説明

かしめ管継手

【課題】視認によるかしめ完了状態の確認が確実になされることで、かしめ忘れが抑制され、液漏れ事故の防止に寄与することが可能な信頼性の高いかしめ管継手を提供する。
【解決手段】 かしめ管継手1は、スリーブ3に外嵌される視認用リング6を有し、スリーブ3は、周方向の間隔を隔てて軸心C方向にのびる複数のスリット30a〜30cと、各スリットの間に形成される複数の拡開舌片31a〜31cとを備え、視認用リング6には、複数のスリット30a〜30cに係合する複数の係止突起64a〜64cが内周に突設され、拡開舌片31a〜31cの拡開で拡径方向に付勢される環状の肉部60と、該環状の肉部60の周方向の引っ張り応力を小さくして裂け目を発生させるために軸心C方向にのびて環状の肉部60に食い込み形成された第1凹入部群65Xと第2凹入部群65Yとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、かしめ管継手に係り、より詳しくは、視認によるかしめ完了状態の確認が確実になされることで、かしめ忘れが抑制され、液漏れ事故の防止に寄与することが可能な信頼性の高いかしめ管継手に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、かしめ管継手として特許文献1に記載のものが提案されている。このかしめ管継手を図7,図8に示す。これらの図において、かしめ管継手50は、該管継手50の一端に設けられたノズル部51と、ノズル部51を囲繞するように配置されたスリーブ52との間に配管53の端部を挿入するとともに、スリーブ52をかしめて圧縮することによって、スリーブ52とノズル部51との間で配管53を水密に挟むようにしたかしめ管継手であって、スリーブ52に、スリーブ52の外周面とは色彩が異なり、カシメた際に裂け目が形成されて取り去られる視認用薄帯部材54が予め巻き付けられたものである。
【0003】
前記構成のかしめ管継手50によれば、かしめ工具を用いてかしめた時に、薄帯部材54に裂け目が形成されるため、この裂け目を利用して薄帯部材54をスリーブ52から剥ぎ取り、薄帯部材54が取り去られたスリーブ52を視認することでかしめ作業の完了を確認することができるので、かしめ忘れが抑制されて液漏れ事故の防止に寄与することが可能であるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−2402号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、スリーブ52の外周に予め巻き付けられている視認用薄帯部材54は、ビニールテープ、フィルム、紙、金属箔、金属蒸着テープ、金属蒸着フィルム、金属蒸着紙などのように薄く、かつ軸心C方向に裂け易い切れ目構造を有する材料によって構成されているので、たとえば、配管施工時において視認用薄帯部材54が他の部材に引っ掛かかると、かしめ作業の前段であるにもかかわらず、視認用薄帯部材54がスリーブ52から剥ぎ取られるおそれを有する。特に、図9に示すように、軸心C方向の寸法Lが小さい(5mm程度)の視認用薄帯部材54であると、比較的簡単に視認用薄帯部材54がスリーブ52から剥ぎ取られることにつながるといえる。
【0006】
このように、かしめ作業の前段で視認用薄帯部材54がスリーブ52から剥ぎ取られると、この剥ぎ取られた状態が視認されることになって、かしめ作業が完了していないのに、かしめが完了されていると誤認する事態が生じることになって、このまま通水されると前記かしめ忘れ箇所から水漏れが発生することになる。つまり、前記特許文献1に記載のかしめ管継手50は、視認によりかしめ完了状態が誤認されるおそれを有しているので、かしめ忘れ確認の信頼性が低いといえる。
【0007】
本発明は上記の実情に鑑みてなされたものであって、視認によるかしめ完了状態の確認が確実になされることで、かしめ忘れが抑制され、液漏れ事故の防止に寄与することが可能な信頼性の高いかしめ管継手の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明に係るかしめ管継手は、管継手の一端に設けられたノズル部と、ノズル部を囲繞するように配置されたスリーブとの間に配管の端部を挿入するとともに、スリーブをかしめて圧縮することによりスリーブとノズル部との間で配管の端部を水密に挟むようにしたかしめ管継手において、
