説明

おむつ、排泄検知サーバ及び排泄情報配信システム

【課題】使い捨ての電源を有し、排泄を検知して信号を送信するおむつと、おむつからの信号に基づいて、排泄があったことを速やかに世話する者に知らせる排泄検知サーバと、これらを備え、おむつ着用者と世話をする者のストレスを軽減する排泄情報配信システムを提供する。
【解決手段】おむつは、電極を有し、尿を利用して電気を発生させる電源部を備え、この電気を利用して、信号を通信ユニットに送信すれば、使い捨てることができる。また、排泄検知サーバは、おむつからの信号を受信し、この信号に基づいて排泄情報を作成して情報端末装置に送信することで、保護者や介護者などが情報端末装置を所持すれば、排泄があったことを速やかに知らせることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、おむつ着用者の排泄に関する信号を送信するおむつ、及び、おむつからの信号に基づいて排泄情報を作成し、情報配信端末に送信する排泄検知サーバを有する排泄情報配信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
育児や介護の現場において、おむつを着用する乳幼児や高齢者などに排泄があっても、保護者や介護者などの世話をする者はすぐにわからない為に、おむつ着用者から離れられない。そこで、世話をする者は、例えば1〜2時間ごとに定期的に排泄の有無を確認する必要があり、時間的に拘束され精神ストレスが高い。同時に定期チェックされる側にもストレスが発生する。また、おむつ等の吸収物品は、最低2〜3回以上の排尿があることを前提に吸収体設計されているので、薄型化に限界がある。
【0003】
特許文献1には、センサ部とICチップとアンテナを有し、センサの検出信号を送信するおむつと、中継器を介しておむつから受信したセンサの検出信号を蓄積し、当該蓄積された検出信号の時間変化パターンが予め登録したパターンに対応したときに報知信号を出力する排泄検出装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−296566号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のおむつは、電源として、駆動電力用電波を受信してICチップやセンサ部に電力を供給する方法、又は、電池パッドをおむつの外面に粘着テープなどで添着して設置する方法を採用している。駆動電力用電波を受信してICチップやセンサ部に電力を供給する場合、駆動電力用電波を送信する送信機をおむつ着用者の周辺に設置する必要がある。また、外出先では使用できないという問題点がある。さらに、この場合、ICチップは、駆動電力用電波の受信機能や駆動電力用電波を直流電力に変換する機能を備える必要がある。一方、電池パッドをおむつの外面に粘着テープなどで添着して設置する場合、おむつ装着時に、毎回おむつ外面のファスナーに押し付けて貼着する必要がある。また、おむつの外面に電池パッドを装着するので、おむつ着用者に違和感を与える可能性があり、装着性が低下する。
【0006】
本発明は、おむつ着用者の排泄を検知し、信号を送信するおむつであって、使い捨ての電源を有し、外出先でも利用できる装着性の高いおむつと、おむつからの信号に基づいて、排泄があったことを速やかに保護者や介護者などに知らせる排泄検知サーバと、これらを備えることで、おむつ着用者と世話をする者のストレスを軽減する排泄情報配信システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の1つの観点では、おむつは、電極を有し、尿を利用して電気を発生させる電池と、前記電池が発生した電気を利用して、信号を通信ユニットに送信する送信手段と、を備える。
【0008】
上記のおむつは、おむつ着用者が排泄した尿を利用して、電気を発生させ、これを利用して、信号を通信ユニットに送信する。これにより、おむつ着用者の排泄に関する情報を外部に送信することができる。また、おむつ内で発電することができるので、おむつ本体の受信機能や、おむつ着用者周辺に設置する送信機などの設備が不要となり、外出先でも利用可能である。また、電池パッドなどの電源をおむつ装着時に添着する必要がないので装着性が向上する。
【0009】
上記おむつの一態様では、センサ検出データを作成するセンサをさらに備え、前記送信手段は、前記信号により、前記センサ検出データを前記通信ユニットに送信する。この態様では、例えば温度や湿度といったおむつ内の状態をセンサが検知し、センサ検出データを作成し、送信手段が、センサ検出データを通信ユニットに送信する。これにより、おむつ内の状態を示す情報を外部に送信することができる。
【0010】
上記おむつの一態様では、前記電池が発生させた電気を蓄電する電源部をさらに備える。この態様では、おむつ着用者が排泄した尿を利用して発生させた電気を効率よく利用することができる。
