説明

γ―アミノ酪酸を含有する食品およびその製造方法

【課題】きのこ本来の食感を損なわずにGABA含有量を大幅に高めたエノキタケやシイタケを含む食品素材あるいはこれらに由来するGABA高含有エキスを提供するとともに、これら食品素材を添加したGABA含有加工食品を提供する。
【解決手段】エノキタケあるいはシイタケを含むきのこを原料として用いる。原料を熱制御による前処理を施してから、具体的には−85℃以上の氷点下で凍結してから解凍し、添加物としてのグルタミン酸、グルタミン酸ナトリウム、あるいはこれらを含有する食品素材を水に分散混合し、低中温で0〜24時間保持してGABA含有量を高める。また、原料を70℃以下の温度域で乾燥してから、上記同様なGABA生成反応によりGABA含有量を高めることが可能である。以上の手段は、きのこ本来の食感を保持した素材の製造や、簡便な固液分離によるエキス素材の製造に適している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
γ−アミノ酪酸の含有量を高めた食品素材および食品に関する。詳しくはエノキタケあるいはシイタケを含む担子菌の子実体を凍結あるいは乾燥処理した後に水や添加物を混合し、一定条件下でその含有量を飛躍的に高めた食品素材を製造して利用する。また、さらに加工して食品に利用する。
【背景技術】
【0002】
γ−アミノ酪酸(以下、GABAと略す。)は、生体内でグルタミン酸の脱炭酸によって生成するアミノ酸の一種であり、生体内の脳や脊髄に存在する抑制系の神経伝達物質として中枢神経において重要な役割を果たしているほか、血圧上昇抑制作用や精神安定作用等の健康機能が知られている。
【0003】
人為的な処理を施すことにより、GABA含有量を高めた食品素材がいくつか見受けられる。GABAは、グルタミン酸脱炭酸酵素の働きによりグルタミン酸から変換生成する。実際には、この酵素活性の高い微生物や食品素材によりグルタミン酸およびグルタミン酸塩をGABAに変換させる方法が開発されている。
【0004】
食品中のGABA含量を高める方法としては、内在するグルタミン酸およびグルタミン酸脱炭酸酵素を用いる方法があり、コメ胚芽を嫌気処理してGABA含有量を高めた食品素材(特許文献1〜3)、茶葉を嫌気処理してGABA含量を高めたギャバロン茶(特許文献4)が知られており、最近ではエノキタケを嫌気処理してGABA含有量を高める方法が開発されている(特許文献5)。また、グルタミン酸を新たに加えて食品中のGABA含有量を高める方法として、カボチャを用いる方法(特許文献6)、トマトを用いる方法(特許文献7)、担子菌としてアガリクス(特許文献8)、シイタケ(特許文献8〜9)、エノキタケ(特許文献9)の子実体を用いる方法がある。培養法によるGABAの製造法としては、乳酸菌(特許文献10〜12)、麹菌(特許文献13)、および酵母(特許文献14)を用いたものがある。担子菌としては、アガリクスの菌糸体(特許文献15)を用いた方法がある。
【0005】
内在グルタミン酸を変換した場合の素材中のGABA含有量は、ギャバロン茶の場合約500mg
/100g、コメ胚芽の場合約400 mg/100g、エノキタケの場合約100mg以上/100gであった。添加したグルタミン酸を変換した場合のGABA含有量は、カボチャの場合約10g/100g、アガリクスの場合約3g/100g、エノキタケの場合約7g/100gである。また、培養法を利用した場合のGABA含有量は、乳酸菌では800mg/100ml培地、酵母では約1g/100g菌体、麹菌では約1g/100g菌体である。
【0006】