前記スリーブの先端部に外嵌される視認用リングを有し、前記スリーブは、その先端部に周方向の間隔を隔てて軸心方向にのびて形成された複数のスリットと、各スリットの間に形成される複数の拡開舌片とを備えており、前記視認用リングには、前記複数のスリットに係合する複数の係止突起が内周に突設されているとともに、前記複数の拡開舌片の拡開で拡径方向に付勢される環状の肉部と、該環状の肉部の周方向の引っ張り応力を小さくして裂け目を発生させるために軸心方向にのびて環状の肉部に食い込み形成された複数の凹入部を備えてなることを特徴としている。
【0009】
前記構成のかしめ管継手によれば、ノズル部とスリーブとの間に配管の端部を挿入した状態で、かしめ専用工具によりスリーブの先端部を除いた部位を径内方向に圧縮してかしめると、スリーブは圧縮変形されて、圧縮変形されたスリーブが、その部位の配管を圧縮変形させる。これにより、スリーブとノズル部との間で配管を水密に挟着して配管の抜脱を阻止する。同時に、複数の拡開舌片はそれぞれ拡開されて視認用リングの環状の肉部を拡径方向に付勢する。視認用リングの内周に突設されている複数の係止突起のそれぞれは、スリーブの複数のスリットに係合しているので、視認用リングとスリーブとの周方向の相対回転が規制される。そのため、複数の拡開舌片それぞれの拡開により視認用リングにおける環状の肉部を有効に拡径方向に付勢して、環状の肉部に周方向の引っ張り応力を生じさせる。
【0010】
環状の肉部には、軸心方向にのびる複数の凹入部が食い込み形成されていることにより、該環状の肉部において、複数の凹入部が食い込んでいる部位の周方向の引っ張り応力は、複数の凹入部が食い込んでいない部位の周方向の引っ張り応力よりも小さいので、複数の凹入部が食い込んでいる部位から裂け目が形成され、この裂け目が成長することで視認用リングは複数個の破断片に分解される。
【0011】
前記分解された複数個の破断片の殆どはスリーブの先端部から脱落する。また、脱落することなくスリーブの先端部に引っ掛かって残存している破断片があれば、この破断片をスリーブの先端部から除去することで、視認用リングが無くなったスリーブを視認することでかしめ作業の完了を確認することができる。したがって、かしめ忘れが抑制されて水漏れ事故の防止に寄与することが可能である。
【0012】
一方、配管施工時において視認用リングが他の部材に当接したり引っ掛かかったりしても、その時の外力で視認用リングが複数個の破断片に分解されてスリーブの先端部から脱落することはない。そのため、かしめ作業が完了していないのに、かしめが完了されていると誤認する事態は発生しないので、視認によるかしめ完了状態の確認が確実になされるから、かしめ忘れ確認の信頼性を高めることが可能である。
【0013】
また、本発明に係るかしめ管継手は、前記視認用リングに形成される軸心方向にのびる複数の凹入部を、視認用リングの軸心方向の一端側から他端側に向けてのびて環状の肉部に食い込む第1凹入部群と、該第1凹入部群に周方向で齟齬して視認用リングの軸心方向の他端側から一端側に向けてのびて環状の肉部に食い込む第2凹入部群とで構成することが望ましい。これによると、環状の肉部において、複数の凹入部が食い込んでいる周方向の引っ張り応力の小さい部位の数が増大するので、裂け目の形成および該裂け目の成長が促進されて、視認用リングを容易に複数個の破断片に分解してスリーブの先端部から脱落させることができる。
【0014】
