説明

から揚げの製造方法

【課題】衣のボリュームがあり、かつ従来のから揚げには無い凹凸があり、しかもクリスピーな食感で吸油感がないから揚げを製造する方法を提供すること。
【解決手段】穀粉類および/または澱粉類を主として含有するから揚げ粉95〜40質量部に対して、水分含量が20〜40質量%で、かつ大きさが5mm以上のパン粉を5〜60質量部混合してから揚げ用ミックスとした後、該から揚げ用ミックスを具材に付着させ、ついで油揚げすることにより、から揚げを製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、から揚げの製造方法に関する。詳細には、特定の水分含量および大きさを有するパン粉を含有する新規なまぶしタイプのから揚げ用ミックスを用いることで、衣のボリュームがあり、かつ従来のから揚げには無い凹凸があり、しかもクリスピーな食感で吸油感がない(油っぽさを感じない)から揚げの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、から揚げの調理にあたっては、鶏肉、豚肉、牛肉などの畜肉類や魚介類などの具材を調味液に漬け込んで、具材に調味液を浸み込ませた後に、穀粉などの衣を付着させて、油で揚げる方法が、一般に採用されてきた。この方法では、具材を調味液に漬け込むことで具材の保水力が高まり、油で揚げた際にジューシー感のある良好なから揚げを得ることができるが、調味液の調製および調味液への具材の漬け込みが必要であり、手間と時間がかかる。そこで、から揚げの調理を簡単に行うために、具材に味付けされたから揚げ粉を直接まぶして油で揚げるだけのまぶしタイプのから揚げ粉が種々開発されてきており、から揚げを極めて簡単に、かつ短時間に調理することができるようになった。しかし、従来のまぶしタイプのから揚げ粉では、外観も単調で、衣のボリュームが出なかった。
【0003】
衣にボリュームを出すために、揚げ種にバッターを付けた後、まぶしタイプのから揚げ粉をより多く付着させる工程をとることがあるが、製造工程が増えるだけで、充分満足できる外観でボリューム感のあるから揚げは得られない。
【0004】
また、衣にボリュームを出すために、乾燥した粒状食品素材をから揚げ粉に混合することも行われているが、粒が大きくなるほど食感が硬くなり、乾燥した粒状食品素材が均一に付着せず、期待される程のボリュームは出なかった。
【0005】
一方、パン粉をから揚げ粉に混合する技術として、特許文献1には、グルテンを形成させず、揚げ種の水分を吸収して、冷凍から揚げを効率良く生産できる衣ミックス粉として、50〜200メッシュの微細パン粉を含む冷凍から揚げ用衣ミックス粉が記載されている。しかし、この微細パン粉を含む方法では、その外観や食感の点で十分とはいえない。
【0006】
また、特許文献2には、容易にから揚げの表面にゴツゴツとした凹凸ができ、さっくりとした食感のから揚げを提供することを目的として、幅2〜5mmの植物粒状蛋白やパン粉等のフライ可能な食用粒状物を、水溶きタイプでは5%以上、まぶしタイプでは2%以上混合したから揚げ粉が提案されている。しかし、このから揚げ粉では、幅2〜5mmの食用粒状物を含むまぶしタイプであっても、粒状物の均一な付着という従来からの問題を解決できず、その外観や食感の点でも十分とはいえない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平4−75566号公報
【特許文献2】特開平11−46712号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の目的は、衣のボリュームがあり、かつ従来のから揚げには無い凹凸があり、しかもクリスピーな食感で吸油感がないから揚げを製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、穀粉類および/または澱粉類を主として含有するから揚げ粉95〜40質量部に対して、水分含量が20〜40質量%で、かつ大きさが5mm以上のパン粉を5〜60質量部混合してから揚げ用ミックスとし、該から揚げ用ミックスを具材に付着させ、ついで油揚げすることを特徴とするから揚げの製造方法を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、衣のボリュームがあり、かつ従来のから揚げには無い凹凸があり、しかもクリスピーな食感で吸油感がないから揚げを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のから揚げの製造方法は、まぶしタイプのから揚げの製造方法であり、小麦粉および/または澱粉類を主として含有するから揚げ粉95〜40質量部に対して、水分含量が20〜40質量%で、かつ大きさが5mm以上のパン粉を5〜60質量部混合してなるから揚げ用ミックスを用いることを特徴とする。
【0012】
本発明で用いる上記パン粉としては、生パン粉、セミドライパン粉、乾燥パン粉のいずれでもよいが、セミドライパン粉や乾燥パン粉の場合には、必要に応じて、水を噴霧するなどして、水分含量を20〜40質量%に調節する必要がある。なお、一般に水分含量は、生パン粉で35質量%程度、セミドライパン粉で20〜26質量%程度、乾燥パン粉で6〜13質量%程度である。