【0011】
上記おむつの一態様では、前記電池は、尿に含まれる成分を電解液として利用するボルタ電池を構成し、複槽構造を形成する。この態様では、単槽のボルタ電池で発生する電力が、信号を通信ユニットに送信する必要最低電力に満たなかったとしても、複槽構造にすることで、必要電力を確保することができる。これにより、ボルタ電池の電極に、例えば銅とアルミニウムといった安価な金属の組み合わせを使用することができ、コストを下げることができる。
【0012】
上記おむつの一態様では、尿に含まれる成分を電解液として利用するボルタ電池を構成し、前記電極は、一部に異なる金属を有する。ボルタ電池は、電極に使用する金属の組み合わせによって発生する電圧が異なる。この態様では、発生する電圧が高い金属の組み合わせを電極の一部に使用することで、信号を通信ユニットに送信する必要電力を確保することができる。また、発生する電圧が高い金属が高価な金属であっても、微量に噴霧するなどして、一部に使用することでコストを抑えることができる。さらに、これにより、複槽構造にする必要がないので、電源部をより小さくすることができる。
【0013】
上記おむつの一態様では、おむつ装着時に前記電池に食塩水を供給する食塩水供給部をさらに備え、前記電池は、おむつ装着時に前記食塩水を用いて電気を発生させる。電源部が尿のみを利用して電気を発生させる場合、おむつ着用者が尿を排泄する前に便を排泄した場合には、電気は発生せず、おむつ着用者が便を排泄した情報を外部に送信することができない。この態様では、おむつ装着時に食塩水供給部が電源部に食塩水を供給し、電源部はこれを用いて電気を発生させるので、おむつ装着時から電力を供給することができる。
【0014】
上記おむつの一態様では、着用者の肌と当接する内側面と、前記内側面と逆側である外側面とにそれぞれ前記電池を備える。この態様では、おむつ着用者が尿を排泄すると、内側面に尿が浸透し、1つ目の電源部が電気を発生させ、これを利用して、信号を通信ユニットに送信する。その後さらに着用者が尿を排泄すると、外側面にまで尿が浸透し、2つ目の電源部が電気を発生させ、これを利用して、信号を通信ユニットに送信する。これにより、排泄があったことだけでなく、おむつの外側面にまで尿が浸透したことを外部に送信することができる。
【0015】
本発明の他の観点では、排泄検知サーバは、通信ユニットから信号を受信する受信手段と、前記信号に基づいて、排泄情報を作成する排泄情報作成手段と、前記排泄情報を情報端末装置に送信する排泄情報送信手段と、を備える。
【0016】
上記の排泄検知サーバは、おむつから通信ユニットに送信された信号を通信ユニットから受信し、この信号に基づいて、おむつ着用者の排泄があったか否かなどの排泄情報を作成する。そして、排泄検知サーバは、排泄情報を情報端末装置に送信する。これにより、例えば、情報端末装置を乳幼児の保護者や、高齢者の介護者などが所持することで、その場にいなくても、おむつ着用者の排泄情報を知ることができ、世話をする者の拘束時間が軽減する。
【0017】
上記排泄検知サーバの一態様では、前記受信手段は、前記通信ユニットからセンサ検出データを受信し、前記センサ検出データを解析し、排泄の種類を判定する判定手段をさらに備え、前記排泄情報作成手段は、前記判定手段の判定に基づいて、排泄情報を作成する。この態様では、センサ検出データを解析することで、おむつ着用者の排泄の種類を判定し、これに基づいて排泄情報を作成し、情報端末装置に送信する。これにより、例えば、情報端末装置を所持している保護者や介護者などは、おむつ着用者の排泄の種類を知ることができる。そして、排泄の種類に合わせた対応が可能となり、世話をする者の利便性が向上する。
【0018】
上記排泄検知サーバの一態様では、前記判定手段が前記センサ検出データを解析する際の条件を設定するための条件設定手段をさらに備え、前記判定手段は、前記条件設定手段によって設定された条件に従って前記センサ検出データを解析し、排泄の種類を判定する。この態様では、センサ検出データを解析する際の条件を設定することができる。これにより、例えば、乳幼児と高齢者のセンサ検出データの特徴の違いなどに対応することができ、判定の精度が向上する。
【0019】
本発明の他の観点では、排泄情報配信システムは、おむつと、通信ユニットと、排泄検知サーバと、情報配信端末とを備え、おむつは、電極を有し、尿を利用して電気を発生させる電池と、前記電池が発生させた電気を利用して、信号を通信ユニットに送信する送信手段と、を備え、前記排泄検知サーバは、前記通信ユニットから信号を受信する受信手段と、前記信号に基づいて、排泄情報を作成する排泄情報作成手段と、前記排泄情報を情報配信端末に送信する排泄情報送信手段と、を備える。
【0020】
