説明

δ−イミノマロン酸誘導体の製造方法、及びそのための触媒

【課題】
本発明は、アルキリデンマロン酸エステルのマイケル反応による、β−位、γ−位に置換基が、δ−位には官能基を有するジカルボン酸誘導体をエナンチオ選択的に製造する新規な方法、及びそのための触媒を提供する。
【解決手段】
本発明は、エンカルバメートとアルキリデンマロン酸エステルとをキラルな銅錯体触媒の存在下に反応させてエナンチオ選択的に対応するδ−イミノマロン酸エステル類を製造する方法、及びこのための触媒に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンカルバメートとアルキリデンマロン酸エステルとを銅触媒の存在下に反応させてδ−イミノマロン酸エステル類を製造する方法、及びそのための触媒等に関する。より詳細には、本発明は、エナンチオ選択的なエンカルバメートのアルキリデンマロン酸エステルへの不斉求核付加反応方法によるδ−イミノマロン酸エステル類を製造する方法に関し、さらに詳しくはキラル銅触媒を用いたエンカルバメートの不斉求核付加反応による光学活性カルボン酸誘導体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
求核置換反応や求核付加反応は、新たな炭素−炭素結合を生成する反応として、また、炭素−炭素結合の生成と同時にβ位に官能基を導入することができることから、各種の有機化合物の製造方法に応用されてきている重要な反応である。例えば、強塩基の存在下でのマロン酸エステルを、カルボニル基に対する求核剤として使用するマロン酸合成法は、カルボン酸誘導体を製造する方法として著名な反応である。また、近年では、より選択的な求核反応を行うための各種の求核試薬が検討されて来ている。特に立体選択的な観点から、新たな求核試薬の開発が求められてきている。
本発明者らは、エンカルバメートがエナンチオ選択的な不斉反応において、アルデヒドやケトンに対する効率的な求核剤となることを報告してきた(非特許文献1〜3参照)。しかし、エンカルバメートが他の反応における求核剤となるかどうかということについては、さらに研究が必要であるとされている。
【0003】
α,β−不飽和カルボニル化合物などの分極した二重結合に、カルボアニオンのような強い求核剤を反応させて、付加生成物を製造する方法はマイケル反応として知られている。この方法は強い求核剤を必要としているが、δ位に官能基を有するカルボニル化合物又はカルボン酸を製造ための方法として重要とされている。とりわけ、α,β−不飽和カルボニル化合物として、アルキリデンマロネートとのマイケル反応の付加体は、δ−位に官能基を有するジカルボン酸誘導体である。γ−位の置換基はカルボニル基、アミノ基、水酸基などに、ジカルボン酸部位は脱炭酸により容易にモノカルボン酸に変換可能である。そこで、この反応が高収率、高立体選択的に進行すれば、複雑な構造を持つ化合物の有用な合成法になりうるばかりでなく、多様性のある化合物群の合成法としても重要なものになり、この反応に適した求核剤の開発が望まれていた。特に、不斉マイケル付加反応に適した選択性のよい求核剤やそのための触媒の開発が望まれていた。
【0004】
アルキリデンマロネートに対する求核剤として、ルイス酸触媒の存在下におけるケイ素エノラートが報告されている(非特許文献4参照)。また、アリキリデンマロネートを、フリーデル・クラフツ反応における親電子試薬として用いる例も報告されている(非特許文献5参照)。
【0005】
【非特許文献1】Matsubara, R.; Nakamura, Y.; Kobayashi, S. Angew. Chem. Int. Ed., 43, 1679~1681(2004).
【非特許文献2】Matsubara, R.; Nakamura, Y.; Kobayashi, S. Angew. Chem., Int. Ed., 43, 3258~3260(2004).
【非特許文献3】R. Matsubara, P. Vital, Y. Nakamura, H. Kiyohara, S. Kobayashi, Tetrahedron, 60, 9769~9784 (2004).
【非特許文献4】Evans, D. A.; Rovis, T.; Kozlowski, M. C.; Doaney, C. W.; Tedrow, J. S. J. Am. Chem. Soc. 122, 9134(2000).
【非特許文献5】Zhou, J.; Tang, Y. Chem. Commun. 2004, 432.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、アルキリデンマロン酸エステルのマイケル反応による、β−位、γ−位に置換基が、δ−位には官能基を有するジカルボン酸誘導体を製造する新規な方法、及びそのための触媒を提供する。より詳細には、本発明は、アルキリデンマロン酸エステルのマイケル反応による、β−位、γ−位に置換基が、δ−位には官能基を有するジカルボン酸誘導体をエナンチオ選択的に製造する新規な方法、及びそのための触媒を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、エンカルバメートがエナンチオ選択的な不斉反応において、アルデヒドやケトンに対する効率的な求核剤となることを報告してきた(非特許文献1〜3参照)。しかし、これはカルボニル基やイミノ基のような強く分極した官能基に対する求核剤であり、マイケル反応のような分極の弱い炭素−炭素二重結合に対する求核性は十分ではないと考えられていた。しかし、意外なことにエンカルバメートを用いた、アルキリデンマロン酸エステルのマイケル反応が、銅触媒の存在下に十分進行することを見出した。とりわけ、キラルジアミンをリガンドとする銅錯体を触媒とした場合には、エチリデンマロン酸エステルとの反応は、高収率かつ高いエナンチオ選択性を持って反応が進行することを見出した。
【0008】
即ち、本発明は、エンカルバメートとアルキリデンマロン酸エステルとを銅触媒の存在下に反応させてδ−イミノマロン酸エステル類を製造する方法、より詳細には、エンカルバメートとアルキリデンマロン酸エステルとをキラルな銅錯体触媒の存在下に反応させてエナンチオ選択的に対応するδ−イミノマロン酸エステル類を製造する方法に関する。
また、本発明は、エンカルバメートとアルキリデンマロン酸エステルとを反応させてδ−イミノマロン酸エステル類を製造するための銅錯体からなる触媒、より詳細には、エンカルバメートとアルキリデンマロン酸エステルとを反応させてエナンチオ選択的にδ−イミノマロン酸エステル類を製造するためのキラルな銅錯体からなる触媒に関する。
さらに、本発明は、エンカルバメート、好ましくは一般式(1)で表されるエンカルバメートの銅触媒の存在下における、アルキリデンマロン酸エステルに対する求核試薬としての使用(use)に関する。
【0009】
本発明の方法に使用されるエンカルバメートとしては、エナミン(エン−アミン)の窒素原子がカルバメート(−N−CO−O−)化されているものである。本発明の好ましいエンカルバメートの例としては、次の一般式(1)
【0010】
【化1】

