2-メチルテトラヒドロフラン34Lを、真空中で有機相から蒸留して除く。還流温度まで加熱後、メチルシクロへキサン180Lを還流中30分間以内に計量して加える。得られた懸濁液を20℃まで冷却し、この温度でさらに1時間攪拌し、結晶化を完了させる。次に、沈殿物を遠心分離させ、メチルシクロヘキサン113Lで洗浄し、50℃にて乾燥させる。
収率(3a):12.70kg(81.8%)、HPLCによる化学的純度:98.4%
【0021】
8-(ブロモアセチル)-6-(フェニルメトキシ)-2H-1,4-ベンゾオキサジン-3(4H)-オン:
8-アセチル-6-(フェニルメトキシ)-2H-1,4-ベンゾオキサジン-3(4H)-オン 3a 12.00 kg (40.36 mol)を、1,4-ジオキサン108 Lへ溶解させる。次に、1,4-ジオキサン48L中、三臭化テトラブチルアンモニウム 24.33 kg (50.45 mol)の溶液及びメタノール12Lを懸濁液へ20℃にて計量して加える。反応器の中身を、20℃にて2時間攪拌する。次に、水72Lを15分間以内に20℃にて加える。3℃に冷却後、混合物を1時間攪拌し、遠心分離させ、1,4-ジオキサン9L及び水4.5Lの混合物で洗浄する。次に、得られた混合物を水60Lで洗浄し、真空中で50℃にて乾燥させる。
収率 (2a): 11.29 kg (74.4%)、HPLCによる化学的純度: 98.0%
【0022】
8-(2R)-オキシラニル-6-(フェニルメトキシ)-2H-1,4-ベンゾオキサジン-3(4H)-オン:
8-(ブロモアセチル)-6-(フェニルメトキシ)-2H-1,4-ベンゾオキサジン-3(4H)-オン 2a 20.00 kg (31.90 mol)をテトラヒドロフラン200Lへ溶解させ、-30℃まで冷却する。ヘプタン65%中の(-)-DIP-塩化物50.3 kg (70.18 mol)を1時間以内に計量して加える。反応混合物をさらに2時間攪拌し、0℃まで加熱する。この温度で、水40Lと混合した、水酸化ナトリウム溶液(50%)18.9kg(143.54mol)を計量して加える。次に、供給容器を水10Lですすぐ。添加終了時のpHは13〜13.5であるべきである。混合物を20℃まで加熱し、さらに1時間攪拌する。工業用グレードの塩酸(37%)7.8kg(80mol)及び水80Lの混合物を、pH8.5が得られるまで計量して加える。酢酸エチル100Lの添加後、混合物を45℃まで加熱する。相の分離後、溶媒(およそ280L)のいくらかを有機相から蒸留して除き、残留物にt-ブチル-メチルエーテル160Lを加え、0℃まで冷却し、さらに1時間攪拌する。生成物を単離し、t-ブチルメチルエーテルで洗浄し、真空中で50℃にて乾燥させる。収率(1a):13.96kg(87.0%)、HPLCによる鏡像体純度:98.3%
【0023】
式3bの化合物:
塩化メチルマグネシウム(THF中の溶液22%) 24.68 kg (72.6 mol) をトルエン35Lへ溶解させ、16℃まで冷却する。16〜22℃にて、式4bのアリールアセトン60.9mol及びトルエン10Lの溶液を計量して加え、混合物を22℃にて1時間攪拌する。反応溶液を水45L及び硫酸5.22kg(51.1mol)の混合物へ、2〜17℃の温度にて計量して加える。二相混合物を攪拌し、水性相を分離する。有機相を炭酸水素ナトリウム1.00kg(11.9mol)及び水11Lの溶液で洗浄する。溶媒を真空中で完全に蒸留して除く。残留物をn-ヘプタン65.5Lへ溶解させる。2℃まで冷却後、この温度で反応混合物を3時間攪拌する。次に、生成物を単離し、n-ヘプタン17.5Lで洗浄し、真空中で25℃にて乾燥させる。
収率(3b):75-80%、HPLCによる化学的純度:98.9〜99.9%
【0024】
式2bの化合物:
式3bの1-アリール-2-メチル-プロパン-2-オール 55.48 molをアセトニトリル6.83kg(166.44mol)及び酢酸13Lに入れ、40℃まで加熱する。硫酸5.66kg(55.48mol)を50〜55℃にて計量して加える。次に、混合物を50℃にて3時間攪拌する。二つ目の反応器中、水160L、t-ブチルメチルエーテル20L及びメチルシクロヘキサン21Lを10℃まで冷却する。最初の反応器の中身を二つ目の反応器へ移す。反応器の中身のpHを、アンモニア溶液(25%)約40リットルで9.5へ調整する。懸濁液を5℃まで冷却し、この温度で1時間攪拌する。生成物を遠心分離し、水30L及びt-ブチルメチルエーテル7.5L及びメチルシクロヘキサン7.5Lの混合物で洗浄する。湿った生成物をエタノール25L(96%)中で75℃まで加熱し、この温度で、水30Lを加える。溶液を85℃で15分間攪拌し、次に2℃まで冷却し、この温度で1時間攪拌する。生成物を単離し、水5L及びエタノール5L(96%)の混合物で洗浄し、乾燥させる。
収率(2b):65〜71%、HPLCによる化学的純度:98.6〜99.8%
【0025】
式1bの化合物:
式2bのN-[2-アリール-1,1-ジメチル-エチル]-アセトアミド136mol、NaOH (678 mol) 27.3 kg、エトキシエタノール30L及びエチレングリコール15Lの混合物を、3時間150℃まで加熱する。50〜80℃まで冷却後、混合物を水90L及びトルエン90Lで希釈する。相を分離し、有機相を水60Lでもう一度洗浄する。有機相に塩酸13.4kg(136mol)を加える。共沸混合物9.5Lを蒸留後、溶液に80℃以上で接種し、1時間にわたって室温に冷却する。生成物を遠心分離し、トルエン60リットルで洗浄し、真空中で50℃にて乾燥させる。
収率(1b):85〜95%、HPLCによる化学的純度:>99.5%
式3b、2b及び1bの化合物のための上述の合成において、基R1、R2及びR3は、例えば以下の意味を持ちうる。


