説明

π共役系を拡張したチアゾール誘導体

【課題】有機ELの発光層材料などとして有用なπ共役系有機化合物を提供すること。
【解決手段】下記式(I)で表されるチアゾール誘導体(式(I)中、nは2〜4の整数を示す。R11は、同一又は異なって、水素原子、低級アルキル基又は低級アルコキシカルボニル基を示す。Ar11は、同一又は異なって、水素原子、又は電子求引性を示す芳香族基を示す。但し、少なくとも1つのAr11は電子求引性を示す芳香族基である。Ar12は、チアゾール骨格と直接結合した芳香環を有する電子供与性基を示す。)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL等に有用なチアゾール誘導体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
π共役系の有機材料は、「軽薄短小」の導電体(半導体)又はEL素子などの材料として注目が集まっている。そのようなπ共役系有機材料として、本発明者は以前からチアゾール誘導体に着目し、研究を重ねてきた。
【0003】
本発明者らは非特許文献1において、チアゾール環の2位に電子供与性基(ドナー)を有し、チアゾール環の5位に電子求引性基(アクセプター)を有する下記式のドナー・アクセプター型チアゾール誘導体が、強い蛍光発光性や安定した液晶性を示すことを報告している。
【0004】
【化1】


【非特許文献1】Shikuma, J.; Mori, A.; Masui, K.; Matsuura, R.; Sekiguchi, A.; Ikegami, H.; Kawamoto, M.; Ikeda, T. Chem. Asian J., 2007, 2, 301.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が達成しようとする目的は、有機ELの発光層材料などとして有用なπ共役系有機化合物(特にπ共役系が拡張したチアゾール誘導体)を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成した本発明のチアゾール誘導体は、下記式(I)で表されるものである。
【0007】
【化2】

【0008】
式(I)中、nは2〜4の整数を示す。
11は、同一又は異なって、水素原子、低級アルキル基又は低級アルコキシカルボニル基を示す。
Ar11は、同一又は異なって、水素原子、又は電子求引性を示す芳香族基を示す。但し、少なくとも1つのAr11は電子求引性を示す芳香族基である。
Ar12は、チアゾール骨格と直接結合した芳香環を有する電子供与性基を示す。
【0009】
以下では、式(I)で表されるチアゾール誘導体を、チアゾール誘導体(I)又は化合物(I)と略称することがある。また他の化学式で表されるチアゾール誘導体及び化合物も同様に略称することがある。
【0010】
チアゾール誘導体(I)の中で、下記式(II)で表されるチアゾール誘導体が好ましい。
【0011】
【化3】

【0012】
式(II)中、R21は低級アルキル基又は低級アルカノイル基を示す。
22〜R25は、同一又は異なって、水素原子又は低級アルキル基を示す。
26及びR27は、同一又は異なって、水素原子、低級アルキル基又は低級アルコキシカルボニル基を示す。
Ar21及びAr22は、同一又は異なって、水素原子、又は電子求引性を示す芳香族基を示す。但しAr21及びAr22の少なくとも1つは電子求引性を示す芳香族基である。
【0013】
またチアゾール誘導体(I)の中で、下記式(III)で表されるチアゾール誘導体が好ましい。
【0014】
【化4】

【0015】
式(III)中、R31及びR32は、同一又は異なって、水素原子、低級アルキル基又はアシル基を示す。
33及びR34は、同一又は異なって、水素原子、低級アルキル基又は低級アルコキシカルボニル基を示す。
Ar31及びAr32は、同一又は異なって、水素原子、又は電子求引性を示す芳香族基を示す。但しAr31及びAr32の少なくとも1つは電子求引性を示す芳香族基である。
【0016】
またチアゾール誘導体(I)の中で、下記式(IV)で表されるチアゾール誘導体が好ましい。
【0017】
【化5】

【0018】
式(IV)中、R401〜R412は、同一又は異なって、水素原子又は低級アルキル基を示す。
413〜R415は、同一又は異なって、水素原子、低級アルキル基又は低級アルコキシカルボニル基を示す。
Ar41〜Ar43は、同一又は異なって、水素原子、又は電子求引性を示す芳香族基を示す。但しAr41〜Ar43の少なくとも1つは電子求引性を示す芳香族基である。
【発明の効果】
【0019】
本発明のチアゾール誘導体は、チアゾール骨格が電子供与性基Ar12(ドナー)及び電子求引性基Ar11(アクセプター)を有するドナー・アクセプター型の構造を有し、強い蛍光発光性を示すことができる。また本発明のチアゾール誘導体は、非特許文献1に示すチアゾール誘導体に比べてπ共役系がさらに拡張されており、さらに良好な光吸収性および蛍光発光性を実現できる。さらに本発明のチアゾール誘導体の最大蛍光波長は、ドナー・アクセプター型ではないチアゾール誘導体に比べて、長波長側(より可視光領域側)にレッドシフトする。良好な光吸収性及び蛍光発光性を示し、且つその最大蛍光波長が可視光領域にレッドシフトした本発明のチアゾール誘導体は、例えば有機EL素子の発光層材料などとして有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明のチアゾール誘導体は、式(I)で代表されるように、電子供与性基Ar12(ドナー)→チアゾール骨格→電子求引性基Ar11(アクセプター)が結合したドナー・アクセプター型構造を有し、電子の移動が起こりやすくなるため、強い蛍光発光性を示すことができる。さらに本発明のチアゾール誘導体は、チアゾール骨格を挟むようにAr11及びAr12が結合することで拡張したπ共役系を有するため、強い光吸収性を示し、且つ蛍光発光がより可視光領域側にレッドシフトするという作用効果を発揮する。以上のように本発明のチアゾール誘導体は、ドナー・アクセプター型構造を取ることに加えて、拡張したπ共役系を有するという特徴を有し、強い光吸収性及び蛍光発光性、並びに可視光側へのレッドシフトという作用効果を達成できる。
【0021】
まず本発明のチアゾール誘導体(I)から説明する。なお以下で説明する「基」の定義として、『化学大辞典』(株式会社東京化学同人、第1版第1刷、1989年10月20日発行)第520頁に記載されている「有機化合物から形式的に水素を除いた原子団」を本発明で採用する。そして本発明で使用する「基」の概念には、カルバゾール骨格、フルオレン骨格又はトリフェニルアミン骨格のような原子団も含まれる。
【0022】
【化6】