上記の排泄情報配信システムにおいて、おむつは、おむつ着用者が排泄した尿を利用して、電気を発生させ、これを利用して、信号を通信ユニットに送信する。通信ユニットはおむつから受信した信号を排泄検知サーバに送信し、排泄検知サーバは、通信ユニットから受信した信号に基づいて、おむつ着用者の排泄があったか否かなどの排泄情報を作成する。そして、排泄検知サーバは、排泄情報を情報端末装置に送信する。この排泄情報配信システムは、おむつ本体の受信機能や、おむつ着用者周辺に設置する送信機などの設備が不要であるので、外出先でも利用可能であり、電池パッドなどの電源をおむつ装着時に添着する必要もない。また、情報端末装置を、乳幼児の保護者や高齢者の介護者など、世話をする者が所持することで、その場にいなくても、おむつ着用者の排泄情報を知ることができ、世話をする者の拘束時間が軽減する。さらに、排泄したタイミングでおむつを交換することを想定すれば、おむつの厚さを従来よりも薄くすることができ、さらに、尿、便等に長時間触れていることによる肌トラブルを軽減することができる。これにより、おむつ着用者と世話をする者のストレスを軽減することができる。
【0021】
上記の排泄情報配信システムの一態様では、前記おむつは、センサ検出データを作成するセンサ部をさらに備え、前記送信手段は、前記信号により、前記センサ検出データを前記通信ユニットに送信し、前記受信手段は、前記通信ユニットから前記センサ検出データを受信し、前記排泄検知サーバは、前記センサ検出データを解析し、排泄の種類を判定する判定手段をさらに備え、前記排泄情報作成手段は、前記判定手段の判定に基づいて、排泄情報を作成する。これにより、例えば、情報端末装置を所持している保護者や介護者などは、おむつ着用者の排泄の種類を知ることができる。そして、排泄の種類に合わせた対応が可能となり、世話をする者の利便性が向上する。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、おむつの装着性が向上し、おむつ着用者の世話をする者がその場にいなくても、おむつ着用者の排泄情報を知ることができ、世話をする者の拘束時間が軽減する。これにより、おむつ着用者と世話をする者のストレスを軽減することができる。さらに、本発明は、外出先でも利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る排泄情報配信システムの概念図である。
【図2】アクティブタグの構成を示すブロック図である。
【図3】(a)1組のデータ送信ユニットを内蔵しているおむつの構造の例である。(b)2組のデータ送信ユニットが配置されているおむつの構造の例である。
【図4】(a)単槽構造のボルタ電池を表した図である。(b)単槽構造のボルタ電池に尿を供給した場合に発生する電圧のグラフである。
【図5】(a)二槽構造のボルタ電池を表した図である。(b)二槽構造のボルタ電池にNaClの2%溶液を供給した場合に発生する電圧のグラフである。
【図6】電極の一部に異なる金属を使用した単槽構造のボルタ電池の例である。
【図7】(a)排便した場合の温度データの時間変化パターンである。(b)排尿した場合の温度データの時間変化パターンである。
【図8】発電処理のフローチャートである。
【図9】温度検知処理のフローチャートである。
【図10】排泄情報配信処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態について説明する。
【0025】
図1に、排泄情報配信システム100の概念図を示す。本実施形態では、排泄情報配信システム100は、おむつ1と、通信ユニット2と、排泄検知サーバ3と、情報配信端末4とにより構成される。なお、参考のため、図1には閉じた状態のおむつ1xも図示してある。おむつ1と通信ユニット2、通信ユニット2と排泄検知サーバ3、排泄検知サーバ3と情報配信端末4はそれぞれ無線で通信可能である。
【0026】
おむつ1は、アクティブタグ11と、電池12と、温度センサ13と、を備える。アクティブタグとは、電池を内蔵しないパッシブタグと異なり、自らの電源で動作するICタグである。
【0027】
電池12は、イオン化傾向の異なる金属でそれぞれ構成される2つの電極を備えるボルタ電池であり、おむつ着用者が排泄した尿を電解液として利用して発電し、アクティブタグ11に電力を供給する。
【0028】
温度センサ13は、おむつ1内の温度を検知し、温度データ(センサ検知データ)を作成し、アクティブタグ11に送信する。
【0029】
アクティブタグ11は温度センサ13から受信した温度データを一時記憶し、例えば10秒に1回といった所定のタイミングで通信ユニット2に送信する。このとき、温度データにおむつを識別するIDデータを付加して送信することとしてもよい。IDデータは、おむつひとつひとつに付与しておむつを個別に識別することとしてもよいし、1ケースのおむつすべてに同一のIDデータを付与して、ケースを識別することとしてもよい。なお、アクティブタグ11には、温度データを通信ユニット2に送信するためのアンテナが接続されている(図示せず)。