さらに、本発明に係るかしめ管継手は、前記視認用リングに形成される軸心方向にのびる複数の凹入部を、視認用リングの軸心方向の一端側から他端側に向けてのびて環状の肉部に食い込む第1凹入部群のみで構成してもよい。これによると、構造が簡素化された視認用リングを使用することによって、該視認用リングを複数個の破断片に分解して、その殆どをスリーブの先端部から脱落させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るかしめ管継手は、配管施工時において視認用リングが他の部材に当接したり引っ掛かかったりしても、その時の外力で視認用リングが複数個の破断片に分解されてスリーブの先端部から脱落することはない。そのため、かしめ作業が完了していないのに、かしめが完了されていると誤認する事態は発生しないので、視認によるかしめ完了状態の確認が確実になされるから、かしめ忘れ確認の信頼性を高めることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係るかしめ管継手の第1実施形態を示す半截断面図である。
【図2】図1の第1実施形態に適用される金属製のスリーブの一例を示す構成図であり、図2(a)は先端側から見た正面図、図2(b)は図2(a)のIIb−IIb矢視図、図2(c)は図2(a)のIIc−IIc矢視図である。
【図3】図1の第1実施形態に適用される樹脂製の視認用リングの一例を示す構成図であり、図3(a)は先端側から見た正面図、図3(b)は図3(a)のIIIb−IIIb矢視図、図3(c)は図3(a)のIIIc−IIIc矢視図,図3(d)は図3(b)のIIId−IIId矢視図である。
【図4】本発明に係るかしめ管継手の第2実施形態を示す半截断面図である。
【図5】図4の第2実施形態に適用される金属製のスリーブの一例を示す構成図であり、図5(a)は先端側から見た正面図、図5(b)は図5(a)のVb−Vb矢視図、図5(c)は図5(a)のVc−Vc矢視図である。
【図6】図4の第2実施形態に適用される樹脂製の視認用リングの一例を示す構成図であり、図6(a)は先端側から見た正面図、図6(b)は図6(a)のVIb−VIb矢視図、図6(c)は図6(a)のVIc−VIc矢視図である。
【図7】第1従来例の斜視図である。
【図8】図7の半截断面図である。
【図9】第2従来例の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0017】
以下、本発明に係るかしめ管継手の好ましい実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明に係るかしめ管継手の第1実施形態を示す半截断面図、図2は、図1の第1実施形態に適用される金属製のスリーブの一例を示す構成図であり、図2(a)は先端側から見た正面図、図2(b)は図2(a)のIIb−IIb矢視図、図2(c)は図2(a)のIIc−IIc矢視図、図3は、図1の第1実施形態に適用される樹脂製の視認用リングの一例を示す構成図であり、図3(a)は先端側から見た正面図、図3(b)は図3(a)のIIIb−IIIb矢視図、図3(c)は図3(a)のIIIc−IIIc矢視図,図3(d)は図3(b)のIIId−IIId矢視図である。
【0018】
図1、図2(a)〜(c)、図3(a)〜(d)において、かしめ管継手1は、その一端に設けられたノズル部2と、該ノズル部2を囲繞するように配置された金属製のスリーブ3との間に配管4の先端部を挿入するとともに、スリーブ3をかしめ専用工具でかしめて圧縮することによりスリーブ3とノズル部2との間で配管4の先端部を水密に挟むように構成されており、スリーブ3の先端部に外嵌される樹脂製の視認用リング6を有しいる。
【0019】
管継手1におけるノズル部2の外周面には、環状のOリング収容溝2a,2bが形成され、これらOリング収容溝2a,2bには、挿入された配管4先端部の内周面に密着して止水するためのOリング7が外嵌保持されており、ノズル部2の外周面は、その断面形状を略波のうねり状にしてある。
【0020】
金属製のスリーブ3は、その先端部に周方向の間隔を隔てて軸心方向にのびて形成された三つスリット30a,30b,30cと、各スリット30a,30b,30cの間に形成される三つの拡開舌片31a,31b,31cとを備えており、先端部を除いた胴部32の外周面には、軸心C方向に所定の間隔を隔てて、かしめ専用工具に対応する二条の環状隆起33a,33bを形成してある。
【0021】