【0023】
11は、同一又は異なって、水素原子、低級アルキル基又は低級アルコキシカルボニル基を示す。全てのR11が同じものであることが好ましい。低級アルキル基は、好ましくはC1-6アルキル基、より好ましくはメチル基である。なお本発明において「Ca-b」とは、「炭素数がa以上b以下である」ことを意味する。低級アルコキシカルボニル基(−COOR、R:低級アルキル基)は、好ましくC1-6アルコキシ基が結合したカルボニル基、より好ましくはメトキシカルボニル基(−COOMe)、エトキシカルボニル基(−COOEt)又はt−ブトキシカルボニル基(−COO(t−Bu))である。R11が水素原子であるチアゾール誘導体(I)は、結晶性が高く、良好な蛍光発光性を示す。一方R11が低級アルキル基又は低級アルコキシカルボニル基であるチアゾール誘導体(I)は、溶媒への溶解性が良好である。全てのR11が水素原子又はメチル基であることが好ましい。
【0024】
Ar11は、同一又は異なって、水素原子、又は電子求引性を示す芳香族基を示す。全てのAr11が同じものであることが好ましい。なおチアゾール誘導体(I)は電子供与性基→チアゾール骨格→電子求引性基というドナー・アクセプター型構造を取ることを特徴とするので、少なくとも1つのAr11は電子求引性を示す芳香族基であることが必要である。全てのAr11が電子求引性を示す芳香族基であることが好ましい。
【0025】
Ar11としては、芳香環に電子求引性の置換基が結合したものが挙げられる。Ar11の芳香環としては、例えばフェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、アントリル基及びピリジル基などが挙げられる。これらの中でも、フェニル基、ビフェニル基及びナフチル基が好ましく、フェニル基がより好ましい。
【0026】
Ar11の電子求引性の置換基としては、例えばハロゲン原子(好ましくは塩素原子及びフッ素原子、より好ましくはフッ素原子)、カルボキシ基(−COOH)、低級アルコキシカルボニル基(−COOR、好ましくはR=C1-4アルキル基)、低級アルカノイル基(−C(=O)R、好ましくはR=C1-4アルキル基)、パーフルオロ(低級)アルキル基(−Cn2n+1、好ましくはn=1〜4、より好ましくはn=1)、シアノ基(−CN)、スルホ基(−SO3H)、低級アルコキシスルホニル基(−SO3R、好ましくはR=C1-4アルキル基)及び低級アルキルスルホニル基(−SO2R、好ましくはR=C1-4アルキル基)などが挙げられる。また電子求引性の置換基中に含まれるアルキル基はハロゲン原子(特にフッ素原子)を有していても良い。なお電子求引性の置換基として、ニトロ基(−NO2)も使用できる。但しニトロ基を使用すると、チアゾール誘導体の最大吸収波長がより長波長側にレッドシフトするというメリットがあるが、チアゾール誘導体の蛍光が消失するというデメリットがある。そこで本発明のチアゾール誘導体の蛍光を利用する場合(例えばチアゾール誘導体を蛍光塗料又は有機EL層の発光層の材料に使用する場合)、電子求引性の置換基としてニトロ基を使用しないことが推奨される。
【0027】
電子求引性を示す芳香族基Ar11は、好ましくは4−エトキシカルボニルフェニル基、4−シアノフェニル基、4−トリフルオロメチルフェニル基、3,5−ビストリフルオロメチルフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、又は3,5−ジ(フェニルスルホニル)フェニル基であり、より好ましくは4−エトキシカルボニルフェニル基、4−シアノフェニル基、又は4−トリフルオロメチルフェニル基であり、さらに好ましくは4−エトキシカルボニルフェニル基である。
【0028】
Ar12は、チアゾール骨格と直接結合した芳香環を有する電子供与性基を示す。
n=2であるAr12としては、例えば下記式(A)又は(B)で示されるカルバゾール骨格又はフルオレン骨格が挙げられる。これら骨格中の水素原子は、低級アルキル基等の置換基で置換されていても良い(下記式中、波線はチアゾール骨格との結合位置を示す)。
【0029】
【化7】

【0030】
n=3であるAr12としては、例えば下記式(C)で示されるトリフェニルアミン骨格が挙げられる。この骨格中の水素原子は、低級アルキル基等の置換基で置換されていても良い(下記式中、波線はチアゾール骨格との結合位置を示す)。
【0031】
【化8】

【0032】
n=4であるAr12としては、例えば下記式(D)で示されるカルバゾール二量体骨格が挙げられる。この骨格中の水素原子は、低級アルキル基等の置換基で置換されていても良い(下記式中、波線はチアゾール骨格との結合位置を示す)。
【0033】
【化9】

【0034】
次に本発明のチアゾール誘導体(II)を説明する。
【0035】
【化10】

【0036】
21は低級アルキル基(好ましくはC1-6アルキル基、より好ましくはC1-3アルキル基、特にエチル基)又は低級アルカノイル基(−C(=O)R、好ましくはR=C1-4アルキル基;特にアセチル基)を示す。R21はエチル基であることが好ましい。
【0037】
22〜R25は、同一又は異なって、水素原子又は低級アルキル基(好ましくはC1-3アルキル基、より好ましくはメチル基)を示す。R22〜R25は水素原子であることが好ましい。
【0038】
26及びR27は、同一又は異なって、水素原子、低級アルキル基又は低級アルコキシカルボニル基を示す。R26及びR27は同じものであることが好ましい。なおR26及びR27の詳しい説明(好ましい例など)は、チアゾール誘導体(I)のR11で説明したものと同じである。
【0039】
Ar21及びAr22は、同一又は異なって、水素原子、又は電子求引性を示す芳香族基を示す。Ar21及びAr22が同じものであることが好ましい。Ar21及びAr22の少なくとも1つは電子求引性を示す芳香族基であることが必要であり、この両方が電子求引性を示す芳香族基であることが好ましい。なおAr21及びAr22の詳しい説明(好ましい例など)は、チアゾール誘導体(I)のAr11で説明したものと同じである。
【0040】
次に本発明のチアゾール誘導体(III)を説明する。
【0041】
【化11】