【0011】
(式中、Rは、置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基を示し、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、又は置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基を示し、波線は二重結合に対する位置異性体又はそれらの混合物であることを示す。)
で表される化合物が挙げられるが、これに限定されるものではない。
本発明のエンカルバメートは、二重結合に対する位置異性体が存在する。例えば、前記一般式(1)において、アミノ基に対する基Rが、トランス(E)となっているものと、シス(Z)になっているものが存在するが(Rが水素原子以外の場合)、本発明においては、トランス(E)体であっても、シス(Z)体であっても、またこれらの混合物であってもよいが、エナンチオ選択的な反応としたい場合にはトランス(E)体又はシス(Z)体のいずれか一方であることが好ましい。
また、本発明の方法におけるアルキリデンマロン酸エステルとしては、マロン酸エステルのメチレン部分に炭素−炭素二重結合(アルキリデン基)が導入されている化合物である。本発明の好ましいアルキリデンマロン酸エステルの例としては、次の一般式(2)
【0012】
【化2】

【0013】
(式中、Rは、水素原子、又は置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基を示し、Rは、それぞれ独立して、置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基を示し、波線は二重結合に対する位置異性体又はそれらの混合物であることを示す。)
で表される化合物があげられるが、これに限定されるものではない。
本発明のアルキリデンマロン酸エステルは、アルキリデンの部分の二重結合に対する位置異性体が存在する(ふたつのR基が相違している場合)。例えば、前記一般式(2)において、片方のCOOR基に対する基Rが、トランス(E)となっているものと、シス(Z)になっているものが存在するが(Rが水素原子以外の場合)、本発明においては、トランス(E)体であっても、シス(Z)体であっても、またこれらの混合物であってもよいが、エナンチオ選択的な反応としたい場合にはトランス(E)体又はシス(Z)体のいずれか一方であることが好ましい。
これらの一般式(1)及び(2)を用いて、本発明の方法を化学反応式で示せば、次のとおりとなる。
【0014】
【化3】

【0015】
(式中のR、R、R、R、及びRは、前記と同じものを示し、波線はこれらの立体配置がR若しくはSのいずれか、又はこれらの混合物であることを示す。)
この方法により製造される次の一般式(3)
【0016】
【化4】

【0017】
(式中、Rは、置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基を示し、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、又は置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基を示し、Rは、水素原子、又は置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基を示し、Rは、それぞれ独立して、置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基を示し、波線はこれらの立体配置がR若しくはSのいずれか、又はこれらの混合物であることを示す。)
で表される化合物は、δ位にイミノ基を有し、かつβ位に置換基R、及びγ位に置換基Rを有し、合成化学上極めて有用な中間体となる。例えば、本発明の方法で製造されたδ−イミノマロン酸エステル類を、加水分解及び脱炭酸することにより、対応するδ−カルボニルカルボン酸を製造することができる。この方法で製造されるδ−カルボニルカルボン酸の例としては、次の一般式(4)
【0018】
【化5】