ギャバロン茶は飲用1杯に使用する茶葉の量が数g程度であり、発芽玄米を炊飯して食する場合含まれる胚芽量が少ないため、GABAを多量に摂取しにくい。カボチャは多量のGABAを生成するが、わたや種子を取り除いて粉砕物を得るまでの加工が困難である。エノキタケでは容易に粉砕物や摩砕物を得て著量のGABAを生成させることが可能であるが、粉砕や摩砕によりきのこ特有の食感が失われる。また、GABA生成後のペースト素材は吸水性が高いため、GABA含有エキス素材を得る際の固液分離が困難である。さらには、ペースト素材にろ過助剤を加えて固液分離が可能であるが、ろ過助剤が混合した残さは廃棄物となり食品に使えなくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第2590423号公報
【特許文献2】特許第2810993号公報
【特許文献3】特許第2813771号公報
【特許文献4】特許第3038373号公報
【特許文献5】特開2009−39082号公報
【特許文献6】特開2006−204128号公報
【特許文献7】特公平7−12296号公報
【特許文献8】特許4346266号公報
【特許文献9】特開2008−301798号公報
【特許文献10】特許第2704493号公報
【特許文献11】特許第3172150号公報
【特許文献12】特許第3426157号公報
【特許文献13】特開2004−147560号公報
【特許文献14】特許第2891296号公報
【特許文献15】特開2001−213773号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、きのこ本来の食感を損なわずにGABA含有量を大幅に高めたエノキタケやシイタケを含む食品素材あるいはこれらに由来するGABA高含有エキスを提供することである。また、これら食品素材を添加した加工食品を提供することが目的である。エノキタケやシイタケには、うま味成分であるグルタミン酸が豊富であると同時にGABAが含有されているものの、大量には存在していない。原料を粉砕したり摩砕したりせずに、GABA含有量を飛躍的に向上させることができれば、きのこ特有の食感を残したGABA含有素材を提供することが可能となる。また、固液分離が容易となり、GABA含有エキスの提供が可能となるとともに固形分は食物繊維に富んだ優良な食品素材として利用可能となる。さらにこれらの食品素材を活用した食品を提供することが可能となる。
【0009】
本発明は、原料を乾燥あるいは凍結処理することにより、原料の粉砕や摩砕処理を施さずにGABA含有量を大幅に高めることを可能とし、エノキタケあるいはシイタケを含む食品素材とこれらに由来するGABA含有食品を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明で使用するきのこは、エノキタケFlammulina velutipesあるいはシイタケLentinula edodesを含む。エノキタケあるいはシイタケの生鮮品である子実体を原料として用いる。
【0011】
エノキタケあるいはシイタケの子実体を−85℃以上の氷点下で凍結してから解凍し、添加物としてのグルタミン酸あるいはグルタミン酸ナトリウムを水に分散混合し、10〜40℃で0〜24時間保持してGABA含有量を高めることが可能になる。また、エノキタケあるいはシイタケの子実体を70℃以下の温度域で乾燥してから、添加物としてのグルタミン酸あるいはグルタミン酸塩を水に分散混合し、同様にGABA含有量を高めることが可能になる。以上の手段により、子実体の形態を保持した素材が得られること、固液分離によりエキス素材が得られることを見出し、本発明を完成した。
【発明の効果】
【0012】
本発明の方法によれば、きのこの食感を残しつつGABA含有量を大幅に高めることが可能である。特に他の栽培されているきのこと比較して、エノキタケやシイタケの低中温で関連酵素活性の高い生理特性を有効に活用することにより、低中温でGABA含有量を高め、効率的にGABA含有量を高めたきのこの食感を残した素材やエキス素材を得ることができる。既に明らかなように、簡便な方法でGABAの摂取量を多くすることができる。例えばエノキタケ生鮮品100gを原料とした場合GABA生成量は350mg以上であることから、血圧抑制作用を発現させるためにはGABA10mg以上、生鮮品3g程度の原料で十分となる。