【0013】
本発明においては、生パン粉またはセミドライパン粉を用いることが好ましい。ここでいう好ましく用いられる生パン粉またはセミドライパン粉は、常法により製造された後、水の噴霧などによる水分含量調節をしていないものである。同じ水分含量であれば、水の噴霧などによる水分含量調節をしたセミドライパン粉や乾燥パン粉よりも、水分含量調節をしていない生パン粉またはセミドライパン粉をそのまま用いる方が好ましい。
【0014】
本発明で用いる上記パン粉は、水分含量が20〜40質量%、好ましくは23〜37質量%である。パン粉の水分含量が20質量%未満であると、パン粉を混合するから揚げ粉成分とパン粉が分離して均一な付着ができなくなり、40質量%を超えると、素材にまぶし難いだけでなく、パン粉が潰れて硬くなったり、吸油が増えてベタつく。
【0015】
本発明では、上記パン粉として、大きさ(サイズ)が5mm以上のものを用いることが必要であり、パン粉の大きさは好ましくは7mm以上、より好ましくは10mm以上である。パン粉の大きさが5mm未満であると、得られるから揚げの外観にボリューム感がなく、食感も劣る。また、パン粉の大きさは、好ましくは25mm以下、より好ましくは20mm以下である。パン粉の大きさが25mmを超えると、揚げ種に均一に付着させることが困難になることがある。
【0016】
なお、本発明でいう大きさ(サイズ)が5mm以上とは、1粒1粒のパン粉において、最大幅を有する部分が5mm以上という意味であり、大きさ(サイズ)が5mm以上のパン粉とは、当該サイズのパン粉を少なくともパン粉全量に対して80質量%含有するものである。
【0017】
本発明において、上記パン粉を混合するから揚げ粉としては、まぶしタイプのから揚げ粉として従来用いられているものを適宜使用することができる。具体的には、小麦粉や米粉、コーンフラワー等の穀粉や各種澱粉を主として(好ましくはから揚げ粉中に80質量%以上)含有するから揚げ粉であればよく、該から揚げ粉は、さらに副原料として、例えば、油脂、増粘多糖類、卵粉や大豆蛋白、乳蛋白等の蛋白素材、食塩、糖類、香辛料、膨張剤、乳製品、粉末醤油やグルタミン酸ナトリウム等の調味料、パプリカ色素等の色素を適宜含有することもできる。
【0018】
本発明においては、上記から揚げ粉95〜40質量部、好ましくは90〜50質量部に対して、上記パン粉5〜60質量部、好ましくは10〜50質量部を混合したものをから揚げ用ミックスとして用いる。パン粉の量が5質量部より少ないと、得られるから揚げの外観にボリューム感がなく、食感も劣る。パン粉の量が60質量部より多いと、外観のボリューム感は出るが、食感のクリスピーさに欠け、また、具材からパン粉やから揚げ粉が脱落しやすくなる。
【0019】
本発明において、上記から揚げ用ミックスは、従来のまぶしタイプのから揚げ粉と同様にして用いて具材(揚げ種)に付着させる。該具材としては、特に制限はなく、例えば、鶏肉などの畜肉類、アジ、サンマなどの魚介類、野菜類などが挙げられる。これらの具材は、必要に応じて、上記から揚げ用ミックスをまぶす前に、調味液等で味付けをするなど、前処理を行ってもよい。また、本発明では、具材をバッター液に浸した後に、上記から揚げ用ミックスをまぶしても構わないが、バッター液を用いずに、具材(前処理したものを含む)に直接上記から揚げ用ミックスをまぶすことが好ましい。本発明では、バッター液を用いずに、具材に直接上記から揚げ用ミックスをまぶすだけで、容易に、外観にボリューム感があり、食感も良好なから揚げを得ることができる。なお、バッター液を用いる場合は、従来のまぶしタイプのから揚げ粉に用いることができるバッター液であればよい。
【0020】
上記から揚げ用ミックスを付着させた具材は、そのまま直ぐに油ちょうしてもよいが、冷蔵ないし冷凍保存後に油ちょうしてもよい。本発明において、油ちょう条件は、特に制限はなく、具材の種類などに応じて適宜決定できるが、通常、油の温度を170〜180℃、揚げ時間を3〜7分間とするとよい。また、油ちょう後に、室温でまたは冷蔵ないし冷凍で保存し、電子レンジなどで再加熱した後、喫食に供してもよい。
【実施例】
【0021】
以下、実施例等を挙げて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例等によって制限されるものではない。
【0022】
〔実施例1〜3および比較例1〜3〕パン粉の量の検討
まぶしタイプのから揚げ粉(小麦粉;69.9質量%、馬鈴薯澱粉;20質量%、食塩;5質量%、ぶどう糖;1質量%、粉末醤油;1質量%、香辛料;3質量%および色素;0.1質量%)と、大きさ7mmの生パン粉(水分含量:35質量%)とを下記の表1に示す割合で混合して、から揚げ用ミックスを作成した。
鶏モモ肉を30gの大きさに切断し、上記から揚げ用ミックスをまぶして付着させた後、室温で約3分間放置した。次いで、から揚げ用ミックスを付着させた鶏肉を170℃に熱した大豆油で4分間揚げ、鶏肉のから揚げを得た。
得られたから揚げを表2の評価基準により10名のパネラーで評価した。その結果の平均点を表1に示す。
【0023】
【表1】