配管4は、給水・給湯配管などに使用されている架橋ポリエチレン管や、ポリエチレンとアルミ管との複合管などが適用されるが、本実施形態では、架橋ポリエチレン管からなる内層4aと、アルミ管からなる中間層4bと、ポリエチレン管からなる外層4cとを備えた三層構造の配管4が適用される。
【0022】
樹脂製の視認用リング6は、樹脂製の射出成形体からなり、金属製のスリーブ3の外周面の色彩に対してコントラスト(対比)の大きい色彩を有する。ここで、スリーブ3の外周面の色彩が銀色であれば、銀色に対してコントラストが大きく識別し易い色彩、たとえば、黄色系や白色系などが好ましい。また、視認用リング6の視認作業は、通常、床面に立って天井に光を照射して行われることが多いので、蛍光色や光反射効率の高い色彩をもたせるようにしてもよい。
【0023】
樹脂製の視認用リング6の環状の肉部60は、断面略台形の先端部61と、先端部61の軸心C方向後側に隣接する大径のフランジ部62と、フランジ部62の軸心C方向後側に隣接する小径薄肉の胴部63とを備え、それらの内径は金属製のスリーブ3の先端部に外嵌可能な一様な大きさに設定されている。そして、先端部61内周には、スリーブ3の三つのスリット30a,30b,30cに係合する三つの係止突起64a,64b,64cが突設されている。
【0024】
樹脂製の視認用リング6には、環状の肉部60における先端部61とフランジ部62との周方向の引っ張り応力を小さくして裂け目を発生させるための複数の凹入部65が先端部61とフランジ部62および胴部63に食い込んで形成されている。該凹入部65は、視認用リング6の軸心C方向の一端側(先端部61側)から他端側(フランジ部62側)に向けてのびて、環状の肉部60における先端部61とフランジ部62とに食い込む五つのスリット65a,65b,65c,65d,65eからなる第1凹入部群65Xと、該第1凹入部群65Xに周方向で齟齬して視認用リング6の軸心C方向の他端側(フランジ部62側)から一端側(先端部61側)に向けてのびて、環状の肉部60における胴部63とフランジ部62とに食い込む三つのスリット65f,65g,65hおよび胴部63のみに食い込む二つのスリット65i,65jからなる第2凹入部群65Yとで構成されている。
【0025】
前記構成のかしめ管継手1によれば、ノズル部2と金属製のスリーブ3との間に配管4の端部を挿入した状態で、かしめ専用工具(図示省略)によりスリーブ3の先端部を除いた部位を径内方向に圧縮してかしめると、スリーブ3は圧縮変形されて、圧縮変形されたスリーブ3が、その部位の配管4を圧縮変形させる。これにより、スリーブ3とノズル部2との間で配管4を水密に挟着して配管4の抜脱を阻止する。同時に、三つの拡開舌片31a,31b,31cはそれぞれ拡開されて視認用リング6の環状の肉部60を拡径方向に付勢する。視認用リング6の内周に突設されている三つ係止突起64a,64b,64cのそれぞれは、スリーブ3の三つのスリット30a,30b,30cに係合しているので、視認用リング6とスリーブ3との周方向の相対回転が規制される。そのため、三つの拡開舌片31a,31b,31cそれぞれの拡開により視認用リング6における環状の肉部60を有効に拡径方向に付勢して、環状の肉部60に周方向の引っ張り応力を生じさせる。
【0026】
環状の肉部60には、軸心C方向にのびる第1凹入部群65Xと第2凹入部群65Yとが食い込み形成されていることにより、該環状の肉部60において、第1凹入部群65Xと第2凹入部群65Yが食い込んでいる部位の周方向の引っ張り応力は、第1凹入部群65Xと第2凹入部群65Yが食い込んでいない部位の周方向の引っ張り応力よりも小さいので、第1凹入部群65Xと第2凹入部群65Yが食い込んでいる部位から裂け目が形成され、この裂け目が成長することで視認用リング6は複数個の破断片に分解される。
【0027】
複数の凹入部65が第1凹入部群65Xと第2凹入部群65Yとで構成されていることにより、第1、第2凹入部群65X,65Yが食い込んでいる周方向の引っ張り応力の小さい部位の数が増大するので、前記裂け目の形成および該裂け目の成長が促進されて、視認用リング6を容易に複数個の破断片に分解してスリーブ3の先端部から脱落させることができる。これにより、視認用リング6が無くなったスリーブ3を視認することでかしめ作業の完了を確認することができる。したがって、かしめ忘れが抑制されて水漏れ事故の防止に寄与することが可能である。