また、エノキタケやシイタケは、グルタミン酸を主とするアミノ酸が含まれるとともにグアニル酸を主とするヌクレオチドが加工により生成され、うま味強度の相乗作用が期待される呈味性に優れた素材である。使用原料であるエノキタケやシイタケは、国内でそれぞれ1位2位を占めるほど生産量が多く、周年栽培が行われているきのこであることから、安全安心かつ消費者になじみの深い食品である。本発明は、エノキタケやシイタケの高度利用を可能にすることにより食品の加工原料として付加価値を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】エノキタケ(純白系)を原料として凍結処理して解凍した後に、GABA生成静置反応を行ったときの各工程におけるGABAおよびグルタミン酸生成量を示すグラフである。
【図2】エノキタケ(純白系)を原料として凍結処理して解凍した後に、グルタミン酸を原料10g当り0〜400mg添加して、GABA生成静置反応を行ったときのGABAおよびグルタミン酸生成量を示すグラフである。
【図3】エノキタケ(純白系)を原料として凍結処理して解凍した後に、GABA生成静置反応を行ったときのGABA生成量の経時変化を示すグラフである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明に用いるエノキタケやシイタケは品種を限定しないが、収穫直後または冷蔵保存して7日以内のものを利用することが望ましい。GABA高含有素材を製造する際、生鮮品の凍結あるいは乾燥処理が必要である。乾燥処理は、凍結乾燥が好ましいが、40〜70℃の通風乾燥でも可能である。
【0015】
まずエノキタケの石突き部分を取り除き、小房に分ける。シイタケであれば柄部分を取り除いて傘部分のみ使用してもよい。これらの原料を氷点下で一定期間凍結させる。具体的には、−85℃以上とする。あるいは、これらの原料を通風あるいは凍結乾燥機により乾燥させる。通風乾燥であれば、70℃以下とする。このように処理した凍結物あるいは乾燥物に一定量のグルタミン酸あるいはグルタミン酸ナトリウムを添加し、適量例えば0.5〜10倍量の水を加えて混合し、10〜40℃で0〜24時間静置あるいは撹拌、振とうする。原料の粉砕や摩砕は不要である。グルタミン酸添加の場合pH調整は不要だが、グルタミン酸ナトリウム添加の場合には初発pHを6以下に調整する必要がある。この処理により、子実体に内在するグルタミン酸脱炭酸酵素を活性化させ、グルタミン酸をGABAに変換させることが可能になると同時に、プロテアーゼも作用し子実体に含まれるタンパク質が分解され、グルタミン酸が供給される。反応開始時に添加するグルタミン酸あるいはその塩により、さらに効率よくGABAに変換することができる。反応後、加熱してから冷却する。
【0016】
上記の処理により、原料であるエノキタケおよびシイタケ生鮮品100g(乾物約10g)からそれぞれ約350mg、200mg以上のGABAを生成させることができる。8時間程度でGABAは急増するが、反応時間を短くしたり長くしたりしてもよい。「ギャバロン茶」中のGABA含有量は乾物100g当り約500mg、「コメ胚芽」中のGABA含有量は乾物100g当り約400mgであるから、エノキタケを原料として「ギャバロン茶」の14倍以上、「コメ胚芽」の17倍以上のGABAを生成させることができる。
【0017】
処理後の材料は、きのこの食感を堪能できるGABA高含有な食品加工原料となる。また、固液分離後のGABA高含有エキスは、液体あるいは乾燥粉末化して食品加工原料となる。さらに固液分離後の残さも食物繊維に富んだ食品加工原料となる。
【実施例】
【0018】
本発明を実施例により詳しく説明する。これにより、本発明の範囲が限定されるものではない。
【0019】