【0019】
(式中、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、又は置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基を示し、Rは、水素原子、又は置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基を示し、波線はこれらの立体配置がR若しくはSのいずれか、又はこれらの混合物であることを示す。)
で表される化合物が挙げられる。
さらに、前記したδ−カルボニルカルボン酸を、さらに水素還元することにより、対応するδ−ヒドロキシカルボン酸を製造することができる。また、δ−ヒドロキシカルボン酸誘導体を製造する場合には、水素還元を先にするなど、加水分解、脱炭酸、水素還元を任意の順序で行うこともできるが、加水分解を先行させる方法が好ましい。この方法で製造されるδ−ヒドロキシカルボン酸の例としては、次の一般式(5)
【0020】
【化6】

【0021】
(式中、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、又は置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基を示し、Rは、水素原子、又は置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基を示し、波線はこれらの立体配置がR若しくはSのいずれか、又はこれらの混合物であることを示す。)
で表される化合物が挙げられる。
また、本発明の方法により製造されたδ−イミノマロン酸エステル類を、水素還元及び脱炭酸することにより、対応するδ−アミノカルボン酸を製造することができる。この方法で製造されるδ−アミノカルボン酸の例としては、次の一般式(6)
【0022】
【化7】

【0023】
(式中、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、又は置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基を示し、Rは、水素原子、又は置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基を示し、波線はこれらの立体配置がR若しくはSのいずれか、又はこれらの混合物であることを示す。)
で表される化合物が挙げられる。
【0024】
本発明の一般式(1)〜(6)における、炭素数1〜20の置換基を有していてもよい炭化水素基としては、炭素数1〜20の炭化水素基、及び炭素数1〜20の置換炭化水素基が挙げられる。
炭素数1〜20の炭化水素基としては、炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜15、より好ましくは炭素数1〜10の炭化水素基、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルカジエニル基、アリール基、アラルキル基等が挙げられるが、好ましくは孤立二重結合を有していないアルキル基、アリール基、アラルキル基が挙げられる。
【0025】
アルキル基としては、直鎖状でも、分岐状でも或いは環状でもよい、例えば炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜15、より好ましくは炭素数1〜10のアルキル基が挙げられ、その具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、1−メチルエチル基、n−ブチル基、1−メチルプロピル基、2−メチルプロピル基、1,1−ジメチルエチル基、n−ペンチル基、1−メチルブチル基、1,1−ジメチルプロピル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、2,2−ジメチルプロピル基、n−ヘキシル基、1−メチルペンチル基、1−エチルブチル基、1,1−ジメチルブチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基、1−エチル−2−メチルプロピル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ラウリル基、ステアリル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
アルケニル基としては、直鎖状でも分岐状でも或いは環状でもよい、例えば炭素数2〜20、好ましくは炭素数2〜15、より好ましくは炭素数2〜10、更に好ましくは炭素数2〜6のアルケニル基が挙げられ、その具体例としては、例えば、エテニル基、プロペニル基、1−ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基等が挙げられる。
【0026】
アルキニル基としては、直鎖状でも分岐状でもよい、例えば炭素数2〜20、好ましくは炭素数2〜15、より好ましくは炭素数2〜10、更に好ましくは炭素数2〜6のアルキニル基が挙げられ、その具体例としては、例えば、エチニル基、1−プロピニル基、2−プロピニル基、1−ブチニル基、3−ブチニル基、ペンチニル基、ヘキシニル基等が挙げられる。
【0027】
アリール基としては、例えば炭素数6〜20、好ましくは炭素数6〜15の5〜7員、好ましくは6員の単環式、多環式、又は縮合環式の炭素環式のアリール基が挙げられ、その具体例としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、ビフェニル基等が挙げられる。
アラルキル基としては、前記アルキル基の少なくとも1個の水素原子が前記アリール基で置換された、例えば炭素数7〜20、好ましくは炭素数7〜15のアラルキル基が挙げられ、その具体例としては、例えば、ベンジル基、2−フェニルエチル基、1−フェニルプロピル基、3−ナフチルプロピル基等が挙げられる。
【0028】
置換炭化水素基(置換基を有する炭化水素基)としては、上記炭化水素基の少なくとも1個の水素原子が置換基で置換された炭化水素基が挙げられ、例えば、置換アルキル基、置換アルケニル基、置換アルキニル基、置換アルカジエニル基、置換アリール基、置換アラルキル基等が挙げられる。
置換基としては、置換基を有していてもよい炭化水素基、ハロゲン原子、ハロゲン化炭化水素基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいアリールオキシ基、置換基を有していてもよいアラルキルオキシ基、置換アミノ基、ニトロ基、シアノ基等が挙げられる。
【0029】
置換基としての置換基を有していてもよい炭化水素基は、上記置換基を有していてもよい炭化水素基における炭化水素基と同じである。