【0042】
31及びR32は、同一又は異なって、水素原子、低級アルキル基又はアシル基を示す。好ましい低級アルキル基はC1-6アルキル基である。この低級アルキル基は、側鎖としてC1-3アルキル基を有していても良い。アシル基としては、低級アルカノイル基(−C(=O)R、好ましくはR=C1-4アルキル基;特にアセチル基)及びアリロイル基(特にベンゾイル基)が挙げられる。R31及びR32が、ヘキシル基又は2−エチルヘキシル基であることが好ましく、ヘキシル基であることがより好ましい。
【0043】
33及びR34は、同一又は異なって、水素原子、低級アルキル基又は低級アルコキシカルボニル基を示す。R33及びR34は同じものであることが好ましい。なおR33及びR34の詳しい説明(好ましい例など)は、チアゾール誘導体(I)のR11で説明したものと同じである。
【0044】
Ar31及びAr32は、同一又は異なって、水素原子、又は電子求引性を示す芳香族基を示す。Ar31及びAr32が同じものであることが好ましい。Ar31及びAr32の少なくとも1つは電子求引性を示す芳香族基であることが必要であり、この両方が電子求引性を示す芳香族基であることが好ましい。なおAr31及びAr32の詳しい説明(好ましい例など)は、チアゾール誘導体(I)のAr11で説明したものと同じである。
【0045】
次に本発明のチアゾール誘導体(IV)を説明する。
【0046】
【化12】

【0047】
401〜R412は、同一又は異なって、水素原子又は低級アルキル基(好ましくはC1-3アルキル基、より好ましくはメチル基)を示す。R401〜R412は水素原子であることが好ましい。
【0048】
413〜R415は、同一又は異なって、水素原子、低級アルキル基又は低級アルコキシカルボニル基を示す。R413〜R415は同じものであることが好ましい。なおR413〜R415の詳しい説明(好ましい例など)は、チアゾール誘導体(I)のR11で説明したものと同じである。
【0049】
Ar41〜Ar43は、同一又は異なって、水素原子、又は電子求引性を示す芳香族基を示す。Ar41〜Ar43の全てが同じものであることが好ましい。Ar41〜Ar43の少なくとも1つは電子求引性を示す芳香族基であることが必要である。好ましくはAr41〜Ar43の2つ、より好ましくはAr41〜Ar43の全てが電子求引性を示す芳香族基である。なおAr31及びAr32の詳しい説明(好ましい例など)は、チアゾール誘導体(I)のAr11で説明したものと同じである。
【0050】
本発明のチアゾール誘導体は、有機合成化学の分野で既知の方法によって製造できる。以下、式(I)に基づきながら、その製造方法を説明する。
【0051】
まず中心骨格Ar12に対応するヨウ素含有化合物を準備する。例えばヨウ素含有カルバゾール又はヨウ素含有フルオレンは、既知の方法でカルバゾール又はフルオレンにヨウ素を導入することによって合成できる。なお、このカルバゾール、フルオレン及びこれらのヨウ化物は東京化成などから入手できる。また置換基を有するカルバゾール類は、既知の方法で製造できる。例えばメチル基を有するカルバゾール類は、m−クレゾール又はo−クレゾールをカップリングしてビフェニルを合成し、これをカルバゾールに変換することによって製造できる。
【0052】
トリ(4−ヨードフェニル)アミンは東京化成などから入手できる。また置換基を有するトリ(4−ヨードフェニル)アミン類は、下記式(E)で示されるヨウ化ベンゼン類又は式(F)で示されるアニリン類から製造できる(下記式中、R41〜R48は、同一又は異なって、水素原子又はアルキル基等の置換基を示す。但しR41〜R48の少なくとも1つはアルキル基等の置換基である)。
【0053】
【化13】

【0054】
次に上記ヨウ素化合物とチアゾール又はチアゾール類(例えば4−メチルチアゾール)とを、パラジウム触媒及び銅触媒、並びに添加剤(NaOH等)の存在下で反応させることによってチアゾール骨格とAr12とが結合した化合物を合成できる。なおチアゾール又はチアゾール類は、東京化成などから入手できる。下記合成例で示すようにこの反応では反応条件によって、ヨウ素化合物の全ヨウ素がチアゾール骨格で置換された化合物、及びヨウ素とチアゾール骨格とを有する化合物が合成される。このヨウ素とチアゾール骨格とを有する化合物に別のチアゾール類を反応させることによって、異なるR11を有する化合物を製造できる。
【0055】
次にAr12とチアゾール骨格とが結合した上記化合物と、Ar11−I化合物とを反応させることによって、本発明のチアゾール誘導体(I)を製造できる。例えば芳香環にヨウ素と電子求引性の置換基であるパーフルオロ(低級)アルキル基とが結合したAr11−I化合物は、例えば旭硝子又はセントラル硝子などから入手できる。なお芳香環にヨウ素とカルボキシ基(電子求引性の置換基)とが結合した化合物は、直接反応させることが難しい。そこでカルボキシ基を有するチアゾール誘導体(I)は、一旦、低級アルコキシカルボニル基(いわゆるエステル基)を有するチアゾール誘導体(I)を合成してから、これを加水分解することによって合成すれば良い。
【0056】
上記各反応における詳細な条件は、下記合成例に記載する条件および有機合成化学の通常の知識を参照すれば、当業者であれば適宜設定することができる。
【実施例】
【0057】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって制限を受けるものではなく、上記・下記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0058】
〈合成例〉
下記合成例1〜8に示す方法で各化合物を合成した。合成した化合物の同定データは、以下の機器及び条件で測定した。
(1)1H−NMR(500MHz)及び13C−NMR(125MHz)スペクトル
使用機器:Bruker Avance 500 spectrometer
特記が無い限りCDCl3溶液の1H−NMR及び13C−NMRデータを示す。化学シフトは内部標準としてCHCl31H、7.26ppm)又はCDCl313C、77.0ppm)に対するppmで表している。
(2)IRスペクトル
使用機器:Perkin-Elmer FT-IR Spectrometer SPECTRUM 1000 装置
KBr法による吸収スペクトル
(3)HRMS
使用機器:日本電子 MStation JMS−700(EI+)
(4)元素分析
使用機器:ヤナコ MTCHN コーダー
【0059】
合成例1:化合物(III−a)の合成
【0060】
【化14】