【0030】
通信ユニット2は、アクティブタグ11からの信号を受信できるよう、おむつ1から所定の範囲内に設置されている。本実施形態では、通信ユニット2は、おむつ着用者の衣服に装着される。通信ユニット2は、アクティブタグ11から受信した温度データを排泄検知サーバ3に送信する。また、本実施形態では、この送信をPHS(Personal Handy−Phone System)送信で行う。PHSは送信出力が携帯電話に比べて非常に小さいため、医療機関などでも利用することができる。
【0031】
排泄検知サーバ3は、通信ユニット2から受信した温度データを解析し、おむつ1で排泄があったか否かを判定する。排泄があった場合、温度データに基づいて排泄の種類を判定する。次に、排泄検知サーバ3は、判定結果に基づいて排泄情報を作成し、情報配信端末4に送信する。排泄検知サーバ3は、外部のサーバであり、通信ユニット2からPHS送信で温度データを送信するので、外出先でも排泄情報配信システム100を利用することができる。
【0032】
情報配信端末4は、おむつ着用者が乳幼児であれば保護者が、おむつ着用者が被介護者であれば介護者が、医療機関であれば医者及び看護師などが、所持しているPC端末やモバイル端末である。情報配信端末4は、排泄検知サーバ3から受信した排泄情報を、画面表示や音声で出力し、保護者、介護者、医者及び看護師などに、排泄情報を告知する。
【0033】
図2は、アクティブタグ11の構成を示すブロック図である。図示のように、アクティブタグ11は、電源部111と、制御部112と、クロック回路113と、AD変換部114と、ROM115と、RAM116と、RF部117と、を備える。電源部111は電池12と接続されており、AD変換部114は温度センサ13と接続されている。また、RF部117は送信用のアンテナ14と接続されている。
【0034】
電源部111は、アクティブタグ11を動作させるために必要な電力を供給する。また、図2の例のように電源部111内にキャパシタ118を設けた場合は、電池12で発生した電気をキャパシタ118に蓄電し、必要な時だけ電力を出力することができる。
【0035】
制御部112は、例えばマイクロプロセッサなどにより構成され、アクティブタグ11内の各部を制御する。具体的には、制御部112は、ROM115内に予め記憶されている制御プログラムを実行することにより、温度センサ13から送信された温度データをAD変換部114によってアナログデータからデジタルデータへ変換する処理、AD変換部114がデジタルデータに変換した温度データをRAM116へ一時記憶する処理、RAM116内に一時記憶されている温度データを、RF部117によって、アンテナ14を介して通信ユニット2へ送信する処理などを実行する。
【0036】
クロック回路113は、クロック信号を制御部112に出力する。制御部112はこのクロック信号に基づいて上記各処理を実行する。
【0037】
AD変換部114は、温度センサ13と接続されており、温度センサ13から温度データをアナログ信号で受信する。そして、受信したアナログ信号の温度データをデジタル信号に変換する。
【0038】
ROM115は、制御部112により実行される各種の制御プログラムを記憶する。RAM116は、温度センサ13が生成した温度データを一時的に記憶する。
【0039】
RF部117は、アンテナ14と接続されており、RAM116内に一時記憶されている温度データを、アンテナ14を介して排泄検知サーバ3に送信する。なお、排泄検知サーバ3は、おむつ着用者の排泄が排便であるか排尿であるかを、温度データ時間変化に基づいて判別することができるが、この点については後述する。
【0040】
次に、おむつ1の構造について詳しく説明する。図3は、おむつ1の断面図及び平面図の例である。本発明は、上述のようにおむつ1のアクティブタグ11が、電池12が尿を用いて発生させる電気を利用して動作する点に特徴を有する。本実施形態では、おむつ1の中心に、アクティブタグ11、電池12、温度センサ13及びアンテナ14を有するデータ送信ユニットが配置されている。
【0041】
図3(a)は、1組のデータ送信ユニット200を内蔵しているおむつ1の構造の例である。データ送信ユニット200はシート状になっており、おむつ1の吸収体の中心に配置される。これにより、おむつ着用者が尿を排泄したとき、尿が電池12に供給され、電池12が発生させた電気によってアクティブタグ11が動作し、温度センサ13が検知した温度データをアンテナ14を介して通信ユニット2に送信することができる。
【0042】