置換基としてのハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
置換基としてのハロゲン化炭化水素基は、上記炭化水素基の少なくとも1個の水素原子が上記ハロゲン原子により置換された炭化水素基が挙げられる。ハロゲン化炭化水素基の好ましい例としては、例えば、ハロゲン化アルキル基等が挙げられる。ハロゲン化アルキル基としては、例えば、クロロアルキル基、フルオロアルキル基などの炭素数1〜10のハロゲン化アルキル基が好ましいものとして挙げられ、その具体例としては、例えば、クロロメチル基、ブロモメチル基、2−クロロエチル基、3−ブロモプロピル基、フルオロメチル基、フルオロエチル基、フルオロプロピル基、フルオロブチル基、フルオロペンチル基、フルオロヘキシル基、フルオロヘプチル基、フルオロオクチル基、フルオロノニル基、フルオロデシル基、ジフルオロメチル基、ジフルオロエチル基、フルオロシクロヘキシル基、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、ペンタフルオロエチル基、3,3,4,4,4−ペンタフルオロブチル基、ペルフルオロ−n−プロピル基、ペルフルオロイソプロピル基、ペルフルオロ−n−ブチル基、ペルフルオロイソブチル基、ペルフルオロ−tert−ブチル基、ペルフルオロ−sec−ブチル基、ペルフルオロペンチル基、ペルフルオロイソペンチル基、ペルフルオロ−tert−ペンチル基、ペルフルオロ−n−ヘキシル基、ペルフルオロイソヘキシル基、ペルフルオロヘプチル基、ペルフルオロオクチル基、ペルフルオロノニル基、ペルフルオロデシル基、2−ペルフルオロオクチルエチル基、ペルフルオロシクロプロピル基、ペルフルオロシクロペンチル基、ペルフルオロシクロヘキシル基等が挙げられる。
【0030】
置換基としての置換基を有していてもよいアルコキシ基は、アルコキシ基及び置換アルコキシ基が挙げられる。アルコキシ基としては、直鎖状でも分岐状でも或いは環状でもよい、例えば炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10のアルコキシ基が挙げられ、その具体例としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、1−メチルエトキシ基、n−ブトキシ基、1−メチルプロポキシ基、2−メチルプロポキシ基、1,1−ジメチルエトキシ基、n−ペンチルオキシ基、2−メチルブトキシ基、3−メチルブトキシ基、2,2−ジメチルプロポキシ基、n−ヘキシルオキシ基、2−メチルペンチルオキシ基、3−メチルペンチルオキシ基、4−メチルペンチルオキシ基、5−メチルペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等が挙げられる。
置換アルコキシ基(置換基を有するアルコキシ基)としては、前記アルコキシ基の少なくとも1個の水素原子が上記置換基で置換されたアルコキシ基が挙げられる。
置換基としての置換基を有していてもよいアリールオキシ基は、アリールオキシ基及び置換アリールオキシ基が挙げられる。アリールオキシ基としては、例えば炭素数6〜20、好ましくは炭素数6〜15、炭素数6〜10のアリールオキシ基が挙げられ、その具体例としては、例えば、フェノキシ基、ナフチルオキシ基、アントリルオキシ基等が挙げられる。
置換アリールオキシ基(置換基を有するアリールオキシ基)としては、前記アリールオキシ基の少なくとも1個の水素原子が上記置換基で置換されたアリールオキシ基が挙げられる。
【0031】
置換基としての置換基を有していてもよいアラルキルオキシ基は、アラルキルオキシ基及び置換アラルキルオキシ基が挙げられる。アラルキルオキシ基としては、例えば炭素数7〜20、好ましくは炭素数6〜15、炭素数6〜10のアラルキルオキシ基が挙げられ、その具体例としては、例えば、ベンジルオキシ基、2−フェニルエトキシ基、1−フェニルプロポキシ基、2−フェニルプロポキシ基、3−フェニルプロポキシ基、1−フェニルブトキシ基、2−フェニルブトキシ基、3−フェニルブトキシ基、4−フェニルブトキシ基、1−フェニルペンチルオキシ基、2−フェニルペンチルオキシ基、3−フェニルペンチルオキシ基、4−フェニルペンチルオキシ基、5−フェニルペンチルオキシ基、1−フェニルヘキシルオキシ基、2−フェニルヘキシルオキシ基、3−フェニルヘキシルオキシ基、4−フェニルヘキシルオキシ基、5−フェニルヘキシルオキシ基、6−フェニルヘキシルオキシ基等が挙げられる。
置換アラルキルオキシ基(置換基を有するアラルキルオキシ基)としては、前記アラルキルオキシ基の少なくとも1個の水素原子が上記置換基で置換されたアラルキルオキシ基が挙げられる。
【0032】
置換基としての置換アミノ基としては、アミノ基の1個又は2個の水素原子がアミノ保護基等の置換基で置換された鎖状又は環状のアミノ基が挙げられる。置換アミノ基の置換基としてのアミノ保護基は、通常、アミノ保護基として用いられているものであれば何れも使用可能であり、例えば「PROTECTIVE GROUPS IN ORGANIC SYNTHESIS THIRD EDITION(JOHN WILEY & SONS、INC.(1999)」にアミノ保護基として記載されているもの等が挙げられる。アミノ保護基の具体例としては、例えば、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基、置換スルホニル基等が挙げられる。
上記アミノ保護基におけるアルキル基、アリール基及びアラルキル基は上記炭化水素基のところで説明した各基と同じである。
アシル基としては、直鎖状でも分岐状でも或いは環状でもよい、例えば、脂肪族カルボン酸、芳香族カルボン酸等のカルボン酸由来の炭素数1〜20のアシル基が挙げられ、具体例としては、例えば、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、ピバロイル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、ラウロイル基、ステアロイル基、ベンゾイル基等が挙げられる。
【0033】