【0061】
25mLのシュレンク管に、アルゴン雰囲気下で、化合物(iii)(293.2mg、0.5mmol)、PdCl2(PPh32(10.5mg、0.015mmol)、CuI(1.9mg、0.01mmol)及び3mLのDMSOを添加した。この混合物に、チアゾール(0.11mL、1.25mmol)及びNaOH(50.0mg、1.25mmol)を続けて添加した。21時間撹拌した後、さらにNaOH(24.0mg、0.6mmol)を添加した。得られた混合物を、オイルバス(60℃)で加熱し、48時間撹拌した。混合物を室温に冷却し、10mLのジクロロメタンを添加した。ジクロロメタンを添加した溶液を、20mLの水が入っている分液ロートに注ぎ込み、水層及び有機層を分離し、分離した水層をジクロロメタンで抽出した(10mL×3)。抽出液を組み合わせ、塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、真空で濃縮した。残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することによって、化合物(III−a)を123.8mg(収率:49%)で得た。なお副生成物として、53.7mg(収率:23%)で化合物(III−b)が得られた。
【0062】
化合物(III−a)の同定データ
1H−NMR(500MHz、CDCl3、ppm)δ0.59−0.68(m、4H)、0.72(t、J=7.1Hz、6H)、0.95−1.14(m、12H)、2.06−2.12(m、4H)、7.36(d、J=3.2Hz、2H)、7.78(d、J=8.0Hz、2H)、7.91(d、J=3.2Hz、2H)、7.95(dd、J=1.3、8.0Hz、2H)、8.03(d、J=1.3Hz、2H).
13C−NMR(125MHz、CDCl3、ppm)δ13.8、22.4、23.7、29.5、31.4、40.2、55.6、118.6、120.4、120.6、126.0、132.8、142.2、143.5、152.1、168.8.
IR(KBr、cm-1)3115、3074、2948、2926、2858、1493、1466、1392、1241、1139、1131.
HRMS(m/z)実測値500.2315、計算値500.2320.
【0063】
化合物(III−b)の同定データ
1H−NMR(500MHz、CDCl3、ppm)δ0.63−0.76(m、20H)、0.99−1.13(m、24H)、2.06−2.13(m、8H)、7.35(d、J=3.2Hz、1H)、7.36(d、J=3.2Hz、1H)、7.58(d、J=1.4Hz、1H)、7.65(dd、J=1.4、8.0Hz、1H)、7.77(d、J=7.9Hz、1H)、7.78(d、J=7.9Hz、1H)、7.79(d、J=8.0Hz、1H)、7.86(d、J=7.9Hz、1H)、7.91(d、J=3.2Hz、1H)、7.92(d、J=3.2Hz、1H)、7.95(dd、J=1.4、7.9Hz、1H)、7.96(dd、J=1.4、7.9Hz、1H)、8.00(dd、J=1.4、7.9Hz、1H)、8.03(d、J=1.4Hz、2H)、8.04(d、J=1.4Hz、1H)、8.13(s、1H).
13C−NMR(125MHz、CDCl3、ppm)δ13.94、13.96、22.53、22.55、23.76、23.80、29.60、29.62、31.45、31.49、40.4、55.6、55.7、118.6、118.7、120.3、120.45、120.53、120.59、120.6、120.66、120.74、121.0、125.7、125.9、126.1、130.7、132.7、132.9、133.0、139.1、139.8、140.7、142.29、142.34、142.4、143.61、143.64、151.8、152.21、152.23、152.4、167.4.
【0064】
合成例2:化合物(III−a)及び(III−c)の合成
【0065】
【化15】

【0066】
上記反応式及び下記表1に示す条件で合成例1と同様にして、化合物(III−a)及び(III−c)を合成した。各条件での収率を表1に示す。なお上記反応式および下記表1に示すモル%及び当量は、化合物(iii)を基準とする値である。
【0067】
【表1】

【0068】
化合物(III−c)の同定データ
1H−NMR(500MHz、CDCl3、ppm)δ0.45−0.57(m、4H)、0.61(t、J=7.0Hz、6H)、0.82−1.01(m、12H)、1.80−1.99(m、4H)、7.13(d、J=3.2Hz、1H)、7.31(d、J=8.0Hz、1H)、7.53(d、J=8.0Hz、1H)、7.55(d、J=8.0Hz、1H)、7.60(s、1H)、7.90(d、J=3.2Hz、1H)、7.92(d、J=8.0Hz、1H)、7.99(s、1H).
13C−NMR(125MHz、CDCl3、ppm)δ13.8、22.4、23.6、29.4、31.3、40.0、55.4、93.4、118.4、120.1、120.4、121.6、125.9、132.0、135.9、139.7、141.9、143.4、150.8、153.4、168.6.
HRMS(m/z)実測値543.1458、計算値543.1457.
【0069】
合成例3:化合物(II−a)、(II−b)及び(II−c)の合成
【0070】
【化16】