但し、おむつ着用者が尿を排泄する前に便を排泄した場合には、電池12は電気を発生せず、アクティブタグ11が起動しないので、おむつ着用者が便を排泄した情報を送信することができない。そこで、本実施形態では、おむつ装着時に破れるように設計された少量の食塩水が入った食塩水供給部15を電池12の上に設置する。おむつ1が装着されると、食塩水供給部15は少量の食塩水を電池12に供給し、電池12はこの食塩水を用いて発電し、アクティブタグ11が起動する。これにより、おむつ着用者が排尿する前に排便した場合でも、それを排泄検知サーバ3へ伝えることが可能となる。
【0043】
図3(b)は、2組のデータの送信ユニット200a及び200bが配置されているおむつ1の構造の例である。データ送信ユニット200a、200bはシート状になっており、おむつ着用者の肌に触れる内側面の中心とその逆の外側面の中心に1枚ずつ配置されている。データ送信ユニット200aは、アクティブタグ11a、電池12a、温度センサ13a及びアンテナ14aを有する。データ送信ユニット200bは、アクティブタグ11b、電池12b、温度センサ13b及びアンテナ14bを有する。
【0044】
おむつ1が装着されると、食塩水供給部15は、少量の食塩水を内側面のデータ送信ユニット200aの電池12aに供給し、電池12aは食塩水を用いて発電し、アクティブタグ11aが起動する。次に、おむつ着用者が尿を排泄すると、まず内側面のデータ送信ユニット200aの電池12aに尿が供給され、電気が発生する。アクティブタグ11aは、この電気を利用して温度センサ13aが検知した温度データをアンテナ14aを介して通信ユニット2に送信する。
【0045】
その後、さらにおむつ着用者が尿を排泄すると、おむつ1の吸収体に吸収されている尿の量が増加するため、外側面のデータ送信ユニット200bの電池12bにも尿が供給されるようになり、電気が発生する。アクティブタグ11bは、この電気を利用して温度センサ13bが検知した温度データをアンテナ14bを介して通信ユニット2に送信する。これにより、例えば、便の排泄は1回で交換する必要があるが、尿の排泄は複数回吸収できるように吸収体が設計されているような場合に、保護者や介護者が何回尿の排泄があったかを把握しなくても、内側面の温度センサ13aが便の排泄を検知し、外側面の温度センサ13bが外側面まで尿が浸透したことを知らせることができる。
【0046】
なお、アクティブタグ11の設置箇所においてデータ送信ユニット200の基材にスリットを入れるなどして、おむつ1を廃棄する際に、アクティブタグ11を剥離できるようにおむつ1を設計してもよい。
【0047】
次に、電池12について詳しく説明する。電池12はボルタ電池である。ボルタ電池とは、イオン化傾向の大きい金属と小さい金属を使用した電極を、電解液に浸けることで電子を移動させて電流を発生させる電池である。本実施形態では、電極としてアルミニウムと銅の組み合わせを採用し、電解液におむつ着用者が排泄した尿を利用する。ヒトの尿は、約95%が水でできており、NaClを約1%〜5%含む。即ち、尿成分のNaCl水溶液を電解液として利用する。
【0048】
図4(a)は、単槽構造のボルタ電池である電池12を表した図である。電極121はアルミニウムで構成されており、電極122は銅で構成されている。電極121及び電極122はアクティブタグ11に接続されている。電解液30を電極121及び電極122に供給すると、酸化還元反応により電子の移動が起こり、電圧を生じる。
【0049】
図4(b)は実際に図4(a)の単槽構造のボルタ電池をおむつ上に設置し、電極121及び電極122に電解液30として尿を供給した場合に発生する電圧のグラフである。なお、利用した尿の成分は水:96.0%、尿素:1.7%、NaCl:1.5%、その他:0.8%である。反応R1は、手で電極に触れるなどして電極121及び電極122に汗が接触したことにより約0.2Vの電圧が生じたことを示している。反応R2は、尿(120g)を電極121及び電極122に供給したことにより約0.5Vの電圧が生じたことを示している。反応R3は、電極121と122の間に300Ωの負荷をかけたことにより、電圧が0Vになった状態を示している。反応R4は、電極121と122の間に1KΩの負荷をかけたことにより、電圧が0Vになった状態を示している。反応R5は、尿(100g)を電極121及び電極122に供給したことにより約0.5Vの電圧が生じたことを示している。反応R6は、電極121と122の間に10KΩの負荷をかけたことにより、電圧が約0.25Vになった状態を示している。
【0050】
本実施形態のアクティブタグ11を起動するには少なくとも1V以上の電圧と、1mA以上の電流が必要となる。しかし、反応R2が示すように、アルミニウムの電極121及び銅の電極122に尿(120g)を供給しても、発生する電圧は約0.5Vである。
【0051】
図5(a)は、直列に接続した二槽構造のボルタ電池である電池12xを表した図である。おむつ1の内側には電極121a及び122bを有する電極対16aが設けられ、おむつ1の外側には電極121b及び122bを有する電極対16bが設けられる。電極121a及び121bはアルミニウムで構成されており、電極122a及び122bは銅で構成されている。