本発明における「置換基を有していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基」としては、置換基を有していてもよい炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜15、より好ましくは炭素数1〜10の炭化水素基;ハロゲン原子;1又は2以上のハロゲン原子で置換された炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜15、より好ましくは炭素数1〜10の炭化水素基(ハロゲン化炭化水素基);置換基を有していてもよい炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜15、より好ましくは炭素数1〜10のアルコキシ基;置換基を有していてもよい炭素数6〜20、好ましくは炭素数6〜15のアリールオキシ基;置換基を有していてもよい炭素数7〜20、好ましくは炭素数7〜15のアラルキルオキシ基;炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜15、より好ましくは炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜20、好ましくは炭素数6〜15のアリール基、炭素数7〜20、好ましくは炭素数7〜15のアラルキル基、脂肪族カルボン酸、芳香族カルボン酸等のカルボン酸由来の炭素数1〜20のアシル基、炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜10のアルコキシカルボニル基、炭素数7〜20、好ましくは炭素数7〜15のアリールオキシカルボニル基、炭素数8〜20、好ましくは炭素数8〜15のアラルキルオキシカルボニル基、及び炭素鎖中に酸素原子、窒素原子、カルボニル基を有していてもよい炭素数2〜10のアルキレン基からなる群から選ばれた1種又は2種の置換基で置換された置換アミノ基;ニトロ基;並びにシアノ基からなる群から選ばれた1種又は2種以上の置換基で置換されていてもよい炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜15、より好ましくは炭素数1〜10の炭化水素基であるということができる。
【0034】
本発明の一般式(1)、一般式(3)、及び一般式(4)〜(6)で表される化合物における基Rの好ましい例としては、前記した置換基を有してもよい炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜15、より好ましくは炭素数1〜10のアルキル基;前記した置換基を有してもよい炭素数6〜20、好ましくは炭素数6〜15のアリール基;又は、前記した置換基を有してもよい炭素数7〜20、好ましくは炭素数7〜15のアラルキル基が挙げられるが、より好ましくは前記した置換基を有してもよい炭素数7〜20、好ましくは炭素数7〜15のアラルキル基が挙げられる。
本発明の一般式(1)、一般式(3)、及び一般式(4)〜(6)で表される化合物における基R及び基Rの好ましい例としては、それぞれ独立して、水素原子、前記した置換基を有してもよい炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜15、より好ましくは炭素数1〜10のアルキル基;前記した置換基を有してもよい炭素数6〜20、好ましくは炭素数6〜15のアリール基;又は、前記した置換基を有してもよい炭素数7〜20、好ましくは炭素数7〜15のアラルキル基が挙げられるが、より好ましくは水素原子、前記した置換基を有してもよい炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜15、より好ましくは炭素数1〜10のアルキル基;又は前記した置換基を有してもよい炭素数6〜20、好ましくは炭素数6〜15のアリール基が挙げられる。
【0035】
本発明の一般式(2)、一般式(3)、及び一般式(4)〜(6)で表される化合物における基Rの好ましい例としては、水素原子;前記した置換基を有してもよい炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜15、より好ましくは炭素数1〜10のアルキル基;前記した置換基を有してもよい炭素数6〜20、好ましくは炭素数6〜15のアリール基;又は、前記した置換基を有してもよい炭素数7〜20、好ましくは炭素数7〜15のアラルキル基が挙げられるが、より好ましくは前記した置換基を有してもよい炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜15、より好ましくは炭素数1〜10のアルキル基;又は前記した置換基を有してもよい炭素数6〜20、好ましくは炭素数6〜15のアリール基が挙げられる。
本発明の一般式(2)、一般式(3)、及び一般式(4)〜(6)で表される化合物における基Rの好ましい例としては、それぞれ独立して、前記した置換基を有してもよい炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜15、より好ましくは炭素数1〜10のアルキル基;前記した置換基を有してもよい炭素数6〜20、好ましくは炭素数6〜15のアリール基;又は、前記した置換基を有してもよい炭素数7〜20、好ましくは炭素数7〜15のアラルキル基が挙げられるが、より好ましくは水素原子、前記した置換基を有してもよい炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜15、より好ましくは炭素数1〜10のアルキル基;又は前記した置換基を有してもよい炭素数6〜20、好ましくは炭素数6〜15のアリール基が挙げられる。
【0036】
本発明の銅触媒としては、1価または2価の銅の化合物、好ましくは2価の銅化合物が挙げられる。銅化合物としては、銅の塩、錯塩、有機金属化合物等の各種のものから選択することができる。なかでも、有機酸または無機酸の塩、又はこの塩との錯体や有機複合体が好適なものとして挙げられる。銅塩としては、強酸との塩、例えば、(パー)フルオロアルキルスルホン酸や過塩素酸、硫酸等の塩、それらの錯体や有機複合体が好ましいものとして例示される。好ましい銅化合物としては、例えば、Cu(OTf)、Cu(SbF、CuClO・4CHCN等が挙げられる(式中、Tfはトリフルオロメタンスルホネートを示す。)。
本発明の銅触媒は、前記した銅化合物を単独で使用するのではなく、ジアミンのような銅原子のリガンドとなり得る化合物と共に使用するか、このようなリガンドを有する銅錯体として使用のが好ましい。さらに、本発明の方法において、エナンチオ選択的な方法とするためには、キラルなジアミンをリガンドとして使用することがより好ましい。
ジアミンとしては、配位可能な孤立電子対を有する窒素原子を2個有するものが挙げられ、好ましい例としては、エチレンジアミン誘導体が挙げられる。キラルなジアミンの好ましい例としては、エチレンジアミン誘導体におけるエチレン基の2個の炭素原子がキラリティーを有するジアミンが挙げられる。
好ましいキラルなジアミンの例としては、次の3a〜3gに示されるジアミンが挙げられる。
【0037】
【化8】