【0071】
上記反応式および下記表2に示す条件で合成例1と同様にして、化合物(II−a)、(II−b)及び(II−c)を合成した。各条件での収率を表2に示す。なお上記反応式に示すモル%は化合物(ii)を基準とする値である。また下記表2・No.2の条件ではNaOHを2.5当量添加して反応を48時間行い、次いでNaOHを1.2当量追加してさらに反応を9時間行った。同様に下記表2・No.3の条件ではNaOHを1.2当量添加して反応を27時間行い、次いでNaOHを0.5当量追加してさらに反応を21時間行った。
【0072】
【表2】

【0073】
化合物(II−a)の同定データ
【0074】
【化17】

【0075】
1H−NMR(500MHz、CDCl3、ppm)δ1.45(t、J=7.3Hz、3H)、4.35(q、J=7.3Hz、2H)、7.29(d、J=3.2Hz、2H)、7.41(d、J=8.5Hz、2H)、7.86(d、J=3.2Hz、2H)、8.11(d、J=8.5Hz、2H)、8.73(s、2H).
13C−NMR(125MHz、CDCl3、ppm)δ13.8、37.9、109.0、117.7、119.2、123.2、125.0、125.5、141.4、143.3、169.4.
IR(KBr、cm-1)3074、2976、1626、1596、1475、1407、1348、1320、1299、1249、1158、1138、1125.
元素分析(C201532)計算値C:66.45%、H:4.18%、N:11.62%、S:17.74%.実測値C:66.28%、H:4.19%、N:11.62%、S:17.66%.
【0076】
化合物(II−b)の同定データ
【0077】
【化18】

【0078】
1H−NMR(500MHz、CDCl3、ppm)δ1.47(t、J=7.3Hz、3H)、2.55(s、6H)、4.38(q、J=7.3Hz、2H)、6.85(s、2H)、7.42(d、J=8.5Hz、2H)、8.09(dd、J=1.6、8.5Hz、2H)、8.73(d、J=1.6Hz、2H).
13C−NMR(125MHz、CDCl3、ppm)δ13.8、17.3、37.9、108.9、112.3、119.1、123.3、124.9、125.7、141.3、153.4、168.6.
IR(KBr、cm-1)2978、2919、1629、1599、1505、1444、1422、1333、1293、1238.
HRMS(m/z)実測値389.1011、計算値389.1020.
【0079】
化合物(II−c)の同定データ
【0080】
【化19】

【0081】
1H−NMR(500MHz、CDCl3、ppm)δ1.42(t、J=7.5Hz、3H)、2.54(s、3H)、4.31(q、J=7.5Hz、2H)、6.84(s、1H)、7.18(d、J=8.5Hz、1H)、7.38(d、J=8.5Hz、1H)、7.71(d、J=8.5Hz、1H)、8.06(d、J=8.5Hz、1H)、8.46(s、1H)、8.60(s、1H).
13C−NMR(125MHz、CDCl3、ppm)δ13.6、17.3、37.5、81.8、108.6、110.6、112.2、118.6、121.7、124.9、125.2、125.4、129.3、134.1、139.3、140.5、153.3、168.3.
IR(KBr、cm-1)2977、2918、1625、1591、1479、1455、1292、1231.
元素分析(C1815IN2S)計算値C:51.68%、H:3.61%、N:6.70%、S:7.67%.実測値C:51.50%、H:3.54%、N:6.63%、S:7.50%.
【0082】
合成例4:化合物(IV−a)の合成
【0083】
【化20】

【0084】
上記反応式に示す条件で合成例1と同様にして、化合物(IV−a)を合成した(収率:95%)。なお上記反応式に示すモル%及び当量は化合物(iv)を基準とする値である。なおこの反応ではNaOHを4当量、2.5当量、1.5当量及び1当量添加し、それぞれの添加後に、反応を24時間、25時間、23時間及び24時間行った。
【0085】
化合物(IV−a)の同定データ
1H−NMR(500MHz、CDCl3、ppm)δ2.50(s、9H)、6.83(s、3H)、7.17(d、J=8.6Hz、6H)、7.84(d、J=8.6Hz、6H).
13C−NMR(125MHz、CDCl3、ppm)δ20.6、116.3、127.6、131.0、132.4、151.3、157.1、170.2.
IR(KBr、cm-1)2977、2918、1625、1591、1479、1455、1292、1231.
HRMS(m/z)実測値536.1163、計算値536.1177.
【0086】
合成例5:化合物(III−1)の合成
【0087】
【化21】

【0088】
25mLのシュレンク管に、アルゴン雰囲気下で、化合物(III−a)(50.5mg、0.1mmol)、PdCl2(PPh32(3.5mg、0.005mmol)及びDMSO(0.5mL)を添加した。この混合物に、4−ヨード安息香酸エチル(0.068mL、0.4mmol)及びKF(14.5mg、0.25mmol)を続けて添加した。得られた混合物を、オイルバス(60℃)で加熱し、53時間撹拌した。次いでAgNO3(42.5mg、0.25mmol)を、5回に分けて1時間間隔で添加した。混合物を室温に冷却し、セライトパッドでろ過し、続けてクロロホルムで洗浄した。ろ液を塩水で洗浄し、水層をクロロホルムで抽出した。有機相を組み合わせて、無水硫酸ナトリウムで洗浄し、減圧下で濃縮することによって、粗オイルを得た。このオイルをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン/酢酸エチル)で精製することによって、化合物(14a)を63.8mg(収率:80%)で得た。
【0089】
化合物(III−1)の同定データ
1H−NMR(500MHz、CDCl3、ppm)δ0.62−0.71(m、4H)、0.73(t、J=7.2Hz、6H)、0.98−1.12(m、12H)、1.43(t、J=7.1Hz、6H)、2.09−2.15(m、4H)、4.42(q、J=7.1Hz、4H)、7.70(d、J=8.4Hz、4H)、7.82(d、J=8.0Hz、2H)、7.98(dd、J=1.6、8.0Hz、2H)、8.04(d、J=1.6Hz、2H)、8.11(d、J=8.4Hz、4H)、8.16(s、2H).
13C−NMR(125MHz、CDCl3、ppm)δ13.9、14.3、22.5、23.8、29.6、31.5、40.3、55.8、61.2、120.6、120.7、126.1、126.3、130.1、130.4、132.7、135.6、138.0、140.2、142.6、152.4、166.0、168.8.
IR(KBr、cm-1)2954、2925、2855、1717、1606、1421、1406、1366、1274、1236、1125、1108.
元素分析(C4952242)計算値C:73.84%、H:6.58%、N:3.51%、S:8.05%.実測値C:73.78%、H:6.46%、N:3.64%、S:7.90%.
【0090】
合成例6:化合物(III−2)及び(III−3)の合成
【0091】
【化22】