【0028】
一方、配管施工時などにおいて、視認用リング6が他の部材に当接したり引っ掛かかったりしても、その時の外力で視認用リング6が複数個の破断片に分解されてスリーブ3の先端部から脱落することはない。そのため、かしめ作業が完了していないのに、かしめが完了されていると誤認する事態は発生しないので、視認によるかしめ完了状態の確認が確実になされるから、かしめ忘れ確認の信頼性を高めることが可能である。
【0029】
図4は本発明に係るかしめ管継手の第2実施形態を示す半截断面図、図5は図4の第2実施形態に適用される金属製のスリーブの一例を示す構成図であり、図5(a)は先端側から見た正面図、図5(b)は図5(a)のVb−Vb矢視図、図5(c)は図5(a)のVc−Vc矢視図であり、図6は図4の第2実施形態に適用される樹脂製の視認用リングの一例を示す構成図であり、図6(a)は先端側から見た正面図、図6(b)は図6(a)のVIb−VIb矢視図、図6(c)は図6(a)のVIc−VIc矢視図である。
【0030】
なお、第2実施形態のかしめ管継手1が図1、図2(a)〜(c)、図3(a)〜(d)で説明した第1実施形態のかしめ管継手1と相違する構成は、金属製のスリーブ3と樹脂製の視認用リング6にあり、その他の構成は異ならないので、第1実施形態のかしめ管継手1と同一部分には、同一符号を付して重複する構造説明は省略する。
【0031】
図4、図5(a)〜(c)、図6(a)〜(c)において、第2実施形態のかしめ管継手1に適用される金属製のスリーブ3は、その先端部に周方向の間隔を隔てて軸心方向にのびて形成された三つスリット30a,30b,30cと、各スリット30a,30b,30cの間に形成される三つの拡開舌片と31a,31b,31cを備えている。
【0032】
樹脂製の視認用リング6の環状の肉部60は、断面略台形の先端部66と、先端部66の軸心C方向後側に隣接する大径のフランジ部67とを備え、それらの内径は金属製のスリーブ3の先端部に外嵌可能な一様な大きさに設定されている。そして、フランジ部67の内周には、スリーブ3の三つのスリット30a,30b,30cに係合する三つの係止突起64a,64b,64cが突設されている。
【0033】
樹脂製の視認用リング6には、環状の肉部60における先端部66の周方向の引っ張り応力を小さくして裂け目を発生させるための三つの凹入部65によって構成される第1凹入部群65Xが、視認用リング6の軸心C方向の一端側(先端部66側)から他端側(フランジ部67側)に向けてのびて、先端部66に食い込んで形成されている。
【0034】
前記構成の第2実施形態に係るかしめ管継手1によっても、ノズル部2と金属製のスリーブ3との間に配管4の端部を挿入した状態で、かしめ専用工具(図示省略)によりスリーブ3の先端部を除いた部位を径内方向に圧縮してかしめると、スリーブ3は圧縮変形されて、圧縮変形されたスリーブ3が、その部位の配管4を圧縮変形させる。これにより、スリーブ3とノズル部2との間で配管4を水密に挟着して配管4の抜脱を阻止する。同時に、三つの拡開舌片31a,31b,31cはそれぞれ拡開されて視認用リング6の環状の肉部60を拡径方向に付勢する。視認用リング6の内周に突設されている三つ係止突起64a,64b,64cのそれぞれは、スリーブ3の三つのスリット30a,30b,30cに係合しているので、視認用リング6とスリーブ3との周方向の相対回転が規制される。そのため、三つの拡開舌片31a,31b,31cそれぞれの拡開により視認用リング6における環状の肉部60を有効に拡径方向に付勢して、環状の肉部60に周方向の引っ張り応力を生じさせる。
【0035】
環状の肉部60には、軸心C方向にのびる第1凹入部群65Xが食い込み形成されていることにより、該環状の肉部60において、第1凹入部群65Xが食い込んでいる部位の周方向の引っ張り応力は、第1凹入部群65Xが食い込んでいない部位の周方向の引っ張り応力よりも小さいので、第1凹入部群65Xが食い込んでいる部位から裂け目が形成され、この裂け目が成長することで視認用リング6は複数個の破断片に分解される。