【0038】
この中で3bとして示されるN,N’−ビス(β−ナフチルメチル)−1,2−ジフェニルエチレンジアミンのキラルなものが好ましい。
本発明における銅触媒の好ましい例としては、Cu(OTf)(式中、Tfはトリフルオロメタンスルホネートを示す。)、Cu(SbF、CuClO・4CHCN等の銅塩と前記した3a〜3gに示されるキラルなジアミンをリガンドとする銅錯体が挙げられる。
【0039】
本発明の方法は、例えば、一般式(1)で表されるエンカルバメートと一般式(2)で表されるアルキリデンマロン酸エステルを溶媒中で混合し、これに前記した銅触媒を添加して行うなわれる。銅触媒として銅錯体を使用する場合には、予め銅錯体を調製して使用してもよいが、反応系中に銅化合物とリガンドを添加してその場で調製してもよい。
溶媒としては、この反応に不活性なものであれば各種の有機溶媒を使用することができる。好ましい溶媒の例としては、ジクロルメタン(DCM)などのハロゲン化アルキル、ベンゼン、トルエンなどの芳香族炭化水素系溶媒、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルエーテル(DME)、ジグライムなどのエーテル系溶媒などが挙げられる。
銅触媒の使用量は、触媒量でよく、通常は一般式(2)で表されるアルキリデンマロン酸エステル1モルに対して、0.001〜0.5モル、好ましくは0.01〜0.3モル、0.01〜0.1モル程度が使用される。また、一般式(1)で表されるエンカルバメートの使用量としては、一般式(2)で表されるアルキリデンマロン酸エステル1モルに対して、等量とすればよいが、通常は0.8〜1.5モル、0.9〜1.2モルの範囲で使用される。
本発明の方法はアルゴンガス、ヘリウムガスなどの不活性ガス雰囲気下で行うのが好ましい。
【0040】
本発明の方法は、常圧又は加圧で行うことができるが、通常は常圧で行うのが好ましい。反応温度は室温以下が好ましく、例えば、−50度〜室温の範囲で設定できる。
反応混合物中から、目的物を単離精製する方法としては、特に制限はなく、通常の抽出操作、分液操作、結晶化方法、蒸留法、クロマトグラフィーなどの単離精製手段により単離精製することができる。
また、本発明の方法により得られたδ−イミノマロン酸エステル誘導体は、通常の合成化学における加水分解反応、還元反応、脱炭酸反応の反応条件により処理することができる。
【発明の効果】
【0041】
本発明は、医薬品や農薬などの有機化合物の製造中間体として有用なδ−イミノマロン酸エステル誘導体を、一段階で効率的に、かつ高収率で、そして高選択性で製造する新規な方法、及びそのための触媒を提供するものである。また、本発明の方法で製造されるδ−イミノマロン酸エステル誘導体は、反応性に富むイミノ基を有しているので、加水分解、還元などの合成化学で常用されている処理手段を適用するのに極めて優れた中間体を提供するものである。例えば、マロン酸エステル部分は加水分解後の脱炭酸によりモノカルボン酸に、δ位のN−アシルイミン部位はカルボニル基、アミノ基、水酸基などに変換が容易に可能である。
さらに、本発明は、当該δ−イミノマロン酸エステル誘導体を、エナンチオ選択的の製造することができるので、各種の光学活性体を製造する際の極めて重要な中間体の製造方法を提供するものである。そして、本発明の方法におけるエナンチオ選択的な不斉反応で直接的にコントロールできる立体配置は、一般式(1)におけるRが結合しているβ位の炭素であるが、Rが結合している炭素の立体も化合物2のシス−トランスで高立体選択的にコントロールすることができる。
このように、本発明は、医薬品、農薬、香料等の原料または合成中間体として有用な多置換カルボン酸誘導体の高立体選択的な触媒的不斉合成を可能にするだけでなく、さらに、生成物は多様性に富むため、コンビナトリアルケミストリーを指向した化合物群の合成法としても有用である。
【0042】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
以下に記載する実施例で使用したエンカルバメートは、スエンら文献(Suen, Y. H.; Horeau, A.; Kagan, H. B. Bull. Soc. Chim. Fr. 1965, 5, 1454.)に記載の方法に準じて製造した。また、キラルなジアミンリガンドは小林らの文献(S. Kobayashi, R. Matsubara, Y. Nakamura, H. Kitagawa, M. Sugiura, J. Am. Chem. Soc., 125, 2507~2515 (2003).)に記載の方法に準じて製造した。その他の化合物は市販品を必要に応じて精製して使用した。
【実施例1】
【0043】
2−(フェノキシカルボニル)−3−メチル−5−イミノ−5−フェニルペンタン酸フェニルエステル、及び2−(フェノキシカルボニル)−3−メチル−5−オキソ−5−フェニルペンタン酸フェニルエステルの製造
この方法における反応式を次に示す。
【0044】
【化9】