【0092】
上記反応式に示す条件で合成例5と同様にして、化合物(III−2)及び(III−3)を合成した(化合物(III−2)の収率:94%、化合物(III−3)の収率:85%)。なお上記反応式に示すモル%及び当量は化合物(III−a)を基準とする値である。
【0093】
化合物(III−2)の同定データ
【0094】
【化23】

【0095】
1H−NMR(500MHz、CDCl3、ppm)δ0.63−0.69(m、4H)、0.73(t、J=7.1Hz、6H)、0.99−1.11(m、12H)、2.09−2.13(m、4H)、7.73(s、8H)、7.82(d、J=8.0Hz、2H)、7.96(dd、J=1.3、8.0Hz、2H)、8.03(d、J=1.3Hz、2H)、8.16(s、2H).
13C−NMR(125MHz、CDCl3、ppm)δ13.9、22.5、23.8、29.6、31.4、40.2、55.7、111.5、118.4、120.6、120.8、126.2、126.8、132.5、132.9、135.7、136.9、140.8、142.7、152.4、169.4.
【0096】
化合物(III−3)の同定データ
【0097】
【化24】

【0098】
1H−NMR(500MHz、CDCl3、ppm)δ0.65−0.71(m、4H)、0.74(t、J=7.2Hz、6H)、1.00−1.11(m、12H)、2.11−2.14(m、4H)、7.67(d、J=8.2Hz、2H)、7.72−7.77(m、12H)、7.79(d、J=7.9Hz、2H)、7.95(d、J=7.9Hz、2H)、8.05(s、2H)、8.14(s、2H).
13C−NMR(125MHz、CDCl3、ppm)δ13.9、22.5、23.8、29.6、31.5、40.3、55.7、111.2、118.8、120.5、120.7、126.0、127.2、127.5、127.9、131.6、132.6、132.7、138.2、128.9、142.5、144.5、152.3、168.1.
【0099】
合成例7:化合物(II−1)〜(II−9)の合成
【0100】
【化25】

【0101】
上記反応式及び下記表3に示す条件で合成例5と同様にして、化合物(II−1)〜(II−9)を合成した。各条件での収率を表3に示す。なお上記反応式に示すモル%及び当量は化合物(II−a)又は(II−b)を基準とする値である。
【0102】
【表3】

【0103】
化合物(II−1)の同定データ
【0104】
【化26】

【0105】
1H−NMR(500MHz、CDCl3、ppm)δ1.52(t、J=7.3Hz、3H)、4.44(q、J=7.3Hz、2H)、7.50(d、J=8.6Hz、2H)、7.69(d、J=8.4Hz、4H)、7.75(d、J=8.4Hz、4H)、8.11(s、2H)、8.16(dd、J=1.6、8.6Hz、2H)、8.79(d、J=1.6Hz、2H).
13C−NMR(125MHz、CDCl3、ppm)δ13.9、38.1、109.3、119.3、124.0(q、J=272.2Hz)、123.4、125.1、125.5、126.1(q、J=3.9Hz)、126.6、129.8(q、J=33.0Hz)、135.2、136.5、140.2、141.8、169.4.
【0106】
化合物(II−2)の同定データ
【0107】
【化27】

【0108】
1H−NMR(500MHz、CDCl3、ppm)δ1.49(t、J=7.2Hz、3H)、2.62(s、6H)、4.40(q、J=7.2Hz、2H)、7.45(d、J=8.5Hz、2H)、7.64(d、J=8.1Hz、4H)、7.71(d、J=8.1Hz、4H)、8.10(d、J=8.5Hz、2H)、8.75(s、2H).
13C−NMR(125MHz、CDCl3、ppm)δ13.9、16.6、38.0、109.1、119.0、123.3、124.1(q、J=272.2Hz)、124.9、125.4、125.6(q、J=3.7Hz)、129.2、129.39(q、J=32.5Hz)、129.41、136.2、141.6、149.6、166.9.
IR(KBr、cm-1)2921、2979、1615、1600、1441、1323、1240、1167、1121、1070.
HRMS(m/z)実測値677.1394、計算値677.137.
【0109】
化合物(II−3)の同定データ
【0110】
【化28】

【0111】
1H−NMR(500MHz、CDCl3、ppm)δ1.43(t、J=7.2Hz、6H)、1.51(t、J=7.3Hz、3H)、2.67(s、6H)、4.40−4.44(m、6H)、7.49(d、J=8.7Hz、2H)、7.60(d、J=8.3Hz、4H)、8.14(d、J=8.3Hz、4H)、8.19(d、J=8.7Hz、2H)、8.79(s、2H).
13C−NMR(125MHz、CDCl3、ppm)δ13.8、14.2、16.7、37.7、60.9、108.8、118.7、123.0、124.6、125.0、128.4、129.0、129.7、129.8、136.8、141.2、149.2、166.0、166.6.
HRMS(m/z)実測値685.2084、計算値685.2069.
【0112】
化合物(II−4)の同定データ
【0113】
【化29】