【0024】
【表2】

【0025】
〔実施例4〜6および比較例4〕パン粉の大きさの検討
下記の表3に示す大きさの生パン粉(水分含量:35質量%)を用意した。実施例1で用いたまぶしタイプのから揚げ粉50質量部と、生パン粉50質量部とを混合して、から揚げ用ミックスを作成した。
鶏モモ肉を30gの大きさに切断し牛乳に浸した後、上記から揚げ用ミックスをまぶして付着させ、室温で約3分間放置した。次いで、から揚げ用ミックスを付着させた鶏肉を170℃に熱した大豆油で4分間揚げ、鶏肉のから揚げを得た。
得られたから揚げを表2の評価基準により10名のパネラーで評価した。その結果の平均点を表3に示す。
【0026】
【表3】

【0027】
〔実施例7〜8および比較例5〜6〕パン粉の水分含量の検討
生パン粉(水分含量:35質量%)の代わりに、セミドライパン粉(水分含量:26質量%、実施例7)、乾燥パン粉(水分含量:13.5質量%、比較例5)、該乾燥パン粉に水を噴霧して水分含量35質量%としたもの(実施例8)、および上記乾燥パン粉に水を噴霧して水分含量45質量%としたもの(比較例6)をそれぞれ用いた以外は、実施例5と同様にして、から揚げを得た。尚、パン粉の大きさは全て10mmとした。
得られたから揚げを表2の評価基準により10名のパネラーで評価した。その結果の平均点を表4に示す。なお、参考のため、表4には実施例5の結果も記載する。
【0028】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
穀粉類および/または澱粉類を主として含有するから揚げ粉95〜40質量部に対して、水分含量が20〜40質量%で、かつ大きさが5mm以上のパン粉を5〜60質量部混合してから揚げ用ミックスとし、該から揚げ用ミックスを具材に付着させ、ついで油揚げすることを特徴とするから揚げの製造方法。
【請求項2】
上記パン粉が、生パン粉またはセミドライパン粉である、請求項1記載のから揚げの製造方法。
【請求項3】
上記パン粉の大きさが10mm以上である、請求項1または2記載のから揚げの製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法で製造された、から揚げ。
【請求項5】
穀粉類および/または澱粉類を主として含有するから揚げ粉95〜40質量部に対して、水分含量が20〜40質量%で、かつ大きさが5mm以上のパン粉を5〜60質量部含有する、から揚げ用ミックス。