【0045】
(式中、Bzlはベンジル基を示す。)
(1)キラルジアミン銅錯体の製造
アルゴン雰囲気下、Cu(OTf) (0.02mmol)とリガンドA(0.022mmol)とを塩化メチレン(2ml)中、室温で12時間攪拌して、目的の銅錯体を製造した。
(2)キラルジアミン銅錯体を触媒として用いたマイケル反応
アルゴン雰囲気下、−78℃でキラルジアミン銅錯体(0.04mmol)の塩化メチレン溶液(0.5ml)にエチリデンマロン酸ジフェニル(0.11mmol)と前記反応式で示されるエンカルバメート(0.10mmol)の塩化メチレン(1ml)溶液を滴下し、6時間攪拌した。飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、塩化メチレンで3回抽出し、有機相を無水硫酸ナトリウム上で乾燥した。乾燥剤を濾別後、減圧濃縮して目的のイミン体を得た。
(3)イミン体の加水分解
得られたイミン体を(2 ml)に溶解し、臭化水素酸(0.2 ml)を加えた。室温で1.5分間攪拌した後、上記と同様の操作を行い、得られた粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィーにて生成し白色固体を得た(収率98%、76%ee)。なお、生成物のケトンはキラルカラムを用いたHPLCにより光学純度を決定した。
H−NMR(CDCl, 400MHz) ;δ
0.90(d, 3H, J=6.9Hz, 3-Me), 2.65-2.90(m, 2H, 3-H and 4-H),
3.04-3.10(m, 1H, 4-H), 3.63-3.65(m, 1H, 2-H), 6.77-7.20(m, 13H, Ph-H), 7.56-7.60(m, 2H, Ph-H).
HPLC: ダイセルキラルセルAD
ヘキサン/イソプロピルアルコール=19/1
リテンションタイム 44分(minor), 47分(major).
【実施例2】
【0046】
銅触媒におけるリガンドとして、次に示すリガンドA又はB
【0047】
【化10】