【0114】
1H−NMR(500MHz、CDCl3、ppm)δ1.51(t、J=7.1Hz、3H)、2.64(s、6H)、4.43(q、J=7.1Hz、2H)、7.48(d、J=8.5Hz、2H)、7.64(d、J=8.2Hz、4H)、7.75(d、J=8.2Hz、4H)、8.11(d、J=8.5Hz、2H)、8.78(s、2H).
【0115】
化合物(II−5)の同定データ
【0116】
【化30】

【0117】
1H−NMR(500MHz、CDCl3、ppm)δ1.52(t、J=7.3Hz、3H)、2.67(s、6H)、4.44(q、J=7.3Hz、2H)、7.49(d、J=8.4Hz、2H)、7.70(d、J=8.6Hz、4H)、8.12(d、J=8.4Hz、4H)、8.32(d、J=8.6Hz、4H)、8.79(s、2H).
13C−NMR(125MHz、CDCl3、ppm)δ13.9、17.0、38.1、61.1、109.3、119.3、123.4、124.1、125.2、125.3、128.8、129.4、139.4、141.8、146.7、150.7、167.8.
HRMS(m/z)実測値631.1362、計算値631.1348.
【0118】
化合物(II−6)の同定データ
【0119】
【化31】

【0120】
1H−NMR(500MHz、CDCl3、ppm)δ1.50(t、J=7.3Hz、3H)、4.41(q、J=7.3Hz、2H)、7.32(d、J=3.2Hz、2H)、7.47(d、J=8.5Hz、1H)、7.68(d、J=8.2Hz、2H)、7.73(d、J=8.2Hz、2H)、7.89(d、J=3.2Hz、1H)、8.10(s、1H)、8.13−8.17(m、2H)、8.76(s、2H).
13C−NMR(125MHz、CDCl3、ppm)δ13.9、38.1、109.2、117.9、119.25、119.29、123.3、123.4、124.2(q、J=228.0Hz)、124.9、125.2、125.3、125.8、126.1(q、J=4.1Hz)、126.5、136.5(q、J=35.7Hz)、140.2、141.5、141.7、143.4、169.4、169.5.
【0121】
化合物(II−7)の同定データ
【0122】
【化32】

【0123】
1H−NMR(500MHz、CDCl3、ppm)δ1.43(t、J=7.1Hz、6H)、1.49(t、J=7.2Hz、3H)、2.56(s、3H)、2.64(s、3H)、4.38−4.44(m、4H)、6.86(s、1H)、7.44(d、J=8.6Hz、1H)、7.45(d、J=8.6Hz、1H)、7.60(d、J=8.3Hz、4H)、8.10−8.14(m、4H)、8.75(d、J=1.6Hz、1H)、8.76(d、J=1.6Hz、1H).
13C−NMR(125MHz、CDCl3、ppm)δ13.9、14.3、16.8、17.3、38.0、61.1、109.01、109.03、112.4、119.06、119.13、123.3、123.4、124.8、125.1、125.3、125.8、128.7、129.2、129.9、130.0、137.1、141.4、141.6、149.5、153.4、166.2、166.9、168.6.
HRMS(m/z)実測値537.1543、計算値537.1545.
【0124】
化合物(II−8)の同定データ
【0125】
【化33】

【0126】
1H−NMR(500MHz、CDCl3、ppm)δ1.48(t、J=7.2Hz、3H)、2.56(s、3H)、2.63(s、3H)、4.40(q、J=7.2Hz、2H)、6.86(s、1H)、7.44(d、J=8.5Hz、2H)、7.61(d、J=8.4Hz、2H)、7.73(d、J=8.4Hz、2H)、8.09(dd、J=1.6、8.4Hz、1H)、8.12(dd、J=1.4、8.4Hz、1H)、8.74(d、J=1.6Hz、1H)、8.75(d、J=1.4Hz、1H).
【0127】
化合物(II−9)の同定データ
【0128】
【化35】

【0129】
1H−NMR(500MHz、CDCl3、ppm)δ1.50(t、J=7.2Hz、3H)、2.56(s、3H)、2.66(s、3H)、4.41(q、J=7.2Hz、2H)、6.86(s、1H)、7.45(d、J=8.6Hz、1H)、7.46(d、J=8.5Hz、1H)、7.68(d、J=8.7Hz、2H)、8.09−8.12(m、2H)、8.31(d、J=8.7Hz、2H)、8.76(s、2H).
【0130】
合成例8:化合物(IV−1)の合成
【0131】
【化36】

【0132】
上記反応式及に示す条件で合成例5と同様にして、化合物(IV−1)を合成した(収率:77%)。詳しくは、60℃でAgNO3を12時間ごとに0.8当量ずつ5回に分けて加え(反応時間12×5=60時間)、さらにAgNO3とKFとを1当量ずつ追加して反応を48時間続け、次いで5mol%のパラジウム触媒を追加して36時間反応を続け、その後に反応温度を100℃に上げて12時間反応させた。なお上記反応式に示すモル%及び当量は化合物(IV−a)を基準とする値である。
【0133】
化合物(IV−1)の同定データ
1H−NMR(500MHz、CDCl3、ppm)δ2.59(s、9H)、7.22(d、J=8.8Hz、6H)、7.61(d、J=8.2Hz、6H)、7.70(d、J=8.2Hz、6H)、7.88(d、J=8.8Hz、6H).
13C−NMR(125MHz、CDCl3、ppm)δ16.4、124.4、124.0(q、J=272.2Hz)、125.7(q、J=3.7Hz)、127.7、128.7、129.2、129.7(q、J=33.0Hz)、130.1、135.9、148.2、149.8、165.3.
HRMS(m/z)実測値968.174、計算値968.1724.
【0134】
〈物性評価〉
上記合成例で合成した各化合物のクロロホルム溶液(0.01mM)の紫外−可視吸収スペクトル(使用機器:JASCO V530)及び蛍光スペクトル(使用機器:JASCO FP6300)を測定した。紫外可視−吸収スペクトルの最大吸収波長(λmax)及びモル吸光係数(ε)、並びに蛍光スペクトルでの最大励起波長(λmax)及び最大発光波長(λmax)を下記表4に示す。
【0135】
また各化合物の蛍光量子収率を下記式から計算した。この結果も下記表4に示す。
Φx=Φstd×(Ix/Istd)×(Astd/Ax)×(nx/nstd2
【0136】
上記式中、Φは量子収率を示し、Iは蛍光スペクトルのピーク面積を示し、Aは励起波長における吸光度を示し、nは溶媒の屈折率を示す。また添字のxは各化合物のサンプルを、stdは標準物質を示す。蛍光量子収率を計算するための標準物質として、7−ジエチルアミノ−4−メチルクマリンの0.01mM酢酸エチル溶液を用いた(Φstd=0.99、Istd=1.84×104、Astd=0.312、nstd=1.37)。
【0137】
【表4】