従って、式1の以下の化合物のR体は、これまでに記載した調製方法と同様にして得ることができる。
・6-ヒドロキシ-8-{1-ヒドロキシ-2-[2-(4-メトキシ-フェニル)-1,1-ジメチル-エチルアミノ]-エチル}-4H-ベンゾ[1,4]オキサジン-3-オン;
・8-{2-[2-(2,4-ジフルオロ-フェニル)-1,1-ジメチル-エチルアミノ]-1-ヒドロキシ-エチル}-6-ヒドロキシ-4H-ベンゾ[1,4]オキサジン-3-オン;
・8-{2-[2-(3,5-ジフルオロ-フェニル)-1,1-ジメチル-エチルアミノ]-1-ヒドロキシ-エチル}-6-ヒドロキシ-4H-ベンゾ[1,4]オキサジン-3-オン;
・8-{2-[2-(4-エトキシ-フェニル)-1,1-ジメチル-エチルアミノ]-1-ヒドロキシ-エチル}-6-ヒドロキシ-4H-ベンゾ[1,4]オキサジン-3-オン;
・8-{2-[2-(4-フルオロ-フェニル)-1,1-ジメチル-エチルアミノ]-1-ヒドロキシ-エチル}-6-ヒドロキシ-4H-ベンゾ[1,4]オキサジン-3-オン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式1の化合物の調製方法であって、

1
(式中、
nは1又は2を表し、
R1は水素、ハロゲン、C1-4-アルキル又はO-C1-4-アルキルを表し、
R2は水素、ハロゲン、C1-4-アルキル又はO-C1-4-アルキルを表し、
R3は水素、C1-4-アルキル、OH、ハロゲン、O-C1-4-アルキル、O-C1-4-アルキレン-COOH、O-C1-4-アルキレン-COO-C1-4-アルキルを表す)
式中PGが保護基を表す式1aの化合物を、

1a
式1bの化合物と、トルエン中で、3〜9時間反応させ、

1b
(式中R1、R2、R3及びnが上述の意味を持つ。)
式1cの化合物を形成させ、

1c
(式中R1、R2、R3、n及びPGが上述の意味を持つ。)
保護基PGを開裂させることにより式1の化合物を得る方法。
【請求項2】
式中、
nが1又は2を表し、
R1が水素、ハロゲン、又はC1-4-アルキルを表し、
R2が水素、ハロゲン、又はC1-4-アルキルを表し、
R3が水素、C1-4-アルキル、OH、ハロゲン、O-C1-4-アルキル、O-C1-4-アルキレン-COOH又はO-C1-4-アルキレン-COO-C1-4-アルキルを表す、
請求項1記載の式1の化合物の調製方法。
【請求項3】
式中、
nが1又は2を表し、
R1が水素、フッ素、塩素、メチル又はエチルを表し、
R2が水素、フッ素、塩素、メチル又はエチルを表し、
R3が水素、C1-4-アルキル、OH、フッ素、塩素、臭素、O-C1-4-アルキル、O-C1-4-アルキレン-COOH、O-C1-4-アルキレン-COO-C1-4-アルキルを表す、
請求項1記載の式1の化合物の調製方法。
【請求項4】
式中、
nが1又は2を表し、
R1が水素、メチル又はエチルを表し、
R2が水素、メチル又はエチルを表し、
R3が水素、メチル、エチル、OH、メトキシ、エトキシ、O-CH2-COOH、O-CH2-COO-メチル又はO-CH2-COO-エチルを表す、
請求項1記載の式1の化合物の調製方法。
【請求項5】
式中、
nが1又は2を表し、
R1が水素又はメチルを表し、
R2が水素又はメチルを表し、
R3が水素、メチル、OH、メトキシ、O-CH2-COOH又はO-CH2-COO-エチルを表す、
請求項1記載の式1の化合物の調製方法。
【請求項6】
式1aの化合物を、式2aの化合物

2a
(式中、PGが請求項1に示された意味を持ち、R4がハロゲンを表す。)
を、ジイソピノカンフェニルクロロボラン/ヘプタン溶液の存在下で、反応させることにより調製する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
式1bの化合物を、式2bの化合物

2b
(式中、R1、R2、R3及びnが請求項1〜5に示された意味を持ち、R5がC1-6-アルキルを表す。)
を反応させ、HCl塩として分離することにより調製する請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
式1bの化合物の調製方法であって、

1b
(式中、R1、R2、R3及びnが、請求項1〜5に示された意味を持つ。)
式2bの化合物

2b
(式中、R1、R2、R3及びnが、請求項1〜5に示された意味を持ち、R5がMeを表す。)
を、水酸化ナトリウムと反応させ、HCl塩として分離することを特徴とする方法。

【公表番号】特表2010−516739(P2010−516739A)
【公表日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−546753(P2009−546753)
【出願日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際出願番号】PCT/EP2008/050800
【国際公開番号】WO2008/090193
【国際公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願人】(503385923)ベーリンガー インゲルハイム インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (976)
【Fターム(参考)】