【0048】
を用いて、次の表1に示す反応条件により、表1に記載の置換基を有するアルキリデンマロン酸メチルエステルを原料として使用して、実施例1に記載の方法に準じてイミノ体及びケト体を製造した。
この反応式を次ぎに示す。
【0049】
【化11】

【0050】
(式中、Cbzはベンジルオキシカルボニル基を示す。以下同じ。)
【表1】

【実施例3】
【0051】
銅触媒におけるリガンドとして、次に示すリガンドD〜G
【0052】
【化12】

【0053】
を用いて、次の表2に示す反応条件により、表2に記載の置換基を有するアルキリデンマロン酸メチルエステルを原料として使用して、実施例1に記載の方法に準じてイミノ体及びケト体を製造した。
この反応式を次ぎに示す。
【0054】
【化13】

【0055】
【表2】

【実施例4】
【0056】
銅触媒におけるリガンドとして、次に示すリガンドA又はB
【0057】
【化14】

【0058】
を用いて、次の表3に示す反応条件により、表3に記載の置換基を有するアルキリデンマロン酸メチルエステルを原料として使用して、実施例1に記載の方法に準じてイミノ体及びケト体を製造した。
この反応式を次ぎに示す。
【0059】
【化15】

【0060】
【表3】

【実施例5】
【0061】
次の表4に示す反応条件により、表4に記載の各種の溶媒を使用して、実施例1に記載の方法に準じてイミノ体及びケト体を製造した。
この反応式を次ぎに示す。
【0062】
【化16】

【0063】
【表4】

【0064】
表中のDCMはジクロロメタン、tolueneはトルエン、DMEはジメチルエーテル、THFはテトラヒドロフランをそれぞれ示す。
【実施例6】
【0065】
次の表5に示す反応条件により、表5に記載の置換基(R’)を有するアルキリデンマロン酸の各種のエステル(R)を原料として使用して、実施例1に記載の方法に準じてイミノ体及びケト体を製造した。
この反応式を次ぎに示す。
【0066】
【化17】

【0067】
【表5】

【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、医薬品や農薬などの有機化合物の製造中間体として産業上有用なδ−イミノマロン酸エステル誘導体を、一段階で効率的に、高収率で、高選択性で、しかもエナンチオ選択的に製造する方法及びそのための触媒を提供するものであり、産業上極めて有用なものである。したがって、本発明は産業上の利用性を有している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンカルバメートとアルキリデンマロン酸エステルとを銅触媒の存在下に反応させてδ−イミノマロン酸エステル類を製造する方法。
【請求項2】
銅触媒が、キラルなリガンドを有するキラルな銅触媒である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
キラルな銅触媒が、キラルジアミン銅錯体である請求項2に記載の方法。
【請求項4】
キラルなリガンドが次式
【化1】

で表されるジアミンである請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
δ−イミノマロン酸エステル類の製造方法が、エナンチオ選択的な方法である請求項2〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
エンカルバメートが、次の一般式(1)
【化2】

(式中、Rは、置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基を示し、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、又は置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基を示し、波線は二重結合に対する位置異性体又はそれらの混合物であることを示す。)
で表される化合物である請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
アルキリデンマロン酸エステルが、次の一般式(2)
【化3】

(式中、Rは、水素原子、又は置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基を示し、Rは、それぞれ独立して、置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基を示し、波線は二重結合に対する位置異性体又はそれらの混合物であることを示す。)
で表される化合物である請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
δ−イミノマロン酸エステル類が、次の一般式(3)
【化4】

(式中、Rは、置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基を示し、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、又は置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基を示し、Rは、水素原子、又は置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基を示し、Rは、それぞれ独立して、置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基を示し、波線はこれらの立体配置がR若しくはSのいずれか、又はこれらの混合物であることを示す。)
で表される化合物である請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の方法により製造されたδ−イミノマロン酸エステル類を、加水分解及び脱炭酸して、対応するδ−カルボニルカルボン酸を製造する方法。
【請求項10】
δ−カルボニルカルボン酸が、次の一般式(4)
【化5】

(式中、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、又は置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基を示し、Rは、水素原子、又は置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基を示し、波線はこれらの立体配置がR若しくはSのいずれか、又はこれらの混合物であることを示す。)
で表される化合物である請求項9に記載の方法。
【請求項11】
請求項9又は10に記載の方法により製造されたδ−カルボニルカルボン酸を、水素還元して、対応するδ−ヒドロキシカルボン酸を製造する方法。
【請求項12】
δ−ヒドロキシカルボン酸が、次の一般式(5)
【化6】

(式中、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、又は置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基を示し、Rは、水素原子、又は置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基を示し、波線はこれらの立体配置がR若しくはSのいずれか、又はこれらの混合物であることを示す。)
で表される化合物である請求項11に記載の方法。
【請求項13】
請求項1〜8のいずれかに記載の方法により製造されたδ−イミノマロン酸エステル類を、水素還元及び脱炭酸して、対応するδ−アミノカルボン酸を製造する方法。
【請求項14】
δ−アミノカルボン酸が、次の一般式(6)
【化7】

(式中、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、又は置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基を示し、Rは、水素原子、又は置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基を示し、波線はこれらの立体配置がR若しくはSのいずれか、又はこれらの混合物であることを示す。)
で表される化合物である請求項13に記載の方法。



【公開番号】特開2006−206550(P2006−206550A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−24534(P2005−24534)
【出願日】平成17年1月31日(2005.1.31)
【出願人】(503360115)独立行政法人科学技術振興機構 (1,734)
【Fターム(参考)】