【0138】
表4の結果から、ドナー・アクセプター型構造を有する本発明例のチアゾール誘導体は、そのような構造を有さない比較例のチアゾール誘導体に比べて、紫外可視−吸収スペクトルの最大吸収波長および蛍光スペクトルで最大発光波長が長波長側にレッドシフトしている。また化合物(IV−1)を除いて本発明例のチアゾール誘導体は、対応する比較例のチアゾール誘導体に比べてモル吸光係数の値が増大している。
【0139】
本発明例の化合物(II−1)〜(II−7)(カルバゾール骨格を有するチアゾール誘導体)は比較例の化合物(II−a)〜(II−c)に比べて、及び本発明例の化合物(IV−1)(トリフェニルアミン骨格を有するチアゾール誘導体)は対応する比較例の化合物(IV−a)に比べて、蛍光量子収率が向上している。なおニトロ基を有する本発明例の化合物(II−5)はほとんど蛍光が観測されなかった。これは、ニトロ基を有する化合物は蛍光が消失するという経験則に当てはまる。
【0140】
チアゾール環の4位にメチル基を有する化合物(II−2)〜(II−4)及び(II−7)は、チアゾール環の4位が水素原子である化合物(II−1)及び(II−6)に比べて、蛍光量子収率が低下している。これはメチル基の導入によって立体障害が大きくなり、分子の平面性が低下したことが原因であると考えられる。このようにメチル基等の置換基の導入は、蛍光発光性の点ではデメリットであるが、溶媒への溶解性が向上するというメリットがある。
【0141】
本発明例の化合物(III−1)〜(III−3)(フルオレン骨格を有するチアゾール誘導体)は、対応する比較例の化合物(III−a)に比べて蛍光量子収率が低下している。これは比較例の化合物(III−a)の蛍光量子収率(0.55)が特異的に高かったためであり、本発明例の化合物(III−1)〜(III−3)の蛍光量子収率(0.20〜0.35)はそれほど低い値ではない。
【産業上の利用可能性】
【0142】
本発明のチアゾール誘導体は、良好な光吸収性および蛍光発光性を示し、且つその最大蛍光波長は可視光領域側にレッドシフトするので、蛍光塗料又は有機EL素子の発光層の材料などとして有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)で表されるチアゾール誘導体。
【化1】


〔式(I)中、nは2〜4の整数を示す。
11は、同一又は異なって、水素原子、低級アルキル基又は低級アルコキシカルボニル基を示す。
Ar11は、同一又は異なって、水素原子、又は電子求引性を示す芳香族基を示す。但し、少なくとも1つのAr11は電子求引性を示す芳香族基である。
Ar12は、チアゾール骨格と直接結合した芳香環を有する電子供与性基を示す。〕
【請求項2】
下記式(II)で表されるチアゾール誘導体。
【化2】


〔式(II)中、R21は低級アルキル基又は低級アルカノイル基を示す。
22〜R25は、同一又は異なって、水素原子又は低級アルキル基を示す。
26及びR27は、同一又は異なって、水素原子、低級アルキル基又は低級アルコキシカルボニル基を示す。
Ar21及びAr22は、同一又は異なって、水素原子、又は電子求引性を示す芳香族基を示す。但しAr21及びAr22の少なくとも1つは電子求引性を示す芳香族基である。〕
【請求項3】
下記式(III)で表されるチアゾール誘導体。
【化3】


〔式(III)中、R31及びR32は、同一又は異なって、水素原子、低級アルキル基又はアシル基を示す。
33及びR34は、同一又は異なって、水素原子、低級アルキル基又は低級アルコキシカルボニル基を示す。
Ar31及びAr32は、同一又は異なって、水素原子、又は電子求引性を示す芳香族基を示す。但しAr31及びAr32の少なくとも1つは電子求引性を示す芳香族基である。〕
【請求項4】
下記式(IV)で表されるチアゾール誘導体。
【化4】


〔式(IV)中、R401〜R412は、同一又は異なって、水素原子又は低級アルキル基を示す。
413〜R415は、同一又は異なって、水素原子、低級アルキル基又は低級アルコキシカルボニル基を示す。
Ar41〜Ar43は、同一又は異なって、水素原子、又は電子求引性を示す芳香族基を示す。但しAr41〜Ar43の少なくとも1つは電子求引性を示す芳香族基である。〕

【公開番号】特開2009−292746(P2009−292746A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−145718(P2008−145718)
【出願日】平成20年6月3日(2008.6.3)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成20年2月20日 国立大学法人神戸大学発行の「修士論文・卒業論文 研究発表講演要旨集(2007年度)」に発表
【出願人】(504150450)国立大学法人神戸大学 (421)
【Fターム(参考)】