【0036】
前記分解された複数個の破断片の殆どはスリーブ3の先端部から脱落する。また、脱落することなくスリーブ3の先端部に引っ掛かって残存している破断片があれば、この破断片をスリーブ3の先端部から除去することで、視認用リング6が無くなったスリーブ3を視認することでかしめ作業の完了を確認することができる。したがって、かしめ忘れが抑制されて水漏れ事故の防止に寄与することが可能である。
【0037】
第2実施形態に係るかしめ管継手1では、前記第1実施形態に係るかしめ管継手1に適用される視認用リング6と比較して、構造が簡素化された視認用リング6を使用することによって、該視認用リング6を複数個の破断片に分解して、その殆どをスリーブ3の先端部から脱落させることができる。
【0038】
前記第1、第2実施形態の説明は、本発明の好ましい具体的な実施例の詳細な説明および図面に過ぎず、本発明の特許請求の範囲を制限するものではない。そして、当該分野における通常の知識を有する当業者が適当に変更や改良などを実施できるが、それらの実施形態が本発明の主張する技術的範囲に収まるべきことは言うまでもない、たとえば、ソケット、エルボ、ティー、クロス、ラテラル、レデューサ、ニップルなどの様々な管継手への適用が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0039】
給水管や給湯管などの天井配管施工完了後になされる通水試験の前段において、管継手に対して、かしめ忘れなく配管が確実に接続されている状態を確認する。
【符号の説明】
【0040】
1 かしめ管継手
2 ノズル部
3 スリーブ
4 配管
6 視認用リング
30a スリット
30b スリット
30c スリット
31a 拡開舌片
31b 拡開舌片
31c 拡開舌片
64a 係止突起
64b 係止突起
64c 係止突起
65 凹入部
65X 第1凹入部群
65Y 第2凹入部群
C 軸心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管継手の一端に設けられたノズル部と、ノズル部を囲繞するように配置されたスリーブとの間に配管の端部を挿入するとともに、スリーブをかしめて圧縮することによりスリーブとノズル部との間で配管の端部を水密に挟むようにしたかしめ管継手において、
前記スリーブの先端部に外嵌される視認用リングを有し、前記スリーブは、その先端部に周方向の間隔を隔てて軸心方向にのびて形成された複数のスリットと、各スリットの間に形成される複数の拡開舌片とを備えており、前記視認用リングには、前記複数のスリットに係合する複数の係止突起が内周に突設されているとともに、前記複数の拡開舌片の拡開で拡径方向に付勢される環状の肉部と、該環状の肉部の周方向の引っ張り応力を小さくして裂け目を発生させるために軸心方向にのびて環状の肉部に食い込み形成された複数の凹入部を備えてなることを特徴とするかしめ管継手。
【請求項2】
請求項1に記載したかしめ管継手において、
前記視認用リングに形成される軸心方向にのびる複数の凹入部は、視認用リングの軸心方向の一端側から他端側に向けてのびて環状の肉部に食い込む第1凹入部群と、該第1凹入部群に周方向で齟齬して視認用リングの軸心方向の他端側から一端側に向けてのびて環状の肉部に食い込む第2凹入部群とで構成されてなるかしめ管継手。
【請求項3】
請求項1に記載したかしめ管継手において、
前記視認用リングに形成される軸心方向にのびる複数の凹入部は、視認用リングの軸心方向の一端側から他端側に向けてのびて環状の肉部に食い込む第1凹入部群のみで構成してなるかしめ管継手。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−256925(P2011−256925A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−131105(P2010−131105)
【出願日】平成22年6月8日(2010.6.8)
【出願人】(510159986)日海工業株式会社 (1)
【出願人】(594203841)タイフレックス株式会社 (9)
【Fターム(参考)】