実施例1 エノキタケ(純白系)を原料とし、石突きを除去した後に株をばらし、−20℃で凍結保存した後に解凍しGABA生成反応を行い、各工程のGABA生成量を分析した。すなわち、凍結処理した原料20gに対して200mgのグルタミン酸を添加し、10mlの水を加えてから20℃で24時間静置した。静置後フードミキサーにより摩砕し、この摩砕物の遠心分離により得られた上清を吸引ろ過した。得られたろ液を試料として、HPLC(島津製作所、Prominence)でアミノ酸分析を行いGABAを含むアミノ酸を定量した。試料はクエン酸ナトリウム緩衝液により適宜希釈を行い、アミノ酸分析用カラム(Shim−pack Amino−Na)を用いて成分分離し、OPAを反応試薬として、蛍光波長(Ex=350nm、Em=450nm)による測定を行った。結果を図1に示した。測定の結果著量のGABAが検出され、凍結処理を行うことによりGABAを生成させることができた。凍結処理をしてから24時間の静置反応後には乾燥原料100g当り9,126mgとなった。
【0020】
実施例2 エノキタケ(純白系)を原料とし、石突きを除去した後に株をばらし、4通りの方法で処理した。すなわち、凍結処理温度を−2℃、−20℃、−30℃、−85℃とした。各温度で凍結処理後に解凍し、原料20gに200mgのグルタミン酸を添加し、10mlの水を加えてから20℃で24時間静置した。静置後フードミキサーにより摩砕し、この摩砕物の遠心分離により得られた上清を吸引ろ過した。得られたろ液について、実施例1と同様にアミノ酸分析を行った。結果を表1に示した。凍結処理を行うことにより、設定した温度範囲ではGABAを生成させることができた。特に−30℃で凍結処理した場合に、原料100g当り473mgと他の条件に比べて50%以上高くなった。
【0021】
【表1】

【0022】
実施例3 純白系と茶系のエノキタケ2種類を原料とした。石突きを除去した後に株をばらし、2通りの方法で処理した後に反応を行う場合と反応を行わない場合(対照区)を比較した。すなわち、45℃で通風乾燥した場合(通風乾燥区)、凍結乾燥した場合(凍結乾燥区)である。原料2g(通風乾燥区、凍結乾燥区)に200mgのグルタミン酸を添加し、10mlの水を加えてから20℃で24時間静置した。静置後フードミキサーにより摩砕し、この摩砕物の遠心分離により得られた上清を吸引ろ過した。得られたろ液について、実施例1と同様にアミノ酸分析を行った。結果を表2に示した。乾燥処理を行うことによりGABAを生成させることができ、生成量は純白系では通風乾燥と凍結乾燥と同程度、茶系では凍結乾燥で多くなった。
【0023】
【表2】

【0024】
実施例4 エノキタケ(純白系)を原料とし、石突きを除去した後に株をばらし、−20℃で保存した。凍結処理後に解凍し、原料20gに200mgのグルタミン酸を添加してから所定量の水を加え20℃で24時間静置した。水の添加量を0ml、10ml、20ml、40mlと4条件設定した。静置後フードミキサーにより摩砕し、この摩砕物の遠心分離により得られた上清を吸引ろ過した。得られたろ液について、実施例1と同様にアミノ酸分析を行った。その結果、水添加量0〜20mlでGABA含量が原料100g当り938〜1,062mgで大きな違いはなかったが、水添加量40mlで原料100g当り747mgと他の条件に比べて若干低くなった。
【0025】
実施例5 エノキタケ(純白系)を原料とし、石突きを除去した後に株をばらし、−20℃で保存した。凍結処理後に解凍し、原料10gに所定量のグルタミン酸を添加してから10mlの水を加え20℃で24時間静置した。グルタミン酸添加量を0mg、100mg、200mg、400mgと4条件設定した。静置後フードミキサーにより摩砕し、この摩砕物の遠心分離により得られた上清を吸引ろ過した。得られたろ液について、実施例1と同様にアミノ酸分析を行った。結果を図2に示した。GABA生成量はグルタミン酸添加量に応じて高くなり、400mg添加した場合に高く、原料100g当り1,341mgであった。
【0026】