【0052】
内側の電極対と外側の電極対との間には、セパレータ20が挿入される。セパレータ20は水を通さない素材で構成され、ここでは厚さ11μmのポリ塩化ビニリデンを使用する。電極121aと電極122bは電気的に接続されており、電極121b及び電極122aはアクティブタグ11に接続されている。電解液31を電極対16a及び16bに供給すると、酸化還元反応により電子の移動が起こり、電圧を生じる。
【0053】
図5(b)は実際に図5(a)の二槽構造のボルタ電池をおむつに設置し、直列に接続した電極対16a及び16bに電解液31としてNaClの2%溶液を供給した場合に発生する電圧のグラフである。反応R7は、NaClの2%溶液(250ml)を電極対16a及び16bに供給したことにより約1.2Vの電圧が生じたことを示している。反応R8は、電極122aと121bとの間に10KΩの負荷をかけたことにより、電圧が約0.4Vになった状態を示している。反応R9は、電極122aと121bとの間にかけた負荷10KΩをオフにしたことにより、電圧が約1.2Vになった状態を示している。
【0054】
このように、直列に接続した二槽構造のボルタ電池を構成することにより、アクティブタグ11を起動するために必要な電圧1Vを確保することができる。
【0055】
図6は、電極の一部に異なる金属を使用した単槽構造のボルタ電池の例である。ボルタ電池は、電極を構成する金属の組み合わせによって発生する電圧が異なる。図6の例では、アルミニウムの電極121の一部に亜鉛123を使用し、銅の電極122の一部に銀124を使用している。このように、電極の一部にイオン化傾向の異なる金属を使用することによって、単槽構造のボルタ電池であっても、約1Vの電圧を発生させることが可能となる。なお、銀や亜鉛は高価な金属であるので、コストを抑えるために、例えば噴霧して微量に付着させることとしてもよい。
【0056】
次に、排泄検知サーバ3について説明する。排泄検知サーバ3は通信ユニット2から温度データを受信すると、当該温度データを解析し、排泄があったか否かを判定する。また、排泄があったと判定した場合、温度データの時間変化パターンに基づいて、排泄の種類を判定する。
【0057】
図7(a)は、おむつ着用者が排便した場合の温度データの時間変化パターンである。矢印40が排便のタイミングである。排便すると、おむつ内の温度は急激に上昇し、その後、横ばいになる。
【0058】
図7(b)は、おむつ着用者が排尿した場合の温度データの時間変化パターンである。矢印41が排尿のタイミングである。排尿すると、おむつ内の温度は急激に上昇し、その後、右肩下がりになる。
【0059】
排泄検知サーバ3は、温度データの時間変化パターンについて、急激な温度の上昇があった場合は、排泄があったと判定する。さらに、排泄検知サーバ3は、排便の時間変化パターン(図7(a))と、排尿の時間変化パターンを(図7(b))を記憶しており、通信ユニット2から受信した温度データの時間変化パターンと比較し、どちらに対応するかを判定することで、排泄の種類を判定する。排泄検知サーバ3は、排泄の種類を知らせる排泄情報を作成し、情報端末4に送信する。例えば、排泄検知サーバ3は、排尿であると判定した場合、おむつ着用者が排尿した旨を知らせる排泄情報を作成し、情報端末4に送信する。
【0060】
なお、排便の時間変化パターン及び排尿の時間変化パターンは、例えば、おむつ着用者が乳幼児である場合と高齢者である場合、あるいは、男性である場合と女性である場合とでは異なる可能性がある。そこで、排泄検知サーバ3は、センサ検出データを解析する際の条件としておむつ着用者の属性ごとの排便の時間変化パターン及び排尿の時間変化パターンを記憶し、保護者や介護者が、おむつ着用者に合わせて、比較する排便の時間変化パターン及び排尿の時間変化パターンを設定することができることとしてもよい。これにより、より精度の高い判定を行うことができる。
【0061】
次に、おむつ1において実行される発電処理について説明する。図8は、発電処理のフローチャートである。
【0062】
おむつ1が装着されると(ステップS1)、食塩水供給部15が破れ、電池12に少量の食塩水を供給する(ステップS2)。電池12は、食塩水を電解液として利用して電気を発生させる(ステップS3)。次に、おむつ着用者によって尿が排泄されると(ステップS4)、電池12は、尿を電解液として利用して電気を発生させ(ステップS5)、処理を終了する。電源部111内にキャパシタ118を設けた場合は、発生した電気を蓄電する。なお、発電処理は、ステップS3を実行した後処理が終了するまで、ステップS4及びステップS5を繰り返し実行する。
【0063】
続いて、おむつ1において実行される温度検知処理について説明する。図9は、温度検知処理のフローチャートである。
【0064】