実施例6 エノキタケ(純白系)を原料とし、石突きを除去した後に株をばらし、−20℃で保存した。凍結処理後に解凍し、原料10gに100mgのグルタミン酸を添加してから10mlの水を加え所定の温度で6時間静置した。反応温度を10℃、20℃、30℃、40℃と4条件設定した。静置後フードミキサーにより摩砕し、この摩砕物の遠心分離により得られた上清を吸引ろ過した。得られたろ液について、実施例1と同様にアミノ酸分析を行った。結果を表3に示した。GABA生成量は30℃で高くなり、原料100g当りのGABA生成量は843mgであった。他の温度は、同程度であった。
【0027】
【表3】

【0028】
実施例7 エノキタケ(純白系)を原料とし、石突きを除去した後に株をばらし、−20℃で保存した。凍結処理後に解凍し、原料10gに乳酸水溶液により所定のpH5条件(pH4〜5)に調整した100mgグルタミン酸ナトリウム含有水溶液10mlを加え、20℃で6時間静置した。静置後フードミキサーにより摩砕し、この摩砕物の遠心分離により得られた上清を吸引ろ過した。得られたろ液について、実施例1と同様にアミノ酸分析を行った。その結果、GABA生成量はpHの影響を受け、pH4.2の場合には原料100g当り394mgであり、これはpH5.2の場合の約2倍であった。
【0029】
実施例8 エノキタケ(純白系)を原料とし、石突きを除去した後に株をばらし、−20℃で保存した。凍結処理後に解凍し、原料10gに200mgのグルタミン酸を添加し、10mlの水を加えてから20℃で0〜24時間静置した。静置後フードミキサーにより摩砕し、この摩砕物の遠心分離により得られた上清を吸引ろ過した。得られた各ろ液について、実施例1と同様にアミノ酸分析を行った。結果を図3に示した。静置反応開始2〜6時間で急激にGABA生成が進行し、24時間まで生成量が増加した。24時間後には、原料100g当りのGABA生成量は913mgであった。
【0030】
実施例9 エノキタケ(純白系)を原料とし、石突きを除去した後に株をばらし、−20℃で保存した。凍結処理後に解凍し、原料10gに乳酸水溶液によりpH4に調整した200mgグルタミン酸ナトリウム含有水溶液10mlを加え、20℃で0〜24時間静置した。静置後フードミキサーにより摩砕し、この摩砕物の遠心分離により得られた上清を吸引ろ過した。得られた各ろ液について、実施例1と同様にアミノ酸分析を行った。その結果、グルタミン酸添加の場合と同様に静置反応開始2〜6時間で急激にGABA生成が進行し、24時間まで生成量が増加した。24時間後には、原料100g当りのGABA生成量は850mgであった。
【0031】
実施例10 エノキタケ2種類(純白系、茶色系)およびシイタケを原料とした。エノキタケは、石突きを除去した後に株をばらし、−20℃で保存した。シイタケは石突きを含む柄部分を除去した後に、傘部分を−20℃で保存した。凍結処理後に解凍し、エノキタケの場合原料10gに100mgのグルタミン酸を添加してから10mlの水を加え20℃で6時間静置した。シイタケの場合Mサイズの原料当り1%量のグルタミン酸を添加して原料の半分量の水を加えてから20℃で6時間静置した。静置後フードミキサーにより摩砕し、この摩砕物の遠心分離により得られた上清を吸引ろ過した。得られた各ろ液について、実施例1と同様にアミノ酸分析を行った。その結果、純白系エノキタケのGABA生成量は原料100g当り473mg、茶色系エノキタケは355mg、シイタケは200mgであった。
【0032】
実施例11 2〜3等分に切って−20℃で凍結させたエノキタケ1,000gを解凍して、グルタミン酸ナトリウム10g含有水溶液(乳酸によりpH4程度調整)500mlを添加しよく混和した後に、10℃で20時間静置した。この後、90〜100℃で加熱し、冷却した。GABA含量を実施例1と同様に分析した。その結果、きのこ混合物100g当り535mgであった。
【0033】
実施例12 米3合にエノキタケやシイタケを含むGABA高含有きのこ水煮200g、みりん大さじ1、醤油大さじ1を加えて混ぜてから、水量を調整した。ニンジン他の材料を入れて、炊飯器で炊き込んだ。GABA含量を実施例1と同様に分析した。その結果、炊き込みごはん100g当り30mgであった。