温度センサ13は、おむつ1内の温度を検知すると(ステップS11)、温度データを作成する(ステップS12)。AD変換部114は、温度センサ13が作成した温度データをアナログデータからデジタルデータへ変換する(ステップS13)。制御部112は、デジタルデータへ変換された温度データをRAM116に一時記憶し(ステップS14)、処理を終了する。なお、温度検知処理は、処理を開始してから終了するまで、ステップS11〜ステップS14を繰り返し実行する。
【0065】
次に、排泄情報配信システム100において実行される排泄情報配信処理について説明する。図10は、排泄情報配信処理のフローチャートである。
【0066】
おむつ1は、定期的に温度データを通信ユニット2へ送信するように設計されており、処理を開始してから所定の時間経過後に温度データを送信し、その後、前回の送信から所定の時間が経過するたびに温度データを送信する。
【0067】
おむつ1では、アクティブタグ11の制御部112が所定の時間が経過したか否かを判定する(ステップS21)。所定の時間は、例えば10秒である。所定の時間が経過していない場合(ステップS21;No)、処理はステップS21を繰り返す。
【0068】
所定の時間が経過した場合(ステップS21;Yes)、RF部117は、RAM116に記憶した温度データを通信ユニット2へ送信し(ステップS22)、処理を終了する。
【0069】
なお、おむつ1において実行する当該処理は、処理を開始してから終了するまで、ステップS21及びステップS22を繰り返し実行する。
【0070】
通信ユニット2は、おむつ1から温度データを受信したか否かを判定し(ステップS31)、温度データを受信していない場合(ステップS31;No)、処理はステップS31を繰り返す。温度データを受信した場合(ステップS31;Yes)、通信ユニット2は、排泄検知サーバ3へ温度データを送信し(ステップS32)、処理を終了する。
【0071】
なお、通信ユニット2において実行する当該処理は、処理を開始してから終了するまで、ステップS31及びステップS32を繰り返し実行する。
【0072】
排泄検知サーバ3は、通信ユニット2から温度データを受信したか否かを判定し(ステップS41)、温度データを受信していない場合(ステップS41;No)、処理はステップS41を繰り返す。温度データを受信した場合(ステップS41;Yes)、排泄検知サーバ3は、温度データを解析し(ステップS42)、排泄があったか否かを判定する(ステップS43)。排泄がなかったと判定した場合(ステップS43;No)、処理はステップS41に戻り、ステップS41〜ステップS43を繰り返す。
【0073】
排泄があったと判定した場合(ステップS43;Yes)、排泄検知サーバ3は、排泄の種類を判定する(ステップS44)。次に、判定した排泄の種類に基づいて、排泄情報を作成する(ステップS45)。続いて、排泄検知サーバ3は、作成した排泄情報を情報配信端末4に送信し(ステップS46)、処理を終了する。
【0074】
なお、排泄検知サーバ3において実行する当該処理は、処理を開始してから終了するまで、ステップS41〜ステップS46を繰り返し実行する。
【0075】
情報配信端末4は、排泄検知サーバ3から排泄情報を受信したか否かを判定し(ステップS51)、排泄情報を受信していない場合(ステップS51;No)、処理はステップS51を繰り返す。排泄情報を受信した場合(ステップS51;Yes)、情報配信端末4は、排泄情報を画面表示や音声で出力し(ステップS52)、処理を終了する。
【0076】
なお、情報配信端末4において実行する当該処理は、処理を開始してから終了するまで、ステップS51及びステップS52を繰り返し実行する。
【0077】
このように、本実施形態の排泄情報配信システム100では、おむつ1内で発電することができるので、おむつ本体の受信機能や、おむつ着用者周辺に設置する送信機などの設備が不要である。また、尿を利用して発電するので、電池パッドなどの電源をおむつ装着時に添着する必要もない。また、情報端末装置を、乳幼児の保護者や高齢者の介護者など、世話をする者が所持することで、その場にいなくても、おむつ着用者の排泄情報を知ることができ、世話をする者の拘束時間が軽減する。これにより、おむつ着用者と世話をする者のストレスを軽減することができる。
【0078】
[変形例]
上記の実施形態では、データ送信ユニット200が、おむつ1の中心に配置されていたが、本発明の適用はこれに限られず、電池12に尿が供給される位置であればおむつ1のどこに配置してもよい。
【0079】
上記の実施形態では、おむつ1は温度センサ13を備えていたが、本発明の適用はこれに限られず、おむつ1は温度センサを備えず、電池12に電気が発生したか否かで排尿のみを検知し、信号を通信ユニット2に送信することとしてもよい。
【0080】