【0034】
実施例13 2〜3等分に切って凍結させたエノキタケ200gを解凍して、グルタミン酸ナトリウム2g含有水溶液(乳酸によりpH4程度に調整)100mlを添加しよく混和した後に、10℃で20時間静置した。また乾燥したエノキタケあるいはスライスした乾燥シイタケ20gにグルタミン酸ナトリウム2g含有水溶液(乳酸によりpH4程度に調整)100mlを添加しよく混和した後に、10℃で20時間静置した。それぞれの反応物を鍋に入れ加熱した。しばらくしてから酒大さじ2、醤油大さじ2、みりん大さじ1を入れてさらに加熱した。焦げないように混ぜながら水分がなくなるまで混ぜた。GABA含量を実施例1と同様に分析した。その結果、凍結エノキタケを用いた場合100g当り258mg、乾燥エノキタケの場合420mg、乾燥シイタケの場合220mgであった。
【0035】
実施例14 2〜3等分に切って凍結させたエノキタケ1,000gを解凍して、グルタミン酸10g含有水溶液あるいはグルタミン酸ナトリウム12.8g含有水溶液(乳酸によりpH4程度に調整)500mlを添加しよく混和した後に、10℃で20時間静置した。この後、90〜100℃で加熱し、室温まで放冷した。固液分離のため5Aろ紙によりろ過を行った結果、容易にエキスを回収することができた。GABA含量を実施例1と同様に分析した。その結果、グルタミン酸水溶液由来のエキス100ml当り512mg、グルタミン酸ナトリウム水溶液由来のエキス100ml当り485mgであった。
【0036】
実施例15 GABA高含有エキスを濃縮し、業務用調味液(還元水飴、醤油、砂糖、醸造調
味料他)と合せて調味液を作製した。ボイルした刻みコンブ60kgへ作製した調味液を加え、100℃で30分以上炊いてから冷却した。GABA含量を実施例1と同様に分析した。その結果、コンブ佃煮100g当り100mgを超えた。
【0037】
他にもある食品素材の用途例を示す。GABA含有量を高めたきのこ混合物は、シチューやカレーへの添加が可能である。また、ハンバーグやパスタ等にかけるソース類、各種スープ、各種惣菜へ添加できる。GABA高含有エキスは、液体タイプや粉末タイプの製造が可能であり、スープ、ソース、ジャム、調味料、ふりかけに活用できる。また、各種惣菜へ添加できる。
【符号の説明】
【0038】
図1および2 □Glu グルタミン酸生成量
図1および2 ■GABA GABA生成量
図3 ●GABA生成量


【特許請求の範囲】
【請求項1】
エノキタケあるいはシイタケを含む担子菌の子実体に対して、熱制御による前処理を施してからグルタミン酸やその塩類を含む添加物と併せて水に分散混合し、γ−アミノ酪酸含有量を高めた食品を得る製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法によって得られる、γ−アミノ酪酸含有量を高めた食品。
【請求項3】
請求項1の具体的前処理としてエノキタケあるいはシイタケを含む担子菌の子実体を−85℃以上の氷点下で凍結してから解凍し、γ−アミノ酪酸含有量を高めた食品を得る製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法によって得られる、γ−アミノ酪酸含有量を高めた食品。
【請求項5】
請求項1の具体的前処理としてエノキタケあるいはシイタケを含む担子菌の子実体を70℃以下の温度域で通風乾燥あるいは凍結乾燥してから、γ−アミノ酪酸含有量を高めた食品を得る製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法によって得られる、γ−アミノ酪酸含有量を高めた食品。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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