上記の実施形態では、おむつ1が備えるセンサは、温度センサ13であったが、本発明の適用はこれに限られず、湿度センサや排泄物に含まれる成分を検知するセンサなどであってもよく、これらを組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0081】
1 おむつ
2 通信ユニット
3 排泄検知サーバ
4 情報配信端末
11 アクティブタグ
12 電池
13 温度センサ
14 アンテナ
15 食塩水供給部
100 排泄情報配信システム
111 電源部
112 制御部
113 クロック回路
114 AD変換部
115 ROM
116 RAM
117 RF部
118 キャパシタ
200 データ送信ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極を有し、尿を利用して電気を発生させる電池と、
前記電池が発生させた電気を利用して、信号を通信ユニットに送信する送信手段と、を備えることを特徴とするおむつ。
【請求項2】
センサ検出データを作成するセンサをさらに備え、
前記送信手段は、前記信号により、前記センサ検出データを前記通信ユニットに送信することを特徴とする請求項1に記載のおむつ。
【請求項3】
前記電池が発生させた電気を蓄電する電源部をさらに備えることを特徴とする請求項1又は2に記載のおむつ。
【請求項4】
前記電池は、尿に含まれる成分を電解液として利用するボルタ電池を構成し、複槽構造を形成することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のおむつ。
【請求項5】
前記電池は、尿に含まれる成分を電解液として利用するボルタ電池を構成し、
前記電極は、一部に異なる金属を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のおむつ。
【請求項6】
おむつ装着時に前記電池に食塩水を供給する食塩水供給部をさらに備え、
前記電池は、おむつ装着時に前記食塩水を用いて電気を発生させることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載のおむつ。
【請求項7】
着用者の肌と当接する内側面と、前記内側面と逆側である外側面とにそれぞれ前記電池を備えること特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載のおむつ。
【請求項8】
通信ユニットから信号を受信する受信手段と、
前記信号に基づいて、排泄情報を作成する排泄情報作成手段と、
前記排泄情報を情報端末装置に送信する排泄情報送信手段と、を備えることを特徴とする排泄検知サーバ。
【請求項9】
前記受信手段は、前記通信ユニットからセンサ検出データを受信し、
前記センサ検出データを解析し、排泄の種類を判定する判定手段をさらに備え、
前記排泄情報作成手段は、前記判定手段の判定に基づいて、排泄情報を作成することを特徴とする請求項8に記載の排泄検知サーバ。
【請求項10】
前記判定手段が前記センサ検出データを解析する際の条件を設定するための条件設定手段をさらに備え、
前記判定手段は、前記条件設定手段によって設定された条件に従って前記センサ検出データを解析し、排泄の種類を判定することを特徴とする請求項9に記載の排泄検知サーバ。
【請求項11】
おむつと、通信ユニットと、排泄検知サーバと、情報配信端末とを備える排泄情報配信システムであって、
前記おむつは、
電極を有し、尿を利用して電気を発生させる電池と、
前記電池が発生させた電気を利用して、信号を通信ユニットに送信する送信手段と、を備え、
前記排泄検知サーバは、
前記通信ユニットから信号を受信する受信手段と、
前記信号に基づいて、排泄情報を作成する排泄情報作成手段と、
前記排泄情報を情報配信端末に送信する排泄情報送信手段と、を備えることを特徴とする排泄情報配信システム。
【請求項12】
前記おむつは、センサ検出データを作成するセンサ部をさらに備え、
前記送信手段は、前記信号により、前記センサ検出データを前記通信ユニットに送信し、
前記受信手段は、前記通信ユニットから前記センサ検出データを受信し、
前記排泄検知サーバは、前記センサ検出データを解析し、排泄の種類を判定する判定手段をさらに備え、
前記排泄情報作成手段は、前記判定手段の判定に基づいて、排泄情報を作成することを特徴とする請求項11に記載の排泄情報配信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−136055(P2011−136055A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−298360(P2009−298360)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【出願人】(000115108)ユニ・チャーム株式会社 (1,219)
【Fターム(参考)】